説明

弾性表面波デバイス

同一の圧電体基板(12)上に異なる中心周波数を有する2種類の弾性表面波フィルタ構成を設けた弾性表面波素子(11)をパッケージ(16)に配置した構成からなり、弾性表面波素子(11)は第1の中心周波数を有する第1のフィルタ構成(13)と、第2の中心周波数を有する第2のフィルタ構成(14)と、第1のフィルタ構成(13)と第2のフィルタ構成(14)との間にシールド電極(15)とを有し、シールド電極(15)をパッケージ(16)のアース端子(182)に接続して接地して、電磁的な干渉を防止してアイソレーション特性を改善することで、より小型の弾性表面波デバイスを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、携帯電話等に用いられる弾性表面波デバイスに関し、特に1つの圧電体基板面上に異なる中心周波数を有するフィルタを設けた弾性表面波フィルタあるいは弾性表面波共用器等の弾性表面波デバイスに関する。
【背景技術】
従来、1つの圧電体基板面上に異なる中心周波数を有するフィルタを設けた弾性表面波デバイス、特に弾性表面波共用器(以下、SAW共用器とよぶ)は、図14に示す構成を有するものが知られている。図14は、従来のSAW共用器のパッケージ内部を示すための上面図である。図14において、SAW共用器300は、弾性表面波素子(以下、SAW素子とよぶ)304と、これを収納するパッケージ305と、これらを接続するワイヤリード307と、図示しない蓋体とにより構成されている。SAW素子304は、タンタル酸リチウム(LiTaO)単結晶基板等からなる圧電体基板301の表面に送信フィルタ302と受信フィルタ303とが形成されている。このSAW素子304をパッケージ305に収納した後、送信フィルタ302と受信フィルタ303との接続端子パターン3021、3031とパッケージ305の端子部306との間をワイヤリード307により接続して電気的導通を得た後、図示しない蓋体をパッケージ305に封着して作製している。
このようなSAW共用器300では、さらなる低コスト化と小型、薄型化の要求が強まっており、このためには送信フィルタ302と受信フィルタ303とを一体的に形成するSAW素子304をさらに縮小することが要求されている。しかしながら、SAW素子304の形状を縮小化すると、送信フィルタ302と受信フィルタ303との間で電磁的な干渉が生じるため、アイソレーション特性が劣化するという課題があった。
これに対して、日本特開2002−335143号公報には、小型化してもアイソレーション特性に優れたSAW共用器が開示されている。このSAW共用器は、送信端子、受信端子、アンテナ端子およびグランド端子を形成したパッケージと、パッケージの内部に形成するとともに一端をアンテナ端子に接続した位相線路と、パッケージの内部に実装するとともに入力側を送信端子に、出力側を位相線路の入力端子に接続した送信フィルタと、パッケージの内部に実装するとともに入力側を位相線路の出力端子に、出力側を受信端子に接続した受信フィルタを備え、位相線路の一方の端子をパッケージに形成したアンテナ端子と同じ端部に設け、位相線路の他方の端子を位相線路の一方の端子と相対向する端部に設けた構成からなる。これにより、位相線路の入力端子と出力端子間の距離が長くできるため、この間での送信信号と受信信号の電磁的な干渉を防止することができる。
この開示例では、SAW素子は同一圧電体基板上に形成した送信フィルタと受信フィルタとの間をパッケージに設けた位相線路により接続して電磁的な干渉を防止している。しかし、SAW素子自体あるいはSAW素子からパッケージに接続するためのワイヤリードの接続構成等により電磁的な干渉を防止することについては全く示されていない。
本発明は、2つの異なる中心周波数を有するフィルタ構成の間にシールド電極を配設することで、電磁的な干渉を防止してアイソレーション特性を改善し、小型でフィルタ特性が良好で、かつ低コストの弾性表面波デバイスを提供することを目的とする。
【発明の開示】
上記目的を達成するために、本発明の弾性表面波デバイスは、同一の圧電体基板上に異なる中心周波数を有する2種類の弾性表面波フィルタ構成を設けた弾性表面波素子をパッケージに配置した構成からなり、弾性表面波素子は第1の中心周波数を有する第1のフィルタ構成と、第2の中心周波数を有する第2のフィルタ構成と、第1のフィルタ構成と第2のフィルタ構成との間にシールド電極とを有し、シールド電極をパッケージのアース端子に接続して接地した構成からなる。
この構成により、第1のフィルタ構成と第2のフィルタ構成との間の電磁的シールドを行うことができるため、これらの間のアイソレーション特性を向上させることができ、弾性表面波素子を小型化することが可能となる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、弾性表面波素子が第1のフィルタ構成および第2のフィルタ構成のいずれか一方のアース端子パターンとシールド電極との間を接続する接続パターンをさらに有する構成としてもよい。この構成により、シールド電極とパッケージのアース端子とを接続しなくてよいのでワイヤリード接続工程を簡略化できる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、弾性表面波素子のシールド電極が第1のシールド電極と第2のシールド電極とからなり、第1のフィルタ構成のアース端子パターンと第1のシールド電極との間を接続する第1の接続パターンと、第2のフィルタ構成のアース端子パターンと第2のシールド電極との間を接続する第2の接続パターンとをさらに有する構成としてもよい。この構成により、シールド電極の幅を広げ、かつそれぞれのアース端子パターンとパッケージのアース端子とを接続するので、アイソレーション特性をさらに改善できる。また、シールド電極とパッケージのアース端子とを接続しなくてよいのでワイヤリード接続工程も簡略化できる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、シールド電極が第1のフィルタ構成または第2のフィルタ構成のうちの少なくとも1つの信号ライン端子パターンとパッケージの信号端子とを接続する信号用ワイヤリードを横切るパターンをさらに有し、シールド電極とパッケージのアース端子との間を少なくとも2本のアース用ワイヤリードにより接続した構成としてもよい。この構成とすることにより、信号用ワイヤリードから放射される電磁な漏れを効率的に抑制できる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、シールド電極が第1のフィルタ構成および第2のフィルタ構成をほぼ分断するように第1のフィルタ構成および第2のフィルタ構成の長さ以上に形成した構成としてもよい。