説明

弾性表面波素子

【課題】 小型化が可能で、検査の生産性を高め、且つコスト低減を実現できる弾性表面波素子を提供する。
【解決手段】 SAW共振素子100は、圧電基板120と、圧電基板120の表面に形成され、第1櫛歯電極140と第2櫛歯電極150が交差してなるIDT電極130と、IDT電極130の表面波が伝播する方向の両側に設けられる第1反射器160と第2反射器170と、が備えられ、隣り合う第1櫛歯電極140の給電導体142と第2反射器170の給電導体172とを連続して第1引出電極143を延在形成し、隣り合う第2櫛歯電極150の給電導体152と第1反射器160の給電導体163とを連続して第2引出電極153を延在形成し、第1引出電極143と第2引出電極153とが、それぞれプローブ接触領域を含み、第1引出電極143と第2引出電極153との距離が、標準となるプローブの端子間の距離Aを有するよう設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波素子に関し、詳しくは弾性表面波素子における電極構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、弾性表面波素子は、通信分野等で広く利用され、高性能、量産性に特に優れた特徴を有することから携帯電話等の小型電子機器に多く用いられている。このような小型電子機器では、さらに小型化が要求されてきており、弾性表面波装置の小型化も要求され、このことから弾性表面波素子の小型化も要求されてきている。
【0003】
弾性表面波素子の小型化技術として、従来、圧電基板にIDT電極と、このIDT電極から引き出された複数の引出電極と、これら引出電極の先端部にバンプ電極が形成された弾性表面波素子が、表面に電極ランドが形成されたベース基板に、バンプ電極と電極ランドとを半田バンプ接続することにより載置されてなる弾性表面波装置において、全てのバンプ電極がIDT電極の片側に形成されている弾性表面波素子というものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、圧電基板上に複数のIDT電極を配置してなる弾性表面波素子と、セラミックパッケージとから構成される弾性表面波装置であって、弾性表面波素子のパッド電極を圧電基板の一辺寄りに配置すると共に、パッケージの内底面の一辺にパッド電極を設け、このパッド電極を弾性表面波素子のパッド電極を対向するよう配置し、ボンディングワイヤにて接続する弾性表面波素子が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、櫛歯電極からなるIDT電極と反射器を有する1ポート型の弾性表面波素子の電極構成において、一般的に採用されている例を図6に示し説明する。
図6は、従来採用されている弾性表面波素子の平面図である。図6において、弾性表面波素子10は、圧電基板20の表面にIDT電極30と、表面波の進行方向両側に形成される反射器60,70とから構成されている。
【0006】
IDT電極30は、複数の電極指41が給電導体42に端部が接続されてなる櫛歯電極40と、複数の電極指51が給電導体52に接続されてなる櫛歯電極50と、が相互に交差して形成されている。
【0007】
反射器60は、複数の反射指61の端部が、それぞれ対向する給電導体62,63とに接続されて構成され、反射器70も同様に複数の反射指71の端部が、それぞれ対向する給電導体72,73とに接続されて構成されている。
これらIDT電極30と反射器60,70とは電気的に独立して配置されている。
【0008】
櫛歯電極40は入出力電極であり、櫛歯電極50はアース電極(GND電極)である。櫛歯電極40の給電導体42からは、外側に引出電極43が形成され、この引出電極43の内部の図中、破線で示す位置に検査用プローブの接触領域44(以降、単純にプローブ接触領域と呼称する)が設けられている。
【0009】
また、櫛歯電極50の給電導体52からは、外側に引出電極53が形成され、この引出電極53の内部の図中、破線で示す位置にプローブ接触領域54が設けられている。
【0010】
これらプローブ接触領域44とプローブ接触領域54との距離Aが、検査用プローブの2端子間の距離Aと同じであり、圧電基板20がウエハ状態(スクライブ前)において、検査用プローブを引出電極43,53に接触させて弾性表面波素子の周波数測定、CI値測定、電極ショート等の検査が行われる。仮に、この弾性表面波素子10を標準素子としたときに使用される検査用プローブが標準プローブである。
【0011】
