説明

待ち受けコネクタ

【課題】部品点数が少なく簡素な構成の待ち受けコネクタを提供する。
【解決手段】インバータのケース70に固定された相手側コネクタ71と接続される待ち受けコネクタ1は、モータのケース9に固定されたアウタハウジング2と、アウタハウジング2の収容部21内に収容され、相手側コネクタ71の端子75と嵌合する端子5を収容して相手側コネクタ71と嵌合するインナハウジング4と、インナハウジング4を収容部21内に移動自在に取り付けるバネ部材3と、を有している。バネ部材3は、インナハウジング4の外側面45を矢印X方向に付勢する複数の第1バネ34と、インナハウジング4の後端面42を収容部21の開口側に付勢する第2バネ35と、インナハウジング4の前端面43に当接してインナハウジング4が収容部21の開口から飛び出すことを防止するストッパ36と、を一体に有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器同士の接続等に用いられる待ち受けコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車には種々の電子機器が搭載されている。これら電子機器同士を接続する際には従来よりワイヤハーネスが用いられてきた。ワイヤハーネスとは複数の電線とこれら電線の端末に取り付けられた複数のコネクタとで構成されるものである。そして、このワイヤハーネスの各コネクタが各電子機器のケースなどに固定された各待ち受けコネクタにそれぞれ接続されることでこれら電子機器同士が接続される。また、待ち受けコネクタとはパネルやケースなどに固定されるコネクタのことを言う。
【0003】
一方、近年では、コスト面や組み立て作業性の理由からワイヤハーネスを用いずに電子機器同士を直接接続することが行われている。この場合、各電子機器の待ち受けコネクタ同士が直接接続されることになるので、前記待ち受けコネクタには、互いに接続される待ち受けコネクタ同士の位置ずれ(組み付け誤差や部品公差による位置ずれである。)を吸収する構造が必要となる。また、前記電子機器が重量物である場合、待ち受けコネクタ同士の嵌合時にこれら待ち受けコネクタに大きな衝撃荷重が加えられ、当該待ち受けコネクタが破損するおそれがあるので、前記待ち受けコネクタには、嵌合時の衝撃荷重を吸収する構造が必要となる。
【0004】
この位置ずれ吸収構造、衝撃荷重吸収構造、を備えた待ち受けコネクタとして、例えば、特許文献1(特開2000−277217号公報)に示されたフローティングコネクタが提案されている。このフローティングコネクタは、端子と、端子を収容するインナハウジングと、インナハウジングを遊嵌させた状態で収容するアウタハウジングと、インナハウジングをアウタハウジング内に移動自在に取り付けるスプリングワッシャと、を有している。このスプリングワッシャは、インナハウジングとアウタハウジングの内底面との間に配置され、インナハウジングを前方、即ち相手側コネクタに向かう方向、に付勢してアウタハウジングの内側面に設けられたストッパに当接させることで、当該インナハウジングをアウタハウジング内に移動自在に取り付ける。このフローティングコネクタは、相手側コネクタと接続即ち嵌合する際に、端子が相手側コネクタの端子と接続するようにスプリングワッシャが弾性変形することにより、インナハウジングがアウタハウジング内を移動して相手側コネクタとインナハウジングとの位置ずれを吸収する。また、相手側コネクタとの嵌合によってインナハウジングに加えられる衝撃荷重をスプリングワッシャが吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−277217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示された待ち受けコネクタとしてのフローティングコネクタは、インナハウジングがアウタハウジングから飛び出すことを防止するストッパをアウタハウジングの内側面に設けているが、このストッパが、インナハウジングをアウタハウジング内に収容した後にアウタハウジングに組み付ける構造のストッパであることから、部品点数が増加する上に、アウタハウジングが複雑な構造となってしまうという問題があった。