引抜加工方法
【課題】プラグロッドに振動が発生するのを確実に防止できる引抜加工方法を提供する。
【解決手段】本発明は、管材Wをその内部にプラグロッド3を配置した状態で、引抜ダイス1に通して引き抜くようにした引抜加工方法を対象とする。管材Wの引抜ダイス1への搬送経路に沿って複数配置され、かつ管材Wおよびプラグロッド3を支持可能なローラ部材5を準備する。複数のローラ部材5のうち、引抜ダイス1に最も近い位置に配置されるローラ部材55に対して、管材Wの後端W2がローラ部材55を通過する前に、ローラ部材55を管材Wから離間させる通過前離間動作を行わせる。
【解決手段】本発明は、管材Wをその内部にプラグロッド3を配置した状態で、引抜ダイス1に通して引き抜くようにした引抜加工方法を対象とする。管材Wの引抜ダイス1への搬送経路に沿って複数配置され、かつ管材Wおよびプラグロッド3を支持可能なローラ部材5を準備する。複数のローラ部材5のうち、引抜ダイス1に最も近い位置に配置されるローラ部材55に対して、管材Wの後端W2がローラ部材55を通過する前に、ローラ部材55を管材Wから離間させる通過前離間動作を行わせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルミニウム管等の管材を、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工方法およびその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真装置の感光ドラム用の基体として、押出加工したアルミニウム製の管材を、引抜加工して得られる引抜管、いわゆるED管が多く用いられている。
【0003】
特許文献1,2に示すように従来の引抜加工方法は、先端に引抜プラグ設けられたプラグロッドを内部に挿通配置したアルミニウム管を、引抜ダイスおよび引抜プラグ間の加工隙間に通して引き抜くようにしている。
【特許文献1】特開平9−29324号(特許請求の範囲、図1)
【特許文献2】特開平5−253611号(特許請求の範囲、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の引抜加工技術においては、生産性向上等のために、引抜管の長尺化が進められているが、引抜長さを長くすると当然のことながら、管材(素管)としてのアルミニウム管や、その内部に配置されるプラグロッドの寸法も長くなる。ところが、プラグロッドが長くなると、プラグロッドに振動が発生し易くなり、その振動によってロッド先端の引抜プラグが振動して、引抜管の表面に微小な凹凸欠陥部が形成されてしまう。特に感光ドラム基体として用いられる引抜管は、高度な寸法精度はもちろん、極めて高い表面品質が要求されるため、プラグロッドの振動に起因する微小な凹凸欠陥部の発生は致命傷にもなり兼ねず、プラグロッドの振動を極力抑制する必要がある。
【0005】
そこで従来においてはアルミニウム管およびプラグロッドを支持ローラによって支持して、プラグロッドに発生する振動を抑制する技術が提案されている。例えばアルミニウム管の搬送経路上に支持ローラを設けて、その支持ローラによって、アルミニウム管を支持する一方、アルミニウム管の後端が、上記支持ローラが通過した後は、その支持ローラによってプラグロッドを支持するものである。
【0006】
しかしながら、この提案技術においても、未だ十分に振動を抑制できず、引抜管の品質を確実に向上させることは困難であった。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、プラグロッドに振動が発生するのを防止でき、引抜管の品質を向上させることができる引抜加工方法およびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者はまず、上記提案技術の引抜加工方法において、プラグロッドに振動が発生する際のメカニズムについて探求した。
【0009】
すなわち、上記提案技術の引抜加工方法では、支持ローラによってアルミニウム管を支持しているものの、アルミニウム管が通過した後、その支持ローラによってプラグロッドを支持するようにしている。このように支持ローラによる支持対象が、アルミニウム管からプラグロッドに移行するが、この移行時には、支持ローラが大径のアルミニウム管外周面と小径のプラグロッド外周面との間の段差を通過することになる。この段差を支持ローラが通過してプラグロッドの外周面に接触する際に、プラグロッド外周面に衝突し、その衝撃によってプラグロッドに振動が発生するという事実を究明した。
【0010】
さらに本発明者は引き続き、綿密な実験研究をを行った結果、支持ローラがアルミニウム管からプラグロッドに移動する際の衝撃を緩和させることができれば、プラグロッドにおける振動の発生を有効に防止できるという知見を得た。
【0011】
そして本発明者は上記の研究結果を基に、上記目的を達成を可能とする最適な構成を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成を要旨とする。
【0012】
[1] 管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工方法であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路に沿って複数配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持可能なローラ部材を準備しておき、
複数のローラ部材のうち、引抜ダイスに最も近い位置に配置されるローラ部材に対して、管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせるようにしたことを特徴とする引抜加工方法。
【0013】
[2] 管材を支持する複数のローラ部材のうち、少なくとも2つ以上のローラ部材に対して、通過前離間動作を行わせるようにした前項1に記載の引抜加工方法。
【0014】
[3] いずれかのローラ部材に対して、管材の後端がローラ部材を通過した後、ローラ部材をプラグロッドに接触させてプラグロッドを支持する通過後接触動作を行わせる前項1または2に記載の引抜加工方法。
【0015】
[4] 引抜ダイスに最も近い位置に配置されるローラ部材に対して、通過後接触動作を行わせない前項3に記載の引抜加工方法。
【0016】
[5] ローラ部材として、管材の両側に開閉自在に設けられ、かつ管材を挟持して支持する一対の支持ローラが用いられる前項1〜4のいずれか1項に記載の引抜加工方法。
【0017】
[6] 管材として、アルミニウムまたはその合金製のアルミニウム管が使用される前項1〜5のいずれか1項に記載の引抜加工方法。
【0018】
[7] 管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工方法であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路上に配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持するローラ部材を準備しておき、
管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させるようにしたことを特徴とする引抜加工方法。
【0019】
[8] 前項1〜6のいずれか1項に記載された引抜加工方法によって製造されたことを特徴とする引抜管製品。
【0020】
[9] 管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工装置であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路に沿って複数配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持可能なローラ部材と、
複数のローラ部材のうち、引抜ダイスに最も近い位置に配置されるローラ部材に対して、管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせる通過前離間動作実行手段と、を備えることを特徴とする引抜加工装置。
【0021】
[10] ローラ部材が、管材の両側に開閉自在に設けられ、かつ管材を挟持して支持する一対の支持ローラによって構成される前項9に記載の引抜加工装置。
【0022】
[11] ローラ部材が、管材をその荷重を下側から受け止めるように支持する支持ローラによって構成される前項9に記載の引抜加工装置。
【0023】
[12] 複数のローラ部材が管材の搬送経路に沿って等間隔おきに配置される前項9〜11のいずれか1項に記載の引抜加工装置。
【0024】
[13] 管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工装置であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路上に配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持するローラ部材と、
管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせる通過前離間動作実行手段と、を備えることを特徴とする引抜加工装置。
【0025】
[14] 管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工装置における管材支持装置であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路上に配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持するローラ部材と、
