説明

強化フッ素ポリマープレート、同プレートの製造方法、同プレートを備える耐蝕性反応炉、同反応炉の製造方法、および同反応炉内におけるフッ素化法

本発明は強化フッ素ポリマー板に関する。強化フッ素ポリマープレートは一方の面上のフッ素ポリマー層と、他方の面上の炭素繊維シートとを備え、これにより炭素繊維シートの少なくとも一部にフッ素ポリマーを含浸させる。本発明はまたプレートを備える酸耐蝕性の化学反応炉、同反応炉の製法、および超強酸媒体中に反応工程における同反応炉の使用法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一方の面を炭素繊維により強化したフッ素ポリマープレート、同プレートを備えた酸腐食に対する耐性を有する化学反応炉、同反応炉の製造方法、および超強酸媒体中で実施される諸方法における同反応炉の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
超強酸媒体中における反応、特に液相中におけるフッ素化反応を効率よく行わせるためには、HFおよびSbCl(またはSbCl)を高濃度に含む反応混合物と高温(80〜120℃)とを用いることが必要である。液相における無水HFはSbClとともに極めて腐蝕性の超強酸媒体を形成する。ステンレススチール、インコネル(商標)、ニッケル、ハステロイ(商標)などの通常の耐蝕金属および合金は、産業用反応炉の製造にとって充分な耐性を備えてはいない。
【0003】
特許文献1における一つの解決策はステンレススチール製反応炉の内面にフッ素ポリマーライニングを布設することからなる。特許文献2,3における別の解決策は、シリカ、グラファイト、またはカーボンなどの無機物質粒子を含有するフッ素ポリマーを用いることからなる。
【0004】
しかし、反応炉の内面にこの種のライニングを布設すると、特許文献4において強調されているような多くの技術的な問題を生じる。すなわち、
・ポリマー粉を噴霧および溶融することにより得られたポリマー沈降物は多孔質であるため、金属はHFに侵され、ライニングが剥落する。
・溶融および回転成型により得られる沈降物は厚くかつ不透過性であるが、この技術は小型反応炉(3785リットル未満)に限定される。さらにこれらのライニングはたとえ厚くても僅かながら透過性であるため、酸が最終的には反応炉の金属壁とポリマー層との間に浸透し、過大な圧力が生成され、フッ素ポリマーライニングの多大な膨潤および変形を生じさせる。
【0005】
特許文献4は、反応炉の壁に小さな孔(直径0.31cm〜1.27cm)を穿設することにより、これらの過大な圧力を除去することを提案している。
フッ素ポリマーの膨張係数は鋼鉄の同係数よりはるかに大きいので、産業用反応炉におけるフッ素ポリマーライニングは、現時点では低温(20〜40℃)においてのみ使用可能である。液相クロロアルカン中におけるフッ素化に要する温度(80〜120℃)において、ライナーの膨張は極めて大きく、ライナーが加熱時には、ポリマーの機械強度が低下することにより構造上の崩壊(折れ、伸長、変形、裂け、剥離)を生じる。
【0006】
さらに、反応炉におけるポリマーと金属との膨張が異なり、これによりライニングの脱落および剥離が生じることは公知の問題である。フッ素ポリマー、樹脂(特許文献5)、およびガラス繊維の複数層を用いた解決策があるが、HFのような超強酸媒体中における反応に用いるには全く不適切である。
【0007】
従って現在に至るまで、超強酸腐蝕性媒体に対して化学的耐性と機械的耐性とを有する反応炉を構築するための満足できる解決策は見出されていなかった。
【特許文献1】特開平07−233102号公報
【特許文献2】米国特許第4,166,536号明細書
【特許文献3】米国特許第3,824,115号明細書
【特許文献4】国際公開第99/00,344号パンフレット
【特許文献5】米国特許第3,779,854号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、一方の面を炭素繊維により強化したフッ素ポリマープレートを提供することにある。また本発明の目的は、酸腐食性媒体に対して機械的および化学的な耐性を有するプレートを備える新規な種類の反応炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらのプレートは反応炉中のフローティング内側ライニングを構成したり、反応炉壁と一体化した部分を形成したりすることができる。
