説明

強化組成物

【課題】強化組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、エポキシ樹脂、主にメチルメタクリレート単位から成る少なくとも1種のブロックを有するブロックコポリマー又はコアシェル成分及びポリオキシアルキレンアミン型硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物に関する。該組成物から硬化されたエポキシ材料は、高い耐衝撃性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善した耐靭性を有するエポキシ樹脂組成物に関する。エポキシ樹脂組成物は、それらを構造用接着剤として又は複合材料のための基材として又は電子部品を保護するための用途において使用することが許される多数の有利な特性を示す。本発明の組成物は、エポキシ樹脂、衝撃改質剤成分、特にコポリマー、及び硬化剤を含む。それらの組成物は、エポキシ樹脂におけるコポリマーの溶解によって、続いて硬化剤の添加及び高温条件下での架橋によって製造される。
【背景技術】
【0002】
エポキシ材料は、該材料に優れた熱機械特性を与える、高いガラス転移温度Tgを該材料にもたらすところの高い架橋密度を有する。架橋密度が高い程、該材料のTgは高く、ひいては熱機械特性がより良く:該材料の使用温度限界がより高い。それにもかかわらず、エポキシ材料の衝撃強度特性は、多数の用途に対して不十分である。多数の解決策がこの問題に答えるために開発されてきた。同時に、全てのエポキシ材料は衝撃に関して強化することが難しい上に、高いTg値を有するエポキシ材料は最も難しい。
【0003】
特許文献1は、トリチオカーボネートポリマーを含む熱硬化樹脂のための強化剤を記載する。
特許文献2は、エポキシ樹脂、衝撃改質剤並びにジシアンジアミド、脂環式アミン及びポリオキシアルキレンアミンで形成されるアミン硬化剤の混合物をベースとする組成物を記載する。
特許文献3は、エポキシ樹脂、鎖延長剤、塩基性触媒及びポリマー強化剤、特にコア−シェルグラフトコポリマーを含む2部組成物を記載する。
特許文献4は、エポキシ樹脂(A)、コポリマー(B)、例えばCTBNゴム、潜在性硬化剤(C)及び1分子当り1つより多くのカルボキシル基を含有する反応生成物を含有する耐衝撃性エポキシ樹脂を記載する。
近年、エポキシ組成物への主にメチルメタクリレート単位から成る少なくとも1つのブッロクを有するトリブロックコポリマーの添加が、改善された耐衝撃性を有するエポキシ材料をもたらすことが見出されている;特許文献5。
特許文献6は、硬化可能な樹脂、典型的にはエポキシ樹脂、少なくとも1種の二酸及び少なくとも1種のジアミンの縮合の結果もたらされるポリアミド、及び場合によりSBM、BM及びMBMコポリマーから選択される衝撃改質剤を含む組成物から得られる、改善された衝撃強度を有する熱硬化材料を記載する。
【特許文献1】米国特許出願第2003/0187138号明細書
【特許文献2】欧州特許第0659833号明細書
【特許文献3】米国特許第486256号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0187154号明細書
【特許文献5】欧州特許第1290088号明細書
【特許文献6】国際公開第03/063572号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
今や驚くべきことに、ポリオキシアルキレンアミン硬化剤とともに、エポキシ樹脂、衝撃改質剤成分特にコア−シェルコポリマー又は主にメチルメタクリレートから成る少なくとも1つのブロックを有するブロックコポリマーを含有する組成物が、エポキシ材料を形成するために硬化されるとき、エポキシ材料の耐衝撃性が著しく改善されることが見出された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
従って、本発明は、
(a)分子中に平均1つより多くの1,2−エポキシド基を有する室温で液体のエポキシ樹脂、
(b)本質的にポリオキシアルキレンアミン硬化剤から成る硬化剤−促進剤系
(ジェファミン(登録商標:Jeffamine)硬化剤としてハンツマン社から商品化されている)、
(c)(C1)主にメチルメタクリレートから成る少なくとも1つのブロックを有するブロックコポリマー又は(C2)コア−シェルコポリマーの少なくとも一方を含有する衝撃改質剤
を含むエポキシ樹脂組成物に関する。
【0006】
エポキシ樹脂
用語“エポキシ樹脂”は、開環によって重合し得る、少なくとも2つのオキシラン型の官能基を有するあらゆる有機化合物を意味すると理解される。用語“エポキシ樹脂”は、室温(23℃)又はより高温で液体であるあらゆる従来のエポキシ樹脂を意味する。それらのエポキシ樹脂は、一方ではモノマー又はポリマーであり得、他方では脂肪族、脂環式、複素環式又は芳香族であり得る。そのようなエポキシ樹脂の例として、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリグリシジル−p−アミノ−フェノール、ブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、m−アミノ−フェノールのトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、(トリヒドロキシ−フェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、フェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル、オルト−クレゾールノボラックのポリグリシジルエーテル及びテトラフェニル−エタンのテトラグリシジルエーテルが言及され得る。それらの樹脂の少なくとも2種の混合物がまた使用し得る。
【0007】
エポキシ樹脂は、例えば、式A
【化1】

