説明

後天性免疫不全症の治療用薬剤組成物

後天性免疫不全症に起因する感染の治療に用いられる薬剤組成物を調製するための天然痘ワクチンウイルスの使用および薬剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後天性免疫不全症症候群(AIDS)の治療用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、出願人を含む多くの研究者が、たとえば、血清学的観点およびウイルス学的観点から抗ポリオワクチンの進歩を研究すること等により、ウイルス干渉の現象に関する研究を行ってきた。
【0003】
(1960年代当時に)出願人らが実施した研究により、ワクチン接種時に多数のエンテロウイルスが腸内に既存することで、ポリオワクチンを接種した患者の中には、抗体応答が欠如する者がおり、免疫防御の不具合が観察されることになる、という研究仮説が裏付けられた。
【0004】
一方、たとえばアデノウイルス等の種類の異なるウイルスが腸内に存在している場合には、この現象は発生しない。
【0005】
こうした研究は、ウイルス干渉現象の特異性と、エンテロウイルス存在下でのみそれが発生するということを明示している。
【0006】
次に、この結果は、このウイルス干渉が、エンテロウイルスの存在下で侵入してきたウイルスの細胞複製の抑制にあることを示すという別の重要な科学的確証にもなった。
【0007】
後天性免疫不全症の効果的治療に関する研究分野においては、ウイルス干渉の現象は実質的に過小評価されてきたが、本出願人は、天然痘撲滅後は歴史的に使用が控えられていた天然痘ワクチンウイルスを適切に弱毒化すれば、病気の原因となるHIVウイルスに対する免疫付与のキャリアとして、効果的に利用できることを見出した。
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、酵素の存在下で添加された場合のHIVウイルスおよび天然痘ワクチンウイルス間のウイルス干渉現象に基づく、AIDSの治療および予防に用いられる治療法である。
【0009】
特に、本発明の目的は、酵素の存在下で、好ましくはブロメライン、セラチオ・ペプチダーゼおよびエンドヌクレアーゼの存在下で、好ましくはエルストリー(Elstree)株の、弱毒化した天然痘ワクチンウイルスを含む薬剤の調製である。
【0010】
治療法および関連の薬剤調製の効率性を研究していく過程で、正負双方の特定のウイルス干渉現象をin vitroで行う手法が開発された。
【0011】
この手法は、ダルベッコ博士ら何人かの研究者が過去に既に研究していた「プラーク法」として知られる基礎手法を発展させたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下の本発明の実施例では、出発物質として、エルストリー株のワクチンウイルスが使用された。テスト法には以下の工程が含まれる:
アール(EARLE)生育培地内でトリプシン処理され、ミリメーター単位および一部マイクロメーター単位に区切られたKolleフラスコ(表面積120mm×42mm)内に分配された連続細胞系のSIRC細胞を使用し、細胞基質を調製する工程;
−以下の生育培地組成を有する培地を調製する工程:
第一工程 − 再蒸留水90%、アール溶液10×10%、ラクトアルブミン加水分解酵素0.5グラム%、酵母エキス0.05%、グルタミン0.015グラム%、NaHCO0.14グラム%、ウシ胎仔血清4%、子ウシ血清4%、ペニシリン30,000U.I.およびストレプトマイシン0.03グラム%;
第二工程 − 第二テスト培地においては、ペニシリンおよびストレプトマイシンのみをそれぞれ500,000U.I.および0.5グラム%に変更する;
−蒸留水および10%のNaHCOからなる溶液5%を添加した、1.8%の精製済み寒天および倍濃度のアール培地の混合物を有する、固形の栄養培地を調製する工程。
【0013】
本発明の手法において、細胞カーペットが完成したら、生育培地を除去し、培養物を無血清培地で洗浄し、適宜希釈した少量(0.2cc.)のウイルスを培養細胞上に重ねるようにして蒔種した。
【0014】
ウイルス懸濁液を、カーペット一面が均一に液体に覆われているように注意しながら、37℃で45分間、細胞カーペットに接触させる。
【0015】
吸収されなかった液体を除去し、細胞カーペットを12ccの固形栄養培地で覆う。
【0016】
寒天が十分固体化したら、培養物を逆さにして37℃で静置する。5〜6日後に、最長で8日後に、プラークが現れるようになる。観察時に、生死判定用着色剤の一つ、好ましくはトリパンブルーを添加する。
【0017】
壊死領域に対していかなる変化も与えず、培養物を数日間静置する。これは、観察結果から明らかなように、光の存在下で不活性化させておくことで、選択した着色剤がウイルスDNAと結合するためである。
【0018】
形態については、ワクチンウイルスにより形成されたプラークは、顕微鏡観察から、ワクチンウイルスの添加から6日後に直径2〜4mmとなっていた。
【0019】
続いて、こうして調製された培地に、適切に希釈したHIVウイルスを注入すると、より大量かつ広範囲に拡大された壊死が観察された。
【0020】
本発明によれば、制限酵素であるエンドヌクレアーゼ酵素と、他の酵素として、ブロメラインおよびストレプトペプチダーゼの2種の懸濁液とを上記培地に添加した。
【0021】
適切に希釈された天然痘ウイルスおよびHIVウイルスを上記培地に添加すると、上述と同一の条件下で、細胞変性プラークの形成は観察されず、代わりに毒性の顕著な低減が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後天性免疫不全症に起因する感染の治療に用いられる薬剤組成物を調製するための天然痘ワクチンウイルスの使用であって、前記組成物がさらにブロメライン酵素およびセラチオ・ペプチダーゼ酵素を含むことを特徴とする天然痘ワクチンウイルスの使用。
【請求項2】
前記天然痘ワクチンウイルスがエルストリー株である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記組成物が制限酵素を含む、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記制限酵素がエンドヌクレアーゼ酵素である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
天然痘ワクチンウイルス、ブロメライン酵素およびセラチオ・ペプチダーゼ酵素を含む、後天性免疫不全症の治療用薬剤組成物。
【請求項6】
制限酵素を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記制限酵素がエンドヌクレアーゼ酵素である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ワクチンウイルスが希釈製剤である、請求項5〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
さらに再蒸留水、ラクトアルブミン加水分解酵素、酵母エキス、グルタミン、NaHCO、ウシ胎仔血清、子ウシ血清、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含む、請求項5〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
ブロメライン酵素およびセラチオ・ペプチダーゼ酵素の存在下で、前記ウイルスを培養する工程を含む、天然痘ワクチンウイルスを改変する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法で改変されたワクチンウイルス。

【公表番号】特表2008−540502(P2008−540502A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510652(P2008−510652)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003642
【国際公開番号】WO2006/120503
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507372741)
【氏名又は名称原語表記】ACANFORA,Domenico
【住所又は居所原語表記】Via Pizzi,14,I−50012 Bagno A Ripoli,ITALY
【Fターム(参考)】