従って、本発明は以下の項目に関する。
【0010】
項目1 強化フッ素ポリマープレートであって、プレートの一方の面上のフッ素ポリマーと他方の面上の炭素繊維シートとを備え、炭素繊維シートの少なくとも一部分にはフッ素ポリマーが含浸されているプレート。
【0011】
項目2 ポリマー含浸の厚さは、炭素繊維シートの厚さの少なくとも10%、好ましくは10〜90%、有利には30〜90%である項目1に記載のプレート。
項目3 フッ素ポリマーは、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロペンとのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテルとのコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー(ETFE)、トリフルオロクロロエチレンとエチレンとのポリマー(E−CTFE)、およびこれらの混合物から選択される項目1または2に記載のプレート。
【0012】
項目4 フッ素ポリマーは、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(FEP)である項目1乃至3の1つに記載のプレート。
項目5 全厚は1〜20mm、好ましくは2〜5mmである項目1乃至4の1つに記載のプレート。
【0013】
項目6 炭素繊維シートは織成シートまたは不織シートであり、好ましくは交差させた炭素繊維のシートである項目1乃至5の1つに記載のプレート。
項目7 炭素繊維シートは0.1〜10mm、好ましくは0.5〜3mmの厚さを有する項目1乃至6に記載のプレート。
【0014】
項目8 プレートの一方の面上のフッ素ポリマー層と、
プレートの他方の面上にあり、かつフッ素ポリマーを含まない炭素繊維の層と、
フッ素ポリマーを含浸させた炭素繊維を有する中央層とを備える項目1乃至7の1つに記載のプレート。
【0015】
項目9 酸および/または超強酸腐蝕性媒体と接触するように意図された反応炉、タンク、および配管のためのフローティングライニングを製造するための、項目1乃至8の1つに記載のプレートの使用法。
【0016】
項目10 プレートは互いに突合せ溶接されている、項目1乃至8の1つに記載の複数プレートを備えるフローティングライニング。
項目11 内側の金属壁と、
項目10に記載のフローティングライニングと、同ライニングは反応炉の内壁の全面ま
たは一部に配置されていることと、ライニング面は、フッ素ポリマーを含まない炭素繊維を備え、かつ反応炉の内側の金属壁と対向して配置されることとを備える反応炉。
【0017】
項目12 内壁に設けられた複数のオリフィスと、同オリフィスは配管網と連結されていることと、
フッ素ポリマー層と下部内壁との間の空間内の圧力を、反応炉内部の圧力に維持する配管網に連結された圧力調整装置とをさらに備える項目11に記載の反応炉。
【0018】
項目13 項目1乃至8の1つに記載された1つ以上のプレートを備え、かつ複合材料および炭素繊維からなる層により強化された内壁を備える反応炉。
項目14 内壁の周囲に付加的な非接触型の外部金属ジャケットを備える項目13に記載の反応炉。
【0019】
項目15 炭素繊維シートをフッ素ポリマーと接触させる接触工程と、
フッ素ポリマープレートの一方の面を溶融させる溶融工程と、
ポリマーを冷えるまで押圧する押圧工程とを備える項目1乃至8の1つに記載のプレートを製造する方法。
【0020】
項目16 フッ素ポリマープレートの一方の面を繊維シートに対して接触させ、その後同フッ素ポリマーを繊維シート上に押し出す工程により溶融させる項目15に記載の製造方法。
【0021】
項目17 項目1乃至8の1つに記載の少なくとも1つのプレートを準備する準備工程と、
プレートを裁断し、さらに金属反応炉の内部においてプレートを賦形する裁断賦形工程と、炭素繊維織物により被覆されたプレート面が反応炉の金属壁と接触することと、適切な場合には、少なくとも1つのプレートの裁断片を突合せ溶接することとを備える項目10に記載のフローティングライニングの製造方法。
