説明

引張荷重記録装置

【課題】高価なロードセルを用いることなく、さらに如何なる油圧ジャッキを用いてもアンカーの引張荷重を測定して記録することができる引張荷重記録装置を提供する。
【解決手段】引張荷重記録装置1は、あと施工されたアンカー50を、油圧ポンプ2によって駆動される油圧ジャッキ3のピストン15で引き抜き方向に加力して引張耐力を試験する際に用いられるものであって、油圧ポンプ2の油圧Pを計測して電気信号で出力する油圧センサー20と、油圧ジャッキ3のピストン15における油圧の受圧面積Sを予め記録するピストン情報記録部21と、油圧センサー20の計測した油圧P、および、ピストン情報記録部21に記録された受圧面積Sに基づいてアンカー50の引張荷重を算出する引張荷重算出部22と、引張荷重算出部22の算出した引張荷重を表示する表示部26と、引張荷重を記録するプリンター27とを備えているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート母材中にあと施工されたアンカーまたはボルトなどの各種止め金具を、油圧ジャッキで引き抜き方向に加力して引張耐力を試験する際に用いられる引張荷重記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路や新幹線の橋脚、建築物等の耐震補強用として、あと施工されたアンカー、あるいはボルト等の各種止め金具が所定の引張耐力を有していることを確認するために、例えば特許文献1に記載されたような引張試験機が用いられている。
【0003】
特許文献1に記載された引張試験機では、負荷ナットを回転させることでアンカーを引き抜く方向に加力して、その荷重がロードセルによって測定されている。この引張試験機は負荷ナットをレンチ等で回転、締め付ける方法であり、試験機の偏り、傾き等により荷重の値にバラツキが出たり、人力のため大きい荷重に対しては使用できない等の問題がある。そのため、負荷ナット方式に換えて油圧ジャッキを用いる方式が一般的に使われている。
【0004】
また、この引張試験機には、ロードセルが高価であるため装置全体が高価になるという問題がある。
【0005】
油圧ジャッキを用いた引張試験機が例えば特許文献2に記載されている。特許文献2に記載されたアンカーボルト引張試験装置では、油圧ポンプの発生油圧を表示する針式のブルドン管圧力計が備えられている。圧力計の目盛り板には、圧力と荷重の2目盛を表示している物が一般的であるが、引張試験機のピストンの受圧面積毎にブルドン管の種類を変える必要がある。また、最大値を確認するための置き針方式のものもあるが、人が故意に動かせるため信頼性が疑われることもある。
【0006】
そのため、引張試験機毎に専用のブルドン管圧力計を準備する必要がある。
【0007】
アンカーの引張試験は、アンカーの種類や用途などにより、引張試験の規格が変わるため、少なくとも試験規格を満足する引張荷重を発生できる油圧ジャッキを用いる必要がある。しかし強力な油圧ジャッキは大型で重いため、持ち運びが大変であり作業性が悪いので、必要最小限の引張荷重を発生可能な油圧ジャッキを用いることが望ましい。
【0008】
発生荷重は油圧を受けるピストンの面積により異なるので、同じ圧力でも引張試験機により、発生荷重は異なる。したがって、専用のものが必要である。また、針式のメータではロードセルのような電気信号が引き出せないので、引張荷重を記録することができず、記録として残す場合は、最大値を示しているときの写真記録に頼らざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−185769号公報
【特許文献2】特開2001−228066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、高価なロードセルを用いることなく、さらに、如何なる油圧ジャッキを用いてもアンカーやボルトの引張荷重を測定して記録することができる引張荷重記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された引張荷重記録装置は、
あと施工されたアンカーまたはボルトを、油圧ポンプによって駆動される油圧ジャッキのピストンで引き抜き方向に加力して引張耐力を試験する際に用いられる引張荷重記録装置であって、
該油圧ポンプの吐出する油圧を計測して電気信号で出力する油圧センサーと、
該油圧ジャッキのピストンにおける油圧の受圧面積を予め記録するピストン情報記録部と、
該油圧センサーの計測した油圧、および、該ピストン情報記録部に記録された該受圧面積に基づいて、該アンカーの引張荷重を算出する引張荷重算出部と、
該引張荷重算出部の算出した該引張荷重を表示する表示部と、
