形状記憶型脊椎ジャック
本発明は、椎体を回復する方法と、椎体高の増大を制御する方法と、に関する。特に、本発明は、脊椎ジャックに関し、より具体的には回復方法において使用される形状記憶材料よりなる脊椎ジャックに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椎体を修復する方法と、椎体高(vertebral height)の回復及び増大を制御する方法と、に関する。特に、本発明は、脊椎ジャックに関し、より具体的には、修復方法において使用される形状記憶材料よりなる脊椎ジャックに関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎圧迫骨折は、骨粗鬆症に共通する特徴であり、相当な大きさの痛みと患者の生活の質を著しく低減させる苦痛とをもたらす。椎体形成術は、骨折した椎骨を固定させる外科手術の表現に使用される一般的な用語である。主として、椎体形成術は、骨粗鬆症に起因する骨折を修復するために使用される。骨粗鬆症性骨折は、椎体高を減少させ、後弯を含む脊椎の奇形をもたらす。椎体形成術は、椎骨を固定することによって痛みを低減しており、外科医またはX線技師によって一般に行われる。既知の椎体形成術は、骨折部位にセメントを経皮的に注入する工程、または、セメントの注入前にバルーンをあらかじめ挿入する工程(脊柱後弯形成術(kyphoplasty)として一般的に知られている)を有する。
【0003】
このような手術において使用されるセメントには、一般的に、毒性のあるメチルメチルアクリレートが含まれている。セメントのみを注入する手術を用いることのさらなる問題は、セメントが骨折部位から脊柱のような影響を受けやすい領域へ漏洩することである。また、このような手術は、実際に椎体高を上昇させる力を付与するような高圧力でセメントを注入する必要があることである。しかし、従来の椎体形成術は、椎体高を上昇させなければならない面に沿ってこの力を案内することができず、さまざまな方向へ力を伝達させ、そして脊柱のより影響を受けやすい部分に力を掛けて不都合な効果をもたらし、最終的に脊椎を損傷させることがある。さらに、注入されたセメントの力が誤った方向に導かれるため、セメントは、椎体を上昇させるために実際に必要な圧力よりも高い圧力で注入しなければならず、同様にセメントをより多く漏洩させ、脊椎を損傷させる可能性を高める。
【0004】
セメントのみを使用することに関連する問題は、脊柱後弯形成術によってある範囲で取り組まれている。脊柱後弯形成術は、機械的または水圧的に膨張させることによって骨折した椎体の高さ及び角度を回復することを目的としている。これは、一般的に、他の既知の椎体形成術と同様に、脆弱な骨の領域内にある脊椎端板にわたって負荷を掛ける膨張した脊柱後弯形成術バルーンを用いて行われている。バルーンを所定の骨折部位へ挿入した後に、バルーンは、膨張され、椎体高を上昇させるのに十分な力をもたらす。そして、セメントは、中空針(トロカール)を介して膨張したバルーン内に入れられる。膨張したバルーンは、脊椎の重量を受けており、セメントは、セメントのみが使用される場合において必要である高圧を用いて注入する必要がない。バルーンを使用して骨折した脊椎の高さ及び角度を回復させることにより、脊柱のような影響を受けやすい領域へセメントの漏洩が最小化する。これは、膨張したバルーンが脊椎の負荷を受けるだけでなくセメントが膨張したバルーン内に収容されているためである。また、外科医は、透視診断的に手術を観察し、セメントがバルーンから出て脊柱管の領域に入ることを制限または防止することがある。脊柱後弯形成術が他の既知の椎体形成術と比較していくらかの改良をもたらすが、この手術は、まだ椎体高の回復を最大化させておらず、また、セメントの漏洩は、未だ観測されている。
【0005】
従来技術における椎体形成術は、椎体高の回復を制御することについて制限がある。脊椎のような人体のこのような領域に力を掛けることは、正確に制御かつ方向付けされない場合に有害となる可能性がある。椎体高を回復させるため、単一面のみにおいて制御されている力が必要となる。脊柱後弯形成術を含む従来技術における手術は、1を越える平面に常に力を掛けている。このような追加の力は、椎体高の回復に悪影響であるだけでなく、有害となる可能性がある。
【0006】
従来技術におけるさらなる椎体形成デバイス及び椎体形成術は、特許文献1及び特許文献2に示されている。しかしながら、これら開示では、椎体高の調節を制御していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0095138号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/038009号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、制御された方法でかつ単一の面に沿った状態で椎体の膨張を調整することが可能なデバイス及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の第1の態様において、デバイスが提供され、当該デバイスは、損傷したまたは崩壊した椎体の高さを増大させる形状記憶材料であって椎体を椎体本来の高さまで回復させることが可能な形状記憶材料よりなる。形状記憶材料における形状変化特性は、椎体高を回復させる脊椎の骨折ギャップを妨げるために使用される。椎体が修復される程度は、形状記憶材料へ刺激を加えること、及び/または、形状記憶材料の収縮を変更すること、によって制御される。
【0010】
一般的に、デバイスは、骨折部のキャビティ内へ挿入され、骨折部は、デバイスを収容するために下処理されている。あるいは、デバイスは、骨折部のキャビティの形状に嵌合するように構成されている。主として、椎体高は、隣接する椎間板間の距離である。
【0011】
好ましくは、デバイスは、形状記憶特性を有する少なくとも1つの支持素子であって支持素子が単一の支持面に沿って椎体に力を掛けるように構成された少なくとも1つの支持素子を備える。
【0012】
一般的に、支持素子は、形状記憶材料よりなる。形状記憶材料は、例えばニチノールなど形状記憶合金であってもよい。好ましくは、形状記憶材料は、形状記憶ポリマーである。あるいは、材料は、単一の形状記憶合金または複数の形状記憶合金と単一の形状記憶ポリマーまたは複数の形状記憶ポリマーとの複合物よりなってもよい。形状記憶ポリマーは、吸収性/非吸収性または両者の組み合わせであってもよい。使用されうる形状記憶ポリマーの具体例には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、ポリアクリレート、ポリαヒドロキシ酸、ポリカプロラクトン(polycapropactone)、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリグリコール酸、ポリグリコール、ポリラクチド、ポリオルトエステル、ポリリン酸塩、ポリオキサエステル(polyoxaester)、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸塩、多糖、ポリチロシン炭酸塩、ポリウレタン、及び、コポリマー、または、これらの複合ポリマーが含まれる。
【0013】
形状記憶ポリマー(SMP)の一般的な概念は、後述する。コンセプトは、形状記憶ポリマーの特性を使用して有利な椎体形成術のデバイス及び方法を提供することであり、上記方法は、従来技術と比較して、手術及び臨床転帰に関して優れている。従来技術に対する本願発明の有利点には、影響を受けやすい領域を毒性のある骨セメントで汚染することを防止する非流動性材料(SMP)を使用することと、高圧注入システムを必要とせずこれにより組織が損傷すること及び骨セメントが浸透することを防止することと、椎体高の制御された妨害をもたらす(脊椎がどの程度調整されるかを外科医が正確に選択できる)ことと、低侵襲である(小型のインプラントが埋め込まれ、そして所望の構造まで膨張する)ことと、椎骨を最も効果的に上昇させる単一の面に沿って椎体高を上昇させるために必要な力を一様に向けてこれにより抵抗率な上昇をもたらしかつ最終的に脊椎の損傷の原因となる方向に力が掛かることを防止することと、が含まれる。
【0014】
形状記憶ポリマー(SMP)は、「恒久的な」巨視的形状を「記憶する」材料であり、配向性を有する、すなわち温度及び/もしくは圧力の下で一時的もしくは固定的な形状まで操作され、その後に本来もしくは記憶された応力のない状態または形状へ応力緩和する能力を有する。応力緩和は、操作されたまたは配向性のあるSMPに、通常、熱的、電気的または環境的なエネルギーを掛けることによって刺激されまたは促進される。応力緩和は、SMPを配向させる間にSMPに蓄積された弾性変形エネルギーに関連する。SMPの配向性の程度は、応力緩和を引き起こす作動力である。このため、配向性の程度を大きくするほど、SMPに蓄積される力またはエネルギーが大きくなり、これにより、外部エネルギー源によって誘引されまたは刺激されたときにSMPの応力緩和を作動する力またはエネルギーが大きくなる。
【0015】
SMPは、他のポリマーと同様に、2つの主なカテゴリーにグループ分けされ、2つの主なカテゴリーは、非晶質であってこれにより分子レベルのサイズにおける位置秩序が欠如している非晶質、または、同一サンプル中に分子レベルのサイズで秩序のある結晶質領域と非晶質領域との双方を含む部分的結晶質である。
【0016】
アモルファスSMP及びSMPの合成物の塑性変形は、配向性のあるアモルファスまたは部分的結晶の高分子ネットワークの形成に至る。SMPまたはSMP合成物の配向は、伸張することによって、延伸することによって、または、圧縮力及び/または剪断力をSMPに掛けることによって、達成される。SMPは、これら力のうちの任意の1つまたは組合せた力を掛けることによって配向されることとなり、環境温度または高温で実行される。一般的に、SMPの温度は、配向させる力を掛ける前に環境温度からSMPのガラス転移点(Tg)まで上昇される。このようにして、SMPの温度を上昇させると、配向させる力をSMPに掛けるときにSMPが破裂することを防止する。ガラス転移点は、アモルファスのSMPの物理的特性が固体と同じように振舞う温度以下であり、アモルファスのSMPがむしろゴムまたは液体であってSMPが破砕する危険性無く塑性変形を受けることが可能なゴムまたは液体のように振舞う温度以上である。SMPのガラス転移温度は、ポリマーの分子量、組成及び構造と当業者に知られている他の要因となどさまざまな要因に基づいて変化するが、一般的には35℃から150℃の間の範囲である。SMPを配向した後、温度が下げられ、SMPは、一時的または固定的な構造に固定される。
【0017】
配向性ネットワークは、分子運動性が低い場合にガラス転移温度(Tg)以下において物理的に良好に安定している。しかしながら、ポリマーのガラス転移温度近傍またはそれ以上において、分子運動性は、急速に増大し、配向性ネットワークを応力緩和させ、通常、SMPの寸法の物理的変化に付随して起こる。応力緩和中において、配向性SMPは、配向性のないSMPの本来の寸法形状に回復する傾向があり、このため形状「記憶」材料と称される。しかしながら、本来の形状を回復することは、結晶性と、配向性と、巨視的及び微視的構造と、配向性ネットワークが応力緩和されたときの状態と、の程度に主として基づいている。コポリマーについては、他の重要な要因として、これらの詳細な組成及びこれらの具体的な熱特性、すなわちこれら成分のガラス転移温度及び溶融温度がある。
【0018】
応力緩和される工程は、ほぼ一定の容積で発生すると考えられている。応力緩和中の回復程度は、部分的結晶の配向性SMPについて、その結晶性及び構造に基づいているので、SMPの完全な回復は、困難である。一方、非晶質の配向性SMP、コポリマー及びこれらの複合物は、適切な応力緩和状態の下でこれらの元の形状にほぼ回復する。
【0019】
配向性の程度は、応力緩和を引き起こす作動力である。配向性の程度、すなわちSMPに掛かる力が大きくなるほど、作動力が大きくなる。
【0020】
