弾性表面波デバイス、発振器、モジュール装置
【課題】良好な温度特性を有する弾性表面波デバイスを実現する。
【解決手段】弾性表面波デバイス1は、C面を主面とするサファイア基板10と、サファイア基板10の主面11に形成される窒化アルミニウム膜30と、窒化アルミニウム膜30の表面に形成され弾性表面波を励振させる櫛歯電極21,22と、櫛歯電極21,22及び窒化アルミニウム膜30の表面を覆う二酸化シリコン膜40と、を有し、前記弾性表面波としてレイリー波の基本モードを用いている。窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚KH−AlNと、二酸化シリコン膜40の規格化膜厚KH−SiO2と、の関係を適切な範囲に設定することにより、良好な温度特性、高い音速を有する弾性表面波デバイス1が実現できる。
【解決手段】弾性表面波デバイス1は、C面を主面とするサファイア基板10と、サファイア基板10の主面11に形成される窒化アルミニウム膜30と、窒化アルミニウム膜30の表面に形成され弾性表面波を励振させる櫛歯電極21,22と、櫛歯電極21,22及び窒化アルミニウム膜30の表面を覆う二酸化シリコン膜40と、を有し、前記弾性表面波としてレイリー波の基本モードを用いている。窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚KH−AlNと、二酸化シリコン膜40の規格化膜厚KH−SiO2と、の関係を適切な範囲に設定することにより、良好な温度特性、高い音速を有する弾性表面波デバイス1が実現できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C面サファイア基板を用いた弾性表面波デバイス、発振器、及びモジュール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電体膜の表面を伝搬する弾性表面波を用いる弾性表面波デバイスは、固有の共振周波数や伝送特性を有し、しかも小型化が可能であり部品数も少ないため、通信機器用のバンドパスフィルターや基準クロックとして共振子等に応用されている。フィルターや共振子に弾性表面波デバイスを用いる場合には、温度依存性を表す遅延時間温度係数(TCD)や、電気機械変換の性能を表す電気機械結合係数(K2)が良好であることが求められる。
【0003】
そこで、ガラス等の絶縁性基板に櫛歯電極(IDT)を形成し、櫛歯電極の表面を覆う圧電体膜と、この圧電体膜を覆うように保護膜が形成される弾性表面波デバイスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、C面サファイア基板上に櫛歯電極を形成し、櫛歯電極の表面を覆う圧電体膜を形成してなる弾性表面波デバイスが提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−178330号公報
【特許文献2】特開平10−135773号公報
【特許文献3】特開平8−130435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、基板としてガラス等の絶縁基板を用いており、この基板上に櫛歯電極、さらに圧電体膜、保護膜を層状に形成することで、湿気や異物の侵入を防止し、外部雰囲気による圧電体膜の劣化や変質を防止することを目的としている。しかしながら、保護膜の材質や膜厚さを十分に考慮しなければ、弾性表面波の音速や電気機械結合係数、温度特性が変動するために、これらの良好な特性を得ることができない。
【0007】
また、特許文献2及び特許文献3では、C面サファイア基板上にアルミニウム系合金からなる櫛歯電極を形成し、さらに櫛歯電極を覆うように酸化亜鉛(ZnO)膜を形成することで、ストレスマイグレーション耐性を向上しようとしている。このような構成であっても、酸化亜鉛膜の膜厚さを十分に考慮しなければ、弾性表面波の音速や温度特性が変動するために、これらの良好な特性を得ることができないという課題を有している。
【0008】
また、C面サファイア基板上に圧電体膜として酸化亜鉛を用いる場合は、サファイア基板の音速と酸化亜鉛の音速との差が大きく、この音速差が周波数変動に影響することがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例に係る弾性表面波デバイスは、C面を主面とするサファイア基板と、前記サファイア基板の主面に形成される窒化アルミニウム膜と、前記窒化アルミニウム膜の表面に形成され弾性表面波を励振させる櫛歯電極と、前記櫛歯電極及び前記窒化アルミニウム膜の表面を覆う二酸化シリコン膜と、を有し、前記弾性表面波がレイリー波の基本モードであることを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、基板としてC面を主面とするサファイア基板(以降、C面サファイア基板と表すことがある)を用いていることから、基板として水晶やガラス等を用いる場合よりも高い音速を得られる。つまり、高周波デバイスを実現できる。
【0012】
また、窒化アルミニウム膜と二酸化シリコン膜とを、互いに逆符号の遅延時間温度係数(TCD)とすることにより、良好な周波数温度特性を得ることが可能となる。
【0013】
窒化アルミニウムは、サファイア基板よりも電気機械結合係数(K2)が大きいこと、窒化アルミニウムをサファイア基板上に形成する場合、窒化アルミニウムの結晶性がよいことからさらに電気機械結合係数を大きくすることが可能で、弾性表面波の励振効率を高めることができる。
【0014】
また、C面サファイア基板の音速と窒化アルミニウムの音速とがほぼ同じであるため、音速差に起因する周波数変動を抑制することができる。
【0015】
さらに、レイリー波の基本モードは、セザワ波の1次モード、2次モード等の高次のモードを用いる場合に対して窒化アルミニウム膜の膜厚が薄い場合に発生しやすい。よって、膜厚のばらつきが発生しにくいので安定性が高く、また、より高い音速を得ることができるという特性を有する。
【0016】
[適用例2]上記適用例に係る弾性表面波デバイスは、前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、1.25)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.65、0.50)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.67、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.44、1.83)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.29、3.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.22、4.00)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.20、5.29)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.18、6.00)
座標9(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.18、10.00)
座標10(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、10.00)
これらの座標を、座標1〜座標10の順に結ぶとともに、座標10と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることが望ましい。
【0017】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−40ppm/℃〜+40ppm/℃、4800m/s以上の高い音速が実現できる。
【0018】
[適用例3]上記適用例に係る弾性表面波デバイスは、前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、2.37)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.89、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.98、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.43、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.00、3.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.85、4.00)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.72、6.00)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.70、10.00)
座標9(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、10.00)
これらの座標を、座標1〜座標9の順に結ぶとともに、座標9と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることが望ましい。
【0019】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−20ppm/℃〜+20ppm/℃、5000m/s以上の高い音速が実現できる。
【0020】
[適用例4]上記適用例に係る弾性表面波デバイスは、前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、3.00)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.02、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.10、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.32、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.06、2.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.76、3.29)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.59、4.67)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、6.38)
これらの座標を、座標1〜座標8の順に結ぶとともに、座標8と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることが望ましい。
【0021】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−10ppm/℃〜+10ppm/℃、5000m/s以上の高い音速が実現でき、高周波帯域発振器に好適である。
【0022】
[適用例5]上記適用例に係る弾性表面波デバイスは、前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、3.33)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.07、1.04)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.16、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.27、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.10、1.58)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.68、3.25)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、4.46)
