説明

強度及び伸び率特性に優れたスエード調人工皮革

【課題】大きな摩擦及び外力に対しても形態安全性を有するだけでなく、屈曲が多い部位の縫製及び装着作業性が容易になるように適切な強度と伸び率を有する人工皮革を製造できるスエード調人工皮革を提供すること。
【解決手段】本発明は強度及び伸び率特性に優れたスエード調人工皮革に関するもので、太さが0.3デニール以下の極細単繊維が互いに絡みあっている不織布と、極細化されて前記不織布内で前記不織布の極細短繊維に絡み合っており、経糸密度及び緯糸密度が40〜70本インチであり、8kgfの荷重下で測定した静荷重伸び率が10〜30%である織物又は編物と、からなる複合シートを含み、前記織物または編物が、極細化可能な海島型複合繊維の撚糸からなる前記経糸及び前記緯糸から構成され、前記海島型複合繊維の島成分の繊維はポリエチレンテレフタレート糸、ポリトリメチレンテレフタレート糸、ポリアミド糸、ポリウレタン糸、ポリエチレン糸及びポリプロピレン糸からなる群から選択された1種又は2種以上であって、前記織物又は前記複合シート内にはポリウレタンが充填され、35〜60kgf/50mmの縦方向及び横方向の引長強度と、8〜25%の縦方向及び横方向の静荷重伸び率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は強度及び伸び率特性に優れたスエード調人工皮革に関するもので、より詳細には引長強度及び静荷重伸び率に優れて車両用、家具用等の高耐久性素材として有用なスエード調人工皮革に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、極細糸が3次元的に絡み合っている不織布と不織布に含浸しているポリウレタン樹脂(ポリウレタン弾性体)からなる人工皮革は、天然皮革に類似した軟らかい質感と独特の外観を有していて、家具用や車両用に使用する天然皮革に替わる素材として、急速に広く使用されている。
【0003】
最近は、既存の天然皮革が有する特有の軟らかい質感と独特の外観を摸倣する段階を越えて、高機能性を備えた人工皮革の開発が活発に進行している。特に、車両用及び家具用等に使用する際には、大きな摩擦や外力に対しても耐久性があるように形態安全性が要求されているだけでなく、屈曲が多い部位に使用する特性上、縫製及び縫着作業性が容易になるように適切な強度と伸び率を有する人工皮革が要求されている。
【0004】
人工皮革に形態安全性を与える従来技術として、特許文献1及び特許文献2等では不織布の製造時に原綿からなるウェブ層の間に織物を挿入して縫い目強度及び静荷重伸び率特性が安定した値を有するようにする方法を提案している。
【0005】
しかし、前述した方法によれば、織物挿入によって強度が高いが、静荷重伸び率が過度に小さくなる短所があるため、屈曲が多い家具用や車両用に適用する際は、シート装着等の手作業に無理を与える問題点がある。
【0006】
一方、特許文献3は不織布の製造時、ポリウレタン弾性糸で構成した伸縮性編物をウォータージェット法で短繊維ウェブ層の中間に挿入して人工皮革を製造する方法を提示している。
【0007】
しかし、前述した方法によれば、ポリウレタン弾性糸だけで編物を製造するため、ニードルパンチングによる挿入が非常に難しい。また、ウォータージェット方法によって接合させるため、接合目が形成されるようになって表面状態が不均一になる。さらに、伸び率が過度に高く強度が低下するため、家具用や車両用に使用することには形態安全性を満足できない。
【0008】
前述したように、従来の方法で製造した人工皮革は優れた強度を有するが伸度が低いか、または優れた伸度を有するが強度が弱い側面があり、外観も満足でない。したがって、審美性と共に高い耐久性を要する家具用や車両用人工皮革素材として不適合である側面がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,112,421号公報
【特許文献2】米国公開特許2005/0009426A1号公報
