説明

弾性表面波装置及び弾性表面波装置の製造方法

【課題】 半導体基板にIC領域と弾性表面波素子領域とを備え一つのチップに構成した
弾性表面波装置において、弾性表面波素子を形成する部分の平坦度を確保し、良好な特性
の得られる弾性表面波装置および弾性表面波装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体基板にIC領域と弾性表面波素子領域とを備え、一つのチップに構
成された弾性表面波装置1であって、弾性表面波素子領域における半導体基板30上及び
素子絶縁膜33上でかつ弾性表面波素子24が形成された領域の下方に、IDT電極22
の電極指21に略平行で同じピッチPである線状の層厚み調整膜32,35を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板にIC領域と弾性表面波素子領域とを備え、一つのチップに構成
した弾性表面波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SAW共振子またはSAWフィルタに代表される弾性表面波素子は、高周波、小型、量
産性などの優れた特徴を有することから、通信分野で広く利用されている。近年、携帯通
信機器等の普及により、高周波域で用いられる部品の小型化、軽量化が強く求められてい
る。
この要求に対して、例えば非特許文献1に示すように、弾性表面波素子をフィルタ単体
として用いるのではなく高周波増幅回路などがその一部に形成された半導体基板上に、圧
電薄膜を成膜し、SAWフィルタを形成した弾性表面波装置が提案されている。
【0003】
【非特許文献1】J.H.Viseer,IEEE,Ultrasonics Symposium,p.195−200(1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、半導体基板にIC領域と弾性表面波素子領域とを備え一つのチップに構成
した弾性表面波装置において、IC領域には半導体素子とそれらを接続する配線が絶縁膜
を介して積層して形成される。一方、弾性表面波素子領域には絶縁膜のみが積層されるた
め、IC領域と弾性表面波素子領域との間に段差が生ずる。通常、このような弾性表面波
装置は、半導体ウエハに多数の弾性表面波装置をそれぞれを隣接するように形成している
が、絶縁層などの層を積層していくことによってこの段差が傾斜を伴なって弾性表面波素
子領域に進行し、弾性表面波素子領域表面の平坦度を確保できないという問題がある。表
面の平坦度が悪いと弾性表面波素子の製作にあたり寸法精度を確保できず、弾性表面波素
子の特性を劣化させる。また、平坦度が悪いことによる表面の凹凸が圧電薄膜を形成する
際の膜厚のばらつきとなり、弾性表面波素子の共振周波数がばらつくことが予想される。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、半導体基板にI
C領域と弾性表面波素子領域とを備え一つのチップに構成した弾性表面波装置において、
弾性表面波素子領域の平坦度を確保し、良好な特性の得られる弾性表面波装置および弾性
表面波装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の弾性表面波装置は、半導体基板に少なくともIC
領域と弾性表面波素子領域とを備え一つのチップに構成された弾性表面波装置であって、
前記IC領域には半導体素子と、前記半導体素子を覆い弾性表面波素子領域にも及ぶ素子
絶縁膜が形成された半導体素子層と、前記半導体素子層の上に前記半導体素子との接続を
行う配線と前記配線間の絶縁し弾性表面波素子領域にも及ぶ配線絶縁膜を積層して形成さ
れた配線層と、前記配線絶縁膜の上方に形成された圧電薄膜と、前記弾性表面波素子領域
における前記圧電薄膜の上に形成された多数の電極指を設けたIDT電極を備える弾性表
面波素子と、を少なくとも備え、前記弾性表面波素子領域における前記半導体基板上ある
いは前記素子絶縁膜または前記配線絶縁膜の上でかつ前記弾性表面波素子が形成された領
域の下方に、少なくとも一層の前記IDT電極の電極指に略平行で同じピッチである線状
の層厚み調整膜が形成されたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、弾性表面波素子領域における半導体基板上あるいは素子絶縁膜また
は配線絶縁膜の上に層厚み調整膜を設けることにより、IC領域と弾性表面波素子領域の
段差を減少させることができ、弾性表面波素子領域の平坦度を確保できる。また、層厚み
調整膜をIDT電極の電極指に略平行で同じピッチで線状に設けることにより、IDT電
極で励振された弾性表面波が乱反射を起こすことがない。
