説明

徐放性トルセミド剤形

トルセミド又はその製薬上許容されうる塩を含む徐放性医薬製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本出願は、参照によりその開示の全体を本明細書に組み入れる2003年12月12日出願の米国仮出願第60/529,138号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
うっ血性心不全(CHF)は米国の人口の1.7%に影響し、460万人のヒトが慢性心不全を有し、毎年550,000の新規症例が存在し、そしてその約60%は70歳以上である。疫学的原因因子は冠状心疾患、高血圧、心臓弁膜症、不整脈、心筋症及び糖尿病である。これは高死亡率に関連する。米国において、CHFの発症後の平均生存期間は男性では1.7年及び女性では3.2年である。スコットランドで作成したデータは、65歳以上のCHF患者の最初の入院後の3年死亡率は約66%である。
【0003】
肺水腫及び/又は末梢浮腫を生じる体液過剰負荷は、慢性心不全に罹患した患者における入院の主因である。したがって、利尿剤はこの疾患の複数の治療上の処置において不可欠な役割を果たす。
【0004】
典型的には、ループ利尿剤が選択薬である。半減期が一般的に指示されたこれらの薬剤の例は、ブメタニド(短期作用1.5時間)、フロセミド(4.5時間)及びトルセミド(6時間)である。これらの3種の内、フロセミドはうっ血性心不全の治療において最も一般的に処方される。
【0005】
参照によりその開示の全体を本明細書に組み入れる、Michael D. Murrayら「Open-label Randomized Trial of Torsemide Compared with Furosemide Therapy for Patients with Heart Failure」(The American Journal of Medicine, Volume 111, pp. 513-520 (Nov. 2001))に記載されるように、フロセミドは不安定な経口吸収を11%〜90%の生体利用率で有し、1970年代以降の研究は、患者間のみならず患者内におけるフロセミド吸収の実質的な可変性(ナトリウム排出増加反応の可変性を伴う)を実証している。あるいは、Murrayらはトルセミドをより完全かつ非常に可変性の低い生体利用率を有する(76%〜96%)ものとして記載する。
【0006】
トルセミドはうっ血性心不全、腎疾患(例えば慢性腎不全)、肝疾患及び高血圧に関連する浮腫について承認されたループ利尿剤である。うっ血性心不全の治療は、トルセミドに関する最も重要かつ広範に使用される適応症である。うっ血性心不全に関して、推奨用量のトルセミドは、1日に1回10mg〜20mg(用量の倍化により増量される)である。
【0007】
利尿剤が有する共通の問題は急性及び慢性耐性である。急性耐性は用量反応曲線の右側への移行に関連する破壊(breaking)現象で生じ、かつ初回投与後に生じる。慢性耐性は投与の5〜10週間後に生じ、これは尿細管肥大及びナトリウム回復(rebound)現象と関連する。複数の生理学的機構がこの現象に関与するが、急性体液量減少はこの現象に対する主な刺激である。
【0008】
米国公開特許第2003/0152622 A1は胃で保持される侵食性経口利尿剤の製剤を記載し、かつ利尿剤としてフロセミドを例示している。
【0009】
上記を考慮すると、利尿剤療法の有効性を改善するニーズが当該技術分野に存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の目的
本発明の1つの目的は、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩の徐放性経口剤形を提供することである。
【0011】
本発明の特定の実施形態の更なる目的は、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩の、生体利用可能な徐放性経口剤形を調製する方法を提供することである。
【0012】
本発明の特定の実施形態の更なる目的は、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩を、それを必要とするヒト患者へ徐放性経口剤形を投与することを介した、浮腫の治療方法を提供することである。
【0013】
本発明の特定の実施形態の更なる目的は、好ましくない薬物動態プロファイル(例えば、不安定な経口吸収及び生体利用能の変動等)を有しない徐放性経口利尿剤形を提供することである。
【0014】
本発明の特定の実施形態の更なる目的は、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩を、それを必要とするヒト患者へ徐放性経口剤形を投与することを介した、うっ血性心不全(CHF)の治療方法を提供することである。
【0015】
本発明の特定の実施形態の更なる目的は、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩と組合わせた際に、浮腫及び/又はうっ血性心不全を治療するために、例えば、約12〜約24時間の間、トルセミドの治療上有効な血中レベルを与える徐放性剤形を提供するのに適した徐放性経口剤形を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の概要
上記の目的及び他の目的は、部分的には治療上有効量のトルセミド又はその製薬上許容されうる塩と徐放性賦形剤とを含みかつ環境流体に曝露される際に約12〜約24時間のトルセミド又はその製薬上許容されうる塩の放出を与える徐放性経口剤形に関する本発明によって達成される。
【0017】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、III型USP 26(2003)溶解装置で測定した際に、250ml中、15dpmで攪拌したpH変化培地中、37℃で、1時間後に0〜約50%のトルセミドを放出し;3時間後に約1〜約60%のトルセミドを放出し;7時間後に約5〜約70%のトルセミドを放出し;12時間後に約10〜約95%のトルセミドを放出し;16時間後に約25%以上のトルセミドを放出し;そして24時間後に約35%以上のトルセミドを放出する、in vitro溶解速度を与える。
【0018】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、ヒト被験者への徐放性経口剤形の単回経口投与後、約4〜約20時間、好ましくは約8〜約18時間、より好ましくは約12〜約16時間の間、少なくとも約200μg/hrのトルセミドの平均尿排泄速度を与える。
【0019】
ある好適な実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、ヒト被験者への徐放性経口剤形の単回経口投与後、約4〜約12時間、好ましくは約8〜約12時間の間、少なくとも約700μg/hrのトルセミドの平均尿排泄速度を与える。
【0020】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、ヒト被験者への徐放性経口剤形の単回経口投与後、0〜約4時間で約210μg/hr〜約848μg/hr;約4〜約8時間で約290μg/hr〜約1160μg/hr;約8〜約12時間で約161μg/hr〜約778μg/hr;約12〜約16時間で約122μg/hr〜約301μg/hr;約16〜約20時間で約133μg/hr〜約323μg/hr;そして約20〜約24時間で約64μg/hr〜約182μg/hrのトルセミドの平均尿排泄速度を与える。
【0021】
ある好適な実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、ヒト被験者への徐放性経口剤形の単回経口投与後、0〜4時間で、約48mmol/hr〜約81mmol/hr、好ましくは約60mmol/hr〜約70mmol/hr、そして12〜16時間で、約2mmol/hr〜約13mmol/hr、好ましくは約4mmol/hr〜約8mmol/hr、の平均ナトリウム(Na)排泄速度を与える。
【0022】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、ヒト被験者への単回経口投与時に、トルセミド100mg当たり約1μg/ml〜約7μg/ml、好ましくは約1.6μg/ml〜約6.2μg/ml、より好ましくは約3.9μg/ml〜約4.7μg/ml、のトルセミドの平均Cmaxを与える。
【0023】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、ヒト被験者への単回経口投与後、約1〜約8時間、好ましくは約1.7〜約5.7時間、より好ましくは約1.7〜約5.2時間でトルセミドの平均Tmaxを与える。
【0024】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、ヒト被験者への単回経口投与時に、トルセミド100mg当たり約10μg.h/ml〜約40μg.h/ml、好ましくは約13.9μg.h/ml〜約34.1μg.h/ml、より好ましくは約22.5μg.h/ml〜約34.1μg.h/mlの平均AUC(0−24)を与える。
【0025】
特定の実施形態では、本発明はさらに、本明細書に示す徐放性経口剤形をそれを必要とする患者に経口投与することによる、浮腫の患者を治療する方法に関する。
【0026】
特定の実施形態では、本発明はさらに、本明細書に記載の徐放性経口剤形をそれを必要とする患者に経口投与することによる、うっ血性心不全の患者を治療する方法に関する。
【0027】
特定の実施形態では、本発明はさらに、本明細書に記載の徐放性経口剤形をそれを必要とする患者に経口投与することによる、高血圧の患者を治療する方法に関する。
【0028】
特定の実施形態では、本発明はさらに、本明細書に示す徐放性経口剤形をそれを必要とする患者に経口投与することを含む、典型的にはループ利尿剤の投与に関連するナトリウム回復(rebound)現象を予防又は減少する方法に関する。
【0029】
ある好適な実施形態では、徐放性経口剤形は摂食状態で投与される。代替的な好適実施形態では、徐放性経口剤形は絶食状態で投与される。
【0030】
特定の実施形態では、本発明の方法は、午前に剤形をヒト患者に投与することをさらに含み、好ましくは患者が起きている間、排泄を起こす日中を通じて、トルセミドの治療上有効な血中レベルを与える。
【0031】
特定の実施形態では、徐放性賦形剤がトルセミド又はその製薬上許容されうる塩と共にマトリックス中に取り込まれ、該マトリックスは環境流体に曝露される際にトルセミド又はその製薬上許容されうる塩の持続放出を与える。
【0032】
特定の実施形態では、徐放性賦形剤は、環境流体に曝露される際にトルセミド又はその製薬上許容されうる塩の持続放出を与える、例えばトルセミド又はその製薬上許容されうる塩を含む支持体上に被覆される徐放性コーティングである。
【0033】
特定の実施形態では、徐放性経口剤形には、環境流体に曝露される際にトルセミド又はその製薬上許容されうる塩の持続放出を与える、マトリックス及びコーティングの両方が含まれる。
【0034】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩の徐放性剤形に加えて、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩の即放出性(immediate release)成分をさらに含む。ある好適な実施形態では、徐放性経口剤形は、いずれの層もトルセミド又はその製薬上許容されうる塩を含み、かつ環境流体への曝露時に、一方の層がトルセミド又はその製薬上許容されうる塩の即放出を生じさせ、他方の層がトルセミド又はその製薬上許容されうる塩の持続放出を与える、二層錠剤である。