(式中、R6及びR8がそれぞれ水素原子を表す場合には、R7が水素原子又はメチル基を
表すか、又はR6及びR8は一緒になって−CH2−CH2又は−CH2−CH2−CH2−を
表す場合には、R7が酸素原子、窒素原子又は硫黄原子に直接結合する水素原子を表す。
)で表される基を含有するものである。
【0008】
言及し得るそのような樹脂の例は、アルカリの存在下、1分子当り2つ以上のカルボン酸基を含有する化合物とエピクロロヒドリン、グリセロールジクロロヒドリン又はベータ−メチルエピクロロヒドリンとの反応によって得られ得るポリグリシジルエステル及びポリ−(ベータ−メチルグリシジル)エステルである。そのようなポリグリシジルエステルは、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸又は二量体化もしくは三量体化リノール酸のような脂肪族ポリカルボン酸から、テトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及び4−メチルヘキサヒドロフタル酸のような脂環式ポリカルボン酸から、並びにフタ
ル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸のような芳香族ポリカルボン酸から誘導し得る。
他の例は、アルカリ条件下で、又はその後のアルカリとの処理を伴う酸触媒の存在下、1分子当り少なくとも2つの遊離アルコール系及び/又はフェノール系ヒドロキシ基を含有する化合物と対応するエピクロロヒドリンとの反応によって得られ得るポリグリシジルエーテル及びポリ−(ベータ−メチルグリシジル)である。
【0009】
それらのエーテルは、エチレングリコール、ジエチレングリコール及び高級ポリ−(オキシエチレン)グリコール、プロパン−1,2−ジオール及びポリ−(オキシプロピレン)グリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ポリ−(オキシテトラメチレン)グリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘキサン−2,4,6−トリオール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール及びソルビトールのような非環式アルコールからの、レゾルシトール、キニトール、ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−メタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン及び1,1−ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキセ−3−エンのような脂環式アルコールからの、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−アニリン及びp,p’−ビス−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−ジフェニルメタンのような芳香核を有するアルコールからのポリ−(エピクロロヒドリン)を用いて製造し得る。それらは、さらに、レゾルシノール及びヒドロキノンのような単核フェノール、並びにビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1,2,2−テトラキス−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(別名ビスフェノールAとして知られている)及び2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンのような多核フェノール、並びにホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロラール及びフルフロールのようなアルデヒドとフェノール自身及び塩素原子又は各々の場合において9個までの炭素原子を有するアルキル基によって環上で置換されるフェノール、例えば4−クロロフェノール、2−メチルフェノール及び4−第三ブチルフェノールとから製造される。
【0010】
ポリ−(N−グリシジル)化合物は、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、並びにエチレンウレア及び1,3−プロピレンウレアのような環状アルキレンウレアのN,N’−ジグリシジル誘導体、並びに5,5−ジメチルヒンダントインのようなヒンダントインを含む。
ポリ−(S−グリシジル)化合物は、例えば、エタン−1,2−ジチオール及びビス−(4−メルカプトメチルフェニル)エーテルのようなジチオールのジ−S−グリシジル誘導体である。
【0011】
式A(式中、R6及びR8は一緒になって−CH2−CH2−基を表す。)で表される基を含有するエポキシ樹脂の例は、より好ましくない、ビス−(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2,3−エポキシシクロペンチルグリシジルエーテル、1,2−ビス−(2,3−エポキシシクロペンチルオキシ)−エタン及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル2’,4’−エポキシシクロへキサンカルボキシレートである。
1,2−エポキシド基がヘテロ原子の異なる型に結合するところのエポキシ樹脂、例えば4−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、サリチル酸又はp−ヒドロキシ安息香酸のグリシジルエーテル/グリシジルエステル、N−グリシジル−N’−(2−グリシジルオキシプロピル)−5,5−ジメチルヒンダントイン及び2−グリシジルオキシ−1,3−(5,5−ジメチル−1−グリシジル−3−ヒンダントイニル)−プロパンもまた適している。
ビスフェノールのジグリシジルエーテルのような芳香族エポキシ樹脂が、特に好ましい。
エポキシ樹脂(a)は、有利には、成分(a)、(b)及び(c)の量に基づき、30
ないし94.5質量%、好ましくは45ないし84質量%及び特に60ないし78.5質量%の量で、本発明に従う組成物中に用いられる。
【0012】
ポリオキシアルキレンアミン
米国特許第4528308号明細書は、イミダゾール化合物及び選択されたポリオキシアルキレンポリアミンの混合物を含むエポキシ樹脂硬化剤を記載する。
【0013】
ポリオキシアルキレンアミン(ジェファミン(登録商標:Jeffamine))型硬化剤について、そのような硬化剤は通常、末端ヒドロキシ基がアミンに変えられている酸化ポリプロピレン、酸化ポリエチレン又はその混合物から成るポリエーテル骨格をベースとする。好ましくは、ポリオキシアルキレンアミン硬化剤のアミン官能価は、ジアミン、トリアミンを形成するために少なくとも2である。前記ポリオキシアルキレンアミンは、商業上入手可能であり及びポリオキシプロピレントリアミン(好ましくはおおよそ440の平均分子量を有する)及びポリオキシプロピレンジアミン(α−(2−アミノメチルエチル)−ω−(2−アミノメチルエトキシ)−ポリ−[オキシ(メチル−1,2−エタン
ジイル)](好ましくはおおよそ230の平均分子量を有する)を含む。さらに適する硬
化剤は、ハンツマンの技術文献:“ジェファミンポリオキシアルキレンアミン”;ハンツマンコーポレーション2002(1008−1002)において見出し得る。
【0014】
ジェファミン(登録商標:Jeffamine)型硬化剤に加えて、更なる硬化剤がエポキシ組成物中に含まれ得る。好ましくは、そのような更なる硬化剤はアミン硬化剤である。それらは、例えば、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、クロルトルロン(chlortolurone)及びラロミン(laromine)、N−アミンエチルピペラジン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロへキサン−メタンアミン、エチレンアミン、2,2−ジメチル−4,4−メチレンビス−(シクロヘキシル−アミン)及び、例えば5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロへキサン−メタンアミンとエポキシ樹脂との反応によって得られ得るような付加化合物であり得る。
【0015】
硬化樹脂の特性におけるジェファミン存在の有益な効果は、ジェファミンが硬化剤混合物のうち最も重要な硬化剤である場合、特に明らかであると考えられる。それゆえに、ポリオキシアルキレンアミン(ジェファミン(登録商標:Jeffamine))型硬化剤が唯一の硬化剤でない場合、該ポリオキシアルキレンアミン硬化剤は硬化剤類の量に基づき、少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも65、66、67、68、69、70質量%、75質量%又は80質量%を形成する。非ジェファミン硬化剤は、上記のもののような脂環式アミン、又はジアミノジフェニルスルホンのような芳香族アミン硬化剤であり得る。好ましくは硬化剤混合物アミンは、ジシアンジアミドを含まない。
ポリオキシアルキレンアミン(ジェファミン(登録商標:Jeffamine))型硬化剤(b)は有利には、成分(a)、(b)及び(c)の量に基づき、5質量%ないし70質量%、好ましくは5質量%ないし60質量%、及び特に5質量%ないし50質量%の量で本発明に従う組成物中に用いられる。
【0016】
衝撃改質剤
