説明

弾性表面波素子片

【課題】高次横モードに基づく中心周波数の近傍におけるディップを低減する。
【解決手段】弾性表面波素子片40は、圧電基板12に一対のすだれ状電極部であるIDT42、44と、一対の反射器56(56a、56b)が設けてある。IDT42、44と反射器56とは、圧電基板12に励振された弾性表面波の導波路を形成している。IDT42のIDT導波路部の中心線64と、IDT44のIDT導波路部の中心線66とは、弾性表面波の伝播方向と直交した方向において相互にずれている。反射器56の反射器導波路部の中心線68、70は、隣接するIDT導波路部の中心線に対して弾性表面波の伝播方向と直交した方向にずれている。IDT42、44のIDT導波路部の中心線64、66と反射器56の反射器導波路部の中心線68、70とは、千鳥に位置する。したがって、IDT42、44と反射器56とが形成する導波路は、ほぼ蛇行した形状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電基板に励振した弾性表面波を利用する弾性表面波デバイスを形成する弾性表面波素子片に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)デバイスに用いられる弾性表面波素子片は、水晶やタンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)などの圧電の基板にIDT(Interdigital Transducer)と呼ばれるすだれ状電極を形成し、すだれ状電極によって圧電基板に弾性表面波を励振する。そして、弾性表面波デバイスである弾性表面波フィルタ用の弾性表面波素子片は、通常、弾性表面波の伝播方向に沿って複数のすだれ状電極が形成してある。
【0003】
図7は、従来のフィルタ用表面波素子片の一例を模式的に示した平面図である。図7において、弾性表面波素子片10は、圧電基板12の中央部に一対のIDT14、16が設けてある。圧電基板12は、例えば水晶やタンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)などの圧電体からなり、平面視矩形状に形成してある。一対のIDT14、16は、圧電基板12の弾性表面波の伝播方向に沿って配置してある。IDT14は、一対の櫛型電極18(18a、18b)からなっていて、櫛型電極の櫛歯に相当する電極指20(20a、20b)が噛み合うように配置されてすだれ状をなしている。そして、電極指20aと電極指20bとは、対応するバスバー24(24a、24b)に一端が接続してある。他方のIDT16は、一対の櫛型電極22(22a、22b)からなっていて、IDT14と同様に、電極指20が相互に噛み合うように配置してある。これらの電極指20は、櫛型電極18と同様に、一端が対応するバスバー24に接続してある。
【0004】
バスバー24は、ワイヤボンディング部(ボンディングパッド)を兼ねていて、バスバー24にボンディングワイヤ26が接合される。なお、バスバー24にボンディングワイヤ26を接合しない場合、電極指20の長手方向となるバスバー24の外側に、バスバー24と電気的に接続した200μm×200μm程度のボンディングパッド(ワイヤボンディング部)を形成する。そして、このボンディングパッドにボンディングワイヤ26を接合するようにしている。また、一対のIDT14、16のいずれか一方(例えば、IDT14)は、入力側となっていて、櫛型電極18a、18bとの間にボンディングワイヤ26を介して信号電圧が印加され、圧電基板12の表層部に所定周波数の弾性波(弾性表面波)を励振する。他方のIDT16は、出力側となっていて、圧電基板12を伝播してきた弾性表面波の振幅に比例した電圧を得ることができる。
【0005】
IDT14、16の弾性表面波の伝播方向外側には、IDT14、16を挟んで一対の反射器28(28a、28b)が設けてある。各反射器28は、電極指20と平行に形成した複数の導体ストリップ30から形成されていて格子状をなしている。各反射器28は、複数の導体ストリップ30の両端が接続バー32によって相互に接続してある。これらのIDT14、16および反射器28は、圧電基板12に励振された弾性表面波の伝送路である導波路を構成している。反射器28の開口幅、すなわち反射器28の導体ストリップ30が形成する導波路の幅BがIDT14、16の電極指20の形成する電極交差部34、36の幅Wより広くしてある。すなわち、反射器導波路部の幅Bが、IDT14、16を構成している電極指20の弾性表面波の伝播方向における重なり部の幅Wより広くしてある。また、反射器28の開口幅(反射器導波路部の幅)Bは、IDT14、16の電極指20によって形成された導波路の幅、すなわちバスバー24a、24b間の幅W0とほぼ同じにしてある。