【特許文献1】特開平10−107575号公報(第2,3頁、図1)
【特許文献2】特開2002−9585号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような特許文献1や特許文献2では、IDT電極の一辺方向外側にベース基板またはパッケージの電極とを接続するための引出電極(バンプ電極、パッド電極)を配置し、圧電基板の幅方向の小型化を実現している。
これら弾性表面波素子は、圧電基板ウエハ上に複数のIDT電極を形成した後、スクライブして1個ずつの弾性表面波素子を製造することが一般的であり、この際、ウエハ状態で検査用プローブを所定の電極に押接して弾性表面波素子の周波数測定、CI値測定、電極ショート等の検査を行う。しかしながら、前述した特許文献1、特許文献2では、この検査用の電極については考慮されていない。または、前記バンプ電極、パッド電極と同じ位置に検査用電極を配置しなければならない。
【0013】
このような構造では、例えば、バンプ電極やパッド電極に検査用プローブを押接して検査を行うことが考えられるが、検査用プローブを押接することによりバンプ電極やパッド電極に検査用プローブの圧痕がつき、その後のバンプ接続やワイヤーボンディング特性が悪化することが予測される。
【0014】
また、これら弾性表面波素子をより小型化、あるいは高周波化することによる小型化をする際には、バンプ電極間の距離、パッド電極間の距離も小さくなるが、その都度、検査用プローブをその距離に対応して変えなければならない。
【0015】
図7を用いて、前述した図6に示す弾性表面波素子10を幅方向に小型化した例を示し、その課題について説明する。図6と同じ符号を附して説明する。図7で示す構成は、引出電極43,53を幅方向に減縮している例であり、当然、プローブ接触領域44,54間の距離も減縮される。
【0016】
ここで、端子間距離Aを有する前述した標準プローブを使用するとき、プローブ接触領域54の中心位置Bから標準プローブの軌跡Cを二点鎖線で表すと、この標準プローブの軌跡Cは、引出電極43の構成領域には入らない。従って、この減縮された弾性表面波素子の特性検査のためには専用のプローブを用意しなけばならない。
【0017】
しかし、検査用プローブは高い精度が要求され、しかも弾性表面波素子のサイズ(IDT電極のサイズ)に対応してプローブ接触領域44,54の距離を変えるたびに、プローブ端子間の距離の調整が必要になり、生産性が低下する他、コスト低減が困難になるというような課題がある。
【0018】
本発明の目的は、小型化と、検査の生産性を高め、且つコスト低減を実現できる弾性表面波素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の弾性表面波素子は、圧電基板と、該圧電基板の表面に形成され、対向する給電導体のそれぞれに垂直に形成される複数の電極指が交差してなる第1櫛歯電極と第2櫛歯電極とから構成されるIDT電極と、前記IDT電極の表面波が伝播する方向の両側に反射指の両端を給電導体で接続してなる第1反射器と第2反射器と、が備えられ、隣り合う前記第1櫛歯電極の給電導体と前記第2反射器の給電導体とを連続して第1引出電極を延在形成し、隣り合う前記第2櫛歯電極の給電導体と前記第1反射器の給電導体とを連続して第2引出電極を延在形成し、前記第1引出電極と前記第2引出電極とが、それぞれ検査用プローブの接触領域を含み、前記第1引出電極と前記第2引出電極との間の距離Aが、前記IDT電極の構成が変わっても一定の距離を有するよう設定されていることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、隣り合う前記第1櫛歯電極の給電導体と前記第2反射器の給電導体とを連続して第1引出電極を形成し、隣り合う前記第2櫛歯電極の給電導体と前記第1反射器の給電導体とを連続して第2引出電極を形成しているため、第1引出電極及び第2引出電極の面積を大きく設定することができ、検査用プローブの接触領域の設定可能範囲を広くすることにより、IDT電極のサイズが減縮された場合でも共通の端子間距離Aを有するプローブを使用することができる。
【0021】
このことによって、弾性表面波素子(ウエハ状態における)の検査時において、ウエハまたは検査用プローブ角度変更、平面方向の平行移動だけ検査用プローブの接触領域と検査用プローブとの位置合わせが可能となり、検査用プローブの接触領域間の距離及び配置に対応して検査用プローブの調整が不要で、生産性が向上し、コストの低減をはかることができる。
【0022】
