説明

弾性波デュプレクサ

【課題】アイソレーション特性を改善することができる弾性波デュプレクサを提供する。
【解決手段】基板12の主面12sにフリップチップ実装された送信用弾性波フィルタ素子14及び受信用弾性波フィルタ素子14が、封止部15aで封止されている。封止部15aは、(i)第1の誘電材料を用いて、基板12の主面12sに接するように形成された基部16aと、(ii)第1の誘電材料の誘電率よりも低い誘電率を有する第2の誘電材料を用いて、少なくとも、封止部15aのうち送信用弾性波フィルタ素子14に関して基板12とは反対側において送信用弾性波フィルタ素子14に対向する領域と、封止部15aのうち受信用弾性波フィルタ素子14に関して基板12とは反対側において受信用弾性波フィルタ素子14に対向する領域との一方の一部に形成された低誘電率部18aを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デュプレクサに関し、詳しくは、基板にフリップチップ実装され、かつ封止された送信用弾性波フィルタ素子及び受信用弾性波フィルタ素子を備えた弾性波デュプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に弾性表面波素子を実装し、封止樹脂で封止するように構成された種々の弾性表面波装置が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、図15の断面図に示す弾性表面波装置が開示されている。この弾性表面波装置は、図15に示すように、実装基板110と、この実装基板110上に実装された弾性表面波素子120と、この弾性表面波素子120を気密封止する封止部130とを備え、集合基板140上に複数個分が形成された後、切断位置141で切断されて個片化される。実装基板110は、一方の面に導体パターン111を有している。この導体パターン111は、実装基板110内を通過して、実装基板110の他方の面に設けられた電極に接続されている。実装基板110は、例えばセラミック又は樹脂で形成されている。弾性表面波素子120は、圧電基板121と、この圧電基板121の一方の面に形成された櫛形電極122及び導体パターン123と、導体パターン123の端部に形成された金等よりなるバンプ124とを有している。導体パターン123は、櫛形電極122に電気的に接続されている。弾性表面波素子120は、櫛形電極122によって発生される弾性表面波を使用する素子であり、フィルタ素子、共振器等として利用される。
【0004】
弾性表面波素子120は、櫛形電極122と実装基板110の一方の面とが対向し且つ両者の間に空間133が形成されるように実装基板110上に実装され、フリップチップボンディングによって接続電極124が実装基板110の導体パターン111に電気的に接続されている。封止部130は、櫛形電極122と実装基板110の一方の面との間に形成される空間133を除いて弾性表面波素子120を覆うように配置された封止材150よりなる。封止材150は、例えば、硬化処理前は、流動性を有すると共に空間133内に容易には入り込まないような適当な粘性を有し、硬化処理によって硬化及び乾燥する樹脂である。
【0005】
また、特許文献2には、図16に示す弾性表面波装置が開示されている。図16(a)は、弾性表面波装置の透視図である。図16(b)は、図16(a)の線A−A'に沿って切断した切断面の断面図である。この弾性表面波装置は、図16(a)及び(b)に示すように、櫛歯型電極214a,214bを有する弾性表面波素子201と、弾性表面波素子201の上に配置されたバンプ205a〜205gと、このバンプ205a〜205gを介して、電気的及び機械的に弾性表面波素子1に接続されたベース基板204と、弾性表面波素子201を機械的ストレス及び環境ストレスから保護する封止部材202とを有している。弾性表面波素子201のベース基板204への実装は、弾性表面波素子201に超音波を印加し、バンプ205a〜205gを溶融させることにより、ベース基板204と弾性表面波素子201とを接合させる。弾性表面波素子201の櫛歯型電極214a,214bの配置面は、ベース基板204及び弾性表面波素子201の背面に被着された封止部材202により封止されている。バンプ205a〜205gは、金や銀等からなる。封止部材202は、弾性表面波素子201の表面保護膜として機能し、弾性表面波素子201を環境ストレス及び機械的ストレスから保護することができる。