説明

形状記憶合金で強化したポリマー複合体構造およびその製造方法

成形部品を生成するための成形可能な樹脂。この樹脂は、形状記憶合金(SMA)の粒子で強化される。好ましい一形態では、SMA粒子としてNITINOL(登録商標)合金粒子が用いられる。NITINOL(登録商標)合金粒子は、円筒形、楕円形、または球形の粒子を含み得る。SMA粒子は、部品の高温−湿潤圧縮強度に悪影響を及ぼさずに部品の耐損傷性、損傷許容性(衝撃後圧縮(CAI)強度等)、および高温性能を著しく高める、超弾性かつ可逆性の歪み特性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2002年11月4日に出願され現在係属中の米国連続番号第10/287,561号の一部継続出願である。
【0002】
発明の分野
この発明は、ポリマー複合体構造に関し、より特定的には、形状記憶合金の粒子を注入して構造の耐損傷性、損傷許容性(衝撃後圧縮強度等)、および高温性能を著しく高めた樹脂マトリックス中間層を有するポリマー複合体構造に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
さまざまな用途、たとえば航空機の製造における主要構造の用途として選択されかつ適切なポリマー複合体材料は、2つの主な機械的特性、すなわち、衝撃後圧縮(CAI)強度および高温−湿潤圧縮強度、より厳密にはオープンホール圧縮(OHC)強度に関して評価される。しかしながら、複合体材料のCAI強度および高温−湿潤OHC強度を高めるための手段は一般に、互いに相反する効果を生じる。より具体的には、エラストマーベースまたは熱可塑性物質ベースのポリマー粒子を用いて粒状中間層を強化する従来の方法は、複合体のCAI強度を高めるのに効果的であるが、同時に高温−湿潤圧縮強度(高温−湿潤OHC等)の特性を高めるのに概して効果的ではなく、より典型的には、互いに矛盾する関係を生じる。
【0004】
ポリマー複合体の高温−湿潤圧縮強度の特性を高めるために用いられる従来の方法は、通常、樹脂マトリックスの架橋密度を上げて樹脂の弾性率を高めるステップ、または、樹脂に固有の化学的性質を適切に配合することによってマトリックスの吸水特性を減じるステップを含む。マトリックスの架橋密度を上げて高温−湿潤圧縮強度を高めるステップに関連する作業は一般に、CAI特性が低下した複合体を生じる。
【0005】
したがって、中間層の高温−湿潤圧縮強度を低下させる不利な特徴を有さずに中間層の材料の靭性を著しく高め、それによってCAI強度を高める中間層構造を有するポリマー複合体材料を提供することが極めて望ましい。
【0006】
複合マトリックス中間層を強化して、そのCAI強度を十分に高めるために、形状記憶合金(SMA)が特有の「超弾性」特性を有することが公知であることが認識されるであろう。市販されている一般的な1つのSMAが、NITINOL(登録商標)、すなわち、チタン−ニッケル合金である。この特定の合金に加え、他のSMA材料は、応力が0である状態時における、弾性率がより高いオーステナイト相から、負荷または応力の印加時における、「より軟質」であってかつ弾性率のより低いマルテンサイト相への原子相変化を経ることが可能である。この合金は、負荷または応力が一旦除去されると、無応力の、弾性率がより高い本来のオーステナイト状態に戻り得る。この金属は、誘発された応力からのエネルギを吸収する過程で、エラストマーと同様に一時的に歪む。NITINOL(登録商標)合金の、応力により誘発されるこの位相変化は、この金属の永久歪みを伴わずに、約8〜10%の歪みレベルまで可逆性であり、かつ、繰返し可能である。NITINOL(登録商標)合金はさらに、鋼の5倍のエネルギ、およびチタンの約3倍のエネルギを吸収(すなわち蓄積)することが可能である。
【0007】
NITINOL(登録商標)(NITI)合金の優れたエネルギ吸収能を他の材料と比較した
ものを以下に示す。
【0008】
【表1】

【0009】
以上のことから、SMAの超弾性特性を提供しつつも構造全体の重量を著しく増大させず、かつ、マトリックス中間層の高温−湿潤圧縮強度に悪影響を及ぼさないマトリックス中間層を有するポリマー複合体構造を提供することが極めて望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
この発明は、形状記憶合金(SMA)粒子で強化した中間層を有するポリマー複合体構造に向けられる。中間層内でのSMA粒子の使用は、中間層の高温−湿潤圧縮強度に悪影響を及ぼさずに中間層の耐損傷性および損傷許容性(衝撃後圧縮(CAI)強度等)を著しく高める。
【課題を解決するための手段】
【0011】
好ましい一形態において、ポリマー複合体構造は、チタン−ニッケル合金の粒子を含み、より好ましくは、NITINOL(登録商標)合金で形成された粒子を含む。チタン−ニッケル合金の粒子は、ポリマー複合体構造の中間層内でより一般に使用されるエラストマーまたはポリマーの熱可塑性粒子と同様に、超弾性かつ可逆性の歪み特性を有するが、中間層の高温−湿潤圧縮強度に悪影響を及ぼさない。その結果、衝撃応力をより一層効果的に吸収することも可能な中間層を有するポリマー複合体材料が得られ、それにより、複合体材料の高温−湿潤圧縮強度に悪影響を及ぼさずに複合体材料を強化する。
【0012】
好ましい一実施形態において、NITINOL(登録商標)合金の粒子は、ポリマー複合体構造の樹脂マトリックス中間層の全体にほぼ均一に分散する。好ましい一形態において、NITINOL(登録商標)合金の粒子は、約50ミクロン以下またはそれを上回り得る断面直径、および数ナノメートル程度の小さな断面直径を有する粒子を含む。これらの粒子は、円筒形、楕円形、もしくは球形、または実質的に任意の他の形状で形成され得る。
【0013】
好ましい一実施形態では、別個の樹脂中間層はいずれも、オーステナイト相のSMA粒子を含む。代替的な好ましい一実施形態では、ポリマー複合体構造内に複数の別個のマトリックス中間層が設けられる。SMA粒子の固有の転移温度に依存して、これらの中間層の少なくとも1つはオーステナイト相で提供されたSMA粒子を含み、少なくとも1つの中間層は、同じ温度においてマルテンサイト相で提供されたSMA粒子を含む。
【0014】
