説明

弾性波デュプレクサ

【課題】アイソレーション特性を改善することができる弾性波デュプレクサを提供する。
【解決手段】基板12の主面12sに、受信用弾性波フィルタ素子14と送信用弾性波フィルタ素子15とがフリップチップ実装される。基板12の主面12s上に少なくとも一方の素子14,15を覆い、封止する封止部16が設けられる。封止部16は、受信用弾性波フィルタ素子14に関して基板12とは反対側において受信用弾性波フィルタ素子14に対向する受信素子上領域14kと、送信用弾性波フィルタ素子15に関して基板とは反対側において送信用弾性波フィルタ素子15に対向する送信素子上領域15kとにおいて、厚みが異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デュプレクサに関し、詳しくは、基板にフリップチップ実装され、かつ封止された送信用弾性波フィルタ素子及び受信用弾性波フィルタ素子を備えた弾性波デュプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に弾性表面波素子を実装し、封止樹脂で封止するように構成された種々の弾性表面波装置が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、図14の断面図に示す弾性表面波装置が開示されている。この弾性表面波装置は、図14に示すように、実装基板110と、この実装基板110上に実装された弾性表面波素子120と、この弾性表面波素子120を気密封止する封止部130とを備え、集合基板140上に複数個分が形成された後、切断位置141で切断されて個片化される。実装基板110は、一方の面に導体パターン111を有している。この導体パターン111は、実装基板110内を通過して、実装基板110の他方の面に設けられた電極に接続されている。実装基板110は、例えばセラミック又は樹脂で形成されている。弾性表面波素子120は、圧電基板121と、この圧電基板121の一方の面に形成された櫛形電極122及び導体パターン123と、導体パターン123の端部に形成された金等よりなるバンプ124とを有している。導体パターン123は、櫛形電極122に電気的に接続されている。弾性表面波素子120は、櫛形電極122によって発生される弾性表面波を使用する素子であり、フィルタ素子、共振器等として利用される。
【0004】
弾性表面波素子120は、櫛形電極122と実装基板110の一方の面とが対向し且つ両者の間に空間133が形成されるように実装基板110上に実装され、フリップチップボンディングによって接続電極124が実装基板110の導体パターン111に電気的に接続されている。封止部130は、櫛形電極122と実装基板110の一方の面との間に形成される空間133を除いて弾性表面波素子120を覆うように配置された封止材150よりなる。封止材150は、例えば、硬化処理前は、流動性を有すると共に空間133内に容易には入り込まないような適当な粘性を有し、硬化処理によって硬化及び乾燥する樹脂である。
【0005】
また、特許文献2には、図15に示す弾性表面波装置が開示されている。図15(a)は、弾性表面波装置の透視図である。図15(b)は、図15(a)の線A−A'に沿って切断した切断面の断面図である。この弾性表面波装置は、図15(a)及び(b)に示すように、櫛歯型電極214a,214bを有する弾性表面波素子201と、弾性表面波素子201の上に配置されたバンプ205a〜205gと、このバンプ205a〜205gを介して、電気的及び機械的に弾性表面波素子1に接続されたベース基板204と、弾性表面波素子201を機械的ストレス及び環境ストレスから保護する封止部材202とを有している。弾性表面波素子201のベース基板204への実装は、弾性表面波素子201に超音波を印加し、バンプ205a〜205gを溶融させることにより、ベース基板204と弾性表面波素子201とを接合させる。弾性表面波素子201の櫛歯型電極214a,214bの配置面は、ベース基板204及び弾性表面波素子201の背面に被着された封止部材202により封止されている。バンプ205a〜205gは、金や銀等からなる。封止部材202は、弾性表面波素子201の表面保護膜として機能し、弾性表面波素子201を環境ストレス及び機械的ストレスから保護することができる。封止部材202は、例えば、ポリイミド樹脂、PP/EPR系ポリマーアロイ等の高分子系材料からなる。弾性表面波素子201は、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等からなる圧電基板203と、圧電基板203のベース基板204に対向する一主面に配置された櫛歯型電極214a,214bと、この櫛歯型電極214a,214bと同一面に配置され、櫛歯型電極214a,214bと電気的に接続されたボンディングパッドを備えている。また、ボンディングパッドには、櫛歯型電極214a,214bにベース基板204側から信号等を供給するためのバンプ205a〜205gが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−100945号公報
