説明

強誘電性材料、混合酸化物、または酸化物多形の安定性の温度モジュレーションに基づく選択的ケモセンサー

本発明は、ドープした強誘電性材料を使用したガスセンサーに関する。センサーは、ガスサンプルの異なるガス相成分を検出するために、異なる部分のアレイが、別々に独立して制御される温度で操作できるアレイとして形成することができる。好適な態様は、糖尿病のような状態の診断に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月2日に出願された特許文献1の利益を主張し、その全内容は引用により本明細書に編入する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明はアメリカ国立科学財団により認可された認可番号DMR0304169の下に、政府支援でなされた。政府は本発明に特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
非特許文献1による「アセトン選択的検出のための強誘電性WOナノ粒子」に記載されたような化学センサーを使用したガスの検出法(この内容は全部、引用により本明細書に編入する)が開発された。しかしその精度を向上させるためには、特に診断的応用には、そのようなデバイスおよびデバイスの作成法および使用法にさらなる改良が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許仮出願第61/265,989号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Wang et al.,Chem.Mater.,20,4794−4796,2008
【発明の概要】
【0006】
要約
本発明はガスサンプルの成分を検出するためのセンサーの作成法および使用法に関する。VPOまたはCrをドープしたWOのようなドープした強誘電性材料は、センサーアレイを作成するために使用できる。センサーアレイは、抵抗発熱素子の1もしくは2次元(2D)マトリックスのようなヒーターアレイに熱的に連結させることができる。個々の発熱素子の温度は、各発熱素子の操作温度を調整するために別々に制御されることができる。ガスセンサーの作成に関する詳細は、Wang et al.による、「非侵襲的な糖尿病検出のためのアセトンナノセンサー」、アメリカ物理学会、第13回国際シンポジウム紀要、2009年5月23日、113巻(1号)、206〜208頁に見いだすことができ、この全内容は引用により本明細書に編入する。
【0007】
本発明の好適な態様は、医学的状態を診断するために、哺乳動物個体が吐き出したガスのようなガスサンプル中の種々の成分濃度の定量的測定を提供する。電子制御器により、第1の複数のセンサーアレイ素子を第1の温度または温度範囲に設定することができ、そして第2の複数のセンサーアレイ素子を第2の温度または温度範囲に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の好適な態様に従い、センサーの作成および使用法に関する流れの順序を具体的に説明する。
【0009】
詳細な説明
ヒトの呼気、汗、唾液、痰、尿、涙、すべての体からの排泄物中の代謝産物を選択的(識別的)に検出するための強誘電性の、そして混合酸化物ガスセンサー。結晶化学的な方法を使用して、種々のクラスのガスと酸化物の結晶学的配置との選択的なガスと酸化物の相互作用が達成された。炭化水素の選択的酸化触媒に基づき、エタンおよびイソプレンのようなバイマーカー間の識別を容易に行うことができる。一例はルチル酸化物構造によるエタンの選択的検出のために、触媒的ドープ剤としてバナジウム・リン酸化物(VPO)ナノ粒子の使用である。火炎噴霧式熱分解のような迅速に凝固するナノスケールの合成経路を使用して、バナジウム活性部位の効率的な分散を検出(sensing)表面にわたり配置することができる。
【0010】
強誘電性ε−WOナノ粒子による選択的なアセトン検出は、本発明の好適な態様で使用することができる。最近、強誘電性材料の表面化学に注目が集まった。例えばLiNbOおよび他の材料に基づく研究で、極性分子の双極子モーメントは、表面上の幾つかの強誘電性ドメインの電気分極と相互作用できることが示された。この相互作用は、材料表面上の分子吸着の強度を上げる。ここで好適な態様は、アセトンの選択的検出に重要な役割を果たすε−WOの非中心的構造を利用する。このε−WOは、自発的電気双極子モーメントを有する種類の強誘電性材料である。この極性は各[WO]八面体の中心からのタングステン原子の置換に由来する。一方、アセトンは他のガスよりもはるかに大きな双極性モーメントを有する。その結果、ε−WO表面の双極子とアセトン分子との間の相互作用は他のガスよりもはるかに強く、アセトン検出に対して観察される選択性を導く。
【0011】
単結晶(多形)二元酸化物を使用する好適な態様は、各センサー基盤に組み込まれた抵抗ヒーターの使用を介して、安定化熱処理および検出プロセスが起こる温度を単に個別に制御することにより、同時に数種のガス種を選択的に検出するためのマルチセンサーアレイを構築するために十分である。六方晶系のh−WO材料は、150℃でのNO(窒素酸化化合物)の選択的検出、および350℃でのイソプレンの選択的検出に使用することができる。個々のセンサー素子は発熱素子と対となり、2Dマトリックスアレイを形成することができる。
