弾性波共振器及びこれを用いたラダー型フィルタ
【課題】本発明は弾性波フィルタのロスの発生を抑制することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するために、本発明は圧電基板1の上に設けられた第1のインターディジタルトランスデューサ電極A1を有する第1の弾性波共振子Aと、圧電基板1の上に設けられた第2のインターディジタルトランスデューサ電極B1を有する第2の弾性波共振子Bとを備えた弾性波共振器であって、第1の弾性波共振子Aの交差幅L1と、第2の弾性波共振子Bの交差幅L2が所定の関係を満たすようにする。
この構成により、横モードスプリアスの発生周波数を分散することができ、ロスを改善することが出来る。
【解決手段】この目的を達成するために、本発明は圧電基板1の上に設けられた第1のインターディジタルトランスデューサ電極A1を有する第1の弾性波共振子Aと、圧電基板1の上に設けられた第2のインターディジタルトランスデューサ電極B1を有する第2の弾性波共振子Bとを備えた弾性波共振器であって、第1の弾性波共振子Aの交差幅L1と、第2の弾性波共振子Bの交差幅L2が所定の関係を満たすようにする。
この構成により、横モードスプリアスの発生周波数を分散することができ、ロスを改善することが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波共振器及びこれを用いたラダー型フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の弾性波共振器として、図10に示すごとく、共振周波数の異なる弾性波共振子E、F、Gを並列に接続する構成を採用していた。この構成とすることにより、通過帯域幅を拡大させることができた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−77972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の弾性波共振器では、スプリアスによりロスが大きいことが問題となっていた。
【0006】
すなわち、交差幅の等しい弾性波共振子E、F、Gを並列接続すると、弾性波共振子E、F、Gそれぞれに横モードスプリアスが発生した場合、それらは図11、図12に示すごとく各弾性波共振子E、F、Gにおいて同じ周波数に現れるため、各弾性波共振子E、F、Gの横モードスプリアスが強め合い、弾性波共振器の通過域におけるロスが大きくなる。
【0007】
そこで、本発明は、弾性波共振器のロスの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明の弾性波共振器は、圧電基板上に設けられた第1のインターディジタルトランスデューサ電極を有する第1の弾性波共振子と、圧電基板上に設けられた第2のインターディジタルトランスデューサ電極を有する第2の弾性波共振子とを備え、第1の弾性波共振子と前記第2の弾性波共振子とは電気的に接続され、第1の弾性波共振子を構成する複数の櫛歯電極の交差幅をL1とすると、第2の弾性波共振子を構成する複数の櫛歯電極の交差幅であるL2は、以下の式を満たすことを特徴とする。
【0009】
L2≠L1+nS
ただし、nは整数を表し、Sは前記第1の弾性波共振子において、同一周波数に横モードスプリアスが発生する交差幅の変化量を表す。
【0010】
この構成により、弾性波共振器が備えるそれぞれの弾性波共振子に発生する横モードスプリアスが同一周波数に重なることがないので、弾性波共振器の通過域におけるロスを抑圧することができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成により、横モードスプリアスの影響の少ない低ロスな弾性波共振器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における弾性波共振器を表す図
【図2】本発明の実施の形態1における交差幅と横モードスプリアスの関係図
【図3】本発明の実施の形態1における弾性波共振器のアドミタンス特性図
【図4】本発明の実施の形態1における弾性波共振器の通過特性図
【図5】本発明の実施の形態1における直列接続による弾性波共振器の上面図
【図6】本発明の実施の形態2における弾性波共振器を表す図
【図7】本発明の実施の形態2における弾性波共振器のアドミタンス特性図
【図8】本発明の実施の形態3におけるラダー型フィルタを表す図
【図9】本発明の実施の形態3における直列接続によるラダー型フィルタを表す図
【図10】従来の弾性波共振器の回路構成図
【図11】従来の弾性波共振器におけるアドミタンス特性図
【図12】従来の弾性波共振器における通過特性図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、これら実施の形態によって限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
本実施の形態に示す弾性波共振器は、図1に示すごとく、ニオブ酸リチウムからなる圧電基板1と、前記圧電基板1上方に設けられた第1、第2の弾性波共振子A、Bを備えている。弾性波共振子Aと弾性波共振子Bは電気的に並列接続されている。
【0015】
第1の弾性波共振子Aはインターディジタルトランスデューサ電極A1とグレーティング反射器A2、A3を備えている。このグレーティング反射器A2、A3は、インターディジタルトランスデューサ電極A1を弾性波伝搬方向に挟むように配置されている。
【0016】
インターディジタルトランスデューサ電極A1は、バスバーA11と、このバスバーA11に電気的に接続された複数本の櫛形電極A12と、バスバーA14と、このバスバーA14に電気的に接続された複数本の櫛形電極A13とからなる。また、櫛形電極A12と櫛形電極A13は交差しており、その交差幅はL1である。バスバーA11は入力端子2に電気的に接続されており、バスバーA14は出力端子3に電気的に接続されている。
【0017】
グレーティング反射器A2、A3は、バスバーA21、A31に電気的に接続された周期がP1/2の櫛形電極A22、A32からなる。
【0018】
第2の弾性波共振子Bはインターディジタルトランスデューサ電極B1とグレーティング反射器B2、B3を備えている。このグレーティング反射器B2、B3は、インターディジタルトランスデューサ電極B1を弾性波伝播方向に挟むように配置されている。
【0019】
インターディジタルトランスデューサ電極B1は、バスバーB11と、このバスバーB11に電気的に接続された複数本の櫛型電極B12と、バスバーB14と、このバスバーB14に電気的に接続された複数本の櫛型電極B13とからなる。また、櫛形電極B12と櫛形電極B13は交差しており、その交差幅はL2である。なお、この交差幅L2は、第1の弾性波共振子Aの交差幅L1よりも小さい。バスバーB11は入力端子2に電気的に接続されており、バスバーB14は出力端子3に電気的に接続されている。
【0020】
グレーティング反射器B2、B3は、バスバーB21、B31に電気的に接続された周期がP2/2の櫛形電極B22、B32からなる。
【0021】