【特許文献2】特開2003−87095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図14、図15に示された構成を、送信用弾性表面波フィルタ素子及び受信用弾性表面波フィルタ素子を備える弾性波デュプレクサに適用すると、送信用弾性表面波フィルタ素子及び受信用弾性表面波フィルタ素子は、基板にフリップチップ実装され、かつ封止樹脂により封止される。弾性表面波フィルタ素子は、櫛歯型電極が形成された一方の主面が基板に対向し、反対側の他方の主面上には高分子系材料(樹脂)からなる封止部が存在する。この封止部により、弾性表面波フィルタ素子の他方の主面上に発生する容量に起因する直達波が発生する。
【0008】
すなわち、例えば図10の回路図に示すように、入力端子61,62と出力端子63,64を備えた2端子対の弾性表面波フィルタ素子60を考えたとき、図11の回路図において矢印70,71で示すように、弾性表面波フィルタ素子60を経ずに、入力端子61,62から出力端子63,64に直接伝わる信号が存在し、この信号を直達波と言う。
【0009】
直達波は、図12の等価回路図に示すように、入力端子61,62と出力端子63,64との間の相互インダクタンスによる成分74と、入力端子61,62と出力端子63,64との間の容量結合による成分76と、グランドの浮きによる成分78などを含む。
【0010】
直達波は、弾性波デュプレクサの送信端子−第1受信端子間、及び送信端子−第2受信端子間のアイソレーション特性を劣化させる。
【0011】
本発明は、かかる実情に鑑み、アイソレーション特性を改善することができる弾性波デュプレクサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した弾性波デュプレクサを提供する。
【0013】
弾性波デュプレクサは、(a)基板と、(b)前記基板の主面にフリップチップ実装された送信用弾性波フィルタ素子と、(c)前記基板の前記主面にフリップチップ実装された受信用弾性波フィルタ素子と、(d)前記基板の前記主面にフリップチップ実装された前記送信用弾性波フィルタ素子及び前記受信用弾性波フィルタ素子の少なくとも一方を覆うように前記基板の前記主面に設けられ、前記送信用弾性波フィルタ素子及び前記受信用弾性波フィルタ素子の少なくとも一方を封止する封止部とを備える。前記封止部は、前記送信用弾性波フィルタ素子に関して前記基板とは反対側において前記送信用弾性波フィルタ素子に対向する送信素子上領域と、前記受信用弾性波フィルタ素子に関して前記基板とは反対側において前記受信用弾性波フィルタ素子に対向する受信素子上領域とにおいて、厚みが異なる。
【0014】
上記構成において、送信用弾性波フィルタ素子と受信用弾性波フィルタ素子とは、基板の同一主面にフリップ実装される。封止部は、送信用弾性波フィルタ素子と受信用弾性波フィルタ素子の少なくとも一方を覆うように、送信素子上領域と受信素子上領域の少なくとも一方に形成されていればよく、送信素子上領域又は受信素子領域のいずれか一方のみに封止部が形成され、他方には封止部が形成されていない構成であってもよい。すなわち、送信用弾性波フィルタ素子又は受信用弾性波フィルタ素子が封止されていない構成であってもよい。
【0015】
上記構成によれば、送信素子上領域と受信素子上領域とで封止部の厚みを異ならせることにより、送信素子上領域の容量に起因する直達波成分と、受信素子上領域の容量に起因する直達波成分とについて、いずれか一方の発生が他方よりも少なくなるようにすることができる。これによって、送信用弾性波フィルタ素子や受信用弾性波フィルタ素子の入力端子と出力端子との間において、送信用弾性波フィルタ素子や受信用弾性波フィルタ素子を介さずに信号が直接伝達する現象を抑制することができる。その結果、弾性波デュプレクサの送信端子−第1受信端子間、及び送信端子−第2受信端子間の高アイソレーションを実現できる。
【0016】