さらに、アウタハウジング及びストッパに厳しい寸法精度が要求されるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に示された待ち受けコネクタとしてのフローティングコネクタは、端子に接続された電線がインナハウジングの後方からアウタハウジングの内底面に設けられた貫通孔を挿通されて引き出されている構成であるが、相手側コネクタとの嵌合によってインナハウジングが傾けられることによって前記電線も大きく傾けられるので、該電線と接続される電気回路の接続箇所に応力が生じてしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、部品点数が少なく簡素な構成の待ち受けコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、前方に開口した有底筒状の収容部を有し、ケースに固定されたアウタハウジングと、相手側コネクタの端子と嵌合する電気接続部を有する端子と、前記収容部内に当該収容部との間に間隔をあけた状態で収容され、かつ、前記電気接続部を収容して前記収容部の開口から挿入される前記相手側コネクタと嵌合するインナハウジングと、前記収容部内に取り付けられ、前記インナハウジングを前記収容部内に移動自在に取り付けるバネ部材と、を有する待ち受けコネクタにおいて、前記バネ部材が、前記収容部の内側面と前記インナハウジングの外側面との間に前記インナハウジングを包囲する格好で複数配置され、前記インナハウジングの外側面を前記相手側コネクタとの嵌合方向と直交する方向に付勢する複数の第1バネと、前記収容部の内底面と前記インナハウジングの後端面との間に配置され、前記インナハウジングの後端面を前記収容部の開口側に付勢する第2バネと、前記インナハウジングの前端面に当接して当該インナハウジングが前記収容部の開口から飛び出すことを防止するストッパと、を一体に有していることを特徴とする待ち受けコネクタである。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記バネ部材が、金属板が曲げられて筒状に形成され、内側に前記インナハウジングを位置付ける筒部と、前記筒部の一部が切り起こされ、前記筒部の内側に曲げられて形成された前記複数の第1バネと、前記インナハウジングの後端面側に位置する前記筒部の一端部から延設され、前記筒部の内側に曲げられて形成された前記第2バネと、前記インナハウジングの前端面側に位置する前記筒部の他端部から延設され、前記インナハウジングが前記筒部の他端部側の開口から当該筒部の内側に挿入された後に前記インナハウジングの前端面に当接するように曲げられて形成された前記ストッパと、を一体に有していることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載された発明において、前記端子が、前記ケース内の電気回路に接続される第2電気接続部と、柔軟性を有する導電部材で構成され、前記電気接続部と前記第2電気接続部とを電気接続した接続部と、を有し、前記アウタハウジングが、前記収容部の内底面から前記収容部の開口と離れた側に延設され、前記内底面に設けられた貫通孔を通された前記第2電気接続部を収容する第2収容部を有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、前記バネ部材が、前記収容部の内側面と前記インナハウジングの外側面との間に前記インナハウジングを包囲する格好で複数配置され、前記インナハウジングの外側面を前記相手側コネクタとの嵌合方向と直交する方向に付勢する複数の第1バネと、前記収容部の内底面と前記インナハウジングの後端面との間に配置され、前記インナハウジングの後端面を前記収容部の開口側に付勢する第2バネと、前記インナハウジングの前端面に当接して当該インナハウジングが前記収容部の開口から飛び出すことを防止するストッパと、を一体に有しているので、1つの前記バネ部材によって、前記相手側コネクタと前記インナハウジングとの位置ずれを吸収することができ、また、前記相手側コネクタと前記インナハウジングとの嵌合時に前記インナハウジングに加えられる衝撃荷重を吸収することができ、また、前記インナハウジングが前記収容部の開口から飛び出すことを防止できる。さらに、前記ケースの振動を前記インナハウジングに伝わりにくくすることができる。よって、部品点数が少なく簡素な構成の待ち受けコネクタを提供することができる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、前記バネ部材が、金属板が曲げられて筒状に形成され、内側に前記インナハウジングを位置付ける筒部と、前記筒部の一部が切り起こされ、前記筒部の内側に曲げられて形成された前記複数の第1バネと、前記インナハウジングの後端面側に位置する前記筒部の一端部から延設され、前記筒部の内側に曲げられて形成された前記第2バネと、前記インナハウジングの前端面側に位置する前記筒部の他端部から延設され、前記インナハウジングが前記筒部の他端部側の開口から当該筒部の内側に挿入された後に前記インナハウジングの前端面に当接するように曲げられて形成された前記ストッパと、を一体に有しているので、部品点数が少なく簡素な構成の待ち受けコネクタを提供することができる。