これらの座標を、座標1〜座標7の順に結ぶとともに、座標7と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることが望ましい。
【0023】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−5ppm/℃〜+5ppm/℃、5100m/s以上の高い音速が実現でき、高精度な温度特性が要求される高周波帯域発振器に好適な弾性表面波デバイスを実現できる。
【0024】
[適用例6]上記適用例に係る弾性表面波デバイスは、前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、0.83)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.62、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.70、1.58)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、2.50)
これらの座標を、座標1〜座標4の順に結ぶとともに、座標4と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることが望ましい。
【0025】
この領域内では、弾性表面波の励振に必要とされる電気機械結合係数K2が0.1%以上と、5400m/s以上の高い音速が実現できる。
【0026】
[適用例7]本適用例に係る発振器は、上記適用例のいずれかに記載の弾性表面波デバイスを用いたことを特徴とする。
【0027】
上述した弾性表面波デバイスを、SAWフィルターや集積回路素子と組み合わせて発振器とすることで、高い音速と、良好な周波数温度特性とを有する発振器を実現できる。
【0028】
[適用例8]本適用例に係るモジュール装置は、上記適用例のいずれかに記載の弾性表面波デバイスを用いたことを特徴とする。
【0029】
上述した弾性表面波デバイスをパッケージを用いて密閉することで、湿気や塵埃等の外部環境からの保護を行うことで、より信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1に係る弾性表面波デバイスの上面図。
【図2】図1におけるA−A切断面を示す断面図。
【図3】実施形態1に係る弾性表面波デバイスにおける窒化アルミニウム膜の規格化膜厚(KH‐AlN)と二酸化シリコン膜の規格化膜厚(KH−SiO2)と、遅延時間温度係数(TCD)との関係を表すグラフ。
【図4】実施形態1に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、電気機械結合係数K2との関係を示すグラフ。
【図5】実施形態1に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、サファイア基板上を伝搬するレイリー波の音速の関係を表すグラフ。
【図6】実施例1に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数との関係を表すグラフ。
【図7】実施例1に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、サファイア基板上を伝搬するレイリー波の音速との関係を表すグラフである。
【図8】実施例2に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数との関係を示すグラフ。
【図9】実施例2に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、レイリー波がサファイア基板を伝搬する音速との関係を表すグラフ。
【図10】実施例3に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数(TCD)との関係を示すグラフ。
【図11】実施例3に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、レイリー波がサファイア基板を伝搬する音速との関係を表すグラフ。
【図12】実施例4に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数(TCD)との関係を示すグラフ。
【図13】実施例4に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、レイリー波がサファイア基板を伝搬する音速との関係を表すグラフ。
【図14】実施例5に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、電気機械結合係数K2との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
【0032】
図1は、実施形態1に係る弾性表面波デバイスの上面図を示し、図2は、図1におけるA−A切断面を示す断面図である。なお、図1及び図2は、図示の都合上、縦、横の部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
【0033】
図1、図2において、弾性表面波デバイス1は、単結晶の六方晶系であって、面方位のC面を主面とするサファイア基板10と、サファイア基板10の主面11全体に形成される窒化アルミニウム(AlN)膜30と、窒化アルミニウム(AlN)膜30表面に形成される櫛歯電極(IDT:Interdigital transducer)21,22と、櫛歯電極21,22及び窒化アルミニウム膜30の表面を覆うように形成される二酸化シリコン膜としての二酸化シリコン(SiO2)膜40とから構成されている。なお、C面はミラー指数で表すと(0001)となる。また、窒化アルミニウム(AlN)膜30は圧電体膜である。
【0034】
櫛歯電極21,22は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、互いの交差指電極を間挿して構成されており、櫛歯電極21の一端には電極パッド21a、櫛歯電極22の一端には電極パッド22aが形成されている。これら電極パッド21a,22aは、それぞれ窒化アルミニウム膜30及び二酸化シリコン膜40を貫通して、二酸化シリコン膜40の表面に露出している。
【0035】
なお、図1、図2に表す櫛歯電極21,22の構成は1例であって、櫛歯電極の構成、及び交差指電極の数は簡略化して図示している。また、櫛歯電極21,22の材質は、導電性を有していれば特に限定されない。
【0036】
次に、弾性表面波デバイス1の製造方法について主要な工程について図2を参照して説明する。まず、サファイア基板10の主面11の表面に窒化アルミニウム膜30をスパッタリング法により形成する。そして、窒化アルミニウム膜30の表面にアルミニウム膜(またはアルミニウム合金膜)を蒸着法により形成する。そして、アルミニウム膜にフォトレジストを塗布し、ステッパーを用いて露光し、現像処理、エッチング、レジスト剥離処理を行うことで櫛歯電極21,22を形成する。
【0037】
続いて、二酸化シリコン膜40をスパッタリング法により形成する。次に、フォトリソグラフィ技術により二酸化シリコン膜40を貫通する開口部を開設する。二酸化シリコン膜40のエッチングにはCF4をエッチングガスとして用い、ドライエッチング法により開口部の二酸化シリコン膜40を除去する。その後、アルミニウム(またはアルミニウム合金)を蒸着法により成膜し、フォトリソグラフィ技術により電極パッド21a,22aを形成する。
【0038】
次に、このように形成される弾性表面波デバイス1の駆動について説明する。櫛歯電極21、櫛歯電極22は、入力側電極と出力側電極に相当し、入力側電極に印加された交流電力は、圧電体膜としての窒化アルミニウム膜30の表面で機械的エネルギーに変換されるが、電極が櫛歯型であるために窒化アルミニウム膜30内に粗密が発生し弾性波となり、窒化アルミニウム膜30の表面を伝搬して出力側電極へと到達する。そして、到達した弾性表面波は出力側電極により再び電気エネルギーに変換されて出力される。ここで、発生する弾性波としては、レイリー波の基本モードを用いる。
【0039】
このように形成された弾性表面波デバイス1を駆動し、ネットワークアナライザーを用いてインピーダンス特性を測定し、その測定結果を図3、図4、図5に表す。
【0040】
図3は、本実施形態に係る弾性表面波デバイスにおける窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚(以降、KH‐AlNと表す)と二酸化シリコン膜40の規格化膜厚(以降、KH−SiO2と表す)と、遅延時間温度係数(TCD)との関係を表し、図4は電気機械結合係数K2との関係、図5はサファイア基板10上を伝搬するレイリー波の音速[m/s]の関係を表すグラフである。同図は窒化アルミニウム膜30の厚さをta、二酸化シリコン膜40の厚さをts、弾性表面波の波長をλとしたとき、窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・taとし、二酸化シリコン膜40の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・tsとして、縦軸をKH‐AlN、横軸をKH‐SiO2としたときのグラフを示している。
【0041】
図3に示すように、KH−SiO2が0.5〜3の測定範囲で、遅延時間温度係数(TCD)が−80ppm/℃〜+45ppm/℃に抑えられる範囲があることが分かる。
【0042】
また、図4に示すように、電気機械結合係数K2が0.02%以上の範囲が存在し、KH−SiO2が0.5%近辺では電気機械結合係数K2が励振により好ましいとされる0.1%以上の範囲があることが分かる。
【0043】
また、図5に示すように、KH−SiO2が0.5〜3の測定範囲で、音速3900m/s以上の高い音速が得られることが分かる。
【0044】
本実施形態によれば、基板としてC面サファイア基板を用いている。サファイア基板は、水晶基板上を伝搬するレイリー波の音速が3100m/s程度が限界とされることに対して4500m/s以上の音速を有することから、基板として水晶を用いる場合よりも高い音速を得られる可能性がある。
【0045】
また、窒化アルミニウムは、音速が約5600m/sでありC面サファイア基板の音速と近いため、音速差に起因する周波数変動を抑制することができる。一方、従来技術のように圧電体膜として酸化亜鉛(ZnO)膜を用いると、酸化亜鉛(ZnO)膜は音速が約3100m/sとC面サファイア基板の音速よりも低く、高周波化を図るとC面サファイア基板の音速との差が大きくなり、音速差に起因する周波数変動が大きくなってしまう欠点がある。
しかし、C面サファイア基板の音速と窒化アルミニウムの音速とは近いため、酸化亜鉛(ZnO)膜を用いる場合よりも音速差に起因する周波数変動を抑制することができる。
【0046】
また、二酸化シリコンと、窒化アルミニウムとは、逆符号の遅延時間温度係数(TCD)を有するため、良好な周波数温度特性を有することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、弾性波としてレイリー波の基本モードを用いている。レイリー波の基本モードは、セザワ波の1次モード、2次モード等の高次のモードを用いる場合に対して窒化アルミニウム膜の膜厚が薄い場合により発生しやすい。よって、膜厚のばらつきが発生しにくいので安定性が高く、また、より高い音速を得ることができるという特性を有する。
