説明

弁装置

【課題】2つの流体通路を開閉するようにした弁装置において、スペース効率がよく、小型化を図る。
【解決手段】第1の弁20、第2の弁30、付勢部材40、駆動機構50、ロック機構60と、解除部材70と、を備え、駆動機構50は、開弁時に、第1の弁20を他端側に向けて駆動し、ロック機構60により第1の弁20と第2の弁30とが連結された後に、これらを一端側へ向けて一体に駆動して、第1の弁20と第2の弁30とを開弁状態にするようになっており、閉弁時に、ロック機構60により連結された第1の弁20と第2の弁30とを一端側へ向けて一体に駆動して、第1の弁20を閉弁状態とするようになっており、解除部材70は、駆動機構50により一端側へ向けて一体に駆動された第1の弁20と第2の弁30との連結を解除する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体通路を開閉することが可能な弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、エンジンの始動時に、2次空気流路管内に発生する2次空気を三元触媒コンバータに導入して三元触媒の暖機を促進させる2次空気供給システムに組み込まれた流体制御弁装置が開示されている。
【0003】
この流体制御弁装置は、電動モータと、電動モータの回転速度を減速する減速機構と、減速機構中の最終ギヤと噛合する複数のラック歯が外周面に設けられ前記最終ギヤの回転運動を直線運動に変換して弁体と一体的に変位するバルブシャフト(弁ロッド)とを備えている。この場合、電動モータを正転または逆転させて最終ギヤとラック歯とを噛合させることにより、ラック歯を有するバルブシャフトと一体的に弁体を変位させて流体通路を開閉するようにしている。
【0004】
また、本出願人らは、弁装置のケースに揺動可能なロックレバーを設置するとともに、ラック歯が設けられたラック部のラック歯とは反対側の背面に係合部を形成し、ロックレバーを係合部に係合させることにより、回転駆動源への通電無しでラック部とともに移動する弁体を開放位置(開弁状態)に保持する弁装置を提案している(特願2009−229065)。
【0005】
また、1つのピニオンで2つのラックを作動させ、2つのラックにそれぞれ設けられた弁体を作動させて、2つの流体通路を開閉するようにした弁装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−24242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記特許文献1に開示された流体制御弁装置や、ロックレバーをラック部の係合部に係合させることにより弁体を開放位置に保持する弁装置においては、例えば、1つのシステムにおいて2つの弁装置を用いる場合に、自ずと2つ分の設置スペースが必要であり、スペース効率が悪いという問題があった。
【0008】
この点、1つのピニオンで2つのラックを作動させて2つの流体通路を開閉するようにした弁装置では、前記のように2つの弁装置を用いる場合に比べて、スペース効率のよい設置が可能となる。しかしながら、1つのピニオンで2つのラックを作動させる構成であるため、駆動用のモータのトルクが倍以上必要となり、モータの大型化やギヤ比を大きくする必要がある等、装置が大型化するという問題があった。
【0009】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、2つの流体通路を開閉するようにした弁装置において、スペース効率がよく、小型化を図ることができる弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、バルブ本体の一端側に設けられ、他端側に向けて移動することにより開弁する第1の弁と、前記バルブ本体の他端側に設けられ、一端側に向けて移動することにより開弁する第2の弁と、前記第2の弁を他端側に向けて付勢する付勢部材と、前記第1の弁および前記第2の弁を開閉駆動する駆動機構と、前記駆動機構により他端側へ向けて移動した前記第1の弁を、前記第2の弁に一体に連結するロック機構と、前記ロック機構による連結を解除する解除部材と、を備え、前記駆動機構は、開弁時に、前記第1の弁を他端側に向けて駆動し、前記ロック機構により前記第1の弁と前記第2の弁とが連結された後に、これらを一端側へ向けて一体に駆動し、当該第1の弁と当該第2の弁とを開弁状態とするようになっており、閉弁時に、前記第1の弁と前記第2の弁とを一端側へ向けて一体に駆動し、前記第1の弁を閉弁するようになっており、前記解除部材は、前記駆動機構により一端側へ向けて一体に駆動された前記第1の弁と前記第2の弁との連結を解除することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ロック機構により第1の弁と第2の弁とを一体化させることが可能となり、第1の弁および第2の弁の2つの弁を、駆動機構による1つ分のモータトルクで開閉することが可能となる。すなわち、2つの弁を1つずつ順番に駆動することで1つ分のモータトルクで2つの弁を開閉することができる。