このような弾性表面波素子片10は、RFフィルタ、デュープレクサ、IFフィルタ等に利用されている。
【0006】
ところが、このように形成した弾性表面波素子片10は、反射器28の開口幅(反射器導波路部の幅)BがIDT14、16の導波路(IDT導波路部)の幅W0とほぼ等しく形成してある。したがって、IDT14、16に閉じ込められる高次横モードのパターンと反射器28に閉じ込められる高次横モードのパターンとが同じとなる。このため、弾性表面波素子片10は、フィルタとした場合に、高次横モードに基づくスプリアスが発生し、図8にαとして示したように、通過帯域PB内にディップを生ずる。なお、図8は、周波数と挿入損失との関係を示したものである。図8の横軸は、周波数であって、フィルタの中心周波数F0からの周波数偏差をMHzで示し、縦軸は挿入損失をdBで示している。そして、中心周波数F0は、約100MHzである。
【0007】
そこで、特許文献1、2は、反射器の開口幅Bを電極交差部の交差幅Wより小さくし、反射器において高次横モードの一部を反射しないようにして、高次横モードに基づくスプリアスを抑圧するようにしている。
【特許文献1】特開平7−86869号公報
【特許文献2】特開平8−222989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に記載のように、反射器の開口幅をIDTの電極交差幅より小さくすると、反射器が高次横モードの一部しか反射しないため、高次横モードに基づく中心周波数F0近傍に生ずるディップαを抑圧することができる。しかし、特許文献1、2に記載の弾性表面波素子片は、反射器の開口幅(反射器導波路部の幅)を電極交差部の交差幅より狭くしてあるため、反射器が電極交差部において励振した弾性表面波の一部のみしか反射しない。すなわち、電極交差部で励振した弾性表面波のエネルギーの一部を反射せずにロスすることになり、挿入損失を増大させ、クリスタルインピーダンスが高くなる。
【0009】
本発明は、前記従来技術の欠点を解消するためになされたもので、高次横モードに基づく中心周波数の近傍におけるディップを低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る弾性表面波素子片は、圧電基板にすだれ状電極部が設けてある弾性表面波素子片であって、励振された弾性表面波が伝播する前記圧電基板に形成した導波路の少なくとも一部が蛇行している、ことを特徴としている。
【0011】
弾性表面波は、直進性が大きいので、伝播する導波路が蛇行しているため、導波路の各部分における幅が同じであったとしても、導波路の各部分において高次横モードの一部を反射しない。このため、導波路内に閉じ込められる高次横モードのエネルギーが全体として小さくなり、高次横モードに基づいたスプリアスが抑制され、中心周波数近傍のディップを低減することができる。
【0012】
すだれ状電極部を構成している電極指が形成する電極交差部は、蛇行させないことが望ましい。電極交差部を蛇行させないで形成することにより、大きなエネルギーをもって弾性表面波を励振できる。
【0013】
導波路の蛇行は、すだれ状電極部が形成するIDT導波路部自体を蛇行させてもよい。また、すだれ状電極部に隣接して反射器を有する場合、導波路の蛇行は、反射器が形成する反射器導波路部を、IDT波路部の隣接部分に対して、弾性表面波の伝播方向と直交した方向に変位させて行なってもよい。IDT導波路部は、すだれ状電極部を構成する櫛型電極の複数の電極指と、電極指の長手方向側方に設けたグレーティング部とから構成することにより、蛇行の程度を大きくしても、電極指が形成する電極交差部を容易に蛇行させないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る弾性表面波素子片の好ましい実施の形態を、添付図面に従って詳細に説明する。なお、背景技術において説明した部分に対応した部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る弾性表面波フィルタとして用いられる弾性表面波素子片の模式的に示した平面図である。図1において、弾性表面波素子片40は、圧電基板12の中央部にすだれ状電極部である一対のIDT42、44が弾性表面波の伝播方向に沿って設けてある。各IDT42、44は、それぞれ櫛型電極46(46a、46b)から構成してある。各櫛型電極46は、櫛歯となる複数の電極指20(20a、20b)を有する。櫛型電極46a、46bは、それぞれの電極指20が相互に噛み合うように配置してある。そして、それぞれのIDT42、44は、電極指20が電極交差部34、36を形成している。
