弾性表面波素子及びセンサ
【課題】簡易な構成で、高い感度が得られる弾性表面波素子及びこの弾性表面波素子を用いたセンサを提供すること。
【解決手段】応力センサ1において、第1櫛歯電極15と第2櫛歯電極17とは、各櫛歯電極15、17の中心から左右方向に外れるに従って櫛歯の幅及び櫛歯間隔が小さくなるように変化するアップチャープとダウンチャープとを組み合わせた櫛歯構造を有している。
つまり、櫛歯間隔が、入力側から第1櫛歯電極15の中央側にかけて増加するように設定され(アップチャープに設定)、且つ、第1櫛歯電極15の中央側から出力側にかけて櫛歯間隔が減少するように設定されている(ダウンチャープに設定)。
【解決手段】応力センサ1において、第1櫛歯電極15と第2櫛歯電極17とは、各櫛歯電極15、17の中心から左右方向に外れるに従って櫛歯の幅及び櫛歯間隔が小さくなるように変化するアップチャープとダウンチャープとを組み合わせた櫛歯構造を有している。
つまり、櫛歯間隔が、入力側から第1櫛歯電極15の中央側にかけて増加するように設定され(アップチャープに設定)、且つ、第1櫛歯電極15の中央側から出力側にかけて櫛歯間隔が減少するように設定されている(ダウンチャープに設定)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、櫛歯電極を備えた弾性表面波素子と、その弾性表面波素子を備えた応力センサ等のセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弾性表面波(SAW)の特性を利用した弾性表面波素子を用いて、各種のセンサが研究されている。
前記弾性表面波素子とは、例えば圧電材料等からなる伝播材上に櫛歯電極を設けたものであり、この弾性表面波素子は、伝播材に加わる機械的摂動などによって、伝播材を伝播中の弾性表面波の特性が変化する。そのため、この弾性表面波素子の特徴を利用して、応力や変位等を検出するセンサが開発されている。
【0003】
具体的には、圧電材料基板上に入力側と出力側の櫛歯電極を対向して設けた弾性表面波素子を備えたセンサでは、入力側の櫛歯電極に高周波の交流信号を印加することによって弾性表面波を励起し、弾性表面波を出力側の櫛歯電極で受信して、出力側の櫛歯電極では受信した弾性表面波に応じた電圧信号を出力し、この電圧信号によって応力や変位等を検出する。
【0004】
上述した弾性表面波素子を用いたセンサに関する技術としては、例えば周波数によって伝達時間が変化する分散型遅延線の技術が開示されている(特許文献1参照)。また、弾性表面波を用いた変位測定技術として、下記特許文献2〜4の技術が開示されている。
【特許文献1】米国特許第614432号明細書
【特許文献2】特開2004−51176号公報
【特許文献3】特表2005−526240号公報
【特許文献4】特開2005−156557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このうち、上述した引用文献2〜4の技術では、主に共振周波数の変化を検知することによって変位を検知しているが、ノイズに影響されやすく、精度良く変位を測定することは容易ではない。なお、この対策として、ノイズを除去する回路を用いることも考えられるが、装置が高価になってしまい好ましくない。
【0006】
一方、前記引用文献1の技術では、ノイズの影響を受けにくい遅延時間計測を採用しているが、外力による弾性表面波特性の変化は僅かであるので、その検出は容易ではない。また、この対策として、僅かな変化を検出するための特別な回路を用いることも考えられるが、装置が高価になってしまい好ましくない。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、高い感度が得られる弾性表面波素子及びこの弾性表面波素子を用いたセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)請求項1の発明は、弾性表面波を励起する第1櫛歯電極から成る第1変換器と、前記第1櫛歯電極によって励起された弾性表面波を受信し該弾性表面波に応じた信号を出力する第2櫛歯電極から成る第2変換器とを、前記弾性表面波が伝播する伝播面を挟んで配置した弾性表面波素子であって、前記両櫛歯電極の少なくとも一方が、アップチャープの櫛歯構造とダウンチャープの櫛歯構造とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明では、第1櫛歯電極と第2櫛歯電極の少なくとも一方は、アップチャープの櫛歯構造とダウンチャープの櫛歯構造とを有している。
このアップチャープの櫛歯構造とは、例えば図1(b)に例示するように、弾性表面波が送受信される方向(ここでは同図左右方向における例えば右方向)において、櫛歯電極の周期(従って櫛歯間隔(W1等):例えば各櫛歯の中央の位置で測定した場合の間隔)が増加する構造を有するものである。一方、ダウンチャープの櫛歯構造とは、その逆に、同図右方向において、櫛歯間隔が減少する構造を有するものである。
【0010】
基本的に弾性表面波素子が有する周波数特性は、弾性表面波を励起するための櫛歯電極周期で決定される。つまり、櫛歯間隔(W1等)が弾性表面波の波長λの1/2周期と一致する場合に、最も効率良くその周期の弾性表面波が励起される。
【0011】
従って、上述したアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造の場合は、弾性表面波の送受信方向において櫛歯間隔が異なるように設定されているので、最も効率よく励起できる弾性表面波(従ってその周波数:以下励起周波数とも称する)を複数設定することができる。詳しくは、アップチャープの櫛歯構造によって複数の励起周波数を設定できるとともに、ダウンチャープの櫛歯構造によっても複数の励起周波数を設定できる。
【0012】
例えば弾性表面波素子に応力が加わった場合には、その応力により圧電材がひずむことで櫛歯構造が僅かに変形して(詳しくは櫛歯間隔が変化して)、弾性表面波素子の周波数特性が変化する。
【0013】
つまり、弾性表面波素子の周波数特性は、応力など機械的摂動によって変化するので、例えば第1変換器における弾性表面波の励起状態(即ち最適な励起周波数)が変化する。よって、例えば第2変換器における受信信号の出力状態(電圧信号のピークの大きさ等)が変化するので、第2変換器の出力信号により、弾性表面波素子に加わる例えば応力を検出することができる。
【0014】
特に本発明では、アップチャープとダウンチャープの櫛歯構造によって、それぞれ複数の励起周波数(例えば小さな櫛歯間隔に対応した励起周波数と大きな櫛歯間隔に対応した励起周波数)を設定できるので、それらの励起周波数を応力等の検出に適したように適宜設定することができる。即ち、アップチャープとダウンチャープの櫛歯構造によって、応力等の検出に適した出力信号が得られる様に設定することが可能となる。
【0015】
具体的な設定方法としては、後述する様に、応力に応じて出力の電圧信号のピークの遅延時間が変化するように設定したり、応力に応じて出力の電圧信号のピークの出現状態(出現数)が変化するように設定することが可能となる。
【0016】
これによって、高価な検出回路を使用しなくとも、簡易な構成で、高い感度を有する弾性表面波素子を実現できる。
なお、本発明としては、第1櫛歯電極のみに上述したアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有する場合、第2櫛歯電極のみにアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有する場合、第1櫛歯電極及び第2櫛歯電極の両方にアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有する場合が挙げられる。
【0017】
これらの場合において、アップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造が、どちらの櫛歯電極にある場合でも、上記と同様な作用効果を有する。
(2)請求項2の発明は、弾性表面波を励起し且つ受信した弾性表面波に応じた信号を出力する第3櫛歯電極から成る第3変換器と、前記第3櫛歯電極によって励起された弾性表面波を反射する第4櫛歯電極から成る反射器とを、前記弾性表面波が伝播する伝播面を挟んで配置した弾性表面波素子であって、前記両櫛歯電極の少なくとも一方が、アップチャープの櫛歯構造とダウンチャープの櫛歯構造とを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明は、前記請求項1の発明の第2変換器に換えて反射器を用いたものである。
本発明では、第3櫛歯電極と第4櫛歯電極の少なくとも一方は、アップチャープの櫛歯構造とダウンチャープの櫛歯構造とを有しているので、第3変換器から得られる出力信号を用いて、前記請求項1の発明と同様な効果を奏する。
【0019】
つまり、本発明では、例えば第3変換器で発生した弾性表面波を反射器で反射して、同じ第3変換器で電気信号として取り出す構成であるので、その作用効果は、前記請求項1の発明と同様である。
【0020】
なお、本発明としては、第3櫛歯電極のみにアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有する場合、第4櫛歯電極のみにアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有する場合、第3櫛歯電極及び第4櫛歯電極の両方にアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有する場合が挙げられる。また、アップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造が、どちらの櫛歯電極にある場合でも、上記と同様な作用効果を有する。
【0021】
(3)請求項3の発明では、前記反射器の第4櫛歯電極に代えて、櫛歯電極以外の前記弾性表面波を反射する電極を用いたことを特徴とする。
本発明は、反射器に櫛歯電極を用いない場合を例示したものである。反射器に用いる電極としては、弾性表面波を効率よく反射できる例えば弾性表面波の半波長周期で配置された金属パターンで構成されるメタルストリップアレイを採用することができる。
【0022】
なお、この場合は、第3変換器の第3櫛歯電極が、アップチャープとダウンチャープを組み合わせた櫛歯構造を有する。
(4)請求項4の発明は、前記請求項1〜3のいずれかに記載の弾性表面波素子を備えたセンサであって、前記弾性表面波によって生ずる電圧信号のピークの間の時間変化に基づいて、測定対象の状態を検出する(即ちセンサの感度とする)ことを特徴とする。
【0023】
例えば弾性表面波が、第1櫛歯電極から第2櫛歯電極に到る伝達時間は、第1櫛歯電極のどの櫛歯(どの様な櫛歯間隔を有する櫛歯)で強く励起されたかで異なる。これは、最も効率よく励起される櫛歯の位置が異なるからである。
【0024】
よって、弾性表面波素子に応力が加わった場合には、櫛歯電極の櫛歯間隔が変化して素子が有する周波数特性が変化するので、弾性表面波がより効率よく励起される櫛歯位置が変化するため伝達時間が変化する。そのため、例えば応力が加わらない場合の出力信号(電圧信号のピーク)と、応力が加わった場合の出力信号(電圧信号のピーク)とには、伝達時間に時間差(遅延時間)が生ずる。従って、この遅延時間の変化から応力等を求めることができる。
【0025】
特に本発明では、アップチャープとダウンチャープを組み合わせた櫛歯構造を有するので、その櫛歯構造に対応して、それぞれ複数の励起周波数を設定できる。よって、各励起周波数に対応した弾性表面波によって発生する出力信号の電圧ピークの伝達時間も異なる。
【0026】
従って、大きな周波数の弾性表面波によって一対の電圧ピークが現れ、且つ、小さな周波数の弾性表面波によって一対の電圧ピークが現れるように、アップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を設定しておけば(即ち櫛歯間隔を設定しておけば)、応力変化に伴い一対の電圧ピーク間の伝達時間も変化するので、そのピーク電圧間の時間を計測することにより、応力等を検出することができる。
【0027】
なお、反射器を備えた場合も、第3変換器と反射器との間の伝達時間が同様に変化するので、同様にピーク間の時間をセンサ感度とすることができる。