【0012】
また、本発明は、前記第1の弁には有底円筒部が設けられ、前記有底円筒部の内周には、前記第2の弁のガイド軸が摺動自在に配置され、前記有底円筒部の外周には、前記ロック機構のレバーが配置され、前記ガイド軸の外周には、前記レバーに設けられたフック部が係合可能な凹部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、第1の弁の有底円筒部に設けられたレバーのフック部が、第2の弁のガイド軸の外周に設けられた凹部に係合することによって、第1の弁と第2の弁とが一体化される。したがって、簡単な構成によって第1の弁と第2の弁とを連結することができる。また、連結の構成が簡単であるので、連結を解除する構成も簡単なものとすることができる。
【0014】
また、本発明は、前記ロック機構は、前記レバーを回動自在に支持する支軸と、前記レバーを前記ガイド軸の外周に向けて付勢するばね部材と、を含んで構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、第1の弁の有底円筒部を第1の弁の開弁方向へ所定位置まで移動させると、有底円筒部に設けたレバーのフック部がガイド軸の凹部に係合する。したがって、簡単な構成によって第1の弁と第2の弁とを連結することができる。
【0016】
また、本発明は、前記解除部材は、ピン状の部材であり、前記駆動機構により前記第1の弁とともに一端側へ向けて移動されてきた前記ロック機構の前記レバーに当接し、前記ばね部材の付勢力に抗して前記凹部から前記フック部が脱する方向へ前記レバーを回動させることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、有底円筒部に設けたレバーが解除部材と当接することによって、凹部に対するレバーの係合が外れ、第1の弁と第2の弁との連結が解除される。したがって、ソレノイド等の別機構を設ける必要がなく、機構の簡素化および製造コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、2つの流体通路を開閉するようにした弁装置において、スペース効率がよく、小型化を図ることができる弁装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る弁装置が組み込まれた燃料電池システムの全体構成図である。
【図2】弁装置の模式縦断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、第1の弁が、弁閉状態から弁開状態となる動作説明に供される図である。
【図4】(a)(b)は、第1の弁と第2の弁とが連結されて第2の弁が弁開状態となる動作説明に供される図、(c)(d)は第1の弁と第2の弁とが弁閉状態となる動作説明に供される図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る弁装置100が組み込まれた燃料電池システム1の全体構成図である。なお、本実施形態では、車両に搭載された燃料電池に組み込まれる弁装置を以下に例示して説明しているが、これに限定されるものでなく、例えば、船舶や航空機等、または業務用や家庭用の定置式の燃料電池等に組み込まれる各種開閉バルブに適用することができる。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態に係る弁装置100が組み込まれた燃料電池システム1は、燃料電池2、アノード系3、カソード系4、図示しない制御系を備えて構成されている。
【0022】
燃料電池2は、固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC
)からなり、MEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)を図示しないセパ
