説明

徐放性薬物担体組成物

本発明は、非生分解性ポリマー、または非生分解性ポリマーと生分解性ポリマーを含むブロックコポリマーから形成された脂質飽和マトリックスを含む、1以上の有効成分の持続的放出のための組成物を提供する。本発明はまた、マトリックス組成物を作製する方法および必要とする被験体の身体において有効成分の制御放出をもたらすためにマトリックス組成物を使用する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質に基づくマトリックスを非生分解性ポリマーとともに含む、有効成分の持続放出のための組成物を提供する。本発明はまた、該マトリックス組成物を作製する方法、および必要とする被験体の身体において有効成分の制御放出をもたらすために該マトリックス組成物を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
脂質に基づく薬物送達系は薬学分野で周知である。一般にそれらは低いバイオアベイラビリティまたは高い毒性またはその双方を有する薬物を製剤化するために用いられる。受け入れられている有力な投与形として、小単ラメラ小胞、多重ラメラ小胞および他の多くのタイプのリポソームを含む多くの異なるタイプのリポソーム;水/油型エマルション、油/水型エマルション、水/油水型ダブルエマルション、サブミクロンエマルション、マイクロエマルションを含む種々のタイプのエマルション;ミセルおよび他の多くの疎水性薬物担体がある。これらのタイプの脂質に基づく送達系は、薬物送達の標的化または毒性の軽減または代謝安定性の増強などを可能とするように極めて特殊化することができる。日単位、週単位、またはそれを超える範囲での持続放出は、in vivoにおいて脂質に基づく薬物送達系が一般に関与する特徴ではない。
【0003】
理想的には、徐放性薬物送達系は、用いる特定の賦形剤のタイプおよび比率によって容易に制御される動態および他の特徴を示すべきである。有利には、徐放性薬物送達系は、親水性、両親媒性ならびに疎水性薬物の溶液を提供すべきである。
【0004】
歯周炎
併用療法における全身性ドキシサイクリンおよびNSAIDの使用は、慢性歯周炎患者の歯肉において組織傷害を抑制することが示されている。組織傷害は、病原性細菌の作用が宿主マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)活性と相まって引き起こされる。抗生物質処置と抗炎症薬の併用はこれら2つの経路を抑制する。有効性の増強および処置の副作用の軽減は、これらの薬物を制御された様式で局所的に放出する手段によって達成される。
【0005】
骨造成
骨造成を必要とする骨疾患には、良性および悪性骨腫瘍、骨に存在する癌、感染性骨疾患、ならびに内分泌、自己免疫、栄養不良、遺伝因子および骨の成長と吸収のアンバランスに関連する病因の他の骨疾患が含まれる。例としては、骨肉腫/骨悪性繊維性組織球腫(PDQ)、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性繊維性組織球腫、繊維肉腫および悪性繊維性組織球腫、骨巨大細胞腫瘍、脊索腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、変形性関節症、パジェット骨病、関節炎、変性変化、骨粗鬆症、骨形成不全症、骨棘、腎性骨異栄養症、副甲状腺機能亢進症、骨髄炎、内軟骨腫、骨軟骨腫、大理石骨病、糖尿病に関連する骨および関節の問題などの疾患が挙げられる。
【0006】
直接感染および遅延性感染は整形外科の分野における主要な合併症である。整形外科処置後の合併症の軽減は、その整形外科処置の有効性および成功をもたらし、場合によっては死亡率を引き下げる。また、感染部位の処置を可能とし、感染部位に処置の有効性をもたらす必要もある。
【0007】
整形外科または整形外科術の分野における別の重要な側面が、修復および再生手法において軟組織および硬組織の回復を加速化する必要があるということである。
【0008】
骨造成は、インプラントが埋入できるように骨を「構築する」ために用いられる種々の手法をさらに含む。これらの手法は一般に、処置された領域(例えば、骨腫瘍または癌転移の除去の結果としての骨の欠損)に骨または骨様の材料を移植すること、およびその移植材料が既存の骨と融合するのを数ヶ月待つことを含む。一般に、腫瘍を除去するための骨除去手術の後に、化学療法または放射線処置が行われる。全身化学療法の欠点の1つは、移植領域への血液供給が限定されているために生き残っている可能性のある腫瘍細胞を完全に根絶する能力が限られていることである。さらに、放射線療法は、傷害を受けた骨の回復が遅いために限定される。従って、必要とされる場所に直接、抗癌剤をゆっくり、長期にわたって放出することが極めて有益である。
【0009】
薬物送達におけるリポソームおよび生分解性ポリマー
これまでに脂質と生体高分子の併用は考えられていたが、これらは臨床実践に首尾よく導入されたことはまだない。
【0010】
Boswellらの米国特許第3,773,919号には、乳酸、グリコール酸およびそれらのコポリマーを含むα−ヒドロキシカルボン酸由来のポリマーの使用、ならびに徐放性製剤におけるそれらの使用が記載されている。
【0011】
リポソームはLenkらの米国特許第4,522,803号に記載されている。リポソームは一般に、十分な薬物送達薬物保持能を示すが、in vivo半減期が比較的限られている。多くの異なるタイプのリポソームが特定の適用のために開発されている。例は、とりわけ米国特許第5,043,166号、同第5,316,771号、同第5,919,480号、同第6,156,337号、同第6,162,462号、同第6,787,132号、同第7,160,554号に見出すことができる。
【0012】
Schneiderらの米国特許第6,333,021号および同第6,403,057号には、ガスコアを封入している生分解性膜を有するマイクロカプセルが開示されている。
【0013】
Sankaramの米国特許第6,277,413号および同第6,793,938号には、水耐性、脂質飽和マトリックスの形成を防ぐ水溶液を用いることによって作製された生分解性脂質/ポリマー含有組成物が開示されている。
【0014】
Jangの米国特許第4,882,167号には、疎水性炭水化物ポリマー、例えば、エチルセルロースと、難消化性可溶性成分、すなわち、ワックス、例えば、カルナウバろう、脂肪酸材料または中性脂質との乾式直接打錠によって作製された、生物活性剤の錠剤またはインプラントのための制御放出マトリックスが開示されている。
【0015】
Fukuhiraらの米国特許出願第2006/0189911号には、生分解性ポリマーとしてのポリ乳酸とリン脂質から製造されたハニカムフィルムの癒着防止膜が開示されている。
【0016】
米国特許出願第2004/0247624号には、有機溶媒と、薬物と、ポリマー、脂質、ポリマー脂質複合体またはそれらの組合せから選択される分解防止剤とを含む医薬組成物の製造方法が開示されている。
【0017】
Ljusberg-Wahrenらの米国特許出願第2006/0073203号には、水または胃腸管液と接触した際に、該脂質、該生物活性剤および所望により水もまた含む粒子を形成すように意図した、ポリマー、脂質および生物活性剤の乾燥混合物を含む経口投与可能な組成物が開示されている。用いられるポリマーは、消化プロセス中、例えば、1日未満の期間、消化管内で崩壊しない。
【0018】
本発明者らの国際特許出願公開第WO/2010/007623号は、ポリエステルに基づく生分解性ポリマーから形成された脂質飽和マトリックスを含む、有効成分の持続放出のための組成物を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
当技術分野でなされた最近の進展にもかかわらず、歯周用または整形外科用の脂質飽和ポリマーマトリックスからの徐放またはプログラムされた放出または制御放出を達成するように適合された改良された組成物が早急に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の概要)
本発明の実施形態は、非生分解性ポリマーを含む脂質に基づくマトリックスを含む、有効成分の持続放出のための組成物を提供する。本発明の他の実施形態は、該マトリックス組成物を作製する方法、および必要とする被験体の身体において有効成分の制御放出をもたらすために該マトリックス組成物を使用する方法を提供する。
【0021】
一態様において、本発明は、(a)極性基を有する第一の脂質と結合した薬学上許容される生体適合性非生分解性ポリマーと、(b)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するリン脂質から選択される第二の脂質と、(c)医薬活性剤とを含むマトリックス組成物を提供し、このマトリックス組成物は医薬剤の徐放をもたらすよう適合されている。いくつかの実施形態によれば、極性基を有する第一の脂質は、少なくとも1つのステロールを含む。いくつかの実施形態によれば、極性基を有する第一の脂質は、リン脂質以外のものである。いくつかの実施形態によれば、この第一の脂質は脂質の混合物を含む。いくつかの実施形態によれば、この第一の脂質は脂質の混合物を含み、それらの脂質のうち少なくとも1つがステロールである。いくつかの実施形態によれば、非生分解性ポリマーは、極性基を有する第一の脂質と結合されていない。いくつかの実施形態によれば、第二の脂質は脂質の混合物を含み、少なくとも1つが、少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するリン脂質である。いくつかの実施形態によれば、非生分解性ポリマーは、第二の脂質と結合されていない。いくつかの実施形態によれば、非生分解性ポリマーは、リン脂質と結合されていない。いくつかの好ましい実施形態によれば、第一の脂質と第二の脂質は異なるカテゴリーの脂質である。特定の実施形態において、ポリマーとリン脂質は、水を実質的に含まないマトリックス組成物を形成する。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、非生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)アクリレート、ポリメタクリレート(例えば、PEGメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルメタクリレート、ポリラウリルメタクリレート、ポリヒドロキシルエチルメタクリレート)、ポリ−メチルアクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、ポリスチレン、誘導体化ポリスチレン、ポリリジン、ポリN−エチル−4−ビニル−ピリジニウムブロミド、シリコーン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレン−酢酸ビニルポリマーとアシル置換セルロースアセテートポリマーとのコポリマー、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、ポリオキシメチレン(デルリン(登録商標))、ポリウレタン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸およびそれらの誘導体単独またはそれらの混合物を含み得る。
【0023】
特定の実施形態によれば、非生分解性ポリマーは、約1000〜約20000、あるいは2000〜約10000の間の分子量を有するポリエチレングリコールを含む。例示的実施形態によれば、ポリエチレングリコールは、約4000〜約8000の間の分子量を有する。
【0024】
別の態様において、本発明は、(a)極性基を有する第一の脂質と結合した、ポリエステル以外の薬学上許容される生体適合性生分解性ポリマーと、(b)少なくとも14個の炭の脂肪酸部を有するリン脂質から選択される第二の脂質と、(c)医薬活性剤とを含むマトリックス組成物を提供し、このマトリックス組成物は医薬剤の徐放をもたらすよう適合されている。特定の実施形態において、ポリマーとリン脂質は、水を実質的に含まないマトリックス組成物を形成する。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、生分解性ポリマーは、ポリ(カプロラクトン)、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリシアノアクリレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリ(エーテルエステル)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、生分解性ポリウレタン、それらのブレンドおよびコポリマーからなる群から選択される。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、ポリマーは、非生分解性ポリマーと生分解性ポリマーの任意の組合せを含み得る。いくつかの特定の実施形態によれば、ポリマーは、非生分解性ポリマーとポリエステル以外の生分解性ポリマーの任意の組合せを含み得る。いくつかの実施形態によれば、ポリマーは、2種類以上の非生分解性ポリマー、2種類以上の生分解性ポリマーまたはそれらの組合せを含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、マトリックス組成物は生分解性ポリマーをさらに含み、非生分解性ポリマーと生分解性ポリマーはブロックコポリマーを形成する。いくつかの実施形態によれば、ブロックコポリマーは、直鎖コポリマー((AB)n、(ABA)nまたは(ABABA)n、ここでn≧1)である。いくつかの他の実施形態によれば、ブロックコポリマーは分枝型コポリマー(1つのBから複数のAが垂れ下がっている)である。これらの式において、Aが非生分解性ポリマーであり、Bが生分解性ポリマーであるか、あるいは、Aが非生分解性ポリマーであり、Bがポリエステル以外の生分解性ポリマーである。いくつかの実施形態によれば、Aは5000ダルトンより小さいあるいは4000ダルトンより小さい、あるいは3000ダルトンより小さい、あるいは2000ダルトンより小さい分子量を有する非生分解性ポリマーである。好適なブロックコポリマーの限定されない例としては、PEG−PLA−PEGおよびPEG−PLGA−PEGが挙げられる。いくつかの実施形態によれば、ポリマーは、上記で定義された非生分解性ポリマーと生分解性ポリマーとブロックコポリマーの任意の組合せを含み得る。いくつかの実施形態によれば、ブロックコポリマーは、2種類以上の非生分解性ポリマー、2種類以上の生分解性ポリマーまたはそれらの組合せを含む。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、ポリマーは、生分解性リンカーによって互いに連結された、5000ダルトンより小さい分子量を有する非生分解性ポリマー鎖を含む。生分解性リンカーの限定されない例としては、ジスルフィド結合およびエステル結合が挙げられる。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、極性基を有する第一の脂質は、ステロール、トコフェロールおよびホスファチジルエタノールアミンから選択される。いくつかの実施形態によれば、極性基を有する第一の脂質は、ステロールから選択される。特定の実施形態によれば、第一の脂質は生体適合性ポリマーと混合されて非共有結合を形成する。いくつかの例示的実施形態によれば、極性基を有する第一の脂質はコレステロールである。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、第二の脂質は、ホスファチジルコリンを含む。いくつかの実施形態によれば、第二の脂質は、ホスファチジルコリンの混合物を含む。いくつかの実施形態によれば、第二の脂質は、ホスファチジルコリおよびホスファチジルエタノールアミン、または他のいずれかのタイプのリン脂質の混合物を含む。
【0031】
いずれのタイプの薬物分子が、徐放および/または制御放出および/または持続放出のためのマトリックス組成物に組み込まれてもよい。特定の実施形態によれば、薬学上活性な薬剤は、抗生物質、抗真菌薬、NSAID、ステロイド、抗癌剤、骨形成因子、骨吸収阻害剤およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。別の実施形態によれば、医薬活性剤は、疎水性薬剤、両親媒性薬剤または水可溶性薬剤から選択される。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0032】
別の実施形態では、リン脂質は、少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンである。別の実施形態では、組成物は、少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンをさらに含む。別の実施形態では、マトリックス組成物は均質である。別の実施形態では、マトリックス組成物は、その形状および境界がポリマーによって画定される脂質に基づくマトリックスの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物は、インプラントの形態である。
【0033】
いくつかの実施形態では、医薬活性剤は、マトリックス組成物に組み込まれた抗生物質である。いくつかの実施形態では、抗生物質は低い水溶解度を有する。別の実施形態では、抗生物質は疎水性抗生物質である。別の実施形態では、抗生物質は両親媒性抗生物質である。別の実施形態では、組成物は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)をさらに含む。別の実施形態では、NSAIDも同様にマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、NSAIDは低い水溶解度を有する。別の実施形態では、マトリックス組成物は2種類以上の活性剤の組合せを含み得る。別の実施形態では、マトリックス組成物は抗生物質とNSAIDの組合せを含み得る。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0034】
特定の実施形態では、本発明は、(a)非生分解性ポリマーと、(b)ステローと、(c)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンと、(d)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンと、(e)抗生物質または抗真菌薬とを含むマトリックス組成物を提供する。別の実施形態では、マトリックス組成物は、少なくとも50重量%の脂質を含む。別の実施形態では、マトリックス組成物は均質である。別の実施形態では、マトリックス組成物は、その形状および境界がポリマーによって画定される脂質に基づくマトリックスの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物は、インプラントの形態である。
【0035】
いくつかの例示的実施形態によれば、本発明は、(a)ポリエチレングリコールと、(b)ステロールと、(c)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンと、(d)抗生物質または抗真菌薬とを含むマトリックス組成物を提供する。別の実施形態では、マトリックス組成物は、少なくとも30重量%の脂質(ステロールおよびリン脂質)を含む。別の例示的実施形態では、ステロールはコレステロールである。別の実施形態では、マトリックス組成物は均質である。別の実施形態では、マトリックス組成物は、その形状および境界がポリマーによって画定される脂質に基づくマトリックスの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物の形状および境界は、少なくとも50重量%のポリマーを含む組成物中のポリマーにより画定される。別の実施形態では、マトリックス組成物は、インプラントの形態である。
【0036】
別の実施形態によれば、抗生物質または抗真菌薬は、疎水性薬剤、両親媒性薬剤または水可溶性薬剤から選択される。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、(a)非生分解性ポリマーと、(b)ステロールと、(c)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンと、(d)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンと、(e)非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)とを含むマトリックス組成物を提供する。別の実施形態では、マトリックス組成物は、少なくとも30%の脂質を含む。別の実施形態では、NSAIDは低い水溶解度を有する。別の実施形態では、NSAIDは疎水性NSAIDである。別の実施形態では、NSAIDは両親媒性NSAIDである。別の実施形態では、マトリックス組成物は、その形状および境界がポリマーによって画定される脂質に基づくマトリックスの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物の形状および境界は、少なくとも50重量%のポリマーを含む組成物中のポリマーにより画定される。別の実施形態では、マトリックス組成物は、インプラントの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物は均質である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、(a)非生分解性ポリマーと、(b)ステロールと、(c)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンと、(d)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンと、(e)骨形成因子または骨吸収阻害剤とを含むマトリックス組成物を提供する。別の実施形態では、マトリックス組成物は、少なくとも30%の脂質を含む。別の実施形態では、骨吸収阻害剤は低い水溶解度を有する。別の実施形態では、骨吸収阻害剤は疎水性骨吸収阻害剤である。別の実施形態では、骨吸収阻害剤は両親媒性骨吸収阻害剤である。別の実施形態では、組成物はNSAIDをさらに含む。別の実施形態では、NSAIDも同様にマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、マトリックス組成物は、その形状および境界がポリマーによって画定される脂質に基づくマトリックスの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物の形状および境界は、少なくとも50重量%のポリマーを含む組成物中のポリマーにより画定される。別の実施形態では、マトリックス組成物は、インプラントの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物は均質である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0039】
