説明

引き戸装置

【課題】 戸閉鎖時に引き戸の戸尻側における遮音性を高めることができる引き戸装置を提供する。
【解決手段】 本発明の引き戸装置は、中方立て側対面部に高さ方向に沿って取り付けられた第1中方シール部と、戸当たり側対面部に高さ方向に沿って取り付けられた第2中方シール部と、を有する中方シール部を備え、第1中方シール部は、中方立て側対面部に固定される第1中方固定部と、第1中方固定部の端部から引き戸本体の厚み方向に沿って延設されたシール材料で形成された第1中方可撓ひれ部と、を有し、第1中方固定部と第1中方可撓ひれ部との間に空間が形成され、第2中方シール部は、戸当たり側対面部に固定される第2中方固定部と、第2中方固定部の端部から引き戸本体の厚み方向に沿って延設されたシール材料で形成された第2中方可撓ひれ部と、を有し、第2中方固定部と第2中方可撓ひれ部との間に空間が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音性を高めた引き戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遮音性を向上させることを目的とした引き戸として、例えば、特許文献1及び2に挙げられる発明が知られている。特許文献1に記載の引き戸は、引き戸本体の底面側に可動式の閉鎖部材が設けられており、引き戸本体を閉鎖させるときに閉鎖部材を可動させて、引き戸本体の底面と床面との間における隙間を閉鎖することにより、引き戸本体の底面側における遮音性を高めている。
【0003】
また、特許文献2に記載の引き戸は、引き戸本体のうち戸尻側の部分及び引き戸の相手材側のうちの少なくとも一方に弾性材料を基材とする戸尻側隙間閉鎖要素が設けられており、引き戸本体がスライドされて閉鎖されたときに、戸尻側隙間閉鎖要素が弾性的に変形して戸尻側隙間の全部または一部を塞ぐことにより、引き戸本体の戸尻側における遮音性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−48944号公報
【特許文献2】特開2007−314995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の引き戸では、引き戸本体の戸尻側における遮音性については考慮されておらず、引き戸全体からみた遮音性は十分ではなかった。また、特許文献2に記載の引き戸では、引き戸本体の戸尻側における遮音性の向上を図っているものの、さらなる遮音性の向上が望まれる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、引き戸本体を閉鎖したときに、引き戸本体の戸尻側における遮音性を高めることができる引き戸装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)様相1に係る引き戸装置は、構造物の開口を開閉する引き戸装置であって、開口の開口幅の一端側に設けられた戸先縦枠と、開口幅の他端側に設けられた中方立てと、を有する戸枠と、開口幅に沿って往復運動して開口を開閉させ且つ互いに背向する第1表面及び第2表面をもつ引き戸本体と、戸閉鎖時に中方立てに対面可能な引き戸戸当たりと、を有する引き戸と、戸先縦枠に高さ方向に沿って延設され、戸閉鎖時に戸先縦枠と引き戸本体の先端部との境界域をシールする戸先シール部と、戸閉鎖時における中方立てと引き戸戸当たりとの境界域に高さ方向に沿って延設され且つ戸閉鎖時に中方立てと引き戸戸当たりとの境界域をシールする中方シール部と、を具備しており、中方立ては、戸閉鎖時に引き戸戸当たりに対面する中方立て側対面部を有し、引き戸戸当たりは、戸閉鎖時に中方立て側対面部に対面する戸当たり側対面部を有し、中方シール部は、中方立て側対面部に高さ方向に沿って取り付けられた第1中方シール部と、戸当たり側対面部に高さ方向に沿って取り付けられた第2中方シール部と、を有しており、第1中方シール部は、中方立て側対面部に固定される第1中方固定部と、第1中方固定部の端部から引き戸本体の厚み方向に沿って延設されたシール材料で形成された第1中方可撓ひれ部と、を有し、第1中方固定部と第1中方可撓ひれ部との間に空間が形成され、第2中方シール部は、戸当たり側対面部に固定される第2中方固定部と、第2中方固定部の端部から引き戸本体の厚み方向に沿って延設されたシール材料で形成された第2中方可撓ひれ部と、を有し、第2中方固定部と第2中方可撓ひれ部との間に空間が形成されていることを特徴とする。この場合、引き戸本体の閉鎖時において、引き戸本体の戸尻側における遮音性を高めることができる。
【0008】
(2)様相2に係る引き戸装置は、開口幅方向に沿った断面において、第1中方可撓ひれ部の中心を開口幅方向に沿って通る第1中心線と、第2中方可撓ひれ部の中心を開口幅方向に沿って通る第2中心線とは、引き戸本体の厚み方向において所定量ずれている。この場合、第1中方可撓ひれ部及び第2中方可撓ひれ部は、戸閉鎖時に互いに弾性衝突して開口幅方向に反発することを防止することができ、第1中方可撓ひれ部及び第2中方可撓ひれ部は、その先端部で互いに圧接することができる。
【0009】
(3)様相3に係る引き戸装置は、様相2において、戸閉鎖時に、引き戸本体の厚み方向に複数のシールポイントを有する。この場合、中方立てと引き戸戸当たりの境界域は良好に塞がれ、中方立てと引き戸戸当たりの境界域におけるシール性を向上させることができ、引き戸本体の戸尻側における遮音性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の引き戸装置によれば、第1中方可撓ひれ部及び第2中方可撓ひれ部の弾性変形性が高まり、第1中方可撓ひれ部及び第2中方可撓ひれ部の開口幅方向における変形代が増加する。そのため、中方立てと引き戸戸当たりの境界域における隙間のシール性を向上させることができ、引き戸本体の戸尻側における遮音性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態の引き戸装置を示す正面図である。
【図2】図1のA−A’線で切った断面を模式的に表す概略断面図である。
【図3】図1のA−A’線で切った断面を模式的に表す概略断面図であり、(A)は戸閉鎖直前の引き戸本体の戸先部付近を示し、(B)は戸閉鎖後を示す。
【図4】図1のA−A’線で切った断面を模式的に表す概略断面図であり、(A)は戸閉鎖前の中方立てと引き戸戸当たりとの境界域を示し、(B)は戸閉鎖後を示す。
【図5】第1実施形態の変形形態に係り、図1のA−A’線で切った断面を模式的に表す概略断面図であり、(A)は戸閉鎖前の中方立てと引き戸戸当たりとの境界域を示し、(B)は戸閉鎖後を示す。
【図6】第2実施形態の引き戸装置において、(A)はシャッタ格納状態で引き戸を閉止する引き戸装置の上部戸先側を示す正面図、(B)は側面図である。
【図7】第2実施形態の引き戸装置における戸車ユニットを示す斜視図である。
【図8】第2実施形態の引き戸装置における作動手段の第1マグネットを示す分解斜視図である。
【図9】第2実施形態の引き戸装置におけるシャッタユニットを示す分解斜視図である。
【図10】第2実施形態の引き戸装置におけるシャッタユニットを示す組立斜視図である。
【図11】第2実施形態の引き戸装置を示す正面図である。
【図12】第2実施形態の引き戸装置において、(A)は引き戸を閉止途中のシャッタユニットの状態を示す正面図、(B)は縦断面図である。
【図13】第2実施形態の引き戸装置において、シャッタが降下途中の状態で引き戸を全閉する直前での引き戸装置の上部戸先側を示す正面図である。
【図14】第2実施形態の引き戸装置において、(A)は引き戸が全閉直前でのシャッタユニットの状態を示す正面図、(B)は縦断面図である。
【図15】第2実施形態の引き戸装置において、(A)は引き戸が全閉した引き戸装置の上部戸先側を示す正面図、(B)は側面図である。
【図16】第2実施形態の引き戸装置において、(A)は引き戸が全閉したときのシャッタユニットの状態を示す正面図、(B)は縦断面図である。
【図17】第2実施形態に係る下側隙間閉鎖手段を示す部分縦断側面図であり、正常作動時の引き戸本体の開放状態を示したものである。
【図18】第2実施形態に係る下側隙間閉鎖手段を示す部分縦断側面図であり、正常作動時の引き戸本体の閉止状態を示したものである。
【図19】第2実施形態に係る下側隙間閉鎖手段を示す部分縦断側面図であり、誤作動時の引き戸本体の開放状態を示したものである。
【図20】第2実施形態に係る下側隙間閉鎖手段を示す部分縦断側面図であり、誤作動により落下した可動枠を上位位置に復帰させている状態を示したものである。
【図21】第3実施形態の引き戸装置における引き戸本体の断面図である。
【図22】第4実施形態の引き戸装置における引き戸本体の断面図である。