管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせる通過前離間動作実行手段と、を備えることを特徴とする引抜加工装置における管材支持装置。
【0026】
[15] 管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くに際して、管材およびプラグロッドを支持する引抜加工装置における管材支持用ローラ部材であって、
管材の後端が通過する前に、管材から離間させることを特徴とする引抜加工装置における管材支持用ローラ部材。
【発明の効果】
【0027】
発明[1]の引抜加工方法によれば、管材の後端が通過する前に、ローラ部材を管材から離間させるため、プラグロッドに接触させる際のローラ部材の動作を的確に制御することができる。このため、ローラ部材をプラグロッドに衝撃を加えることなく軽く接触させることができ、プラグロッドに振動が発生するのを確実に防止することができ、引抜製品の品質を向上させることができる。
【0028】
発明[2]の引抜加工方法によれば、上記の効果を、より確実に得ることができる。
【0029】
発明[3][4]の引抜加工方法によれば、プラグロッドを確実に支持することができる。
【0030】
発明[5]の引抜加工方法によれば、管材およびプラグロッドを確実に支持することができる。
【0031】
発明[6]の引抜加工方法によれば、アルミニウム製の引抜管製品を得ることができる。
【0032】
発明[7]の引抜加工方法によれば、上記と同様に、プラグロッドに振動が発生するのを防止できて、引抜製品の品質を向上させることができる。
【0033】
発明[8]によれば、サイズが長く、表面品質に優れた引抜製品を得ることができる。
【0034】
発明[9]によれば、上記の発明方法を実施可能な引抜加工装置を特定するものであるため、上記と同様に、プラグロッドに振動が発生するのを防止できて、引抜製品の品質を向上させることができる。
【0035】
発明[10][11]の引抜加工装置によれば、管材およびプラグロッドをより確実に支持することができる。
【0036】
発明[12]の引抜加工装置によれば、管材およびプラグロッドをより安定した状態に支持することができる。
【0037】
発明[13]の引抜加工装置によれば、上記と同様に、プラグロッドに振動が発生するのを防止できて、引抜製品の品質を向上させることができる。
【0038】
発明[14]の引抜加工装置における管材支持装置によれば、上記と同様に、プラグロッドに振動が発生するのを防止できて、引抜製品の品質を向上させることができる。
【0039】
発明[15]の引抜加工装置における管材支持用ローラ部材によれば、上記と同様に、プラグロッドに振動が発生するのを防止できて、引抜製品の品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1はこの発明の実施形態であるアルミニウム管の引抜加工装置を概略的に示す平面図である。同図に示すように、この引抜加工装置は、引抜ダイス(1)と、引抜ダイス(1)のダイス孔(11)に対応して配置される引抜プラグ(2)とを備え、ダイス孔(11)と引抜プラグ(2)との間に環状の成形隙間が形成され、管材(素管)としてアルミニウム管(W)がこの成形隙間を通って引き抜かれるように構成されている。なお本実施形態においては、アルミニウム管(W)の搬送方向(図1に向かっての右方向)を「前方」として説明する。
【0041】
引抜プラグ(2)は、アルミニウム管(W)の搬送経路上に配置されたプラグロッド(3)を介して支持部材(31)に支持されている。
【0042】
またこの引抜加工装置においては、アルミニウム管(W)の搬送経路に沿って、複数のローラ部材(5)が所定の間隔おきに配置されている。複数のローラ部材(5)は、第1〜第5ローラ部材(51)〜(55)によって構成されており、第1〜第5ローラ部材(51)〜(55)がこの順で、搬送方向に対し上流側から下流側にかけて配置されている。
【0043】
なお本実施形態においては、第1〜第5ローラ部材(51)〜(55)のうち、第5ローラ部材(55)が、複数のローラ部材(51)〜(55)のうち、搬送方向に対し最も下流側、つまり引抜ダイス(1)に最も近い位置に配置されるローラ部材を構成している。
【0044】
図7,8に示すようにローラ部材(5)は、アルミニウム管(W)の左右両側に配置される一対の支持ローラ(6)(6)によって構成されている。各支持ローラ(6)(6)は、鼓型の形状を有し、回転軸(61)(61)が垂直に配置された状態で可動フレーム(7)(7)に回転自在に支持されている。
【0045】
可動フレーム(7)(7)は、アルミニウム管(W)に対し直交する水平方向に、シリンダ等の駆動手段(図示省略)によって移動できるよう構成されており、その移動に伴って、各支持ローラ(7)(7)が、アルミニウム管(W)に接離する方向(水平方向)に移動するようになっている。
【0046】
そして図7に示すように、一対の支持ローラ(6)(6)が、可動フレーム(7)(7)の移動に伴って、アルミニウム管(W)の両側に当接する方向に移動して閉塞されると、アルミニウム管(W)が一対の支持ローラ(6)(6)によって左右両側から挟持されて支持されるよう構成されている。また図8に示すように、一対の支持ローラ(6)(6)が可動フレーム(7)(7)の移動に伴って、アルミニウム管(W)から遠ざかる方向に移動して開放されると、アルミニウム管(W)から一対の支持ローラ(6)(6)が両側方へ離間して支持が解除されるよう構成されている。
【0047】
また図9に示すように、アルミニウム管(W)が一対の支持ローラ(6)(6)の位置を通り過ぎた状態で、一対の支持ローラ(6)(6)が閉塞されると、アルミニウム管(W)内に配置されたプラグロッド(3)が一対の支持ローラ(6)(6)によって両側から挟持されて支持されるように構成されている。
【0048】
なお本実施形態においては、ローラ部材(51)〜(55)によって、管材支持装置が構成されている。
【0049】
以上の構成の引抜加工装置は、パーソナルコンピュータ等によって構成される制御装置(図示省略)を備えており、この制御装置によって、支持ローラ(6)のシリンダ等の駆動部を含む引抜加工装置の各駆動部が制御されて、後に説明する動作が自動的に行われるようになっている。なお本実施形態においては、この制御動作に、後述する通過前離間動作や、通過後接触動作が含まれており、これらの通過前離間動作および通過後接触動作を行うための制御装置の機能(プログラム)によって、通過前離間動作実行手段および通過後接触動作実行手段が構成されている。
【0050】
次に本実施形態の引抜加工装置の動作について説明する。まず図1に示すようにアルミニウム管(W)がセットされた初期状態においては、管内部における軸心に沿ってプラグロッド(3)が配置される。さらにこの初期状態においては、各ローラ部材(51)〜(55)が全て閉塞されて、アルミニウム管(W)が挟持(支持)されている。またアルミニウム管(W)の先端側は、引抜ダイス(1)および引抜プラグ(2)間の成形加工隙間に挿通されて、図示しないチャック部材によって把持されている。
【0051】
この状態においてチャック部材が引抜方向(前方)に移動して引抜加工が開始される。こうして引抜加工が開始されて、アルミニウム管(W)が搬送されていき図2,8に示すように、アルミニウム管(W)の後端(W1)が、第1ローラ部材(51)に近づくと、つまりアルミニウム管(W)の後端(W1)が、第1ローラ部材(51)を通過する直前に、第1ローラ部材(51)の支持ローラ(6)(6)が開放されて、アルミニウム管(W)への支持が解除される(通過前離間動作)。
【0052】
ここでアルミニウム管(W)の後端(W1)が、第1ローラ部材(51)に近づいたことを検出する方法としては、後端位置検出センサを用いる方法等を採用することができる。後端位置検出センサとしては例えば、アルミニウム管(W)に向けて照射した光の反射の有無を検知することにより、アルミニウム管(W)の後端位置を検出する反射型検出センサや、アルミニウム管(W)を挟んで投光器および受光器を配置して、投光器から受光器に向けて照射した光がアルミニウム管(W)によって遮断されるか否かによってアルミニウム管(W)の後端位置を検出する透過型検出センサ等を好適に用いることができる。
【0053】
本実施形態では例えば、この後端位置検出センサを、第1ローラ部材(51)の管搬送方向上流側に配置しておいて、その位置でアルミニウム管(W)の後端位置が検出された際に、その旨の信号を後端位置検出センサから上記制御装置が受信することによって、第1ローラ部材(51)の駆動を制御して、第1ローラ部材(51)の支持ローラ(6)(6)を開かせるように構成すれば良い。
【0054】
なお後端位置検出センサとしては、上記の反射型検出センサや透過型検出センサ等の非接触式センサ以外にも、接触型検出センサを用いることも可能である。
【0055】
また本実施形態においては、上記の後端位置検出センサを用いず、アルミニウム管(W)の後端(W1)が、第1ローラ部材(51)に近づいたことを検出することも可能である。例えば初期状態のアルミニウム管(W)の後端位置、アルミニウム管(W)の搬送速度、および搬送経過時間等に基づいて、搬送中のアルミニウム管後端(W1)の位置を計測することができるため、その計測された後端(W1)の位置に基づいて、アルミニウム管(W)の後端(W1)が第1ローラ部材(51)に近づいたことを検出することも可能である。
【0056】
さらに本実施形態においては、後端位置検出センサを用いる方法と、搬送速度や搬送経過時間等からアルミニウム管後端(W1)の位置を計測する方法とを組み合わせて、アルミニウム管後端(W1)の位置を検出するようにしても良い。
【0057】
なお後述するように、第2〜第5ローラ部材(52)〜(55)においても、アルミニウム管(W)の後端(W1)が近づいたことを検出する必要があるが、この検出方法においても、上記と同様の手段を用いれば良い。
【0058】
