説明

引摺り試験装置におけるクリアランス設定方法

【課題】ロータとパッドの隙間を設けて引摺りトルクをゼロとしたクリアランス初期設定を行って、高い精度の試験測定を可能にし、パッドやロータの損傷の虞れをなくした。
【解決手段】軸方向に移動可能に構成されたロータ7を取り付けた試験装置における回転軸5を軸方向に移動させて、ロータ7をキャリパ8のインナパッド24またはアウタパッド25側に押し付けて軸方向に移動させた後、該ロータ7を原位置に戻すことにより、ロータ7とインナパッド24またはアウタパット25との間にクリアランスδが発生するので、従来のもののようなスペーサ等でパッドをロータから無理に隔離する作業によって、パッドやロータを損傷させる虞れもなく、パッドを斜めにセットしてその一部が接触することもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキキャリパが取り付けられた支持軸を支持する静止支柱と、前記キャリパのパッドに摺接すべく配置されるロータを回転可能に取り付けた回転軸を軸支する可動支柱を前記静止支柱に対して軸方向に移動可能に構成した引摺り試験装置における試験開始前の引摺りトルクをゼロにするクリアランス設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において使用されるディスクブレーキ装置を評価する引摺り試験は、近年の車両の燃費向上追求もあって、大変重要になってきている。この試験を行う上での重要な点は、試験開始に当たって、円滑にロータとインナパッドおよびアウタパッドとの間に隙間を形成させることにある。
【0003】
また、本件出願人は、軸受けの摩擦によるトルクの影響を除去してブレーキの引摺りトルクを正確に検出することを可能にしたブレーキの引摺りトルク検出装置を提案した(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−64134号公報(公報要約書参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されたものは図3に示すように、軸受けの摩擦によるトルクの影響を除去してブレーキの引摺りトルクを正確に検出するためになされたもので、引摺りトルクを測定すべきディスクブレーキ125のロータ126を取り付け可能な駆動軸111と、駆動軸111と同心上に配置され駆動軸111に軸受け122を介して回転自在に支持された回転軸112と、回転軸112に静圧軸受け130、131を介して回転自在に取り付けられ、ディスクブレーキ125のキャリパ127を取り付け可能なトルク測定用部材132と、トルク測定用部材132の回転力によって発生する接線方向の荷重を検出するトルク検出手段(図示省略)とを備えたもので、駆動軸111にベアリングを介して支持されている回転軸112とトルク測定用部材132との間に摩擦が殆どない静圧軸受け130、131が介挿されているので、駆動軸111の回転力が測定用部材132に作用するのを防止して、トルク測定用部材132にはブレーキの引摺りトルクだけを作用させることができ、引摺りトルクを正確に検出することができるものである。
【0005】
前述したような従来の引摺り試験装置にあって、その引摺り試験の開始前には、初期値として、引摺りトルクが発生しない状態である引摺りトルクをゼロにする必要がある。無論、前述した特許文献1のように、軸受けの摩擦によるトルクの影響を除去してブレーキの引摺りトルクを正確に検出することは言うまでもないことであるが、初期値としての引摺りトルクをゼロにする必要から、ディスクブレーキキャリパに対してロータが部分的に摺接しない状態を試験開始の初期状態とするために、ロータとディスクブレーキキャリパのパッドとの間の軸方向隙間の設定を、従来は手動にて行っていた。その際、スペーサ等でパッドをロータから無理に隔離する作業によって、パッド摺動面やロータを損傷させる虞れがある他、パッドの傾斜を考慮せずにした調整により一部が接触してしまう可能性もあった。また、これら隙間を目視で判断することは困難であった。
【0006】
