説明

弾性の線状異形材、殊にウインドウワイパーブレード用のコーティング、およびその製造方法

弾性の線状異形材、殊にウインドウワイパーブレード用のコーティング、およびその製造方法。本発明は、弾性の線状異形材用のコーティングに関し、その際、該コーティングは、高分子マトリックス中に埋め込まれた固体潤滑剤を包含する。さらに本発明は、そのようなコーティングを包含する、ウインドウワイパー用のワイパーブレードならびに本発明によりコーティングされた弾性の線状異形材の製造方法に関する。埋め込まれた固体潤滑剤を有する高分子マトリックスは、高分子バインダーの不在下で固体潤滑剤および低分子量架橋剤を包含する混合物を重合することによって得られる。一実施例において、該マトリックスは低分子量架橋剤ヘキサメトキシメチルメラミンの熱重合から得られる。固体潤滑剤のための例は、グラファイトおよびHDPEである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性の線状異形材用のコーティングに関し、その際、該コーティングは、高分子マトリックス中に埋め込まれた固体潤滑剤を包含する。さらに本発明は、そのようなコーティングを包含する、ウインドウワイパー用のワイパーブレードならびに本発明によりコーティングされた弾性の線状異形材の製造方法に関する。
【0002】
従来技術
ウインドウワイパー用のワイパーブレードは、一般的に自動車のウインドウシールドの輪郭に合わせられることができ、かつ種々の温度で十分に柔軟性であり続ける。それゆえワイパーブレードは一般に、エラストマー異形材およびゴム材料、例えば天然ゴムまたはクロロプレンから製造される。そのうえワイパーブレードは、シリコーンゴムまたはポリウレタンゴムのような材料から作製されていてよい。
【0003】
その他の素材、例えばガラスまたはプラスチックと比較して、エラストマーは高い動摩擦係数を有する。ウインドウウワイパーのワイパーブレードの場合、該ウインドウワイパーの水平運動のためにウインドウシールドを伝って加えられなければならない力は、垂直に該ウインドウシールドとの接触によって該ワイパーブレードの異形材に及ぼされる接触力の何倍もの力である。摩擦を減らすために、該ワイパーブレードに低い摩擦係数を有するコーティングが備えられることができる。
【0004】
疎水性特性を備え付けているウインドウシールド上でワイパーブレードは頻繁に使用される。疎水性ウインドウシールド上で、ワイパーブレードは、例えば滑りに際して乾燥した表面の上を挙動する。該ウインドウシールドの防水性の表面によって、該表面と該ワイパーブレードとの間で摩擦を減らす水膜は形成され得ない。ワイパーブレード用の付加的なコーティングは、つまり、滑り特性、耐摩滅性および縞のないワイピングに関しての要求を満たさなければならない。
【0005】
ワイパーブレード用の通常のコーティングは、該ウインドウ表面への該ワイパーブレードの摩擦係数を減らすために、グラファイトまたは二硫化モリブデンを粒子状の固体潤滑剤として含んでいる。グラファイトの固体潤滑剤としての作用は、大部分が該コーティング中でのその相対的な濃度に依存する。
【0006】
粒子状のグラファイトを潤滑剤として有する公知のコーティングの欠点は、軟質性およびグラファイト粒子の必要とされる高い相対的な割合ゆえに、該コーティング中で相互の付着力が減少することである。そのため該コーティングの摩滅は作動中に高まる。要求される低い摩擦係数を達成するために、該コーティングのグラファイト割合は、一般に臨界顔料体積濃度より高く調節される。従って、凝集力は減少し、かつ該コーティングの抵抗力は低下する。
【0007】
耐摩滅性を高めるための硬質の固体潤滑剤の使用は、縞形成および条痕形成によるワイパー品質のさらなる悪化につながる。グラファイト割合の、例えば30%を下回る値への低下は、個々のグラファイト粒子の表面が主にバインダーによりコーティングされることにつながる。これによってグラファイトの潤滑作用は弱まり、かつ、そうして該コーティングの摩擦係数は高まることになる。
【0008】