【0014】
請求項3に記載された発明によれば、前記端子が、前記ケース内の電気回路に接続される第2電気接続部と、柔軟性を有する導電部材で構成され、前記電気接続部と前記第2電気接続部とを電気接続した接続部と、を有し、前記アウタハウジングが、前記収容部の内底面から前記収容部の開口と離れた側に延設され、前記内底面に設けられた貫通孔を通された前記第2電気接続部を収容する第2収容部を有しているので、前記相手側コネクタと前記インナハウジングとの嵌合によって前記インナハウジング及び前記電気接続部が移動したとしても、前記第2電気接続部が移動することがなく、そのために、前記第2電気接続部と接続される前記ケース内の電気回路の接続箇所に応力が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る待ち受けコネクタを示す断面斜視図である。
【図2】図1に示された待ち受けコネクタの断面図である。
【図3】図1に示されたバネ部材の斜視図である。
【図4】図3中のA−A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態に係る待ち受けコネクタを図1ないし図4を参照しながら説明する。
【0017】
上記待ち受けコネクタ1は、図1に示すように、自動車に搭載されるモータのケース9に取り付けられ、インバータのケース70に取り付けられた相手側コネクタ71と電気接続されるコネクタである。即ち、待ち受けコネクタ1は、前記モータに前記インバータがマウントされる場合において、インバータと一体に設けられた相手側コネクタ71と直接接続されるコネクタである。この相手側コネクタ71は、インバータの電気回路に電気接続されかつ待ち受けコネクタ1の端子5に電気接続される雌型の端子75と、合成樹脂製のハウジング72と、を有している。また、ハウジング72は、ケース70にボルト76で固定されるフランジ部74と、端子75を収容した端子収容部73と、を一体に有している。
【0018】
また、図1及び図2中の矢印Yは、相手側コネクタ71と待ち受けコネクタ1との嵌合方向を表しており、矢印Xは、前記嵌合方向と直交する方向を表している。
【0019】
上記待ち受けコネクタ1は、図1及び図2に示すように、モータのケース9に固定されたアウタハウジング2と、端子5と、端子5を収容し、アウタハウジング2内に収容されて相手側コネクタ71と嵌合するインナハウジング4と、インナハウジング4をアウタハウジング2内に移動自在に取り付けるバネ部材3と、シール部材6a,6bと、を有している。
【0020】
上記端子5は、導電性の金属により板状、即ち雄型、に形成され、相手側コネクタ71の雌型の端子75の内側に差し込まれて、即ち嵌合して、端子75と電気接続される電気接続部51と、導電性の金属により板状に形成され、モータのケース9内の電気回路に電気接続される第2電気接続部53と、柔軟性を有する導電部材である編組電線で構成され、電気接続部51と第2電気接続部53との間に配置されてこれら電気接続部51と第2電気接続部53とを電気接続した接続部52と、を有している。前記電気接続部51には、インナハウジング4の後述の係止ロック44に係止する係止穴51aが設けられている。前記第2電気接続部53には、モータの電気回路に固定される際にボルトが通される丸穴53aが設けられている。また、接続部52と、電気接続部51及び第2電気接続部53は、超音波接合により互いに電気接続されている。このような端子5は、電気接続部51と第2電気接続部53とが変形自在な接続部52によって電気接続されていることから、第2電気接続部53が固定された状態で、電気接続部51が自由に移動することができる。
【0021】