【0048】
なお、櫛歯電極21,22の材質は、導電性を有していれば特に限定されないが、サファイア基板上に成膜する場合に、サファイア基板との結晶系に対して結晶性がよいアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いることがより好ましい。
【0049】
なお、弾性表面波デバイス1は、固有の共振周波数や伝送特性を有し、しかも小型化が可能であり部品数も少ないため、通信機器用のバンドパスフィルターや基準クロックとして共振子等に応用される。フィルターや共振子に弾性表面波デバイスを用いる場合には、温度依存性を表す周波数温度係数(TCF)または遅延時間温度係数(TCD)や、電気機械変換の性能を表す電気機械結合係数K2が良好であることが求められる。
(実施例1)
【0050】
そこで、本実施形態の具体的な実施例について説明する。
図6は、実施例1に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数との関係を表し、図7はサファイア基板上を伝搬するレイリー波の音速との関係を表すグラフである。図6の等高線上に記載されている数字は遅延時間温度係数(ppm/℃)である。例えば、KH‐SiO2=1、且つKH‐AlN=3の場合、遅延時間温度係数は−20ppm/℃である。また、図7の等高線上に記載されている数字は、レイリー波がサファイア基板を伝搬する音速(m/s)である。例えば、KH‐SiO2=1、且つKH‐AlN=3の場合、音速は5200m/sである。
【0051】
ここで、窒化アルミニウム膜30の厚さta、二酸化シリコン膜40の厚さts、弾性表面波の波長λ、としたとき、窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚は、KH‐AlN=(2π/λ)・ta、二酸化シリコン膜40の規格化膜厚は、KH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる。なお、本願の数式における「・」の記号は乗算を、「/」の記号は除算を表す。これら各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、適切な領域を以下の座標で表すことができる。なお、図6、図7では、座標1、座標2、座標3・・・をZ1、Z2、Z3・・・と表している。
【0052】
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、1.25)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.65、0.50)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.67、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.44、1.83)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.29、3.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.22、4.00)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.20、5.29)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.18、6.00)
座標9(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.18、10.00)
座標10(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、10.00)
これらの座標を、座標1〜座標10の順に結ぶとともに、座標10と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いる。
【0053】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−40ppm/℃〜+40ppm/℃、4800m/s以上の高い音速が実現できる。
(実施例2)
【0054】
次に、実施例2について説明する。実施例2は、優れた遅延時間温度係数(TCD)が得られる範囲を発現したものである。
図8は、実施例2に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数(TCD)との関係を示すグラフ、図9はレイリー波がサファイア基板を伝搬する音速との関係を表すグラフである。
【0055】
ここで、窒化アルミニウム膜30の厚さta、二酸化シリコン膜40の厚さts、弾性表面波の波長λ、としたとき、窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚は、KH‐AlN=(2π/λ)・ta、二酸化シリコン膜40の規格化膜厚は、KH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる。これら各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、適切な領域を以下の座標で表すことができる。なお、図8、図9では、座標1、座標2、座標3・・・をZ1、Z2、Z3・・・と表している。
【0056】
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、2.37)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.89、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.98、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.43、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.00、3.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.85、4.00)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.72、6.00)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.70、10.00)
座標9(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、10.00)
これらの座標を、座標1〜座標9の順に結ぶとともに、座標9と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いる。
【0057】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−20ppm/℃〜+20ppm/℃、5000m/s以上の高い音速が実現できる。
(実施例3)
【0058】
次に、実施例3について説明する。実施例3は、さらに優れた遅延時間温度係数(TCD)が得られる範囲を発現したものである。
図10は、実施例3に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数(TCD)との関係を示すグラフ、図11はレイリー波がサファイア基板を伝搬する音速との関係を表すグラフである。
【0059】
ここで、窒化アルミニウム膜30の厚さta、二酸化シリコン膜40の厚さts、弾性表面波の波長λ、としたとき、窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚は、KH‐AlN=(2π/λ)・ta、二酸化シリコン膜40の規格化膜厚は、KH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる。これら各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、適切な領域を以下の座標で表すことができる。なお、図10、図11では、座標1、座標2、座標3・・・をZ1、Z2、Z3・・・と表している。
【0060】
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、3.00)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.02、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.10、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.32、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.06、2.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.76、3.29)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.59、4.67)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、6.38)
これらの座標を、座標1〜座標8の順に結ぶとともに、座標8と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いる。
【0061】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−10ppm/℃〜+10ppm/℃、5000m/s以上(大部分の範囲で5100m/s以上)の高い音速が実現でき、高周波帯域発振器に好適な弾性表面波デバイスを実現できることが分かる。
(実施例4)
【0062】
次に、実施例4について説明する。実施例4は、より優れた遅延時間温度係数(TCD)が得られる範囲を発現したものである。
図12は、実施例4に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数(TCD)との関係を示すグラフ、図13はレイリー波がサファイア基板を伝搬する音速との関係を表すグラフである。
【0063】
ここで、窒化アルミニウム膜30の厚さta、二酸化シリコン膜40の厚さts、弾性表面波の波長λ、としたとき、窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚は、KH‐AlN=(2π/λ)・ta、二酸化シリコン膜40の規格化膜厚は、KH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる。これら各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、適切な領域を以下の座標で表すことができる。なお、図12、図13では、座標1、座標2、座標3・・・をZ1、Z2、Z3・・・と表している。
【0064】
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、3.33)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.07、1.04)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.16、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.27、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.10、1.58)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.68、3.25)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、4.46)