好ましい衝撃改質剤(c1)について、それは主にメチルメタクリレートから成る少なくとも1種のブロックを有するブロックコポリマーから本質的になり、互いに共有結合した直鎖の3つのブッロクから構成される自己集合ブロックコポリマーの新しい系が好ましくは使用される。前記系は、S−B−M−及びM−B−M−トリブロックコポリマーを含む。S−B−M−トリブロックは、特にポリスチレン(PS)、1,4−ポリブタジエン(PB)及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)から構成され、好ましくはシンジオタクチックであるのに対して、M−B−M−トリブロックは中央ブロックのポリ(ブチルアクリレート)(PBA)及び左右ブロックのポリ(メチルメタクリレート)(PM
MA)から構成される純アクリル系対称ブロックコポリマーである。
【0017】
S−B−Mトリブロックについて、Mはメチルメタクリレートモノマーから成り、又は少なくとも50質量%のメチルメタクリレート、好ましくは少なくとも75質量%のメチルメタクリレートを含む。Mブロックを構成する他のモノマーは、アクリル系又は非アクリル系モノマーであり得、及び反応し得るか又は反応し得ない。用語“反応性モノマー”は、エポキシ分子のオキシラン官能基と又は硬化剤の化学基と反応可能である化学基の意味で理解される。反応性官能基の非限定的な例として、オキシラン官能基、アミン官能基又はカルボキシル官能基が言及され得る。反応性モノマーは、(メタ)アクリル酸又は結果としてそれらの酸をもたらすあらゆる他の加水分解可能なモノマーであり得る。Mブロックを構成し得る他のモノマーのうち、非限定的な例として、グリシジルメタクリレート又は第三ブチルメタクリレートが言及され得る。Mは、有利には、少なくとも60%までシンジオタクチックPMMAから成る。S−B−MトリブロックのMブロックは、同一又は異なり得る。
BのTgは、有利には0℃未満、好ましくは−40℃未満である。
エラストマー状Bブロックを合成するために使用されるモノマーは、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン又は2−フェニル−1,3−ブタンジエンから選択されるジエンであり得る。Bは有利には、ポリ(ジエン)、特にポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)、及びそれらのランダムコポリマーから、又は部分的に又は完全に水素化されたポリ(ジエン)から選択される。ポリブタジエンのうち、最も低いTgを有するもの、例えば1,2−ポリブタジエンのTg(おおよそ0℃)より低いTg(おおよそ−90℃)を有する1,4−ポリブタジエンが有利に使用される。Bブロックもまた水素化され得る。この水素化は通常の技術に従い行われる。
エラストマー状Bブロックを合成するために使用されるモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートでもあり得る。下記Tg値(アクリレート名の後の括弧の間)が得られる:エチルアクリレート(−24℃)、ブチルアクリレート(−54℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃)、ヒドロキシエチルアクリレート(−15℃)及び2−エチルヘキシルメタクリレート(−10℃)。ブチルアクリレートが有利に使用される。該アクリレートは、B及びMが非相溶性である状態を観察するためにはMブロック中のものと異なる。
Bブロックは、好ましくは主に1,4−ポリブタジエンから成る。
S−B−MトリブロックのBブロックは同一又は異なる得る。
SのTgは有利には、23℃より高く、及び好ましくは50℃より高い。Sブッロクの例として、スチレン、α−メチルスチレン又はビニルトルエンのようなビニル芳香族化合物に由来するもの、アルキル鎖において1ないし18個の炭素原子を有するアクリル酸及び/又はメタクリル酸のアルキルエステルに由来するものが言及され得る。後者の場合、S及びMが非相溶性である状態を観察するためには、アクリレートはMブロックのものと異なる。
S−B−Mトリブロックは、10、000g/molないし500、000g/mol、好ましくは20、000ないし200、000g/molであり得る数平均分子量を有する。S−B−Mトリブロックは有利には、質量比として表され、合計が100%になる下記の組成を有する:
M:10ないし80%及び好ましくは10ないし70%、
B:2ないし80%及び好ましくは5ないし70%、
S:10ないし88%及び好ましくは15ないし85%。
ナノストレングス(登録商標:Nanostrength)E20製品及びナノストレングス(登録商標:Nanostrength)E40製品は、フランス国、アルケマ(Arkema)社から入手可能なS−B−M型のトリブロックコポリマーの代表である。
【0018】
M−B−Mトリブロックについて、Mはメチルメタクリレートモノマーから成り、又は
少なくとも50質量%のメチルメタクリレート、好ましくは少なくとも75質量%のメチルメタクリレートを含む。Mブロックを構成する他のモノマーはアクリル系又は非アクリル系モノマーであり得、又は反応し得るか又は反応性し得ない。用語“反応性モノマー”は、エポキシ分子のオキシラン官能基と又は硬化剤の化学基と反応可能である化学基という意味で理解される。反応性官能基の非限定的な例として、オキシラン官能基、アミン官能基又はカルボキシル官能基が言及され得る。反応性モノマーは、(メタ)アクリル酸又は結果としてそれらの酸をもたらすあらゆるほかの加水分解性モノマーであり得る。M−
ブロックを構成し得る他のモノマーのうち、非限定的な例として、グリシジルメタクリレート又は第三ブチルメタクリレートが言及され得る。Mは、有利には少なくとも60%ま
でシンジオタクチックPMMAから成る。M−B−Mトリブロックの2つのM−ブロックは、同一又は異なり得る。それらはまた、同じモノマーから成りながらそれらのモル質量はまた異なっても良い。
BのTgは有利には、0℃未満、及び好ましくは−40℃未満である。
エラストマー状B−ブロックを合成するために使用されるモノマーは、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン又は2−フェニル−1,3−ブタジエンから選択されるジエンであり得る。Bは有利には、ポリ(ジエン)、特にポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)及びそれらのランダムコポリマーから、又は部分的にもしくは完全に水素化されたポリ(ジエン)から選択される。ポリブタジエンのうち、最も低いTgを有するもの、例えば1,2−ポリブタジエンのTg(おおよそ0℃)より低いTg(おおよそ−90℃)を有する1,4−ポリブタジエンが有利に使用される。Bブッロクもまた水素化され得る。水素化は通常の技術に従い行われる。
エラストマー状Bブロックを合成するために使用されるモノマーはまたアルキル(メタ)アクリレートでもあり得る。下記Tg値(アクリレート名の後の括弧の間)が得られる:エチルアクリレート(−24℃)、ブチルアクリレート(−54℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃)、ヒドロキシエチルアクリレート(−15℃)及び2−エチルヘキシルメタクリレート(−10℃)。ブチルアクリレートが有利に使用される。該アクリレートは、B及びMが非相溶性である状態を観察するためにはMブロック中のものと異なる。
Bブロックは、好ましくは主に1,4−ポリブタジエンから成る。
M−B−M−トリブロックは、10000ないし500000g/mol、好ましくは20000ないし200000g/molであり得る数平均分子量を有する。M−B−M−トリブロックは有利には、M及びBに関して、質量比で表され、合計が100%である下記の組成を有する。M10ないし80%及び好ましくは15ないし70%。B90%ないし20%及び好ましくは85%ないし30%。
【0019】
ポリブチルアクリレートの中央ブロックを取り囲んでいるPMMAの両サイドのブロックで作られるM−A−Mトリブロックコポリマーもまた存在する。
名称ナノストレングスM22は、フランス国、アルケマ社から入手可能なM−A−M型のトリブロックコポリマーを表す。
【0020】
本発明の材料において使用されるブロックコポリマーは、例えば欧州特許出願公開第524,054号明細書及び欧州特許出願公開第749,987号明細書に開示される方法に従い、アニオン重合によって製造され得る。
本発明の好ましい形態によると、衝撃改質剤は少なくとも1種のS−B−M−又はM−B−M−ブロックコポリマー及び少なくとも1種のコア−シェル(A)、官能基を有するエラストマー、S−Bブロックコポリマー並びにATBN(アミン基末端ブタジエンアクリロニトリルコポリマー)及びCTBN(カルボキシル基末端ブタジエンアクリロニトリル)反応性ゴムから選択される少なくとも1種のポリマーを含む。
【0021】
S−Bジブロックについて、S及びBブロックは非相溶性であり、及びそれらは同じモ
ノマー及び所望によりS−B−MトリブロックのSブロック及びBブロックのようなコモノマーから成る。S及びBブロックは、熱硬化材料における衝撃改質剤の他のブロックコポリマーに存在する他のS及びBブッロクと同一であるか、又は異なり得る。
S−Bジブロックは、10、000g/molないし500、000g/mol、好ましくは20、000ないし200、000g/molであり得る数平均分子量を有する。S−Bジブロックは有利には、質量比5ないし95%及び好ましくは15ないし85%のBから成る。
【0022】
