説明

弾性表面波フィルタ

圧電基板(201)上に、第1のIDT(202)と第2のIDT(203)とを形成することにより構成され、第1のIDT(202)は入出力端子の一方
の端子(204)と入出力端子の他方の端子(205)との間、すなわち信号経路に直列に配置され、第2のIDT(203)は入出力端子の一方の端子(204)と第1のIDT(202)との間から信号経路に対して並列に配置される。さらに、第1のIDT(202)と第2のIDT(203)とはそれぞれの共振器により励起される弾性表面波の同一伝播路上で近接して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、携帯電話等の通信機器等に用いられる弾性表面波フィルタに関する。
【背景技術】
近年、移動体通信の発展に伴い、使用されるデバイスの高性能化、小型化が要望されている。それらのデバイスの中で移動体通信機器用のフィルタとしては、従来から弾性表面波フィルタ(以下、SAWフィルタとよぶ)が広く用いられている。現在、RF(Radio Frequency)段のSAWフィルタとしては、主に縦モード型とラダー型とが用いられている。特に、ラダー型SAWフィルタは縦モード型SAWフィルタに比べて低ロス化が可能である。ラダー型のSAWフィルタは、複数の弾性表面波共振器(以下、SAW共振器とよぶ)を梯子型に接続した構成であり、直列腕として動作するSAW共振器と並列腕として動作するSAW共振器とにより構成される。
ラダー型のSAWフィルタに関する従来例として、日本特開平9−270663号公報には、直列腕として動作するSAW共振器と並列腕として動作するSAW共振器とを、ある程度の距離を離して配置する方法が開示されている。図20は、このように構成された上記第1の先行文献に開示されたSAWフィルタの構成図である。このSAWフィルタは、圧電基板901上に形成された直列腕のSAW共振器902、並列腕のSAW共振器903及びこれらのSAW共振器902、903に接続された信号線904により構成されている。なお、これらのSAW共振器902、903は、これらを構成する櫛形電極のそれぞれの交差幅が漏洩表面波の伝播方向で重なるように配置されている。この場合に、直列腕のSAW共振器902と並列腕のSAW共振器903との隙間の距離を漏洩表面波の波長の10倍以上になるように設定すれば、これらのSAW共振器902、903の漏洩表面波の干渉を防ぐことができる。
また、ラダー型SAWフィルタに関する他の従来例として、日本特開平9−232908号公報には、直列腕として動作するSAW共振器と並列腕として動作するSAW共振器との間にスリット板を配置する方法が開示されている。図21は、このように構成された上記第2の先行文献のSAWフィルタの構成図である。このSAWフィルタは、圧電基板1001上に形成された直列腕のSAW共振器1002、1005、並列腕のSAW共振器1003、1006及びスリット板1004、1007により構成されている。スリット板1004は、直列腕のSAW共振器1002と並列腕のSAW共振器1003との間に設けられ、それぞれのSAW共振器1002、1003から漏れてきた弾性表面波を遮断する。同様に、スリット板1007は、直列腕のSAW共振器1005と並列腕のSAW共振器1006との間に設けられ、それぞれのSAW共振器1005、1006から漏れてきた弾性表面波を遮断する。
また、ラダー型SAWフィルタに関する他の従来例として、日本特開2000−201052号公報には、直列腕として動作するSAW共振器と並列腕として動作するSAW共振器との弾性表面波の伝播路が重ならないように配置する方法が開示されている。図22は、このように構成された上記第3の先行文献のSAWフィルタの構成図である。このSAWフィルタは、圧電基板1101上に形成された直列腕のSAW共振器1102、1103と並列腕のSAW共振器1104とにより構成されている。なお、この構成においては、2つの直列腕のSAW共振器1102、1103に挟まれた並列腕のSAW共振器1104の弾性波伝播路が、これらの直列腕のSAW共振器1102、1103の弾性波伝播路の間になるように形成されている。これにより、直列腕及び並列腕のそれぞれのSAW共振器の弾性波が互いに干渉することなく良好なフィルタ特性が得られるとしている。
しかしながら、上記の従来の開示例においては、直列腕のSAW共振器と並列腕のSAW共振器とをある程度の距離を離して配置している。このために、SAWフィルタとしての形状が大きくなるという課題があった。また、これらにおいては、直列腕のSAW共振器と並列腕のSAW共振器との弾性表面波の干渉をなくす技術は開示されているが、これを利用する考え方はまったく開示されていない。
本発明は、上記課題に対して、複数のSAW共振器を同一伝播路上に近接して配置した新たな構成のSAWフィルタにより、小型で、かつ低ロスが可能なSAWフィルタを提供することを目的とする。
【発明の開示】
上記目的を達成するために、本発明のSAWフィルタは、圧電基板と、この圧電基板上の同一弾性表面波伝播路上に近接して設けられた少なくとも2つのインターディジタルトランスデューサ(以下、IDTとよぶ)とを含むSAWフィルタであって、前記IDTのうち、少なくとも一つは信号経路に直列に接続されている第1のIDTであり、少なくとも一つは信号経路とグランドとの間に接続されている第2のIDTであり、上記第1のIDTと第2のIDTとは共振周波数が異なり、かつ第1のIDTと第2のIDTはIDTを構成する櫛形電極の電極指をほぼ連続的に配置した構成からなる。
このような構成にすることで、従来用いられているラダー型弾性表面波フィルタのいわゆるL型構成と同等の減衰特性を有しながら、より小型で、かつ低ロスのSAWフィルタを得ることができる。ここで電極指をほぼ連続的に配置したとは、隣り合う電極指と電極指とのギャップの差を約5%以内の誤差になるように配置したことをいう。このように配置することによりIDTとIDTとの間との境界でのバルク波変換によるロスの発生を防ぐことができる。あるいは、後述するようにIDT間にストリップライン電極を配置した場合には、IDTとストリップライン電極との間の境界でのバルク波変換による損失の発生を防ぐことが出来る。さらに、第1のIDTからみて第2のIDTを、また逆に第2のIDTからみて第1のIDTを、それぞれ反射器として利用することもできる。