【0022】
項目18 項目1乃至8の1つに記載の少なくとも1つのプレートを準備する準備工程と、
プレートを裁断し、さらに賦形部材上において賦形する裁断賦形工程と、フッ素ポリマーからなる面は賦形部材と接触することと、
適切な場合には、少なくとも1つのプレートの裁断片を突合せ溶接する溶接工程と、
少なくとも1層の複合材料および炭素繊維シートを自由面に布設し、その後、複合材料を重合させる布設重合工程とを備える項目13に記載の反応炉を製造する方法。
【0023】
項目19 反応が項目11乃至14の1つに記載の反応炉内において実施される液相中におけるフッ素化法。
項目20 反応温度が60〜150℃の範囲である項目20に記載のフッ素化法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
最終的に得られる強化フッ素ポリマープレートの厚さは、1〜20mm、好ましくは2〜5mmである。
本発明に用いるフッ素ポリマー(FP)は熱可塑性ポリマーであり、酸性媒体に対して耐性を有する。それらは、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロペンとのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテルとのコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー(ETFE)、トリフルオロクロロエチレンとエチレンとのポリマー(E−CTFE)、およびこれらの混
合物から選択される。
【0025】
使用されるフッ素ポリマーはテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマーが好ましく、アンチモン(Sb)をポリマー中に拡散させない性質を備える。使用されるFEPは、10〜15重量%、好ましくは12重量%のヘキサフルオロプロピレンを含む。
【0026】
FP層は形成されるプレートの化学的耐性を確実なものとし、従ってFP層の遮蔽作用に由来する不透過性により、反応炉の金属を腐蝕から保護することができる。
炭素繊維は織成または不織の繊維シート(すなわち織物)の形状にて使用されるが、炭素繊維複合材料産業(自動車、スキー、ボート)において通常用いられるものと同等である。
【0027】
使用される炭素繊維は、炭素繊維複合材料を製造するための従来技術により、織成形状であったり、巻回された形状であったりする。
交差させた炭素繊維のシートを使用することが好ましい。
【0028】
炭素繊維シートの厚さは0.1〜10mm、好ましくは0.5〜3mmである。選択する厚さは最終的には強化プレートの使用方法による。
炭素繊維シートはFP層の機械的強度、特に熱クリープ耐性を向上させる。
【0029】
それにより、その後、複合材料をFPを含まない炭素繊維層に装着できるが、これは特に後述する複合材料を用いて構築する反応炉の場合には顕著である。
強化プレートを製造する方法は、炭素繊維をフッ素ポリマーと接触させる工程と、フッ素ポリマープレートの一方の面を溶融させる工程と、炭素繊維を溶融させたポリマー面に布設する工程と、ポリマーが冷却されるまで押圧する工程とを備える。
【0030】
炭素繊維シートは、同シートと接触しているFPを溶融し、さらに同シートの厚さの少なくとも一部に溶融FPを浸透させることにより、FPの一方の面と接着される。
好ましい実施態様において、強化フッ素ポリマーは、
プレートの一方の面上のフッ素ポリマー層と、
プレートの他方の面上のフッ素ポリマーを含まない炭素繊維層と、
フッ素ポリマーを含浸された炭素繊維を有する中央層とを備える。
【0031】
工程は、表面のFP層が溶融するまでFPプレートの一方の面を加熱し、その後、シートを布設し、さらにFPが冷却するまで高圧下において押圧することによって実施される。
【0032】
FPプレートの製造の際に、FPとシートとを共押し出しする技術を採用することは有利である。
溶融FPを炭素繊維シートに含浸することは、少なくとも部分的に実施できる。
【0033】