【0035】
ある好適な実施形態では、徐放性経口剤形のトルセミド又はその製薬上許容されうる塩の総量の約10%〜約40%、好ましくは約20%〜約30%が即放出性成分に含まれる。
【0036】
ある好適な実施形態では、徐放性賦形剤は、少なくとも1種の天然又は合成ガムを含むゲル化剤を含み、該剤形は、環境流体に曝露される際にトルセミド又はその製薬上許容されうる塩の持続放出を与える。ある好適な実施形態では、ゲル化剤はヘテロ多糖類ガム、ホモ多糖類ガム又はその組合せを含む。組み合わせにおいて、ホモ多糖類ガムが、環境流体に曝露される際に前記へテロ多糖類ガムと架橋可能であることが好ましい。
【0037】
ある好適な実施形態では、徐放性賦形剤は、例えば単糖、二糖、多価アルコール又はその混合物から選択される不活性希釈剤をさらに含む。
【0038】
ある好適な実施形態では、本発明の徐放性剤形はイオン化可能なゲル強度増強剤をさらに含む。イオン化可能なゲル強度増強剤が徐放性賦形剤に含まれることが好ましい。
【0039】
本発明の好適な実施形態では、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩対ゲル化剤の比は約5:1〜約1:10、好ましくは約3:1〜約1:6又は約1:0.5〜約1:2、より好ましくは約1:1である。
【0040】
本発明の好適な実施形態では、不活性希釈剤対ゲル化剤の比は約1:8〜約8:1、好ましくは約1:3〜約3:1である。ある好適な実施形態では、本発明はさらに、本明細書に記載の、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩の徐放性剤形を調製する方法に関する。
【0041】
ある好適な実施形態では、本発明はさらに、ゲル化剤、場合によりイオン化可能なゲル強度増強剤、及び不活性医薬希釈剤を含むマトリックスを調製すること;及びその後、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩、場合により製薬上許容される界面活性剤、場合により湿潤剤、及び場合によりpH改変剤を添加することを含む、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩の徐放性剤形を提供する方法に関する。その後、錠剤が環境流体に曝露される際にゲルマトリックスが生じるように、かつ各錠剤が治療上有効量の医薬を含むように、生じた混合物が錠剤化される。特定の実施形態では、即放出性成分が錠剤製剤に含まれる。医薬(例えばトルセミド)の第1部分が賦形剤の顆粒化中に導入され、医薬(例えばトルセミド)の第2部分が顆粒外部に、又は顆粒化工程後に導入される。
【0042】
かかる実施形態が、医薬の初期迅速放出を与えることが好ましい。即放出性成分は、錠剤化する間、二層錠剤(例えば、徐放性層と即放出性層とを有する)を形成する間に含まれることが最も好ましい。得られる錠剤は、経口投与後少なくとも約12時間、好ましくは約24時間、より好ましくは約12〜約16時間の間、医薬の治療上有効な血中レベルを与える。
【0043】
特定の実施形態では、本発明は、イオン化可能なゲル強度増強剤及び/又は、親水性マトリックスを破壊することなくゲル化剤の水和を遅くするのに有効な量の疎水性物質の溶液若しくは分散液(dispersion)と共に顆粒化される徐放性賦形剤をさらに含む。
【0044】
「徐放性」は、本発明の目的において、トルセミドの治療上有益な血中レベル(少なくとも最低限の有効性レベル及び毒性レベル以下)が長期間、例えば約12時間〜約24時間にわたって維持され、製剤が1日1回の投与に適切であるように制御された速度で、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩が製剤から放出されることを意味する。
【0045】
「生物利用可能な」は、本発明の目的において、治療上活性な医薬が徐放性製剤から吸収され、体内の薬物作用の目的部位で利用可能になることを意味する。
【0046】
「環境流体(environmental fluid)」という用語は、本発明の目的において、使用環境の流体、例えば水溶液又は胃腸液を含むことを意味する。
【0047】
「pH改変剤」という用語は、本発明の目的において、医薬のイオン化を減少させ、その結果、ヒドロゲルマトリックスからの又は溶液内への薬剤の放出が促進される、任意の物質を指す。
【0048】
「Cmax」という用語は、本発明の目的において、本発明による剤形の単回投与後に達成される医薬の最大血漿濃度を意味する。
【0049】
「Tmax」という用語は、本発明の目的において、剤形の投与から医薬のCmaxが達成されるまでの経過時間を意味する。
【0050】
「ヒト被験者」という用語は、本発明の目的において、健常なボランティア(例えば、実施される試験で投与される薬物に関連する任意の疾患に罹患していることが知られておらず、かつ試験を理解しかつ試験に対して適切に承諾する個体)であることを意味する。
【0051】
「ヒト患者」という用語は、本発明の目的において、投与される医薬に関連する疾患に罹患した個体であることを意味する。
【0052】
「pH変化培地(pH change media)」という用語は、本発明の目的において、本明細書に記載されるUSP III型溶解装置に従って使用する際に、溶解試験の最初に1.5のpHを有し、1時間後に1.5〜4.5に、そして3時間後に4.5〜7.5に変化する溶解培地であることを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
詳細な説明
本発明の徐放性経口剤形が、浮腫、好ましくはうっ血性心不全、肝疾患及び/又は腎疾患等の症状に関連する浮腫の治療に適切な、トルセミドの治療レベルを与えることが好ましい。
【0054】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、少なくとも約12時間、及び約24時間の期間にわたって、トルセミドの治療上有効なレベルを与える。本発明の徐放性経口剤形が、ヒト患者への単回経口投与後、約8〜約24時間、約8〜約20時間、好ましくは約10〜約18時間、より好ましくは約12〜約16時間、最も好ましくは約14〜16時間の期間にわたって、トルセミドの治療上有効なレベルを与えることが好ましい。
【0055】
ある特定の好適な実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、腎臓のネフロン内で有効な濃度を維持するために日中を通じて長期にわたって維持されるトルセミドの有効な血漿レベルを生じ、これはこの期間にわたって(例えば日中に食物を摂取する時間の間)体液及びナトリウム喪失を促進する。これにより、食物が摂取されない睡眠中の期間にわたってネフロンがナトリウムを吸収する機会を短縮し、その結果、ナトリウム回復現象が小さくなることが好ましい。
【0056】
本発明の徐放性経口剤形が、絶食条件下でヒト被験者への単回経口投与時に、トルセミド100mg当たり約1μg/ml〜約5μg/ml、好ましくは約1.6μg/ml〜約4.0μg/mlのトルセミドの平均Cmaxを与えることが好ましい。
【0057】
ある別の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、摂食条件下でヒト被験者への単回経口投与時に、トルセミド100mg当たり約3μg/ml〜約7μg/ml、好ましくは4.8μg/ml〜約5.7μg/mlのトルセミドの平均Cmaxを与える。
【0058】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、絶食条件下でヒト被験者への単回経口投与後約1〜約8時間、好ましくは約1.7〜約5.2時間で、トルセミドの平均Tmaxを与える。
【0059】
ある別の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、摂食条件下でヒト被験者への単回経口投与後3〜約8時間、好ましくは約4.8〜約5.7時間で、トルセミドの平均Tmaxを与える。
【0060】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、絶食条件下でヒト被験者への単回経口投与時に、トルセミド100mg当たり約10μg.h/ml〜約30μg.h/ml、好ましくは約13.9μg.h/ml〜約22.6μg.h/mlのトルセミドの平均AUC(0-24)を与える。
【0061】
ある別の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、摂食条件下でヒト被験者への単回経口投与時に、トルセミド100mg当たり約25μg.h/ml〜約40μg.h/ml、好ましくは約31.6μg.h/ml〜約34.1μg.h/mlのトルセミドの平均AUC(0-24)を与える。
【0062】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、摂食状態のヒト被験者への徐放性経口剤形の単回経口投与後、0〜約4時間で約210μg/hr〜約730μg/hr、約4〜約8時間で約857μg/hr〜約1160μg/hr、約8〜約12時間で424μg/hr〜約777μg/hr、約12〜約16時間で約122μg/hr〜約301μg/hr、約16〜約20時間で約133μg/hr〜約323μg/hr、そして約20〜約24時間で約64μg/hr〜約176μg/hr、のトルセミドの平均尿排泄速度を与える。
【0063】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、絶食状態のヒト被験者への徐放性経口剤形の単回経口投与後、0〜約4時間で約263μg/hr〜約848μg/hr、約4〜約8時間で290μg/hr〜約686μg/hr、約8〜約12時間で約161μg/hr〜約290μg/hr、約12〜約16時間で約155μg/hr〜約206μg/hr、約16〜約20時間で約206μg/hr〜約321μg/hr、そして約20〜約24時間で約117μg/hr〜約182μg/hr、のトルセミドの平均尿排泄速度を与える。
【0064】
特定の実施形態では、本発明の徐放性剤形は、III型USP 26(2003)溶解装置で測定した際に、250ml中、15dpmで攪拌したpH変化培地中、37℃で、1時間後に約5〜約44%のトルセミドを放出し;3時間後に約6〜約46%のトルセミドを放出し;7時間後に約11〜約54%のトルセミドを放出し;12時間後に約21〜約91%のトルセミドを放出し;16時間後に約35%以上のトルセミドを放出し;そして24時間後に約42%以上のトルセミドを放出する、in vitro溶解速度を与える。
【0065】
特定の実施形態では、本発明の徐放性剤形は、III型USP 26(2003)溶解装置で測定した際に、250ml中、15dpmで攪拌したpH変化培地中、37℃で、1時間後に約5〜約44%のトルセミドを放出し;3時間後に約6〜約46%のトルセミドを放出し;7時間後に約11〜約54%のトルセミドを放出し;12時間後に約41〜約91%のトルセミドを放出し;16時間後に約64%以上のトルセミドを放出し;そして24時間後に約90%以上のトルセミドを放出する、in vitro溶解速度を与える。
【0066】
特定の実施形態では、本発明の徐放性剤形は、III型USP 26(2003)溶解装置で測定した際に、250ml中、15dpmで攪拌したpH変化培地中、37℃で、1時間後に約5〜約32%のトルセミドを放出し;3時間後に約12〜約34%のトルセミドを放出し;7時間後に約37〜約54%のトルセミドを放出し;12時間後に約78〜約84%のトルセミドを放出し;16時間後に約64%以上のトルセミドを放出し;そして24時間後に約90%以上のトルセミドを放出する、in vitro溶解速度を与える。