別の実施形態では、本発明は、a)非生分解性ポリマーと、(b)ステロールと、(c)少なくとも14個の炭素の飽和脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンと、(d)少なくとも14個の炭素の飽和脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンと、(e)活性剤と、(f)標的細胞の表面分子と相互作用し得るターゲティング部分とを含むマトリックス組成物を提供する。別の実施形態では、活性剤は、NSAID、抗生物質、抗真菌薬、ステロイド、抗癌剤、骨形成因子および骨吸収阻害剤からなる群から選択される。別の実施形態では、ポリマーとリン脂質は、水を実質的に含まないマトリックス組成物を形成する。別の実施形態では、マトリックス組成物は、in vivoにおいて小胞に分解可能であり、その小胞に、放出された活性剤の質量の一部または全部が組み込まれる。別の実施形態では、マトリックス組成物はin vivoにおいて分解されて小胞を形成することができ、その小胞に活性剤およびターゲティング部分が組み込まれる。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0040】
別の実施形態では、本発明は、本発明のマトリックス組成物と薬学上許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。別の実施形態では、マトリックス組成物はマイクロスフェアの形態である。別の実施形態では、本発明は、本発明のマイクロスフェアと薬学上許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。別の実施形態では、医薬組成物は非経口的に注射可能な形態である。別の実施形態では、医薬組成物は注入可能な形態である。別の実施形態では、賦形剤は注射に適合している。別の実施形態では、賦形剤は注入に適合している。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0041】
別の実施形態では、本発明のマトリックス組成物は、有機溶媒を蒸発させた後にインプラントの形態である。別の実施形態では、インプラントは均質である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明のポリマーは非共有結合によってステロールと結合される。いくつかの実施形態では、本発明のポリマーは水素結合によってステロールと結合される。
【0043】
別の実施形態では、本発明の組成物からインプラントを作出するプロセスは、(a)本発明の方法に従ってマトリックス組成物をバルク材料の形態で作出する工程、および(b)そのバルク材料を所望の形状のモールドまたは固相レセプタクルに移す工程を含む。
【0044】
また、本明細書では、本発明の組成物の製造方法およびその使用方法も提供される。
【0045】
別の態様によれば、医薬剤の徐放のためのマトリックス組成物は、非生分解性ポリマー、ポリエステル以外の生分解性ポリマーまたはそれらの組合せからなる群から選択される生体適合性ポリマーと、極性基を有する第一の脂質とを含む揮発性有機溶媒の第一の溶液または分散液を準備すること;第二の揮発性有機溶媒と第二の脂質(この第二の脂質は少なくとも1つのリン脂質を含む)と医薬活性剤とを含む第二の溶液または分散液を準備すること;第一の溶液と第二の溶液を混合して均質な混合物を形成すること;揮発性溶媒を蒸発させて、医薬活性剤を含む均質なポリマーリン脂質マトリックスを作製することを含むプロセスによって生成される。特定の溶媒の選択は、特定の活性剤を捕捉し、特定の計画された速度および期間で放出させることを意図した特定の製剤中に用いる特定の薬物および他の物質に従ってなされる。蒸発は、得られた溶液の特性に従って決定された制御温度で行われる。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法で用いられる揮発性有機溶媒は、0℃より低い、あるいは10℃より低い、あるいは20℃より低い凍結温度を持っていた。
【0046】
本開示によれば、異なるタイプの揮発性有機溶液の使用およびプロセスを通じて水が存在しないことが、均質な水耐性の、脂質に基づくマトリックス組成物の形成を可能とする。種々の実施形態によれば、第一の溶媒と第二の溶媒は同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態によれば、一方の溶媒は非極性であり、他方は好ましくは水混和性である。
【0047】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のマトリックス組成物は水を実質的に含まない。「水を実質的に含まない」とは、別の実施形態では、1重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.8重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.6重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.4重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.2重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、その組成物の水耐性に影響を及ぼす水の量が存在しないことを意味する。別の実施形態では、この用語は、水性溶媒を用いずに製造された組成物を意味する。別の実施形態では、本明細書に記載されているように、水を実質的に含まないプロセスを用いて組成物を作製することで、脂質飽和が可能となる。脂質飽和はマトリックス組成物にin vivoバルク分解耐性能を付与し、従って、そのマトリックス組成物は、数日、数週間または数ヶ月という規模での持続放出を媒介する能力を示す。
【0048】
別の実施形態では、マトリックス組成物は水を本質的に含まない。「本質的に含まない」とは、0.1重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.08重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.06重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.04重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.02重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.01重量%未満の水を含む組成物を意味する。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0049】
別の実施形態では、マトリックス組成物は水を含まない。別の実施形態では、この用語は、検出可能な量の水を含まない組成物を意味する。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0050】
別の実施形態では、本発明は、(a)(i)非生分解性ポリマー、ポリエステル以外の生分解性ポリマーまたはそれらの組合せと(ii)ステロールを非極性揮発性有機溶媒と合わせる工程;(b)(i)非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、抗生物質、抗真菌薬、ステロイド、抗癌剤および骨形成因子、骨吸収阻害剤およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される活性剤と、(ii)ホスファチジルエタノールアミンと、(iii)ホスファチジルコリンを水混和性揮発性有機溶媒と合わせる工程;および工程(a)および(b)から得られた生成物を混合し、ホモジナイズする工程を含む、マトリックス組成物の作製方法を提供する。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、水混和性揮発性有機溶媒の代わりに非極性揮発性有機溶媒に含まれる。別の実施形態では、非生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)アクリレート、ポリメタクリレート(例えば、PEGメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルメタクリレート、ポリラウリルメタクリレート、ポリヒドロキシルエチルメタクリレート)、ポリ−メチルアクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、ポリスチレン、誘導体化ポリスチレン、ポリリジン、ポリN−エチル−4−ビニル−ピリジニウムブロミド、シリコーン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレン−酢酸ビニルポリマーとアシル置換セルロースアセテートポリマーとのコポリマー、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、およびそれらの混合物からなる群から選択される。別の実施形態では、非生分解性ポリマーは、当技術分野で公知の他の好適な任意の非生分解性ポリマーである。別の実施形態では、非極性有機溶媒を含む混合物は、それを混合物有機溶媒と混合する前にホモジナイズする。別の実施形態では、水混和性有機溶媒を含む混合物は、それを、非極性有機溶媒を含む混合物と混合する前にホモジナイズする。別の実施形態では、工程(a)の混合物中のポリマーは脂質飽和型である。別の実施形態では、マトリックス組成物は脂質飽和型である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0051】
別の実施形態では、本発明のマトリックス組成物は、種々の基板の表面を完全にまたは部分的に被覆するために使用することができる。別の実施形態では、被覆される基板は、カーボンファイバー、ステンレス鋼、コバルト−クロム、チタン合金、タンタル、セラミックおよびコラーゲンまたはゼラチンからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。別の実施形態では、基板は、整形外科術で用いられる整形外科用ネイル、整形外科用ネジ、整形外科用ステープル、整形外科用ワイヤおよび整形外科用ピン、整形外科および歯周手術の双方で用いられる金属またはポリマーインプラント、骨充填材粒子および吸収性ゼラチンスポンジなどの任意の医療機器を含み得る。骨充填材粒子は、同種(すなわち、ヒト供給源由来)の、異種(すなわち、動物供給源由来)の、および人工の骨粒子のいずれか1つであり得る。別の実施形態では、被覆基板を用いた処置および被覆基板の投与は、同様の非被覆基板の処置および投与に関して当技術分野で公知の手法に従う。別の実施形態では、本発明のマトリックスで被覆された骨充填材粒子は、実質的に単一の成分として投与される(他の成分との混合物の一部として投与されるのではない)。あるいは、被覆骨充填材粒子は、投与前に他の市販の任意の骨充填材粒子または自家骨と混合される。別の実施形態では、骨充填材粒子の混合物は、非被覆粒子、1種類の薬学上活性な薬剤を組み込んだマトリックス組成物で被覆された粒子、複数の薬学上活性な薬剤を組み込んだマトリックス組成物で被覆された粒子、またはそれらの組合せのうち少なくとも1つを含む。別の実施形態では、本発明のマトリックス組成物を形成する成分の量、比率およびタイプは、薬学上活性な薬剤の生物物理学/生化学的特性、薬学上活性な薬剤の治療上有効な用量および所望の徐放時間(一般に、数日〜数ヶ月の範囲)に合わせてポリマー−脂質基準を調整するために変更される。別の実施形態では、活性剤を含むマトリックス組成物で被覆されたえ骨充填材粒子を、投与前に、異なる活性剤を含むマトリックス組成物で被覆された骨充填材粒子と混合する。異なる活性剤を含む、異なるマトリックス組成物、異なる脂質/ポリマー比を含む組成物、異なる脂質含量を含む組成物またはそれらの任意の組合せで被覆された骨粒子があることを強調しておくべきである。このような混合物は、活性剤のそれぞれの放出速度が別々に制御される組合せ処置に使用することができる。
【0052】
本発明の組成物を用いる場合の徐放期間は、2つの主要な因子、すなわち、(i)ポリマーと脂質含量、具体的には、少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するリン脂質の間の重量比と、(ii)ポリマーおよび脂質の生化学および/または生物物理学的特性を考慮してプログラムすることができるということを強調しておくべきである。具体的には、脂質の流動性を考慮すべきである。例えば、ホスファチジルコリン(14:0)は、ホスファチジルコリン(18:0)よりも体温では流動性が大きい(剛性が小さく、規則性が低い)。従って、例えば、PEG8000とホスファチジルコリン(18:0)を含むマトリックス組成物に組み込まれた薬物の放出速度は、PEG8000とホスファチジルコリン(14:0)から構成されるマトリックスに組み込まれた薬物の放出速度よりも遅い。
【0053】
マトリックス組成物に用いるポリマーが、生分解性リンカーによって連結された5000ダルトンまでの分子量を有するポリマー単位を含む場合、その生分解性リンカーの性質は、組成物中に捕捉/封入された活性剤の放出期間に影響を及ぼし得る。あるいは、ポリマーが本発明の実施形態によるブロックコポリマーを含む場合、そのブロックコポリマーの生分解性ポリマー単位の性質は、組成物中に捕捉/封入された活性剤の放出期間に影響を及ぼし得る。放出速度を決定する別の側面は、捕捉または含浸された薬物の物理的特徴である。さらに、薬物の放出速度は、第二の溶液の処方に他の脂質を添加することによってさらに制御することができる。これには、ラウリン酸(12:0)などの種々の長さの脂肪酸、膜活性ステロール(コレステロールなど)またはホスファチジルエタノールアミンなどの他のリン脂質が含まれる。種々の実施形態によれば、数日から数ヶ月の範囲の処方の期間にわたって組成物から活性剤が放出される。
【0054】
本発明のこれらおよびその他の特徴および利点は、以下の発明の詳細な説明からより容易に理解および認識されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】A)種々のマトリックス組成物から抽出されたコレステロール(CH)のTLC実施;1:PEG+CH+ドキシサイクリンヒクレート(Doxy−H);2:PEG+CH+Doxy−H+DMPC;3:PEG+CH+Doxy−H+DSPC;4:CH単独(対照);B)PEG+CH+Doxy−H+DPPCマトリックス組成物から抽出されたリン脂質(DPPC)TLC実施。
【図2】回転沈降後のTCP−マトリックス組成物内に捕捉/封入されたDoxy−Hの放出特性。A)PEG、CH、Doxy−HおよびDSPC(18:0)(大四角)と、PEG、CH、Doxy−HおよびDMPC(14:0)(小四角)を含むマトリックス組成物から、時間に対して放出されたDoxy−Hの量;B)時間に対して、放出されたDoxy−Hのパーセンテージ(PEG、CH、Doxy−HおよびDPPC(16:0)を含むマトリックス組成物内に封入されたDoxy−Hの総量の)。
【図3】2つの異なるマトリックス組成物:A)PEGおよびDoxy−Hを含むマトリックス組成物;B)PEG、CH、Doxy−Hおよびリン脂質を含むマトリックス組成物の、水和後に放出された粒子。
【図4】PEG、コレステロールおよびPEGとコレステロールの種々の比率での組合せの示差走査熱量測定(DSC)スキャン。
【図5】ポリマー:薬物相互作用分析;A)PEG、Doxy−H、PEG−Doxy、PEG−CH−Doxy−HおよびPEG−CH−Doxy−H−DPPCのDSCスキャン。B)Doxy−H吸熱ピーク範囲(190〜210℃)へのズーム。
【図6】ポリマー:リン脂質相互作用分析;A)PEG、DPPC、PEG−DPPCおよびPEG−CH−DPPCのDSCスキャンの全範囲。B)DPPC吸熱ピーク範囲(90〜110℃)へのズーム。
【発明を実施するための形態】
【0056】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施形態は、非生分解性ポリマー、ポリエステル以外の生分解性ポリマー、生分解性ポリマーと非生分解性ポリマーのブロックコポリマー、またはそれらの組合せを含む脂質に基づくマトリックスを含む、有効成分の持続放出のための組成物を提供する。本発明はまた、該マトリックス組成物を作製する方法、および必要とする被験体の身体において有効成分の制御放出をもたらすために該マトリックス組成物を使用する方法を提供する。
【0057】
本発明の実施形態によるマトリックス組成物は、生分解性ポリマーを含む当技術分野で公知のマトリックス組成物に優る多くの利点を示す。非生分解性ポリマーを含むマトリックス組成物は不活性である。従って、それらは周囲環境と干渉しにくく、組織機能に影響を及ぼしにくい。一般に、非生分解性ポリマーは低アレルギー誘発性であり、免疫系の活性に干渉しない。さらに、非生分解性ポリマーの部分構造は安定であり、生分解性ポリマーの分解産物とは対照的に、細菌および/または真菌によってさらに代謝され得ない。
【0058】
本発明のマトリックス組成物中に非生分解性ポリマーを用いることのもう1つの利点は、マトリックス内に捕捉/封入された薬物に関するものである。生分解性ポリマーを用いる場合、マトリックス組成物内およびマトリックス組成物に近接した物理的環境はポリマーの分解によって変化し、例えば、PLGA、PLAおよびPLGは、乳酸モノマーおよび/またはグリコール酸モノマーの放出によって局部的酸度を上昇させ得る。このことは、捕捉または封入された薬物がpH感受性である場合(例えば、ポリペプチドおよびタンパク質に基づく薬物)には極めて重要であり得る。
【0059】
非生分解性ポリマー、具体的には、5000ダルトンを超える分子量を有する非生分解性ポリマーを含むマトリックス組成物は、そのマトリックス組成物で被覆されたインプラントまたは別の医療機器の全体構造を、薬物および脂質の放出中ならびに放出後も支持する、脂質成分に対する永久的/長期的な物理的基幹支持体として働き得る。
【0060】
非生分解性組成物を含むマトリックス処方物を用いることの他の利点としては、a)コスト、すなわち、PEGなどの非生分解性ポリマーは、ポリエステルに比べて比較的安価であること;b)排出、すなわち、PEG(MW≦5KD)などの低分子非生分解性ポリマーは、尿によって身体から容易に排出されること;c)作業の容易性、すなわち、非生分解性ポリマーは調製中に必要な物理/化学的条件(例えば、温度、pH)に感受性が低いことが挙げられる。
【0061】
「制御放出」とは、本発明のマトリックス組成物によって送達される薬学上活性な薬剤の速度および/または量の制御を意味する。制御放出は連続的もしくは不連続、および/または直線的もしくは非直線的であり得る。
【0062】
「徐放」とは、活性剤または薬物が同じ物理的および化学的条件下で拡散により期待される放出よりも有意に遅い速度で放出されることを意味する。本明細書において、徐放とは、その放出特性が数日または数週間または数ヶ月の期間にわたって局物的治療有効濃度をもたらすことを意味する。全身濃度は、マトリックスから所望の作用部位への局部的放出濃度よりも有意に低く、それにより、毒性の軽減ならびに治療有効性の延長を達成し得る。
【0063】
特定の実施形態において、本発明は、(a)非生分解性ポリマーと、(b)少なくとも14個の炭素の炭化水素部分を有するホスホグリセリドと、(c)医薬活性剤とを含むマトリックス組成物を提供する。いくつかの実施形態によれば、医薬剤は、抗生物質、抗真菌薬、NSAID、ステロイド、抗癌剤、骨形成因子および骨吸収阻害剤からなる群から選択される。
【0064】
特定の実施形態において、ホスホグリセリドはリン脂質である。いくつかの実施形態では、リン脂質は、少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンである。別の実施形態では、組成物は、少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンをさらに含む。別の実施形態では、組成物はステロールをさらに含む。いくつかの実施形態では、ステロールはコレステロールである。
【0065】
別の実施形態では、マトリックス組成物は脂質飽和型である。本明細書において「脂質飽和」とは、マトリックス組成物のポリマーが、マトリックス中に存在する任意の疎水性薬物およびターゲティング部分、ならびに存在してもよい他の任意の脂質と組み合わせて、リン脂質を含む脂質で飽和していることを意味する。マトリックス組成物は、存在しているどんな脂質で飽和されていてもよい。本発明の脂質飽和マトリックスはポリビニルアルコールなどの合成乳化剤または界面活性剤を必要としないという付加的利点を示し、従って、本発明の組成物は一般にポリビニルアルコールを実質的に含まない。脂質飽和を達成するためにポリマー:脂質比を決定する方法およびマトリックスの脂質飽和度を決定する方法は本明細書の後段に記載されている。
【0066】
