説明

往復揺動機構およびこれを用いた羽ばたき飛行機

【課題】昇降部材の昇降運動を翼のような剛体リンクのフラッピング運動とリード・ラグ運動のような三次元的往復揺動運動に変換する簡易な機構を提供する。
【解決手段】羽ばたき飛行機は、機体11、翼12,13、羽ばたき機構14を備える。翼は、第1、第2の枢軸により羽ばたき運動とリード・ラグ運動を行う。羽ばたき機構14は、胴体28、弾性体リンク30、駆動部29を持つ。胴体28が機体11に対して相対上下動し、弾性体リンク30で翼12,13を羽ばたき動作させる。弾性体リンク30は、胴体28と翼12とをつなぐ軸線を撓ませ、胴体の相対昇降途上で撓みの中立点を越えて反対方向へ撓むように、また軸線周りにねじって介設される。弾性体リンク30の撓みで胴体28の上下死点においても翼12,13を下方、上方へ回動させる回転トルクを生じ、ねじれで羽ばたき運動と同期したリード・ラグ運動を生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リード・ラグ運動を含む翼の羽ばたき運動のような往復揺動を生じる簡易な機構と、これを用いた羽ばたき飛行機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、往復揺動機構を用いた羽ばたき飛行機として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。この羽ばたき飛行機は、機体と、この機体に取り付けられた翼と、この翼の羽ばたき運動を実現させる羽ばたき機構とを備える。羽ばたき機構は、上端部が機体の後方寄りに位置し下端部が機体の前方寄りに位置するように機体に固定された軸部材と、軸部材に沿って上下に往復移動自在で翼根部にヒンジ部を介して連結された移動部材と、移動部材を往復移動させる駆動部と、機体と翼とを連結し連結部分を支点として翼を上下方向及び前後方向に回動自在とする翼支持部材とを有する。駆動部で移動部材を軸部材に沿って往復移動させて翼根部を機体の後方寄り上方位置と前方寄り下方位置との間で往復移動させることにより、支点を中心に翼を上下に回動させてフラッピング運動を実現させると同時に、翼を前後に回動させてリード・ラグ運動を実現させるものである。
【特許文献1】特開2008−24049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載の羽ばたき飛行機においては、機構が比較的複雑で、大型、大重量化を招くという問題点がある。また、蝶のような形態で、大きな振幅で羽ばたく小型、軽量の羽ばたき飛行機を実現することができない。
したがって、この出願に係る発明は、昇降部材の往復昇降運動を剛体リンクの三次元的往復揺動運動に変換する簡易な機構を提供することと、この機構を適用し、昇降部材の往復昇降運動を剛体リンクとしての翼のフラッピング運動とリード・ラグ運動に変換する羽ばたき飛行機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明に係る往復揺動機構は、昇降運動をする昇降部材と、この昇降部材の運動線の上方または下方において一端が角度の異なる2つの軸で機体に2方向に枢支される剛体リンクと、昇降部材と剛体リンクとの間を連結する。剛体リンクは、昇降部材の昇降行程により弾性体リンクを介して上方または下方回動し、昇降部材の上死点または下死点において昇降部材の運動線とほぼ平行となる上限角または下限角に達する位置関係にあるよう配置される。弾性体リンクは、昇降部材と剛体リンクとをつなぐ軸線を撓ませ、かつ昇降部材の相対昇降途上で撓みの中立点を越えて反対方向へ撓むように昇降部材と剛体リンクとの間に介設されると共に、軸線周りに弾性的にねじって介設され、弾性体リンクの軸線周りのねじれによって剛体リンクを上下の往復揺動運動と同時にこれと異なる方向へ往復揺動させる。