そこで本発明は、前記従来の引摺り試験における課題を解決して、ロータとパッドの隙間を簡単に設定して引摺りトルクをゼロとしたクリアランス初期設定を行って、高い精度の試験測定を可能にするとともに、パッドやロータの損傷の虞れもない引摺り試験装置におけるクリアランス設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明は、ディスクブレーキキャリパが取り付けられた支持軸を支持する静止支柱と、前記キャリパのパッドに摺接すべく配置されるロータを回転可能に取り付けた回転軸を軸支する可動支柱を前記静止支柱に対して軸方向に移動可能に構成した引摺り試験装置における試験開始前の引摺りトルクをゼロにするクリアランス設定方法において、前記ロータをキャリパのインナパッドまたはアウタパッド側に押し付けて軸方向に移動させた後、該ロータを原位置方向に戻すことにより、ロータとインナパッドまたはアウタパッドとの間にクリアランスを設定することを特徴とする。また本発明は、ディスクブレーキキャリパが取り付けられた支持軸を支持する静止支柱と、前記キャリパのパッドに摺接すべく配置されるロータを回転可能に取り付けた回転軸を軸支する可動支柱を前記静止支柱に対して軸方向に移動可能に構成した引摺り試験装置における試験開始前の引摺りトルクをゼロにするクリアランス設定方法において、前記ロータをキャリパのインナパッドまたはアウタパッド側に押し付けて軸方向に移動させた後、該ロータを原位置方向に戻し、続いてロータをキャリパのアウタパッドまたはインナパッド側に押し付けて軸方向に移動させた後、該ロータを原位置方向に戻すことにより、ロータとインナパッドおよびアウタパッドとの間にクリアランスを設定することを特徴とする。また本発明は、前記ロータの軸方向の移動によるクリアランス設定に先立って、ディスクブレーキキャリパのパッドに連なるピストンを負圧流体等によりシリンダ底部側へ戻しておくように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記ロータの軸方向の移動によるクリアランス設定および前記キャリパへの加圧流体または負圧流体の選択的供給による制御ならびに引摺り試験におけるロータの回転の全てが自動制御されることを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ディスクブレーキキャリパが取り付けられた支持軸を支持する静止支柱と、前記キャリパのパッドに摺接すべく配置されるロータを回転可能に取り付けた回転軸を軸支する可動支柱を前記静止支柱に対して軸方向に移動可能に構成した引摺り試験装置における試験開始前の引摺りトルクをゼロにするクリアランス設定方法において、前記ロータをキャリパのインナパッドまたはアウタパッド側に押し付けて軸方向に移動させた後、該ロータを原位置方向に戻すことにより、ロータとインナパッドまたはアウタパッドとの間にクリアランスが発生するので、軸方向に移動可能に構成されたロータを取り付けた試験装置における回転軸を軸方向に移動させることで、ロータをキャリパのインナパッドまたはアウタパッド側に押し付けた後、原位置方向に戻すだけで、ロータとインナパッドまたはアウタパッドとの間に所定のクリアランスを確保して設定することができ、従来のもののようなスペーサ等でパッドをロータから無理に隔離する作業によって、パッドやロータを傷付ける虞れもなく、またパッドが斜めになることで一部がロータと接触することもない。
【0009】
また、ディスクブレーキキャリパが取り付けられた支持軸を支持する静止支柱と、前記キャリパのパッドに摺接すべく配置されるロータを回転可能に取り付けた回転軸を軸支する可動支柱を前記静止支柱に対して軸方向に移動可能に構成した引摺り試験装置における試験開始前の引摺りトルクをゼロにするクリアランス設定方法において、前記ロータをキャリパのインナパッドまたはアウタパッド側に押し付けて軸方向に移動させた後、該ロータを原位置方向に戻し、続いてロータをキャリパのアウタパッドまたはインナパッド側に押し付けて軸方向に移動させた後、該ロータを原位置方向に戻すことにより、ロータとインナパッドまたはアウタパッドとの間にクリアランスが発生するので、ロータをキャリパのインナパッドまたはアウタパッド側のいずれか一方側のみに押し付けるだけでなく、両方のパッドに押し付けた後に原位置付近に復帰させることで、ブレーキアセンブリとして確実かつ充分にロータの両側にてクリアランスを設定することができる。
【0010】
さらに、前記ロータの軸方向の移動によるクリアランス設定に先立って、ディスクブレーキキャリパのパッドに連なるピストンを負圧流体等によりシリンダ底部側へ戻しておくように構成した場合は、負圧流体等により迅速にピストンをシリンダ底部側へ戻すことを可能にして初期設定の時間を短縮するとともに、予めピストンを戻しておくことにより、ロータとともに動くパッドの軸方向移動を円滑にすることができるので、クリアランス設定がし易くなる。