説明

引摺り試験方法およびその試験装置

【課題】 ジャダー発生の主要因であるロータ倒れ後の復帰挙動等の再現を可能にして、局部引摺りによるロータ摩耗成長の要因等を追跡できる引摺り試験方法およびその試験装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 ディスクブレーキのロータの回転時の引摺りデータを取得する引摺り試験方法において、試験装置はその支持軸4に装着されるディスクブレーキ8と回転軸5に装着されるロータ7とからなり、ディスクブレーキ8への加圧解除後またはその後のロータ7の回転中に、前記ロータ7を軸方向に移動することで、ロータ7の変位による引摺りトルクを再現することにより、引摺りトルクを分解させた試験ができることはもとより、ロータ倒れ後の復帰挙動等の再現を可能にして、局部引摺りによるロータ摩耗成長の要因等が追跡できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキのロータの回転時の引摺りデータを取得する引摺り試験方法およびその試験装置に関する。ロータは高温熱倒れ以外にも、車両のコーナリングや加減速時等、足廻りの一次変形によってもロータは短時間であるが倒れ復帰を生じるので、それらに起因する引摺り現象の分析・把握にも適用できる。
【背景技術】
【0002】
車両において使用されるディスクブレーキ装置にあって、パッド部材により挟圧されて制動が行われるブレーキロータ(以下ロータという)は、高速からの繰り返し制動等でのパッドとの摺接により高温になり、ロータはその開口部が広がるように(一般的にはアウタ側へ)全周にわたり倒れが生じ易い。ロータはその後冷却によって徐々に元の位置に復帰していく。しかし、ディスクブレーキのキャリパやピストンはある程度の摺動抵抗があり、制動等の加圧解除が行われないと、その場所に留まろうとするので、ロータが回転することによって、ロータ側面とパッドとの間に不均一な接触摺動による引摺り、その繰返し制動による摩耗、そしてジャダー等が見られるようになる。その引摺り現象の分析・把握のために、回転軸に対してロータの側面が傾斜したロータ(全周同じ方向に傾斜)を作り出して引摺り試験(例えば、下記非特許文献1等)が行われている。
【非特許文献1】JASO−C448−89(自動車規格)引摺り試験
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、倒れをもつロータを作製することはコストが高く、また、正規ロータとの引摺り試験の結果データ比較において、同一ロータではないのでその信頼性に不安があった。このように、ロータ倒れおよびその復帰後の引摺りトルクに関しては分析手法が確立されていなかった。
【0004】
そこで本発明は、前記従来の引摺り試験における課題を解決して、ロータ倒れ、特に高速からの繰り返し制動による熱倒れ後の復帰挙動等の再現を可能にして、局部引摺りによるロータ摩耗成長の要因等を追跡できる引摺り試験方法およびその試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため本発明は、ディスクブレーキのロータの回転時の引摺りデータを取得する引摺り試験方法において、試験装置はその支持軸に装着されるディスクブレーキと回転軸に装着されるロータとからなり、ディスクブレーキへの加圧解除後またはその後のロータの回転中に、前記ロータを軸方向に移動することで、ロータの倒れによる引摺りトルクを再現することを特徴とする。また本発明は、ディスクブレーキのロータの回転時の引摺りデータを取得する引摺り試験方法において、試験装置はその支持軸に装着されるディスクブレーキと回転軸に装着されるロータとからなり、ディスクブレーキへの加圧解除後またはその後のロータの回転中に、前記ロータを軸方向に移動することで、ロータの熱倒れからの冷却による復帰の経過を再現することを特徴とする。また本発明は、前記ロータは、回転開始後に移動を開始することを特徴とする。また本発明は、前記ロータは、移動速度、移動量、移動方向を選択可能にされていることを特徴とする。また本発明は、前記1番目から4番目のいずれかに記載の引摺り試験方法に使用される引摺り試験装置であって、ロータの回転前に加圧流体または負圧流体を選択的に供給されるディスクブレーキが取り付けられた支持軸を支持する静止支柱と、前記ディスクブレーキのパッドに摺接可能に配置されるロータを回転可能に取り付けた回転軸を軸支する可動支柱を前記静止支柱に対して軸方向に移動可能に構成したことを特徴とする。また本発明は、前記回転軸へのロータの取付けは、該ロータと回転軸のそれぞれの回転軸心の交差角度を調整できる治具を介してなされることを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ディスクブレーキのロータの回転時の引摺りデータを取得する引摺り試験方法において、試験装置はその支持軸に装着されるディスクブレーキと回転軸に装着されるロータとからなり、ディスクブレーキへの加圧解除後またはその後のロータの回転中に、前記ロータを軸方向に移動することで、ロータの倒れによる引摺りトルクを再現することにより、引摺りトルクを分解させた試験ができる。