該引張荷重を記録する荷重記録部と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載された引張荷重記録装置は、請求項1に記載されたもので、前記ピストン情報記録部は、前記受圧面積を変更して記録可能なものであることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載された引張荷重記録装置は、請求項1に記載されたもので、前記荷重記録部は、前記引張荷重を印刷して記録するプリンターであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の引張荷重記録装置によれば、油圧センサーによって計測される油圧と、ピストン情報記録部に記録された油圧ジャッキの受圧面積とから引張荷重算出部が引張荷重を算出して、表示部に表示させることができるので、高価なロードセルを用いる必要がなく、安価な装置で引張荷重を測定することができる。また、引張荷重を記録する荷重記録部を備えているので、測定した引張荷重を記録することができる。
【0015】
本発明の引張荷重記録装置によれば、ピストン情報記録部が受圧面積を変更して記録可能なものであるので、用いる油圧ジャッキに対応させて受圧面積を変更することで、如何なる油圧ジャッキを用いても引張荷重の測定および記録をすることができる。
【0016】
本発明の引張荷重記録装置によれば、測定した引張荷重を印刷用紙に記録できるので、試験結果を確実に保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用する引張荷重記録装置の使用状態を示す概要図である。
【図2】本発明を適用する引張荷重記録装置の正面パネルの正面図である。
【図3】本発明を適用する引張荷重記録装置を使用する際に用いる油圧ジャッキのピストンの断面図である。
【図4】本発明を適用する引張荷重記録装置によって測定された引張荷重試験の結果が記録された印刷用紙の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明の引張荷重記録装置の好ましい一形態について、図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0020】
引張荷重記録装置1は、コンクリート51にあと施工されて固定されたアンカー50の引張耐力を試験する引張試験の際に、油圧ポンプ2および油圧ジャッキ3と共に用いられて、アンカー50に加力される引張荷重の表示および記録が可能な装置である。
【0021】
最初に、引張荷重記録装置1と共に用いられる油圧ポンプ2および油圧ジャッキ3について説明する。
【0022】
油圧ポンプ2は、一例として72MPaまで油圧を加圧可能な手押し式のポンプである。
【0023】
同図に断面図で示す油圧ジャッキ3は、高さや傾きを調整可能な台座11の上側(図の上側)に固定されている。台座11の中央部にはアンカー50を貫通可能な貫通孔12が形成されている。なお、あと施工されたアンカーのピッチが狭い場合は台座が入らないこともあり、間隔に応じた鉄パイプを台座の変わりに使うこともできる。
【0024】
油圧ジャッキ3はいわゆるセンターホール式のものであり、略円柱状の油圧ジャッキ3の軸部分には貫通孔13が形成されている。この油圧ジャッキ3のシリンダ14は、二重の円筒の間が底部側(図の下側)で蓋をされた形状に形成されていて、これによりその軸部に貫通孔13が形成されている。油圧ジャッキ3のピストン15は、軸部に貫通孔を有する円柱形状に形成されていて、シリンダ14の二重円筒の間に嵌って軸方向に摺動可能になっている。
【0025】
シリンダ14には、底部付近の側面に、シリンダ14の内側に繋がる油口16が形成されている。油圧ジャッキ3は、油圧ポンプ2によって加圧された油17が油口16からシリンダ14内に流入されて、ピストン15が上方(図の上方)に加力され押し上げ可能に構成されている。
【0026】
ピストン15に作用する油圧の受圧面積Sは、ピストン15の軸に垂直な方向の断面積と等しくなる。図3に、図1におけるピストン15のA−A断面を示す。ピストン15は、同図に示すように、直径Doの円柱の中央に直径Diの貫通孔が形成されているものである。このため、ピストン15の受圧面積Sは、下記の(1)式で表される。
S=Pai×(Do/2) −Pai×(Di/2) (1)
ここで、Paiは円周率である。
【0027】
図1に示すように、台座11および油圧ジャッキ3の貫通孔12,13には、アンカー50が貫通される。アンカー50にはその上側(図の上側)からフランジ付きのナット18が螺合されて、フランジがピストン15に当接するまで螺子締められている。
【0028】
引張荷重記録装置1は、同図に示すように、油圧センサー20、ピストン情報記録部21、引張荷重算出部22、最大荷重メモリ24、操作部25、表示部26、プリンター27、およびブザー28を備えている。