好ましくは、前記封止部は、前記受信素子上領域における厚みの方が、前記送信素子上領域における厚みよりも小さい。
【0017】
例えば受信用弾性波フィルタ素子がバランスフィルタで構成されている場合に、特に有効である。
【0018】
好ましくは、前記受信素子上領域における前記封止部の厚みの方が前記送信素子上領域における前記封止部の厚みよりも小さい場合には前記受信素子領域に、前記受信素子上領域における前記封止部の厚みの方が前記送信素子上領域における前記封止部の厚みよりも大きい場合には前記送信素子領域に、前記封止部を形成する第1の誘電材料の誘電率よりも小さい誘電率を有する第2の誘電材料を用いて形成された低誘電率部をさらに備える。
【0019】
この場合、弾性波デュプレクサの厚みを一定にすることができる。
【0020】
好ましくは、前記低誘電率部が形成された前記送信素子上領域又は前記受信素子上領域において、前記封止部の厚みは前記低誘電率部の厚みよりも小さい。
【0021】
この場合、低誘電率部が形成された送信素子上領域又は受信素子上領域において発生する容量をできるだけ小さくすることができるため、高アイソレーションの実現に有効である。
【0022】
好ましくは、前記低誘電率部が、前記送信用弾性波フィルタ素子の前記基板とは反対側の部分又は前記受信用弾性波フィルタ素子の前記基板とは反対側の部分に接している。
【0023】
この場合、誘電率が相対的に大きい封止部は、誘電率が相対的に小さい低誘電率部を介して送信用弾性波フィルタ素子又は受信用弾性波フィルタ素子に対向するため、封止部が送信用弾性波フィルタ素子又は受信用弾性波フィルタ素子に接する場合に比べ、送信素子上領域又は受信素子上領域において発生する容量が小さい。そのため、高アイソレーションの実現に有効である。
【0024】
好ましくは、前記第2の誘電材料が樹脂である。
【0025】
この場合、低誘電率部の形成が容易である。
【0026】
好ましい一態様において、前記送信用弾性波フィルタ素子と前記受信用弾性波フィルタ素子とが異なるチップ素子に形成される。
【0027】
この場合、2個以上のチップ素子を用いて、弾性波デュプレクサを形成することができる。
【0028】
好ましい他の態様において、前記送信用弾性波フィルタ素子と前記受信用弾性波フィルタ素子とが同一のチップ素子に形成される。
【0029】
この場合、基板にチップ素子を実装する工程が簡単になる。
【0030】
好ましくは、前記受信用弾性波フィルタ素子がバランス素子である。
【0031】
この場合、バランス素子上の領域において封止部を薄くして容量の発生を抑え、直達成分を小さくして、アイソレーション特性を改善することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の弾性波デュプレクサは、アイソレーション特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】弾性波デュプレクサの断面図である。(実施例1)
【図2】弾性波デュプレクサの製造工程を示す断面図である。(実施例1)
【図3】弾性波デュプレクサの断面図である。(実施例2)
【図4】弾性波デュプレクサの断面図である。(実施例3)
【図5】弾性波デュプレクサの断面図である。(実施例4)
【図6】弾性波デュプレクサの断面図である。(実施例5)
【図7】アイソレーション特性を示すグラフである。(作製例)
【図8】アイソレーション特性を示すグラフである。(作製例)
【図9】アイソレーション特性を示すグラフである。(作製例)
【図10】2端子対の回路図である。
【図11】直達波成分の説明図である。
【図12】減衰量劣化の等価回路図である。
【図13】バランス型デュプレクサの回路図である。
【図14】弾性表面波装置の断面図である。(従来例1)
【図15】弾性表面波装置の(a)透視図、(b)断面図である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の弾性波デュプレクサの実施の形態について、図1〜図9、図12及び図13を参照しながら説明する。
【0035】
<実施例1> 実施例1の弾性波デュプレクサ10について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0036】
図1は、弾性波デュプレクサ10の断面図である。図1に示すように、弾性波デュプレクサ10は、基板12の主面である上面12sに、受信用弾性波フィルタ素子14と送信用弾性波フィルタ素子15の2つチップ素子がフリップチップボンディングにより実装され、2つのチップ素子14,15は封止部16により封止されている。
