説明

弾性表面波装置及び通信装置

【課題】 通過帯域近傍の帯域外減衰量と、通過帯域外のより高周波側における帯域外減衰量とを両立させて向上させることができる弾性表面波装置、及び通信装置を得る。
【解決手段】 第1の基準電位貫通導体17は環状電極12の第1部位の直下に形成されるとともに、第2の基準電位貫通導体18は環状電極12の第2部位の直下に形成されており、第2のIDT電極2の基準電位バスバー電極は、環状電極12の第1の部位25から所定距離離れた部位に接続され、第4のIDT電極4の基準電位バスバー電極は、環状電極12の第2の部位26から所定距離離れた部位に接続された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話等の移動体通信機器に用いられる弾性表面波フィルタや弾性表面波共振器等の弾性表面波装置及びこれを備えた通信装置に関し、特に、通過帯域外減衰量を十分に取ることができる弾性表面波フィルタとしての弾性表面波装置及び通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話や自動車電話等の移動体通信機器のRF(無線周波数)段に用いられる周波数選択フィルタ(以下、フィルタともいう)として、弾性表面波フィルタが広く用いられている。一般に、周波数選択フィルタに求められる特性としては、広通過帯域、低損失、高減衰量等の諸特性が挙げられる。
【0003】
また、GSM(Global System for Mobile Communications)などのRxフィルタは受信周波数の信号波(基本波)だけでなく、2倍波、3倍波の信号が漏れてくるために、2倍波、3倍波の周波数における帯域外減衰量を確保することが要求されている。しかし、PCS(Personal Communication Services)など3倍波の周波数が6GHz付近である場合、IDT電極間での電気的な干渉が発生し易いために、減衰量を大きくすることが難しい。従って、6GHzといった高周波帯域における減衰量を大きくすることに対する要望が大きい。
【0004】
これらの要求特性に対して、電気信号を弾性表面波に変換させるIDT(Inter Digital Transducer)電極及び反射器電極を有する弾性表面波素子をラダー型に構成したラダー型回路を有する弾性表面波フィルタが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、圧電基板上に複数の弾性表面波素子によりラダー型回路を構成した弾性表面波フィルタが開示されている。並列弾性表面波素子(並列弾性表面波共振子)に直列にインダクタを付加した構成により、通過帯域外に減衰極を形成し、帯域外減衰量を向上させる技術が開示されている(特許文献1を参照)。
【0006】
また、引用文献2には、並列腕共振子(並列弾性表面波共振子)に、直列にインピーダンス素子を接続し、通過帯域外に減衰極を形成することにより、帯域外減衰量を増大させることが開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、並列腕共振子に、それぞれ直列にインダクタを付加することにより、帯域外減衰量を向上させることが開示されている。
【特許文献1】特開平5−183380号公報
【特許文献2】特開平10−163808号公報
【特許文献3】特開2004−7250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の技術においては、減衰極を設定する位置を調整することが難しく、通過帯域近傍の帯域外減衰量と、通過帯域外のより高周波側における帯域外減衰量とを両立させて向上させることが困難であるといる問題点があった。
【0009】
従って、本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、通過帯域近傍の帯域外減衰量と、通過帯域外のより高周波側における帯域外減衰量とを両立させて向上させることができる弾性表面波装置、及び通信装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の弾性表面波装置は、圧電基板と、前記圧電基板の主面に形成された、前記圧電基板の主面を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って前記伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極を有する弾性表面波素子と、前記主面に前記弾性表面波素子を取り囲むように形成された環状電極と、前記圧電基板の主面に対向して前記圧電基板を実装するとともに、前記環状電極に接続される第1の基準電位貫通導体と、第2の基準電位貫通導体とを有する実装基板と、を具