説明

弾性ローラ、定着装置及び画像形成装置

【課題】例えば画像形成装置の定着装置に装着されたときに、高品質の画像を長期間にわたって形成することに貢献すると共に、定着装置の耐久性向上にも貢献する弾性ローラ、並びに、この弾性ローラを備えた定着装置及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】軸体2の外周面に形成された発泡弾性層3と、発泡弾性層3の両端部3A及び3Bそれぞれが軸線方向に突出するように、発泡弾性層3の外周面に設けられたスリーブ4と、スリーブ4の外径以下の外径を有し、スリーブ4から突出した発泡弾性層3の両端部3A及び3Bに形成された端部接着剤層6とを備えたことを特徴とする弾性ローラ1、並びに、この弾性ローラ1を備えたことを特徴とする定着装置及び画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性ローラ、定着装置及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、例えば画像形成装置の定着装置に装着されたときに、高品質の画像を長期間にわたって形成することに貢献すると共に、定着装置の耐久性向上にも貢献する弾性ローラ、並びに、この弾性ローラを備えた定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。各種の画像形成装置は、記録体に転写された現像剤像を定着させるため、内部に発熱体等の加熱手段を内蔵した定着ローラ等を装備した定着装置等を備えている。このような定着装置は、内部に加熱手段を内蔵した定着ローラを備えているから、通常、予熱時間が比較的長く、その構成が複雑であり、加熱手段のみを交換することが困難である等の問題が生じることがある。
【0003】
これら問題の少なくとも1つの問題を解決し得る定着装置として、定着ローラ等に外部から熱を供給する外部加熱手段を備えた定着装置が挙げられる。このような外部加熱手段として、例えば、ハロゲンヒータ等の輻射加熱手段、接触等による直接加熱手段、交流磁場形成による誘導加熱手段等が挙げられる。これらの外部加熱手段を備えた定着装置は、外部加熱手段からの熱によって定着ローラが効率的に加熱されるように、定着ローラは、被加熱部品として、例えば、弾性層の外周面に金属製被膜等を備えている。例えば、特許文献1には、「内部に弾性体層を含み、その外部に厚さ10〜150μmの金属スリーブを設けたことを特徴とする」加熱用回転体が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、特許文献1に記載の加熱用回転体における金属スリーブの「端部に割れが発生せずに長期間に渡り使用可能な状態を継続させることの出来る定着用ローラ」(特許文献2の0017欄参照。)として、「芯金と、この芯金の外周にこれを取り巻くように配設されたスポンジ層と、このスポンジ層の外周に被覆された金属製薄肉スリーブと、を具備し、前記金属製薄肉スリーブの端部が、前記スポンジ層の端部より軸方向に沿って外方に突出しない状態で位置していることを特徴とする定着用ローラ」が記載されている(特許文献2の請求項1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−129313号公報
【特許文献2】特開2004−205814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、例えば画像形成装置の定着装置に装着されたときに、高品質の画像を長期間にわたって形成することに貢献すると共に、定着装置の耐久性向上にも貢献する弾性ローラを提供することを、目的とする。また、この発明は、高品質の画像を長期間にわたって形成することに貢献する耐久性に優れた定着装置を提供することを、目的とする。さらに、この発明は、高品質の画像を長期間にわたって形成することのできる画像形成装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、軸体の外周面に形成された発泡弾性層と、前記発泡弾性層の両端部それぞれが軸線方向に突出するように、前記発泡弾性層の外周面に設けられたスリーブと、前記スリーブの外径以下の外径を有し、前記スリーブから突出した前記発泡弾性層の前記両端部に形成された端部接着剤層とを備えたことを特徴とする弾性ローラであり、
請求項2は、前記発泡弾性層と前記スリーブとの間に接着剤層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の弾性ローラであり、
請求項3は、前記端部接着剤層は、その端部に向かって次第に減少する外径を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性ローラであり、
請求項4は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性ローラを備えた定着装置であり、
請求項5は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性ローラを備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る弾性ローラは、スリーブの外径以下の外径を有し、スリーブから突出した発泡弾性層における両端部にそれぞれ形成された端部接着剤層とを備えているから、繰り返し高速で回転駆動され、停止されても、形成された端部接着剤層によってスリーブの端部が剥離することを防止することができる。その結果、この発明に係る弾性ローラは、高品質の画像を形成することに貢献することができるうえ、発泡弾性層及びスリーブが破損しにくいから、弾性ローラ自体の耐久性に優れると共に、装着された定着装置における被当接体を破壊する可能性もきわめて小さい。したがって、この発明によれば、例えば画像形成装置の定着装置に装着されたときに、高品質の画像を長期間にわたって形成することに貢献すると共に、定着装置の耐久性向上にも貢献する弾性ローラを提供することができる。
【0009】
また、この発明に係る定着装置及び画像形成装置はこの発明に係る弾性ローラを備えているから、この発明によれば、高品質の画像を長期間にわたって形成することに貢献する耐久性に優れた定着装置、及び、高品質の画像を長期間にわたって形成することのできる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明に係る弾性ローラの一実施例としての弾性ローラ1Aは、図1及び図2に示されるように、軸体2の外周面に形成された発泡弾性層3と、発泡弾性層3の両端部3A及び3Bそれぞれが軸線方向に突出するように、発泡弾性層3の外周面に設けられたスリーブ4と、スリーブ4の外径以下の外径を有し、スリーブ4から突出した発泡弾性層3における両端部3A及び3Bの外周面にそれぞれ形成された端部接着剤層6とを備えて成る。
【0011】
前記軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、所謂「芯金」とも称される。
【0012】
発泡弾性層3は、後述するゴム組成物によって、軸体2の外周面に形成されている。この発泡弾性層3は、その内部及び/又は外表面にセルを有する発泡弾性層とされる(図1において弾性層3の外周面に開口したセル、及び、図2において弾性層3の断面に開口したセルは、いずれも図示しない。)。発泡弾性層3がセルを有すると、発泡弾性層3の硬度が低下して、弾性ローラ1の機能が向上するから、高品質の画像を形成することに貢献することができる。ここで、発泡弾性層3に有するセルは、ゴム組成物に含有される発泡剤の発泡又は分解等によって生じる中空領域、及び、ゴム組成物に含有される中空充填材等に由来する中空領域をいう。発泡弾性層3に有する複数のセルは、他のセルに接することのない若しくは連通することのない状態(独立セル状態と称する。)、他のセルに接し若しくは連通している状態(連通セル状態と称する。)、又は、前記独立セル状態と前記連通セル状態とが共存する状態の何れの状態にあってもよい。発泡弾性層3は、画像形成装置に用いられる各種ローラに応じて、セルの大きさ、存在率等が決定される。
【0013】
発泡弾性層3におけるセルの平均セル径は、例えば、60〜800μmであるのが好ましく、100〜400μmであるのが特に好ましい。セルの平均セル径が前記範囲であると、後述する接着剤を発泡弾性層3の外周面に塗布したときに接着剤がセル内に速やかに浸入し、接着剤層5が発泡弾性層3の外周面に強固に形成される。発泡弾性層3におけるセルは、そのセル壁の平均幅が0.01〜0.5mmであるのが好ましく、0.05〜0.4mmであるのが特に好ましい。セル壁の平均幅が前記範囲であると、接着剤層5が発泡弾性層3の外周面に強固に形成されると共に、後述する圧力環境下におかれても、発泡弾性層3における発泡構造が損傷、亀裂及び破壊することを効果的に防止することができる。また、発泡弾性層3における発泡率は150〜480%であるのが好ましく200〜450%であるのが特に好ましい。発泡率が前記範囲であると、接着剤層5が発泡弾性層3の外周面に強固に形成されると共に、後述する圧力環境下におかれても、発泡弾性層3における発泡構造が損傷、亀裂及び破壊することを効果的に防止することができる。セルにおける、平均セル径、セル壁の平均幅及び発泡率は、発泡弾性層3を形成する後述するゴム組成物に含有される発泡剤又は中空充填剤の配合量、中空充填剤の大きさ、ゴム組成物の硬化条件等により、調整することができる。
【0014】
セルの平均セル径は、発泡弾性層3の表面又は任意の面で切断したときの切断面において、約2mmの領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する各セルにおける開口部の最大長さを測定して、測定された最大長さを算術平均して得られた平均長さとして、求めることができる。セルにおけるセル壁の平均幅は、前記平均セル径と同様に、弾性層3の表面又は弾性層3を任意の面で切断したときの切断面において、約2mmの領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在するセルとセルとの間隔、すなわち、セルとセルとの間にある壁の幅を測定し、測定された値を算術平均することによって、求めることができる。発泡弾性層3の発泡率は、発泡弾性層3の体積及び質量を常法によって測定し、これらから算出することができる。
【0015】