コア−シェルコポリマー(A)について、エラストマーコア及び少なくとも1種の熱可塑性シェルを有する微粒子の形態で提供され、該粒子の径は一般に1μm未満及び有利には50ないし500nmである。コアの例として、イソプレン又はブタジエンのホモポリマー、イソプレンと最大30mol%のビニルモノマーとのコポリマー及びブタジエンと最大30mol%のビニルモノマーとのコポリマーが言及され得る。ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル又はアルキル(メタ)アクリレートであり得る。別のコア系は、アルキル(メタ)アクリレートのホモポリマー及びアルキル(メタ)アクリレートと最大30mol%のビニルモノマーとのコポリマーである。アルキル(メタ)アクリレートは有利には、ブチルアクリレートである。ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリルニトリル、ブタジエン又はイソプレンであり得る。コポリマー(A)のコアは、全部又は部分的に架橋され得る。コアの製造の間に、少なくとも二官能性モノマーを加えれば十分である。それらのモノマーは、ブチレンジ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートのようなポリオールのポリ(メタ)アクリルエステルから選択し得る。他の二官能性モノマーは、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ビニルアクリレンート及びビニルメタクリレートである。グラフトすることにより又は重合の間にコモノマーとして、不飽和無水カルボン酸、不飽和カルボン酸及び不飽和エポキシドのような不飽和官能性モノマーを該コアに導入することにより、該コアを架橋することも可能である。例として、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸及びグリシジルメタクリレートが言及され得る。
シェル又はシェル類(shells)はスチレン、アルキルスチレンもしくはメチルメタクリレートのホモポリマー、又はそれら上記モノマーのうち1種を少なくとも70mol%及び他の上記モノマー、ビニルアセテート及びアクリロニトリルから選択される少なくとも1種のコモノマーを含むコポリマーである。該シェルは、グラフトすることによるか、又は重合の間にコモノマーとして、不飽和無水カルボン酸、不飽和カルボン酸及び不飽和エポキシドのような不飽和官能性モノマーを該シェルに導入することにより、該シェルを官能化し得る。例として、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸及びグリシジルメタクリレートが言及され得る。例として、ポリスチレンシェルを有するコア−シェルコポリマー(A)及びPMMAシェルを有するコア−シェルコポリマー(A)が言及され得る。1つがポリスチレンで作られており、及び外側にもう1つがPMMAで作られている、2つのシェルを有するコア−シェルコポリマー(A)もまた存在する。コポリマー(A)及びその製造方法の例は下記の特許において開示される:米国特許第4,180,494号明細書、米国特許第3,808,180号明細書、米国特許第4,096,202号明細書、米国特許第4,260,693号明細書、米国特許第3,287,443号明細書、米国特許第3,657,391号明細書、米国特許第4,299,928号明細書及び米国特許第3,985,704号明細書。
コアは有利には、(A)の70ないし90質量%を示し、及びシェルは30ないし10質量%を示す。
【0023】
コポリマー(A)の例として、(i)少なくともブタジエン93mol%、スチレン5mol%及びジビニルベンゼン0.5ないし1mol%から成る75ないし80部のコア、及び(ii)本質的に同じ質量の、一方はポリスチレンで作られる内部シェル及び他方はPMMAで作られる外部シェルである2つのシェル25ないし20部から成るものが言
及され得る。
【0024】
SBMのようなブロックコポリマーがエポキシ樹脂に導入される場合、透明の又は着色した硬化樹脂生成物を形成することを可能にする一方で、コアシェルポリマーの配合は不透明な硬化樹脂生成物をもたらす傾向がある。従って、硬化生成物のいくつかの用途及び使用に対しては、樹脂組成物へのコアシェルポリマーの配合は必ずしも望ましいとは限らない。
【0025】
本発明の2つ目の好ましい形態によると、衝撃改質剤は少なくとも1種のS−B−Mブロックコポリマー及び少なくとも1種のS−Bブロックコポリマーを含む。該衝撃改質剤は有利には、それぞれのS−B−Mトリブロック95ないし20%に対してS−Bジブロック5ないし80%を含む。
【0026】
本発明の3つ目の好ましい形態によると、衝撃改質剤は少なくとも1種のS−B−Mブロックコポリマー及び少なくとも1種のコア−シェルポリマー(A)を含む。コア−シェルのS−B−Mに対する割合は、5対1ないし1対4及び好ましくは3対1ないし1対2であり得る。
【0027】
本発明の4つ目の好ましい形態によると、衝撃改質剤は少なくとも1種のS−B−Mブロックコポリマー及び少なくとも1種のATBN又はCTBN反応性ゴムを含む。反応性ゴムのS−B−Mに対する割合は、5対1ないし1対4、好ましくは3対1ないし1対2であり得る。
【0028】
有利な形態によれば、S−B−Mの一部はS−Bジブロックにより置き換えられ得る。この部分はS−B−Mの70質量%までであり得る。
S−B−Mトリブロックの全部又は一部をM−S−B−S−M又はM−B−S−B−Mペンタブロックで置き換えることは本発明の範囲から逸脱しないだろう。それらは、上述のジ−又はトリブロックのようなアニオン重合によって、しかし二官能性開始剤を使用することによって製造し得る。それらのペンタブロックの数平均分子量は、S−B−Mトリブロックの数平均分子量と同じ範囲内である。2つのMブロックが一緒の又は2つのBもしくはCブロックが一緒の割合は、S−B−MトリブロックにおけるS、B及びMの割合と同じ範囲内である。
【0029】
主にメチルメタクリレートから成る少なくとも1種のブロックを有するブロックコポリマーから本質的になる衝撃改質剤、特にS−B−M−トリブロック又はM−B−M−トリブロック衝撃改質剤(c)は有利には、成分(a)、(b)及び(c)量に基づき、0.5ないし20質量%、好ましくは1ないし15質量%及び特に1.5ないし10質量%の量で本発明に従う組成物において用いられる。
【0030】
更なる態様
本発明に従う組成物は、好ましくは組成物の100質量部当り、70ないし99.5質量部の量で成分(a)及び(b)を並びに0.5ないし30質量部の量で成分(c)を、そしてより好ましくは80ないし99.5質量部の量で成分(a)及び(b)を並びに0.5ないし20質量部の量で成分(c)を含有する。
好ましくは、衝撃改質剤成分、特にブロックコポリマー成分の含有量は、エポキシ樹脂への溶解特性を確実にするために及びまた費用の理由のために制限されるべきである。
【0031】
本発明の組成物は、従来のブレンド装置を使用して未架橋のエポキシ樹脂と衝撃改質剤をブレンドし、次にポリオキシアルキレンアミン型硬化剤を添加することによって製造され得る。代わりの方法として、衝撃改質剤は初めにポリオキシアルキレンアミン型硬化剤
と、そして次にエポキシ樹脂とブレンドされ得る。
エポキシ樹脂組成物は、従来の攪拌反応器を使用して製造され得る。エポキシ樹脂が該反応器に導入され、そして数分間で流動体になるために十分な温度(140℃)まで上げられ得る。ブロックコポリマーを含む衝撃改質剤が、次に加えられ及びそれが完全に溶解するまで流動体になるために十分な温度で攪拌される。攪拌時間は、加えられるコポリマーの種類に依存する。3ないし5時間後、ブロックコポリマーが140℃ないし150℃の内部温度で溶解される。硬化剤が次に加えられ、そしてブレンドは均質なブレンドを得るために流動体になるための十分な温度で更に5分間行われる。それらのブレンドが、次に型に入れられそして硬化される。
【0032】
本発明に従う組成物は、重合可能な材料の技術において用いられる他の既知の添加剤もまた含有し得る。そのような添加剤の例は、充てん剤、顔料、染料、難燃性物質、帯電防止剤、接着促進剤、流れ調整剤、酸化防止剤、光安定剤及び繊維である。
本発明に従う組成物は、硬化生成物の製造のために非常に一般に用いられ得、及び特別な使用の分野に適する配合物において、例えばコーティング組成物、塗料、加圧組成物(pressing composition)、浸漬用樹脂(dipping resin)、注型用樹脂、含浸用樹脂、積層用樹脂、1−又は2−成分接着剤又は基材樹脂として使用され得る。航空宇宙、風車及びスポーツ用品の分野における積層用樹脂、ホットメルト、RTMプロセスのための組成物、1−又は2−成分接着剤又は基材樹脂としての使用が特に好ましい。
【実施例】
【0033】
特に指定のない限り、“%”は“質量%”であり、及び“部”は“質量部”である。
下記表において示されるブレンドを下記のように製造した:
エポキシ樹脂100質量部を80℃に加熱した。表に記載された硬化剤を室温で攪拌下に加え、そして15分間のうちに完全にブレンドした。0.2%BYK A 525(メチルアルキルポリシロキサン変性ポリエステルのコポリマー溶液;ドイツ国、BYK−Chemie社の脱気剤)を加え、そしてブレンドを真空下脱気した。
室温で、注入し得るブレンドを80℃に予熱した型に投入した。SBM材料は同じ条件下で容易にポリオキシアルキレンアミン(ジェファミン(登録商標:Jeffamine))にブレンドされ得ることを記載せねばならない。組成物を、表中に与えられる硬化スケジュールに従い4mmの厚さを有する板状に硬化した。