含浸厚さ(含浸度)は、炭素繊維シートまたは炭素繊維織物の厚さの少なくとも10%、好ましくは10〜90%、さらに有利には30〜70%である。
部分的な含浸であるため、炭素繊維シートの非含浸部分は、多孔質であるので反応炉の内側金属壁と不透過性のFP層との間の(ガスにとっての)自由間隙として作用する。特にこれは後述のライナーにより被覆された反応炉において顕著である。
【0034】
従って、先に定義した含浸度は、シートがFPに確実に固着していることを表わし、従って、熱時の機械特性が極めて低いFPプレートを機械的に強化し、ひいてはポリマーが
温度の作用により伸長するというFPプレートの寸法を安定させる。
【0035】
強化プレートは、形成されると、反応炉のフローティングライニング(ライナーと称する)の製造に供される。
ライナーは、一方の面上の炭素繊維により強化された1つ以上のFPプレートにより作成される。ライナーが複数のプレートから作成される場合には、それらを突合せ溶接する。
【0036】
FEPを用いることにより特に不透過性のライニングが得られ、特にアンチモンの拡散に対する障壁として作用する。FEPはまた低温において容易に溶接できるという利点を有する。
【0037】
本発明によるライナーに関しては、炭素繊維シートはFPプレートに対して極めて強固に接着されている(炭素繊維シートの一方の面を介してFPを押し出す)。炭素繊維によるこのような強化により、ライナーを形成するFPプレートの寸法を確実に安定させるので、FPの伸長はプレートの厚さ方向にのみ生起する。反応炉内において反応混合物が加熱されるとき、折れの発生と同様に、クリープはこのようにして回避される。
【0038】
ライナー(すなわちフローティングライニング)は反応炉の内部、または反応炉の腐蝕性媒体(液相)と接触する部分に装着される。ライナーは反応炉の反応容器にのみ布設することが有利である。
【0039】
FPプレートの外面上にある炭素繊維を含む多孔質層は、ガスが浸透する場所である。この多孔質層は反応炉の金属壁とライナーとの間の圧力分布を向上させ、このようにすることにより、フッ素ポリマー障壁層を介した反応物質の拡散に由来するガスポケットの形成を防止する。
【0040】
この空間は、フッ素化反応に伴う高圧1000〜1500kPa(10〜15バール)の作用に起因するFPを介して微量に拡散するガス状HFを収集することを可能とする。
多孔質層により形成されたこの空間はまた、反応炉の金属壁に穿設されたオリフィスが存在すれば、ガスがオリフィスに向けて循環することを可能にする。
【0041】
これらのオリフィスは、必要に応じて、この空間内に存在する圧力を制御し、それによりこの圧力を反応炉内に存在する圧力未満に常時維持するように、配管網に連結されている。従ってライナーは、HFの拡散に耐えない接着剤を使用することなく、圧力効果により反応炉壁に対して常時強く押圧されるように保持されている。さらに、ライナーを取り外すことはさらに容易である。
【0042】
このため、反応炉は、反応炉の内部金属壁と炭素繊維により強化されたライナーのFPの外壁との間に存在する空間の圧力を、反応炉の圧力より低い圧力に維持するための装置を備える。
【0043】
配管は、真空ポンプ(大気圧反応炉)、または不活性ガスを注入することなどにより、反応炉の圧力よりも常時低い圧力に維持されているタンク内において終結している。この圧力差は10〜1500kPa(0.1〜15バール)、好ましくは50〜200kPa(0.5〜2バール)である。
【0044】
オリフィスの直径は1〜20mmであり、ライナーと接するオリフィスの側面上には網を配置する。この網の直径はオリフィスの直径よりも大きいことが有利である。
反応炉壁に穿設されたオリフィス数は、オリフィスの直径およびFPが含浸されていな
い炭素繊維シートの厚さに依存する。オリフィス数は壁面1mあたり1〜20本、好ましくは1mあたり2〜5本である。
【0045】
この多孔質層が存在することは、反応炉の内圧の作用によりライナーが反応炉の金属壁に着設されるという効果を減少させることなく、ガスを排気するために要する孔の数を低減することを可能とする。
【0046】