別の実施形態では、マトリックス組成物は均質である。別の実施形態では、マトリックス組成物は、その形状および境界がポリマーによって画定される脂質飽和マトリックスの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物は、インプラントの形態である。好ましくは、非生体適合性ポリマー、ホスファチジルエタノールアミンおよびステロールは、マトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、ホスファチジルコリンもまたマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、抗生物質もまたマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、抗生物質は低い水溶解度を有する。別の実施形態では、抗生物質は疎水性抗生物質である。別の実施形態では、抗生物質は両親媒性抗生物質である。別の実施形態では、組成物は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)をさらに含む。別の実施形態では、NSAIDも同様にマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、NSAIDは低い水溶解度を有する。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0067】
一実施形態において、本発明は、(a)非生分解性ポリマーと、(b)ステロールと、(c)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンと、(d)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンと、(e)抗生物質または抗真菌薬とを含むマトリックス組成物を提供する。別の実施形態では、マトリックス組成物は脂質飽和型である。好ましくは、ポリマー、ホスファチジルエタノールアミンおよびステロールは、マトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、ホスファチジルコリンもまたマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、抗生物質もまたマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、抗生物質は低い水溶解度を有する。別の実施形態では、抗生物質は疎水性抗生物質である。別の実施形態では、抗生物質は両親媒性抗生物質である。別の実施形態では、組成物は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)をさらに含む。別の実施形態では、NSAIDも同様にマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、NSAIDは低い水溶解度を有する。別の実施形態では、マトリックス組成物は、その形状および境界がポリマーの性質によって影響を受ける脂質飽和マトリックスの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物はインプラントの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物は均質である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0068】
別の実施形態では、本発明は、(a)非生分解性ポリマーと、(b)ステロールと、(c)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンと、(d)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンと、(e)非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)とを含むマトリックス組成物を提供する。別の実施形態では、マトリックス組成物は脂質飽和型である。好ましくは、ポリエステル、ホスファチジルエタノールアミンおよびステロールは、マトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、ホスファチジルコリンもまたマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、NSAIDもまたマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、NSAIDは低い水溶解度を有する。別の実施形態では、NSAIDは疎水性NSAIDである。別の実施形態では、NSAIDは両親媒性NSAIDである。別の実施形態では、マトリックス組成物は、その形状および境界がポリマーによって画定される脂質飽和マトリックスの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物はインプラントの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物は均質である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0069】
別の実施形態では、本発明は、(a)非生分解性ポリマーと、(b)ステロールと、(c)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンと、(d)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンと、(e)骨形成因子または骨吸収阻害剤とを含むマトリックス組成物を提供する。別の実施形態では、マトリックス組成物は脂質飽和型である。好ましくは、ポリマー、ホスファチジルエタノールアミンおよびステロールは、マトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、ホスファチジルコリンもまたマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、骨吸収阻害剤もまたマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、骨吸収阻害剤は低い水溶解度を有する。別の実施形態では、骨吸収阻害剤は疎水性骨吸収阻害剤である。別の実施形態では、骨吸収阻害剤は両親媒性骨吸収阻害剤である。別の実施形態では、組成物は、NSAIDをさらに含む。別の実施形態では、NSAIDも同様にマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、マトリックス組成物は、その形状および境界がポリマーによって画定される脂質飽和マトリックスの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物はインプラントの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物は均質である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0070】
別の実施形態では、本発明は、(a)非生分解性ポリマーと、(b)ステロールと、(c)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンと、(d)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンと、(e)活性剤と、(f)標的細胞の表面分子、標的分子または標的表面と相互作用し得るターゲティング部分とを含むマトリックス組成物を提供する。別の実施形態では、マトリックス組成物は脂質飽和型である。別の実施形態では、活性剤は、NSAID、抗生物質および骨吸収阻害剤からなる群から選択される。別の実施形態では、ポリマーおよびリン脂質は、水を実質的に含まないマトリックス組成物を形成する。別の実施形態では、活性剤およびターゲティング部分は脂質小胞に組み込まれる。別の実施形態では、マトリックス組成物は、その形状および境界がポリマーによって画定される脂質飽和マトリックスの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物はインプラントの形態である。別の実施形態では、マトリックス組成物は均質である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0071】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のポリマーは、水素結合によってステロールと結合されている。
【0072】
本明細書で提供されるように、本発明の方法および組成物のマトリックス組成物は、様々な厚さおよび形状の三次元構造に成形することができる。従って、形成されるマトリックスは、球体、立方体、ロッド、チューブ、シートまたは糸を含む特定の形状をとるように作製することができる。凍結乾燥の場合、形状は、任意の不活性材料から製造されてよく、球体もしくは立方体については総ての側面で、またはシートについては限定された数の側面で、マトリックスと接していてよい、モールドまたは支持体の形状によって画定される。マトリックスはインプラント設計に必要とされる体腔の形状に成形可能である。マトリックスの一部をハサミ、メス、レーザー光または他の任意の切断器具で切除することで、三次元構造に必要な精密さを作り出すことができる。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0073】
有利には、本発明のマトリックス組成物は、エマルションの形成を含まず、水性媒体を一緒に使わなくてもすむ方法によって調製される。エマルションを生成すると、後に乾燥させるので、必然的に小胞またはマイクロスフェアが生じる。これに対して、水性媒体を用いずに作製されたマトリックスは、任意の形状の三次元製品に成形もしくは形成することができるか、または種々の基板の表面に被覆することができる均質な液体混合物を形成する。成形または被覆された製品を生産するために、選択された適当な揮発性有機溶媒内のポリマーおよび脂質および有効成分の混合物を用いて所望の表面を被覆するか、または所望の形状に適合させる。
【0074】
本発明の方法および組成物のマトリックス組成物は、種々の基板の表面を被覆することができる。被覆される基板は、カーボンファイバー、ステンレス鋼、コバルト−クロム、チタン合金、タンタル、セラミックおよびコラーゲンまたはゼラチンからなる群から選択される材料を含む。具体的には、基板は、整形外科術で用いられる整形外科用ネイル、整形外科用ネジ、整形外科用ステープル、整形外科用ワイヤおよび整形外科用ピン、整形外科および歯周手術の双方で用いられる金属またはポリマーインプラント、骨充填材粒子および吸収性ゼラチンスポンジなどの任意の医療機器を含み得る。骨充填材粒子は、同種(すなわち、ヒト供給源由来)の、異種(すなわち、動物供給源由来)の、および人工の骨粒子のいずれか1つから選択することができる。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、本発明のマトリックス組成物は、骨移植材料として有用である。この用語は、新しい骨芽細胞および骨前駆細胞の接着を補助するか、または未分化幹細胞または骨前駆細胞を骨芽細胞へ分化させることができる天然または合成材料を意味する。別の実施形態では、骨移植材料は、同種移植材、人工生体移植材、異種移植材および自家骨移植材からなる群から選択される。他の例では、本発明の脂質マトリックスはまた、コラーゲン膜またはコラーゲンスポンジまたはゼラチンスポンジなどと併用することができる。
【0076】
脂質
「リン脂質」は、グリセロール骨格に単一のホスファチジル結合と残りの2箇所に脂肪酸を有するホスホグリセリドである。しかしながら、アルキル鎖、アルケニル鎖または少なくとも14個の炭素の他の任意の炭化水素鎖を含む脂肪酸残基以外の炭化水素鎖を有するホスホグリセリドも本発明の範囲内に含まれることを明確に理解すべきである。この結合は、リン脂質に見られるアシル結合の代わりにエーテル結合であってもよい。
【0077】
「ホスファチジルコリン」は、ホスホリルコリン頭基を有するホスホグリセリドを意味する。ホスファチジルコリン化合物は、別の実施形態では、下記の構造を有する。
【化1】

【0078】
RおよびR’部分は脂肪酸、一般には天然に存在する脂肪酸または天然に存在する脂肪酸の誘導体である。いくつかの実施形態では、脂肪酸部分は飽和脂肪酸部分である。いくつかの実施形態では、脂肪酸部分は不飽和脂肪酸部分である。「飽和」とは、炭化水素鎖に二重結合が存在しないことを意味する。別の実施形態では、脂肪酸部分は少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は16〜18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、得られるマトリックスのゲル−液晶転移温度が少なくとも40℃となるように選択される。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともパルミトイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともアラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分はパルミトイルとステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分はパルミトイルとアラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分はアラキドイルとステアロイルである。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0079】
別の実施形態では、ホスファチジルコリンは天然に存在するホスファチジルコリンである。別の実施形態では、ホスファチジルコリンは合成ホスファチジルコリンである。別の実施形態では、ホスファチジルコリンは天然に存在する同位元素分布を含む。別の実施形態では、ホスファチジルコリンは変性ホスファチジルコリンである。別の実施形態では、ホスファチジルコリンは他の任意の同位元素または標識で標識される。好ましくは、ホスファチジルコリンは対称ホスファチジルコリン(すなわち、2つの脂肪酸部分が同一であるホスファチジルコリン)である。別の実施形態では、ホスファチジルコリンは非対称ホスファチジルコリンである。
【0080】
ホスファチジルコリンの限定されない例は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、ジオレオイル−ホスファチジルコリン(DOPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルコリン、および上記に列挙された脂肪酸部分のいずれかで修飾されたホスファチジルコリンである。別の実施形態では、ホスファチジルコリンは、DSPCおよびDOPCおよび1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルコリンからなる群から選択される。
【0081】
別の実施形態では、ホスファチジルコリンは、当技術分野で公知の他の任意のホスファチジルコリンである。各ホスファチジルコリンは本発明の別の実施形態に相当する。
【0082】
「ホスファチジルエタノールアミン」とは、ホスホリルエタノールアミン頭基を有するホスホグリセリドを意味する。ホスファチジルエタノールアミン化合物は、別の実施形態では、下記の構造を有する。
【化2】

【0083】
およびR部分は脂肪酸、一般には天然に存在する脂肪酸または天然に存在する脂肪酸の誘導体である。別の実施形態では、脂肪酸部分は飽和脂肪酸部分である。「飽和」とは、別の実施形態では、炭化水素鎖に二重結合が存在しないことを意味する。別の実施形態では、脂肪酸部分は少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は少なくとも16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は14〜18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は14〜16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は16〜18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、得られるマトリックスのゲル−液晶転移温度が少なくとも40℃となるように選択される。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともミリストイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともパルミトイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともアラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分はミリストイルとステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分はミリストイルとアラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分はミリストイルとパルミトイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分はパルミトイルとステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分はパルミトイルとアラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分はアラキドイルとステアロイルである。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0084】
別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは天然に存在するホスファチジルエタノールアミンである。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは合成ホスファチジルエタノールアミンである。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは変性ホスファチジルエタノールアミンである。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは他の任意の同位元素または標識で標識される。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは天然に存在する同位元素分布を含む。好ましくは、ホスファチジルエタノールアミンは対称ホスファチジルエタノールアミンである。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは非対称ホスファチジルエタノールアミンである。
【0085】
ホスファチジルエタノールアミンの限定されない例は、ジメチルジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)およびジパルミトイル−ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、および上記に列挙された脂肪酸部分のいずれかで修飾されたホスファチジルエタノールアミンである。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンはDMPEおよびDPPEからなる群から選択される。
【0086】
別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは当技術分野で公知の他の任意のホスファチジルエタノールアミンである。各ホスファチジルエタノールアミンは本発明の別の実施形態に相当する。
【0087】
一実施形態において「ステロール」とは、A環の3位にヒドロキシル基を有するステロイドを意味する。別の実施形態では、この用語は、下記の構造を有するステロイドを意味する。
【化3】

【0088】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のステロールは動物ステロールである。別の実施形態では、ステロールはコレステロールである。
【化4】

【0089】
別の実施形態では、ステロールは当技術分野で公知の他の任意の動物ステロールである。別の実施形態では、ステロールのモルは、総脂質パーセントのモルの最大40%である。別の実施形態では、ステロールはマトリックス組成物に組み込まれる。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0090】
別の実施形態では、コレステロールは、マトリックス組成物の脂質含量の総重量の10〜50パーセンテージの量で存在する。別の実施形態では、その重量パーセンテージは20〜50%である。別の実施形態では、その重量パーセンテージは10〜40%である。別の実施形態では、その重量パーセンテージは30〜50%である。別の実施形態では、その重量パーセンテージは20〜60%である。別の実施形態では、その重量パーセンテージは25〜55%である。別の実施形態では、その重量パーセンテージは35〜55%である。別の実施形態では、その重量パーセンテージは30〜60%である。別の実施形態では、その重量パーセンテージは30〜55%である。別の実施形態では、その重量パーセンテージは20〜50%である。別の実施形態では、その重量パーセンテージは25〜55%である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0091】
別の実施形態では、本発明の組成物は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンまたはステロール以外の脂質をさらに含む。別の実施形態では、この付加的脂質はホスホグリセリドである。別の実施形態では、この付加的脂質は、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、およびホスファチジルイノシトールからなる群から選択される。別の実施形態では、この付加的脂質は、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、およびスフィンゴミエリンからなる群から選択される。別の実施形態では、上記付加的脂質のいずれか2以上の組合せが存在する。別の実施形態では、ポリマー、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ステロール、および付加的脂質は全て、マトリックス組成物に組み込まれる。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0092】