第1ローラ部材(51)の一対の支持ローラ(6)(6)が開放した後、そのローラ位置をアルミニウム管(W)の後端(W1)が通過する。そしてその通過後に、図3,9に示すように、第1ローラ部材(51)の一対の支持ローラ(6)(6)が閉塞されて、プラグロッド(3)が第1ローラ部材(51)における一対の支持ローラ(6)(6)によって挟持(支持)される(通過後接触動作)。
【0059】
ここでアルミニウム管(W)の後端(W1)が第1ローラ部材(51)を通過したことを検出する方法としては、上記と同様に、後端位置検出センサを用いる方法や、搬送速度や時間等から後端(W1)の位置を計測する方法や、両検出方法を組み合わせる方法等を採用することができる。
【0060】
例えば、上記の後端位置検出センサを、第1ローラ部材(51)の管搬送方向下流側に配置しておいて、その位置でアルミニウム管(W)の後端位置が検出された際に、その旨の信号を後端位置検出センサから上記制御装置が受信することによって、第1ローラ部材(51)の駆動を制御して、第1ローラ部材(51)の支持ローラ(6)(6)を閉じさせるように構成すれば良い。
【0061】
また後述するように、第2〜第5ローラ部材(52)〜(55)においても、アルミニウム管(W)の後端(W1)が通過したことを検出する必要があるが、この検出方法においても、上記と同様な手段を用いれば良い。
【0062】
なお本実施形態においては、通過前離間動作と、通過後接触動作とを連続して行う動作を、「離間/接触動作」と称する。
【0063】
第1ローラ部材(51)によってプラグロッド(3)が挟持された後、図4に示すようにアルミニウム管(W)の後端(W1)が第2ローラ部材(52)に近づくと、第2ローラ部材(52)の一対の支持ローラ(6)(6)が開放されて、アルミニウム管(W)への支持が解除される。
【0064】
続いて図4に示すように、アルミニウム管(W)の後端(W1)が第2ローラ部材(52)を通過した後、第2ローラ部材(52)が閉塞されて、その一対の支持ローラ(6)(6)によってプラグロッド(3)が挟持(支持)される。
【0065】
以下同様にして図4,5に示すように、第3,4ローラ部材(53)(54)においても、上記と同様な離間/接触動作が行われる。すなわちアルミニウム管(W)の後端(W1)が近づくと、各ローラ部材(53)(54)がそれぞれ開放されて、アルミニウム管(W)に対する支持が解除される一方、各ローラ部材(53)(54)をアルミニウム管(W)の後端(W1)が通過した後、各ローラ部材(53)(54)がそれぞれ閉塞されて、各一対の支持ローラ(6)(6)によってプラグロッド(3)が挟持(支持)される。
【0066】
その後、第5ローラ部材(55)においては、通過前離間動作のみが行われて、通過後接触動作が行われない。すなわちアルミニウム管(W)の後端(W1)が第5ローラ部材(55)を通過する前に、第5ローラ部材(55)が開放されて、アルミニウム管(W)の支持が解除される。
【0067】
そして第5ローラ部材(55)を開放したままの状態で、アルミニウム管(W)の後端(W1)が引抜ダイス(1)を通過して、引抜加工が終了するものである。
【0068】
なお本発明においては、第5ローラ部材(55)に対して、通過後接触動作を行うようにしても良い。すなわち図6に示すように、アルミニウム管(W)の後端が第5ローラ部材(55)を通過した後、第5ローラ部材(55)を閉塞させて一対の支持ローラ(6)(6)によってプラグロッド(3)を挟持するようにしても良い。
【0069】
以上のように、本実施形態の引抜加工装置によれば各、ローラ部材(5)によって、通過前離間動作を行っているため、支持ローラ(6)(6)がプラグロッド(3)に衝突して、プラグロッド(3)に振動が発生するのを確実に防止することができる。
【0070】
すなわち、アルミニウム管(W)の後端(W1)が通過する前に、支持ローラ(6)(6)を離間させているため、その離間状態から支持ローラ(6)をプラグロッド(3)に接触させる際に、支持ローラ(6)(6)の移動速度や接近方向等の動作を的確に制御することができる。このため、支持ローラ(6)(6)をプラグロッド(3)に衝撃を加えることなく軽く接触させることができ、プラグロッド(3)に振動が発生するのを確実に防止することができる。従って、引抜加工中に引抜プラグ(2)が振動することがなく、引抜管の表面に微小な凹凸欠陥部が発生する等の不具合を確実に防止でき、引抜製品の品質を向上させることができる。
【0071】
なお、通過前離間動作を行わずに例えば、支持ローラ(6)(6)によってアルミニウム管(W)に挟持した状態で、その支持ローラ(6)(6)をアルミニウム管(W)の後端(W1)が通過した場合、その通過直後にシリンダ等の挟持力に従って、支持ローラ(6)(6)がプラグロッド(3)の外周面に圧接するため、その圧接時の衝撃によって、プラグロッド(3)に振動が発生するおそれがある。
【0072】
また本実施形態では、第1〜第5ローラ部材(51)〜(55)のうち、最も引抜ダイス(1)に近い第5ローラ部材(55)においても、通過前離間動作を行っているため、プラグロッド(3)に振動が発生するのを、より確実に防止することができる。
【0073】
すなわち引抜ダイス(1)から遠い位置のローラ部材(5)例えば、第1ローラ部材(51)において、通過前離間動作を行わない場合には、その位置でプラグロッド(3)に振動が発生するが、その振動は、第1ローラ部材(51)よりも下流側に配置される第2〜第5ローラ部材(52)〜(55)によって吸収することができ、その振動による悪影響を回避することができる。従って第5ローラ部材(55)以外のローラ部材(52)〜(54)において、通過前離間動作を行わなずとも、そこでプラグロッド(3)に発生する振動は、下流側に配置されるローラ部材によって吸収することができ、振動による悪影響を低減させることができる。
【0074】
ところが第5ローラ部材(55)において、通過前離間動作を行わない場合には、そこでプラグロッド(3)に発生する振動は吸収することができず、引抜プラグ(2)に伝わって、引抜製品の品質を低下させてしまうおそれがある。
【0075】
従って本発明においては、複数のローラ部材(51)〜(55)のうち、最も引抜ダイス(1)に近い位置に配置されたローラ部材(55)において、通過前離間動作を行うのが望ましい。
【0076】
また本実施形態においては、全てのローラ部材(51)〜(55)において通過前離間動作を行っているため、全てのローラ部材(51)〜(55)の位置で、プラグロッド(3)に振動が発生するを確実に防止でき、より優れた振動防止効果を得ることができ、引抜製品の品質を一段と向上させることができる。
【0077】
もっとも本発明においては必ずしも、全てのローラ部材(51)〜(55)において通過前離間動作を行う必要がなく、少なくとも1つ以上のローラ部材(51)〜(55)において通過前離間動作を行うようにしても良い。この場合においても、プラグロッド(3)の振動防止効果を得ることができる。
【0078】
また本実施形態においては、全てのローラ部材(5)によってアルミニウム管(W)を支持するとともに、ローラ部材(51)〜(54)によって、通過後接触動作を行ってプラグロッド(3)を支持しているため、アルミニウム管(W)やプラグロッド(3)が自重により撓んでしまうのを防止できるとともに、プラグロッド(3)等に不用意に発生する振動も抑制することができ、引抜製品の品質をより一層向上させることができる。
【0079】
また上記実施形態では、初期状態において、全てのローラ部材(51)〜(55)を閉じてアルミニウム管(W)を挟持するようにしているが、それだけに限られず本発明においては、所定のローラ部材のみによって支持するようにしても良い。
【0080】
例えば初期状態において、第1,第4,第5ローラ部材(51)(54)(55)を閉じてアルミニウム管(W)を挟持するとともに、他のローラ部材(第2,第3ローラ52,53)を開いておき、その状態で引抜加工を開始するようにしても良い。この場合には例えば、第1,第4,第5ローラ部材(51)(54)(55)においては、通過前離間動作を行うことができるとともに、第2、第3ローラ部材(52)(53)においては、通過後接触動作を行うことができる。さらに初期状態において、所定のローラ部材のみによってアルミニウム管(W)を支持する場合には、少なくとも3つ以上のローラ部材によって支持するのが好ましい。
【0081】
また本発明においては、通過前離間動作を行ったローラ部材に対し、必ずしも通過後接触動作を行わせる必要はなく、通過前離間動作を行ったローラ部材をそのままプラグロッドから離間させた状態で、引抜加工を行うようにしても良い。
【0082】
また言うまでもなく、本発明においては、アルミニウム管(W)およびプラグロッド(3)を支持するためのローラ部材の設置数は、5つに限定されるものではなく、4つ以下でも良いし、6つ以上でも良い。
【0083】
また上記実施形態では、各ローラ部材(5)において一対の支持ローラ(6)(6)によって、アルミニウム管(W)の左右両側から挟持するように構成しているが、それだけに限られず、本発明においては、一対の支持ローラ(6)(6)をアルミニウム管(W)の上下両側に配置しておき、その支持ローラ(6)(6)によってアルミニウム管(W)を上下両側から挟持するようにしても良い。
【0084】
さらに上記実施形態では、ローラ部材を、両側から挟持する一対の支持ローラ(6)(6)によって構成しているが、それだけに限られず、本発明においては、1つ支持ローラや、V字状に配置された一対の支持ローラによって構成するようにしても良い。
【0085】
例えば図10,11に示すように、各ローラ部材(5)として、1つの支持ローラ(6)によって構成されたものも採用することもできる。すなわちこの引抜加工装置においては、各ローラ部材(5)において、鼓型形状の支持ローラ(6)がアルミニウム管(W)の搬送経路における下方位置に配置されている。支持ローラ(6)は、昇降フレーム(71)を介して上下方向に昇降自在に構成されている。