また、このように検査用プローブの接触領域を構成することで、前述した図6,7に表す従来のような検査用プローブの接触領域を設けることによる弾性表面波素子のサイズへの制約を排除することができ、小型化を実現できる。
【0023】
また、本発明では、前記第1引出電極と前記第2引出電極とが、表面波が伝播する方向に対して垂直方向、且つ前記IDT電極の外側の一方側に形成されることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、第1引出電極と第2引出電極とが垂直方向(弾性表面波素子の幅方向)の一方側に配置することで、IDT電極の両側に第1引出電極と第2引出電極とを形成する構成に比べ、幅方向の幅を少なくとも引出電極1個分減縮することができる。
【0025】
また、前記第1引出電極と前記第2引出電極とが、表面波が伝播する方向に対して垂直方向、且つ前記IDT電極の外側の一方側に形成され、他方側に、前記第1引出電極または前記第2引出電極のどちらか一方と異なる電位の第3引出電極をさらに形成し、前記第3引出電極と前記第1引出電極または前記第2引出電極との距離が、前記第1引出電極と前記第2引出電極との距離Aと同じ距離を有するよう設定されていることが好ましい。
【0026】
弾性表面波素子を高周波化等により長手方向及び幅方向両方を減縮した場合においては、第1引出電極と第2引出電極とを一方方向に配置した場合、検査用プローブの端子間距離に対応できないことが考えられるが、IDT電極を挟んで第1引出電極または第2引出し電極とは反対側に第3引出電極を設けることにより、IDT電極を検査用プローブが跨ぐようにすることで、上述の引出電極間の距離が大きく得られるため、検査用プローブの共通化を実現することができる。
【0027】
また、前記第1引出電極と第2引出電極と第3引出電極の少なくとも電位の異なる引出電極それぞれが、検査用プローブの接触領域と外部回路との接続領域とを有することが好ましい。
ここで、外部回路との接続領域とは、例えば、ワイヤボンディング接続のボンディング領域を示す。
【0028】
弾性表面波素子は、外部に備えられる駆動回路または検出回路にワイヤボンディング接続される。従って、前述した引出電極の面積を広くとれることにより、検査用プローブの接触領域と外部回路との接続領域を各引出電極にそれぞれ設けることができる。このことによって、特性検査の際発生するプローブの圧痕がない領域にワイヤボンディング接続を行うことができ、接続の信頼性を高めることができる。
【0029】
また、前記第1引出電極と第2引出電極と第3引出電極の少なくとも電位が異なる引出電極それぞれが、検査用プローブの接触領域と外部回路との接続領域との間に空隙部を備えていることが望ましい。
【0030】
このことにより、検査用プローブの接触領域と外部回路との接続領域とが分けて形成されることになり、仮に外部回路との接続に半田バンプや導電性接着剤が採用される場合において半田や導電性接着剤が検査用プローブの接触領域に流れ出し、プローブとの接触不良を低減することができる。
【0031】
さらに、このような構成にすることで、検査用プローブの接触領域と外部回路との接続領域とを区別することができるので検査用プローブの位置合わせが容易になるという効果がある。
【0032】
また、前記第1櫛歯電極と前記第2反射器とを連続する給電導体と、前記第2櫛歯電極と第1反射器とを連続する給電導体とが、少なくとも前記検査用プローブの接触領域に要求される面積を構成する幅を有して形成されていることが望ましい。
【0033】
この構成は、給電導体から引出電極を延在する前述の構成に対して、給電導体自身を検査用プローブの接触領域に必要とされる幅に形成するため、電極形状を単純化することができる他、検査用プローブの接触領域が設けられる範囲をより一層広くすることができ、標準の検査用プローブの弾性表面波素子のサイズへの対応範囲を広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る弾性表面波素子を示し、図2は実施形態2、図3は実施形態3、図4は実施形態4、図5は実施形態5を示している。
(実施形態1)
【0035】
図1は実施形態1に係るSAW共振素子100を示す平面図である。本実施形態では、弾性表面波素子としてSAW共振素子を例にあげ説明する。図1において、SAW共振素子100は、圧電体材料からなる矩形の圧電基板120と、圧電基板120の表面に形成されるIDT電極(Interdigital Transducer)130と、IDT電極130の表面波の伝播方向両側にそれぞれに形成される第1反射器160と第2反射器170とから構成されている。