また、上記課題を解決するための本発明に係る羽ばたき飛行機は、前後方向に延びる機体と、この機体の左右に揺動自在に取り付けられる一対の翼と、この翼の打ち上げ・打ち下ろしの羽ばたき運動を実現させる羽ばたき機構とを備える。翼は、機体に対して当該機体に平行な第1の枢軸と機体に対して所定の角度をなす第2の枢軸とにより2方向に枢支され、それによって第1の枢軸を中心とする羽ばたき運動と第2の枢軸を中心とするリード・ラグ運動とを可能に構成される。羽ばたき機構は、機体に対して相対上下動自在に設けられる胴体と、この胴体と翼とを結合する一対の弾性体リンクと、胴体を機体に対して相対上下動させる駆動部とを具備する。胴体を機体に対して相対上下動させることにより、弾性体リンクで翼を打ち上げ、打ち下ろし動作させる。弾性体リンクは、胴体と翼とをつなぐ軸線を撓ませ、かつ胴体の相対昇降途上で撓みの中立点を越えて反対方向へ撓むように、胴体と翼との間に介設されると共に、軸線周りに弾性的にねじって介設される。弾性体リンクのねじれによって羽ばたき運動と同期したリード・ラグ運動を生じる。
【発明の効果】
【0005】
この発明に係る往復揺動機構によれば、昇降部材の往復昇降運動を剛体リンクの三次元的往復揺動運動に変換する簡易な機構を提供することができる。また、この機構を適用し、昇降部材の往復昇降運動を剛体リンクとしての翼のフラッピング運動とリード・ラグ運動に変換する羽ばたき飛行機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照して、三次元的往復揺動運動を生じるこの発明の往復揺動機構を羽ばたき飛行機に適用した実施の形態を説明する。
図1は羽ばたき飛行機の翼が上方で打ち下ろし途上にある状態の正面図、図2は図1の羽ばたき飛行機の下方から見た斜視図、図3は図1の羽ばたき飛行機の上方から見た斜視図、図4は羽ばたき飛行機の翼が羽ばたき角0°にある飛翔状態の羽ばたき飛行機の正面図、図5は図4の羽ばたき飛行機の下方から見た斜視図、図6は図4の羽ばたき飛行機の上方から見た斜視図、図7は羽ばたき飛行機の翼が下方で打ち下ろし途上にある状態の正面図、図8は図7の羽ばたき飛行機の下方から見た斜視図、図9は図7の羽ばたき飛行機の上方から見た斜視図、図10ないし図17は羽ばたき飛行機の動作を説明する図であり、図10は翼が上限角にある状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は側面の模式図、図11の(a)は図10(a)のA部拡大図、(b)は図10(b)のB部拡大図、(c)は図10(c)のC部拡大図、図12は上限角にある翼が打ち下ろし行程に入った状態を示し、(a)は図10(a)のA部拡大図、(b)は図10(b)のB部拡大図、(c)は図10(c)のC部拡大図、図13は翼が羽ばたき角0°にある状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、図14の(a)は図13(a)のA部拡大図、(b)は図13(b)のB部拡大図、(c)は図13(c)のC部拡大図、図15は翼が下限角にある状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、図16の(a)は図15(a)のA部拡大図、(b)は図15(b)のB部拡大図、(c)は図15(c)のC部拡大図、図17は下限角にある翼が打ち上げ行程に入った状態を示し、(a)は図15(a)のA部拡大図、(b)は図15(b)のB部拡大図、(c)は図15(c)のC部拡大図である。
【0007】
羽ばたき飛行機は、棒状体から構成される機体11、機体11に取り付けられる前翼12、後翼13、翼の羽ばたき運動を実現する羽ばたき機構14を備える。この羽ばたき飛行機の重心は、前翼12の翼反力中心より後方に配置される。
【0008】
翼12,13は、機体11の前方左右に取り付けられており、羽ばたき機構14により駆動されて、図10ないし12に示す上限羽ばたき角から図15ないし17に示す下限羽ばたき角まで往復揺動する羽ばたき運動を行う。前翼12は、翼根部15で結合された第1及び第2の骨杆16,17を有する。第1の骨杆16は、翼根部15から翼端部まで翼前縁に沿って、やや後方へ湾曲して延びる。第2の骨杆17は、翼根部15から骨杆16に対して所定の角度離れて翼端部まで翼下縁に沿って延びる。第1及び第2の骨杆16,17間には、ほぼ三角形状の翼型を有する翼膜18が張られる。翼膜18は軽量な合成樹脂フィルムからなり、第1及び第2の骨杆15,16の先端部間に延びる後縁部18aが、羽ばたき時にまくれる柔軟性を有する。
【0009】