【図23】第5実施形態の引き戸装置における引き戸本体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態について共通の箇所には共通の符号を付して対応させることにより重複する説明を省略する。なお、各図は概念図であり、細部構造の寸法などまで規定するものではない。
【0013】
(1)第1実施形態
図1は、本実施形態の引き戸装置を示す正面図である。図2は、図1のA−A’線で切った断面を模式的に表す概略断面図である。図2は、引き戸2が矢印P1方向に移動して開口が閉鎖された状態を示している。本実施形態の引き戸装置は、戸枠1、引き戸2、戸先シール部3及び中方シール部4を具備しており、構造物の開口を開閉させることができる。構造物としては、家屋やビル等の建築物を例示できる。開口は、人が出入りする開口(出入口)が挙げられるが、人が出入りしない換気用の開口でも良い。
【0014】
(1−1)戸枠1及び引き戸2
開口には、戸枠1が取り付けられている。戸枠1は、開口の開口幅の一端側に戸先縦枠11が設けられており、開口幅の他端側には中方立て12が設けられている。戸先縦枠11及び中方立て12は構造物に固定されている。中方立て12は構造物の一部である仕切り壁(戸袋)1Wの一端側に固定されており、仕切り壁1Wの他端側には戸尻縦枠13が固定されている。戸枠1は、構造物の開口の上側において開口幅方向(以下、「横方向」と呼称し、矢印P方向で示す。)に延設された上枠14と、開口の下側において横方向(矢印P方向)に延設された下枠15と、を有する。
【0015】
引き戸2は、互いに背向する第1表面211及び第2表面212をもつ引き戸本体21と、戸閉鎖時に中方立て12に対面可能な引き戸戸当たり22と、を有する。引き戸2は、構造物の開口の開口幅に沿って矢印P1、P2方向に往復運動して開口を開閉させる。引き戸2としては、往復運動して開口を開閉するものであれば、戸車式引き戸、上吊り式引き戸の他に、ふすま、障子などを含むことができる。引き戸としては、複数枚1組のものでも、単数のものでも良い。引き戸2の相手材は、中方立12である。
【0016】
引き戸本体21は正面視で横長の四角形状をなしており、引き戸2の主体をなす。引き戸本体21は、戸枠1の上枠14に対面する上辺部213と、戸枠1の下枠15に対面する下辺部214と、互いに対向する戸先部215と戸尻部216とをもつ。戸先部215は、引き戸本体21が矢印P1方向にスライドされて戸が閉鎖されるとき、先端となる部位をいう。戸尻部216は、引き戸本体21が矢印P1方向にスライドされて戸が閉鎖されるとき、後端となる部位をいう。引き戸本体21が矢印P2方向に移動して開口が完全に開放されたとき、引き戸2の戸尻部216が戸尻縦枠13に当接する。
【0017】
引き戸本体21の第2表面212側であって戸尻近傍には、高さ方向(図1の矢印PY方向)に断面コの字形状の溝217が設けられている。引き戸戸当たり22は、四角柱の一面に溝217と嵌合可能な突起部221を有し、四角柱の他の一面には、戸閉鎖時に中方立て12に対面する戸当たり側対面部222を有する。引き戸戸当たり22の突起部221は、引き戸本体21の溝217と嵌合されて、引き戸戸当たり22は、引き戸本体21に固定されている。
【0018】
中方立て12は、四角柱の一面に突起部121を有し、突起部121には、戸閉鎖時に引き戸戸当たり22の戸当たり側対面部222に対面する中方立て側対面部122を有する。
【0019】
戸先縦枠11は、横方向に沿った断面において、戸閉鎖時に引き戸本体21の第1表面211の先端部に対向する第1対向面111と、戸閉鎖時に引き戸本体21の第2表面212の先端部に対向する第2対向面112と、を有している。
【0020】
(1−2)戸先シール部3
戸先シール部3は、戸先縦枠11の第1対向面111に高さ方向(図1の矢印PY方向)に沿って取り付けられた第1戸先シール部31と、戸先縦枠11の第2対向面112に高さ方向(図1の矢印PY方向)に沿って取り付けられた第2戸先シール部32と、を有している。
【0021】
図3は、図1のA−A’線で切った断面を模式的に表す概略断面図であり、(A)は戸閉鎖直前の引き戸本体の戸先部付近を示し、(B)は戸閉鎖後を示す。
【0022】
第1戸先シール部31は、第1対向面111に固定される第1戸先固定部311と、第1戸先固定部311のうち戸閉鎖時に引き戸本体21の先端部が進入する側の部位(交差部)313から引き戸本体21の進入方向(矢印P1方向)に沿って延設されたシール材料で形成された第1戸先可撓ひれ部312と、を有している。
【0023】
第1戸先固定部311は、硬質の高分子材料(例えば、塩化ビニール、プラスチックなどの合成樹脂)で形成されている。第1戸先可撓ひれ部312のシール材は、第1戸先固定部311よりも軟質の高分子系の弾性材料(例えば、ゴム、樹脂など)であり、第1戸先可撓ひれ部312は、部位(交差部)313で第1戸先固定部311と一体に形成されている。戸を閉鎖するときに部位(交差部)313を介して第1戸先可撓ひれ部312が矢印PX2方向へ倒れ易くなっており、第1戸先可撓ひれ部312が引き戸本体21の進入を妨げることを抑制している。第1戸先固定部311と第1戸先可撓ひれ部312との間には、空間3g1が形成されており、第1戸先可撓ひれ部312の可撓変形性および弾性変形性が確保され、引き戸本体21の厚み方向(矢印PX方向)における変形代が確保されている。
【0024】
第2戸先シール部32は、第2対向面112に固定される第2戸先固定部321と、第2戸先固定部321のうち戸閉鎖時に引き戸本体21の先端部が進入する側の部位(交差部)323から引き戸本体21の進入方向(矢印P1方向)に沿って延設されたシール材料で形成された第2戸先可撓ひれ部322と、を有している。
【0025】
第2戸先シール部32は、部品点数の削減のため第1戸先シール部31と同一のものを用いている。つまり、第2戸先固定部321は、硬質の高分子材料で形成され、第2戸先可撓ひれ部322のシール材は、第2戸先固定部321よりも軟質の高分子系の弾性材料であり、第2戸先可撓ひれ部322は、部位(交差部)323で第2戸先固定部321と一体に形成されている。戸を閉鎖するときに部位(交差部)323を介して第2戸先可撓ひれ部322が矢印PX1方向へ倒れ易くなっており、第2戸先可撓ひれ部322が引き戸本体21の進入を妨げることを抑制している。第1戸先シール部31と同様に、第2戸先固定部321と第2戸先可撓ひれ部322との間には、空間3g2が形成されており、第2戸先可撓ひれ部322の可撓変形性および弾性変形性が確保され、引き戸本体21の厚み方向(矢印PX方向)における変形代が確保されている。
【0026】
図3(A)に示すように、戸閉鎖直前は、第1戸先可撓ひれ部312の表面312fが引き戸本体21の戸先部215に圧接して、その圧接部は第1戸先シールポイント3P1となっている。このとき、第2戸先可撓ひれ部322の表面322fが引き戸本体21の戸先部215にも圧接して、その圧接部は第2戸先シールポイント3P2となっている。このとき、第1戸先可撓ひれ部312の裏面312bと第1戸先固定部311との間には空間3g1が形成されており、第2戸先可撓ひれ部322の裏面322bと第2戸先固定部321との間には空間3g2が形成されている。
【0027】
引き戸本体21がさらに矢印P1方向に移動すると、第1戸先可撓ひれ部312は、部位(交差部)313を支点にして矢印PX2方向に倒れ込み、第1戸先シールポイント3P1は、第1戸先可撓ひれ部312側からみて引き戸本体21の進入方向(矢印P1方向)へずれていく。このとき、第2戸先可撓ひれ部322は、部位(交差部)323を支点にして矢印PX1方向に倒れ込み、第2戸先シールポイント3P2は、第2戸先可撓ひれ部322側からみて引き戸本体21の進入方向(矢印P1方向)へずれていく。
【0028】
図3(B)に示すように、引き戸本体21の戸先部215が戸先縦枠11に当接して戸が閉鎖されたとき、第1戸先可撓ひれ部312の表面312fは、引き戸本体21の第1表面211に圧接しており、その圧接部は第1戸先シールポイント3P1’となっている。このとき、第2戸先可撓ひれ部322の表面322fは、引き戸本体21の第2表面212に圧接しており、その圧接部は第2戸先シールポイント3P2’となっている。
【0029】
したがって、本実施形態の引き戸装置は、戸が完全に閉鎖されていなくてもシールポイントを有するので、戸の閉め方に横方向(矢印P方向)のばらつきがあっても、戸先縦枠11と引き戸本体21の戸先側の境界域を確実にシールすることができ、戸先側における遮音性を高めることができる。また、戸を閉鎖するときに、第1戸先可撓ひれ部312及び第2戸先可撓ひれ部322は、引き戸本体21の厚み方向(矢印PX方向)に倒れ込むので、引き戸本体21との摩耗が軽減され、第1戸先可撓ひれ部312及び第2戸先可撓ひれ部322との間で摩耗の偏りが生じにくい。