発泡弾性層3は、20〜60のアスカーC硬度を有するのが好ましい。アスカーC硬度が前記範囲であると、被当接体に対する所望の当接状態又は圧接状態を保持することができるから、高品質の画像を形成することに貢献することができる。例えば、弾性ローラ1を定着ローラとして画像形成装置に装着する場合には、加圧ローラに対して所望の圧接状態を保持して、加圧ローラと定着ローラとで形成されるニップ幅を大きくすることができるから、記録体に転写された現像剤像を所望のように定着させることができ、その結果、高品質の画像を形成することに貢献することができる。アスカーC硬度は、JIS K6253に準拠して、発泡弾性層3の複数箇所を測定し、測定値を算術平均した値とすることができる。発泡弾性層3のアスカーC硬度は、例えば、発泡弾性層3を形成するゴム組成物に含有されるゴム及び/若しくは添加剤の種類を選択し、並びに/又は、それらの配合量等を変更することにより、また、発泡弾性層3の成形条件等により、調整することができる。
【0016】
発泡弾性層3の厚さは特に限定されないが、通常、2〜20mmに調整されるのが好ましく、3〜12mmに調整されるのが特に好ましい。
【0017】
前記スリーブ4は、接着剤層5の外周面に設けられている。スリーブ4は、例えば、鉄、ステンレス鋼、ニッケル等の高い熱伝導を有する金属材料で形成され、一層構造とされても、二層以上が積層された積層構造とされてもよい。スリーブ4は、一層構造であっても積層構造であっても、通常、薄層に形成され、例えば、その全体の厚さは、20〜150μmであるのが好ましく、30〜100μmであるのが特に好ましい。このスリーブ4は、800〜1300MPa程度の引張強度を有しているのが、発泡弾性層3の内周面からの圧接により変形しにくくなる点で、好ましい。前記引張強度の測定方法は、JIS Z 2241に準拠する。
【0018】
このスリーブ4は、その軸線方向の長さが発泡弾性層3の軸線方向の長さよりも短く調整されている。スリーブ4の軸線方向の長さは、スリーブ4から突出した発泡弾性層3の両端部3A及び3Bに後述する端部接着剤層6を形成することのできる程度の長さを確保することができる長さであればよく、例えば発泡弾性層3の軸線方向の長さに対して、90〜97%程度に調整される。そして、スリーブ4は、図1及び図2に示されるように、発泡弾性層3の両端部3A及び3B、好ましくは、発泡弾性層3の両端部3A及び3B近傍の領域がそれぞれ、スリーブ4の両端部から突出するように、換言すると、発泡弾性層3がスリーブ4を貫通するように、発泡弾性層3の外周面に設けられている。
【0019】
図1及び図2に示されるように、前記端部接着剤層6は、スリーブ4から突出した発泡弾性層3の両端部3A及び3B近傍の領域における外周面に、スリーブ4の端部と接し、かつ、発泡弾性層3の端部手前まで、形成されている。このように発泡弾性層3の両端部3A及び3B近傍の領域における外周面に端部接着剤層6が形成されていると、スリーブ4の端部が端部接着剤層6によって発泡弾性層3に強固に接着されることができるから、弾性ローラ1Aが定着装置に装着されて、繰り返し高速で回転駆動され、停止されても、スリーブ4の端部が発泡弾性層3の表面から剥離することを効果的に防止することができ、それ故、発泡弾性層3における両端部3A及び3Bに亀裂が生じ、発泡弾性層3の発泡構造が破損、損傷等することを防止することができる。
【0020】
端部接着剤層6は、スリーブ4の外径以下の外径を有している。このように端部接着剤層6の厚さが調整されると、弾性ローラ1の高速回転駆動時にかかる、軸体2の軸線方向に対する垂直方向(軸体2の中心方向)の圧力に対して端部接着剤6の弾性力及び接着力によってスリーブ4の端部と発泡弾性層3の端部とが剥離することを防止し、また、発泡弾性層3に亀裂等が生じることを防止することができる。端部接着剤層6の厚さは、例えば、スリーブ4の外径、すなわち、発泡弾性層3の表面からスリーブ4の表面までの厚さに対して、50〜100%であるのが好ましく、70〜100%であるのが特に好ましい。端部接着剤層6の厚さは、具体的には、10〜150μmであるのが好ましく、14〜150μmであるのが特に好ましい。端部接着剤層6の厚さは、発泡弾性層3の軸線方向に均一であっても不均一であってもよく、弾性ローラ1Aにおいては、端部接着剤層6の厚さは発泡弾性層3の軸線方向に略均一に調整されている。
【0021】
端部接着剤層6は、硬化性物質を硬化してなる硬化体であるのが、スリーブ4の両端部を強固に固定して、スリーブ4の端部が剥離することを長期間にわたって防止することができると共に、発泡弾性層3における両端部3A及び3Bに亀裂が生じ、発泡弾性層3の発泡構造が破損、損傷等することを長期間にわたって防止することができる点で、好ましい。硬化体を形成する硬化性物質としては、例えば、各種接着剤、各種樹脂等が挙げられる。具体的には、各種接着剤としては、例えば、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。シリコーン系接着剤としては、例えば、商品名「KE−44」及び「KE−45」(いずれも信越化学工業株式会社製)等の非流動性接着剤、付加型シリコーンRTV及び縮合型シリコーンRTV等の流動性接着剤が挙げられる。付加型シリコーンRTVとしては、例えば、商品名「KE1880」(粘度(25℃)84Pa・s)、商品名「KE1830」(粘度(25℃)110Pa・s)及び商品名「KE1833」(粘度(25℃)150Pa・s)(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられ、縮合型シリコーンRTVとしては、例えば、商品名「KE441」(粘度(25℃)15Pa・s、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。アクリル系接着剤としては、例えば、アクリル変性シリコーン樹脂等が挙げられ、具体的には、流動性アクリル変性シリコーン樹脂として、商品名「スーパーX 8008」(粘度(25℃)90Pa・s)、商品名「スーパーX 8008 LLブラック」(粘度(25℃)14Pa・s)及び商品名「スーパーX 8008クリア」(粘度(25℃)65Pa・s)(いずれもセメダイン株式会社製))等が挙げられる。また、各種樹脂としては、例えば、液状シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0022】
また、弾性ローラ1は加熱下において使用されることがあるため、各種接着剤及び各種樹脂は耐熱性を有しているのが好ましく、具体的には、150〜250℃程度の耐熱性を有しているのが好ましい。耐熱性は、JIS K 6833に規定された軟化温度測定法によって測定される。
【0023】
各種接着剤及び各種樹脂に要求される他の特性として、各種接着剤及び各種樹脂の硬化物における引張せん断接着強さ等が挙げられ、この発明においては、各種接着剤及び各種樹脂の硬化物における引張せん断接着強さは0.5〜4MPaであるのが好ましい。各種接着剤及び各種樹脂の硬化物における引張せん断接着強さが前記範囲にあると、発泡弾性層3の両端部3A及び3Bが大きく拡径することを防止すると共に、スリーブ4の端部が発泡弾性層3の表面から剥離することを防止することができる。引張せん断接着強さは、各種接着剤及び各種樹脂を硬化してなる硬化体を試験体として、JIS K 6249に準じて、測定される。
【0024】
この発明に係る弾性ローラの別の一実施例としての弾性ローラ1Bは、図3に示されるように、軸体2の外周面に形成された発泡弾性層3と、発泡弾性層3の両端部3A及び3Bそれぞれが軸線方向に突出するように、発泡弾性層3の外周面に設けられたスリーブ4と、発泡弾性層3とスリーブ4との間に形成された接着剤層5と、スリーブ4の外径以下の外径を有し、スリーブ4から突出した発泡弾性層3における両端部3A及び3Bの外周面にそれぞれ形成された端部接着剤層6とを備えて成る。
【0025】
弾性ローラ1Bにおける軸体2、発泡弾性層3及びスリーブ4は、弾性ローラ1Aにおける軸体2、発泡弾性層3及びスリーブ4と基本的に同様である。
【0026】
前記接着剤層5は、発泡弾性層3とスリーブ4との間に介装されて、発泡弾性層3とスリーブ4とを接着する。接着剤層5を形成する接着剤は、発泡弾性層3とスリーブ4とを接着することができる接着剤であれば特に限定されず、例えば、シリコーン系接着剤(商品名「KE−44」、「KE−45」及び「KE−441」、いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。この発明において、接着剤は、室温(25℃)で流動性、具体的には、25℃における粘度が15〜150Pa・sである流動性接着剤であるのが、接着剤の塗布層内に気泡等が発生し、混入すること等を防止することができ、発泡弾性層3とスリーブ4とを強固に接着することができる点で、好ましい。流動性接着剤における流動性は、25℃における粘度が15〜150Pa・sであるのが好ましく、30〜120Pa・sであるのがより好ましく、50〜100Pa・sであるのが特に好ましい。流動性接着剤における粘度が前記範囲内にあると、接着剤の塗布層内に気泡等が発生し、また、気泡等が混入すること等を効果的に防止することができる。なお、流動性接着剤における粘度は、JIS K 6249に準じて(BH型粘度計を使用)によって測定する。
【0027】
前記流動性接着剤は、例えば、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。具体的には、シリコーン系接着剤として、前記弾性ローラ1Aの端部接着剤層6に適用可能な流動性接着剤として例示した、付加型シリコーンRTV、縮合型シリコーンRTV及びアクリル変性シリコーン樹脂等が挙げられる。なお、流動性接着剤は、一液性でも二液性でもよく、また、熱硬化性でも湿気硬化性でもよい。さらに、流動性接着剤は、例えば、トルエン、キシレン等の希釈剤を用いて、その粘度が前記範囲内になるように、調整されてもよい。
【0028】
接着剤層5を形成する接着剤は、端部接着剤層6を形成する接着剤等と同様に、例えば、150〜250℃程度の耐熱性を有しているのが好ましい。また、接着剤層5を形成する接着剤に要求される他の特性として、接着剤の硬化物における引張せん断接着強さ等が挙げられ、この発明においては、接着剤の硬化物における引張せん断接着強さは0.5〜4MPaであるのが好ましい。接着剤の硬化物における引張せん断接着強さが前記範囲にあると、スリーブ4と発泡弾性層3とが十分な接着力で強固に接着される。引張せん断接着強さは、端部接着剤層6を形成する接着剤と同様にして、測定される。
【0029】
接着剤層5の厚さは特に限定されないが、通常、10〜300μmに調整されるのが好ましく、10〜100μmに調整されるのが特に好ましい。