応力緩和中において、配向性SMPは、蓄積されている内部の力またはエネルギーを解放する。例えば、シリンダ状のSMPであってその長手方向軸に沿って延伸力を一軸に掛けることによって配向されたSMPは、自由境界条件、すなわち物理的制約条件が課されていない状態で、応力緩和中において長さ方向で収縮しかつ径方向で膨張する。したがって、シリンダ状をなすSMPが応力緩和すると、SMPは、SMPの長手方向軸に沿う収縮力と径方向に沿う膨張力とを生じさせる。これら長手方向及び径方向の力は、配向性ポリマーの配向性の程度と質量とに比例する。配向性の程度が大きくなるほど、すなわち配向させる間にSMPに掛かる力が大きくなるほど、かつSMPの質量が大きくなるほど、これら長手方向及び径方向において応力を解放する力は大きくなる。他の形状のSMPについて、応力を解放する力は、同様に、配向させる力の大きさの程度と、配向させる力を掛けた方向と、配向性SMPの質量と、に基づく。応力緩和する速度すなわちSMPの形状が回復する速度は、SMPの試料形態や処理条件に基づくが、質量及び熱拡散率に大きく基づく。
【0021】
好ましくは、支持素子は、配向性形状記憶ポリマーよりなる。しかしながら、当然ながら、支持素子は、使用前または脊椎のキャビティ内へ挿入される前において、あらかじめ応力が加えられている、すなわち配向されている。
【0022】
デバイスは、椎体を上昇させなければならない単一の支持面以外に沿って向けられた力が脊柱を損傷させる場合があるとして、脊椎ジャックとして理想的には適している。理想的には、上記単一の支持面は、脊髄の長手方向軸に平行である。より具体的には、単一の支持面は、治療される椎体に隣接する椎間板におけるほぼ平坦な負荷支持面に対してほぼ垂直である。
【0023】
支持素子によって椎体に掛かる力であって上記単一面以外に沿う力は、無視可能である。支持素子が上記単一面以外に沿って力を掛ける場合において、これら力は、脊椎ジャックの本体部によって吸収され、椎体へ中継されない。
【0024】
好ましくは、脊椎ジャックは、支持素子によって単一支持面以外の面に掛けられた力を吸収する緩衝領域を有する。好ましくは、緩衝領域は、支持素子の少なくとも一部を囲む。例えば、緩衝領域は、支持素子と骨折部のキャビティの壁部との間の空間である。支持素子が刺激されて応力緩和すると、支持素子は、1を超える面において膨張しうる。しかしながら、緩衝領域は、応力緩和している支持素子からの力が単一支持面に沿って脊椎に伝達されることのみを可能とする。
【0025】
あるいは、緩衝領域は、例えば泡状物質のような低密度で変形可能な媒体または基質であってもよい。好ましくは、緩衝領域の密度は、25℃、100kPaでの測定時において1.168kg/m3と50kg/m3との間の範囲であり、1.168kg/m3は、空気の密度に近い値である。より好ましくは、緩衝媒体の密度は、1.168kg/m3と10kg/m3との間の範囲である。好ましくは、緩衝領域は、多孔質である。
【0026】
使用時において、泡状物質は、骨折部のキャビティを充填し、配向性のある支持素子の周囲を囲む。支持素子が応力緩和すると、支持素子は、一般的に1以上の面に沿って膨張する。支持素子が2以上の面に沿って膨張する場合、泡状物質は、ただちに支持素子の周囲を囲み、膨張する支持素子の力であって上記単一支持面に沿う力を除く力を吸収し、さらなる力の面に沿って脊椎に力が伝達することを防止する。泡状物質は、ただちに膨張する支持素子を囲み、膨張する支持素子の圧縮する力によってより高密度となる。また、泡状物質は、脊椎ジャックをキャビティ内で固定するという有利点をもたらす。
【0027】
あるいは、緩衝領域は、単一支持面以外に沿う支持素子の運動または膨張を制限または防止する。例えば、緩衝領域は、固体であり形状変化しない構成部材であって嵌合する形状をなすプラグ状の構成部材であってもよい。好ましくは、緩衝プラグは、少なくとも1つの支持素子を収容する少なくとも1つの凹部を有する。好ましくは、少なくとも1つの凹所は、凹所の端部に少なくとも1つの開口部を有する。好ましくは、支持素子は、凹所内でぴったりと嵌合するように配向されており、配向性のある支持素子の端部は、上記少なくとも1つの開口部と同一平面で位置する。使用時において、支持素子は、応力緩和するように促進される。緩衝プラグにおける凹所の壁部は、支持素子の膨張を制限し、支持素子の全体的な膨張を上記少なくとも1つの開口部の間中に方向付ける。好ましくは、凹所は、ほぼシリンダ形状をなして同様の形状をなす支持素子を収容し、かつ凹所の両端部に位置する2つの開口部を有する。このようにして、支持素子の膨張は、単一支持面に沿って開口部を通るように配向されており、単一支持面は、崩壊した椎体に持上効果(jacking effect)をもたらす。
【0028】
好ましくは、脊椎ジャックは、支持素子と椎間板の負荷支持面との間の接触面を有する。より好ましくは、脊椎ジャックは、支持部材と両側に隣接する椎間板との間で接触面を有する。
【0029】
好ましくは、上記接触面は、負荷支持面である。使用時において、負荷支持面は、支持部材からの力をより効率よく椎間板へ伝達させる。
【0030】
好ましくは、支持素子は、SMPを応力緩和させるエネルギープローブを収容する通路部を有する。主として、エネルギープローブは、加熱プローブである。支持素子及び通路部は、有利には、シリンダ状をなしており、通路部は、好ましくは、中央に位置し、支持素子の長手方向軸に沿っている。シリンダ状をなす支持素子は、支持素子がドリルを用いて下処理された骨折部内へ容易に嵌合するため好ましく、ドリル加工された孔部は、ほぼシリンダ状をなしている。通路部を支持素子の中央に位置付けることにより、プローブからの熱は、支持素子のSMPにより均一に伝達されることができる。
【0031】
好ましくは、支持素子は、単一配向面または単一軸内で配向されている。好ましくは、配向面または軸は、単一支持面に垂直である。
【0032】
任意で、脊椎ジャックまたは脊椎ジャックの一部は、多孔質、半多孔質であり、かつ/または、骨成長を増進させる材料及び/または骨セメントを収容するチャネルを有する。脊椎ジャックが多孔質であることにより、周囲の組織から細胞が侵入することが可能となり、例えば骨結合性によって脊椎ジャックの結合を強化する。
【0033】
好ましくは、支持素子のSMPは、生体適合性があり、吸収性もしくは非吸収性または両者の組合せであってもよい。適切なSMPの例には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、ポリアクリレート、ポリαヒドロキシ酸、ポリカプロラクトン(polycapropactone)、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリグリコール酸、ポリグリコール、ポリラクチド、ポリオルトエステル、ポリリン酸塩、ポリオキサエステル(polyoxaester)、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸塩、多糖、ポリチロシン炭酸塩、ポリウレタン、及び、コポリマー、または、これらの複合ポリマーが含まれるが、これに限られない。
【0034】
好ましくは、SMPは、強化SMPである。好ましくは、強化SMPは、繊維、ロッド、血小板及びフィラーのような強化材料または相を含む複合物または基質よりなる。より好ましくは、SMPは、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリマー繊維、セラミック繊維またはセラミック微粒子を含む。
【0035】
好ましくは、脊椎ジャックは、例えばヒドロキシアパタイトまたは燐酸カルシウムのような骨形成物質で被覆されている。
【0036】
好ましくは、1以上の活性薬剤は、脊椎ジャックに組み込まれてもよい。適切な活性薬剤には、抗骨粗鬆薬剤、骨吸収抑制剤、骨形態形成タンパク質、抗生物質、抗炎症薬、血管新生因子、骨形成因子、成長因子、モノブチリン、大綱生成物(omental extract)、トロンビン、変性タンパク、多血小板血漿/溶液、乏血小板血漿/溶液、骨髄穿刺液、及び、生体細胞、保存細胞、休眠細胞、及び死細胞のような動植物由来の任意の細胞が含まれるが、これに限られない。
【0037】
好ましくは、活性薬剤は、脊椎ジャックへ組み込まれ、SMPの応力緩和中または分解中に解放されてもよい。有利には、活性薬剤を組み込むことは、埋め込まれた部位における感染症に対抗する、かつ/または、新たな組織の成長を促進する機能を果たす。
【0038】
主として、脊椎ジャックは、脊椎ジャックを骨折部位に送達させる手段と共に使用される。そのため、本発明の第2の態様では、崩壊した椎体高を増大させる装置が提供され、装置は、上述したような脊椎ジャックと、脊椎ジャックを椎体へ送達するデバイスと、支持素子の形状記憶材料を刺激する手段と、を備える。
【0039】
好ましくは、脊椎ジャックを送達するデバイスは、カニューレまたはトロカールである。主として、支持素子の形状記憶材料を刺激する手段は、熱、超音波または赤外線プローブである。また、上記刺激手段は、エネルギーを支持素子に伝達させて配向性のある支持素子の応力緩和を促進させる別のデバイスまたは方法を含む。例えば、患者の体液の温度は、支持素子の応力緩和を促進するのに十分な熱エネルギーを含んでいる。
【0040】
あるいはまたはさらに、膨張工程は、例えば磁界、電流、マイクロ波のような電磁放射、可視及び赤外光など異なる形態のエネルギー、またはこれら形態のエネルギーの1つの組み合わせを掛けることによって刺激されまたは引き起こされてもよい。
【0041】
また、SMPの分子運動を励起することは、配向性SMPを可塑剤にさらすことによって達成されてもよい。SMPを可塑剤にさらすことにより、SMPのTgが低下し、これにより、SMPの分子運動性が増大する。このようにして、配向性SMPの分子運動性は、エネルギーを入力することなく配向性ネットワークを応力緩和させるのに十分に増大する。配向性SMPを可塑剤にさらすことがSMPを応力緩和させるのに十分でない場合、例えば熱の形態のエネルギーは、同様にSMPに掛けられてもよい。このようにして、配向性SMPは、熱のみを用いてSMPを応力緩和させる場合に必要な温度未満の温度で応力緩和される。このようにして、SMPは、低温で成形され、これにより、温度の影響を受けやすい材料をSMPに追加することが可能になる。温度の影響を受けやすい材料には、例えば、骨折を修復することを補助するモノブチリン、骨髄穿刺液、血液由来因子及び骨形成因子のような解放可能な生物活性剤(releasable bioactive agent)が含まれる。
【0042】
適切な可塑剤は、生体適合性のある揮発性液体または気体の形態であってもよい。このような気体の可塑剤には、酸素及び二酸化炭素が含まれるが、これに限られない。このような液体の可塑剤には、水及び食塩水のような水溶液が含まれるが、これに限られない。
【0043】
一般的に、本発明は、熱的及び/または温度的エネルギー源を用いて脊椎ジャックの形状記憶材料、または特に支持素子にエネルギーを伝達させることを意図している。しかしながら、形状記憶ポリマーは、当業者に周知の他の方法を介して応力緩和されることがあり、力または機械的エネルギー並びに/または溶媒を用いることを含むがこれに限られない。任意の適切な力は、使用されてもよく、手術前または手術中のいずれかで掛けられる。一例としては、超音波デバイスを用いることが含まれ、超音波デバイスは、熱の発生を最小化しながらポリマー材料を応力緩和させる。使用されうる溶媒には、有機性溶媒または水性溶媒が含まれ、体液が含まれる。特に溶媒が手術中に使用される場合に、選択した溶媒が患者の治療に適応されるわけではないことに注意を要する。また、溶媒の選択は、応力緩和される材料に基づいて選択される。形状記憶ポリマーを応力緩和させるために使用されうる溶媒の例には、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、オイル、脂肪酸、アセテート、アセチレン、ケトン、芳香族炭化水素系溶剤、及び塩素系溶剤が含まれる。
【0044】
脊椎ジャックと脊椎ジャック送達デバイスと支持素子の形状記憶材料を励起する手段とを組み合わせることにより、骨折部位に脊椎ジャックを配置して崩壊した椎体の高さを上昇させる方法が提供される。これにより、本発明における第3の態様では、損傷したまたは崩壊した椎体の高さを増大させる方法が提供され、方法は、脊椎ジャックを骨折した椎体内へ導入する工程と、支持素子を励起して支持素子の応力緩和を促進させる工程と、を備える。
【0045】
好ましくは、骨折した椎体は、椎体内に脊椎ジャックを挿入する前に外科的に下処理される。主として、骨折部位は、脊椎ジャックを収容するキャビティを形成して部位を成形することによって下処理されている。骨折部位の成形には、例えば外科ドリルが用いられる。
【0046】
従来技術と比較すると、本発明における脊椎ジャックは、隣接する椎体高の調整を制御すること、一工程で手術すること、及び、透視しながらの案内が不要であること、を含む多数の有利点をもたらす。