これらの座標を、座標1〜座標7の順に結ぶとともに、座標7と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いる。
【0065】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−5ppm/℃〜+5ppm/℃、5100m/s以上の高い音速が実現でき、より高精度を要求される高周波帯域発振器に好適な弾性表面波デバイスを実現できる。
(実施例5)
【0066】
次に、実施例5について説明する。実施例5は、弾性表面波デバイスの励振により好ましいとされる電気機械結合係数K2が0.1%以上の範囲を発現するものである。
図14は、実施例5に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、電気機械結合係数K2との関係を示すグラフである。図14の等高線上に記載されている数字は電気機械結合係数K2(%)である。例えば、KH‐SiO2=0.5、且つKH‐AlN=2の場合、電気機械結合係数K2は0.12%以上である。
【0067】
ここで、窒化アルミニウム膜30の厚さta、二酸化シリコン膜40の厚さts、弾性表面波の波長λ、としたとき、窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚は、KH‐AlN=(2π/λ)・ta、二酸化シリコン膜40の規格化膜厚は、KH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる。これら各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、適切な領域を以下の座標で表すことができる。なお、図14では、座標1、座標2、座標3・・・をZ1、Z2、Z3、Z4と表している。
【0068】
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、0.83)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.62、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.70、1.58)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、2.50)
これらの座標を、座標1〜座標4の順に結ぶとともに、座標4と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いる。
【0069】
この領域では、電気機械結合係数K2が0.1%以上を満たすことができる。
また、図5と図14の各座標系で結ばれる領域とを合成して判断すると、この領域内では、5400m/s以上の高い音速が実現できる。
【0070】
なお、上述した弾性表面波デバイス1をパッケージにて密閉することで、湿気や塵埃等の外部環境からの保護を行うことで、より信頼性を高めることができる。また、以上では図1に示すような1ポートの共振子についてのみ言及してきたが、2ポートの共振子、フィルターや集積回路素子と組み合わせて形成した発振器、およびモジュール装置についても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0071】
1…弾性表面波デバイス、10…サファイア基板、11…サファイア基板の主面、21,22…櫛歯電極(IDT)、21a,22a…電極パッド、30…窒化アルミニウム膜、40…二酸化シリコン膜。
【技術分野】
【0001】
本発明は、C面サファイア基板を用いた弾性表面波デバイス、発振器、及びモジュール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電体膜の表面を伝搬する弾性表面波を用いる弾性表面波デバイスは、固有の共振周波数や伝送特性を有し、しかも小型化が可能であり部品数も少ないため、通信機器用のバンドパスフィルターや基準クロックとして共振子等に応用されている。フィルターや共振子に弾性表面波デバイスを用いる場合には、温度依存性を表す遅延時間温度係数(TCD)や、電気機械変換の性能を表す電気機械結合係数(K2)が良好であることが求められる。
【0003】
そこで、ガラス等の絶縁性基板に櫛歯電極(IDT)を形成し、櫛歯電極の表面を覆う圧電体膜と、この圧電体膜を覆うように保護膜が形成される弾性表面波デバイスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、C面サファイア基板上に櫛歯電極を形成し、櫛歯電極の表面を覆う圧電体膜を形成してなる弾性表面波デバイスが提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−178330号公報
【特許文献2】特開平10−135773号公報
【特許文献3】特開平8−130435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、基板としてガラス等の絶縁基板を用いており、この基板上に櫛歯電極、さらに圧電体膜、保護膜を層状に形成することで、湿気や異物の侵入を防止し、外部雰囲気による圧電体膜の劣化や変質を防止することを目的としている。しかしながら、保護膜の材質や膜厚さを十分に考慮しなければ、弾性表面波の音速や電気機械結合係数、温度特性が変動するために、これらの良好な特性を得ることができない。
【0007】
また、特許文献2及び特許文献3では、C面サファイア基板上にアルミニウム系合金からなる櫛歯電極を形成し、さらに櫛歯電極を覆うように酸化亜鉛(ZnO)膜を形成することで、ストレスマイグレーション耐性を向上しようとしている。このような構成であっても、酸化亜鉛膜の膜厚さを十分に考慮しなければ、弾性表面波の音速や温度特性が変動するために、これらの良好な特性を得ることができないという課題を有している。
【0008】
また、C面サファイア基板上に圧電体膜として酸化亜鉛を用いる場合は、サファイア基板の音速と酸化亜鉛の音速との差が大きく、この音速差が周波数変動に影響することがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例に係る弾性表面波デバイスは、C面を主面とするサファイア基板と、前記サファイア基板の主面に形成される窒化アルミニウム膜と、前記窒化アルミニウム膜の表面に形成され弾性表面波を励振させる櫛歯電極と、前記櫛歯電極及び前記窒化アルミニウム膜の表面を覆う二酸化シリコン膜と、を有し、前記弾性表面波がレイリー波の基本モードであることを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、基板としてC面を主面とするサファイア基板(以降、C面サファイア基板と表すことがある)を用いていることから、基板として水晶やガラス等を用いる場合よりも高い音速を得られる。つまり、高周波デバイスを実現できる。
【0012】
また、窒化アルミニウム膜と二酸化シリコン膜とを、互いに逆符号の遅延時間温度係数(TCD)とすることにより、良好な周波数温度特性を得ることが可能となる。
【0013】
窒化アルミニウムは、サファイア基板よりも電気機械結合係数(K2)が大きいこと、窒化アルミニウムをサファイア基板上に形成する場合、窒化アルミニウムの結晶性がよいことからさらに電気機械結合係数を大きくすることが可能で、弾性表面波の励振効率を高めることができる。
【0014】
また、C面サファイア基板の音速と窒化アルミニウムの音速とがほぼ同じであるため、音速差に起因する周波数変動を抑制することができる。
【0015】
さらに、レイリー波の基本モードは、セザワ波の1次モード、2次モード等の高次のモードを用いる場合に対して窒化アルミニウム膜の膜厚が薄い場合に発生しやすい。よって、膜厚のばらつきが発生しにくいので安定性が高く、また、より高い音速を得ることができるという特性を有する。
【0016】
[適用例2]上記適用例に係る弾性表面波デバイスは、前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、1.25)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.65、0.50)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.67、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.44、1.83)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.29、3.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.22、4.00)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.20、5.29)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.18、6.00)
座標9(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.18、10.00)
座標10(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、10.00)
これらの座標を、座標1〜座標10の順に結ぶとともに、座標10と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることが望ましい。
【0017】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−40ppm/℃〜+40ppm/℃、4800m/s以上の高い音速が実現できる。
【0018】
[適用例3]上記適用例に係る弾性表面波デバイスは、前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、2.37)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.89、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.98、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.43、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.00、3.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.85、4.00)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.72、6.00)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.70、10.00)
座標9(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、10.00)
これらの座標を、座標1〜座標9の順に結ぶとともに、座標9と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることが望ましい。
【0019】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−20ppm/℃〜+20ppm/℃、5000m/s以上の高い音速が実現できる。
【0020】