【0037】
封止部16は、樹脂等の第1の誘電材料を用いて、基板12の上面12sに、受信用弾性フィルタ素子14と送信用弾性波フィルタ素子15とを覆うように形成される。封止部16は、基板12とは反対側の上面16kに、凹部16sが形成されている。凹部16sは、その底面16tが受信用弾性波フィルタ素子14の上面14sに対向するように形成されている。
【0038】
すなわち、封止部16は、受信用弾性波フィルタ素子14に関して基板12とは反対側において受信用弾性波フィルタ素子14に対向する受信素子上領域14kと、送信用弾性波フィルタ素子15に関して基板12とは反対側において送信用弾性波フィルタ素子15に対向する送信素子上領域15kとにおいて、厚みが異なり、受信素子上領域14kにおける厚みの方が送信素子上領域15kにおける厚みよりも小さい。
【0039】
次に、弾性波デュプレクサ10の製造方法について、図2を参照しながら説明する。図2は、製造工程を示す断面図である。
【0040】
まず、図2に示すように、セラミック基板等の基板12の上面12sに、受信用弾性波フィルタ素子14と送信用弾性波フィルタ素子15の2つのチップ素子をフリップチップボンディングし、その上にチップ素子14,15を覆うように、第1の誘電材料からなる未硬化のシート樹脂16xを重ねる。シート樹脂16xは、硬化処理前は、流動性を有すると共に基板12とチップ素子14,15との間の空間11内に容易には入り込まないような適当な粘性を有し、硬化処理によって硬化及び乾燥する樹脂を、シート状に形成したものである。
【0041】
次いで、シート樹脂16xの上面16kのうち、受信用弾性波フィルタ素子14に略対向する位置に凹部16sを形成する。凹部16sは、硬化処理したシート樹脂16xを硬化処理した後、シート樹脂16xを部分的に研磨等で除去するなどの方法で形成することができるが、方法は特に問わない。基板12にシート樹脂16xを圧着させるために用いる押圧治具のシート樹脂16xを押さえる面に突起を設けておき、突起をシート樹脂16xの上面16kに食い込ませることにより凹部16sを形成した後、シート樹脂を硬化処理するようにしてもよい。
【0042】
<作製例> 図7〜図9は、作製例の弾性波デュプレクサのアイソレーション特性を示すグラフである。
【0043】
作製例では、送信用弾性波フィルタ素子にラダー型の弾性表面波フィルタ素子を用いた。受信用弾性波フィルタ素子には、弾性表面波共振子を縦結合したバランスフィルタ素子を用いた。受信用弾性波フィルタ素子は、送信用弾性波フィルタ素子よりも周波数が高い。
【0044】
作製例の弾性波デュプレクサはバランス型であり、図13の回路図に示すように、ANT、TX、RX1、RX2の計4ポートを持つ。RX1とRX2は逆相であり、バランスRXポートRX1,RX2は、増幅器AMPに接続される。アイソレーション特性は、通常、TXポートからバランスRXポートの減衰量で示される。シングルエンドでの特性は、バランス変換前の4ポートSパラメータにおける、S32、S42で示される。S32は、TX−RX1である。S42は、TX−RX2である。図7は、S32の減衰量を示している。図8は、S42の減衰量を示している。図9は、デファレンシャル特性を示している。図7〜図9は、シート樹脂16xの研磨量によって凹部16sの深さを変えた場合の特性を示している。
【0045】
図7及び図8において矢印で示すように、シート樹脂16xの研磨量を大きくし、凹部16sを深くするほど、すなわち、受信素子上領域14kにおける封止部16の厚みを小さくするほど、通過帯域よりも低周波側で減衰量が大きくなり、アイソレーション特性が改善されることが分かる。
【0046】
図12の等価回路モデルで、入力端子61,62と出力端子63,64との間の容量結合による成分76をもたらす直達の容量Cの影響を考慮して解析したところ、図7及び図8と同等なアイソレーション特性が得られた。これによって、直達の容量Cを小さくすることで、アイソレーション特性が改善されることが分かる。
【0047】
すなわち、弾性波デュプレクサのバランス側の低周波側のシングルエンドのアイソレーション特性において、基板からの漏れ分によって容量が発生して、ANT−RX間に寄生容量が発生し、直達成分となる。封止部の樹脂の厚みが厚く、誘電率が高いほど、この直達成分が大きくなる。チップ素子上の領域において封止部を薄くして容量の発生を抑えると、直達成分を小さくして、アイソレーション特性を改善することができる。
【0048】