このように弾性波共振子Aをなす櫛形電極A12と櫛形電極A13との交差幅L1と、弾性波共振子Bをなす櫛形電極B12と櫛形電極B13との交差幅L2とを異ならせることによって、横モードスプリアスの影響の少ない低ロスな弾性波共振器を実現することができる。以下、交差幅と横モードスプリアスの関係について説明する。
【0022】
横モードスプリアスとは、弾性波伝搬方向と直交する方向に定在波が立つことに起因して通過帯域内に生じるスプリアスである。特に、圧電基板としてニオブ酸リチウムを用いた場合には、横モードスプリアスが顕著に発生するため、弾性波共振子の共振性能を劣化させる原因の1つとなっている。
【0023】
ここで、複数の弾性波共振子を並列又は直列に接続した従来の弾性波共振器は、単一の弾性波共振子と比べて、通過帯域内に生じるスプリアスが大きいという課題があった。解析の結果、この課題は、各弾性波共振子にそれぞれ発生する横モードスプリアスの周波数が一致していることに起因していることが分かった。すなわち、各弾性波共振子に発生する横モードスプリアスが互いに強め合った結果、通過帯域内に深いスプリアスを生じさせていた。
【0024】
図2は、交差幅と横モードスプリアスの発生周期の関係を解析した結果である。このグラフにおいて、横軸は交差幅を示し、縦軸は位相速度(=周波数×櫛型電極のピッチ)を表している。例えば、交差幅がLa(=10W/lambda)の場合、黒丸で示した各ポイントに対応する位相速度PV1〜PV6に横モードスプリアスが発生する。このグラフより、交差幅を調整することにより、横モードスプリアスが発生する位相速度を調整できることが分かる。すなわち、交差幅と櫛型電極のピッチを調整することにより、横モードスプリアスが発生する周波数を調整することができる。
【0025】
本実施の形態では、この関係を利用し、同一ピッチの弾性波共振子A、Bにおいて、弾性波共振子Aをなす櫛形電極A12と櫛形電極A13との交差幅L1と、弾性波共振子Bをなす櫛形電極B12と櫛形電極B13との交差幅L2とを異ならせている。この構成により、弾性波共振子A及びBにそれぞれ生じる横モードスプリアスの発生周波数を分散させることができ、弾性波共振器の低ロス化を実現することができる。
【0026】
なお、弾性波共振子AのピッチP1と弾性波共振子BのピッチP2を等しくし、弾性波共振子の共振周波数を一致させることにより、ロスを最小に抑えることができる。逆に、P1とP2を異ならしめることにより、通過帯域、及び減衰帯域の帯域幅を広げることが可能となり、設計自由度を大きくすることができる。この場合には、ピッチP1、P2も考慮した上で交差幅L1、L2を設計すればよい。
【0027】
ここで、図2から分かるように、交差幅を変えた場合であっても、同一の周波数に横モードスプリアスが発生してしまうことがある。例えば、弾性波共振子Aの交差幅L1をLa(10W/lambda)とし、弾性波共振子Bの交差幅L2をLb(約13W/lambda)とした場合には、弾性波共振子A、Bともに位相速度PV3の位置に横モードスプリアスが発生する。その結果、この位置の横モードスプリアスが互いに強め合い、弾性波共振器の通過帯域内のロスが大きくなってしまう。
【0028】
従って、弾性波共振子A、Bにそれぞれ発生する横モードスプリアスが同一周波数に重ならないようにするためには、以下の(数1)の関係を満たすように、交差幅L1、L2を設計すればよい。ただし、nは整数を表し、Sは弾性波共振子Aにおいて、同一周波数に横モードスプリアスが発生する交差幅の周期を表す。
【0029】
(数1)L2≠L1+nS
さらに、以下の(数2)の関係を満たすように、交差幅L1、L2を設計することにより、より効果的に横モードスプリアスを効果的に分散させることができる。
【0030】
(数2)L2=L1+(n+1/2)S
なお、(数1)又は(数2)において、交差幅L2はSに対して20%程度の幅を有してもよい。弾性波共振器の通過帯域内において、Sは20%程度の幅があるため、この範囲内であれば、横モードスプリアスの分散効果を生じるからである。
【0031】
以上のように、弾性波共振器が備える弾性波共振子の交差幅を(数1)又は(数2)の関係を満たすように設計することにより、弾性波共振器の通過帯域におけるロスを低減することができる。
【0032】
図3及び図4は、本実施の形態における弾性波共振器の特性を示している。図3に示す本実施の形態における構成におけるアドミタンスの周波数特性と、図11に示す従来構成におけるアドミタンスの周波数特性とを比較すると、本実施の形態の構成により、共振周波数Aと反共振周波数Bとの間に見られた横モードスプリアスが分散され、1つ当たりの絶対値が低減されていることがわかる。さらに、図4に示す本実施の形態における損入損失の周波数特性と、図12に示す従来の構成における損入損失の周波数特性とを比較すると、本実施の形態の構成により、スプリアスが分散され、1つ当たりの絶対値が低減されていることがわかる。
【0033】
ここで交差幅L1<交差幅L2とすることにより、弾性波共振子A、Bの静電容量C1、C2は静電容量C1<静電容量C2となる。そこで弾性波共振子A、Bの対数N1、N2に対し対数N2<対数N1とすることでC1とC2の比を緩和させることが望ましい。
【0034】
なお、本構成は1個のインターディジタルトランスデューサ電極の両側を2個のグレーティング反射器で挟んだ弾性波共振子のみならず、2個以上のインターディジタルトランスデューサ電極を伝搬路上に配置した構成においても横モードスプリアスの抑圧に有効である。
【0035】
なお、本実施の形態では、弾性波共振子A、Bを並列接続した構成について説明していたが、3個以上の弾性波共振子を並列接続することもできる。
【0036】
なお、本実施の形態では、弾性波共振子A、Bを並列接続した構成について説明していたが、図5のように、弾性波共振子A、Bを直列接続することもできる。これにより、弾性波共振子1つあたりに印加される電圧を低減することができ、弾性波共振器の耐電圧性能を向上させることができるとともに、交差幅を(数1)又は(数2)の関係とすることにより、横モードスプリアスを抑圧することができる。
【0037】
なお、本発明による弾性波共振器を用いて弾性波フィルタを構成した場合、通過帯域内に生じる横モードスプリアスを効果的に抑制することができ低ロス化が可能となる。
【0038】
なお、図1に示す圧電基板1の回転Y板のカット角を−30°〜+30°程度とすることが望ましい。カット角をこの範囲とすることにより、広帯域な弾性波フィルタを実現することができる。
【0039】
なお、インターディジタルトランスデューサ電極A1、B1の内少なくとも一方を弾性波の波長の15%以上の厚みのSiO2薄膜で覆うことで、弾性波のロスを低減できるとともに、温度特性をも改善することができる。
【0040】
なお、本構成を用いて送信フィルタと受信フィルタを構成することで低ロスである弾性波アンテナ共用器を構成することができる。
【0041】
(実施の形態2)
実施の形態2の特徴部分について、実施の形態1の差異を中心に説明する。
【0042】