さらに別の代替的な好ましい一形態では、高度でかつハイブリッドのファイバ−金属積層物の複合体構造が設けられる。ここでは、SMA粒子を有する1つ以上の中間層を設けて1つ以上の金属層とファイバ層とを接着し、一体的な複合体構造を形成する。
【0015】
さらに別の代替的な好ましい形態において、別個の樹脂−粒子の中間層は、「樹脂を多く含む」中間層のマトリックスに対して低濃度でSMA粒子を含む。代替的な好ましい形態において、別個の樹脂−粒子の中間層は、樹脂中間層のマトリックスに対してSMA「粒子を多く含む」中間層として高濃度でSMA粒子を含み、ファイバ−金属積層物に類似した、連続した金属中間層の形態に近づく。樹脂マトリックス中間層内のSMA粒子の濃度は、結果的に得られる複合体積層物の所望の特性に依存して、樹脂マトリックスの体積に比例して低濃度から高濃度までの範囲を有し得ることが理解されるであろう。
【0016】
この発明のさらに別の応用範囲は、以下に提示する詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明および特定の実施例が例示の目的のためだけに意図されており、この発明の範囲を限定するようには意図されていないことを理解されるべきである。
【0017】
この発明は、詳細な説明および添付の図面からより完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
好ましい実施形態の詳細な説明
1つの好ましい実施形態または複数の好ましい実施形態の以下の説明は、本質的に単に例示であり、この発明、その用途、または使途を限定するように意図されない。
【0019】
【数1】

【0020】
樹脂マトリックス層16は、複数の形状記憶合金(SMA)粒子20が中に分散した樹脂材料18を含む。樹脂材料18は、ポリマー複合体構造を形成するためのさまざまな熱硬化性ポリマーマトリックスもしくは熱可塑性ポリマーマトリックス、または他の任意の好適な樹脂を含み得る。SMA粒子20は好ましくは、樹脂マトリックス中間層16の全体にほぼ均一に分散し、その粒子の濃度は、この樹脂マトリックス中間層に対して極めて低い濃度から極めて高い濃度まで及び得る。SMA粒子20は、「形状記憶合金」の部類に入ることが一般に認識されている複数の材料のうちの任意の1つを含み得るが、好ましい一形態において、粒子20は、商標名「NITINOL(登録商標)」として公知のニッケル−チタン合金粒子を含む。SMA粒子20は、オーステナイト状態において永久歪みを伴わない可逆性かつ超弾性の歪み特性を有し、この特性は、中間層16を効果的に強化するように働き、中間層16の高温−湿潤圧縮強度に悪影響を及ぼさずに中間層の耐損傷性および損傷許容性(衝撃後圧縮(CAI)強度等)を著しく改善する。このことは重要である。なぜなら、中間層のCAI強度を高めることが、ポリマー複合体構造10全体の高温−湿潤圧縮強度を下げるという悪影響を及ぼさずに、微小割れおよび層間剥離が生じないよう中間層を強固にするように働くためである。この理由の1つとして、SMA粒子20を用いることにより、ゴム等のエラストマー粒子またはナイロン等の熱可塑性粒子を使用
する必要がなくなることが挙げられる。エラストマー粒子または熱可塑性粒子は、複合体積層物の中間層を強化するために、より一般的に用いられるが、樹脂18内の水分を吸収することが公知であることから、中間層16の高温−湿潤圧縮強度を低下させる。SMA粒子、特にNITINOL(登録商標)合金は水分を吸収しないため、中間層16の高温−湿潤圧縮強度に悪影響を及ぼさない。
【0021】
樹脂添加剤としてSMA金属粒子を用いることにより、落雷から等の電荷のエネルギを複合体構造10の全体により均一に分散させるように働くという、さらなる利点が提供されることもまた、認識されるであろう。このことは、複合体構造10が、運航中に落雷に遭遇し得る航空機の一部を形成するように使用され得る航空宇宙の用途において特に重要である。SMA粒子20は、複合体構造10のより広い面積の全体にわたって電荷を拡散または散逸させるよう効果的に働くことにより、この構造の局部に損傷が生じる可能性を減じる。
【0022】
SMA粒子20のさらに別の大きな利点は、ポリマー複合体構造の性能範囲を一般に制限する高温/湿潤条件下において複合体の全体強度の点で結果的に得られる利益により、複合体構造10の全体重量をはっきりと認識できるほど増やさないことである。このことは、やはり、軽量であってなお構造上強固な構成要素が極めて重要な航空宇宙の用途において特に重要である。さらに、マトリックス中間層内でSMA粒子20を用いても、複合体の部品を製作する既存の工程に大きな変更を要しない。この工程において、複合体構造は、プレプレッグ材料を用いて成形され、予め含浸させた材料の形態を含まない、複合体の部品製作の高度な工程(たとえば、樹脂トランスファー成形(Resin Transfer Molding(RTM))、真空アシスト樹脂トランスファー成形(Vacuum Assisted Resin Transfer
Molding(VARJM))、樹脂注入等)に容易に組込まれる。
【0023】
図2から図4を参照すると、SMA粒子20のさまざまな代表的形態が示される。図2は、円筒形のSMA粒子20aを示し、図3は、楕円形の粒子20bを示し、図4は、球形のSMA粒子20cを示す。これらの形状の他の変更例もまた容易に用いることができ、異なる形状のSMA粒子20の混合物も使用可能であることが認識されるであろう。SMA粒子20の断面直径は大きく変動し得るが、好ましい一実施形態において、約50ミクロン(50×10−6メートル)以下またはそれを上回ることが考えられ、0.005ミクロン(5×10−9メートル)ほど小さいことが考えられる。SMA粒子20が円筒形またはウィスカ様の形である場合、その長さは極めて多様であることが考えられ、長さが数ミリメートル以下、またはそれよりも大きいことも考えられる。
【0024】
SMA材料としてNITINOL(登録商標)合金を用いることにより、複合体構造10の衝撃損傷に対して大きな耐性が提供される。なぜなら、NITINOL(登録商標)合金が、その高い伸び特性により、かなりの程度の衝撃および歪みを吸収し得るためである。NITINOL(登録商標)合金は、オーステナイト相にあるとき、永久歪み(または歪みのオフセット)を伴わずに8〜10%の歪みまでの可逆性の歪み特性を提供する。これにより、著しい負荷−速度の衝撃耐性が提供される。NITINOL(登録商標)合金はまた、高い速度衝撃耐性として、20〜25%までの破損伸びを可能にする不可逆性の歪み特性も提供する。NITINOL(登録商標)合金はまた、マルテンサイト状態にあるときに、複合体構造10の疲労寿命を改善するように働く著しい振動減衰特性も有し、このことは、航空機および宇宙船の構造にとって特に望ましい特徴である。