図9は、デファレンシャル特性を示している。バランス型の弾性波デュプレクサの場合、バランス特性で見ると、デファレンシャルではキャンセルされてアイソレーションの劣化はないが、コモンモード、あるいは、シングルエンドの特性劣化が見えることになる。
【0049】
図12の等価回路モデルにおいて、容量Cを減少する構造であれば、特性改善が可能である。特にバランスフィルタの低周波側、送信帯のアイソレーション特性においては、最も効果がある。
【0050】
弾性波デュプレクサにおいて、チップ素子上の領域に形成された封止部を介した直達波成分が生じる。この成分は容量Cによる結合と等価な成分である。チップ素子上の領域に形成された封止部の誘電率を低くすることによって、この結合を減少させることができ、アイソレーション特性を改善することができる。
【0051】
しかし、受信素子上領域14kの封止部16の厚みを小さくした上、さらに送信素子上領域15kの封止部16の厚みも小さくすると、かえって受信側帯域の減衰量が劣化する場合がある。そのため、受信素子上領域14kと送信素子上領域15kとで封止部16の厚みが異なるようにすることで、アイソレーション特性の最適化を図ることができる。
【0052】
例えば、作製例の弾性波デュプレクサの場合には、受信素子上領域14kの封止部16の厚みを送信素子上領域15kの封止部16の厚みよりも小さくすると、アイソレーション特性の最適化を図ることができる。作製例の弾性波デュプレクサは、受信用弾性波フィルタ素子14の方が送信用弾性波フィルタ素子15よりも周波数が高い。
【0053】
直達の容量を減少する構造であれば、バランス型以外の弾性波デュプレクサについても、アイソレーション特性の改善が可能である。
【0054】
また、以下の実施例2〜5のように構成しても、直達の容量を減少させることができるので、アイソレーション特性改善効果を得ることができる。
【0055】
<実施例2> 実施例2の弾性波デュプレクサ10aについて、図3を参照しながら説明する。図3は、弾性波デュプレクサ10aの断面図である。
【0056】
図3に示すように、実施例2の弾性波デュプレクサ10aは、実施例1の弾性波デュプレクサ10と略同様に構成されている。以下では、実施例1との相違点を中心について説明し、実施例1と同様の構成部分には同じ符号を用いる。
【0057】
実施例2の弾性波デュプレクサ10aは、封止部16aに切欠部16pが形成されている。切欠部16pは、その底面16qが受信用弾性波フィルタ素子14の上面14sの少なくとも一部に対向するように形成されている。
【0058】
切欠部16p内に、封止部16aを形成する第1の誘電材料よりも低い誘電率を有する第2の誘電材料を用いて、低誘電率部18aが形成されている。
【0059】
低誘電率部18aとチップ素子14との間には、低誘電率部18aよりも薄い封止部16aが延在している。すなわち、低誘電率部18aの厚さ(低誘電率部18aの上面18kと切欠部16pの底面16qとの間の寸法)は、チップ素子14上の受信素子上領域14kにおける封止部16aの厚み(切欠部16pの底面16qとチップ素子14の上面14sとの間の寸法)よりも小さい。
【0060】
低誘電率部18aは、第2の誘電材料を塗布、印刷などの方法により、凹部16s内に形成できる。あるいは、封止部16aになる未硬化のシート樹脂に、低誘電率部18aになる部材を食い込ませることにより、封止部16aに切欠部16pを形成すると同時に、切欠部16p内に低誘電率部18aを形成し、その後、シート樹脂を硬化処理してもよい。
【0061】
低誘電率部18aの上面18kと封止部16aの上面16kとは、同一面に形成することが好ましい。この場合、弾性波デュプレクサ10aの厚みが一定になり、搬送時や実装時等の取り扱いが容易になる。
【0062】
受信素子上領域14kにおいて、封止部16aの厚みの方が、低誘電率部18aの厚みよりも小さくすることが好ましい。この場合、受信素子上領域14kにおいて発生する容量をできるだけ小さくすることができるため、高アイソレーションの実現に有効である。
【0063】
<実施例3> 実施例3の弾性波デュプレクサ10bについて、図4を参照しながら説明する。図4は、弾性波デュプレクサ10bの断面図である。
【0064】
図4に示すように、実施例2の弾性波デュプレクサ10bは、低誘電率部18bがチップ素子14の上面14sに接するように形成されている。低誘電率部18bは、封止部16bで覆われているが、低誘電率部18bの一部が基部16bの上面16kに露出するようにしてもよい。この場合、受信素子上領域に封止部が形成されないようにしてもよい。