【0015】
IDT42、44を構成している一方の櫛型電極46aは、電極指20aの一端がバスバー48によって相互に接続されている。他方の櫛型電極46bは、櫛型電極46aのバスバー48に相当した部分、すなわち電極指20bの長手方向側方にグレーティング部50を有している。グレーティング部50は、電極指20bの一端を相互に接続している。グレーティング部50は、図2に示したように、グリッド52とショートバー54とから形成してある。グリッド52は、電極指20に対応して設けてあって、実施形態の場合、電極指20と同軸に形成してある。ショートバー54は、グリッド52に直交して設けてあり、各グリッド52を相互に接続している。ショートバー54は、複数形成してあって、グレーティング部50におけるオーミック抵抗が小さくなるようにしている。
【0016】
また、櫛型電極46bのグレーティング部50の長手方向一端には、ワイヤボンディング部55が設けてあり、このワイヤボンディング部55に本図に図示しないボンディングワイヤ26を接合するようになっている。ワイヤボンディング部55は、グレーティング部50を形成している金属と同じ導電性金属によって形成してあり、グリッド52とショートバー54とが形成したグレーティング部50の升目を埋めて設けてある。
【0017】
なお、櫛型電極46bは、実施形態の場合、太さが5μmのショートバー54を3本設けた場合を示しているが、ショートバー54の太さと数は、弾性表面波素子片40の特性を考慮して、適宜に設定することができる。また、ワイヤボンディング部55は、グレーティング部50の他端側、すなわち反射器56と反対側の隣接したIDT側に形成してもよい。
【0018】
弾性表面波素子片40は、弾性表面波の伝播方向にIDT42、44を挟んで一対の反射器56(56a、56b)を有する(図1参照)。反射器56は、電極指20に平行な複数の導体ストリップ30を有している。そして、反射器56は、複数の導体ストリップ30の長手方向一端側、すなわち櫛型電極46aのバスバー48側が、図2に詳細を示したように、ショートバー54と同様の複数のショートバー58によって相互に接続され、格子部60となっている。反射器56を構成している複数の導体ストリップ30の他端は、連結バー62によって相互に接続してある。
【0019】
弾性表面波素子片40は、圧電基板12が例えばSTカット水晶板によって形成され、IDT42、44と反射器56とがアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とするアルミ合金によって形成してある。このため、圧電基板12を伝播する弾性表面波は、IDT42、44の電極指20とグレーティング部50および反射器56の部分において伝播速度が遅くなっている。また、圧電基板12を伝播する弾性表面波は、IDT42、44のバスバー48およびIDT42、44と反射器56との外側の部分で伝播速度が速くなっている。すなわち、IDT42、44の電極指20を配置した部分とグレーティング部50および反射器56が弾性表面波を閉じ込めて伝播させる導波路を形成している。
【0020】
弾性表面波素子片40は、実施形態の場合、バスバー48の幅W1がグレーティング部50の幅W2と同じに形成してある。また、反射器56の格子部60の幅W3は、バスバー48の幅W1、グレーティング部の幅W2にほぼ等しくしてある。反射器56の形成する反射器導波路部の幅(反射器の開口幅)Bは、IDT42、44の電極交差部34、36の交差幅Wより広くなっていて、IDT42、44に電極指20とグレーティング部50とによって形成されるIDT導波路部の幅W0とほぼ等しくしてある。
【0021】