【0047】
本発明が適用されるさらなる分野は、以下の発明の詳細な説明から明らかになるだろう。詳細な説明及び具体的な例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、例示のみの目的であり、本発明の範囲を限定する目的ではない。
【0048】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照しながら、単なる例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1A】脊椎の一部を示す側面図であって、椎体間にある椎間板を示し、椎体の1つが楔状に粉砕骨折している側面図である。
【図1B】図1Aの脊椎を示す拡大断面側面図であって、骨折部(骨折キャビティは図示略)内に位置する脊椎ジャックを有する骨折したまたは崩壊した椎体を示し、脊椎ジャックが応力緩和前の状態にある2つの支持素子を有する拡大断面側面図である。
【図1C】図1Bの脊椎を示す図であって、支持素子が完全に応力緩和して椎体が椎体本来の高さまで修復かつ回復されている図である。
【図1D】治療後の図1Aにおける脊椎を示す同様の図である。
【図2A】圧迫骨折された椎体を示す断面側面図であって、骨折部がハッチまたは破線で示されている断面側面図である。
【図2B】本発明における治療方法を示す図であって、図2Aの崩壊した椎体の形状及び高さを回復するための本発明における脊椎ジャック及び装置を用いた図である。
【図2C】同じく、本発明における治療方法を示す図であって、図2Aの崩壊した椎体の形状及び高さを回復するための本発明における脊椎ジャック及び装置を用いた図である。
【図2D】同じく、本発明における治療方法を示す図であって、図2Aの崩壊した椎体の形状及び高さを回復するための本発明における脊椎ジャック及び装置を用いた図である。
【図2E】本発明における脊椎ジャックの実施形態を示す図であって、支持素子が大型のシリンダ状の部材として示されている図である。
【図2F】図2Bから図2Eにおける脊椎ジャックの一部を示す断面側面図であって、X及びZ面における支持素子の膨張を示す断面側面図である。
【図2G】図2Bから図2Eにおける脊椎ジャックの一部を示す断面平面図であって、Y面における支持素子の膨張を示す断面平面図である。
【図3A】崩壊した椎体を示す断面側面図であって、崩壊した椎体に下処理されたキャビティ内に位置する脊椎ジャックの実施形態を示し、支持素子が配向性を有する状態で示されかつ発熱剤を収容するチャネルを有して支持素子の形状記憶ポリマーを応力緩和させることを示す断面側面図である。
【図3B】図3Aの崩壊した椎体と同様の図であって、発熱剤の注入を示す図である。
【図3C】図3A及び図3Bの椎体と同様の図であって、支持素子が発熱剤によって応力緩和されていることを示し、椎体高さを修復し回復させる単一面において支持素子が膨張する力を矢印Fが明確に示す図である。
【図4A】崩壊した椎体を示す断面側面図であって、崩壊した椎体に下処理されたキャビティ内に位置する脊椎ジャックの実施形態を示し、支持素子が配向された状態で示されかつ加熱プローブを収容して支持素子の形状記憶ポリマーを応力緩和させる中央凹所を有し、支持素子の外面が周囲の骨との結合を補助する材料で被覆されていることを示す断面側面図である。
【図4B】図4Aの椎体と同様の図であって、支持素子が加熱プローブによって応力緩和され、椎体高さを修復し回復させる単一面において支持素子が膨張する力を矢印Fが明確に示す図である。
【図5A】崩壊した椎体を示す断面側面図であって、3つの支持素子を有する脊椎ジャックを挿入する実施形態を示しており、各支持素子が次の支持素子を挿入して応力緩和する前に挿入されて応力緩和されていることを示す断面側面図である。
【図5B】同じく、崩壊した椎体を示す断面側面図であって、3つの支持素子を有する脊椎ジャックを挿入する実施形態を示しており、各支持素子が次の支持素子を挿入して応力緩和する前に挿入されて応力緩和されていることを示す断面側面図である。
【図5C】同じく、崩壊した椎体を示す断面側面図であって、3つの支持素子を有する脊椎ジャックを挿入する実施形態を示しており、各支持素子が次の支持素子を挿入して応力緩和する前に挿入されて応力緩和されていることを示す断面側面図である。
【図6A】脊椎ジャックのさらなる実施形態を示す拡大斜視図であって、2つの配向性のあるシリンダ状をなす支持素子が非形状記憶材料の保持シリンダ部の側壁部にある凹所内に収容され、支持素子が応力緩和することによって付与される径方向力を吸収して膨張を単一面に向ける緩衝領域が保持シリンダ部に形成されていることを示す拡大斜視図である。
【図6B】図6Aの脊椎ジャックと同様の図であって、配向性のあるシリンダ状の支持素子が保持シリンダ部内にあることを示す図である。
【図6C】図6Bの脊椎ジャックと同様の図であって、加熱プローブが保持シリンダ部内へ挿入されかつ各支持素子を介して熱を伝達して支持素子を応力緩和することを示す図である。
【図6D】図6Cの脊椎ジャックと同様の図であって、応力緩和された支持素子が単一面に沿って膨張されていることを示す図である。
【図7A】脊椎ジャックの実施形態を示す斜視図であって、3つの支持素子が2列配置された単層が固定形状材料からなる上側及び下側負荷支持プレートの間で挟まれており、上側及び下側支持プレートが支持素子と上側及び下側の椎間板の負荷支持面との間を結合し、支持素子が配向された状態で示されている斜視図である。
【図7B】図7Aの脊椎ジャックを示す斜視図であって、支持素子が支持素子の応力緩和された形態で示されている斜視図である。
【図7C】図7Aの脊椎ジャックと同様の脊椎ジャックの実施形態を示す斜視図であって、脊椎ジャックが複数層を備える斜視図である。
【図8A】図7Aから図7Cと同様の別の実施形態における脊椎ジャックを示す斜視図であって、異なるサイズ及び配向性を有する支持素子を示す斜視図である。
【図8B】同じく、図7Aから図7Cと同様の別の実施形態における脊椎ジャックを示す斜視図であって、異なるサイズ及び配向性を有する支持素子を示す斜視図である。
【図8C】同じく、図7Aから図7Cと同様の別の実施形態における脊椎ジャックを示す斜視図であって、異なるサイズ及び配向性を有する支持素子を示す斜視図である。
【図9】骨折した椎体のキャビティ内に位置する脊椎ジャックの実施形態を示す断面側面図であって、支持素子の側壁部が本来凹状になっている断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
まず図1Aから図1Dを参照すると、一様に参照符号1が付された脊柱の一部が示されている。脊柱1は、椎体4によって離間された複数の椎間板2を示している。図1Aに示すように、椎体4の1つは、椎体4の崩壊をもたらす骨折部6を有する。図1Bは、椎体4であって一様に参照符号8で示された脊椎ジャックを骨折部6に挿入させた崩壊した椎体4を示す拡大図である。本実施形態において、脊椎ジャック8は、形状記憶ポリマーからなる2つのシリンダ状の支持素子10を有し、支持素子10は、図に示すように、支持素子の長手方向すなわちX軸に沿って方向付けられている。いったん脊椎ジャック8が骨折部6へ挿入されると、支持素子10は、加熱プローブ(図示略)を用いて支持素子に熱を加えることによって応力緩和する。支持素子10を応力緩和させることにより、支持素子をZ軸すなわち椎体4の高さを回復させる面に沿って膨張させる。これは、図1C及び図1Dにおいて最も明確に示されている。
【0051】
図1Aから図1Dは、本発明における脊椎ジャック8のみを示す全体外観図であり、脊椎ジャックがどのように作用するかを示している。さらなる詳細は、より詳細な実施形態を以下で説明するときにする。説明のためかつ明確さをもたらすため、説明全体にわたって参照される軸または面は、X、Y及びZ面を含む。Z面は、平面であってその方向が脊柱の長手方向軸とほぼ平行な平面を示す。X、Y及びZ面は、互いに垂直であり、脊柱と本発明における脊椎ジャック8との一部分における3D空間構造を説明する目的で、特に脊柱及び脊柱の部分に対する脊椎ジャック8を応力緩和させる力の方向を説明するため、説明全体にわたって採用される。説明全体にわたって再び現れる機能は、同一の参照符号を用いて説明される。
【0052】
ここで、図2Aから図2Eを参照すると、本発明における実施形態がより詳細に示されている。本実施形態における脊椎ジャック8は、支持素子10及び伝達補助部16を有する2つの構成部分を備えるほぼシリンダ状のロッドの形態をなしている。支持素子10は、支持素子の長手方向軸に沿って延伸することによって配向性を有するSMPを備えている。シリンダ状ロッドをなす脊椎ジャック8は、脊椎ジャック8の長さに沿って中央を延びる通路部18を有し、通路部18は、伝達補助部16の自由端において外部の電源ユニット23から電力供給される加熱プローブ22を収容するための開口部20で終端する。崩壊した椎体4の骨折部位6は、破線で示される圧縮骨折部12を有し、脊椎ジャック8を収容するために椎体4内でキャビティ14をドリル加工することによって下処理されている。下処理されたキャビティ14は、皮質骨の外層を通る通路部15を通るシリンダ状のキャビティを有する。
【0053】
使用前において、脊椎ジャック8の径は、通路部15を通るシリンダ状のキャビティの径とほぼ同等であり、脊椎ジャック8の支持素子10は、配向性を有する。使用時において、脊椎ジャック8の支持素子10は、適切なサイズのトロカール24及びプランジャ26を用いて通路部15を通ってシリンダ状のキャビティ内へ挿入される。プランジャ26は、脊椎ジャック8をトロカールからキャビティ14内へ押し付け、支持素子10は、キャビティ14内へ完全に挿入され、伝達補助部16は、通路部15を通ってシリンダ状のキャビティ内でぴったりと位置している。通路部15は、伝達補助部16を所定位置で保持し、配向性のある支持素子10をキャビティ14内の所定位置で効果的に懸架、支持する。
【0054】
いったん脊椎ジャック8が所定位置に位置付けられると、トロカール24は、脊椎ジャック8の開口部20を介して加熱プローブ22を脊椎ジャックの通路部18に沿って案内する。支持素子19は、配向性形状記憶ポリマーよりなり、熱が加熱プローブ22から支持素子10に伝達すると応力緩和する。支持素子10が応力緩和すると、支持素子10は、Z面に沿って、すなわち脊椎の長手方向軸に沿って膨張する。膨張する支持素子10の力は、矢印Fで示されており、崩壊した椎体4の高さを上昇させる。これは、図2Dにおいて最も明確に示されている。図2Eは、加熱後の脊椎ジャック8を示しており、支持素子10は、完全に応力緩和している。
【0055】
当然ながら、支持素子10が膨張する力の大部分は、Z面に沿って発生する一方、膨張する力の一部は、X及びY面に沿って発生する。X及びY面における膨張する力は、本実施形態において一様に参照符号28で示された空間である緩衝領域によって吸収される。これは、図2F及び図2Gにおいて最も明確に示されている。
【0056】
ここで図3Aから図3Cを参照すると、本発明のさらなる実施形態が示されている。本実施形態における脊椎ジャック8と下処理されたキャビティ14内へ挿入する方法とは、上述されかつ図2Aから図2Gにおいて示された実施形態と同一であり、支持素子10と支持素子10を応力緩和させる方法とに対する変更点は、ここで説明される。支持素子10は、支持素子10の長手方向軸に対して垂直に延在する貫通チャネル30であって開口部で終端する貫通チャネル30を有するように変更されている。脊椎ジャック8がキャビティ14内へ挿入されると、貫通チャネル30は、Z面と平行に揃えられる。発熱性の骨セメント32は、脊椎ジャック8の開口部20を介してシリンジ34を用いて供給され、骨セメントは、通路部18を通って支持素子10へ移動する。セメント32が硬化するにしたがって、エネルギーは、熱として解放される。この熱は、応力緩和ひいては支持素子10の膨張を、上述されかつ図2Aから図2Gにおいて示された実施形態と同様の方法で作動させる。支持素子10の膨張中において、チャネル30の径は、若干狭くなり、セメント32は、チャネル30を収縮させる力によって、支持素子10の上及び下面40及び42それぞれに位置する開口部36及び38を通って押し出される。このようにして、セメント32は、支持素子10の上及び下面40及び42双方に層を形成する。これら層は、膨張した支持素子10を椎体4における周囲の骨と接合し、結合する。
【0057】