【特許文献3】特開2004−332173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的はウェブに接合させる織物または編物の強度と伸度を制御して、これに応じる最終製品の強度と伸度を適切に発現することによって、大きな摩擦及び外力に対しても形態安全性を有するだけでなく、屈曲が多い部位の縫製及び装着作業性が容易になるように適切な強度と伸び率を有する人工皮革を製造できるスエード調人工皮革を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するための本発明のスエード調人工皮革は、太さが0.3デニール以下の極細短繊維が互いに絡み合っている不織布と、極細化されて前記不織布内前記不織布の極細短繊維に絡み合っており、8kgfの荷重下で測定した静荷重伸び率が10〜30%である織物または編物と、からなる複合シートを含み、前記織物または編物が、極細化可能な海島型複合繊維の撚糸からなる前記経糸及び前記緯糸から構成され、前記海島型複合繊維の島成分の繊維はポリエチレンテレフタレート糸、ポリトリメチレンテレフタレート糸、ポリアミド糸、ポリウレタン糸、ポリエチレン糸及びポリプロピレン糸からなる群から選択された1種又は2種以上であって、前記複合シート内にはポリウレタンが充填され、35〜60kgf/50mmの縦方向及び横方向の引長強度と、8〜25%の縦方向及び横方向の静荷重伸び率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
まず、本発明のスエード調人工皮革は35〜60kgf/50mmの縦方向及び横方向の引長強度と、8〜25%の縦方向及び横方向の静荷重伸び率を有する。
【0014】
人工皮革が家具用や車両用等に使用する場合には、過度に伸びすぎない形態安全性と共に、縫製して装着する際の作業に無理を与えないよう適当に伸びる装着作業性を要する。形態安全性の側面から見ると、静荷重伸び率が25%を超過すると使用中にも度々伸びるようになって恒久的な製品の価値が低下する問題がある。また装着作業性の側面から見ると、引長強度が35kgf/50mm未満であるか、静荷重伸び率が8%未満である場合、装着中に製品が破損する恐れがあり、作業者の身体に無理を与える問題が発生し得る。さらに、引長強度が60kgf/50mmを超過する場合には、静荷重伸び率が低過ぎるため、前述したような問題が発生する。
【0015】
通常の人工皮革は0.3デニール以下の極細短繊維とポリウレタン弾性体で構成されている。しかし本発明では、強度及び伸び率特性を発揮するための手段として、通常の人工皮革に強度及び伸び率特性がある織物または編物を補強材として追加した。織物または編物は本発明の人工皮革製品が強度及び伸び率特性を発現するために重要な構成要素である。
【0016】
ここで、より一層重要なものは補強材として挿入する織物または編物の経糸及び緯糸密度と共に、その静荷重伸び率によって製品の強度及び伸び率特性が大きく変わる点である。特に、満足できる外観や物性を発現するためには不織布内の極細短繊維と織物または編物との絡み合いにおける一体化が非常に重要である。ニードルパンチング方法で製造する場合に織物または編物の経糸密度及び緯糸密度は、20〜100本/インチであることが好ましい。密度が20本/インチ未満の場合には補強材としての機能が弱く、製品の引長強度が低下する問題があり、100本/インチを超過する場合にはニードルが織物または編物のメッシュの間を突き抜く過程で補強材が大きく破損する可能性が高くなる。この場合に、補強材の静荷重伸び率が弱くなり、それに伴って製品の静荷重伸び率も低下する問題が発生するようになる。
【0017】
また、本発明に適用する織物または編物に対して8kgfの荷重下で測定した静荷重伸び率は10〜30%である。織物または編物の静荷重伸び率は製品の静荷重伸び率に最も大きく影響を及ぼす因子である。補強材なく極細短繊維のみからなる不織布と、ポリウレタン充填材だけで構成した通常の人工皮革においては、その静荷重伸び率が大き過ぎるため、車両用や家具用等に適用するにはその伸び率が適合しない。したがって、静荷重伸び率を与える方法の一つとして織物または編物を挿入して介在するようになり、そのためにはこれらの織物または編物の静荷重伸び率が非常に重要である。織物または編物の静荷重伸び率は、不織布と結合するとその値が小さくなる傾向がある。したがって、製品が8%以上及び25%以下の静荷重伸び率を有するようにするためには織物または編物が前述した静荷重伸び率を有することが最も好ましい。
【0018】
また、本発明で使用する織物または編物はポリエチレンテレフタレート糸、ポリトリメチレンテレフタレート糸、ポリアミド糸、ポリウレタン糸、ポリエチレン糸及びポリプロピレン糸からなる群から選択された1種または2種以上の原糸で構成できる。また、織物または編物を構成する原糸の形態はフィラメント糸またはステープル(staple)糸である。