【0030】
前記接着剤層5は、後述する端部接着剤層6と同様の接着剤で形成されるのが、弾性ローラ1Bを容易に製造することができる点で、好ましい。
【0031】
前記端部接着剤層6は、その厚さが発泡弾性層3の端部に向かって次第に小さくなっている点以外は、弾性ローラ1Bにおける端部接着剤層6と基本的に同様である。例えば、端部接着剤層6の厚さは、前記したように、発泡弾性層3の表面からスリーブ4の表面までの厚さ、すなわち、弾性ローラ1Bにおいては、接着剤層5とスリーブ4との合計厚さに対して50〜100%であるのが好ましく、70〜100%であるのが特に好ましい。
【0032】
図3に示されるように、前記端部接着剤層6がスリーブ4の端部に接して形成されていると、スリーブ4の端部が端部接着剤層6によって発泡弾性層3に強固に接着されることができるから、弾性ローラ1Bが定着装置に装着されて、繰り返し高速で回転駆動され、停止されても、スリーブ4の端部が発泡弾性層3の表面から剥離することを効果的に防止することができ、それ故、発泡弾性層3における両端部3A及び3Bに亀裂が生じ、発泡弾性層3の発泡構造が破損し、損傷等することを防止することができる。
【0033】
この発明に係る弾性ローラを製造する製造方法の一例(以下、この発明に係る製造方法と称することがある。)を以下に説明する。この発明に係る製造方法は、軸体2の外周面に発泡弾性層3を備えたローラ原体7を、加圧環境下又は減圧環境下でスリーブ4内に挿入し、スリーブ4から突出した発泡弾性層3の両端部3A及び3Bの外周面に接着剤を塗布して硬化することを特徴とする。
【0034】
この発明に係る製造方法においては、まず、図4に示されるように、軸体2の外周面に発泡弾性層3を備えたローラ原体7を準備する。
【0035】
軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に調製される。軸体2に導電性が要求される場合には、前記金属及び前記導電性樹脂の他に、前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施すことにより、軸体2を形成することができる。前記材料の中でも、容易に導電性を付与することができる点で、金属であるのが好ましく、快削鋼、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。
【0036】
軸体2は、所望により、その外周面にプライマー層が塗布されてもよい。プライマー層を形成するプライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体2の外周面に塗布され、硬化される。プライマーとしては、特に制限はないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。所望により、前記樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤を用いることができ、このような架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
【0037】
次いで、この発明に係るローラの製造方法においては、このようにして形成された軸体2の外周面に配置された後述するゴム組成物を硬化して、発泡弾性層3を形成する。例えば、発泡弾性層3は、公知の成形方法によって、成形と加熱硬化とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。ゴム組成物の成形方法は、軸体2の外周面にゴム組成物を配置することができる方法であればよく、例えば、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、ゴム組成物が後述する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、成形方法として押出成形等を選択することができる。発泡弾性層3を形成するゴム組成物は後述する。
【0038】
ゴム組成物の硬化条件は、軸体2の外周面に配置されたゴム組成物が硬化し、発泡剤を含有する場合には、発泡剤が分解又は発泡するのに十分な硬化条件であればよく、ゴム組成物の組成、発泡剤の種類等に応じて適宜調整される。例えば、ゴム組成物が後述する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、硬化条件は、通常、100〜400℃、特に200〜400℃の加熱温度、数分以上1時間以下、特に5分以上30分以下の加熱時間であるのが、前記範囲の平均セル径を有する独立セルを有し、前記範囲の発泡率を有する発泡弾性層3とすることができる点で、好ましい。
【0039】
この発明に係る製造方法において、このようにして硬化された発泡弾性層3は、必要に応じて、二次硬化されることもできる。二次硬化条件は、特に限定されないが、例えば、ゴム組成物が後述する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、二次硬化条件は、前記硬化させた状態のままで、180〜250℃、特に190〜230℃の加熱温度、及び、1〜24時間、特に3〜10時間の加熱時間であるのがよい。
【0040】
この発明に係る製造方法において、このようにして形成された発泡弾性層3は、必要に応じて、弾性層調整加工が施されることもできる。弾性層調整加工は、研磨加工装置、研削加工装置及び切削加工装置等の機械加工装置又は器具等を用いて、発泡弾性層3を所望の寸法に調整し、及び/又は、発泡弾性層3の表面状態を所望の状態等に調整する加工である。弾性層調整加工は、例えば、研磨加工、研削加工及び切削加工等が挙げられる。
【0041】
このようにして形成された発泡弾性層3は、後述するスリーブ4の内径よりも大きな外径を有しており、例えば、スリーブ4の内径に対して、100〜105%の外径を有しているのがよく、100〜102%の外径を有しているのが特によい。発泡弾性層3の外径が前記範囲に調整されていると、後述する圧力環境下において発泡弾性層3が速やかに縮径すると共に、この圧力環境を解除すると発泡弾性層3が速やかに復元する。また、この発泡弾性層3は、後述するスリーブ4の軸線方向の長さよりも長い軸線方向の長さを有している。
【0042】
このようにして、軸体2の外周面に発泡弾性層3が形成された、図4に示されるローラ原体7を製造することができる。
【0043】
一方、この発明に係る製造方法においては、スリーブ4を準備する。スリーブ4は前記金属材料で両端開口部を有する筒状体に形成される。スリーブ4は、例えば、20〜150μmの厚さに調整され、また、その内径は、前記発泡弾性層3の外径よりも小さく、例えば、発泡弾性層3の外径がスリーブ4の内径に対して後述する範囲となるように、調整される。さらに、スリーブ4は、その軸線方向の長さが発泡弾性層3の軸線方向の長さよりも短く調整される。スリーブ4は、例えば、スピニング加工方法、しごき加工方法によって、筒状体に形成される。このスリーブ4は、少なくとも外周面が平滑に調整されているのが好ましい。
【0044】
この発明に係る製造方法においては、所望により、ローラ原体7における発泡弾性層3の外周面であってスリーブ4が設けられる領域に接着剤を塗布する。この接着剤は、発泡弾性層3の外周面であってスリーブ4が設けられる領域に、好ましくは均一に、塗布される。発泡弾性層3の外周面であってスリーブ4が設けられる領域に接着剤を塗布する方法は、特に限定されず、スプレー法、浸漬法、リングコーター法、ロールコーター法等が挙げられる。接着剤を発泡弾性層3の外周面であってスリーブ4が設けられる領域に塗布する際に、接着剤を希釈剤等で適宜希釈することができる。流動性接着剤は、発泡弾性層3の外周面であってスリーブ4が設けられる領域に均一に容易に塗布されることができるうえ、接着剤が塗布された塗布層内に気泡等が発生し、又は、気泡等が混入すること等を効果的に防止することができる。その結果、発泡弾性層3とスリーブ4とを強固に接着することができる。接着剤の塗布量は、接着剤層5の厚さが前記範囲内となるように、調整されればよく、例えば、シリコーン系組成物の場合には、0.01〜0.1g/cm程度に調整される。
【0045】
この発明に係る製造方法においては、次いで、所望により接着剤が塗布されたローラ原体7を、加圧環境下又は減圧環境下で、常温下又は加熱下において、スリーブ4内に挿入する。
【0046】
ローラ原体7を加圧環境下でスリーブ4内に挿入する方法(以下、加圧法と称する。)について説明する。加圧法において使用される装置としては、ローラ原体7の発泡弾性層3を縮径させると共に、発泡弾性層3を縮径させた状態でローラ原体7をスリーブ4内に挿入することができる装置であればよく、例えば、図5に示される加圧装置10が挙げられる。図5に示される加圧装置10は、ローラ原体7及びスリーブ4をそれらの軸線方向に直列に収納する筒状の筐体11と、筐体11における一方の開口部近傍の内部に設置され、スリーブ4を載置する載置部材15と、筐体11の両端開口部を閉塞する閉塞端部12及び13と、筐体11内に収納されたローラ原体7をスリーブ4に挿入する挿入装置20と、筐体11内を加圧する加圧機14とを備えている。
【0047】
図5に示されるように、前記筐体11は、ローラ原体7及びスリーブ4をそれらの軸線方向に直列に収納することができればよく、加圧装置10においては、中空の筒状体に形成されている。前記載置部材15は、スリーブ4を所定の位置に支持することができればよく、加圧装置10においては、筐体11の内周面から中心に向かって突出し、スリーブ4を支持する平滑な載置面16を有するリング状突出部とされている。この載置部材15は、筐体11における一方の開口部近傍、すなわち、閉塞端部13が筐体11に装着されたときに、閉塞部材13との間に後述する挟持部材24及びスリーブ4の端部から突出する発泡弾性層3の端部3Aが配置されるのに十分な空間が画成される位置に形成されている。この載置部材15における突出量は、スリーブ4を載置することができ、加圧環境下で縮径された発泡弾性層3を通過させることのできるだけの突出量に調整されている。載置部材15の載置面16により、スリーブ4は、後述する挿入装置20に支持されたローラ原体7が挿入される位置に、好ましくは、ローラ原体7と同軸となる位置に、支持される。前記閉塞端部12及び13は、後述する挿入装置20を例えばその軸線方向に移動可能とする貫通孔を有し、筐体11の両端開口部を閉塞することができればよく、加圧装置10においては、封止部材17を前記貫通孔内に備えた筒状体に形成されている。この封止部材17は、挿入装置20と閉塞端部12及び13とを気密に封止する。前記加圧機14は、閉塞端部12及び13によって閉塞された筐体11内を、例えば、0.48MPa程度まで、加圧することができればよく、例えば、コンプレッサー等が採用される。