備している弾性表面波装置であって、前記第1の基準電位貫通導体は前記伝搬方向の延長上にある前記環状電極の第1の部位の直下に形成され、前記第2の基準電位貫通導体は前記伝搬方向の延長上にある前記環状電極における前記第1の部位に対向する第2の部位の直下に形成されており、中央の前記IDT電極の基準電位バスバー電極が、前記伝搬方向に直交する方向の延長上にある前記環状電極の第3の部位に接続されており、中央の前記IDT電極に対して一方の側に配置された前記IDT電極の基準電位バスバー電極が、前記環状電極の前記第3の部位と反対側であって前記第1の部位から所定距離離れた部位に接続されているとともに、中央の前記IDT電極に対して他方の側に配置された前記IDT電極の基準電位バスバー電極が、前記環状電極の前記第3の部位と反対側であって前記第2の部位から所定距離離れた部位に接続されているものである。
【0011】
上記の弾性表面波装置において、前記所定距離が100μm以上であることが好ましい。
【0012】
また上記の弾性表面波装置において、中央の前記IDT電極に対して一方の側に配置された前記IDT電極の基準電位バスバー電極と前記環状電極とを接続する第1の接続配線の長さ、及び中央の前記IDT電極に対して他方の側に配置された前記IDT電極の基準電位バスバー電極と前記環状電極とを接続する第2の接続配線の長さが、中央の前記IDT電極の基準電位バスバー電極と前記環状電極の前記第3の部位とを接続する第3の接続配線の長さよりも長いことが好ましい。
【0013】
また上記の弾性表面波装置において、前記弾性表面波素子と前記入力信号端子との間、または前記弾性表面波素子と前記出力信号端子との間に、前記伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えたIDT電極と、前記IDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する弾性表面波共振子が接続されていることが好ましい。
【0014】
また本発明の通信装置は、上記の弾性表面波装置を有する、受信回路及び送信回路の少なくとも一方を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の弾性表面波装置によれば、奇数個のIDT電極のキャパシタと配線のインダクタの共振により高周波の減衰極が発現し、中央の前記IDT電極の基準電位バスバー電極が、前記伝搬方向に直交する方向の延長上にある前記環状電極の第3の部位に接続されることによって配線のインダクタが増加し、共振による高周波減衰極の周波数を低く調整することができる。その結果、通過帯域外のより高周波側の帯域外減衰量を大きくすることができる。
【0016】
また配線のインダクタを増加させることで減衰極の周波数を調整できることから、通過帯域近傍の特性に大きな影響を与えることなく、通過帯域外の高周波側の帯域外減衰量を大きくすることができる。これにより6GHzといった高周波においても弾性表面波フィルタの通過帯域外減衰量を向上させることができる。
【0017】
本発明の通信装置は、上記弾性表面波装置を有する、受信回路及び送信回路の少なくとも一方を備えたことにより、弾性表面波フィルタとしての弾性表面波装置のカットオフ特性が向上するので、感度が格段に良好な通信装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態にかかる弾性表面波装置および通信装置について図面を参照にしつつ詳細に説明する。本実施形態では弾性表面波装置として共振器型の弾性表面波フィルタを例にとり説明する。なお、以下に説明する図面において同一構成の部分には同一符号を付すものとする。また、各電極の大きさや電極間の距離等、電極指の本数や間隔等は、模式的に図示したものであり現実のものとは必ずしも一致しない。
【0019】
〔弾性表面波装置〕
図1に本実施形態にかかる弾性表面波装置102の斜視図を示す。同図に示すように本実施形態の弾性表面波装置102は、圧電基板22と、圧電基板22が実装される実装基板23とから主に構成されている。なお圧電基板22は全体が封止樹脂24で被覆されている。図面では便宜上封止樹脂24を点線で示している。
【0020】
図2に図1に示した圧電基板22の実装面側の主面の平面図を示す。図2に示すように、圧電基板22の主面には、前記主面を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って第1のIDT電極1、第2のIDT電極2、第3のIDT電極3、第4のIDT電極4、第5のIDT電極5が順に配列されている。各IDT電極は、伝搬方向に直交する方向に長く伸びる複数の電極指と、電極指同士を接続するバスバー電極とを備えた構成を有している。
【0021】