第1及び第2の骨杆16,17は、いずれも竹材で調製された部材であり、軽量であるとともに適度な強度、弾性、柔軟性を有している。同等の性質を有していれば、素材はこれに限定されない。翼根部15は、第1節19、第2節20を介して、機体11の左右に、機体11の軸線と平行に固着されたピン21で枢着される。第2節20は、先端側が翼根部15に固着され、基端側が機体11に直角なピン22により第1節19の先端側に枢着される。第1節19の基端側が、ピン21で機体11の左右に枢着される。前翼12は、後述する羽ばたき機構14に連結されており、羽ばたき機構14の駆動により、ピン21を中心に上下方向に回動させると共に、ピン21を中心に前後方向に回動させる。これにより、前翼12のフラッピング運動と、リード・ラグ運動が可能となる。
この実施形態においては、直交する2つの枢軸としてのピン21,22を離れた位置に設けたが、この2軸をユニバーサルジョントのような一部材として構成することもできる。
【0010】
後翼13は、前翼12と同様、翼根部23で結合された第1及び第2の骨杆24,25を有し、第1及び第2の骨杆24,25間には、ほぼ三角形状の翼型を有する翼膜26が張られる。翼膜26も、後縁部26aが、羽ばたき時にまくれる柔軟性を有する。翼根部23は、接続片27を介して第1節19に固着される。したがって、後翼13は、羽ばたき機構14の駆動により、前翼12と共に、フラッピング運動を行う。
【0011】
羽ばたき機構14は、機体11の下方に位置して機体11に対して相対回転自在に設けられる胴体28と、この胴体28を機体11に対して相対回転させる駆動部29と、胴体28の前方端部の左右において胴体28と前翼12とを結合し、機体11と胴体28との相対回転を前翼12の羽ばたき運動に変換する弾性体リンク30とを具備する。
【0012】
胴体28は、胴本体31、斜め支持杆32、軸受け部材43、ガイド棒34を具備する。胴本体31は、棒状で、機体11の下方に間隔を置いて、機体11に沿って前後方向に延びる。斜め支持杆32は、胴本体31の後端部に固着され、そこから斜め上前方へ延出して上端部において機体11の中間部にピン33で枢支され、その下部は、胴本体31の後端部から斜め下後方へ延出する。軸受け部材43は、斜め支持杆32の下端部間に、胴本体31、ガイド棒34と一体に固着される。したがって、胴体28は、前後方向の中間部においてピン33で機体11に枢支されることになり、ピン33を中心に機体11に対して、胴本体31の前端部を昇降させるように相対回転する。
【0013】
弾性体リンク30は、弾性合成樹脂製の帯板状部材からなり、下端において胴本体31の前端部左右の支持突起35に固着され、長軸周りに所定角度(図11(c)のオフセット角β)ねじれ、湾曲しつつ上方へ延び、上端部において前翼12の第2節20に固着される。
【0014】
駆動部29は、胴本体31の前端下方において駆動源となるゴム紐36の一端を係止する係止部材37と、胴本体31の後端下方においてゴム紐36の他端を係止するクランク38と、クランク38と機体11の後端部とを連結する連接杆39とを具備する。クランク38は、軸受け部材43に軸支される。クランク38の前方端にはゴム紐36が係止され、後方端には、連接杆39の基端が枢着される。連接杆39の先端部は機体11の後端からそれの軸線に沿って後方へ延出する支軸40に枢支される。
【0015】
したがって、撚られたゴム紐36に蓄えられたエネルギによりクランク38が回転すると、連接杆39、支軸40を経て機体11の前後端部が、ピン33を中心にして、胴体28に対して交互に相対上下動するように回転する。胴体28に対する機体11の相対回転面は、ガイド棒34によって規制される。ガイド棒34は、軸受け部材43から胴本体31に対して直角に上方へ延びており、その上部は、機体11の後部に上下方向に貫通するように形成された軸線方向の長孔41を自由に貫通している。胴本体31と機体11の前端部における相対昇降動は弾性体リンク30、第1節19、第2節20を介して前翼12に伝わり、前翼12を羽ばたき運動(上下方向往復揺動)させると同時に、リード・ラグ運動(前後方向往復揺動)させる。また、この相対昇降動は、弾性体リンク30、第1節19、接続片27を介して後翼13にそれぞれ伝わり、これを前翼12と共に羽ばたき運動させる。
なお、動力源として、ゴム紐36に代え、モータや形状記憶合金バネなど、他の任意のものを用いることができる。
【0016】