[適用例4]上記適用例に係る弾性表面波デバイスは、前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、3.00)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.02、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.10、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.32、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.06、2.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.76、3.29)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.59、4.67)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、6.38)
これらの座標を、座標1〜座標8の順に結ぶとともに、座標8と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることが望ましい。
【0021】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−10ppm/℃〜+10ppm/℃、5000m/s以上の高い音速が実現でき、高周波帯域発振器に好適である。
【0022】
[適用例5]上記適用例に係る弾性表面波デバイスは、前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、3.33)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.07、1.04)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.16、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.27、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.10、1.58)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.68、3.25)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、4.46)
これらの座標を、座標1〜座標7の順に結ぶとともに、座標7と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることが望ましい。
【0023】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−5ppm/℃〜+5ppm/℃、5100m/s以上の高い音速が実現でき、高精度な温度特性が要求される高周波帯域発振器に好適な弾性表面波デバイスを実現できる。
【0024】
[適用例6]上記適用例に係る弾性表面波デバイスは、前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、0.83)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.62、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.70、1.58)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、2.50)
これらの座標を、座標1〜座標4の順に結ぶとともに、座標4と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることが望ましい。
【0025】
この領域内では、弾性表面波の励振に必要とされる電気機械結合係数K2が0.1%以上と、5400m/s以上の高い音速が実現できる。
【0026】
[適用例7]本適用例に係る発振器は、上記適用例のいずれかに記載の弾性表面波デバイスを用いたことを特徴とする。
【0027】
上述した弾性表面波デバイスを、SAWフィルターや集積回路素子と組み合わせて発振器とすることで、高い音速と、良好な周波数温度特性とを有する発振器を実現できる。
【0028】
[適用例8]本適用例に係るモジュール装置は、上記適用例のいずれかに記載の弾性表面波デバイスを用いたことを特徴とする。
【0029】
上述した弾性表面波デバイスをパッケージを用いて密閉することで、湿気や塵埃等の外部環境からの保護を行うことで、より信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1に係る弾性表面波デバイスの上面図。
【図2】図1におけるA−A切断面を示す断面図。
【図3】実施形態1に係る弾性表面波デバイスにおける窒化アルミニウム膜の規格化膜厚(KH‐AlN)と二酸化シリコン膜の規格化膜厚(KH−SiO2)と、遅延時間温度係数(TCD)との関係を表すグラフ。
【図4】実施形態1に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、電気機械結合係数K2との関係を示すグラフ。
【図5】実施形態1に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、サファイア基板上を伝搬するレイリー波の音速の関係を表すグラフ。
【図6】実施例1に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数との関係を表すグラフ。
【図7】実施例1に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、サファイア基板上を伝搬するレイリー波の音速との関係を表すグラフである。
【図8】実施例2に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数との関係を示すグラフ。
【図9】実施例2に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、レイリー波がサファイア基板を伝搬する音速との関係を表すグラフ。
【図10】実施例3に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数(TCD)との関係を示すグラフ。
【図11】実施例3に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、レイリー波がサファイア基板を伝搬する音速との関係を表すグラフ。
【図12】実施例4に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数(TCD)との関係を示すグラフ。
【図13】実施例4に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、レイリー波がサファイア基板を伝搬する音速との関係を表すグラフ。
【図14】実施例5に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、電気機械結合係数K2との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
【0032】
図1は、実施形態1に係る弾性表面波デバイスの上面図を示し、図2は、図1におけるA−A切断面を示す断面図である。なお、図1及び図2は、図示の都合上、縦、横の部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
【0033】
図1、図2において、弾性表面波デバイス1は、単結晶の六方晶系であって、面方位のC面を主面とするサファイア基板10と、サファイア基板10の主面11全体に形成される窒化アルミニウム(AlN)膜30と、窒化アルミニウム(AlN)膜30表面に形成される櫛歯電極(IDT:Interdigital transducer)21,22と、櫛歯電極21,22及び窒化アルミニウム膜30の表面を覆うように形成される二酸化シリコン膜としての二酸化シリコン(SiO2)膜40とから構成されている。なお、C面はミラー指数で表すと(0001)となる。また、窒化アルミニウム(AlN)膜30は圧電体膜である。
【0034】
櫛歯電極21,22は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、互いの交差指電極を間挿して構成されており、櫛歯電極21の一端には電極パッド21a、櫛歯電極22の一端には電極パッド22aが形成されている。これら電極パッド21a,22aは、それぞれ窒化アルミニウム膜30及び二酸化シリコン膜40を貫通して、二酸化シリコン膜40の表面に露出している。
【0035】
なお、図1、図2に表す櫛歯電極21,22の構成は1例であって、櫛歯電極の構成、及び交差指電極の数は簡略化して図示している。また、櫛歯電極21,22の材質は、導電性を有していれば特に限定されない。
【0036】
次に、弾性表面波デバイス1の製造方法について主要な工程について図2を参照して説明する。まず、サファイア基板10の主面11の表面に窒化アルミニウム膜30をスパッタリング法により形成する。そして、窒化アルミニウム膜30の表面にアルミニウム膜(またはアルミニウム合金膜)を蒸着法により形成する。そして、アルミニウム膜にフォトレジストを塗布し、ステッパーを用いて露光し、現像処理、エッチング、レジスト剥離処理を行うことで櫛歯電極21,22を形成する。
【0037】
続いて、二酸化シリコン膜40をスパッタリング法により形成する。次に、フォトリソグラフィ技術により二酸化シリコン膜40を貫通する開口部を開設する。二酸化シリコン膜40のエッチングにはCF4をエッチングガスとして用い、ドライエッチング法により開口部の二酸化シリコン膜40を除去する。その後、アルミニウム(またはアルミニウム合金)を蒸着法により成膜し、フォトリソグラフィ技術により電極パッド21a,22aを形成する。
【0038】
次に、このように形成される弾性表面波デバイス1の駆動について説明する。櫛歯電極21、櫛歯電極22は、入力側電極と出力側電極に相当し、入力側電極に印加された交流電力は、圧電体膜としての窒化アルミニウム膜30の表面で機械的エネルギーに変換されるが、電極が櫛歯型であるために窒化アルミニウム膜30内に粗密が発生し弾性波となり、窒化アルミニウム膜30の表面を伝搬して出力側電極へと到達する。そして、到達した弾性表面波は出力側電極により再び電気エネルギーに変換されて出力される。ここで、発生する弾性波としては、レイリー波の基本モードを用いる。
【0039】
このように形成された弾性表面波デバイス1を駆動し、ネットワークアナライザーを用いてインピーダンス特性を測定し、その測定結果を図3、図4、図5に表す。
【0040】
図3は、本実施形態に係る弾性表面波デバイスにおける窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚(以降、KH‐AlNと表す)と二酸化シリコン膜40の規格化膜厚(以降、KH−SiO2と表す)と、遅延時間温度係数(TCD)との関係を表し、図4は電気機械結合係数K2との関係、図5はサファイア基板10上を伝搬するレイリー波の音速[m/s]の関係を表すグラフである。同図は窒化アルミニウム膜30の厚さをta、二酸化シリコン膜40の厚さをts、弾性表面波の波長をλとしたとき、窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・taとし、二酸化シリコン膜40の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・tsとして、縦軸をKH‐AlN、横軸をKH‐SiO2としたときのグラフを示している。