【0086】
その他の構成は、上記実施形態と実質的に同様であるため、同一部分に同一または相当符号を付して、重複説明は省略する。
【0087】
この変形例における引抜加工装置において、初期状態では、各ローラ部材(51)〜(55)の支持ローラ(6)が、アルミニウム管(W)を支持する高さ位置に設定されて、各ローラ部材(51)〜(55)の支持ローラ(6)によって、アルミニウム管(W)がその荷重が下側から受け止められる態様に支持されている。
【0088】
この状態から引抜加工が開始されて、アルミニウム管(W)の後端(W1)が第1ローラ部材(51)に近づくと、第1ローラ部材(51)の支持ローラ(6)が下方に降下して、アルミニウム管(W)から離間する(通過前離間動作)。続いてアルミニウム管(W)の後端(W1)が第1ローラ部材(51)を通過した後、第1ローラ部材(51)の支持ローラ(6)が上昇してプラグロッド(3)に接触し、その支持ローラ(6)によってプラグロッド(3)が支持される(通過後接触動作)。
【0089】
以下同様にして、第2〜第4ローラ部材(52)〜(54)にアルミニウム管(W)の後端(W1)がそれぞれ近づくと、各ローラ部材(52)〜(55)の支持ローラ(6)がそれぞれ降下して、アルミニウム管(W)からそれぞれ離間する(通過前離間動作)。続いてアルミニウム管(W)の後端(W1)が各ローラ部材(52)〜(54)をそれぞれ通過した後、各ローラ部材(52)〜(54)の支持ローラ(6)がそれぞれ上昇してプラグロッド(3)にそれぞれ接触し、各支持ローラ(6)によってプラグロッド(3)が支持される(通過後接触動作)。
【0090】
続いて第5ローラ部材(55)にアルミニウム管(W)の後端(W1)が近づくと、第5ローラ部材(55)がアルミニウム管(W)から離間し、そのままの状態でアルミニウム管(W)が引抜ダイス(1)を通過するものである。なお言うまでもなくこの変形例においても、第5ローラ部材(55)に対して、通過後接触動作を行わせるようにしても良い。
【0091】
この変形例の引抜加工装置によれば、通過前離間動作と、通過後接触動作とを行っているため、プラグロッド(3)に接触させる際の支持ローラ(6)の動作を的確に制御することができる。従って支持ローラ(6)をプラグロッド(3)に衝撃を加えることなく軽く接触させることができ、プラグロッド(3)に振動が発生するのを確実に防止することができる。
【0092】
なおこの変形例においても、ローラ部材(5)の通過前離間動作を行わない場合には、プラグロッド(3)に振動が発生する。すなわち支持ローラ(6)によってアルミニウム管(W)を支持したままの状態で、アルミニウム管(W)の後端(W1)が支持ローラ(6)を通過させると、その通過直後に自重によりプラグロッド(3)が降下して支持ローラ(6)に衝突し、プラグロッド(3)に振動が発生してしまう。
【0093】
またこの変形例の引抜加工装置においては、上記実施形態と同様、ローラ部材(51)〜(55)によって、アルミニウム管(W)およびプラグロッド(3)のいずれかを支持するようにしているため、アルミニウム管(W)やプラグロッド(3)が自重により撓んでしまうのを防止できるとともに、プラグロッド(3)等に不用意に発生する振動も抑制でき、引抜製品の品質をより一層向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
この発明の引抜加工方法は、アルミニウム管等の管材を引抜加工する際に採用される。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】この発明の実施形態である引抜加工装置を初期状態で示す概略平面図である。
【図2】実施形態の引抜加工装置を第1ローラ部材離間状態で示す概略平面図である。
【図3】実施形態の引抜加工装置を第2ローラ部材離間状態で示す概略平面図である。
【図4】実施形態の引抜加工装置を第3ローラ部材離間状態で示す概略平面図である。
【図5】実施形態の引抜加工装置を第5ローラ部材離間状態で示す概略平面図である。
【図6】実施形態の引抜加工装置において管材通過後に第5ローラ部材によってロッドを支持する場合の概略平面図である。
【図7】実施形態の引抜加工装置におけるローラ部材を管材保持状態で示す正面図である。
【図8】実施形態の引抜加工装置におけるローラ部材を開放状態で示す正面図である。
【図9】実施形態の引抜加工装置におけるローラ部材をプラグロッド保持状態で示す正面図である。
【図10】この発明の変形例である引抜加工装置を示す概略側面図である。
【図11】変形例の引抜加工装置におけるローラ部材を示すを示す正面図である。
【符号の説明】
【0096】
1…引抜ダイス
3…プラグロッド
5,51〜55…ローラ部材
6…支持ローラ
W…アルミニウム管(管材)
W1…後端
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルミニウム管等の管材を、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工方法およびその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真装置の感光ドラム用の基体として、押出加工したアルミニウム製の管材を、引抜加工して得られる引抜管、いわゆるED管が多く用いられている。
【0003】
特許文献1,2に示すように従来の引抜加工方法は、先端に引抜プラグ設けられたプラグロッドを内部に挿通配置したアルミニウム管を、引抜ダイスおよび引抜プラグ間の加工隙間に通して引き抜くようにしている。
【特許文献1】特開平9−29324号(特許請求の範囲、図1)
【特許文献2】特開平5−253611号(特許請求の範囲、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の引抜加工技術においては、生産性向上等のために、引抜管の長尺化が進められているが、引抜長さを長くすると当然のことながら、管材(素管)としてのアルミニウム管や、その内部に配置されるプラグロッドの寸法も長くなる。ところが、プラグロッドが長くなると、プラグロッドに振動が発生し易くなり、その振動によってロッド先端の引抜プラグが振動して、引抜管の表面に微小な凹凸欠陥部が形成されてしまう。特に感光ドラム基体として用いられる引抜管は、高度な寸法精度はもちろん、極めて高い表面品質が要求されるため、プラグロッドの振動に起因する微小な凹凸欠陥部の発生は致命傷にもなり兼ねず、プラグロッドの振動を極力抑制する必要がある。
【0005】
そこで従来においてはアルミニウム管およびプラグロッドを支持ローラによって支持して、プラグロッドに発生する振動を抑制する技術が提案されている。例えばアルミニウム管の搬送経路上に支持ローラを設けて、その支持ローラによって、アルミニウム管を支持する一方、アルミニウム管の後端が、上記支持ローラが通過した後は、その支持ローラによってプラグロッドを支持するものである。
【0006】
しかしながら、この提案技術においても、未だ十分に振動を抑制できず、引抜管の品質を確実に向上させることは困難であった。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、プラグロッドに振動が発生するのを防止でき、引抜管の品質を向上させることができる引抜加工方法およびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者はまず、上記提案技術の引抜加工方法において、プラグロッドに振動が発生する際のメカニズムについて探求した。
【0009】
すなわち、上記提案技術の引抜加工方法では、支持ローラによってアルミニウム管を支持しているものの、アルミニウム管が通過した後、その支持ローラによってプラグロッドを支持するようにしている。このように支持ローラによる支持対象が、アルミニウム管からプラグロッドに移行するが、この移行時には、支持ローラが大径のアルミニウム管外周面と小径のプラグロッド外周面との間の段差を通過することになる。この段差を支持ローラが通過してプラグロッドの外周面に接触する際に、プラグロッド外周面に衝突し、その衝撃によってプラグロッドに振動が発生するという事実を究明した。
【0010】
さらに本発明者は引き続き、綿密な実験研究をを行った結果、支持ローラがアルミニウム管からプラグロッドに移動する際の衝撃を緩和させることができれば、プラグロッドにおける振動の発生を有効に防止できるという知見を得た。
【0011】
そして本発明者は上記の研究結果を基に、上記目的を達成を可能とする最適な構成を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成を要旨とする。
【0012】
[1] 管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工方法であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路に沿って複数配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持可能なローラ部材を準備しておき、
複数のローラ部材のうち、引抜ダイスに最も近い位置に配置されるローラ部材に対して、管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせるようにしたことを特徴とする引抜加工方法。
【0013】
[2] 管材を支持する複数のローラ部材のうち、少なくとも2つ以上のローラ部材に対して、通過前離間動作を行わせるようにした前項1に記載の引抜加工方法。
【0014】
[3] いずれかのローラ部材に対して、管材の後端がローラ部材を通過した後、ローラ部材をプラグロッドに接触させてプラグロッドを支持する通過後接触動作を行わせる前項1または2に記載の引抜加工方法。
