説明

強制排気装置

【課題】捕集された油を長期間放置していても簡単に効率良く除去洗浄できる、メンテナンスの手間とコストがかからない強制排気装置を提供する。
【解決手段】送風手段8と吸入口3の間には油捕集手段5が設けられ、油検知手段23が油を検知した場合、酸化防止手段24が捕集された油の酸化を防止し、油捕集手段5の上部に配置した送液管開口部14から酵素保持手段29aを吐出することで、油捕集手段5に付着した油を除去洗浄する。除去された油は洗浄液溜め部15内で酵素保持手段29aによって分解され、さらに光分解手段18aによって完全に分解され洗浄液廃棄タンク19内に廃棄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば厨房や食品加工場内などの屋内に発生した油煙を屋外に強制排気するための強制排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭の台所や外食店の厨房など調理を行う場所には、局所排気装置として換気扇やレンジフードが設けられており、調理で食物を加熱処理することによって発生する水蒸気や油煙、または、様々な臭気の複合ガスを外に強制排気することで作業環境の快適性を維持している。しかし、調理の際に発生する水蒸気や油煙、または、様々な複合臭気のガスが壁面に付着することによって、強制排気装置自体を汚染し、付着した汚れを除去しなければ換気性能が悪化し、悪臭発生やカビ繁殖などの不具合が発生し、作業環境の快適性を維持することができなくなる。作業環境を快適に維持するためには、換気扇やレンジフードの表面に付着する汚染物質を除去し、換気性能や、衛生的状態を維持するためにメンテナンスをする必要がある。特に油煙が付着し壁面が油に汚染されると、外見上汚らしく見えるだけでなく、付着した油の成分である脂肪酸類やアルデヒドが悪臭物質として拡散し、調理場だけでなく居住空間に広く悪影響を及ぼすため、付着した油の防除対策は大きな課題となっている。
【0003】
通常、換気扇やレンジフードの給気口の入り口付近には、ガラス繊維でできたフィルターを設置し、発生した油煙を吸着することで通気口内部の油汚れを防止している。また、フィルターで吸収し切れなかった油は、換気扇やレンジフード内部のグリスフィルターでトラップされた後、調理場付近に滴下して汚染を拡大させないようにオイルキャッチなどの油を溜めておく油溜め部に回収されるように工夫されている。そして、油を吸着して汚れてきたフィルターを新しいフィルターと交換し、グリスフィルターに付いた油を洗浄により除去し、また、オイルキャッチに溜まった油を廃棄洗浄することによって、換気扇やレンジフードのメンテナンスを行っている。
【0004】
このように、換気扇やレンジフードを長期間使用するためには、油による汚染除去のメンテナンスが必要だが、油汚れを洗浄する作業は煩雑であり、作業時間がかかるため敬遠されがちであり、そのため油を洗浄作業によって除去せずに放置してしまうという事が起こる。油洗浄作業を怠ると、溜まった油が空気中の酸素と反応することで酸化され、酸化されることによって油が硬化してしまい、さらに洗浄作業を煩雑にするため、簡便に油を洗浄し除去できるシステムが切望されていた。そのため、換気扇やレンジフードのメンテナンス性を改善するため、油を分解除去する強制排気装置が考案されている。(例えば特許文献1参照)。
【0005】
以下、そのような強制排気装置について図15を参照しながら説明する。
【0006】
図15のように、レンジフード101は内面にTiO2コーティングが施されたフードケース102と、表面がTiO2コーティングされたファン103と、表面がTiO2コーティングされた金属フィルター104と、表面がTiO2コーティングされた光源105を備えている。レンジフード101を使用し内部へ油が付着した際に、光源105から波長300nm以上の紫外線を照射することによって、付着した油がTiO2の光触媒作用で効率良く分解されるため、レンジフード101内部を洗浄することなく付着した油を分解除去することを容易にしたものである。
【特許文献1】特開平9−189441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の方法では、光触媒作用によってラジカルを発生させてしまい、酸化重合の連鎖反応を引き起こしてしまうため、付着した油が硬化してしまい、付着油を除去することが難しくなってしまうため、油の分解効率を良くさせるという課題があった。また、長期間付着した油を放置していた場合も油が酸化重合によって硬化してしまい、付着油を洗浄によって除去することが難しく、煩雑でコストのかかる作業になってしまうという課題があった。
【0008】
また、本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、油を効率よく分解できるようにし、長期間付着した油を放置していた場合でも付着油を簡単に洗浄できるようにし、洗浄する作業を簡単に効果的にして手間とコストを低減させた強制排気装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の分解装置は上記目的を達成するために、屋内に開口した屋内の空気を吸入する吸入口と屋外に開口した屋外に空気を排出する排出口の間に吸入口から排出口に空気を送風する送風手段を備え、前記送風手段と前記吸入口の間に空気中の油を捕集する油捕集手段を備え、前記油捕集手段によって捕集された油を分解する第一の油分解手段と第一の油分解手段によって分解された分解成分物を分解する第二の油分解手段を備え、前記油捕集手段に捕集された油の量に応じて第一の油分解手段と第二の油分解手段を作動させる制御手段を備え、前記油捕集手段に捕集された油の酸化を防止する酸化防止手段を備えたことを特徴とする強制排気装置としたものである。
【0010】
これにより、油を効率良く分解できるようになり、付着油の酸化を防止することができるようになり、長期間放置された付着油を簡単に洗浄できるようになり、洗浄作業の手間とコストを低減させることができる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0011】
また他の手段は、酸化防止手段が前記油捕集手段上に塗布された酸化防止剤であることを特徴とする請求項1に記載の強制排気装置としたものである。
【0012】
これにより、安価かつ簡単に酸化防止機能を持った強制排気装置を提供することができるようになる。
【0013】
また他の手段は、前記酸化防止手段が還元イオンを供給する還元イオン供給手段であることを特徴とする請求項1に記載の強制排気装置としたものである。
【0014】
これにより、酸化防止機能をコントロールすることによって効率良く油の酸化を防止でき、長期間にわたって抗酸化作用を持続させることができる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0015】
また他の手段は、第一の油分解手段が酵素を保持する酵素保持手段と給水路と導出路を備え、前記給水路から水を導入し、その導入した水と前記酵素保持手段で前記捕集手段に捕集された油を分解し第一の分解成分を生成させ、前記第一の分解成分を導出路から第二の油分解手段へ水と共に導出する構成とし、第二の油分解手段が酸化分解手段と排水路を備え、前記第一の分解成分を第二の油分解手段が分解し第二の分解成分を生成させ、前記第二の分解成分を前記排水路から水と共に排出する構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の強制排気装置としたものである。
【0016】
これにより、油を酸化重合させる事なく分解除去することができるようになり、内部の洗浄を簡単かつ効果的に行うことができる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0017】
また他の手段は、第一の油分解手段が油と水を混合し乳化させる乳化手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の強制排気装置としたものである。
【0018】
これにより、酵素が効率良く油を分解することができるようになり、内部の洗浄を簡単かつ迅速に行うことができる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0019】
また他の手段は、酵素保持手段がイオン交換樹脂、光硬化性樹脂、活性炭、ゼオライト、珪藻土、あるいはシリカゲルから選択される一種類の担体、あるいは二つ以上の組合せの担体を有していることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の強制排気装置としたものである。
【0020】
これにより、酵素活性を長期間にわたって安定に発揮させることができ、内部の洗浄を簡単かつ安定に行うことができる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0021】
また他の手段は、酵素保持手段が疎水性を有していることを特徴とする請求項6に記載の強制排気装置としたものである。
【0022】
これにより、酵素保持手段が油を分解しやすくなり、内部の洗浄を効率良く簡単かつ安定に行うことができる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0023】
また他の手段は、酵素がカンジダ・ルゴーサ(Candida rugosa)あるいはシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)のいずれかに属する菌株の生産する油分解酵素を利用したものであることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の強制排気装置としたものである。
【0024】
これにより、どのような種類の動植物性油に対しても効率良く分解することができ、内部の洗浄を効率良く簡単かつ安定に行うことができる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0025】