【0041】
図3に示すように、KH−SiO2が0.5〜3の測定範囲で、遅延時間温度係数(TCD)が−80ppm/℃〜+45ppm/℃に抑えられる範囲があることが分かる。
【0042】
また、図4に示すように、電気機械結合係数K2が0.02%以上の範囲が存在し、KH−SiO2が0.5%近辺では電気機械結合係数K2が励振により好ましいとされる0.1%以上の範囲があることが分かる。
【0043】
また、図5に示すように、KH−SiO2が0.5〜3の測定範囲で、音速3900m/s以上の高い音速が得られることが分かる。
【0044】
本実施形態によれば、基板としてC面サファイア基板を用いている。サファイア基板は、水晶基板上を伝搬するレイリー波の音速が3100m/s程度が限界とされることに対して4500m/s以上の音速を有することから、基板として水晶を用いる場合よりも高い音速を得られる可能性がある。
【0045】
また、窒化アルミニウムは、音速が約5600m/sでありC面サファイア基板の音速と近いため、音速差に起因する周波数変動を抑制することができる。一方、従来技術のように圧電体膜として酸化亜鉛(ZnO)膜を用いると、酸化亜鉛(ZnO)膜は音速が約3100m/sとC面サファイア基板の音速よりも低く、高周波化を図るとC面サファイア基板の音速との差が大きくなり、音速差に起因する周波数変動が大きくなってしまう欠点がある。
しかし、C面サファイア基板の音速と窒化アルミニウムの音速とは近いため、酸化亜鉛(ZnO)膜を用いる場合よりも音速差に起因する周波数変動を抑制することができる。
【0046】
また、二酸化シリコンと、窒化アルミニウムとは、逆符号の遅延時間温度係数(TCD)を有するため、良好な周波数温度特性を有することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、弾性波としてレイリー波の基本モードを用いている。レイリー波の基本モードは、セザワ波の1次モード、2次モード等の高次のモードを用いる場合に対して窒化アルミニウム膜の膜厚が薄い場合により発生しやすい。よって、膜厚のばらつきが発生しにくいので安定性が高く、また、より高い音速を得ることができるという特性を有する。
【0048】
なお、櫛歯電極21,22の材質は、導電性を有していれば特に限定されないが、サファイア基板上に成膜する場合に、サファイア基板との結晶系に対して結晶性がよいアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いることがより好ましい。
【0049】
なお、弾性表面波デバイス1は、固有の共振周波数や伝送特性を有し、しかも小型化が可能であり部品数も少ないため、通信機器用のバンドパスフィルターや基準クロックとして共振子等に応用される。フィルターや共振子に弾性表面波デバイスを用いる場合には、温度依存性を表す周波数温度係数(TCF)または遅延時間温度係数(TCD)や、電気機械変換の性能を表す電気機械結合係数K2が良好であることが求められる。
(実施例1)
【0050】
そこで、本実施形態の具体的な実施例について説明する。
図6は、実施例1に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数との関係を表し、図7はサファイア基板上を伝搬するレイリー波の音速との関係を表すグラフである。図6の等高線上に記載されている数字は遅延時間温度係数(ppm/℃)である。例えば、KH‐SiO2=1、且つKH‐AlN=3の場合、遅延時間温度係数は−20ppm/℃である。また、図7の等高線上に記載されている数字は、レイリー波がサファイア基板を伝搬する音速(m/s)である。例えば、KH‐SiO2=1、且つKH‐AlN=3の場合、音速は5200m/sである。
【0051】
ここで、窒化アルミニウム膜30の厚さta、二酸化シリコン膜40の厚さts、弾性表面波の波長λ、としたとき、窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚は、KH‐AlN=(2π/λ)・ta、二酸化シリコン膜40の規格化膜厚は、KH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる。なお、本願の数式における「・」の記号は乗算を、「/」の記号は除算を表す。これら各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、適切な領域を以下の座標で表すことができる。なお、図6、図7では、座標1、座標2、座標3・・・をZ1、Z2、Z3・・・と表している。
【0052】
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、1.25)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.65、0.50)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.67、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.44、1.83)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.29、3.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.22、4.00)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.20、5.29)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.18、6.00)
座標9(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.18、10.00)
座標10(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、10.00)
これらの座標を、座標1〜座標10の順に結ぶとともに、座標10と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いる。
【0053】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−40ppm/℃〜+40ppm/℃、4800m/s以上の高い音速が実現できる。
(実施例2)
【0054】
次に、実施例2について説明する。実施例2は、優れた遅延時間温度係数(TCD)が得られる範囲を発現したものである。
図8は、実施例2に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数(TCD)との関係を示すグラフ、図9はレイリー波がサファイア基板を伝搬する音速との関係を表すグラフである。
【0055】
ここで、窒化アルミニウム膜30の厚さta、二酸化シリコン膜40の厚さts、弾性表面波の波長λ、としたとき、窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚は、KH‐AlN=(2π/λ)・ta、二酸化シリコン膜40の規格化膜厚は、KH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる。これら各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、適切な領域を以下の座標で表すことができる。なお、図8、図9では、座標1、座標2、座標3・・・をZ1、Z2、Z3・・・と表している。
【0056】
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、2.37)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.89、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.98、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.43、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.00、3.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.85、4.00)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.72、6.00)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.70、10.00)
座標9(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、10.00)
これらの座標を、座標1〜座標9の順に結ぶとともに、座標9と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いる。
【0057】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−20ppm/℃〜+20ppm/℃、5000m/s以上の高い音速が実現できる。
(実施例3)
【0058】
次に、実施例3について説明する。実施例3は、さらに優れた遅延時間温度係数(TCD)が得られる範囲を発現したものである。
図10は、実施例3に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数(TCD)との関係を示すグラフ、図11はレイリー波がサファイア基板を伝搬する音速との関係を表すグラフである。
【0059】
ここで、窒化アルミニウム膜30の厚さta、二酸化シリコン膜40の厚さts、弾性表面波の波長λ、としたとき、窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚は、KH‐AlN=(2π/λ)・ta、二酸化シリコン膜40の規格化膜厚は、KH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる。これら各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、適切な領域を以下の座標で表すことができる。なお、図10、図11では、座標1、座標2、座標3・・・をZ1、Z2、Z3・・・と表している。
【0060】
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、3.00)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.02、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.10、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.32、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.06、2.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.76、3.29)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.59、4.67)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、6.38)
これらの座標を、座標1〜座標8の順に結ぶとともに、座標8と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いる。