当然ながら、チャネル30をさらに収縮させる必要がある場合、チャネル30は、チャネルを径方向で伸張させることによって配向されてもよい。支持素子10が応力緩和すると、チャネル30は、チャネルが配向性を有していない場合よりも大きい程度で収縮する。
【0058】
また、当然ながら、十分な量のセメント32は、注入され、セメントは、支持素子10の上面42の端部を超えて緩衝領域28内へ漏洩し、周囲の骨に対する支持素子10の接合、固定及び結合に改善をもたらしてもよい。
【0059】
さらに、当然ながら、支持素子は、チャネルを緩衝領域28に向けるさらなるチャネルを有してもよい。
【0060】
骨セメントを使用する替わりに、支持素子10は、上述されかつ図2Aから図2Gに示された実施形態と同様に、同様の方法で応力緩和されてもよい。このようにして支持素子10を応力緩和させた後、骨セメント32は、上述のようにかつ十分な圧力下で注入され、セメントは、通路部18に沿って移動し、チャネル30を通って開口部36及び38に向けて押し出され、上及び下面40、42と周囲の骨との間に形成された接触面における接合及び結合を補助する。骨セメントに替えて、医療用接着剤もしくは結合を促進する他の薬剤またはこれらの複合物を使用してもよい。
【0061】
ここで図4A及び図4Bを参照すると、本発明における脊椎ジャック8のさらなる実施形態が示されている。本実施形態において、脊椎ジャック8の外面には、可撓性を有する接合材料44であって濃黒の幅広の線で示される接合材料44が被覆されている。接合材料は、例えばポリカプロラクトン(PLC)またはポリウレタンである。接合材料44は、支持素子10を応力緩和させるために使用されるエネルギーで溶融し、支持素子10とキャビティ14の周囲の骨との間に接合剤を形成する。他のすべての点において、本実施形態は、上述されかつ図2Aから図2G及び図3Aから図3Cにおいて示された実施形態と同様である。
【0062】
図5Aから図5Cは、本発明における脊椎ジャック8の他の実施形態を示している。本実施形態において、脊椎ジャック8は、シリンダ状をなす複数の支持素子10であって支持素子10の長さに沿って中央を延びる貫通通路部18を有する複数の支持素子10を備え、通路部18は、支持素子の両端部において加熱プローブ22を収容する開口部20内で終端する。使用時において、支持素子10は、下処理されたキャビティ14内へ上述と同様の方法で挿入される。いったん支持素子10がキャビティ14内の所定位置にあると、加熱プローブ22は、開口部20を介して通路部18内へ挿入され、熱は、方向付けられた支持素子10へ効率よく伝達される。この工程は、各支持素子10について繰り返される。このようにして、崩壊した椎体4は、断面において次第に上昇し、崩壊した椎体4を修復するために使用される力の方向及び程度を制御するさらなる要素を提供する。また、各支持素子10は、異なる複数の程度またはレベルの配向性及び応力緩和を受けてもよく、異なる複数の程度またはレベルの配向性及び応力緩和は、崩壊した椎体4を修復するために用いられる力の方向及び程度にわたってさらなる制御をもたらす。
【0063】
図6Aから6Dは、脊椎ジャック8の別の実施形態を示している。本実施形態において、緩衝領域28は、ほぼ固体であり、形状変化しないシリンダ状のキャビティのフィラーである。シリンダ状のフィラー28は、フィラーの長さに沿って中央を延びる通路部18を有し、加熱プローブ22を収容する開口部20で終端する。また、フィラー28は、2つの支持素子を収容する通路部18A及び18Bであって両端それぞれが開口部20A及び20Bで終端する通路部18A及び18Bを有する。通路部18A及び18Bの長手方向軸は、通路部18の長手方向軸にほぼ直角である。シリンダ状の支持素子10それぞれは、さらなる通路部18Cを有し、通路部18Cは、支持素子10の長手方向軸に対して直角に支持素子10を横断して延在する。通路部18Cは、両端において開口部20Cで終端しており、加熱プローブ22が通路部18Cを通過することを可能とする。支持素子10の外径は、通路部20A及び20Bの内径とほぼ同等である。これは、図6Aにおいて最も明確に示されている。
【0064】
使用時において、支持素子10は、フィラー28の通路部20A及び20B内に位置し、ぴったりと嵌合している。支持素子10は、通路部20A及び20B内に位置付けられており、各支持素子10の通路部18Cは、フィラー28の通路部18と一列になっている。これにより、加熱プローブ22が全体の通路部18に沿って通過することが可能となる。これは、図6Cにおいて最も明確に示されている。加熱プローブ22は、エネルギーを配向性のある支持素子10に伝達し、支持素子10は、応力緩和してZ面に沿って開口部20A及び20Bを通って膨張する。通路部18A及び18Bの壁部は、支持素子10を囲むようにぴったりと嵌合しており、X及びY面に沿って膨張することを防止している。通路部18A及び18Bの壁部がぴったりと嵌合していることにより、さもなければX及びY面で発生しうる膨張をZ面に沿って方向付け、これにより、Z面に沿う膨張、ひいては崩壊した椎体4に掛かる回復させる力を改善し、脊椎ジャック8に本来備わっている修復能力を改善して椎体4を椎体本来の高さに回復させる。
【0065】
脊椎ジャック8の別の実施形態は、図7Aから図7Cに示される。脊椎ジャック8は、3つのシリンダ状をなす支持素子10が2列配置された単一の層を有し、支持素子10は、固定形状材料からなる上側及び下側負荷支持プレート50間に挟まれており、固定形状材料は、使用時において、支持素子10と上側及び下側の椎間板(図示略)の負荷支持面とを結合する。脊椎ジャック8の支持素子10は、配向性のある形態の状態で図7Aに示されており、応力緩和すなわち膨張された形態の状態で図7Bに示されている。図7Cは、複数の層を有する図7Aの脊椎ジャック8を示している。使用時において、脊椎ジャック8の応力緩和した支持素子10は、支持素子が膨張する力を負荷支持プレート50に伝達させ、負荷支持プレート50は、同様に、膨張する力を椎体4に伝達させて椎体4の高さを回復させる。このようにして、膨張する支持素子10からの力は、椎体4にわたってより均一に伝達される。
【0066】
図8Aから図8Cは、脊椎ジャック8の実施形態を示しており、支持素子10は、異なるサイズ及び構造を有している。
【0067】
図9は、キャビティ14内に位置する脊椎ジャック8を示す横断側面図である。支持素子10は、凹面をなす側壁部またはX及びY面双方で薄い領域を有する形状をなすシリンダ状である。支持素子10が応力緩和すると、膨張する力は、Z面のみに沿って椎体4へ伝達される。これは、支持素子の部分的な形状に起因する。
【0068】
当然ながら、脊椎ジャックへのさまざまな改良は、本発明の範囲内において可能である。例えば、支持素子は、他の適切な形状及びサイズであってもよい。また、負荷支持プレートは、配向性形状記憶ポリマーよりなってもよい。支持素子は、カニューレが挿入され、上述のように加熱プローブを収容する通路部を形成してもよく、または、支持素子には、内部伝熱素子が形成されてもよく、内部伝熱素子は、例えば電熱ワイヤによって外部の電源装置に接続されている。内部伝熱素子は、現場に残され、または支持素子を応力緩和した後に除去されてもよい。あるいは、支持素子は、形状記憶ポリマーであってそのTgが身体温度(37℃)である形状記憶ポリマーで形成されてもよい。このようにして、体液の温度は、支持素子を応力緩和させ、さらなるエネルギーの入力は、必要なくなる。
【0069】
当然ながら、本発明におけるデバイスは、脊椎以外の他の組織の骨折を修復するために使用されてもよい。
【0070】
脊椎ジャックは、1以上の活性薬剤を含んでもよい。適切な活性薬剤には、成長因子、骨形態形成タンパク質、抗生物質、抗炎症薬、血管新生因子、骨形成因子、モノブチリン、大網抽出物(omental extract)、トロンビン、変性タンパク、多血小板血漿/溶液、乏血小板血漿/溶液、骨髄穿刺液、及び、生体細胞、保存細胞、休眠細胞、及び死細胞のような動植物由来の任意の細胞が含まれる。当然ながら、当業者に知られている他の生体活性薬剤は、同様に、使用されてもよい。活性薬剤は、ポリマー状の形状記憶材料に組み込まれてもよく、ポリマー材料が応力緩和または分解する間に解放されてもよい。有利には、活性薬剤を組み込むことは、埋め込まれた部位における感染症に対抗すること、及び/または、新たな組織の成長を促進することの機能を果たす。
【0071】
本発明は、上述された実施形態及び改良に制限されず、添付の特許請求の範囲内にある構造及び詳細の双方において変更されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 脊柱、4 椎体、8 脊椎ジャック、10,19 支持素子、14 キャビティ(骨キャビティ)、15 通路部、22 加熱プローブ(エネルギー伝達プローブ)、24 トロカール、28 フィラー,緩衝領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、椎体を修復する方法と、椎体高(vertebral height)の回復及び増大を制御する方法と、に関する。特に、本発明は、脊椎ジャックに関し、より具体的には、修復方法において使用される形状記憶材料よりなる脊椎ジャックに関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎圧迫骨折は、骨粗鬆症に共通する特徴であり、相当な大きさの痛みと患者の生活の質を著しく低減させる苦痛とをもたらす。椎体形成術は、骨折した椎骨を固定させる外科手術の表現に使用される一般的な用語である。主として、椎体形成術は、骨粗鬆症に起因する骨折を修復するために使用される。骨粗鬆症性骨折は、椎体高を減少させ、後弯を含む脊椎の奇形をもたらす。椎体形成術は、椎骨を固定することによって痛みを低減しており、外科医またはX線技師によって一般に行われる。既知の椎体形成術は、骨折部位にセメントを経皮的に注入する工程、または、セメントの注入前にバルーンをあらかじめ挿入する工程(脊柱後弯形成術(kyphoplasty)として一般的に知られている)を有する。
【0003】
このような手術において使用されるセメントには、一般的に、毒性のあるメチルメチルアクリレートが含まれている。セメントのみを注入する手術を用いることのさらなる問題は、セメントが骨折部位から脊柱のような影響を受けやすい領域へ漏洩することである。また、このような手術は、実際に椎体高を上昇させる力を付与するような高圧力でセメントを注入する必要があることである。しかし、従来の椎体形成術は、椎体高を上昇させなければならない面に沿ってこの力を案内することができず、さまざまな方向へ力を伝達させ、そして脊柱のより影響を受けやすい部分に力を掛けて不都合な効果をもたらし、最終的に脊椎を損傷させることがある。さらに、注入されたセメントの力が誤った方向に導かれるため、セメントは、椎体を上昇させるために実際に必要な圧力よりも高い圧力で注入しなければならず、同様にセメントをより多く漏洩させ、脊椎を損傷させる可能性を高める。
【0004】
セメントのみを使用することに関連する問題は、脊柱後弯形成術によってある範囲で取り組まれている。脊柱後弯形成術は、機械的または水圧的に膨張させることによって骨折した椎体の高さ及び角度を回復することを目的としている。これは、一般的に、他の既知の椎体形成術と同様に、脆弱な骨の領域内にある脊椎端板にわたって負荷を掛ける膨張した脊柱後弯形成術バルーンを用いて行われている。バルーンを所定の骨折部位へ挿入した後に、バルーンは、膨張され、椎体高を上昇させるのに十分な力をもたらす。そして、セメントは、中空針(トロカール)を介して膨張したバルーン内に入れられる。膨張したバルーンは、脊椎の重量を受けており、セメントは、セメントのみが使用される場合において必要である高圧を用いて注入する必要がない。バルーンを使用して骨折した脊椎の高さ及び角度を回復させることにより、脊柱のような影響を受けやすい領域へセメントの漏洩が最小化する。これは、膨張したバルーンが脊椎の負荷を受けるだけでなくセメントが膨張したバルーン内に収容されているためである。また、外科医は、透視診断的に手術を観察し、セメントがバルーンから出て脊柱管の領域に入ることを制限または防止することがある。脊柱後弯形成術が他の既知の椎体形成術と比較していくらかの改良をもたらすが、この手術は、まだ椎体高の回復を最大化させておらず、また、セメントの漏洩は、未だ観測されている。
【0005】