また、上記構成において、第1のIDT及び第2のIDTが、それぞれの弾性表面波が打ち消し合わないように配置されている構成としてもよい。さらに、この場合に、第1のIDT及び第2のIDTが、お互いに逆相になるように構成してもよい。
このような構成とすることで、互いの弾性表面波が打ち消し合わないようにできるので共振周波数が異なる複数のIDTを弾性表面波の伝播方向に並べて小型で、ロスの小さなSAWフィルタを実現できる。
また、上記構成において、第1のIDT及び第2のIDTの共振周波数を、予め設定したフィルタ特性を得るのに必要な周波数に設定した構成としてもよい。その場合に、第1のIDTの共振周波数を、第2のIDTの反共振周波数に略一致させてもよい。この構成により、目標とするフィルタ特性を容易に得ることができる。
また、上記構成において、第1のIDT及び第2のIDTを含むIDTの最外側に反射器電極を設けてもよい。このような構成とすることにより、表面弾性波を効率よく閉じ込めることができるのでロスをさらに低減したSAWフィルタを実現できる。
また、上記構成において、第1のIDTと第2のIDTとの間にストリップライン電極を設け、第1のIDT及び第2のIDTを構成する櫛形電極の電極指、及びこのストリップライン電極を構成する電極指がほぼ連続的な配置になるように構成してもよい。この場合に、このストリップライン電極の電極指のピッチを、第1のIDTの電極指のピッチと第2のIDTの電極指のピッチとの間に設定してもよい。この構成とすることにより、それぞれのIDTから励振される弾性表面波を効率よく閉じ込めることができるのでロスを小さくすることができる。
また、上記構成において、第1のIDTと第2のIDTとの境界領域に配置されている複数の電極指のピッチを、それぞれの中央領域に配置されている電極指のピッチと異ならせた構成としてもよい。さらに、この場合に、SAWフィルタを構成するIDTの少なくとも一つに重み付けをかけてもよい。また、この重み付けとしては、アポダイズ重み付け、あるいは間引き重み付けをかけてもよい。
このような構成とすることにより、必要とする周波数領域で減衰量やロスを設計に合せて調整して、減衰量が大きく、ロスの小さなSAWフィルタを容易に実現できる。
また、上記構成において、IDTはダミー電極を含む構成としてもよい。ダミー電極をそれぞれ配置して最適化することにより、さらに低ロスのSAWフィルタを実現できる。
また、上記構成において、第1のIDTに対して第2のIDTが近接配置された側とは反対側に信号経路とグランドとの間に接続されている第3のIDTを近接配置した構成としてもよい。この場合に、第3のIDTの共振周波数は第1のIDTの共振周波数とは異なるようにしてもよい。
また、上記構成において、第2のIDTに対して第1のIDTが近接配置された側とは反対側に信号経路に直列に接続されている第4のIDTを近接配置した構成としてもよい。この場合に、第4のIDTの共振周波数は第2のIDTの共振周波数とは異なるようにしてもよい。
また、本発明のSAWフィルタは、上記構成のSAWフィルタを一つのSAWエレメントとして、このSAWエレメントを多段に接続した構成からなる。この構成とすることにより、目標とする特性を有するSAWフィルタを容易に得ることができ、設計の自由度も大きくできる。
以上のように本発明によれば、複数のSAW共振器を同一伝播路上に近接して配置することにより、高減衰特性が要求され、多くの共振子を必要とするSAWフィルタの場合でも小型形状を実現できる。さらに、これらのSAWフィルタを一つのエレメントとして多段に接続する場合には、配線パターンを単純化できるため、配線パターンの電気抵抗を小さくでき、ロスを小さくしたSAWフィルタを実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるSAWフィルタの構成を示す平面図
図2は、同実施の形態における逆相構成を説明するための模式図
図3は、同実施の形態における第1の変形例のSAWフィルタを示す平面図
図4は、同実施の形態における第2の変形例のSAWフィルタを示す平面図
図5は、同実施の形態にかかる1段のL型構成のSAWフィルタを基本のSAWエレメメントとして、これらを2段に縦続接続した構成からなるSAWフィルタの平面図
図6は、図1に示すSAWフィルタを基本として、グラデーション領域を設けた構成を説明する平面図
図7は、図6にしめすSAWフィルタの境界領域の電極指の構成を拡大して示す図
図8は、実施例1のSAWフィルタの特性を測定した結果を示す図
図9は、実施例2のSAWフィルタの特性を測定した結果を示す図
図10は、実施例3のSAWフィルタの特性を測定した結果を示す図
図11は、比較例1のSAWフィルタの特性を測定した結果を示す図
図12は、実施例4のSAWフィルタの特性を測定した結果を示す図
図13は、比較例2のSAWフィルタの特性を測定した結果を示す図
図14は、図3に示すSAWフィルタを基本のSAWエレメントとして、これらを4段に縦続接続して構成した実施例5のSAWフィルタの平面図
図15は、実施例5のSAWフィルタについて特性を測定した結果を示す図
図16は、比較のために作製したもので、従来のラダー構成からなるSAW共振器を多段に縦続接続した比較例3のSAWフィルタの構成を示す平面図
図17は、比較例3のSAWフィルタについて特性を測定した結果を示す図
図18は、本発明の第2の実施の形態にかかるSAWフィルタの構成を示す平面図
図19は、本発明の第3の実施の形態にかかるSAWフィルタの構成を示す平面図
図20は、第1の先行文献に開示された従来のSAWフィルタの構成図