【0036】
圧電基板120は、ZnO、AlN、PZT(Pb−Zr−Ti)または水晶などを材料として形成され、図示しないウエハ上に複数個が配列され、IDT電極130及び第1反射器160と第2反射器170とが形成された後、特性検査をし、図1に示す形状にスクライブされて1個のSAW共振素子100が形成される。
【0037】
IDT電極130は、第1櫛歯電極140と第2櫛歯電極150とから構成されている。第1櫛歯電極140は、給電導体142に対して垂直に形成される複数の電極指141から構成され、第2櫛歯電極150は、給電導体142に対向する給電導体152に垂直に形成される複数の電極指151から構成されている。電極指141と電極指151とが交互に交差されて、1ポートのIDT電極130が構成されている。
【0038】
第1反射器160は、複数の反射指161の両端を一対の給電導体162、163で接続して形成されて表面波の進行方向(図中、右側)に配置されている。第2反射器170も同様に複数の反射指171の両端を一対の給電導体172、173で接続して形成されて表面波の進行方向(図中、左側)に配置されている。
【0039】
第1櫛歯電極140、第2櫛歯電極150、第1反射器160、第2反射器170とは、Auまたはアルミニウム等の電気伝導性が高い金属薄膜で構成され、ウエハ上にフォトリソグラフィ等により正確に形成される。
【0040】
ここで、隣り合う第1櫛歯電極140の給電導体142と第2反射器170の給電導体172とは相互に長手方向に延在し連続されている。また、隣り合う第2櫛歯電極150の給電導体152と第1反射器160の給電導体163とは相互に延在し連続されている。
【0041】
このSAW共振素子100に駆動電圧が印加される際、第1櫛歯電極140は入出力電極であり、第1櫛歯電極140と第2反射器170は同電位である。また、第2櫛歯電極150はアース電極(GND電極)であり、第2櫛歯電極150と第1反射器160とは同電位である。
なお、入出力電極とGND電極は入れ替えることができる。
【0042】
給電導体172と同電位の給電導体173からは第1引出電極143が表面波の伝播方向に対して垂直方向に延在形成され、給電導体152、163からは第2引出電極153が延在形成されている。これら第1引出電極143と第2引出電極153とは共に、図に示すようにIDT電極130の外側の一方方向(図中、下側)に設けられる。第1引出電極143には、図中、破線で表される検査用プローブの接触領域(以降、単にプローブ接触領域と表す)144と、外部回路との接続をワイヤボンディングで行うためのボンディング接続領域145(以降、ボンディング領域145と表す)とが設けられ、第2引出電極153には、図中、破線で表されるプローブ接触領域154と、ボンディング領域155とが設けられている。
【0043】
第1引出電極143(プローブ接触領域144の中心位置B)と第2引出電極153(プローブ接触領域154の中心位置D)との距離Aは、標準の検査用プローブ(以降、単にプローブと表す)の2端子間の距離Aに相当する。また、図に示すボンディング領域145とプローブ接触領域144、ボンディング領域155とプローブ接触領域154とは、それぞれ第1引出電極143の範囲内、第2引出電極153の範囲内においてプローブの端子間の距離Aを確保しつつ、相互に交差しない位置に自在に設定することができる。
【0044】
従って、前述した実施形態1によれば、隣り合う第1櫛歯電極140の給電導体142と第2反射器170の給電導体172とを連続し、給電導体173側に第1引出電極143を形成し、隣り合う第2櫛歯電極150の給電導体152と第1反射器160の給電導体163とを連続して第2引出電極153を形成しているため、第1引出電極143及び第2引出電極153の長手方向に向かって面積を大きく設定することができ、プローブの接触可能な位置を自在に設定することができ、IDT電極130のサイズが減縮された場合でも共通の端子が一定の距離Aを有するプローブを使用することができる。
【0045】
このことによって、弾性表面波素子(ウエハ状態)の検査時のウエハまたはプローブの角度変更、平面方向の平行移動だけプローブ接触領域とプローブとの位置合わせが可能となり、プローブ接触領域間の距離及び配置に対応してプローブの調整が不要で、生産性が向上し、コストの低減をはかることができる。
【0046】
また、このように引出電極を構成することで、図7に表す従来のようなプローブ接触領域を設けることによる弾性表面波素子のサイズへの制約を排除することができ、弾性表面波素子の小型化を実現できる。