(5)請求項5の発明は、前記請求項1〜3のいずれかに記載の弾性表面波素子を備えたセンサであって、前記弾性表面波によって生ずる電圧信号のピークの数に基づいて、測定対象の状態を検出する(即ちセンサの感度とする)ことを特徴とする。
【0028】
本発明では、アップチャープとダウンチャープを組み合わせた櫛歯構造を有するので、各櫛歯構造に対応した複数の励起周波数を設定できる。例えば、弾性表面波素子に応力が加わった場合には、櫛歯電極の電極間隔が変化して励起周波数が変化するので、励起周波数に対応した弾性表面波による出力信号(電圧信号のピーク位置)も変化する。
【0029】
つまり、応力に応じて電圧信号のピーク出現状況が変化するので、電圧のピークの出現状態(ここではピークの数)によって、応力等を求めることができる。
なお、反射器を備えた場合も同様に、電圧信号のピークの数が変化するので、ピークの数をセンサ感度とすることができる。
【0030】
(6)請求項6の発明では、前記センサは、前記弾性表面波素子に加わる応力を検出する応力センサであることを特徴とする。
本発明は、上述したセンサの用途を例示したものである。なお、応力以外に、例えば第1変換器と第2変換器の距離又は第3変換器と反射器との距離の変化を検出する変位センサとして用いることができる。更に、温度、湿度、ひずみ等の検出に用いることができる。
【0031】
(7)請求項7の発明では、前記応力センサは、タイヤに生ずる応力の変化からタイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧センサであることを特徴とする。
本発明は、応力センサの用途を例示したものである。
【0032】
(8)請求項8の発明では、前記弾性表面波の受信側の櫛歯電極によって出力される信号を、無線通信によりコントローラに送信する機能を有することを特徴とする。
本発明では、センサによって検出したデータを無線通信により送信できるので、センサの設置場所の制限が少ないという利点がある。
【0033】
例えば外部へ出力するためのアンテナを備えるようにすると、弾性表面波素子に対する高周波信号の入出力を非接触で行うことができるので、高周波信号の入力にケーブルや接触子が必要なくなる。したがって、回転体など動きのある部分への設置が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明が適用される実施形態について図面を用いて説明する。
[第1実施形態]
本実施形態では、例えばタイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧センサとして用いられる応力センサを例に挙げて説明する。
【0035】
a)まず、応力センサの構成について説明する。
図1は、応力センサ1の概略の構成を示す説明図であり、図2は、その信号の状態等を示す説明図である。
【0036】
図1(a)に示すように、応力センサ1は、弾性表面波素子3とアンテナ5、7とを備えており、弾性表面波素子3は、弾性表面波と電気信号との間の機械・電気的変換を行う第1変換器9と第2変換器11とを備えている。
【0037】
このうち、弾性表面波素子3は、圧電材料基板13の同一表面上に、一対の櫛歯電極(入力側の第1櫛歯電極15、出力側の第2櫛歯電極17)を、点対称となるように対向して配置したものであり、この第1櫛歯電極15にて第1変換器9が構成され、第2櫛歯電極17にて第2変換器17が構成されている。
【0038】
以下、各構成について説明する。
アンテナ5は、計測装置19から供給される高周波信号を受信するためのアンテナであり、タブレットアンテナやパッチアンテナなどを用いることができ、計測装置19までの距離や取付け部分の形状、あるいは用いる高周波信号の周波数によって最適な形態や特性を有するアンテナを用いることができる。
【0039】
アンテナ7は、第2変換器11から出力される高周波信号を外部の計測装置19へ出力するためのものであり、アンテナ5と同じ構造を有している。
圧電材料基板13は、例えばLiNbO3などの圧電材料からなり、その表面にDCスパッタ等により、例えばアルミからなる第1変換器9及び第2変換器11が形成されている。
【0040】
第1変換器9は、外部の計測装置19から供給される高周波信号を弾性表面波に変換するものであり、逆圧電効果により電気信号を弾性表面波に変換する。この第1櫛歯電極15は、対称な形状を有する一対の片側櫛歯電極の櫛歯部分が互いに嵌り込むように対向して配置されたものであり、アンテナ5で受信した電気信号を弾性表面波に変換し、櫛歯に対して垂直方向へ弾性表面波を励起する。
【0041】
第2変換器11は、弾性表面波を電気信号に変換するものであり、その構造は第1変換器9と同じで、第1変換器9とは点対称の形状を有している。この第2変換器11は、圧電材料基板13を伝播してきた弾性表面波を第2櫛歯電極17で電気信号に変換し、アンテナ7を介して計測装置19へ出力する。
【0042】
前記第1変換器9と第2変換器11とは、伝播面を挟んで、弾性表面波の伝播方向(同図左右方向)に沿って伸びるように圧電材料基板13の同一表面に配置されている。
特に本実施形態では、第1櫛歯電極15と第2櫛歯電極17とは、各櫛歯電極15、17の中心から同図左右方向に外れるに従って、それぞれ櫛歯電極の周期(即ち櫛歯間隔)が小さくなるように変化するアップチャープとダウンチャープとを組み合わせた櫛歯構造を有している。
【0043】
例えば図1(b)に第1櫛歯電極15を模式的に示すように、その櫛歯間隔は、同図左側(入力側)から第1櫛歯電極15の中央部分にかけて増加するように設定され(アップチャープに設定)、且つ、第1櫛歯電極15の中央部分から同図右側にかけて減少するように設定されている(ダウンチャープに設定)。
【0044】
詳しくは、第1櫛歯電極15は、3種類の幅及び櫛歯間隔を有する櫛歯からなり、同図左側の4本の最も細い櫛歯の櫛歯間隔W1は、同図右側の4本の最も細い櫛歯の櫛歯間隔W5と同じに設定されている。また、前記最も細い左右の櫛歯より内側には、最も細い櫛歯よりも大きな幅の各4本の櫛歯(中間の太さの櫛歯)が配置されており、その中間の太さの櫛歯の櫛歯間隔W2、W4は同じであり、前記最も細い櫛歯の櫛歯間隔W1、W5より大きく設定されている。更に、左右の中間の太さの櫛歯の間には、最も幅の広い4本の櫛歯が配置されており、その櫛歯間隔W3は、他の櫛歯の櫛歯間隔W1、W2、W4、W5よりも大きく設定されている。
【0045】
ここでは、例えば櫛歯間隔を、9.276μm、9.476μm、9.676μmとした大中小3パターンの櫛歯を、128YX−LiNbO3の圧電材料基板9に作成することにより、帯域幅2.264MHzの、基本波:中心周波数105MHz、チャープ率1.19、3次高調波:中心周波数315MHz、チャープ率3.56、・・となる2つの山(最大ピーク)を有する信号が得られる応力センサ1を構成できる。
【0046】
なお、チャープ率とは、周波数特性における遅延時間の傾きのことである。
この様に、本実施形態では、上述した櫛歯構造によって、後に詳述する様に、変化方向が2方向の2つの山(最大電圧ピーク)を持つ波形が励起されるので(図5(c)参照)、この最大ピーク間の時間差と弾性表面波素子3に加わる外力との関係により、測定対象の値(応力)を算出することができる。
【0047】
b)次に、応力センサ1における測定の原理を、参考例とともに説明する。
図2は非分散型電極の参考例1を示し、図3はアップチャープ又はダウンチャープの分散型電極の参考例2を示し、図4は本実施形態のアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有する例を示している。
【0048】
図2(a)の参考例1に示す様に、入力側の櫛歯電極(入力IDT:interdigital transducer)及び出力側の櫛歯電極(出力IDT)における櫛歯間隔が同じセンサの場合(即ち櫛歯間隔が同じ非分散型電極の場合)には、弾性表面波素子は、図2(b)に示す周波数特性となる。
【0049】
即ち、弾性表面波は、櫛歯間隔が弾性表面波の波長λの1/2のときに最も強く励起され、その周波数を中心とした山形のバンドパスフィルタ特性となる。なお、図2(b)では、実線にて周波数に対応した挿入損失を示し、破線にて周波数に応じた遅延時間を示している。
【0050】
従って、図2(c)に示す様に、入力側の櫛歯電極から単一の周波数の高周波信号を入力した場合、弾性表面波素子に応力が加わっていないときには、出力側の櫛歯電極では、その櫛歯間隔に対応した最大ピークを有する出力Aが得られる。
【0051】
一方、応力が加わった場合には、櫛歯間隔が変化し、各櫛歯が持つ周波数特性が変化するので(図2(b)の左右方向にずれる)、同図の出力Bの様に、所定の遅延時間差分ずれた信号、即ち変化した周波数特性に対応した信号が得られる。
【0052】
この遅延時間差は加わった応力に対応しているので、遅延時間差から応力を求めることができるが僅かな遅延時間差しか得られない。
また、図3(a)の参考例2に示す様に、入力側及び出力側の櫛歯電極の櫛歯間隔を、弾性表面波素子の中央に向かって単純に増加させたセンサの場合、即ち入力側が分散型のアップチャープの電極で、出力側が分散型のダウンチャープの電極の場合には、弾性表面波素子は図3(b)に示す広帯域幅の周波数特性となる。
【0053】
つまり、櫛歯電極の櫛歯間隔を例えばアップチャープに設定することにより、多数の励起周波数を伝播距離の異なった櫛歯電極群ができるため、周波数によって異なる遅延時間が得られる。即ち、電極形状に依存する傾斜を持った遅延線を構成できる。
【0054】
従って、図3(c)に示す様に、入力側の櫛歯電極から単一の周波数の高周波信号を入力した場合、弾性表面波素子に応力が加わっていないときには、出力側の櫛歯電極から出力Aが得られる。この出力Aは、アップチャープの櫛歯間隔に対応して、ピークが分散した複雑な波形を有するとともに、入力信号の周波数に応じて最も効率よく弾性表面波を励振できる櫛歯間隔に対応して(即ち最も効率よく励振された弾性表面波に対応して)、1つの最大ピークを有している。
【0055】
一方、応力が加わった場合には、図4に示す様に、櫛歯電極の櫛歯間隔が変化し、周波数特性が変化するので、最も効率よく弾性表面波を励振できる周波数(f0、f1、f2)も変化し、それにともない、最大ピークも変化する。
【0056】
よって、前記図3(c)の出力Bの様に、所定の遅延時間差分ずれた信号、即ち変化した周波数特性に対応した遅延時間差分ずれた信号が得られる。ここでは、出力Aと出力Bの最大のピーク間を遅延時間差としている。
【0057】
この遅延時間差は、加わった応力に対応しているので、遅延時間差から応力を求めることができるが、かならずしも十分な遅延時間差は得られない。
これに対して、本実施形態では、図5(a)に示す様に、上述したアップチャートとダウンチャープの櫛歯電極を備えているので、図5(b)に示す様に、広帯域幅で傾斜の大きな遅延線を有する周波数特性が得られる。
【0058】
本実施形態では、図5(c)に示す様に、入力側の第1櫛歯電極15から単一の周波数の高周波信号を入力した場合、第1櫛歯電極15のアップチャープの櫛歯構造より、最も効率良く励起された弾性表面波に対応してその出力に最大ピークが現れ、同様に、第1櫛歯電極15のダウンチャープの櫛歯構造により、最も効率良く励起された弾性表面波に対応してその出力に最大ピークが現れる。
【0059】
つまり、図6(a)に示す様に、異なる櫛歯間隔を有する第1櫛歯電極15において、入力周波数(f)と周波数特性が一致した場合(ここでは、例えば櫛歯間隔W2、W4に対応する周波数f0に一致した場合)に弾性表面波が励起され、その励起された弾性表面波によって出力に最大ピークが現れる。
【0060】
従って、前記図5(c)に示す様に、弾性表面波素子3に応力が加わっていないときには、第1櫛歯電極15のアップチャープとダウンチャープの櫛歯構造より、2つの山(最大ピーク)を持つ出力Aが得られる。なお、この場合の最大ピーク間の時間を基本時間とする。
【0061】
この出力Aにおける左側の最大ピークは、第1櫛歯電極15のアップチャープの櫛歯構造のうちの中間の櫛歯間隔W2(周波数f0)に対応し、出力Aにおける右側の最大ピークは、第1櫛歯電極15のダウンチャープの櫛歯構造のうちの同様な中間の櫛歯間隔W4(周波数f0)に対応している。なお、ここでは、中央の最大の櫛歯間隔W3に対応する弾性表面波が最も強く励起されないように設定されている。
【0062】