封止部材202は、例えば、ポリイミド樹脂、PP/EPR系ポリマーアロイ等の高分子系材料からなる。弾性表面波素子201は、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等からなる圧電基板203と、圧電基板203のベース基板204に対向する一主面に配置された櫛歯型電極214a,214bと、この櫛歯型電極214a,214bと同一面に配置され、櫛歯型電極214a,214bと電気的に接続されたボンディングパッドを備えている。また、ボンディングパッドには、櫛歯型電極214a,214bにベース基板204側から信号等を供給するためのバンプ205a〜205gが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−100945号公報
【特許文献2】特開2003−87095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図15、図16に示された構成を、送信用弾性表面波フィルタ素子及び受信用弾性表面波フィルタ素子を備える弾性波デュプレクサに適用すると、送信用弾性表面波フィルタ素子及び受信用弾性表面波フィルタ素子は、基板にフリップチップ実装され、かつ封止樹脂により封止される。弾性表面波フィルタ素子は、櫛歯型電極が形成された一方の主面が基板に対向し、反対側の他方の主面上には高分子系材料(樹脂)からなる封止部が存在する。この封止部により、弾性表面波フィルタ素子の他方の主面上に発生する容量に起因する直達波が発生する。
【0008】
すなわち、例えば図11の回路図に示すように、入力端子61,62と出力端子63,64を備えた2端子対の弾性表面波フィルタ素子60を考えたとき、図12の回路図において矢印70,71で示すように、弾性表面波フィルタ素子60を経ずに、入力端子61,62から出力端子63,64に直接伝わる信号が存在し、この信号を直達波と言う。
【0009】
直達波は、図13の等価回路図に示すように、入力端子61,62と出力端子63,64との間の相互インダクタンスによる成分74と、入力端子61,62と出力端子63,64との間の容量結合による成分76と、グランドの浮きによる成分78などを含む。
【0010】
直達波は、弾性波デュプレクサの送信端子−第1受信端子間、及び送信端子−第2受信端子間のアイソレーション特性を劣化させる。
【0011】
本発明は、かかる実情に鑑み、アイソレーション特性を改善することができる弾性波デュプレクサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した弾性波デュプレクサを提供する。
【0013】
弾性波デュプレクサは、(a)基板と、(b)前記基板の主面にフリップチップ実装された送信用弾性波フィルタ素子と、(c)前記基板の前記主面にフリップチップ実装された受信用弾性波フィルタ素子と、(d)前記基板の前記主面にフリップチップ実装された前記送信用弾性波フィルタ素子及び前記受信用弾性波フィルタ素子を覆うように前記基板の前記主面に設けられ、前記送信用弾性波フィルタ素子及び前記受信用弾性波フィルタ素子を封止する封止部とを備える。前記封止部は、(i)第1の誘電材料を用いて、前記基板の前記主面に接するように形成された基部と、(ii)前記第1の誘電材料の誘電率よりも低い誘電率を有する第2の誘電材料を用いて、少なくとも、前記封止部のうち前記送信用弾性波フィルタ素子に関して前記基板とは反対側において前記送信用弾性波フィルタ素子に対向する領域と、前記封止部のうち前記受信用弾性波フィルタ素子に関して前記基板とは反対側において前記受信用弾性波フィルタ素子に対向する領域との一方の一部に形成された低誘電率部とを含む。
【0014】
上記構成において、送信用弾性波フィルタ素子と受信用弾性波フィルタ素子とは、基板の同一主面にフリップ実装され、封止部によって封止される。封止部のうち送信用弾性波フィルタ素子に関して基板とは反対側において送信用弾性波フィルタ素子に対向する領域、すなわち送信用弾性波フィルタ素子を覆う領域や、封止部のうち受信用弾性波フィルタ素子に関して基板とは反対側において受信用弾性波フィルタ素子に対向する領域、すなわち受信用弾性波フィルタ素子を覆う領域に、封止部の基部よりも誘電率が低い低誘電率部が形成される。封止部は、基部及び低誘電率部以外を含んでいてもよい。
【0015】