レータで挟持してなる単セルが複数積層されて構成されている。MEAは、電解質膜(固体高分子膜)、これを挟持するカソードおよびアノード等を備える。前記カソードおよびアノードは、例えば、白金等の触媒がカーボンブラック等の触媒担体に担持された電極触媒層からなる。また、各セパレータには、溝や貫通孔からなるアノード流路3Aおよびカソード流路4Aが形成されている。
【0023】
このような燃料電池2では、アノードに水素(反応ガス、燃料ガス)が供給され、一方、カソードに酸素を含むエア(反応ガス、酸化剤ガス)が供給されると、アノードおよびカソードに含まれる触媒上で電極反応が起こり、燃料電池2が発電可能な状態となる。
【0024】
燃料電池2は、図示しない外部負荷と電気的に接続され、前記外部負荷によって電流が取り出されると、燃料電池2が発電するようになっている。なお、前記外部負荷とは、走行用のモータ、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置、後記するエアポンプ5等である。
【0025】
アノード系3は、水素タンク6、遮断弁7、パージ弁8、配管a1〜a4等によって構成される。
【0026】
水素タンク6は、高純度の水素を高圧で貯蔵するものであり、配管a1を介して下流側の遮断弁7と接続されている。前記遮断弁7は、例えば、電磁弁からなり、配管a2を介して下流側の燃料電池2のアノード流路3Aの入口と接続されている。
【0027】
パージ弁8は、例えば、電磁弁からなり、配管a3を介して上流側の燃料電池2のアノード流路3Aの出口と接続されている。
【0028】
カソード系4は、エアポンプ5、弁装置100、背圧弁9、配管(酸化剤ガス流路)c1〜c5等で構成されている。
【0029】
エアポンプ5は、例えば、図示しないモータで駆動される機械式の過給器であり、取り込んだ外気(エア)を圧縮して燃料電池2に供給する。
【0030】
本発明の実施形態に係る弁装置100は、酸化剤ガスの供給側および排出側における2つの流体通路を開閉可能に構成された弁である。
酸化剤ガスの供給側において弁装置100は、配管c1を介して上流側のエアポンプ5と接続されるとともに、配管c2を介して下流側の燃料電池2のカソード流路4Aの入口と接続されている。一方、酸化剤ガスの排出側において弁装置100は、配管c3を介して上流側の燃料電池2のカソード流路4Aの出口と接続されるとともに、配管c4を介して下流側の背圧弁9と接続されている。
【0031】
具体的に、弁装置100は、図2に示すように、バルブ本体10と、バルブ本体10の一端側に設けられ供給側の流体通路を開閉する第1の弁20と、バルブ本体10の他端側に設けられた第2の弁30と、付勢部材40と、駆動機構50と、ロック機構60と、解除部材(固定ピン)が70と、を備えて構成されている。
【0032】
バルブ本体10は、軸方向の一端側に、第1の弁20の弁体21等が配置される弁室20aを有しており、これとは反対側となる軸方向の他端側に、第2の弁30の弁体31等が配置される弁室30aを有している。また、バルブ本体10の内部には、軸芯周りに円筒状の空間部11が形成されている。この空間部11には、第1の弁20に連結された後記する有底円筒部としてのラック部26が軸方向に摺動可能に収容されるようになっている。
【0033】
一端側の弁室20aは、バルブ本体10と中間プレート12と弁体21とによって仕切られる室であり、流体(圧力流体)が導入されるインレットポート22aと流体(圧力流体)が導出されるアウトレットポート22bとを備える。
【0034】
インレットポート22aには、配管c1が接続されており、配管c1を通じてエアポンプ5(図1参照)からの圧縮空気が供給されるようになっている。
また、アウトレットポート22bには、燃料電池2のカソード流路4Aに通じる配管c2が接続されている。これにより、アウトレットポート22bから配管c2を通じて燃料電池2のカソード流路4A(図1参照)にエアが供給されるようになっている。
【0035】
他端側の弁室30aは、バルブ本体10と中間プレート13と弁体31によって仕切られる室であり、流体(圧力流体)が導入されるインレットポート32aと流体(圧力流体)が導出されるアウトレットポート32bとを備える。
【0036】
インレットポート32aには、配管c3が接続されており、配管c3を通じて燃料電池2のカソード流路4Aを通じて燃料電池2から排出された空気が供給されるようになっている。