このように、出力Aの最大ピークの位置がずれるのは(即ち遅延時間がずれるのは)、第1櫛歯電極15において、最も効率よく弾性表面波を励起できる周波数に対応する櫛歯間隔が設定されている位置が、アップチャープの櫛歯構造とダウンチャープの櫛歯構造のようにずれているからである。
【0063】
一方、応力が加わった場合(ここでは図1の紙面の裏側に凸となるような応力が加わった場合)には、櫛歯電極の櫛歯間隔が変化するので、図6(b)に示す様に、弾性表面波を効率良く励起する周波数も変化する。よって、図5(c)に示す様に、その周波数に応じて励起された弾性表面波に対応した出力信号の最大ピークも変化し、出力Bが得られる。なお、この最大ピーク間の時間を測定時間とする。
【0064】
この出力Bにおける左側の最大ピークは、第1櫛歯電極15のアップチャープの櫛歯構造のうちの最少の櫛歯によって励起される弾性表面波に対応し、右側の最大ピークは、ダウンチャープの櫛歯構造のうちの同様な最小の櫛歯によって励起される弾性表面波に対応している。なお、図6(c)に示す様に、応力が加わった場合には、最小の櫛歯の励起周波数は、応力が加わっていないときの励起周波数(f2)から応力が加わっていないときの中間の櫛歯の励起周波数(f0)に変化している。
【0065】
従って、測定時間から基本時間を引いた値を遅延時間差とすることにより、この遅延時間差は応力に対応したものであるので、遅延時間差から応力を求めることができる。
つまり、本実施形態では、応力センサ1に応力が加わった場合に、基本時間よりも測定時間が増加するようにアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯電極の構造が設定されているので、簡単な回路構成で、従来より精度良く応力を検出することができる。
【0066】
c)次に、圧力センサ1を駆動する計測装置19について説明する。
・前記図1に示す様に、計測装置19は、アンテナ21、高周波信号発生部23、スイッチ25、電圧計27及び信号処理部29(図7参照)を備えている。
【0067】
アンテナ21は、高周波信号発生部23で発生した高周波信号を、外部の圧力センサ1に出力するとともに、圧力センサ1から出力される高周波信号を入力するためのアンテナである。
【0068】
アンテナ21は、アンテナ5と同じように、タブレットアンテナやパッチアンテナなどを用いることができ、第1変換器9及び第2変換器11までの距離や取付け部分の形状、あるいは用いる高周波信号の周波数によって最適な形態や特性を有するアンテナを用いることができる。
【0069】
高周波信号発生部23は、応力センサ1の第1櫛歯電極15において弾性表面波を発生させるための高周波信号を発生させるための発振器である。発振周波数は、例えば315MHz、434MHz、2.45GHz帯などである。
【0070】
スイッチ25は、高周波信号発生部23で発生される高周波信号をアンテナ21へ供給したり供給させなかったりするためのスイッチであり、オンで高周波信号をアンテナ21へ供給し、オフで供給しないようにする。
【0071】
電圧計27は、高周波信号発生部23から出力される高周波信号及びアンテナ21から入力される高周波信号の電圧を計測するものである。
信号処理部29は、後述する様に、高周波信号発生部23から高周波信号を発生させたり、電圧計27で計測した高周波信号の電圧に基づいて応力センサ1において計測される応力の算出を行うものである。
【0072】
・ここで、応力センサ1及び計測装置19を用いて応力を測定する方法について、前記図5に基づき説明する。
まず、計測装置19からアンテナ21を介して高周波信号が応力センサ1に対して出力される。応力センサ1では、アンテナ21から出力された高周波信号をアンテナ5で受信する。
【0073】
アンテナ5で受信された高周波信号は、第1変換器9の第1櫛歯電極15に供給され、第1櫛歯電極15では、供給された高周波信号により弾性表面波が励起される。励起された弾性表面波は、圧電材料基板13の表面(伝播面)を介して第2変換器11に伝播する。
【0074】
第2変換器11では、圧電材料基板13を伝播してくる弾性表面波を取得し、第2櫛歯電極17で高周波信号に変換し、アンテナ7から外部へ出力する。アンテナ7から出力された高周波信号は、計測装置19のアンテナ21で受信される。そして、アンテナ21で受信された高周波信号は、電圧計27によって電圧が計測される。
【0075】
従って、計測装置19においては、計測された電圧の二つの最大ピーク間の測定時間を所定の閾値によって検出し、この測定時間から予め記憶されている基本時間を引いて遅延時間差を求める。
【0076】
この遅延時間差は、応力に対応したものであるので、予め実験等によって求められたマップ等を用いて、遅延時間差から応力を求めることができる。
d)次に、信号処理部29の詳しい構成及びその動作について説明する、
図7に示す様に、信号処理部29は、アナログ回路部31とディジタル回路部33とを備えている。アナログ回路部31は、印加電圧生成部35と時間計測パルス生成部37とから構成される。
【0077】
印加電圧生成部35は、オフセット回路39、第1増幅回路41、フィルタ回路43及びアナログスイッチ45から構成される。
オフセット回路39は、図8(イ)に示すように、カウンタ47(図7参照)から出力されるGNDレベルを基準とする0[V]〜+5[V]のパルス波形(図8(ア)に示す。)にマイナスのオフセット電圧を印加し、±2.5[V]のパルス波形に変換する。
【0078】
第1増幅回路41は、図8(ウ)に示すように、オフセット回路39において得られた±2.5[V]のパルス波形を増幅し±5[V]のパルス波形に変換する。
フィルタ回路43は、ローパスフィルタであり、図8(エ)に示すように、第1増幅回路41で得られた±5[V]のパルス波形の高周波成分を除去し、振幅5[V]の正弦波を生成する。
【0079】
アナログスイッチ45は、図8(オ)に示すように、カウンタ47にゲートパルスが入力されると、図8(カ)に示すように、フィルタ回路43で生成した正弦波を外部へ出力する。
【0080】
次に、時間計測パルス生成部37は、図5に示すように、クリップ回路49、オフセット回路51、半波整流回路53、第2増幅回路55、平滑回路57及び比較回路59から構成される。
【0081】
クリップ回路9は、図9(ア)に示すような電圧計27から入力される検出電圧波形を、図9(イ)に示すように、出力の最大値が回路を構成する図示しないオペアンプの最大出力値である±10[V]となるよう検出電圧波形のピーク値をクリップする。
【0082】
オフセット回路51は、図9(ウ)に示すように、クリップ回路49から出力される電圧波形に重畳しているノイズの最大値の電圧をマイナスするようにオフセット電圧を印加する。
【0083】
半波整流回路53は、図9(エ)に示すように、オフセット回路51の出力電圧を半波整流し、出力電圧のプラス側成分のみを取り出して出力する。
第2増幅回路55は、図9(オ)に示すように、半波整流回路53の出力を図示しないオペアンプの飽和出力値まで増幅する。
【0084】
平滑回路57は、ローパスフィルタであり、図9(カ)に示すように、第2増幅回路55の出力(パルス波形)の高周波成分を除去し、複数のパルス群からなる波形を立ち上がり及び立ち下がりが鋭くない1つのパルス波形に変換する。
【0085】
比較回路59は、図9(キ)に示すように、平滑回路57の出力パルスと予め定められている比較電圧とを比較し、出力パルスの立ち上がり電圧が比較電圧を超えたときに一定電圧を出力し、出力パルスの立ち下がり電圧が比較電圧より小さくなったときに、出力を停止する。
【0086】
このようにすると、平滑回路57から出力される立ち上がり及び立ち下がりが鋭くないパルス波形が、立ち上がり及び立ち下がりが鋭いパルス波形に整形される。このようにして、波形が整形されたパルスが時間計測パルスとして外部に出力される。
【0087】
従って、この様にして得られた時間計測パルスのうち、遅延波(出力波形)に対応した時間計測パルス間の時間をカウンタで計数することにより、このカウンタ値から出力波形の最大ピーク間の時間(遅延時間差)を求めることができる。
【0088】
e)この様に、本実施形態では、少なくとも第1櫛歯電極15がアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有している。
よって、応力センサ1に応力が加わった場合には、主として第1変換器15における周波数特性が変化するので、即ち弾性表面波を効率良く励起できる周波数が変化するので、前記図4(c)に示す様に、出力波形の最大ピークが変化し、基本時間に対して測定時間が大きく変化する。この測定時間から基本時間を引いた遅延時間差は、加わった応力に対応しているので、遅延時間差から応力を求めることができる。
【0089】
しかも、この遅延時間差は、従来と比べて大きなものであるので、簡易な回路により、精度良く応力を測定できるという顕著な効果を奏する。
また、例えば電極対数と櫛歯電極長によって、出力波形におけるピーク電圧レベルを十分に大きくすることにより、第1櫛歯電極15の櫛歯間隔による変化量(遅延時間差)の任意設定が可能となるので、この点からも、安価な検出回路で十分であるという利点がある。
【0090】
なお、本実施形態の変形例として、前記第1変換器を(入力及び出力を行う)第3変換器とし、第2変換器を反射器としてもよい。
つまり、図10(a)に示す様に、変形例の応力センサ71では、アップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造の第3櫛歯電極73を有する第3変換器75にて弾性表面波を励起し、その弾性表面波を、第3櫛歯電極73と同様な構造の第4櫛歯電極77を有する反射器79にて反射する。そして、その反射した弾性表面波を第3変換器73にて受信して出力信号に変換し、その出力信号を弾性表面波素子81側より計測装置83に送信する。
【0091】
更に、その変形例として、図10(b)に示す様に、反射器91の第4櫛歯電極93を非分散型の電極としてもよく、弾性表面波を反射する周知の各種の電極を採用できる。
なお、本実施形態の応力センサは、タイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧センサとして用いられるが、このタイヤ空気圧センサは、例えばタイヤの空気封入口(ムシ)に取り付けられる。従って、タイヤ空気圧が増加した場合には、応力センサがタイヤ内圧力と基準圧力(大気圧)との差圧によりブリッジのようにたわむので、その応力によって、タイヤ空気圧を検出することができる。
【0092】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0093】
a)まず、本実施形態の応力センサの構成について説明する。
図11(a)に示す様に、本実施形態の応力センサ101では、その弾性表面波素子103は、第1櫛歯電極105から成る第1変換器107と、第2櫛歯電極109から成る第2変換器111とを備えている。
【0094】
第1櫛歯電極105及び第2櫛歯電極109には、3種の櫛歯間隔を形成するように、それぞれ4本の櫛歯が設けられている。例えば櫛歯間隔を、0.1〜数μmで変化させた3種の櫛歯が設けられている。
【0095】
具体的には、図11(b)に模式的に櫛歯間隔の大きさの順番に数字を付して示す様に、各櫛歯電極105、109の中央に櫛歯間隔が最小となるように4本の櫛歯(サイズ:S1)が設けられ、その左右に最大の櫛歯間隔となるように各4本の櫛歯(S3)が設けられ、その左右に中間の櫛歯間隔となるように各4本の櫛歯(S2)が設けられ、その左右に最大の櫛歯間隔となるように各4本の櫛歯(S3)が設けられている。
【0096】
詳しくは、櫛歯間隔が、9.276μm、9.476μm、9.673μmの大中小3パターンの櫛歯(S1〜S3)を、128YX−LiNbO3の圧電材料基板113に作成することにより、帯域幅4.434MHzの、基本波:中心周波数105MHz、チャープ率1.55、3次高調波:中心周波数315MHz、チャープ率4.65、・・となるピーク数が1、2、4と変化する信号が得られる応力センサ101を構成することができる。
【0097】
b)次に、応力センサ101の動作について説明する。
ここでは、例えば図11(a)の紙面の裏側に凸となるような応力が加わった場合について述べる。
【0098】