さらにまた、前記ロータの軸方向の移動によるクリアランス設定および前記キャリパへの加圧流体または負圧流体の選択的供給による制御ならびに引摺り試験におけるロータの軸方向の移動および回転の全てが自動制御される場合は、試験装置の開始ボタン等の押下等により、試験の開始から、クリアランス初期設定および引摺り試験における全ての動作を全自動化できるので、手動による初期設定・試験等の作業工数を大幅に減少できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の引摺り試験装置におけるクリアランス設定方法を実施するための好適な形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の引摺り試験装置におけるクリアランス設定方法の工程図、図2は本発明のクリアランス設定方法が採用される引摺り試験装置の概略全体図である。本発明の引摺り試験装置におけるクリアランス設定方法の基本的な構成は、図1および図2に示すように、ディスクブレーキキャリパ8が取り付けられた支持軸を支持する静止支柱2と、前記キャリパ8のパッドに摺接すべく配置されるロータ7を回転可能に取り付けた回転軸5を軸支する可動支柱3を前記静止支柱2に対して軸方向に移動可能に構成した引摺り試験装置における試験開始前の引摺りトルクをゼロにするクリアランス設定方法において、前記ロータ7をキャリパ8のインナパッド24またはアウタパッド25側に押し付けて軸方向に移動させた後、該ロータ7を原位置方向に戻すことにより、ロータ7とインナパッド24またはアウタパッド25との間にクリアランスδを設定することを特徴とする。
【実施例1】
【0012】
図2は本発明のクリアランス設定方法が採用される引摺り試験装置の概略全体図である。引摺り試験装置は、マスタシリンダ15、バキュームポンプ17、台座移動用モータ11等を収容・設置した台枠1の上面にディスクブレーキキャリパ8が設置された支持軸4を支持する静止支柱2と、該静止支柱2に対してロータ7を回転かつ傾動可能に取り付けた回転軸5を軸支する可動支柱3を軸方向に移動可能に設置して構成される。マスタシリンダ15は、エアーサーボ制御により正圧管路20、管路22を通じてディスクブレーキキャリパ8に所定圧のエアーを供給する。バキュームポンプ17は、第1負圧管路21Aを通じてバキュームタンク16からエアーを吸引し、該バキュームタンク16は、第2負圧管路21B、管路22を通じてディスクブレーキキャリパ8に負圧を掛けることができる。管路22と正圧管路20および第2負圧管路21Bとの間の分岐部には切換弁23が配設され、ディスクブレーキキャリパ8への正圧と負圧を供給して、加圧解除、ピストン戻しと解除がなされる。
【0013】
静止支柱2は台枠1の上面の一方側に起立固定され、その上部に水平状の支持軸4が支持固定される。該支持軸4の回転軸側の端部に取付板等を介してディスクブレーキキャリパ8が取り付けられる。支持軸4の外側端部には、ディスクブレーキキャリパ8がロータ7からの回転動作がなされた際にパッド24、25等に接触して支持軸4に発生する引摺りトルクを検出するトルク検出アーム18と検出器であるロードセル19が配設される。前記静止支柱2に対して、可動支柱3が台枠1の上面の他方側に軸方向に移動可能に起立設置される。可動支柱3は、レール等(図示省略)を介して台枠1の上面に移動手段によりスライド自在に設置された可動台座14上に固定される。可動台座14は、台枠1内に収容された台座移動用モータ11からの動力を得て、適宜の伝達手段例えばプーリーベルト12等を介して螺子スピンドル13の回転に伴って螺子スピンドル13と螺合する手段を有して軸方向に移動できる。移動手段は、台座移動用モータ11、プーリーベルト12、螺子スピンドル13および可動台座14から構成される。
【0014】
前記可動支柱3の上部には水平に回転軸5が軸支され、可動支柱3の上方に平行に設置された回転軸用サーボモータ9から動力を得て、可動支柱3の外側に配置された適宜の伝達手段例えばプーリーベルト10等を介して回転自在に構成される。回転軸5の内側にはオプションであるロータ振れ調整治具6を介してロータ7が装着される。詳述はしないが、ロータ振れ調整治具6は、回転軸5に装着される起動側治具とロータ7に装着されるロータ側治具とから構成され、これら起動側治具とロータ側治具とは、支軸6Aを介して揺動首振り自在でかつその揺動角度を調整して固定できるように構成されている。その揺動角度の調整は、起動側治具とロータ側治具との間の隙間を調整ボルト等の進退により行われる。それにより、試験開始前に所望のロータ振れを容易にセットすることができる。
つまり、ロータ振れ調整治具6、キャリパ8、ロータ7を試験機にセットした後、ロードセル19の調整(測定する側のロードセルに若干のプレロードを付与する)し、その後は自動運転が可能な、シリンダエア抜き(加圧解除と負圧の繰返し)、負圧解除(ピストン底付き)、ロータ移動(ロータ〜パッド隙間確保)、加圧解除、ロータ回転〜終了、片付けまたは仕様変更がなされて前記負圧解除工程に戻り、試験が繰り返されることになる。
【0015】