【0067】
本発明の徐放性経口剤形が、絶食条件下でヒト被験者への単回経口投与時に、トルセミド100mg当たり1.662±1.00μg/ml、3.948±0.8μg/ml、又は3.364±3.42μg/mlのトルセミドの平均Cmaxを与えることが好ましい。
【0068】
ある別の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、摂食条件下でヒト被験者への単回経口投与時に、4.800±1.93μg/ml、4.698±2.11μg/ml、又は6.11±4.52μg/mlのトルセミドの平均Cmaxを与える。
【0069】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、絶食条件下でヒト被験者への単回経口投与後、5.13±5.51時間、1.72±1.81時間、又は4.57±1.4時間で、トルセミドの平均Tmaxを与える。
【0070】
ある別の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、摂食条件下でヒト被験者への単回経口投与後、5.67±3.44時間、5.19±2.69時間又は4.83±1.83時間で、トルセミドの平均Tmaxを与える。
【0071】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、絶食条件下でヒト被験者への単回経口投与時に、トルセミド100mg当たり約13.976±3.24μg.h/ml、22.563±7.52μg.h/ml、又は21.506±12.17μg.h/mlのトルセミドの平均AUC(0-24)を与える。
【0072】
特定の実施形態では、本発明の徐放性経口剤形は、摂食条件下でヒト被験者への単回経口投与時に、トルセミド100mg当たり約31.651±15.15μg.h/ml、34.075±14.76μg.h/ml又は33.471±24.95μg.h/mlのトルセミドの平均AUC(0-24)を与える。
【0073】
特定の実施形態では、本発明はさらに、ヒト被験者に投与される際に経口剤形が約50%以上、好ましくは約25%以上、より好ましくは約15%以上変化しない平均AUC(0-24)を与えるように、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩と徐放性賦形剤とを含む徐放性経口剤形をヒト患者に投与することを含む、ヒト患者の浮腫を治療する方法に関する。
【0074】
特定の実施形態では、本発明はさらに、ヒト患者に投与される際に経口剤形が0〜約60%、約10〜約60%の可変性、好ましくは約40%未満、より好ましくは約20%未満の可変性を有する平均Cmaxを与えるように、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩と徐放性賦形剤とを含む徐放性経口剤形を患者に投与することを含む、ヒト患者の浮腫を治療する方法に関する。
【0075】
本発明の徐放性経口剤形は、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩の持続放出を与える徐放性物質を含む徐放性賦形剤を含有する。本発明の徐放性賦形剤に含まれ得る適切な徐放性物質の非限定的なリストには、親水性及び/又は疎水性物質、例えばガム、セルロースエーテル、アクリル樹脂、タンパク質誘導物質、ワックス、シェラック、徐放性ポリマー等、及びオイル、例えば水素化ひまし油及び水素化植物油等が含まれる。特定の徐放性ポリマーには、アルキルセルロース、例えばエチルセルロース、アクリル酸及びメタクリル酸ポリマー及びコポリマー(例えば、Rohm PharmaによるEudragit(登録商標))及びセルロースエーテル、特にヒドロキシアルキルセルロース(特にヒドロキシプロピルメチルセルロース))並びにカルボキシアルキルセルロース等が含まれる。アクリル酸及びメタクリル酸のポリマー及びコポリマーの例には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸エトキシエチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸トリメチルアンモニオエチル、メタクリル酸シアノエチル、メタクリル酸アミノアルキル共重合体、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミン共重合体、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸)(無水物)、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸無水物)及びメタクリル酸グリシジル共重合体が含まれる。ワックスには例えば天然又は合成ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、及びこれらの混合物が含まれる(例えば蜜ろう、カルナバワックス、ステアリン酸及びステアリルアルコール)。ガムの例には、例えば非限定的に、ヘテロ多糖類(キサンタンガム等)、ホモ多糖類(ローカストビーンガム、ガラクタン、マンナン等)、植物ガム(アルギネート、カラヤガム、ペクチン、寒天、トラガカント、アラビアガム、カラギナン、トラガカント、キトサン、寒天、アルギン酸等)、他の多糖類ガム(例えば親水コロイド)、上記の任意の混合物等が含まれる。特定の実施形態は、徐放性賦形剤中で上記徐放性物質の任意の混合物を利用する。しかし、活性剤の持続放出を与えることが可能な、任意の製薬上許容される疎水性の又は親水性の徐放性物質が本発明に従って使用され得る。
【0076】
本発明の徐放性経口剤形は、剤形が環境流体に曝露される際にトルセミド又はその製薬上許容されうる塩の放出を約12〜約24時間にわたって与えるように改変することができる当業者に公知の手順を利用して、適切な錠剤又は多粒子製剤(multiparticulate formulation)として製造することができる。いずれの場合も、徐放性剤形は、薬剤(例えばトルセミド)と共にマトリックスに取り込まれるか又は制御放出コーティングとして適用される徐放性賦形剤を含む。
【0077】
本発明の経口剤形は、例えば、顆粒、スフェロイド、ビーズ、ペレット(以下、まとめて多粒子と称する)及び/又は粒子として提供し得る。長期にわたって所望の用量のトルセミドを与えるのに有効な多粒子の量をカプセル中に収容してもよいし、又は他の適切な任意の経口固形剤に取り込んでもよい。本発明のある好適な実施形態では、制御放出剤形は、活性成分を含む直径約0.1mm〜約2.5mmの上記粒子を含む。
【0078】
適切な多粒子製剤の例は、粒子が薬剤でコートされた不活性ビーズを含むものである。その後、徐放性賦形剤を含むコーティングがビーズ上に適用される。あるいは、スフェロイドを形成するために、球状化剤(spheronizing agent)は薬剤と共に球状化処理することができる。かかる実施形態では、薬剤及び球状化剤に加えて、スフェロイドも結合剤を含み得る。これに加えて(又は代替的に)、スフェロイドは、水不溶性ポリマー、特にアクリル重合体、アクリル共重合体(メタクリル酸−アクリル酸エチル共重合体等)又はエチルセルロースを含んでもよい。
【0079】
特定の実施形態では、粒子は薬剤を含む通常の放出マトリックスを含む。次いで、これらの粒子が徐放性賦形剤(例えば徐放性コーティング)でコートされる。
【0080】
特定の実施形態では、コーティングは、例えば胃腸液に曝露される際に、pH依存的な又はpH非依存的な放出のいずれかを可能にするために提供される。pH依存的なコーティングが本発明に従って使用されてもよく、このとき、シェラック、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ポリ酢酸フタル酸ビニル(PVAP)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメタクリル酸エステル共重合体等が含まれる。
【0081】
ある好適な実施形態では、薬剤を含む錠剤コア又は多粒子は、(i)アルキルセルロース、(ii)アクリル重合体、又は(iii)その混合物から選択された疎水性物質でコートされる。コーティングは有機溶液若しくは水溶液又は分散液の形態で適用され得る。コーティングは、所望の徐放性プロファイルを取得するために、支持体が約2〜約25%増量するように適用され得る。
【0082】
本発明の徐放性コーティングは、少なくとも1つの通路、穴(orifice)等を含む出口手段(exit mean)を含み得る。特定の実施形態では、通路がコーティングに含まれ、浸透物質が製剤のコアにさらに含まれ得る。特定の実施形態では、本発明の経口剤形は通路を含み、好ましくは、剤形は、二層コアの一方の層としてトルセミド又はその製薬上許容されうる塩を剤形から押し出すための押出又は浸出組成物と、徐放性賦形剤を含みかつコアを取り巻く半透性壁とを有する浸透性剤形であり、その際、この壁はトルセミド又はその製薬上許容されうる塩を製剤から送達するための少なくとも1つの出口手段又は通路を有する。特定の実施形態では、浸透性剤形のコアは、場合によりトルセミド又はその製薬上許容されうる塩、及び場合により徐放性物質を含む、単層コアを含み得る。かかる浸透の実施形態では、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩は、通路を通ってのみ放出され得るか、又は通路とコーティングを介して(例えば、コーティングの浸食及び/又はコーティング中の孔形成を介して)放出され得る。
【0083】
本発明の別の実施形態では、製剤の所望の制御放出はマトリックスを介して達成される。特定の実施形態では、マトリックスは徐放性マトリックス、徐放性コーティングを有する通常の放出マトリックス、又は徐放性マトリックスと徐放性コーティングの組合せであり得る。本発明はまた、pH依存的な又はpH非依存的な様式で薬剤のin vitro溶解速度を与える徐放性マトリックスも利用し得る。薬剤に加えてマトリックスに含まれ得る徐放性物質には上述される物質が含まれる。活性剤の制御放出を与えることが可能な任意の製薬上許容される疎水性物質又は親水性物質が、本発明のマトリックスに従って使用され得る。
【0084】
上記成分に加えて、制御放出マトリックスは適量の他の物質、例えば、製薬の分野で慣用的な、希釈剤、滑沢剤、結合剤、顆粒化助剤、着色剤、香味料及び流動促進剤も含み得る。これらの追加の物質の量は、所望の製剤に所望の効果を付与するのに十分な量であろう。経口剤形を製剤化するのに使用し得る製薬上許容される担体及び賦形剤の具体的な例は、参照により本明細書に組み入れるHandbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Association (1986)に記載される。
【0085】
ある好適な実施形態では、本発明の徐放性賦形剤には、ヘテロ多糖類(例えばキサンタンガム)、ホモ多糖類(例えばローカストビーンガム)、又は1以上のヘテロ多糖類及び1以上のホモ多糖類の混合物のゲル化剤を含む。本発明者らの米国特許第4,994,276号、5,128,143号及び5,135,757号に既に開示されるヘテロ分散賦形剤を、本発明の徐放性賦形剤中で使用し得る。例えば、徐放性賦形剤は、相乗効果を示すヘテロ多糖類とホモ多糖類のゲル化剤(例えば、いずれかのガム単独により予測されるよりも高い粘性と速い水和を与える2以上のポリ多糖類ガムの組合せであり、得られるゲルはより速く形成され、かつより堅いものである)を含む。
【0086】