別の実施形態では、ホスファチジルコリン(PC)は、マトリックス組成物の総脂質含量の少なくとも30%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の少なくとも35%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の少なくとも40%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の少なくとも45%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の少なくとも50%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の少なくとも55%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の少なくとも60%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の少なくとも65%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の少なくとも70%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の少なくとも75%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の少なくとも80%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の少なくとも85%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の少なくとも90%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の少なくとも95%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の95%超を構成する。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0093】
別の実施形態では、本発明の組成物は、ホスファチジルセリンをさらに含む。「ホスファチジルセリン」とは、ホスホリルセリン頭基を有するホスホグリセリドを意味する。ホスファチジルセリン化合物、別の実施形態では、下記の構造を有する。
【化5】

【0094】
およびR部分は脂肪酸、一般には天然に存在する脂肪酸または天然に存在する脂肪酸の誘導体である。別の実施形態では、脂肪酸部分は飽和脂肪酸部分である。別の実施形態では、脂肪酸部分は少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は少なくとも16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、得られるマトリックスのゲル−液晶転移温度が少なくとも40℃となるように選択される。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともミリストイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともパルミトイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともアラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分はミリストイルとステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、上記の脂肪酸部分の2つの組合せである。
【0095】
別の実施形態では、ホスファチジルセリンは天然に存在するホスファチジルセリンである。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは合成ホスファチジルセリンである。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは変性ホスファチジルセリンである。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは他の任意の同位元素または標識で標識される。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは天然に存在する同位元素分布を含む。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは対称ホスファチジルセリンである。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは非対称ホスファチジルセリンである。
【0096】
ホスファチジルセリンの限定されない例は、上記に列挙された脂肪酸部分のいずれかで修飾されたホスファチジルセリンである。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは当技術分野で公知の他の任意のホスファチジルセリンである。各ホスファチジルセリンは本発明の別の実施形態に相当する。
【0097】
別の実施形態では、本発明の組成物は、ホスファチジルグリセロールをさらに含む。「ホスファチジルグリセロール」とは、ホスホリルグリセロール頭基を有するホスホグリセリドを意味する。ホスファチジルグリセロール化合物は、別の実施形態では、下記の構造を有する。
【化6】

【0098】
左への2つの結合は、脂肪酸、一般には天然に存在する脂肪酸または天然に存在する脂肪酸の誘導体に接続されている。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは天然に存在するホスファチジルグリセロールである。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは合成ホスファチジルグリセロールである。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは変性ホスファチジルグリセロールである。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは他の任意の同位元素または標識で標識される。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは天然に存在する同位元素分布を含む。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは対称ホスファチジルグリセロールである。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは非対称ホスファチジルグリセロールである。別の実施形態では、この用語は、下記の構造を有するジホスファチジルグリセロール化合物を含む。
【化7】

【0099】
RおよびR’部分は脂肪酸、一般には天然に存在する脂肪酸または天然に存在する脂肪酸の誘導体である。別の実施形態では、脂肪酸部分は飽和脂肪酸部分である。別の実施形態では、脂肪酸部分は少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は少なくとも16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、得られるマトリックスのゲル−液晶転移温度が少なくとも40℃となるように選択される。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともミリストイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともパルミトイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともアラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分はミリストイルとステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、上記の脂肪酸部分の2つの組合せである。
【0100】
ホスファチジルグリセロールの限定されない例は、上記に列挙された脂肪酸部分のいずれかで修飾されたホスファチジルグリセロールである。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは、当技術分野で公知の他の任意のホスファチジルグリセロールである。各ホスファチジルグリセロールは本発明の別の実施形態に相当する。
【0101】
別の実施形態では、本発明の組成物は、ホスファチジルイノシトールをさらに含む。「ホスファチジルイノシトール」とは、ホスホリルイノシトール頭基を有するホスホグリセリドを意味する。ホスファチジルイノシトール化合物は、別の実施形態では、下記の構造を有する。
【化8】

【0102】
およびR部分は脂肪酸、一般には天然に存在する脂肪酸または天然に存在する脂肪酸の誘導体である。別の実施形態では、脂肪酸部分は飽和脂肪酸部分である。別の実施形態では、脂肪酸部分は少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は少なくとも16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、得られるマトリックスのゲル−液晶転移温度が少なくとも40℃となるように選択される。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともミリストイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともパルミトイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は双方ともアラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分はミリストイルとステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、上記の脂肪酸部分の2つの組合せである。
【0103】
別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは天然に存在するホスファチジルイノシトールである。別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは合成ホスファチジルイノシトールである。別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは変性ホスファチジルイノシトールである。別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは他の任意の同位元素または標識で標識される。別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは天然に存在する同位元素分布を含む。別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは対称ホスファチジルイノシトールである。別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは非対称ホスファチジルイノシトールである。
【0104】
ホスファチジルイノシトールの限定されない例は、上記に列挙された脂肪酸部分のいずれかで修飾されたホスファチジルイノシトールである。別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは当技術分野で公知の他の任意のホスファチジルイノシトールである。各ホスファチジルイノシトールは本発明の別の実施形態に相当する。
【0105】
別の実施形態では、本発明組成物は、スフィンゴ脂質をさらに含む。別の実施形態では、スフィンゴ脂質はセラミドである。別の実施形態では、スフィンゴ脂質はスフィンゴミエリンである。「スフィンゴミエリン」とは、スフィンゴシン由来のリン脂質を意味する。スフィンゴミエリン化合物、別の実施形態では、下記の構造を有する。
【化9】

【0106】
R部分は脂肪酸、一般には天然に存在する脂肪酸または天然に存在する脂肪酸の誘導体である。別の実施形態では、スフィンゴミエリンは天然に存在するスフィンゴミエリンである。別の実施形態では、スフィンゴミエリンは合成スフィンゴミエリンである。別の実施形態では、スフィンゴミエリンは変性スフィンゴミエリンである。別の実施形態では、スフィンゴミエリンは他の任意の同位元素または標識で標識される。別の実施形態では、スフィンゴミエリンは天然に存在する同位元素分布を含む。
【0107】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のスフィンゴミエリンの脂肪酸部分は少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は少なくとも16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、得られるマトリックスのゲル−液晶転移温度が少なくとも40℃となるように選択される。
【0108】
スフィンゴミエリンの限定されない例は、上記に列挙された脂肪酸部分のいずれかで修飾されたスフィンゴミエリンである。別の実施形態では、スフィンゴミエリンは当技術分野で公知の他の任意のスフィンゴミエリンである。各スフィンゴミエリンは本発明の別の実施形態に相当する。
【0109】
「セラミド」とは、下記の構造を有する化合物を意味する。
【化10】

【0110】
R部分は脂肪酸、一般には天然に存在する脂肪酸または天然に存在する脂肪酸の誘導体である。別の実施形態では、脂肪酸は長鎖である(C24またはそれを超える)。別の実施形態では、脂肪酸は飽和脂肪酸である。別の実施形態では、脂肪酸はモノエン脂肪酸である。別の実施形態では、脂肪酸はn−9モノエン脂肪酸である。別の実施形態では、脂肪酸は2位にヒドロキシル基を含む。別の実施形態では、脂肪酸は当技術分野で公知の他の好適な脂肪酸である。別の実施形態では、セラミドは天然に存在するセラミドである。別の実施形態では、セラミドは合成セラミドである。別の実施形態では、セラミドはマトリックス組成物に組み込まれる。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0111】
書くスフィンゴ脂質は本発明の別の実施形態に相当する。
【0112】
別の実施形態では、本発明の組成物は、ペグ化脂質をさらに含む。別の実施形態では、PEG部分は500〜5000ダルトンのMWを有する。別の実施形態では、PEG部分は他の好適な任意のMWを有する。好適なPEG修飾脂質の限定されない例としては、欠きに示される、メトキシ末端基を有するPEG部分、例えば、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジン酸(構造AおよびB)、PEG修飾ジアシルグリセロールおよびジアルキルグリセロール(構造CおよびD)、PEG修飾ジアルキルアミン(構造E)およびPEG修飾1,2−ジアシルオキシプロパン−3−アミン(構造F)が挙げられる。別の実施形態では、PEG部分は、当技術分野で用いられる他の任意の末端基を有する。別の実施形態では、ペグ化脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、PEG修飾ジアルキルアミン、およびPEG修飾1,2−ジアシルオキシプロパン−3−アミンからなる群から選択される。別の実施形態では、ペグ化脂質は、当技術分野で公知の他の任意のペグ化リン脂質である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【化11】

【0113】
好ましくは、ペグ化脂質は、マトリックス組成物中の総脂質の10モルパーセント未満の量で存在する。別の実施形態では、そのパーセンテージは総脂質の9モル%未満である。別の実施形態では、そのパーセンテージは8モル%未満である。別の実施形態では、そのパーセンテージは7モル%未満である。別の実施形態では、そのパーセンテージは6モル%未満である。別の実施形態では、そのパーセンテージは5モル%未満である。別の実施形態では、そのパーセンテージは4モル%未満である。別の実施形態では、そのパーセンテージは3モル%未満である。別の実施形態では、そのパーセンテージは2モル%未満である。別の実施形態では、そのパーセンテージは1モル%未満である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0114】
ポリマー
いくつかの実施形態によれば、非生分解性ポリマーは、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)アクリレート、ポリメタクリレート(例えば、PEGメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルメタクリレート、ポリラウリルメタクリレート、ポリヒドロキシルエチルメタクリレート)、ポリ−メチルアクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、ポリスチレン、誘導体化ポリスチレン、ポリリジン、ポリN−エチル−4−ビニル−ピリジニウムブロミド、シリコーン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、フッ化ポリビニル、エチレン−酢酸ビニルポリマーとアシル置換セルロースアセテートポリマーのコポリマー、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0115】
特定の実施形態によれば(According to particulate embodiment)、非生分解性ポリマーはポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールは、エチレンオキシドのオリゴマーまたはポリマーを意味する。特定の実施形態によれば、非生分解性ポリマーは、約1000〜約20000の間、あるいは2000〜約10000の間の分子量を有するポリエチレングリコールを含む。いくつかの例示的実施形態によれば、非生分解性ポリマーは、約4000〜約8000の間の分子量を有するPEGである。
【0116】
いくつかの実施形態によれば、マトリックス組成物は、生分解性ポリマーをさらに含み得る。いくつかの実施形態によれば、マトリックス組成物は、ポリエステル以外の生分解性ポリマーを含み得る。いくつかの他の実施形態によれば、生分解性ポリマーは、ポリ(カプロラクトン)、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリシアノアクリレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリ(エーテルエステル)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、生分解性ポリウレタン、それらのブレンドおよびコポリマーからなる群から選択される。いくつかの他の実施形態によれば、生分解性ポリマーはポリエステルである。ポリエステルの限定されない例としては、PLA(ポリ乳酸)、PGA(ポリグリコール酸)およびPLGA(ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)が挙げられる。いくつかの実施形態によれば、PLGAは1:1乳酸/グリコール酸比を有する。別の実施形態では、その比は60:40である。別の実施形態では、その比は70:30である。別の実施形態では、その比は80:20である。別の実施形態では、その比は90:10である。別の実施形態では、その比は95:5である。別の実施形態では、その比は、本明細書で定義される持続的in vivo放出特性に適当な別の比である。別の実施形態では、その比は50:50である。PLGAはランダムコポリマーかまたはブロックコポリマーのいずれかであり得る。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。別の実施形態では、生分解性ポリエステルは、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリプロピレンフマレート、ポリオルトエステル、ポリ無水物、およびポリアルキルシアノアクリレートからなる群から選択することができる(ただし、このポリエステルは水素結合受容部分を含む)。別の実施形態では、生分解性ポリエステルは、PLA、PGA、PLGA、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリプロピレンフマレート、ポリオルトエステル、ポリ無水物、およびポリアルキルシアノアクリレートからなる群から選択されるモノマーのいずれか2つの組合せを含むブロックコポリマーである。別の実施形態では、生分解性ポリエステルは、上記に挙げたモノマーのいずれか2つの組合せを含むランダムコポリマーである。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0117】
本発明の方法および組成物の非生分解性ポリマーの分子量(MW)は、別の実施形態では、約1〜40KDaの間である。別の実施形態では、そのMWは約4〜50KDaの間である。別の実施形態では、そのMWは約15〜40KDaの間である。別の実施形態では、そのMWは約20〜40KDaの間である。別の実施形態では、そのMWは約15〜35KDaの間である。別の実施形態では、そのMWは約10〜35KDaの間である。別の実施形態では、そのMWは約10〜30KDaの間である。別の実施形態では、そのMWは約1〜10KDaの間である。別の実施形態では、そのMWは約1〜5KDaの間である。別の実施形態では、そのMWは約2〜5KDaの間である。別の実施形態では、異なるMWの非生分解性ポリマーの混合物に用いられる。別の実施形態では、異なるMWの非生分解性ポリマーと生分解性ポリマー(biodegradable polyer)の混合物が使用可能である。別の実施形態では、これらの異なるポリマーは双方とも上記の範囲のうち1つのMWを有する。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0118】