【0012】
作成し、続いて使用する方法(10)。センサーアレイは、図1と関連して具体的に説明する。ガスセンサーアレイは特定のガス種について選択した濃度で、強誘電性材料にドープ剤をドープすることにより形成することができる(12)。センサーアレイは表示するためにコンピューターに独立して読み出されることができる素子のマトリックスを有することができる。センサーアレイは抵抗発熱素子のアレイに付けることができ(14)、ここで各発熱素子の温度を独立して制御することができる(16)。別個のセンサーアレイ素子の温度を異なる第1および第2温度に、ヒーターアレイに連結された電子制御器を用いて調整することにより、例えば異なるガス成分の濃度を同時にまたは時系列で測定することができる(18)。結果はメモリーに保存でき、そして表示でき(20)、そして患者の診断に使用できる。
【0013】
特許請求の範囲は、その効果を述べない限り、記載した順序および要素に限定すると読むべきではない。したがって以下の特許請求の範囲の精神および範囲の中にあるすべての態様、およびそれに対する均等物が本発明として請求される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを検出する方法であって、
ガスサンプルの成分を測定するために、ドープした強誘電性材料を含むセンサー上にガスサンプルを送る工程を含む該検出する方法。
【請求項2】
さらにガスサンプルを、VPOをドープしたWO材料を含むセンサーを有するチャンバーに送る工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらにセンサー素子のアレイを使用して、ガス成分の濃度を検出する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらにセンサー素子の温度を制御するために、センサー素子のアレイに取り付けられたヒーターアレイを使用する工程を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
さらに第1ガス成分を検出するために第1センサー素子の温度を第1温度に調整する工程と、そして同時に第2ガス成分を検出するために、第2センサー素子の温度を第1温度とは異なる第2温度に調整する工程を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ヒーターアレイを使用する工程が、センサー素子のアレイに熱的に連結された発熱素子のマトリックスアレイの温度を個別に制御することを含む請求項4に記載の方法。
【請求項7】
さらに窒素酸化化合物(NO)の濃度を検出する工程を含む請求項5に記載の方法。
【請求項8】
さらにイソプレンの濃度を検出する工程を含む請求項5に記載の方法。
【請求項9】
さらに150℃で第1サンプルを検出する工程を含む請求項5に記載の方法。
【請求項10】
さらに350℃で第2サンプルを検出する工程を含む請求項5に記載の方法。
【請求項11】
さらにエタンの濃度を検出すること工程を含む請求項5に記載の方法。
【請求項12】
さらにアセトンの濃度を検出する工程を含む請求項5に記載の方法。
【請求項13】
さらに糖尿病のような医学的状態を検出するために、哺乳動物個体から吐き出されたガスサンプルを検出する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
さらに2Dマトリックスセンサーアレイの温度を電子制御器で調整する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
さらにガス成分の定量的濃度を検出する工程と、そしてデータをコンピューターのメモリーに記録する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記センサーが酸化タングステン化合物のナノ粒子を含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記センサーがε−WOを含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記センサーがh−WOを含む請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−513110(P2013−513110A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542184(P2012−542184)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/058719
【国際公開番号】WO2011/071746
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512145583)ザ・リサーチ・フアウンデーシヨン・オブ・ステイト・ユニバーシテイ・オブ・ニユーヨーク (2)
【Fターム(参考)】