US2003/0087767A1は、リップ部の両表面に被膜を有するワイパーブレードゴムを開示しており、その際、該被膜は、粒子状の固体潤滑剤とバインダーとを有する。該バインダーは、乾燥または硬化後に0.5%モジュラス(1MPa以上)および1%以上の破断伸びを有する。この刊行物に記載されるバインダーは、この場合、すでに高分子の形で存在する。コーティングのために、それは溶媒に溶解され、かつワイパーブレードに塗布される。場合により先行して行われる硬化剤を用いた架橋後に、該溶媒は取り除かれ、かつ完成したコーティングが形成される。この文献は、しかしながら、該コーティングの耐摩耗性、ひいては該ワイパーブレードの寿命期間について詳しく述べていない。経済的な見地から、該バインダーおよび該固体潤滑剤を該ワイパーブレード上に塗布するために、主として有機溶媒が使用されなければならない場合に欠点である。有機溶媒の主立った使用は、さらに環境保護の観点から所望されていない。
【0009】
発明の開示
本発明により提案されるのは、弾性の線状異形材用のコーティングであり、その際、該コーティングは、高分子マトリックス中に埋め込まれた固体潤滑剤を包含し、かつ、その際、埋め込まれた固体潤滑剤を有する該高分子マトリックスは、高分子バインダーの不在下で固体潤滑剤および低分子量架橋剤を包含する混合物を重合することによって得られることができる。
【0010】
高分子バインダーは、ここでは、その分子が≧1000g/molの分子量を有するバインダーを表す。そのような高分子バインダーの不在が意味するのは、該高分子バインダーが存在しないか、または技術的に不可避な量でしか存在しないことである。例えば、その含有率は≦0.1質量%または≦0.01質量%であってよい。
【0011】
本発明の意味における低分子量架橋剤は、少なくとも二官能性のモノマー化合物またはオリゴマー化合物である。その分子量は≦1000g/mol、好ましくは500g/molである。反応基によって架橋剤分子は相互に結合を形成してよい。該反応基は、加熱に際して初めて遊離し、そして反応を起こすようにブロックされて存在していてもよい。該架橋剤の重合は、例えば熱的、ラジカル的または放射線誘起により進行してよい。該重合の概念に一緒に含まれるのは、重縮合反応および重付加反応である。該重合の終了後に、固体潤滑剤が埋め込まれている高分子マトリックスが存在する。該固体潤滑剤は、好ましくは粒子の形で存在することになる。そうして平均粒径は≧0.1μm〜≦15μmであってよい。
【0012】
本発明により、高い含有率で存在する軟質の固体潤滑剤と耐摩耗性のマトリックスとのそれ自体矛盾した要求は、該マトリックスの合成に高分子バインダーを省き、かつ、その代わりに架橋剤自体を重合することによって合致させることができることが認められた。マトリックスに対する固体潤滑剤の体積比が高い場合ですら、固体潤滑剤を結合するために該マトリックス内部で十分な凝集力が存在する。同時に該マトリックスは非常に安定しているので、耐摩耗性が改善される。高分子バインダーを省くことによって、配量されるべき成分が存在しなくなるので製造方法が簡略化され得る。
【0013】
該コーティングの一実施態様において、該固体潤滑剤の材料は、グラファイト、二硫化モリブデン、六方晶窒化ホウ素、ガラス微小球、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンを包含する群から選択されている。特に有利なのは、この場合、巨視的結晶質の天然のグラファイトである。なぜなら、これはその鱗状の構造に基づき特に低い摩擦係数を担うものだからである。同様に有利なのは、巨視的結晶質の天然のグラファイトと高密度ポリエチレン(HDPE)とからなる組み合わせである。
【0014】
該コーティングのさらなる一実施態様において、該低分子量架橋剤は、完全にアルコキシ化されたメラミン誘導体、部分的にアルコキシ化されたメラミン誘導体および/またはヘキサメトキシメチルメラミンを包含する群から選択されている。特に有利なのは、この場合、ヘキサメトキシメチルメラミンである。この挙げられた架橋剤は、バインダーなしでも、適切に実現されるべき処理条件下でマトリックスへと重合され得る。得られたマトリックスは、固体潤滑剤に対する必要な凝集力を有し、かつ同時に耐摩滅性に不可欠の硬度を有する。そのうえこれらの架橋剤は、場合により共溶媒と一緒に水に可溶性であってもよいという利点を有する。
【0015】