そして、図1に示してあるように、IDT42の電極指20とグレーティング部50とによって形成したIDT導波路部と、IDT44の電極指20とグレーティング部50とによって形成したIDT導波路部とが、弾性表面波の伝播する方向と直交する方向において、相互に位置がずれている。すなわち、IDT42のIDT導波路部の中心線64は、IDT44のIDT導波路部の中心線66に対して弾性表面波の伝播方向と直交した方向にずれている。また、反射器56aが形成する反射器導波路部の中心線68が隣接するIDT42のIDT導波路部の中心線64に対して、弾性表面波の伝播方向と直交した方向にずれていて、中心線66とほぼ対応した位置となっている。さらに、反射器56bが形成する反射器導波路部の中心線70が隣接するIDT44のIDT導波路部の中心線66に対して弾性表面波の伝播方向と直交した方向にずれていて、中心線64とほぼ対応した位置となっている。すなわち、反射器56aの反射器導波路部の中心線68、IDT42のIDT導波路部の中心線64、IDT44のIDT導波路部の中心線66、反射器56bの反射器導波路部の中心線70が千鳥状に位置し、これらの導波路部によって形成される導波路が、ほぼ蛇行して形成されている。なお、反射器56は、格子部60の弾性表面波の伝播方向に直交した方向の外縁が、バスバー48の弾性表面波の伝播方向に直交した方向の外縁を超えないようにしてある。
【0022】
このようになっている弾性表面波素子片40は、導波路が各IDT42、44のIDT導波路部と、反射器56a、56bの反射器導波路部とが千鳥状に配置され、いわゆる蛇行した状態に形成してある。すなわち、弾性表面波素子片40は、IDT42のIDT導波路部とIDT44のIDT導波路部、反射器56aの反射器導波路部とが弾性表面波の伝播方向と直交した方向にずれている。このため、例えばIDT42において弾性表面波を励振した場合、IDT42において生じた高次横モードがIDT44側、または反射器56a伝播すると、IDT44のIDT導波路部と反射器56aの反射器導波路部とは、伝播してくる高次横モードの一部を反射しない。さらに、IDT42のIDT導波路部は、IDT44のIDT導波路部と反射器56aの反射器導波路部とが反射した高次横モードの一部を反射しない。IDT44と反射器56bとの間においても同様である。このため、弾性表面波素子片40を用いてフィルタを形成した場合、高次横モードに基づくスプリアスが抑圧され、中心周波数の近傍に生じていたディップを改善することができる。
【0023】
図3は、弾性表面波素子片40を用いた弾性表面波フィルタの周波数に対する挿入損失を示したものである。図3の横軸は周波数であって、中心周波数F0に対する周波数偏差をMHzで示している。縦軸は、挿入損失をdBで示している。なお、中心周波数F0は約100MHzである。また、用いた弾性表面波素子片40は、電極交差部34、36の交差幅Wが700μm、電極交差部34、36とグレーティング部50との距離が約10μm、バスバー48の幅W1とグレーティング部50の幅W2とが125μmである。図3に示してあるように、図8のαに対応したディップβが大きく改善されている。
【0024】
しかも、第1実施形態における弾性表面波素子片40は、ボンディングワイヤを接合するワイヤボンディング部55がIDT42、44のグレーティング部50の端部に設けてある。このため、弾性表面波素子片40は、ボンディングワイヤを接合するために、幅が約200μmの幅の広いバスバーを設けたり、バスバーの弾性表面波の伝播方向と直交した方向の側方に約200μm×200μm程度のボンディングパッドを設ける必要がない。したがって、弾性表面波素子片40の小型化を図ることができる。
【0025】
図4は、第2実施の形態に係る弾性表面波素子片の模式的に示した平面図である。この実施形態に係る弾性表面波素子片72は、反射器74(74a、74b)の弾性表面波の伝播方向と直交した方向における寸法が前記実施形態に係る弾性表面波素子片40の反射器56の寸法と異なっている。すなわち、弾性表面波素子片72は、反射器74の弾性表面波の伝播方向と直交した方向における外径寸法が、この方向におけるIDT42、44の外径寸法とほぼ等しくなっている。そして、反射器74は、複数の導体ストリップ30の、格子部60と反対側の端部が、IDT42、44のグレーティング部50の幅にほぼ等しい太い連結バー76によって相互に接続してある。他の構成は、前記実施形態とほぼ同様である。
【0026】
この実施形態においても、反射器74aが形成する反射器導波路部の中心線68が隣接するIDT42の形成するIDT導波路部の中心線64に対して弾性表面波の伝播方向と直交した方向にずれている。そして、中心線68の位置が、IDT44の形成するIDT導波路部の中心線66とほぼ対応した位置となっている。反射器74bも同様であって、反射器導波路部の中心線70の位置が隣接するIDT44のIDT導波路部の中心線66に対して弾性表面波の伝播方向と直交した方向にずれていて、IDT42のIDT導波路部の中心線64と対応した位置となっている。すなわち、反射器導波路部の中心線68、70とIDT導波路部の中心線64、66とが千鳥状となっていて、これらの導波路部によって形成された導波路がいわゆる蛇行している。