この構成により、電磁的な漏れをより効率的に抑制することができる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、シールド電極とパッケージのアース端子との間を接続する2本のアース用ワイヤリードが信号ライン端子パターンとパッケージの信号端子とを接続する信号用ワイヤリードの両側に配置されている構成としてもよい。この構成により、信号用ワイヤリードの両側にアース用ワイヤリードが配置されているので、信号用ワイヤリードからの電磁的な漏れをさらに抑制することが可能となる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、アース用ワイヤリードが弾性表面波素子の収納されたパッケージの端子部のうち、対向する位置に配設されたアース端子にそれぞれ接続された構成としてもよい。この構成とすることにより、シールド電極が第1のフィルタ構成と第2のフィルタ構成とを分断するように長く形成され、かつパッケージの両側でアース端子に接続することもできるので、低域の減衰量や低域のアイソレーション特性を改善することができる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、弾性表面波素子の第1のフィルタ構成、第2のフィルタ構成およびシールド電極が第1のフィルタ構成および第2のフィルタ構成の弾性表面波伝播方向に対して垂直方向に配置されている構成としてもよい。この構成とすることにより、アイソレーション特性を改善しながら弾性表面波素子の小型化を実現できる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、第1のフィルタ構成および第2のフィルタ構成がそれぞれ一端子弾性表面波共振子を直列椀と並列椀に接続したラダー型回路で、かつ中心周波数が相対的に低い第1のフィルタ構成のうち、第2のフィルタ構成に最も近い弾性表面波共振子は並列椀であり、かつ第2のフィルタ構成のうち、第1のフィルタ構成に最も近い弾性表面波共振子は直列椀からなる構成としてもよい。この構成により、第1のフィルタ構成と第2のフィルタ構成のそれぞれ最も隣接して配置された共振子の共振周波数の差を最も大きくすることができる。この結果、さらにアイソレーション特性を向上させることができ、小型でアイソレーション特性に優れたSAW共用器を得ることができる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、シールド電極が第1のフィルタ構成および第2のフィルタ構成の櫛型電極に対して垂直方向に複数のスリットを有するグレーティング形状から構成としてもよい。この構成により、電磁的な漏れだけでなく、弾性表面波としての音響的な漏れも抑制できる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、弾性表面波素子の第1のフィルタ構成および第2のフィルタ構成が第1のフィルタ構成および第2のフィルタ構成の弾性表面波伝播方向と平行に配置され、シールド電極が上記弾性表面波伝播方向に対して垂直方向に配置されている構成としてもよい。この構成により、アイソレーション特性を改善しながら弾性表面波素子の小型化を実現できる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、シールド電極が第1のフィルタ構成および第2のフィルタ構成の櫛型電極に対して平行な方向に複数のスリットを有するグレーティング形状からなる構成としてもよい。この構成により、電磁的な漏れだけでなく、弾性表面波としての音響的な漏れも抑制できる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、シールド電極が第1のフィルタ構成および第2のフィルタ構成の弾性表面波伝播方向と斜交する方向に複数のスリットを有するグレーティング形状からなる構成としてもよい。この構成により、電磁的な漏れだけでなく、弾性表面波としての音響的な漏れも抑制できる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、シールド電極のスリットが第1のフィルタ構成および第2のフィルタ構成中の櫛型電極の最小ピッチと最大ピッチとの間のピッチで形成されている構成としてもよい。この構成とすることにより、アイソレーション特性を改善したい周波数に応じてスリットのピッチを設定することができる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、シールド電極のスリットが場所により異なるピッチで形成されている構成としてもよい。このような構成とすることにより、アイソレーション特性を改善したい複数の周波数に応じてスリットのピッチを設定することができる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、第1のフィルタ構成および第2のフィルタ構成のうち、中心周波数が相対的に高い方のフィルタ構成のアース端子パターンとシールド電極とを接続パターンで接続し、シールド電極とアース端子パターンとに対して少なくとも2本のアース用ワイヤリードが接続され、アース用ワイヤリードはパッケージの中で弾性表面波素子を挟んで両側に配設されたアース端子にそれぞれ接続された構成としてもよい。一般に周波数の高いフィルタ構成はアースの接続方法によって低域減衰量や低域アイソレーション特性が大きく影響される。
この構成により、シールド電極が弾性表面波素子の第1のフィルタ構成と第2のフィルタ構成とをほぼ分断するように長く形成され、パッケージの対向する位置のアース端子とシールド電極とがアース用ワイヤリードにより接続されるので、周波数の高い方のフィルタ構成の低域減衰量や低域アイソレーション特性改善できる。さらに、アース用ワイヤリードの長さを短くできるので、バラツキを小さくできる。また、短いことからSAW素子上に、このアース用ワイヤリードが接触する現象が生じなくなる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、第1のフィルタ構成および第2のフィルタ構成のうち、中心周波数が相対的に低い方のフィルタ構成のアース端子パターンとシールド電極とを接続パターンで接続し、シールド電極とアース端子パターンとに対して少なくとも2本のアース用ワイヤリードが接続され、アース用ワイヤリードはパッケージの中で弾性表面波素子を挟んで両側に配設されたアース端子にそれぞれ接続した構成としてもよい。一般に周波数の低いフィルタ構成は、アース端子への接続方法によって、高域減衰量や高域アイソレーション特性に影響されにくい。