抗生物質
本発明の方法および組成物の抗生物質は、別の実施形態では、ドキシサイクリンである。別の実施形態では、抗生物質は疎水性テトラサイクリンである。疎水性テトラサイクリンの限定されない例は、6−デメチル−6−デオキシテトラサイクリン、6−メチレンテトラサイクリン、ミノサイクリン(7−ジメチルアミノ−6−デメチル−6−デオキシテトラサイクリンとしても知られる)、および13−フェニルメルカプト−a−6−デオキシ−テトラサイクリンがある。別の実施形態では、抗生物質は、ドキシサイクリン、テトラサイクリンおよびミノサイクリンからなる群から選択される。別の実施形態では、抗生物質はマトリックス組成物に組み込まれる。
【0119】
別の実施形態では、抗生物質は、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラン酸、ペニシリン、メトロニダゾール、クリンダマイシン、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、オキシテトラサイクリン、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セファクロール、セファマンドール、セファメタゾール(cefametazole)、セフォニシド、セフォテタン、セフォキシチン、セフポドキシム、セフプロジル、セフロキシム、セフジニル、セフィキシム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、リンコマイシン、トロレアンドマイシン、バカンピシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ピペラシリン、チカルシリン、シノキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、グレパフロキサシン、レボフラキサシン、ロメフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、スルフイソキサゾール、スルファシチン、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、ダプソン、アズトレオナム、バシトラシン、カプレオマイシン、クロラムフェニコール、クロファジミン、コリスチメタート、コリスチン、サイクロセリン、ホスホマイシン、フラゾリドン、メテナミン、ニトロフラントイン、ペンタミジン、リファブチン、リファンピン、スペクチノマイシン、トリメトプリム、グルクロン酸トリメトレキサートおよびバンコマイシンからなる群から選択される。
【0120】
別の実施形態では、生物学的に活性な成分は、クロルヘキシジンなどの抗敗血薬である。
【0121】
各抗生物質は本発明の別の実施形態に相当する。
【0122】
NSAID
任意の好適なNSAIDが徐放および/または制御放出のためのマトリックス組成物に組み込まれてよい。本発明の方法および組成物のNSAIDは、一実施形態では、フルルビプロフェである。別の実施形態では、NSAIDは、イブプロフェンおよびフルルビプロフェンからなる群から選択される。別の実施形態では、NSAIDは、イブプロフェン、フルルビプロフェン、アミノサリチル酸ナトリウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸コリン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラクトロメタミン、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナム酸塩、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダック、トルメチンからなる群から選択される。
【0123】
各NSAIDは本発明の別の実施形態に相当する。
【0124】
ステロイド
別の実施形態では、本発明の方法および組成物の活性剤はステロイドである。一実施形態によれば、ステロイドはステロイド系抗炎症薬である。本発明の処方物に用いられるステロイド系抗炎症薬(SAID)の限定されない例としては、限定されるものではないが、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン21−リン酸、フルドロコルチゾン、フルメタゾン、フルオシノニド、フルオシノニドデソニド(fluocinonide desonide)、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオコルトロン、ハルシノニド、ハロプレドン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン17−吉草酸、ヒドロコルチゾン17−酪酸、ヒドロコルチゾン21−酢酸メチルプレドニゾロン(hydrocortisone 21-acetate
methylprednisolone)、プレドニゾロン、プレドニゾロン21−リン酸、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、コルトドキソン、フルオロアセトニド、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオルゾン、フルランドレノロンアセトニド、メドリソン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾンおよびそれの他のエステル、クロロプレドニゾン、クロルコルテロン、デスシノロン、デソニド、ジクロリゾン、ジフルプレドネート、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルコルトロン(flucortolone)、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、メプレドニゾン、メチルメプレドニゾロン、パラメタゾン、酢酸コルチゾン、シクロペンチルプロピオン酸ヒドロコルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、酢酸フルドロコルチゾン、フルランドレノロンアセトニド、メドリソン、アムシナファル、アムシナフィド、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、酢酸クロロプレドニゾン、酢酸クロコルトロン、デスシノロンアセトニド、デスオキシメタゾン、酢酸ジクロリゾン、ジフルプレドネート、フルクロロニド、ピバル酸フルメタゾン、酢酸フルニソリド、酢酸フルペロロン、吉草酸フルプレドニゾロン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾラメート、プレドニバル、トリアムシノロンヘキサアセトニド、コルチバゾール、ホルモコータルおよびニバゾールなどのコルチコステロイドが挙げられる。
【0125】
抗癌剤
本明細書に言及されるように、「抗癌剤」とは、癌および/または癌関連症状の処置に使用可能な任意のタイプの薬剤を意味する。抗癌薬は、癌細胞、癌性腫瘍の増殖および/または生存力、ならびに/または癌関連症状および徴候に直接的または間接的に影響を及ぼし得る天然に存在するまたは合成生産された任意の分子を含み得る。抗癌剤は、例えば、天然に存在するタンパク質またはペプチド、改変されたタンパク質またはペプチド、組換えタンパク質、化学的に合成されたタンパク質またはペプチド、低経口バイオアベイラビリティタンパク質またはペプチド、化学分子、合成化学分子、化学療法薬、生物学的治療薬など、またはそれらの任意の組合せを含み得る。抗癌薬は、細胞傷害性(細胞に対して有毒)および/または細胞増殖抑制性(細胞増殖を抑制する)および/または癌細胞に対して抗増殖性であり得、かつ、癌細胞に対して直接的および/または間接的にその効果を発揮し得る。いくつかの実施形態によれば、抗癌薬は、単独で投与してもよいし、かつ/または1以上の付加的癌処置と組み合わせて、かつ/またはその前および/または後に投与してもよい。付加的癌処置としては、限定されるものではないが、化学療法(癌細胞に影響を及ぼす薬物の使用)、放射線療法(癌細胞に影響を及ぼす様々な起源の高エネルギー放射線の使用)、生物学的療法(癌と闘う免疫系を助ける療法)、外科手術(癌性腫瘍の外科的摘出)、遺伝子療法、骨髄移植、当技術分野で公知の他の任意の療法、またはそれらの任意の組合せなどの処置を含み得る。
【0126】
抗癌薬および化学療法薬の限定されない例としては、限定されるものではないが、限定されるものではないが、ドセタキセル、エトポシド、イリノテカン、パクリタキセル、テニポシド、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンなどのアルカロイド;限定されるものではないが、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、ベンゾデパ、カルボコン、メツレデパ、ウレデパ、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、クロラムブシル、クロラナファジン(Chloranaphazine)、シクロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドHCl、メルファラン、ノブエメビキン(Novemebichin)、ペルホスファミドフェネステリン(Perfosfamide
Phenesterine)、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、セムスチンラニムスチン(Semustine Ranimustine)、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、テモゾロマイドなどのアルキル化剤;限定されるものではないが、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(Cromomycins)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、メノガリル、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ピラルビシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質および類似体;限定されるものではないが、デノプテリン、エダトレキサート、メトトレキサート、ピリトレキシム、プテロプテリン、トムデックス、トリメトレキサート、クラドリジン(Cladridine)、フルダラビン、6−メルカプトプリン、ペントスタチンチアミプリン(Pentostatine
Thiamiprine)、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ドキシフルリジン、エミテフル、フロクスウリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、テガフールなどの代謝拮抗薬;限定されるものではないが、カロプラチン(Caroplatin)、シスプラチン、ミボプラチン、オキサリプラチンなどの白金複合体;限定されるものではないが、ブスルファン(Myleran、Busulfex)、クロラムブシル(Leukeran)、イフォスファミド(メスナを含むまたは含まない)、シクロホスファミド(Cytoxan、Neosar)、グルホスファミド、メルファラン、L−PAM(Alkeran)、ダカルバジン(DTIC-Dome)およびテモゾラミド(temozolamide)(Temodar)を含むアルキル化剤;限定されるものではないが、ドキソルビシン(Adriamycin、Doxil、Rubex)、ミトキサントロン(Novantrone)、イダルビシン(Idamycin)、バルルビシン(Valstar)およびエピルビシン(Ellence)を含むアントラサイクリン;限定されるものではないが、ダクチノマイシン、アクチノマイシンD(Cosmegen)、ブレオマイシン(Blenoxane)、ダウノルビシンおよびダウノマイシン(Cerubidine, DanuoXome)を含む抗生物質;限定されるものではないが、アナストロゾール(Arimidex)およびレトロアゾール(letroazole)(Femara)を含むアロマターゼ阻害剤;限定されるものではないが、ゾレドロネート(Zometa)を含むビスホスホネート;限定されるものではないが、セレコキシブ(Celebrex)を含むシクロオキシゲナーゼ阻害剤;限定されるものではないが、タモキシフェン(Nolvadex)およびフルベストラント(Faslodex)を含むエストロゲン受容体調節薬;限定されるものではないが、メトトレキサートおよびトレメトレキサート(tremetrexate)を含む葉酸拮抗薬;限定されるものではないが、三酸化ヒ素(Trisenox)を含む無機ヒ酸塩;限定されるものではないが、ビンクリスチン(Oncovin)、ビンブラスチン(Velban)、パクリタキセル(Taxol、Paxene)、ビノレルビン(Navelbine)、エポチロンBまたはDまたはいずれかの誘導体、およびディスコデルモリドまたはその誘導体を含む微小管阻害剤(例えば、タキサン);限定されるものではないが、プロカルバジン(Matulane)、ロムスチン、CCNU(CeeBU)、カルムスチン(BCNU、BiCNU、Gliadel
Wafer)、およびエストラムスチン(Emcyt)を含むニトロソ尿素;限定されるものではないが、メルカプトプリン、6−MP(Purinethol)、フルオロウラシル、5−FU(Adrucil)、チオグアニン、6−TG(Thioguanine)、ヒドロキシ尿素(Hydrea)、シタラビン(Cytosar-U、DepoCyt)、フロクスウリジン(FUDR)、フルダラビン(Fludara)、ペントスタチン(Nipent)、クラドリビン(Leustatin、2-CdA)、ゲムシタビン(Gemzar)、およびカペシタビン(Xeloda)を含むヌクレオシド類似体;限定されるものではないが、パミドロネート(Aredia)を含む破骨細胞阻害剤;限定されるものではないが、シスプラチン(Platinol)およびカルボプラチン(Paraplatin)を含む白金含有化合物;限定されるものではないが、トレチノイン、ATRA(Vesanoid)、アリトレチノイン(Panretin)、およびベキサロテン(Targretin)を含むレチノイド;限定されるものではないが、トポテカン(Hycamtin)およびイリノテカン(Camptostar)を含むトポイソメラーゼ1阻害剤;限定されるものではないが、エトポシド、VP−16(Vepesid)、テニポシド、VM−26(Vumon)、およびリン酸エトポシド(Etopophos)を含むトポイソメラーゼ2阻害剤;限定されるものではないが、イマチニブ(Gleevec)を含むチロシンキナーゼ阻害剤;モノクローナル抗体、ペプチドおよび酵素を含む他の種々のタンパク質;例えば、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、レプチンなどの他の種々の分子;フラボノイド;またはそれらの任意の組合せといった薬物が挙げられる。
【0127】
いくつかの実施形態に従って使用することができる抗癌剤および生物学的治療薬の限定されない例としては、限定されるものではないが、例えば、腫瘍抗原、抗体、サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、インターロイキン2、インターロイキン4、インターロイキン12など)、インターフェロン(例えば、インターフェロンE1、インターフェロンD、インターフェロンαなど)、腫瘍壊死因子(TNF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファーコロニー刺激因子(M−CSF)および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)など)、腫瘍抑制遺伝子、ケモカイン、補体成分、補体成分受容体、免疫系補助分子、接着分子、接着分子受容体、細胞生体エネルギー論に影響を及ぼす薬剤、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される分子などの免疫調節分子の投与といった療法および分子が挙げられる。
【0128】
骨形成因子
別の実施形態では、本発明の方法および組成物の活性剤は、骨の形成を誘導または刺激する化合物である。別の実施形態では、活性剤は骨形成因子である。別の実施形態では、骨形成因子は、骨の形成を誘導または刺激するペプチド、ポリペプチド、タンパク質または他の任意の化合物または組成物を意味する。別の実施形態では、骨形成因子は、骨修復細胞の、骨芽細胞または骨細胞(osteocytes)などの骨細胞(bone cells)への分化を誘導する。別の実施形態では、骨形成因子はTGF−β、BMPおよびFGFからなる群から選択される。別の実施形態では、骨形成因子は、骨修復細胞の、骨を形成する骨細胞(bone cells)への分化を誘導するのに十分な濃度で本発明のマトリックス組成物内に封入される。
【0129】
骨吸収阻害剤
別の実施形態では、本発明の方法および組成物の活性剤は、骨の回復を補助するのに有用な化合物である。別の実施形態では、活性剤は骨吸収阻害剤である。別の実施形態では、活性剤は骨密度維持薬である。別の実施形態では、化合物は、オステオプロテゲリン(OPG)、BMP−2、BMP−4、血管内皮増殖因子(VEGF)、アレンドロネート、エチドロン酸二ナトリウム、パミドロネート、リセドロネートおよびチルドロネートからなる群から選択される。別の実施形態では、化合物は、破骨細胞の成熟および活性を阻害し、かつ破骨細胞のアポトーシスを誘導する天然に分泌されるデコイレセプターであるオステオプロテゲリン(OPG)である。別の実施形態では、活性剤は、骨再建要素である。骨再建要素の限定されない例がBMPペプチドである。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0130】
別の実施形態では、化合物は骨形成因子(BMP)である。別の実施形態では、化合物は、骨芽細胞活性を加速化するBMP−2およびBMP−4からなる群から選択される。
【0131】
別の実施形態では、化合物は血管内皮増殖因子(VEGF)である。
【0132】
別の実施形態では、化合物はエストロゲンである。別の実施形態では、化合物はビスホスホネート誘導体からなる群から選択される。別の実施形態では、ビスホスホネート誘導体は、アレンドロネート、エチドロン酸二ナトリウム、パミドロネート、リセドロネートおよびチルドロネートからなる群から選択される。
【0133】
各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0134】
抗真菌薬
別の実施形態では、生物学的に活性な成分は、抗真菌薬、例えば、アムホテリシンB硫酸コレステリル複合体、ナタマイシン、アムホテリシン、クロトリマゾール、ナイスタチン、アムホテリシンB脂質複合体、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、安息香酸およびサリチル酸、ベタメタゾンおよびクロトリマゾール、ブテナフィン、石炭酸フクシン、シクロピロクス、クリオキノール、クリオキノールおよびヒドロコルチゾン、クロトリマゾール、エコナゾール、ゲンチアナバイオレット、ハロプロジン、ヨードキノールおよびヒドロコルチゾン、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナフチフィン、ナイスタチン、ナイスタチンおよびトリアムシノロン、オキシコナゾール、チオ硫酸ナトリウム、スルコナゾール、テルビナフィン、トルナフタート、トリアセチン、ウンデシレン酸およびその誘導体、ブトコナゾール、クロトリマゾール、スルファニルアミド、テルコナゾール、およびチオコナゾールである。
【0135】
ターゲティング部分
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のマトリックス組成物は、標的分子と相互作用し得るターゲティング部分をさらに含む。好ましくは、標的分子は、コラーゲン分子、フィブリン分子およびヘパリンからなる群から選択される。別の実施形態では、標的分子は、標的細胞の細胞外マトリックス(ECM)の一部を形成するもう1つの表面分子である。ECMは細胞によって生産され、局部的に組み立てられる。ECMの組み立ておよび維持に関与する最も重要な細胞は繊維芽細胞である。ECMは、GAG(グリオサミノグリカン(glyosaminoglycan))と呼ばれる多糖鎖と種々のタンパク質繊維、例えば、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチンおよびラミニンを含む。
【0136】
別の実施形態では、ターゲティング部分はフィブロネクチンペプチドである。フィブロネクチンは、コラーゲン、繊維素およびヘパリンなどのECM成分と結合する高分子量糖タンパク質である。別の実施形態では、ターゲティング部分は、コラーゲン分子、フィブリン分子およびヘパリンからなる群から選択される標的分子と相互作用し得るもう1つのターゲティング部分である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0137】
「フィブロネクチンペプチド」とは、別の実施形態では、全長フィブロネクチンタンパク質を意味する。別の実施形態では、この用語は、フィブロネクチンの断片を意味する。別の実施形態では、この断片は、コラーゲン結合ドメインを含む。フィブロネクチン分子のコラーゲン結合ドメインは当技術分野で周知であり、例えば、Hynes, RO (1990). Fibronectins. New York: Springer-VerlagおよびYamada, KM and Clark, RAF (1996). Provisional matrix. In The
Molecular and Cellular Biology of Wound Repair (ed. R. A. F. Clark), pp. 51-93.