従来技術における椎体形成術は、椎体高の回復を制御することについて制限がある。脊椎のような人体のこのような領域に力を掛けることは、正確に制御かつ方向付けされない場合に有害となる可能性がある。椎体高を回復させるため、単一面のみにおいて制御されている力が必要となる。脊柱後弯形成術を含む従来技術における手術は、1を越える平面に常に力を掛けている。このような追加の力は、椎体高の回復に悪影響であるだけでなく、有害となる可能性がある。
【0006】
従来技術におけるさらなる椎体形成デバイス及び椎体形成術は、特許文献1及び特許文献2に示されている。しかしながら、これら開示では、椎体高の調節を制御していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0095138号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/038009号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、制御された方法でかつ単一の面に沿った状態で椎体の膨張を調整することが可能なデバイス及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の第1の態様において、デバイスが提供され、当該デバイスは、損傷したまたは崩壊した椎体の高さを増大させる形状記憶材料であって椎体を椎体本来の高さまで回復させることが可能な形状記憶材料よりなる。形状記憶材料における形状変化特性は、椎体高を回復させる脊椎の骨折ギャップを妨げるために使用される。椎体が修復される程度は、形状記憶材料へ刺激を加えること、及び/または、形状記憶材料の収縮を変更すること、によって制御される。
【0010】
一般的に、デバイスは、骨折部のキャビティ内へ挿入され、骨折部は、デバイスを収容するために下処理されている。あるいは、デバイスは、骨折部のキャビティの形状に嵌合するように構成されている。主として、椎体高は、隣接する椎間板間の距離である。
【0011】
好ましくは、デバイスは、形状記憶特性を有する少なくとも1つの支持素子であって支持素子が単一の支持面に沿って椎体に力を掛けるように構成された少なくとも1つの支持素子を備える。
【0012】
一般的に、支持素子は、形状記憶材料よりなる。形状記憶材料は、例えばニチノールなど形状記憶合金であってもよい。好ましくは、形状記憶材料は、形状記憶ポリマーである。あるいは、材料は、単一の形状記憶合金または複数の形状記憶合金と単一の形状記憶ポリマーまたは複数の形状記憶ポリマーとの複合物よりなってもよい。形状記憶ポリマーは、吸収性/非吸収性または両者の組み合わせであってもよい。使用されうる形状記憶ポリマーの具体例には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、ポリアクリレート、ポリαヒドロキシ酸、ポリカプロラクトン(polycapropactone)、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリグリコール酸、ポリグリコール、ポリラクチド、ポリオルトエステル、ポリリン酸塩、ポリオキサエステル(polyoxaester)、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸塩、多糖、ポリチロシン炭酸塩、ポリウレタン、及び、コポリマー、または、これらの複合ポリマーが含まれる。
【0013】
形状記憶ポリマー(SMP)の一般的な概念は、後述する。コンセプトは、形状記憶ポリマーの特性を使用して有利な椎体形成術のデバイス及び方法を提供することであり、上記方法は、従来技術と比較して、手術及び臨床転帰に関して優れている。従来技術に対する本願発明の有利点には、影響を受けやすい領域を毒性のある骨セメントで汚染することを防止する非流動性材料(SMP)を使用することと、高圧注入システムを必要とせずこれにより組織が損傷すること及び骨セメントが浸透することを防止することと、椎体高の制御された妨害をもたらす(脊椎がどの程度調整されるかを外科医が正確に選択できる)ことと、低侵襲である(小型のインプラントが埋め込まれ、そして所望の構造まで膨張する)ことと、椎骨を最も効果的に上昇させる単一の面に沿って椎体高を上昇させるために必要な力を一様に向けてこれにより抵抗率な上昇をもたらしかつ最終的に脊椎の損傷の原因となる方向に力が掛かることを防止することと、が含まれる。
【0014】
形状記憶ポリマー(SMP)は、「恒久的な」巨視的形状を「記憶する」材料であり、配向性を有する、すなわち温度及び/もしくは圧力の下で一時的もしくは固定的な形状まで操作され、その後に本来もしくは記憶された応力のない状態または形状へ応力緩和する能力を有する。応力緩和は、操作されたまたは配向性のあるSMPに、通常、熱的、電気的または環境的なエネルギーを掛けることによって刺激されまたは促進される。応力緩和は、SMPを配向させる間にSMPに蓄積された弾性変形エネルギーに関連する。SMPの配向性の程度は、応力緩和を引き起こす作動力である。このため、配向性の程度を大きくするほど、SMPに蓄積される力またはエネルギーが大きくなり、これにより、外部エネルギー源によって誘引されまたは刺激されたときにSMPの応力緩和を作動する力またはエネルギーが大きくなる。
【0015】
SMPは、他のポリマーと同様に、2つの主なカテゴリーにグループ分けされ、2つの主なカテゴリーは、非晶質であってこれにより分子レベルのサイズにおける位置秩序が欠如している非晶質、または、同一サンプル中に分子レベルのサイズで秩序のある結晶質領域と非晶質領域との双方を含む部分的結晶質である。
【0016】
アモルファスSMP及びSMPの合成物の塑性変形は、配向性のあるアモルファスまたは部分的結晶の高分子ネットワークの形成に至る。SMPまたはSMP合成物の配向は、伸張することによって、延伸することによって、または、圧縮力及び/または剪断力をSMPに掛けることによって、達成される。SMPは、これら力のうちの任意の1つまたは組合せた力を掛けることによって配向されることとなり、環境温度または高温で実行される。一般的に、SMPの温度は、配向させる力を掛ける前に環境温度からSMPのガラス転移点(Tg)まで上昇される。このようにして、SMPの温度を上昇させると、配向させる力をSMPに掛けるときにSMPが破裂することを防止する。ガラス転移点は、アモルファスのSMPの物理的特性が固体と同じように振舞う温度以下であり、アモルファスのSMPがむしろゴムまたは液体であってSMPが破砕する危険性無く塑性変形を受けることが可能なゴムまたは液体のように振舞う温度以上である。SMPのガラス転移温度は、ポリマーの分子量、組成及び構造と当業者に知られている他の要因となどさまざまな要因に基づいて変化するが、一般的には35℃から150℃の間の範囲である。SMPを配向した後、温度が下げられ、SMPは、一時的または固定的な構造に固定される。
【0017】
配向性ネットワークは、分子運動性が低い場合にガラス転移温度(Tg)以下において物理的に良好に安定している。しかしながら、ポリマーのガラス転移温度近傍またはそれ以上において、分子運動性は、急速に増大し、配向性ネットワークを応力緩和させ、通常、SMPの寸法の物理的変化に付随して起こる。応力緩和中において、配向性SMPは、配向性のないSMPの本来の寸法形状に回復する傾向があり、このため形状「記憶」材料と称される。しかしながら、本来の形状を回復することは、結晶性と、配向性と、巨視的及び微視的構造と、配向性ネットワークが応力緩和されたときの状態と、の程度に主として基づいている。コポリマーについては、他の重要な要因として、これらの詳細な組成及びこれらの具体的な熱特性、すなわちこれら成分のガラス転移温度及び溶融温度がある。
【0018】
応力緩和される工程は、ほぼ一定の容積で発生すると考えられている。応力緩和中の回復程度は、部分的結晶の配向性SMPについて、その結晶性及び構造に基づいているので、SMPの完全な回復は、困難である。一方、非晶質の配向性SMP、コポリマー及びこれらの複合物は、適切な応力緩和状態の下でこれらの元の形状にほぼ回復する。
【0019】
配向性の程度は、応力緩和を引き起こす作動力である。配向性の程度、すなわちSMPに掛かる力が大きくなるほど、作動力が大きくなる。
【0020】
応力緩和中において、配向性SMPは、蓄積されている内部の力またはエネルギーを解放する。例えば、シリンダ状のSMPであってその長手方向軸に沿って延伸力を一軸に掛けることによって配向されたSMPは、自由境界条件、すなわち物理的制約条件が課されていない状態で、応力緩和中において長さ方向で収縮しかつ径方向で膨張する。したがって、シリンダ状をなすSMPが応力緩和すると、SMPは、SMPの長手方向軸に沿う収縮力と径方向に沿う膨張力とを生じさせる。これら長手方向及び径方向の力は、配向性ポリマーの配向性の程度と質量とに比例する。配向性の程度が大きくなるほど、すなわち配向させる間にSMPに掛かる力が大きくなるほど、かつSMPの質量が大きくなるほど、これら長手方向及び径方向において応力を解放する力は大きくなる。他の形状のSMPについて、応力を解放する力は、同様に、配向させる力の大きさの程度と、配向させる力を掛けた方向と、配向性SMPの質量と、に基づく。応力緩和する速度すなわちSMPの形状が回復する速度は、SMPの試料形態や処理条件に基づくが、質量及び熱拡散率に大きく基づく。
【0021】
好ましくは、支持素子は、配向性形状記憶ポリマーよりなる。しかしながら、当然ながら、支持素子は、使用前または脊椎のキャビティ内へ挿入される前において、あらかじめ応力が加えられている、すなわち配向されている。
【0022】
デバイスは、椎体を上昇させなければならない単一の支持面以外に沿って向けられた力が脊柱を損傷させる場合があるとして、脊椎ジャックとして理想的には適している。理想的には、上記単一の支持面は、脊髄の長手方向軸に平行である。より具体的には、単一の支持面は、治療される椎体に隣接する椎間板におけるほぼ平坦な負荷支持面に対してほぼ垂直である。
【0023】
支持素子によって椎体に掛かる力であって上記単一面以外に沿う力は、無視可能である。支持素子が上記単一面以外に沿って力を掛ける場合において、これら力は、脊椎ジャックの本体部によって吸収され、椎体へ中継されない。
【0024】
好ましくは、脊椎ジャックは、支持素子によって単一支持面以外の面に掛けられた力を吸収する緩衝領域を有する。好ましくは、緩衝領域は、支持素子の少なくとも一部を囲む。例えば、緩衝領域は、支持素子と骨折部のキャビティの壁部との間の空間である。支持素子が刺激されて応力緩和すると、支持素子は、1を超える面において膨張しうる。しかしながら、緩衝領域は、応力緩和している支持素子からの力が単一支持面に沿って脊椎に伝達されることのみを可能とする。
【0025】
あるいは、緩衝領域は、例えば泡状物質のような低密度で変形可能な媒体または基質であってもよい。好ましくは、緩衝領域の密度は、25℃、100kPaでの測定時において1.168kg/m3と50kg/m3との間の範囲であり、1.168kg/m3は、空気の密度に近い値である。より好ましくは、緩衝媒体の密度は、1.168kg/m3と10kg/m3との間の範囲である。好ましくは、緩衝領域は、多孔質である。
【0026】
使用時において、泡状物質は、骨折部のキャビティを充填し、配向性のある支持素子の周囲を囲む。支持素子が応力緩和すると、支持素子は、一般的に1以上の面に沿って膨張する。支持素子が2以上の面に沿って膨張する場合、泡状物質は、ただちに支持素子の周囲を囲み、膨張する支持素子の力であって上記単一支持面に沿う力を除く力を吸収し、さらなる力の面に沿って脊椎に力が伝達することを防止する。泡状物質は、ただちに膨張する支持素子を囲み、膨張する支持素子の圧縮する力によってより高密度となる。また、泡状物質は、脊椎ジャックをキャビティ内で固定するという有利点をもたらす。
【0027】
あるいは、緩衝領域は、単一支持面以外に沿う支持素子の運動または膨張を制限または防止する。例えば、緩衝領域は、固体であり形状変化しない構成部材であって嵌合する形状をなすプラグ状の構成部材であってもよい。好ましくは、緩衝プラグは、少なくとも1つの支持素子を収容する少なくとも1つの凹部を有する。好ましくは、少なくとも1つの凹所は、凹所の端部に少なくとも1つの開口部を有する。好ましくは、支持素子は、凹所内でぴったりと嵌合するように配向されており、配向性のある支持素子の端部は、上記少なくとも1つの開口部と同一平面で位置する。使用時において、支持素子は、応力緩和するように促進される。緩衝プラグにおける凹所の壁部は、支持素子の膨張を制限し、支持素子の全体的な膨張を上記少なくとも1つの開口部の間中に方向付ける。好ましくは、凹所は、ほぼシリンダ形状をなして同様の形状をなす支持素子を収容し、かつ凹所の両端部に位置する2つの開口部を有する。このようにして、支持素子の膨張は、単一支持面に沿って開口部を通るように配向されており、単一支持面は、崩壊した椎体に持上効果(jacking effect)をもたらす。