【0065】
弾性波デュプレクサ10bは、例えば、次のように製造する。
【0066】
まず、チップ素子14,15がフリップチップ実装された基板12の上面14sにシート樹脂を重ねる。次いで、シート樹脂にチップ素子14の上面14sが露出する貫通穴を形成し、この貫通穴に第2の誘電材料を充填して低誘電率部18bを形成する。次いで、さらにシート樹脂を重ねる。この場合、2枚のシート樹脂によって、封止部16bが形成される。
【0067】
あるいは、基板12にフリップチップ実装されたチップ素子14の上面14sに低誘電率部18bとなる部材を配置した後、シート樹脂を重ねる。
【0068】
受信用弾性波フィルタ素子14の直ぐ上に低誘電率部16bが配置されることによって、低誘電率部16bと受信用弾性波フィルタ素子14との間に封止部が介在する場合よりも、受信素子上領域14kにおける実効的な誘電率を低くすることができ、容量を小さくすることができる。そのため、高アイソレーションの実現に有効である。
【0069】
また、弾性波デュプレクサ10bの上面が、封止部16bの上面16kのみで形成されるようにすると、弾性波デュプレクサ10bの厚みを一定にすることが容易である。
【0070】
<実施例4> 実施例4の弾性波デュプレクサ10cについて、図5を参照しながら説明する。
【0071】
図5は、弾性波デュプレクサ10cの断面図である。図5に示すように、実施例4の弾性波デュプレクサ10cは、実施例1の弾性波デュプレクサ10と同様に、基板12に実装されたチップ素子13が封止部16cで封止されている。
【0072】
実施例4の弾性波デュプレクサ10cは、実施例1とは異なり、送信用弾性波フィルタ素子と受信用弾性波フィルタ素子とが同じチップ素子13に形成されている。
【0073】
封止部16c上面16kには、切欠部16uが形成されている。この切欠部16uは、チップ素子13において受信用弾性波フィルタ素子が形成された部分に対向する受信素子上領域14kには形成されているが、チップ素子13において送信用弾性波フィルタ素子が形成された部分に対向する送信素子上領域15kには、形成されていない。
【0074】
弾性波デュプレクサ10cは、受信素子上領域14kの封止部16cの厚みが、送信素子上領域15kの封止部16cの厚みよりも小さい。すなわち、受信素子上領域14kの封止部16cの厚み、すなわち、切欠部16uの底面16vとチップ素子13の上面13sとの間の寸法は、送信素子上領域15kの封止部16cの厚み、すなわち、封止部16cの上面16kとチップ素子の上面13sとの間の寸法よりも小さい。
【0075】
これによって、実施例1と同様に、弾性波デュプレクサ10cのアイソレーション特性を改善することができる。
【0076】
<実施例5> 実施例5の弾性波デュプレクサ10dについて、図6を参照しながら説明する。図6は、弾性波デュプレクサ10dの断面図である。
【0077】
図6に示すように、実施例5の弾性波デュプレクサ10dは、実施例4の弾性波デュプレクサ10cと略同様に構成されている。
【0078】
実施例5の弾性波デュプレクサ10dは、封止部16dの切欠部16u内に、封止部16dを形成する第1の誘電材料よりも低い誘電率を有する第2の誘電材料を用いて、低誘電率部18dが形成されている。
【0079】
弾性波デュプレクサ10dは、チップ素子13に形成された受信用弾性波フィルタ素子と送信用弾性波フィルタ素子の少なくとも一方の上に低誘電率部18dが配置される。これにより、実効的な誘電率を低くすることができるため、アイソレーション特性を改善することができる。
【0080】
なお、同一のチップ素子に受信用弾性波フィルタ素子と送信用弾性波フィルタ素子の両方が形成されている場合、実施例3のように、低誘電率部がチップ素子に接するように形成してもよい。
【0081】
<まとめ> 送信用弾性波フィルタ素子に関して基板とは反対側において送信用弾性波フィルタ素子に対向する送信素子上領域と、受信用弾性波フィルタ素子に関して基板とは反対側において受信用弾性波フィルタ素子に対向する受信素子上領域とで、封止部の厚みが異なるようにすることにで、弾性波デュプレクサの送信端子−第1受信端子間、及び送信端子−第2受信端子間の高アイソレーションを実現できる。
【0082】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0083】
例えば、封止部を形成するために用いる第1の誘電材料の誘電率よりも低い誘電率を有する第2の誘電材料を用いて、受信素子上領域と送信素子上領域の両方に、低誘電率部を形成してもよい。