【0048】
図5に示されるように、前記挿入装置20は、ローラ原体7を支持すると共に、筐体11、載置部材15、載置部材15に支持されたスリーブ4、並びに、閉塞端部12及び13を、好ましくは同軸に、貫通する、軸線方向に前後進可能な1組の支持軸21及び22と、各支持軸21及び22における対向する端部に、ローラ原体7における軸体2の端部を固定して、ローラ原体7を支持する挟持部材23及び24とを有している。挟持部材23及び24は、軸体2の端部を固定することができればよく、例えば、軸体2の外周面を把持して固定するように構成されてもよく、また、軸体2の外周面を挟持して固定するように構成されていてもよい。
【0049】
図5に示されるように、この加圧装置10を用いた加圧法においては、筐体11、並びに、閉塞端部12及び13を組み立て、前記のようにして作製したスリーブ4を載置部材15における載置面16上に載置して、スリーブ4を所定の位置に配置する。次いで、所望により接着剤が外周面に塗布された発泡弾性層3を備えたローラ原体7における軸体2の両端部を挟持部材23及び24に固定して、1組の支持軸21及び22でローラ原体7を挟持し、支持軸22を、筐体11、載置部材15、載置部材15に支持されたスリーブ4及び閉塞端部13に貫通させて、ローラ原体7を、スリーブ4の上流方向に直列になるように配置し、閉塞端部12で筐体11を閉塞して、加圧装置10を組み立てる。
【0050】
次いで、加圧機14を起動して、加圧装置10内を所定の圧力に加圧し、ローラ原体7の発泡弾性層3を所定の圧力環境下において、発泡弾性層3を加圧する。そうすると、発泡弾性層3は、セル内の気体等が加圧されてセル自体が縮小すると共に、発泡弾性層3も縮小するから、その外径は次第に小さくなり、スリーブ4の内径よりも小さくなる。このとき、加圧装置10内の圧力及びローラ原体7が前記圧力環境下に置かれる時間は、発泡弾性層3の外径がスリーブ4の内径よりも小さくなる程度であればよく、例えば、加圧装置10内の圧力は、0.15〜0.48MPaに調整されているのが好ましく、0.17〜0.48MPaに調整されているのが特に好ましく、前記圧力環境下に置かれる時間は、例えば、数秒以上5分以下であるのが好ましく、数秒以上3分以下であるのが特に好ましい。前記圧力環境下において発泡弾性層3における半径方向の収縮率は、例えば、常圧における発泡弾性層3の厚さ(初期厚さ)に対して、65〜99.5%程度の厚さとなる割合であるのが、発泡弾性層3の発泡構造に損傷等を与えることがなく、加圧を解除したときの復元性に優れる点で、好ましく、80〜99%であるのが特に好ましい。発泡弾性層3の前記収縮率は次のようにして算出する。まず、所定の内径を有する複数のマスターリングゲージを内径が大きい順に直列に配列された複数のマスターリングそれぞれに、ローラ原体7を挿入して、ローラ原体7における発泡弾性層3の外周面に直列に配列された複数のマスターリングゲージを保持させた試験体を準備する。次いで、この試験体を加圧装置10内において、加圧装置10内の圧力を変化させて、試験体の発泡弾性層3を収縮させ、発泡弾性層3の収縮度に対応する内径を有するマスターリングゲージを順に落下させる。最後に落下したマスターリングゲージの内径をローラ原体7における収縮後の発泡弾性層3の外径として、収縮後の発泡弾性層3の厚さt(mm)を求める。このようにして求めた厚さt(mm)と、縮小(縮径)される前の発泡弾性層3の厚さt(mm)とから、式(t/t)×100(%)により、発泡弾性層3の収縮率を算出する。
【0051】
このようにして、発泡弾性層3の外径がスリーブ4の内径よりも小さくなった状態で、挿入装置20における1組の支持軸21及び22を手動又は自動により、スリーブ4側(図5において下流側)に、前進させ、図6に示されるように、挿入装置20に支持されたローラ原体7を、発泡弾性層3の端部3Aがスリーブ4の端部から突出するまで、スリーブ4内に挿入する。このとき、挿入装置20の挟持部材24は、発泡弾性層3の外径よりも小さな外径を有し、載置部材15は前記した位置に設置されているから、スリーブ4の端部から突出する発泡弾性層3の端部3A及び挟持部材24は、スリーブ4の内部を経由し、載置部材15と閉塞端部13との間に画成される空間内に到達する。また、スリーブ4の軸線方向の長さは前記のように調整されているから、図6に示されるように、発泡弾性層3の端部3Bは、スリーブ4内に挿入されていない。このようにして、所望により接着剤が外周面に塗布された発泡弾性層3を備えたローラ原体7をスリーブ4内に挿入することができる。
【0052】
次に、ローラ原体7を減圧環境下でスリーブ4内に挿入する方法(以下、減圧法と称する。)について説明する。減圧法において使用される装置としては、ローラ原体7の発泡弾性層3を縮径させると共に、発泡弾性層3を縮径させた状態でローラ原体7をスリーブ4内に挿入することができる装置であればよく、例えば、図7に示される減圧装置30が挙げられる。図7に示される減圧装置30は、加圧機14に代えて減圧機31を備えている以外は、図5に示される加圧装置10と基本的に同様である。すなわち、減圧装置30は、ローラ原体7及びスリーブ4をそれらの軸線方向に直列に収納する筒状の筐体11と、筐体11における一方の開口部近傍の内部に配置され、スリーブ4を載置する載置部材15と、筐体11の両端開口部を閉塞する閉塞端部12及び13と、筐体11内に収納されたローラ原体7をスリーブ4に挿入する挿入装置20と、筐体11内を減圧する減圧機31とを備えている。
【0053】
図7及び図5に示されるように、減圧装置30における筐体11、閉塞端部12及び13、載置部材15、封止部材17、並びに、挿入装置20はそれぞれ、加圧装置10における筐体11、閉塞端部12及び13、載置部材15、封止部材17、並びに、挿入装置20と基本的に同様に構成されている。前記減圧機31は、閉塞端部12及び13によって閉塞された筐体11内を、例えば、3hPa程度まで、減圧することができればよく、例えば、真空ポンプ等が採用される。
【0054】
図7に示されるように、この減圧装置30を用いた減圧法においては、筐体11、並びに、閉塞端部12及び13を組み立て、前記のようにして作製したスリーブ4を載置部材15における載置面16上に載置して、スリーブ4を所定の位置に配置する。次いで、流動性接着剤が外周面に塗布された発泡弾性層3を備えたローラ原体7における軸体2の両端部を挟持部材23及び24に固定して、1組の支持軸21及び22でローラ原体7を挟持し、支持軸22を、筐体11、載置部材15、載置部材15に支持されたスリーブ4及び閉塞端部13に貫通させて、ローラ原体7を、スリーブ4の上流方向に直列になるように配置し、閉塞端部12で筐体11を閉塞して、減圧装置30を組み立てる。
【0055】
次いで、減圧機31を起動して、減圧装置30内を所定の圧力に減圧し、ローラ原体7の発泡弾性層3を所定の減圧環境下において、発泡弾性層3を減圧する。そうすると、発泡弾性層3は、初期においてはセル内の圧力が減圧環境下よりも大きいものの、所定の減圧環境下にしばらく置かれると、セル内の気体等が徐々に発泡弾性層3から放出されるから、その外径は一旦拡径した後、次第に小さくなり、スリーブ4の内径よりも小さくなる。このとき、減圧装置30内の圧力及びローラ原体7が前記圧力環境下に置かれる時間は、発泡弾性層3の外径がスリーブ4の内径よりも小さくなる程度であればよく、例えば、減圧装置10内の圧力は、3〜100hPaに調整されているのが好ましく、5〜80hPaに調整されているのが特に好ましく、前記圧力環境下に置かれる時間は、例えば、数秒以上2時間以下であるのが好ましく、数秒以上1時間以下であるのが特に好ましい。前記圧力環境下において発泡弾性層3における半径方向の収縮率は、例えば、常圧における発泡弾性層3の厚さ(初期厚さ)に対して、90〜99%程度の厚さとなる割合であるのが、発泡弾性層3の発泡構造に損傷等を与えることがなく、減圧を解除したときの復元性に優れる点で、好ましく、95〜99%であるのが特に好ましい。
【0056】
このようにして、発泡弾性層3の外径がスリーブ4の内径よりも小さくなった状態で、挿入装置20における1組の支持軸21及び22を手動又は自動により、スリーブ4側(図7において下流側)に、前進させ、図8に示されるように、挿入装置20に支持されたローラ原体7を、発泡弾性層3の端部3Aがスリーブ4の端部から突出するまで、スリーブ4内に挿入する。このとき、挿入装置20の挟持部材24は、発泡弾性層3の外径よりも小さな外径を有し、載置部材15は前記した位置に設置されているから、スリーブ4の端部から突出する発泡弾性層3の端部3A及び挟持部材24は、スリーブ4の内部を経由し、載置部材15と閉塞端部13との間に画成される空間内に到達する。また、スリーブ4の軸線方向の長さは前記のように調整されているから、図8に示されるように、発泡弾性層3の端部3Bは、スリーブ4内に挿入されていない。このようにして、所望により接着剤が外周面に塗布された発泡弾性層3を備えたローラ原体7をスリーブ4内に挿入することができる。
【0057】
この発明に係る製造方法においては、加圧法であっても減圧法であっても、常温下又は加熱下において、ローラ原体7をスリーブ4内に挿入する。発泡弾性層3の外周面であってスリーブ4が設けられる領域に硬化性物質が塗布されている場合には、当然に、硬化性物質の硬化温度未満に加熱される。操作性等を考慮すると、常温下において、ローラ原体7をスリーブ4内に挿入するのがよい。
【0058】
この発明に係る製造方法においては、次いで、発泡弾性層3が収縮したローラ原体7をスリーブ4内に挿入した状態を保持したまま、前記圧力環境下における加圧状態又は減圧状態を解除し、所望により、スリーブ4に挿入されたローラ原体7を、加圧装置10又は減圧装置30から取り出し、大気圧下に静置する。そうすると、スリーブ4の内径よりも小さく縮径した発泡弾性層3は徐々に拡張又は拡径し、スリーブ4内に挿入されている発泡弾性層3の外周面がスリーブ4の内周面に(所望により塗布された硬化性物質を介して)当接し、最終的には圧接する。なお、スリーブ4に挿入されたローラ原体7を静置する時間は、圧力環境下における圧力及び圧力環境下に置かれた時間等により、適宜選択されるが、通常、10秒以上1時間以下である。
【0059】
このようにして、ローラ原体7をスリーブ4内に挿入して、スリーブ4から発泡弾性層3の両端部3A及び3Bを突出させることができる。
【0060】