該コーティングのさらなる一実施態様において、高分子マトリックス中で重合架橋剤に対する固体潤滑剤の相体積の比は、≧0.3〜≦9.0の範囲にある。該比は、≧0.4〜≦3.0または≧1.0〜≦1.5の範囲にあってもよい。そのような体積比の場合、特に良好な潤滑特性と同時に耐摩滅性が達成される。
【0016】
さらに本発明の対象は、本発明に従うコーティングを包含する、ウインドウワイパー用のワイパーブレードである。該ワイパーブレードの基本材料は、例えばゴム、クロロプレン、シリコーンゴム、弾性ポリウレタンまたはその他のエラストマーであってよい。本発明によるコーティングは、好ましくは乾燥および完全硬化後に、≧1μm〜≦10μmの、≧2μm〜≦8μmの、または≧4μm〜≦6μmの膜厚で存在していてよい。
【0017】
ウインドウワイパー用の該ワイパーブレードの一実施態様において、重合コーティングおよび/または未コーティング表面に、固体潤滑剤を包含するさらなる層が配置されている。該固体潤滑剤は、この層では、架橋高分子マトリックス中には埋め込まれていない。該固体潤滑剤は固定されていないことによって、それはコーティング表面と、何よりも未コーティング表面にわたって、より素早くかつ均一に分散し得る。そのようなワイパーブレードは、まず該ワイパーブレードの2部分からなる異形材(Doppelprofil)に、本発明による架橋コーティングを備え、次いで該異形材を2本の単独異形材に切り離すことによって得られることができる。この場合、切断面は、該ウインドウワイパーの作動に際して該ウインドウシールド上に載置かれる面である。乾燥されたさらなる層の組成は、未架橋バインダーが、例えば≧4質量%〜≦15質量%、増粘剤が≧0.5質量%〜≦4質量%、界面活性剤が≧1.0質量%〜≦11質量%およびグラファイトが≧80質量%〜≦90質量%であってよい。
【0018】
さらに本発明は、以下の工程:
a) 固体潤滑剤および低分子量架橋剤を包含する混合物を異形材に塗布する工程
b) ≧100℃〜≦200℃の温度に加熱する工程
を包含する、該異形材に請求項1から4までのいずれか1項記載のコーティングを備える、コーティングされた弾性の線状異形材の製造方法に関する。
【0019】
工程a)では、エラストマー異形材がコーティングされる。これは、なかでも浸漬または噴霧によって行ってよい。塗布されるべき混合物中の固体潤滑剤の割合は、例えば≧5質量%〜≦25質量%または≧9質量%〜≦21質量%であってよい。低分子量の重合性架橋剤は、例えば≧5質量%〜≦15質量%または≧7質量%〜≦10質量%の割合であってよい。
【0020】
工程b)では、低分子量の重合性架橋剤は熱重合される。これによって固体潤滑剤粒子を埋め込んでいるポリマーマトリックスが形成され得る。該熱重合は、≧3分〜≦25分または≧10分〜≦15分のあいだ実施してよい。この加熱は、≧140℃〜≦160℃の温度でも行ってよい。該溶媒を該コーティング混合物から取り除くために、付加的に熱重合前に乾燥工程を前接続してよい。
【0021】
該方法の一実施態様において、工程a)からの混合物中で、該固体潤滑剤の材料は、グラファイト、二硫化モリブデン、六方晶窒化ホウ素、ガラス微小球、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンを包含する群から選択されている。さらに工程a)からの混合物中で、低分子量架橋剤は、完全にアルコキシ化されたメラミン誘導体、部分的にアルコキシ化されたメラミン誘導体および/またはヘキサメトキシメチルメラミンを包含する群から選択されている。これらの材料の選択の利点は、すでに上記で説明した。
【0022】
該方法のさらなる一実施態様において、工程a)からの該混合物は、さらにポリアクリレート増粘剤、ブチルグリコールおよび水を包含する。水は、環境保護、方法安全性の理由から、およびコストの理由から有利な主要な溶媒である。例えば該コーティング混合物中で、水は、≧50質量%〜≦90質量%または≧60質量%〜≦80質量%の割合であってよい。ブチルグリコールは、低分子量架橋剤、例えば殊にヘキサメトキシメチルメラミンが溶液状態に維持され得るように共溶媒として用いられる例えば該コーティング混合物中で、ブチルグリコールは、≧10質量%〜≦20質量%または≧14質量%〜≦16質量%の割合であってよい。ポリアクリレート増粘剤は、非極性基材表面上にも連続したコーティングを構築することができるように該コーティング混合物の粘度を調節するのに用いられる。さらに高められた粘度に基づき、該グラファイト粒子は、より良好に分散状態に維持される。例えば該コーティング混合物中で、増粘剤は、≧1質量%〜≦5質量%または≧2質量%〜≦3質量%の割合であってよい。