【0025】
【数2】

【0026】
次に図6を参照すると、この発明のさらに別の代替的な好ましい実施形態に従った複合体構造200が示される。複合体構造200は、高度でかつハイブリッドなファイバ−金属積層物の複合体構造を形成する。構造200は、金属プライ202と、ファイバプライ204と、別の金属プライ206とを含む。ファイバプライ204は、1対の樹脂マトリックス中間層208および210を介して金属プライ202間に挟まれている。樹脂マトリックス中間層208および210の各々は、適切な樹脂214内に形成された複数のSMA粒子212を含む。ここでもまた、SMA粒子は、適用例が意図する使途に依存して、オーステナイト状態またはマルテンサイト状態のいずれかにあるNITINOL(登録商標)合金粒子を含み得る。
【0027】
上述の各実施形態において、所定の樹脂マトリックス中間層内におけるSMA粒子の体積量が、特定用途の必要性に沿うように著しく変動し得ることが認識されるであろう。しかしながら一般に、樹脂マトリックス中間層は、約3体積%〜30体積%のSMA粒子を含み、これらの粒子は、粒子を多く含む断続的な層として極めて高濃度で使用され得、ファイバ−金属積層物におけるような単独の連続した金属プライに類似した形態に近づく。代替的に、特定の用途に沿うように、より低濃度のSMA粒子20を単に使用することもできる。NITINOL(登録商標)合金は特に望ましいSMAであるが、他のSMA、たとえばNi−Ti−Cu、Cu−Al−Ni−Mn、および、最近開発された、ニッケルを含有しない擬似弾性のベータチタン合金もまた、この発明とともに用い得ることが認識されるであろう。
【0028】
SMA材料としてNITINOL(登録商標)合金を用いることにより、さらに別の多数の利点もまた提供される。NITINOL(登録商標)合金は、鋼よりも優れた耐食性および高い耐摩耗性(すなわち耐侵食性)を有する。NITINOL(登録商標)合金の耐摩耗性は、鋼の耐
摩耗性の約10倍大きい。熱硬化性ポリマー複合体にNITINOL(登録商標)を加えると、NITINOL(登録商標)は、複合体のG1c/G11c特性(すなわち、耐破損性を反映する機械的特性)を高めることができる。上述のように、NITINOL(登録商標)合金はまた、複合体構造に対して極めて改善された電気伝導性も提供し、したがって、度重なる落雷に対する耐久性を改善する。複合体の外側表面の全体の耐久性もまた改善される(すなわち、耐摩耗性および耐侵食性に関して)。
【0029】
SMA粒子としてNITINOL(登録商標)合金を用いるさらに別の利点は、NITINOL(登録商標)合金を用いても、現行の製造工程にほとんど影響がないことである。より具体的に、NITINOL(登録商標)合金は、自動テープ敷設による機械加工(Automated Tape Laying
Machining(ATLM))、ホットドレープ成形、高度なファイバプレースメント(AFP)、およびハンドレイアップ作業に対して大きな変更を要しない。NITINOL(登録商標)合金の使用はまた、樹脂トランスファー成形(RTM)、真空アシスト樹脂トランスファー成形(VARTM)、およびシーマンの複合体による樹脂注入成形プロセス(Seamann Composite's Resin Injection Molding Process(SCRIMP))にも容易に適用することができ、ここでは、NITINOL(登録商標)合金粒子が、樹脂含浸工程の前に、予備形成品のファイバの表面に加えられるか、または予備形成品のプライの層と層との間で区画される。SMA粒子によって強化された複合体構造を用いるさらに別の特有の利点は、現行の機械加工の工程に影響を与えずに、現時点で使用されているプレプレッグ材料(すなわち、一方向のテープおよび織物のプレプレッグ)に等しい形態での使用が可能である点である。SMA粒子により強化された複合体はまた、自動テープ敷設による機械加工(ATLM)、高度なファイバプレースメント(AFP)、ホットドレープ成形および従来のハンドレイアップ等の工程で使用される現行の材料に対する、「ドロップイン」置換物として働くことも可能であると言える。認識されるように、複合体構造の中間層内でSMA粒子を用いることは、航空機の構造に大きくかつ明確な利点を有する。NITINOL(登録商標)合金粒子の振動減衰特性は、航空機の構造の疲労寿命を著しく延ばす。一般に、剛性の複合体構造が極度の音響振動および構造振動を発射中に受ける宇宙用途において、NITINOL(登録商標)合金粒子は、中間層の層間剥離および破壊に対してさらなる保護を提供する。
【0030】
NITINOL(登録商標)合金粒子を用いることにより、さらに別の大きな製造上の利点が提供されることもまた認識されるであろう。現在、起伏を有する実際の複合体の部品を製作するために、引伸ばしたNITINOL(登録商標)合金ファイバ(すなわち「ワイヤ」)または任意のSMAワイヤを用いてこのような部品を強化することは実用的ではない(または不可能である)。SMAワイヤの、まさにその特性により、このワイヤは、その超弾性特性のために部品の製作中に非平面の(すなわち起伏を有する)部品の鋳型の形状に合致せず、合致した状態を保てない。なぜなら、SMAワイヤは、圧力が一旦かからなくなると、曲がった直後に真っ直ぐになるためである。
【0031】
第2に、一方向の炭素ファイバのテープのプレプレッグと同じようなテープ状で供給される超弾性のNITINOL(登録商標)合金ワイヤの販売元が、現時点では認識されていない。これはおそらく、このような製品を提供することが困難であるためと考えられる。なぜなら、この材料は、ワイヤのSMA特性により、緩んだばねのように弛緩するためである。さらに、SMAフィラメントは、このような材料の形で均一に平行化された状態を保ちにくい。炭素ファイバのプレプレッグが、テープ状に一方向に正確に平行化され、かつ、材料の幅および長さ全体にわたって厚さに関する厳密な寸法公差を取るように保持された炭素フィラメントで製造されることが認識されるであろう。樹脂を含浸させた炭素ファイバは、硬化しないうちは柔軟であり、垂れ下がることが可能であるため、テープが部品の鋳型に沿うことを可能にする。これらの特性は、SMAワイヤでは実質的に得ることができない。なぜなら、SMAワイヤが、剛性およびばね様の特性を有するためである。