図6に示すごとく、弾性波共振子Cは、圧電基板1の上にインターディジタルトランスデューサ電極C11、C12、C13、C14、C15とグレーティング反射器C16、C17を備えている。また、インターディジタルトランスデューサ電極C11、C12、C13、C14、C15は弾性波伝搬路上に配置されており、グレーティング反射器C16、C17はインターディジタルトランスデューサ電極C11、C12、C13、C14、C15を挟むように配置されている。また、インターディジタルトランスデューサ電極C11、C12、C13、C14、C15の交差幅はL1である。また、インターディジタルトランスデューサ電極C11、C13、C15は入力電極4に電気的に接続され、インターディジタルトランスデューサ電極C12、C14は出力電極5に電気的に接続されている。
【0043】
弾性波共振子Dは、圧電基板1の上にインターディジタルトランスデューサ電極D11、D12、D13、D14、D15とグレーティング反射器D16、D17を備えている。また、インターディジタルトランスデューサ電極D11、D12、D13、D14、D15は弾性波伝搬路上に配置されており、グレーティング反射器D16、D17はインターディジタルトランスデューサ電極D11、D12、D13、D14、D15を挟むように配置されている。また、インターディジタルトランスデューサ電極D11、D12、D13、D14、D15の交差幅はL2である。また、インターディジタルトランスデューサ電極D11、D13、D15は入力電極4に電気的に接続され、インターディジタルトランスデューサ電極D12、D14は出力電極6に電気的に接続されている。
【0044】
ここで、第2の弾性波共振子Dの交差幅L2は第1の弾性波共振子Cの交差幅L1よりも小さい構成となっている。この交差幅L1、L2の関係を、(数1)を満たすようにすることにより、図7に示すごとく、横モードスプリアスを分散させることができる。また、(数2)を満たすようにすることにより、さらに効果的に横モードスプリアスを分散させることができる。
【0045】
また、実施の形態2では、各々5個のインターディジタルトランスデューサ電極を持つ弾性波共振子について述べたが、インターディジタルトランスデューサ電極の数は5個に限らずスプリアス抑制効果は得られる。
【0046】
なお、弾性波共振子Cのインターディジタルトランスデューサ電極C11、C12、C13、C14、C15の交差幅を全て等しくすることで損失の少ない弾性波共振器を構成することができる。またインターディジタルトランスデューサ電極C11、C12、C13、C14、C15の交差幅を異ならしめることにより、さらに横モードスプリアスを分散させることができる。これは第2の弾性波共振子Dのインターディジタルトランスデューサ電極D11、D12、D13、D14、D15の交差幅においても同様である。
【0047】
なお、弾性波共振子CのピッチP8、P9、P10、P11、P12と弾性波共振子DのピッチP3、P4、P5、P6、P7を等しくすることにより、弾性波共振子の共振周波数を一致させることができる。これにより、弾性波共振器のロスを最小に抑えることができる。逆に、ピッチP8とP3、ピッチP9とP4、ピッチP10とP5、ピッチP11とP6、ピッチP12とP7の内の少なくとも1組を異ならしめることにより、弾性波共振子Cと弾性波共振子Dとのバランス度を調整することができる。
【0048】
なお、本実施の形態では、弾性波共振子A、Bを並列接続した構成について説明していたが、3個以上の弾性波共振子を並列接続することもできる。
【0049】
なお、本発明による弾性波共振器を用いて弾性波フィルタを構成した場合、通過帯域内に生じる横モードスプリアスを効果的に抑制することができ低ロス化が可能となる。
【0050】
なお、図6に示す圧電基板1の回転Y板のカット角を−30°〜+30°程度とすることが望ましい。カット角をこの範囲とすることにより、広帯域な弾性波フィルタを実現することができる。
【0051】
なお、弾性波共振子C、Dのインターディジタルトランスデューサ電極(C11、C12、C13、C14、C15)、(D11、D12、D13、D14、D15)の内少なくとも一方を弾性波の波長の15%以上の厚みのSiO2薄膜で覆うことで、弾性波のロスを低減できるとともに、温度特性も改善できる。
【0052】
なお、本構成を用いて送信フィルタと受信フィルタを構成することで低ロスである弾性波アンテナ共用器を構成することができる。
【0053】
(実施の形態3)
実施の形態3の特徴部分について、実施の形態1の差異を中心に説明する。
【0054】
図8に示すごとく、ラダー型フィルタ8は、直列腕の弾性波共振器E及びFと、並列腕の弾性波共振器G、H、Iとを備えている。なお、図8はラダー型フィルタの一例として示したものであり、直列腕に3つ以上の弾性波共振器を配置した場合や、並列腕に2つ或いは4つ以上の弾性波共振器を配置した場合であっても以下に説明する効果を奏する。
【0055】
ラダー型フィルタ8において、直列腕の弾性波共振器E及びFの共振周波数と、並列腕の弾性波共振器G、H及びIの反共振周波数をほぼ一致させることでバンドパス特性を得ることができる。
【0056】
弾性波共振器Eは、弾性波共振子E1と弾性波共振子E2が並列に接続されている。ここで、弾性波共振子E1の交差幅EL1は、弾性波共振子E2の交差幅EL2よりも小さく形成されている。さらに、交差幅EL1、EL2の関係を(数1)又は(数2)を満たすようにすることにより、横モードスプリアスを分散させることができる。
【0057】
弾性波共振器Gは、弾性波共振子G1と弾性波共振子G2が並列に接続されている。ここで、弾性波共振子G1の交差幅GL1は、弾性波共振子G2の交差幅GL2よりも小さく形成されている。さらに、交差幅GL1、GL2の関係を(数1)又は(数2)を満たすようにすることにより、横モードスプリアスを分散させることができる。
【0058】
さらに、交差幅EL1、EL2、GL1、GL2を全て異ならせることにより、全ての弾性波共振子に発生する横モードスプリアスの周波数を分散させることができ、効果的に通過帯域の低ロス化を図ることができる。
【0059】
さらに、交差幅EL1、EL2、GL1、GL2の任意の2つの組合せの関係が(数1)又は(数2)を満たすようにすることにより、ラダー型フィルタ8は直列腕及び並列腕で生じる横モードスプリアスが同一周波数に重なることを確実に防ぐことができ、効果的に通過帯域の低ロス化を図ることができる。
【0060】
交差幅EL1と交差幅EL2との差の絶対値|EL1−EL2|は、交差幅GL1と交差幅GL2との差の絶対値|GL1−GL2|よりも大きくすることが望ましい。図2のグラフによると、位相速度が大きくなるほど(すなわち、周波数が高くなるほど)、横モードスプリアスの発生周期Sが小さくなっていることが分かる。すなわち、周波数が高くなるほど、交差幅への依存性が大きくなっている。ここで、ラダー型フィルタ8において、直列腕の弾性波共振器E及びFの共振周波数と、並列腕の弾性波共振器G、H及びIの反共振周波数をほぼ一致させるために、直列腕の弾性波共振器E及びFの共振周波数を比較的低くし、並列腕の弾性波共振器G、H及びIの共振周波数を比較的高くしている。従って、共振周波数が比較的低い直列腕の弾性波共振器E及びFにおいては、弾性波共振子の交差幅の差の絶対値|EL1−EL2|を比較的大きくし、共振周波数が比較的高い並列腕の弾性波共振器G、H及びIにおいては、弾性波共振子の交差幅の差の絶対値|GL1−GL2|を比較的小さくすることにより、容易に横モードスプリアスの発生位置を分散させることができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、弾性波共振器E、Gにおいて、2つの弾性波共振子を並列接続した構成について説明していたが、3個以上の弾性波共振子を並列接続することもできる。