これら第1〜第5のIDT電極の両側には反射器電極6,7が配置されている。反射器電極6,7は、伝搬方向に直交する方向に長く伸びる複数の電極指を備えている。これら第1〜第5のIDT電極と反射器電極6,7とで弾性表面波素子が構成されている。
【0022】
また圧電基板22の主面には、入力信号電極8、出力信号電極9、グランド電極10が形成されている。弾性表面波素子と入力信号端子8との間には、弾性表面波共振子11が配置されている。弾性表面波共振子11は、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えたIDT電極と、前記IDT電極の両側に配置されたとから構成されている。弾性表面波素子と弾性表面波共振子11とは直列に接続されている。
【0023】
これら弾性表面波素子、弾性表面波共振子11、各端子などを取り囲むようにして環状電極12が形成されている。
【0024】
図3は実装基板23の圧電基板22が実装される側の主面を示す平面図である。実装基板23はセラミックスなどの絶縁体からなる。実装基板23の主面には、圧電基板22の実装面に形成された各種の電極と対応する位置に導体パターンが形成されている。すなわち、圧電基板22の環状電極12と対応する位置に環状電極22より若干幅が広い環状導体パターン13が形成され、圧電基板22の入力信号電極8と対応する位置には入力信号パッド14が形成され、圧電基板22の出力信号電極9と対応する位置には出力信号パッド15が形成され、圧電基板22のグランド電極10と対応する位置にはグランドパッド16が形成されている。これら入力信号パッド14、出力信号パッド15、グランドパッド16は、それぞれ実装基板23を厚み方向に貫く貫通導体を介して実装基板23の下面に形成された入力信号端子20、出力信号端子21、基準電位端子19に接続されている。なお本実施形態において基準電位とはグランド電位のことであるが、かならずしもゼロボルトである必要はない。
【0025】
また環状導体パターン13の直下の所定の位置には、点線で示した第1の基準電位貫通導体17と、第2の基準電位貫通導体18が形成されている。第1の基準電位貫通導体17および第2の基準電位貫通導体18は実装基板23を厚み方向に貫く貫通導体である。第1の基準電位貫通導体17、第2の基準電位貫通導体18は、実装基板23の下面に形成された基準電位用端子19に接続されている。第1の基準電位貫通導体17、第2の基準電位貫通導体18は、例えば、実装基板23の上下主面間を貫通する貫通孔にAgから成る導体を充填して形成される。第1の基準電位貫通導体17、第2の基準電位貫通導体18の直径は50〜100μm程度である。50〜100μm程度とすることによって、環状導体11との電気的、機械的な接続を良好なものとすることができる。
【0026】
図2には、第1の基準貫通導体17と対応する位置に点線で17’を、第2の基準電位貫通導体18と対応する位置に点線で18’を示してある。
【0027】
第1の基準電位貫通導体17は、弾性表面波の伝搬方向の延長線上にある環状電極12の第1の部位25の直下に形成されている。一方、第2の基準電位貫通導体18は、弾性表面波の伝搬方向の延長線上で第1の部位25とは反対側の第2の部位26の直下に形成されている。また中央のIDT電極(第3のIDT電極3)の基準電位バスバー電極3aは、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向の延長上にある環状電極12の第3の部位27に第1配線パターン30を介して接続されている。
【0028】
また中央のIDT電極3に対して一方の側に配された第2のIDT電極2の基準電位バスバー電極2aは、環状電極12の第1の部位25から所定距離だけ離れた第1の接続部位34に第2配線パターン31を介して接続されている。また中央のIDT電極3に対して他方の側に配された第3のIDT電極3の基準電位バスバー電極3aは、環状電極12の第2の部位26から所定距離だけ離れた第2の接続部位35に第3配線パターン32を介して接続されている。換言すれば、環状電極12における第3の部位27と第1の接続部位34との間に第1の基準電位貫通導体17が位置しており、環状電極12における第3の部位27と第2の接続部位34との間に第2の基準電位貫通導体18が位置している。
【0029】
第1、第2、第3配線パターン30,31,32はそれぞれ立体配線構造となっている。たとえば第1配線パターン30は、第2のIDT電極2と出力電極9とを接続する配線パターンと交差するが、この交差部分における両者の間には絶縁層33が介在されている。
【0030】