【0019】
前述した補強材織物または編物を不織布の短繊維ウェブ層にニードルパンチング方法によって絡み合わせるか、高圧水流のウォータージェットにより絡み合わせる方法によって絡み合わせることができる。
【0020】
強度及び伸び率特性に優れた本発明のスエード調人工皮革は次のような一連の工程を通じて製造する。
【0021】
具体的に、8kgfの荷重下で測定した静荷重伸び率が10〜30%である織物または編物を準備し、溶解または分割後の太さが0.3デニール以下になる極細短繊維ウェブを準備した後、ニードルパンチング方法によって織物または編物層と極細糸ウェブ層を接合させる。ニードルは織物または編物層が破損しないようにするため、バーブの数が一つ以下のニードルを使用し、バーブの角度を調整して織物または編物との接触確率を最小化する。接合のために必要なパンチング密度は1cmの単位面積当り1500〜3000回であることが好ましい。織物または編物が接合された状態における複合シートの密度は0.200〜0.250g/cm程度になるようにする。
【0022】
本発明で使用する0.3デニール以下の極細短繊維は、その構成成分がポリアミド系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ポリウレタン系ポリマーのうち、1種または2種以上で構成できる。
【0023】
前述したように製造した不織布及び織物または編物複合シートを、3〜15%濃度のポリビニールアルコールまたはカルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子溶液をパッドし乾燥して、繊維質量に対して5〜20質量%になるようにする。この工程は以後の湿式加工ポリウレタンが極細化された繊維と過度に接着して触感が低下するようになることを防止するのに効果的である。
【0024】
次に、複合シートに対してポリウレタン湿式含浸加工を行う。この工程で使用するポリウレタン弾性体はマクログリコール、ジイソシアン酸エステル及び低分子量ジオールまたはジアミンで構成された線状高分子物質や部分架橋性高分子物質としてジメチルホルムアミド(dimethylformamide、以下「DMF」ともいう)に容易に溶解される。
【0025】
本発明に使用するマクログリコールとしては、ポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリエーテルポリエステル共重合グリコール、ポリカーボネートグリコール等が適用可能である。
【0026】
本発明で低分子量ジオールとしては4、4’−ブタンジオール、エチレングリコール等が使用可能である。また、メチレン−ビス−(4、4’−フェニルアミン)等のジアミン系の鎖延長剤も適用可能である。このようなポリウレタン弾性体のDMF溶液に界面活性剤、顔料及び機能性粒子等を添加して濃度を希薄して含浸溶液として使用する。
【0027】
前述した複合シートを含浸溶液に含浸し、ポリウレタンを水溶液の中で凝固させて50〜80℃の熱水で水洗した後、仮充填した水溶性高分子を完全に除去してから乾燥する。乾燥後のポリウレタンの含有量は20〜50質量%になるようにすることが好ましい。
【0028】
続いて、溶解成分(海成分)の溶解または分割が可能な溶剤または苛性ソーダ水溶液で溶解成分を除去して繊維の極細化工程を行う。
【0029】
溶解成分(海成分)が共重合ポリエステルである場合には、5〜15%の苛性ソーダ水溶液で連続的または不連続バッチ方式で処理して溶解成分を分解する。溶解成分がポリエチレンやポリスチレンである場合には、トルエンまたはペルクロロエチレンやトリクロロエチレンで除去する。
【0030】
例えば、海成分共重合ポリエステルは、10%の苛性ソーダ水溶液で100℃、5〜10分間処理すると、完全に分解されて除去される。このとき、不織布と織物または編物で構成された複合シートは溶解成分(海成分)の除去により多少の厚さの減少があるが、織物または編物の組織により形態がよく維持されて機械的な張力による長さ方向の伸張も大きくなく、複合シート表面の見かけ密度が向上する。
【0031】
次に、このようにして収得した複合シート形の皮革状原綿の表面を適切な粗度のサンドペーパー付きのバフ研磨機で研磨して表面に立毛を形成し、毛羽を整頓する。サンドペーパーの粗度は用途によって適切に選定する。通常、150〜400メッシュのものを使用することが好ましい。