【0030】
さらに、戸閉鎖時に、引き戸本体21の第1表面211の戸先側は、第1戸先可撓ひれ部312の矢印PX1方向への弾性復元力を受けた状態で第1戸先可撓ひれ部312と圧接し、引き戸本体21の第2表面212の戸先側は、第2戸先可撓ひれ部322の矢印PX2方向への弾性復元力を受けた状態で第2戸先可撓ひれ部322と圧接している。つまり、引き戸本体21の先端部は、第1戸先可撓ひれ部312及び第2戸先可撓ひれ部322から相反する方向の弾性復元力を受けた状態で、第1戸先可撓ひれ部312及び第2戸先可撓ひれ部322と圧接している。そのため、戸閉鎖時に引き戸本体21の先端部が矢印PX1、PX2のいずれの方向にぶれても、引き戸本体21は、第1戸先可撓ひれ部312及び第2戸先可撓ひれ部322と圧接することができる。したがって、戸先縦枠11に対する引き戸本体21の取り付け性が必ずしも充分でなく、引き戸本体21の厚み方向(矢印PX方向)にばらつきがあっても、戸閉鎖時に戸先縦枠11と引き戸本体21の戸先側の境界域を確実にシールすることができ、戸先側における遮音性を高めることができる。
【0031】
(1−3)中方シール部4
中方シール部4は、戸閉鎖時における中方立て12と引き戸戸当たり22との境界域に高さ方向(図1の矢印PY方向)に沿って延設されている。中方シール部4は、中方立て12の中方立て側対面部122に高さ方向(図1の矢印PY方向)に沿って取り付けられた第1中方シール部41と、引き戸戸当たり22の戸当たり側対面部222に高さ方向(図1の矢印PY方向)に沿って取り付けられた第2中方シール部42と、を有している。
【0032】
図4は、図1のA−A’線で切った断面を模式的に表す概略断面図であり、(A)は戸閉鎖前の中方立てと引き戸戸当たりとの境界域を示し、(B)は戸閉鎖後を示す。
【0033】
図4(A)に示すように、第1中方シール部41は、中方立て側対面部122に固定される第1中方固定部411と、第1中方固定部411の端部のうち引き戸本体21から遠方側の端部413から引き戸本体21の厚み方向(矢印PX2方向)に沿って延設されたシール材料で形成された第1中方可撓ひれ部412と、を有している。
【0034】
第1中方固定部411は、硬質の高分子材料(例えば、塩化ビニール、プラスチックなどの合成樹脂)で形成されている。第1中方可撓ひれ部412のシール材は、第1中方固定部411よりも軟質の高分子系の弾性材料(例えば、ゴム、樹脂など)であり、第1中方可撓ひれ部412は、端部413で第1中方固定部411と一体に形成されている。第1中方固定部411と第1中方可撓ひれ部412の裏面412bとの間には、空間4g1が形成されており、第1中方可撓ひれ部412の可撓変形性および弾性変形性が確保され、横方向(矢印P方向)における変形代が確保されている。
【0035】
第2中方シール部42は、戸当たり側対面部222に固定される第2中方固定部421と、第2中方固定部421の端部のうち引き戸本体21側の端部423から引き戸本体21の厚み方向(矢印PX1方向)に沿って延設されたシール材料で形成された第2中方可撓ひれ部422と、を有している。
【0036】
第2中方シール部42は、部品点数の削減のため第2中方シール部41と同一のものを用いている。つまり、第2中方固定部421は、硬質の高分子材料で形成され、第2中方可撓ひれ部422のシール材は、第2中方固定部421よりも軟質の高分子系の弾性材料であり、第2中方可撓ひれ部422は、端部423で第2中方固定部421と一体に形成されている。第1中方シール部41と同様に、第2中方固定部421と第2中方可撓ひれ部422の裏面422bとの間には、空間4g2が形成されており、第2中方可撓ひれ部422の可撓変形性および弾性変形性が確保され、横方向(矢印P方向)における変形代が確保されている。
【0037】
図4(B)に示すように、第1中方シール部41の第1中方可撓ひれ部412は、戸閉鎖時には弓型に弾性変形した状態で、第1中方可撓ひれ部412の表面412fが引き戸戸当たり22の戸当たり側対面部222に圧接して、その圧接部は第1中方シールポイント4P1となっている。このとき、第1中方固定部411と第1中方可撓ひれ部412の裏面412bとの間に空間4g1を形成した状態で、第1中方固定部411に固定されていない第1中方可撓ひれ部412の先端部412aは、第1中方固定部411の引き戸本体21側の端部414及び第2中方可撓ひれ部422の表面422fに圧接している。
【0038】
第2中方シール部42の第2中方可撓ひれ部422は、戸閉鎖時には弓型に弾性変形した状態で、第2中方可撓ひれ部422の表面422fが中方立て12の中方立て側対面部122に圧接して、その圧接部は第2中方シールポイント4P2となっている。このとき、第2中方固定部421と第2中方可撓ひれ部422の裏面422bとの間に空間4g2を形成した状態で、第2中方固定部421に固定されていない第2中方可撓ひれ部422の先端部422aは、第2中方固定部421の引き戸本体21から遠方側の端部424及び第1中方可撓ひれ部412の表面412fに圧接している。
【0039】
第1中方可撓ひれ部412の表面412fと第2中方可撓ひれ部422の表面422fとの圧接部は、第3中方シールポイント4P3となっている。本実施形態では、水平断面(図1のA−A’線で切った開口幅方向の断面)で引き戸本体21の厚み方向(矢印PX方向)に、第1中方シールポイント4P1、第2中方シールポイント4P2及び第3中方シールポイント4P3が形成されている。つまり、本実施形態では、戸閉鎖時に引き戸本体21の厚み方向(矢印PX方向)にシールポイントが複数あるので、中方立て12と引き戸戸当たり22の境界域は良好に塞がれ、中方立て12と引き戸戸当たり22の境界域におけるシール性、ひいては中方立て12と引き戸戸当たり22の境界域における遮音性が確保される。
【0040】
第1中方シール部41の第1中方可撓ひれ部412の中心を横方向(矢印P方向)に沿って通る第1中心線N1と、第2中方シール部42の第2中方可撓ひれ部422の中心を横方向(矢印P方向)に沿って通る第2中心線N2とは、引き戸本体21の厚み方向(矢印PX方向)において所定量ΔN3ずれている。所定量ΔN3は、第1中方可撓ひれ部412の先端部412aと第2中方可撓ひれ部422の先端部422aとが戸閉鎖時に圧接可能な距離である。このため、第1中方可撓ひれ部412及び第2中方可撓ひれ部422は、戸閉鎖時に互いに弾性衝突して横方向(矢印P方向)に反発することを防止することができ、第1中方可撓ひれ部412及び第2中方可撓ひれ部422は、その先端部412a及び先端部422aで互いに圧接することができる。
【0041】
戸閉鎖時の第1中方固定部411と第2中方固定部421の横方向(矢印P方向)距離LKは、第1中方可撓ひれ部412が弓型に弾性変形したときの横方向(矢印P方向)の長さと第1中方固定部411の厚みの合計、又は、第2中方可撓ひれ部422が弓型に弾性変形したときの横方向(矢印P方向)の長さと第2中方固定部421の厚みの合計と略同一である。そのため、第1中心線N1と第2中心線N2とが引き戸本体21の厚み方向(矢印PX方向)にずれていない場合と比べて、距離LKを短くすることができる。つまり、戸閉鎖時における中方立て12と引き戸戸当たり22の境界域の隙間を少なくするとともに、第1中方可撓ひれ部412の弾性変形量と第2中方可撓ひれ部422の弾性変形量とが良好に確保される。そのため、中方立て12と引き戸戸当たり22の境界域における隙間のシール性を向上させることができ、中方立て12と引き戸戸当たり22の境界域における遮音性を高めることができる。
【0042】
次に、中方シール部4の変形形態について説明する。変形形態の引き戸装置は、第1実施形態の引き戸装置と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位には共通の符号を付し、異なる部分を中心に説明する。
【0043】
本変形形態は、第1実施形態と比べて中方シール部4の配置が異なり、中方シール部4の材質、形状等は第1実施形態と同じである。図5は、変形形態に係り、図1のA−A’線で切った断面を模式的に表す概略断面図であり、(A)は戸閉鎖前の中方立てと引き戸戸当たりとの境界域を示し、(B)は戸閉鎖後を示す。
【0044】