図21は、第2の先行文献に開示された従来のSAWフィルタの構成図
図22は、第3の先行文献に開示された従来のSAWフィルタの構成図
図面の参照符号の一覧表
201,650,701,801,901,1001,1101 圧電基板
202、404,502,512,522,532,702,802,2021,2022 第1のIDT
203,405,503,513,523,703,803,2031,2032 第2のIDT
204,620,705,805 一方の端子
205,630,706,806 他方の端子
206,540,541,542,707,708,807 配線電極
207,301,504,505,506,514,515,516,524,525,526,534,535,709,808,2071,2072 反射器電極
401,402 ダミー電極
501 第1のSAWエレメント
502 第2のSAWエレメント
600,610,902,903,1002,1003,1005,1006,1102,1103,1104 SAW共振器
640,904 信号線
704 第3のIDT
804 第4のIDT
1004,1007 スリット板
2025、2035 等ピッチ領域
2026,2036 グラデーション領域
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、同じ要素については同じ符号を付しているので説明を省略する場合がある。また、以下に示す図面は模式的な図であり、電極指本数やピッチを正確に表現してはいない。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるSAWフィルタの構成を示す平面図である。なお、一般にSAWフィルタはセラミックや樹脂等でパッケージ化されて使用されるが、図1では圧電基板201上の構成のみしか示していない。図1に示すように、本実施の形態のSAWフィルタの場合には、39゜YカットX伝播のタンタル酸リチウム(LiTaO)からなる圧電基板201の表面に第1のIDT202と第2のIDT203とを同一伝播路上になるように配置し、それぞれの端部に反射器電極207を設けた構成からなる。
第1のIDT202は、入出力端子の一方の端子204と他方の端子205との間、すなわち信号経路に対して直列に配置されており、直列腕のSAW共振器と等価な動作をすることができる。一方、第2のIDT203は、入出力端子の一方の端子204と第1のIDT202との間から信号経路に対して並列に配置されている。この第2のIDT203は、一方の端子204及び第1のIDTとは配線電極206により接続されている。このような配置と接続構成から、第2のIDT203は並列腕のSAW共振器と等価な動作をすることができる。
さらに、第1のIDT202と第2のIDT203とは、それぞれのSAW共振器により励起される弾性表面波の同一伝播路上にそれぞれのIDTを構成する櫛形電極の電極指をほぼ連続的に配置している。このとき、第1のIDT202と第2のIDT203とについては、それぞれのSAW共振器で励起される弾性表面波がお互いに打ち消し合わない構成とされている。また、第1のIDT202及び第2のIDT203の隣り合う側とは反対側に反射器電極207がそれぞれ配置されている。このような構成とすることにより、SAWフィルタを実現することができる。
なお、配線電極206と一方の端子204及び第1のIDT202を構成する櫛形電極の他方と他方の端子205とは、ワイヤリード等により接続されている。また、第2のIDT203を構成する櫛形電極の他方も同様にワイヤリード等によりアース端子に接続され、接地されている。
さらに、第1のIDT202を構成する櫛形電極の電極指ピッチは、第2のIDT203を構成する櫛形電極の電極指ピッチよりも小さく、また、設計値に基づくフィルタ特性を実現するようにそれぞれのピッチが設定されている。さらに、反射器電極207の電極指ピッチは、第1のIDT202の電極指ピッチと第2のIDT203の電極指ピッチとの中間の値となるように設定されている。
以上のように、第1のIDT202と第2のIDT203とを近接配置して一つの伝播路上に閉じ込めることにより、それぞれのSAW共振器については、実質上その共振器長を長くしたことと等価になり、SAW共振器特性を高性能化することができる。この結果、SAWフィルタとしても、帯域通過型で、ロスの小さな特性を得ることができる。また、第1のIDT202と第2のIDT203とを近接配置すること及び配線電極を短くすることができること等によりSAWフィルタの小型化も実現できる。また、以上の構成は、L型のSAWフィルタの基本構成単位ともなる。
以上説明したように、本発明のSAWフィルタは、複数のSAW共振器を同一伝播路上に近接して配置することにより、小型で、かつロスの小さなフィルタ特性を実現することができる。
なお、第1のIDT202及び第2のIDT203の共振周波数を変える方法としては、電極指の幅を変化させる方法や電極指のピッチを変化させる方法等がある。しかし、SAWフィルタの設計自由度を大きくすることができることやプロセスの容易性の観点から判断すると、電極指ピッチを変化させる方法が望ましい。
一般的に、SAW共振器を構成する場合には、IDT特性のピーク周波数と反射器電極の反射特性の中心周波数を合わせるように、それぞれのピッチを決めている。しかし、反射特性は比較的広い周波数領域でフラットな特性を有しているので、このフラットな領域であれば特性の大きな劣化を伴うことなく共振特性が得られる。したがって、全てのIDT特性のピーク周波数において反射特性がフラットな領域に入るようにすれば良く、反射器電極のピッチは最小のピッチを有するIDTのピッチより大きく、最大のピッチを有するIDTのピッチより小さくするのが望ましい。また、それぞれの弾性表面波が打ち消し合わないようにIDTの配置をすることにより、お互いの干渉を避けることができる。
このように弾性表面波が打ち消しあわないように第1のIDT202と第2のIDT203とを配置する場合に、第1のIDT202及び第2のIDT203がお互いに逆相になるように構成することが望ましい。