この構成により、アース端子パターンとシールド電極とを接続パターンにより接続しても、高域減衰量や高域アイソレーション特性が変動しにくいので、設計が容易になる。これに加えて、電磁的な漏れを抑制してアイソレーション特性を向上させることもできる。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、第1のフィルタ構成および第2のフィルタ構成がそれぞれ送信フィルタと受信フィルタであり、送信フィルタと受信フィルタとによりSAW共用器を構成しているようにしてもよい。また、信号ライン端子パターンが送信フィルタおよび受信フィルタのいずれか一方の入出力端子パターンである構成としてもよい。この構成により、アイソレーション特性を向上できるので、より小型のSAW共用器を実現できる。
以上のように本発明の弾性表面波デバイスは、同一の圧電体基板上の第1のフィルタ構成と第2のフィルタ構成とを設け、それらの間にパッケージのアース端子に接続されたシールド電極を配設することにより、アイソレーション特性を向上させることができ、より小型の弾性表面波デバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるSAW共用器について、パッケージの蓋体を取り外して内部構造を示した上面図
図2は、同実施の形態のSAW共用器の周波数に対する送信端子と受信端子との間のアイソレーション特性を測定した結果を示す図
図3は、同実施の形態の変形例のSAW共用器の構成を示す上面図
図4は、同実施の形態のさらに別の変形例のSAW共用器の構成を示す上面図
図5は、本発明の第2の実施の形態にかかるSAW共用器の構成を示す上面図
図6は、同実施の形態のSAW共用器について、第1の実施の形態と同様にシールド電極を設けない構成のSAW共用器を比較例としてアイソレーション特性を比較した結果を示す図
図7は、同実施の形態の変形例のSAW共用器の構成を示す上面図
図8は、本発明の第3の実施の形態にかかるSAW共用器の構成を示す上面図
図9は、同実施の形態のSAW共用器について、第1の実施の形態と同様にシールド電極を設けない構成のSAW共用器を比較例としてアイソレーション特性を比較した結果を示す図
図10は、本発明の第4の実施の形態にかかるSAW共用器の構成を示す上面図
図11は、本発明の第5の実施の形態にかかるSAW共用器の構成を示す上面図
図12は、本発明の第6の実施の形態にかかるSAW共用器の構成を示す上面図
図13は、同実施の形態のSAW共用器について、第1の実施の形態と同様にシールド電極を設けない構成のSAW共用器を比較例としてアイソレーション特性を比較した結果を示す図
図14は、従来のSAW共用器のパッケージ内部を示すために上面からみた図
図面の参照符号の一覧表
10,25,30,45,50,60,65,70,75,300 弾性表面波共用器(SAW共用器)
11,22,42,46,55,64,80,304 弾性表面波素子(SAW素子)
12,51,81,301 圧電体基板
13,52,82,302 送信フィルタ
14,53,83,303 受信フィルタ
15,32,44,47,54,62,66,84 シールド電極
16,56,85,204,305 パッケージ
17,57,86 接合部
18,58,87,306 端子部
19,59,88 底面部
20,307 ワイヤリード
23 第2の接続パターン
33 第1のシールド電極
34 第2のシールド電極
35 第1の接続パターン
36 第2の接続パターン
131 送信側アース端子パターン
132 送信側信号端子パターン
141 受信側アース端子パターン
151、541,621,661、841 シールド端子パターン
181,182,183,184,581,871 アース端子
185 信号端子
201,202,203,204,205,207,208,210 アース用ワイヤリード
206 信号用ワイヤリード
305 接続端子
521,531 櫛型電極
821,831 共振子
3021,3031 接続端子パターン
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同じ構成要素については同じ符号を付しているので説明を省略する場合がある。また、以下の実施の形態においては、弾性表面波デバイスとしてSAW共用器を例として説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるSAW共用器について、パッケージの蓋体を取り外して内部構造を示した上面図である。
本実施の形態のSAW共用器10は、SAW素子11と、このSAW素子11が接着固定されたパッケージ16と、SAW素子11の電極端子パターンとパッケージ16の端子部18とを接続するワイヤリード20と、図示しない蓋体により構成されている。
SAW素子11は、リチウムタンタレート(LiTaO)単結晶基板、リチウムナイオベート(LiNbO)単結晶基板、水晶基板等の圧電性を有する圧電体基板12を用いる。この圧電体基板12の表面上にアルミニウム(Al)を主体とする電極薄膜を形成し、フォトリソプロセスとエッチングプロセスを行って所定のパターン形状を形成している。図1に示すSAW素子11においては、第1の弾性表面波フィルタ構成である送信フィルタ13と、第2の弾性表面波フィルタ構成である受信フィルタ14と、これら送信フィルタ13と受信フィルタ14との間に形成されたシールド電極15とにより構成されている。
なお、送信フィルタ13、受信フィルタ14およびシールド電極15とは、弾性表面波伝播方向に対して垂直方向に配置されている。
パッケージ16は、例えばセラミック基材を使用し、蓋体を接合するための接合部17と、この接合部17より低い段差を有し、ワイヤリード20がボンディングされる端子部18と、最も低い段差を有し、SAW素子11が接着固定される底面部19とにより構成されている。なお、端子部18は多層構成からなるセラミック基材から裏面部まで導体パターンが引き回されて裏面部において半田付け端子部(図示せず)が設けられている。接合部17と蓋体との接合は、例えば半田付け、熱溶着、超音波接合あるいは接着樹脂による接着等種々の方式で接続する。
また、ワイヤリード20は、熱圧着方式あるいは超音波方式のワイヤボンディング等により接続される。
本実施の形態においては、送信フィルタ13と受信フィルタ14とは、それぞれ一端子弾性表面波共振子を直列椀と並列椀に接続したラダー型回路で構成している。この送信フィルタ13と受信フィルタ14との間にシールド電極15を形成し、シールド電極15のシールド端子パターン151とパッケージ16の端子部18のうちのアース端子182との間をアース用ワイヤリード202により接続している。これにより、電磁的なシールド効果を得ることができ、送信と受信との間のアイソレーション特性を向上させることができる。