図示しての説明は省略されるが、図1および図2において、キャリパ8におけるシリンダ27にバキュームタンク16からの負圧を導入してピストン26を後退させるソレノイド弁等の切換弁23の開閉制御、ロータ7を取り付けた回転軸5の台座移動用モータ11による軸方向の移動制御のそれぞれは、スタートボタンの押下による引摺り試験の開始に伴う自動制御パターンに沿って自動的になされることを好適とするが、それぞれの開始時期等について手動も可能に構成される。そして、前記自動制御の場合には、ピストン26の後退の有無の後に続く、ロータ7をキャリパ8のインナパッド24またはアウタパッド25側に押し付けて軸方向に移動させた後、該ロータ7を原位置方向に戻す制御、ロータ7をキャリパ8のインナパッド24またはアウタパッド25側に押し付けて軸方向に移動させた後、該ロータ7を原位置方向に戻し、続いてロータ7をキャリパ8のアウタパッド24またはインナパッド25側に押し付けて軸方向に移動させた後、該ロータ7を原位置方向に戻す制御、さらには、キャリパ8への加圧流体または負圧流体の選択的供給による制御ならびに引摺り試験におけるロータ7の回転の全ての制御が、図示省略の所定の制御手段内にて設定された制御パターンに基づいてなされる。
【0016】
図1は上述した引摺り試験装置の試験に先立って、その開始前に、初期値として、引摺りトルクが発生しない状態である引摺りトルクをゼロにするクリアランス設定の工程図である。前述の図2における静止側の支持軸4にキャリパ8を取り付け、回転軸5にロータ振れ調整治具6を介して取り付けられたロータ7を軸方向の正規位置にセットする。ここで、キャリパ8におけるシリンダ27内に負圧を導入して予めピストン26を後退させてトータルクリアランスLを確保する。しかしながら、ピストン26を後退させない場合も本発明の範疇内にあるが、予めピストン26を後退させておくことによって、ピストンとインナパッド間に隙間を設け、ロータ7の軸方向移動の際にクリアランス設定のためにパッド24や25を円滑に移動させることができる。パッド24、25はロータ7の両側面に接触している。また、フローティングタイプのディスクブレーキでは、通常、ピストン抵抗>キャリパ抵抗であるので、ロータ7の片側への軸方向移動の際にピストン26を介してキャリパ全体も動くので、キャリパ共連れにより反対側のパッドクリアランスが小さくなる。よって、インナパッドのみ移動させるよう、予めピストン26を後退させておくことが推奨される。なお、符号28はロータ7の軸方向変位を検出するダイヤル変位計を示す。
【0017】
この状態から、台座移動用モータ11を駆動してロータ7を所定量例えばインナパッド24側に軸方向に1mm移動させる。1mm移動中にインナパッド24がピストン26に当接した場合は、それ以降キャリパ8がインナ側に移動するように構成されているので支障はない。次いで、ロータ7をアウタ側に軸方向に移動させて原位置方向(あるいは原位置の直前)に戻す。これにより、ロータ7の側面とインナパッド24との間に、引摺りトルクがゼロとなる所定の隙間すなわちクリアランスδが設定される。本発明では、さらに続けて、図1(B)に示すように、ロータ7をアウタパッド25側に軸方向に1mm移動させる。1mm移動中にアウタパッド25がキャリパ8の爪部に当接した場合は、それ以降キャリパ8がアウタ側に移動するので支障はない。次いで、ロータ7をインナ側に軸方向に移動させて原位置方向に戻す。これにより、ロータ7の両側においてインナパッド24の側面およびアウタパッド25の側面との間に所定のクリアランスδ1およびδ2が設定されることになる。以上のクリアランス設定制御において、ロータ7の最初の軸方向移動は、インナ側あるいはアウタ側のいずれへであってもよい。この発明によって設定後のパッドは、ロータに平行にならい、斜めにセットされずに隙間が安定して確保される。
【0018】
実際の引摺り試験では、セットするキャリパ8とロータ7の組合せ毎に、トータルクリアランスがそれぞれ異なるので、ロータ7の軸方向の移動量や戻り量はその都度設定されることになるが、可能な限りそれらの数値は共通化される。例えば、トータルクリアランスが2mmよりかなり小さい場合、例えば1.2mmの場合、前述した実施例では、片側のクリアランス(この場合インナ側)が0.2mmに狭まってしまい、クリアランスのバランスが悪い。したがって、その場合には、ロータ7の移動量を1mmよりも減ずる処置が講じられる。トータルクリアランスとは、ピストンがシリンダ底付き時の、ピストン〜インナパッド+インナパッド〜ロータ+ロータ+アウタパッドの合計のクリアランスを示す。