【0061】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−10ppm/℃〜+10ppm/℃、5000m/s以上(大部分の範囲で5100m/s以上)の高い音速が実現でき、高周波帯域発振器に好適な弾性表面波デバイスを実現できることが分かる。
(実施例4)
【0062】
次に、実施例4について説明する。実施例4は、より優れた遅延時間温度係数(TCD)が得られる範囲を発現したものである。
図12は、実施例4に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、遅延時間温度係数(TCD)との関係を示すグラフ、図13はレイリー波がサファイア基板を伝搬する音速との関係を表すグラフである。
【0063】
ここで、窒化アルミニウム膜30の厚さta、二酸化シリコン膜40の厚さts、弾性表面波の波長λ、としたとき、窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚は、KH‐AlN=(2π/λ)・ta、二酸化シリコン膜40の規格化膜厚は、KH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる。これら各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、適切な領域を以下の座標で表すことができる。なお、図12、図13では、座標1、座標2、座標3・・・をZ1、Z2、Z3・・・と表している。
【0064】
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、3.33)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.07、1.04)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.16、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.27、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.10、1.58)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.68、3.25)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、4.46)
これらの座標を、座標1〜座標7の順に結ぶとともに、座標7と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いる。
【0065】
この領域内では、遅延時間温度係数(TCD)が、−5ppm/℃〜+5ppm/℃、5100m/s以上の高い音速が実現でき、より高精度を要求される高周波帯域発振器に好適な弾性表面波デバイスを実現できる。
(実施例5)
【0066】
次に、実施例5について説明する。実施例5は、弾性表面波デバイスの励振により好ましいとされる電気機械結合係数K2が0.1%以上の範囲を発現するものである。
図14は、実施例5に係るKH‐AlNとKH‐SiO2と、電気機械結合係数K2との関係を示すグラフである。図14の等高線上に記載されている数字は電気機械結合係数K2(%)である。例えば、KH‐SiO2=0.5、且つKH‐AlN=2の場合、電気機械結合係数K2は0.12%以上である。
【0067】
ここで、窒化アルミニウム膜30の厚さta、二酸化シリコン膜40の厚さts、弾性表面波の波長λ、としたとき、窒化アルミニウム膜30の規格化膜厚は、KH‐AlN=(2π/λ)・ta、二酸化シリコン膜40の規格化膜厚は、KH‐SiO2=(2π/λ)・ts、で与えられる。これら各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、適切な領域を以下の座標で表すことができる。なお、図14では、座標1、座標2、座標3・・・をZ1、Z2、Z3、Z4と表している。
【0068】
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、0.83)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.62、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.70、1.58)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、2.50)
これらの座標を、座標1〜座標4の順に結ぶとともに、座標4と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いる。
【0069】
この領域では、電気機械結合係数K2が0.1%以上を満たすことができる。
また、図5と図14の各座標系で結ばれる領域とを合成して判断すると、この領域内では、5400m/s以上の高い音速が実現できる。
【0070】
なお、上述した弾性表面波デバイス1をパッケージにて密閉することで、湿気や塵埃等の外部環境からの保護を行うことで、より信頼性を高めることができる。また、以上では図1に示すような1ポートの共振子についてのみ言及してきたが、2ポートの共振子、フィルターや集積回路素子と組み合わせて形成した発振器、およびモジュール装置についても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0071】
1…弾性表面波デバイス、10…サファイア基板、11…サファイア基板の主面、21,22…櫛歯電極(IDT)、21a,22a…電極パッド、30…窒化アルミニウム膜、40…二酸化シリコン膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C面を主面とするサファイア基板と、
前記サファイア基板の主面に形成される窒化アルミニウム膜と、
前記窒化アルミニウム膜の表面に形成され弾性表面波を励振させる櫛歯電極と、
前記櫛歯電極及び前記窒化アルミニウム膜の表面を覆う二酸化シリコン膜と、を有し、
前記弾性表面波がレイリー波の基本モードであることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、
前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、
前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、
で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、1.25)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.65、0.50)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.67、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.44、1.83)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.29、3.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.22、4.00)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.20、5.29)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.18、6.00)
座標9(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.18、10.00)
座標10(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、10.00)
これらの座標を、座標1〜座標10の順に結ぶとともに、座標10と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項3】
前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、
前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、
前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、
で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、2.37)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.89、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.98、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.43、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.00、3.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.85、4.00)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.72、6.00)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.70、10.00)
座標9(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、10.00)
これらの座標を、座標1〜座標9の順に結ぶとともに、座標9と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項4】
前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、
前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、
前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、
で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、3.00)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.02、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.10、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.32、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.06、2.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.76、3.29)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.59、4.67)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、6.38)
これらの座標を、座標1〜座標8の順に結ぶとともに、座標8と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項5】
前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、
前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、
前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、