この発明に係る製造方法においては、次いで、図9に示されるように、スリーブ4の端部から突出した発泡弾性層3の両端部3A及び3Bそれぞれに、有底円筒型の端部押さえ部材9が装着される。端部押さえ部材9は、拡径した発泡弾性層の両端部3A及び3Bをわずかに縮径させて、端部接着剤層6を形成する接着剤を塗布する際の作業性等を確保する。図9に示されるように、この端部押さえ部材9は、ローラ原体7の軸体2が貫通する貫通孔を有する底部と、発泡弾性層3の外径よりもわずかに小さな内径を有し、底部から突出する周側面とを備えて成る有底円筒形を成している。図9に示されるように、端部押さえ部材9の周側面は、端部押さえ部材9が両端部3A及び3Bそれぞれに装着されたときに、スリーブ4の端部と周側面の端部との間に端部接着剤層6を形成する硬化性物質を塗布することができる程度の間隙が画成される長さに、調整されている。両端部3A及び3Bへの端部押さえ部材9の装着は自動でも手動でもよい。
【0061】
この発明に係る製造方法においては、次いで、発泡弾性層3の両端部3A及び3Bの外周面であって、スリーブ4の端部と周側面の端部との間に画成された間隙に、好ましくは、スリーブ4の端部に接するように、特に好ましくは、スリーブ4の端部に接して間隙を周方向に一巡するように、硬化性物質が塗布される。硬化性物質を塗布する方法は前記した方法に加え、ディスペンサー法等も適用することができる。硬化性物質を前記間隙に塗布する際に硬化性物質を希釈剤等で適宜希釈することができる。硬化性物質の塗布量は、スリーブ4の外径以下となるように、調整されればよく、例えば、シリコーン系組成物の場合には、0.001〜0.016g/cm程度に調整される。
【0062】
この発明に係る製造方法においては、次いで、前記間隙、すなわち、発泡弾性層3の両端部3A及び3Bの外周面に塗布された硬化性物質を硬化して、端部接着剤層6を形成する。硬化性物質を硬化させる条件は、塗布した硬化性物質に応じて、選択され、例えば、硬化性物質がシリコーン系接着剤である場合には、加熱温度100〜200℃、加熱時間5分以上2時間以下の硬化条件を選択することができる。このようにして端部接着剤層6を形成すると、製造された弾性ローラが画像形成装置に装着されて、この弾性ローラが繰り返し高速で回転駆動され、停止されても、形成された端部接着剤層6によってスリーブ4の端部が剥離することを防止することができる。硬化性物質を硬化させる装置は、前記硬化条件を実現可能な装置であればよく、例えば、オーブン、送風乾燥機、赤外線加熱器等の各種加熱器及び各種乾燥機等が挙げられる。
【0063】
この発明に係る製造方法においては、次いで、発泡弾性層3の両端部3A及び3Bに装着された端部押さえ部材9を取り外す。
【0064】
この発明に係る製造方法においては、所望により、発泡弾性層3とスリーブ4との間に存在する接着剤を硬化させる。接着剤を硬化させる条件は、塗布した接着剤の硬化条件に応じて選択され、例えば、接着剤がシリコーン系接着剤である場合には、加熱温度100〜200℃、加熱時間5分以上2時間以下の硬化条件を選択することができる。このようにして接着剤を硬化すると、発泡弾性層3とスリーブ4との間に接着剤が均一に介在し、かつ、発泡弾性層3における表面及び表面近傍に存在するセル内にも接着剤が浸入して、発泡弾性層3とスリーブ4とを強固に接着することができる。接着剤を硬化させる装置は、前記硬化条件を実現可能な装置であればよく、例えば、オーブン、送風乾燥機、赤外線加熱器等の各種加熱器及び各種乾燥機等が挙げられる。
【0065】
このようにして、弾性ローラ1A及び1Bを製造することができる。つまり、この発明に係る製造方法によれば、発泡弾性層3と、スリーブ4と、端部接着剤層6と、所望により接着剤層5とを備えた弾性ローラ1A及び1Bを製造することができる。そして、弾性ローラ1A及び1B(以下、両者を併せて弾性ローラ1と称する。)は、前記したように、画像形成装置の定着装置に装着されたときに、弾性ローラ1が発泡弾性層3の表面から繰り返し高速で回転駆動され、停止されても、端部接着剤層6によってスリーブ4の端部が剥離することを防止することができる。その結果、この発明に係る弾性ローラ1は、画像形成装置の定着装置に装着されたときに高品質の画像を形成することに貢献することができるうえ、発泡弾性層3及び端部接着剤層6が破損しにくいから、弾性ローラ1自体の耐久性に優れると共に、装着された定着装置における被当接体を破壊する可能性も極めて小さい。
【0066】
発泡弾性層3を形成するゴム組成物は、ゴムと、発泡剤又は中空充填材と、所望により各種添加剤等とを含有する組成物であればよく、例えば、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物及び発泡ウレタンゴム系組成物等が好ましく挙げられる。特に、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物は、耐熱性、耐久性及び耐残留歪み特性等に優れ、画像形成装置の高速運転にも耐えられる好適なゴム組成物である。このような発泡シリコーンゴム系組成物として、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が特に好ましい。中空充填材としては、例えば、ゴム組成物を硬化した後に、セルを形成することのできる充填材であればよく、例えば、ポリオルガノシロキサン系球状粉末が挙げられる。ポリオルガノシロキサン系球状粉末は、ポリオルガノシロキサンからなる球状の粉末であればよく、例えば、シリコーンパウダ等が挙げられる。より具体的には、直鎖状のジメチルポリシロキサンを架橋した構造を持つシリコーンゴムの粉末、シロキサン結合が(CHSiO3/2で表される三次元網目状に架橋した構造を持つ、いわゆるポリメチルシルセスキオキサン等のシリコーンレジンの粉末、及び、前記シリコーンゴムの表面をシリコーンレジン等で被覆した被覆シリコーンゴムの粉末等が挙げられる。
【0067】
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、ビニル基含有シリコーン生ゴムと、シリカ系充填材と、発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤とを含有し、所望により、さらに、有機過酸化物架橋剤と耐熱性向上剤と各種添加剤とを含有してもよい。
【0068】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴムは、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋シリコーンゴム(HTV:High Temperature Vulcanizing)等が挙げられる。これらのビニル基含有シリコーン生ゴムは、後工程で、発泡剤及び付加反応架橋剤等をロールミル等で容易に混練りすることができるという特性を有し、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0069】
前記シリカ系充填材は、補強性を有する煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。シリカ系充填材の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、5〜100質量部であるのがよい。シリカ系充填材は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0070】
前記発泡剤としては、従来、発泡ゴムに用いられる発泡剤であればよく、例えば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。通常、ゴムに連続セルを形成する場合には無機系発泡剤が用いられ、独立セルを形成する場合には有機系発泡剤が用いられる。弾性ローラ1においては、発泡剤は、独立セル状態のセルを形成することができる点で、有機系発泡剤であるのがよく、具体的には、例えば、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ化合物が好適に使用される。特に、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)が好適に使用できる。発泡剤の配合量は、発泡剤の種類によって相違するが、発泡弾性層3のアスカーC硬度が20〜60となるように調整するのがよい。具体的には、例えば、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.5〜10質量部であるのがよい。発泡剤の配合量が、0.1質量部未満であると、形成される発泡弾性層3に十分なセルを形成することができないことがあり、一方、10質量部を超えると、発泡シリコーンゴムとしての形態を維持することができなくなり、発泡弾性層3の機械的強度が低下することがある。発泡剤として、ジメチル−1,1’−アゾ−ビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)を選択する場合には、その配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.5〜5質量部であるのが特によい。発泡剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0071】
前記付加反応架橋剤は、例えば、一分子中に2個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、環又は分枝状のいずれであってもよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.01〜20質量部であるのがよい。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0072】