このように、平坦な弾性表面波素子領域に弾性表面波素子を形成することができること
で、寸法精度のよいIDT電極を形成でき弾性表面波素子の共振周波数のばらつきを減少
させ、さらに弾性表面波の乱反射を防止できることから、特性の良好な弾性表面波装置を
提供できる。
【0008】
本発明の弾性表面波装置は、前記層厚み調整膜は前記電極指の線幅の中心線と前記層厚
み調整膜の線幅の中心線を同じくする位置を基準に前記電極指のピッチと同じピッチに形
成されたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、弾性表面波の乱反射を効果的に防止することができ、特性の良好な
弾性表面波装置を提供できる。
【0010】
本発明の弾性表面波装置は、前記電極指の線幅と前記層厚み調整膜の線幅とが同じ線幅
にて形成されたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、弾性表面波の乱反射をさらに効果的に防止することができ、特性の
良好な弾性表面波装置を提供できる。
【0012】
本発明の弾性表面波装置は、前記層厚み調整膜は非連続の線状の形状であることを特徴
とする。
【0013】
この構成によれば、層厚み調整膜の製作を容易にし、また層厚み調整膜の設計の自由度
が増す。
【0014】
本発明の弾性表面波装置は、前記配線絶縁膜と前記圧電薄膜の間に耐湿膜がさらに形成
されたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ICを湿度の影響から保護することができ、信頼性の高い弾性表面
波装置を提供できる。
【0016】
本発明の弾性表面波装置の製造方法は、半導体基板に少なくともIC領域と弾性表面波
素子領域とを備え一つのチップに構成した弾性表面波装置の製造方法であって、前記半導
体基板の前記IC領域に半導体素子と、前記半導体素子を覆う素子絶縁膜とを備える半導
体素子層を形成する工程と、前記半導体素子層の上に前記半導体素子との接続を行う配線
と前記配線間の絶縁をする配線絶縁膜を積層して備えた配線層を形成する工程と、前記弾
性表面波素子領域には前記半導体素子層を構成する前記素子絶縁膜と、前記配線層を構成
する前記配線絶縁膜とが積層しており、前記配線絶縁膜の上方に圧電薄膜を形成する工程
と、前記弾性表面波素子領域における前記圧電薄膜の上に弾性表面波素子を形成する工程
と、を少なくとも備え、前記弾性表面波素子領域における前記半導体基板上あるいは前記
素子絶縁膜または前記配線絶縁膜の上でかつ前記弾性表面波素子を形成した領域の下方に
、少なくとも一層の前記IDT電極の電極指に略平行で同じピッチである線状の層厚み調
整膜を形成する工程を備えることを特徴とする。
【0017】
この弾性表面波装置の製造方法によれば、弾性表面波素子領域における半導体基板上あ
るいは素子絶縁膜または配線絶縁膜の上に層厚み調整膜を設けることにより、IC領域と
弾性表面波素子領域の段差を減少させることができ、弾性表面波素子領域の平坦度を確保
できる。また、層厚み調整膜をIDT電極の電極指に略平行で同じピッチで線状に設ける
ことにより、IDT電極で励振された弾性表面波が乱反射を起こすことがない。
このように、平坦な弾性表面波素子領域に弾性表面波素子を形成することができること
で、寸法精度のよいIDT電極を形成でき弾性表面波素子の共振周波数のばらつきを減少
させ、さらに弾性表面波の乱反射を防止できることから、特性の良好な弾性表面波装置の
製造方法を提供できる。
【0018】
本発明の弾性表面波装置の製造方法は、前記層厚み調整膜を形成する工程は、前記配線
を形成する工程と同一工程であり、前記層厚み調整膜は同一層の前記配線と共に形成する
ことを特徴とする。
【0019】
この弾性表面波装置の製造方法によれば、層厚み調整膜をIC領域の配線を形成する工
程と同一工程で形成することができ、効率よく層厚み調整膜を形成することができる。
【0020】
本発明の弾性表面波装置の製造方法は、前記配線絶縁膜と前記圧電薄膜の間に耐湿膜を
形成する工程をさらに備えたことを特徴とする。
【0021】
この弾性表面波装置の製造方法によれば、ICを湿度の影響から保護することができ、
信頼性の高い弾性表面波装置の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は本発明に係る実施形態の弾性表面波装置を示す模式平面図である。
弾性表面波装置1は、半導体基板にIC領域10と弾性表面波素子領域20を備えてい
る。IC領域10には半導体基板に半導体素子(図2に示す)が形成され、その上に半導
体素子を接続するAl配線11が積層されている。そして、外部との電気的接続のために
Alパッド12が設けられている。また、IC領域10には、弾性表面波素子24を駆動