【0032】
このように毛羽が形成された複合シート形皮革状の原綿を用途に応じて染色加工を行う。使用した繊維がナイロン−6である場合には、通常含金属染料またはミーリングタイプの酸性染料で染色する。ポリエステル系の場合には、分散塩で高圧ラピッド染色機にて染色を行う。
【0033】
最後に、染色製品に対して柔軟及び機能性薬剤加工等を行い、高品位の複合シート形スエード調人工皮革を製造する。
【0034】
本発明で製造した人工皮革は、その引長強度が35〜60kgfであり、8kgf荷重下で測定した静荷重伸び率が8〜25%であるので、強度及び伸び率特性が非常に優れ、且つ外力に対しても耐久性がある形態安全性を有するだけでなく、屈曲が多い部位の縫製及び装着作業性が容易である。本発明の人工皮革は形態安全性を要する高耐久性素材である家具用、車両用等に適している。
【0035】
本発明において人工皮革用複合シートの各種物性は下記方法で測定する。
【0036】
極細糸繊維の太さ及び纎度(デニール)測定
製造した人工皮革用複合シートの断面サンプルを取って、ゴールドコーティングのような準備工程を経る。注射電子顕微鏡(SEM)分析装備を通じて一定の倍率でサンプルの断面写真を撮った。写真上に現れた一本の極細糸繊維の直径を評価して実際値に換算した後、次のような数式を通じて纎度を求めた。
【0037】
繊度(デニール)=9πDρ/4000
【0038】
上式で、πは円周率であり、Dは極細糸繊維の断面直径(μm)であり、ρは極細糸繊維の密度値(g/cm)である。参考に、ナイロンの密度は1.14であり、ポリエチレンテレフタレートの密度は1.38である。
【0039】
静荷重伸び率(%)
幅50mm、長さ250mmのスエード調人工皮革用複合シートの試験片を縦方向及び横方向で各々3個ずつ取り、その中央部に距離100mmの表示線を引く。これをクランプ間隔150mmにして疲労試験機(*)に装着して、そっと78.4N(8kgf)の荷重(下部クランプの荷重を含む)を加える。荷重を加えたまま10分間放置して、表示線間の距離(l)を求めた後、次のような数式によって静荷重伸び率を求める。
【0040】
静荷重伸び率(%)=l−100
【0041】
上式でlは8kgの荷重を掛けて10分間放置後の表示線間の距離(mm)である。*疲労試験機は「マレンス(Marlens)疲労試験機」等を使用する。
【0042】
引長強度(kgf/50mm)
幅50mm、長さが略250mmの試験方を縦方向及び横方向に各々5枚ずつ取る。
【0043】
試験片の上部をデンシロン(Densiron)式またはこれに準ずる引長試験機に装着し、試験片を垂直線に一致させた状態で適当な初荷重を掛けて、クランプ間隔を150mmにする。
【0044】
初荷重は不自然なシワや、曲がりを平坦化するために必要な荷重をいう。特に指定しない原綿に対しては1.96N(200gf)とする。
【0045】
200mm/分の速度で引長し、5個の試験片を切断するのに要する荷重(kgf/50mm)を測定し、その平均値を求めた。
【0046】
本発明は強度及び伸び率特性に優れ、外力に対しても耐久性がある形態安全性を有し、屈曲が多い部位の縫製及び装着作業性が容易である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定するものではない。
【0048】
(実施例1)
繊維形成成分として70質量%のポリトリメチレンテレフタレートと、抽出成分として30質量%の共重合ポリエステルを放射および延伸工程を経て、総75デニールの太さを有する極細化可能な海島型複合長繊維を製造した。この時、長繊維のモノフィラメントは3.1デニールであり、モノフィラメント内極細糸繊維(繊維形成成分)の数を16個にした。これをまた静荷重伸び率を与えるために巻軸加工を行い、170℃でセットした。
【0049】
このように得た海島型複合長繊維を、撚糸機を利用してメートル当り650回の数で捻った後、織物製造時に経糸及び緯糸として使用した。これらの経糸と緯糸は経糸密度が70本/インチであり、緯糸密度が70本/インチである織物として製造した。織物の長さ(縦)方向の静荷重伸び率が20%であり、幅(横)方向の静荷重伸び率が22%であった。
【0050】