なお、送信フィルタ13の送信側アース端子パターン131とパッケージ16の端子部18のうちのアース端子183とはアース用ワイヤリード203により接続されている。さらに、受信フィルタ14の受信側アース端子パターン141とパッケージ16の端子部18のうちのアース端子181とはアース用ワイヤリード201により接続されている。送信フィルタ13と受信フィルタ14のその他の接続端子パターンはパッケージ16の端子部18のそれぞれとワイヤリード20により接続されている。
シールド電極15の幅は大きいほど、アイソレーション特性も改善されるが、幅を大きくすればチップサイズも大きくなる。アイソレーション特性を良好にしながらチップサイズを小さくするためには、送信フィルタ13と受信フィルタ14とにおいて低い方のフィルタの中心周波数に相当する波長の10〜50倍程度の幅に設定することが好ましい範囲である。
以下、SAW素子11の構成の一例について説明する。送信フィルタ13の中心周波数を836.5MHz、受信フィルタ14の中心周波数を881.5MHzに設定した。このために、圧電体基板12として36°YカットX伝播タンタル酸リチウム(LiTaO)単結晶基板を用いて、この圧電体基板12の表面上に銅(Cu)添加アルミニウム(Al)合金とチタン(Ti)とを積層した構成の薄膜を電極膜とした。その膜厚は約400nmとした。
送信フィルタ13の直列椀と並列椀の共振子は、それぞれ2.32μmと2.43μmのピッチであり、受信フィルタ14は、それぞれ2.20μmと2.31μmのピッチである。この送信フィルタ13と受信フィルタ14との間に形成するシールド電極15の幅は約100μmとした。
このようにして作製したSAW素子11をパッケージ16に接着固定し、SAW素子11の接続端子パターンとパッケージ16の端子部18とをワイヤリード20により接続し、最後に蓋体により封止してSAW共用器10を作製した。なお、シールド電極15のシールド端子パターン151とパッケージ16のアース端子182との間はアース用ワイヤリード202により接続した。さらに、送信フィルタ13の送信側アース端子パターン131とパッケージ16のアース端子183とはアース用ワイヤリード203、および受信フィルタ14の受信側アース端子パターン141とパッケージ16のアース端子181とはアース用ワイヤリード201により接続した。
図2は、このSAW共用器10の周波数に対する送信端子と受信端子との間のアイソレーション特性を測定した結果を示す図である。横軸は周波数で、縦軸は送信端子と受信端子との間の減衰量から求めたアイソレーション特性である。シールド電極15を設けない構成のSAW共用器を比較例とした。図2からわかるように、本実施の形態のSAW共用器10の場合には、比較例のSAW共用器に比べて使用周波数帯域でのアイソレーション特性が良好となることが確認された。すなわち、シールド電極15を設けることで、電磁的なシールド効果が良好となり、アイソレーション特性を改善することができた。
図3は、本実施の形態の変形例のSAW共用器25の構成を示す上面図である。本変形例のSAW共用器25は、第1の弾性表面波フィルタ構成である送信フィルタ13の送信側アース端子パターン131とシールド電極15とを接続パターン23により接続している。一方、シールド電極15とパッケージ16のアース端子182との間は接続していない。これらの点が、SAW共用器10と異なる点である。これにより、アイソレーション特性を改善しながら、図1に示すSAW共用器10に比べてワイヤリードを1本減らすことができる。このため、ワイヤボンディングのための工数や材料費を減らすことができる。
図4は、本実施の形態のさらに別の変形例のSAW共用器30の構成を示す上面図である。図4に示すSAW共用器30は、シールド電極32が第1のシールド電極33と第2のシールド電極34とからなり、送信フィルタ13の送信側アース端子パターン131と第1のシールド電極33とを第1の接続パターン35で接続し、受信フィルタ14の受信側アース端子パターン141と第2のシールド電極34とを第2の接続パターン36で接続している。
送信フィルタ13の送信側アース端子パターン131とパッケージ16のアース端子183とはアース用ワイヤリード203、および受信フィルタ14の受信側アース端子パターン141とパッケージ16のアース端子181とはアース用ワイヤリード201により接続している。一方、第1のシールド電極33および第2のシールド電極34と、パッケージ16の端子部18のうちのアース端子との間は接続していない。
このようにシールド電極32と第1の接続パターン35および第2の接続パターン36を形成することで、シールド電極32からパッケージ16のアース端子への接続を送信側アース端子パターン131と受信側アース端子パターン141とにより行えるので、ワイヤリード20の接続本数を増加させることがない。さらに、シールド電極32の幅を全体として広げ、かつ長く形成しているのでアイソレーション特性をより向上させることもできる。なお、本変形例では、シールド電極32を構成する第1のシールド電極33と第2のシールド電極34とは分離して形成したが、これらを接続するようにしてもよい。
以上のように本実施の形態によれば、第1の弾性表面波フィルタ構成である送信フィルタと第2の弾性表面波フィルタ構成である受信フィルタとの間にシールド電極を形成し、このシールド電極をパッケージのアース端子に接続して接地することにより、電磁シールド効果により送信と受信との間のアイソレーション特性を向上させることができる。したがって、SAW素子の形状を小さくできるので小型で、かつアイソレーション特性に優れたSAW共用器を得ることができる。
なお、本実施の形態では、シールド電極またはシールド電極と接続する送信側アース端子パターンあるいは受信側アース端子パターンからは1本のアース用ワイヤリードでパッケージのアース端子と接続したが、複数本のアース用ワイヤリードで接続してもよい。
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態にかかるSAW共用器45の構成を示す上面図である。
本実施の形態のSAW共用器45は、以下の構成が第1の実施の形態のSAW共用器10と異なる。
第1は、シールド電極44が、第1の弾性表面波フィルタ構成である送信フィルタ13と第2の弾性表面波フィルタ構成である受信フィルタ14とをほぼ分断するように長く形成されていることである。本実施の形態では、このシールド電極44は送信フィルタ13と受信フィルタ14の長さよりも長く形成している。