【0062】
なお、本実施の形態では、弾性波共振子E、Gにおいて、弾性波共振子を並列接続した構成について説明していたが、図9のように、弾性波共振子を直列接続することもできる。これにより、弾性波共振子1つあたりに印加される電圧を低減することができ、弾性波共振器の耐電圧性能を向上させることができるとともに、交差幅を(数1)又は(数2)の関係とすることにより、横モードスプリアスを抑圧することができる。
【0063】
なお、弾性波共振子E1のピッチEP1と弾性波共振子E2のピッチEP2を等しくし、弾性波共振子の共振周波数を一致させることにより、ロスを最小に抑えることができる。逆に、EP1とEP2を異ならしめることにより、通過帯域、及び減衰帯域の帯域幅を広げることが可能となり、設計自由度を大きくすることができる。この場合には、ピッチEP1、EP2も考慮した上で交差幅EL1、EL2を設計すればよい。弾性波共振子G1のピッチGP1と弾性波共振子G2のピッチGP2についても同様である。
【0064】
なお、これら弾性波共振子の下方に形成される圧電基板の回転Y板のカット角を−30°〜+30°程度とすることが望ましい。カット角をこの範囲とすることにより、広帯域な弾性波フィルタを実現することができる。
【0065】
なお、これら弾性波共振子が備えるインターディジタルトランスデューサ電極の内少なくとも一つを弾性波の波長の15%以上の厚みのSiO2薄膜で覆うことで、弾性波のロスを低減できるとともに、温度特性をも改善することができる。
【0066】
なお、本構成を用いて送信フィルタと受信フィルタを構成することで低ロスである弾性波アンテナ共用器を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明にかかるフィルタは、弾性波フィルタのロスの発生を抑制することができるという効果を有し、携帯電話等の各種通信機器において有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 圧電基板
A 第1の弾性波共振子
A1 インターディジタルトランスデューサ電極
B 第2の弾性波共振子
B1 インターディジタルトランスデューサ電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波共振器及びこれを用いたラダー型フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の弾性波共振器として、図10に示すごとく、共振周波数の異なる弾性波共振子E、F、Gを並列に接続する構成を採用していた。この構成とすることにより、通過帯域幅を拡大させることができた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−77972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の弾性波共振器では、スプリアスによりロスが大きいことが問題となっていた。
【0006】
すなわち、交差幅の等しい弾性波共振子E、F、Gを並列接続すると、弾性波共振子E、F、Gそれぞれに横モードスプリアスが発生した場合、それらは図11、図12に示すごとく各弾性波共振子E、F、Gにおいて同じ周波数に現れるため、各弾性波共振子E、F、Gの横モードスプリアスが強め合い、弾性波共振器の通過域におけるロスが大きくなる。
【0007】
そこで、本発明は、弾性波共振器のロスの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明の弾性波共振器は、圧電基板上に設けられた第1のインターディジタルトランスデューサ電極を有する第1の弾性波共振子と、圧電基板上に設けられた第2のインターディジタルトランスデューサ電極を有する第2の弾性波共振子とを備え、第1の弾性波共振子と前記第2の弾性波共振子とは電気的に接続され、第1の弾性波共振子を構成する複数の櫛歯電極の交差幅をL1とすると、第2の弾性波共振子を構成する複数の櫛歯電極の交差幅であるL2は、以下の式を満たすことを特徴とする。
【0009】
L2≠L1+nS
ただし、nは整数を表し、Sは前記第1の弾性波共振子において、同一周波数に横モードスプリアスが発生する交差幅の変化量を表す。
【0010】
この構成により、弾性波共振器が備えるそれぞれの弾性波共振子に発生する横モードスプリアスが同一周波数に重なることがないので、弾性波共振器の通過域におけるロスを抑圧することができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成により、横モードスプリアスの影響の少ない低ロスな弾性波共振器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における弾性波共振器を表す図
【図2】本発明の実施の形態1における交差幅と横モードスプリアスの関係図
【図3】本発明の実施の形態1における弾性波共振器のアドミタンス特性図
【図4】本発明の実施の形態1における弾性波共振器の通過特性図
【図5】本発明の実施の形態1における直列接続による弾性波共振器の上面図
【図6】本発明の実施の形態2における弾性波共振器を表す図
【図7】本発明の実施の形態2における弾性波共振器のアドミタンス特性図
【図8】本発明の実施の形態3におけるラダー型フィルタを表す図
【図9】本発明の実施の形態3における直列接続によるラダー型フィルタを表す図
【図10】従来の弾性波共振器の回路構成図
【図11】従来の弾性波共振器におけるアドミタンス特性図
【図12】従来の弾性波共振器における通過特性図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、これら実施の形態によって限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
本実施の形態に示す弾性波共振器は、図1に示すごとく、ニオブ酸リチウムからなる圧電基板1と、前記圧電基板1上方に設けられた第1、第2の弾性波共振子A、Bを備えている。弾性波共振子Aと弾性波共振子Bは電気的に並列接続されている。
【0015】
第1の弾性波共振子Aはインターディジタルトランスデューサ電極A1とグレーティング反射器A2、A3を備えている。このグレーティング反射器A2、A3は、インターディジタルトランスデューサ電極A1を弾性波伝搬方向に挟むように配置されている。
【0016】
インターディジタルトランスデューサ電極A1は、バスバーA11と、このバスバーA11に電気的に接続された複数本の櫛形電極A12と、バスバーA14と、このバスバーA14に電気的に接続された複数本の櫛形電極A13とからなる。また、櫛形電極A12と櫛形電極A13は交差しており、その交差幅はL1である。バスバーA11は入力端子2に電気的に接続されており、バスバーA14は出力端子3に電気的に接続されている。