【0015】
[4] 引抜ダイスに最も近い位置に配置されるローラ部材に対して、通過後接触動作を行わせない前項3に記載の引抜加工方法。
【0016】
[5] ローラ部材として、管材の両側に開閉自在に設けられ、かつ管材を挟持して支持する一対の支持ローラが用いられる前項1〜4のいずれか1項に記載の引抜加工方法。
【0017】
[6] 管材として、アルミニウムまたはその合金製のアルミニウム管が使用される前項1〜5のいずれか1項に記載の引抜加工方法。
【0018】
[7] 管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工方法であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路上に配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持するローラ部材を準備しておき、
管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させるようにしたことを特徴とする引抜加工方法。
【0019】
[8] 前項1〜6のいずれか1項に記載された引抜加工方法によって製造されたことを特徴とする引抜管製品。
【0020】
[9] 管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工装置であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路に沿って複数配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持可能なローラ部材と、
複数のローラ部材のうち、引抜ダイスに最も近い位置に配置されるローラ部材に対して、管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせる通過前離間動作実行手段と、を備えることを特徴とする引抜加工装置。
【0021】
[10] ローラ部材が、管材の両側に開閉自在に設けられ、かつ管材を挟持して支持する一対の支持ローラによって構成される前項9に記載の引抜加工装置。
【0022】
[11] ローラ部材が、管材をその荷重を下側から受け止めるように支持する支持ローラによって構成される前項9に記載の引抜加工装置。
【0023】
[12] 複数のローラ部材が管材の搬送経路に沿って等間隔おきに配置される前項9〜11のいずれか1項に記載の引抜加工装置。
【0024】
[13] 管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工装置であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路上に配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持するローラ部材と、
管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせる通過前離間動作実行手段と、を備えることを特徴とする引抜加工装置。
【0025】
[14] 管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工装置における管材支持装置であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路上に配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持するローラ部材と、
管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせる通過前離間動作実行手段と、を備えることを特徴とする引抜加工装置における管材支持装置。
【0026】
[15] 管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くに際して、管材およびプラグロッドを支持する引抜加工装置における管材支持用ローラ部材であって、
管材の後端が通過する前に、管材から離間させることを特徴とする引抜加工装置における管材支持用ローラ部材。
【発明の効果】
【0027】
発明[1]の引抜加工方法によれば、管材の後端が通過する前に、ローラ部材を管材から離間させるため、プラグロッドに接触させる際のローラ部材の動作を的確に制御することができる。このため、ローラ部材をプラグロッドに衝撃を加えることなく軽く接触させることができ、プラグロッドに振動が発生するのを確実に防止することができ、引抜製品の品質を向上させることができる。
【0028】
発明[2]の引抜加工方法によれば、上記の効果を、より確実に得ることができる。
【0029】
発明[3][4]の引抜加工方法によれば、プラグロッドを確実に支持することができる。
【0030】
発明[5]の引抜加工方法によれば、管材およびプラグロッドを確実に支持することができる。
【0031】
発明[6]の引抜加工方法によれば、アルミニウム製の引抜管製品を得ることができる。
【0032】
発明[7]の引抜加工方法によれば、上記と同様に、プラグロッドに振動が発生するのを防止できて、引抜製品の品質を向上させることができる。
【0033】
発明[8]によれば、サイズが長く、表面品質に優れた引抜製品を得ることができる。
【0034】
発明[9]によれば、上記の発明方法を実施可能な引抜加工装置を特定するものであるため、上記と同様に、プラグロッドに振動が発生するのを防止できて、引抜製品の品質を向上させることができる。
【0035】
発明[10][11]の引抜加工装置によれば、管材およびプラグロッドをより確実に支持することができる。
【0036】
発明[12]の引抜加工装置によれば、管材およびプラグロッドをより安定した状態に支持することができる。
【0037】
発明[13]の引抜加工装置によれば、上記と同様に、プラグロッドに振動が発生するのを防止できて、引抜製品の品質を向上させることができる。
【0038】
発明[14]の引抜加工装置における管材支持装置によれば、上記と同様に、プラグロッドに振動が発生するのを防止できて、引抜製品の品質を向上させることができる。
【0039】
発明[15]の引抜加工装置における管材支持用ローラ部材によれば、上記と同様に、プラグロッドに振動が発生するのを防止できて、引抜製品の品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1はこの発明の実施形態であるアルミニウム管の引抜加工装置を概略的に示す平面図である。同図に示すように、この引抜加工装置は、引抜ダイス(1)と、引抜ダイス(1)のダイス孔(11)に対応して配置される引抜プラグ(2)とを備え、ダイス孔(11)と引抜プラグ(2)との間に環状の成形隙間が形成され、管材(素管)としてアルミニウム管(W)がこの成形隙間を通って引き抜かれるように構成されている。なお本実施形態においては、アルミニウム管(W)の搬送方向(図1に向かっての右方向)を「前方」として説明する。
【0041】
引抜プラグ(2)は、アルミニウム管(W)の搬送経路上に配置されたプラグロッド(3)を介して支持部材(31)に支持されている。
【0042】
またこの引抜加工装置においては、アルミニウム管(W)の搬送経路に沿って、複数のローラ部材(5)が所定の間隔おきに配置されている。複数のローラ部材(5)は、第1〜第5ローラ部材(51)〜(55)によって構成されており、第1〜第5ローラ部材(51)〜(55)がこの順で、搬送方向に対し上流側から下流側にかけて配置されている。
【0043】
なお本実施形態においては、第1〜第5ローラ部材(51)〜(55)のうち、第5ローラ部材(55)が、複数のローラ部材(51)〜(55)のうち、搬送方向に対し最も下流側、つまり引抜ダイス(1)に最も近い位置に配置されるローラ部材を構成している。
【0044】
図7,8に示すようにローラ部材(5)は、アルミニウム管(W)の左右両側に配置される一対の支持ローラ(6)(6)によって構成されている。各支持ローラ(6)(6)は、鼓型の形状を有し、回転軸(61)(61)が垂直に配置された状態で可動フレーム(7)(7)に回転自在に支持されている。
【0045】
可動フレーム(7)(7)は、アルミニウム管(W)に対し直交する水平方向に、シリンダ等の駆動手段(図示省略)によって移動できるよう構成されており、その移動に伴って、各支持ローラ(7)(7)が、アルミニウム管(W)に接離する方向(水平方向)に移動するようになっている。
【0046】
そして図7に示すように、一対の支持ローラ(6)(6)が、可動フレーム(7)(7)の移動に伴って、アルミニウム管(W)の両側に当接する方向に移動して閉塞されると、アルミニウム管(W)が一対の支持ローラ(6)(6)によって左右両側から挟持されて支持されるよう構成されている。また図8に示すように、一対の支持ローラ(6)(6)が可動フレーム(7)(7)の移動に伴って、アルミニウム管(W)から遠ざかる方向に移動して開放されると、アルミニウム管(W)から一対の支持ローラ(6)(6)が両側方へ離間して支持が解除されるよう構成されている。
【0047】
また図9に示すように、アルミニウム管(W)が一対の支持ローラ(6)(6)の位置を通り過ぎた状態で、一対の支持ローラ(6)(6)が閉塞されると、アルミニウム管(W)内に配置されたプラグロッド(3)が一対の支持ローラ(6)(6)によって両側から挟持されて支持されるように構成されている。
【0048】
なお本実施形態においては、ローラ部材(51)〜(55)によって、管材支持装置が構成されている。
【0049】