実施例において使用した測定方法:
衝撃強度の測定−ISO13586に従うK1C及びG1cの測定
臨界応力拡大係数K1cを、ウィリアムス及びケイウッドによって与えられた手順(ポリマー試験、9(1990)、15−26)に従い切り欠きが入った3点のブレンド試料に対して室温で測定した。試験片は、ダイヤモンド鋸で事前に切り欠き入れた。そっとたたくことで安全かみそりの刃は亀裂もたらすので、安全かみそりの刃を使用して、細かい亀裂を、バイスに固定した試料上に作った。これは、自然亀裂と同様な非常に細かい亀裂ルートをえることを可能にした。切り欠きの全部の深さを、双眼拡大鏡を使用して測定した。
材料のK1cが高い程、亀裂開始に対するその抵抗はより優れている。亀裂成長に対す
る抵抗は、破壊靭性G1cによって最も良く特徴付けられる。
粘度:
粘度を、エプレヒト インストルメンツ EIC ビスコ プロット(Epprecht Instruments EIC Visco Plot)(コーン C)又はブルックフィールド CAP 2000粘度計(コーン/プレート)を使用して測定した。
【0034】
実施例1
FER1=ハンツマン アドバンスト マテリアルズ社からXD4734として商業上入手可能な、衝撃改質剤無しの配合樹脂。それは、ビスフェノールA−エポキシ化合物をベースとする配合エポキシ樹脂である。