図11(c)に示す様に、応力センサ101に応力がかかっていない場合には、出力Aの出力信号波形が得られる。この出力Aの中央の最大ピークは、応力センサ101の中央の櫛歯(S1)に対応している。つまり、応力が加わらない場合には、入力信号の周波数に応じた周波数、即ち、応力が加わらないときに弾性表面波を効率良く励起できる周波数に対応した最小櫛歯間隔の櫛歯(S1)により、1個の最大ピークが得られる。
【0099】
次に、応力が増加すると、その増加した応力に応じて周波数特性が変化するので、弾性表面波を効率良く励起する周波数も変化する。よって、その弾性表面波を効率良く励起できる周波数に対応した次の大きさの櫛歯間隔の櫛歯(S2)により、2個の最大ピークが得られる。
【0100】
次に、更に応力が増加すると、その増加した応力に応じて周波数特性が変化するので、同様に、弾性表面波を効率良く励起する周波数も変化する。よって、その弾性表面波を効率良く励起する周波数に対応した最大の櫛歯間隔の櫛歯(S3)により、4個の最大ピークが得られる。
【0101】
つまり、応力センサ101に応力が加わると、第1櫛歯電極105の櫛歯間隔が変化するので、効率良く励起される周波数が変化し、それによって出力波形における最大ピークの数も変化する。従って、電圧のオフセット値を決めておき、信号のピーク数を検出することにより、圧力を求めることができる。
【0102】
なお、ここで、最大ピークとは、出力信号を所定の閾値により区分して検出できる各櫛歯間隔に対応する信号である。
また、最大ピークの数をカウントする手法としては、前記第1実施形態の図9に示す波形(キ)のパルスを用いることができる。即ち、印加波ではない遅延波(出力波)の波形計数パルスは最大ピーク数に対応しているので、この波形計数パルス数をカウントすることにより、最大ピーク数をカウントすればよい。
【0103】
この様に、本実施形態では、応力によって出力波形の最大ピーク数が変化するので、最大ピーク数をカウントすることにより応力を検出することができる。
また、検出波形間隔を十分に大きくとることにより、或いはピーク電圧レベルを十分に大きくすることにより、波数をカウントするための検出回路を安価に作成することができる。よって、簡単な回路で精度良く応力を検出できるという顕著な効果を奏する。
【0104】
この最大ピーク数をカウントする応力センサ101の測定範囲は、弾性表面波素子103の設計時に任意に作成可能であり、応力センサ101以外にも多くの用途に用いることができる。
【0105】
なお、本実施形態の変形例として、前記第1変換器を(入力及び出力を行う)第3変換器とし、第2変換器を反射器としてもよい。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明するが、前記第2実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0106】
a)まず、本実施形態の応力センサの構成について説明する。
図12(a)に示す様に、本実施形態の応力センサ121では、その弾性表面波素子123に、第1櫛歯電極125から成る第1変換器127と、第2櫛歯電極129から成る第2変換器131を備えている。
【0107】
特に本実施形態では、第1櫛歯電極125は、櫛歯間隔が一定の櫛歯を有する非分散型電極である。また、第2櫛歯電極129は、同図左側には、第2櫛歯電極129の中央にゆくほど櫛歯間隔が減少するダウンチャープの櫛歯構造を有するとともに、同図右側には、第2櫛歯電極129の中央から右側にゆくほど櫛歯間隔が増加するアップチャープの櫛歯構造を有している。
【0108】
b)次に、応力センサ121の動作について説明する。
ここでは、例えば図12(a)の下方から上方に応力が加わった場合について述べる。
図12(b)に模式的に示す様に、本実施形態では、応力センサ121に加わる応力が大きくなるほど、出力信号波形は、出力A→出力B→出力Cのように変化する。
【0109】
具体的には、応力が加わっていない場合には、入力信号に対応して、中央の小さな櫛歯間隔によって効率良く弾性表面波が励起されるので、その弾性表面波に対応して(即ち小さな櫛歯間隔に対応して)、出力Aにおいてオフセット電圧により1つの最大ピークが検出される。
【0110】
その後、応力が増加すると、周波数特性が変化し、外側の大きな櫛歯間隔によって効率良く弾性表面波が励起されるので、その弾性表面波に対応して(即ち大きな櫛歯間隔に対応して)、出力Cにおいてオフセット電圧により2つの最大ピークが検出される。なお、出力Bは、出力Aから出力Cに移行する途中の波形であり、最大ピーク間隔は、出力Cよりも小さくなる。
【0111】
つまり、本実施形態の様に、応力が増加するにつれて、出力信号の最大ピーク数が増加するとともに最大ピーク間隔が大きくなっていくのは、第2櫛歯電極129に、アップチャープとダウンチャープの櫛歯構造が形成されており、これによって、最も効率良く弾性表面波が励起される櫛歯が、応力に従って順次変化するからである。
【0112】
なお、入力波数により出力波形が異なるが、同図に示すように連続した波形応答を得るためには、最低でも70〜80サイクル分の波を入力する必要がある。
本実施形態においても、前記第2実施形態と同様な効果を奏する。
【0113】
なお、本実施形態の変形例として、前記第1変換器を(入力及び出力を行う)第3変換器とし、第2変換器を反射器としてもよい。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明するが、前記第2実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0114】
a)まず、本実施形態の応力センサの構成について説明する。
図13(a)に示す様に、本実施形態の応力センサ141では、その弾性表面波素子143には、第1櫛歯電極145から成る第1変換器147と、第2櫛歯電極149から成る第2変換器151を備えている。
【0115】
特に本実施形態では、第1櫛歯電極145は、櫛歯間隔が一定の櫛歯を有する非分散型電極である。また、第2櫛歯電極149は、前記図11(a)、(b)に示す第2実施形態の櫛歯電極と同様に、中央に最小の櫛歯間隔の櫛歯(S1)を配置し、その櫛歯(S1)の両側に最大の櫛歯間隔の櫛歯(S3)を配置し、その櫛歯(S3)の両側に中間の櫛歯間隔(S2)の櫛歯を配置し、その櫛歯(S2)の両側に最大の櫛歯間隔の櫛歯(S3)を配置したものである。
【0116】
即ち、複数のアップチャープとダウンチャープの櫛歯構造を備えたものである。
b)次に、応力センサ141の動作について説明する。
ここでは、例えば図13(a)の下方から上方に応力が加わった場合について述べる。
【0117】
図13(b)に模式的に示す様に、本実施形態では、応力センサ141に加わる応力が大きくなるほど、出力信号波形は、出力A→出力B→出力C→出力D→出力E→出力Fのように変化する。
【0118】
つまり、上述した第2実施例と同様に、応力が大きくなるほど、出力波形のピーク数が1、2、4と変化するとともに、ピーク間隔も応力が大きくなるほど大きくなる。
本実施形態の様に、応力が増加するにつれて、出力信号の最大ピーク数が増加するとともに最大ピーク間隔が大きくなっていくのは、第2櫛歯電極149に、複数のアップチャープとダウンチャープの櫛歯構造が構成されており、それによって、最も効率良く弾性表面波が励起される櫛歯が、応力に従って順次変化するからである。
【0119】
従って、本実施形態においても、前記第2実施形態と同様な効果を奏する。
なお、本実施形態の変形例として、前記第1変換器を(入力及び出力を行う)第3変換器とし、第2変換器を反射器としてもよい。
【0120】
なお、本発明は、前記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
(1)例えば応力センサと計測装置との間で、無線通信により送受信するのではなく、有線で接続してもよい。
【0121】
(2)また、タイヤ応力センサのような応力センサに限らず、変位センサ、温度センサなど、各種の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】(a)は第1実施形態の応力センサの概略構成を示す説明図、(b)は応力センサの一部を拡大して示す説明図である。
【図2】(a)は参考例1のセンサの平面及び側面の概略構成を示す説明図、(b)はその周波数特性を示すグラフ、(c)はその出力波形等を示すグラフである。
【図3】(a)は参考例2のセンサの平面及び側面の概略構成を示す説明図、(b)はその周波数特性を示すグラフ、(c)はその出力波形等を示すグラフである。
【図4】櫛歯間隔と励起周波数との関係を示すグラフである。
【図5】(a)は第1実施形態の応力センサの平面及び側面の概略構成を示す説明図、(b)はその周波数特性を示すグラフ、(c)はその出力波形等を示すグラフである。
【図6】(a)は入力周波数と励起周波数との関係を示す説明図、(b)は応力が加わった場合の励起周波数の変化を示すグラフ、(c)は応力が加わった場合の励起周波数の変化を櫛歯とともに示すグラフである。
【図7】信号処理部の概略の構成を示すブロック図である。
【図8】印加周波数パルスから印加電圧波形を得る様子を示す説明図である。
【図9】電圧計で検出した検出電圧から時間計測パルスを得る様子を示す説明図である。
【図10】(a)は変形例の応力センサの平面の概略構成を示す説明図、(b)は更にその変形例の平面の概略構成を示す説明図である。
【図11】(a)は第2実施形態の応力センサの平面の概略構成を示す説明図、(b)はその櫛歯間隔の大きさを模式的に示す説明図、(c)はその出力波形等を示すグラフである。
【図12】(a)は第3実施形態の応力センサの側面の概略構成を示す説明図、(b)はその出力波形等を示すグラフである。
【図13】(a)は第4実施形態の応力センサの側面の概略構成を示す説明図、(b)はその出力波形等を示すグラフである。
【符号の説明】
【0123】
1、71、101、121、141…応力センサ
3、81、103、123、143…弾性表面波素子
9、107、127、147…第1変換器
11、111、131、151…第2変換器
13、113…圧電材料基板
15、107、125、141…第1櫛歯電極
17、109、129、149…第2櫛歯電極
19、83…計測装置
73…第3櫛歯電極
75…第3変換器
77、93…第4櫛歯電極
79、91…反射器
【技術分野】
【0001】
本発明は、櫛歯電極を備えた弾性表面波素子と、その弾性表面波素子を備えた応力センサ等のセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弾性表面波(SAW)の特性を利用した弾性表面波素子を用いて、各種のセンサが研究されている。
前記弾性表面波素子とは、例えば圧電材料等からなる伝播材上に櫛歯電極を設けたものであり、この弾性表面波素子は、伝播材に加わる機械的摂動などによって、伝播材を伝播中の弾性表面波の特性が変化する。そのため、この弾性表面波素子の特徴を利用して、応力や変位等を検出するセンサが開発されている。
【0003】
具体的には、圧電材料基板上に入力側と出力側の櫛歯電極を対向して設けた弾性表面波素子を備えたセンサでは、入力側の櫛歯電極に高周波の交流信号を印加することによって弾性表面波を励起し、弾性表面波を出力側の櫛歯電極で受信して、出力側の櫛歯電極では受信した弾性表面波に応じた電圧信号を出力し、この電圧信号によって応力や変位等を検出する。
【0004】
上述した弾性表面波素子を用いたセンサに関する技術としては、例えば周波数によって伝達時間が変化する分散型遅延線の技術が開示されている(特許文献1参照)。また、弾性表面波を用いた変位測定技術として、下記特許文献2〜4の技術が開示されている。
【特許文献1】米国特許第614432号明細書
【特許文献2】特開2004−51176号公報
【特許文献3】特表2005−526240号公報
【特許文献4】特開2005−156557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このうち、上述した引用文献2〜4の技術では、主に共振周波数の変化を検知することによって変位を検知しているが、ノイズに影響されやすく、精度良く変位を測定することは容易ではない。なお、この対策として、ノイズを除去する回路を用いることも考えられるが、装置が高価になってしまい好ましくない。
【0006】