なお、本発明でいう逆相とは、図2に示すような構成をいう。図2は、逆相を説明するための模式図であり、第1のIDT22と第2のIDT23との境界領域部を拡大して示している。また、この図においては、第1のIDT22と第2のIDT23との間にストリップライン電極31を設けている。なお、第1のIDT22と第2のIDT23とから励振される弾性表面波25も模式的に示している。このような構成の場合には図示するように、第1のIDT22のうち第2のIDT23に最も近い電極指221と、第2のIDT23のうち第1のIDT22に最も近い電極指231とが弾性表面波25の山と谷とを構成しており、かつ第1のIDT22と第2のIDT23を構成する櫛形電極の一方が図示するように共通に接続されている。本発明でいう逆相とはこのような配置構成をいう。なお、このような逆相とするためには、図示するようなストリップライン電極31は必須ではなく、ストリップライン電極31を設けなくても逆相構成は可能である。
なお、本実施の形態のSAWフィルタにおいては、反射器電極207を配置しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、表面弾性波の閉じ込めが他の方法により充分できる構成であれば、反射器電極207は特に設けなくてもよい。
図3は、本実施の形態における第1の変形例のSAWフィルタを示す平面図である。本変形例のSAWフィルタにおいても、図1と同様に圧電基板201上の構成のみしか示していない。この第1の変形例のSAWフィルタは、第1のIDT202と第2のIDT203との間に数本程度のストリップライン電極301を配置したことが特徴である。その電極指ピッチは第1のIDT202の電極指ピッチと第2のIDT203の電極指ピッチとの中間の値となるように設定することが好ましい。なお、ストリップライン電極301の電極指のピッチは上記の中間の値となるように設定するが、すべての電極指のピッチを一定にする必要はなく、ステップ状に変化させてもよいし、連続的に変化させるグラデーションとしてもよい。また、このストリップライン電極301は反射器電極として作用する。
図4は、本実施の形態における第2の変形例のSAWフィルタを示す平面図である。本変形例のSAWフィルタにおいても、図1と同様に圧電基板201上の構成のみしか示していない。この第2の変形例のSAWフィルタは、第1のIDT404と第2のIDT405とに、図示するようなダミー電極401、402をそれぞれ配置したことが特徴であり、その他については図1に示すSAWフィルタ構成と同様である。このダミー電極401、402をそれぞれ配置して最適化することにより、さらに低ロスのSAWフィルタを実現できる。
また、上記実施の形態においては、1段のL型構成のSAWフィルタについて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図5に示すような多段構成のSAWフィルタとしてもよい。
図5は、図1に示した1段のL型構成のSAWフィルタを基本のSAWエレメメントとしてこれらを2段に縦続接続した構成からなるSAWフィルタの平面図である。すなわち、第1のSAWエレメント501は、圧電基板201の表面に第1のIDT2021と第2のIDT2031とを同一伝播路上になるように配置し、それぞれの端部に反射器電極2071を設けた構成からなる。また、第2のSAWエレメント502は、同様に圧電基板201の表面に第1のIDT2022と第2のIDT2032とを同一伝播路上になるように配置し、それぞれの端部に反射器電極2072を設けた構成からなる。
第1のIDT2021を構成する櫛形電極の一方は、入出力端子の一方の端子204に接続され、櫛形電極の他方は配線電極206と接続されている。また、第2のIDT2031を構成する櫛形電極の一方はアースに設置され、他方は配線電極206と接続されている。
同様に、第1のIDT2022を構成する櫛形電極の一方は、入出力端子の他方の端子205に接続され、櫛形電極の他方は配線電極206と接続されている。また、第2のIDT2032を構成する櫛形電極の一方はアースに設置され、他方は配線電極206と接続されている。
このような構成とすることにより、圧電基板201上に形成するIDTや反射器電極を含むパターン形状は、全体としてほぼ矩形状になる。したがって、チップ上のパターンのスペースファクタが改善される。この結果、SAWフィルタとしてのチップの小型化が可能となる。また、第1のSAWエレメント501及び第2のSAWエレメント502の間の接続も配線電極206のみでよく、非常に単純な構成となるため低ロス化を実現できる。
以下、本実施の形態にかかるSAWフィルタの具体的な構成とその特性をシミュレーションにより求めた結果について説明する。
図6は、図1に示すSAWフィルタを基本として、グラデーション領域を設けた構成を説明する平面図である。このSAWフィルタにおいては、第1のIDT202と第2のIDT203とは共振周波数が異なり、かつ第1のIDT202と第2のIDT203とはIDTを構成する櫛形電極の電極指をほぼ連続的に配置して、それぞれの弾性表面波が打ち消し合わないようにした構成からなる。以下、このSAWフィルタを実施例1のSAWフィルタとよぶ。
具体的には、この実施例1のSAWフィルタは、第1のIDT202及び第2のIDT203の境界領域であるグラデーション領域2026、2036の複数の電極指のピッチを、それぞれの中央領域の等ピッチ領域2025、2035の電極指のピッチと異ならせた、すなわちグラデーションを設けた構成が特徴である。図7は、この境界領域の電極指の構成を拡大して示す図である。なお、この図7は模式的な図であり、電極指の本数等については正確に表現していない。また、表1は、このSAWフィルタの電極指本数とピッチを示す。