以上の構成の引抜加工装置は、パーソナルコンピュータ等によって構成される制御装置(図示省略)を備えており、この制御装置によって、支持ローラ(6)のシリンダ等の駆動部を含む引抜加工装置の各駆動部が制御されて、後に説明する動作が自動的に行われるようになっている。なお本実施形態においては、この制御動作に、後述する通過前離間動作や、通過後接触動作が含まれており、これらの通過前離間動作および通過後接触動作を行うための制御装置の機能(プログラム)によって、通過前離間動作実行手段および通過後接触動作実行手段が構成されている。
【0050】
次に本実施形態の引抜加工装置の動作について説明する。まず図1に示すようにアルミニウム管(W)がセットされた初期状態においては、管内部における軸心に沿ってプラグロッド(3)が配置される。さらにこの初期状態においては、各ローラ部材(51)〜(55)が全て閉塞されて、アルミニウム管(W)が挟持(支持)されている。またアルミニウム管(W)の先端側は、引抜ダイス(1)および引抜プラグ(2)間の成形加工隙間に挿通されて、図示しないチャック部材によって把持されている。
【0051】
この状態においてチャック部材が引抜方向(前方)に移動して引抜加工が開始される。こうして引抜加工が開始されて、アルミニウム管(W)が搬送されていき図2,8に示すように、アルミニウム管(W)の後端(W1)が、第1ローラ部材(51)に近づくと、つまりアルミニウム管(W)の後端(W1)が、第1ローラ部材(51)を通過する直前に、第1ローラ部材(51)の支持ローラ(6)(6)が開放されて、アルミニウム管(W)への支持が解除される(通過前離間動作)。
【0052】
ここでアルミニウム管(W)の後端(W1)が、第1ローラ部材(51)に近づいたことを検出する方法としては、後端位置検出センサを用いる方法等を採用することができる。後端位置検出センサとしては例えば、アルミニウム管(W)に向けて照射した光の反射の有無を検知することにより、アルミニウム管(W)の後端位置を検出する反射型検出センサや、アルミニウム管(W)を挟んで投光器および受光器を配置して、投光器から受光器に向けて照射した光がアルミニウム管(W)によって遮断されるか否かによってアルミニウム管(W)の後端位置を検出する透過型検出センサ等を好適に用いることができる。
【0053】
本実施形態では例えば、この後端位置検出センサを、第1ローラ部材(51)の管搬送方向上流側に配置しておいて、その位置でアルミニウム管(W)の後端位置が検出された際に、その旨の信号を後端位置検出センサから上記制御装置が受信することによって、第1ローラ部材(51)の駆動を制御して、第1ローラ部材(51)の支持ローラ(6)(6)を開かせるように構成すれば良い。
【0054】
なお後端位置検出センサとしては、上記の反射型検出センサや透過型検出センサ等の非接触式センサ以外にも、接触型検出センサを用いることも可能である。
【0055】
また本実施形態においては、上記の後端位置検出センサを用いず、アルミニウム管(W)の後端(W1)が、第1ローラ部材(51)に近づいたことを検出することも可能である。例えば初期状態のアルミニウム管(W)の後端位置、アルミニウム管(W)の搬送速度、および搬送経過時間等に基づいて、搬送中のアルミニウム管後端(W1)の位置を計測することができるため、その計測された後端(W1)の位置に基づいて、アルミニウム管(W)の後端(W1)が第1ローラ部材(51)に近づいたことを検出することも可能である。
【0056】
さらに本実施形態においては、後端位置検出センサを用いる方法と、搬送速度や搬送経過時間等からアルミニウム管後端(W1)の位置を計測する方法とを組み合わせて、アルミニウム管後端(W1)の位置を検出するようにしても良い。
【0057】
なお後述するように、第2〜第5ローラ部材(52)〜(55)においても、アルミニウム管(W)の後端(W1)が近づいたことを検出する必要があるが、この検出方法においても、上記と同様の手段を用いれば良い。
【0058】
第1ローラ部材(51)の一対の支持ローラ(6)(6)が開放した後、そのローラ位置をアルミニウム管(W)の後端(W1)が通過する。そしてその通過後に、図3,9に示すように、第1ローラ部材(51)の一対の支持ローラ(6)(6)が閉塞されて、プラグロッド(3)が第1ローラ部材(51)における一対の支持ローラ(6)(6)によって挟持(支持)される(通過後接触動作)。
【0059】
ここでアルミニウム管(W)の後端(W1)が第1ローラ部材(51)を通過したことを検出する方法としては、上記と同様に、後端位置検出センサを用いる方法や、搬送速度や時間等から後端(W1)の位置を計測する方法や、両検出方法を組み合わせる方法等を採用することができる。
【0060】
例えば、上記の後端位置検出センサを、第1ローラ部材(51)の管搬送方向下流側に配置しておいて、その位置でアルミニウム管(W)の後端位置が検出された際に、その旨の信号を後端位置検出センサから上記制御装置が受信することによって、第1ローラ部材(51)の駆動を制御して、第1ローラ部材(51)の支持ローラ(6)(6)を閉じさせるように構成すれば良い。
【0061】
また後述するように、第2〜第5ローラ部材(52)〜(55)においても、アルミニウム管(W)の後端(W1)が通過したことを検出する必要があるが、この検出方法においても、上記と同様な手段を用いれば良い。
【0062】
なお本実施形態においては、通過前離間動作と、通過後接触動作とを連続して行う動作を、「離間/接触動作」と称する。
【0063】
第1ローラ部材(51)によってプラグロッド(3)が挟持された後、図4に示すようにアルミニウム管(W)の後端(W1)が第2ローラ部材(52)に近づくと、第2ローラ部材(52)の一対の支持ローラ(6)(6)が開放されて、アルミニウム管(W)への支持が解除される。
【0064】
続いて図4に示すように、アルミニウム管(W)の後端(W1)が第2ローラ部材(52)を通過した後、第2ローラ部材(52)が閉塞されて、その一対の支持ローラ(6)(6)によってプラグロッド(3)が挟持(支持)される。
【0065】
以下同様にして図4,5に示すように、第3,4ローラ部材(53)(54)においても、上記と同様な離間/接触動作が行われる。すなわちアルミニウム管(W)の後端(W1)が近づくと、各ローラ部材(53)(54)がそれぞれ開放されて、アルミニウム管(W)に対する支持が解除される一方、各ローラ部材(53)(54)をアルミニウム管(W)の後端(W1)が通過した後、各ローラ部材(53)(54)がそれぞれ閉塞されて、各一対の支持ローラ(6)(6)によってプラグロッド(3)が挟持(支持)される。
【0066】
その後、第5ローラ部材(55)においては、通過前離間動作のみが行われて、通過後接触動作が行われない。すなわちアルミニウム管(W)の後端(W1)が第5ローラ部材(55)を通過する前に、第5ローラ部材(55)が開放されて、アルミニウム管(W)の支持が解除される。
【0067】
そして第5ローラ部材(55)を開放したままの状態で、アルミニウム管(W)の後端(W1)が引抜ダイス(1)を通過して、引抜加工が終了するものである。
【0068】
なお本発明においては、第5ローラ部材(55)に対して、通過後接触動作を行うようにしても良い。すなわち図6に示すように、アルミニウム管(W)の後端が第5ローラ部材(55)を通過した後、第5ローラ部材(55)を閉塞させて一対の支持ローラ(6)(6)によってプラグロッド(3)を挟持するようにしても良い。
【0069】
以上のように、本実施形態の引抜加工装置によれば各、ローラ部材(5)によって、通過前離間動作を行っているため、支持ローラ(6)(6)がプラグロッド(3)に衝突して、プラグロッド(3)に振動が発生するのを確実に防止することができる。
【0070】
すなわち、アルミニウム管(W)の後端(W1)が通過する前に、支持ローラ(6)(6)を離間させているため、その離間状態から支持ローラ(6)をプラグロッド(3)に接触させる際に、支持ローラ(6)(6)の移動速度や接近方向等の動作を的確に制御することができる。このため、支持ローラ(6)(6)をプラグロッド(3)に衝撃を加えることなく軽く接触させることができ、プラグロッド(3)に振動が発生するのを確実に防止することができる。従って、引抜加工中に引抜プラグ(2)が振動することがなく、引抜管の表面に微小な凹凸欠陥部が発生する等の不具合を確実に防止でき、引抜製品の品質を向上させることができる。
【0071】
なお、通過前離間動作を行わずに例えば、支持ローラ(6)(6)によってアルミニウム管(W)に挟持した状態で、その支持ローラ(6)(6)をアルミニウム管(W)の後端(W1)が通過した場合、その通過直後にシリンダ等の挟持力に従って、支持ローラ(6)(6)がプラグロッド(3)の外周面に圧接するため、その圧接時の衝撃によって、プラグロッド(3)に振動が発生するおそれがある。
【0072】
また本実施形態では、第1〜第5ローラ部材(51)〜(55)のうち、最も引抜ダイス(1)に近い第5ローラ部材(55)においても、通過前離間動作を行っているため、プラグロッド(3)に振動が発生するのを、より確実に防止することができる。
【0073】
すなわち引抜ダイス(1)から遠い位置のローラ部材(5)例えば、第1ローラ部材(51)において、通過前離間動作を行わない場合には、その位置でプラグロッド(3)に振動が発生するが、その振動は、第1ローラ部材(51)よりも下流側に配置される第2〜第5ローラ部材(52)〜(55)によって吸収することができ、その振動による悪影響を回避することができる。従って第5ローラ部材(55)以外のローラ部材(52)〜(54)において、通過前離間動作を行わなずとも、そこでプラグロッド(3)に発生する振動は、下流側に配置されるローラ部材によって吸収することができ、振動による悪影響を低減させることができる。
【0074】
ところが第5ローラ部材(55)において、通過前離間動作を行わない場合には、そこでプラグロッド(3)に発生する振動は吸収することができず、引抜プラグ(2)に伝わって、引抜製品の品質を低下させてしまうおそれがある。