また、アウトレットポート32bには、背圧弁9(図1参照)に通じる配管c4が接続されている。これにより、アウトレットポート32bから配管c4を通じて背圧弁9にエアが供給されるようになっている。
【0037】
第1の弁20は、インレットポート22aとアウトレットポート22bとの連通状態と非連通状態とを切り換える弁体21と、弁体21に連結されたロッド21aと、を備えている。弁体21の下面(外側面)には、弁座部14に着座するパッキン21bが装着されている。
【0038】
ロッド21aは、中間プレート12を貫通して中間プレート12の内側(空間部11内)に延設されており、その端部が有底円筒状のラック部26に一体的に連結されている。ロッド21aは、中間プレート12において、シール部材12aを介して気密に摺動支持されている。
【0039】
ラック部26は、バルブ本体10の内部に形成された空間部11に対して軸方向に摺動自在に挿入されている。ラック部26の外周面には、ラック歯26aが形成されている。このラック歯26aは、空間部11に形成された切欠部11aを通じて、その側方に配置される駆動機構50の歯車51に噛合するようになっている。
なお、ラック部26は、軸方向の両端部分にフランジ部27,28を有しており、各フランジ部27,28が空間部11の内壁面に摺接するように構成されている。これにより、ラック部26の外周面の全体が空間部11の内壁面に摺接するものと比べて、摺動抵抗を低減することができる。これにより、滑らかでスムーズなラック部26の摺動が実現される。
また、ラック部26の内空は、第2の弁30の後記する挿入部33(ガイド軸)を収容可能な大きさを備えている。ラック部26の内壁面26cは、これに挿入される挿入部33の外周面に対向しており、挿入部33の外周面との間で摺接可能となっている。つまり、ラック部26は、中空部11内において、挿入部33の外周面にラック部26の内周面26cが摺接しながらストロークするように構成されている。
【0040】
ラック部26には、ラック歯26aが設けられる側と反対側の周壁面に、軸方向に沿う長穴26bが形成されている。この長溝26b内には、ロック機構(連結機構)60が配置されている。
ロック機構60は、レバー61と、支軸62と、コイルばね66とを含んで構成されている。レバー61は、長軸部63と短軸部64と有する略L字形状を呈しており、支軸62を中心として回動可能に支持されている。長軸部63は、支軸62側の細幅部63aと先端側の太幅部63bとを有しており、これらの間に段部63cが形成されている。また、長軸部63の先端部には、バルブ本体10の中空部11の内面に膨出形成された膨出部15に当接可能な突出部65aと、この突出部65aと反対側に向けて突出するフック部(フック)65bが形成されている。
【0041】
短軸部64は、ラック部26の内側へ向けて突出しており、長軸部63と一体的に形成されている。短軸部64の外側面には、ピン状の解除部材70の先端部が当接可能となっている。ここで、解除部材70は、第1の弁20が弁座部14に着座してアウトレットポート22bが閉じられた状態で、短軸部64に当接するように配置されている。
【0042】
このようなレバー61は、支軸62を中心としてコイルばね66によって、図中時計回り方向(右回り方向)に付勢されている。なお、図2では、解除部材70に短軸部64が当接して、レバー61が、コイルばね66の付勢力に抗して、図中反時計回り方向(左回り方向)に回動した状態を示している。この状態でレバー61の突出部65aは、空間部11の内壁面11bに当接した状態に保持されている。
【0043】
第2の弁30は、インレットポート32aとアウトレットポート32bとの連通状態と非連通状態とを切り換える弁体31と、弁体31に連結されたロッド31aと、を備えている。弁体31の上面(外側面)には、弁座部16に着座するパッキン31bが装着されている。
【0044】
ロッド31aは、中間プレート13を貫通して中間プレート13の内側(空間部11内)に長く延設されており、端部には、ロッド31aよりも太径とされた挿入部33が形成されている。挿入部33は、段付き円柱状を呈しており、空間部11内において、ラック部26の内空に挿入されて、ラック部26の内壁面26cとの間で摺接可能となっている。
なお、ロッド31aは、中間プレート13において、シール部材13aを介して気密に摺動支持されている。
【0045】
挿入部33は、2つの周溝34,35を有している。周溝34は、ロック機構60のレバー61の先端部に対向して形成されており、時計回りに付勢されたレバー61の先端部を収容可能に設けられている。周溝34の他端部には、周溝35(凹部)の縁部へ向けた上り傾斜面34aが形成されている。