また他の手段は、酵素保持手段が水に浮くことを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の強制排気装置としたものである。
【0026】
これにより、酵素担体と油が接触しやすくなり、効率良く油分解をすることができるようになり、内部の洗浄を効率良く簡単かつ安定に行うことができる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0027】
また他の手段は、第一の油分解手段が前記酵素保持手段を前記油捕集手段に接触させる接触手段を備えたことを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載の強制排気装置としたものである。
【0028】
これにより、油捕集手段に付着した油を効果的に洗浄することができる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0029】
また他の手段は、第一の油分解手段が界面活性剤を保持していることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の強制排気装置としたものである。
【0030】
これにより、酵素が油を効果的に迅速に分解することができるようになり、内部の洗浄を効果的に行うことができる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0031】
また他の手段は、第一の油分解手段が第一の油分解手段が分解する油と水の混合物のpHを調節するpH調節手段を備えていることを特徴とする請求項4〜11のいずれかに記載の強制排気装置としたものである。
【0032】
これにより、酵素の油分解が進んだ後も酵素の油分解活性が安定に保たれようになり、内部の洗浄を効果的かつ安定的に行うことができる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0033】
また他の手段は、第一の油分解手段が第一の油分解手段が分解する油と水の混合物を加熱する加熱手段を備えていることを特徴とする請求項4〜12のいずれかに記載の強制排気装置としたものである。
【0034】
これにより、気温が低下しても酵素活性を安定に保たれるようになり、内部の洗浄を安定的に行うことができる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0035】
また他の手段は、第一の油分解手段が第一の油分解手段が分解する油と水の混合物の放熱を防止する断熱手段を備えていることを特徴とする請求項4〜13のいずれかに記載の強制排気装置としたものである。
【0036】
これにより、第一の油分解手段の温度を効率良く保つことができるようになり、省エネルギーで内部の洗浄を効率良く行うことができる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0037】
また他の手段は、第一の油分解手段が振動を発生させる振動発生手段を備えていることを特徴とする請求項4〜14のいずれかに記載の強制排気装置としたものである。
【0038】
これにより、第一の油分解手段が効率良く油を分解する活性を安定させることができるようになり、内部の洗浄効率を高めることのできる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0039】
また他の手段では、前記酸化分解手段が光を利用して酸化分解する光触媒を備えていることを特徴とする請求項4〜15のいずれかに記載の強制排気装置としたものである。
【0040】
これにより第二の油分解手段が効率良く油を分解することができるようになり、内部の洗浄効率を高めることのできる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0041】
また他の手段では、前記光触媒は、活性炭、ゼオライト、珪藻土、ガラス、あるいはシリカゲルから選択される一種類の担体、あるいは二つ以上の組合せの担体に固定化されたものを特徴とする請求項4〜16のいずれかに記載の強制排気装置としたものである。
【0042】
これにより第二の油分解手段が長期間にわたって効率良く油を分解することができるようになり、内部の洗浄効率を長期間安定させることのできる強制排気装置を提供することができるようになる。
【0043】
また他の手段では、給水路に水を軟水にする軟水化手段を備えたことを特徴とする請求項4〜17のいずれかに記載の強制排気装置としたものである。
【0044】
これにより、油分解成分の不溶化を防止することができるようになり、内部の洗浄性が高い強制排気装置を提供することができるようになる。
【0045】
また他の手段では、油分解手段に前記酵素保持手段を交換するための交換穴を設けたことを特徴とする請求項4〜18のいずれかに記載の強制排気装置としたものである。
【0046】
これにより、油分解手段の油分解活性を容易に再生することができるようになり、内部の洗浄性を再生することができる強制排気装置を提供することができるようになる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、油を効率良く分解できるようになり、付着油の酸化を防止することができるようになり、長期間放置された付着油を簡単に洗浄できるようになり、洗浄作業の手間とコストを低減させることができる強制排気装置を提供することができる。
【0048】
また、安価かつ簡単に酸化防止機能を持った強制排気装置を提供することができる。
【0049】
また、酸化防止機能をコントロールすることによって効率良く油の酸化を防止でき、長期間にわたって抗酸化作用を持続させることができる強制排気装置を提供することができる。
【0050】
また、油を酸化させる事なく分解除去することができるようになり、内部の洗浄を簡単かつ効果的に行うことができる強制排気装置を提供することができる。
【0051】
また、酵素が効率良く油を分解することができるようになり、内部の洗浄を簡単かつ迅速に行うことができる強制排気装置を提供することができる。
【0052】
また、酵素活性を長期間にわたって安定に発揮させることができ、内部の洗浄を簡単かつ安定に行うことができる強制排気装置を提供することができる。
【0053】
また、酵素保持手段が油を分解しやすくなり、内部の洗浄を効率良く簡単かつ安定に行うことができる強制排気装置を提供することができる。
【0054】
また、どのような種類の動植物性油に対しても効率良く分解することができ、内部の洗浄を効率良く簡単かつ安定に行うことができる強制排気装置を提供することができる。
【0055】
また、酵素担体と油が接触しやすくなり、効率良く油分解をすることができるようになり、内部の洗浄を効率良く簡単かつ安定に行うことができる強制排気装置を提供することができる。
【0056】
また、油捕集手段に付着した油を効果的に洗浄することができる強制排気装置を提供することができる。
【0057】
また、酵素が油を効果的に迅速に分解することができるようになり、内部の洗浄を効果的に行うことができる強制排気装置を提供することができる。
【0058】
また、酵素の油分解が進んだ後も酵素の油分解活性が安定に保たれるようになり、内部の洗浄を効果的かつ安定的に行うことができる強制排気装置を提供することができる。
【0059】
また、気温が低下しても酵素活性が安定に保たれるようになり、内部の洗浄を安定かつ効果的に行うことができる強制排気装置を提供することができる。
【0060】
また、油分解手段の温度を効率良く保つことができるようになり、少ないエネルギー消費で内部の洗浄を効率良く行うことができる強制排気装置を提供することができる。
【0061】
また、油分解手段が効率良く油を分解する活性を安定させることができるようになり、内部の洗浄効果を高めることのできる強制排気装置を提供することができる。
【0062】
また、捕集された油を効率よく二酸化炭素と水にまで分解できるようになり、油の分解効率を良くし、水質汚濁物質を排出しなくてすむ強制排気装置を提供することができる。
【0063】
また、捕集された油を効率よく分解する能力を長期間安定に保つことができるようになり、効率よく安定に油を分解することのできる強制排気装置を提供することができる。
【0064】
また、油分解手段による油の洗浄性を上げることができるようになり、内部の洗浄性が高い強制排気装置を提供することができる。
【0065】
また、油分解手段の油分解活性を容易に再生することができるようになり、内部の洗浄性を再生することができる強制排気装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
本発明の請求項1記載の発明は、屋内に開口した屋内の空気を吸入する吸入口と屋外に開口した屋外に空気を排出する排出口の間に吸入口から排出口に空気を送風する送風手段を備え、前記送風手段と前記吸入口の間に空気中の油を捕集する油捕集手段を備え、前記油捕集手段によって捕集された油を分解する第一の油分解手段と第一の油分解手段によって分解された分解成分物を分解する第二の油分解手段を備え、前記油捕集手段に捕集された油の量に応じて第一の油分解手段と第二の油分解手段を作動させる制御手段を備え、前記油捕集手段に捕集された油の酸化を防止する酸化防止手段を備えたことを特徴とする強制排気装置としたものであり、油捕集手段に捕集された油の酸化が酸化防止手段によって防止されるために油の酸化重合による硬化が抑えられ、長期間油が放置されたとしても油が硬化しないために、油分解手段による分解洗浄の洗浄作業を簡単にできるようになり、付着油の洗浄の手間が低減できるという作用を有する。また、第一の油分解手段による洗浄作業が簡単に行えることから、洗浄作業に費やす時間と費用を抑えることができるという作用を有する。また、付着油の酸化を防止することによって、油の酸化と共に発生する悪臭物質の発生を抑制することができるようになり、悪臭対策のために費やす労力とコストを抑えることができるという作用を有する。また、油分解手段を2段階に分け、第一の油分解手段によって生じた分解成分を第二の油分解手段が分解することによって、第一の油分解手段では分解しきれない油を第二の油分解手段で分解できるようになり、また第二の油分解手段では分解できない油を第一の油分解手段が予め分解しておくことによって油を二酸化炭素と水に完全に分解できるようになり、効率よく油を完全分解できるという作用を有する。