上記構成によれば、封止部全体を同じ誘電率の誘電材料で形成する場合に比べ、送信用弾性波フィルタ素子や受信用弾性波フィルタ素子に対向するように、相対的に誘電率が低い低誘電率部を形成することで、直達波の原因になる容量成分を小さくすることができる。これにより、直達波を小さくすることができる。すなわち、送信用弾性波フィルタ素子や受信用弾性波フィルタ素子の入力端子と出力端子との間において、送信用弾性波フィルタ素子や受信用弾性波フィルタ素子を介さずに信号が直接伝達する現象を抑制することができる。その結果、弾性波デュプレクサの送信端子−第1受信端子間、及び送信端子−第2受信端子間の高アイソレーションを実現できる。
【0016】
好ましい一態様において、前記封止部の前記低誘電率部は、前記送信用弾性波フィルタ素子と前記受信用弾性波フィルタ素子との少なくとも一方との間に間隔を設けて形成される。前記封止部の前記低誘電率部の厚さは、前記封止部の前記低誘電率部と前記送信用弾性波フィルタ素子との間に延在する前記封止部の厚さと、前記封止部の前記低誘電率部と前記受信用弾性波フィルタ素子との間に延在する前記封止部の厚さとの少なくとも一方よりも大きい。
【0017】
この場合、低誘電率部は、低誘電率部よりも薄い基部を介して送信用弾性波フィルタ素子や受信用弾性波フィルタ素子に対向する。送信用弾性波フィルタ素子や受信用フィルタ素子は、基部のみで封止することができるので、低誘電率部を形成する第2の誘電材料の選択の自由度が増す。
【0018】
好ましい他の態様において、前記封止部の前記低誘電率部は、前記送信用弾性波フィルタ素子の前記基板とは反対側の部分と、前記受信用弾性波フィルタ素子の前記基板とは反対側の部分との少なくとも一方に接する。
【0019】
この場合、低誘電率部は、送信用弾性フィルタ素子や受信用フィルタ素子に接するように形成されるため、低誘電率部が基部を介して送信用弾性フィルタ素子や受信用フィルタ素子と対向するように形成される場合よりも、容量成分を小さくして、直達波を小さくすることができる。
【0020】
好ましくは、前記第1の誘電材料と前記第2の誘電材料との少なくとも一方が樹脂である。
【0021】
この場合、封止部を形成することが容易である。
【0022】
好ましい別の態様において、前記送信用弾性波フィルタ素子と前記受信用弾性波フィルタ素子とは、それぞれ別個のチップ素子に形成される。
【0023】
この場合、2個以上のチップ素子を用いて、弾性波デュプレクサを形成することができる。
【0024】
好ましいさらに別の態様において、前記送信用弾性波フィルタ素子と前記受信用弾性波フィルタ素子とが同一のチップ素子に形成される。
【0025】
この場合、基板にチップ素子を実装する工程が簡単になる。
【0026】
好ましくは、前記受信用弾性波フィルタ素子がバランス素子である。
【0027】
この場合、バランス素子上の領域において封止部を薄くして容量の発生を抑え、直達成分を小さくして、アイソレーション特性を改善することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の弾性波デュプレクサは、アイソレーション特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】弾性波デュプレクサの断面図である。(実施例1)
【図2】弾性波デュプレクサの製造工程を示す断面図である。(実施例1)
【図3】弾性波デュプレクサの製造工程を示す断面図である。(実施例1)
【図4】弾性波デュプレクサの断面図である。(実施例2)
【図5】弾性波デュプレクサの断面図である。(実施例3)
【図6】弾性波デュプレクサの断面図である。(実施例4)
【図7】弾性波デュプレクサの断面図である。(実施例5)
【図8】弾性波デュプレクサの製造工程を示す断面図である。(実施例5)
【図9】アイソレーション特性を示すグラフである。(実施例1、比較例)
【図10】アイソレーション特性を示すグラフである。(実施例1、比較例)
【図11】2端子対の回路図である。
【図12】直達波成分の説明図である。
【図13】減衰量劣化の等価回路図である。
【図14】バランス型デュプレクサの回路図である。
【図15】弾性表面波装置の断面図である。(従来例1)
【図16】弾性表面波装置の(a)透視図、(b)断面図である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の弾性波デュプレクサの実施の形態について、図1〜図10、図13及び図14を参照しながら説明する。
【0031】