一方、前記引用文献1の技術では、ノイズの影響を受けにくい遅延時間計測を採用しているが、外力による弾性表面波特性の変化は僅かであるので、その検出は容易ではない。また、この対策として、僅かな変化を検出するための特別な回路を用いることも考えられるが、装置が高価になってしまい好ましくない。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、高い感度が得られる弾性表面波素子及びこの弾性表面波素子を用いたセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)請求項1の発明は、弾性表面波を励起する第1櫛歯電極から成る第1変換器と、前記第1櫛歯電極によって励起された弾性表面波を受信し該弾性表面波に応じた信号を出力する第2櫛歯電極から成る第2変換器とを、前記弾性表面波が伝播する伝播面を挟んで配置した弾性表面波素子であって、前記両櫛歯電極の少なくとも一方が、アップチャープの櫛歯構造とダウンチャープの櫛歯構造とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明では、第1櫛歯電極と第2櫛歯電極の少なくとも一方は、アップチャープの櫛歯構造とダウンチャープの櫛歯構造とを有している。
このアップチャープの櫛歯構造とは、例えば図1(b)に例示するように、弾性表面波が送受信される方向(ここでは同図左右方向における例えば右方向)において、櫛歯電極の周期(従って櫛歯間隔(W1等):例えば各櫛歯の中央の位置で測定した場合の間隔)が増加する構造を有するものである。一方、ダウンチャープの櫛歯構造とは、その逆に、同図右方向において、櫛歯間隔が減少する構造を有するものである。
【0010】
基本的に弾性表面波素子が有する周波数特性は、弾性表面波を励起するための櫛歯電極周期で決定される。つまり、櫛歯間隔(W1等)が弾性表面波の波長λの1/2周期と一致する場合に、最も効率良くその周期の弾性表面波が励起される。
【0011】
従って、上述したアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造の場合は、弾性表面波の送受信方向において櫛歯間隔が異なるように設定されているので、最も効率よく励起できる弾性表面波(従ってその周波数:以下励起周波数とも称する)を複数設定することができる。詳しくは、アップチャープの櫛歯構造によって複数の励起周波数を設定できるとともに、ダウンチャープの櫛歯構造によっても複数の励起周波数を設定できる。
【0012】
例えば弾性表面波素子に応力が加わった場合には、その応力により圧電材がひずむことで櫛歯構造が僅かに変形して(詳しくは櫛歯間隔が変化して)、弾性表面波素子の周波数特性が変化する。
【0013】
つまり、弾性表面波素子の周波数特性は、応力など機械的摂動によって変化するので、例えば第1変換器における弾性表面波の励起状態(即ち最適な励起周波数)が変化する。よって、例えば第2変換器における受信信号の出力状態(電圧信号のピークの大きさ等)が変化するので、第2変換器の出力信号により、弾性表面波素子に加わる例えば応力を検出することができる。
【0014】
特に本発明では、アップチャープとダウンチャープの櫛歯構造によって、それぞれ複数の励起周波数(例えば小さな櫛歯間隔に対応した励起周波数と大きな櫛歯間隔に対応した励起周波数)を設定できるので、それらの励起周波数を応力等の検出に適したように適宜設定することができる。即ち、アップチャープとダウンチャープの櫛歯構造によって、応力等の検出に適した出力信号が得られる様に設定することが可能となる。
【0015】
具体的な設定方法としては、後述する様に、応力に応じて出力の電圧信号のピークの遅延時間が変化するように設定したり、応力に応じて出力の電圧信号のピークの出現状態(出現数)が変化するように設定することが可能となる。
【0016】
これによって、高価な検出回路を使用しなくとも、簡易な構成で、高い感度を有する弾性表面波素子を実現できる。
なお、本発明としては、第1櫛歯電極のみに上述したアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有する場合、第2櫛歯電極のみにアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有する場合、第1櫛歯電極及び第2櫛歯電極の両方にアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有する場合が挙げられる。
【0017】
これらの場合において、アップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造が、どちらの櫛歯電極にある場合でも、上記と同様な作用効果を有する。
(2)請求項2の発明は、弾性表面波を励起し且つ受信した弾性表面波に応じた信号を出力する第3櫛歯電極から成る第3変換器と、前記第3櫛歯電極によって励起された弾性表面波を反射する第4櫛歯電極から成る反射器とを、前記弾性表面波が伝播する伝播面を挟んで配置した弾性表面波素子であって、前記両櫛歯電極の少なくとも一方が、アップチャープの櫛歯構造とダウンチャープの櫛歯構造とを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明は、前記請求項1の発明の第2変換器に換えて反射器を用いたものである。
本発明では、第3櫛歯電極と第4櫛歯電極の少なくとも一方は、アップチャープの櫛歯構造とダウンチャープの櫛歯構造とを有しているので、第3変換器から得られる出力信号を用いて、前記請求項1の発明と同様な効果を奏する。
【0019】
つまり、本発明では、例えば第3変換器で発生した弾性表面波を反射器で反射して、同じ第3変換器で電気信号として取り出す構成であるので、その作用効果は、前記請求項1の発明と同様である。
【0020】
なお、本発明としては、第3櫛歯電極のみにアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有する場合、第4櫛歯電極のみにアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有する場合、第3櫛歯電極及び第4櫛歯電極の両方にアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有する場合が挙げられる。また、アップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造が、どちらの櫛歯電極にある場合でも、上記と同様な作用効果を有する。
【0021】
(3)請求項3の発明では、前記反射器の第4櫛歯電極に代えて、櫛歯電極以外の前記弾性表面波を反射する電極を用いたことを特徴とする。
本発明は、反射器に櫛歯電極を用いない場合を例示したものである。反射器に用いる電極としては、弾性表面波を効率よく反射できる例えば弾性表面波の半波長周期で配置された金属パターンで構成されるメタルストリップアレイを採用することができる。
【0022】
なお、この場合は、第3変換器の第3櫛歯電極が、アップチャープとダウンチャープを組み合わせた櫛歯構造を有する。
(4)請求項4の発明は、前記請求項1〜3のいずれかに記載の弾性表面波素子を備えたセンサであって、前記弾性表面波によって生ずる電圧信号のピークの間の時間変化に基づいて、測定対象の状態を検出する(即ちセンサの感度とする)ことを特徴とする。
【0023】
例えば弾性表面波が、第1櫛歯電極から第2櫛歯電極に到る伝達時間は、第1櫛歯電極のどの櫛歯(どの様な櫛歯間隔を有する櫛歯)で強く励起されたかで異なる。これは、最も効率よく励起される櫛歯の位置が異なるからである。
【0024】
よって、弾性表面波素子に応力が加わった場合には、櫛歯電極の櫛歯間隔が変化して素子が有する周波数特性が変化するので、弾性表面波がより効率よく励起される櫛歯位置が変化するため伝達時間が変化する。そのため、例えば応力が加わらない場合の出力信号(電圧信号のピーク)と、応力が加わった場合の出力信号(電圧信号のピーク)とには、伝達時間に時間差(遅延時間)が生ずる。従って、この遅延時間の変化から応力等を求めることができる。
【0025】
特に本発明では、アップチャープとダウンチャープを組み合わせた櫛歯構造を有するので、その櫛歯構造に対応して、それぞれ複数の励起周波数を設定できる。よって、各励起周波数に対応した弾性表面波によって発生する出力信号の電圧ピークの伝達時間も異なる。
【0026】
従って、大きな周波数の弾性表面波によって一対の電圧ピークが現れ、且つ、小さな周波数の弾性表面波によって一対の電圧ピークが現れるように、アップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を設定しておけば(即ち櫛歯間隔を設定しておけば)、応力変化に伴い一対の電圧ピーク間の伝達時間も変化するので、そのピーク電圧間の時間を計測することにより、応力等を検出することができる。
【0027】
なお、反射器を備えた場合も、第3変換器と反射器との間の伝達時間が同様に変化するので、同様にピーク間の時間をセンサ感度とすることができる。
(5)請求項5の発明は、前記請求項1〜3のいずれかに記載の弾性表面波素子を備えたセンサであって、前記弾性表面波によって生ずる電圧信号のピークの数に基づいて、測定対象の状態を検出する(即ちセンサの感度とする)ことを特徴とする。
【0028】
本発明では、アップチャープとダウンチャープを組み合わせた櫛歯構造を有するので、各櫛歯構造に対応した複数の励起周波数を設定できる。例えば、弾性表面波素子に応力が加わった場合には、櫛歯電極の電極間隔が変化して励起周波数が変化するので、励起周波数に対応した弾性表面波による出力信号(電圧信号のピーク位置)も変化する。
【0029】
つまり、応力に応じて電圧信号のピーク出現状況が変化するので、電圧のピークの出現状態(ここではピークの数)によって、応力等を求めることができる。
なお、反射器を備えた場合も同様に、電圧信号のピークの数が変化するので、ピークの数をセンサ感度とすることができる。
【0030】
(6)請求項6の発明では、前記センサは、前記弾性表面波素子に加わる応力を検出する応力センサであることを特徴とする。
本発明は、上述したセンサの用途を例示したものである。なお、応力以外に、例えば第1変換器と第2変換器の距離又は第3変換器と反射器との距離の変化を検出する変位センサとして用いることができる。更に、温度、湿度、ひずみ等の検出に用いることができる。
【0031】
(7)請求項7の発明では、前記応力センサは、タイヤに生ずる応力の変化からタイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧センサであることを特徴とする。
本発明は、応力センサの用途を例示したものである。
【0032】
(8)請求項8の発明では、前記弾性表面波の受信側の櫛歯電極によって出力される信号を、無線通信によりコントローラに送信する機能を有することを特徴とする。
本発明では、センサによって検出したデータを無線通信により送信できるので、センサの設置場所の制限が少ないという利点がある。
【0033】
例えば外部へ出力するためのアンテナを備えるようにすると、弾性表面波素子に対する高周波信号の入出力を非接触で行うことができるので、高周波信号の入力にケーブルや接触子が必要なくなる。したがって、回転体など動きのある部分への設置が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明が適用される実施形態について図面を用いて説明する。
[第1実施形態]
本実施形態では、例えばタイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧センサとして用いられる応力センサを例に挙げて説明する。
【0035】
a)まず、応力センサの構成について説明する。
図1は、応力センサ1の概略の構成を示す説明図であり、図2は、その信号の状態等を示す説明図である。
【0036】
図1(a)に示すように、応力センサ1は、弾性表面波素子3とアンテナ5、7とを備えており、弾性表面波素子3は、弾性表面波と電気信号との間の機械・電気的変換を行う第1変換器9と第2変換器11とを備えている。
【0037】
このうち、弾性表面波素子3は、圧電材料基板13の同一表面上に、一対の櫛歯電極(入力側の第1櫛歯電極15、出力側の第2櫛歯電極17)を、点対称となるように対向して配置したものであり、この第1櫛歯電極15にて第1変換器9が構成され、第2櫛歯電極17にて第2変換器17が構成されている。
【0038】
以下、各構成について説明する。