第2は、送信フィルタ13の送信側信号ライン端子パターン132とパッケージ16の信号端子185とを接続する信号用ワイヤリード206が、シールド電極44の上側を通るように配置されていることである。
第3は、シールド電極44からパッケージ16の2箇所のアース端子181、184にアース用ワイヤリード204、205で接続し、かつ、信号用ワイヤリード206をはさむように配置していることである。
このために、送信側信号ライン端子パターン132は、図1に示すSAW共用器10に比べてシールド電極44方向に延在されている。また、シールド電極44には、送信側信号ライン端子パターン132の近傍で、この送信側信号ライン端子パターン132に平行で、信号用ワイヤリード206を横切るようなパターンを設けている。この平行なパターンの両端部からアース端子181、184にそれぞれアース用ワイヤリード204、205で接続している。したがって、シールド電極44の中央部からパッケージ16のアース端子に接続するワイヤリードは設けていない。以上のように、本実施の形態のSAW共用器45は、シールド電極44と送信フィルタ13の送信側信号ライン端子パターン132のパターン形状を変更していることが特徴である。
なお、送信フィルタの送信側信号ライン端子パターン132は、図5に示すフィルタ構成においては送信フィルタ13の共通端子パターン、すなわちアンテナ端子パターンである。
このような構成にすることにより、送信側信号ライン端子パターン132に接続する信号用ワイヤリード206から放射される電磁的な漏れを効率的に抑制することができる。この結果、アイソレーション特性を向上させることができる。
図6は、このSAW共用器45について、第1の実施の形態と同様にシールド電極44を設けない構成のSAW共用器を比較例として、アイソレーション特性を比較した結果を示す図である。本実施の形態のSAW共用器45では、比較例に比べて受信端子と送信端子との間の減衰量が大きくなり、アイソレーション特性を改善できることが見出された。
なお、本実施の形態のSAW共用器45では、アース用ワイヤリード204、205をシールド電極44からパッケージ16のアース端子181、184に接続し、かつ信号用ワイヤリード206をはさむように配置したが、本発明はこれに限定されない。図7は、本実施の形態の変形例のSAW共用器50の構成を示す上面図である。このSAW共用器50では、SAW素子46のシールド電極47のパターン形状を変更し、アース用ワイヤリード204、207によりパッケージ16のアース端子182、184にそれぞれ接続している。すなわち、シールド電極47は、図7からわかるように送信側信号ライン端子パターン132方向に向いてカタカナのコ字状に形成されており、その端部からアース用ワイヤリード204、207によりパッケージ16のアース端子182、184に接続している。この構成においては、信号用ワイヤリード206はシールド電極47の上を通るように形成されているが、アース用ワイヤリード204、207は信号用ワイヤリード206をはさむようには配置されていない。しかし、このような構成においても電磁的な漏れを抑制することができ、アイソレーション特性を改善できる。
なお、SAW共用器の場合には、送信フィルタ13の方に大きな電力が加わるため、その信号が受信フィルタ14の方に漏れることが大きな問題になる。このため、本実施の形態のSAW共用器45、50のように、送信フィルタ13の送信用ワイヤリード206の下部にシールド電極44、47を配置すると、送信帯域でのアイソレーション特性を向上できるので望ましい。
このような構成とすれば、第1の実施の形態のSAW共用器10に比べて、さらにアイソレーション特性を改善できるので、より小型でフィルタ特性に優れたSAW共用器を実現できる。
なお、本実施の形態では、シールド電極から2本のアース用ワイヤリードでパッケージのアース端子と接続したが、3本以上のアース用ワイヤリードで接続してもよい。
(第3の実施の形態)
図8は、本発明の第3の実施の形態にかかるSAW共用器60の構成を示す上面図である。本実施の形態のSAW共用器60は、SAW素子55と、このSAW素子55が接着固定されたパッケージ56と、SAW素子55の電極パターンとパッケージ56の端子部58とを接続するワイヤリード20と、図示しない蓋体により構成されている。
SAW素子55は、リチウムタンタレート(LiTaO)単結晶基板、リチウムナイオベート(LiNbO)単結晶基板、水晶基板等の圧電性を有する圧電体基板51を用いる。この圧電体51の表面上にアルミニウム(Al)を主体とする電極薄膜を形成し、フォトリソプロセスとエッチングプロセスを行って所定のパターン形状を形成している。このSAW素子55は、第1の弾性表面波フィルタ構成である送信フィルタ52と、第2の弾性表面波フィルタ構成である受信フィルタ53と、これら送信フィルタ52と受信フィルタ53との間に形成されたグレーティング形状のシールド電極54とにより構成されている。
パッケージ56は第1の実施の形態のSAW共用器10と同様に、例えばセラミック基材を使用し、蓋体を接合するための接合部57と、この接合部57より低い段差を有し、ワイヤリード20がボンディングされる端子部58と、最も低い段差を有し、SAW素子55が接着固定される底面部59とにより構成されている。なお、端子部58は多層構成からなるセラミック基材から導体パターンを裏面部まで引き回し、裏面部に半田付け端子部(図示せず)を有している。接合部57と蓋体との接合は、例えば半田付け、熱溶着、超音波接合あるいは接着樹脂による接着等種々の方式で接続する。
また、ワイヤリード20は、熱圧着方式あるいは超音波方式のワイヤボンディング等により接続される。
本実施の形態においては、送信フィルタ52と受信フィルタ53とは、第1の実施の形態のSAW共用器10と同じラダー型回路で構成している。しかし、図8からわかるように、送信フィルタ52と受信フィルタ53とを弾性表面波の伝播方向と平行の方向に配置している。これら送信フィルタ52と受信フィルタ53との間に、送信フィルタ52と受信フィルタ53を構成するインターディジタルトランスデューサ電極の櫛型電極521、531と平行な方向に複数のスリットを設けたグレーティング形状のシールド電極54を配置している。なお、このシールド電極54は弾性表面波伝播方向に対して垂直方向に配置されている。
さらに、シールド電極54のシールド端子パターン541とパッケージ56の端子部58のうちのアース端子581との間をアース用ワイヤリード208により接続している。なお、SAW素子55の送信フィルタ52および受信フィルタ53の接続端子パターンとパッケージ56の所定の端子部58との間をワイヤリード20によりそれぞれ接続している。これにより、本実施の形態のSAW共用器60が得られる。