本明細書で使用される「ヘテロ多糖類(heteropolysaccharide)」という用語は、2種類以上の糖ユニットを含む水溶性多糖類として定義され、ヘテロ多糖類は分岐構造又はらせん構造を有し、かつ優れた水吸上性(water-wicking property)と非常に大きな増粘性を有する。
【0087】
特に好適なヘテロ多糖類はキサンタンガムであり、これは高い分子量(>106)のヘテロ多糖類である。他の好適なヘテロ多糖類にはキサンタンガムの誘導体(脱アシル化キサンタンガム等)、カルボキシメチルエーテル及びプロピレングリコールエステルが含まれる。
【0088】
ヘテロ多糖類と架橋することが可能な、本発明で使用されるホモ多糖類ガムにはガラクトマンナン(すなわち、専らマンノースとガラクトースから構成される多糖類)が含まれる。非置換のマンノース領域の割合がより高いガラクトマンナンが、ヘテロ多糖類とより相互作用することが見出されている。ガラクトースに対してマンノースの比率が高いローカストビーンガムは、他のガラクトマンナン(グアー及びヒドロキシプロピルグアー等)と比較して特に好ましい。
【0089】
キサンタンガムのローカストビーンガムとの組合わせは、本発明の徐放性賦形剤に使用するための、特に好ましいガムの組合せである。
【0090】
ある好適な実施形態では、ヘテロ多糖類ガム対ホモ多糖類ガムの比は、約1:3〜約3:1である。本発明の徐放性製剤の制御放出性が、好ましくは、ヘテロ多糖類ガム対ホモ多糖類物質の比が約1:1又は約1:1.5である際に最適化され得るが、ヘテロ分散多糖類物質の約10〜約90重量%又はそれ以上の量のヘテロ多糖類ガムが、許容される持続放出産物を与える。水溶液に曝露される際に相乗効果を生じることが知られる任意のホモ多糖類ガムの組合せが本発明に従って使用され得る。本発明のガムの組合せに関して存在する相乗作用のタイプが2つの同種の又は2つの異種の多糖類間で生じ得ることも可能である。
【0091】
本発明に使用し得る他の許容されるゲル化剤には当該技術分野で周知のゲル化剤が含まれる。その例には、アルギネート、カラヤガム、ペクチン、寒天、トラガカント、アラビアガム、カラギーナン、トラガカント、キトサン、寒天、アルギン酸、他の多糖類ガム(例えば親水コロイド)等の植物ガム及び上記の任意の混合物が含まれる。本発明に有用であり得る具体的なガムの更なる例には、これに限定されるものではないが、アセンヤクノキ、サライグッガル、インディアンボデルム(indian bodellum)、コパイバガム、阿魏、形成層ガム、グアナカステ、マスチックガム、ベンゾインガム、サンダラック、ガンビールガム、ハナモツヤクノキ(Flame of Forest Gum)、ミルラ、コンニャクマンナン、グアーガム、ウェランガム、ジェランガム、タラガム、ローカストビーンガム、カラギーナンガム、グルコマンナン、ガラクタンガム、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、キトサン、キサンタンガム、脱アセチル化キサンタンガム、ペクチン、ポリペクチン酸ナトリウム、グルテン、カラヤガム、タマリンドガム、ガティガム、Accaroid/Yacca/Redガム、ダンマルガム、ジュニパーガム、エステルガム、イピルイピルシードガム、タルハガム(アカシア・セヤル)、及び、アカシア(acacia)属、アクチニディア(actinidia)属、アプテニア(aptenia)属、カーボブロタス(carbobrotus)属、チッコリウム(chickorium)属、ククミス(cucumis)属、グリシン(glycine)属、ハイビスカス(hibiscus)属、ホルデウム(hordeum)属、レツカ(letuca)属、リコペルシコン(lycopersicon)属、マルス(malus)属、メディカゴ(medicago)属、メセンブリアンテマム(mesembryanthemum)属、オリザ(oryza)属、パニカム(panicum)属、ファラリス(phalaris)属、フェレウム(phleum)属、ポリアザス(poliathus)属、ポリカーボフィル(polycarbophil)属、シダ(sida)属、ソラヌム(solanum)属、トリフォリウム(trifolium)属、トリゴネラ(trigonella)属の植物を含む培養した植物細胞ガム、アフゼリア・アフリカーナ(Afzelia africana)シードガム、トレキュリア・アフリカーナ(Treculia africana)ガム、デタリウムガム、カシアガム、イナゴマメガム、プロソピス・アフリカーナ(Prosopis africana)ガム、コロカッシア・エスレンタ(Colocassia esulenta)ガム、ハケア・ギボッサ(Hakea gibbosa)ガム、カヤガム、スクレログルカン、トウモロコシ(zea)、加工デンプン、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース、メチルセルロース並びに他のセルロース物質(カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒドロキシプロピルセルロース等)、上記の任意の混合物等が含まれる。このリストは排他的であることを意味しない。
【0092】
本発明の徐放性賦形剤は不活性希釈剤をさらに含むことが好ましい。徐放性賦形剤の不活性希釈剤は、製薬上許容される糖(単糖、二糖若しくは多価アルコール、及び/又は上記の任意の混合物を含む)を含むことが好ましい。適当な不活性医薬充填剤の例には、スクロース、デキストロース、ラクトース、微結晶性セルロース、フルクトース、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、デンプン、他のポリオール、その混合物等が含まれる。しかし、ラクトース、デキストロース、マンニトール、スクロース又はその混合物等の可溶性医薬充填剤が使用されることが好ましい。不活性希釈剤又は充填剤は、代替的に下記に示される予め製造された直接圧縮希釈剤を含み得る。
【0093】
特定の実施形態では、徐放性賦形剤の成分は予め製造することができる。他の実施形態では、活性薬剤を徐放性賦形剤の成分に添加することができ、その混合物を湿式顆粒化処理又は噴霧顆粒化処理して顆粒を形成させることができる。
【0094】
特定の実施形態では、湿式顆粒化処理工程を利用することなく徐放性賦形剤の成分をドライミックスすることが可能である。この手順は、例えば、活性成分が徐放性賦形剤の成分に直接添加される際に湿式顆粒化処理が達成されるべき場合に利用し得る。一方、この手順は、何であれ湿式顆粒化処理工程を意図していない場合にも使用し得る。混合物が湿式顆粒化処理工程なく製造され、かつ最終混合物が錠剤化されるべき場合には、全ての又は一部の不活性希釈剤が予め製造された直接圧縮希釈剤を含むことが好ましい。かかる直接圧縮希釈剤は製薬の分野で広く使用され、広範な商業的供給源から取得し得る。かかる予め製造された直接圧縮賦形剤の例にはEmcocel(登録商標)(微結晶性セルロース、N.F.)及びEmdex(登録商標)(デキストレート、N.F.)(これらはJRS Pharma LP Patterson, New Yorkから商業的に入手できる)並びにTab-Fine(登録商標)(スクロース、フルクトース及びデキストロースを含むいくつかの直接圧縮糖)が含まれる。他の直接圧縮希釈剤には、Sheffield Chemical(Union, N.J. 07083)からの無水ラクトース(Lactose N.F., 無水直接錠剤化);Degussa(D-600 Frankfurt (Main) Germany)からのElcems(登録商標)G-250(粉末セルロース), N.F.);Foremost Whey Products(Banaboo, WI 53913)からのFast-Flo Lactose(登録商標)(ラクトース, N.F.,噴霧乾燥体);Grain Processing Corp.(Muscatine, IA 52761)からのMaltrin(登録商標)(凝集化マルトデキストリン);Roquet Corp.(645 5th Ave., New York, N.Y. 10022)からのNeosorb 60(登録商標)(ソルビトール, N.F., 直接圧縮);Ingredient Technology, Inc.(Pennsauken, N.J. 08110)からのNu-Tab(登録商標)(圧縮糖, N.F.); ISP(Wayne, NJ, 07470)からのPolyplasdone XL(登録商標)(クロスポビドン, N.F.,架橋化ポリビニルピロリドン);Generichem Corp.(Little Falls, N.J. 07424)からのPrimojel(登録商標)(デンプングリコール酸ナトリウム, N.F., カルボキシルメチルデンプン); Solka Floc(登録商標)(セルロース塊);Foremost Whey Products(Baraboo, WI 53913)及びDMV Corp.(Vehgel, Holland)からのSpray-dried lactose(登録商標)(ラクトース N.F.,噴霧乾燥体);並びにColorcon, Inc.(West Point, PA 19486)からのSta-Rx 1500(登録商標)(Starch 1500)(前ゼラチン化デンプン, N.F.,圧縮性)が含まれる。
【0095】
一般的に、製剤は、例えばラクトースを湿式顆粒化処理、噴霧乾燥によって直接的に圧縮可能な希釈剤として、又は技術的に公知の方法によって予め混合された直接圧縮希釈剤として調製し得る。本発明のために、これらの具体的に処理された不活性希釈剤は「直接的に圧縮可能な」不活性希釈剤と称されよう。
【0096】
本発明の別の実施形態では、本発明の徐放性医薬賦形剤と併せて使用される直接的に圧縮可能な不活性希釈剤は、参照によりその全体を本明細書に組み入れる米国特許第5,585,115(1996年12月17日発行)に開示される、強化型(augmented)微結晶性セルロースである。そこに記載される強化型微結晶性セルロースは「Prosolv」という商品名でJRS Pharma, Incから商業的に入手できる。
【0097】
特定の実施形態では、医薬の生物利用能を増加するために、有効量の製薬上許容される界面活性剤も賦形剤の上記成分に添加することができ、又は医薬が添加される時点で添加することができる。適当な界面活性剤の例は、固体剤形の約1%〜約15重量%の量のドキュセートナトリウム(docusate sodium)である。特に好適な界面活性剤は、固体製剤の約1%〜約15重量%の量のラウリル硫酸ナトリウムである。
【0098】
一実施形態では、界面活性剤は水等の適当な溶液に溶解され、そしてその後、徐放性賦形剤と医薬とのブレンドされた混合物に添加される。これにより、溶媒が蒸発するとき、沈降する医薬粒子は小さくなりかつ凝集しないように、界面活性剤が賦形剤の粒子を湿潤させることができる。医薬及び界面活性剤の顆粒が取得され、これは賦形剤中に細かくかつ均一に分散していることが好ましい。
【0099】
本発明で使用し得る界面活性剤には、一般的には製薬上許容されうる陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性(両親媒性/両染性)界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が含まれる。適当な製薬上許容されうる陰イオン界面活性剤には、例えば、一価アルキルカルボキシレート、アシルラクチレート、アルキルエーテルカルボキシレート、N-アシルサルコシネート、多価アルキルカーボネート、N-アシルグルタメート、脂肪酸-ポリペプチド縮合体、硫酸エステル、アルキルスルフェート(ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を含む)、エトキシ化アルキルスルフェート、エステル結合したスルホネート(ドキュセートナトリウム又はコハク酸ジオクチルナトリウム(DSS)を含む)、αオレフィンスルホネート、及びリン酸化エトキシ化アルコールが含まれる。