【0075】
従って本発明においては、複数のローラ部材(51)〜(55)のうち、最も引抜ダイス(1)に近い位置に配置されたローラ部材(55)において、通過前離間動作を行うのが望ましい。
【0076】
また本実施形態においては、全てのローラ部材(51)〜(55)において通過前離間動作を行っているため、全てのローラ部材(51)〜(55)の位置で、プラグロッド(3)に振動が発生するを確実に防止でき、より優れた振動防止効果を得ることができ、引抜製品の品質を一段と向上させることができる。
【0077】
もっとも本発明においては必ずしも、全てのローラ部材(51)〜(55)において通過前離間動作を行う必要がなく、少なくとも1つ以上のローラ部材(51)〜(55)において通過前離間動作を行うようにしても良い。この場合においても、プラグロッド(3)の振動防止効果を得ることができる。
【0078】
また本実施形態においては、全てのローラ部材(5)によってアルミニウム管(W)を支持するとともに、ローラ部材(51)〜(54)によって、通過後接触動作を行ってプラグロッド(3)を支持しているため、アルミニウム管(W)やプラグロッド(3)が自重により撓んでしまうのを防止できるとともに、プラグロッド(3)等に不用意に発生する振動も抑制することができ、引抜製品の品質をより一層向上させることができる。
【0079】
また上記実施形態では、初期状態において、全てのローラ部材(51)〜(55)を閉じてアルミニウム管(W)を挟持するようにしているが、それだけに限られず本発明においては、所定のローラ部材のみによって支持するようにしても良い。
【0080】
例えば初期状態において、第1,第4,第5ローラ部材(51)(54)(55)を閉じてアルミニウム管(W)を挟持するとともに、他のローラ部材(第2,第3ローラ52,53)を開いておき、その状態で引抜加工を開始するようにしても良い。この場合には例えば、第1,第4,第5ローラ部材(51)(54)(55)においては、通過前離間動作を行うことができるとともに、第2、第3ローラ部材(52)(53)においては、通過後接触動作を行うことができる。さらに初期状態において、所定のローラ部材のみによってアルミニウム管(W)を支持する場合には、少なくとも3つ以上のローラ部材によって支持するのが好ましい。
【0081】
また本発明においては、通過前離間動作を行ったローラ部材に対し、必ずしも通過後接触動作を行わせる必要はなく、通過前離間動作を行ったローラ部材をそのままプラグロッドから離間させた状態で、引抜加工を行うようにしても良い。
【0082】
また言うまでもなく、本発明においては、アルミニウム管(W)およびプラグロッド(3)を支持するためのローラ部材の設置数は、5つに限定されるものではなく、4つ以下でも良いし、6つ以上でも良い。
【0083】
また上記実施形態では、各ローラ部材(5)において一対の支持ローラ(6)(6)によって、アルミニウム管(W)の左右両側から挟持するように構成しているが、それだけに限られず、本発明においては、一対の支持ローラ(6)(6)をアルミニウム管(W)の上下両側に配置しておき、その支持ローラ(6)(6)によってアルミニウム管(W)を上下両側から挟持するようにしても良い。
【0084】
さらに上記実施形態では、ローラ部材を、両側から挟持する一対の支持ローラ(6)(6)によって構成しているが、それだけに限られず、本発明においては、1つ支持ローラや、V字状に配置された一対の支持ローラによって構成するようにしても良い。
【0085】
例えば図10,11に示すように、各ローラ部材(5)として、1つの支持ローラ(6)によって構成されたものも採用することもできる。すなわちこの引抜加工装置においては、各ローラ部材(5)において、鼓型形状の支持ローラ(6)がアルミニウム管(W)の搬送経路における下方位置に配置されている。支持ローラ(6)は、昇降フレーム(71)を介して上下方向に昇降自在に構成されている。
【0086】
その他の構成は、上記実施形態と実質的に同様であるため、同一部分に同一または相当符号を付して、重複説明は省略する。
【0087】
この変形例における引抜加工装置において、初期状態では、各ローラ部材(51)〜(55)の支持ローラ(6)が、アルミニウム管(W)を支持する高さ位置に設定されて、各ローラ部材(51)〜(55)の支持ローラ(6)によって、アルミニウム管(W)がその荷重が下側から受け止められる態様に支持されている。
【0088】
この状態から引抜加工が開始されて、アルミニウム管(W)の後端(W1)が第1ローラ部材(51)に近づくと、第1ローラ部材(51)の支持ローラ(6)が下方に降下して、アルミニウム管(W)から離間する(通過前離間動作)。続いてアルミニウム管(W)の後端(W1)が第1ローラ部材(51)を通過した後、第1ローラ部材(51)の支持ローラ(6)が上昇してプラグロッド(3)に接触し、その支持ローラ(6)によってプラグロッド(3)が支持される(通過後接触動作)。
【0089】
以下同様にして、第2〜第4ローラ部材(52)〜(54)にアルミニウム管(W)の後端(W1)がそれぞれ近づくと、各ローラ部材(52)〜(55)の支持ローラ(6)がそれぞれ降下して、アルミニウム管(W)からそれぞれ離間する(通過前離間動作)。続いてアルミニウム管(W)の後端(W1)が各ローラ部材(52)〜(54)をそれぞれ通過した後、各ローラ部材(52)〜(54)の支持ローラ(6)がそれぞれ上昇してプラグロッド(3)にそれぞれ接触し、各支持ローラ(6)によってプラグロッド(3)が支持される(通過後接触動作)。
【0090】
続いて第5ローラ部材(55)にアルミニウム管(W)の後端(W1)が近づくと、第5ローラ部材(55)がアルミニウム管(W)から離間し、そのままの状態でアルミニウム管(W)が引抜ダイス(1)を通過するものである。なお言うまでもなくこの変形例においても、第5ローラ部材(55)に対して、通過後接触動作を行わせるようにしても良い。
【0091】
この変形例の引抜加工装置によれば、通過前離間動作と、通過後接触動作とを行っているため、プラグロッド(3)に接触させる際の支持ローラ(6)の動作を的確に制御することができる。従って支持ローラ(6)をプラグロッド(3)に衝撃を加えることなく軽く接触させることができ、プラグロッド(3)に振動が発生するのを確実に防止することができる。
【0092】
なおこの変形例においても、ローラ部材(5)の通過前離間動作を行わない場合には、プラグロッド(3)に振動が発生する。すなわち支持ローラ(6)によってアルミニウム管(W)を支持したままの状態で、アルミニウム管(W)の後端(W1)が支持ローラ(6)を通過させると、その通過直後に自重によりプラグロッド(3)が降下して支持ローラ(6)に衝突し、プラグロッド(3)に振動が発生してしまう。
【0093】
またこの変形例の引抜加工装置においては、上記実施形態と同様、ローラ部材(51)〜(55)によって、アルミニウム管(W)およびプラグロッド(3)のいずれかを支持するようにしているため、アルミニウム管(W)やプラグロッド(3)が自重により撓んでしまうのを防止できるとともに、プラグロッド(3)等に不用意に発生する振動も抑制でき、引抜製品の品質をより一層向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
この発明の引抜加工方法は、アルミニウム管等の管材を引抜加工する際に採用される。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】この発明の実施形態である引抜加工装置を初期状態で示す概略平面図である。
【図2】実施形態の引抜加工装置を第1ローラ部材離間状態で示す概略平面図である。
【図3】実施形態の引抜加工装置を第2ローラ部材離間状態で示す概略平面図である。
【図4】実施形態の引抜加工装置を第3ローラ部材離間状態で示す概略平面図である。
【図5】実施形態の引抜加工装置を第5ローラ部材離間状態で示す概略平面図である。
【図6】実施形態の引抜加工装置において管材通過後に第5ローラ部材によってロッドを支持する場合の概略平面図である。
【図7】実施形態の引抜加工装置におけるローラ部材を管材保持状態で示す正面図である。
【図8】実施形態の引抜加工装置におけるローラ部材を開放状態で示す正面図である。
【図9】実施形態の引抜加工装置におけるローラ部材をプラグロッド保持状態で示す正面図である。
【図10】この発明の変形例である引抜加工装置を示す概略側面図である。
【図11】変形例の引抜加工装置におけるローラ部材を示すを示す正面図である。
【符号の説明】
【0096】
1…引抜ダイス
3…プラグロッド
5,51〜55…ローラ部材
6…支持ローラ
W…アルミニウム管(管材)
W1…後端
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工方法であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路に沿って複数配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持可能なローラ部材を準備しておき、
複数のローラ部材のうち、引抜ダイスに最も近い位置に配置されるローラ部材に対して、管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせるようにしたことを特徴とする引抜加工方法。
【請求項2】
管材を支持する複数のローラ部材のうち、少なくとも2つ以上のローラ部材に対して、通過前離間動作を行わせるようにした請求項1に記載の引抜加工方法。
【請求項3】
いずれかのローラ部材に対して、管材の後端がローラ部材を通過した後、ローラ部材をプラグロッドに接触させてプラグロッドを支持する通過後接触動作を行わせる請求項1または2に記載の引抜加工方法。
【請求項4】
引抜ダイスに最も近い位置に配置されるローラ部材に対して、通過後接触動作を行わせない請求項3に記載の引抜加工方法。