前記付加反応触媒は、例えば、周期律表第9属又は第10属の金属単体及びその化合物が挙げられ、より具体的には、シリカ、アルミナ又はシリカゲル等の担体上に吸着された微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸六水塩とオレフィン又はジビニルジメチルポリシロキサンとの錯体、塩化白金酸六水塩のアルコール溶液等の白金系触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられる。これら付加反応触媒の配合量は、触媒量で十分であり、通常、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物全体に対して、1〜1,000ppmであるのがよく、10〜500ppmであるのが特によい。付加反応触媒の配合量が、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、1ppmより少ないと、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応が十分に進行せず、ビニル基含有シリコーン生ゴムの硬化が不十分となることがあり、一方、1,000ppmを超えると、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応を促進する能力が向上せず、かえって、経済性が低下することがある。付加反応触媒は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0073】
前記反応制御剤は、公知の反応制御剤を制限されることなく使用することができ、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。反応制御剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.1〜2質量部であるのがよい。反応制御剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0074】
前記有機過酸化物架橋剤は、単独でビニル基含有シリコーン生ゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すれば、シリコーンゴムの強度、歪み等の物性がより向上する。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.3〜10質量部であるのがよい。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0075】
耐熱性向上剤は、発泡弾性層3の耐熱性を向上させる化合物であればよく、例えば、カーボンブラック、酸化鉄(ベンガラとも称する。)、酸化セリウム及び水酸化セリウム等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0076】
前記カーボンブラックは、通常、その製造方法によって、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等に類別され得るが、硫黄、アミン等の含有量が多いと、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物の付加反応を阻害することがあるので、硫黄、アミン等の含有量が少ないカーボンブラック、例えば、アセチレンブラックが好適に使用される。前記酸化鉄は、黒色ベンガラ(Fe)及び赤色ベンガラ(Fe)が好ましく挙げられる。前記酸化セリウム及び前記水酸化セリウムは、単独で使用されてもよいが、前記カーボンブラック及び/又は前記酸化鉄と共に使用されるのが、発泡弾性層3の硬度変化を抑えることができる点で、好ましい。
【0077】
前記耐熱性向上剤の総配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜35質量部であるのがよく、1〜10質量部であるのが特によい。耐熱性向上剤の総配合量が前記範囲であれば、カーボンブラック、酸化鉄、酸化セリウム及び水酸化セリウムの配合量は、特に限定されない。例えば、カーボンブラックの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0〜15質量部であるのがよく、0.2〜15質量部であるのがさらによく、2〜10質量部であるのが特によい。ベンガラの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0〜30質量部であるのがよく、0.2〜30質量部であるのがさらによく、2〜20質量部であるのが特によい。酸化セリウム及び水酸化セリウムの配合量はそれぞれ、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜5質量部であるのがよく、0.2〜2質量部であるのが特によい。
【0078】
前記各種添加剤は、例えば、炭酸カルシウム等の充填材、着色剤、難燃性向上剤、熱伝導性向上剤等の添加剤、離型剤、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール基封鎖低分子シロキサン等の分散剤、及び、得られるゴムの硬度を調整することのできる粉砕石英、珪藻土等の非補強性シリカ等が挙げられる。これらの各種添加剤は、所望の配合量で配合される。
【0079】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴム、前記シリカ系充填材及び前記各種添加剤を含有するシリコーンゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KEシリーズ」及び「KEGシリーズ」等を容易に入手することができる。
【0080】
ゴム組成物は、その比重は特に限定されないが、ゴム組成物の比重は発泡弾性層3の密度にもある程度影響を与えるから、画像形成装置に配設される各種ローラに応じて、所定の比重に調整される。ゴム組成物の比重は、通常、1.00〜2.00であるのが好ましく、1.05〜1.50であるのがさらに好ましい。
【0081】
ゴム組成物は、二本ロール、三本ロール、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分以上1時間以下にわたって、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0082】
この発明に係る弾性ローラ1は、前記した一実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、弾性ローラ1は、スリーブ4が最外層とされているが、この発明においては、スリーブは最外層である必要はなく、スリーブは外部加熱手段によって加熱される位置に形成されればよい。
【0083】
この発明に係る弾性ローラ1A及び1Bは、端部接着剤層6が発泡弾性層3の端面まで形成されていないが、この発明において、端部接着剤層は、発泡弾性層の端面まで形成されてもよく、スリーブから突出した発泡弾性層における両端部の外周面全面に形成されてもよい。
【0084】
この発明に係る弾性ローラ1A及び1Bは、スリーブ4の端部と接するように、端部接着剤層6が形成されているが、この発明においては、スリーブの端部と端部接着剤層の端部とが接触せずに、すなわち、スリーブの端部と端部接着剤層の端部との間に間隔をおいて、端部接着剤層が形成されていてもよい
【0085】
この発明に係る弾性ローラ1A及び1Bは、接着剤層5と端部接着剤層6とが独立に形成されているが、この発明においては、接着剤層と端部接着剤層とは一体に形成されてもよい。
【0086】
この発明に係る弾性ローラ1Aは端部接着剤層6の厚さが均一に形成され、この発明に係る弾性ローラ1Bは端部接着剤層6の厚さが発泡弾性層3の端部に向かって次第に小さくなるように形成されているが、この発明において、弾性ローラは、端部接着剤層の厚さが発泡弾性層の端部に向かって次第に大きくなるように形成されていてもよい。
【0087】
さらに、この発明において、弾性ローラは、用途に応じて、軸体内、弾性層内、又は軸体と弾性層との間に、加熱体、例えば、電熱器、発熱コイル等を備えていてもよい。
【0088】
また、この発明においては、スリーブ4の外周面に、所望により、他の層、例えば、弾性層、離型層、コート層、表面層及び/又は保護層等が形成されてもよい。弾性層は弾性を確保するための層であり、各種のゴム等で形成されればよく、ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。弾性層の厚さは20〜500μmであるのが好ましく、100〜400μmであるのが特に好ましい。また、離型層は現像剤の離型性を確保するための層であり、各種の樹脂、カップリング剤等で形成されればよく、樹脂としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、カップリング剤としては、シランカップリング剤等が挙げられる。離型層の厚さは15〜200μmであるのが好ましく、20〜50μmであるのが特に好ましい。コート層、表面層及び保護層は、スリーブ4の外周面に定法に従って、通常、1〜100μmの厚さに、形成される。コート層、表面層及び保護層を形成する材料は、特に制限されるものではないが、弾性ローラ1は被当接体に当接又は圧接されるから、永久変形しにくい材料であるのが好ましく、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。なお、この発明において、スリーブ4は、前記金属材料で形成された一層構造の筒状体、又は、前記金属材料で形成された一層構造の筒状体の外周面に、シリコーンゴムで形成された弾性層とフッ素樹脂で形成された離型層とがこの順で積層された積層体であるのが好ましい。
【0089】
この発明に係る製造方法は、前記した製造方法に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る製造方法においては、ローラ原体7における発泡弾性層3の外周面に接着剤を塗布した後に、ローラ原体7を所定の圧力環境下においているが、この発明においては、ローラ原体を所定の圧力環境下に置いた後に、ローラ原体における発泡弾性層の外周面に接着剤を塗布してもよい。
【0090】
また、この発明に係る製造方法においては、発泡弾性層3の外周面であってスリーブ4が設けられる領域に所望により接着剤を塗布しているが、この発明においては、発泡弾性層の外周面に加えて、スリーブの内周面に接着剤を塗布してもよい。
【0091】
さらに、この発明に係る製造方法においては、ローラ原体7における発泡弾性層3の外周面であってスリーブ4が設けられる領域に所望により接着剤が塗布された場合には、この接着剤を、発泡弾性層3の両端部3A及び3Bの外周面に塗布された接着剤と同時に、硬化してもよい。
【0092】
さらに、この発明に係る製造方法においては、ローラ原体7における発泡弾性層3の外周面であってスリーブ4が設けられる領域に所望により接着剤が塗布された場合には、まず、この接着剤を硬化して発泡弾性層3とスリーブ4とを接着した後、前記のように、発泡弾性層3の両端部3A及び3Bそれぞれに端部押さえ部材9を装着し、スリーブ4と端部押さえ部材9の周側面の端部との間に画成された間隙に塗布された接着剤を硬化してもよい。