する発振回路などの高周波回路が含まれている。
弾性表面波素子領域20には、IDT電極22と反射器23を備えた弾性表面波素子2
4としてのSAW共振子が形成されている。IDT電極22は電極指21を備え、それぞ
れが交互に噛み合うように配置されている。また、外部との電気的接続のためにAlパッ
ド25が設けられている。
このように、半導体基板にIC領域10と弾性表面波素子領域20とを備え、一つのチ
ップとして弾性表面波装置1を構成している。
【0024】
図2は、図1における弾性表面波装置1のA−A断線に沿う模式部分断面図である。
シリコンからなる半導体基板30上のIC領域10に、従来知られた方法で多数の半導
体素子31が形成されている。また、半導体基板30上の弾性表面波素子領域20に、A
lからなる層厚み調整膜32が形成されている。そして、半導体素子31と第1の層厚み
調整膜32の上にSiO2からなる素子絶縁膜33を形成し、半導体素子31を絶縁する
。このようにして、IC領域10に半導体素子31と素子絶縁膜33から構成された半導
体素子層40が形成されている。
【0025】
IC領域10の素子絶縁膜33の上には、半導体素子31を接続するAl配線11が形
成され、弾性表面波素子領域20の素子絶縁膜33の上には第2の層厚み調整膜35が形
成されている。この第2の層厚み調整膜35はAl配線11と同一の工程で設けられ、A
l配線33と同じ膜厚で形成されている。そして、Al配線11の上にSiO2からなる
配線絶縁膜36を形成する。このようにして、IC領域10にAl配線11と配線絶縁膜
36から構成された配線層41が形成されている。
そして、配線絶縁膜36の上にはSi34からなる耐湿膜37が形成され、耐湿膜37
の上にはZnOからなる圧電薄膜38が形成されている。さらに、弾性表面波素子領域2
0の圧電薄膜38上にはAlからなる弾性表面波素子24が形成されている。
【0026】
次に、層厚み調整膜について詳しく説明する。
図3は図1におけるB−B断線に沿う模式断面図であり、図4は層厚み調整膜の配置パ
ターンを示す模式平面図である。
図4において、例えば、半導体基板30上に形成する第1の層厚み調整膜32は、弾性
表面波素子領域20に配置される。第1の層厚み調整膜32は、IDT電極の電極指にほ
ぼ平行でかつ線状に形成されている。また、第2の層厚み調整膜35も上記を同様の形状
で配置されている。
【0027】
図3において、弾性表面波素子24を構成するIDT電極22は電極指21を備え、電
極指21はピッチPで連続して形成されている。また、反射器23の電極26も同様にピ
ッチPにて形成され、弾性表面波素子24はピッチPで電極が連続して並んだ形状となっ
ている。そして、電極指21及び反射器23の電極26の線幅Wは同一に形成されている
。ここで、ピッチPは弾性表面波の波長をλとすると、P=λ/2となるように設計され
ている。
【0028】
第1の層厚み調整膜32及び第2の層厚み調整膜35は、電極指21の線幅Wの中心線
を同じくする位置を基準に、電極指21のピッチPと同一に形成されている。
また、第1の層厚み調整膜32及び第2の層厚み調整膜35の線幅Wは、電極指21の
線幅Wと同一に形成されている。
なお、第1の層厚み調整膜32及び第2の層厚み調整膜35を形成する領域は、弾性表
面波素子24を形成する領域と同一或いはそれよりも広く形成されている。
また、配線層を多層に積層する場合には、配線絶縁膜の上に上記と同様な形状の層厚み
調整膜を適宜形成すれば、配線層を多層に形成してもIC領域10と弾性表面波素子領域
20の段差を少なくすることができる。
【0029】
このように、弾性表面波装置1の弾性表面波素子領域20に第1の層厚み調整膜32及
び第2の層厚み調整膜35を形成することにより、IC領域10と弾性表面波素子領域2
0の間の段差を減少させることができる。このことから、弾性表面波素子領域20におけ
る絶縁層などの層を積層していくことによる、段差が傾斜を伴なって弾性表面波素子領域
20に進行するのを軽減でき、弾性表面波素子領域20の平坦度を確保できる。
そして、この平坦度の確保された弾性表面波素子領域20に、弾性表面波素子24を寸
法精度よく形成することができるため、特性の良好な弾性表面波素子24を得ることがで
きる。
【0030】
また、IDT電極22で励振された弾性表面波はおよそ1波長分の深さに進行すること
から、層厚み調整膜をIDT電極22の電極指21と交差するように設けると、弾性表面
波が干渉或いは散乱を生じ、弾性表面波が減衰し良好な特性が得られなくなる。このため
、本実施形態では第1の層厚み調整膜32及び第2の層厚み調整膜35をIDT電極22
の電極指21とほぼ平行でかつ同じピッチで設けることで、深さ方向に進行した弾性表面