【0067】
本発明の請求項2記載の発明は、酸化防止手段が前記油捕集手段上に塗布された酸化防止剤であることを特徴とする請求項1に記載の強制排気装置としたものであり、酸化防止剤を捕集手段の上に塗布することで、簡単かつ大量に酸化防止手段を製造することができるという作用を有する。また、捕集される油と酸化防止剤が直ちに接触することによってすぐに酸化防止作用を発揮し、油の酸化重合を効率良く抑える事ができるという作用を有する。
【0068】
本発明の請求項3記載の発明は、前記酸化防止手段が還元イオンを供給する還元イオン供給手段であることを特徴とする請求項1に記載の強制排気装置としたものであり、還元イオン供給手段を電気的に制御することによって還元イオン供給手段による酸化防止効果を制御することができるようになり、効率良く油の酸化を防止できるようになるという作用を有する。また、酸化防止手段が長期間にわたって作用することから、長期間にわたって抗酸化作用を持続させることができるという作用を有する。
【0069】
本発明の請求項4記載の発明は、第一の油分解手段が酵素を保持する酵素保持手段と給水路と導出路を備え、前記給水路から水を導入し、その導入した水と前記酵素保持手段で前記捕集手段に捕集された油を分解し第一の分解成分を生成させ、前記第一の分解成分を導出路から第二の油分解手段へ水と共に導出する構成とし、第二の油分解手段が酸化分解手段と排水路を備え、前記第一の分解成分を第二の油分解手段が分解し第二の分解成分を生成させ、前記第二の分解成分を前記排水路から水と共に排出する構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の強制排気装置としたものであり、給水路から給水した水と酵素保持手段が保持している酵素とを油捕集手段に捕集された油に反応させることによって油を酸化させる事なく加水分解で低分子化し、油を酸化重合させずに第一の分解成分とすることによって油の分解を簡単かつ効率的に行うことができるという作用を有する。また、酵素によって分解した第一の分解成分と給水した水とを導出路から第二の油分解手段に導出し、第一の分解成分をさらに第二の油分解手段によって酸化分解することによって、高分子の油を分解しにくいという酸化分解手段の性質を補い、低分子化した油を効率良く二酸化炭素と水にまで完全に分解できるようになり、分解した油を簡単に洗浄除去することができるという作用を有する。また、酵素によって油を加水分解することによって、エネルギーを節約し、環境負荷を低減させながら付着油を分解洗浄することができるという作用を有する。また、第二の分解成分が二酸化炭素と水であり、排水路から排出される水の水質汚濁度を低下させることができるため、環境負荷を低減させながら油を分解することができるという作用を有する。
【0070】
本発明の請求項5記載の発明は、第一の油分解手段が油と水を混合し乳化させる乳化手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の強制排気装置としたものであり、乳化手段によって付着油と水が混合され油が乳化され油と水の界面が増加し、界面が増加することによって酵素による油分解活性が上昇し、酵素による油分解が効率良く迅速に行われるようになるという作用を有する。
【0071】
本発明の請求項6記載の発明は、酵素保持手段がイオン交換樹脂、光硬化性樹脂、活性炭、ゼオライト、珪藻土、あるいはシリカゲルから選択される一種類の担体、あるいは二つ以上の組合せの担体を有していることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の強制排気装置としたものであり、担体が酵素を保持することによって酵素活性の低下が抑制され、安定に繰り返し酵素活性が発揮されるようになり、酵素による油の分解を安定的に行うことができるようになるという作用を有する。
【0072】
本発明の請求項7記載の発明は、酵素保持手段が疎水性を有していることを特徴とする請求項6に記載の強制排気装置としたものであり、担体が油と馴染みやすいので、担体に保持された酵素が油と接触しやすくなり、効率良く油を分解できるようになるという作用を有する。
【0073】
本発明の請求項8記載の発明は、酵素がカンジダ・ルゴーサ(Candida rugosa)あるいはシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)のいずれかに属する菌株の生産する油分解酵素を利用したものであることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の強制排気装置としたものであり、カンジダ・ルゴーサ(Candida rugosa)あるいはシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)のいずれかに属する菌株の生産する油分解酵素は調理用に用いられる油に対して広く分解活性を示すため、どのような種類の動植物性油に対しても効率良く分解することができるという作用を有し、使用する動植物油の種類が何であっても簡単かつ安定に油を分解除去することができるという作用を有する。
【0074】
本発明の請求項9記載の発明は、酵素保持手段が水に浮くことを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の強制排気装置としたものであり、酵素保持手段が水に浮遊することによって水に浮遊した油と接触しやすくなり、水に浮いた油を効率良く油分解することができるようになり、油の分解洗浄を効率良く簡単に行うことができるようになるという作用を有する。
【0075】
本発明の請求項10記載の発明は、第一の油分解手段が前記酵素保持手段を前記油捕集手段に接触させる接触手段を備えたことを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載の強制排気装置としたものであり、接触手段が酵素保持手段を油捕集手段に接触させる際の衝撃によって油捕集手段に付着した油が油捕集手段から離れやすくなり、水中に離散しやすくなることによって、油捕集手段に付着した油を効率良く除去洗浄することができるようになるという作用を有する。
【0076】
本発明の請求項11記載の発明は、第一の油分解手段が界面活性剤を保持していることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の強制排気装置としたものであり、界面活性剤によって酵素の油分解活性が活性化され、効率良くかつ迅速に油が分解されるようになるという作用を有する。また、界面活性剤によって油捕集手段に付着した油を水中に離散しやすくなり、油を効率良く除去洗浄することができるようになるという作用を有する。
【0077】
本発明の請求項12記載の発明は、第一の油分解手段が第一の油分解手段が分解する油と水の混合物のpHを調節するpH調節手段を備えていることを特徴とする請求項4〜11のいずれかに記載の強制排気装置としたものであり、酵素による油分解によって生産された脂肪酸が増加しても水環境のpHが酸性になるのを防止することができるようになり、水環境のpHを酵素の油分解活性の高い中性に保つことができるようになり、酵素の油分解活性を安定に保つことができるようになるという作用を有する。
【0078】
本発明の請求項13記載の発明は、第一の油分解手段が第一の油分解手段が分解する油と水の混合物を加熱する加熱手段を備えていることを特徴とする請求項4〜12のいずれかに記載の強制排気装置としたものであり、加熱手段によって油分解手段の温度を高温に保つことによって、酵素の油分解活性の高い温度を保つことができるようになり、使用環境の気温が低下したとしても安定した油分解活性を維持することができるという作用を有する。
【0079】
本発明の請求項14記載の発明は、第一の油分解手段が第一の油分解手段が分解する油と水の混合物の放熱を防止する断熱手段を備えていることを特徴とする請求項4〜13のいずれかに記載の強制排気装置としたものであり、断熱手段によって油分解手段の温度低下を低減することができるようになり、油分解活性に適した温度に保つために必要なエネルギーを低減させることができるようになり、省エネルギーで油を効率良く分解することができるようになるという作用を有する。
【0080】
本発明の請求項15記載の発明は、第一の油分解手段が振動を発生させる振動発生手段を備えていることを特徴とする請求項4〜14のいずれかに記載の強制排気装置としたものであり、振動発生手段が発生する振動によって酵素保持手段と油の接触効率が良くなり、油を効率良く分解することができるようになるという作用を有する。また、発生する振動によって、酵素保持手段に付着した油分解の反応阻害物質を簡単に除去できるようになり、油分解活性を安定かつ効率的に維持することができるようになるという作用を有する。
【0081】
本発明の請求項16記載の発明は、前記酸化分解手段が光を利用して酸化分解する光触媒を備えていることを特徴とする請求項4〜15のいずれかに記載の強制排気装置としたものであり、光エネルギーを吸収し光触媒から発生するラジカルによって、油が低分子化した第一の分解成分を効率良く二酸化炭素と水にまで完全に分解することができるようになり、高分子の油に対する分解効率の悪さを補い、効率よく油を分解することができるようになるという作用を有する。
【0082】