<実施例1> 実施例1の弾性波デュプレクサ10aについて、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、弾性波デュプレクサ10aの断面図である。図1に示すように、弾性波デュプレクサ10aは、基板12の主面である上面12sに、送信用弾性波フィルタ素子と受信用弾性波フィルタ素子の2つチップ素子14がフリップチップボンディングにより実装され、2つのチップ素子14は封止部15aにより封止されている。
【0033】
封止部15aは、樹脂等の誘電材料により形成される。封止部15aは、基部16aと低誘電率部18aとを含む。基部16aは、基板12の上面12sに接し、基板12とは反対側の上面16kに凹部16sが形成されている。凹部16sは、チップ素子14の上面14sの少なくとも一部に対向するように、形成される。凹部16s内に、基部16aを形成する第1の誘電材料よりも低い誘電率を有する第2の誘電材料を用いて、低誘電率部18aが形成される。
【0034】
低誘電率部18aとチップ素子14との間には、低誘電率部18aよりも薄い基部16aが延在している。すなわち、低誘電率部18aの厚さ(低誘電率部18aの上面18kと凹部16sの底面16tとの間の寸法)は、封止部15aのチップ素子14上における厚み(凹部16sの底面16tとチップ素子14の上面14sとの間の寸法)よりも大きい。
【0035】
次に、弾性波デュプレクサ10aの製造方法について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2及び図3は、製造工程を示す断面図である。
【0036】
まず、図2に示すように、セラミック基板等の基板12の上面12sに、送信用弾性波フィルタ素子と受信用弾性波フィルタ素子の2つのチップ素子14をフリップチップボンディングし、その上にチップ素子14を覆うように、第1の誘電材料からなる未硬化のシート樹脂16を重ねる。シート樹脂16は、硬化処理前は、流動性を有すると共に基板12とチップ素子14との間の空間13内に容易には入り込まないような適当な粘性を有し、硬化処理によって硬化及び乾燥する樹脂を、シート状に形成したものである。
【0037】
次いで、図3に示すように、シート樹脂16の上面16kのうち、チップ素子14に略対向する位置に凹部16sを形成する。凹部16sは、硬化処理したシート樹脂16を硬化処理した後、シート樹脂16を部分的に研磨等で除去するなどの方法で形成することができるが、方法は特に問わない。基板12にシート樹脂16を圧着させるために用いる押圧治具のシート樹脂16を押さえる面に突起を設けておき、突起をシート樹脂16の上面16kに食い込ませることにより凹部16sを形成した後、シート樹脂を硬化処理するようにしてもよい。
【0038】
次いで、第2の誘電材料を塗布、印刷などの方法により凹部16sに充填して、図1に示すように、低誘電率部18aを形成する。
【0039】
シート樹脂16に、低誘電率部18aになる部材を食い込ませて、凹部16sの形成と同時に低誘電率部18aを形成した後、シート樹脂16を硬化処理してもよい。
【0040】
<作製例> 図9及び図10は、作製例の弾性波デュプレクサのアイソレーション特性を示すグラフである。実線は、実施例1の作製例のアイソレーション特性を示す。破線は、比較例の作製例のアイソレーション特性を示す。比較例は、図2のようにシート樹脂16でチップ素子14を封止しただけであり、凹部16s及び低誘電率部18aが形成されていない。
【0041】
作製例では、送信用弾性波フィルタ素子にラダー型の弾性表面波フィルタ素子を用いた。受信用弾性波フィルタ素子には、弾性表面波共振子を縦結合したバランスフィルタ素子を用いた。受信用弾性波フィルタ素子は、送信用弾性波フィルタ素子よりも周波数が高い。
【0042】
作製例の弾性波デュプレクサはバランス型であり、図14の回路図に示すように、ANT、TX、RX1、RX2の計4ポートを持つ。RX1とRX2は逆相であり、バランスRXポートRX1,RX2は、増幅器AMPに接続される。アイソレーション特性は、通常、TXポートからバランスRXポートの減衰量で示される。バランス変換前の4ポートSパラメータにおける、S32、S42で示されるシングルエンドの特性において、S32は、TX−RX1であり、S42は、TX−RX2である。図9は、S32の減衰量を示している。図10は、S42の減衰量を示している。
【0043】
図9及び図10から、封止部15aに低誘電率部18aを形成することにより、通過帯域よりも低周波側で減衰量が大きくなり、アイソレーション特性が改善されることが分かる。
【0044】