前記のライナーにより被覆された反応炉は、超強酸媒体中の反応条件、特に温度が0から150℃、好ましくは60〜120℃、圧力が絶対圧100〜1500kPa(1〜15バール)のような液相におけるフッ素化反応に耐えることができる。
【0047】
別の特徴として、本発明は、壁面がフッ素ポリマーの内層と、フッ素ポリマーを含浸した炭素繊維を有する中央層と、フッ素ポリマーを有しておらず、複合材料を含浸した炭素繊維の層(炭素繊維からなる複合層と称する)とを備える反応炉(複合反応炉と称する)に関する。
【0048】
使用される複合材料は、(超)酸性媒体、特にHFに適合可能な樹脂のうちから選択された樹脂であることが好ましい。特にポリフェニレンスルフィド(PPS)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が使用される。
【0049】
炭素繊維はシートまたは織物または糸の形状をなす。
炭素繊維からなる複合層は、反応炉、タンク、または配管要素の特に機械強度を向上させる。
【0050】
炭素繊維からなる複合層の厚さは、応力、特に反応炉が使用されている圧力に基づき算出される。その厚さは数mmから数cmの範囲である。
本実施態様における実際の層間の接着を、以下に記す。
【0051】
FPを有していないシート面の領域にある樹脂により、複合層を炭素繊維(中央層)シートに対して接着し、同シートと接するFPを溶融させ、さらに溶融FPを炭素繊維シートの一部を介して浸透させることにより、炭素繊維シートの中央層をFP層に対して接着する。
【0052】
FPによる炭素繊維シートの被覆は一部分のみであり、そのため、複合層と接する炭素繊維シートの表面はFPにより被覆されず、且つ複合層は樹脂により同シートに接着される。
【0053】
複合反応炉の製造方法を以下に記す。
第1の工程において、FPのない一方の面を有する炭素繊維シートにより強化することにより、FPプレートを製造し、炭素繊維シートの中央層を、同シートと接するFPを溶融させ、さらに溶融したFPを炭素繊維シートの一部を介して浸透させることによりFP層に対して接着する。このFPプレートの厚さは好ましくは2〜5mmであり、炭素繊維シートの厚さは0.5〜3mmである。
上記と同様にプレートが押し出され、さらにシートが溶融FPにより同シートの厚さの一部を被覆したときに、炭素繊維シートをFPに接着する。
【0054】
その後の第2の工程において、1つ以上のこれらのプレートを裁断し、FP面を、反応炉の内部寸法を備えた賦形部材に装着し、その賦形部材と対向させた状態で、その後、場合によっては熱ガスジェットにより相互に突合せ溶接する。
【0055】
その後の第3の工程において、引き続き複合材料および炭素繊維を、強化FPプレートにより被覆された賦形部材の周囲に装着することにより、複合材料層を調製する。
その後、乾燥および硬化をさせた後、内側賦形部材を除去し、複合反応炉の内壁を離脱させる。
【0056】
本発明における複合反応炉は、ポリマーと金属との間に存在する膨張の差異に関する問題を制限又は除去することが可能であり、これによりライニングが脱離および剥離することを防止する。
【0057】
詳細な実施態様において、反応炉、タンク、または配管が高圧下にて使用されるときには、スチール製などの別の金属ジャケットを複合反応炉の周囲に追加することができる。
このジャケットは接触してはおらず、複合反応炉が膨張できるように数cmの間隙を有する。スチール製ジャケットは、複合反応炉の漏れや破損が生じた場合、反応炉の圧力に耐えるような寸法である。
【0058】
漏れを検知するための装置を付加し、複合反応炉と金属槽との間の自由空間における化学物質の存在を検知することができる。
FEPが強化プレートの製造におけるフッ素ポリマーとして用いられる場合、加熱時には軟化して過剰な伸長をするという著しい不具合は克服される。
【0059】
従って、FEPを用いることにより反応炉(ならびにタンクまたは配管)用ライニングを製造することが可能となり、この反応炉などは特に高圧高温下における液相でのクロロアルカン類をフッ素化することに有用である。
【0060】
このようにして製造された本発明における強化プレートを備えた反応炉は、超強酸媒体における反応条件、特に温度0〜150℃、好ましくは60〜120℃、かつ絶対圧100〜1500kPa(1〜15バール)などの液相におけるフッ素化反応に耐えることができる。