アンテナ5は、計測装置19から供給される高周波信号を受信するためのアンテナであり、タブレットアンテナやパッチアンテナなどを用いることができ、計測装置19までの距離や取付け部分の形状、あるいは用いる高周波信号の周波数によって最適な形態や特性を有するアンテナを用いることができる。
【0039】
アンテナ7は、第2変換器11から出力される高周波信号を外部の計測装置19へ出力するためのものであり、アンテナ5と同じ構造を有している。
圧電材料基板13は、例えばLiNbO3などの圧電材料からなり、その表面にDCスパッタ等により、例えばアルミからなる第1変換器9及び第2変換器11が形成されている。
【0040】
第1変換器9は、外部の計測装置19から供給される高周波信号を弾性表面波に変換するものであり、逆圧電効果により電気信号を弾性表面波に変換する。この第1櫛歯電極15は、対称な形状を有する一対の片側櫛歯電極の櫛歯部分が互いに嵌り込むように対向して配置されたものであり、アンテナ5で受信した電気信号を弾性表面波に変換し、櫛歯に対して垂直方向へ弾性表面波を励起する。
【0041】
第2変換器11は、弾性表面波を電気信号に変換するものであり、その構造は第1変換器9と同じで、第1変換器9とは点対称の形状を有している。この第2変換器11は、圧電材料基板13を伝播してきた弾性表面波を第2櫛歯電極17で電気信号に変換し、アンテナ7を介して計測装置19へ出力する。
【0042】
前記第1変換器9と第2変換器11とは、伝播面を挟んで、弾性表面波の伝播方向(同図左右方向)に沿って伸びるように圧電材料基板13の同一表面に配置されている。
特に本実施形態では、第1櫛歯電極15と第2櫛歯電極17とは、各櫛歯電極15、17の中心から同図左右方向に外れるに従って、それぞれ櫛歯電極の周期(即ち櫛歯間隔)が小さくなるように変化するアップチャープとダウンチャープとを組み合わせた櫛歯構造を有している。
【0043】
例えば図1(b)に第1櫛歯電極15を模式的に示すように、その櫛歯間隔は、同図左側(入力側)から第1櫛歯電極15の中央部分にかけて増加するように設定され(アップチャープに設定)、且つ、第1櫛歯電極15の中央部分から同図右側にかけて減少するように設定されている(ダウンチャープに設定)。
【0044】
詳しくは、第1櫛歯電極15は、3種類の幅及び櫛歯間隔を有する櫛歯からなり、同図左側の4本の最も細い櫛歯の櫛歯間隔W1は、同図右側の4本の最も細い櫛歯の櫛歯間隔W5と同じに設定されている。また、前記最も細い左右の櫛歯より内側には、最も細い櫛歯よりも大きな幅の各4本の櫛歯(中間の太さの櫛歯)が配置されており、その中間の太さの櫛歯の櫛歯間隔W2、W4は同じであり、前記最も細い櫛歯の櫛歯間隔W1、W5より大きく設定されている。更に、左右の中間の太さの櫛歯の間には、最も幅の広い4本の櫛歯が配置されており、その櫛歯間隔W3は、他の櫛歯の櫛歯間隔W1、W2、W4、W5よりも大きく設定されている。
【0045】
ここでは、例えば櫛歯間隔を、9.276μm、9.476μm、9.676μmとした大中小3パターンの櫛歯を、128YX−LiNbO3の圧電材料基板9に作成することにより、帯域幅2.264MHzの、基本波:中心周波数105MHz、チャープ率1.19、3次高調波:中心周波数315MHz、チャープ率3.56、・・となる2つの山(最大ピーク)を有する信号が得られる応力センサ1を構成できる。
【0046】
なお、チャープ率とは、周波数特性における遅延時間の傾きのことである。
この様に、本実施形態では、上述した櫛歯構造によって、後に詳述する様に、変化方向が2方向の2つの山(最大電圧ピーク)を持つ波形が励起されるので(図5(c)参照)、この最大ピーク間の時間差と弾性表面波素子3に加わる外力との関係により、測定対象の値(応力)を算出することができる。
【0047】
b)次に、応力センサ1における測定の原理を、参考例とともに説明する。
図2は非分散型電極の参考例1を示し、図3はアップチャープ又はダウンチャープの分散型電極の参考例2を示し、図4は本実施形態のアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有する例を示している。
【0048】
図2(a)の参考例1に示す様に、入力側の櫛歯電極(入力IDT:interdigital transducer)及び出力側の櫛歯電極(出力IDT)における櫛歯間隔が同じセンサの場合(即ち櫛歯間隔が同じ非分散型電極の場合)には、弾性表面波素子は、図2(b)に示す周波数特性となる。
【0049】
即ち、弾性表面波は、櫛歯間隔が弾性表面波の波長λの1/2のときに最も強く励起され、その周波数を中心とした山形のバンドパスフィルタ特性となる。なお、図2(b)では、実線にて周波数に対応した挿入損失を示し、破線にて周波数に応じた遅延時間を示している。
【0050】
従って、図2(c)に示す様に、入力側の櫛歯電極から単一の周波数の高周波信号を入力した場合、弾性表面波素子に応力が加わっていないときには、出力側の櫛歯電極では、その櫛歯間隔に対応した最大ピークを有する出力Aが得られる。
【0051】
一方、応力が加わった場合には、櫛歯間隔が変化し、各櫛歯が持つ周波数特性が変化するので(図2(b)の左右方向にずれる)、同図の出力Bの様に、所定の遅延時間差分ずれた信号、即ち変化した周波数特性に対応した信号が得られる。
【0052】
この遅延時間差は加わった応力に対応しているので、遅延時間差から応力を求めることができるが僅かな遅延時間差しか得られない。
また、図3(a)の参考例2に示す様に、入力側及び出力側の櫛歯電極の櫛歯間隔を、弾性表面波素子の中央に向かって単純に増加させたセンサの場合、即ち入力側が分散型のアップチャープの電極で、出力側が分散型のダウンチャープの電極の場合には、弾性表面波素子は図3(b)に示す広帯域幅の周波数特性となる。
【0053】
つまり、櫛歯電極の櫛歯間隔を例えばアップチャープに設定することにより、多数の励起周波数を伝播距離の異なった櫛歯電極群ができるため、周波数によって異なる遅延時間が得られる。即ち、電極形状に依存する傾斜を持った遅延線を構成できる。
【0054】
従って、図3(c)に示す様に、入力側の櫛歯電極から単一の周波数の高周波信号を入力した場合、弾性表面波素子に応力が加わっていないときには、出力側の櫛歯電極から出力Aが得られる。この出力Aは、アップチャープの櫛歯間隔に対応して、ピークが分散した複雑な波形を有するとともに、入力信号の周波数に応じて最も効率よく弾性表面波を励振できる櫛歯間隔に対応して(即ち最も効率よく励振された弾性表面波に対応して)、1つの最大ピークを有している。
【0055】
一方、応力が加わった場合には、図4に示す様に、櫛歯電極の櫛歯間隔が変化し、周波数特性が変化するので、最も効率よく弾性表面波を励振できる周波数(f0、f1、f2)も変化し、それにともない、最大ピークも変化する。
【0056】
よって、前記図3(c)の出力Bの様に、所定の遅延時間差分ずれた信号、即ち変化した周波数特性に対応した遅延時間差分ずれた信号が得られる。ここでは、出力Aと出力Bの最大のピーク間を遅延時間差としている。
【0057】
この遅延時間差は、加わった応力に対応しているので、遅延時間差から応力を求めることができるが、かならずしも十分な遅延時間差は得られない。
これに対して、本実施形態では、図5(a)に示す様に、上述したアップチャートとダウンチャープの櫛歯電極を備えているので、図5(b)に示す様に、広帯域幅で傾斜の大きな遅延線を有する周波数特性が得られる。
【0058】
本実施形態では、図5(c)に示す様に、入力側の第1櫛歯電極15から単一の周波数の高周波信号を入力した場合、第1櫛歯電極15のアップチャープの櫛歯構造より、最も効率良く励起された弾性表面波に対応してその出力に最大ピークが現れ、同様に、第1櫛歯電極15のダウンチャープの櫛歯構造により、最も効率良く励起された弾性表面波に対応してその出力に最大ピークが現れる。
【0059】
つまり、図6(a)に示す様に、異なる櫛歯間隔を有する第1櫛歯電極15において、入力周波数(f)と周波数特性が一致した場合(ここでは、例えば櫛歯間隔W2、W4に対応する周波数f0に一致した場合)に弾性表面波が励起され、その励起された弾性表面波によって出力に最大ピークが現れる。
【0060】
従って、前記図5(c)に示す様に、弾性表面波素子3に応力が加わっていないときには、第1櫛歯電極15のアップチャープとダウンチャープの櫛歯構造より、2つの山(最大ピーク)を持つ出力Aが得られる。なお、この場合の最大ピーク間の時間を基本時間とする。
【0061】
この出力Aにおける左側の最大ピークは、第1櫛歯電極15のアップチャープの櫛歯構造のうちの中間の櫛歯間隔W2(周波数f0)に対応し、出力Aにおける右側の最大ピークは、第1櫛歯電極15のダウンチャープの櫛歯構造のうちの同様な中間の櫛歯間隔W4(周波数f0)に対応している。なお、ここでは、中央の最大の櫛歯間隔W3に対応する弾性表面波が最も強く励起されないように設定されている。
【0062】
このように、出力Aの最大ピークの位置がずれるのは(即ち遅延時間がずれるのは)、第1櫛歯電極15において、最も効率よく弾性表面波を励起できる周波数に対応する櫛歯間隔が設定されている位置が、アップチャープの櫛歯構造とダウンチャープの櫛歯構造のようにずれているからである。
【0063】
一方、応力が加わった場合(ここでは図1の紙面の裏側に凸となるような応力が加わった場合)には、櫛歯電極の櫛歯間隔が変化するので、図6(b)に示す様に、弾性表面波を効率良く励起する周波数も変化する。よって、図5(c)に示す様に、その周波数に応じて励起された弾性表面波に対応した出力信号の最大ピークも変化し、出力Bが得られる。なお、この最大ピーク間の時間を測定時間とする。
【0064】
この出力Bにおける左側の最大ピークは、第1櫛歯電極15のアップチャープの櫛歯構造のうちの最少の櫛歯によって励起される弾性表面波に対応し、右側の最大ピークは、ダウンチャープの櫛歯構造のうちの同様な最小の櫛歯によって励起される弾性表面波に対応している。なお、図6(c)に示す様に、応力が加わった場合には、最小の櫛歯の励起周波数は、応力が加わっていないときの励起周波数(f2)から応力が加わっていないときの中間の櫛歯の励起周波数(f0)に変化している。
【0065】
従って、測定時間から基本時間を引いた値を遅延時間差とすることにより、この遅延時間差は応力に対応したものであるので、遅延時間差から応力を求めることができる。
つまり、本実施形態では、応力センサ1に応力が加わった場合に、基本時間よりも測定時間が増加するようにアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯電極の構造が設定されているので、簡単な回路構成で、従来より精度良く応力を検出することができる。
【0066】
c)次に、圧力センサ1を駆動する計測装置19について説明する。
・前記図1に示す様に、計測装置19は、アンテナ21、高周波信号発生部23、スイッチ25、電圧計27及び信号処理部29(図7参照)を備えている。
【0067】
アンテナ21は、高周波信号発生部23で発生した高周波信号を、外部の圧力センサ1に出力するとともに、圧力センサ1から出力される高周波信号を入力するためのアンテナである。
【0068】
アンテナ21は、アンテナ5と同じように、タブレットアンテナやパッチアンテナなどを用いることができ、第1変換器9及び第2変換器11までの距離や取付け部分の形状、あるいは用いる高周波信号の周波数によって最適な形態や特性を有するアンテナを用いることができる。
【0069】
高周波信号発生部23は、応力センサ1の第1櫛歯電極15において弾性表面波を発生させるための高周波信号を発生させるための発振器である。発振周波数は、例えば315MHz、434MHz、2.45GHz帯などである。
【0070】
スイッチ25は、高周波信号発生部23で発生される高周波信号をアンテナ21へ供給したり供給させなかったりするためのスイッチであり、オンで高周波信号をアンテナ21へ供給し、オフで供給しないようにする。
【0071】
電圧計27は、高周波信号発生部23から出力される高周波信号及びアンテナ21から入力される高周波信号の電圧を計測するものである。
信号処理部29は、後述する様に、高周波信号発生部23から高周波信号を発生させたり、電圧計27で計測した高周波信号の電圧に基づいて応力センサ1において計測される応力の算出を行うものである。
【0072】
・ここで、応力センサ1及び計測装置19を用いて応力を測定する方法について、前記図5に基づき説明する。