【0032】
樹脂マトリックスの添加剤としてSMA粒子が用いられることにより、複合体積層物を強化する利点が提供されるだけでなく、上で述べたように構造体に対し、さらに別の性能上の利点も提供される。最も著しい点としては、粒子の添加剤としてのSMAにより、複合体材料において形状記憶合金の実際の使用が可能になり、さらに、さまざまな設計上の複雑さを有する複合体の部品の製造において、現行の、および高度な生産工程に対し、この明細書で述べるように複合体材料が「ドロップイン」材料として働き得る。
【0033】
図7を参照すると、この発明の代替的な好ましい一実施形態に従って製造された射出成形部品300が示される。この実施形態において、SMA粒子302は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂304に加えられて、射出成形部品300用に使用される原材料306を形成する。同様に図8において、中にSMA粒子402が混合された熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂404で製造された圧縮成形部品400が示される。
【0034】
成形用途において、実際の成形動作を行なう前に、この工程で用いられるベース樹脂内にさまざまな無機質および金属錯体の添加物を加えることにより、この樹脂の物理的および機械的特性が、特定の部品の用途に対して高められ得かつ調整され得ることが認識されるであろう。NITINOL(登録商標)合金粒子等のSMA粒子302または402をベース樹脂(304または404)に加えることは、ベース材料の機械的特性を改善するだけでなく、重要な特性、たとえば成形部品300または400の衝撃または衝突耐性、電気伝導性および熱伝導性、振動減衰性、ならびに難燃性を著しく高める。射出成形および圧縮成形の工程に加え、SMAによって強化された成形可能な樹脂を使用することのできる他の工程は、回転成形、反応性射出成形、押出成形、ガスアシスト射出成形、ブロー成形、樹脂トランスファー成形(RTM)、真空アシスト樹脂トランスファー成形(VARTM)、および熱成形である。ここに挙げたものが単に例示であり、この明細書に記載する、SMAで強化した成形可能な樹脂を、他の工程が容易に利用し得ることが認識されるであろう。
【0035】
最終的な成形部品の所望の特性に依存して、炭素、ガラス、および有機のファイバ、フィラメント、およびウィスカだけでなく、他の無機粒子または金属粒子を含み得る従来の強化剤と組合せて、または単独の強化添加剤として、SMA粒子をベース樹脂で用い得ることもまた認識されるであろう。成形部品300および400において、SMA粒子302および402は好ましくは、ベース樹脂304および404、したがって最終的な成形部品300および400内においてランダムかつ均一に分散する。
【0036】
SMA粒子302および402が存在することによってのみ得られる特定の特性が、成形部品300および400の選択された領域、たとえば表面上または表面付近において所望される場合、さらに別の構成要素を介してSMA粒子を所望の領域に配置するよう方向付けることが考えられる。このことは、図9に示す成形部品500において示される。成形部品500は、SMA粒子504が全体に均一に分散した担体材料502を含む。担体材料502は、所望の厚さを有する軽量の織物マットもしくはフィルム、または不織マットもしくはフィルムを含み得る。担体材料502は、部品500用のベース樹脂を注入する前に、部品500を製造するために使用される鋳型の1つ以上の部分に配置され、それにより、担体材料502が、部品の完成時に部品500の所望の位置に存在するようにする。図9は、担体材料502が成形部品500の外側表面に選択的に配置されていることを示すが、さまざまな場所、たとえば図10に示すようにコア部か、部品500内の断続的な位置か、または部品内の複数の位置において成形されるように配置され得ることも認識されるであろう。さらに、部品500のベース樹脂506は、所望であればSMA粒子を取込むことも可能である。この場合、ベース樹脂506および担体材料502は、同一または異なる濃度(または種類)のSMA粒子504を取込んで固有の特性を備えた部品
を提供して特定用途に適合することができる。
【0037】
NITINOL(登録商標)合金粒子等のSMA粒子は、オーステナイト相もしくはマルテンサイト相の状態のいずれかで、または代替的にオーステナイト相およびマルテンサイト相の両方を組合せて用いることができる。NITINOL(登録商標)合金粒子は、成形部品のベース樹脂(または担体材料)で用いることができる。NITINOL(登録商標)合金粒子のオーステナイト相とマルテンサイト相との実際の比率は、最終的な成形部品の所望の特性および性能に依存する。樹脂マトリックスにおけるSMA粒子の含有量は、成形部品の所望の特性に依存して、および、射出成形または圧縮成形の工程の間にこの添加剤が部品の生産性に悪影響を及ぼさない限り、ベースマトリックス樹脂に対して1体積%未満から50体積%以上の範囲であり得る。SMA粒子の添加剤には、SMA金属粒子の樹脂マトリックスへの接着性を高めるために、成形前に表面処理を施してもよいし、施さなくてもよい。
【0038】
樹脂マトリックスに取込まれるSMA粒子のサイズは、部品の用途に依存して、数ナノメートルから数ミリメートル、またはそれよりも大きい範囲に及ぶことも考えられる。SMA粒子の形状は、さまざまな形態を含み得、たとえばほぼ球形、楕円形、血小板様、多面の小粒、およびウィスカまたは短繊維の形を含む円筒状を含み得る。
【0039】
図11を参照すると、この発明のさらに別の代替的な好ましい実現例が示される。この実現例では、SMA粒子602が接着性のベース樹脂マトリックス604に取込まれ、2つの構成要素606を接合するために用いられる接着性のマトリックスまたはフィルム600を形成する。図12は、接着性のベースマトリックスまたは材料704およびSMA粒子702を中に分散させた接着性ペースト700を示す。この接着性ペーストを用いて2つの構成要素706をともに固定する。