【0061】
本発明におけるプレートに関しては、金属反応炉のフローティングライニング(ライナー)の製造に用いたり、腐蝕性を有する酸性製品、特にフッ酸とハロゲン化アンチモンとの混合物を反応、貯蔵、または輸送するために使用する、複合材料からなる反応炉、タンク、または配管の製造に用いたりすることができる。
【0062】
反応炉、タンク、または配管が使用される条件は、温度0〜150℃、圧力0〜1500kPa(0〜15バール)である。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、本発明を限定するものではない。
実施例1
強化フッ素ポリマープレートの調製
一方の面を炭素繊維織物(織成炭素繊維シート)により被覆し、FEPプレートを製造した。FEPプレートの厚さは3mm、炭素織物の厚さは1mmであった。FEPを押し出し、溶融FEPにより織物の厚さの約半分を超えるまで織物が被覆されたときに、炭素織物をFEPプレートに着接した。プレートの全厚は3.3mmであった。
【0064】
実施例2
フローティングライニング(ライナー)の調製
サイズが約3mの実施例1において調製したプレートを裁断し、反応炉の反応室の内面に布設した。その際、炭素繊維織物を有する面が金属壁と対向するようにした。裁断し
たプレートを熱ガスジェットにより相互に突合せ溶接し、反応炉の蓋の封止材と接触する反応室部分を含め、反応炉の反応室の内面全体を被覆する連続的かつ不透過性のライニングを形成した。プレートの溶接部が好ましくは大きな曲率半径を有する面上に位置するように、プレートを裁断した。
【0065】
実施例3
複合反応炉の調製
サイズが約3mの実施例1において調製したプレートを裁断し、反応炉の内部寸法を備える賦形部材に装着した。その際、FEPを賦形部材に対向させた状態とした。その後、熱ガスジェットによりプレートを互いに突合せ溶接した。その後、賦形部材のまわりに樹脂および炭素繊維織物を連続的に装着することにより、複合層を調製した。乾燥および重合した後、内側の賦形部材を除去した。
【0066】
実施例4
実施例1において調製したプレートの超強酸媒体耐性試験
炭素繊維織物により被覆され、かつサイズが2cmx2cmx3.3cmであるFEPサンプルプレートを、以下の条件下での液相におけるフッ素化反応に用いる反応炉内に400時間配置した。
温度 80〜110℃
圧力 1000〜1300kPa(10〜13バール)
フッ素化媒体 無水フッ酸とSbClとの混合物
フッ素化に供した反応物 トリクロロエチレン、ジクロロメタン、およびトリクロロエタン
これらの試験後、いずれのサンプルにおいても劣化、炭素繊維層の剥離、および重量減少は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化フッ素ポリマープレートであって、プレートの一方の面上のフッ素ポリマー層と他方の面上の炭素繊維シートとを備え、炭素繊維シートの少なくとも一部分にはフッ素ポリマーが含浸されているプレート。
【請求項2】
ポリマー含浸の厚さは、炭素繊維シートの厚さの少なくとも10%、好ましくは10〜90%、有利には30〜70%である請求項1に記載のプレート。
【請求項3】
フッ素ポリマーは、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロペンとのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテルとのコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー(ETFE)、トリフルオロクロロエチレンとエチレンとのポリマー(E−CTFE)、およびこれらの混合物から選択される請求項1または2に記載のプレート。
【請求項4】
フッ素ポリマーはテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(FEP)である請求項1乃至3の内の何れか一項に記載のプレート。
【請求項5】
全厚は1〜20mm、好ましくは2〜5mmである請求項1乃至4の内の何れか一項に記載のプレート。
【請求項6】