本実施形態にかかる弾性表面波装置では、第1配線パターン30、環状電極12の第3の部位27から第1の部位25まで、および第1基準電位貫通導体17という経路によって第1インダクタL1が形成されている。同様に、第1配線パターン30、環状電極12の第3の部位27から第2の部位26まで、および第2基準電位貫通導体18という経路によって第2インダクタL2が形成されている。また第2配線パターン31、第2配線パターン31と環状電極12との接続部から環状電極12の第1の部位25、および第1基準電位貫通導体17という経路によって第3インダクタL3が形成されている。さらに第3配線パターン32、第3配線パターン32と環状電極12との接続部から環状電極12の第2の部位26、および第2基準電位貫通導体18という経路によって第4インダクタL4が形成されている。このように第1〜第4インダクタL1〜L4を設けたことによって、高周波側に減衰極が発現し、通過帯域外の高周波側における減衰量を大きくすることができる。この場合、IDT電極のピッチ調整といった複雑な作業を行うことなく配線パターンだけで減衰極の周波数調整をすることができ、通過帯域近傍の帯域外減衰量に与える影響を小さく抑えた上でより高周波側の帯域外減衰量を大きくすることができる。
【0031】
また、第1、第3、第5IDT電極1、3、5は入力電極8に接続されており、第4、第6IDT電極4、6は出力電極9に接続されている。
【0032】
また、圧電基板22の環状電極12と実装基板23の環状導体パターン13とはハンダなどの導電性接合材を介して接続されており、各IDT電極を封止している。
【0033】
次に、本実施形態にかかる弾性表面波装置の製造方法について説明する。まず第1〜第5IDT電極1〜5および反射器電極6,7からなる弾性表面波素子、環状電極12、入出力電極8,9、グランド電極10、第1〜第3配線パターン30,31,32を形成する。これらの電極や配線パターンは、AlもしくはAl合金(Al−Cu系、Al−Ti系)などの導電性材料からなり、蒸着法、スパッタリング法、またはCVD法等の薄膜形成法により製膜した後、フォトリソグラフィ法などによりパターニングすることで形成される。これらの電極や配線パターンの厚みは、例えば0.1〜0.3μm程度である。
【0034】
次に、弾性表面波素子を覆って保護するための絶縁膜を成膜する。絶縁膜の材料としては、Si,SiO2,SiNx,Al23等を用いることができる。その成膜方法としては、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、電子ビーム蒸着法等を用いることができる。
【0035】
なお、IDT電極、反射器電極において、電極指の本数は数本〜数100本にも及ぶので、簡単のため、図においてはそれらの形状を簡略化して図示している。
【0036】
また、弾性表面波装置の圧電基板としては、36°±3°YカットX伝搬タンタル酸リチウム単結晶、42°±3°YカットX伝搬タンタル酸リチウム単結晶、64°±3°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム単結晶、41°±3°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム単結晶、45°±3°XカットZ伝搬四ホウ酸リチウム単結晶は電気機械結合係数が大きく、かつ、周波数温度係数が小さいため、圧電基板22として好ましい。また、これらの焦電性圧電単結晶のうち、酸素欠陥やFe等の固溶により焦電性を著しく減少させた圧電基板1であれば、弾性表面波装置の信頼性上良好である。圧電基板1の厚みは、例えば0.1〜0.5mm程度がよく、0.1mm未満では圧電基板23が脆くなり、0.5mmを超えると材料コストと部品寸法が大きくなり好ましくない。
【0037】
〔通信装置〕
本実施形態の通信装置は、上述した弾性表面波装置を有する、受信回路及び送信回路の少なくとも一方を備えたことにより、弾性表面波フィルタのカットオフ特性を向上させることができるので、感度が格段に良好な通信装置を実現することができる。
【0038】
即ち、少なくとも受信回路または送信回路の一方を備え、弾性表面波装置をこれらの回路に含まれるバンドパスフィルタとして用いる。例えば、送信回路から出力された送信信号をミキサでキャリア周波数にのせて、不要信号をバンドパスフィルタで減衰させ、その後、パワーアンプで送信信号を増幅して、デュプレクサを通ってアンテナより送信することができる送信回路を備えた通信装置、または、受信信号をアンテナで受信し、デュプレクサを通った受信信号をローノイズアンプで増幅し、その後、バンドパスフィルタで不要信号を減衰して、ミキサでキャリア周波数から信号を分離し、この信号を取り出す受信回路へ伝送するような受信回路を備えた通信装置に適用可能である。
【0039】