【0040】
航空機産業および航空宇宙産業だけでなく、構造上強固かつ軽量の部品が必要とされる他の産業において、従来の締結装置に関する問題を回避するために、部品の製造および接合に対してフィルム状およびペースト状の接着剤が現在ますます多用されていることが認識されるであろう。したがって、これらの接着剤の性能要件は、これらの新規の用途の要望に応えて構造上の接着を行なうために、高くなっている。
【0041】
図11および図12において、NITINOL(登録商標)合金粒子を含み得るSMA粒子602および702は、意図される用途に依存して、接着剤の機械的性能を高めるか、または接着剤に特に所望される特性を与えるように取込まれる。接着性のベース樹脂604または704にさらにSMA粒子602および702、特にNITINOL(登録商標)合金粒子を加えることにより、接着性のベース材料の機械的特性を高める能力だけでなく、部品606および706の接着された接合部の重要な特性、たとえば衝撃または衝突耐性、電気伝導性および熱伝導性、振動減衰、ならびに難燃性を著しく改善する能力を提供する。特に、接着剤を強化するために従来使用されてきた感湿性のエラストマー添加剤および熱可塑性添加剤に代わるものとしてSMA粒子602および702を用いることにより、接着性のマトリックスもしくはフィルム600、またはペースト700の高温/湿潤性能が著しく改善される。加えて、SMA粒子602および702は、接着剤の接合部を介してそこから熱をより迅速に伝達し得ることにより、接着性のマトリックス600またはペースト700の高温性能を著しく高める。
【0042】
接着を行なう用途の要件に依存して、フィルム状またはペースト状の接着剤で用いられる従来の添加剤および強化剤と組合せるか、または単独の強化添加剤として、SMA粒子602および702を接着性の樹脂マトリックスもしくはフィルム600またはペースト700で用い得ることが認識されるであろう。この実施形態において、SMA粒子602
および702は、ベース樹脂604、したがって最終的な樹脂マトリックスもしくはフィルム600、または最終的な接着性ペースト700内にランダムかつ均一に分散し得る。
【0043】
NITINOL(登録商標)合金粒子等のSMA粒子602および702は、オーステナイト相またはマルテンサイト相の状態のいずれかで用いることができる。さらに、SMA粒子602および702は、所望の特性および性能を満たすよう必要に応じて、所望の組合せ/割合のオーステナイト相およびマルテンサイト相のSMA粒子を含み得る。ベース樹脂のマトリックスまたはフィルム604内のSMA粒子の含有量は、接着剤の所望の特性に依存して、および、SMA添加剤が接着工程に関して部品の生産性に悪影響を及ぼさない限り、ベースとなる接着性マトリックス704またはフィルム604に対して1体積%未満から50体積%を超える範囲に及び得る。SMA粒子602および702には、これらの金属粒子の、ベースとなる接着剤のマトリックス704またはフィルム604への化学結合を強化するために、ベースとなる接着性の樹脂マトリックス704またはフィルム604と混合する前に表面処理を施してもよく、施さなくてもよい。
【0044】
SMA粒子のサイズは、接着剤の接合部が形成される部品の意図される用途に依存して、ナノメートルから数ミリメートル、または数ミリメートルよりも大きい範囲さえも取り得る。SMA粒子の形状は、さまざまな形態を含み得、たとえばほぼ球状、楕円状、血小板様、および多面の小粒であるか、またはウィスカもしくは短繊維の形をとった円筒形を可能性として含み得る。代替的に、上述の形状のSMA粒子の組合せを取込んで、所望の接合部の接着特性を得ることができる。
【0045】
次に図13を参照すると、この発明の別の代替的な好ましい実現例に従った塗料またはコーティング800が示される。塗料またはコーティング800は、ベース塗料または化合物802と、このベース塗料または化合物内に分散した複数のSMA粒子804とを含む。塗料またはコーティング800を用いて、部品806の外側保護面を形成する。好ましい一形態において、SMA粒子804は、NITINOL(登録商標)合金粒子を含む。SMA粒子804は、SMA粒子に固有の特性により、塗料またはコーティング800の衝撃耐性、耐引掻き性、耐摩耗性および耐侵食性、電気伝導性および熱伝導性、振動減衰性、ならびに難燃性を高める。
【0046】
SMA粒子804は、用途の要件に依存して、塗料および保護コーティングで用いられる従来の添加剤および強化剤と組合せるか、または単独の強化添加剤として、塗料またはコーティング化合物802において使用することができる。SMA粒子804は、ベース塗料または化合物802内でランダムかつ均一に分散しているが、特定用途の必要性に沿うようにこのことを変更することも可能であることが認識されるであろう。
【0047】
塗料またはコーティング800とともに、SMA粒子804、たとえばNITINOL(登録商標)合金粒子は、保護塗料/コーティングの所望の特性およびその用途に依存して、オーステナイト相もしくはマルテンサイト相のいずれか、またはこれらの2つの相の組合せで用いることができる。ベース塗料または化合物802内のSMA粒子804の含有量は、SMA粒子が塗装またはコーティングの工程に悪影響を及ぼさない限り、ベース塗料または化合物に対し、1体積%未満から50体積%以上の範囲を取り得る。SMA粒子804には、金属SMA粒子の、ベース塗料または化合物への化学結合を強固にするために、ベース塗料または化合物802に混合する前に表面処理を施してもよく、施さなくてもよい。
【0048】
塗料またはコーティング800に関し、SMA粒子804のサイズは、この塗料またはコーティングが用いられる特定用途の必要性に依存して、数ナノメートルから数ミリメートル、またはそれよりも大きな範囲をも取り得る。ナノメートルの大きさのSMA粒子は
、可視光の波長未満の粒径であることにより、コーティングとして透明であるというさらに別の利点を提供し、したがって、さまざまな構成要素、たとえば航空機の窓、キャノピー、および光透過性を必要とする他の構造に対し、高い耐損傷性および微小割れに対する耐性を提供することができる。SMA粒子の形状は、さまざまな形態を含み得、たとえばほぼ球状、楕円状、血小板様か、または多面の小粒を含み得る。