本発明の請求項17記載の発明は、前記光触媒は、活性炭、ゼオライト、珪藻土、ガラス、あるいはシリカゲルから選択される一種類の担体、あるいは二つ以上の組合せの担体に固定化されたものを特徴とする請求項4〜16のいずれかに記載の強制排気装置としたものであり、光触媒が担体に固定されているので、排水路から第二の分解成分と水を排出しても第二の油分解手段から光触媒が排出されないようにとどめることができるようになり、光触媒による酸化分解活性を安定に保つことができるようになるという作用を有する。
【0083】
本発明の請求項18記載の発明は、給水路に水を軟水にする軟水化手段を備えたことを特徴とする請求項4〜17のいずれかに記載の強制排気装置としたものであり、軟水手段が給水路から給水される水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンを除去することによって、油分解産物の不溶化を防止することができるようになり、油分解手段による油の洗浄性を上げることができるようになるという作用を有する。
【0084】
本発明の請求項19記載の発明は、油分解手段に前記酵素保持手段を交換するための交換穴を設けたことを特徴とする請求項4〜18のいずれかに記載の強制排気装置としたものであり、酵素保持手段の油分解活性が低下しても、酵素保持手段を交換穴より簡単に取り出し、油の分解活性の高い酵素保持手段を新たに油分解手段に入れることによって、油分解活性を簡単に再生することができるようになるという作用を有する。
【0085】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図14を参照しながら説明する。
【0086】
(実施の形態1)
図1(a)は本発明の実施の形態1における油分解手段を備えた強制排気装置の構成図、図1(b)は実施の形態1における送風手段の構成図であり、図1(c)は実施の形態1における油分解手段の構成を示す図であり、図2(a)は実施の形態1における第一の油分解手段の制御動作フロー図であり、図2(b)は実施の形態1における第二の油分解手段の構成を示す図である。
【0087】
図1(a)において、捕集フード1には屋内2に開口した吸入口3が形成されており、吸入口3は屋内2の方向を向いている。吸入口3は前ダクト4に接続されており、前ダクト4内には吸引された空気中の油を捕集する油捕集手段5が備えられており、前ダクト4は切り替え蓋6を介して後ダクト7に接続されており、後ダクト7内には送風手段8が備えられており、後ダクト7は壁9を貫通して屋外10に開口した排出口11に接続されている。油捕集手段5の上部には、送液ポンプ12に接続されている送液管13に形成された送液管開口部14が配置されており、油捕集手段5の下部には洗浄液溜め部15が配置している。洗浄液溜め部15の下面は、濾過膜16と蓋部17aと導出路17bを介して光分解手段18aに接続され、光分解手段18aは排水路18bを介してさらに、光分解洗浄液廃棄タンク19に接続されている。また、給水路20は洗浄液溜め部15と外部に連通されており、給水路20には開閉手段21が備えられている。また、洗浄液溜め部15には送液ポンプ12に連通された送液吸入口22が連通されている。また、油捕集手段5には油検知手段23と酸化防止手段24と振動発生手段25が接続されている。切り替え蓋6と送風手段8と送液ポンプ12と蓋部17aと開閉手段21と油検知手段23と酸化防止手段24と振動発生手段25は制御手段26と配線で接続されている。
【0088】
捕集フード1や前ダクト4や後ダクト7の材質は、金属やプラスチックなどの硬質のものが望ましく、調理時の発生する熱に対して可塑性を示さない材料であればいずれの場合も用いることができる。また、捕集フード1や前ダクト4の表面に対して光触媒や親水性材料のコーティングをして防汚処理を施すこともできる。油捕集手段5は不燃性のものが好ましく、ガラスや金属や珪藻土などで成形されたハニカム状または繊維状または板状の形状を用いることができ、例えばフィルターを利用することができる。図1(b)のように送風手段8はシロッコファン27とモーター28で構成されている。
【0089】
上記構成において、切り替え蓋6を開口し、前ダクト4と後ダクト7を連通させると共にモーター28を回転させシロッコファン27を駆動させることによって、吸入口3から排出口11へと風が送られ、吸入口3付近で発生した油煙が空気と共に前ダクト4に吸入される。吸入された空気中の油煙は油捕集手段5に付着することによって捕集され、油煙が除去され清浄化された空気が後ダクト7を通り抜け排出口11から屋外10へ排出される。
【0090】
油検知手段23が油捕集手段5に油が捕集されたことを検知した場合、制御手段26によって酸化防止手段24と第一の油分解手段が駆動するようにコントロールされる。油捕集手段5によって捕集された油を第一の油分解手段によって分解洗浄する方法は図1(c)を用いて説明する。
【0091】
図1(c)において、第一の油分解手段は送液ポンプ12と送液管13と送液管開口部14と洗浄液溜め部15で構成されており、洗浄液溜め部15内部には酵素保持手段29aと酵素保持手段29aの後方に光分解手段18aを備えている。洗浄液溜め部15内部に、あらかじめ給水路20より水を供給しておき、油分解の準備を整えることができる。送液ポンプ12によって洗浄液溜め部15内部の水と酵素保持手段29aが共に送液吸入口22より吸引され、送液管13を通過して送液管開口部14から吐出される。吐出された水と酵素保持手段29aは油捕集手段5の表面と接触しながら下に落下し、再び洗浄液溜め部15に戻ると共に、油を油捕集手段5から除去し洗浄液溜め部15内に回収する。洗浄液溜め部15内に回収された油は酵素保持手段29aによって分解され、生成された第一の分解成分29bは、濾過膜16を通過して光分解手段18aに送られ、酸化分解され、酸化分解によって生成した第ニの分解成分29cは排水路18bを介して光分解洗浄液廃棄タンク19に排出される。なお、水のみを送液管開口部14から油捕集手段5の表面に吐出し、水洗浄によって油捕集手段5から油を除去し、洗浄液溜め部15内で酵素保持手段29aと除去された油とを反応させることによって分解するようにすることもできる。
【0092】
制御手段26は第一の油分解手段の一連の動作を制御するものである。この動作制御の一例を図2の動作フロー図で説明する。
【0093】
スイッチ動作やタイマーなどにより送風手段8の運転を開始したのち(S1)、切り替え蓋6を開口させ(S2)、屋内の油煙を含んだ空気を吸入口3から吸入する。そして再びスイッチ動作やタイマーなどにより送風手段8を停止させ(S3)切り替え蓋6を閉口させる(S4)。次に油検知手段23が油捕集手段5によって捕集された油の量を検知し(S5)、検知された油の量gが洗浄開始の基準となる油の量G1よりも少なく酸化防止手段24の運転基準となる油の量G2よりも多い場合は、次に送風手段8を運転するときまで酸化防止手段24を作動させ続ける(S6)。酸化防止手段24を作動させることによってよって油捕集手段5に捕集された油が酸化されるのを防止することができ、長期間油を低い粘度で保存できるようになるため、油捕集の毎に油の洗浄をしなくても後から簡単に油を除去洗浄することができるようになり、油の洗浄効率が良くなることから、油洗浄の回数も低下するので油洗浄のコストが低下する。
【0094】
また、油の酸化が原因で発生する悪臭も発生しなくなるので屋内の環境も快適に保たれるようになる。油検知手段23によって検知された油の量gがG2よりも少ない場合は次に送風手段8を運転するときまで待機する(S7)。検知された油の量がG1よりも多い場合は、開閉手段21を開口し洗浄液溜め部15内に給水し(S8)、あらかじめ設定した時間の後に開閉手段21を閉口させる(S9)。例えば給水路20を予め上水道に接続しておき、予め設定した1〜5分の開閉手段21を開口することによって洗浄液溜め部15内に水道水3〜25Lを補給することができるが、油捕集手段5の洗浄に必要な水量が洗浄液溜め部15内に確保できる時間であれば、この時間に限定されない。次に、送液ポンプ12を駆動させ、洗浄液溜め部15内の水と酵素保持手段29aを送液管開口部14から吐出させる(S10)。次に振動発生手段25を作動させることによって(S11)油捕集手段5が振動しながら酵素保持手段29aと直接接触するようになり、付着した油を遊離除去させる。このように振動している油捕集手段5に直接油分解活性を持った酵素保持手段29aが衝突することによって、衝突の再のエネルギーが大きくなり、結果として付着した油の剥離にエネルギーが費やされることで付着油を遊離させやすくなるため、洗浄時間が短くなりコストも低下する。遊離した油は洗浄液溜め部15内部に回収され、酵素保持手段29aによって分解される。所定時間運転した後、送液ポンプ12の運転を停止し(S12)洗浄を停止し、切り替え蓋6を開口させる(S13)。
【0095】
例えば一般の家庭にて一回の調理で捕集される1〜3gの油を油分離酵素で分離するには3.4〜10.2ミリmolの油分離活性が必要となり、1ユニット(マイクロmol/分)/gの油分離活性を持った酵素保持手段29aと油を分解する光分解手段18aが必要となる。油10g利用する場合は、6時間〜20時間油分解手段を運転することによって捕集した油をすべて分解することができるようになる。また、酵素保持手段29aの油分解活性や使用量によって、油分解に必要な時間を予め設定することができ、すべての油を分解できる時間であれば所定時間として設定することができる。また、光分解手段18aに対しても第一の分解成分29bの分解に必要な時間を予め設定することができ、第一の分解成分29bすべてを分解できる時間であれば所定時間として設定することができる。切り替え蓋6を開口した後、送風手段8の運転を開始し(S14)油捕集手段に付着した水分を完全に除去する。
【0096】
このとき、振動発生手段25を作動させたまま、送風手段8を作動させることによって油捕集手段5に付着した水分がすばやく除去できるようになり乾燥時間が短くなりコストも低下する。所定時間運転した後に送風手段8の運転を停止し(S15)、切り替え蓋6を閉口させ(S16)油捕集手段の乾燥を終了する。
【0097】