このようになっている弾性表面波素子片72においても、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0027】
図5は、第3実施形態に係る弾性表面波素子片の模式的に示した平面図である。この弾性表面波素子片80は、IDT42、44が一対の櫛型電極82(82a、82b)から構成してある。各櫛型電極82a、82bは、同一構造に形成してある。すなわち、櫛型電極82は、各電極指20の長手方向の一端を相互に接続した連結部84(84a、84b)を備えている。これらの連結部84は、それそれバスバー部86(86a、86b)と、グレーティング部88(88a、88b)とからなっている。バスバー部86とグレーティング部88とは、実施形態の場合、連結部84の長手方向において連結部84の半分ずつ形成してある。そして、連結部84aと連結部84bとでは、弾性表面波の伝播方向における位置が相互に逆になっている。
【0028】
すなわち、連結部84bを形成しているグレーティング部88bの弾性表面波の伝播方向における位置が、連結部84aのバスバー86aの位置に対応している。また、連結部84bのバスバー86bの位置が連結部84aのグレーティング部88aの位置に対応している。このため、IDT42、44は、それぞれ弾性表面波の伝播方向と直交した方向に相互にずれた2つのIDT導波路部を形成している。そして、反射器56aの形成する反射器導波路部に隣接したIDT42の、グレーティング部88bを有するIDT導波路部は、反射器56aの反射器導波路部と弾性表面波の伝播方向と直交した方向にずれている。したがって、グレーティング部88bを有するIDT導波路部の中心線90の位置が反射器56aの反射器導波路部の中心線68に対して弾性表面波の伝播方向と直交した方向にずれ、反射器56bの反射器導波路部の中心線70と対応した位置となっている。また、IDT42のグレーティング部88aを有する導波路部の中心線92は、中心線90と弾性表面波の伝播方向と直交した方向にずれ、反射器56aが形成する反射器導波路部の中心線68の位置と対応した位置となっている。
【0029】
IDT44が形成するIDT導波路部も同様になっていて、IDT44のグレーティング部88aを有する導波路部の中心線94と、グレーティング部88bを有する導波路部の中心線96とが弾性表面波の伝播方向と直交した方向に相互にずれている。そして、IDT44のグレーティング部88aを有する導波路部の中心線94の位置は、IDT42のグレーティング部88bを有するIDT導波路部の中心線90と、反射器56bの反射器導波路部の中心線70と対応した位置となっている。さらに、IDT44のグレーティング部88bを有する導波路部の中心線96の位置は、IDT42のグレーティング部88aを有するIDT導波路部の中心線92と、反射器56aの反射器導波路部の中心線68と対応した位置となっている。すなわち、弾性表面波素子片80は、導波路を構成しているIDT42、44と反射器56の各導波路部の中心線が、隣接する導波路部の中心線同士で弾性表面波の伝播する方向と直交する方向に相互にずれていて、中心線の位置が千鳥状となる。したがって、弾性表面波素子片80は、導波路が全体として蛇行状をなしている。この第3実施形態に係る弾性表面波素子片80においても、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0030】
図6は、第4実施の形態に係る弾性表面波素子片の模式的に示した平面図である。第4実施形態に係る弾性表面波素子片100は、IDT42、44がいずれも櫛型電極46a、46bによって構成してある。そして、各IDT42、44の櫛型電極46aは、バスバー48が弾性表面波の伝播方向に対して同じ側となるように配置してある。したがって、IDT42の形成するIDT導波路部の中心線102と、IDT44の形成する中心線104との弾性表面波伝播方向と直交した方向における位置が一致している。
【0031】
また、弾性表面波素子片100は、反射器106(106a、106b)が、複数の導体ストリップ30と、複数の導体ストリップ30の両端に設けた連結バー62とから構成してある。連結バー62は、各導体ストリップ30の端部を相互に連結している。そして、反射器106は、IDT42、44のバスバー48側に寄せて形成してある。このため、反射器106は、反射器導波路部の中心線108がIDT導波路部の中心線102、104に対して、弾性表面波の伝播方向と直交した方向にずれている。この弾性表面波素子片100においても前記実施形態と同様の効果をえることができる。