FER2=95.1質量部のXD4734と似た配合樹脂及び4.9部のSBM AFX
E20から形成された樹脂。

硬化剤FJA1=T−403ジェファミン50.3%及び脂環式アミン9.1%を含有する、XD−4741−S硬化剤としてハンツマン社から入手可能な配合硬化剤。
【表1】

エポキシ樹脂、SBMコポリマー及びジェファミン硬化剤を含有する、実施例1に従う組成物は、SBMを含有しない同じ組成物と同様のTgを有するがはるかに良い靭性を有する硬化樹脂生成物を与えた。
実施例1に従う組成物は非常に優れた接着性を有し、及びウィンドブレード(wind
blade)の剛化剤を結合する構造用接着剤を形成するために使用され得る。
【0035】
実施例2ないし20:複合生成物のための組成物
下記成分が使用された:
エポキシ:
ER1:700g/mol未満の数平均分子量を有する液体ビスフェノールAエポキシ樹脂
ER2:配合エポキシ樹脂:700g/mol未満の数平均分子量を有する液体ビスフェノールAエポキシ樹脂及びコアシェル衝撃改質剤のエポキシ樹脂5質量%を含有する。この樹脂は、その内容が参照することにより本書に組み込まれる欧州特許第0449776号明細書に従い作られた。

硬化剤:
以下の表は試験した硬化剤に対する特質及び性質の概要を示す。

【表2】

AHEW=アミン水素当量
D−230の式は下記の通りである:H2N[CH(CH3)CH2O]nCH2CH(CH3
)NH2(式中、n=2ないし3、一般に2.6)、平均分子量230を有する
ブロックコポリマー衝撃改質剤:
SBM1:7.5の溶融粘度(10%トルエンにおいてmPas)を有し、Sがポリスチ
レンを表し、Bがポリブタジエンを表し及びMがPMMAを表すところの、ナノストレングス(登録商標:Nanostrength)SBM AFX E 20(フランス国、アルケマ社)として商業上入手可能な、SBMトリブロックコポリマーである。
MAM1:8.4の溶融粘度(10%トルエンにおけるmPas)を有し、Bがポリブタジエンアクリレートを表し及びMがPMMAを表すところのMBM AFX M 22(フランス国、アルケマ社)として商業上入手可能な、M−A−Mトリブロックコポリマーである。
結果