上記インナハウジング4は、合成樹脂で構成されており、上記端子5の電気接続部51の接続部52から離れた先端部分を収容する有底筒状、即ち四角筒状、の端子収容部41と、端子収容部41の内底面から端子収容部41の開口と離れた側に延設され、電気接続部51の接続部52寄りの後端部分を取り付ける端子取付部40と、を一体に有している。また、端子収容部41の内側面と電気接続部51との間には、端子収容部41の開口から挿入される相手側コネクタ71の端子収容部73を収容するための間隔があけられている。また、相手側コネクタ71の端子収容部73が端子収容部41の前記間隔に嵌まって、端子75の内側に電気接続部51が差し込まれることを、本発明では、「相手側コネクタ71とインナハウジング4とが嵌合する」と表現する。また、端子取付部40には、端子収容部41の内部空間に連通し、電気接続部51の後端部分を通す貫通孔40aと、貫通孔40aの内面に配置され、前述した電気接続部51の係止穴51aに係止する係止ロック44と、が設けられている。端子取付部40は、係止ロック44が係止穴51aに係止することにより、電気接続部51を取り付ける。また、図2などに示す符号43は、インナハウジング4の「前端面」を示しており、符号42は、インナハウジング4の「後端面」を示している。また、符号45は、インナハウジング4の「外側面」を示している。このように、本発明では、インナハウジング4の端子収容部41が設けられた側の端面を「前端面43」とし、インナハウジング4の端子取付部40が設けられた側の端面を「後端面42」とする。また、前記貫通孔40aは、インナハウジング4の後端面42側に開口しており、電気接続部51の後端部分を後端面42から突出させる。
【0022】
上記アウタハウジング2は、合成樹脂で構成されており、前方、即ち相手側コネクタ71側、に開口した有底筒状、即ち四角筒状、の収容部21と、収容部21の開口側の端部から収容部21の外側に鍔状に延びたフランジ部23と、収容部21の内底面21aから収容部21の開口と離れた側に延設された第2収容部20と、を一体に有している。
【0023】
上記収容部21は、上記インナハウジング4の前端面43が収容部21の開口側に位置し、インナハウジング4の後端面42が内底面21a側に位置する向きで、インナハウジング4を内側に収容する。また、収容部21の内径は、インナハウジング4の外径よりも大きく形成されている。また、収容部21の矢印Y方向の深さは、インナハウジング4の矢印Y方向の全長よりも大きく形成されている。このことから、収容部21は、インナハウジング4を矢印X方向に沿って移動自在に収容するとともにインナハウジング4を矢印Y方向に沿って移動自在に収容する。即ち、インナハウジング4は、収容部21内に当該収容部21との間に間隔をあけた状態で収容され、収容部21の開口から挿入される相手側コネクタ71の端子収容部73と嵌合する。
【0024】
上記フランジ部23は、ケース9の外表面に重ねられて、ケース9にボルト8で固定される。また、フランジ部23とケース9の外表面との間には、シール部材6aが取り付けられている。このシール部材6aは、フランジ部23とケース9の外表面との間を水密に保つ。また、フランジ部23とインバータのケース70の外表面との間には、シール部材6bが取り付けられている。このシール部材6bは、フランジ部23とケース70の外表面との間を水密に保つ。また、これらシール部材6a,6bは、フランジ部23の全周、即ちアウタハウジング2の全周、に亘って環状に設けられている。
【0025】
上記第2収容部20には、収容部21の内部空間に連通し、端子5の接続部52と第2電気接続部53とを収容する貫通孔20aが設けられている。また、貫通孔20aは、第2収容部20の収容部21から離れた後端面側に開口しており、第2電気接続部53の後端部分を第2収容部20の後端面から突出させる。また、第2収容部20の後端面から突出した第2電気接続部53の後端部分は、前述したように、丸穴53aにボルトが通されてモータの電気回路に電気接続される。また、貫通孔20aは、特許請求の範囲に記載された「収容部21の内底面21aに設けられた貫通孔」に相当する。
【0026】
上記バネ部材3は、厚みの薄い金属板にプレス加工等が施されて得られるものであり、図3及び図4に示すように、互いに相対する一対の壁31と互いに相対する一対の壁32とにより四角筒状に形成され、内側にインナハウジング4を位置付ける筒部30と、筒部30の各壁31,32の一部が片持ちの帯状に切り起こされ、筒部30の内側に突出するU字状に曲げられて形成された4つの第1バネ34と、筒部30の一対の壁31それぞれの一端部から片持ちの帯状に延設され、筒部30の内側に突出するU字状に曲げられて形成された2つの第2バネ35と、筒部30の一対の壁32それぞれの他端部から延設され、筒部30の第2バネ35から離れた開口から当該筒部30の内側にインナハウジング4が挿入された後にこのインナハウジング4の前端面43に当接するように折り曲げられて形成された2つのストッパ36と、一対の壁31それぞれの他端部から延設され、筒部30の外側に折り曲げられて形成された2つのフランジ部33と、を一体に有している。また、前記フランジ部33には、ボルト7が通される丸穴33aが設けられている。このフランジ部33は、アウタハウジング2のフランジ部23に重ねられ、丸穴33aを通されたボルト7によってフランジ部23に固定される。