そして振動発生手段25を停止させた後に(S17)蓋部17aを開口し(S18)、洗浄液溜め部15内にある水と油の分解産物を光分解洗浄液廃棄タンク19に排水する。最後に蓋部17aを閉口し(S19)、酸化防止手段を停止することによって第一の油分解手段の動作を終了する(S20)。
【0098】
なお、切り替え蓋6は前ダクト4と後ダクト7の連通をさえぎり、洗浄液が後ダクト7に漏出しないように設置した開閉可能な蓋であり、例えば上下に開閉する蓋である。また、送風手段8は、例えばモーター28とシロッコファン27を備えたものが挙げられるが、静圧を出し、屋内の空気を屋外へ排出することのできる手段であればいずれの手段を用いてもかまわない。
【0099】
また、送液ポンプ12は、例えば小型のチューブポンプやピストンポンプを用いることができる。また、送液管13は、例えばシリコンやゴム製のチューブなどを用いることができる。また、送液管開口部14は、例えば送液管13であるゴムチューブに開口した部分であり、油捕集手段5にムラ無く洗浄液を吐出するために分散型のシャワー構造を用いることもできる。また、洗浄液溜め部15は、例えば下部に排水用の穴が開口した樹脂製の容器であり、前ダクト4と連通しているものである。また、濾過膜16は、例えばステンレスや合成樹脂で成形されたメッシュを利用することができ、酵素保持手段29aを洗浄液溜め部15内に保持したまま、洗浄に用いた水と第一の分解成分29b導出路17bを介して光分解手段18aに導出することのできるものである。
【0100】
光分解洗浄液廃棄タンク19に廃棄することのできるものである。この濾過膜16を用いて酵素保持手段29aを洗浄液溜め部15内に保持することができるため、酵素保持手段29aが保持している酵素活性を使い捨てにせず何度も油分解に利用することができるようになり、洗浄コストの低減ができる。また、蓋部17aは濾過膜16を蓋することによって、第一の分解成分29bを洗浄液溜め部15内に保持するためのものであって、例えば、開閉可能な蓋や電磁弁を用いることができる。また、光分解洗浄液廃棄タンク19とは、例えばポリタンクなどの水溶液を保持することができ、洗浄液溜め部15内の容積よりも大きなものを用いることができるが、下水道設備や、合併浄化槽などの排水処理設備に接続することもできる。また、導出路17bは、例えばシリコンやゴム製や金属製のチューブを用いることができる。また、排水路18bは、例えばシリコンやゴム製や金属製のチューブを用いることができる。また、給水路20は、例えばシリコンやゴム製や金属製のチューブを用いることができる。また、開閉手段21は例えば電磁弁を用いることができる。また、送液吸入口22はシリコンやゴム製や金属製のチューブを用いることができる。
【0101】
また、第一の分解成分29bとは、例えば油脂成分を酵素で分解することによって生じた、グリセリンと高級脂肪酸を含んだ廃水のことであり、第二の分解成分29cとは、例えばグリセリンや脂肪酸を分解することで生じる二酸化炭素や水のことである。
【0102】
また、油検知手段23は、例えば重量センサを用い、捕集油の付着していない初期の重量値を記憶しておき、油捕集後の重量値から初期重量値を減ずることによって付着油量値として計算することができる。また、例えば静電容量検出装置を利用し、表面が電気的に絶縁された電極を油捕集手段5の上に設置し、油捕集手段5上の静電容量の変化を検出することによって捕集された油を検知することができる。また、例えばオルガスタ式油センサを利用することもできる。カーボン導電性微粒子を分散させた高分子膜に油が接触し高分子膜が膨潤することによって導電性微粒子間の接触抵抗が増し、瞬時に油を検出することができる。
【0103】
また、酸化防止手段24としては、例えば静電気式還元化方式の酸化防止装置や、高周波方式による水素原子発生方式による酸化防止装置や、半導体を利用してマイナスイオンを発生させることによって酸化防止する装置が利用できるが、酸化チタンやセラミック担体からの還元イオンを利用して酸化防止することもできる。また、制御手段26は、例えば図2の動作フローのプログラムを持ったマイクロコンピューターを利用することができる。また、酵素保持手段29aは、例えば油分解酵素であるリパーゼを吸着固定したシリカゲルやイオン交換樹脂などの担体であって、濾過膜16を通過せずに洗浄液溜め部15内にとどまることのできる大きさのものを利用することができる。また、濾過膜16のメッシュを変えることによって、酵素保持手段29aの大きさを変えることができる。
【0104】
また、酵素保持手段29aは例えばイオン交換樹脂や、活性炭、ゼオライトや珪藻土やあるいはシリカゲルに油分解酵素であるリパーゼを吸着固定し入手することもできる。例えば、油に対する選択性が広いカンジダ・ルゴーサ(Candida rugosa)あるいはシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)のいずれかに属する菌株の生産するリパーゼを疎水性の担体に吸着固定することによって、リパーゼを高い収率で吸着した担体を得ることができる。これらの種類のリパーゼを利用することによって捕集される油の種類によらず高い油分解活性を持った酵素保持手段29aとすることができる。また、あらかじめ疎水性の担体にリパーゼを吸着固定することによって油となじみやすいリパーゼ固定化担体を得ることができ、例えば活性炭や疎水性処理を行った珪藻土担体にリパーゼを吸着固定することによって高い油分解活性を持った酵素保持手段29aとなる。
【0105】
第二の油分解手段は第一の油分解手段である酵素保持手段29aの作用によって生成された第一の分解成分29bを分解処理するための手段であり、例えば光分解手段18aを用いることができるが、第二の油分解手段の一例について図2(b)を用いて説明する。
【0106】
例えば第二の油分解手段の一つである光分解手段18aは、排水路18bと、光触媒18cを担持したガラスビーズ18dと光源18eから構成されており、上部に配置された導出路17bを介して洗浄液溜め部15と連通しており、下部に配置された排水路18bを介して光分解洗浄液廃棄タンク19に連通している。光源18eは制御手段26に配線され、第一の分解成分29bが生じ光分解手段18aに導入された際に紫外線が照射されるように制御される。光分解手段18aは例えば金属や、ガラスなどの紫外線によって劣化しない材質の容器で形成することができる。ガラスビーズ18dは例えば、直径10マイクロメートルから3ミリメートルの粒径を有するガラスを用いることができ、より粒径が小さいほうが好ましい。ガラスの成分としてホウ酸やアルミニウムを含まない石英ガラスかあるいは含有量の少ないガラスが好ましい。光源18eはガラスビーズ18dに光を照射しており照射される光は紫外線が好ましく、光源18eとしては例えばブラックライトや滅菌灯などのU.V.照射蛍光灯や、U.V.照射LEDを用いることができる。光触媒18cとしては例えば酸化チタンを用いることができる。なお、光触媒18cを担持させる担体としてガラスビーズ18dを用いたが、光触媒18cである酸化チタンを結合し強固に保持することのできるものであれば同様に用いることができ、例えばゼオライトやシリカゲル珪藻土などを用いることもできる。
【0107】
上記構成において、導出路17bより導入される第一の分解成分29bは光分解手段18a内に充填されたガラスビーズ18dを浸漬し、光源18eからの紫外線の照射を受け光触媒18cから発生したラジカルによって酸化分解を受け、二酸化炭素と水に分解される。光分解手段18a内で二酸化炭素と水にまで分解された第二の分解成分29cは排水路18bから光分解洗浄液廃棄タンク19へと排水される。第一の分解成分はグリセリンと高級脂肪酸が多いため、そのまま排水してしまうと水質汚濁を上昇させてしまう懸念があったが、第二の油分解手段によってグリセリンと脂肪酸を二酸化炭素と水にまで分解することができるため、水質汚濁を上昇させずに排水することができるようになる。また、光触媒を用いて捕集された油を直接分解してしまうと、油の分子量がおよそ800以上もあることから、油分子の酸化重合の影響を受け効率良く油を分解することができなくなってしまうが、酵素処理によって予め分子量200程度に低分子化しているため、酸化重合の影響を受けることなく、効率良く脂肪酸をさらに低分子へと分解することができるようになる。また、酵素による油分解反応を利用して油分解に用いることによって、油分解の律速段階である脂肪酸とグリセリンへの分解を簡単に行うことができるようになり、油の分解洗浄を効率良く迅速簡単に行うことができるようになる。
【0108】
なお、第二の分解成分29cを洗浄液廃液タンク19や下水道に排水せずに、洗浄液溜め部15にポンプなどを使って送液し、油捕集手段5の洗浄水として再利用することもでき、排水をしない構成とすることもできる。
【0109】
このように実施の形態1によれば、油捕集手段5に捕集され付着している油を自動で検知し自動で洗浄する第一の油分解手段と、第一の油分解手段によって生成された第一の分解成分29bをさらに分解する第二の分解手段を設けることによって、簡単に付着油を除去洗浄でき、効率良く二酸化炭素と水にまで分解し無害化して排出することのできる強制排気装置が得られる。また、洗浄効率が良くなるので洗浄に費やす時間やコストを低減させることができる。また、油洗浄に酵素を利用してグリセリンと高級脂肪酸に分解した後に第二の油分解手段で処理を行っているので、第二の油分解手段である光分解手段18aによって効率良く分解が促進され、酸化重合されることなく油を二酸化炭素と水にまで分解し環境負荷を低減しすることができる。また、強制排気装置を利用する人の油洗浄作業の煩わしさを軽減することができる。
【0110】
(実施の形態2)
図3(a)は本発明の実施の形態2における油捕集手段5の構成図であり、図3(b)は実施の形態2における油捕集手段の作製のフロー図である。実施の形態1と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。
【0111】