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

結果の考察;
1.曲げ弾性率について、曲げ強度及び曲げ伸び;
結果は、全ての実施例及び比較例に共通してこれらの性質について、非常によく似ていた。
2.Tg
研究されたケースいずれにおいてもTgは衝撃改質剤の添加によって10%以上低くはならなかった。典型的にはTgの減少は、SBM及びMAMの5%が添加された場合0ないし3%の範囲内であり、及びコア/シェル強化剤が添加された場合5ないし10%であり得る。
3.強化剤
MAM、SBM等のようなコポリマーは出発エポキシ樹脂に溶解される一方、コアシェル粒子はエポキシ樹脂中に分散されなければならない。これは、コポリマーの均一分布を可能にするが、一方で、粒子が少しした後に凝集して樹脂基材における不均質な分布をもたらし、それが不均質な性質を示す生成物を生成し得る。特にSBM型のコポリマーを用いて、より良いK1C及びG1C値を得ることが可能である。コポリマー含有組成物が半透明の及び透明の生成物をもたらす一方、コアシェル粒子を含有するエポキシ樹脂組成物は不透明な生成物をもたらすだけである。従って、コポリマー含有組成物が好ましい。好ましくは、エポキシ樹脂組成物は
(a)分子中に平均1つより多くの1,2−エポキシド基を有する室温で液体のエポキシ樹脂;
(b)本質的にポリオキシアルキレンアミン型硬化剤からなる硬化促進剤系;
(c)主にメチルメタクリレートから成る少なくとも1つのブロックを有する少なくとも1種のブロックコポリマーを含有する衝撃改質剤
を含む。
請求の範囲に記載される衝撃改質剤5%を加えたとき、G1C−靭性における改善は典型的にはジェファミン(登録商標:Jeffamine)硬化剤を含有する組成物に対して500ないし1200%の範囲内である。靭性増加は、該組成物がポリオキシアルキレンアミン及びSBMブロックコポリマーを含有するとき最も高い。
4.靭性:K1c及びGC
【表7】

硬化樹脂の靭性は、衝撃改質剤(強化剤)が組成物中に存在するとき増加した。
XJT590以外の各々のアミンについては、この靭性増加はブロックコポリマーSBM1で最も高く、次にコアシェル、次にMAM1である。
ポリオキシアルキレンアミンXTJ−590を含有する組成物の挙動は、XJT590が組成物中にいずれの強化剤も存在しなくても高い靭性を与えるので、他のものと異なる
。この硬化剤は、エポキシ樹脂とともに非常に早く反応し、それが可使時間を制限する。これはより長いオープンタイムが必要とされる数多くの用途のための使用を制限する。
5%の衝撃改質剤の影響を標準アミン/エポキシ系と比較するとき、G1C靭性における改善は200ないし400%の範囲内である。
しかしながら、衝撃改質剤を含有するエポキシ樹脂組成物から作られた硬化樹脂の靭性増加は、ジェファミン(登録商標:Jeffamine)硬化剤を含有する組成物に対して著しく増加され、それは予期されなかった。

更なる実施例
下記の生成物が使用された:
ER1:700g/mol未満の数平均分子量を有する液体ビスフェノールAエポキシ樹脂
ER対照:エポキシ樹脂:商業用注文番号LY556の下ハンツマンカンパニーから販売される、モル質量383g/molを有し、1つのエポキシ基当りの平均ヒドロキシ基数n=0.075を有するビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)である。JA1:おおよそ230の平均分子量を有するポリオキシプロピレン−ジアミン
JA2:おおよそ230の平均分子量を有するポリオキシプロピレン−ジアミン72%、イソホロンジアミン19%及び2,2−ジメチル−4,4−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)9%をベースとする硬化剤組成物
A3:ジシアンジアミド26%、クロルトルロン13%及び5.1ないし5.8バル(val)エポキシド/kgを有するビスフェノールA樹脂61%をベースとする硬化剤組成物
A対照:商業用注文番号ロンザキュア(LONZACURE)M−CDEAのもとロンザ社から販売される、4,4’−メチレンビス−(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)
SBM1:溶融粘度(10%トルエンにおけるmPas)4.1を有し、Sがポリスチレンを表し、Bがポリブタジエンを表し及びMがPMMAを表すところの、SBM AFX
E 40(フランス国、アルケマ社)として商業上入手可能なS−B−Mトリブロックコポリマーである。
SBM2:溶融粘度(10%トルエンにおけるmPas)7.5を有し、Sがポリスチレンを表し、Bがポリブタジエンを表し及びMがPMMAを表すところの、SBM AFX
E 20(フランス国、アルケマ社)として商業上入手可能なS−B−Mトリブロックコポリマーである。
MAM1:溶融粘度(10%トルエンにおけるmPas)8.4を有し、Aがポリブチルアクリレートを表し及びMがPMMAを表すところの、MBM AFX M 22(フランス国、アルケマ社)として商業上入手可能なM−A−Mトリブロックコポリマーである。
SBM1対照:連続した、数平均モル質量27,000g/molを有するポリスチレンブロックのアニオン重合、11、000g/molの質量を有するポリブタジエンブロックのアニオン重合及び数平均モル質量84,000g/molを有するポリ(メチルメタクリレート)ブロックのアニオン重合によって得られ、質量比22%のポリスチレン、質量比9%のポリブタジエン及び69質量%のポリ(メチルメタクリレート)を含み、Sがポリスチレンを表し、Bがポリブタジエンを表し及びMがPMMAを表すところの、S−B−Mトリブロックコポリマーである。この生成物は3つのガラス転移、1つは−90℃、もう1つは95℃及び3つ目は130℃を示す。
SBM2対照:連続した、数平均モル質量14,000g/molを有するポリスチレンブロックのアニオン重合、22、000g/molの質量を有するポリブタジエンブロックのアニオン重合及び数平均モル質量85,000g/molを有するポリ(メチルメタクリレート)のアニオン重合によって得られ、質量比12%のポリスチレン、質量比18%のポリブタジエン及び70質量%のポリ(メチルメタクリレート)を含み、Sがポリス
チレンを表し、Bがポリブタジエンを表し及びMがPMMAを表すところのS−B−Mトリブロックコポリマーである。この生成物は3つのガラス転移、1つは−90℃、もう1つは95℃及び3つ目は130℃を示す。