【0049】
図7〜図13の実施形態の材料で用いられるSMA粒子のサイズもまた大きく変動することが考えられるが、ほとんどの用途において、50ミクロン以下、または50ミクロンを超え得る範囲を取るこが考えられ、0.005ミクロンか、または可能性として0.005ミクロン未満ほども小さいことが考えられる。SMA粒子が円筒形またはウィスカ様の形状である場合、この長さは、数ミリメートル以下、または数ミリメートルを超えることが考えられる。
【0050】
この発明の説明は本質的に単に例示であるため、この発明の骨子から逸脱しない変更例はこの発明の範囲内にあるものと意図される。このような変更例は、この発明の精神および範囲からの逸脱とは考えられない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の好ましい一実施形態に従ったポリマー複合体構造の一部の側面断面図である。
【図2】図1に示す複合体構造の樹脂マトリックス中間層内で用いられる1個の円筒形の(すなわち「フィラメント」形の)SMA粒子の斜視図である。
【図3】図1に示す構造の樹脂マトリックス中間層内で用いられ得る1個の楕円形のSMA粒子の斜視図である。
【図4】図1の構造の樹脂マトリックス中間層内で用いられ得る1個の球状のSMA粒子の平面図である。
【図5】オーステナイト相およびマルテンサイト相のSMA粒子を有する別個の中間層を用いることを示す、この発明のポリマー複合体構造の代替的な好ましい一形態の側面断面図である。
【図6】この発明の代替的な好ましい一実施形態に従った、高度でかつハイブリッドなファイバ−金属積層物の複合体構造の側面断面図である。
【図7】SMA粒子で強化された成形可能な樹脂で製造された射出成形部品の側面断面図である。
【図8】SMA粒子で強化された成形可能な樹脂で製造された圧縮成形部品の側面断面図である。
【図9】SMA粒子で強化された材料の担体層を組込んだ可塑性の成形部品の側面断面図である。
【図10】成形部品のコア部において形成された担体層を有する、図9の一部の図である。
【図11】構成要素をともに接着するために用いられる、SMA粒子で強化された接着性フィルムの側面断面図である。
【図12】2つの構成要素を接着するために用いられる、SMA粒子で強化された接着性ペーストの側面断面図である。
【図13】部品の外側表面を被覆するために用いられる、SMA粒子で強化された塗料または保護コーティングの側面断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形工程から少なくとも部分的に成形部品を形成するための、該成形工程で用いる成形可能な樹脂であって、
ベース樹脂と、
前記ベース樹脂内に分散した複数の形状記憶合金(SMA)粒子とを含み、
前記SMA粒子は、前記ベース樹脂内で懸濁されて前記ベース樹脂の特定の特性を高めるように働く、成形可能な樹脂。
【請求項2】
前記SMA粒子は、NITINOL(登録商標)合金粒子を含む、請求項1に記載の成形可能な樹脂。
【請求項3】
前記SMA粒子は、前記樹脂の総体積の約1%未満である、請求項1に記載の成形可能な樹脂。
【請求項4】
前記SMA粒子は、前記樹脂の約1体積%と50体積%との間で含有される、請求項1に記載の成形可能な樹脂。
【請求項5】
前記SMA粒子は、前記樹脂の約50体積%以上で含有される、請求項1に記載の成形可能な樹脂。
【請求項6】
前記SMA粒子は、オーステナイト相のSMA粒子を含む、請求項1に記載の成形可能な樹脂。
【請求項7】
前記SMA粒子は、マルテンサイト相のSMA粒子を含む、請求項1に記載の成形可能な樹脂。
【請求項8】
前記SMA粒子は、マルテンサイト相およびオーステナイト相のSMA粒子の混合物を含む、請求項1に記載の成形可能な樹脂。
【請求項9】
前記ベース樹脂は、熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の成形可能な樹脂。
【請求項10】
前記ベース樹脂は、熱硬化性樹脂を含む、請求項1に記載の成形可能な樹脂。
【請求項11】
前記樹脂は、射出成形および圧縮成形の工程で用いるのに好適である、請求項1に記載の成形可能な樹脂。
【請求項12】
前記SMA粒子は、球状、円筒状、および楕円状を含む形状の群の少なくとも1つで形成される、請求項1に記載の成形可能な樹脂。
【請求項13】
前記SMA粒子は、前記ベース樹脂内で混合された小粒を含む、請求項1に記載の成形可能な樹脂。
【請求項14】
前記SMA粒子は、約0.005ミクロンと約50ミクロンとの間のサイズを含む、請求項1に記載の成形可能な樹脂。
【請求項15】
前記SMA粒子は、約50ミクロン以上のサイズを含む、請求項1に記載の成形可能な樹脂。
【請求項16】
前記SMA粒子は、約0.005ミクロン以下のサイズを含む、請求項1に記載の成形
可能な樹脂。
【請求項17】
射出成形の工程で用いて射出成形部品を製造するための成形可能な樹脂であって、
熱可塑性樹脂または熱硬化性可塑性樹脂の1つを含むベース樹脂と、
前記ベース樹脂に加えられて前記ベース樹脂の特性を高める複数の形状記憶合金(SMA)粒子とを含む、成形可能な樹脂。
【請求項18】
前記SMA粒子は、前記ベース樹脂に加えられる際にオーステナイト相にある、請求項17に記載の成形可能な樹脂。
【請求項19】
前記SMA粒子は、前記ベース樹脂に加えられる際にマルテンサイト相にある、請求項17に記載の成形可能な樹脂。
【請求項20】
前記SMA粒子は、NITINOL(登録商標)合金粒子を含む、請求項17に記載の成形可能な樹脂。
【請求項21】
前記SMA粒子は、前記樹脂の約1.0体積%未満で含有される、請求項17に記載の成形可能な樹脂。
【請求項22】
前記SMA粒子は、前記樹脂の約1.0体積%と約50体積%との間で含有される、請求項17に記載の成形可能な樹脂。
【請求項23】
圧縮成形の工程で用いて圧縮成形部品を製造するための成形可能な樹脂であって、
熱可塑性樹脂または熱硬化性可塑性樹脂の1つを含むベース樹脂と、
前記ベース樹脂に加えられて、前記ベース樹脂の成形可能性に影響を及ぼさずに前記ベース樹脂の特性を高める複数の形状記憶合金(SMA)粒子とを含む、成形可能な樹脂。
【請求項24】
前記SMA粒子は、NITINOL(登録商標)合金粒子を含む、請求項23に記載の成形可能な樹脂。