【0047】
また、第1引出電極143と第2引出電極153とを幅方向一方側(図中、下側)に配置することで、IDT電極130の両側に第1引出電極と第2引出電極とを形成する構成(図7、参照)に比べ、幅方向の幅を少なくとも引出電極1個分減縮することができる。
(実施形態2)
【0048】
続いて、本発明の実施形態2に係る弾性表面波素子としてのSAW共振素子の構成について説明する。本実施形態は、前述した実施形態1に比べ、第3の引出電極を設けたことを特徴とし、他のIDT電極130、第1反射器160、第2反射器170の基本構成は同じであるため説明を省略し、同じ機能部位には同じ符号を附して説明する。
図2は、実施形態2に係るSAW共振素子100の平面図である。図2において、第1引出電極143と第2引出電極153の他に第3引出電極146が設けられている。
【0049】
第3引出電極146は、第1櫛歯電極140の給電導体142及び第2反射器170の給電導体172から延在形成されている。従って、第1引出電極143とは同電位である。第3引出電極146内には、プローブ接触領域147とボンディング領域148とが設けられ、第2引出電極153内に設けられるプローブ接触領域154(中心D)とプローブ接触領域147(中心E)との距離は、標準となるプローブの端子間の距離Aの軌跡上にある。また、第3引出電極146の範囲内でボンディング領域148が設けられている。
【0050】
第2引出電極153と第3引出電極146とは、それぞれ給電導体142と172の範囲、給電導体152,163の範囲で充分大きく設定することができ、それぞれ第2引出電極153の範囲内、第3引出電極146の範囲内においてプローブの端子間の距離Aをを確保しつつ、ボンディング領域148,155とは相互に交差しない位置に自在に設定することができる。
【0051】
なお、第3引出電極146は、SAW共振素子をさらに小型化する際に、前述した第1引出電極143と第2引出電極153との距離が、プローブの端子間の距離Aを確保できないほど減縮された際に設けられ、プローブは、IDT電極130を跨いで接触することになるため、その分だけプローブの端子間の距離A対して余裕大きくとることが可能となる。従って、第3引出電極146を設ける場合には、第1引出電極143を設けなくてもよい。
【0052】
従って、前述した実施形態2によれば、IDT電極130を挟んで反対側に第2引出電極153と第3引出電極146を設け、検査用プローブがIDT電極130を跨ぐように配置することで、IDT電極分だけ距離が大きく得られるため、さらに小型化した場合においてもプローブの共通化を実現することができる。
(実施形態3)
【0053】
続いて、本発明の実施形態3に係る弾性表面波素子としてのSAW共振素子の構成について図面を参照して説明する。本実施形態は、前述した実施形態1(図1、参照)に比べ、第1引出電極と第2引出電極の構成が異なることに特徴を有し、他のIDT電極130、第1反射器160、第2反射器170の基本構成は同じであるため説明を省略し、同じ機能部位には同じ符号を附して説明する。
図3は、実施形態3に係るSAW共振素子100の平面図である。図3において、第1引出電極143と第2引出電極153には、空隙部149,156が設けられ、それぞれの空隙部によって、引出電極が2分割されている。
【0054】
第1引出電極143の長手方向略中央部には空隙部149が開設され、第1引出電極143がプローブ接触領域143aとボンディング領域143bとに分割されている。また、第2引出電極153にも空隙部156が開設され、第2引出電極153がプローブ接触領域153aとボンディング領域153bとに分割されている。プローブ接触領域143aとプローブ接触領域153aとの距離は、前述した標準となるプローブの端子間の距離Aを確保するように設定される。
【0055】
従って、前述した実施形態3によれば、プローブ接触領域143a,153aとボンディング領域143b、153bとが分離されたような形態となり、仮に外部回路との接続が半田バンプや導電性接着剤が採用される場合において半田や導電性接着剤がプローブ接触領域に流れ出し、プローブとの接触不良を低減することができる。
【0056】
さらに、このような構成にすることで、プローブ接触領域と、ボンディング領域と、を区別することができるので検査用プローブの位置合わせが容易になるという効果がある。
(実施形態4)
【0057】