一方、繊維形成成分として70質量%のポリエチレンテレフタレートと、抽出成分として30質量%の共重合ポリエステルを放射、延伸、およびクリンプカット工程を経て、長さが51mmであり、纎度2.5デニールであり、モノフィラメント内の極細糸繊維(繊維形成成分)の数が36個である短繊維を製造した。一方、前述した短繊維にカード−クロスラッパー工程を経てウェブを形成し、ニードルパンチングを施すと共に、不織布を製造する途中に前述の織物と接合させて複合シートを形成した。続いて、不織布−織物複合シートを、10%濃度のポリビニールアルコール水溶液でパッド乾燥して繊維質量に対して10質量%になるように与えた。その直後に、ポリエーテルポリエステル共重合グリコールタイプのポリウレタン弾性体をジメチルホルムアミド(DMF)に希薄して濃度15%の含浸溶液を作った後、この溶液に複合シートを含浸した。その後、ポリウレタン水溶液の中で凝固させ、70℃の熱水溶液で水洗してポリビニールアルコール高分子を完全に除去して乾燥した。乾燥後のポリウレタンの含有量を35質量%にした。前述した繊維とポリウレタンで構成した複合シートを10%の苛性ソーダ水溶液に100℃で連続的に処理して、海成分共重合ポリエステルを完全除去し、島成分ポリエステル極細成分だけが残るように繊維を極細化させた。続いて、粗度#240番のサンドペーパーを使用して研磨加工することによって、極細糸繊維の一部を切断し、これを立て起こして毛羽を発現させ、人工皮革用強度及び伸び率特性に優れた複合シートを製造した。その後、堅牢度に優れた分散染料で、高圧ラピッド染色機で染色した後、還元洗浄して乾燥した。続いて、撥水剤及び帯電防止剤の処理工程及び毛端柔軟工程を経てスエード調人工皮革を製造した。前述したように製造したスエード調人工皮革の物性を評価し、その結果を下記表2に示す。
【0051】
(実施例2〜3及び比較例1〜2)
織物製造時に使用する経糸及び緯糸の種類と纎度を表1のように変更することを除いては、実施例1と同一の方法で複合シート形人工皮革を製造して物性を評価し、その結果を下記表2に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

*縦方向は人工皮革用複合シートを構成する織物または編物の経糸方向であり、横方向は織物または編物の緯糸方向である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は強度及び伸び率特性に優れ、外力に対しても耐久性がある形態安全性を有し、屈曲が多い部位の縫製及び装着作業性が容易である。
【0055】
このため、本発明は耐久性を要する家具用や車両用素材として有用である。
【0056】
一方、本明細書内で本発明をいくつかの好ましい実施形態によって記述したが、当業者ならば、添付の特許請求範囲に開示した本発明の範疇及び思想から外れずに、多くの変形及び修正がなされ得ることがわかるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太さが0.3デニール以下の極細単繊維が互いに絡みあっている不織布と、極細化されて前記不織布内前記不織布の極細短繊維に絡み合っており、経糸密度及び緯糸密度が40〜70本インチであり、8kgfの荷重下で測定した静荷重伸び率が10〜30%である織物又は編物と、からなる複合シートを含み、前記織物または編物が、極細化可能な海島型複合繊維の撚糸からなる前記経糸及び前記緯糸から構成され、前記海島型複合繊維の島成分の繊維はポリエチレンテレフタレート糸、ポリトリメチレンテレフタレート糸、ポリアミド糸、ポリウレタン糸、ポリエチレン糸及びポリプロピレン糸からなる群から選択された1種又は2種以上であって、前記織物又は前記複合シート内にはポリウレタンが充填され、35〜60kgf/50mmの縦方向及び横方向の引長強度と、8〜25%の縦方向及び横方向の静荷重伸び率を有することを特徴とする強度及び伸び率特性に優れた車両用または家具用のスエード調人工皮革。

【公開番号】特開2010−222776(P2010−222776A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115800(P2010−115800)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【分割の表示】特願2008−545501(P2008−545501)の分割
【原出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】