図5(A)に示すように、第1中方シール部41は、中方立て側対面部122に固定される第1中方固定部411と、第1中方固定部411の端部のうち引き戸本体21側の端部413から引き戸本体21の厚み方向(矢印PX1方向)に沿って延設されたシール材料で形成された第1中方可撓ひれ部412と、を有している。第2中方シール部42は、戸当たり側対面部222に固定される第2中方固定部421と、第2中方固定部421の端部のうち引き戸本体21から遠方側の端部423から引き戸本体21の厚み方向(矢印PX2方向)に沿って延設されたシール材料で形成された第2中方可撓ひれ部422と、を有している。
【0045】
図5(B)に示すように、第1中方シール部41の第1中方可撓ひれ部412は、戸閉鎖時には弓型に弾性変形した状態で、第1中方可撓ひれ部412の表面412fが第2中方可撓ひれ部422の表面422fに圧接して、その圧接部は第4中方シールポイント4P4となっている。このとき、第2中方シール部42の第2中方可撓ひれ部422は弓型に弾性変形しており、第1実施形態と同様に、第1中方固定部411と第1中方可撓ひれ部412の裏面412bとの間に空間4g1が形成され、第2中方固定部421と第2中方可撓ひれ部422の裏面422bとの間に空間4g2が形成されている。
【0046】
本変形形態では、第1中方可撓ひれ部412の中心を横方向(矢印P方向)に沿って通る第1中心線N1と、第2中方可撓ひれ部422の中心を横方向(矢印P方向)に沿って通る第2中心線N2と、は略一致しており、引き戸本体21の厚み方向(矢印PX方向)にずれていない。この場合、第1中方可撓ひれ部412及び第2中方可撓ひれ部422の弾性変形性が高まり、第1中方可撓ひれ部412及び第2中方可撓ひれ部422の横方向(矢印P方向)における変形代が増加する。そのため、中方立て12と引き戸戸当たり22の境界域における隙間のシール性を向上させることができ、中方立て12と引き戸戸当たり22の境界域における遮音性を高めることができる。
【0047】
(1−4)その他
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施可能である。例えば、引き戸本体21は、吊り戸にすることができる。吊り戸は、戸の下辺部が溝やレールに案内されないので、戸閉鎖時に引き戸本体21の厚み方向にぶれる可能性がある。そのため、戸先シール部3及び中方シール部4による本発明の効果がより発揮される。
【0048】
また、第1戸先可撓ひれ部312及び第2戸先可撓ひれ部322は、その表面に滑面処理を施すことができる。戸閉鎖時の引き戸本体21との抵抗を抑制することができる。滑面処理は、例えば、ポリウレタン系樹脂のコーティング処理などが挙げられる。
【0049】
(2)第2実施形態
第2実施形態の引き戸装置は、第1実施形態の引き戸装置と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位には共通の符号を付し、異なる部分を中心に説明する。本実施形態では、引き戸本体21の上辺部213側の上側隙間を閉鎖する上側隙間閉鎖手段5と、引き戸本体21の下辺部214側の下側隙間を閉鎖する下側隙間閉鎖手段6と、が設けられていることに特徴がある。
【0050】
(2−1)上側隙間閉鎖手段5
図11は、第2実施形態の引き戸上部シャッタ装置を備えた引き戸装置を示す正面図であり、図6(A)は、シャッタ格納状態で引き戸を閉止する引き戸装置の上部戸先側を示す正面図、(B)は側面図である。図示の引き戸装置は、戸枠1の上枠14に固定した引き戸レール511に引き戸本体21を図中左右の開閉方向に移動自在に懸架し、引き手513に手を掛けて引き戸本体21を移動して戸枠1と仕切り壁(戸袋)5Wで囲んだ開口部5Sを開閉すると同時に、引き戸上部シャッタ装置5Rでシャッタ515を昇降させて引き戸本体21と上枠14との間に開いた上部隙間5gを開閉する構造になっている。
【0051】
図示例の引き戸装置において、引き戸レール511は、アルミ製の戸車用ガイドレールで、略角パイプ状をなすレール本体511aの下面中央に長さ方向に沿って逃げ溝511bを設け、逃げ溝511bを挟んだ両側に戸車518が係合する走行リブ511Cを平行に列設する。一方、上面の両側縁には、細長い右勝手と左勝手用に一対の差込溝511d、511eを平行に凹設している。そこで、引き戸レール511は、逃げ溝511bを下に向けて戸枠1の上枠14に固定する。
【0052】
引き戸本体21の上部側には、上端面の戸先側と戸尻側にそれぞれ細長い取付溝512aを凹設している。引き戸本体21の下部側には、下端面の長さ方向に沿って1つの取付溝512bを凹設している。上部の戸先側と戸尻側の取付溝512aには、それぞれ戸車ユニット5rの細長に支持ブラケット組立体514が嵌め込まれる。戸車ユニット5rは、図7に示すように、ベースの支持ブラケット組立体514上に戸車ブラケット516を取り付けて引き戸本体21の上端面より高く搭載し、それら戸車ブラケット516に横架した一対の横車軸517でそれぞれ戸車518を回転自在に枢支する。一方、下部側の取付溝512bには、図11に示すように、シャッタ520を昇降自在に取り付けた引き戸下部シャッタ装置のチャンネル型ケースが嵌め込まれている。引き戸下部シャッタ装置は、下側隙間閉鎖手段6に相当するので、(2−2)節で詳説する。
【0053】
引き戸本体21は、図6に示すように、戸車518を引き戸レール511の走行リブ511cに係合して開閉方向に移動自在に懸架し、図11に示すように、引手513に手を掛けて引き戸本体21を移動させると、開口部5Sが開閉するように吊り込んでいる。図示例の引き戸装置では、この引き戸本体21を閉じるとき、引き戸上部シャッタ装置5Rが作動し、シャッタ515を自動的に降ろして引き戸本体21の上部と戸枠1の上枠14との間に開いた上部隙間5gを遮蔽する構造になっている。
【0054】
引き戸上部シャッタ装置5Rは、図6に示すように、シャッタ515を格納して昇降可能に支持するシャッタケース525(支持手段)と、シャッタ515の移動を案内するガイド手段530と、シャッタ515を動かす作動手段535を備えた構成になっている。
【0055】
シャッタケース525は、アルミの押し出し材を用いて、図6、図9および図10に示すように、全体を引き戸本体21の図中左右の横幅に対応した長さの略コ形に成形し、対向する側板部519、521の一側側板部519には、図中下端寄りに、断面L状のレール部519aを、突端を上板部522に向け長さ方向に沿って突設する一方、上板部522には、レール部519aの突端に向けて突出するガイドリブ522aをレール部519aと平行に列設し、レール部519aとの間に一側側板部519の内壁面に沿ってガイド溝529を形成する。また、上板部522は、一側側板部519の外側へ断面L形の鍔状に延びる取付リブ522bをガイドリブ522aと平行に列設している。更に、一側側板部519には、長さ方向両端に取付穴523、524を設けている。
【0056】
シャッタ515は、ゴムや樹脂等の弾性材でつくり、全体を、シャッタケース525の対向側板部519、521に対応して図中左右に横長で、図中上下の縦に幅広な帯状に成形する。シャッタ515には、幅方向片側の肉厚な基端部に長さ方向に沿って一段薄肉な部分を凹設して帯状溝515aを形成する一方、その基端部側から図中下方の先端縁に向かうに従い薄くして先端縁側を撓み可能に成形する。更に、シャッタ515には、帯状溝515a内の長さ方向両端寄りでシャッタケース525の取付穴523、524と対応する位置にピン穴526、527を設けると共に、ピン穴527と片側端縁との間にもピン穴528を設けている。
【0057】
ガイド手段530は、一対の固定ガイド540、545と可動ガイド550とで構成されている。固定ガイド540、545は、ガイド板531、532とガイドピン533、534を備えている。ガイド板531、532は、樹脂製で、シャッタケース525のガイド溝529に嵌め込み可能に外形をやや横長で矩形板状につくる一方、内側の対角位置にカム穴536、537と弾性止め片538、539を一体に成形する。カム穴536、537は、長さ方向片側にガイドピン533、534の軸部533a、534aを係合する掛止穴部536a、537aを設けると共に、掛止穴部536a、537aから図中下向きに連なる穴縁を傾斜させてカム面536b、537bを形成する。弾性止め片538、539は、ガイド板531、532にU形の切り込みを入れて撓み可能にした薄板片部531a、532aを備えると共に、薄板片部531a、532aの端縁に掛止突部531b、532bを凸設している。一方、ガイドピン533、534は、軸部533a、534aの中間に環状鍔部533b、534bを設けている。
【0058】
可動ガイド550は、ガイド板541と押圧ピン542を備えている。ガイド板541は、樹脂製で、シャッタケース525のガイド溝529に摺動自在に係合するように外形がやや横長の矩形板状につくる一方、内側に横に並べて押圧ピン542の軸部542aを係合する押穴543と、円形の着磁穴544を並設すると共に、一側側端部541aに着磁穴544に通ずる細い磁石投入口546を設ける。押穴543は、押圧ピン542の軸部542aが係合可能な穴幅で図中上下の幅方向に長い逃げ穴になっている。押圧ピン542は、軸部542aの中間に環状鍔部542bを設けている。