【0017】
グレーティング反射器A2、A3は、バスバーA21、A31に電気的に接続された周期がP1/2の櫛形電極A22、A32からなる。
【0018】
第2の弾性波共振子Bはインターディジタルトランスデューサ電極B1とグレーティング反射器B2、B3を備えている。このグレーティング反射器B2、B3は、インターディジタルトランスデューサ電極B1を弾性波伝播方向に挟むように配置されている。
【0019】
インターディジタルトランスデューサ電極B1は、バスバーB11と、このバスバーB11に電気的に接続された複数本の櫛型電極B12と、バスバーB14と、このバスバーB14に電気的に接続された複数本の櫛型電極B13とからなる。また、櫛形電極B12と櫛形電極B13は交差しており、その交差幅はL2である。なお、この交差幅L2は、第1の弾性波共振子Aの交差幅L1よりも小さい。バスバーB11は入力端子2に電気的に接続されており、バスバーB14は出力端子3に電気的に接続されている。
【0020】
グレーティング反射器B2、B3は、バスバーB21、B31に電気的に接続された周期がP2/2の櫛形電極B22、B32からなる。
【0021】
このように弾性波共振子Aをなす櫛形電極A12と櫛形電極A13との交差幅L1と、弾性波共振子Bをなす櫛形電極B12と櫛形電極B13との交差幅L2とを異ならせることによって、横モードスプリアスの影響の少ない低ロスな弾性波共振器を実現することができる。以下、交差幅と横モードスプリアスの関係について説明する。
【0022】
横モードスプリアスとは、弾性波伝搬方向と直交する方向に定在波が立つことに起因して通過帯域内に生じるスプリアスである。特に、圧電基板としてニオブ酸リチウムを用いた場合には、横モードスプリアスが顕著に発生するため、弾性波共振子の共振性能を劣化させる原因の1つとなっている。
【0023】
ここで、複数の弾性波共振子を並列又は直列に接続した従来の弾性波共振器は、単一の弾性波共振子と比べて、通過帯域内に生じるスプリアスが大きいという課題があった。解析の結果、この課題は、各弾性波共振子にそれぞれ発生する横モードスプリアスの周波数が一致していることに起因していることが分かった。すなわち、各弾性波共振子に発生する横モードスプリアスが互いに強め合った結果、通過帯域内に深いスプリアスを生じさせていた。
【0024】
図2は、交差幅と横モードスプリアスの発生周期の関係を解析した結果である。このグラフにおいて、横軸は交差幅を示し、縦軸は位相速度(=周波数×櫛型電極のピッチ)を表している。例えば、交差幅がLa(=10W/lambda)の場合、黒丸で示した各ポイントに対応する位相速度PV1〜PV6に横モードスプリアスが発生する。このグラフより、交差幅を調整することにより、横モードスプリアスが発生する位相速度を調整できることが分かる。すなわち、交差幅と櫛型電極のピッチを調整することにより、横モードスプリアスが発生する周波数を調整することができる。
【0025】
本実施の形態では、この関係を利用し、同一ピッチの弾性波共振子A、Bにおいて、弾性波共振子Aをなす櫛形電極A12と櫛形電極A13との交差幅L1と、弾性波共振子Bをなす櫛形電極B12と櫛形電極B13との交差幅L2とを異ならせている。この構成により、弾性波共振子A及びBにそれぞれ生じる横モードスプリアスの発生周波数を分散させることができ、弾性波共振器の低ロス化を実現することができる。
【0026】
なお、弾性波共振子AのピッチP1と弾性波共振子BのピッチP2を等しくし、弾性波共振子の共振周波数を一致させることにより、ロスを最小に抑えることができる。逆に、P1とP2を異ならしめることにより、通過帯域、及び減衰帯域の帯域幅を広げることが可能となり、設計自由度を大きくすることができる。この場合には、ピッチP1、P2も考慮した上で交差幅L1、L2を設計すればよい。
【0027】
ここで、図2から分かるように、交差幅を変えた場合であっても、同一の周波数に横モードスプリアスが発生してしまうことがある。例えば、弾性波共振子Aの交差幅L1をLa(10W/lambda)とし、弾性波共振子Bの交差幅L2をLb(約13W/lambda)とした場合には、弾性波共振子A、Bともに位相速度PV3の位置に横モードスプリアスが発生する。その結果、この位置の横モードスプリアスが互いに強め合い、弾性波共振器の通過帯域内のロスが大きくなってしまう。
【0028】
従って、弾性波共振子A、Bにそれぞれ発生する横モードスプリアスが同一周波数に重ならないようにするためには、以下の(数1)の関係を満たすように、交差幅L1、L2を設計すればよい。ただし、nは整数を表し、Sは弾性波共振子Aにおいて、同一周波数に横モードスプリアスが発生する交差幅の周期を表す。
【0029】
(数1)L2≠L1+nS
さらに、以下の(数2)の関係を満たすように、交差幅L1、L2を設計することにより、より効果的に横モードスプリアスを効果的に分散させることができる。
【0030】
(数2)L2=L1+(n+1/2)S
なお、(数1)又は(数2)において、交差幅L2はSに対して20%程度の幅を有してもよい。弾性波共振器の通過帯域内において、Sは20%程度の幅があるため、この範囲内であれば、横モードスプリアスの分散効果を生じるからである。
【0031】
以上のように、弾性波共振器が備える弾性波共振子の交差幅を(数1)又は(数2)の関係を満たすように設計することにより、弾性波共振器の通過帯域におけるロスを低減することができる。
【0032】
図3及び図4は、本実施の形態における弾性波共振器の特性を示している。図3に示す本実施の形態における構成におけるアドミタンスの周波数特性と、図11に示す従来構成におけるアドミタンスの周波数特性とを比較すると、本実施の形態の構成により、共振周波数Aと反共振周波数Bとの間に見られた横モードスプリアスが分散され、1つ当たりの絶対値が低減されていることがわかる。さらに、図4に示す本実施の形態における損入損失の周波数特性と、図12に示す従来の構成における損入損失の周波数特性とを比較すると、本実施の形態の構成により、スプリアスが分散され、1つ当たりの絶対値が低減されていることがわかる。
【0033】
ここで交差幅L1<交差幅L2とすることにより、弾性波共振子A、Bの静電容量C1、C2は静電容量C1<静電容量C2となる。そこで弾性波共振子A、Bの対数N1、N2に対し対数N2<対数N1とすることでC1とC2の比を緩和させることが望ましい。
【0034】
なお、本構成は1個のインターディジタルトランスデューサ電極の両側を2個のグレーティング反射器で挟んだ弾性波共振子のみならず、2個以上のインターディジタルトランスデューサ電極を伝搬路上に配置した構成においても横モードスプリアスの抑圧に有効である。
【0035】
なお、本実施の形態では、弾性波共振子A、Bを並列接続した構成について説明していたが、3個以上の弾性波共振子を並列接続することもできる。
【0036】
なお、本実施の形態では、弾性波共振子A、Bを並列接続した構成について説明していたが、図5のように、弾性波共振子A、Bを直列接続することもできる。これにより、弾性波共振子1つあたりに印加される電圧を低減することができ、弾性波共振器の耐電圧性能を向上させることができるとともに、交差幅を(数1)又は(数2)の関係とすることにより、横モードスプリアスを抑圧することができる。