波の乱反射を防止することができる。
以上のように、特性の良い弾性表面波素子24を形成することができ、良好な特性を持
った弾性表面波装置1を提供できる。
(層厚み調整膜の配置パターンにおける変形例)
【0031】
図5は層厚み調整膜の配置パターンの変形例を示す模式平面図である。
層厚み調整膜の配置パターンとして、図5(a)に示すように、非連続の線状のパター
とした層厚み調整膜50でも良い。例えば、半導体基板30の弾性表面波素子領域20に
形成する第1の層厚み調整膜50は、一つの線状の層厚み調整膜を分割したように形成さ
れている。なお、この分割した部分(膜のない部分)は隣り合う層厚み調整膜の分割した
部分と重ならないように形成するのが望ましい。
このようにすれば、層厚み調整膜の製作を容易にし、また層厚み調整膜の設計の自由度
が増す。
【0032】
さらに、図5(b)に示すように、弾性表面波素子と同じパターンを形成した層厚み調
整膜51であっても実施可能である。
このようにすれば、弾性表面波素子を形成する際に用いられるフォトマスクを共用化す
ることができる。
【0033】
図6は層厚み調整膜の線幅と弾性表面波素子との位置関係の変形例を示す模式部分断面
図である。
図6(a)に示すように、層厚み調整膜の線幅W1は、電極指21の線幅Wより広く形
成しても良い。
例えば、第2の層厚み調整膜35は電極指21の線幅Wの中心線を同じくする位置を基
準に、電極指21のピッチPと同一に形成され、その層厚み調整膜の線幅W1は、電極指
21の線幅Wより広く形成されている。
【0034】
また、図6(b)に示すように、層厚み調整膜の線幅W2は、電極指21の線幅Wより
狭く形成しても良い。
例えば、第2の層厚み調整膜35は電極指21の線幅Wの中心線を同じくする位置を基
準に、電極指21のピッチPと同一に形成され、その層厚み調整膜の線幅W2は、電極指
21の線幅Wより狭く形成されている。
【0035】
さらに、図6(c)に示すように、層厚み調整膜を電極指21のピッチPと同一である
が、電極指21の線幅Wの中心線を異ならせ、電極指21の線幅Wを含む線幅W3で形成
しても良い。
例えば、第2の層厚み調整膜35は電極指21のピッチPと同一に形成され、層厚み調
整膜35の線幅W3は、電極指21を含む位置で電極指21の線幅Wの中心線が異なるよ
うに配置されている。このため、層厚み調整膜35の線幅W3は電極指21の線幅Wより
広く形成されている。
【0036】
以上のような構成は第1の層厚み調整膜であっても同様であり、およそ1波長分の深さ
に進行する弾性表面波を乱反射させることがない。
【0037】
なお、本実施形態では耐湿膜37を設けた例にて説明したが、弾性表面波装置1のパッケージ方法や使用される環境により、耐湿膜37を設けない実施もできる。
また、弾性表面波素子領域20において、さらに平坦度を要求する場合には、配線絶縁膜36或いは耐湿膜37を形成後に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行い、さらに精度の良い平坦度を得ることができる。
または、スピンコートにて塗布するガラス(Spin on Glass。以下、「SOG」と書く)を素子絶縁膜33に用いることでも、精度の良い平坦度を得ることができる。
また、層厚み調整膜32,35をアースすることにより、弾性表面波素子24を電磁的にシールドすることができる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、弾性表面波装置の製造方法について説明する。
図7は本発明に係る弾性表面波装置の製造方法を示す工程説明図であり、図7(a)か
ら(d)の順に工程が進行する。
図7(a)において、シリコンからなる半導体基板30のIC領域10に、従来知られ
た方法で多数の半導体素子31を形成する。また、半導体基板30上の弾性表面波素子領
域20にAlからなる第1の層厚み調整膜32を形成する。第1の層厚み調整膜32は図
4に示すように、弾性表面波素子のIDT電極の電極指にほぼ平行でかつ線状に形成する
。また、この第1の層厚み調整膜32は、IDT電極の電極指のピッチおよび線幅と同一
に形成している。
そして、図7(b)に示すように、半導体基板30の上にSiO2からなる素子絶縁膜
33を形成し、半導体素子31を絶縁する。このとき、IC領域10だけでなく弾性表面
波素子領域20においても素子絶縁膜33を形成する。
このようにして、IC領域10に半導体素子31と素子絶縁膜33から構成する半導体
素子層40を形成する。
【0039】
次に、図7(c)に示すように、IC領域10における半導体素子31上の素子絶縁膜
33の一部をエッチングにより除去しAlを埋め込み、半導体素子31と導通するAl配