【0032】
前記各実施形態においては、すだれ状電極部であるIDTを弾性表面波の伝播方向に2つ設けた場合について説明したが、IDTは3つ以上であってもよい。また、前記実施形態においては、フィルタ用の弾性表面波素子片について説明したが、弾性表面波素子片はIDTが1つの共振子用であってもよい。そして、前記実施形態においては、1つのIDTにおいて、IDT導波路部を2つに分割して、各導波路部を相互に弾性表面波の伝播方向と直交した方向にずらした場合について説明したが、1つのIDTにおいて、IDT導波路部を3つ以上に分割し、隣接した部分同士において、弾性表面波の伝播方向と直交した方向に相互にずらしてもよい。さらに、前記実施形態においては、IDTを挟んで反射器を設けた共振型の弾性表面波素子片について説明したが、弾性表面波素子片は反射器を有しないトランスバーサル型であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る弾性表面波素子片の模式的に示した平面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】第1実施形態の弾性表面波素子片を用いた弾性表面波フィルタの周波数に対する挿入損失を示す図である。
【図4】第2実施形態に係る弾性表面波素子片の模式的に示した平面図である。
【図5】第3実施形態に係る弾性表面波素子片の模式的に示した平面図である。
【図6】第4実施形態に係る弾性表面波素子片の模式的に示した平面図である。
【図7】従来のフィルタ用表面波素子片の一例を模式的に示した平面図である。
【図8】従来のフィルタ用表面波素子片を用いたフィルタの周波数と挿入損失との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
12………圧電基板、34、36………電極交差部、40………弾性表面波素子片、42、44………すだれ状電極部(IDT)、46a、46b………櫛型電極、48………バスバー、50………グレーティング部、56a、56b………反射器、60………格子部、64、66、68、70………中心線、72、80………弾性表面波素子片、74a、74b………反射器、82a、82b………櫛型電極、84a、84b………連結部、86a、86b………バスバー部、88a、88b………グレーティング部、90、92、94、96………中心線、100………弾性表面波素子片、102、104,108………中心線、106a、106b………反射器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板にすだれ状電極部が設けてある弾性表面波素子片であって、
励振された弾性表面波が伝播する前記圧電基板に形成した導波路の少なくとも一部が蛇行している、
ことを特徴とする弾性表面波素子片。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波素子片において、
前記すだれ状電極部を構成している電極指が形成する電極交差部は、蛇行していないことを特徴とする弾性表面波素子片。
【請求項3】
請求項1または2に記載の弾性表面波素子片において、
前記すだれ状電極部の形成するIDT導波路部が蛇行していることを特徴とする弾性表面波素子片。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の弾性表面波素子において、
前記圧電基板には、前記すだれ状電極部に隣接して反射器が形成され、
前記反射器の形成する反射器導波路部は、前記すだれ状電極部が形成するIDT波路部の隣接部分に対して、前記弾性表面波の伝播方向と直交した方向に変位している、
ことを特徴とする弾性表面波素子片。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の弾性表面波素子片において、
前記すだれ状電極部の形成するIDT導波路部は、前記すだれ状電極部を構成する櫛型電極の複数の電極指と、前記電極指の長手方向側方に設けたグレーティング部とからなることを特徴とする弾性表面波素子片。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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