図3(a)において酸化防止剤30が油捕集手段5の上に塗布されている。酸化防止剤30は、例えばセラミックで構成された還元剤を利用することができる。また、例えばビタミンCやグリシン等の有機分子を利用することもできる。酸化防止剤30は例えばアクリル樹脂などの添着材を用いて油捕集手段に添着することができ、油捕集手段5に抗酸化作用を簡単に付与することができる。
【0112】
酸化防止剤30の油捕集手段5への添着作業の手順を図3(b)にて説明する。はじめに油捕集手段5として、例えば金属や合成樹脂などを網状に成形し(P1)、続いて酸化防止剤30を混合した例えばアクリル樹脂のような添着材に油捕集手段5を浸漬する(P2)。その後、酸化防止剤30を付着した油捕集手段5を乾燥させる(P3)ことによって酸化防止剤30を油捕集手段5の上に固定化する。
【0113】
上記構成において、酸化防止剤30が油捕集手段5の上に付着した油の酸化を防止することによって捕集された油を長期間粘度の低い状態に保存することができるようになり、捕集された油を長期間放置したとしても第一の油分解手段と第二の油分解手段によって簡単に迅速に分解洗浄することが可能になり、強制排気装置を使用するたびに捕集した油を洗浄しなくても済むため、低コストで捕集した油を分解洗浄することのできる強制排気装置となる。また、洗浄液溜め部15内の水および酵素保持手段29aの酸化を防止することによって酵素保持手段29aの油分解活性を長期間安定に保持することができるようになり、長期間安定して油の分解活性を維持することができるようになり、長期間安定した油分解能力を保持した強制排気装置となる。
【0114】
このように実施の形態2によれば、簡単な操作で油捕集手段5に油の酸化防止機能を付与することができ、また、大量生産が容易になり、コストの安い酸化防止機能を持った油捕集手段5が生産可能になる。また、酸化防止のためにエネルギーを消費しないことから、ランニングコストの低い酸化防止機能を付与することができるようになる。また、付着した油を長期間にわたって放置していたとしても簡単に油を洗浄除去できる機能を持った安価な強制排気装置が提供できるようになる。
【0115】
(実施の形態3)
実施の形態1、2と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図4は本発明の実施の形態3における酸化防止手段24の構成図である。
【0116】
図4において、イオン供給部31が油捕集手段5に近接して配置されており、また、もう一方のイオン供給部31が洗浄液溜め部15内の水に接するように配置されている。イオン供給部31は還元イオン供給手段32に接続され、イオン供給部31は制御手段26に接続されている。還元イオン供給手段32は例えば電圧をコントロールするための電圧制御基盤を用いることができ、イオン供給部31は、例えば金属製の電極を絶縁性のセラミックや半導体で被覆したものを用いることができる。
【0117】
上記構成において、例えば還元イオン供給手段32がイオン供給部31へ印加される電圧を調節し、還元イオンを油捕集手段5の近傍に放出することができるようになり、油捕集手段5に付着した油の酸化防止を効果的に行うことができるようになる。
【0118】
このように実施の形態3によれば、付着した油を長期間にわたって放置していたとしても、効果的に油の酸化防止をすることによって付着油の硬化を長期間抑制し、長期間放置後も簡単に油を分解洗浄することができるようになる。
【0119】
(実施の形態4)
図5は本発明の実施の形態4における油分解手段の構成図である。実施の形態1乃至3と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。
【0120】
図5において、油分解手段は送液ポンプ12と送液管13と送液管開口部14と洗浄液溜め部15と濾過膜16と蓋部17aと光分解洗浄液廃棄タンク19と給水路20と開閉手段21と送液吸入口22と酵素保持手段29aで構成されている。開閉手段21は給水路20に備えられており、給水路20は洗浄液溜め部15と強制排気装置の外部に連通している。送液ポンプ12の下面に配置された送液吸入口22は洗浄液溜め部15内に連通しており、送液ポンプ12の上面に接続された送液管13は送液管開口部14に接続されている。送液管開口部14は油捕集手段5の上部に配置されている。送液ポンプ12と蓋部17aと開閉手段21は制御手段26に配線で接続されている。洗浄液溜め部15は油捕集手段5の下に配置されている。
【0121】
上記構成において、制御手段26によって開閉手段21が開口され、給水路20を通じて洗浄液溜め部15内に水あるいは洗浄液が供給される。次に送液ポンプ12を駆動させることによって送液吸入口22から水と酵素保持手段29aが送液ポンプ12内に吸入され、吸入された水と酵素保持手段29aが送液管13内を通過して送液管開口部14に輸送され、送液管開口部14から吐出される。水と酵素保持手段29aは油捕集手段5に接触しながら下に落下し、再び洗浄液溜め部15内に回収される。回収された水と酵素保持手段29aは再度送液ポンプ12によって油捕集手段5の上部から吐出され、油捕集手段上を循環して通過し、油捕集手段5に付着した油を除去洗浄できるようになる。
【0122】
なお、送液ポンプ12は、例えば小型のチューブポンプやピストンポンプを用いることができる。また、送液管13は、例えばシリコンやゴム製のチューブなどを用いることができる。また、送液開口部14は、例えば送液管13であるゴムチューブに開口した部分であり、油捕集手段5にムラ無く洗浄液を吐出するために分散型のシャワー構造を用いることもでき、セラミック製のシャワーヘッドやノズルを利用することができる。また、洗浄液溜め部15は、例えば下部に排水用の穴が開口した樹脂製の容器を利用することができる。また濾過膜16は、例えばステンレスや合成樹脂で成形されたメッシュを利用することができ、酵素保持手段29aを洗浄液溜め部15内に保持したまま、第一の分解成分29bを光分解洗浄液廃棄タンク19に廃棄することのできるものである。
【0123】
この濾過膜16を用いて酵素保持手段29aを洗浄液溜め部15内に保持することができるため、酵素保持手段29aが有している酵素活性を使い捨てにせず何度も油分解に利用することができるようになり、洗浄コストの低減ができる。また、蓋部17aは濾過膜16を蓋することによって、洗浄液を洗浄液溜め部15内に保持するためのものであって、例えば、開閉可能な蓋や電磁弁を用いることができる。また、光分解洗浄液廃棄タンク19とは、例えばポリタンクなどの水溶液を保持することができ、洗浄液溜め部15内の容積よりも大きなものを用いることができるが、下水道設備や、合併浄化槽などの排水処理設備に接続することもできる。また、給水路20は、例えばシリコンやゴム製や金属製のチューブを用いることができる。また、開閉手段21は例えば電磁弁を用いることができる。また、送液吸入口22はシリコンやゴム製や金属製のチューブを用いることができる。
【0124】
このように実施の形態4によれば、油分解活性を持った水と酵素保持手段29aを油捕集手段5に連続して接触させることができるようになり、油捕集手段5に付着した油を効果的に洗浄除去できるようになる。また、酵素保持手段29aを直接に油捕集手段5に接触させることによって、付着油が簡単に分解除去できるようになり、分解洗浄を効率的に行うことができるようになる。また、循環して油捕集手段5に作用させることによって、水と酵素保持手段29aの使用量を削減することができるようになる。
【0125】
(実施の形態5)
図6は本発明の実施の形態5における油分解手段の構成図である。実施の形態1乃至4と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。
【0126】
図6において実施の形態4と異なるところは、乳化手段33が洗浄液溜め部15内部に備え付けられており、該乳化手段33は制御手段26に配線で接続されている点である。図6において、図5と同じ構成要素については同じ符号を用いその説明を省略する。乳化手段33は、例えばミキサーのような油を物理的にせん断する装置を利用することができる。
【0127】
上記構成において、乳化手段33によって洗浄液溜め部15内の水と油を混合し乳化させることによって酵素保持手段29aに保持された油分解酵素と油と水の接触効率が高まることで油の分解効率が高まり、また、乳化した水と油が酵素保持手段29aと共に油捕集手段5に吐出されるようになり、油捕集手段5上に付着した油をさらに効率よく除去洗浄できるようになる。
【0128】
このように実施の形態5によれば、油の除去を効率的にし、なおかつ油分解活性の効率も高めることができるようになり、油捕集手段5に捕集された油を分解洗浄する効率を高めることができるようになる。また、洗浄効率が高まることによって、洗浄に費やす時間とコストを低減することができるようになる。
【0129】
(実施の形態6)
図7は本発明の実施の形態6における油分解手段の構成図である。実施の形態1乃至5と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。
【0130】
図7において実施の形態5と異なるところは、酵素保持手段29aの比重が1より小さく水に浮く点である。図7において、図6と同じ構成要素については同じ符号を用いその説明を省略する。酵素保持手段29aは、例えば粒状の活性炭を利用することができ、活性炭に油分解酵素を吸着固定することによって入手することができる。
【0131】
上記構成において、比重が1より小さいため、酵素保持手段29aが水に浮き、酵素保持手段29aが送液吸入口22に近づきやすくなることによって、送液ポンプ12によって吸引されやすくなり、酵素保持手段29aが送液ポンプ12によって効率よく油捕集手段5の上から吐出されるようになる。また、洗浄液溜め部15内に回収された油に対して、酵素保持手段29aが水に浮くことによって接触しやすくなり、回収された油を分解しやすくなる。
【0132】