機体11の前端部に対する胴本体31の前端部の相対上下動を左右前後の4枚の翼12,13の180°に近い羽ばたき運動に変換し、さらに左右対の前翼12のリード・ラグ運動に変換し、これらの運動に伴う前後翼12,13の重なり42の変化により翼面積を制御する動作を図10ないし図17を参照して説明する。
【0017】
胴本体31の先端部は、胴本体回転中心(ピン33)を支点として往復回転運動し、上下方向(z軸方向)に矢印azの近似的往復直動運動を、また前後方向(x軸方向)に矢印axの近似的な往復直線運動をする。
【0018】
図10,11において、胴本体31の前端部が上死点にある。4枚の翼12,13は、撓んだ弾性体リンク30に押し上げられることにより、ピン21を軸とする羽ばたき上限角θ(≒90°)の位置(図10(a))に、また左右の前翼12は、押し上げられた弾性体リンク30のねじれにより発生したモーメント(図11のM1とそのねじれを戻そうとするモーメントM2との釣合いで、ピン22を軸とする前進翼の回転下限角α(≒−15°)の位置(図10(b))にある。また、前後の翼12,13は、前翼12の後部と後翼13の前部で、前翼12を上側として大きく重なり(42)、翼面積最小の状態にある。胴本体31の上死点では、図11(a)に示すように、翼12,13が、胴本体31の前端部の上下方向運動線(矢印az)とほぼ平行に配置されるから、単一の剛体リンクで結合されている場合には、胴本体31の押し上げ力Fuは翼12,13に伝わらない。しかし、胴本体31の押し上げ力Fuが弾性体リンク30を撓ませ、この撓みを戻す力F1の方向が翼根部15に対して平行にならないので、胴本体31の上昇行程において上死点に至るまで、駆動力(回転トルク)が翼12,13に有効に伝えられ、図11(a)の右側の翼12,13についてみると(以下、翼の羽ばたき回転については右側の翼に注目して説明する。)、反時計方向の回転トルクが生じている。
【0019】
ここから、図12(a)に示すように、胴本体31の前端部が下降行程に転じて引き下げ力Fdが加わると、弾性体リンク30の撓みを戻そうとする力F1により、翼12,13の時計方向の回転トルクが生じ、また図12(c)に示すように、弾性体リンク30のねじれを戻そうとするモーメントM2により、前翼12のリード方向への回転トルクM1が生じる。なお、図において、符号L1は弾性体リンク30の上端接合線、L2は弾性体リンク30の下端接合線、βは弾性体リンク30の軸周りのオフセット角を示す。
【0020】
胴本体31の下降行程で、翼12,13は、弾性体リンク30に引かれて打ち下ろされ、図13,14に示す羽ばたき角θ≒0°に至る。この間、前翼12は、前方へ回転し、前進翼角α(≒+15°)の位置に達する。このとき、前翼12と後翼13との重なり42が最小となり、翼面積が最大となる。この状態を弾性体リンク30の撓みおよびねじれの中立点(自然形)に設定してある。
【0021】
さらに胴本体31の前端部が下降し、図15,16に示す下死点に達すると、弾性体リンク30は反対方向へ撓んで延び、翼12,13は、下限羽ばたき角θ(≒−80°)に、また弾性体リンク30の反対方向へのねじれにより、前翼12は、後方へ回転し、前進翼角α(≒−15°)の位置に達する。下限羽ばたき角の状態においても、弾性体リンク30の撓みを戻そうとする力F1と引っ張り力の合力の方向は翼根部15に対して平行にならない。したがって、胴本体31の下降行程において下死点に至るまで、駆動力が翼12,13に有効に伝えられ、羽ばたき運動の時計方向の回転トルクが生じている。また、胴本体31の前端部が、ax方向最右舷に移動し、翼12の前縁が引き戻されるため、前進翼角の負の方向への回転トルクM1が得られる。ただし、弾性体リンク30のねじれは大きくなり、ねじれによる大きなエネルギが蓄積される。また、このとき、前翼12と後翼13との重なり42は最大となり、翼面積は最小となる。
【0022】
この状態で、図17に示すように、胴本体31の前端部が、上昇行程に転じると、弾性体リンク30が撓んで蓄えたエネルギ、すなわち撓みを戻そうとする力F1により、翼12を反時計方向へ回転させるトルクが得られる。
【0023】