このような構成にすることにより、電磁的な漏れを抑制できるだけでなく、弾性表面波として伝播する音響的な漏れもグレーティング形状のシールド電極54により吸収することができる。したがって、さらにアイソレーション特性を向上できる。
このグレーティングのピッチは、アイソレーション特性を向上させたい周波数に応じて選ぶことができる。その範囲は、SAW素子55の送信フィルタ52と受信フィルタ53とを構成する複数の共振子のうちの最小のピッチと最大のピッチとの間に設定すればよい。
以下、SAW素子55の構成の一例について説明する。送信フィルタ52の中心周波数を836.5MHz、受信フィルタ43の中心周波数を881.5MHzに設定した。このために、圧電体基板51として36°YカットX伝播タンタル酸リチウム(LiTaO)基板を用いた。この圧電体基板51の表面上に銅(Cu)添加アルミニウム(Al)合金とチタン(Ti)とを積層した構成の薄膜を形成して電極膜とした。その膜厚は約400nmとした。
なお、送信フィルタ52の直列椀と並列椀の弾性表面波共振子(以下、共振子とよぶ)は、それぞれ2.32μmと2.43μmのピッチであり、受信フィルタ53は、それぞれ2.20μmと2.31μmのピッチである。この送信フィルタ52と受信フィルタ53との間にピッチ2.3μmのグレーティング形状のシールド電極54を設けた。これは上記したように、SAW素子55の送信フィルタ52と受信フィルタ53とを構成する複数の共振子のうちの最小のピッチが2.20μmであり、最大のピッチが2.43μmであるので、2.20μm〜2.43μmの範囲に含まれる2.3μmに設定したものである。
図9は、このSAW共用器60について、第1の実施の形態と同様にシールド電極54を設けない構成のSAW共用器を比較例として、アイソレーション特性を比較した結果を示す図である。本実施の形態のSAW共用器60では、比較例に比べて受信端子と送信端子との間の減衰量が大きくなり、アイソレーション特性を改善できることが見出された。
なお、図9に示すSAW共用機では、グレーティング形状のシールド電極54のグレーティングピッチを2.3μmとしたが、それぞれのグレーティグ部分のピッチを別々としてもよい。例えば、一方のグレーティングピッチを2.32μmとし、他方のグレーティングピッチを2.43μmとしてもよい。あるいは、それぞれのグレーティング部分で、グレーティングピッチが2.32μmと2.43μmであるスリット部分を複数本づつ設けてもよい。
これにより送信フィルタのそれぞれの共振子から漏れてくる音響的な信号を効果的に吸収してアイソレーション特性をさらに向上させることができる。したがって、第1の実施の形態のSAW共用器10と比較すると、電磁的な漏れだけでなく、音響的な漏れの影響も減らすことができる。この結果、より小型でアイソレーション特性に優れたSAW共用器を実現することができる。
なお、本実施の形態では、シールド電極から1本のアース用ワイヤリードでパッケージのアース端子と接続したが、2本以上のアース用ワイヤリードで接続してもよい。例えば、シールド電極54の中央部のシールド端子パターン541だけでなく、両端部にもシールド端子パターンを設けて、これらからパッケージのアース端子に接続してもよい。
(第4の実施の形態)
図10は、本発明の第4の実施の形態にかかるSAW共用器65の構成を示す上面図である。本実施の形態のSAW共用器65は、図1に示す第1の実施の形態のSAW共用器10の変形例であり、シールド電極62の形状が異なる。すなわち、第1の実施の形態のSAW共用器10においては、シールド電極15は中央部のシールド端子パターン151の部分を除き、単純なストライプパターン形状である。しかし、本実施の形態のSAW共用器65においては、同様にシールド端子パターン621を除き、その他の部分にはスリット、すなわちグレーティングが形成されている。これ以外については、第1の実施の形態のSAW共用器10と同じ構成である。
図10において、送信フィルタ13と受信フィルタ14とは、弾性表面波の伝播方向と垂直な方向に配置されている。これらの間にインターディジタルトランスデューサ電極を構成する櫛型電極と垂直な方向に複数のスリットを設けたグレーティング形状のシールド電極62を設けている。このシールド電極62も弾性表面波伝播方向に対して垂直な方向に配置されている。なお、本実施の形態のSAW素子64は、第1の実施の形態のSAW素子11に比べて、このシールド電極62の形状が異なるのみである。本実施の形態のSAW共用器65を第1の実施の形態の構成の一例と同じ送信フィルタ13と受信フィルタ14で構成する場合には、シールド電極62のグレーティングのピッチは2.3μmとすることが望ましい。
このような構成とすることにより、電磁的な信号の漏れだけでなく、弾性表面波として伝播する音響的な漏れもグレーティング形状のシールド電極62により吸収することができる。この結果、さらにアイソレーション特性を向上できる。
このグレーティングピッチは、アイソレーション特性を改善させたい周波数に応じて選ぶことができ、そのピッチの範囲は送信フィルタ13と受信フィルタ14とを構成する共振子の中の最小のピッチと最大のピッチの間で選択することができる。
したがって、第1の実施の形態のSAW共用器10に比べて、電磁的な漏れだけでなく弾性表面波として伝播する音響的な漏れの影響も減らすことができるので小型でアイソレーション特性に優れたSAW共用器を得ることができる。
なお、本実施の形態では、シールド電極から1本のアース用ワイヤリードでパッケージのアース端子と接続したが、2本以上のアース用ワイヤリードで接続してもよい。例えば、シールド電極54の中央部のシールド端子パターン541だけでなく、両端部にもシールド端子パターンを設けて、これらからパッケージのアース端子に接続してもよい。
(第5の実施の形態)
図11は、本発明の第5の実施の形態にかかるSAW共用器70の構成を示す上面図である。本実施の形態のSAW共用器70と第1の実施の形態にかかるSAW共用器10とで相違する点は、シールド電極の形状を変えた点にある。本実施の形態のSAW共用器70は、図1に示す第1の実施の形態のSAW共用器10の変形例であり、シールド電極の形状が異なる。すなわち、第1の実施の形態のSAW共用器10においては、シールド電極15は中央部のシールド端子パターン151の部分を除き、単純なストライプパターン形状である。しかし、本実施の形態のSAW共用器70においては、同様にシールド端子パターン661を除き、その他の部分にはグレーティングが形成されている。すなわち、本実施の形態においては、シールド電極66のシールド端子パターン661を除き、弾性表面波伝播方向と斜交する方向にグレーティングを設けた構成としている。それ以外の構成については、第1の実施の形態と同様にして弾性表面波共用器を構成している。