図4は、本実施形態の通信装置を示すブロック回路図である。図5において、アンテナ140に送信回路Txと受信回路Rxが分波器150を介して接続されている。送信される高周波信号は、フィルタ210によりその不要信号が除去され、パワーアンプ220で増幅された後、アイソレータ230と分波器150を通り、アンテナ140から放射される。また、アンテナ140で受信された高周波信号は、分波器150を通りローノイズアンプ160で増幅されフィルタ170でその不要信号を除去された後、アンプ180で再増幅されミキサ190で低周波信号に変換される。
【0040】
従って、本実施の形態の弾性表面波装置を採用すれば、感度が格段に良好な優れた通信装置を提供できる。
【実施例】
【0041】
本発明の弾性表面波装置の実施例について以下に説明する。図1に示す弾性表面波装置を具体的に作製した実施例について説明する。
【0042】
38.7°YカットのX方向伝搬とするLiTaO3単結晶からなる圧電基板22上に、Al(99質量%)−Cu(1質量%)合金から成る、IDT電極1〜5及び反射器電極6,7を有する弾性表面波素子、環状電極11、入出力電極8,9、グランド電極10、第1〜第3配線パターン30,31,32を形成した。これら電極や配線パターンの作製は、スパッタリング装置、縮小投影露光機(ステッパー)、及びRIE(Reactive Ion Etching)装置によりフォトリソグラフィを施すことにより行った。
【0043】
まず、圧電基板22をアセトン,IPA(イソプロピルアルコール)等によって超音波洗浄し、有機成分を落とした。次に、クリーンオーブンによって充分に圧電基板22の乾燥を行った後、各電極や配線パターンとなる金属層の成膜を行った。金属層の成膜にはスパッタリング装置を使用し、金属層の材料としてAl(99質量%)−Cu(1質量%)合金を用いた。このときの金属層の厚みは約0.15μmとした。
【0044】
次に、金属層上にフォトレジストを約0.5μmの厚みにスピンコートし、縮小投影露光装置(ステッパー)により、所望形状にパターニングを行い、現像装置によって不要部分のフォトレジストをアルカリ現像液で溶解させ、所望パターンを表出させた。その後、RIE装置により金属層のエッチングを行い、パターニングを終了し、弾性表面波装置を構成する各電極のパターンを得た。
【0045】
中央の第3のIDT電極3に対して一方の側に配置された第2のIDT電極2の基準電位バスバー電極が、環状電極12の第3の部位27と反対側であって第1の部位25から所定距離離れた部位に接続されているとともに、中央の第3のIDT電極3に対して他方の側に配置された第4のIDT電極4の基準電位バスバー電極が、環状電極12の第3の部位27と反対側であって第2の部位26から150μm離れた部位に接続されているようにした。
【0046】
また、セラミック多層基板から成る実装基板(図示せず)の環状電極12の直下で対向する部位に第1の基準電位貫通導体17、第2の基準電位貫通導体18を形成した。第1、第2の基準電位貫通導体17,18は銀を用いて形成した。
【0047】
この後、各電極や配線パターンの所定領域上にCVD法により、SiO2膜からなる保護膜を形成した。なお保護膜の厚みは0.015μmに設定した。
【0048】
その後、フォトリソグラフィによりパターニングを行い、RIE装置等でフリップチップ用窓開け部のエッチングを行った。その後、そのフリップチップ用窓開け部に、スパッタリング装置を使用して、Cr層、Ni層、Au層を積層した構成のパッド電極を成膜した。このときのパッド電極の厚みは1.0μmとした。
【0049】
その後、圧電基板22の環状電極12と実装基板23の環状導体パターン13とをハンダを用いて接続することにより圧電基板22を実装基板23に実装した。なお実装基板23の第1、第2基準電位貫通導体17,18は、実装基板23の下面に形成した基準電用端子19接続されるようにした。その後、N2ガス雰囲気中でベーキングを行い、パッケージ化された弾性表面波装置を完成した。
【0050】
(比較例)
比較例のサンプルとして、図5に示す構成からなる弾性表面波装置を作製した。この弾性表面波装置の作製方法は上記実施例と同様である。
【0051】
図5の弾性表面波装置は、第1、第3、第5のIDT電極1,3,5の基準電位バスバー電極が、グランド電極10に接続されるとともに、第2のIDT電極2の基準電位バスバー電極を環状電極22の第1の部位25に、第4のIDT電極4の基準電位バスバー電極を環状電極22の第2の部位26にそれぞれ接続した。その他の構成は、図1の弾性表面波装置と同様である。
【0052】
次に、本実施例及び比較例の弾性表面波装置について、それぞれの特性をコンピュータシミュレーションによって求めた。弾性表面波装置の動作周波数は0MHz以上8000MHz以下とした。この動作周波数における周波数特性のグラフを図6に示す。図6は、フィルタの伝送特性を表す透過特性(減衰量)の周波数依存性を示すグラフである。