線11を形成する。また、弾性表面波素子領域20には第2の層厚み調整膜35を、Al
配線11と同時に形成する。第2の層厚み調整膜35は第1の層厚み調整膜32と同様に
、弾性表面波素子のIDT電極の電極指にほぼ平行でかつ線状に形成する。
そして、IC領域10および弾性表面波素子領域20にSiO2からなる配線絶縁膜3
6を形成し、Al配線11を絶縁する。
このようにして、IC領域10にAl配線11と配線絶縁膜36から構成する配線層4
1を形成する。
【0040】
次に、図7(d)に示すように、Si34からなる耐湿膜37をIC領域10および弾
性表面波素子領域20に形成することでICの耐湿性向上を図ることができる。
そして、耐湿膜37の上に、ZnOからなる圧電薄膜38を、IC領域10および弾性
表面波素子領域20に形成する。
その後、弾性表面波素子領域20の圧電薄膜38上に弾性表面波素子24を形成する。
弾性表面波素子24は、図1に示したIDT電極22と反射器23を備えたSAW共振子
として構成されている。
このようにして、半導体基板30にIC領域10と弾性表面波素子領域20を備え、一
つのチップに構成した弾性表面波装置1を得ることができる。
【0041】
なお、配線層を多層に積層する場合には、配線絶縁膜の上に上記と同様な形状の層厚み
調整膜を適宜形成すれば、配線層を多層に形成してもIC領域10と弾性表面波素子領域
20の段差を少なくすることができる。
また、層厚み調整膜の配置パターンは、第1の実施形態における変形例で説明した配置
パターンを設けても良い。
【0042】
このように、本実施形態の弾性表面波装置の製造方法では、弾性表面波装置1の弾性表
面波素子領域20に第1の層厚み調整膜32及び第2の層厚み調整膜35を形成すること
により、IC領域10と弾性表面波素子領域20の間の段差を減少させることができる。
このことから、弾性表面波素子領域20における絶縁層などの層を積層していくことによ
る、段差が傾斜を伴って弾性表面波素子領域20に進行するのを軽減でき、弾性表面波
素子領域20の平坦度を確保できる。
そして、この平坦度の確保された弾性表面波素子領域20に、弾性表面波素子24を寸
法精度よく形成することができるため、特性の良好な弾性表面波素子24を得ることがで
きる。
【0043】
また、IDT電極22で励振された弾性表面波はおよそ1波長分の深さに進行することから、第1の層厚み調整膜32及び第2の層厚み調整膜35をIDT電極22の電極指21と同じピッチで設けることで、深さ方向に進行した弾性表面波を乱反射させることがない。
以上のように、本発明に係る弾性表面波装置の製造方法は、特性の良い弾性表面波素子24を形成することができ、良好な特性を持った弾性表面波装置1を提供できる。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、弾性表面波装置の製造方法の変形例について説明する。
図2や図7(b)に示す素子絶縁膜33は、高周波化、配線の微細化に伴い気相法を用いた成膜を行うことが多い。しかしながら、数百MHz以下の比較的低周波の場合は、配線は0.35μm以上の旧世代の配線でも可能である。この場合、SOGを素子絶縁膜33に用いることで、より安価な成膜が提供できる。なお、SOG工程は液状ガラスを、スピンコートにてプレ回転300rpmで3秒、メイン回転3000rpmで10秒でウエハ上に塗布を行う。その後、ベイク炉にて80℃で3分処理を行い、最後にキュアを300℃で60分することで作成した。
以上のように、本発明に係る弾性表面波装置の製造方法は、特性の良い弾性表面波素子24を形成することができ、良好な特性を持った弾性表面波装置1を安価に提供できる。
【0045】
なお、実施形態において半導体基板の材料としてシリコンを用いて説明をしたが、他に例えば、Ge、SiGe、SiC、SiSn、PbS、GaAs、InP、GaP、GaN、ZnSeなどを用いることができる。
また、実施形態において圧電薄膜の材料としてZnOを用いて説明したが、他に例えば、AlNなどが利用できる。
さらに、実施形態において弾性表面波素子としてSAW共振子の場合について説明したが、弾性表面波フィルタを構成することも可能である。
また、圧電薄膜の下にIDTを形成する構造も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る実施形態の弾性表面波装置を示す模式平面図。
【図2】弾性表面波装置の模式部分断面図。
【図3】弾性表面波装置の模式部分断面図。
【図4】層厚み調整膜の配置パターンを示す模式平面図。
【図5】他の層厚み調整膜の配置パターンを示す模式平面図。
【図6】他の弾性表面波素子と層厚み調整膜の位置関係を示す模式部分断面図。
【図7】弾性表面波装置の製造方法を示す工程説明図。
【符号の説明】