New York: Plenum Pressに記載されている。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0138】
別の実施形態では、ターゲティング部分はマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、ターゲティング部分は、脂質マトリックスへの組込み能を付与するように改変される。別の実施形態では、この改変は、脂質部分との結合を含む。脂質部分の限定されない例は、水素化ホスファチジルエタノールアミン(HPE)をである。しかしながら、脂質マトリックスに組込み可能ないずれの脂質部分も好適である。別の実施形態では、ターゲティング部分は、改変無しで脂質マトリックスに組込み可能である。別の実施形態では、ターゲティング部分は、本発明のマトリックス組成物の表面に結合される。別の実施形態では、ターゲティング部分は、ターゲティング部分に共有結合されている疎水性アンカーによってマトリックス組成物または小胞の表面に結合される。別の実施形態では、ターゲティング部分は、疎水性アンカーによって脂質小胞に結合される。別の実施形態では、ターゲティング部分はマトリックス組成物の製造中に含められ、マトリックスの表面だけでなくより深層にも位置することが可能となる。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0139】
一実施形態において、標的分子はコラーゲンである。コラーゲンは当技術分野で周知であり、例えば、Khoshnoodi J et al (Molecular recognition in the assembly of
collagens: terminal noncollagenous domains are key recognition modules in the
formation of triple helical protomers. J Biol Chem. 281(50):38117-21, 2006)に記載されている。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0140】
一実施形態において、標的分子はフィブリンである。フィブリンは当技術分野で周知であり、例えば、Valenick LV et al (Fibronectin fragmentation promotes alpha4beta1
integrin-mediated contraction of a fibrin-fibronectin provisional matrix. Exp
Cell Res 309(1):48-55, 2005)およびMosesson MW (Fibrinogen
and fibrin structure and functions. J Thromb Haemost 3(8):1894-904, 2005)に記載されている。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0141】
一実施形態において、標的分子はヘパリンである。ヘパリンは当技術分野で周知であり、例えば、Mosesson MW (Fibrinogen and fibrin structure and functions. J Thromb
Haemost 3(8):1894-904, 2005)に記載されている。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0142】
付加的成分
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のマトリックス組成物は、遊離脂肪酸をさらに含む。別の実施形態では、遊離脂肪酸はオメガ−6脂肪酸である。別の実施形態では、遊離脂肪酸はオメガ−9脂肪酸である。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、オメガ−6およびオメガ−9脂肪酸からなる群から選択される。別の実施形態では、遊離脂肪酸は14個以上の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は16個以上の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は16〜22個の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は16〜20個の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は16〜18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は18〜22個の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は18〜20個の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸はリノール酸である。別の実施形態では、遊離脂肪酸はリノレン酸である。別の実施形態では、遊離脂肪酸はオレイン酸である。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、リノール酸、リノレン酸およびオレイン酸からなる群から選択される。別の実施形態では、遊離脂肪酸は当技術分野で公知の別の適当な遊離脂肪酸である。別の実施形態では、遊離脂肪酸はマトリックス組成物に柔軟性を付与する。別の実施形態では、遊離脂肪酸はin vivo放出速度を緩慢にする。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、in vivo制御放出の一貫性を改善する。いくつかの実施形態では、脂肪酸は不飽和である。別の実施形態では、遊離脂肪酸は飽和している。別の実施形態では、少なくとも14個の炭素原子を有する飽和脂肪酸を組み込むと、得られるマトリックス組成物のゲル−流体転移温度が上昇する。
【0143】
別の実施形態では、遊離脂肪酸はマトリックス組成物に組み込まれる。各タイプの脂肪酸は本発明の別の実施形態に相当する。
【0144】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のマトリックス組成物は、トコフェロールをさらに含む。本発明の方法および組成物のトコフェロールは、別の実施形態では、E307(α−トコフェロール)である。別の実施形態では、トコフェロールはβ−トコフェロールである。別の実施形態では、トコフェロールはE308(γ−トコフェロール)である。別の実施形態では、トコフェロールはE309(δ−トコフェロール)である。別の実施形態では、トコフェロールは、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロールおよびδ−トコフェロールからなる群から選択される。別の実施形態では、トコフェロールはマトリックス組成物に組み込まれる。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0145】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のマトリックス組成物は、当技術分野で周知の生理学上許容されるバッファー塩をさらに含む。生理学上許容されるバッファー塩の限定されない例は、リン酸バッファーである。リン酸バッファーの典型例は、40部のNaCl、1部のKCl、7部のNaHPO・2HOおよび1部のKHPOである。別の実施形態では、バッファー塩は当技術分野で公知の他の任意の生理学上許容されるバッファー塩である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0146】
マトリックス組成物の放出速度および一般的特徴
マトリックス組成物からの放出特徴は、長時間にわたってマトリックス内から所望の作用部位へ1種類または複数の活性剤の徐放をもたらすように設計される。徐放特性は、数日または数週間またはさらには数ヶ月の期間、少なくともマトリックス組成物の局所的近傍に治療上有効な量の薬物をもたらす。これらの組成物では、所望の局所的作用部位に治療効果をもたらすために即時放出される活性剤のパーセンテージは低く、材料の大部分は長時間にわたって放出される。一般に、10〜20%までがマトリックス組成物から即時放出され得る。いくつかの実施形態によれば、薬剤の大部分の放出特性は零次反応速度論を達成する。いくつかの実施形態によれば、活性剤の40〜70%が零次反応速度論の下で放出される。いくつかの実施形態によれば、放出特性はin vitroで測定可能である。他の実施形態によれば、放出特性はin vivoで測定可能である。さらに他の実施形態によれば、in vivo放出は限局化され、全身薬物レベルには反映されない。
【0147】
本発明のマトリックス組成物に関して有効成分の90%のin vivo放出時間は好ましくは1週間〜6か月の間であり。別の実施形態では、放出時間は4日〜6か月の間である。別の実施形態では、放出時間は1週間〜5か月の間である。別の実施形態では、放出時間は1週間〜5か月の間である。別の実施形態では、放出時間は1週間〜4か月の間である。別の実施形態では、放出時間は1週間〜3か月の間である。別の実施形態では、放出時間は1週間〜2か月の間である。別の実施形態では、放出時間は2週間〜6か月の間である。別の実施形態では、放出時間は2週間〜5か月の間である。別の実施形態では、放出時間は2週間〜4か月の間である。別の実施形態では、放出時間は2週間〜3か月の間である。別の実施形態では、放出時間は3週間〜6か月の間である。別の実施形態では、放出時間は3週間〜5か月の間である。別の実施形態では、放出時間は3週間〜4か月の間である。別の実施形態では、放出時間は3週間〜3か月の間である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0148】
本明細書において「生分解性」とは、生理学的pHで天然の生体プロセスによって分解され得る物質を意味する。「生理学的pH」とは、身体組織のpH、一般に6〜8の間を意味する。「生理学的pH」は、一般に1〜3の間である胃液の高酸性pHを意味しない。
【0149】
本明細書において「非生分解性」とは、通常の哺乳類の生理学的条件下では分解または腐食されない物質を意味する。一般に、ある物質が、この物質がその投与後に体内に通常保持される平均時間の間中、生物学的薬剤の作用によって有意な程度(すなわち、その質量および/または平均ポリマー長の5%を超える損失を生じる)まで分解されなければそれは非生分解性であるとみなされる。
【0150】
脂質飽和を達成するための総脂質とポリマーの重量比は、本明細書に記載されているようにいくつかの方法によって決定することができる。別の実施形態では、本発明の組成物の脂質:ポリマー重量比は1:1〜9:1(含む)の間である。別の実施形態では、その比は2:1〜9:1(含む)の間である。別の実施形態では、その比は3:1〜9:1(含む)の間である。別の実施形態では、その比は4:1〜9:1(含む)の間である。別の実施形態では、その比は5:1〜9:1(含む)の間である。別の実施形態では、その比は6:1〜9:1(含む)の間である。別の実施形態では、その比は7:1〜9:1(含む)の間である。別の実施形態では、その比は8:1〜9:1(含む)の間である。別の実施形態では、その比は1.5:1〜9:1(含む)の間である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0151】
別の実施形態では、本発明のマトリックス組成物中の脂質の融解温度(T)は少なくとも37℃である。別の実施形態では、Tは少なくとも40℃である。別の実施形態では、Tは少なくとも42℃である。別の実施形態では、Tは少なくとも44℃である。別の実施形態では、Tは少なくとも46℃である。別の実施形態では、Tは少なくとも48℃である。別の実施形態では、Tは少なくとも50℃である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0152】
インプラントおよび他の医薬組成物
別の実施形態では、本発明のマトリックス組成物は、有機溶媒を蒸発させた後、インプラントの形態である。溶媒の蒸発は一般に20〜80℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態によれば、溶媒の蒸発は20〜60℃の範囲の温度で行うことができる。
【0153】
別の実施形態では、インプラントは均質である。別の実施形態では、インプラントは、モールド内で材料を凍結乾燥させる工程を含むプロセスによって製造される。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0154】
別の実施形態では、本発明は、抗生物質を含有する本発明のマトリックス組成物を含むインプラントを提供する。別の実施形態では、本発明は、NSAIDを含有する本発明のマトリックス組成物を含むインプラントを提供する。別の実施形態では、本発明は、骨吸収阻害剤を含有する本発明のマトリックス組成物を含むインプラントを提供する。別の実施形態では、本発明は、抗生物質およびNSAIDを含有する本発明のマトリックス組成物を含むインプラントを提供する。別の実施形態では、本発明は、抗生物質および骨吸収阻害剤を含有する本発明のマトリックス組成物を含むインプラントを提供する。別の実施形態では、本発明は、骨吸収阻害剤およびNSAIDを含有する本発明のマトリックス組成物を含むインプラントを提供する。別の実施形態では、本発明は、抗生物質、NSAIDおよび骨吸収阻害剤を含有する本発明のマトリックス組成物を含むインプラントを提供する。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0155】
別の実施形態では、本発明の組成物からインプラントを作出するプロセスは、(a)本発明の方法によるマトリックス組成物をバルク材料の形態で作出する工程;(b)そのバルク材料を所望の形状のモールドまたは固相レセプタクルに移す工程;(c)バルク材料を凍結させる工程;および(d)バルク材料を凍結乾燥させる工程を含む。
【0156】
別の実施形態では、本発明は、本発明のマトリックス組成物と薬学上許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0157】
別の実施形態では、本発明のマトリックス組成物は、有機溶媒を蒸発させた後、マイクロスフェアの形態である。別の実施形態では、マイクロスフェアは均質である。別の実施形態では、マイクロスフェアは、噴霧乾燥の工程を含むプロセスによって製造される。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0158】
別の実施形態では、本発明は、本発明のマトリックス組成物から製造されたマイクロスフェアを提供する。別の実施形態では、本発明は、本発明のマイクロスフェアと薬学上許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。別の実施形態では、医薬組成物は非経口的に注射可能な形態である。別の実施形態では、医薬組成物は注入可能な形態である。別の実施形態では、賦形剤は注射に適合したものである。別の実施形態では、賦形剤は注入に適合したものである。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0159】
別の実施形態では、本発明のマイクロスフェアの粒径はおよそ500〜2000nmである。別の実施形態では、粒径は約400〜2500nmである。別の実施形態では、粒径は約600〜1900nmである。別の実施形態では、粒径は約700〜1800nmである。別の実施形態では、粒径は約500〜1800nmである。別の実施形態では、粒径は約500〜1600nmである。別の実施形態では、粒径は約600〜2000nmである。別の実施形態では、粒径は約700〜2000nmである。別の実施形態では、粒子は医薬投与に好適な他の任意のサイズである。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0160】
治療方法
別の実施形態では、本発明は、必要とする被験体に抗生物質を投与する方法であって、被験体に本発明のマトリックス組成物を投与し、それにより、必要とする被験体に抗生物質を投与することを含む方法を提供する。別の実施形態では、マトリックス組成物を含む医薬組成物が投与される。別の実施形態では、マトリックス組成物を含むインプラントが投与される。別の実施形態では、マトリックス組成物を含む注射可能な処方物が注射される。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0161】
別の実施形態では、本発明は、必要とする被験体に非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を投与方法であって、被験体に本発明のマトリックス組成物を投与し、それにより、必要とする被験体にNSAIDを投与することを含む方法を提供する。別の実施形態では、マトリックス組成物を含む医薬組成物が投与される。別の実施形態では、マトリックス組成物を含むインプラントが投与される。別の実施形態では、マトリックス組成物を含む注射可能な処方物が注射される。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0162】
別の実施形態では、本発明は、本発明のマトリックス組成物を含む、必要とする被験体に抗生物質を投与するための医薬組成物を提供する。別の実施形態では、医薬組成物はインプラントである。別の実施形態では、医薬組成物は注射可能な組成物である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0163】
別の実施形態では、本発明は、本発明のマトリックス組成物を含む、必要とする被験体にNSAIDを投与するための医薬組成物を提供する。別の実施形態では、医薬組成物はインプラントである。別の実施形態では、医薬組成物は注射可能な組成物である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0164】
別の実施形態では、本発明は、本発明のマトリックス組成物を含む、必要とする被験体に抗生物質およびNSAIDを同時投与するための医薬組成物を提供する。別の実施形態では、医薬組成物はインプラントである。別の実施形態では、医薬組成物は注射可能な組成物である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0165】
別の実施形態では、本発明は、必要とする被験体において歯周炎を処置する方法であって、該被験体に本発明のマトリックス組成物を投与し、それにより、歯周炎を処置する工程を含む方法を提供する。「歯周炎」とは、歯を取り巻き、支持する組織を侵す炎症性疾患を意味する。別の実施形態では、歯周炎は歯の周囲の歯槽骨の進行性の欠損を含み、処置せずに放置すると、ついには歯がぐらぐらし、続いて歯を失うことになる。歯周炎は細菌性の病因を持つ場合もある。別の実施形態では、歯周炎は慢性歯周炎である。別の実施形態では、歯周炎は当技術分野で公知の他の任意のタイプの歯周炎である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0166】
別の実施形態では、本発明は、必要とする被験体において骨造成を刺激する方法であって、被験体に本発明のマトリックス組成物を投与し、それにより、骨造成を刺激する工程を含む方法を提供する。別の実施形態では、被験体は、骨肉腫/骨悪性繊維性組織球腫(PDQ)、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性繊維性組織球腫、繊維肉腫および悪性繊維性組織球腫、骨巨大細胞腫瘍、脊索腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、変形性関節症、パジェット骨病、関節炎、変性変化、骨粗鬆症、骨形成不全症、骨棘、腎性骨異栄養症、副甲状腺機能亢進症、骨髄炎、内軟骨腫、骨軟骨腫、大理石骨病、および糖尿病に関連する骨または関節疾患からなる群から選択される疾患または障害を有する。別の実施形態では、マトリックス組成物はインプラントの形態である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0167】