【0037】
なお、本発明による弾性波共振器を用いて弾性波フィルタを構成した場合、通過帯域内に生じる横モードスプリアスを効果的に抑制することができ低ロス化が可能となる。
【0038】
なお、図1に示す圧電基板1の回転Y板のカット角を−30°〜+30°程度とすることが望ましい。カット角をこの範囲とすることにより、広帯域な弾性波フィルタを実現することができる。
【0039】
なお、インターディジタルトランスデューサ電極A1、B1の内少なくとも一方を弾性波の波長の15%以上の厚みのSiO2薄膜で覆うことで、弾性波のロスを低減できるとともに、温度特性をも改善することができる。
【0040】
なお、本構成を用いて送信フィルタと受信フィルタを構成することで低ロスである弾性波アンテナ共用器を構成することができる。
【0041】
(実施の形態2)
実施の形態2の特徴部分について、実施の形態1の差異を中心に説明する。
【0042】
図6に示すごとく、弾性波共振子Cは、圧電基板1の上にインターディジタルトランスデューサ電極C11、C12、C13、C14、C15とグレーティング反射器C16、C17を備えている。また、インターディジタルトランスデューサ電極C11、C12、C13、C14、C15は弾性波伝搬路上に配置されており、グレーティング反射器C16、C17はインターディジタルトランスデューサ電極C11、C12、C13、C14、C15を挟むように配置されている。また、インターディジタルトランスデューサ電極C11、C12、C13、C14、C15の交差幅はL1である。また、インターディジタルトランスデューサ電極C11、C13、C15は入力電極4に電気的に接続され、インターディジタルトランスデューサ電極C12、C14は出力電極5に電気的に接続されている。
【0043】
弾性波共振子Dは、圧電基板1の上にインターディジタルトランスデューサ電極D11、D12、D13、D14、D15とグレーティング反射器D16、D17を備えている。また、インターディジタルトランスデューサ電極D11、D12、D13、D14、D15は弾性波伝搬路上に配置されており、グレーティング反射器D16、D17はインターディジタルトランスデューサ電極D11、D12、D13、D14、D15を挟むように配置されている。また、インターディジタルトランスデューサ電極D11、D12、D13、D14、D15の交差幅はL2である。また、インターディジタルトランスデューサ電極D11、D13、D15は入力電極4に電気的に接続され、インターディジタルトランスデューサ電極D12、D14は出力電極6に電気的に接続されている。
【0044】
ここで、第2の弾性波共振子Dの交差幅L2は第1の弾性波共振子Cの交差幅L1よりも小さい構成となっている。この交差幅L1、L2の関係を、(数1)を満たすようにすることにより、図7に示すごとく、横モードスプリアスを分散させることができる。また、(数2)を満たすようにすることにより、さらに効果的に横モードスプリアスを分散させることができる。
【0045】
また、実施の形態2では、各々5個のインターディジタルトランスデューサ電極を持つ弾性波共振子について述べたが、インターディジタルトランスデューサ電極の数は5個に限らずスプリアス抑制効果は得られる。
【0046】
なお、弾性波共振子Cのインターディジタルトランスデューサ電極C11、C12、C13、C14、C15の交差幅を全て等しくすることで損失の少ない弾性波共振器を構成することができる。またインターディジタルトランスデューサ電極C11、C12、C13、C14、C15の交差幅を異ならしめることにより、さらに横モードスプリアスを分散させることができる。これは第2の弾性波共振子Dのインターディジタルトランスデューサ電極D11、D12、D13、D14、D15の交差幅においても同様である。
【0047】
なお、弾性波共振子CのピッチP8、P9、P10、P11、P12と弾性波共振子DのピッチP3、P4、P5、P6、P7を等しくすることにより、弾性波共振子の共振周波数を一致させることができる。これにより、弾性波共振器のロスを最小に抑えることができる。逆に、ピッチP8とP3、ピッチP9とP4、ピッチP10とP5、ピッチP11とP6、ピッチP12とP7の内の少なくとも1組を異ならしめることにより、弾性波共振子Cと弾性波共振子Dとのバランス度を調整することができる。
【0048】
なお、本実施の形態では、弾性波共振子A、Bを並列接続した構成について説明していたが、3個以上の弾性波共振子を並列接続することもできる。
【0049】
なお、本発明による弾性波共振器を用いて弾性波フィルタを構成した場合、通過帯域内に生じる横モードスプリアスを効果的に抑制することができ低ロス化が可能となる。
【0050】
なお、図6に示す圧電基板1の回転Y板のカット角を−30°〜+30°程度とすることが望ましい。カット角をこの範囲とすることにより、広帯域な弾性波フィルタを実現することができる。
【0051】
なお、弾性波共振子C、Dのインターディジタルトランスデューサ電極(C11、C12、C13、C14、C15)、(D11、D12、D13、D14、D15)の内少なくとも一方を弾性波の波長の15%以上の厚みのSiO2薄膜で覆うことで、弾性波のロスを低減できるとともに、温度特性も改善できる。
【0052】
なお、本構成を用いて送信フィルタと受信フィルタを構成することで低ロスである弾性波アンテナ共用器を構成することができる。
【0053】
(実施の形態3)
実施の形態3の特徴部分について、実施の形態1の差異を中心に説明する。
【0054】
図8に示すごとく、ラダー型フィルタ8は、直列腕の弾性波共振器E及びFと、並列腕の弾性波共振器G、H、Iとを備えている。なお、図8はラダー型フィルタの一例として示したものであり、直列腕に3つ以上の弾性波共振器を配置した場合や、並列腕に2つ或いは4つ以上の弾性波共振器を配置した場合であっても以下に説明する効果を奏する。
【0055】
ラダー型フィルタ8において、直列腕の弾性波共振器E及びFの共振周波数と、並列腕の弾性波共振器G、H及びIの反共振周波数をほぼ一致させることでバンドパス特性を得ることができる。
【0056】
弾性波共振器Eは、弾性波共振子E1と弾性波共振子E2が並列に接続されている。ここで、弾性波共振子E1の交差幅EL1は、弾性波共振子E2の交差幅EL2よりも小さく形成されている。さらに、交差幅EL1、EL2の関係を(数1)又は(数2)を満たすようにすることにより、横モードスプリアスを分散させることができる。
【0057】
弾性波共振器Gは、弾性波共振子G1と弾性波共振子G2が並列に接続されている。ここで、弾性波共振子G1の交差幅GL1は、弾性波共振子G2の交差幅GL2よりも小さく形成されている。さらに、交差幅GL1、GL2の関係を(数1)又は(数2)を満たすようにすることにより、横モードスプリアスを分散させることができる。
【0058】
さらに、交差幅EL1、EL2、GL1、GL2を全て異ならせることにより、全ての弾性波共振子に発生する横モードスプリアスの周波数を分散させることができ、効果的に通過帯域の低ロス化を図ることができる。
【0059】