【0029】
油圧センサー20は、油圧Pを計測してその計測値を電気信号で出力するものである。油圧センサー20として、周知の種々のタイプのものを用いることができ、その一例として、圧力で歪むシリコン製やステンレス製のダイヤフラムに形成されたピエゾ素子の抵抗変化またはコンデンサの容量変化を電気信号に変換して出力するものが挙げられる。油圧センサー20の出力する油圧は、アナログ信号であってもよいしデジタル信号であってもよい。
【0030】
この油圧センサー20は、油圧ポンプ2と油圧ジャッキ3とを繋ぐ油圧ホース31の油圧ポンプ2側に、T字型(チーズ型)の継手32を用いて、油圧ポンプ2の吐出する油圧Pを計測可能に設けられている。具体的には、油圧ポンプ2と油圧ホース31の間にカプラーを用いて、継手32が接続され、継手32の枝管には油圧センサー20がねじ込まれ、油圧センサー20からの信号線は引張荷重記録装置1に接続されている。
【0031】
ピストン情報記録部21は、油圧ジャッキ3のピストン15における油圧の受圧面積Sを予め記憶する半導体メモリである。ピストン情報記録部21には、一例として、電気的に書き換え記録可能な不揮発性の半導体メモリであるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やその一種であるフラッシュメモリを用いることができる。
【0032】
引張荷重算出部22は、油圧センサー20の計測した油圧P、および、ピストン情報記録部21に記録された油圧の受圧面積Sに基づいてアンカー50の引張荷重を算出するものである。また、引張荷重算出部22は、算出した引張荷重を最大荷重メモリ24、表示部26、およびプリンター27に出力可能に構成されている。
【0033】
この引張荷重算出部22は、一例として、プログラムによって様々な数値計算や情報処理を行うCPU(Central Processing Unit)、CPUの動作用のプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの種々の処理において生成される各種データや入力信号等のデータを一時的に記録するRAM(Random Access Memory)、後述するブザー28を鳴動させる測定値を予め記憶するEEPROM、並びに、CPUと周辺回路および油圧センサー20などとの信号受け渡し用のインタフェース回路(いずれも不図示)を備えており、この例では引張荷重記録装置1を統括的に制御するものである。そのインタフェース回路は、油圧センサー20からアナログ信号が出力される場合には、そのアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器を有している。
【0034】
この引張荷重算出部22は、油圧センサー20、ピストン情報記録部21、最大荷重メモリ24、操作部25、表示部26、プリンター27、およびブザー28に接続されている。
【0035】
最大荷重メモリ24は、一例としてRAMで構成されて、引張荷重算出部22の算出した引張荷重の最大値を記録するものである。この最大荷重メモリ24は、前記した引張荷重算出部22内の不図示のRAMと共用してもよい。
【0036】
表示部26は、引張荷重算出部22の算出した引張荷重を数字で表示するものである。この表示部26は、図2に示すように、引張荷重記録装置1の正面パネル30に配置され、一例として、7セグメントで数字を表示する発光ダイオード表示ディスプレイで構成されている。
【0037】
操作部25は、引張荷重記録装置1の動作を操作するためのものであり、同図に示すように正面パネル30に配置されており、表示部26に表示させる引張荷重を最大値または現在値に切り替えるための表示切替ボタン41、表示部26に表示された値を保持させて表示させるためのセットボタン42、最大値をリセットするためのリセットボタン43、印刷を開始させるためのプリントボタン44、プリンター27の印刷用紙35を紙送りするためのフィードボタン45、数値設定を行うためモード切替ボタン46a、数値アップボタン46b、および数値ダウンボタン46cによって構成されている。
【0038】
プリンター27は、本発明における荷重記録部に相当し、同図に示すように正面パネル30に配置され、引張荷重算出部22の算出した引張荷重を印刷用紙35に印刷して出力するものである。
【0039】
ブザー28は、試験規格値、油圧ジャッキ3の最大荷重等を事前に入力しておき、その値になったらブザーを鳴らすようにしたものである。
【0040】
この引張荷重記録装置1は次のように使用されて動作する。
【0041】