【0053】
本実施例の弾性表面波装置のフィルタ特性は非常に良好であった。即ち、図6の破線で示した比較例の弾性表面波装置と比較して、図6の実線で示すように、6GHz付近の高周波数において、本実施例の弾性表面波装置の帯域外減衰量が非常に大きいことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態にかかる弾性表面波装置の斜視図である。
【図2】図1に示す弾性表面波装置を構成する圧電基板の主面の平面図である。
【図3】図1に示す弾性表面波装置を構成する実装基板の主面の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる通信装置のブロック図である。
【図5】比較例の弾性表面波装置を構成する圧電基板の主面の平面図である。
【図6】実施例の弾性表面波装置と比較例の弾性表面波装置についての通過特性のシミュレーション結果である。
【符号の説明】
【0055】
1〜5:第1〜第5のIDT電極
1a〜5a:基準電位バスバー電極
6,7:反射器電極
8:入力信号電極
9:出力信号電極
10:グランド電極
11:弾性表面波共振子
25〜27:環状電極の第1〜第3の部位
34、35:第1、第2の接続部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板の主面に形成された、前記圧電基板の主面を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って前記伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた3個以上の奇数個のIDT電極を有する弾性表面波素子と、
前記主面に前記弾性表面波素子を取り囲むように形成された環状電極と、
前記圧電基板の主面に対向して前記圧電基板を実装するとともに、前記環状電極に接続される第1の基準電位貫通導体と、第2の基準電位貫通導体とを有する実装基板と、を具備している弾性表面波装置であって、
前記第1の基準電位貫通導体は前記伝搬方向の延長上にある前記環状電極の第1の部位の直下に形成され、前記第2の基準電位貫通導体は前記伝搬方向の延長上にある前記環状電極における前記第1の部位に対向する第2の部位の直下に形成されており、
中央の前記IDT電極の基準電位バスバー電極が、前記伝搬方向に直交する方向の延長上にある前記環状電極の第3の部位に接続されており、
中央の前記IDT電極に対して一方の側に配置された前記IDT電極の基準電位バスバー電極が、前記環状電極の前記第3の部位と前記第1の部位を挟んで反対側であって前記第1の部位から所定距離離れた第1の接続部位に接続されているとともに、中央の前記IDT電極に対して他方の側に配置された前記IDT電極の基準電位バスバー電極が、前記環状電極の前記第3の部位と前記第2の部位を挟んで反対側であって前記第2の部位から所定距離離れた第2の接続部位に接続されている弾性表面波装置。
【請求項2】
前記所定距離が100μm以上である請求項1記載の弾性表面波装置。
【請求項3】
中央の前記IDT電極に対して一方の側に配置された前記IDT電極の基準電位バスバー電極と前記環状電極とを接続する第1の接続配線の長さ、及び中央の前記IDT電極に対して他方の側に配置された前記IDT電極の基準電位バスバー電極と前記環状電極とを接続する第2の接続配線の長さが、中央の前記IDT電極の基準電位バスバー電極と前記環状電極の前記第3の部位とを接続する第3の接続配線の長さよりも長い請求項1記載の弾性表面波装置。
【請求項4】
前記弾性表面波素子と前記入力信号端子との間、または前記弾性表面波素子と前記出力信号端子との間に、前記伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えたIDT電極と、前記IDT電極の両側にそれぞれ配置され、前記伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極とを有する弾性表面波共振子が接続されている請求項1乃至3のいずれか記載の弾性表面波装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか記載の弾性表面波装置を有する、受信回路及び送信回路の少なくとも一方を備えた通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−11187(P2010−11187A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169112(P2008−169112)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】