図13の等価回路モデルで、入力端子61,62と出力端子63,64との間の容量結合による成分76をもたらす直達の容量Cの影響を考慮して解析したところ、図9及び図10と同等なアイソレーション特性が得られた。これによって、直達の容量Cを小さくすることで、アイソレーション特性が改善されることが分かる。
【0045】
すなわち、弾性波デュプレクサのバランス側の低周波側のシングルエンドのアイソレーション特性において、基板からの漏れ分によって容量が発生して、ANT−RX間に寄生容量が発生し、直達成分となる。封止部の樹脂の厚みが厚く、誘電率が高いほど、この直達成分が大きくなる。実施例1の封止部15aのように、チップ素子14上の基部16aを薄くし、誘電率が小さい材料で形成した低誘電率部18aに置き換えることで、容量の発生を抑え、直達成分を小さくして、アイソレーション特性を改善することができる。
【0046】
なお、バランス型の弾性波デュプレクサの場合、バランス特性で見ると、デイファレンシャルではキャンセルされてアイソレーションの劣化はないが、コモンモード、あるいは、各シングルエンドでの特性劣化が見えることになる。
【0047】
直達の容量を減少する構造であれば、バランス型以外の弾性波デュプレクサについても、アイソレーション特性の改善が可能である。
【0048】
また、以下の実施例2〜5のように構成しても、直達の容量を減少させることができるので、アイソレーション特性改善効果を得ることができる。
【0049】
<実施例2> 実施例2の弾性波デュプレクサ10bについて、図4を参照しながら説明する。図4は、弾性波デュプレクサ10bの断面図である。
【0050】
図4に示すように、実施例2の弾性波デュプレクサ10bは、実施例1の弾性波デュプレクサ10aと略同様に構成される。以下では、実施例1の弾性波デュプレクサ10aとの相違点を中心に説明し、実施例1と同じ構成部分には同じ符号を用いる。
【0051】
実施例2の弾性波デュプレクサ10bは、封止部15bの構成が、実施例1とは異なる。すなわち、封止部15bの低誘電率部18bは、送信用弾性波フィルタ素子と受信用弾性波フィルタ素子のチップ素子14の上面14sに接している。図3では、低誘電率部18bは封止部15bの基部16bで覆われているが、実施例1のように、低誘電率部18bの上面18kが基部16bの上面16kに露出するようにしてもよい。
【0052】
弾性波デュプレクサ10bは、例えば、次のように製造する。すなわち、チップ素子14がフリップチップ実装された基板12の上面14sにシート樹脂を重ねた後、シート樹脂にチップ素子14の上面14sが露出する貫通穴を形成し、この貫通穴に第2の誘電材料を充填して低誘電率部18bを形成する。その後、さらにシート樹脂を重ねる。この場合、2枚のシート樹脂により基部16bが形成される。
【0053】
あるいは、基板12にフリップチップ実装されたチップ素子14の上面14sに低誘電率部18bとなる部材を配置した後、シート樹脂を重ねる等により、弾性波デュプレクサ10bを形成してもよい。
【0054】
弾性波デュプレクサ10bは、受信用弾性波フィルタ素子及び送信用弾性波フィルタ素子のチップ素子14の直ぐ上に低誘電率部18bが配置されることにより、実施例1と同様に、実効的な誘電率を低くすることができるため、アイソレーション特性を改善することができる。
【0055】
また、弾性波デュプレクサ10bの上面が、封止部15bの基部16bの上面16kのみで形成されるため、弾性波デュプレクサ10bの厚みを一定にすることが容易である。
【0056】
<実施例3> 実施例3の弾性波デュプレクサ10cについて、図5を参照しながら説明する。図5は、弾性波デュプレクサ10cの断面図である。
【0057】
図5に示すように、実施例3の弾性波デュプレクサ10cは、実施例1の弾性波デュプレクサ10aと略同様に構成される。
【0058】
実施例3の弾性波デュプレクサ10cは、封止部15cの構成が、実施例1とは異なる。すなわち、封止部15cは、第1の誘電材料からなる下層16cと、第1の誘電材料の誘電率よりも低い誘電率を有する第2の誘電材料からなる上層18cの2層に分けて形成されている。封止部15cの下層16cは、送信用弾性波フィルタ素子と受信用弾性波フィルタ素子の2つのチップ素子14の側面14tの中間位置までの厚みになるように、基板12の上面12sに形成されている。その上に、封止部15cの上層18cが、送信用弾性波フィルタ素子と受信用弾性波フィルタ素子の2つのチップ素子14の上面14sを覆うように形成されている。チップ素子14は、基板12と、封止部15cの下層16c及び上層18cとで取り囲まれて封止される。