別の実施形態では、本発明は、必要とする被験体において整形外科術由来の合併症の罹患率を低減する方法であって、被験体に本発明のマトリックス組成物を投与し、それにより、整形外科術由来の合併症の罹患率を低減する工程を含む方法を提供する。別の実施形態では、整形外科術は、手の手術、肩および肘の手術、全関節再建(関節形成術)、小児整形外科、足および足首手術、脊椎手術、膝関節鏡検査、膝関節半月板切除術、肩関節鏡検査、肩減圧術、手根管開放術、膝軟骨整復術、補助インプラントの除去、膝前十字靱帯再建、膝関節置換術、大腿骨頸部骨折の修復、転子部骨折の修復、皮膚、筋肉または骨折の創面切除、膝半月の修復、股関節置換術、肩関節鏡検査/鎖骨遠位端切除術、回旋筋腱板腱の修復、橈骨(骨)/尺骨骨折の修復、椎弓切除術、足首骨折(二踝型)の修復、肩関節鏡検査および創面切除、腰椎固定術、橈骨遠位部骨折の修復、腰椎椎間板術、指腱鞘切開術、足首骨折(腓骨)の修復、大腿骨骨折の修復、および転子部骨折の修復からなる群から選択される。別の実施形態では、マトリックス組成物はインプラントの形態である。別の実施形態では、インプラントは整形外科術中に投与される。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0168】
別の実施形態では、本発明は、必要とする被験体において外科的再生法の有効性を増進する方法であって、被験体に本発明のマトリックス組成物を投与し、それにより、外科的再生法の有効性を増進する工程を含む方法を提供する。別の実施形態では、外科的再生法は歯周法である。別の実施形態では、外科的再生法は、インプラントを投与すること(インプラント法)を含む。別の実施形態では、インプラント法は歯肉増大術または洞底挙上術に向けられる。別の実施形態では、マトリックス組成物はインプラントの形態である。別の実施形態では、インプラントは外科術中に投与される。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0169】
別の実施形態では、本発明は、必要とする被験体において骨髄炎を処置する方法であって、被験体に本発明のマトリックス組成物を投与し、それにより、骨髄炎を処置する工程を含む方法を提供する。別の実施形態では、マトリックス組成物インプラントの形態である。別の実施形態では、インプラントは骨髄炎部位またはその近傍に投与される各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0170】
別の実施形態では、本発明のマトリックス組成物は、整形外科用骨および軟組織修復を補助するために投与される。化合物は膝関節鏡検査および膝関節半月板切除術、肩関節鏡検査および減圧術、手根管開放術、膝関節鏡検査および軟骨整復術、補助インプラントの除去、膝関節鏡検査膝前十字靱帯再建、膝関節置換術、大腿骨頸部骨折の修復、転子部骨折の修復、皮膚/筋肉/骨/骨折の創面切除、膝関節鏡検査、両半月の修復、股関節置換術、肩関節鏡検査/鎖骨遠位端切除術、回旋筋腱板腱の修復、橈骨(骨)/尺骨骨折の修復、椎弓切除術、足首骨折(二踝型)の修復、肩関節鏡検査および創面切除、腰椎固定術、橈骨遠位部骨折の修復、腰椎椎間板術、指腱鞘切開術、足首骨折(腓骨)の修復、大腿骨骨折の修復、および転子部骨折の修復からなる群から選択される手法中または手法後に投与される。
【0171】
別の実施形態では、本発明のマトリックス組成物は、スポンジおよび膜などの製品の使用によるホメオスタシス、感染の軽減および組織癒着の回避のために投与される。
【0172】
別の実施形態では、本発明のマトリックス組成物は、縫合糸材料周囲の炎症性反応を軽減するために投与される。
【0173】
別の実施形態では、本発明のマトリックス組成物は、呼吸器系、すなわち、肺、気管支および肺胞などの下気道、ならびに鼻、鼻腔、篩骨蜂巣、前頭洞、上顎洞、喉頭および気管などの上気道における薬剤の徐放のために投与される。閉塞症状、制限症状、血管疾患、環境および感染などの全身性疾患または特定の呼吸器系疾患の処置、例えば、副鼻腔炎の処置のための薬剤の投与。
【0174】
別の実施形態では、本発明のマトリックス組成物は、全身処置および特定の胃腸管疾患に対する消化管における薬剤の徐放のために投与される。
【0175】
マトリックス組成物の作製方法
本発明の組成物を得るためには、水耐性マトリックス中の均質なポリマーおよび脂質分散液を生じるいずれの好適な方法を用いてもよい。有利には、いくつかの実施形態によれば、使用される方法は製造工程のいずれの段階でも水の使用を避ける。
【0176】
いくつかの実施形態によれば、ポリマーは、一方で別に適当な選択揮発性有機溶媒と混合し、リン脂質を活性医薬剤とともにその適当な選択溶媒または溶媒群と混合した後にポリマーと混合する。
【0177】
特定の実施形態において、本発明は、
(a)第一の揮発性有機溶媒に、(i)非生分解性ポリマーと(ii)ステロールを混合する工程;および
(b)別に、第二の揮発性有機溶媒に、(i)活性剤と(ii)ホスファチジルコリンと所望により(iii)ホスファチジルエタノールアミンを混合する肯定;および
(c)工程(a)および(b)から得られた生成物を混合およびホモジネートする工程
を含む、マトリックス組成物の作製方法を提供する。
【0178】
別の実施形態では、工程(b)の揮発性有機溶媒にホスファチジルエタノールアミンを加える代わりに、またはそれに加えて、ホスファチジルエタノールアミンが工程(a)の揮発性有機溶媒に含まれる。別の実施形態では、生体適合性ポリマーは、非生分解性ポリマー、ポリエステル以外の生分解性ポリマーおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第一の揮発性有機溶媒は非極性溶媒である。いくつかの実施形態では、第二の揮発性有機溶媒は水混和性溶媒である。活性剤がタンパク質またはペプチドである場合には、そのタンパク質の活性を変性させない、または損なわない溶媒を選択することが重要である。特定の実施形態では、活性剤は、NSAID、抗生物質、抗真菌薬、ステロイド、抗癌薬、骨形成因子および骨吸収阻害剤ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0179】
別の実施形態では、揮発性有機溶媒を含む工程(a)の混合物は、工程(b)の溶液と混合する前にホモジナイズされる。別の実施形態では、工程(a)で用いる揮発性有機溶媒または揮発性有機溶媒の混合物は、工程(b)で用いる揮発性有機溶媒または有機溶媒の混合物と同じであっても異なっていてもよい。別の実施形態では、工程(b)の混合物は、工程(a)の混合物と混合する前にホモジナイズする。別の実施形態では、工程(a)の混合物中のポリマーは脂質飽和型である。別の実施形態では、マトリックス組成物は脂質飽和型である。好ましくは、ポリマーおよびホスファチジルコリンはマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、活性剤も同様にマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、マトリックス組成物は、その形状および境界がポリマーによって画定される脂質飽和マトリックスの形態である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0180】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のホスファチジルエタノールアミンは飽和脂肪酸部分を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は14〜20個の炭素原子を有する。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0181】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のホスファチジルコリンは飽和脂肪酸部分である。別の実施形態では、脂肪酸部分は少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は少なくとも16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は14〜18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は16〜20個の炭素原子を有する。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0182】
別の実施形態では、第一の揮発性有機溶媒中の総脂質とポリマーの重量比は、この混合物中のポリマーが脂質飽和型となるような比である。例示目的の別の実施形態では、ポリマーが主に8KDa PEGである場合、総脂質と8KDa PEGのモル比は一般に10〜50(含む)の範囲である。別の実施形態では、総脂質と8KDa PEGのモル比は10〜100(含む)の間である。別の実施形態では、モル比は20〜200(含む)の間である。別の実施形態では、モル比は20〜300(含む)の間である。別の実施形態では、モル比は30〜400(含む)の間である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0183】
このことは、腎臓による非生分解性ポリマー断片の排出が小断片に限定されるので重要である。PEGの場合、5000ダルトンの鎖に限定され、好ましくは、2000ダルトンまでのものが用いられる。大きなポリマーを使用するとマトリックスの内部強度が増強できることは、特定のリンカーの耐性が分解速度に影響を及ぼし、それが薬物の放出速度に反映され得るということと同様であった。
【0184】
本発明の上記方法および他の方法の各成分は、本発明のマトリックス組成物の対応する成分と同様に定義される。
【0185】
別の実施形態では、作製方法の工程(a)は、揮発性有機溶媒にホスファチジルエタノールアミンを加えることをさらに含む。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは工程(b)に含まれる同じホスファチジルエタノールアミンである。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、当技術分野で公知の他の任意のホスファチジルエタノールアミンであり得る、異なるホスファチジルエタノールアミンである。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、工程(b)のホスファチジルエタノールアミンおよび異なるホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0186】
別の実施形態では、作製方法の工程(a)は、揮発性有機溶媒にトコフェロールを加えることをさらに含む。
【0187】
別の実施形態では、作製方法の工程(b)は、揮発性有機溶媒に生理学上許容されるバッファー塩を加えることをさらに含む。生理学上許容されるバッファー塩の限定されない例はリン酸バッファーである。リン酸バッファーの典型例は、40部のNaCl、1部のKCl、7部のNaHPO・2HOおよび1部のKHPOである。別の実施形態では、バッファー塩は、当技術分野で公知の他の任意の生理学上許容されるバッファー塩である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0188】
別の実施形態では、作製方法の工程(b)は、揮発性有機溶媒にホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリンおよびホスファチジルイノシトールからなる群から選択されるリン脂質を加えることをさらに含む。
【0189】
別の実施形態では、作製方法の工程(b)は、揮発性有機溶媒にスフィンゴ脂質を加えることをさらに含む。別の実施形態では、スフィンゴ脂質はセラミドである。別の実施形態では、スフィンゴ脂質はスフィンゴミエリンである。別の実施形態では、スフィンゴ脂質は、当技術分野で公知の他の任意のスフィンゴ脂質である。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0190】
別の実施形態では、作製方法の工程(b)は、水混和性揮発性有機溶媒にオメガ−6またはオメガ−9遊離脂肪酸を加えることをさらに含む。別の実施形態では、遊離脂肪酸は16個以上の炭素原子を有する。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0191】
別の実施形態では、作製方法の各工程は水溶液を実質的に含まない。別の実施形態では、各工程では、水またはいずれの水溶液も実質的に存在しない。本明細書で提供されるように、水不含プロセスで本発明のマトリックス組成物を作製すると、脂質飽和とすることができる。別の実施形態では、作製方法の各工程は、総液体容量(水および有機溶媒)の20%を超えない量で水の存在を含み得る。水溶液または水は、下記のように有機溶媒とともに蒸発させることによって除去される。
【0192】
工程(a)の混合物におけるポリマーは脂質飽和型であるので、混合時、均質な混合物が生成される。別の実施形態では、均質な混合物は均質な液体の形態をとる。別の実施形態では、混合物を凍結乾燥または噴霧乾燥すると、小胞が形成される。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0193】
別の実施形態では、作製方法は、工程(c)の生成物中に存在する溶媒を蒸発させる工程をさらに含む。別の実施形態では、蒸発は混合物の噴霧化を用いる。別の実施形態では、混合物は乾燥加熱空気中に噴霧化される。一般に、加熱空気中に噴霧化すると、全ての水が即蒸発し、その後の乾燥工程の必要が無くなる。別の実施形態では、混合物は水不含溶媒中に噴霧化される。別の実施形態では、蒸発は噴霧乾燥によって行われる。別の実施形態では、蒸発は凍結乾燥によって行われる。別の実施形態では、蒸発は液体窒素を用いて行われる。別の実施形態では、蒸発は、エタノールと事前に混合した液体窒素を用いて行われる。別の実施形態では、蒸発は、当技術分野で公知の別の好適な技術を用いて行われる。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0194】
別の実施形態では、本発明の方法は、組成物を真空乾燥させる工程をさらに含む。別の実施形態では、真空乾燥工程は蒸発工程の後に行われる。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0195】
別の実施形態では、本発明の方法は、工程(c)の生成物を加熱することによって有機揮発性溶媒を蒸発させる工程をさらに含む。加熱は溶媒が無くなるまで、室温〜80℃の間の典型的な温度で続ける。別の実施形態では、真空乾燥工程は溶媒蒸発工程の後に行われる。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0196】
脂質飽和およびそれを決定するための技術
「脂質飽和」とは、本明細書において、マトリックス組成物のポリマーを、マトリックス中に存在する任意の疎水性薬物およびターゲティング部分、ならびに存在する場合がある他の任意の脂質と組み合わせてリン脂質出飽和させることを意味する。本明細書に記載されるように、本発明のマトリックス組成物は、いくつかの実施形態では、ホスファチジルコリン以外のリン脂質を含む。他の実施形態では、マトリックス組成物は、リン脂質以外の脂質を含む。マトリックス組成物は存在するどんな脂質でも飽和する。「飽和」は、マトリックスがそのマトリックスに組み込まれ得る最大量の、用いられているタイプの脂質を含む状態を意味する。脂質飽和を得るためのポリマー:脂質比を決定する方法およびマトリックスの脂質飽和度を決定する方法は本明細書に記載されている。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0197】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のマトリックス組成物は水を実質的に含まない。「水を実質的に含まない」とは、別の実施形態では、組成物は1重量%未満の水を含むことを意味する。別の実施形態では、この用語は、0.8重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.6重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.4重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.2重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、その組成物の水耐性に影響を及ぼす水の量が存在しないことを意味する。別の実施形態では、この用語は、水性溶媒を用いずに製造された組成物を意味する。別の実施形態では、本明細書に記載されているように、水を実質的に含まないプロセスを用いて組成物を作製することで、脂質飽和が可能となる。脂質飽和はマトリックス組成物にin vivoバルク分解耐性能を付与し、従って、そのマトリックス組成物は、数日、数週間または数ヶ月という規模での持続放出を媒介する能力を示す。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0198】
別の実施形態では、マトリックス組成物は水を本質的に含まない。「本質的に含まない」とは、0.1重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.08重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.06重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.04重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.02重量%未満の水を含む組成物を意味する。別の実施形態では、この用語は、0.01重量%未満の水を含む組成物を意味する。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0199】
別の実施形態では、マトリックス組成物は水を含まない。別の実施形態では、この用語は、検出可能な量の水を含まない組成物を意味する。各可能性は本発明の別の実施形態に相当する。
【0200】
別の実施形態では、マトリックス組成物は乾燥している。「乾燥」とは、別の実施形態では、検出可能な量の水または有機溶媒が存在しないことを意味する。
【0201】
別の実施形態では、マトリックス組成物の水透過性は最小化されている。水透過性を「最小化する」とは、添加された水の浸透に対する透過性を最小化するように決定された量の脂質の存在下、本明細書に記載されるように、有機溶媒中でマトリックス組成物を作製するプロセスを意味する。必要な脂質量は、本明細書に記載されるように、トリチウムタグを付けた水を含む溶液で小胞を水和させることによって決定することができる。
【0202】
別の実施形態では、「脂質飽和」とは、ポリマー骨格の外部境界によって画定される脂質マトリックス内の内部ギャップ(自由体積)の充填を意味する。このギャップはマトリックス中に存在する他のタイプの脂質、疎水性薬物およびターゲティング部分と組み合わせてリン脂質で、さらなる脂質部分が認められ得る程度ではもはやマトリックスに組み込まれない程度まで充填される。
【0203】
一実施形態では、脂質飽和度を決定するために以下の方法が用いられる。
製造後、小胞を水和し、遠心分離または濾過によっておよび単離する。小胞中に捕捉されなかった脂質は遊離ミセルまたはリポソームを形成し、上清に局在する。上清および小胞の全脂質含量を定量する。このようにして、開始時に異なる脂質:ポリマー比を含む種々の処方物に関して、捕捉脂質含量と遊離脂質含量を測定する。このように、実際の試験最大脂質/ポリマー比を決定する。
【0204】
別の実施形態では、脂質飽和度を決定するために以下の方法が用いられる。
製造後、トリチウムタグの付いた水を含む溶液で小胞を水和し、トリチウム不含溶液で洗浄し、遠心分離または濾過によって単離し、ポリマー質量当たりの捕捉された水の量を定量する。ポリマー小胞中の自由体積を飽和させるのに必要な脂質の量を決定するため、種々の脂質:ポリマー比を用いてこれを繰り返す。
【0205】
「零次放出速度」または「零次放出速度論」とは、ポリマーマトリックスからの医薬活性剤の、一定、直線的、連続的、持続的および制御された放出速度を意味し、すなわち、放出される医薬活性剤の量の時間に対するプロットが直線的である。
【0206】
実験詳細の節
実施例1.薬物担体組成物の作製のためのプラットフォーム技術:
概要
脂質飽和ポリマーマトリックスを作製するために、2つの混合物を作出する。
【0207】
1.非生分解性ポリマーおよびステロールおよび/またはリン脂質成分を揮発性有機溶媒と混合し、これを混合して、その示差走査熱量計測定(DSC)特性によって測定されるように、脂質飽和ポリマーマトリックスの溶液または懸濁液を得る。
2.活性剤およびリン脂質成分を第二の揮発性有機溶媒と混合して第二の溶液または懸濁液を得る。
3.この2つの溶液または懸濁液を合わせ、平衡に到達するまで混合し、その後、有機溶媒を蒸発させ、薬物を含有する脂質飽和ポリマーマトリックスを得る。
【0208】
例示的プロトコール
I.第一の溶液の調製
保存溶液:
保存溶液1(SS1):PEG8000、酢酸エチル中300mg/ml
保存溶液2(SS2):コレステロール(CH)、酢酸エチル中30mg/ml.