【0093】
また、この発明に係る製造方法においては、発泡弾性層3の外周面であってスリーブ4が設けられる領域と、発泡弾性層3の両端部3A及び3Bの外周面であってスリーブ4と周側面の端部との間に画成された間隙とに、別々に接着剤を塗布しているが、この発明においては、予め、ローラ原体における発泡弾性層の外周面全面に接着剤を塗布してもよい。
【0094】
さらに、この発明に係る製造方法においては、加圧装置10及び減圧装置30内でローラ原体7をスリーブ4内に挿入して、スリーブ4を発泡弾性層3の所定の位置に配置しているが、この発明においては、加圧装置及び減圧装置内でローラ原体をスリーブ内に挿入した後、加圧装置及び減圧装置からローラ原体を取り出して、スリーブの配置位置を調整してもよい。
【0095】
また、この発明に係る製造方法においては、端部押さえ部材9を発泡弾性層3の両端部3A及び3Bに装着して、この両端部3A及び3Bに接着剤を塗布しているが、この発明においては、発泡弾性層の両端部に、端部押さえ部材を装着することなく、接着剤を塗布してもよい。
【0096】
この発明に係る製造方法に用いられる加圧装置10及び減圧装置30はいずれも、1本のローラ原体7と1本のスリーブ4とをそれらの軸線方向に直列に収納するように、構成されているが、この発明において用いられる加圧装置及び減圧装置は、複数本のローラ原体と複数本のスリーブとをそれぞれ、それらの軸線方向に直列に収納して、スリーブに挿入されたローラ原体を、一度に又は連続して、複数形成することができるように、構成されていてもよい。
【0097】
この弾性ローラ1は、例えば、図10に示される画像形成装置40、より具体的には、この画像形成装置40の定着装置60に内蔵される定着ローラ61として、配設される。
【0098】
図10に示されるように、この発明に係る画像形成装置40は、静電潜像が形成される回転可能な像担持体41例えば感光体と、像担持体41に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体41を帯電させる帯電手段42例えば帯電ローラと、像担持体41の上方に設けられ、像担持体41に静電潜像を形成する露光手段43と、像担持体41に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体41に一定の層厚で現像剤52を供給し、静電潜像を現像する現像手段50と、像担持体41の下方に圧接するように設けられ、現像された静電潜像を像担持体41から記録体46に転写する転写手段44例えば転写ローラと、記録体46の搬送方向の下流に設けられ、記録体46に転写された現像剤52(静電潜像)を定着させる定着装置60と、記録体46に転写されず像担持体41に残留した現像剤52及び/又は像担持体41に付着したゴミ等を除去するクリーニング手段45とを備えて成る。
【0099】
図10に示されるように、現像手段50は、像担持体41に対向する位置に開口部を有し、現像剤52を収納する現像剤収納部51と、現像剤収納部51内に設けられ、現像剤52を均一に攪拌する攪拌機53と、現像剤収納部51の開口部に、像担持体41に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体41に現像剤52を一定の層厚で供給する回転可能な現像剤担持体54例えば現像ローラと、現像剤担持体54の上方に設けられ、現像剤担持体54に当接して現像剤52の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤52を帯電させる現像剤規制部材55例えば弾性ブレードとを備えて成る。
【0100】
図10に示されるように、定着装置60は、記録体46を通過させる開口65を有する筐体64内に、定着ローラ61と、定着ローラ61と対向配置された加圧ローラ62と、定着ローラ61を外部から加熱する外部加熱手段63とを備え、定着ローラ61と加圧ローラ62とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成る。加圧ローラ62はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、定着ローラ61に当接又は圧接している。この定着装置60は、外部加熱手段63として加熱用コイルが装備され、誘導加熱方法が採用されている。外部加熱手段63としての加熱用コイルは、定着ローラ61における軸線方向の長さとほぼ同じ長さを有する部材であり、定着ローラ61の表面より一定の間隔を隔てて定着ローラ61に略並行に配置されている。この加熱用コイルは、図示しないが、通常、フェライト等の強磁性体で、スイッチング電源用として用いられている代表的な形状であるI型、E型及びU型等に形成され、導線が巻かれて成る。加熱用コイル63の導線に高周波の交流が通電されると、スリーブ4内に渦電流が発生し、そのジュール熱によって、スリーブ4が誘導加熱され、その結果、定着ローラ61が加熱される。
【0101】
この定着装置60において、外部加熱手段は、誘導加熱方法の他に、ハロゲンヒーター及び反射板等を用いた輻射加熱方法、加熱器等を直接接触させて加熱する直接接触加熱方法等を採用することができ、外部加熱手段が配置される位置も特に限定されない。なお、この定着装置60は、外部加熱手段に代えて、又は、外部加熱手段に加えて、内部加熱手段を採用することもできる。
【0102】
画像形成装置40は、次にように作用する。まず、図10の矢印に示されるように、像担持体41が時計方向に回転しつつ、クリーニング手段45によってその表面の現像剤52及び/又はゴミ等が除去された後、帯電手段42によって一様に帯電され、次いで、露光手段43によって画像が露光され、像担持体41の表面に静電潜像が形成される。
【0103】
一方、現像手段50において、現像剤担持体54が図10に示される矢印方向に回転することによって、現像剤52が現像剤担持体54に供給され、供給された現像剤52が現像剤担持体54と現像剤規制部材55との間を通過して、所望の層厚に規制されると共に所望のように帯電される。
【0104】
次いで、所望の層厚及び帯電量を有する現像剤52が現像剤担持体54を介して像担持体41に供給され、像担持体41に形成された静電潜像が現像剤52によって現像されて、この静電潜像が現像剤像として可視化される。次いで、像担持体41上に現像された現像剤像は、像担持体41と転写手段44との間に搬送される記録体46上に転写手段44によって転写される。現像剤像が転写された記録体46は、定着装置60に搬送され、加圧ローラ62と加熱用コイル63によって加熱された定着ローラ61との当接部又は圧接部を通過する際に、加熱及び/又は加圧されて、転写された現像剤像(静電潜像)が永久画像として記録体46に定着される。このようにして、記録体46に画像を形成することができる。
【0105】
そして、この画像形成装置40は、定着ローラ61として弾性ローラ1を備えているから、画像形成装置又は定着装置の駆動及び停止が長期間にわたって繰り返し実行されても、弾性ローラ1、すなわち、定着ローラ61における発泡弾性層3とスリーブ4との剥離を効果的に防止することができ、その結果、高品質の画像を長期間にわたって形成することができる。
【0106】
画像形成装置40は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置は、現像手段に単色の現像剤のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
【実施例】
【0107】
(実施例1)
まず、無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体2(直径12mm×長さ350mm、SUM22)をトルエンで洗浄し、プライマー「No.101A/B」(信越化学工業株式会社製:商品名)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギアーオーブンを用いて、180℃の温度にて30分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、プライマー層を形成した。
【0108】
一方、ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材とを含むシリコーンゴム組成物「KE−904FU」(信越化学工業株式会社製:商品名)100質量部と、付加反応架橋剤「C−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部と、発泡剤アゾビス−イソブチロニトリル「KEP−13」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.5質量部と、付加反応触媒としての白金触媒適量と、反応制御剤「R−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)0.5質量部と、有機過酸化物架橋剤「C−3」(信越化学工業株式会社製:商品名)適量と、耐熱性向上剤「KEP−12」(信越化学工業株式会社製:商品名)1.0質量部とを、二本ロールで十分に混練して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を調整した。
【0109】
次いで、プライマー層を形成した軸体2と、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物とを、押出成形機にて一体分出し、次いで、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を250℃で10分間加熱して発泡架橋させ、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を発泡架橋させた。その後、さらに、ギアーオーブンを用いて、200℃で7時間にわたって、発泡架橋後の付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を二次加熱し、常温にて1時間放置した。次いで、形成された発泡弾性層3を、円筒研削盤にて弾性層の外径を29.1mmに調整した。このようにして、発泡弾性層3を備えたローラ原体7を作製した。発泡弾性層3の軸線方向の長さは340mmであり、発泡弾性層3に存在するセルにおける平均セル径は400μm、セル壁の平均幅は0.15mmであり、発泡弾性層3の発泡率は310%であった。また、発泡弾性層3のアスカーC硬度は40であった。
【0110】