予め、オペレータは、引張試験に用いる油圧ジャッキ3の受圧面積Sを、油圧ジャッキ3の仕様書などから調べておく。また、ブザー28を鳴動させる測定値を決めておく。次いで、オペレータは、モード切替ボタン46a、数値アップボタン46bおよび数値ダウンボタン46cを操作して、表示部26に受圧面積Sの数値を表示させて受圧面積Sを引張荷重記録装置1にセットする。また、同様にして、ブザー鳴動値を引張荷重記録装置1にセットする。
【0042】
具体的には、一例として、引張荷重算出部22は、モード切替ボタン46aがオペレータに押下げ操作されるたびに、受圧面積設定モードやブザー鳴動値設定モードなどのモード切替を行う。引張荷重算出部22は、受圧面積設定モードに切り替えられたときにピストン情報記録部21に予め設定されている受圧面積Sを表示部26に表示させ、さらに数値アップボタン46bおよび数値ダウンボタン46cが操作されることでその数値をアップダウンさせて表示部26に表示させる。引張荷重算出部22は、モード切替ボタン46aが再度押されたときに、表示部26に表示されていた受圧面積Sをピストン情報記録部21に記録する。このようにピストン情報記録部21は、受圧面積Sを変更して記録可能なものである。また、同様にして、引張荷重算出部22は設定されたブザー鳴動値を記録する。
【0043】
図1に示すように、引張荷重記録装置1、油圧ポンプ2、および油圧ジャッキ3を接続し、油圧ジャッキ3、台座11、およびナット18をアンカー50にセットする。引張荷重記録装置1の電源を投入すると、引張荷重算出部22は、ピストン情報記録部21から受圧面積Sを読み込む。
【0044】
引張試験を開始する前に、図2に示すリセットボタン43を押下操作して、引張荷重算出部22に最大荷重メモリ24のデータをクリアさせておく。
【0045】
油圧ポンプ2を操作することで引張試験が開始される。これにより油圧ポンプ2の吐出する油圧が上昇し、油圧ジャッキ3のピストン15がアンカー50を引き抜く方向に加力し始める。また、油圧ポンプ2の吐出する油圧Pが油圧センサー20によって逐次計測されて、引張荷重算出部22に入力される。
【0046】
引張荷重算出部22は、油圧Pと受圧面積Sとから下記の(2)式で引張荷重Fを算出する。
F=P×S (2)
【0047】
引張荷重算出部22は算出した引張荷重Fを順次最大荷重メモリ24に記録していく。最終的には、引張荷重算出部22は、最大荷重メモリ24に最大値のみを記録し、圧力を下げたあとでも、リセットするまでは最大値を読み取ることができる。
【0048】
また、引張荷重算出部22は、表示切替ボタン41が「現在値」に切り替えられている場合には、表示部26に現在の引張荷重Fを表示させ、「最大値」に切り替えられている場合には、最大荷重メモリ24に記録されている引張荷重F’を表示させる。
【0049】
引張荷重算出部22は、プリントボタン44が押下操作されると、その時点で表示部26に表示されている数値(現在値または最大値)をプリンター27に印刷させる。また、引張荷重と共に、アンカー50の識別番号や、試験時の日付けおよび時刻も同時に印刷させる。引張荷重算出部22は、フィードボタン45が押下操作されると、プリンター27に紙送りをさせる。
【0050】
引張試験は、表示部26に現在値または最大値で表示される引張荷重が試験規格に達するまで油圧ポンプ2で加圧して、アンカー50が引き抜かれず所定の引張耐力を有していることを確認し、その引張荷重を印刷用紙35に印刷させて終了する。印刷用紙35への記録と同時に、表示部26の最大値を写真に撮ることも記録として残すことになる。測定すべきアンカー50が複数あるときは上記の引張試験を繰り返す。
【0051】
このように、引張荷重記録装置1によれば、油圧センサー20によって計測される油圧Pと油圧ジャッキ3の受圧面積Sとから引張荷重Fを算出することができるので、高価なロードセルを用いる必要がなく、安価な装置で引張荷重試験を行うことができる。また、引張荷重記録装置1によれば、試験を行った引張荷重を印刷用紙35に印刷して記録することができる。さらに、引張荷重記録装置1によれば、油圧ジャッキ3を異なる受圧面積Sのものに変更したとしても、そのピストン情報記録部21の受圧面積Sを書き換えることができるので、如何なる油圧ジャッキ3を用いても、引張荷重Fを測定することができ、その引張荷重を記録することができる。
【0052】
なお、ピストン情報記録部21に受圧面積Sを記録した例について説明したが、ピストン情報記録部21に受圧面積Sを算出するためのピストン寸法を記録してもよい。例えば、(1)式に用いたピストン15の円柱の直径Doおよび孔径Diをピストン情報記録部21に記録することで、引張荷重算出部22が(1)式を用いて受圧面積Sを算出して求めてもよい。このようにする場合、本実施態様とは異なる形状のピストンを用いるときには、そのピストンの受圧面積を算出可能なピストン寸法をピストン情報記録部21に記録する。例えば、センターホール式でない円柱状のピストンを使用する場合には、ピストンの直径、または半径をピストン寸法として記録する。