このように実施の形態6によれば、酵素保持手段29aが油捕集手段5と接触する確立を上昇させ、また、除去された油と洗浄液溜め部15内にて接触する確立を上昇させ、油の分解効率を高めることができるようになる。また、洗浄効率が高まることによって、洗浄に費やす時間とコストを低減することができるようになる。
【0133】
(実施の形態7)
図8は本発明の実施の形態7における油分解手段の構成図である。実施の形態1乃至6と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。
【0134】
図8において実施の形態6と異なるところは、界面活性剤供給手段34と界面活性剤供給口35と供給弁36を備えている点である。図8において、図7と同じ構成要素については同じ符号を用いその説明を省略する。図8において、界面活性剤供給手段34は内部に例えば市販の中性洗剤や生分解性洗剤を保有しており、内部の界面活性剤を洗浄液溜め部15に供給できるように界面活性剤供給口35を洗浄液溜め部15に連通させている。界面活性剤供給口35と界面活性剤供給手段34の間には供給弁36が備えられており、供給弁36は制御手段26に配線で接続されている。界面活性剤供給手段34は、例えばポリタンクなどの容器を利用することができ、界面活性剤供給口35は例えばシリコンやゴム製のチューブを利用することができ、供給弁36は例えば電磁弁などを利用することができる。また、酵素保持手段29aで分解した第一の分解成分29bは界面活性を有するようになることから、第一の分解成分29bを例えばポンプなどを用いて界面活性剤供給手段34に充填し保存しておき、次に油分解手段を動作させる際に界面活性剤として使用することもでき、この場合界面活性剤を外部から調達しなくても界面活性剤を強制排気装置内で自給することができる。
【0135】
上記構成において、油検知手段23が油捕集手段5に油が付着していることを検知した場合、送液ポンプ12を駆動させると同時に、供給弁36を一定時間の間開口し、界面活性剤供給口35より例えば非イオン性界面活性剤のTween20を洗浄液溜め部15内に供給する。例えば洗浄液溜め部15内の容積を10Lとし、10%濃度のTween20を界面活性剤供給手段34に充填し、直径3cmの界面活性剤供給口35を利用した場合、3〜10秒間開口することで100ml滴下することができ、最終濃度が0.1%になるようにTween20を洗浄液溜め部15内に供給することができる。
【0136】
最終濃度が0.1%になるように滴下することによって酵素活性を低下させずに界面活性を得ることできるようになる。また、油捕集手段5への油の付着と連動して洗浄液溜め部15内に界面活性剤を供給することによって、水と酵素保持手段29aが界面活性剤と共に油捕集手段5に作用することができるようになる。また、界面活性剤によって油捕集手段5上の付着油が簡単に除去されるようになり、より短時間で油が除去洗浄されるようになる。また、界面活性剤によって酵素保持手段の油分解酵素が活性化され、より効果的に付着油を分解除去できるようになり、より短時間に油が除去分解されるようになることから、洗浄コストも低減させることができるようになる。
【0137】
このように実施の形態7によれば、界面活性剤供給手段34が油捕集手段5上の付着油の除去性能を向上させることができるようになり、また、酵素保持手段29aの油分解活性を活性化させることができるようになり、油の分解効率を高めることができるようになる。
【0138】
(実施の形態8)
図9は本発明の実施の形態8における油分解手段の構成図である。実施の形態1乃至7と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。
【0139】
図9において実施の形態7と異なるところは、pH調節手段37を備えている点である。図9において、図8と同じ構成要素については同じ符号を用いその説明を省略する。図9において、pH調節手段37は洗浄液溜め部15内部に配置されており、制御手段26に配線で接続されている。pH調節手段37は、例えばガラス電極式のpHセンサーを利用することができる。
【0140】
上記構成において、洗浄液溜め部15内の洗浄水が油の分解によって酸性になってしまった場合、pH調節手段37が洗浄液溜め部15内のpHが酸性であることを検知できるようになり、pH調節手段37が酸性を検知したことを元に、制御手段26が蓋部17aを開口させることによって、酸性になった洗浄水を光分解洗浄液廃棄タンク19に廃棄することができるようになり、洗浄液が長時間酸性状態になることを防止することができるようになる。酵素保持手段29aの持つ油分解活性は、酸性やアルカリ性になると酵素活性を低下させてしまうが、pHが酸性やアルカリ性になった場合には第一の分解成分29bを排水し新しく給水することでpHを調節することができ、酵素保持手段29aの油分解活性を安定に保つことができるようになる。
【0141】
このように実施の形態8によれば、洗浄液が強酸性や強アルカリ性に陥ることをpH調節手段37が未然に防止することによって、酵素保持手段29aの油分解活性の低下を防止させることができるようになり、油分解の再に油分解活性を低下させること無く安定に保つことができるようになる。
【0142】
(実施の形態9)
図10は本発明の実施の形態9における油分解手段の構成図である。実施の形態1乃至8と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。
【0143】
図10において実施の形態8と異なるところは、加熱手段38を備えている点である。図10において、図9と同じ構成要素については同じ符号を用いその説明を省略する。図10において、加熱手段38は洗浄液溜め部15内部に配置されており、制御手段26に配線で接続されている。加熱手段38は、例えばステンレスヒーターなどを利用することができる。
【0144】
上記構成において、油捕集手段5の付着油を洗浄する際に、加熱手段38を運転させることによって、洗浄液溜め部15内の洗浄液の温度を高めることができ、例えば加熱手段38の出力を調節して洗浄液の温度40℃に調節することによって、酵素保持手段29aの油分解活性を高めることができる温度にすることができる。
【0145】
このように実施の形態9によれば、洗浄液の温度を高めることによって酵素保持手段29aの油分解活性を高めることができるようになり、効率良く油を分解洗浄することができるようになる。
【0146】
(実施の形態10)
実施の形態1乃至9と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図11において実施の形態9と異なるところは、断熱手段39を備えている点である。図11において、図10と同じ構成要素については同じ符号を用いその説明を省略する。図11において、断熱手段39は洗浄液溜め部15の外部に配置されている。断熱手段39は、例えばグラスウールなどを利用することができる。
【0147】
上記構成において、加熱手段38を運転させた際に、洗浄液溜め部15内の洗浄液がもつ熱量が洗浄液溜め部15から外部に放射されるのを、断熱手段39が防止することによって、洗浄液溜め部15内の洗浄液の温度が保温され、加熱手段38による加熱効率を高めることができる。
【0148】
このように、実施の形態10によれば、洗浄液溜め部15内の温度を保温することによって、加熱手段38による加熱効率を上げることができるようになり、少ない消費電力で効率的に油分解洗浄を発揮させることができるようになる。
【0149】
(実施の形態11)
実施の形態1乃至10と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図12において実施の形態10と異なるところは、振動発生手段40を備えている点である。図12において、図11と同じ構成要素については同じ符号を用いその説明を省略する。図12において、振動発生手段40は油捕集手段5に接触するように配置されており、制御手段26に配線で接続されている。振動発生手段40は、例えば圧電素子などを利用することができる。
【0150】
上記構成において、油捕集手段5上の付着油を洗浄する際に、制御手段26が送液ポンプ12を駆動させると共に、振動発生手段40を運転させる。振動発生手段40によって発生した振動が、油捕集手段5に伝達され、油捕集手段5上の振動エネルギーによって付着した油が油捕集手段5から離れやすくなる。また、送液管開口部から吐出される洗浄液と油捕集手段5が接触する際に、酵素保持手段29aと油捕集手段5が効率よく接触できるようになり、油の分解洗浄性が増加する。
【0151】
このように、実施の形態11によれば、振動発生手段40によって油捕集手段5上の付着油の除去洗浄性が改善されるようになり、より効果的に短時間に付着油を除去洗浄することができるようになる。
【0152】
(実施の形態12)
実施の形態1乃至11と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図13において実施の形態11と異なるところは、軟水化手段41を備えている点である。図13において、図12と同じ構成要素については同じ符号を用いその説明を省略する。図13において、軟水化手段41は給水路20上に備えられている。軟水化手段41は、例えばイオン交換樹脂を充填したカートリッジを利用することができる。
【0153】
上記構成において、給水路20から洗浄液溜め部15内に供給される水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンを除去することによって供給水が軟水化され、油捕集手段5を洗浄する水が軟水化される。油を酵素分解することによって生成する脂肪酸はカルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合することによって不溶性の塩を形成しステンレスや樹脂の表面を汚染してしまうが、あらかじめ、供給水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンを除去することによって、不溶性の沈殿物の精製を防止することができるようになる。