表1及び図7からわかるように、第1のIDT202の等ピッチ領域2025では、電極指は215本設けられ、この領域のピッチは2.341μmである。一方、この等ピッチ領域2025の端部から第2のIDT203との境界部までにかけてグラデーション領域2026が設けられている。グラデーション領域2026の電極指本数は10本で、そのピッチは等ピッチ領域の端部のピッチ2.341μmから第2のIDT203の境界部のピッチ2.411μmまで連続的にピッチを変化させている。
また、第2のIDT203のグラデーション領域2036は、第1のIDT202のグラデーション領域2026の端部のピッチ2.411μmから等ピッチ領域2035のピッチである2.429μmまで連続的にそのピッチを変化させている。なお、このグラデーション領域2036の電極指本数は10本で、等ピッチ領域2035の電極指本数は135本である。
さらに、第1のIDT202に隣接する反射器電極207の電極指本数は35本で、そのピッチは2.404μmとした。一方、第2のIDT203に隣接する反射器電極207の電極指本数は35本で、そのピッチは2.418μmとしている。なお、圧電基板201は、39°YカットX伝播のタンタル酸リチウム(LiTaO)を用い、電極膜厚を約0.4μmとした。以上の構成からなる実施例1のSAWフィルタの特性を求めた結果を図8に示す。図8からわかるように、実施例1のSAWフィルタでは824MHzと849MHzでのロスが0.65dB、0.28dBであった。

つぎに、実施例1のSAWフィルタと同様にグラデーション領域を設けた構成に、さらに間引きを加えた場合のSAWフィルタを作製した。これを実施例2のSAWフィルタとよぶ。実施例2のSAWフィルタは、その構成については実施例1のSAWフィルタと同じであるが、電極指本数やピッチは異なる。
表2に、実施例2のSAWフィルタの電極指本数とピッチを示す。表2に示す構成以外については、実施例1のSAWフィルタと同様であるので説明は省略する。
以上の構成からなる実施例2のSAWフィルタの特性を求めた結果を図9に示す。図9からわかるように、実施例2のSAWフィルタでは824MHzと849MHzでのロスが0.52dB、0.29dBであった。

さらに、実施例1のSAWフィルタと同様にグラデーション領域を設けた構成に加えてアポダイズ重み付けを行った構成のSAWフィルタを作製した。これを実施例3のSAWフィルタとよぶ。アポダイズ重み付けはシミュレーションにより特性を評価しながら最適値を設定した。このようにして作製した実施例3のSAWフィルタの特性を求めた結果を図10に示す。図10からわかるように、実施例3のSAWフィルタでは824MHzと849MHzでのロスが0.56dB、0.28dBであった。
一方、本発明のSAWフィルタと比較するために従来のラダー構成からなるSAWフィルタも作製した。これを比較例1のSAWフィルタとよぶ。この比較例1のSAWフィルタの特性を測定した結果を図11に示す。図11からわかるように、比較例1のSAWフィルタでは824MHzと849MHzでのロスが0.65dB、0.28dBであった。
これらの特性を表3にまとめて示す。表3からわかるように、実施例1のSAWフィルタを除き、実施例2および実施例3のSAWフィルタは比較例1のSAWフィルタよりも良好な特性を得られることが確認できた。なお、実施例1のSAWフィルタの場合には、比較例1のSAWフィルタとその特性は同じであったが、比較例1のSAWフィルタよりも小型化できる点で特徴を有する。

つぎに、第1のIDTと第2のIDTとの間にストリップライン電極を設け、第1のIDT及び第2のIDTを構成する櫛形電極の電極指、及びストリップライン電極または反射器電極を構成する電極指がほぼ連続的な配置になるように構成したSAWフィルタを作製した。これは、図3に示すSAWフィルタを基本としており、作製したSAWフィルタの電極指本数とピッチを表4に示す。これを実施例4のSAWフィルタとよぶ。
表4に基づき作製した実施例4のSAWフィルタの特性を求めた結果を図12に示す。図12からわかるように、実施例4のSAWフィルタでは824MHzと849MHzでのロスが0.70dB、0.25dBであった。

一方、実施例4のSAWフィルタと比較するために従来のラダー構成のSAWフィルタも作製した。これを比較例2のSAWフィルタとよぶ。この比較例2のSAWフィルタの特性を求めた結果を図13に示す。図13からわかるように、比較例2のSAWフィルタでは824MHzと849MHzでのロスが0.70dB、0.25dBであった。
すなわち、実施例4のSAWフィルタの場合には、特性自体は従来のラダー構成と同じ結果であったが、小型化ができる点で特徴を有する。
つぎに、図3に示したSAWフィルタを基本のSAWエレメントとして、これらを多段に縦続接続したSAWフィルタを作製して特性を求めた結果について述べる。
図14は、図3に示すSAWフィルタを基本のSAWエレメントとして、これらを4段に縦続接続して構成したSAWフィルタの平面図である。これを実施例5の
SAWフィルタとよぶ。圧電基板201は、39°YカットX伝播のタンタル酸リチウム(LiTaO)を用い、電極膜厚を約0.4μmとした。1段目から4段目までのそれぞれのIDT及び反射器電極の電極指本数とピッチとを表5に示す。
この実施例5のSAWフィルタの1段目は、第1のIDT502、第2のIDT503、両側の反射器電極504、505及び中央部のストリップライン電極506から構成されている。同様に、2段目は、第1のIDT512、第2のIDT513、両側の反射器電極514、515及び中央部のストリップライン電極516から構成されている。また、3段目は、第1のIDT522、第2のIDT523、両側の反射器電極524、525及び中央部のストリップライン電極526から構成されている。最後の4段目は、第1のIDT532とその両側に配置された反射器電極534、535から構成されている。

そして、これらのIDT間は、配線電極540、541、542により接続されている。