【請求項25】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、前記ベース樹脂に加えられる際にオーステナイト相で提供される、請求項24に記載の成形可能な樹脂。
【請求項26】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、前記ベース樹脂に加えられる際にマルテンサイト相で提供される、請求項24に記載の成形可能な樹脂。
【請求項27】
前記SMA粒子は、楕円状、球状、および円筒状を含む形状の群の1つに従った形状を含む、請求項23に記載の成形可能な樹脂。
【請求項28】
前記SMA粒子は、前記ベース樹脂に加えられる小粒を含む、請求項23に記載の成形可能な樹脂。
【請求項29】
保護コーティングであって、
ベース化合物と、
前記ベース化合物内に分散する複数の形状記憶合金(SMA)粒子とを含み、
前記SMA粒子は前記コーティングの物理的特性を高める、保護コーティング。
【請求項30】
前記SMA粒子は、約50ミクロンと約0.005ミクロンとの間の直径を含む、請求項29に記載のコーティング。
【請求項31】
前記SMA粒子はNITINOL(登録商標)合金粒子を含む、請求項29に記載のコーティング。
【請求項32】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、球、楕円、および円筒を含む群からの形状の少なくとも1つに従った形状をとる、請求項29に記載のコーティング。
【請求項33】
前記SMA粒子は、前記ベース化合物内でランダムに分散した小粒を含む、請求項29に記載のコーティング。
【請求項34】
前記SMA粒子は、前記ベース化合物の約1.0体積%以上で含有される、請求項29に記載のコーティング。
【請求項35】
前記SMA粒子は、前記ベース化合物の約1.0体積%と約50体積%との間で含有される、請求項29に記載のコーティング。
【請求項36】
前記SMA粒子は、前記コーティングの全体にランダムかつ均一に分散する、請求項29に記載のコーティング。
【請求項37】
前記コーティングは塗料を含む、請求項29に記載のコーティング。
【請求項38】
前記SMA粒子は、マルテンサイト相のNITINOL(登録商標)合金粒子を含む、請求項29に記載のコーティング。
【請求項39】
前記SMA粒子は、オーステナイト相のNITINOL(登録商標)合金粒子を含む、請求項29に記載のコーティング。
【請求項40】
前記SMA粒子は、約50ミクロン以上のサイズを有する、請求項29に記載のコーティング。
【請求項41】
前記SMA粒子は、約0.005ミクロン以下のサイズを有する、請求項29に記載のコーティング。
【請求項42】
衝撃耐性が高められた塗料であって、
ベース塗料と、
前記ベース塗料内に分散する複数の形状記憶合金(SMA)粒子とを含み、
前記SMA粒子は前記ベース塗料の衝撃耐性を改善するように働く、塗料。
【請求項43】
前記SMA粒子は、約50ミクロンと約0.005ミクロンとの間の直径を含む、請求項42に記載の塗料。
【請求項44】
前記SMA粒子は、NITINOL(登録商標)合金粒子を含む、請求項42に記載の塗料。
【請求項45】
前記SMA粒子は、前記ベース塗料の全体にわたり、ランダムかつほぼ均一に分散する、請求項42に記載の塗料。
【請求項46】
前記SMA粒子は、球、楕円、および円筒を含む形状の群の1つに従った形状を含む、請求項42に記載の塗料。
【請求項47】
前記SMA粒子は、前記ベース塗料の約1.0体積%以上で含有される、請求項42に記載の塗料。
【請求項48】
前記SMA粒子は、前記ベース塗料の約1.0体積%と約50体積%との間で含有される、請求項42に記載の塗料。
【請求項49】
前記SMA粒子は、前記ベース塗料の全体にランダムに分散する小粒を含む、請求項42に記載の塗料。
【請求項50】
前記SMA粒子は、マルテンサイト相のNITINOL(登録商標)合金粒子を含む、請求項42に記載の塗料。
【請求項51】
前記SMA粒子は、マルテンサイト相のNITINOL(登録商標)合金粒子を含む、請求項42に記載の塗料。
【請求項52】
前記SMA粒子は、約50ミクロン以上のサイズを含む、請求項42に記載の塗料。
【請求項53】
前記SMA粒子は、約0.005ミクロン以下のサイズを含む、請求項42に記載の塗料。
【請求項54】
構成要素の外側表面に液体で塗布されるように適合される外側保護コーティングであって、
流動可能なベース化合物と、
前記ベースコーティングの全体にランダムかつ均一に分散する複数のNITINOL(登録商標)合金粒子とを含み、
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、前記オーステナイト相およびマルテンサイト相の一方で提供され、
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、前記構成要素の前記外側表面に前記外側保護コーティングを塗布する能力に悪影響を及ぼさずに前記ベース塗料の衝撃耐性を改善するように働く、外側保護コーティング。
【請求項55】
前記NITINOL合金粒子は、約50ミクロンと約0.005ミクロンとの間の直径を含む、請求項54に記載の外側保護コーティング。
【請求項56】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、前記ベース化合物の約1.0体積%以上で含有される、請求項54に記載の外側保護コーティング。
【請求項57】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、前記ベース化合物の約1.0体積%と約50体積%との間で含有される、請求項54に記載の外側保護コーティング。
【請求項58】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は球形を含む、請求項54に記載の外側保護コーティング。
【請求項59】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は楕円形を含む、請求項54に記載の外側保護コーティング。
【請求項60】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は円筒形を含む、請求項54に記載の外側保護コーティング。