【0023】
該方法のさらなる一実施態様において、工程b)での加熱後に、重合コーティングおよび/または未コーティング表面に固体潤滑剤を包含する混合物が塗布される。さらにコーティングされた異形材は、≧50℃〜≦100℃の温度で乾燥される。例えばこれは、前もってコーティングされた2部分からなる異形材を2本の単独異形材に切り離した後に行ってよい。その時に、この未コーティング表面は切断面である。該温度は、バインダーの架橋が生じずに、溶媒のみが混合物から出てくるように選択される。さらなる適した温度範囲は、≧80℃〜≦90℃である。該固体潤滑剤は固定されていないことによって、それはコーティング表面にわたって、そして何よりも未コーティングの切断表面にわたって、より素早くかつ均一に分散し得る。
【0024】
本発明を、以下の例を基にしてさらに説明する。
【0025】
例1
メチル化イミノメラミンアミノ樹脂、潤滑剤グラファイト充填剤および増粘剤を包含する水性コーティング組成物をエラストマー基材に塗布した。該コーティング組成物は、次の配合を有していた:
質量割合
Cymel 303 10.0
グラファイト 9.0
ポリアクリレート増粘剤 3.0
ブチルグリコール 14.0
脱イオン水 64.0
計: 100.0
Cymel 303は、Cytec社のヘキサメトキシメチルメラミンの商品名である。
【0026】
この例でのエラストマー基材は、塩素化ゴム混合物から射出成形によって得られたワイパーブレードの2部分からなる異形材であった。溶媒を取り除くための最初の乾燥後に、該2部分からなる異形材を150℃で10分間完全硬化した。グラファイト成分およびポリマーマトリックス成分の次の組成を有する4μmの厚さの膜を得た:
質量% 体積%
重合Cymel 303の固体部分 51.5 67.4
グラファイトの固体部分 47.3 31.0
増粘剤 1.2 1.6
計: 100.0 100.0
完全硬化後に、該2部分からなる異形材を2本の単独異形材に切り離した。この切断面の試験の結果から、損傷または該切断面からの該コーティングの剥落は判明しなかった。
【0027】
ここで重合架橋剤に対するグラファイトの体積相の比は0.46であった。これによって該コーティングの良好な滑り特性が得られた。該グラファイト粒子はポリマーマトリックスによって互いにしっかりと結合されており、そのことによって疎水性のみならず親水性のウインドウ表面上でも良好な摩耗強さが得られた。
【0028】
例2
メチル化イミノメラミンアミノ樹脂、潤滑剤グラファイト充填剤および増粘剤を包含する水性コーティング組成物をエラストマー基材に塗布した。該コーティング組成物は、次の配合を有していた:
質量割合
Cymel 303 10.0
グラファイト 21.0
ポリアクリレート増粘剤 3.0
ブチルグリコール 14.0
脱イオン水 52.0
計: 100.0
【0029】
この例でのエラストマー基材は、塩素化ゴム混合物から射出成形によって得られたワイパーブレードの2部分からなる異形材であった。溶媒を取り除くための最初の乾燥後に、該2部分からなる異形材を150℃で10分間完全硬化した。グラファイト成分およびポリマーマトリックス成分の次の組成を有する4μmの厚さの膜を得た:
質量% 体積%
重合Cymel 303の固体部分 31.6 47.7
グラファイトの固体部分 67.7 51.2
増粘剤 0.7 1.1
計: 100.0 100.0
完全硬化後に、該2部分からなる異形材を2本の単独異形材に切り離した。この切断面の試験の結果から、損傷または該切断面からの該コーティングの剥落は判明しなかった。
【0030】
ここで重合架橋剤に対するグラファイトの体積相の比は1.08に高まった。これによって該コーティングの良好な滑り特性が得られた。該グラファイト粒子はポリマーマトリックスによって依然として互いにしっかりと結合されており、そのことによって疎水性のみならず親水性のウインドウ表面上でも良好な摩耗強さが得られた。