【請求項5】
ローラ部材として、管材の両側に開閉自在に設けられ、かつ管材を挟持して支持する一対の支持ローラが用いられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の引抜加工方法。
【請求項6】
管材として、アルミニウムまたはその合金製のアルミニウム管が使用される請求項1〜5のいずれか1項に記載の引抜加工方法。
【請求項7】
管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工方法であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路上に配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持するローラ部材を準備しておき、
管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させるようにしたことを特徴とする引抜加工方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載された引抜加工方法によって製造されたことを特徴とする引抜管製品。
【請求項9】
管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工装置であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路に沿って複数配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持可能なローラ部材と、
複数のローラ部材のうち、引抜ダイスに最も近い位置に配置されるローラ部材に対して、管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせる通過前離間動作実行手段と、を備えることを特徴とする引抜加工装置。
【請求項10】
ローラ部材が、管材の両側に開閉自在に設けられ、かつ管材を挟持して支持する一対の支持ローラによって構成される請求項9に記載の引抜加工装置。
【請求項11】
ローラ部材が、管材をその荷重を下側から受け止めるように支持する支持ローラによって構成される請求項9に記載の引抜加工装置。
【請求項12】
複数のローラ部材が管材の搬送経路に沿って等間隔おきに配置される請求項9〜11のいずれか1項に記載の引抜加工装置。
【請求項13】
管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工装置であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路上に配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持するローラ部材と、
管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせる通過前離間動作実行手段と、を備えることを特徴とする引抜加工装置。
【請求項14】
管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工装置における管材支持装置であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路上に配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持するローラ部材と、
管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせる通過前離間動作実行手段と、を備えることを特徴とする引抜加工装置における管材支持装置。
【請求項15】
管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くに際して、管材およびプラグロッドを支持する引抜加工装置における管材支持用ローラ部材であって、
管材の後端が通過する前に、管材から離間させることを特徴とする引抜加工装置における管材支持用ローラ部材。
【請求項1】
管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工方法であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路に沿って複数配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持可能なローラ部材を準備しておき、
複数のローラ部材のうち、引抜ダイスに最も近い位置に配置されるローラ部材に対して、管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせるようにしたことを特徴とする引抜加工方法。
【請求項2】
管材を支持する複数のローラ部材のうち、少なくとも2つ以上のローラ部材に対して、通過前離間動作を行わせるようにした請求項1に記載の引抜加工方法。
【請求項3】
いずれかのローラ部材に対して、管材の後端がローラ部材を通過した後、ローラ部材をプラグロッドに接触させてプラグロッドを支持する通過後接触動作を行わせる請求項1または2に記載の引抜加工方法。
【請求項4】
引抜ダイスに最も近い位置に配置されるローラ部材に対して、通過後接触動作を行わせない請求項3に記載の引抜加工方法。
【請求項5】
ローラ部材として、管材の両側に開閉自在に設けられ、かつ管材を挟持して支持する一対の支持ローラが用いられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の引抜加工方法。
【請求項6】
管材として、アルミニウムまたはその合金製のアルミニウム管が使用される請求項1〜5のいずれか1項に記載の引抜加工方法。
【請求項7】
管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工方法であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路上に配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持するローラ部材を準備しておき、
管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させるようにしたことを特徴とする引抜加工方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載された引抜加工方法によって製造されたことを特徴とする引抜管製品。
【請求項9】
管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工装置であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路に沿って複数配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持可能なローラ部材と、
複数のローラ部材のうち、引抜ダイスに最も近い位置に配置されるローラ部材に対して、管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせる通過前離間動作実行手段と、を備えることを特徴とする引抜加工装置。
【請求項10】
ローラ部材が、管材の両側に開閉自在に設けられ、かつ管材を挟持して支持する一対の支持ローラによって構成される請求項9に記載の引抜加工装置。
【請求項11】
ローラ部材が、管材をその荷重を下側から受け止めるように支持する支持ローラによって構成される請求項9に記載の引抜加工装置。
【請求項12】
複数のローラ部材が管材の搬送経路に沿って等間隔おきに配置される請求項9〜11のいずれか1項に記載の引抜加工装置。
【請求項13】
管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工装置であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路上に配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持するローラ部材と、
管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせる通過前離間動作実行手段と、を備えることを特徴とする引抜加工装置。
【請求項14】
管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くようにした引抜加工装置における管材支持装置であって、
管材の引抜ダイスへの搬送経路上に配置され、かつ管材およびプラグロッドを支持するローラ部材と、
管材の後端がローラ部材を通過する前に、ローラ部材を管材から離間させる通過前離間動作を行わせる通過前離間動作実行手段と、を備えることを特徴とする引抜加工装置における管材支持装置。
【請求項15】
管材をその内部にプラグロッドを配置した状態で、引抜ダイスに通して引き抜くに際して、管材およびプラグロッドを支持する引抜加工装置における管材支持用ローラ部材であって、
管材の後端が通過する前に、管材から離間させることを特徴とする引抜加工装置における管材支持用ローラ部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−155255(P2008−155255A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347312(P2006−347312)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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