【0059】
そこで、ガイド手段530は、固定ガイド540、545におけるガイドピン533、534の軸部533a、534aの一端と、可動ガイド550における押圧ピン542の軸部542aの一端をシャッタ515のピン穴526、527、528に嵌着し、各々の鍔部533b、534b、542bを帯状溝515aに嵌め込んで軸支する。一方、ガイドピン533、534の軸部533a、534aの他端を、ガイド板531、532のカム穴536、537の掛止穴部536a、537aに係合して固定ガイド540、545をシャッタ515に掛け止め、押圧ピン542の軸部542aの他端を、ガイド板541の押穴543に係合して可動ガイド550をシャッタ515に掛け止める。それから、ガイド板531、532、541を順次、シャッタケース530のガイド溝529に嵌め込んでレール部519a上をスライドさせながら、シャッタ515をシャッタケース525内に差し込んでから、弾性止め片538、539の掛止突部531b、532bが取付穴523、524の位置に至ると、薄板片部531a、532aの弾性力で掛止突部531b、532bが押されて取付穴523、524に嵌り込み、固定ガイド540、545のガイド板531、532が一側側板部519に固定される。そして、固定ガイド540、545のガイドピン533、534に掛けてシャッタ515をシャッタケース525に吊持し、図10に示すように、シャッタユニット5Cが組み立てられる。なお、ガイド手段530の可動ガイド550は、シャッタケース525のガイド溝529にスライド自在に係着している。
【0060】
シャッタユニット5Cは、可動ガイド550を戸先側に向けて、図6および図12に示すように、引き戸レール511の差込溝511dに取付リブ522bを差し込み、一側側板部519を引き戸レール511の側面に組み付ける。そこで、シャッタユニット5Cは、引き戸本体21が開いているときは、固定ガイド540、545のガイドピン533、534がカム穴536、537の掛止穴部536a、537aに係合し、シャッタ515を、シャッタケース525内に格納して上部隙間5gを開放する高さの第1位置に吊持する。一方、閉時、引き戸本体21が閉方向5Xに移動して開口部5Sを全閉する直前の所定始動位置に至ると、引き戸上部シャッタ装置5Rは、作動手段535を作動してシャッタ515を引き戸本体21に連動して閉方向5Xに移動しながら下降する構成になっている。
【0061】
作動手段535は、戸車ユニット5rに備えた第1マグネット555と、シャッタユニット5Cの可動ガイド550に備えた第2マグネット560とで構成する。第1マグネット555は、図8に示すように、一対の矩形ブロック状をなし、第2マグネット560より強磁性の永久磁石で、右勝手と左勝手用にホルダ565に設けた一対の嵌合穴565aに嵌め込んで保持する。そこで、作動手段535は、ホルダ565を、図7に示すように、戸先側戸車ユニット5rの戸車ブラケット516上にあって、戸車510の戸先側前方に組み付けて第1マグネット555を搭載する。一方、第2マグネット560は、図9に示すように、コイン状の永久磁石で、可動ガイド550の磁石投入口546から着磁穴544へ押し込み、図10に示すように、着磁穴544から外部に臨ませた状態でガイド板541に組み込む。すると、作動手段535は、シャッタユニット5Cを、可動ガイド550を戸先側に向けて、図6に示すように、引き戸レール511の側面に組み付けた状態において、引き戸本体21を開閉するときに第1マグネット555と第2マグネット560とが横に並列する高さ位置で引き違うように構成されている。
【0062】
従って、作動手段535は、引き戸本体21が閉方向5Xに移動し、戸先側戸車ユニット5rに搭載の第1マグネット555がシャッタ515側の第2マグネット560と引き違うとき、即ち、開口部5Sを全閉する直前の所定始動位置に至ると、強磁性の第1マグネット555が第2マグネット560を磁気的に吸引し、引き戸本体21の移動に従い可動ガイド550のガイド板541をシャッタケース530のガイド溝529に沿って閉方向5Xへ直進させて、押穴543の穴縁で押圧ピン542を押してシャッタ515を始動させる構成になっている。
【0063】
一方、ガイド手段530は、シャッタ515が閉方向5Xに始動すると、そのシャッタ515の移動に従い、固定ガイド540、545のガイドピン533、534がカム穴536、537の掛止穴部536a、537aから外れてカム面536b、537b上をその斜面に沿って落下し、このカム面536b、537bの案内でガイドピン533、534と一体のシャッタ515を、始めシャッタケース525内に格納して上部隙間5gを開放した高さの第1位置から、引き戸本体21と平行な姿勢で降下させて上部隙間5gを遮蔽する高さの第2位置に向けて案内する構成になっている。
【0064】
さて、上記引き戸装置において、引き戸本体21は、図6に示すように、引き戸レール511の走行リブ511cの案内で戸車518を転動しながら閉方向5Xに移動して開口部5Sを閉じるが、この閉時、引き戸上部シャッタ装置5Rは、引き戸本体21が開口部5Sを全閉する直前の所定始動位置に至ると、即ち、図13および図14に示すように、引き戸本体21側の第1マグネット555がシャッタ515側の第2マグネット560と引き違うとき、強磁性の第1マグネット555が第2マグネット560を磁気的に吸引し、引き戸本体21の移動に従い可動ガイド550のガイド板541をシャッタケース530のガイド溝529に沿って閉方向5Xへ直進させて押穴543の穴縁で押圧ピン542を押してシャッタ515を始動させる。
【0065】
シャッタ515が閉方向5Xに動き出すと、そのシャッタ515の移動に従い、固定ガイド540、545のガイドピン533、534がカム穴536、537の掛止穴部536a、537aから外れてカム面536b、537bの上を斜面に沿って落下し、このカム面536b、537bの案内でガイドピン533、534と一体のシャッタ515を、シャッタケース525内に格納して上部隙間5gを開放した高さの第1位置から引き戸本体21と平行な姿勢を保持して下降する。それから更に引き戸本体21を閉方向5Xに移動し、戸先側木口512cが戸枠1の戸先縦枠11に当って開口部5Sを全閉するとき、シャッタ515を、引き戸本体21と平行に並走しながら、図15および図16に示すように、その引き戸本体21の上端面に先端縁515bを着地させて上枠14との間の上部隙間5gを遮蔽し、上部隙間5gから音や臭いが漏れないように密閉することができる。
【0066】
しかも、閉時に上部隙間5gを遮蔽するとき、引き戸上部シャッタ装置5Rでは、シャッタ515を、シャッタケース525内に格納して上部隙間5gを開放した高さの第1位置から、引き戸本体21と平行な姿勢を保持して引き戸本体21と平行に並走しながら降下し、その引き戸本体21の上に先端縁515bを着地させて上部隙間5gを遮蔽するため、引き戸本体21の閉止途中に、シャッタ515の先端縁515bが引き戸本体21の上端面を擦ることがなく、その結果、引き戸を擦ることによる騒音の発生や、シャッタ515が劣化して耐久性が低下することを防止することができる。
【0067】
全閉した開口部5Sを再び開けるとき、引き戸本体21を開方向5Yに引いて移動すると、引き戸上部シャッタ装置5Rでは、図16に示すように、作動手段535の第1マグネット555が横に並んだ第2マグネット560を磁気的に吸引して可動ガイド550のガイド板541をシャッタケース530のガイド溝529に沿って開方向5Yへ直進させて押穴543の穴縁で押圧ピン542を押してシャッタ515を同方向に動かす。シャッタ515が開方向5Yに動き出すと、そのシャッタ515の移動に従い、固定ガイド540、545のガイドピン533、534がカム穴536、537のカム面536b、537bの上をその斜面に沿って上昇して掛止穴部536a、537aに係合し、シャッタ515を、上部隙間5gを開放した高さの第1位置へ持ち上げてシャッタケース525内に格納する。
【0068】
(2−2)下側隙間閉鎖手段6
本実施形態の下側隙間閉鎖手段6を構成する部材は、アルミニウム、鉄、真ちゅうなどの金属材料又は硬質合成樹脂材料で製作することができる。図17は、可動枠が正常な上位位置にあるドアの開放状態を示し、図18は可動枠が正常な下位位置にあるドアの閉止状態を示す。
【0069】