【0031】
例3
メチル化イミノメラミンアミノ樹脂、潤滑剤グラファイト充填剤、ポリエチレン分散液および増粘剤を包含する水性コーティング組成物をエラストマー基材に塗布した。該コーティング組成物は、次の配合を有していた:
質量割合
Cymel 303 10.0
グラファイト 9.0
HDPE分散液 8.8
ポリアクリレート増粘剤 3.0
ブチルグリコール 15.8
脱イオン水 72.4
計: 119.0
該高密度ポリエチレン(HDPE)の分散液は35%の固体含有率を有していた。
【0032】
この例でのエラストマー基材は、塩素化ゴム混合物から射出成形によって得られたワイパーブレードの2部分からなる異形材であった。溶媒を取り除くための最初の乾燥後に、該2部分からなる異形材を150℃で10分間完全硬化した。潤滑剤成分およびポリマーマトリックス成分の次の組成を有する4μmの厚さの膜を得た:
質量% 体積%
重合Cymel 303の固体部分 44.3 55.6
グラファイトの固体部分 40.7 25.5
HDPEの固体部分 14.0 17.6
増粘剤 1.0 1.3
計: 100.0 100.0
完全硬化後に、該2部分からなる異形材を2本の単独異形材に切り離した。この切断面の試験の結果から、損傷または該切断面からの該コーティングの剥落は判明しなかった。
【0033】
ここで重合架橋剤に対する潤滑剤(グラファイトおよびHDPE)の体積相の比は0.78であった。これによって該コーティングの良好な滑り特性が得られた。該グラファイト粒子は、ポリマーマトリックスによって互いにしっかりと結合されており、そのことによって疎水性のみならず親水性のウインドウ表面上でも良好な摩耗強さが得られた。
【0034】
例4
メチル化イミノメラミンアミノ樹脂、潤滑剤グラファイト充填剤、ポリエチレン分散液および増粘剤を包含する水性コーティング組成物をエラストマー基材に塗布した。該コーティング組成物は、次の配合を有していた:
質量割合
Cymel 303 7.0
グラファイト 9.0
HDPE分散液 8.8
ポリアクリレート増粘剤 2.5
ブチルグリコール 15.8
脱イオン水 56.9
計: 100.0
該高密度ポリエチレン(HDPE)の分散液は35%の固体含有率を有していた。
【0035】
この例でのエラストマー基材は、塩素化ゴム混合物から射出成形によって得られたワイパーブレードの2部分からなる異形材であった。溶媒を取り除くための最初の乾燥後に、該2部分からなる異形材を150℃で10分間完全硬化した。潤滑剤成分およびポリマーマトリックス成分の次の組成を有する4μmの厚さの膜を得た:
質量% 体積%
重合Cymel 303の固体部分 35.9 46.9
グラファイトの固体部分 47.0 30.8
HDPEの固体部分 16.1 21.0
増粘剤 1.0 1.3
計: 100.0 100.0
完全硬化後に、該2部分からなる異形材を2本の単独異形材に切り離した。この切断面の試験の結果から、損傷または該切断面からの該コーティングの剥落は判明しなかった。
【0036】
ここで重合架橋剤に対する潤滑剤(グラファイトおよびHDPE)の体積相の比は1.10に高まった。これによって該コーティングの良好な滑り特性が得られた。該グラファイト粒子はポリマーマトリックスによって互いにしっかりと結合されており、そのことによって疎水性のみならず親水性のウインドウ表面上でも良好な摩耗強さが得られた。
【0037】
例5
例1に記載されるコーティングを塗布し、かつ完全硬化した。この2部分からなる異形材を単独異形材へと切断および分離した後、該単独異形材にグラファイト分散液を噴霧した。初めに塗布したグラファイトを含有する重合コーティングは、その時にベース層として作用した。該グラファイト分散液は、水性溶媒を取り除くために90℃で乾燥させた。該ベース層のみならず該単独異形材の切断面も覆う未架橋の被覆層が得られた。乾燥された該被覆層は、ポリマーバインダー4.6質量%、増粘剤3.4質量%、界面活性剤10.2質量%およびグラファイト81.8質量%を含有していた。
【0038】