弾性体リンク30の撓みの中立点(自然形)を、前翼12の回転角θ≒0°付近に、前翼最大前進翼角α≒15°付近に設定することにより、前翼12,13の効率のよい羽ばたき運動を実現できるが、中立点の回転角θ、前進翼角αを変更(自然形を変更)し、あるいは弾性体リンク30の材料定数を変更することにより、胴本体31の前端部の上下死点における翼12,13の回転トルク、前翼12の前進翼角トルクを変更することができる。弾性体リンク30は、合成樹脂製の帯板で構成するのが好適であるが、その材質は問わない。羽ばたき運動の回転軸となるピン21とリード・ラグ運動の回転軸となるピン22は、互いに直角方向に設定してあるが、変更することも可能である。さらに、リード・ラグ運動の振幅は15°としたが、変更することも可能である。
【0024】
この実施形態の羽ばたき飛行機は、例えば、図10に示す上限羽ばたき角90°近傍から翼の打ち下ろし動作を開始する。翼の打ち下ろし時には、左右の翼を引き剥がす動作で両翼の上面間に負圧を生じさせつつ、前翼12をリードさせながら、後翼13との重なり42の面積を減じることにより、翼面積を増大させ、図13に示す羽ばたき角θ≒0°、前進翼角α≒15°の状態を経て、図15に示す下限羽ばたき角(例えばθ≒−80°)、下限前進翼角(例えばα≒−15°)、最小翼面積近傍に達する。
【0025】
このように、本発明は、羽ばたき運動を実現する1自由度の動力で、その運動にほぼ垂直な、前翼のリード・ラグ運動、翼面積の制御を同時に実現する機構を提供できる。これにより、追加的な機構は不要であるから、軽量化でき、小型軽量の飛行機を実現できる。
なお、本発明の技術的思想にしたがって、はばたき機構が機体の上方に位置するように構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の羽ばたき飛行機は、玩具に適用できる他、これに実用的機能を付加した各種の飛行体に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】羽ばたき飛行機の翼が上方で打ち下ろし途上にある状態の正面図である。
【図2】図1の羽ばたき飛行機の下方から見た斜視図である。
【図3】図1の羽ばたき飛行機の上方から見た斜視図である。
【図4】翼が羽ばたき角0°にある飛翔状態の羽ばたき飛行機の正面図である。
【図5】図4の羽ばたき飛行機の下方から見た斜視図である。
【図6】図4の羽ばたき飛行機の上方から見た斜視図である。
【図7】翼が下方で打ち下ろし途上にある状態の羽ばたき飛行機の正面図である。
【図8】図7の羽ばたき飛行機の下方から見た斜視図である。
【図9】図7の羽ばたき飛行機の上方から見た斜視図である。
【図10】羽ばたき飛行機の動作を説明する図であり、翼が上限角にある状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は側面の模式図である。
【図11】(a)は図10(a)のA部拡大図、(b)は図10(b)のB部拡大図、(c)は図10(c)のC部拡大図である。
【図12】上限角にある翼が打ち下ろし行程に入った状態を示し、(a)は図10(a)のA部拡大図、(b)は図10(b)のB部拡大図、(c)は図10(c)のC部拡大図である。
【図13】羽ばたき飛行機の動作を説明する図であり、翼が羽ばたき角0°にある状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【図14】(a)は図13(a)のA部拡大図、(b)は図13(b)のB部拡大図、(c)は図13(c)のC部拡大図である。
【図15】羽ばたき飛行機の動作を説明する図であり、翼が下限角にある状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【図16】(a)は図15(a)のA部拡大図、(b)は図15(b)のB部拡大図、(c)は図15(c)のC部拡大図である。
【図17】下限角にある翼が打ち上げ行程に入った状態を示し、(a)は図15(a)のA部拡大図、(b)は図15(b)のB部拡大図、(c)は図15(c)のC部拡大図である。
【符号の説明】
【0028】
11 機体
12 前翼
13 後翼
14 羽ばたき機構
15 翼根部
16 第1骨杆
17 第2骨杆
18 翼膜
19 第1節
20 第2節
21 ピン
22 ピン
23 翼根部
24 第1骨杆
25 第2骨杆
26 翼膜
27 接続片
28 胴体
29 駆動部
30 弾性体リンク
31 胴本体
32 斜め支持杆
33 ピン
34 ガイド棒
35 支持突起
36 ゴム紐
37 係止部材
38 クランク