図11においては、送信フィルタ13と受信フィルタ14との間に、櫛型電極と斜交する方向に、例えば2.3μmのピッチのグレーティングを有するシールド電極66を設けている。
このような構成とすることにより、電磁的な信号の漏れだけでなく、音響的な漏れもグレーティング形状のシールド電極により吸収することができるため、さらにアイソレーション特性を向上させることができる。
したがって、第1の実施の形態と比較すると、電磁的な漏れだけでなく弾性表面波が伝播する音響的な漏れの影響も減らすことができ、小型でアイソレーション特性に優れた弾性表面波共用器を得ることができる。
なお、本実施の形態では、シールド電極から1本のアース用ワイヤリードでパッケージのアース端子と接続したが、2本以上のアース用ワイヤリードで接続してもよい。例えば、シールド電極66の中央部のシールド端子パターン661だけでなく、両端部にもシールド端子パターンを設けて、これらからパッケージのアース端子に接続してもよい。
(第6の実施の形態)
図12は、本発明の第6の実施の形態にかかるSAW共用器75の構成を示す上面図である。本実施の形態のSAW共用器75は、第1の実施の形態のSAW共用器10とは、以下の点が異なる。すなわち、第1の実施の形態のSAW共用器10においては、周波数の低い送信フィルタ13のうち、受信フィルタ14に最も近い共振子が直列椀共振子で、受信フィルタ14のうち、送信フィルタ13に最も近い共振子が並列椀共振子である構成にしている。しかし、本実施の形態のSAW共用器75においては、周波数の低い送信フィルタ82のうち、受信フィルタ83に最も近い共振子が並列椀共振子で、受信フィルタ83のうち、送信フィルタ82に最も近い共振子が直列椀共振子である構成としている。
具体的には、それぞれラダー型回路で構成した送信フィルタ82と受信フィルタ83とを弾性表面波の伝播方向と垂直な方向に配置し、その間にシールド電極84を設ける。このとき、送信フィルタ82を構成する共振器のうち、最も受信フィルタ83に近い共振子821を並列椀共振子とする。さらに、受信フィルタ83を構成する共振子のうち、最も送信フィルタ82に近い共振子831を直列椀共振子とする。ラダー型回路を用いる場合には、直列椀共振子の共振周波数の方が並列椀共振子の共振周波数より高くなる。したがって、この構成とすることで、第1のフィルタ構成と第2のフィルタ構成のそれぞれ最も隣接して配置された共振子の共振周波数の差を最も大きくすることができる。この結果、さらにアイソレーション特性を向上させることができ、小型でアイソレーション特性に優れたSAW共用器を得ることができる。
以下、SAW素子80の構成の一例について説明する。送信フィルタ82の中心周波数を836.5MHz、受信フィルタ83の中心周波数を881.5MHzに設定した。このために、圧電体基板81として36°YカットX伝播タンタル酸リチウム(LiTaO)単結晶基板を用いて、この圧電体基板81の表面上に銅(Cu)添加アルミニウム(Al)合金とチタン(Ti)とを積層した構成の薄膜を電極膜とした。その膜厚は約400nmとした。
送信フィルタ82の直列椀と並列椀の共振子は、それぞれ2.32μmと2.43μmのピッチであり、受信フィルタ83は、それぞれ2.20μmと2.31μmのピッチである。この送信フィルタ82と受信フィルタ83との間に形成するシールド電極84の幅は約100μmとした。
このようにして作製したSAW素子80をパッケージ85に接着固定し、ワイヤリード20によりSAW素子80のそれぞれの接続端子パターンとパッケージ85の端子部87とを接続し、最後に蓋体により封止してSAW共用器75を作製した。シールド電極84のシールド端子パターン841とパッケージ85のアース端子871との間はアース用ワイヤリード210により接続した。なお、パッケージ85は、第1の実施の形態のSAW共用器10と同様に、例えばセラミック基材を使用し、蓋体を接合するための接合部86と、この接合部86より低い段差を有し、ワイヤリード20がボンディングされる端子部87と、最も低い段差を有し、SAW素子80が接着固定される底面部88とにより構成されている。
図13は、このSAW共用器75について、第1の実施の形態と同様にシールド電極84を設けない構成のSAW共用器を比較例として、アイソレーション特性を比較した結果を示す図である。本実施の形態のSAW共用器75では、比較例に比べて受信端子と送信端子との間の減衰量が大きくなり、アイソレーション特性を改善できることが見出された。
なお、本実施の形態では、シールド電極からは1本のアース用ワイヤリードでパッケージのアース端子と接続したが、複数本のアース用ワイヤリードで接続してもよい。
また、第1の実施の形態から第6の実施の形態では、SAW共用器を例として本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。2種類の異なる周波数を有するフィルタを1つの圧電体基板上に形成する弾性表面波フィルタであれば同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
本発明の弾性表面波デバイスは、圧電体基板上に異なる中心周波数を有するフィルタを設けた場合に、フィルタ間での電磁的な干渉を防止してアイソレーション特性を改善することができるので小型化が可能となり、携帯電話等に有用である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の圧電体基板上に異なる中心周波数を有する2種類の弾性表面波フィルタ構成を設けた弾性表面波素子をパッケージに配置した構成からなり、前記弾性表面波素子は第1の中心周波数を有する第1のフィルタ構成と、第2の中心周波数を有する第2のフィルタ構成と、前記第1のフィルタ構成と前記第2のフィルタ構成との間にシールド電極とを有し、前記シールド電極を前記パッケージのアース端子に接続して接地したことを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
前記弾性表面波素子は、前記第1のフィルタ構成および前記第2のフィルタ構成のいずれか一方のアース端子パターンと前記シールド電極との間を接続する接続パターンをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項3】
前記弾性表面波素子は、前記シールド電極が第1のシールド電極と第2のシールド電極とからなり、前記第1のフィルタ構成のアース端子パターンと前記第1のシールド電極との間を接続する第1の接続パターンと、前記第2のフィルタ構成のアース端子パターンと前記第2のシールド電極との間を接続する第2の接続パターンとをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項4】