なお、1段目の第1のIDT502を構成する櫛形電極の一方が入出力端子の一方の端子204に接続され、4段目の第1のIDT532を構成する櫛形電極の他方が入出力端子の他方の端子205に接続されている。また、上記ストリップライン電極506、516、526は、それぞれ反射器電極として作用する。
図15は、このような構成の実施例5のSAWフィルタについて特性を求めた結果を示す図である。図15からわかるように、実施例5のSAWフィルタでは824MHzと849MHzでのロスが0.92dB、1.29dBであった。
このSAWフィルタと比較するために従来のラダー構成からなるSAW共振器を多段に縦続接続した構成のSAWフィルタも作製した。図16は、このSAWフィルタの構成を示す平面図である。このSAWフィルタは、圧電基板650上に形成された直列腕のSAW共振器600、並列腕のSAW共振器616及びこれらのSAW共振器600、610に接続された信号線640により構成されている。なお、直列腕のSAW共振器600からは入出力端子の一方の端子620と他方の端子630にそれぞれ接続されている。なお、電極指本数、ピッチ、交差幅等については、実施例5のSAWフィルタの通過帯域と合わせるように設定している。
このような構成のSAWフィルタを以下、比較例3のSAWフィルタとよぶ。図17は、この比較例3のSAWフィルタについて特性を求めた結果を示す図である。図17からわかるように、比較例3のSAWフィルタでは824MHzと849MHzでのロスが0.93dB、1.29dBであった。
これらの結果から、実施例5のSAWフィルタは、比較例3のSAWフィルタに比べて特性の改善度合は小さいが、全体として小型化できることに大きな特徴を有する。
なお、上記実施例で示したSAWフィルタにおいては、グラデーションは連続的にピッチが変わるようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステップ状にピッチを変えてもよい。さらに、同様に上記実施例で示したSAWフィルタにおいては、IDTにアポダイズ重み付けをかけた構成を示したが、このような構成のみでなく、間引き重み付けをかけてもよい。
さらに、第1のIDT及び第2のIDTの共振周波数を、予め設定したフィルタ特性を得るのに必要な周波数に設定することは、第1の実施の形態及びそれに基づき作成した実施例のSAWフィルタでは明示的には説明していないが、表1から表5及びそれらの説明から当然に推定できるものである。また、同様に、第1のIDTの共振周波数を、第2のIDTの反共振周波数に略一致させても同じように良好な特性を得ることができる。
さらに、本発明においては、第1のIDTに対して第2のIDTがその櫛形電極の電極指を連続的に配置するように設けられた側とは反対側に、信号経路とグランドとの間に接続されている第3のIDTをその櫛形電極の電極指が第1のIDTの櫛形電極の電極指に連続して配置した構成としてもよい。あるいは、第2のIDTに対して、第1のIDTの櫛形電極の電極指が連続的に配置された側とは反対側に、信号経路に直列に接続されている第4のIDTをその櫛形電極の電極指が第2のIDTの櫛形電極の電極指に連続して配置した構成としてもよい。これらの構成としても同様に小型で、ロスの小さなSAWフィルタを実現できる。
(第2の実施の形態)
図18は、本発明の第2の実施の形態にかかるSAWフィルタの構成を示す平面図である。本実施の形態のSAWフィルタが第1の実施の形態のSAWフィルタと異なる点は、第1の実施の形態においてはL型構成を主体としたのに対して、本実施の形態においてはπ型構成を主体にしている点である。
本実施の形態のSAWフィルタは、圧電基板701上に第1のIDT702、第2のIDT703、第3のIDT704および両端に配置された反射器電極709により構成されている。
第1のIDT702は、入出力端子の一方の端子705と入出力端子の他方の端子706との間、すなわち信号経路に直列に配置されている。この配置により、この第1のIDT702は直列腕のSAW共振器と等価な動作をすることができる。第2のIDT703は、入出力端子の一方の端子705と第1のIDT702との間から信号経路に対して並列に配置され、かつ配線電極707により第1のIDT702及び一方の端子705に接続されている。この配置により、第2のIDT703は並列腕のSAW共振器と等価な動作をすることができる。
第3のIDT704は、入出力端子の他方の端子706と第1のIDT702との間から信号経路に対して並列に配置され、かつ配線電極708により第1のIDT702及び他方の端子706に接続されている。この配置により、第3のIDT704は並列腕のSAW共振器と等価な動作をすることができる。
さらに、第1のIDT702、第2のIDT703及び第3のIDT704は、それぞれのSAW共振器により励起される弾性表面波の同一伝播路上において近接して配置されている。このとき、それぞれのSAW共振器で励起される弾性表面波はお互いに打ち消し合わない構成とされている。このためには、逆相とすることが望ましい。また、第2のIDT703及び第3のIDT704のそれぞれ一方の端部側には図示するように反射器電極709がそれぞれ配置されている。本実施例のSAWフィルタは以上のような構成からなる。
さらに、第1のIDT702の電極指ピッチは、第2のIDT703及び第3のIDT704の電極指ピッチよりも小さく、また、設計値に基づくフィルタ特性が得られるように電極指ピッチを設定する。また、反射器電極709の電極指ピッチは、第1のIDT702の電極指ピッチと、第2のIDT703及び第3のIDT704の電極指ピッチとの中間の値となるように設定されている。
以上の構成とすることにより、本実施例のSAWフィルタは、第1のIDT702、第2のIDT703及び第3のIDT704は、それぞれが近接して配置され、かつ弾性表面波が同じ伝播路上に閉じ込められる。したがって、それぞれのSAW共振器は実質上共振器長が長くなったことと等価となる。この結果、SAW共振器の特性を向上できるので、SAWフィルタとしては、帯域通過型でロスの小さな特性を得ることができる。