で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、3.33)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.07、1.04)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.16、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.27、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.10、1.58)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.68、3.25)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、4.46)
これらの座標を、座標1〜座標7の順に結ぶとともに、座標7と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項6】
前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、
前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、
前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、
で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、0.83)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.62、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.70、1.58)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、2.50)
これらの座標を、座標1〜座標4の順に結ぶとともに、座標4と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の弾性表面波デバイスを用いたことを特徴とする発振器。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の弾性表面波デバイスを用いたことを特徴とするモジュール装置。
【請求項1】
C面を主面とするサファイア基板と、
前記サファイア基板の主面に形成される窒化アルミニウム膜と、
前記窒化アルミニウム膜の表面に形成され弾性表面波を励振させる櫛歯電極と、
前記櫛歯電極及び前記窒化アルミニウム膜の表面を覆う二酸化シリコン膜と、を有し、
前記弾性表面波がレイリー波の基本モードであることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、
前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、
前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、
で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、1.25)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.65、0.50)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.67、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.44、1.83)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.29、3.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.22、4.00)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.20、5.29)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.18、6.00)
座標9(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.18、10.00)
座標10(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、10.00)
これらの座標を、座標1〜座標10の順に結ぶとともに、座標10と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項3】
前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、
前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、
前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、
で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、2.37)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.89、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.98、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.43、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.00、3.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.85、4.00)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.72、6.00)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.70、10.00)
座標9(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、10.00)
これらの座標を、座標1〜座標9の順に結ぶとともに、座標9と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項4】
前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、
前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、
前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、
で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、3.00)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.02、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.10、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.32、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.06、2.00)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.76、3.29)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.59、4.67)
座標8(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、6.38)
これらの座標を、座標1〜座標8の順に結ぶとともに、座標8と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項5】
前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、
前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、
前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、
で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、3.33)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.07、1.04)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.16、0.50)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.27、0.50)
座標5(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(1.10、1.58)
座標6(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.68、3.25)
座標7(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、4.46)
これらの座標を、座標1〜座標7の順に結ぶとともに、座標7と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項6】
前記窒化アルミニウム膜の厚さta、前記二酸化シリコン膜の厚さts、前記弾性表面波の波長λとし、
前記窒化アルミニウム膜の規格化膜厚をKH‐AlN=(2π/λ)・ta、
前記二酸化シリコン膜の規格化膜厚をKH‐SiO2=(2π/λ)・ts、
で与えられる各規格化膜厚の関係を座標表示したとき、
座標1(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、0.83)
座標2(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.62、1.00)
座標3(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.70、1.58)
座標4(KH‐SiO2、KH‐AlN)=(0.50、2.50)
これらの座標を、座標1〜座標4の順に結ぶとともに、座標4と座標1とを結んだ領域内に含まれる前記KH‐AlN及び前記KH‐SiO2を用いることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の弾性表面波デバイスを用いたことを特徴とする発振器。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の弾性表面波デバイスを用いたことを特徴とするモジュール装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−176546(P2011−176546A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38404(P2010−38404)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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