【0028】
好ましくは、脊椎ジャックは、支持素子と椎間板の負荷支持面との間の接触面を有する。より好ましくは、脊椎ジャックは、支持部材と両側に隣接する椎間板との間で接触面を有する。
【0029】
好ましくは、上記接触面は、負荷支持面である。使用時において、負荷支持面は、支持部材からの力をより効率よく椎間板へ伝達させる。
【0030】
好ましくは、支持素子は、SMPを応力緩和させるエネルギープローブを収容する通路部を有する。主として、エネルギープローブは、加熱プローブである。支持素子及び通路部は、有利には、シリンダ状をなしており、通路部は、好ましくは、中央に位置し、支持素子の長手方向軸に沿っている。シリンダ状をなす支持素子は、支持素子がドリルを用いて下処理された骨折部内へ容易に嵌合するため好ましく、ドリル加工された孔部は、ほぼシリンダ状をなしている。通路部を支持素子の中央に位置付けることにより、プローブからの熱は、支持素子のSMPにより均一に伝達されることができる。
【0031】
好ましくは、支持素子は、単一配向面または単一軸内で配向されている。好ましくは、配向面または軸は、単一支持面に垂直である。
【0032】
任意で、脊椎ジャックまたは脊椎ジャックの一部は、多孔質、半多孔質であり、かつ/または、骨成長を増進させる材料及び/または骨セメントを収容するチャネルを有する。脊椎ジャックが多孔質であることにより、周囲の組織から細胞が侵入することが可能となり、例えば骨結合性によって脊椎ジャックの結合を強化する。
【0033】
好ましくは、支持素子のSMPは、生体適合性があり、吸収性もしくは非吸収性または両者の組合せであってもよい。適切なSMPの例には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、ポリアクリレート、ポリαヒドロキシ酸、ポリカプロラクトン(polycapropactone)、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリグリコール酸、ポリグリコール、ポリラクチド、ポリオルトエステル、ポリリン酸塩、ポリオキサエステル(polyoxaester)、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸塩、多糖、ポリチロシン炭酸塩、ポリウレタン、及び、コポリマー、または、これらの複合ポリマーが含まれるが、これに限られない。
【0034】
好ましくは、SMPは、強化SMPである。好ましくは、強化SMPは、繊維、ロッド、血小板及びフィラーのような強化材料または相を含む複合物または基質よりなる。より好ましくは、SMPは、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリマー繊維、セラミック繊維またはセラミック微粒子を含む。
【0035】
好ましくは、脊椎ジャックは、例えばヒドロキシアパタイトまたは燐酸カルシウムのような骨形成物質で被覆されている。
【0036】
好ましくは、1以上の活性薬剤は、脊椎ジャックに組み込まれてもよい。適切な活性薬剤には、抗骨粗鬆薬剤、骨吸収抑制剤、骨形態形成タンパク質、抗生物質、抗炎症薬、血管新生因子、骨形成因子、成長因子、モノブチリン、大綱生成物(omental extract)、トロンビン、変性タンパク、多血小板血漿/溶液、乏血小板血漿/溶液、骨髄穿刺液、及び、生体細胞、保存細胞、休眠細胞、及び死細胞のような動植物由来の任意の細胞が含まれるが、これに限られない。
【0037】
好ましくは、活性薬剤は、脊椎ジャックへ組み込まれ、SMPの応力緩和中または分解中に解放されてもよい。有利には、活性薬剤を組み込むことは、埋め込まれた部位における感染症に対抗する、かつ/または、新たな組織の成長を促進する機能を果たす。
【0038】
主として、脊椎ジャックは、脊椎ジャックを骨折部位に送達させる手段と共に使用される。そのため、本発明の第2の態様では、崩壊した椎体高を増大させる装置が提供され、装置は、上述したような脊椎ジャックと、脊椎ジャックを椎体へ送達するデバイスと、支持素子の形状記憶材料を刺激する手段と、を備える。
【0039】
好ましくは、脊椎ジャックを送達するデバイスは、カニューレまたはトロカールである。主として、支持素子の形状記憶材料を刺激する手段は、熱、超音波または赤外線プローブである。また、上記刺激手段は、エネルギーを支持素子に伝達させて配向性のある支持素子の応力緩和を促進させる別のデバイスまたは方法を含む。例えば、患者の体液の温度は、支持素子の応力緩和を促進するのに十分な熱エネルギーを含んでいる。
【0040】
あるいはまたはさらに、膨張工程は、例えば磁界、電流、マイクロ波のような電磁放射、可視及び赤外光など異なる形態のエネルギー、またはこれら形態のエネルギーの1つの組み合わせを掛けることによって刺激されまたは引き起こされてもよい。
【0041】
また、SMPの分子運動を励起することは、配向性SMPを可塑剤にさらすことによって達成されてもよい。SMPを可塑剤にさらすことにより、SMPのTgが低下し、これにより、SMPの分子運動性が増大する。このようにして、配向性SMPの分子運動性は、エネルギーを入力することなく配向性ネットワークを応力緩和させるのに十分に増大する。配向性SMPを可塑剤にさらすことがSMPを応力緩和させるのに十分でない場合、例えば熱の形態のエネルギーは、同様にSMPに掛けられてもよい。このようにして、配向性SMPは、熱のみを用いてSMPを応力緩和させる場合に必要な温度未満の温度で応力緩和される。このようにして、SMPは、低温で成形され、これにより、温度の影響を受けやすい材料をSMPに追加することが可能になる。温度の影響を受けやすい材料には、例えば、骨折を修復することを補助するモノブチリン、骨髄穿刺液、血液由来因子及び骨形成因子のような解放可能な生物活性剤(releasable bioactive agent)が含まれる。
【0042】
適切な可塑剤は、生体適合性のある揮発性液体または気体の形態であってもよい。このような気体の可塑剤には、酸素及び二酸化炭素が含まれるが、これに限られない。このような液体の可塑剤には、水及び食塩水のような水溶液が含まれるが、これに限られない。
【0043】
一般的に、本発明は、熱的及び/または温度的エネルギー源を用いて脊椎ジャックの形状記憶材料、または特に支持素子にエネルギーを伝達させることを意図している。しかしながら、形状記憶ポリマーは、当業者に周知の他の方法を介して応力緩和されることがあり、力または機械的エネルギー並びに/または溶媒を用いることを含むがこれに限られない。任意の適切な力は、使用されてもよく、手術前または手術中のいずれかで掛けられる。一例としては、超音波デバイスを用いることが含まれ、超音波デバイスは、熱の発生を最小化しながらポリマー材料を応力緩和させる。使用されうる溶媒には、有機性溶媒または水性溶媒が含まれ、体液が含まれる。特に溶媒が手術中に使用される場合に、選択した溶媒が患者の治療に適応されるわけではないことに注意を要する。また、溶媒の選択は、応力緩和される材料に基づいて選択される。形状記憶ポリマーを応力緩和させるために使用されうる溶媒の例には、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、オイル、脂肪酸、アセテート、アセチレン、ケトン、芳香族炭化水素系溶剤、及び塩素系溶剤が含まれる。
【0044】
脊椎ジャックと脊椎ジャック送達デバイスと支持素子の形状記憶材料を励起する手段とを組み合わせることにより、骨折部位に脊椎ジャックを配置して崩壊した椎体の高さを上昇させる方法が提供される。これにより、本発明における第3の態様では、損傷したまたは崩壊した椎体の高さを増大させる方法が提供され、方法は、脊椎ジャックを骨折した椎体内へ導入する工程と、支持素子を励起して支持素子の応力緩和を促進させる工程と、を備える。
【0045】
好ましくは、骨折した椎体は、椎体内に脊椎ジャックを挿入する前に外科的に下処理される。主として、骨折部位は、脊椎ジャックを収容するキャビティを形成して部位を成形することによって下処理されている。骨折部位の成形には、例えば外科ドリルが用いられる。
【0046】
従来技術と比較すると、本発明における脊椎ジャックは、隣接する椎体高の調整を制御すること、一工程で手術すること、及び、透視しながらの案内が不要であること、を含む多数の有利点をもたらす。
【0047】
本発明が適用されるさらなる分野は、以下の発明の詳細な説明から明らかになるだろう。詳細な説明及び具体的な例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、例示のみの目的であり、本発明の範囲を限定する目的ではない。
【0048】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照しながら、単なる例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1A】脊椎の一部を示す側面図であって、椎体間にある椎間板を示し、椎体の1つが楔状に粉砕骨折している側面図である。
【図1B】図1Aの脊椎を示す拡大断面側面図であって、骨折部(骨折キャビティは図示略)内に位置する脊椎ジャックを有する骨折したまたは崩壊した椎体を示し、脊椎ジャックが応力緩和前の状態にある2つの支持素子を有する拡大断面側面図である。
【図1C】図1Bの脊椎を示す図であって、支持素子が完全に応力緩和して椎体が椎体本来の高さまで修復かつ回復されている図である。
【図1D】治療後の図1Aにおける脊椎を示す同様の図である。
【図2A】圧迫骨折された椎体を示す断面側面図であって、骨折部がハッチまたは破線で示されている断面側面図である。
【図2B】本発明における治療方法を示す図であって、図2Aの崩壊した椎体の形状及び高さを回復するための本発明における脊椎ジャック及び装置を用いた図である。
【図2C】同じく、本発明における治療方法を示す図であって、図2Aの崩壊した椎体の形状及び高さを回復するための本発明における脊椎ジャック及び装置を用いた図である。
【図2D】同じく、本発明における治療方法を示す図であって、図2Aの崩壊した椎体の形状及び高さを回復するための本発明における脊椎ジャック及び装置を用いた図である。
【図2E】本発明における脊椎ジャックの実施形態を示す図であって、支持素子が大型のシリンダ状の部材として示されている図である。
【図2F】図2Bから図2Eにおける脊椎ジャックの一部を示す断面側面図であって、X及びZ面における支持素子の膨張を示す断面側面図である。
【図2G】図2Bから図2Eにおける脊椎ジャックの一部を示す断面平面図であって、Y面における支持素子の膨張を示す断面平面図である。
【図3A】崩壊した椎体を示す断面側面図であって、崩壊した椎体に下処理されたキャビティ内に位置する脊椎ジャックの実施形態を示し、支持素子が配向性を有する状態で示されかつ発熱剤を収容するチャネルを有して支持素子の形状記憶ポリマーを応力緩和させることを示す断面側面図である。
【図3B】図3Aの崩壊した椎体と同様の図であって、発熱剤の注入を示す図である。
【図3C】図3A及び図3Bの椎体と同様の図であって、支持素子が発熱剤によって応力緩和されていることを示し、椎体高さを修復し回復させる単一面において支持素子が膨張する力を矢印Fが明確に示す図である。
【図4A】崩壊した椎体を示す断面側面図であって、崩壊した椎体に下処理されたキャビティ内に位置する脊椎ジャックの実施形態を示し、支持素子が配向された状態で示されかつ加熱プローブを収容して支持素子の形状記憶ポリマーを応力緩和させる中央凹所を有し、支持素子の外面が周囲の骨との結合を補助する材料で被覆されていることを示す断面側面図である。
【図4B】図4Aの椎体と同様の図であって、支持素子が加熱プローブによって応力緩和され、椎体高さを修復し回復させる単一面において支持素子が膨張する力を矢印Fが明確に示す図である。
【図5A】崩壊した椎体を示す断面側面図であって、3つの支持素子を有する脊椎ジャックを挿入する実施形態を示しており、各支持素子が次の支持素子を挿入して応力緩和する前に挿入されて応力緩和されていることを示す断面側面図である。
【図5B】同じく、崩壊した椎体を示す断面側面図であって、3つの支持素子を有する脊椎ジャックを挿入する実施形態を示しており、各支持素子が次の支持素子を挿入して応力緩和する前に挿入されて応力緩和されていることを示す断面側面図である。