【0007】
また、前記ロータは、ディスクブレーキのロータの回転時の引摺りデータを取得する引摺り試験方法において、試験装置はその支持軸に装着されるディスクブレーキと回転軸に装着されるロータとからなり、ディスクブレーキへの加圧解除後またはその後のロータの回転中に、前記ロータを軸方向に移動することで、ロータの熱倒れからの冷却による復帰の経過を再現することにより、ロータ熱倒れ後の復帰挙動等の再現を可能にして、局部引摺りによるロータ摩耗成長の要因等が追跡できる。さらに、前記ロータは、回転開始後に移動を開始する場合は、ロータの熱倒れ等からの冷却復帰の経過における引摺りトルクを波形として測定でき、ロータ倒れに対する引摺り増加がどのくらいあるのかを見極めて、そのメカニズムを推定できる。さらにまた、前記ロータは、移動速度、移動量、移動方向を選択可能にされている場合は、実車でのアウタ側へのロータ熱倒れはもとよりインナ側へのロータ熱倒れ後の復帰条件を自在に調整して、DTV成長程度を微細に再現できる。
【0008】
さらにまた、前記1番目から4番目のいずれかに記載の引摺り試験方法に使用される引摺り試験装置であって、ロータの回転前に加圧流体または負圧流体を選択的に供給されるディスクブレーキが取り付けられた支持軸を支持する静止支柱と、前記ディスクブレーキのパッドに摺接可能に配置されるロータを回転可能に取り付けた回転軸を軸支する可動支柱を前記静止支柱に対して軸方向に移動可能に構成した場合は、加圧流体と負圧流体の選択的供給によりディスクブレーキへの入力条件を任意にできるとともに、ロータを回転可能に取り付けた回転軸を軸支する可動支柱をディスクブレーキキャリパが取り付けられた支持軸を支持する静止支柱に対して簡単な構造の移動手段により移動させるだけで、引摺りトルクの要因分析試験ができることはもとより、制動時のジャダー発生の主要因であるロータ倒れ後の復帰挙動等の再現を可能にして、局部引摺りによるロータ摩耗成長の要因等が追跡できる。
【0009】
また、前記回転軸へのロータの取付けは、該ロータと回転軸のそれぞれの回転軸心の交差角度を調整できる治具を介してなされる場合は、振れ量の調整に時間が掛かり、振れのサインカーブをうまく作りづらい調整シム等を介設することなく、治具によるロータと回転軸のそれぞれの回転軸心の交差角度を調整して、その引摺り現象の分析・把握のために、回転軸に対してロータの側面を傾斜させてロータの振れを実験的に作り出せるので、回転軸に対するロータの回転軸心の交差角度の調整作業時間も大幅に短縮できる。ロータの振れ量は、熱倒れ後の復帰による引摺りに影響があり、しっかりと調整することが必要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の引摺り試験方法およびその試験装置を実施するための好適な形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の引摺り試験方法に用いられる試験装置の1つの実施例で概略全体図、図2は引摺りによるDTV(ロータ肉厚差)成長メカニズムの説明図および引摺り試験装置による再現説明図、図3は本発明の引摺り試験装置の制御例図、図4は引摺りトルク振幅とロータ削れとの関係の説明図、図5は本発明の引摺り試験方法におけるロータの軸移動と引摺りトルクとの関係の説明図である。本発明の引摺り試験方法およびその試験装置の基本的な構成は、図1に示すように、ディスクブレーキのロータの回転時の引摺りデータを取得する引摺り試験方法において、試験装置はその支持軸4に装着されるディスクブレーキ8と回転軸5に装着されるロータ7とからなり、ディスクブレーキ8への加圧解除後またはその後のロータ7の回転中に、前記ロータ7を軸方向に移動することで、ロータ7の変位による引摺りトルクを再現することを特徴とするものである。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明の引摺り試験方法に用いられる試験装置の概略全体図である。