また、第1のIDT702、第2のIDT703及び第3のIDT704を近接して配置していること及び引き回し線路を削減できること等により、SAWフィルタとして小型化を実現できる。なお、このようなSAWフィルタについては、π型構成が基本構成単位である。
以上説明したように、本実施の形態のSAWフィルタは、複数のSAW共振器を同一伝播路上に近接して配置することにより、小型で、かつロスの小さな特性を実現することができる。
なお、本実施の形態においては、反射器電極を配置したが、弾性表面波の閉じ込めが充分できる構成で反射器電極は設けなくてもよい。また、第1のIDT702、第2のIDT703及び第3のIDT704の間に、数本程度の反射器電極またはストリップライン電極を設ける構成でもよい。この反射器電極あるいはストリップライン電極の電極指ピッチは、第1のIDT702の電極指ピッチと、第2のIDT703及び第3のIDT704の電極指ピッチとの中間の値に設定することが好ましい。
また、第1のIDT702、第2のIDT703及び第3のIDT704に、ダミー電極をそれぞれ配置してもよい。このダミー電極の配置構成を最適化することにより、さらにロスを小さくすることができる。
なお、本実施の形態においても、第1の実施の形態で説明したようなグラデーション領域を設けることやアポダイズ重み付けあるいは間引き電極構成等を行うことでフィルタ特性を改善しながら、小型のSAWフィルタを実現できる。
(第3の実施の形態)
図19は、本発明の第3の実施の形態にかかるSAWフィルタの構成を示す平面図である。本実施の形態のSAWフィルタが、第1の実施の形態のSAWフィルタと異なる点は、第1の実施の形態においてはL型構成であるのに対して、本実施の形態ではT型構成としていることである。図19に示すように、本実施の形態のSAWフィルタは、圧電基板801上に、第1のIDT802、第2のIDT803、第4のIDT804及び両端部に配置された反射器電極808により構成されている。
第1のIDT802と第4のIDT804とは、入出力端子の一方の端子805と入出力端子の他方の端子806との間、すなわち信号経路に対して直列に配置されている。この構成により、これらは直列腕のSAW共振器と等価な動作をすることができる。
一方、第2のIDT803は、第1のIDT802と第4のIDT804との間から信号経路に対して並列に配置されている。そして、この第2のIDT803は、配線電極807により第1のIDT802及び第4のIDT804をそれぞれ構成する櫛型電極の一方に接続されている。この構成により、第2のIDT803は並列腕のSAW共振器と等価な動作をすることができる。
さらに、第1のIDT802、第2のIDT803及び第4のIDT804は、それぞれの共振器により励起される弾性表面波の同一伝播路上に近接して配置されている。このとき、それぞれのSAW共振器で励起される弾性表面波はお互いに打ち消し合わない構成とされている。このためには、逆相とすることが望ましい。また、第1のIDT802、第2のIDT803及び第4のIDT804の隣り合う側とは反対側に、反射器電極808が配置されている。
さらに、第1のIDT802及び第4のIDT804の電極指ピッチは、第2のIDT803の電極指ピッチよりも小さく、また設計値に基づくフィルタ特性が得られるように電極指ピッチを設定している。また、反射器電極808の電極指ピッチは、第1のIDT802及び第4のIDT804の電極指ピッチと、第2のIDT803の電極指ピッチとの中間の値となるように設定されている。
以上の構成とすることにより、本実施例のSAWフィルタは、第1のIDT802、第2のIDT803及び第4のIDT804が近接して配置されて、同一の弾性表面波の伝播路上に閉じ込められるので、それぞれの共振器は実質上共振器長が長くなったことと等価になる。この結果、共振器特性が改善され、帯域通過型でロスの小さな特性を有するSAWフィルタを実現できる。また、第1のIDT802、第2のIDT803及び第4のIDT804を近接して配置していること及び引き回し線路の削減等により、SAWフィルタの小型化も実現できる。なお、この場合のSAWフィルタについては、T型構成が基本構成単位である。
以上説明したように、本発明のSAWフィルタは、複数のSAW共振器を同一伝播路上に近接して配置することにより、小型で、かつロスの小さな特性を有するSAWフィルタを実現することができる。
なお、本実施の形態においても、第1の実施の形態で説明したようなグラデーション領域を設けることやアポダイズ重み付けあるいは間引き電極構成等を行うことでフィルタ特性を改善しながら、小型のSAWフィルタを実現できる。さらに、本実施の形態においては、反射器電極を配置しているが、弾性表面波の閉じ込めが充分できる構成であれば反射器電極を特に設けなくてもよい。
また、第1のIDT802、第2のIDT803及び第4のIDT804の間に、数本程度のストリップライン電極を設けてもよい。このストリップライン電極の電極指ピッチは、第2のIDT803の電極指ピッチと、第1のIDT802及び第4のIDT804の電極指ピッチとの中間の値となるように設定することが好ましい。
また、第1のIDT802、第2のIDT803及び第4のIDT804にダミー電極をそれぞれ配置してもよい。ダミー電極を設計値に基づき最適配置することで、さらに、ロスを小さくすることができる。
また、本実施の形態においては、3つのIDTを同一伝播路上に配置しているが、これは、4つ以上でもかまわない。さらに、接続や配置に関しても、複数のIDTが近接して配置されていればよい。
また、本実施の形態においては、1段構成のSAWフィルタについて説明したが、この1段構成のSAWフィルタを基本のSAWエレメントとして多段に縦続接続した多段構成のSAWフィルタとしてもよい。また、T型構成に限らず、L型構成やπ型構成あるいは1端子対弾性表面波共振子等の他の構成と組み合わせてもかまわない。
【産業上の利用可能性】