まず、計測装置19からアンテナ21を介して高周波信号が応力センサ1に対して出力される。応力センサ1では、アンテナ21から出力された高周波信号をアンテナ5で受信する。
【0073】
アンテナ5で受信された高周波信号は、第1変換器9の第1櫛歯電極15に供給され、第1櫛歯電極15では、供給された高周波信号により弾性表面波が励起される。励起された弾性表面波は、圧電材料基板13の表面(伝播面)を介して第2変換器11に伝播する。
【0074】
第2変換器11では、圧電材料基板13を伝播してくる弾性表面波を取得し、第2櫛歯電極17で高周波信号に変換し、アンテナ7から外部へ出力する。アンテナ7から出力された高周波信号は、計測装置19のアンテナ21で受信される。そして、アンテナ21で受信された高周波信号は、電圧計27によって電圧が計測される。
【0075】
従って、計測装置19においては、計測された電圧の二つの最大ピーク間の測定時間を所定の閾値によって検出し、この測定時間から予め記憶されている基本時間を引いて遅延時間差を求める。
【0076】
この遅延時間差は、応力に対応したものであるので、予め実験等によって求められたマップ等を用いて、遅延時間差から応力を求めることができる。
d)次に、信号処理部29の詳しい構成及びその動作について説明する、
図7に示す様に、信号処理部29は、アナログ回路部31とディジタル回路部33とを備えている。アナログ回路部31は、印加電圧生成部35と時間計測パルス生成部37とから構成される。
【0077】
印加電圧生成部35は、オフセット回路39、第1増幅回路41、フィルタ回路43及びアナログスイッチ45から構成される。
オフセット回路39は、図8(イ)に示すように、カウンタ47(図7参照)から出力されるGNDレベルを基準とする0[V]〜+5[V]のパルス波形(図8(ア)に示す。)にマイナスのオフセット電圧を印加し、±2.5[V]のパルス波形に変換する。
【0078】
第1増幅回路41は、図8(ウ)に示すように、オフセット回路39において得られた±2.5[V]のパルス波形を増幅し±5[V]のパルス波形に変換する。
フィルタ回路43は、ローパスフィルタであり、図8(エ)に示すように、第1増幅回路41で得られた±5[V]のパルス波形の高周波成分を除去し、振幅5[V]の正弦波を生成する。
【0079】
アナログスイッチ45は、図8(オ)に示すように、カウンタ47にゲートパルスが入力されると、図8(カ)に示すように、フィルタ回路43で生成した正弦波を外部へ出力する。
【0080】
次に、時間計測パルス生成部37は、図5に示すように、クリップ回路49、オフセット回路51、半波整流回路53、第2増幅回路55、平滑回路57及び比較回路59から構成される。
【0081】
クリップ回路9は、図9(ア)に示すような電圧計27から入力される検出電圧波形を、図9(イ)に示すように、出力の最大値が回路を構成する図示しないオペアンプの最大出力値である±10[V]となるよう検出電圧波形のピーク値をクリップする。
【0082】
オフセット回路51は、図9(ウ)に示すように、クリップ回路49から出力される電圧波形に重畳しているノイズの最大値の電圧をマイナスするようにオフセット電圧を印加する。
【0083】
半波整流回路53は、図9(エ)に示すように、オフセット回路51の出力電圧を半波整流し、出力電圧のプラス側成分のみを取り出して出力する。
第2増幅回路55は、図9(オ)に示すように、半波整流回路53の出力を図示しないオペアンプの飽和出力値まで増幅する。
【0084】
平滑回路57は、ローパスフィルタであり、図9(カ)に示すように、第2増幅回路55の出力(パルス波形)の高周波成分を除去し、複数のパルス群からなる波形を立ち上がり及び立ち下がりが鋭くない1つのパルス波形に変換する。
【0085】
比較回路59は、図9(キ)に示すように、平滑回路57の出力パルスと予め定められている比較電圧とを比較し、出力パルスの立ち上がり電圧が比較電圧を超えたときに一定電圧を出力し、出力パルスの立ち下がり電圧が比較電圧より小さくなったときに、出力を停止する。
【0086】
このようにすると、平滑回路57から出力される立ち上がり及び立ち下がりが鋭くないパルス波形が、立ち上がり及び立ち下がりが鋭いパルス波形に整形される。このようにして、波形が整形されたパルスが時間計測パルスとして外部に出力される。
【0087】
従って、この様にして得られた時間計測パルスのうち、遅延波(出力波形)に対応した時間計測パルス間の時間をカウンタで計数することにより、このカウンタ値から出力波形の最大ピーク間の時間(遅延時間差)を求めることができる。
【0088】
e)この様に、本実施形態では、少なくとも第1櫛歯電極15がアップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造を有している。
よって、応力センサ1に応力が加わった場合には、主として第1変換器15における周波数特性が変化するので、即ち弾性表面波を効率良く励起できる周波数が変化するので、前記図4(c)に示す様に、出力波形の最大ピークが変化し、基本時間に対して測定時間が大きく変化する。この測定時間から基本時間を引いた遅延時間差は、加わった応力に対応しているので、遅延時間差から応力を求めることができる。
【0089】
しかも、この遅延時間差は、従来と比べて大きなものであるので、簡易な回路により、精度良く応力を測定できるという顕著な効果を奏する。
また、例えば電極対数と櫛歯電極長によって、出力波形におけるピーク電圧レベルを十分に大きくすることにより、第1櫛歯電極15の櫛歯間隔による変化量(遅延時間差)の任意設定が可能となるので、この点からも、安価な検出回路で十分であるという利点がある。
【0090】
なお、本実施形態の変形例として、前記第1変換器を(入力及び出力を行う)第3変換器とし、第2変換器を反射器としてもよい。
つまり、図10(a)に示す様に、変形例の応力センサ71では、アップチャープ及びダウンチャープの櫛歯構造の第3櫛歯電極73を有する第3変換器75にて弾性表面波を励起し、その弾性表面波を、第3櫛歯電極73と同様な構造の第4櫛歯電極77を有する反射器79にて反射する。そして、その反射した弾性表面波を第3変換器73にて受信して出力信号に変換し、その出力信号を弾性表面波素子81側より計測装置83に送信する。
【0091】
更に、その変形例として、図10(b)に示す様に、反射器91の第4櫛歯電極93を非分散型の電極としてもよく、弾性表面波を反射する周知の各種の電極を採用できる。
なお、本実施形態の応力センサは、タイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧センサとして用いられるが、このタイヤ空気圧センサは、例えばタイヤの空気封入口(ムシ)に取り付けられる。従って、タイヤ空気圧が増加した場合には、応力センサがタイヤ内圧力と基準圧力(大気圧)との差圧によりブリッジのようにたわむので、その応力によって、タイヤ空気圧を検出することができる。
【0092】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0093】
a)まず、本実施形態の応力センサの構成について説明する。
図11(a)に示す様に、本実施形態の応力センサ101では、その弾性表面波素子103は、第1櫛歯電極105から成る第1変換器107と、第2櫛歯電極109から成る第2変換器111とを備えている。
【0094】
第1櫛歯電極105及び第2櫛歯電極109には、3種の櫛歯間隔を形成するように、それぞれ4本の櫛歯が設けられている。例えば櫛歯間隔を、0.1〜数μmで変化させた3種の櫛歯が設けられている。
【0095】
具体的には、図11(b)に模式的に櫛歯間隔の大きさの順番に数字を付して示す様に、各櫛歯電極105、109の中央に櫛歯間隔が最小となるように4本の櫛歯(サイズ:S1)が設けられ、その左右に最大の櫛歯間隔となるように各4本の櫛歯(S3)が設けられ、その左右に中間の櫛歯間隔となるように各4本の櫛歯(S2)が設けられ、その左右に最大の櫛歯間隔となるように各4本の櫛歯(S3)が設けられている。
【0096】
詳しくは、櫛歯間隔が、9.276μm、9.476μm、9.673μmの大中小3パターンの櫛歯(S1〜S3)を、128YX−LiNbO3の圧電材料基板113に作成することにより、帯域幅4.434MHzの、基本波:中心周波数105MHz、チャープ率1.55、3次高調波:中心周波数315MHz、チャープ率4.65、・・となるピーク数が1、2、4と変化する信号が得られる応力センサ101を構成することができる。
【0097】
b)次に、応力センサ101の動作について説明する。
ここでは、例えば図11(a)の紙面の裏側に凸となるような応力が加わった場合について述べる。
【0098】
図11(c)に示す様に、応力センサ101に応力がかかっていない場合には、出力Aの出力信号波形が得られる。この出力Aの中央の最大ピークは、応力センサ101の中央の櫛歯(S1)に対応している。つまり、応力が加わらない場合には、入力信号の周波数に応じた周波数、即ち、応力が加わらないときに弾性表面波を効率良く励起できる周波数に対応した最小櫛歯間隔の櫛歯(S1)により、1個の最大ピークが得られる。
【0099】
次に、応力が増加すると、その増加した応力に応じて周波数特性が変化するので、弾性表面波を効率良く励起する周波数も変化する。よって、その弾性表面波を効率良く励起できる周波数に対応した次の大きさの櫛歯間隔の櫛歯(S2)により、2個の最大ピークが得られる。
【0100】
次に、更に応力が増加すると、その増加した応力に応じて周波数特性が変化するので、同様に、弾性表面波を効率良く励起する周波数も変化する。よって、その弾性表面波を効率良く励起する周波数に対応した最大の櫛歯間隔の櫛歯(S3)により、4個の最大ピークが得られる。
【0101】
つまり、応力センサ101に応力が加わると、第1櫛歯電極105の櫛歯間隔が変化するので、効率良く励起される周波数が変化し、それによって出力波形における最大ピークの数も変化する。従って、電圧のオフセット値を決めておき、信号のピーク数を検出することにより、圧力を求めることができる。
【0102】
なお、ここで、最大ピークとは、出力信号を所定の閾値により区分して検出できる各櫛歯間隔に対応する信号である。
また、最大ピークの数をカウントする手法としては、前記第1実施形態の図9に示す波形(キ)のパルスを用いることができる。即ち、印加波ではない遅延波(出力波)の波形計数パルスは最大ピーク数に対応しているので、この波形計数パルス数をカウントすることにより、最大ピーク数をカウントすればよい。
【0103】
この様に、本実施形態では、応力によって出力波形の最大ピーク数が変化するので、最大ピーク数をカウントすることにより応力を検出することができる。
また、検出波形間隔を十分に大きくとることにより、或いはピーク電圧レベルを十分に大きくすることにより、波数をカウントするための検出回路を安価に作成することができる。よって、簡単な回路で精度良く応力を検出できるという顕著な効果を奏する。
【0104】
この最大ピーク数をカウントする応力センサ101の測定範囲は、弾性表面波素子103の設計時に任意に作成可能であり、応力センサ101以外にも多くの用途に用いることができる。
【0105】
なお、本実施形態の変形例として、前記第1変換器を(入力及び出力を行う)第3変換器とし、第2変換器を反射器としてもよい。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明するが、前記第2実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0106】
a)まず、本実施形態の応力センサの構成について説明する。
図12(a)に示す様に、本実施形態の応力センサ121では、その弾性表面波素子123に、第1櫛歯電極125から成る第1変換器127と、第2櫛歯電極129から成る第2変換器131を備えている。
【0107】
特に本実施形態では、第1櫛歯電極125は、櫛歯間隔が一定の櫛歯を有する非分散型電極である。また、第2櫛歯電極129は、同図左側には、第2櫛歯電極129の中央にゆくほど櫛歯間隔が減少するダウンチャープの櫛歯構造を有するとともに、同図右側には、第2櫛歯電極129の中央から右側にゆくほど櫛歯間隔が増加するアップチャープの櫛歯構造を有している。
【0108】
b)次に、応力センサ121の動作について説明する。