【0084】
弾性波デュプレクサが備える送信用弾性波フィルタ素子及び受信用弾性波フィルタ素子は、弾性表面波(SAW)に限らず、境界波、バルク弾性波等の弾性波を用いるフィルタ素子であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
10,10a〜10d 弾性波デュプレクサ
12 基板
12s 上面(主面)
13 チップ素子(送信用弾性波フィルタ素子、受信用弾性波フィルタ素子)
14 受信用弾性波フィルタ素子(チップ素子)
14s 上面
14k 受信素子上領域
15 送信用弾性波フィルタ素子(チップ素子)
15s 上面
15k 送信素子上領域
16,16a〜16d 封止部
16p 切欠部
16q 底面
16k 上面
16s 凹部
16t 底面
16u 凹部
16v 底面
18a,18b,18d 低誘電率部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面にフリップチップ実装された送信用弾性波フィルタ素子と、
前記基板の前記主面にフリップチップ実装された受信用弾性波フィルタ素子と、
前記基板の前記主面にフリップチップ実装された前記送信用弾性波フィルタ素子及び前記受信用弾性波フィルタ素子の少なくとも一方を覆うように前記基板の前記主面に設けられ、前記送信用弾性波フィルタ素子及び前記受信用弾性波フィルタ素子の少なくとも一方を封止する封止部と、
を備え、
前記封止部は、前記送信用弾性波フィルタ素子に関して前記基板とは反対側において前記送信用弾性波フィルタ素子に対向する送信素子上領域と、前記受信用弾性波フィルタ素子に関して前記基板とは反対側において前記受信用弾性波フィルタ素子に対向する受信素子上領域とにおいて、厚みが異なることを特徴とする弾性波デュプレクサ。
【請求項2】
前記封止部は、前記受信素子上領域における厚みの方が、前記送信素子上領域における厚みよりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の弾性波デュプレクサ。
【請求項3】
前記受信素子上領域における前記封止部の厚みの方が前記送信素子上領域における前記封止部の厚みよりも小さい場合には前記受信素子領域に、
前記受信素子上領域における前記封止部の厚みの方が前記送信素子上領域における前記封止部の厚みよりも大きい場合には前記送信素子領域に、
前記封止部を形成する第1の誘電材料の誘電率よりも小さい誘電率を有する第2の誘電材料を用いて形成された低誘電率部をさらに備えたこと特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の弾性波デュプレクサ。
【請求項4】
前記低誘電率部が形成された前記送信素子上領域又は前記受信素子上領域において、前記封止部の厚みは前記低誘電率部の厚みよりも小さいことを特徴とする、請求項3に記載の弾性波デュプレクサ。
【請求項5】
前記低誘電率部が、前記送信用弾性波フィルタ素子の前記基板とは反対側の部分又は前記受信用弾性波フィルタ素子の前記基板とは反対側の部分に接していることを特徴とする、請求項3に記載の弾性波デュプレクサ。
【請求項6】
前記第2の誘電材料が樹脂であることを特徴とする、請求項3乃至請求項5のいずれか一つに記載の弾性波デュプレクサ。
【請求項7】
前記送信用弾性波フィルタ素子と前記受信用弾性波フィルタ素子とが異なるチップ素子に形成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の弾性波デュプレクサ。
【請求項8】
前記送信用弾性波フィルタ素子と前記受信用弾性波フィルタ素子とが同一のチップ素子に形成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の弾性波デュプレクサ。
【請求項9】
前記受信用弾性波フィルタ素子がバランス素子であることを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれか一つに記載の弾性波デュプレクサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−151553(P2011−151553A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10281(P2010−10281)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】