【0154】
このように実施の形態12によれば、軟水化手段41によって、油分解後に形成される不溶性沈殿の発生を防止することができるようになり、効率よく捕集油を分解洗浄することができるようになる。
【0155】
(実施の形態13)
実施の形態1乃至12と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図14において実施の形態12と異なるところは、交換穴42を備えている点である。図14において、図13と同じ構成要素については同じ符号を用いその説明を省略する。図14において、交換穴42は洗浄液溜め部15の側面あるいは上面あるいは下面に備えられており、自由に開閉ができる蓋が取り付けられている。交換穴42は例えば四角形の開口部を洗浄液溜め部15の側面に設け、ゴムやシリコンなどで交換穴42と同形の蓋を設けることができる。
【0156】
上記構成において、洗浄液溜め部15内に水が入っていない状態で酵素保持手段29aを交換穴42より撤去し、その後、交換穴42から新しい酵素保持手段29aを挿入することによって、洗浄液溜め部15内の酵素保持手段29aを交換することができるようになる。
【0157】
このように実施の形態13によれば、交換穴42を設けることによって、酵素保持手段29aの油分解活性が低下した場合、油分解活性を持った新しい酵素保持手段29aと簡単に交換することができるようになり、安定して油分解活性を発揮させることができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明の強制排気装置を用いることによって長期間付着した油を放置していた場合でも油捕集手段に付着した油を簡単に洗浄できるようになり、洗浄作業が自動で行われるため油汚れの洗浄作業の煩わしさを軽減し、利便性を向上させることができ、また、洗浄が簡単に効率よくかつ効果的に行われるので洗浄時間とコストも低減させることができ、また、油を分解し排出するので環境への汚染物質の排出を低減させることができ、レンジフードなどの油煙排気装置や油を取り扱う調理機器や産業機器などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明の実施の形態1に記載の強制排気装置を示す図((a)強制排気装置の構成を示す図、(b)送風手段の構成を示す図、(c)第一の油分解手段の構成を示す図)
【図2】本発明の実施の形態1に記載の油分解手段を示す図((a)油分解手段の制御の動作フローを示す図、(b)第二の油分解手段の構成を示す図)
【図3】本発明の実施の形態2に記載の油捕集手段を示す図((a)油捕集手段の構成を示す図、(b)油捕集手段の作製フローを示す図)
【図4】本発明の実施の形態3に記載の酸化防止手段の構成を示す図
【図5】本発明の実施の形態4に記載の第一の油分解手段の構成を示す図
【図6】本発明の実施の形態5に記載の第一の油分解手段の構成を示す図
【図7】本発明の実施の形態6に記載の第一の油分解手段の構成を示す図
【図8】本発明の実施の形態7に記載の第一の油分解手段の構成を示す図
【図9】本発明の実施の形態8に記載の第一の油分解手段の構成を示す図
【図10】本発明の実施の形態9に記載の第一の油分解手段の構成を示す図
【図11】本発明の実施の形態10に記載の第一の油分解手段の構成を示す図
【図12】本発明の実施の形態11に記載の第一の油分解手段の構成を示す図
【図13】本発明の実施の形態12に記載の第一の油分解手段の構成を示す図
【図14】本発明の実施の形態13に記載の第一の油分解手段の構成を示す図
【図15】従来の強制排気装置の構成を示す図
【符号の説明】
【0160】
1 捕集フード
2 屋内
3 吸入口
4 前ダクト
5 油捕集手段
6 切り替え蓋
7 後ダクト
8 送風手段
9 壁
10 屋外
11 排出口
12 送液ポンプ
13 送液管
14 送液管開口部
15 洗浄液溜め部
16 濾過膜
17a 蓋部
17b 導出路
18a 光分解手段
18b 排水路
18c 光触媒
18d ガラスビーズ
18e 光源
19 光分解洗浄液廃棄タンク
20 給水路
21 開閉手段
22 送液吸入口
23 油検知手段
24 酸化防止手段
25 振動発生手段
26 制御手段
27 シロッコファン
28 モーター
29a 酵素保持手段
29b 第一の分解成分
29c 第二の分解成分
30 酸化防止剤
31 イオン供給部
32 還元イオン供給手段
33 乳化手段
34 界面活性剤供給手段
35 界面活性剤供給口
36 供給弁
37 pH調節手段
38 加熱手段
39 断熱手段
40 振動発生手段
41 軟水化手段
42 交換穴
101 レンジフード
102 フードケース
103 ファン
104 金属フィルター
105 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内に開口した屋内の空気を吸入する吸入口と屋外に開口した屋外に空気を排出する排出口の間に吸入口から排出口に空気を送風する送風手段を備え、前記送風手段と前記吸入口の間に空気中の油を捕集する油捕集手段を備え、前記油捕集手段によって捕集された油を分解する第一の油分解手段と第一の油分解手段によって分解された分解成分物を分解する第二の油分解手段を備え、前記油捕集手段に捕集された油の量に応じて第一の油分解手段と第二の油分解手段を作動させる制御手段を備え、前記油捕集手段に捕集された油の酸化を防止する酸化防止手段を備えたことを特徴とする強制排気装置。
【請求項2】
酸化防止手段が前記油捕集手段上に塗布された酸化防止剤であることを特徴とする請求項1に記載の強制排気装置。
【請求項3】
前記酸化防止手段が還元イオンを供給する還元イオン供給手段であることを特徴とする請求項1に記載の強制排気装置。
【請求項4】
第一の油分解手段が酵素を保持する酵素保持手段と給水路と導出路を備え、前記給水路から水を導入し、その導入した水と前記酵素保持手段で前記捕集手段に捕集された油を分解し第一の分解成分を生成させ、前記第一の分解成分を導出路から第二の油分解手段へ水と共に導出する構成とし、第二の油分解手段が酸化分解手段と排水路を備え、前記第一の分解成分を第二の油分解手段が分解し第二の分解成分を生成させ、前記第二の分解成分を前記排水路から水と共に排出する構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の強制排気装置。
【請求項5】
第一の油分解手段が油と水を混合し乳化させる乳化手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の強制排気装置。
【請求項6】
酵素保持手段がイオン交換樹脂、光硬化性樹脂、活性炭、ゼオライト、珪藻土、あるいはシリカゲルから選択される一種類の担体、あるいは二つ以上の組合せの担体を有していることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の強制排気装置。
【請求項7】
酵素保持手段が疎水性を有していることを特徴とする請求項6に記載の強制排気装置。
【請求項8】
酵素がカンジダ・ルゴーサ(Candida rugosa)あるいはシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)のいずれかに属する菌株の生産する油分解酵素を利用したものであることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の強制排気装置。
【請求項9】
酵素保持手段が水に浮くことを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の強制排気装置。
【請求項10】
第一の油分解手段が前記酵素保持手段を前記油捕集手段に接触させる接触手段を備えたことを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載の強制排気装置。
【請求項11】
第一の油分解手段が界面活性剤を保持していることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の強制排気装置。
【請求項12】
第一の油分解手段が第一の油分解手段が分解する油と水の混合物のpHを調節するpH調節手段を備えていることを特徴とする請求項4〜11のいずれかに記載の強制排気装置。
【請求項13】
第一の油分解手段が第一の油分解手段が分解する油と水の混合物を加熱する加熱手段を備えていることを特徴とする請求項4〜12のいずれかに記載の強制排気装置。
【請求項14】
第一の油分解手段が第一の油分解手段が分解する油と水の混合物の放熱を防止する断熱手段を備えていることを特徴とする請求項4〜13のいずれかに記載の強制排気装置。
【請求項15】
第一の油分解手段が振動を発生させる振動発生手段を備えていることを特徴とする請求項4〜14のいずれかに記載の強制排気装置。
【請求項16】
前記酸化分解手段が光を利用して酸化分解する光触媒を備えていることを特徴とする請求項4〜15のいずれかに記載の強制排気装置。
【請求項17】
前記光触媒は、活性炭、ゼオライト、珪藻土、ガラス、あるいはシリカゲルから選択される一種類の担体、あるいは二つ以上の組合せの担体に固定化されたものを特徴とする請求項4〜16のいずれかに記載の強制排気装置。
【請求項18】
給水路に水を軟水にする軟水化手段を備えたことを特徴とする請求項4〜17のいずれかに記載の強制排気装置。
【請求項19】
油分解手段に前記酵素保持手段を交換するための交換穴を設けたことを特徴とする請求項4〜18のいずれかに記載の強制排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−209046(P2008−209046A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45074(P2007−45074)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】