ここでは、例えば図12(a)の下方から上方に応力が加わった場合について述べる。
図12(b)に模式的に示す様に、本実施形態では、応力センサ121に加わる応力が大きくなるほど、出力信号波形は、出力A→出力B→出力Cのように変化する。
【0109】
具体的には、応力が加わっていない場合には、入力信号に対応して、中央の小さな櫛歯間隔によって効率良く弾性表面波が励起されるので、その弾性表面波に対応して(即ち小さな櫛歯間隔に対応して)、出力Aにおいてオフセット電圧により1つの最大ピークが検出される。
【0110】
その後、応力が増加すると、周波数特性が変化し、外側の大きな櫛歯間隔によって効率良く弾性表面波が励起されるので、その弾性表面波に対応して(即ち大きな櫛歯間隔に対応して)、出力Cにおいてオフセット電圧により2つの最大ピークが検出される。なお、出力Bは、出力Aから出力Cに移行する途中の波形であり、最大ピーク間隔は、出力Cよりも小さくなる。
【0111】
つまり、本実施形態の様に、応力が増加するにつれて、出力信号の最大ピーク数が増加するとともに最大ピーク間隔が大きくなっていくのは、第2櫛歯電極129に、アップチャープとダウンチャープの櫛歯構造が形成されており、これによって、最も効率良く弾性表面波が励起される櫛歯が、応力に従って順次変化するからである。
【0112】
なお、入力波数により出力波形が異なるが、同図に示すように連続した波形応答を得るためには、最低でも70〜80サイクル分の波を入力する必要がある。
本実施形態においても、前記第2実施形態と同様な効果を奏する。
【0113】
なお、本実施形態の変形例として、前記第1変換器を(入力及び出力を行う)第3変換器とし、第2変換器を反射器としてもよい。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明するが、前記第2実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0114】
a)まず、本実施形態の応力センサの構成について説明する。
図13(a)に示す様に、本実施形態の応力センサ141では、その弾性表面波素子143には、第1櫛歯電極145から成る第1変換器147と、第2櫛歯電極149から成る第2変換器151を備えている。
【0115】
特に本実施形態では、第1櫛歯電極145は、櫛歯間隔が一定の櫛歯を有する非分散型電極である。また、第2櫛歯電極149は、前記図11(a)、(b)に示す第2実施形態の櫛歯電極と同様に、中央に最小の櫛歯間隔の櫛歯(S1)を配置し、その櫛歯(S1)の両側に最大の櫛歯間隔の櫛歯(S3)を配置し、その櫛歯(S3)の両側に中間の櫛歯間隔(S2)の櫛歯を配置し、その櫛歯(S2)の両側に最大の櫛歯間隔の櫛歯(S3)を配置したものである。
【0116】
即ち、複数のアップチャープとダウンチャープの櫛歯構造を備えたものである。
b)次に、応力センサ141の動作について説明する。
ここでは、例えば図13(a)の下方から上方に応力が加わった場合について述べる。
【0117】
図13(b)に模式的に示す様に、本実施形態では、応力センサ141に加わる応力が大きくなるほど、出力信号波形は、出力A→出力B→出力C→出力D→出力E→出力Fのように変化する。
【0118】
つまり、上述した第2実施例と同様に、応力が大きくなるほど、出力波形のピーク数が1、2、4と変化するとともに、ピーク間隔も応力が大きくなるほど大きくなる。
本実施形態の様に、応力が増加するにつれて、出力信号の最大ピーク数が増加するとともに最大ピーク間隔が大きくなっていくのは、第2櫛歯電極149に、複数のアップチャープとダウンチャープの櫛歯構造が構成されており、それによって、最も効率良く弾性表面波が励起される櫛歯が、応力に従って順次変化するからである。
【0119】
従って、本実施形態においても、前記第2実施形態と同様な効果を奏する。
なお、本実施形態の変形例として、前記第1変換器を(入力及び出力を行う)第3変換器とし、第2変換器を反射器としてもよい。
【0120】
なお、本発明は、前記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
(1)例えば応力センサと計測装置との間で、無線通信により送受信するのではなく、有線で接続してもよい。
【0121】
(2)また、タイヤ応力センサのような応力センサに限らず、変位センサ、温度センサなど、各種の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】(a)は第1実施形態の応力センサの概略構成を示す説明図、(b)は応力センサの一部を拡大して示す説明図である。
【図2】(a)は参考例1のセンサの平面及び側面の概略構成を示す説明図、(b)はその周波数特性を示すグラフ、(c)はその出力波形等を示すグラフである。
【図3】(a)は参考例2のセンサの平面及び側面の概略構成を示す説明図、(b)はその周波数特性を示すグラフ、(c)はその出力波形等を示すグラフである。
【図4】櫛歯間隔と励起周波数との関係を示すグラフである。
【図5】(a)は第1実施形態の応力センサの平面及び側面の概略構成を示す説明図、(b)はその周波数特性を示すグラフ、(c)はその出力波形等を示すグラフである。
【図6】(a)は入力周波数と励起周波数との関係を示す説明図、(b)は応力が加わった場合の励起周波数の変化を示すグラフ、(c)は応力が加わった場合の励起周波数の変化を櫛歯とともに示すグラフである。
【図7】信号処理部の概略の構成を示すブロック図である。
【図8】印加周波数パルスから印加電圧波形を得る様子を示す説明図である。
【図9】電圧計で検出した検出電圧から時間計測パルスを得る様子を示す説明図である。
【図10】(a)は変形例の応力センサの平面の概略構成を示す説明図、(b)は更にその変形例の平面の概略構成を示す説明図である。
【図11】(a)は第2実施形態の応力センサの平面の概略構成を示す説明図、(b)はその櫛歯間隔の大きさを模式的に示す説明図、(c)はその出力波形等を示すグラフである。
【図12】(a)は第3実施形態の応力センサの側面の概略構成を示す説明図、(b)はその出力波形等を示すグラフである。
【図13】(a)は第4実施形態の応力センサの側面の概略構成を示す説明図、(b)はその出力波形等を示すグラフである。
【符号の説明】
【0123】
1、71、101、121、141…応力センサ
3、81、103、123、143…弾性表面波素子
9、107、127、147…第1変換器
11、111、131、151…第2変換器
13、113…圧電材料基板
15、107、125、141…第1櫛歯電極
17、109、129、149…第2櫛歯電極
19、83…計測装置
73…第3櫛歯電極
75…第3変換器
77、93…第4櫛歯電極
79、91…反射器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性表面波を励起する第1櫛歯電極から成る第1変換器と、
前記第1櫛歯電極によって励起された弾性表面波を受信し該弾性表面波に応じた信号を出力する第2櫛歯電極から成る第2変換器とを、
前記弾性表面波が伝播する伝播面を挟んで配置した弾性表面波素子であって、
前記両櫛歯電極の少なくとも一方が、アップチャープの櫛歯構造とダウンチャープの櫛歯構造とを備えたことを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項2】
弾性表面波を励起し且つ受信した弾性表面波に応じた信号を出力する第3櫛歯電極から成る第3変換器と、
前記第3櫛歯電極によって励起された弾性表面波を反射する第4櫛歯電極から成る反射器とを、
前記弾性表面波が伝播する伝播面を挟んで配置した弾性表面波素子であって、
前記両櫛歯電極の少なくとも一方が、アップチャープの櫛歯構造とダウンチャープの櫛歯構造とを備えたことを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項3】
前記反射器の第4櫛歯電極に代えて、櫛歯電極以外の前記弾性表面波を反射する電極を用いたことを特徴とする前記請求項2に記載の弾性表面波素子。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれかに記載の弾性表面波素子を備えたセンサであって、
前記弾性表面波によって生ずる電圧信号のピークの間の時間変化に基づいて、測定対象の状態を検出することを特徴とするセンサ。
【請求項5】
前記請求項1〜3のいずれかに記載の弾性表面波素子を備えたセンサであって、
前記弾性表面波によって生ずる電圧信号のピークの数に基づいて、測定対象の状態を検出することを特徴とするセンサ。
【請求項6】
前記センサは、前記弾性表面波素子に加わる応力を検出する応力センサであることを特徴とする前記請求項4又は5に記載のセンサ。
【請求項7】
前記応力センサは、タイヤに生ずる応力の変化からタイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧センサであることを特徴とする前記請求項6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記弾性表面波の受信側の櫛歯電極によって出力される信号を、無線通信によりコントローラに送信する機能を有することを特徴とする前記請求項4〜7のいずれかに記載のセンサ。
【請求項1】
弾性表面波を励起する第1櫛歯電極から成る第1変換器と、
前記第1櫛歯電極によって励起された弾性表面波を受信し該弾性表面波に応じた信号を出力する第2櫛歯電極から成る第2変換器とを、
前記弾性表面波が伝播する伝播面を挟んで配置した弾性表面波素子であって、
前記両櫛歯電極の少なくとも一方が、アップチャープの櫛歯構造とダウンチャープの櫛歯構造とを備えたことを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項2】
弾性表面波を励起し且つ受信した弾性表面波に応じた信号を出力する第3櫛歯電極から成る第3変換器と、
前記第3櫛歯電極によって励起された弾性表面波を反射する第4櫛歯電極から成る反射器とを、
前記弾性表面波が伝播する伝播面を挟んで配置した弾性表面波素子であって、
前記両櫛歯電極の少なくとも一方が、アップチャープの櫛歯構造とダウンチャープの櫛歯構造とを備えたことを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項3】
前記反射器の第4櫛歯電極に代えて、櫛歯電極以外の前記弾性表面波を反射する電極を用いたことを特徴とする前記請求項2に記載の弾性表面波素子。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれかに記載の弾性表面波素子を備えたセンサであって、
前記弾性表面波によって生ずる電圧信号のピークの間の時間変化に基づいて、測定対象の状態を検出することを特徴とするセンサ。
【請求項5】
前記請求項1〜3のいずれかに記載の弾性表面波素子を備えたセンサであって、
前記弾性表面波によって生ずる電圧信号のピークの数に基づいて、測定対象の状態を検出することを特徴とするセンサ。
【請求項6】
前記センサは、前記弾性表面波素子に加わる応力を検出する応力センサであることを特徴とする前記請求項4又は5に記載のセンサ。
【請求項7】
前記応力センサは、タイヤに生ずる応力の変化からタイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧センサであることを特徴とする前記請求項6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記弾性表面波の受信側の櫛歯電極によって出力される信号を、無線通信によりコントローラに送信する機能を有することを特徴とする前記請求項4〜7のいずれかに記載のセンサ。
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図10】
【図11】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−281975(P2009−281975A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136759(P2008−136759)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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