引摺り試験装置は、マスタシリンダ15、バキュームポンプ17、台座移動用モータ11等を収容・設置した台枠1の上面にディスクブレーキキャリパ8が設置された静止支柱2と、該静止支柱2に対してロータ7を回転かつ傾動可能に取り付けた回転軸5を軸支する可動支柱3を軸方向に移動可能に設置して構成される。マスタシリンダ15は、エアーサーボ制御により正圧管路20、管路22を通じてディスクブレーキキャリパ8に所定圧のエアーを供給する。バキュームポンプ17は、第1負圧管路21Aを通じてバキュームタンク16からエアーを吸引し、該バキュームタンク16は、第2負圧管路21B、管路22を通じてディスクブレーキキャリパ8に負圧を掛けることができる。管路22と正圧管路20および第2負圧管路21Bとの間の分岐部には切換弁23が配設され、ディスクブレーキキャリパ8への正圧と負圧を供給して、加圧解除、ピストン戻しと解除がなされる。
【0012】
静止支柱2は台枠1の上面の一方側に起立固定され、その上部に水平状の支持軸4が回転自在に支持される。該支持軸4の回転軸5側の端部に取付板等を介してディスクブレーキキャリパ8が取り付けられる。支持軸4の外側端部には、ディスクブレーキキャリパ8がロータ7からの回転動作がなされた際にパッド24、25等に接触して支持軸4に発生する引摺りトルク等を検出するトルク検出アーム18と検出器であるロードセル19が配設される。前記静止支柱2に対して、可動支柱3が台枠1の上面の他方側に軸方向に移動可能に起立設置される。可動支柱3は、レール等(図示省略)を介して台枠1の上面に移動手段によりスライド自在に設置された可動台座14上に固定される。可動台座14は、台枠1内に収容された台座移動用モータ11からの動力を得て、適宜の伝達手段例えばプーリーベルト12等を介して螺子スピンドル13の回転に伴って螺子スピンドル13と螺合する手段を有して軸方向に移動できる。移動手段は、台座移動用モータ11、プーリーベルト12、螺子スピンドル13および可動台座14から構成される。
【0013】
前記可動支柱3の上部には水平に回転軸5が軸支され、該回転軸5は、可動支柱3の上方に平行に設置された回転軸用サーボモータ9から動力を得て、可動支柱3の外側に配置された適宜の伝達手段例えばプーリーベルト10等を介して回転自在に構成される。回転軸5の内側にはロータ振れ調整治具6を介してロータ7が装着される。詳述はしないが、ロータ振れ調整治具6は、回転軸5に装着される起動側治具とロータ7に装着されるロータ側治具とから構成され、これら起動側治具とロータ側治具とは、支軸6Aを介して揺動首振り自在でかつその揺動角度を調整して固定できるように構成されている。その揺動角度の調整は、起動側治具とロータ側治具との間の隙間を例えば調整ボルト等の進退により行われる。それにより、試験開始前に所望のロータ振れを容易に設定することができる。なお、符号26は台枠1等の静止部に設置された、ロータ7の変位量を測定するダイヤル変位計を示す。
【0014】
図2は引摺りによるDTV(ロータ肉厚差)成長メカニズムの説明図および引摺り試験装置による再現説明図である。図2(A)(B)はジャダー等の現象の要因となる実車でのロータ摩耗メカニズム説明図、図2(C)は引摺り試験装置による再現状態図で、図2(A)に示すように、長時間の降坂路での制動や、制動の多用によりロータが高温となって熱倒れ(通常、ロータの中心部は車軸ハブへの取付部から偏位した位置にあるため、該偏位した腕の部分が高温になると変形してロータが一方側(例えばアウタ側)へ変形する。これが点線7’から7へのロータ熱倒れを引き起こした状態である。これに伴い、インナパッド24とアウタパッド25をロータ7の両側を挟圧させて制動動作が行われると、ディスクブレーキキャリパ8はロータ7にならって多少アウタ側へ移動し、その場所で留まる。
【0015】
次いで、図2(B)に示すように、ロータ熱倒れの復帰(制動動作後の放置等によりロータが次第に低温となってロータの熱変形が解消する)の際には、ディスクブレーキキャリパ8が殆ど不動のまま、ロータ7が7’の位置からインナ側の7の位置に復帰する。これにより、ロータ7とインナパッド24との間に引摺りが発生する。かくして、高速走行時には局部引摺りによるロータ摩耗が成長し、制動時のジャダー発生につながる。
【0016】
図2(C)は本発明の引摺り試験装置による引摺りの再現説明図である。経験圧例えば3MPaを負荷させてパッド24、25を挟圧し、解除後ロータ7の回転中に前記回転軸5を軸方向インナ側へ移動させることで、ロータ7をインナ側へ移動させ、アウタ側へのロータ熱倒れから復帰の条件を再現することができる。本発明の引摺り試験装置では、足廻り変形によるノックバック、つまりピストンがシリンダ内に押し込まれて、次の制動でストロークが延びる懸念、すなわち引摺りトルクが下がるかどうかを確認できる。