【0019】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、ロータの回転制御形態、ロータの軸移動制御形態、ロータの移動速度、移動量、移動方向の制御形態、加圧流体または負圧流体の選択的供給の形態(いずれの流体もエアーとして単なるソレノイド弁の切り換えにより共通の管路を使用して加圧流体と負圧流体とを選択して供給する他、エアーサーボを介した加圧油の供給とエアーを用いたバキューム圧とを異なった管路を通じてブレーキディスクキャリパに選択的に供給する等)、ディスクブレーキキャリパの形状、形式およびその支持軸への取付け形態、静止支柱の形状、形式および支持軸の静止支柱への固定形態、ロータの形状、形式、ロータの回転軸への装着形態(ロータ振れ調整治具の形式、形状を含むそれらへのロータの装着形態および回転軸の装着形態)、回転軸の可動支柱への軸支形態、可動支柱の静止支柱に対する軸方向の移動形態(螺子スピンドルの回転と可動支柱の可動台座に設けた前記螺子スピンドルに螺合する螺筒部材との相対移動によってもよいし、ラックとピニオンとの噛合によってもよい)、回転軸用サーボモータと回転軸との動力伝達形態(プーリーベルトの他、歯車列等も採用される)、台座移動用モータと螺子スピンドルとの動力伝達形態(プーリーベルトの他、歯車列等も採用される)、初期クリアランス設定のためのロータのパッドに対する軸方向移動の順序、ピストン後退のための負圧導入形態等については適宜選定できる。また、移動側を実施例のようにロータ側でなく、ロードセルや静止支柱側を含めたディスクブレーキキャリパ側としてもよい。実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の引摺り試験装置におけるクリアランス設定方法の工程図である。
【図2】本発明のクリアランス設定方法が採用される引摺り試験装置の概略全体図である。
【図3】従来の引摺りトルク検出装置の説明図である。
【符号の説明】
【0021】
2 静止支柱
3 可動支柱
4 支持軸
5 回転軸
7 ロータ
8 ディスクブレーキ(キャリパ)
24 インナパッド
25 アウタパッド
26 ピストン
27 シリンダ
δ クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクブレーキキャリパが取り付けられた支持軸を支持する静止支柱と、前記キャリパのパッドに摺接すべく配置されるロータを回転可能に取り付けた回転軸を軸支する可動支柱を前記静止支柱に対して軸方向に移動可能に構成した引摺り試験装置における試験開始前の引摺りトルクをゼロにするクリアランス設定方法において、前記ロータをキャリパのインナパッドまたはアウタパッド側に押し付けて軸方向に移動させた後、該ロータを原位置方向に戻すことにより、ロータとインナパッドまたはアウタパッドとの間にクリアランスを設定することを特徴とする引摺り試験装置におけるクリアランス設定方法。
【請求項2】
ディスクブレーキキャリパが取り付けられた支持軸を支持する静止支柱と、前記キャリパのパッドに摺接すべく配置されるロータを回転可能に取り付けた回転軸を軸支する可動支柱を前記静止支柱に対して軸方向に移動可能に構成した引摺り試験装置における試験開始前の引摺りトルクをゼロにするクリアランス設定方法において、前記ロータをキャリパのインナパッドまたはアウタパッド側に押し付けて軸方向に移動させた後、該ロータを原位置方向に戻し、続いてロータをキャリパのアウタパッドまたはインナパッド側に押し付けて軸方向に移動させた後、該ロータを原位置方向に戻すことにより、ロータとインナパッドおよびアウタパッドとの間にクリアランスを設定することを特徴とする引摺り試験装置におけるクリアランス設定方法。
【請求項3】
前記ロータの軸方向の移動によるクリアランス設定に先立って、ディスクブレーキキャリパのパッドに連なるピストンを負圧流体等によりシリンダ底部側へ戻しておくように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の引摺り試験装置におけるクリアランス設定方法。
【請求項4】
前記ロータの軸方向の移動によるクリアランス設定および前記キャリパへの加圧流体または負圧流体の選択的供給による制御ならびに引摺り試験におけるロータの回転の全てが自動制御されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の引摺り試験装置におけるクリアランス設定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−145190(P2010−145190A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321763(P2008−321763)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】