【図5C】同じく、崩壊した椎体を示す断面側面図であって、3つの支持素子を有する脊椎ジャックを挿入する実施形態を示しており、各支持素子が次の支持素子を挿入して応力緩和する前に挿入されて応力緩和されていることを示す断面側面図である。
【図6A】脊椎ジャックのさらなる実施形態を示す拡大斜視図であって、2つの配向性のあるシリンダ状をなす支持素子が非形状記憶材料の保持シリンダ部の側壁部にある凹所内に収容され、支持素子が応力緩和することによって付与される径方向力を吸収して膨張を単一面に向ける緩衝領域が保持シリンダ部に形成されていることを示す拡大斜視図である。
【図6B】図6Aの脊椎ジャックと同様の図であって、配向性のあるシリンダ状の支持素子が保持シリンダ部内にあることを示す図である。
【図6C】図6Bの脊椎ジャックと同様の図であって、加熱プローブが保持シリンダ部内へ挿入されかつ各支持素子を介して熱を伝達して支持素子を応力緩和することを示す図である。
【図6D】図6Cの脊椎ジャックと同様の図であって、応力緩和された支持素子が単一面に沿って膨張されていることを示す図である。
【図7A】脊椎ジャックの実施形態を示す斜視図であって、3つの支持素子が2列配置された単層が固定形状材料からなる上側及び下側負荷支持プレートの間で挟まれており、上側及び下側支持プレートが支持素子と上側及び下側の椎間板の負荷支持面との間を結合し、支持素子が配向された状態で示されている斜視図である。
【図7B】図7Aの脊椎ジャックを示す斜視図であって、支持素子が支持素子の応力緩和された形態で示されている斜視図である。
【図7C】図7Aの脊椎ジャックと同様の脊椎ジャックの実施形態を示す斜視図であって、脊椎ジャックが複数層を備える斜視図である。
【図8A】図7Aから図7Cと同様の別の実施形態における脊椎ジャックを示す斜視図であって、異なるサイズ及び配向性を有する支持素子を示す斜視図である。
【図8B】同じく、図7Aから図7Cと同様の別の実施形態における脊椎ジャックを示す斜視図であって、異なるサイズ及び配向性を有する支持素子を示す斜視図である。
【図8C】同じく、図7Aから図7Cと同様の別の実施形態における脊椎ジャックを示す斜視図であって、異なるサイズ及び配向性を有する支持素子を示す斜視図である。
【図9】骨折した椎体のキャビティ内に位置する脊椎ジャックの実施形態を示す断面側面図であって、支持素子の側壁部が本来凹状になっている断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
まず図1Aから図1Dを参照すると、一様に参照符号1が付された脊柱の一部が示されている。脊柱1は、椎体4によって離間された複数の椎間板2を示している。図1Aに示すように、椎体4の1つは、椎体4の崩壊をもたらす骨折部6を有する。図1Bは、椎体4であって一様に参照符号8で示された脊椎ジャックを骨折部6に挿入させた崩壊した椎体4を示す拡大図である。本実施形態において、脊椎ジャック8は、形状記憶ポリマーからなる2つのシリンダ状の支持素子10を有し、支持素子10は、図に示すように、支持素子の長手方向すなわちX軸に沿って方向付けられている。いったん脊椎ジャック8が骨折部6へ挿入されると、支持素子10は、加熱プローブ(図示略)を用いて支持素子に熱を加えることによって応力緩和する。支持素子10を応力緩和させることにより、支持素子をZ軸すなわち椎体4の高さを回復させる面に沿って膨張させる。これは、図1C及び図1Dにおいて最も明確に示されている。
【0051】
図1Aから図1Dは、本発明における脊椎ジャック8のみを示す全体外観図であり、脊椎ジャックがどのように作用するかを示している。さらなる詳細は、より詳細な実施形態を以下で説明するときにする。説明のためかつ明確さをもたらすため、説明全体にわたって参照される軸または面は、X、Y及びZ面を含む。Z面は、平面であってその方向が脊柱の長手方向軸とほぼ平行な平面を示す。X、Y及びZ面は、互いに垂直であり、脊柱と本発明における脊椎ジャック8との一部分における3D空間構造を説明する目的で、特に脊柱及び脊柱の部分に対する脊椎ジャック8を応力緩和させる力の方向を説明するため、説明全体にわたって採用される。説明全体にわたって再び現れる機能は、同一の参照符号を用いて説明される。
【0052】
ここで、図2Aから図2Eを参照すると、本発明における実施形態がより詳細に示されている。本実施形態における脊椎ジャック8は、支持素子10及び伝達補助部16を有する2つの構成部分を備えるほぼシリンダ状のロッドの形態をなしている。支持素子10は、支持素子の長手方向軸に沿って延伸することによって配向性を有するSMPを備えている。シリンダ状ロッドをなす脊椎ジャック8は、脊椎ジャック8の長さに沿って中央を延びる通路部18を有し、通路部18は、伝達補助部16の自由端において外部の電源ユニット23から電力供給される加熱プローブ22を収容するための開口部20で終端する。崩壊した椎体4の骨折部位6は、破線で示される圧縮骨折部12を有し、脊椎ジャック8を収容するために椎体4内でキャビティ14をドリル加工することによって下処理されている。下処理されたキャビティ14は、皮質骨の外層を通る通路部15を通るシリンダ状のキャビティを有する。
【0053】
使用前において、脊椎ジャック8の径は、通路部15を通るシリンダ状のキャビティの径とほぼ同等であり、脊椎ジャック8の支持素子10は、配向性を有する。使用時において、脊椎ジャック8の支持素子10は、適切なサイズのトロカール24及びプランジャ26を用いて通路部15を通ってシリンダ状のキャビティ内へ挿入される。プランジャ26は、脊椎ジャック8をトロカールからキャビティ14内へ押し付け、支持素子10は、キャビティ14内へ完全に挿入され、伝達補助部16は、通路部15を通ってシリンダ状のキャビティ内でぴったりと位置している。通路部15は、伝達補助部16を所定位置で保持し、配向性のある支持素子10をキャビティ14内の所定位置で効果的に懸架、支持する。
【0054】
いったん脊椎ジャック8が所定位置に位置付けられると、トロカール24は、脊椎ジャック8の開口部20を介して加熱プローブ22を脊椎ジャックの通路部18に沿って案内する。支持素子19は、配向性形状記憶ポリマーよりなり、熱が加熱プローブ22から支持素子10に伝達すると応力緩和する。支持素子10が応力緩和すると、支持素子10は、Z面に沿って、すなわち脊椎の長手方向軸に沿って膨張する。膨張する支持素子10の力は、矢印Fで示されており、崩壊した椎体4の高さを上昇させる。これは、図2Dにおいて最も明確に示されている。図2Eは、加熱後の脊椎ジャック8を示しており、支持素子10は、完全に応力緩和している。
【0055】
当然ながら、支持素子10が膨張する力の大部分は、Z面に沿って発生する一方、膨張する力の一部は、X及びY面に沿って発生する。X及びY面における膨張する力は、本実施形態において一様に参照符号28で示された空間である緩衝領域によって吸収される。これは、図2F及び図2Gにおいて最も明確に示されている。
【0056】
ここで図3Aから図3Cを参照すると、本発明のさらなる実施形態が示されている。本実施形態における脊椎ジャック8と下処理されたキャビティ14内へ挿入する方法とは、上述されかつ図2Aから図2Gにおいて示された実施形態と同一であり、支持素子10と支持素子10を応力緩和させる方法とに対する変更点は、ここで説明される。支持素子10は、支持素子10の長手方向軸に対して垂直に延在する貫通チャネル30であって開口部で終端する貫通チャネル30を有するように変更されている。脊椎ジャック8がキャビティ14内へ挿入されると、貫通チャネル30は、Z面と平行に揃えられる。発熱性の骨セメント32は、脊椎ジャック8の開口部20を介してシリンジ34を用いて供給され、骨セメントは、通路部18を通って支持素子10へ移動する。セメント32が硬化するにしたがって、エネルギーは、熱として解放される。この熱は、応力緩和ひいては支持素子10の膨張を、上述されかつ図2Aから図2Gにおいて示された実施形態と同様の方法で作動させる。支持素子10の膨張中において、チャネル30の径は、若干狭くなり、セメント32は、チャネル30を収縮させる力によって、支持素子10の上及び下面40及び42それぞれに位置する開口部36及び38を通って押し出される。このようにして、セメント32は、支持素子10の上及び下面40及び42双方に層を形成する。これら層は、膨張した支持素子10を椎体4における周囲の骨と接合し、結合する。
【0057】
当然ながら、チャネル30をさらに収縮させる必要がある場合、チャネル30は、チャネルを径方向で伸張させることによって配向されてもよい。支持素子10が応力緩和すると、チャネル30は、チャネルが配向性を有していない場合よりも大きい程度で収縮する。
【0058】
また、当然ながら、十分な量のセメント32は、注入され、セメントは、支持素子10の上面42の端部を超えて緩衝領域28内へ漏洩し、周囲の骨に対する支持素子10の接合、固定及び結合に改善をもたらしてもよい。
【0059】
さらに、当然ながら、支持素子は、チャネルを緩衝領域28に向けるさらなるチャネルを有してもよい。
【0060】
骨セメントを使用する替わりに、支持素子10は、上述されかつ図2Aから図2Gに示された実施形態と同様に、同様の方法で応力緩和されてもよい。このようにして支持素子10を応力緩和させた後、骨セメント32は、上述のようにかつ十分な圧力下で注入され、セメントは、通路部18に沿って移動し、チャネル30を通って開口部36及び38に向けて押し出され、上及び下面40、42と周囲の骨との間に形成された接触面における接合及び結合を補助する。骨セメントに替えて、医療用接着剤もしくは結合を促進する他の薬剤またはこれらの複合物を使用してもよい。
【0061】
ここで図4A及び図4Bを参照すると、本発明における脊椎ジャック8のさらなる実施形態が示されている。本実施形態において、脊椎ジャック8の外面には、可撓性を有する接合材料44であって濃黒の幅広の線で示される接合材料44が被覆されている。接合材料は、例えばポリカプロラクトン(PLC)またはポリウレタンである。接合材料44は、支持素子10を応力緩和させるために使用されるエネルギーで溶融し、支持素子10とキャビティ14の周囲の骨との間に接合剤を形成する。他のすべての点において、本実施形態は、上述されかつ図2Aから図2G及び図3Aから図3Cにおいて示された実施形態と同様である。
【0062】
図5Aから図5Cは、本発明における脊椎ジャック8の他の実施形態を示している。本実施形態において、脊椎ジャック8は、シリンダ状をなす複数の支持素子10であって支持素子10の長さに沿って中央を延びる貫通通路部18を有する複数の支持素子10を備え、通路部18は、支持素子の両端部において加熱プローブ22を収容する開口部20内で終端する。使用時において、支持素子10は、下処理されたキャビティ14内へ上述と同様の方法で挿入される。いったん支持素子10がキャビティ14内の所定位置にあると、加熱プローブ22は、開口部20を介して通路部18内へ挿入され、熱は、方向付けられた支持素子10へ効率よく伝達される。この工程は、各支持素子10について繰り返される。このようにして、崩壊した椎体4は、断面において次第に上昇し、崩壊した椎体4を修復するために使用される力の方向及び程度を制御するさらなる要素を提供する。また、各支持素子10は、異なる複数の程度またはレベルの配向性及び応力緩和を受けてもよく、異なる複数の程度またはレベルの配向性及び応力緩和は、崩壊した椎体4を修復するために用いられる力の方向及び程度にわたってさらなる制御をもたらす。
【0063】
図6Aから6Dは、脊椎ジャック8の別の実施形態を示している。本実施形態において、緩衝領域28は、ほぼ固体であり、形状変化しないシリンダ状のキャビティのフィラーである。シリンダ状のフィラー28は、フィラーの長さに沿って中央を延びる通路部18を有し、加熱プローブ22を収容する開口部20で終端する。また、フィラー28は、2つの支持素子を収容する通路部18A及び18Bであって両端それぞれが開口部20A及び20Bで終端する通路部18A及び18Bを有する。通路部18A及び18Bの長手方向軸は、通路部18の長手方向軸にほぼ直角である。シリンダ状の支持素子10それぞれは、さらなる通路部18Cを有し、通路部18Cは、支持素子10の長手方向軸に対して直角に支持素子10を横断して延在する。通路部18Cは、両端において開口部20Cで終端しており、加熱プローブ22が通路部18Cを通過することを可能とする。支持素子10の外径は、通路部20A及び20Bの内径とほぼ同等である。これは、図6Aにおいて最も明確に示されている。