これら図17及び図18において、21は引き戸本体、11は戸先縦枠、65は引き戸本体21の先端面が当接する戸先縦枠11に固着されたシール材、66は床面又は下枠15などの不動部材をそれぞれ示す。62は引き戸本体21の下辺部214に沿ってねじ67又は溶接等により取り付けられた中空の固定枠である。図示例の固定枠62は横断面がほぼコ字状の型材で作られているが、固定枠62の形状は任意に形成することができる。また、固定枠62は引き戸本体21と一体に形成することもできる。そして、前記の固定枠62に下方から出入り可能に嵌め込まれている可動枠63は、横断面がほぼπ字状に形成されている。可動枠63の形もこの形に限るものではない。可動枠63の両脚部63a、63bの下方部分にはその長さ方向に沿って2本のゴム状弾性材料製の弾性シール611、611が固着してある。
【0070】
前記の固定枠62と可動枠63との間は、固定枠62及び可動枠63の長さ方向に適当な間隔を隔てて設けた複数(図示例では2組)の案内手段68で可動に接続してある。図示例の案内手段68は、固定枠62の両側板62a、62a間に固定枠62の長さ方向に適当な間隔を隔てて設けた水平な複数のスライドピン68a、68aと可動枠63の両脚部63a、63aの対応部分に設けられスライドピン68a、68aに可動に嵌まり合う傾斜案内孔68b、68bとから成る。換言すれば、スライドピン68a、68aと傾斜案内孔68b、68bは、固定枠62に対し斜め上下に移動する可動枠63の案内手段68、68を構成する。少なくとも2つの可動枠案内手段68、68は、固定枠62並びに可動枠63の長さ方向に適当な間隔を隔てて設けてあり、これによって可動枠63が上下動するに際しほぼ水平状態を保って移動することを可能にする。なお、案内手段68は前記の例に限るものではない。
【0071】
次に、可動枠63を固定枠62に対し上下動させる機構について説明する。固定枠62の後方の内部空間にはA字状その他任意形状の作用部材69が可動枠63の内部空間に収まるようにして前述のスライドピン68aを兼ねる横軸の回りに回動できるように枢着してある。
【0072】
図17で、引き戸本体21を矢印6P方向に移動させて閉止しようとすると、閉止動作の最終段階で、床面又は下枠15などの不動部材66の所要個所に設けられたピン状その他任意形状の対応部片610にA字状の作用部材69における長脚側の69aが衝合し、作用部材69を矢印6Q方向に回転させる。ここに、作用部材69の頂部69cで上位位置に拘束されていた可動枠63の天板部63bが開放されるので、固定枠62に対し上位位置に存していた可動枠63は、案内手段68、68によってほぼ水平な状態を保持されたまま自重で下位位置に降下することになり、図18に示すように、引き戸本体21の下辺部214と床面等66との間を可動枠63の弾性シール611によって密封する。引き戸本体21を開放させると、対応部片610に対し作用部材69の短脚側の衝合片69bが衝合して、作用部材69を矢印6Qと逆方向に回動させるので、可動枠63は、作用部材69の頂部69cで押し上げられて、図17の状態、すなわち上位位置に復帰することになる。なお、符号69dは作用部材69の長脚側の衝合片69aに埋設した重錘を示す。
【0073】
さらに、固定枠62における任意の個所、例えば、作用部材69の取付け位置のやや前方に取り付けられた水平の軸体612の軸心の回りに回転可能にリフトカム613が設けられている。このリフトカム613は、固定枠62に出入り可能に嵌め込まれた可動枠63の内部空間に位置させて設けてあるが、他の任意の位置に設けてもよい。軸体612は、可動枠63に設けた逃げ614を貫通させてあり、固定枠62に対し可動枠63が上述の案内手段68、68により上下に変位するに際し、可動枠63の所要の変位の邪魔にならないようにしてある。図示例の逃げ穴614は、可動枠63の脚部63a、63aに対し上述の案内手段68における傾斜案内孔68bと平行させるようにして設けた傾斜貫通孔として示してあるが、逃げ穴の形状や形式はこれに限るものではなく、任意に設計することができる。リフトカム613は、後に詳述するが、引き戸本体21の開閉移動により、上記の対応部片610又は同様に床面その他の不動部材66に別に設けた対応部片に当接させると共に、可動枠63に適当に設けたストツパ615で誘導させて、誤作動により下位位置に降下した可動枠63(図19参照)を上位位置に復帰させるためのものである。なお、リフトカム613に設けた切込み613aは、リフトカム613の本体にばね作用を付与するためのもので、これにより、リフトカム613が対応部片610又はストツパ615に衝接した際に、その衝撃を緩衝させるところとする。
【0074】
図19は、引き戸本体21の開放時に誤作動により可動枠63が下位位置に落下した状態を示している。すなわち、振動その他の原因により、A字状の作用部材69が横向きとなって、誤作用部材69による可動枠63の上位位置に対する拘束状態が解かれたものである。
【0075】
その際に、引き戸本体21を閉止方向、すなわち矢印6R方向に移動させる。引き戸本体21の移動に伴って対応部片610がリフトカム613に当接する。図20に示すように、固定枠62に枢着されたリフトカム613は、対応部片610に押されて矢印6S方向に回動する一方で、可動枠63に設けられたストツパ615で拘束誘導されるので、案内手段68、68による案内変位に伴って、固定枠62に対し可動枠63を正常な上位位置に復帰させ、作用部材69が自重により矢印6T方向に回転してその頂部69cで可動枠63の天板部63bを拘束定位させる。ここに、引き戸本体21を開放方向に戻せば、リフトカム613は元の位置に復帰し、図17に示すような正常なドアの開放状態が得られる。なお、可動枠63が正常な上位位置に存する際、リフトカム613と対応部片610は、互いに干渉しない位置関係にあることは勿論である。
【0076】
本実施形態の下側隙間閉鎖手段6によれば、引き戸本体21の開放時、上位位置を占めるべき可動枠63が誤作動により落下した場合、簡単な引き戸本体21の開閉操作だけで可動枠63を簡単に正常な上位位置に復帰させることができる。
【0077】
(3)第3実施形態
第3実施形態の引き戸装置は、第1実施形態の引き戸装置及び第2実施形態の引き戸装置と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位には共通の符号を付し、異なる部分を中心に説明する。本実施形態では、第1実施形態の引き戸装置及び第2実施形態の引き戸装置と比べて引き戸本体21に特徴がある。
【0078】
第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態を組み合わせた引き戸装置は、特に遮音性に優れる。この場合、引き戸本体21の戸先部215側の隙間が戸先シール部3によって閉鎖され、戸尻部216側の隙間が中方シール部4によって閉鎖され、上辺部213側の隙間が上側隙間閉鎖手段5によって閉鎖され、下辺部214側の隙間が下側隙間閉鎖手段6によって閉鎖され、さらに、以下に後述するように引き戸本体21自体の遮音性が高められている。そのため、引き戸装置全体として遮音性に優れる。
【0079】
第3実施形態について、図21を参照しつつ説明する。図21は、引き戸本体21の厚み方向に沿って切断した断面を示す。本実施形態では、引き戸本体21は、換気遮音両立ドア71である。換気遮音両立ドア71は、建築物、車両、船体等の構造物の第1室711と第2室712とを連通させる開口に据え付けられるドアであり、室壁との間に換気通路を形成する。換気通路は、下枠15とドア71の底面との間に形成された下換気通路716と、上枠14とドア71の上面との間に形成された上換気通路718とで形成されている。第1室711はトイレ室、居室等、ダイニング室、音楽室が挙げられる。第2室712としては隣設する室、廊下が挙げられる。
【0080】
ドア71は、第1外装部材791および第2外装部材792と、中間仕切部材73と、入力音に対して音減衰性を有する中間遮音シート74と、第1桟部材75と、第2桟部材76とを備えている。
【0081】
第1外装部材791および第2外装部材792は、空間72を介して互いに対向する。中間仕切部材73は、第1外装部材791と第2外装部材792との間の空間72に位置すると共に、第1外装部材791の第1内面791iに対向する第1対向面731と、第2外装部材792の第2対向面792iに対向する第2対向面732とを有する。中間遮音シート74は、中間仕切部材73のうち第1室711側の第1対向面731に非接着状態または弱接触状態で被覆されており、入力音に対して音減衰性を有する。
【0082】
第1桟部材75は、中間遮音シート74が被覆された中間仕切部材73の第1対向面731と第1外装部材791との間に架設されている。第2桟部材76は、中間仕切部材73の第2対向面732と第2外装部材792との間に架設されている。第1桟部材75および第2桟部材76は、互いに対向している。