【0059】
封止部15cの下層16cと上層18cは、シート樹脂を重ねる等により形成することができる。
【0060】
弾性波デュプレクサ10cは、受信用弾性波フィルタ素子及び送信用弾性波フィルタ素子のチップ素子14の基板12とは反対側の上部の周囲に、相対的に誘電率が低い上層18cを配置することにより、実施例1と同様に、実効的な誘電率を低くすることができるため、アイソレーション特性を改善することができる。
【0061】
また、弾性波デュプレクサ10cの上面が、封止部15cの上層18cの上面18pのみで形成されるため、弾性波デュプレクサ10cの厚みを一定にすることが容易である。
【0062】
<実施例4> 実施例4の弾性波デュプレクサ10dについて、図6を参照しながら説明する。図6は、弾性波デュプレクサ10dの断面図である。
【0063】
図6に示すように、実施例4の弾性波デュプレクサ10dは、実施例3の弾性波デュプレクサ10cと略同様に構成される。
【0064】
実施例4の弾性波デュプレクサ10dは、封止部15dの構成が、実施例3とは異なる。すなわち、封止部15dの下層16dは、基板12の上面12sに実装された送信用弾性波フィルタ素子と受信用弾性波フィルタ素子の2つのチップ素子14の上面14sと同じ高さになるように形成されている。その上に、チップ素子14の上面14sを覆うように、上層18dが形成されている。
【0065】
弾性波デュプレクサ10dは、受信用弾性波フィルタ素子及び送信用弾性波フィルタ素子のチップ素子14の上面14sよりも上側(基板12とは反対側)に、相対的に誘電率の低い上層18cを形成することにより、実施例1と同様に、実効的な誘電率を低くすることができるため、アイソレーション特性を改善することができる。
【0066】
また、弾性波デュプレクサ10dの上面が、封止部15dの上層18dの上面18pのみで形成されるため、弾性波デュプレクサ10dの厚みを一定にすることが容易である。
【0067】
<実施例5> 実施例5の弾性波デュプレクサ10eについて、図7及び図8を参照しながら説明する。
【0068】
図7は、弾性波デュプレクサ10eの断面図である。図7に示すように、実施例5の弾性波デュプレクサ10eは、実施例1の弾性波デュプレクサ10aと同様に、基板12に実装されたチップ素子14xが封止部15eで封止されている。
【0069】
実施例5の弾性波デュプレクサ10eは、実施例1とは異なり、送信用弾性波フィルタ素子と受信用弾性波フィルタ素子が同じチップ素子14xに形成されている。
【0070】
封止部15eの基部16eの上面16kには、凹部16sが形成されている。この凹部16sは、直達の容量の発生を少なくするため、少なくとも、チップ素子14xにおいて送信用弾性波フィルタ素子と受信用弾性波フィルタ素子とがそれぞれが形成された部分に対向するように形成する。
【0071】
実施例5の弾性波デュプレクサ10eは、実施例1と同様に製造することができる。例えば、図8の断面図に示すように、チップ素子14xがフリップチップ実装された基板12の上面12sに、第1の誘電材料からなるシート樹脂16を重ね、シート樹脂16に凹部16sを形成する。そして、第1の誘電材料よりも低い誘電率を有する第2の誘電材料を用いて、図7のように、凹部16s内に低誘電率部18eを形成する。
【0072】
弾性波デュプレクサ10eは、チップ素子14xに形成された受信用弾性波フィルタ素子と送信用弾性波フィルタ素子の直ぐ上に低誘電率部18eが配置される。これにより、実施例1と同様に、実効的な誘電率を低くすることができるため、アイソレーション特性を改善することができる。
【0073】
なお、受信用弾性波フィルタ素子と送信用弾性波フィルタ素子の両方が形成されたチップ素子を備えた弾性波デュプレクサの封止部は、実施例2〜4の封止部のように形成してもよい。
【0074】
実施例1〜4において、低誘電率部18a〜18dは、図1及び図4〜図6のようにチップ素子14より大きくなっているが、小さくても同等の効果が得られる。また、低誘電率材料を入れない形状、すなわち、図3、図8の状態でも、誘電率の低い空気で満たされているのと同等であり、低誘電率材料を入れて低誘電率部を形成した場合と同等、又は、それ以上の減衰量向上効果が得られる。
【0075】