【0017】
図3は本発明の引摺り試験装置の制御例図である。先ず、図3(A)の自動運転のパターン例における加圧制御と負圧(バキューム)制御とが交互になされるパターンAについて説明する。自動運転のパターンは任意に設定が可能である。図3(B)は、ディスクブレーキキャリパ8への加圧制御と負圧制御と、回転軸5の回転によるロータ7の回転制御のタイムテーブルを表している。図3(C)にそれらの加圧制御と負圧制御時間および回転制御時間の数値例が示されている。チャート1〜2で例えば5秒間パッド24、25によるロータ7への1.0MPaの加圧がなされ、チャート2〜3で5秒間の開放がなされる。これを同様に加圧5まで5回繰り返して、引摺りトルクのデータを採る。
【0018】
チャート4〜5では、加圧後回転待ち時間10秒を置いてチャート5〜6で40rpmでの16.5秒間の回転軸5とロータ7の11回転がなされる。次いで、チャート6〜7で回転後加圧待ち時間5秒を置いてチャート7〜8で5秒の加圧がなされる。チャート8〜9で5秒の加圧後負圧待ち時間を置き、また、チャート9〜10で5秒の負圧後回転待ち時間を置き、チャート9〜12で20秒間の負圧吸引がなされ、5秒置いてチャート10〜11で16.5秒間の回転軸5の40rpmでの回転がなされる。チャート12〜13(次回ステップ1)で負圧後加圧待ち時間5秒が置かれる。以後1.0MPaステップで10.0MPaまでこれを繰り返した引摺り試験がなされる。制御パターン例としては、特に、回転時の加圧制御や加圧時の回転軸の軸移動制御が本発明に特徴的な制御パターンであり、前記制御例と組み合わされた種々のパターンがパソコンとシーケンサーを使用して設定され、前述した回転軸用サーボモータ9、台座移動用モータ11、マスタシリンダ15およびバキュームタンク16からの管路におけるソレノイド等からなる切換弁23とが制御される。
【0019】
次に、図3(A)の自動運転パターン例における加圧制御に今回発明のロータ軸方向移動を行ったパターンBについて、図3(D)および図3(E)を用いて説明する。加圧解除を5回繰り返してロータ7が回転するところまでは前記パターンAと同じである。チャート5〜8で40rpmでの70秒間の回転軸5とロータ7の47回転がなされる。次いで、チャート5〜6で10秒間の移動待ち時間を置き、チャート6〜9でロータ7の50秒間のインナ側への移動(0.4mm)がなされる。その後、ロータ7の回転停止後、元の位置に移動する。チャート10〜1で5秒間の待ち時間の後、1.0MPaステップでパターンAと同様にこれを繰り返した引摺り試験がなされる。
【0020】
図4は引摺りトルク振幅とロータ削れとの関係の説明図である。縦軸はロータ7に発生する引摺りトルクN・mで、その振幅が大きいと最小引摺りトルクと最大引摺りトルクとの差が大きく、ロータ7の局部当たりが大きいことを表している。すなわち、それだけロータの摩耗の大きいロータ削れが発生し易いことを意味している。
【0021】
図5は本発明の引摺り試験方法におけるロータの軸移動と引摺りトルクとの関係の説明図である。左縦軸は引摺りトルクN・m、右縦軸はロータの軸方向変位μm、横軸は時間である。初期の上部の波形がロータの軸方向変位、下部の波形が引摺りトルクを示している。ロータの軸方向変位にはロータの振れ(50μmでセット)を含んでいる。この引摺り試験の結果の波形例は、0〜10秒までは通常の引摺りを行い、ロータがインナ側に振れたときに1回転中の最大引摺りトルクが発生している。次に、10秒前後から、徐々にロータをインナ側へ移動(最終的に400μm移動)させていく。それに伴い、引摺りトルクのインナ側倒れ時の最大引摺りトルクは上昇し、アウタ側倒れ時の最小引摺りトルクは低下していく。30数秒後から、ロータの軸方向の移動に伴って引摺りトルクの振幅も増加することが理解される。これにより、通常引摺りよりもロータを軸方向へ移動させた引摺りの方が局部当たりとなって局部摩耗につながり、DTV成長による要因を明確に再現できることになる。