【0083】
図21に示すように、第1外装部材791は高さ方向に沿って延設されており、第1室711に対面する第1外面791pと、第1室711に背向する第1内面791iとを有する。第2外装部材792は高さ方向に沿って延設されており、第2室712に対面する第2外面792pと、第2室712に背向する第2内面792iとを有する。第1外装部材791および第2外装部材792の材質としては、木材系が好ましいが、硬質樹脂等の樹脂系、アルミニウム合金等の金属系でも良い。
【0084】
図21に示すように、中間仕切部材73は、ドア71の内部において、空間72を第1空間721と第2空間722とに仕切る。第1空間721は、第1外装部材791の第1内面791iと中間仕切部材73の第1対向面731との間に形成されている。第2空間722は、第2外装部材792の第2内面792iと中間仕切部材73の第2対向面732との間に形成されている。ドア71の厚み方向において、第1空間721の空間厚みをt1とし、第2空間722の空間厚みをt2とするとき、t1/t2=0.7〜1.3の範囲内、0.8〜1.2の範囲内、0.9〜1.1の範囲内が好ましい。ドア71の強度上の均衡性を高め、ドア71の反りを抑制するためである。但し上記した範囲に限定されるものではない。ここで、中間仕切部材73の材質は木材系が好ましいが、硬質樹脂等の樹脂系でも良く、高剛性化を考慮してアルミニウム合金等の金属系でも良い。
【0085】
なお、第1外装部材791の第1外面791pに対して垂直方向から投影するときに、第1外装部材791の投影面積をS1とし、第2外装部材792の投影面積をS2とし、中間仕切部材73の投影面積をS3とするとき、S1=S2、S1≒S2、S3/S1=0.6〜1.0の範囲、0.7〜1.0の範囲とすることができる。
【0086】
中間遮音シート74は、中間仕切部材73の第1対向面731の全体またはほぼ全体に対面するように第1対向面731に非接着状態または弱接触状態で被覆されている。中間遮音シート74は、粉粒体をバインダで結合させたシート、樹脂を基材とする樹脂系シート、紙材を基材とする紙系シート、布材を基材とする布系シート、ゲル物質を内蔵するシート、流動体としての気体を内蔵するシートのうちのいずれか1つで形成されている。これらの中間遮音シート74は、入力音に対して高い音減衰性を果たすことができる。
【0087】
第1桟部材75は、第1外装部材791の第1内面791iと第2外装部材792の第2内面792iとの間において、即ち、中間仕切部材73の第1対向面731と第1外装部材791の第1内面791iとの間において水平方向に沿って架設されている。第2桟部材76は、第1外装部材791の第1内面791iと第2外装部材792の第2内面792iとの間において、即ち、中間仕切部材73の第2対向面732と第2外装部材792の第2内面792iとの間において水平方向に沿って架設されている。第1桟部材75および第2桟部材76は、中間仕切部材73を介して互いに対向しており、ドアを補強する芯部材として機能し、ドア71の剛性を高める。
【0088】
本実施形態によれば、中間遮音シート74は一枚または複数の遮音シートを形成しており、挟持遮音部分740と露出遮音部分745とを連設状態に有する。第1桟部材75のうち中間遮音シート74側の平坦な端面75eには、接着剤が塗布されている。よって、接着剤により第1桟部材75の端面75eと挟持遮音部分740とが接着されている。故に、挟持遮音部分740は、中間仕切部材73を介して第1桟部材75と第2桟部材76とで挟持されており、拘束性が高い。
【0089】
これに対して、露出遮音部分745は、第1桟部材75の端面75eと第2桟部材76の端面76eとで挟持されておらず、第1空間721に対面しつつ、第1空間721に露出する。ここで、第1空間721に対面する露出遮音部分745と中間仕切部材73とは接着剤により接合されていない非接着状態である。よって露出遮音部分745の拘束性は低い。このように拘束性が低い露出遮音部分745は、挟持遮音部分740よりも、高い振動自由性、高い変位自由性を有する。
【0090】
本実施形態によれば、図21に示すように、第1外装部材791と第2外装部材792との間には、第1空間721および第2空間722からなる空間72が形成されている。空間72には空気が存在している。結果として、入力音がドア71に伝搬するとき、入力音がドア71を厚み方向に直接伝搬することが空間72の空気により抑えられる。剛体に比較して空気は、入力音の伝搬性が低いためである。
【0091】
しかしながら、当該ドア71の内部には、芯材として機能する第1桟部材75および第2桟部材76が配置されており、ドア71が補強されている。このため、空気よりも剛性が高い芯部材として機能する第1桟部材75および第2桟部材76を介して、入力音がドア71の内部において厚み方向に伝搬されるおそれがある。この点について本実施形態によれば、前述したように、第1桟部材75と中間仕切部材73との間には、入力音に対して音減衰性を有する中間遮音シート74が配置されている。特に、中間遮音シート74のうち挟持遮音部分740が、中間仕切部材73を介して第1桟部材75と第2桟部材76とで挟持されている。
【0092】
このため、ドア71の芯材として機能する第1桟部材75および第2桟部材76を介しての入力音の伝搬は、挟持遮音部分740により効果的に抑えられる。すなわち、第1室711が音発生室であるとき、第1桟部材75から直接的に第2桟部材76に向かう入力音の伝搬は、音減衰性をもつ挟持遮音部分740により減衰されて効果的に抑えられる。殊に図21に示すように、中間遮音シート74は、中間仕切部材73において、第2室712側の第2対向面732ではなく、音発生室である第1室側の第1対向面731に配置されているため、音伝搬の減衰に貢献できる。
【0093】
なお、第2室712が音発生室であるときであっても、同様に、第2桟部材76から直接的に第1桟部材75に向かう入力音の伝搬は、音減衰性をもつ挟持遮音部分740により減衰されて効果的に抑えられる。
【0094】
更に本実施形態によれば、前述したように、中間遮音シート74のうち露出遮音部分745が、第1桟部材75と第2桟部材76とで挟持されておらず、第1空間721に対面しつつ、第1空間721に露出している。この場合、露出遮音部分745は、ドア71の内部の第1空間721に露出しつつも、中間仕切部材73の第1対向面731に接合されていない。このため露出遮音部分745は、これの厚み方向に両側から拘束されている場合に比較して、拘束性が低いため、高い振動自由性、高い変位自由性を有する。
【0095】
このため、入力音がドア71の内部において空間72を介して伝搬されるとき、空間72を介して伝搬される入力音により露出遮音部分745における微振動の繰り返しが期待できる。これにより音の伝搬エネルギーが吸収され、空間72を介しての音の伝搬が抑えられる。このように本実施形態によれば、ドア71が閉鎖されているときであっても、ドア71の厚み方向における遮音性が向上する。
【0096】
更に、図21に示すように、室壁に装備されている下枠15とドア71の下面との間に、下換気通路716を形成する。室壁に装備されている上枠14とドア71の上面との間に、上換気通路718を形成する。このため、ドア71が閉鎖されているときであっても、下換気通路716および上換気通路718を介して、第1室711と第2室712との間における換気が良好に行われる。このように本実施形態によれば、ドア71を厚み方向に貫通する換気通路は形成されていないので、製造コストの低減に貢献できる。
【0097】
また本実施形態によれば、図21に示す断面において、第1桟部材75の延長線上に第2桟部材76が配置されている。このように第1桟部材75の延長線上に第2桟部材76が配置されているため、ドア71の補強性が一層高まり、ドア71の剛性を高めることができる。
【0098】
しかしながら、図21に示すように、第1桟部材75の延長線上に第2桟部材76が配置されているだけに、第1桟部材75の内部を伝搬する入力音は、芯材として機能する第1桟部材75から第2桟部材76に直接的に伝搬されるおそれがある。また、第2桟部材76の内部を伝搬する入力音は、第2桟部材76から第1桟部材75に直接的に伝搬されるおそれがある。
【0099】
そこで本実施形態のように、中間仕切部材73を介して第1桟部材75と第2桟部材76とで、中間遮音シート74のうち挟持遮音部分740が挟持されているため、入力音の伝搬は、音減衰性をもつ挟持遮音部分740により効果的に抑えられる。このためドア71が閉鎖されているときであっても、ドア71の遮音性が向上する。
【0100】