【0046】
周溝35は、周溝34よりも浅く形成された溝であり、時計回りに付勢されたレバー61のフック部65bが係脱可能となっている。
【0047】
付勢部材40は、第1の弁20および第2の弁30を相互に閉じる側に付勢するものであり、挿入部33の下面(内側面)と、ラック部26の底部となるフランジ部27の上面(内側面)との間に収容されている。なお、本実施形態では、コイルばねからなるばねを例示しているが、ばねの種類や形態を限定する趣旨ではない。
【0048】
駆動機構50は、例えば、ステッピングモータやDCサーボモータ等からなる図示しない回転駆動源と、この回転駆動源の回転駆動軸(モータ軸)に図示しない減速機構を介してその出力軸52に連結された歯車51とを備えて構成される。なお、回転駆動源は、図示しないECU(Electronic Control Unit)からの制御信号により駆動される。
【0049】
解除部材70は、空間部11の内壁11bから内空に向けて突設されたピン状の部材であり、ラック部26の周壁に設けられた長孔26eを通じてラック部26の内側に突出している。解除部材70の先端部は、ロック機構60のレバー61を構成している短軸部64の移動軌跡上に位置している。
【0050】
図1に戻って、背圧弁9は、燃料電池2のカソードの圧力を調整する機能を有し、弁開度の調節が可能なバタフライ弁(常開型)等で構成されている。
【0051】
制御系は、図示しないECU、燃料電池2の温度を検出する温度センサ等で構成されている。ECUは、遮断弁30、パージ弁32、第1の開閉バルブ36a、第2の開閉バルブ36b、第1および第2の開閉バルブ36a、36bにそれぞれ設けられた弁駆動機構52、ロック機構54を制御する。さらに、ECUは、エアポンプ26のモータの回転速度を制御し、背圧弁38の弁開度を調整する。
【0052】
本実施形態に係る弁装置100が組み込まれた燃料電池システム1は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0053】
先ず、燃料電池2の発電が停止されている場合について説明する。
【0054】
燃料電池2の発電が停止されている場合、ECUからの制御信号によって、遮断弁7が閉じられて燃料電池2側への水素の供給が停止されているとともに、エアポンプ5の図示しないモータの駆動が停止されて燃料電池2側へのエアの供給が停止されている。また、燃料電池2の発電停止中は、弁装置100が弁閉状態(図2に示す状態)にあり、燃料電池2のカソードが封鎖されている。
【0055】
換言すると、燃料電池2の発電停止中において、弁装置100は、ノーマルクローズタイプのバルブとして機能し、図2に示されるように、付勢手段40によって第1の弁20の弁体21が弁座部14に着座するように押圧され、また、第2の弁30の弁体31が弁座部16に着座するように押圧されている。したがって、第1の弁20により、インレットポート22aとアウトレットポート22bとの連通が遮断され、また、第2の弁30により、インレットポート32aとアウトレットポート32bとの連通が遮断される。
【0056】
このように燃料電池2のカソードが弁装置100によって封鎖されることにより、燃料電池2の発電停止中において、カソード流路4A内に新たなエアが流れ込むことを阻止することができる。
【0057】
次に、燃料電池システム1が運転中である場合には、ECUによって弁装置100の第1の弁20および第2の弁30がそれぞれ弁閉状態から弁開状態に切り換えられてカソードの封鎖状態が解除される。同時に、ECUによって遮断弁7が弁開状態とされて水素タンク6からアノードに水素が供給されるとともに、エアポンプ5が駆動されてカソードにエア(空気)が供給されて、燃料電池2の発電が行われる。
【0058】
ここで、カソードの封鎖状態を解除したときにおける、弁装置100の弁閉状態から弁開状態への切換動作について、図3、図4に基づいて以下詳細に説明する。なお、以下の説明において、図3、図4に図示されていない部分については、図2を適宜参照するものとする。
なお、図3(a)は、図2に示されるように第1の弁20および第2の弁30が弁閉状態にあり、この弁閉状態を初期位置として説明する。
【0059】