炭素繊維シートは織成シートまたは不織シートであり、好ましくは交差させた炭素繊維のシートである請求項1乃至5の内の何れか一項に記載のプレート。
【請求項7】
炭素繊維シートは0.1〜10mm、好ましくは0.5〜3mmの厚さを有する請求項1乃至6の内の何れか一項に記載のプレート。
【請求項8】
プレートの一方の面上のフッ素ポリマー層と、
プレートの他方の面上にあり、かつフッ素ポリマーを含まない炭素繊維の層と、
フッ素ポリマーを含浸させた炭素繊維を有する中央層とを備える請求項1乃至7の内の何れか一項に記載のプレート。
【請求項9】
酸および/または超強酸腐蝕性媒体と接触するように意図された反応炉、タンク、および配管のためのフローティングライニングを製造するための、請求項1乃至8の内の何れか一項に記載のプレートの使用法。
【請求項10】
プレートは互いに突合せ溶接されている請求項1乃至8の内の何れか一項に記載の複数プレートを備えたフローティングライニング。
【請求項11】
内側金属壁と、
請求項10に記載のフローティングライニングと、同ライニングは反応炉の内壁の全面または一部に配置されていることと、同ライニングの面は、フッ素ポリマー含まない炭素繊維を備え、かつ反応炉の内側金属壁と対向して配置されることとを備える反応炉。
【請求項12】
内壁に設けられた複数のオリフィスと、同オリフィスは配管網と連結されていることと、
フッ素ポリマー層と下部内壁との間の空間内の圧力を、反応炉内部の圧力に維持する配管網に連結された圧力調整装置とをさらに備える請求項11に記載の反応炉。
【請求項13】
請求項1乃至8の内の何れか一項に記載された1つ以上のプレートを備え、かつ複合樹脂材料および炭素繊維からなる層により強化された内壁を備える反応炉。
【請求項14】
内壁の周囲に付加的な非接触型の外部金属ジャケットを備える請求項13に記載の反応炉。
【請求項15】
炭素繊維シートをフッ素ポリマーと接触させる接触工程と、
フッ素ポリマープレートの一方の面を溶融させる溶融工程と、
ポリマーを冷えるまで押圧する押圧工程とを備える請求項1乃至8の内の何れか一項に記載のプレートを製造する方法。
【請求項16】
フッ素ポリマープレートの一方の面を繊維シートに対して接触させ、その後同フッ素ポリマーを繊維シート上に押し出す工程により溶融させる請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1乃至8の内の何れか一項に記載の少なくとも1つのプレートを準備する準備工程と、
プレートを裁断し、さらに金属反応炉の内部においてプレートを賦形する裁断賦形工程と、炭素繊維織物により被覆されたプレート面が反応炉の金属壁と接触することと、
適切な場合には、少なくとも1つのプレートの裁断片を突合せ溶接することとを備える請求項10に記載のフローティングライニングを有する請求項1乃至12の内の何れか一項に記載の反応炉の製造方法。
【請求項18】
請求項1乃至8の内の何れか一項に記載の少なくとも1つのプレートを準備する準備工程と、
プレートを裁断し、さらに賦形部材上においてプレートを賦形する裁断賦形工程と、フッ素ポリマーからなる面は賦形部材と接触することと、
適切な場合には、少なくとも1つのプレートの裁断片を突合せ溶接する溶接工程と、
少なくとも1層の複合材料層および炭素繊維を自由面に布設し、その後、複合材料を重合させる布設重合工程とを備える請求項13に記載の反応炉を製造する方法。
【請求項19】
請求項11乃至14の内の何れか一項に記載の反応炉内において反応が実施される、液相中におけるフッ素化法。
【請求項20】
反応温度が60〜150℃の範囲である請求項20に記載のフッ素化法。

【公表番号】特表2007−517100(P2007−517100A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546225(P2006−546225)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/FR2004/003169
【国際公開番号】WO2005/073292
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】