なお、本実施形態によれば、中間遮音シート74が中間仕切部材73のうち第1室711側の第1対向面731に被覆されているため、第1室711が音発生室となる場合に適するが、第1室711および第2室712の双方が音発生室となり得る場合でも良いことは勿論である。
【0101】
(4)第4実施形態
第4実施形態について図22を参照しつつ説明する。本実施形態は、第3実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、前記した実施形態と相違する部分を中心として説明する。
【0102】
図22はドア71の厚み方向に沿って切断した断面を示す。本実施形態によれば、第1外装部材791のうちの第1空間721に対面する第1内面791iの全体またはほぼ全体には、第1内張遮音シート77が非接着状態または弱接触状態で被覆されている。同様に、第2外装部材792のうちの第2空間722に対面する第2内面792iの全体またはほぼ全体には、第2内張遮音シート78が非接着状態または弱接触状態で被覆されている。
【0103】
図22に示すように、第1内張遮音シート77は、第1内張挟持遮音部分770と、第1内張露出遮音部分775とを連設状態に有する。第1内張挟持遮音部分770は、第1桟部材75の端面75fと第1外装部材791の第1内面791iで挟持されている。第1内張露出遮音部分775は、第1桟部材75の端面75fと第1外装部材791の第1内面791iとで挟持されないように、第1空間721に対面しつつ、第1空間721に露出する。
【0104】
同様に、図22に示すように、第2内張遮音シート78は、第2内張挟持遮音部分780と、第2内張露出遮音部分785とを連設状態に有する。第2内張挟持遮音部分780は、第2桟部材76の端面76fと第2外装部材792の第2内面792iとの間に挟持されている。第2内張露出遮音部分785は、第2桟部材76の端面76fと第2外装部材792の第2内面792iとで挟持されないように、第2空間722に対面しつつ、第2空間722に露出する。
【0105】
ここで、第1内張露出遮音部分775は第1空間721に対面しているものの、第1外装部材791の第1内面791iに接着されていないので、拘束性が低い。同様に、第2内張露出遮音部分785は第2空間722に対面しているものの、第2外装部材792の第2内面792iに接着されていないので、拘束性が低い。このため第1内張露出遮音部分775および第2内張露出遮音部分785は、これの厚み方向に両側から挟持されている場合に比較して、拘束性が低いため、高い振動自由性、高い変位自由性を有する。
【0106】
このため、入力音が空間72を介して伝搬されるとき、第1内張露出遮音部分775および第2内張露出遮音部分785における微振動の発生等により伝搬エネルギーが吸収され易くなり、入力音の空間72を介しての伝搬が減衰されて抑えられる。このように本実施形態によれば、ドア71の厚み方向における遮音性が一層向上する。
【0107】
なお、図22に示すように、下換気通路716が形成されているが、ドア71の上面は上枠14に接近している。但し、必要に応じて、上換気通路を形成しても良い。本実施形態のドア71は、第1室711が音発生室となり得る場合、あるいは、第1室711および第2室712の双方が音発生室となり得る場合に適する。
【0108】
(5)第5実施形態
第5実施形態について図23を参照しつつ説明する。本実施形態は第4実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。共通する部位には共通の符号を付する。以下、前記した第4実施形態と相違する部分を中心として説明する。
【0109】
図23はドア71の厚み方向に沿って切断した断面を示す。本実施形態によれば、図23に示すように、中間遮音シート74は、中間仕切部材73の第1対向面731に対面するように第1対向面731に非接着状態または弱接触状態で被覆されている第1中間遮音シート74fと、中間仕切部材73の第2対向面732に対面するように非接着状態または弱接触状態で第2対向面732に被覆されている第2中間遮音シート74sとで形成されている。従って、第1中間遮音シート74fおよび第2中間遮音シート74sにより中間仕切部材73はこれの厚み方向に挟まれている。
【0110】
本実施形態によれば、図23に示すように、第1中間遮音シート74fは、中間仕切部材73を介して第1桟部材75と第2桟部材76とで挟持された第1挟持遮音部分740fと、第1桟部材75と第2桟部材76とで挟持されないように第1空間721に対面しつつ第1空間721に露出する第1露出遮音部分745fとを連設状態に有する。
【0111】
同様に、第2中間遮音シート74sは、中間仕切部材73を介して第1桟部材75と第2桟部材76とで挟持された第2挟持遮音部分740sと、第1桟部材75と第2桟部材76とで挟持されないように第2空間722に対面しつつ第2空間722に露出する第2露出遮音部分745sとを連設状態に有する。なお、図23に示すように、上換気通路718が形成されているが、ドア71の底面は下枠15に接近している。但し、必要に応じて下換気通路を形成しても良い。本実施形態のドア71は、第1室711および第2室712の双方が音発生室となり得る場合に適する。
【0112】
(6)その他
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施可能である。
【符号の説明】
【0113】
1:戸枠
11:戸先縦枠
12:中方立て 122:中方立て側対面部
2:引き戸
21:引き戸本体 211:第1表面 212:第2表面
22:引き戸戸当たり 222:戸当たり側対面部
3:戸先シール部
4:中方シール部
41:第1中方シール部 411:第1中方固定部 412:第1中方可撓ひれ部
42:第2中方シール部 421:第2中方固定部 422:第2中方可撓ひれ部
5:上側隙間閉鎖手段
6:下側隙間閉鎖手段
7:換気遮音両立ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の開口を開閉する引き戸装置であって、
前記開口の開口幅の一端側に設けられた戸先縦枠と、前記開口幅の他端側に設けられた中方立てと、を有する戸枠と、
前記開口幅に沿って往復運動して前記開口を開閉させ且つ互いに背向する第1表面及び第2表面をもつ引き戸本体と、戸閉鎖時に前記中方立てに対面可能な引き戸戸当たりと、を有する引き戸と、
前記戸先縦枠に高さ方向に沿って延設され、戸閉鎖時に前記戸先縦枠と前記引き戸本体の先端部との境界域をシールする戸先シール部と、
戸閉鎖時における前記中方立てと前記引き戸戸当たりとの境界域に前記高さ方向に沿って延設され且つ戸閉鎖時に前記中方立てと前記引き戸戸当たりとの前記境界域をシールする中方シール部と、を具備しており、
前記中方立ては、戸閉鎖時に前記引き戸戸当たりに対面する中方立て側対面部を有し、前記引き戸戸当たりは、戸閉鎖時に前記中方立て側対面部に対面する戸当たり側対面部を有し、
前記中方シール部は、前記中方立て側対面部に前記高さ方向に沿って取り付けられた第1中方シール部と、前記戸当たり側対面部に前記高さ方向に沿って取り付けられた第2中方シール部と、を有しており、
前記第1中方シール部は、前記中方立て側対面部に固定される第1中方固定部と、前記第1中方固定部の端部から前記引き戸本体の厚み方向に沿って延設されたシール材料で形成された第1中方可撓ひれ部と、を有し、前記第1中方固定部と前記第1中方可撓ひれ部との間に空間が形成され、
前記第2中方シール部は、前記戸当たり側対面部に固定される第2中方固定部と、前記第2中方固定部の端部から前記引き戸本体の前記厚み方向に沿って延設されたシール材料で形成された第2中方可撓ひれ部と、を有し、前記第2中方固定部と前記第2中方可撓ひれ部との間に空間が形成されていることを特徴とする引き戸装置。
【請求項2】
前記開口幅方向に沿った断面において、前記第1中方可撓ひれ部の中心を前記開口幅方向に沿って通る第1中心線と、前記第2中方可撓ひれ部の中心を前記開口幅方向に沿って通る第2中心線とは、前記引き戸本体の前記厚み方向において所定量ずれている請求項1に記載の引き戸装置。
【請求項3】
戸閉鎖時に、前記引き戸本体の厚み方向に複数のシールポイントを有する請求項2に記載の引き戸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−149487(P2012−149487A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10965(P2011−10965)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(594161600)柏木工株式会社 (6)
【Fターム(参考)】