これらの二重にコーティングされたワイパーブレードを、疎水性の自動車ウインドウシールド上で30分間試験した。雨天をシミュレートするために、水を該ウインドウに噴霧した。記録されるびびり振幅(Ratter-Amplituden)は8mm未満で該テスト期間中ずっと一定の低い水準に保たれる。該ワイパーブレードは滑らかに作動し、かつウインドウシールド上で異音を生じなかった。該ワイパー品質は非常に優れた状態を維持していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性の線状異形材用のコーティングであって、その際、該コーティングが、高分子マトリックス中に埋め込まれた固体潤滑剤を包含する弾性の線状異形材用のコーティングにおいて、埋め込まれた固体潤滑剤を有する該高分子マトリックスが、高分子バインダーの不在下で該固体潤滑剤および低分子量架橋剤を包含する混合物を重合することによって得られることを特徴とする、弾性の線状異形材用のコーティング。
【請求項2】
前記固体潤滑剤の材料が、グラファイト、二硫化モリブデン、六方晶窒化ホウ素、ガラス微小球、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンを包含する群から選択されている、請求項1記載のコーティング。
【請求項3】
前記低分子量架橋剤が、完全にアルコキシ化されたメラミン誘導体、部分的にアルコキシ化されたメラミン誘導体および/またはヘキサメトキシメチルメラミンを包含する群から選択されている、請求項1または2記載のコーティング。
【請求項4】
前記ポリマーマトリックス中で、重合架橋剤に対する固体潤滑剤の相体積の比が、≧0.3〜≦9.0の範囲にある、請求項1から3までのいずれか1項記載のコーティング。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載のコーティングを包含する、ウインドウワイパー用のワイパーブレード。
【請求項6】
請求項5記載のウインドウワイパー用のワイパーブレードであって、前記重合コーティングおよび/または未コーティング表面に、固体潤滑剤を包含するさらなる層が配置されており、かつ該固体潤滑剤は、この層では、架橋高分子マトリックスには埋め込まれていない、請求項5記載のウインドウワイパー用のワイパーブレード。
【請求項7】
異形材に請求項1から4までのいずれか1項記載のコーティングを備える、コーティングされた弾性の線状異形材の製造方法であって、以下の工程:
a) 固体潤滑剤および低分子量架橋剤を包含する混合物を該異形材に塗布する工程
b) ≧100℃〜≦200℃の温度に加熱する工程
を包含する、コーティングされた弾性の線状異形材の製造方法。
【請求項8】
工程a)からの前記混合物中で、前記固体潤滑剤の材料が、グラファイト、二硫化モリブデン、六方晶窒化ホウ素、ガラス微小球、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンを包含する群から選択されており、かつ、さらに工程a)からの前記混合物中で、前記低分子量架橋剤が、完全にアルコキシ化されたメラミン誘導体、部分的にアルコキシ化されたメラミン誘導体および/またはヘキサメトキシメチルメラミンを包含する群から選択されている、請求項7記載の方法。
【請求項9】
工程a)からの前記混合物が、さらにポリアクリレート増粘剤、ブチルグリコールおよび水を包含する、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
さらに工程b)での前記加熱後に、重合コーティングおよび/または未コーティング表面に、固体潤滑剤を包含する混合物を塗布し、かつ、該コーティングされた異形材を、≧50℃〜≦100℃の温度で乾燥させる、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2011−516645(P2011−516645A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502308(P2011−502308)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051267
【国際公開番号】WO2009/121651
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】