一方、図5に示される加圧装置10を準備した。筐体11、閉塞端部12及び13、載置部材15、支持軸21及び22、並びに、挟持部材23及び24をそれぞれS45Cで形成し、封止部材17をニトリルゴムで形成した。筐体11は外径55mm、内径50mm、長さ2200mmであり、閉塞端部12は外径55mm、内径50mm、長さ1.5mmであり、閉塞端部13は外径55mm、内径10mm、長さ30mmであった。さらに、スリーブ(ステンレス鋼(SUS304)製、厚さ40μm、内径29.0mm、軸線方向の長さ330mm、引張強度950MPa)を準備した。
【0111】
次いで、作製したローラ原体7における発泡弾性層3の外周面であってスリーブ4が設けられる領域に、接着剤(商品名「KE−1831」、粘度(25℃)200Pa・s、信越化学工業株式会社製)を、溶剤で希釈せずに、ロールコーターで、塗布量0.025g/cm(硬化後の接着剤層の厚さが10μm)となるように、均一に塗布した。この接着剤の耐熱性は150℃であり、流動性接着剤の硬化物における引張せん断接着強さは1.0MPaであった。
【0112】
次いで、図5に示されるように、加圧装置10を組み立て、載置部材15における載置面16上にスリーブ4を載置した。さらに、接着剤が塗布された発泡弾性層3を備えたローラ原体7における軸体2の両端部を挟持部材23及び24に固定して、1組の支持軸21及び22でローラ原体7を挟持し、ローラ原体7がスリーブ4の上流方向に直列になるように筐体11内に配置し、閉塞端部12で筐体11を閉塞して、加圧装置10を気密状態に組み立てた。次いで、加圧機14を起動して、加圧装置10内を加圧し、加圧装置10内の圧力を0.3MPaに到達させた。この圧力を1分にわたって維持し、発泡弾性層3を加圧して、スリーブ4の内径よりも小さく圧縮した。このときの発泡弾性層3の収縮率は約91%であった。発泡弾性層3が圧縮した状態で、挿入装置20の1組の支持軸21及び22を手動により、スリーブ4側に前進させ、図6に示されるように、挿入装置20に支持されたローラ原体7をスリーブ4内に挿入し、発泡弾性層3における端部3Aの近傍領域(軸線方向の長さ約5mm)をスリーブ4から突出させた。このとき、発泡弾性層3における他方の端部3Bの近傍領域は軸線方向の長さが約5mmであった。
【0113】
次いで、加圧装置10内の圧力を解除して、加圧装置10内からスリーブ4内に挿入されたローラ原体7を取り出し、発泡弾性層3の両端部3A及び3Bそれぞれに、図9に示される有底円筒型の端部押さえ部材9(ステンレス製、周側面の内径は29.0mm、長さ1.5mm)を装着した。次いで、発泡弾性層3の両端部3A及び3Bの外周面であって、スリーブ4の端部と端部押さえ部材9における周側面の端部との間に画成された間隙(軸線方向の長さ約3.5mm)に、スリーブ4の端部に接して、軸線方向の長さ(幅)約1mmで周方向に一巡するように、接着剤(商品名「KE−441」、粘度(25℃)15Pa・s、信越化学工業株式会社製)を、溶剤で希釈せずに、ディスペンサー法で、塗布量0.004g/cm(硬化後の端部接着剤層6の厚さが38μm)となるように、均一に塗布した。
【0114】
このようにして、発泡弾性層3の両端部3A及び3B近傍に接着剤が塗布されたローラ原体7を、乾燥機(商品名「HIGH TEMPRATURE CHAMBER」、楠本株式会社製)を用いて、150℃に0.5時間加熱して、発泡弾性層3とスリーブ4との間に存在する接着剤と前記間隙に塗布された接着剤とを、硬化させた。次いで、発泡弾性層3の両端部3A及び3Bに装着された端部押さえ部材9を取り外して、実施例1の弾性ローラを製造した。
【0115】
(比較例1)
前記間隙、すなわち、発泡弾性層3の両端部3A及び3Bに接着剤を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の弾性ローラを製造した。
【0116】
このようにして製造した実施例1及び比較例1の各弾性ローラをそれぞれ図11に示される耐久性試験機に装着して、発泡弾性層3の亀裂、スリーブ4の両端部と発泡弾性層3との剥離状況を評価した。この耐久性試験装置70は、筐体内部の下面に固定され、内部ヒータ72を備えた加熱ローラ71と、この加熱ローラ71の軸方向に沿って、その両側に設けられた外部ヒータ73と、加熱ローラ71と対向するように、筐体内部の上面に上下動可能に設けられた試験ローラ装着部74と、試験ローラ装着部74を上下に移動可能な押圧力調整手段75、例えば、押圧調整用マイクロメータとを備えている。なお、加熱ローラ71として、直径20mmの金属(ステンレス鋼(SUS304))製ローラを用いた。
【0117】
実施例1及び比較例1の各弾性ローラを弾性ローラ76としてそれぞれ、試験ローラ装着部74のベアリングに装着し、図11に示されるように、押圧力調整手段75を操作して、装着した弾性ローラ76を加熱ローラ71に圧接し、加熱ローラ71と弾性ローラ76との圧接部において、弾性ローラ76における発泡弾性層3が内部に3mm凹陥するように、弾性ローラ76を固定した(すなわち、弾性ローラ76の外径と加熱ローラ71との外径の和よりも3mm短くなるように、弾性ローラ76の中心軸と加熱ローラ71の中心軸との距離dを調節した。)。
【0118】
次いで、外部ヒータ73及び内部ヒータ72を起動し、加熱ローラ71の表面温度を180℃に調節した。その後、試験ローラ装着部74に装備された駆動手段(図示しない。)により、回転速度130rpmで100時間連続稼動し、弾性ローラ76における発泡弾性層3の凹陥状態を解除後、弾性ローラ76を常温で24時間放置した。
【0119】
その結果、実施例1の弾性ローラは、試験後に、同様にして、さらに100時間連続稼動させたが、スリーブ4の両端部が発泡弾性層3から剥離することなく、発泡弾性層3の発泡構造が破損、損傷等することもなく、耐久性に優れていることが確認できた。したがって、この弾性ローラは、画像形成装置の定着装置に定着ローラとしてかなりの長い期間にわたって装着された場合にも、無端ベルト及び加圧ローラ等の被当接体を破壊する可能性も極めて小さく、かつ、高品質の画像を長期間にわたって形成することができると予想された。これに対して、比較例1の弾性ローラは、試験後に、同様にして、さらに55時間連続稼動させた時点で、スリーブ4の両端部が発泡弾性層3からわずかに剥離し、実施例1の弾性ローラに比べると耐久性が劣ることが確認できた。したがって、この弾性ローラは、画像形成装置の定着装置に定着ローラとしてかなりの長い期間にわたって装着された場合には、無端ベルト及び加圧ローラ等の被当接体を破壊する可能性が高く、かつ、高品質の画像を形成することはできないと予想された。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、この発明に係る弾性ローラの一実施例を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、この発明に係る弾性ローラの一実施例を示す概略断面図である。
【図3】図3は、この発明に係る弾性ローラの別の一実施例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、ローラ原体の一実施例を示す概略斜視図である。
【図5】図5は、加圧装置にローラ原体及びスリーブを収納した状態を説明する概略説明図である。
【図6】図6は、加圧装置においてローラ原体をスリーブに挿入した状態を説明する概略説明図である。
【図7】図7は、減圧装置にローラ原体及びスリーブを収納した状態を説明する概略説明図である。
【図8】図8は、減圧装置においてローラ原体をスリーブに挿入した状態を説明する概略説明図である。
【図9】図9は、スリーブに挿入されたローラ原体における発泡弾性層の両端部に端部押さえ部材を装着入した状態を示す概略断面図である。
【図10】図10は、この発明に係る画像形成装置の一実施例を示す概略説明図である。
【図11】図11は、耐久性試験装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0121】
1 弾性ローラ
2 軸体
3 発泡弾性層
4 スリーブ
5 接着剤層
6 端部接着剤層
7 ローラ原体
9 端部押さえ部材
10 加圧装置
11 筐体
12、13 閉塞端部
14 加圧機
15 載置部材
16 載置面
17 封止部材
20 挿入装置
21、22 支持軸
23、24 挟持部材
30 減圧装置
31 減圧機
【0122】
40 画像形成装置
41 像担持体
42 帯電手段
43
44 転写手段
45 クリーニング手段
46 記録体
50 現像手段
51 現像剤収納部
52 現像剤
53 攪拌機
54 現像剤担持体
55 現像剤規制部材
60 定着装置
61 定着ローラ
62 加圧ローラ
63 外部加熱手段
64 筐体
65 開口
70 耐久性試験装置
71 加熱ローラ
72 内部ヒータ
73 外部ヒータ
74 試験ローラ装着部
75 押圧力調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面に形成された発泡弾性層と、前記発泡弾性層の両端部それぞれが軸線方向に突出するように、前記発泡弾性層の外周面に設けられたスリーブと、前記スリーブの外径以下の外径を有し、前記スリーブから突出した前記発泡弾性層の前記両端部に形成された端部接着剤層とを備えたことを特徴とする弾性ローラ。
【請求項2】
前記発泡弾性層と前記スリーブとの間に接着剤層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の弾性ローラ。
【請求項3】
前記端部接着剤層は、その端部に向かって次第に減少する外径を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性ローラ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性ローラを備えた定着装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性ローラを備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−299188(P2008−299188A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146838(P2007−146838)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【復代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
【Fターム(参考)】