【0064】
使用時において、支持素子10は、フィラー28の通路部20A及び20B内に位置し、ぴったりと嵌合している。支持素子10は、通路部20A及び20B内に位置付けられており、各支持素子10の通路部18Cは、フィラー28の通路部18と一列になっている。これにより、加熱プローブ22が全体の通路部18に沿って通過することが可能となる。これは、図6Cにおいて最も明確に示されている。加熱プローブ22は、エネルギーを配向性のある支持素子10に伝達し、支持素子10は、応力緩和してZ面に沿って開口部20A及び20Bを通って膨張する。通路部18A及び18Bの壁部は、支持素子10を囲むようにぴったりと嵌合しており、X及びY面に沿って膨張することを防止している。通路部18A及び18Bの壁部がぴったりと嵌合していることにより、さもなければX及びY面で発生しうる膨張をZ面に沿って方向付け、これにより、Z面に沿う膨張、ひいては崩壊した椎体4に掛かる回復させる力を改善し、脊椎ジャック8に本来備わっている修復能力を改善して椎体4を椎体本来の高さに回復させる。
【0065】
脊椎ジャック8の別の実施形態は、図7Aから図7Cに示される。脊椎ジャック8は、3つのシリンダ状をなす支持素子10が2列配置された単一の層を有し、支持素子10は、固定形状材料からなる上側及び下側負荷支持プレート50間に挟まれており、固定形状材料は、使用時において、支持素子10と上側及び下側の椎間板(図示略)の負荷支持面とを結合する。脊椎ジャック8の支持素子10は、配向性のある形態の状態で図7Aに示されており、応力緩和すなわち膨張された形態の状態で図7Bに示されている。図7Cは、複数の層を有する図7Aの脊椎ジャック8を示している。使用時において、脊椎ジャック8の応力緩和した支持素子10は、支持素子が膨張する力を負荷支持プレート50に伝達させ、負荷支持プレート50は、同様に、膨張する力を椎体4に伝達させて椎体4の高さを回復させる。このようにして、膨張する支持素子10からの力は、椎体4にわたってより均一に伝達される。
【0066】
図8Aから図8Cは、脊椎ジャック8の実施形態を示しており、支持素子10は、異なるサイズ及び構造を有している。
【0067】
図9は、キャビティ14内に位置する脊椎ジャック8を示す横断側面図である。支持素子10は、凹面をなす側壁部またはX及びY面双方で薄い領域を有する形状をなすシリンダ状である。支持素子10が応力緩和すると、膨張する力は、Z面のみに沿って椎体4へ伝達される。これは、支持素子の部分的な形状に起因する。
【0068】
当然ながら、脊椎ジャックへのさまざまな改良は、本発明の範囲内において可能である。例えば、支持素子は、他の適切な形状及びサイズであってもよい。また、負荷支持プレートは、配向性形状記憶ポリマーよりなってもよい。支持素子は、カニューレが挿入され、上述のように加熱プローブを収容する通路部を形成してもよく、または、支持素子には、内部伝熱素子が形成されてもよく、内部伝熱素子は、例えば電熱ワイヤによって外部の電源装置に接続されている。内部伝熱素子は、現場に残され、または支持素子を応力緩和した後に除去されてもよい。あるいは、支持素子は、形状記憶ポリマーであってそのTgが身体温度(37℃)である形状記憶ポリマーで形成されてもよい。このようにして、体液の温度は、支持素子を応力緩和させ、さらなるエネルギーの入力は、必要なくなる。
【0069】
当然ながら、本発明におけるデバイスは、脊椎以外の他の組織の骨折を修復するために使用されてもよい。
【0070】
脊椎ジャックは、1以上の活性薬剤を含んでもよい。適切な活性薬剤には、成長因子、骨形態形成タンパク質、抗生物質、抗炎症薬、血管新生因子、骨形成因子、モノブチリン、大網抽出物(omental extract)、トロンビン、変性タンパク、多血小板血漿/溶液、乏血小板血漿/溶液、骨髄穿刺液、及び、生体細胞、保存細胞、休眠細胞、及び死細胞のような動植物由来の任意の細胞が含まれる。当然ながら、当業者に知られている他の生体活性薬剤は、同様に、使用されてもよい。活性薬剤は、ポリマー状の形状記憶材料に組み込まれてもよく、ポリマー材料が応力緩和または分解する間に解放されてもよい。有利には、活性薬剤を組み込むことは、埋め込まれた部位における感染症に対抗すること、及び/または、新たな組織の成長を促進することの機能を果たす。
【0071】
本発明は、上述された実施形態及び改良に制限されず、添付の特許請求の範囲内にある構造及び詳細の双方において変更されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 脊柱、4 椎体、8 脊椎ジャック、10,19 支持素子、14 キャビティ(骨キャビティ)、15 通路部、22 加熱プローブ(エネルギー伝達プローブ)、24 トロカール、28 フィラー,緩衝領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊柱における損傷したまたは崩壊した椎体を治療するために骨キャビティ内へ挿入可能な脊椎ジャックであって、
形状記憶特性を有する少なくとも1つの支持素子を備え、
当該脊椎ジャックは、前記支持素子が単一支持面に沿って前記椎体に力を付与するように構成されていることを特徴とする脊椎ジャック。
【請求項2】
前記支持素子は、形状記憶ポリマーよりなることを特徴とする請求項1に記載の脊椎ジャック。
【請求項3】
前記形状記憶ポリマーは、配向性形状記憶ポリマーであることを特徴とする請求項2に記載の脊椎ジャック。
【請求項4】
当該脊椎ジャックは、前記支持素子の少なくとも一部を囲む緩衝領域を有し、前記単一支持面以外の面において前記支持素子によって付与された力を吸収することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の脊椎ジャック。
【請求項5】
前記緩衝領域は、25℃かつ100kPaでの測定において1.168kg/m3と50kg/m3との間の密度を有する媒体よりなることを特徴とする請求項4に記載の脊椎ジャック。
【請求項6】
前記緩衝領域は、圧縮可能な基質であることを特徴とする請求項5に記載の脊椎ジャック。
【請求項7】
前記緩衝領域は、骨キャビティ内でぴったりと嵌合するように形成されたプラグの形態をなす形状変化しない材料よりなることを特徴とする請求項4または5に記載の脊椎ジャック。
【請求項8】
前記プラグは、少なくとも1つの前記支持素子を収容する少なくとも1つの凹所を有することを特徴とする請求項7に記載の脊椎ジャック。
【請求項9】
少なくとも1つの前記支持素子は、2つの負荷支持接触面間に挟まれていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の脊椎ジャック。
【請求項10】
少なくとも1つの前記支持素子は、エネルギー伝達プローブを収容する通路部を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の脊椎ジャック。
【請求項11】
脊柱における損傷したまたは崩壊した椎体を治療する装置であって、
請求項1から10のいずれか1項に記載の脊柱ジャックと、
前記脊柱ジャックを前記椎体に伝達させる伝達手段と、
前記支持素子の形状記憶特性を作動させる作動手段と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項12】
前記脊柱ジャックを伝達する前記伝達手段は、カニューレまたはトロカールであることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記作動手段は、加熱プローブであることを特徴とする請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
骨折した椎体を回復する方法であって、
請求項1から10のいずれか1項に記載の脊柱ジャックを骨折した前記椎体内へ導入する工程と、
少なくとも1つの前記支持素子の分子運動を作動させる工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
骨折した前記椎体は、当該椎体にキャビティを形成することによって下処理されていることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項1】
脊柱における損傷したまたは崩壊した椎体を治療するために骨キャビティ内へ挿入可能な脊椎ジャックであって、
形状記憶特性を有する少なくとも1つの支持素子を備え、
当該脊椎ジャックは、前記支持素子が単一支持面に沿って前記椎体に力を付与するように構成されていることを特徴とする脊椎ジャック。
【請求項2】
前記支持素子は、形状記憶ポリマーよりなることを特徴とする請求項1に記載の脊椎ジャック。
【請求項3】
前記形状記憶ポリマーは、配向性形状記憶ポリマーであることを特徴とする請求項2に記載の脊椎ジャック。
【請求項4】
当該脊椎ジャックは、前記支持素子の少なくとも一部を囲む緩衝領域を有し、前記単一支持面以外の面において前記支持素子によって付与された力を吸収することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の脊椎ジャック。
【請求項5】
前記緩衝領域は、25℃かつ100kPaでの測定において1.168kg/m3と50kg/m3との間の密度を有する媒体よりなることを特徴とする請求項4に記載の脊椎ジャック。
【請求項6】
前記緩衝領域は、圧縮可能な基質であることを特徴とする請求項5に記載の脊椎ジャック。
【請求項7】
前記緩衝領域は、骨キャビティ内でぴったりと嵌合するように形成されたプラグの形態をなす形状変化しない材料よりなることを特徴とする請求項4または5に記載の脊椎ジャック。
【請求項8】
前記プラグは、少なくとも1つの前記支持素子を収容する少なくとも1つの凹所を有することを特徴とする請求項7に記載の脊椎ジャック。
【請求項9】
少なくとも1つの前記支持素子は、2つの負荷支持接触面間に挟まれていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の脊椎ジャック。
【請求項10】
少なくとも1つの前記支持素子は、エネルギー伝達プローブを収容する通路部を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の脊椎ジャック。
【請求項11】
脊柱における損傷したまたは崩壊した椎体を治療する装置であって、
請求項1から10のいずれか1項に記載の脊柱ジャックと、
前記脊柱ジャックを前記椎体に伝達させる伝達手段と、
前記支持素子の形状記憶特性を作動させる作動手段と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項12】
前記脊柱ジャックを伝達する前記伝達手段は、カニューレまたはトロカールであることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記作動手段は、加熱プローブであることを特徴とする請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
骨折した椎体を回復する方法であって、
請求項1から10のいずれか1項に記載の脊柱ジャックを骨折した前記椎体内へ導入する工程と、
少なくとも1つの前記支持素子の分子運動を作動させる工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
骨折した前記椎体は、当該椎体にキャビティを形成することによって下処理されていることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【公表番号】特表2010−524539(P2010−524539A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503574(P2010−503574)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001314
【国際公開番号】WO2008/125849
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001314
【国際公開番号】WO2008/125849
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】
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