次に、本発明に係る実施形態4について図面を参照して説明する。本実施形態は、前述した実施形態1〜3が、給電導体から引出電極を延在させて形成していることに対して、給電導体自身の幅をプローブ接触領域に対応した幅を有するように形成したことに特徴を有し、他のIDT電極130、第1反射器160、第2反射器170の基本構成は同じであるため説明を省略し、同じ機能部位には同じ符号を附して説明する。
図4は、実施形態4に係るSAW共振素子100の平面図である。図4において、第1櫛歯電極140の給電導体142と第2反射器170の給電導体172とは、それぞれが延在され連続して形成され、第2櫛歯電極150の給電導体152と第1反射器160の給電導体163とは、それぞれが延在され連続して形成されている。
【0058】
IDT電極130に対して一方側の給電導体142,172、162と、他方側の給電導体152,173,163とは、それぞれ、弾性表面波素子の小型化に配慮しつつ、プローブ接触領域とボンディング領域が設けられる程度の面積、すなわち幅を有して形成される。
【0059】
従って、図4に示すように、プローブ接触領域144は、給電導体173の範囲内において自在の位置に設けることが可能であり、また、プローブ接触領域154は、給電導体152,163を合成した範囲に自在に設けることができることになり、標準となるプローブの端子間の距離Aに対応した距離を確保できる。
【0060】
このような構成では、プローブ接触領域144とはIDT電極130を挟んで他方側に、プローブ接触領域147を設けることが可能となり、プローブ接触領域144とプローブ接触領域147とは、任意に選択してプローブの端子位置を設定することができる。
【0061】
このような実施形態4によれば、この構成は、給電導体から引出電極を延在する前述の構成に対して、給電導体142,172,162及び152,173,163をプローブ接触領域に必要とされる面積(幅)に形成しているため、電極形状を単純化することができる他、プローブ接触領域が設けられる範囲をより一層広くすることができ、標準の検査用プローブの弾性表面波素子のサイズへの対応範囲を広げることができる。
(実施形態5)
【0062】
続いて、本発明に係る実施形態5について図面を参照して説明する。前述した実施形態1〜4では、第1櫛歯電極140と第2反射器170、第2櫛歯電極150と第1反射器160をそれぞれ隣り合う給電導体を接続して形成されているが、本実施形態では、第1反射器160を第2櫛歯電極150とは接続しない構成を例示している。なお、他のIDT電極130、第1反射器160、第2反射器170の基本構成は同じであるため説明を省略し、同じ機能部位には同じ符号を附して説明する。
【0063】
図5は、本実施形態5に係るSAW共振素子100の構成を示す平面図である。図5において、第1櫛歯電極140と第2反射器170は、それぞれの給電導体142及び172によって接続されているが、第2櫛歯電極150と第1反射器160とは接続されず、第1反射器160は電気的に独立して形成されている。第2反射器170の給電導体173からは第1引出電極143が延在され、第2櫛歯電極150の給電導体152からは第2引出電極153が延在されている。
【0064】
ここで、第1引出電極143と第2引出電極153とは、標準となるプローブの端子間の距離Aが確保される範囲の大きさで形成されている。また、第1引出電極143にはプローブ接触領域144とボンディング領域145、第2引出電極153にはプローブ接触領域154とボンディング領域155とが設けられる。
【0065】
なお、図5では、第1反射器160を独立させる構造を例示しているが、第2櫛歯電極150と第1反射器160とを接続して第2引出電極153を設け、第2反射器170の給電導体172から第1引出電極143を延在形成し、第2反射器170を独立する構成を採用することもできる。
【0066】
従って、前述した実施形態5によれば、給電導体から引出電極を延在する前述の実施形態1〜4による構成に対して、給電導体自身をプローブ接触領域を設けるために必要とする幅に形成するため、電極形状を単純化することができる他、プローブ接触領域が設けられる範囲をより一層広くすることができ、標準プローブの弾性表面波素子のサイズへの対応範囲を広げることができる。
【0067】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、実施形態1〜5それぞれの電極の構成を組み合わせて構成することができ、実施形態3(図3、参照)のように引出電極を空隙部149、156によってプローブ接触領域143aとボンディング領域143b、プローブ接触領域153aとボンディング領域153bとに分割する構成を実施形態2及び実施形態4,5に応用することができる。