<まとめ> 基板にフリップチップ実装された送信用弾性波フィルタ素子及び受信用弾性波フィルタ素子を封止する封止部の一部に、相対的に誘電率が低い部分を形成することにより、弾性波デュプレクサの送信端子−第1受信端子間、及び送信端子−第2受信端子間の高アイソレーションを実現できる。
【0076】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0077】
例えば、弾性波デュプレクサが備える送信用弾性波フィルタ素子及び受信用弾性波フィルタ素子は、弾性表面波(SAW)に限らず、境界波、バルク弾性波等の弾性波を用いるフィルタ素子であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
10a〜10e 弾性波デュプレクサ
12 基板
12s 上面(主面)
14 チップ素子(送信用弾性波フィルタ素子、受信用弾性波フィルタ素子)
14s 上面
14t 側面
15a〜15e 封止部
16a,16b 基部
16c,16d 下層(基部)
16e 基部
16s 凹部
16t 底面
16k 上面
18a,18b 低誘電率部
18c,18d 上層(低誘電率部)
18e 低誘電率部
18k,18p 上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面にフリップチップ実装された送信用弾性波フィルタ素子と、
前記基板の前記主面にフリップチップ実装された受信用弾性波フィルタ素子と、
前記基板の前記主面にフリップチップ実装された前記送信用弾性波フィルタ素子及び前記受信用弾性波フィルタ素子を覆うように前記基板の前記主面に設けられ、前記送信用弾性波フィルタ素子及び前記受信用弾性波フィルタ素子を封止する封止部と、
を備え、
前記封止部は、
第1の誘電材料を用いて、前記基板の前記主面に接するように形成された基部と、
前記第1の誘電材料の誘電率よりも低い誘電率を有する第2の誘電材料を用いて、少なくとも、前記封止部のうち前記送信用弾性波フィルタ素子に関して前記基板とは反対側において前記送信用弾性波フィルタ素子に対向する領域と、前記封止部のうち前記受信用弾性波フィルタ素子に関して前記基板とは反対側において前記受信用弾性波フィルタ素子に対向する領域との一方の一部に形成された低誘電率部と、
を含むことを特徴とする弾性波デュプレクサ。
【請求項2】
前記封止部の前記低誘電率部は、前記送信用弾性波フィルタ素子と前記受信用弾性波フィルタ素子との少なくとも一方との間に間隔を設けて形成され、
前記封止部の前記低誘電率部の厚さは、前記封止部の前記低誘電率部と前記送信用弾性波フィルタ素子との間に延在する前記封止部の厚さと、前記封止部の前記低誘電率部と前記受信用弾性波フィルタ素子との間に延在する前記封止部の厚さとの少なくとも一方よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の弾性波フィルタ素子。
【請求項3】
前記封止部の前記低誘電率部は、前記送信用弾性波フィルタ素子の前記基板とは反対側の部分と、前記受信用弾性波フィルタ素子の前記基板とは反対側の部分との少なくとも一方に接することを特徴とする、請求項1に記載の弾性波フィルタ素子。
【請求項4】
前記第1の誘電材料と前記第2の誘電材料の少なくとも一方が樹脂であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の弾性波デュプレクサ。
【請求項5】
前記送信用弾性波フィルタ素子と前記受信用弾性波フィルタ素子とは、それぞれ別個のチップ素子に形成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の弾性波デュプレクサ。
【請求項6】
前記送信用弾性波フィルタ素子と前記受信用弾性波フィルタ素子とが同一のチップ素子に形成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の弾性波デュプレクサ。
【請求項7】
前記受信用弾性波フィルタ素子がバランス素子であることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の弾性波デュプレクサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−151552(P2011−151552A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10279(P2010−10279)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】