組成物の製造(10%溶液の製造)
エポキシ樹脂へのSBMのブレンド
還流凝縮器及び攪拌機を備えた反応器中に450gのER1を入れた。攪拌下、50gのSBM2を10分間で添加した。この混合物を140℃ないし150℃の内部温度まで加熱した。この温度でSBM2の低速溶解を観察した。SBM2は、140℃ないし150℃の内部温度で3ないし5時間以内に完全に溶解した。
わずかに濁った溶液を130℃ないし140℃で放出した。
該溶液を次に室温まで冷却した。
類似の方法において5%溶液及びSBM1の溶液の製造を行った。
該ブレンドのブルックフィールド粘度を表7に示す。
【表8】

ジェファミン硬化剤へのSBMのブレンド
375gのJA1を、還流凝縮器、温度計及び攪拌機を備えた反応器中に入れた。
室温で125gのSBM2を添加した。乳白色の溶液を加熱した。
35分後、内部温度107℃という条件で半透明の溶液を生じた。
該溶液を、110℃ないし120℃で更に2ないし3時間攪拌した。
ブレンドを110℃で放出した。

下記表において示されるブレンドを下記のように製造した:
エポキシ樹脂100質量部を、80℃まで加熱した。表に記載される硬化剤を攪拌下、室温で添加し、そして15分間かけて完全にブレンドした。0.2%BYK A 525(メチルアルキルポリシロキサン改質ポリエステルの溶液;ドイツ国、BYK−ケミエ(BYK−Chemie)社の脱気剤)を添加し、そして該ブレンドを真空下で脱気した。
室温で注入し得るブレンドを80℃に予熱した型に投入した。SBM材料は同条件下でポリオキシアルキレンアミン(ジェファミン(登録商標:Jeffamine))に簡単にブレンドし得ることを記載しなければならない。組成物を、表に示された硬化スケジュールに従い4mmの厚みを有するプレートのように硬化した、実施例C参照。
【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

*エプレヒト インストルメンツ EIC ビスコ プロット(Epprecht Instruments EIC Visco Plot)(コーンC)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分子中に平均で1つより多くの1,2−エポキシド基を有する室温で液体のエポキシ樹脂;
(b)本質的にポリオキシアルキレンアミン型硬化剤から成る硬化剤−促進剤系;
(c)
(C1)主にメチルメタクリレートから成る少なくとも1つのブロックを有するブロックコポリマー又は
(C2)コア−シェルコポリマー
の少なくとも1種を含有する衝撃改質剤
を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記(a)が芳香族エポキシ樹脂、好ましくはビスフェノールのジグリシジルエーテルである請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記(b)がポリオキシプロピレントリアミン又はポリオキシプロピレンジアミンである請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化剤(b)に加えて(b)と異なるアミン型硬化剤が存在する請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記(c1)がS−B−M−トリブロック又はM−B−M−トリブロックコポリマーである請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
成分(a)、(b)及び(c)の量に基づき、(a)が30ないし94.5質量%、好ましくは45ないし84質量%及び特に60ないし78.5質量%の量で用いられる請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
成分(a)、(b)及び(c)の量に基づき、(b)が5ないし50質量%、好ましくは5ないし40質量%及び特に5ないし30質量%の量で用いられる請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
成分(a)、(b)及び(c)の量に基づき、(c)が0.5ないし20質量%、好ましくは1ないし15質量%及び特に1.5ないし10質量%の量で用いられる請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
成分(a)、(b)及び(c)の100質量部当り、成分(a)及び(b)は70ないし99.5質量部及び成分(c)が0.5ないし30質量部の量で存在し、並びにより好ましくは成分(a)及び(b)は80ないし99.5質量部の量及び成分(c)が0.5ないし20質量部の量で存在する、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
付加的に充てん剤、顔料、染料、難燃性物質、帯電防止剤、接着促進剤、流れ調整剤、酸化防止剤、光安定剤及び繊維を含む群から選ばれる添加剤を含む請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
エポキシ樹脂(a)及び衝撃改質剤(b)をブレンドし、次にポリオキシアルキレンアミン型硬化剤(c)を添加するか、又は最初に衝撃改質剤(b)をポリオキシアルキレンアミン型硬化剤(c)をブレンドし、そして次にエポキシ樹脂(a)とブレンドすることを含む、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法

【請求項12】
コーティング組成物、塗料、成形用組成物(moulding composition)、浸漬用樹脂(dipping resin)、注型用樹脂、含浸用樹脂、積層用樹脂、ホットメルト、RTMプロセスのための組成物、1−又は2−成分接着剤又は基材としての請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の使用。


【公表番号】特表2009−501258(P2009−501258A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520890(P2008−520890)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064283
【国際公開番号】WO2007/009957
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(300052420)ハンツマン アドバンスト マテリアルズ (スイッツァランド) ゲーエムベーハー (26)
【氏名又は名称原語表記】HUNTSMAN ADVANCED MATERIALS (SWITZERLAND) GMBH
【Fターム(参考)】