【請求項61】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、約50ミクロン以上のサイズを含む、請求項54に記載の外側保護コーティング。
【請求項62】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、約0.005ミクロン以下のサイズを含む、請求項54に記載の外側保護コーティング。
【請求項63】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、前記ベース化合物の全体にランダムかつ均一に分散する小粒を含む、請求項54に記載の外側保護コーティング。
【請求項64】
塗料を含む、請求項54に記載の外側保護コーティング。
【請求項65】
接着性のベース材料と、
前記接着性のベース材料内に分散して前記接着性ベース材料の衝撃耐性を高める複数の形状記憶合金(SMA)粒子とを含む、接着性化合物。
【請求項66】
前記SMA粒子は、NITINOL(登録商標)合金粒子を含む、請求項65に記載の接着性化合物。
【請求項67】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、オーステナイト相で提供される、請求項66に記載の接着性化合物。
【請求項68】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、マルテンサイト相で提供される、請求項66に記載の接着性化合物。
【請求項69】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、球、楕円、および円筒を含む形状の群の少なくとも1つに従った形状を含む、請求項66に記載の接着性化合物。
【請求項70】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、前記接着性ベース材料内でランダムに分散する小粒を含む、請求項66に記載の接着性化合物。
【請求項71】
前記SMA粒子は、前記接着性ベース材料の約1.0体積%で含有される、請求項65に記載の接着性化合物。
【請求項72】
前記SMA粒子は、前記接着性ベース材料の約1.0体積%と約50体積%との間で含有される、請求項65に記載の接着性化合物。
【請求項73】
前記接着性ベース材料はフィルムを含み、前記接着性化合物は接着性フィルムを含む、請求項65に記載の接着性化合物。
【請求項74】
前記接着性ベース材料は接着性ペーストを含む、請求項65に記載の接着性化合物。
【請求項75】
前記SMA粒子は、約50ミクロンと約0.005ミクロンとの間の直径を含む、請求項65に記載の接着性化合物。
【請求項76】
前記SMA粒子のサイズは、約50ミクロン以上で構成される、請求項65に記載の接着性化合物。
【請求項77】
前記SMA粒子のサイズは、約0.005ミクロン以下で構成される、請求項65に記載の接着性化合物。
【請求項78】
接着性ベースフィルムと、
前記接着性ベースフィルムの全体にランダムに分散して前記接着性ベースフィルムを強化するための複数の形状記憶合金(SMA)粒子とを含む、接着性フィルム。
【請求項79】
前記SMA粒子は、NITINOL(登録商標)合金粒子を含む、請求項78に記載の接着性フィルム。
【請求項80】
前記SMA粒子の少なくとも一部は、マルテンサイト相のNITINOL(登録商標)合金粒子を含む、請求項78に記載の接着性フィルム。
【請求項81】
前記SMA粒子の少なくとも一部は、オーステナイト相のNITINOL(登録商標)合金粒子を含む、請求項78に記載の接着性フィルム。
【請求項82】
前記SMA粒子は、前記接着性ベースフィルムの約1.0体積%で含有される、請求項78に記載の接着性フィルム。
【請求項83】
前記SMA粒子は、前記接着性ベースフィルムの約1.0体積%と約50体積%との間で含有される、請求項78に記載の接着性フィルム。
【請求項84】
前記SMA粒子は、球、楕円、および円筒を含む形状の群の少なくとも1つに従った形状を含む、請求項78に記載の接着性フィルム。
【請求項85】
前記SMA粒子は、前記接着性ベースフィルム内で分散する複数の小粒を含む、請求項78に記載の接着性フィルム。
【請求項86】
接着性ペーストであって、
或る粘稠度のペーストを有する接着性化合物と、
前記接着性化合物内で分散して、前記化合物の、外部の構成要素への適用可能性に悪影響を及ぼさずに前記接着性化合物を強化する複数のSMA粒子とを含む、接着性ペースト。
【請求項87】
前記SMA粒子は、NITINOL(登録商標)合金粒子を含む、請求項86に記載の接着性ペースト。
【請求項88】
前記SMA粒子は、約50ミクロンから約0.005ミクロンの直径を含む、請求項86に記載の接着性ペースト。
【請求項89】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、オーステナイト相で提供される、請求項87に記載の接着性ペースト。
【請求項90】
前記NITINOL(登録商標)合金粒子は、マルテンサイト相で提供される、請求項87に記載の接着性ペースト。
【請求項91】
前記SMA粒子は、球、円筒、および楕円を含む形状の群の少なくとも1つの形状を含む、請求項86に記載の接着性ペースト。
【請求項92】
前記SMA粒子は、前記接着性化合物の約1.0体積%以上で含有される、請求項86に記載の接着性ペースト。
【請求項93】
前記SMA粒子は、前記接着性化合物の約1.0体積%と約50体積%との間で含有される、請求項86に記載の接着性ペースト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2006−505655(P2006−505655A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550479(P2004−550479)
【出願日】平成15年11月4日(2003.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2003/035159
【国際公開番号】WO2004/041950
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】