39 連接杆
40 支軸
41 長孔
42 翼の重なり
43 軸受け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降運動をする昇降部材と、この昇降部材の運動線の上方または下方において一端が角度の異なる2つの軸で機体に2方向に枢支される剛体リンクと、昇降部材と剛体リンクとの間を連結する弾性体リンクとを具備し、昇降部材の往復昇降運動を剛体リンクの三次元的往復揺動運動に変換する機構であって、
前記剛体リンクは、前記昇降部材の昇降行程により前記弾性体リンクを介して上方または下方回動し、昇降部材の上死点または下死点において昇降部材の運動線とほぼ平行となる上限角または下限角に達する位置関係にあるよう配置され、
前記弾性体リンクは、前記昇降部材と前記剛体リンクとをつなぐ軸線を撓ませ、かつ昇降部材の相対昇降途上で撓みの中立点を越えて反対方向へ撓むように昇降部材と剛体リンクとの間に介設されると共に、軸線周りに弾性的にねじって介設され、弾性体リンクの軸線周りのねじれによって剛体リンクを上下の往復揺動運動と同時にこれと異なる方向へ往復揺動させることを特徴とする往復揺動機構。
【請求項2】
前記角度の異なる2つの軸が、ユニバーサルジョイントとして構成されることを特徴とする請求項1に記載の往復揺動機構。
【請求項3】
前後方向に延びる機体と、この機体の左右に揺動自在に取り付けられる一対の翼と、この翼の打ち上げ・打ち下ろしの羽ばたき運動を実現させる羽ばたき機構と、を備える羽ばたき飛行機であって、
前記翼は、前記機体に対して当該機体に平行な第1の枢軸と機体に対して所定の角度をなす第2の枢軸とにより枢支され、それによって第1の枢軸を中心とする羽ばたき運動と第2の枢軸を中心とするリード・ラグ運動とを可能に構成され、
前記羽ばたき機構は、前記機体に対して相対上下動自在に設けられる胴体と、この胴体と前記翼とを結合する一対の弾性体リンクと、胴体を機体に対して相対上下動させることにより弾性体リンクで翼を打ち上げ、打ち下ろし動作させる駆動部とを具備し、
前記弾性体リンクは、前記胴体と前記翼とをつなぐ軸線を撓ませ、かつ胴体の相対昇降途上で撓みの中立点を越えて反対方向へ撓むように胴体と翼との間に介設されると共に、軸線周りに弾性的にねじって介設され、弾性体リンクのねじれによって羽ばたき運動と同期したリード・ラグ運動を生じることを特徴とする羽ばたき飛行機。
【請求項4】
前記第1および第2の枢軸が、ユニバーサルジョイントとして構成されることを特徴とする請求項3に記載の羽ばたき飛行機。
【請求項5】
前記一対の翼の後方に位置して、前記機体に対して前記第1の枢軸により枢支される一対の後翼をさらに具備し、この後翼は、前記翼の上に一部が重なり、前記翼のリード・ラグ運動に対応して両翼の重なり面積、すなわち実質翼面積が変化するように構成されることを特徴とする請求項3に記載の羽ばたき飛行機。
【請求項6】
前記胴体は、前記機体に沿って前後方向に延びる胴本体と、この胴本体から上方へ延出して上端部において前記機体の中間部に枢支される支持杆とを具備し、
前記胴本体は、前端部において前記弾性体リンクを介して前記翼に連結され、胴本体前端部の相対上下動により、弾性体リンクを介して翼の羽ばたき運動と、この羽ばたき運動と同期したリード・ラグ運動を生じることを特徴とする請求項3に記載の羽ばたき飛行機。
【請求項7】
前記駆動部は、前記胴本体の前方下部に固定され、駆動源となるゴム紐の一端が係止される係止部材と、
中間部が前記胴本体の後方下部に軸支され、一端側に前記ゴム紐の他端が係止されるクランクと、
一端側が前記クランクの他端側に枢支され、他端側が前記機体の後部に枢支され、クランクの回転を胴本体に対する機体後部の相対回転運動に変換して伝える連接杆とを具備することを特徴とする請求項3に記載の羽ばたき飛行機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−105413(P2010−105413A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276284(P2008−276284)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(598163064)学校法人千葉工業大学 (101)
【Fターム(参考)】