【0100】
適当な製薬上許容されうる陽イオン界面活性剤には、例えば、モノアルキル4級アンモニウム塩、ジアルキル4級アンモニウム化合物、アミドアミン及びアミンイミドが含まれる。
【0101】
適当な製薬上許容されうる両性(両親媒性/両染性)界面活性剤には、例えば、N-置換アルキルアミド、N-アルキルベタイン、スルホベタイン及びN-アルキルδ-アミノプロプリオネートが含まれる。
【0102】
本発明と併せて使用するための他の適当な界面活性剤には、エステル又はエーテルとしてのポリエチレングリコールが含まれる。例には、ポリエトシキ化ひまし油、ポリエトキシ化水素化ひまし油、ひまし油由来のポリエトキシ化脂肪酸又は水素化ひまし油由来のポリエトキシ化脂肪酸が含まれる。使用することができる市販の界面活性剤は、商品名Cremophor(登録商標)、Myrj(登録商標)、Polyoxyl 40(登録商標)ステアレート、Emerest 2675(登録商標)、Lipal 395(登録商標)及びPEG 3350(登録商標)で知られる。
【0103】
本発明の特定の実施形態では、pH改変剤が剤形に含まれ得る。pH改変剤が剤形に含まれる際、これが最終剤形の約0.5%〜約10重量%で存在し、かつpH改変剤がマトリックスからの薬剤の放出を促進することが好ましい。特定の実施形態では、pH改変剤が製剤によるトルセミド又はその製薬上許容されうる塩の放出を促進して、高い生物利用能を与えることが好ましい。特定の実施形態では、pH改変剤は酸、好ましくはクエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、グルタル酸、乳酸等の有機酸である。特定の実施形態では、pHは塩基性である。適当な無機塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウム及びカリウム並びに他の適切な元素の炭酸塩及び重炭酸塩等が含まれる。適当な有機塩基には、プロパノールアミン、エタノールアミン、メチルアミン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等が含まれる。
【0104】
特定の実施形態では、イオン化可能なゲル強度増強剤が剤形に含まれる。場合により本発明と併せて使用されるイオン化可能なゲル強度増強剤は、一価又は多価金属陽イオンであり得る。好適な塩は無機塩であり、これには様々なアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の硫酸塩、塩化物、ホウ酸塩、臭化物、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩等が含まれる。適当なイオン化可能なゲル強度増強剤の具体例には、有機酸、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、塩化リチウム、燐酸三カリウム、ホウ酸ナトリウム、臭化カリウム、フッ化カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸カルシウム、硫酸マグネシウム及びクエン酸ナトリウムが含まれる。多価金属陽イオンも利用し得る。しかし、好適なイオン化可能なゲル強度増強剤は二価である。特に好適な塩は硫酸カルシウム及び塩化ナトリウムである。本発明のイオン化可能なゲル強度増強剤は、ゲル化剤(例えばヘテロ多糖類及びホモ多糖類ガム)の架橋に起因して所望の増加したゲル強度を得るのに十分な量で添加される。代替的な実施形態では、イオン化可能なゲル強度増強剤が、徐放性賦形剤の約1〜約20重量%の量で、かつ最終剤形の0.5%〜約16重量%の量で、本発明の徐放性賦形剤に含まれる。
【0105】
特定の実施形態では、湿潤剤が剤形に含まれる。湿潤剤がトルセミド又はその製薬上許容されうる塩の生物利用能の改善を与えることが好ましい。本発明と併せて使用するのに適切な湿潤剤には、例えばエステル又はエーテルとしてのポリエチレングリコールが含まれる。例にはポリエトキシル化ひまし油、ポリエトキシル化水素化ひまし油、ひまし油由来のポリエトキシル化脂肪酸、ひまし油由来のポリエトキシル化脂肪酸又は水素化ひまし油由来のポリエトキシル化脂肪酸が含まれる。使用することができる市販の湿潤剤は、商品名Cremophor、Myrj、Polyoxyl 40ステアレート、Emerest 2675、Lipal 395及びPEG 3350で知られる。特に好適な湿潤剤はポリエチレングリコール4000である。
【0106】
湿潤剤が水等の適当な溶媒に溶解され、その後、徐放性賦形剤と医薬とのブレンドされた混合物に添加されることが好ましい。これにより、溶媒が蒸発するとき、沈降する医薬粒子が小さくなりかつ凝集しないように、湿潤剤が賦形剤の粒子を湿潤させることができる。医薬及び湿潤剤の顆粒が取得され、これは賦形剤中に細かくかつ均一に分散していることが好ましい。湿潤剤が剤形中に含まれる際、湿潤剤が重量で最終産物の約1%〜約20%、好ましくは約2〜約15%の量で含まれることが好ましい。
【0107】
本発明の特定の実施形態では、本発明の徐放性賦形剤(例えばマトリックス)は、ヘテロ多糖類ガム及びホモ多糖類ガムを含むゲル化剤約10〜約99重量%、イオン化可能なゲル強度増強剤約0〜約20重量%、及び不活性医薬希釈剤約1〜約89重量%で含む徐放性賦形剤を含む。別の実施形態では、徐放性賦形剤は、約10〜約75%のゲル化剤、約2〜約15%のイオン化可能なゲル強度増強剤及び約30〜約75%の不活性希釈剤を含む。さらに別の実施形態では、徐放性賦形剤は約30〜約75%のゲル化剤、約5〜約10%のイオン化可能なゲル強度増強剤及び約15〜約65%の不活性希釈剤を含む。
【0108】
本発明の徐放性賦形剤は、製剤が環境流体に曝露される際に、親水性マトリックスを破壊することなく少なくとも1つのガムの水和を遅くする疎水性物質の取り込みによってさらに改質し得る。これは、徐放性賦形剤を、医薬の取り込み前に、疎水性物質の溶液又は分散液と共に顆粒化処理することによる、本発明の代替的な実施形態で達成される。疎水性ポリマーはアルキルセルロース(エチルセルロース等)、他の親水性セルロース物質、アクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルに由来する重合体若しくは共重合体、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの共重合体、ゼイン、ワックス、シェラック、水素化植物オイル、その組合せ、又は当業者に公知の他の任意の製薬上許容されうる疎水性物質から選択され得る。徐放性賦形剤に取り込まれる疎水性物質の量は、環境流体への曝露時に形成される親水性マトリックスを破壊することなくガムの水和を遅くするのに有効な量である。本発明のある好適な実施形態では、疎水性物質は、重量で約1〜約20%の量で徐放性賦形剤に含まれる。疎水性物質用の溶媒は水溶液若しくは有機溶媒又はその混合液であり得る。あるいは、特定の実施形態では、疎水性物質は製剤の持続放出を提供すべく、本発明の製剤にコートされ得る。ある好適な実施形態では、疎水性物質はマトリックスに含まれ、かつ製剤にコートされる。
【0109】
本発明の徐放性賦形剤が予め製造されている特定の実施形態では、その後、これをトルセミド又はその製薬上許容されうる塩と高せん断ミキサー中で混合することが可能である。
【0110】
本発明のある好適な実施形態では、剤形は、約1〜約500mg、約1〜約400mg、約2.5mg〜約200mg、好ましくは約5mg〜約150mg、より好ましくは約10〜約110mgの量で、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩の用量を含む。ある好適な実施形態では、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩は、約2.5〜約500mgの量である。特定の実施形態では、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩は、約2.5、5、10、20、30若しくは40、80、100、110、150、200mg又は500mgの量である。
【0111】
本発明の徐放性賦形剤が、異なる粒子サイズ分布の範囲にわたって均一の充填(packing)特性を有し、かつ薬剤若しくは滑沢剤パウダーの添加後の直接圧縮、又は従来の湿式顆粒化処理のいずれかを用いて最終剤形(例えば錠剤)へ加工することが可能であることが好ましい。
【0112】
特定の実施形態では、本発明に従って調製される特定の賦形剤系の性質及び特性は一部、溶解液と賦形剤との相互作用を改変する際に、異なるホモ多糖類とヘテロ多糖類との間、並びにホモ多糖類、ヘテロ多糖類及び不活性糖類の構成成分との間、の相乗作用に依存するし、また、重合体の溶解性、ガラス転移温度等に関してはホモ多糖類及びヘテロ多糖類構成物質の個々の特性に依存する。
【0113】
ゲル化剤(例えばキサンタンガムとローカストビーンガムとの混合物)と不活性希釈剤との組合せ(イオン化可能なゲル強度増強剤及び疎水性ポリマーを含むか又は含まない)は、すぐに使用できる(ready-to-use)徐放性賦形剤産物を提供し、その際、処方者は所望の活性医薬、場合により湿潤剤、任意的なpH改変剤、任意的な界面活性剤、及び賦形剤を含む任意的な滑沢剤をブレンドし、、混合物を圧縮して徐放性錠剤を作製することのみを要する。賦形剤はガムと可溶性賦形剤(圧縮可能なスクロース、ラクトース又はデキストロース等)との物理的混合物を含んでもよいが、賦形剤を作製するために、ガムを純粋な(すなわち結晶性)スクロース、ラクトース、デキストロース等と共に顆粒化処理又は凝集させることが好ましい。顆粒形態は、流動及び圧縮性について最適化することができる、即ち、顆粒形態は、活性医薬と一緒に、錠剤化したり、カプセルに製剤化したり、押出し及び球状化してペレットを形成したり、などすることができるという事実を含む、特定の利点を有する。
【0114】
本発明に従って調製される医薬賦形剤は、許容される賦形剤産物を作るために、任意の凝集技術に従って調製し得る。湿式顆粒化処理技術では、所望量のヘテロ多糖類ガム、ホモ多糖類ガム及び不活性希釈剤が一緒に混合され、その後、湿潤剤(水、プロピレングリコール、グリセロール、アルコール等)を添加して加湿塊を調製する。次いで、加湿塊が乾燥される。次いで、乾燥した塊は従来の装置で顆粒に粉砕される。したがって、賦形剤産物はすぐに使用できる。
【0115】
徐放性賦形剤が予め製造される好適な実施形態では、徐放性賦形剤が自由流動性であり、かつ直接的に圧縮可能であることが好ましい。したがって、賦形剤は治療上活性な医薬及び任意的な滑沢剤と共に所望の割合で混合され得る(乾式顆粒化処理)。あるいは、全ての又は一部の賦形剤は活性成分と共に湿式顆粒化処理に供した後に錠剤化され得る。製造されるべき最終産物が錠剤である場合は、その後、錠剤の均一なバッチを作製するのに十分な量の完全な混合物が、従来の生産規模の錠剤機中、通常の圧縮圧力(すなわち、約2000-1600 Ibs/in2)での錠剤化に供される。しかし、胃液に曝露される際に、後の水和を困難にする程度に混合物を圧縮するべきではない。
【0116】
錠剤の製造方法としての直接圧縮の制限の一つは錠剤の大きさである。活性量が高い場合、医薬処方者は適切な緻密強度(compact strength)を有する適切な大きさの錠剤を実現するために、他の賦形剤と共にこれを湿式顆粒化処理する。湿式顆粒化処理は錠剤の所望の物理的性質にある程度寄与するので、通常は湿式顆粒化処理に必要とされる充填剤/結合剤又は賦形剤の量は直接圧縮よりも少ない。
【0117】