【0068】
また、弾性表面波素子がより小型化される場合には、実施形態2(図2、参照)に示す第3引出電極146を実施形態3,5の構成に応用することができる。
【0069】
従って、前述の実施形態1〜実施形態5によれば、弾性表面波素子の小型化と検査の生産性を高め、且つコスト低減を実現できる弾性表面波素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態1に係るSAW共振素子を示す平面図。
【図2】本発明の実施形態2に係るSAW共振素子を示す平面図。
【図3】本発明の実施形態3に係るSAW共振素子を示す平面図。
【図4】本発明の実施形態4に係るSAW共振素子を示す平面図。
【図5】本発明の実施形態5に係るSAW共振素子を示す平面図。
【図6】従来採用されているSAW共振素子を示す平面図。
【図7】従来採用されているSAW共振素子の小型化されたときの課題を示す平面図。
【符号の説明】
【0071】
100…弾性表面波素子としてのSAW共振素子、120…圧電基板、130…IDT電極、140…第1櫛歯電極、144,154…プローブ接触領域、145,155…ボンディング領域、150…第2櫛歯電極、142,162,172,173,152,163…給電導体、141,151…電極指、143…第1引出電極、153…第2引出電極、160…第1反射器、161,171…反射指、170…第2反射器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、該圧電基板の表面に形成され、対向する給電導体のそれぞれに垂直に形成される複数の電極指が交差してなる第1櫛歯電極と第2櫛歯電極とから構成されるIDT電極と、
前記IDT電極の表面波が伝播する方向の両側に反射指の両端を給電導体で接続してなる第1反射器と第2反射器と、が備えられ、
隣り合う前記第1櫛歯電極の給電導体と前記第2反射器の給電導体とを連続して第1引出電極を延在形成し、
隣り合う前記第2櫛歯電極の給電導体と前記第1反射器の給電導体とを連続して第2引出電極を延在形成し、
前記第1引出電極と前記第2引出電極とが、それぞれ検査用プローブの接触領域を含み、前記第1引出電極と前記第2引出電極との間の距離Aが、前記IDT電極の構成が変わっても一定の距離を有するよう設定されていることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波素子において、
前記第1引出電極と前記第2引出電極とが、表面波が伝播する方向に対して垂直方向、且つ前記IDT電極の外側の一方側に形成されることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項3】
請求項1に記載の弾性表面波素子において、
前記第1引出電極と前記第2引出電極とが、表面波が伝播する方向に対して垂直方向、且つ前記IDT電極の外側の一方側に形成され、
他方側に、前記第1引出電極または前記第2引出電極のどちらか一方と異なる電位の第3引出電極をさらに形成し、
前記第3引出電極と前記第1引出電極または前記第2引出電極との距離が、前記第1引出電極と前記第2引出電極との距離Aと同じ距離を有するよう設定されていることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の弾性表面波素子において、
前記第1引出電極と第2引出電極と第3引出電極の少なくとも電位の異なる引出電極それぞれが、検査用プローブの接触領域と外部回路との接続領域とを有することを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の弾性表面波素子において、
前記第1引出電極と第2引出電極と第3引出電極の少なくとも電位が異なる引出電極それぞれが、検査用プローブの接触領域と外部回路との接続領域との間に空隙部を備えていることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項6】
請求項1に記載の弾性表面波素子において、
前記第1櫛歯電極と前記第2反射器とを連続する給電導体と、前記第2櫛歯電極と第1反射器とを連続する給電導体とが、少なくとも前記検査用プローブの接触領域に要求される面積を構成する幅を有して形成されていることを特徴とする弾性表面波素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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