【0053】
また、本発明における荷重記録部として、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ、フレキシブルディスクなどの外部記録媒体に、引張荷重を記録可能なデータ記録装置を備えることもできる。
【0054】
また、半導体メモリのピストン情報記録部21を、例えば、複数のディップスイッチ、または複数のロータリーディップスイッチに換えることで、ディップスイッチ等で受圧面積Sを数値設定できる構成としてもよい。数値設定は、ディップスイッチ等の態様に合わせて2進数や10進数などで設定する。この場合、正面パネル30や不図示の装置側面または背面に、このディップスイッチ等を切替可能に表出させて設けることもできる。さらに、半導体メモリのピストン情報記録部21に、用いることが想定される油圧ジャッキ3の全ての受圧面積Sを記録させておき、正面パネル30に切替スイッチを設けて、用いる油圧ジャッキ3に対応する受圧面積Sを切替スイッチで切り替えて変更する構成とすることもできる。
【0055】
また、コンクリート51にあと施工されたアンカー50の引張耐力を試験する例について説明したが、コンクリートや金属板などの母材から突出させて固定されたボルトなどの各種止め金具の引張耐力を試験する際に本発明の引張荷重記録装置1を用いることができる。
【実施例】
【0056】
本発明の引張荷重記録装置1を試作して、ピストンの断面積S(受圧面積S)の異なる3種類の油圧ジャッキNo.1〜No.3を用いてアンカー50の引張試験を行い、各油圧ジャッキにおける引張荷重を測定した。表1にその結果を示す。各ジャッキを用いて測定する前に、予め測定に用いるジャッキのピストンの断面積Sをボタン46a〜46cを操作してピストン情報記録部21に記録してから測定を行った。
【0057】
油圧ポンプ2は、油圧を表示する針式のメータを備えたものを使用して、そのメータの表示圧力P’も表1に示す。また、ピストンの断面積Sとこの油圧ポンプ2の表示圧力P’とから算出した引張荷重も参考引張荷重として表1に示す。

【0058】
ジャッキNo.2における記録の一例(印刷用紙35)を図4に示す。図4は、最大値(MAX)として62.1kNまで引張荷重を増加させたときの例であり、引張荷重の増加と共に現在値(CURRENT)もTEST No.1〜3として記録した例である。
【符号の説明】
【0059】
1は引張荷重記録装置、2は油圧ポンプ、3は油圧ジャッキ、11は台座、12,13は貫通孔、14はシリンダ、15はピストン、16は油口、17は油、18はナット、20は油圧センサー、21はピストン情報記録部、22は引張荷重算出部、24は最大荷重メモリ、25は操作部、26は表示部、27はプリンター、28はブザー、30は正面パネル、31は油圧ホース、32は継手、35は印刷用紙、41は表示切替ボタン、42はセットボタン、43はリセットボタン、44はプリントボタン、45はフィードボタン、46aはモード切替ボタン、46bは数値アップボタン、46cは数値ダウンボタン46c、50はアンカー、51はコンクリート、Doは円柱の直径、Diは貫通孔の直径、Pは油圧、Sは受圧面積である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あと施工されたアンカーまたはボルトを、油圧ポンプによって駆動される油圧ジャッキのピストンで引き抜き方向に加力して引張耐力を試験する際に用いられる引張荷重記録装置であって、
該油圧ポンプの吐出する油圧を計測して電気信号で出力する油圧センサーと、
該油圧ジャッキのピストンにおける油圧の受圧面積を予め記録するピストン情報記録部と、
該油圧センサーの計測した油圧、および、該ピストン情報記録部に記録された該受圧面積に基づいて、該アンカーの引張荷重を算出する引張荷重算出部と、
該引張荷重算出部の算出した該引張荷重を表示する表示部と、
該引張荷重を記録する荷重記録部と、を備えていることを特徴とする引張荷重記録装置。
【請求項2】
前記ピストン情報記録部は、前記受圧面積を変更して記録可能なものであることを特徴とする請求項1に記載の引張荷重記録装置。
【請求項3】
前記荷重記録部は、前記引張荷重を印刷して記録するプリンターであることを特徴とする請求項1に記載の引張荷重記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−47687(P2011−47687A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194341(P2009−194341)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000232922)日油技研工業株式会社 (67)
【Fターム(参考)】