前記シールド電極は、前記第1のフィルタ構成または前記第2のフィルタ構成のうちの少なくとも1つの信号ライン端子パターンと前記パッケージの信号端子とを接続する信号用ワイヤリードを横切るパターンをさらに有し、前記シールド電極と前記パッケージの前記アース端子との間を少なくとも2本のアース用ワイヤリードにより接続したことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項5】
前記シールド電極は、前記第1のフィルタ構成および前記第2のフィルタ構成をほぼ分断するように、前記第1のフィルタ構成および前記第2のフィルタ構成の長さ以上に形成したことを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項6】
前記シールド電極と前記パッケージの前記アース端子との間を接続する2本の前記アース用ワイヤリードが、前記信号ライン端子パターンと前記パッケージの前記信号端子とを接続する前記信号用ワイヤリードの両側に配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項7】
前記アース用ワイヤリードは、前記弾性表面波素子が収納された前記パッケージの端子部のうち、対向する位置に配設された前記アース端子にそれぞれ接続されたことを特徴とする請求項5に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項8】
前記弾性表面波素子の前記第1のフィルタ構成、前記第2のフィルタ構成および前記シールド電極は、前記第1のフィルタ構成および前記第2のフィルタ構成の弾性表面波伝播方向に対して垂直方向に配置されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項9】
前記第1のフィルタ構成および前記第2のフィルタ構成は、それぞれ一端子弾性表面波共振子を直列椀と並列椀に接続したラダー型回路で、かつ中心周波数が相対的に低い第1のフィルタ構成のうち、前記第2のフィルタ構成に最も近い弾性表面波共振子は並列椀であり、かつ前記第2のフィルタ構成のうち、前記第1のフィルタ構成に最も近い弾性表面波共振子は直列椀からなることを特徴とする請求項8に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項10】
前記シールド電極は、前記第1のフィルタ構成および前記第2のフィルタ構成の櫛型電極に対して垂直方向に複数のスリットを有するグレーティング形状からなることを特徴とする請求項8または9に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項11】
前記弾性表面波素子の前記第1のフィルタ構成および前記第2のフィルタ構成は前記第1のフィルタ構成および前記第2のフィルタ構成の弾性表面波伝播方向と平行に配置され、前記シールド電極は前記弾性表面波伝播方向に対して垂直方向に配置されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項12】
前記シールド電極は、前記第1のフィルタ構成および前記第2のフィルタ構成の櫛型電極に対して平行な方向に複数のスリットを有するグレーティング形状からなることを特徴とする請求項11に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項13】
前記シールド電極は、前記第1のフィルタ構成および前記第2のフィルタ構成の弾性表面波伝播方向と斜交する方向に複数のスリットを有するグレーティング形状からなることを特徴とする請求項8、9または11に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項14】
前記シールド電極の前記スリットは、前記第1のフィルタ構成および前記第2のフィルタ構成中の櫛型電極の最小ピッチと最大ピッチとの間のピッチで形成されていることを特徴とする請求項10、12または13に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項15】
前記シールド電極の前記スリットは、場所により異なるピッチで形成されていることを特徴とする請求項10、12または13に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項16】
前記第1のフィルタ構成および前記第2のフィルタ構成のうち、中心周波数が相対的に高い方のフィルタ構成のアース端子パターンと前記シールド電極とを接続パターンで接続し、前記シールド電極と前記アース端子パターンとに対して少なくとも2本のアース用ワイヤリードが接続され、前記アース用ワイヤリードは前記パッケージの中で前記弾性表面波素子を挟んで両側に配設された前記アース端子にそれぞれ接続されたことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項17】
前記第1のフィルタ構成および前記第2のフィルタ構成のうち、中心周波数が相対的に低い方のフィルタ構成のアース端子パターンと前記シールド電極とを接続パターンで接続し、前記シールド電極と前記アース端子パターンとに対して少なくとも2本のアース用ワイヤリードが接続され、前記アース用ワイヤリードは前記パッケージの中で前記弾性表面波素子を挟んで両側に配設された前記アース端子にそれぞれ接続したことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項18】
前記第1のフィルタ構成および前記第2のフィルタ構成は、それぞれ送信フィルタと受信フィルタであり、前記送信フィルタと前記受信フィルタとにより弾性表面波共用器を構成していることを特徴とする請求項1から17までのいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項19】
前記信号ライン端子パターンが、前記送信フィルタおよび前記受信フィルタのいずれか一方の入出力端子パターンであることを特徴とする請求項18に記載の弾性表面波デバイス。

【国際公開番号】WO2005/011114
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512121(P2005−512121)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011122
【国際出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】