特定の実施形態では、本発明の顆粒化賦形剤の平均粒子サイズは約50ミクロン〜約400ミクロン、好ましくは約185ミクロン〜約265ミクロンの範囲である。顆粒の粒子サイズは狭義には重要ではなく、顆粒の平均粒子サイズが重要なパラメーターであり、これは製薬上許容される錠剤を生じる直接的に圧縮可能な賦形剤の形成を可能にしなければならない。特定の実施形態では、本発明の顆粒における所望のタップ密度及びかさ密度は、通常は約0.3〜約0.8g/ml(平均密度は約0.5〜約0.7g/ml)である。本発明の顆粒から生じる錠剤が約5〜約20kgの硬度であることが好ましい。特定の実施形態では、本発明に従って調製される顆粒の平均流動は約25〜約40g/秒である。機器搭載ロータリー式錠剤機を使用して圧縮された錠剤が、概して不活性糖類成分と無関係な強度プロフィールを有することがわかっている。主に錠剤表面の走査電子顕微鏡写真は、圧縮時の錠剤の表面及び錠剤の破断面における広範な塑性変形の定量的な証拠を提供しており、表面の細孔を介した溶媒の流入と溶液の流出が生じ得る表面細孔の証拠も示す。
【0118】
別の実施形態では、剤形は、上述したコーティングに加えて、又はその代りに、フィルムコーティング(例えば親水性コーティング)でコートし得る。使用し得る適当な物質の例はヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば上述のOpadry(登録商標))である。本発明のフィルムコーティングは、滑らかかつ優美である強い連続的なフィルムの作製を可能にし、顔料及び他のコーティング添加剤を支持することが可能であり、非毒性、不活性及び不粘着性であるものとする。
【0119】
さらに、圧縮錠剤は、場合により水又は使用環境で早急に崩壊又は溶解するカラーコートでコートされてもよい。カラーコートは、コーティングパン(coating pan)中で使用されるか、あるいは従来の噴霧技術によって使用される、従来の糖又は高分子フィルムであってもよい。カラーコート用の好適な物質は、Opadryの商品名(例えば、Opadry II(登録商標)White)で市販されている。カラーコートは錠剤コアに直接適用してもよいし、上述のコーティング後に適用してもよい。一般的に、コア周囲のカラーコートは、錠剤の総重量に基づいて、約1〜約5%、好ましくは約2%〜約4%で含まれよう。
【0120】
一般的に許容される任意の医薬滑沢剤又は滑沢剤混合物(カルシウム又はマグネシウム石鹸を含む)の有効量は、医薬が添加される時点で、又は固体剤形への圧縮前の任意の事象において、上述の製剤成分に添加され得る。適当な滑沢剤の一例は、固体剤形の約0.3%〜約3重量%の量のステアリン酸マグネシウムである。特に好適な滑沢剤は、商品名Pruv(登録商標)で市販されているフマル酸ステアリルナトリウム(NF)である。他の好適な滑沢剤にはステアリン酸マグネシウム及びタルクが含まれる。
【0121】
一般的に許容される任意の医薬流動促進剤又は医薬流動促進剤混合物の有効量も、医薬が添加される時点で、又は固体製剤への圧縮前の任意の時点で、上述される製剤の成分に添加され得る。本発明で使用するための流動促進剤には、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、粉末セルロース、微結晶性セルロース、コーンスターチ、安息香酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ステアリン酸金属、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアロウェットC(stearowet C)、デンプン、デンプン1500、ラウリル硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム及びそれらの混合物が含まれる。
【0122】
特定の実施形態では、徐放性賦形剤とトルセミド又はその製薬上許容されうる塩とを混合する際に、追加の不活性希釈剤も徐放性経口剤形に採り込み得る。不活性希釈剤は徐放性賦形剤に取り込まれる同一の又は異なる不活性希釈剤であり得る。本発明の経口剤形を製剤化するために使用され得る他の製薬上許容されうる希釈剤及び賦形剤は、Handbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Association (1986)に記載されている。
【0123】
本発明の更なる実施形態では、支持プラットフォーム(support platform)が本発明に従って製造された錠剤に適用される。適当な支持プラットフォームは当業者に周知である。適当な支持プラットフォームの例は、例えば参照により本明細書に組み入れる米国特許第4,839,177号に記載される。この特許中、支持プラットフォームは部分的に錠剤をコートし、そして水性液体中で不溶性である高分子材料からなる。支持プラットフォームは、例えば治療効果のある医薬の移送中にその不透過性の特性を維持するように設計し得る。支持プラットフォームは、例えば錠剤表面の一部への圧縮コーティングを介して、錠剤表面の全て又は一部へ支持プラットフォームを含む高分子材料を噴霧コーティングすることによって、又は高分子材料の溶液中に錠剤を浸漬することによって錠剤に適用され得る。
【0124】
支持プラットフォームは、圧縮によって適用される場合には約2mm、そしてスプレーコーティング及び浸漬コーティングを介して適用される場合には約10μmの厚さを有し得る。一般的に、疎水性ポリマー又は腸溶コーティングが錠剤に適用される本発明の実施形態では、錠剤はコートされて約1〜約20%増量し、特定の実施形態では約5%〜約10%増量することが好ましい。
【0125】
本発明の疎水性コーティング及び支持プラットフォームに有用な物質には、アクリル酸の誘導体(アクリル酸、メタクリル酸のエステル及びその共重合体等)、セルロース及びその誘導体(エチルセルロース等)、ポリビニルアルコール等が含まれる。
【0126】
本発明の特定の実施形態では、錠剤コアには、疎水性コーティング若しくは腸溶性コーティング、(疎水性又は腸溶性コーティングのない)錠剤コアの外面にコートされた追加のオーバーコーティングのいずれかに含まれる、又は疎水性若しくは腸溶性コーティング物質を含むベースコーティングの表面にコートされた第2のコーティング層として、医薬の追加用量を含む。
【0127】
本発明のコーティングは、当業者に公知の製薬上許容される任意の様式で適用され得る。例えば、一実施形態では、コーティングは流動床を介して又はコーティングパン中で適用される。疎水性ポリマー又は腸溶性コーティング用の溶媒は、有機溶媒、水性溶媒、又は有機溶媒と水性溶媒の混合液であり得る。有機溶媒は、例えば、水含有又は水無含有イソプロピルアルコール、エタノール等であり得る。
【0128】
本発明のある好適な実施形態では、徐放性剤形は、有効量のトルセミド又はその製薬上許容されうる塩を含む即放出性成分を含む。かかる実施形態では、即放出性製剤中の有効量のトルセミドは本発明の多粒子又は錠剤にコートされ得る。例えば、製剤からのトルセミドの持続放出が制御放出コーティングに起因する場合に、即放出性層は制御放出コーティングの表面(top)にコートされ得る。他方、即放出性層は多粒子又は錠剤の表面にコートされ得、その際、トルセミドは制御放出マトリックス中に取り込まれる。トルセミド又はその製薬上許容されうる塩の有効な単位用量を含む複数の徐放性多粒子をカプセル中に取り込む場合、トルセミド用量の即放出性部分は、カプセル中に粉末又は顆粒として即放出性トルセミドの十分量を封入することによってカプセル中に取り込み得る。あるいは、カプセル自体がトルセミドの即放出性層でコートされてもよい。
【0129】
経口剤形が即放出性成分中にトルセミド又はその製薬上許容されうる塩を含む好適な実施形態では、経口剤形は徐放性部分と即放出性部分とを含む二層錠剤の形態である。即放出性部分が徐放性経口剤形に関して本明細書に記載される任意の成分を含み得る即放出性賦形剤との組合せでトルセミド又はその製薬上許容されうる塩を含むが、この成分が環境流体への曝露時にトルセミド又はその製薬上許容されうる塩の即時放出を可能にする量であることが好ましい。例えば特定の実施形態では、場合により二層経口剤形の即放出性部分は、本明細書に記載されるゲル化剤、微結晶性セルロース等の製薬上許容されうる希釈剤、及び上述される他の製薬上許容されうる賦形剤(例えば、滑沢剤、希釈剤、湿潤剤、pH改変剤、界面活性剤等)を、トルセミドが剤形から即放出様式で放出され得るような量で含んでもよい。
【0130】
ある特定の好適な実施形態では、本発明はさらに、ゲル化剤、イオン化可能なゲル強度増強剤及び製薬上許容されうる不活性希釈剤を含む徐放性賦形剤を含有する第1層を調製することを含む、徐放性二層剤形の調製方法に関する。その後、場合により湿潤剤及びpH改変剤を含む顆粒化処理溶液が徐放性賦形剤の第1部分に添加され、顆粒化される。次いで、顆粒が乾燥され、粉砕される。任意的な流動促進剤が混合物に添加される。その後、任意的な滑沢剤が添加される。二層製剤の第2層は、場合によりゲル化剤、場合によりイオン化可能なゲル強度増強剤、及び製薬上許容されうる不活性希釈剤を含む即放出性賦形剤と有効量のトルセミドとを合わせることによって調製される。その後、任意的な流動促進剤が添加され、混合される。次いで、任意的な滑沢剤が添加され、混合される。2つの層は二層錠剤圧縮機の別々のホッパーへ分配され、圧縮される。
【0131】
例えば、製剤が最初に胃液に曝露される際に負荷用量の治療上の活性剤が活性剤の治療上有効な血中レベルを生じるのに必要とされる場合には、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩の即放出性製剤を含むことが望ましいかもしれない。二層製剤の即放出性層であるコーティング層に含まれる負荷用量の医薬は、例えば製剤に含まれる医薬の総量の約10%〜約40%であり得る。
【0132】
当業者は、単位用量に即放出性トルセミド部分を取り込むさらに別の代替的な様式を認識するだろう。かかる代替様式も添付の特許請求の範囲に包含されるものと認められる。
【0133】
特定の実施形態では、第2の治療上有効な作用物質が本発明の徐放性経口剤形に含まれる。第2の治療剤も浮腫の治療に有用であることが好ましい。かかる第2の薬剤には、例えばこれに限定されるものではないが、血圧降下薬(ACE阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、α-アドレナリン遮断薬、β-アドレナリン遮断薬等)、他の利尿薬(例えば、ループ利尿薬、チアジド利尿薬、カリウム節約利尿薬)、ジギタリス配糖体、有機硝酸塩、これらの組合せ等が含まれる。第2作用物質は徐放性製剤中に又は即放出性製剤中に含まれてもよい。特定の実施形態では、第2薬剤は、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩と共に徐放性マトリックス中に組み込まれるか、製剤中に粉末、顆粒等として取り込まれるか、又は剤形のコーティング中の徐放性経口剤形に取り込まれる。
【実施例】
【0134】
好適な実施形態の詳細な説明
以下の実施例は本発明の様々な態様を例示的に説明する。これらはいかなる様式においても特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0135】
実施例1〜2
実施例1及び2において、本発明による徐放性賦形剤を調製した。徐放性賦形剤は、必要量のキサンタンガム、ローカストビーンガム、硫酸カルシウム及びマンニトールを高速混合機/造粒機中で乾式混合することによって調製した。チョッパー/インペラーを稼動しながら、乾式混合した混合物に水を添加し、顆粒化した。次いで、顆粒を流動床乾燥機中で、約10重量%未満(例えば、4〜7% LOD)のLOD(乾燥損失)まで乾燥した。次いで、顆粒を粉砕機を用いて粉砕した。実施例1及び2の徐放性賦形剤の成分は下の表1に記載される。
【表1】