先ず、ECUは、燃料電池システム1の運転が開始されたことを検知したとき、図3(b)に示されるように、駆動機構50の回転駆動源に制御信号を送って歯車51を駆動し、ラック歯26aを介してラック部26を他端側へ向けて移動させる。そうすると、ロッド21aを介して弁体21が弁座部14から離座する。このとき、ラック部26の他端側へ向けた移動により、ロック機構60のレバー61もラック部26とともに他端側へ向けて移動する。
これにより、レバー61の短軸部64が解除部材70の先端部から離れ、解除部材70によるレバー61の反時計回り方向の保持状態が解除される。この解除によりレバー61は、コイルばね66によって、時計回り方向に回動し、先端部が第2の弁30の挿入部33の周溝34に入り込むようにして当接する。
【0060】
その後、図3(c)に示すように、駆動機構50によってラック部26が他端側へ向けてさらに移動されると、レバー61の先端部(フック部65b)が周溝34の傾斜面34aに沿って移動し、周溝35の縁部へ位置する(図3(d)参照)。このとき、図3(d)に示すように、レバー61の突出部65aは、中空部11の膨出部15の頂部を通り過ぎて膨出部の傾斜部分に位置しているので、レバー61の反時計回り方向の回動が許容される。
【0061】
その後、図4(a)に示すように、駆動機構50によってラック部26が他端側へ向けてさらに移動されると、周溝35の縁部に位置していたフック部65b(先端部)が、コイルばね66の付勢力によって周溝35に係合される。この状態で、駆動機構50による駆動が一旦停止され、第1の弁20が全開状態となる。なお、フック部65bが周溝35に係合されたことの検出は、予め設定された所定の時間(確実に係合される駆動時間)だけ駆動することによって行ってもよいし、図示しないセンサ等を用いて行ってもよい。
【0062】
その後、ECUは、駆動機構50の回転駆動源に制御信号を送って歯車51を逆方向に駆動し、図4(b)に示すように、ラック部26を一端側へ向けて移動させる。ここで、レバー61のフック部65bは、第2の弁30の挿入部33の周溝35に係合したままの状態であるので、レバー61を介してラック部26と挿入部33とは連結状態にあり、前記ラック部26の移動によって、これらが一体的に一端側へ向けて移動する。これにより、第2の弁30の弁体31が着座部16から離座する。そして、図4(b)に示すように、レバー61の突出部65aが空間部11の膨出部15の頂部に移動したところで、ECUは、駆動機構50に制御信号を出力して、駆動を停止する。これにより、第1の弁20と第2の弁30とがロック機構60のレバー61を介して開弁状態に保持される。
なお、弁開状態に保持された状態では、駆動機構50に対する電力の供給がないので、その分、省電力化を達成することができる。
また、レバー61の突出部65aが空間部11の膨出部15の頂部に位置しているので、膨出部15が規制部材として機能し、レバー61の反時計回り方向の回動が阻止される。これにより、レバー61のフック部65bと周溝35との係合状態が確実に維持されることとなる。
【0063】
次に、第1の弁20および第2の弁30が弁開状態に保持された状態から弁閉状態への切換動作について説明する。
ECUは、燃料電池2の発電が停止されたことを検知したとき、駆動機構50の歯車51を回転させ、ラック部26を一端側へ向けて移動させる。そうすると、図4(c)に示されるように、ラック部26と挿入部33とが一体的に一端側へ向けて移動する。これにより、第1の弁20の弁体21が着座部14に近づく。このとき、レバー61の短軸部64は、解除部材70の先端部に当接しておらず、レバー61のフック部65bと周溝35との係合状態が維持されて第1の弁20と第2の弁30とが一体的に移動する。
【0064】
その後、図4(d)に示すように、第1の弁20の弁体21が着座部14に着座する。そうすると、レバー61の短軸部64が、解除部材70の先端部に当接し、レバー61が軸部62を中心として反時計回り方向に回動する。これによって、レバー61のフック部65bと周溝35との係合状態が解除される。
そうすると、付勢部材40の付勢力によって第2の弁30の挿入部33がラック部26内を他端側ヘ向けて移動し、第2の弁30の弁体31が着座部16に着座する。これにより、図3(a)に示すように、第1の弁20と第2の弁30とが閉弁状態に復帰する。
【0065】
以上説明した本実施形態の弁装置100によれば、ロック機構60(レバー61)により第1の弁20と第2の弁30とを一体化させることが可能となり、第1の弁20および第2の弁30の2つの弁を、駆動機構50による1つ分のモータトルクで開閉することが可能となる。すなわち、2つの弁を1つずつ順番に駆動することで1つ分のモータトルクで2つの弁を開閉することができる。したがって、2つの流体通路を開閉するようにした弁装置100において、スペース効率がよく、小型化を図ることが可能となる。