さらに、交差幅EL1、EL2、GL1、GL2の任意の2つの組合せの関係が(数1)又は(数2)を満たすようにすることにより、ラダー型フィルタ8は直列腕及び並列腕で生じる横モードスプリアスが同一周波数に重なることを確実に防ぐことができ、効果的に通過帯域の低ロス化を図ることができる。
【0060】
交差幅EL1と交差幅EL2との差の絶対値|EL1−EL2|は、交差幅GL1と交差幅GL2との差の絶対値|GL1−GL2|よりも大きくすることが望ましい。図2のグラフによると、位相速度が大きくなるほど(すなわち、周波数が高くなるほど)、横モードスプリアスの発生周期Sが小さくなっていることが分かる。すなわち、周波数が高くなるほど、交差幅への依存性が大きくなっている。ここで、ラダー型フィルタ8において、直列腕の弾性波共振器E及びFの共振周波数と、並列腕の弾性波共振器G、H及びIの反共振周波数をほぼ一致させるために、直列腕の弾性波共振器E及びFの共振周波数を比較的低くし、並列腕の弾性波共振器G、H及びIの共振周波数を比較的高くしている。従って、共振周波数が比較的低い直列腕の弾性波共振器E及びFにおいては、弾性波共振子の交差幅の差の絶対値|EL1−EL2|を比較的大きくし、共振周波数が比較的高い並列腕の弾性波共振器G、H及びIにおいては、弾性波共振子の交差幅の差の絶対値|GL1−GL2|を比較的小さくすることにより、容易に横モードスプリアスの発生位置を分散させることができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、弾性波共振器E、Gにおいて、2つの弾性波共振子を並列接続した構成について説明していたが、3個以上の弾性波共振子を並列接続することもできる。
【0062】
なお、本実施の形態では、弾性波共振子E、Gにおいて、弾性波共振子を並列接続した構成について説明していたが、図9のように、弾性波共振子を直列接続することもできる。これにより、弾性波共振子1つあたりに印加される電圧を低減することができ、弾性波共振器の耐電圧性能を向上させることができるとともに、交差幅を(数1)又は(数2)の関係とすることにより、横モードスプリアスを抑圧することができる。
【0063】
なお、弾性波共振子E1のピッチEP1と弾性波共振子E2のピッチEP2を等しくし、弾性波共振子の共振周波数を一致させることにより、ロスを最小に抑えることができる。逆に、EP1とEP2を異ならしめることにより、通過帯域、及び減衰帯域の帯域幅を広げることが可能となり、設計自由度を大きくすることができる。この場合には、ピッチEP1、EP2も考慮した上で交差幅EL1、EL2を設計すればよい。弾性波共振子G1のピッチGP1と弾性波共振子G2のピッチGP2についても同様である。
【0064】
なお、これら弾性波共振子の下方に形成される圧電基板の回転Y板のカット角を−30°〜+30°程度とすることが望ましい。カット角をこの範囲とすることにより、広帯域な弾性波フィルタを実現することができる。
【0065】
なお、これら弾性波共振子が備えるインターディジタルトランスデューサ電極の内少なくとも一つを弾性波の波長の15%以上の厚みのSiO2薄膜で覆うことで、弾性波のロスを低減できるとともに、温度特性をも改善することができる。
【0066】
なお、本構成を用いて送信フィルタと受信フィルタを構成することで低ロスである弾性波アンテナ共用器を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明にかかるフィルタは、弾性波フィルタのロスの発生を抑制することができるという効果を有し、携帯電話等の各種通信機器において有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 圧電基板
A 第1の弾性波共振子
A1 インターディジタルトランスデューサ電極
B 第2の弾性波共振子
B1 インターディジタルトランスデューサ電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板上に設けられた第1のインターディジタルトランスデューサ電極を有する第1の弾性波共振子と、
前記圧電基板上に設けられた第2のインターディジタルトランスデューサ電極を有する第2の弾性波共振子とを備えた弾性波共振器であって、
前記第1の弾性波共振子と前記第2の弾性波共振子とは電気的に接続され、
前記第1の弾性波共振子を構成する複数の櫛歯電極の交差幅をL1とすると、
前記第2の弾性波共振子を構成する複数の櫛歯電極の交差幅であるL2は、以下の式を満たすことを特徴とする弾性波共振器。
L2≠L1+nS
ただし、nは整数を表し、Sは前記第1の弾性波共振子において、同一周波数に横モードスプリアスが発生する交差幅の変化量を表す。
【請求項2】
圧電基板上に設けられた第1のインターディジタルトランスデューサ電極を有する第1の弾性波共振子と、
前記圧電基板上に設けられた第2のインターディジタルトランスデューサ電極を有する第2の弾性波共振子とを備えた弾性波共振器であって、
前記第1の弾性波共振子と前記第2の弾性波共振子とは接続された弾性波共振器であって、
前記第1の弾性波共振子を構成する複数の櫛歯電極の交差幅をL1とすると、
前記第2の弾性波共振子を構成する複数の櫛歯電極の交差幅であるL2は、以下の式を満たすことを特徴とする弾性波共振器。
L2=L1+(n+1/2)S
ただし、nは整数を表し、Sは前記第1の弾性波共振子において、同一周波数に横モードスプリアスが発生する交差幅の変化量を表す。
【請求項3】
前記第1の弾性波共振子と前記第2の弾性波共振子とは直列接続されている請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器。
【請求項4】
前記第1の弾性波共振子と前記第2の弾性波共振子とは並列接続されている請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器を直列腕に接続した第1の弾性波共振器と、
請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器を並列腕に接続した第2の弾性波共振器とを有するラダー型フィルタであって、
前記第1の弾性波共振器が備える第1の弾性波共振子の交差幅をEL1とし、
前記第1の弾性波共振器が備える第2の弾性波共振子の交差幅をEL2とし、
前記第2の弾性波共振器が備える第1の弾性波共振子の交差幅をGL1とし、
前記第2の弾性波共振器が備える第2の弾性波共振子の交差幅をGL2とすると、
EL1、EL2、GL1及びGL2は全て異なるとともに、
EL1、EL2、GL1及びGL2から選択した任意の2つの交差幅のうち、小さい方をL1、大きい方をL2とすると、以下の式を満たすことを特徴とするラダー型フィルタ。
L2≠L1+nS
ただし、nは整数を表し、Sは交差幅がL1の弾性波共振子において、同一周波数に横モードスプリアスが発生する交差幅の変化量を表す。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器を直列腕に接続した第1の弾性波共振器と、
請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器を並列腕に接続した第2の弾性波共振器とを有するラダー型フィルタであって、