【0047】
1…弾性表面波装置、10…IC領域、11…配線としてのAl配線、20…弾性表面
波素子領域、21…電極指、22…IDT電極、23…反射器、24…弾性表面波素子、
30…半導体基板、31…半導体素子、32…層厚み調整膜としての第1の層厚み調整膜
、33…素子絶縁膜、35…層厚み調整膜としての第2の層厚み調整膜、36…配線絶縁
膜、37…耐湿膜、38…圧電薄膜、40…半導体素子層、41…配線層、P…ピッチ、
W,W1,W2,W3…弾性表面波素子の線幅および層厚み調整膜の線幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に少なくともIC領域と弾性表面波素子領域とを備え一つのチップに構成さ
れた弾性表面波装置であって、
前記IC領域には半導体素子と、前記半導体素子を覆い弾性表面波素子領域にも及ぶ素
子絶縁膜が形成された半導体素子層と、
前記半導体素子層の上に前記半導体素子との接続を行う配線と前記配線間の絶縁し弾性
表面波素子領域にも及ぶ配線絶縁膜を積層して形成された配線層と、
前記配線絶縁膜の上方に形成された圧電薄膜と、
前記弾性表面波素子領域における前記圧電薄膜の上に形成された多数の電極指を設けた
IDT電極を備える弾性表面波素子と、を少なくとも備え、
前記弾性表面波素子領域における前記半導体基板上あるいは前記素子絶縁膜または前記
配線絶縁膜の上でかつ前記弾性表面波素子が形成された領域の下方に、少なくとも一層の
前記IDT電極の電極指に略平行で同じピッチである線状の層厚み調整膜が形成されたこ
とを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波装置において、前記層厚み調整膜は前記電極指の線幅の中
心線と前記層厚み調整膜の線幅の中心線を同じくする位置を基準に前記電極指のピッチと
同じピッチに形成されたことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の弾性表面波装置において、前記電極指の線幅と前記層厚み調
整膜の線幅とが同じ線幅にて形成されたことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の弾性表面波装置において、前記層厚み調整膜は
非連続の線状の形状であることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の弾性表面波装置において、前記配線絶縁膜と前
記圧電薄膜の間に耐湿膜がさらに形成されたことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項6】
半導体基板に少なくともIC領域と弾性表面波素子領域とを備え一つのチップに構成し
た弾性表面波装置の製造方法であって、
前記半導体基板の前記IC領域に半導体素子と、前記半導体素子を覆う素子絶縁膜とを
備える半導体素子層を形成する工程と、
前記半導体素子層の上に前記半導体素子との接続を行う配線と前記配線間の絶縁をする
配線絶縁膜を積層して備えた配線層を形成する工程と、
前記各工程において前記弾性表面波素子領域には前記半導体素子層を構成する前記素子
絶縁膜と、前記配線層を構成する前記配線絶縁膜とが積層しており、前記配線絶縁膜の上
方に圧電薄膜を形成する工程と、
前記弾性表面波素子領域における前記圧電薄膜の上に弾性表面波素子を形成する工程と
、を少なくとも備え、
前記弾性表面波素子領域における前記半導体基板上あるいは前記素子絶縁膜または前記
配線絶縁膜の上でかつ前記弾性表面波素子を形成した領域の下方に、少なくとも一層の前
記IDT電極の電極指に略平行で同じピッチである線状の層厚み調整膜を形成する工程を
備えることを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の弾性表面波装置の製造方法において、前記層厚み調整膜を形成する工
程は、前記配線を形成する工程と同一工程であり、前記層厚み調整膜は同一層の前記配線
と共に形成することを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の弾性表面波装置の製造方法において、前記配線絶縁膜と前記
圧電薄膜の間に耐湿膜を形成する工程をさらに備えたことを特徴とする弾性表面波装置の
製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−203853(P2006−203853A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247275(P2005−247275)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】