【0027】
上記バネ部材3は、筒部30の外表面が収容部21の内側面21bに沿う向きで収容部21の開口から収容部21内に挿入されてアウタハウジング2に取り付けられる。また、バネ部材3は、筒部30の内側にインナハウジング4が収容されかつアウタハウジング2に取り付けられた状態で、収容部21の内側面21bとインナハウジング4の外側面45との間にインナハウジング4を包囲する格好で配置された4つの第1バネ34が、インナハウジング4の外側面45を矢印X方向に付勢する。即ち、4つの第1バネ34がインナハウジング4を当該インナハウジング4の中心に向かって付勢する。また、収容部21の内底面21aとインナハウジング4の後端面42との間に配置された2つの第2バネ35が、インナハウジング4の後端面42を収容部21の開口側に付勢する。また、2つの第2バネ35がインナハウジング4を収容部21の開口側に付勢することにより、インナハウジング4の前端面43が2つのストッパ36に当接する。また、これら2つのストッパ36は、インナハウジング4が収容部21の開口から飛び出すことを防止する。
【0028】
即ち、バネ部材3は、インナハウジング4及び電気接続部51が矢印Xに沿って移動すると、第1バネ34が弾性変形する。また、インナハウジング4及び電気接続部51が矢印Yに沿って移動すると、第2バネ35が弾性変形する。このようにして、バネ部材3は、インナハウジング4をアウタハウジング2の収容部21内に矢印Y及び矢印Xに沿って移動自在に取り付ける。
【0029】
上記構成の待ち受けコネクタ1は、相手側コネクタ71と接続する際に、電気接続部51が相手側コネクタ71の端子75内に差し込まれるように、即ちインナハウジング4が相手側コネクタ71に嵌合するように、バネ部材3の第1バネ34及び第2バネ35が弾性変形することにより、インナハウジング4がアウタハウジング2の収容部21内を移動して相手側コネクタ71とインナハウジング4との位置ずれを吸収する。
【0030】
また、上記構成の待ち受けコネクタ1は、相手側コネクタ71との嵌合によってインナハウジング4に加えられる衝撃荷重を第2バネ35が弾性変形することにより吸収する。このことにより、インナハウジング4が収容部21の内底面21aに衝突して破損することが防止される。なお、インバータと一体になった相手側コネクタ71との嵌合時にインナハウジング4に加えられる衝撃荷重は、インバータの重量が加わる分、大きなものとなる。さらに、この第2バネ35の弾性復元力によってインナハウジング4は相手側コネクタ71側に押し返されるが、ストッパ36がインナハウジング4の前端面43に当接して前端面43を押さえていることにより、このインナハウジング4が収容部21の開口から飛び出すことが防止される。
【0031】
さらに、上記構成の待ち受けコネクタ1は、モータの駆動などによって生じるケース9の振動を第1バネ34及び第2バネ35が吸収することにより、前記振動をインナハウジング4に伝わりにくくする。
【0032】
さらに、上記構成の待ち受けコネクタ1は、第2電気接続部53が編組電線で構成された接続部52を介して電気接続部51に電気接続されているので、相手側コネクタ71との嵌合によってインナハウジング4及び電気接続部51が移動したとしても、第2電気接続部53が移動することがなく、そのために、第2電気接続部53と接続されるモータの電気回路の接続箇所に応力が生じることを防止できる。
【0033】
このように、本発明では、第1バネ34と、第2バネ35と、ストッパ36と、を一体に有したバネ部材3を有しているので、部品点数が少なく簡素な構成の待ち受けコネクタ1を提供することができる。また、ストッパ36は、筒部30の内側にインナハウジング4が挿入された後にこのインナハウジング4の前端面43に当接するように折り曲げられて形成されるものであるので、「インナハウジングをアウタハウジング内に収容した後にアウタハウジングに組み付ける構造のストッパ」を用いる場合と比較して、アウタハウジング2及びストッパ36を簡素な形状とすることができる。