【0066】
また、第1の弁20のラック部26に設けられたレバー61のフック部65bが、第2の弁30の挿入部33に設けられた周溝35に係合することによって、第1の弁20と第2の弁30とが一体化される。したがって、簡単な構成によって第1の弁20と第2の弁30とを連結することができる。また、連結の構成が簡単であるので、連結を解除する構成(解除部材70)も簡単なものとすることができる。
【0067】
また、第1の弁20のラック部26を第1の弁20の開弁方向へ所定位置まで移動させると、ラック部26に設けたレバー61のフック部65bが挿入部33の周溝35に係合するので、係合による簡単な構成によって第1の弁20と第2の弁30とを連結することができる。
【0068】
また、ラック部26に設けたレバー61の短軸部64が解除部材70と当接することによって、周溝35に対するレバー61(フック部65b)の係合が外れ、第1の弁20と第2の弁30との連結が解除されるので、解除機構としてソレノイド等の別機構を設ける必要がなく、機構の簡素化および製造コストの低減を図ることができる。
【0069】
なお、挿入部33に周溝35を形成することなく、挿入部33に凹部を形成して、この凹部にフック部65bが係合するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 バルブ本体
20 第1の弁
26 ラック部(有底円筒部)
30 第2の弁
33 挿入部(ガイド軸)
35 周溝(凹部)
50 駆動機構
60 ロック機構
61 レバー
65b フック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ本体の一端側に設けられ、他端側に向けて移動することにより開弁する第1の弁と、
前記バルブ本体の他端側に設けられ、一端側に向けて移動することにより開弁する第2の弁と、
前記第2の弁を他端側に向けて付勢する付勢部材と、
前記第1の弁および前記第2の弁を開閉駆動する駆動機構と、
前記駆動機構により他端側へ向けて移動された前記第1の弁を、前記第2の弁に一体に連結するロック機構と、
前記ロック機構による前記第1の弁と前記第2の弁との連結を解除する解除部材と、を備え、
前記駆動機構は、
開弁時に、前記第1の弁を他端側に向けて駆動し、前記ロック機構により前記第1の弁と前記第2の弁とが連結された後に、これらを一端側へ向けて一体に駆動して、当該第1の弁と当該第2の弁とを開弁状態にするようになっており、
閉弁時に、前記ロック機構により連結された前記第1の弁と前記第2の弁とを一端側へ向けて一体に駆動して、前記第1の弁を閉弁状態とするようになっており、
前記解除部材は、前記駆動機構により一端側へ向けて一体に駆動された前記第1の弁と前記第2の弁との連結を解除することを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記第1の弁には有底円筒部が設けられ、
前記有底円筒部の内周には、前記第2の弁のガイド軸が摺動自在に配置され、
前記有底円筒部の外周には、前記ロック機構のレバーが配置され、
前記ガイド軸の外周には、前記レバーに設けられたフック部が係合可能な凹部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記レバーを回動自在に支持する支軸と、前記レバーを前記ガイド軸の外周に向けて付勢するばね部材と、を含んで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記解除部材は、ピン状の部材であり、前記駆動機構により前記第1の弁とともに一端側へ向けて移動されてきた前記ロック機構の前記レバーに当接し、前記ばね部材の付勢力に抗して前記凹部から前記フック部が脱する方向へ前記レバーを回動させることを特徴とする請求項3に記載の弁装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−247008(P2012−247008A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119480(P2011−119480)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】