【0136】
実施例3〜6
活性成分:ガム比の効果を調べるために、上述のように調製された実施例1の異なる割合の徐放性賦形剤を所望量のトルセミドと共に乾式混合した。適当量の錠剤化流動促進剤及び滑沢剤、二酸化ケイ素及びステアリン酸マグネシウム(NF)をそれぞれ添加し、混合物を混合した。最終混合物を錠剤へ圧縮した(各錠剤は100mgのトルセミドを含む(実施例3〜6))。錠剤を2〜8Kpの硬度で圧縮した。実施例3〜6に従って調製した錠剤は下記の表2に列挙される。
【表2】

【0137】
実施例3〜6に従って調製された錠剤を、15dpmで攪拌したpH変化培地で、III型USP26(2003)溶解装置で溶解試験した。培地の量及び温度はそれぞれ250mlと37℃であった。錠剤を0、1、3、7、12、16及び24時間の時点で試験した。溶解結果は下の表2Aに列挙される。
【表2A】

【0138】
結論: 実施例3〜実施例6に示されるように、溶解速度は製剤中に存在する徐放性賦形剤の量に反比例した。73%(実施例5)及び78.4%(実施例6)で作製した製剤間の溶解速度にわずかな差が存在した。
【0139】
実施例7〜12
湿潤剤及び/又はpH改変剤の効果を調べるために、実施例1に従って調製した徐放性賦形剤と所望量のトルセミドとを混合機又は造粒機中で乾式混合した。インペラーを稼動しながら、湿潤剤及び/又はpH改変剤を乾式混合した混合物にゆっくりと添加し、顆粒化した。次いで、顆粒を室温又は流動層乾燥機中で約4%未満のLOD(乾燥損失)まで乾燥させた。次いで、顆粒を#20メッシュのふるいを介して選別するか又はFitzmillを介して粉砕した。次いで、選別又は粉砕した顆粒を、適当量の錠剤化流動促進剤及び滑沢剤、二酸化ケイ素並びにステアリン酸マグネシウム(NF)とそれぞれ混合した。この最終混合物を錠剤へ圧縮した(各錠剤は100mgのトルセミドを含む(実施例7〜12、下記))。錠剤を6〜16Kpの硬度で圧縮した。湿潤剤及び/又はpH改変剤と共に調製した製剤は、下記の表3、4及び5中に実施例7〜12として列挙される。
【表3】

【0140】
実施例7〜8に従って調製された錠剤を、実施例3〜6の溶解試験及びパラメーターで溶解試験した。実施例7〜8についての溶解結果は下記の表3Aに列挙される。
【表3A】

【0141】
結論:表3Aに示されるように、8.9%の湿潤剤を含む製剤(実施例8)の溶解速度は、12時間の時点で、4.7%の湿潤剤を含む製剤(実施例7)の速度よりも速かった。
【表4】

【0142】
実施例9〜10に従って調製した錠剤を、実施例3〜6の溶解試験及びパラメーターで溶解試験した。実施例9〜10についての溶解結果は下記の表4Aに列挙される。
【表4A】

【0143】
結論:表4Aに示されるように、約2%のpH改変剤を含む製剤(実施例10)の溶解速度は7時間の時点で1%の湿潤剤を含む製剤(実施例9)の速度よりも遅かったが(11.3%対20.8%)、他の時点ではわずかに異なった。
【表5】

【0144】
実施例11〜12に従って調製された錠剤を、実施例3〜6の溶解試験及びパラメーターで溶解試験した。実施例11〜12についての溶解結果は下記の表5Aに列挙される。
【表5A】

【0145】
結論:表5Aに示されるように、約9%の湿潤剤と約2%のpH改変剤との組合せを含む製剤(実施例12)の溶解速度は12時間の時点で4.6%の湿潤剤と約1%のpH改変剤との組み合わせを含む製剤(実施例11)の速度よりも速かった(76.5%対54.7%)
実施例13〜16
実施例13〜16では、異なる用量のトルセミドを含む製剤を調製した。実施例1に従って調製した徐放性賦形剤を所望量のトルセミドと共に乾式混合した。湿潤剤及びpH改変剤溶液を乾式混合した混合物にゆっくりと添加し、顆粒化した。次いで、顆粒を約4%未満のLOD(乾燥損失)まで乾燥した。次いで、顆粒を#20メッシュのふるいを通過させるか又はFitzmillを介して粉砕した。次いで、選別又は粉砕した顆粒を適当量の錠剤化流動促進剤及び滑沢剤、二酸化ケイ素並びにステアリン酸マグネシウム(NF)とそれぞれ混合した。この最終混合物を錠剤へ圧縮した(各錠剤は40〜200mgのトルセミドを含む(実施例13〜実施例16))。錠剤を6〜16Kpの硬度で圧縮した。調製した異なる用量の製剤は下記の表6に列挙される。
【表6】

【0146】
実施例13〜15に従って調製された錠剤を、実施例3〜6の溶解試験及びパラメーターで溶解試験した。実施例13〜15についての溶解結果は下記の表6Aに列挙される。
【表6A】

【0147】
結論:表6Aに示されるように、異なる製剤は溶解速度の変化を与えた。
【0148】
実施例17〜19
実施例17〜19では、実施例1に従って調製した徐放性賦形剤と疎水性ポリマー(Acrylic Copolymer Eudragit RS PO及び/又はEudragit RL PO)とを、所望量のトルセミド又はその製薬上許容されうる塩と共に造粒機中で乾式混合した。湿潤剤/pH改変剤溶液を乾式混合した混合物にゆっくりと添加し、顆粒化した。次いで、顆粒を流動床乾燥機中で約4%未満のLOD(乾燥損失)まで乾燥した。次いで、顆粒をFitmillを介して粉砕した。次いで、粉砕した顆粒を適当量の錠剤化流動促進剤及び滑沢剤、二酸化ケイ素並びにステアリン酸マグネシウム(NF)とそれぞれ混合した。この最終混合物を錠剤へ圧縮した(各錠剤は100mgのトルセミドを含む)。錠剤を4〜12Kpの硬度で圧縮した。実施例17〜19に従って調製した製剤は下記の表7に列挙される。
【表7】

【0149】
実施例17〜19に従って調製した錠剤を実施例3〜6の溶解試験及びパラメーターで溶解試験した。実施例17〜19についての溶解結果は下記の表7Aに列挙される。
【表7A】

【0150】
結論:表7Aに示されるように、18%のEudragit RS PO(疎水性ポリマー)を含む製剤(実施例17)の溶解速度は、12時間の時点で同一の割合(%)のEudragit RL PO(疎水性ポリマー)を含む製剤(実施例18)よりも遅かった(51.2%対59.6%)。実施例18の製剤の溶解速度は、14.4%のEudragit RS POと3.6%のEudragit RL POとの組合せを含む実施例19の製剤の速度とわずかに異なった。
【0151】
実施例20
実施例20では、二層錠剤製剤を調製した。実施例20の製剤の成分は下記の表8に記載される。
【表8】

【0152】
実施例20の製剤は下記のように調製した:
部分A−徐放性部分
1.全ての成分を正確に計量する。
【0153】
2.ポリエチレングリコール(PEG)を120gの水に分配して顆粒化溶液を調製し、その後水酸化カリウムを添加し、透明な溶液が生じるまで攪拌する。
【0154】
3.徐放性賦形剤(部分A)とトルセミドとを高せん断造粒機に分配して、混合する。
【0155】
4.高せん断造粒機中で混合しながら、ステップ2〜3の顆粒化溶液を添加する。
【0156】
5.水の添加又は混合は適当な顆粒の形成に必要であり得るため、顆粒をチェックする。
【0157】
6.ステップ5の顆粒を流動床乾燥機中で目的のLODまで乾燥する。
【0158】
7.ステップ6の乾燥物質を粉砕する。
【0159】
8.ステップ7の粉砕物質をV-混合機に分配する。
【0160】
9.二酸化ケイ素を添加し、混合する。
【0161】
10.ステップ9のものにステアリン酸マグネシウムを添加し、混合する。
【0162】
11.制御放出部分を完成させる。
【0163】
部分B−即放出性部分
12.全ての成分を正確に計量する。
【0164】
13.徐放性賦形剤(部分B)、トルセミド(部分B)及び微結晶性セルロース(部分B)をV−混合機に分配し、混合する。
【0165】
14.二酸化ケイ素(部分B)をステップ13のものに添加し、混合する。
【0166】
15.ステアリン酸マグネシウム(部分B)をステップ14のものに添加し、混合する。
【0167】
部分A+部分B/二層錠剤
16.完成した混合物である部分Aと部分Bを二層錠剤圧縮機の別々のホッパーへ分配する。
【0168】
17.各層の重量を目的の値に調節し、圧縮する。
【0169】
実施例21
実施例21では、徐放性経口剤形を調製した。実施例21の製剤の成分は下記の表9に記載される。
【表9】

【0170】
実施例21の製剤は下記のように調製した:
1.全ての成分を正確に計量する。
【0171】
2.ポリエチレングリコール(PEG)を120gの水へ分配することによって顆粒化溶液を調製し、その後、水酸化カリウムを添加し、透明な溶液が生じるまで攪拌する。
【0172】
3.徐放性賦形剤(部分I)、Eudragit RS PO及びトルセミドを高せん断造粒機に分配して、混合する。
【0173】
4.高せん断造粒機中で混合しながら、ステップ2〜3の顆粒化溶液を添加する。
【0174】
5.追加の水又は混合は適当な顆粒の形成に必要であり得るため、顆粒をチェックする。
【0175】
6.ステップ5の顆粒を流動床乾燥機中で目的のLODまで乾燥する。
【0176】
7.ステップ6の乾燥物質を粉砕する。
【0177】
8.ステップ7の粉砕物質をV-混合機に分配し、徐放性賦形剤(部分II)を添加して混合する。
【0178】
9.二酸化ケイ素をステップ8のものに添加し、混合する。
【0179】
10.ステップ9のものにステアリン酸マグネシウムを添加し、混合する。
【0180】
11.混合物を目的の錠剤重量に圧縮する。
【0181】
実施例22
実施例22では、徐放性経口剤形を調製した。実施例22の製剤の成分は下記の表10に記載される。
【表10】