【0034】
また、上述した実施形態では、待ち受けコネクタ1がモータのケース9に固定されている例を説明したが、本発明の待ち受けコネクタは、如何なるケースに固定されていても良い。
【0035】
また、上述した実施形態では、接続部52と、電気接続部51及び第2電気接続部53が、超音波接合により互いに電気接続されているが、本発明では、接続部52と、電気接続部51及び第2電気接続部53が、金具等でかしめられて互いに電気接続されていても良い。さらに、本発明の前記接続部は、編組電線に限らず、柔軟性を有する導電部材で構成されたものであれば、如何なるものであっても良い。
【0036】
さらに、本発明では、前記「第1バネ」が少なくとも2つ設けられていれば良く、4つ以上設けられていても良い。また、前記「第2バネ」及び前記「ストッパ」が少なくとも1つ設けられていれば良く、2つ以上設けられていても良い。
【0037】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 待ち受けコネクタ
2 アウタハウジング
3 バネ部材
4 インナハウジング
5 端子
9 ケース
20 第2収容部
20a 貫通孔
21 収容部
21a 内底面
21b 内側面
30 筒部
34 第1バネ
35 第2バネ
36 ストッパ
42 後端面
43 前端面
45 外側面
51 電気接続部
52 接続部
53 第2電気接続部
71 相手側コネクタ
75 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口した有底筒状の収容部を有し、ケースに固定されたアウタハウジングと、相手側コネクタの端子と嵌合する電気接続部を有する端子と、前記収容部内に当該収容部との間に間隔をあけた状態で収容され、かつ、前記電気接続部を収容して前記収容部の開口から挿入される前記相手側コネクタと嵌合するインナハウジングと、前記収容部内に取り付けられ、前記インナハウジングを前記収容部内に移動自在に取り付けるバネ部材と、を有する待ち受けコネクタにおいて、
前記バネ部材が、
前記収容部の内側面と前記インナハウジングの外側面との間に前記インナハウジングを包囲する格好で複数配置され、前記インナハウジングの外側面を前記相手側コネクタとの嵌合方向と直交する方向に付勢する複数の第1バネと、
前記収容部の内底面と前記インナハウジングの後端面との間に配置され、前記インナハウジングの後端面を前記収容部の開口側に付勢する第2バネと、
前記インナハウジングの前端面に当接して当該インナハウジングが前記収容部の開口から飛び出すことを防止するストッパと、を一体に有していることを特徴とする待ち受けコネクタ。
【請求項2】
前記バネ部材が、
金属板が曲げられて筒状に形成され、内側に前記インナハウジングを位置付ける筒部と、前記筒部の一部が切り起こされ、前記筒部の内側に曲げられて形成された前記複数の第1バネと、
前記インナハウジングの後端面側に位置する前記筒部の一端部から延設され、前記筒部の内側に曲げられて形成された前記第2バネと、
前記インナハウジングの前端面側に位置する前記筒部の他端部から延設され、前記インナハウジングが前記筒部の他端部側の開口から当該筒部の内側に挿入された後に前記インナハウジングの前端面に当接するように曲げられて形成された前記ストッパと、を一体に有していることを特徴とする請求項1に記載の待ち受けコネクタ。
【請求項3】
前記端子が、前記ケース内の電気回路に接続される第2電気接続部と、柔軟性を有する導電部材で構成され、前記電気接続部と前記第2電気接続部とを電気接続した接続部と、を有し、
前記アウタハウジングが、前記収容部の内底面から前記収容部の開口と離れた側に延設され、前記内底面に設けられた貫通孔を通された前記第2電気接続部を収容する第2収容部を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の待ち受けコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−9092(P2011−9092A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151788(P2009−151788)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】