【0022】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、本発明の引摺り試験装置にて取得するデータの種類、ロータの回転制御形態、ロータの軸移動制御形態、ロータの移動速度、移動量、移動方向の制御形態、加圧流体および負圧流体の選択的供給の形態(いずれの流体もエアーとして単なるソレノイド弁の切り換えにより共通の管路を使用して加圧流体と負圧流体とを選択して供給する他、エアーサーボを介した加圧油の供給とエアーを用いたバキューム圧とを異なった管路を通じてブレーキディスクキャリパに選択的に供給する等)、ロータの移動方向の組合せ(片側だけでなく、インナへ寄りそのままアウタ側へ寄って元に戻る等)、ディスクブレーキキャリパの形状、形式およびその支持軸への取付け形態、静止支柱の形状、形式および支持軸の静止支柱への軸支形態、ロータの形状、形式(ダミーロータ、実際のロータのいずれでもよい)、ロータの回転軸への装着形態(ロータ振れ調整治具の形式、形状を含むそれらへのロータの装着形態および回転軸の装着形態)、回転軸の可動支柱への軸支形態、可動支柱の静止支柱に対する軸方向の移動形態(螺子スピンドルの回転と可動支柱の可動台座に設けた前記螺子スピンドルに螺合する螺筒部材との相対移動によってもよいし、ラックとピニオンとの噛合によってもよい)、回転軸用サーボモータと回転軸との動力伝達形態(プーリーベルトの他、歯車列等も採用される)、台座移動用モータと螺子スピンドルとの動力伝達形態(プーリーベルトの他、歯車列等も採用される)等については適宜選定できる。なお、実施例のものとは逆にロータ側を静止させてロードセルや静止支柱ともどもディスクブレーキキャリパ側を移動可能に構成してもよい。実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の引摺り試験方法に用いられる試験装置の1つの実施例で概略全体図である。
【図2】引摺りによるDTV(ロータ肉厚差)成長メカニズムの説明図および本発明の引摺り試験装置による再現説明図である。
【図3】同、本発明の引摺り試験装置の制御例図である。
【図4】引摺りトルク振幅とロータ削れとの関係の説明図である。
【図5】本発明の引摺り試験方法におけるロータの軸移動と引摺りトルクとの関係の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 台枠
2 静止支柱
3 可動支柱
4 支持軸
5 回転軸
6 ロータ振れ調整治具
6A 支軸
7 ロータ
8 ディスクブレーキ(キャリパ)
9 回転軸用サーボモータ
10 プーリーベルト
11 台座移動用モータ
12 プーリーベルト
13 螺子スピンドル
14 可動台座
15 マスタシリンダ
16 バキュームタンク
17 バキュームポンプ
18 トルク検出アーム
19 ロードセル
20 正圧管路
21 負圧管路
21A 第1負圧管路
21B 第2負圧管路
22 管路
23 切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクブレーキのロータの回転時の引摺りデータを取得する引摺り試験方法において、試験装置はその支持軸に装着されるディスクブレーキと回転軸に装着されるロータとからなり、ディスクブレーキへの加圧解除後またはその後のロータの回転中に、前記ロータを軸方向に移動することで、ロータの倒れによる引摺りトルクを再現することを特徴とする引摺り試験方法。
【請求項2】
ディスクブレーキのロータの回転時の引摺りデータを取得する引摺り試験方法において、試験装置はその支持軸に装着されるディスクブレーキと回転軸に装着されるロータとからなり、ディスクブレーキへの加圧解除後またはその後のロータの回転中に、前記ロータを軸方向に移動することで、ロータの熱倒れからの冷却による復帰の経過を再現することを特徴とする請求項1に記載の引摺り試験方法。
【請求項3】
前記ロータは、回転開始後に移動を開始することを特徴とする請求項1または2に記載の引摺り試験方法。
【請求項4】
前記ロータは、移動速度、移動量、移動方向を選択可能にされていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の引摺り試験方法。
【請求項5】
前記請求項1から4のいずれかに記載の引摺り試験方法に使用される引摺り試験装置であって、ロータの回転前に加圧流体または負圧流体を選択的に供給されるディスクブレーキが取り付けられた支持軸を支持する静止支柱と、前記ディスクブレーキのパッドに摺接可能に配置されるロータを回転可能に取り付けた回転軸を軸支する可動支柱を前記静止支柱に対して軸方向に移動可能に構成したことを特徴とする引摺り試験装置。
【請求項6】
前記回転軸へのロータの取付けは、該ロータと回転軸のそれぞれの回転軸心の交差角度を調整できる治具を介してなされることを特徴とする請求項5に記載の引摺り試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−145189(P2010−145189A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321745(P2008−321745)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】