【0182】
実施例22の製剤は下記のように調製した:
1.全ての成分を正確に計量する。
【0183】
2.ポリエチレングリコール(PEG)を120gの水へ分配することによって顆粒化溶液を調製し、その後、水酸化カリウムを添加し、透明な溶液が生じるまで攪拌する。
【0184】
3.徐放性賦形剤(部分I)とトルセミドとを高せん断造粒機に分配して、混合する。
【0185】
4.高せん断造粒機中で混合しながら、ステップ2〜3の顆粒化溶液を添加する。
【0186】
5.追加の水又は混合は適当な顆粒の形成に必要であり得るため、顆粒をチェックする。
【0187】
6.ステップ5の顆粒を流動床乾燥機中で目的のLODまで乾燥する。
【0188】
7.ステップ6の乾燥物質を粉砕する。
【0189】
8.ステップ7の粉砕物質をV-混合機に分配する。
【0190】
9.二酸化ケイ素をステップ8のものに添加し、混合する。
【0191】
10.ステップ9のものにステアリン酸マグネシウムを添加し、混合する。
【0192】
11.ステップ10の混合物を目的の錠剤重量に圧縮する。
【0193】
実施例23
実施例20〜22に従って調製した錠剤を実施例3〜6の溶解試験及びパラメーターで溶解試験した。実施例20〜22についての溶解結果は下記の表11に列挙される。
【表11】

【0194】
実施例24
実施例20〜23に従って調製した徐放性経口剤形及び1つの即放出性参照製剤(Rocheが製造したDemadex(登録商標)100mg)について、トルセミドの単回用量の、無作為の、非盲検的な、4方向交差(four way cross-over)薬物動態学的研究を実施した。製剤を絶食状態又は摂食状態の健康な女性及び男性志願者に投与した。被験者は、最初の2回の投与期間に、3種の徐放性製剤100mgと100mgの即放出性参照製剤を投与され、その後、有害事象の発生に起因して、試験の最後の2回の期間では100mg用量の半分の錠剤(50mg)に減らされた。この試験は2つの群、すなわち絶食状態又は摂食状態の男性群(12+4人の被験者)及び女性群(12+4人の被験者)で実施するよう設計した。しかし、有害事象の発生のために、女性は最初の投与期間後に試験が続けられず、そのデータは薬物動態学的分析に含めなかった。Demadex(登録商標)の100mg用量の半分の錠剤(50mg)についての結果は、100mgに標準化された用量であった。
【0195】
血液サンプルは投与前、並びに投与後0.25、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0、3.0、4.0、6.0、8.0、10.0、12.0、14.0、16.0、20.0及び24.0時間で取得した。
【0196】
尿収集物は0〜4、4〜8、8〜12、12〜16、16〜20及び20〜24時間で取得した。投与前の試料も得た。
【0197】
表12及び13中の以下の薬物動態学的パラメーターを絶食状態下で得た:
【表12】

【0198】
【表13】

【0199】
表14及び15中の以下の薬物動態学的パラメーターを摂食状態下で得た:
【表14】

【0200】
【表15】

【0201】
表16及び17中の、トルセミドの以下の尿排泄速度は絶食条件下で示した:
【表16】

【0202】
【表17】

【0203】
表18及び19中の、トルセミドの以下の尿排泄速度は摂食条件下で示した:
【表18】

【0204】
【表19】

【0205】
表20は実施例20、21及び22に関する絶食及び摂食状態での相対的生物利用能を、Demadex(登録商標)と比較して列挙する。
【表20】

【0206】
表21は実施例20、21、22及びDemadex(登録商標)製剤に関する摂食効果の差を列挙する。
【表21】

【0207】
本発明の他の多くの変形は当業者には明らかであるし、またそのような変形は添付される特許請求の範囲の範囲内であることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のトルセミド又はその製薬上許容されうる塩と徐放性賦形剤とを含む徐放性経口剤形であって、III型USP 26(2003)溶解装置で測定した際に、250ml中、15dpmで攪拌したpH変化培地中、37℃で、1時間後に0〜約50%のトルセミドを放出し;3時間後に約1〜約60%のトルセミドを放出し;7時間後に約5〜約70%のトルセミドを放出し;12時間後に約10〜約95%のトルセミドを放出し;16時間後に約25%以上のトルセミドを放出し;そして24時間後に約35%以上のトルセミドを放出する、in vitro溶解速度を与える、上記徐放性経口剤形。
【請求項2】
前記徐放性賦形剤が、ゲル化剤、セルロースエーテル、アクリル樹脂、タンパク質誘導物質、ワックス、シェラック、徐放性ポリマー、オイル、又はそれらの混合物よりなる群から選択される徐放性物質を含む、請求項1に記載の徐放性経口剤形。
【請求項3】
前記徐放性賦形剤が少なくとも1種の天然又は合成ガムを含むゲル化剤を含有する、請求項1に記載の徐放性経口剤形。
【請求項4】
前記少なくとも1種の天然又は合成ガムがヘテロ多糖類ガム、ホモ多糖類ガム、又はそれらの組合せよりなる群から選択される、請求項3に記載の徐放性経口剤形。
【請求項5】
前記少なくとも1種の天然又は合成ガムが、ヘテロ多糖類ガムと、環境流体に曝露される際に該へテロ多糖類ガムと架橋可能なホモ多糖類ガムとの混合物である、請求項3に記載の徐放性経口剤形。
【請求項6】
不活性の医薬希釈剤をさらに含む、請求項3に記載の徐放性経口固体剤形。
【請求項7】
前記不活性希釈剤対前記ゲル化剤の比が約1:3〜約3:1である、請求項6に記載の徐放性経口固体剤形。
【請求項8】
剤形が環境流体に曝露される際に、ゲル化剤と架橋しかつゲル強度を増加することが可能なイオン化可能なゲル強度増強剤をさらに含む、請求項3に記載の徐放性経口固体剤形。
【請求項9】
前記へテロ多糖類ガムがキサンタンガムを含み、かつ前記ホモ多糖類ガムがローカストビーンガムを含む、請求項5に記載の徐放性経口固体剤形。
【請求項10】
前記トルセミド又はその製薬上許容されうる塩をさらに含む即放出性成分をさらに含有する、請求項1に記載の徐放性経口剤形。
【請求項11】
前記徐放性経口剤形が、トルセミド又はその製薬上許容されうる塩と徐放性賦形剤とを含む徐放性層、及び前記トルセミドと製薬上許容される希釈剤とを含む即放出性層を含む二層錠剤である、請求項10に記載の徐放性経口剤形。
【請求項12】
剤形のin vitro溶解速度が、II I型USP 26(2003)溶解装置で測定した際に、250ml中、15dpmで攪拌したpH変化培地中、37℃で、1時間後に約5〜約44%のトルセミドを放出し;3時間後に約6〜約46%のトルセミドを放出し;7時間後に約11〜約54%のトルセミドを放出し;12時間後に約41〜約91%のトルセミドを放出し;16時間後に約64%以上のトルセミドを放出し;そして24時間後に約90%以上のトルセミドを放出する溶解速度である、請求項1に記載の徐放性経口剤形。
【請求項13】
ヒト被験者への徐放性経口剤形の単回経口投与後、0〜約4時間で約210μg/hr〜約848μg/hr;約4〜約8時間で約290μg/hr〜約1160μg/hr;約8〜約12時間で約161μg/hr〜約778μg/hr;約12〜約16時間で約122μg/hr〜約301μg/hr;約16〜約20時間で約133μg/hr〜約323μg/hr;そして約20〜約24時間で約64μg/hr〜約182μg/hrのトルセミドの平均尿排泄速度を与える、請求項1に記載の徐放性経口剤形。
【請求項14】
有効量のトルセミド又はその製薬上許容されうる塩と徐放性賦形剤とを含む徐放性経口剤形であって、約8〜約24時間で前記トルセミド又はその製薬上許容されうる塩の持続放出を生じ、かつヒト被験者への単回経口投与後約4〜約20時間の間に少なくとも約200μg/hrのトルセミドの平均尿排泄速度を与える、上記徐放性経口剤形。
【請求項15】
前記剤形が、ヒト被験者への徐放性経口剤形の単回経口投与後約8〜約12時間の間に、少なくとも約700μg/hrのトルセミドの平均尿排泄速度を与える、請求項14に記載の徐放性経口剤形。
【請求項16】
前記剤形が、ヒト被験者への単回経口投与時に、トルセミド100mg当たり約1μg/ml〜7μg/mlのトルセミドの平均Cmaxを与える、請求項14に記載の徐放性経口剤形。
【請求項17】
前記徐放性経口剤形が、ヒト被験者への単回経口投与後、約1〜約8時間でトルセミドの平均Tmaxを与える、請求項14に記載の徐放性経口剤形。
【請求項18】
前記徐放性経口剤形が、ヒト被験者への単回経口投与時に、トルセミド100mg当たり約10μg.h/ml〜約40μg.h/mlの平均AUC(0−24)を与える、請求項14に記載の徐放性経口剤形。
【請求項19】
うっ血性心不全に罹患しているヒト患者に請求項14に記載の徐放性経口剤形を投与することを含む、うっ血性心不全の治療方法。
【請求項20】
浮腫に罹患しているヒト患者に請求項14に記載の徐放性経口剤形を投与することを含む、浮腫の治療方法。
【請求項21】
有効量のトルセミド又はその製薬上許容されうる塩と徐放性賦形剤とを含む第1の層と、有効量のトルセミドと即放出性賦形剤とを含む第2の層とを含む二層徐放性経口剤形であって、環境流体に曝露された際に約8〜約24時間の間トルセミド又はその製薬上許容されうる塩の持続放出を生じ、かつヒト被験者への単回経口投与後約4〜約20時間の間、少なくとも約200μg/hrのトルセミドの平均尿排泄速度を与える、上記二層徐放性経口剤形。
【請求項22】
前記剤形が、ヒト被験者への単回経口投与時に、トルセミド100mg当たり約1μg/ml〜約7μg/mlのトルセミドの平均Cmaxを与える、請求項21に記載の徐放性経口剤形。
【請求項23】
前期徐放性経口剤形が、ヒト被験者への単回経口投与後約1〜約8時間でトルセミドの平均Tmaxを与える、請求項21に記載の徐放性経口剤形。
【請求項24】
前期徐放性経口剤形が、ヒト被験者への単回経口投与時に、トルセミド100mg当たり約10μg.h/ml〜約40μg.h/mlの平均AUC(0-24)を与える、請求項21に記載の徐放性経口剤形。

【公表番号】特表2007−513975(P2007−513975A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544122(P2006−544122)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/041963
【国際公開番号】WO2005/058286
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(500175152)ペンウェスト ファーマシューティカルズ カンパニー (9)
【Fターム(参考)】