前記第1の弾性波共振器が備える第1の弾性波共振子の交差幅をEL1とし、
前記第1の弾性波共振器が備える第2の弾性波共振子の交差幅をEL2とし、
前記第2の弾性波共振器が備える第1の弾性波共振子の交差幅をGL1とし、
前記第2の弾性波共振器が備える第2の弾性波共振子の交差幅をGL2とすると、
EL1、EL2、GL1及びGL2は全て異なるとともに、
EL1、EL2、GL1及びGL2から選択した任意の2つの交差幅のうち、小さい方をL1、大きい方をL2とすると、以下の式を満たすことを特徴とするラダー型フィルタ。
L2=L1+(n+1/2)S
ただし、nは整数を表し、Sは交差幅がL1の弾性波共振子において、同一周波数に横モードスプリアスが発生する交差幅の変化量を表す。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器を直列腕に接続した第1の弾性波共振器と、
請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器を並列腕に接続した第2の弾性波共振器とを有するラダー型フィルタであって、
前記第1の弾性波共振器が備える第1の弾性波共振子の交差幅をEL1とし、
前記第1の弾性波共振器が備える第2の弾性波共振子の交差幅をEL2とし、
前記第2の弾性波共振器が備える第1の弾性波共振子の交差幅をGL1とし、
前記第2の弾性波共振器が備える第2の弾性波共振子の交差幅をGL2とすると、
EL1とEL2との差の絶対値|EL1−EL2|は、GL1とGL2との差の絶対値|GL1−GL2|よりも大きいことを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項1】
圧電基板上に設けられた第1のインターディジタルトランスデューサ電極を有する第1の弾性波共振子と、
前記圧電基板上に設けられた第2のインターディジタルトランスデューサ電極を有する第2の弾性波共振子とを備えた弾性波共振器であって、
前記第1の弾性波共振子と前記第2の弾性波共振子とは電気的に接続され、
前記第1の弾性波共振子を構成する複数の櫛歯電極の交差幅をL1とすると、
前記第2の弾性波共振子を構成する複数の櫛歯電極の交差幅であるL2は、以下の式を満たすことを特徴とする弾性波共振器。
L2≠L1+nS
ただし、nは整数を表し、Sは前記第1の弾性波共振子において、同一周波数に横モードスプリアスが発生する交差幅の変化量を表す。
【請求項2】
圧電基板上に設けられた第1のインターディジタルトランスデューサ電極を有する第1の弾性波共振子と、
前記圧電基板上に設けられた第2のインターディジタルトランスデューサ電極を有する第2の弾性波共振子とを備えた弾性波共振器であって、
前記第1の弾性波共振子と前記第2の弾性波共振子とは接続された弾性波共振器であって、
前記第1の弾性波共振子を構成する複数の櫛歯電極の交差幅をL1とすると、
前記第2の弾性波共振子を構成する複数の櫛歯電極の交差幅であるL2は、以下の式を満たすことを特徴とする弾性波共振器。
L2=L1+(n+1/2)S
ただし、nは整数を表し、Sは前記第1の弾性波共振子において、同一周波数に横モードスプリアスが発生する交差幅の変化量を表す。
【請求項3】
前記第1の弾性波共振子と前記第2の弾性波共振子とは直列接続されている請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器。
【請求項4】
前記第1の弾性波共振子と前記第2の弾性波共振子とは並列接続されている請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器を直列腕に接続した第1の弾性波共振器と、
請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器を並列腕に接続した第2の弾性波共振器とを有するラダー型フィルタであって、
前記第1の弾性波共振器が備える第1の弾性波共振子の交差幅をEL1とし、
前記第1の弾性波共振器が備える第2の弾性波共振子の交差幅をEL2とし、
前記第2の弾性波共振器が備える第1の弾性波共振子の交差幅をGL1とし、
前記第2の弾性波共振器が備える第2の弾性波共振子の交差幅をGL2とすると、
EL1、EL2、GL1及びGL2は全て異なるとともに、
EL1、EL2、GL1及びGL2から選択した任意の2つの交差幅のうち、小さい方をL1、大きい方をL2とすると、以下の式を満たすことを特徴とするラダー型フィルタ。
L2≠L1+nS
ただし、nは整数を表し、Sは交差幅がL1の弾性波共振子において、同一周波数に横モードスプリアスが発生する交差幅の変化量を表す。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器を直列腕に接続した第1の弾性波共振器と、
請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器を並列腕に接続した第2の弾性波共振器とを有するラダー型フィルタであって、
前記第1の弾性波共振器が備える第1の弾性波共振子の交差幅をEL1とし、
前記第1の弾性波共振器が備える第2の弾性波共振子の交差幅をEL2とし、
前記第2の弾性波共振器が備える第1の弾性波共振子の交差幅をGL1とし、
前記第2の弾性波共振器が備える第2の弾性波共振子の交差幅をGL2とすると、
EL1、EL2、GL1及びGL2は全て異なるとともに、
EL1、EL2、GL1及びGL2から選択した任意の2つの交差幅のうち、小さい方をL1、大きい方をL2とすると、以下の式を満たすことを特徴とするラダー型フィルタ。
L2=L1+(n+1/2)S
ただし、nは整数を表し、Sは交差幅がL1の弾性波共振子において、同一周波数に横モードスプリアスが発生する交差幅の変化量を表す。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器を直列腕に接続した第1の弾性波共振器と、
請求項1又は請求項2に記載の弾性波共振器を並列腕に接続した第2の弾性波共振器とを有するラダー型フィルタであって、
前記第1の弾性波共振器が備える第1の弾性波共振子の交差幅をEL1とし、
前記第1の弾性波共振器が備える第2の弾性波共振子の交差幅をEL2とし、
前記第2の弾性波共振器が備える第1の弾性波共振子の交差幅をGL1とし、
前記第2の弾性波共振器が備える第2の弾性波共振子の交差幅をGL2とすると、
EL1とEL2との差の絶対値|EL1−EL2|は、GL1とGL2との差の絶対値|GL1−GL2|よりも大きいことを特徴とするラダー型フィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図8】
【公開番号】特開2010−251889(P2010−251889A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96831(P2009−96831)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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