本発明にかかるSAWフィルタは、多くのSAW共振器を必要とする高減衰特性のフィルタであっても、チップサイズを小さくしながら挿入損失も小さくできるという効果を有し、携帯電話等の通信分野あるいはテレビ等の映像分野等のフィルタに有用である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、前記圧電基板上の同一弾性表面波伝播路上に近接して設けられた少なくとも2つのインターディジタルトランスデューサとを含むSAWフィルタであって、前記インターディジタルトランスデューサのうち、少なくとも一つは信号経路に直列に接続されている第1のインターディジタルトランスデューサであり、少なくとも一つは信号経路とグランドとの間に接続されている第2のインターディジタルトランスデューサであり、前記第1のインターディジタルトランスデューサと前記第2のインターディジタルトランスデューサとは共振周波数が異なり、かつ前記第1のインターディジタルトランスデューサと前記第2のインターディジタルトランスデューサはインターディジタルトランスデューサを構成する櫛形電極の電極指をほぼ連続的に配置した構成からなることを特徴とするSAWフィルタ。
【請求項2】
前記第1のインターディジタルトランスデューサ及び前記第2のインターディジタルトランスデューサは、それぞれの弾性表面波が打ち消し合わないように配置されていることを特徴とする請求項1記載のSAWフィルタ。
【請求項3】
前記第1のインターディジタルトランスデューサ及び前記第2のインターディジタルトランスデューサは、お互いに逆相になるように構成したことを特徴とする請求項2に記載のSAWフィルタ。
【請求項4】
前記第1のインターディジタルトランスデューサ及び前記第2のインターディジタルトランスデューサの共振周波数を、予め設定したフィルタ特性を得るのに必要な周波数に設定したことを特徴とする請求項1に記載のSAWフィルタ。
【請求項5】
前記第1のインターディジタルトランスデューサの共振周波数を、第2のインターディジタルトランスデューサの反共振周波数に略一致させたことを特徴とする請求項4に記載のSAWフィルタ。
【請求項6】
前記第1のインターディジタルトランスデューサ及び前記第2のインターディジタルトランスデューサを含む前記インターディジタルトランスデューサの最外側に反射器電極を設けたことを特徴とする請求項1記載のSAWフィルタ。
【請求項7】
前記第1のインターディジタルトランスデューサと第2のインターディジタルトランスデューサとの間にストリップライン電極を設け、前記第1のインターディジタルトランスデューサ及び前記第2のインターディジタルトランスデューサを構成する櫛形電極の電極指及び前記ストリップライン電極または前記反射器電極を構成する電極指がほぼ連続的な配置になるように構成したことを特徴とする請求項1または6に記載のSAWフィルタ。
【請求項8】
前記ストリップライン電極の前記電極指のピッチを、前記第1のインターディジタルトランスデューサの前記電極指のピッチと前記第2のインターディジタルトランスデューサの前記電極指のピッチとの間に設定したことを特徴とする請求項7に記載のSAWフィルタ。
【請求項9】
前記第1のインターディジタルトランスデューサと前記第2のインターディジタルトランスデューサの境界領域に配置されている複数の電極指のピッチを、それぞれの中央領域に配置されている電極指のピッチと異ならせたことを特徴とする請求項1に記載のSAWフィルタ。
【請求項10】
前記SAWフィルタを構成する前記インターディジタルトランスデューサのうち、少なくとも一つに重み付けをかけたことを特徴とする請求項9に記載のSAWフィルタ。
【請求項11】
前記SAWフィルタを構成する前記インターディジタルトランスデューサのうち、少なくとも一つにアポダイズ重み付けをかけたことを特徴とする請求項10に記載のSAWフィルタ。
【請求項12】
前記SAWフィルタを構成する前記インターディジタルトランスデューサのうち、少なくとも一つに間引き重み付けをかけたことを特徴とする請求項10に記載のSAWフィルタ,
【請求項13】
前記SAWフィルタを構成する前記インターディジタルトランスデューサは、ダミー電極を含む構成であることを特徴とする請求項1に記載のSAWフィルタ。
【請求項14】
前記第1のインターディジタルトランスデューサに対して前記第2のインターディジタルトランスデューサが近接配置された側とは反対側に信号経路とグランドとの間に接続されている第3のインターディジタルトランスデューサを近接配置したことを特徴とする請求項1に記載のSAWフィルタ。
【請求項15】
前記第3のインターディジタルトランスデューサの共振周波数は、前記第1のインターディジタルトランスデューサの共振周波数とは異なることを特徴とする請求項14に記載のSAWフィルタ。
【請求項16】
前記第2のインターディジタルトランスデューサに対して、前記第1のインターディジタルトランスデューサが近接配置された側とは反対側に信号経路に直列に接続されている第4のインターディジタルトランスデューサを近接配置したことを特徴とする請求項1に記載のSAWフィルタ。
【請求項17】
前記第4のインターディジタルトランスデューサの共振周波数は、前記第2のインターディジタルトランスデューサの共振周波数とは異なることを特徴とする請求項16に記載のSAWフィルタ。
【請求項18】
請求項1から請求項17までに記載のSAWフィルタを一つのSAWエレメントとして、前記エレメントを多段に接続して構成したことを特徴とするSAWフィルタ。

【国際公開番号】WO2005/050837
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515692(P2005−515692)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017527
【国際出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】