保存溶液3(SS3):ドキシサイクリンヒクレート(Doxy−H)、メタノール:酢酸エチル(1:1v/v)中50mg/ml
【0209】
溶液A1:0.2容量のSS1を1容量のSS2(PLGA 50mg/ml、CH 25mg/ml)と混合した。
溶液A2:0.2容量のSS1を1容量の酢酸エチル(PLGA 50mg/ml)と混合した。
【0210】
この混合物を混合する。全プロセスを室温で行う。このようにして脂肪−ポリマーマトリックスを得る。
【0211】
II.第二の溶液の調製
溶液B1:0.75mlのSS3に溶かした1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC;終濃度225mg/ml)を0.25mlの酢酸エチルと混合した(Doxy−H終濃度37.5mg/ml)。
溶液B2:0.75mlのSS3に溶かした1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC;終濃度225mg/ml)を0.25mlの酢酸エチルと混合した(Doxy−H終濃度37.5mg/ml)。
溶液B3:0.75mlのSS3に溶かした1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC;終濃度225mg/ml)を0.25mlの酢酸エチルと混合した(Doxy−H終濃37.5mg/ml)。
溶液B4:0.75mlのSS3と0.25mlの酢酸エチル(Doxy−H終濃度37.5mg/ml)。
【0212】
混合物を混合し、ホモジナイズまたは音波処理する。場合によっては、混合、ホモジナイゼーションまたは音波処理の後に、非極性揮発性有機溶媒、例えば、酢酸エチルを混合物とともに含め、これを30分間穏やかに攪拌する。一般に、全プロセスを室温で行うが、一般に高飽和脂質を用いる場合には80℃までのより高い温度を用いる。
【0213】
この混合物に水は必要ない。
【0214】
III.ポリマーと薬物/タンパク質混合物との混合
第二の懸濁液(または溶液)を攪拌下で第一の溶液に加える。攪拌を最大5時間続ける。全プロセスは、常に特定の処方物、使用する脂質の性質および特定の薬物に応じて室温、60℃までで行う。あるいは、第一および第二の溶液を、ボルテックスを用いて激しく混合した後、45℃で5分間インキュベーションを行う。得られた混合物は均質であるべきである。
【0215】
溶液AB:1容量の溶液B1、B2、B3またはB4を1.5容量の溶液A1と混合した。あるいは、1容量の溶液B4を1.5容量の溶液A2と混合した。
【0216】
IV 溶媒の蒸発
いくつかの実験では、第III段階の溶液を乾燥加熱空気中に噴霧化する。
【0217】
他の実験では、第III段階の溶液を液体窒素で覆ったエタノールまたはエタノールを含まない液体窒素単独中に噴霧化し、その後、窒素および/またはエタノール(上記の通り)蒸発させる。
【0218】
他の実験では、表面被覆を行う際に、第III段階の懸濁液を被覆する粒子(例えば、リン酸三カルシウム)または機器と混合し、その後、揮発性有機溶媒を蒸発させる。全プロセスを40〜60℃の温度で行い、好ましくは、溶媒を、約45℃の温度で約1時間インキュベートすることにより蒸発させるか、または液体が見えなくなるまで蒸発させた後に一晩真空にする。
【0219】
V 真空乾燥
被覆粒子および被覆機器を保存のために真空乾燥させる。
【0220】
実施例2:ドキシサイクリンヒクレートの調製−PEGおよびDPPCを用いた骨感染の処置のための骨粒状充填材処方物:
I.第一の溶液/懸濁液の調製
以下の材料をクロロホルム中に混合する。
i ポリエチレングリコール(PEG)8000
ii PEGに対して50%w/wのコレステロール
【0221】
混合物を、透明な溶液が得られるまで混合する。全プロセスを室温で行う。このようにして、脂質−ポリマーの組合せのマトリックスが得られる。
【0222】
II.第二の溶液/懸濁液の調製
以下の材料を揮発性有機溶媒(メタノールおよび酢酸エチル)と混合する。
i 活性化合物−抗生物質ドキシサイクリンヒクレート(DOX)
ii PEGに対して300% w/wで存在するホスファチジルコリン−DPPC(16:0)
【0223】
混合物を十分に混合する。全プロセスを室温で行う。
【0224】
この混合物に水は必要ない。
【0225】
III 第一の溶液と第二の溶液の混合
攪拌しながら、第二の溶液を第一の溶液に加える(3:2v:v比)。攪拌を1分間行う。全プロセスを室温で行う。
【0226】
IV 表面被覆後の蒸発
骨充填材粒子を被覆するために、粒子を第III段階の混合物に加えた後、揮発性有機溶媒を蒸発させた。全プロセスを45℃の温度で行った。
【0227】
第III段階の混合物の容量と骨粒子の質量の間の比率は、被覆粒子が水和した後の薬物の放出期間を決定する。
【0228】
V 真空乾燥
被覆骨粒子を保存のために真空乾燥させる。
【0229】
実施例3.マトリックス組成物成分の完全性の確認
マトリックス組成物成分(PEG、コレステロール、リン脂質およびDoxy−H)を、乾燥マトリックス組成物に0.2mlのDCMを加えることによって抽出した。
【0230】
この抽出物のうち10μLをHPLCに注入し、Doxy−Hの完全性と濃度を確認した。
【0231】
抽出物のうち5μLをTLCシートにのせ、種々の移動相を用いて泳動させ、コレステロールおよびリン脂質の安定性を確認した(コレステロールの移動相はヘキサン/エーテル/酢酸 70/30/1(v/v/v)とし、リン脂質の移動相はクロロホルム/MeOH/水 65/35/4(v/v/v)とした)。
【0232】
結果:
複合体から抽出されたDoxy−Hは、Doxy−H標品のピークと同じ10.37分に単一のピークを示した。主要ピークは99%を超える純度であった。コレステロールおよびリン脂質は、TLCシートで泳動させると単一のスポットを示し、このことはコレステロールではRf値が0.26であり、リン脂質では0.58である複合体の製造中に誘導代が生じないことを示す(図1AおよびB)。
【0233】
実施例4.TCP−マトリックス組成物からのDoxy−Hの放出特性
マトリックス組成物からの薬物(Doxy−H)の放出特性を決定するために、マトリックス組成物100mgをDDW中5%のBS 1mlで水和させた。
【0234】
水和1時間後、溶液を回収し、溶液中のDoxy−H濃度をHPLCで測定した。この手順を20日間、毎日繰り返した。
【0235】
最初の6日間、サンプル中のDoxy−H濃度を回転沈降(6000rpmで2分間)の前と後に測定し、封入されたDoxy−Hの量を評価した。
【0236】
結果:
(i)最初の1時間の間に、PEG+CH+Doxy+DSPCマトリックス組成物、PEG+CH+Doxy+DMPCマトリックス組成物およびPEG+CH+Doxyマトリックス組成物からそれぞれ21%、24%および30%の捕捉Doxy−Hが放出された。水和溶液において検出された薬物が遊離薬物分子ならびにマトリックスの小粒子(マイクロメートルサイズ)と結合している薬物分子を含んでいたことを強調すべきである。マトリックスから放出された薬物とマトリックス粒子と結合している薬物分子の量を測定するために、回収した水和溶液を6,000RPMで2分間遠心分離し、溶液中の薬物濃度を測定した。リン脂質を含むマトリックス組成物では、溶液中に見られたのは薬物の約50%だけであり、約50%が回転沈降の際に形成されたペレット中に見られたが(薬物がマトリックスと結合していることを示す)、リン脂質を含まないマトリックス組成物(PEG+CH+Doxy Polypid Complex)では、溶液中に見られたのは薬物の30%未満であり、70%を超えるものがペレット中に見られた。
【0237】
(ii)最初の6日間、リン脂質(DMPCまたはDSPCのいずれか)を含むマトリックス組成物からの遊離Doxy−Hの放出の量は同じであることが分かった。それにもかかわらず、放出された薬物の総量(遊離薬物およびマトリックスのマイクロメートル粒子と結合している薬物)はDMPC複合体の方が高かった。この違いはDMPCの融点がより低いことと相関しており、マトリックスからのその解離が増進される。
【0238】
(iii)リン脂質を含むマトリックス処方物からのDoxy−Hの放出は、3日目に始まる零次反応速度論を遅延させるが(図2)、ポリマー複合体からのDoxy−Hの放出は本質的に対数であった(データは示されていない)。
【0239】
実施例5.マトリックス組成物からの放出粒子の可視化
マトリックス組成物の水和時に放出される粒子の構造を決定するために、本発明者らは2つのマトリックス組成物(PEG+CH+DPPC+Doxy−HおよびPEG+Doxy−H)を24時間水和させ、その後、上清を回収し、Ueyeデジタルカメラと接続した光学顕微鏡を用いて観察した。PEG+CH+DPPC+Doxy−Hを含むマトリックスの上清では、平均サイズ50μm、ほとんどが多重ラメラ小胞(MLV)のリポソーム構造が検出されたが(図3B)、PEG+Doxy−Hを含むマトリックスの上清では、平均サイズ約5μmのポリマー構造が検出された(図3A)。
【0240】
実施例6.マトリックス組成物中のDoxy−Hの安定性
マトリックス組成物PEG−CH−Doxy−H−DMPCを15日間水和させた。その後、上清を回収し、アセトニトリル:0.01N HClで複合体からDoxy−Hを抽出した。抽出されたDoxy−Hの安定性をHPLCによって測定した。
【0241】
抽出されたDoxy−Hは完全であり、誘導体は形成されなかった。主要なDoxy−Hピークは純度約98%であった。抽出されたDoxy−Hの総量は70.44μgであった。最初の15日以内では、水和した複合体883.579μg放出された。放出されたDoxy−Hの総量は954μgであった。この量は処方物中に封入されたDoxy−Hの総量の約90%である。
【0242】
実施例7.PEG/コレステロール/Doxy−H/DPPCマトリックス組成物のDSC特性
示差走査熱量測定(DSC)技術の基礎にある基本原理は、サンプルが例えば別のサンプルとの相互作用などの物理的変換を受ける場合、相互作用サンプルの温度をサンプル単独の温度と同じに維持するために参照物にかける必要のある熱がより多いまたは少ないということである。理論または作用機序に縛られるものではないが、このことは、例えば、ポリマーに伴う、またはポリマーとともに組み立てられた試薬がポリマーの相転移特徴を変更することを意味し、このことはさらに、ポリマーに伴う試薬がポリマー鎖の自己組み立てに干渉することも意味し得る。
【0243】
本発明のある特定の実施形態によるマトリックス組成物の種々の成分間の相互作用の性質をDSCを用いて分析したところ、これらの成分の保存溶液ならびにその組合せのいずれか75μLをDSCサンプルホルダーに入れた。このホルダーを45℃に設定したドライブロック上で30分間、その後、真空下で30分間インキュベートすることによって溶媒を蒸発させた。その後、スキャン速度5℃/分でDSC曲線を記録した。
【0244】
結果:
i)PEG:コレステロール相互作用分析: 図4は、PEG、コレステロール(CH)、モル比1:10 PEG:CH(それぞれ50mg/mlおよび25mg/ml)のPEG:CH、およびモル比1:40(それぞれ12.5mg/mlおよび25mg/ml)のPEG:CHのDSC曲線を示す。コレステロール融点のシフト(147℃から124℃へ)が、CHピークの形状の変化とともに観察された。CH融点はPEG:CH比を1:40に引き上げても変化しなかったが、それでもPEGの熱含量は低下していた(約47から35cal/gr)。
【0245】
ii)PEG:薬物相互作用分析: 図5Aは、PEG、Doxy−H、モル比1:7.7(それぞれ30および15mg/mlのPEG:Doxy−H、モル比1:10:7.7(それぞれ30、15および15mg/ml)のPEG:CH:Doxy−H、およびモル比1:10:7.7:36(それぞれ30、15、15および90mg/ml)のPEG:CH:Doxy−H:DPPCのDSC曲線を示す。Doxy−H融点のシフト(215℃から210℃へ)が、Doxy−Hピークの形状の変化とともに観察された(図5B)。
【0246】
iii)PEG:リン脂質相互作用分析: 図6A〜Bは、PEG、DPPC、モル比1:32(それぞれ30および90mg/ml)のPEG:DPPC、およびPEG:CH:DPPC 1:10:32(それぞれ30、15および90mg/ml)のDSC曲線を示す。PEGおよびDPPC双方の熱含量の変化が相互作用時に観察された(PEGでは47から99.03cal/grへ、DPPCでは6.6から5.1cal/grへ)。CHを添加するとDPPCおよびCH双方の吸熱ピークが全く消失するが、それでもその添加はPEGの熱含量に影響を及ぼさない。
【0247】
実施例8.骨修復に関する本発明のマトリックス組成物の前臨床試験
動物モデル:
A.ウサギにおける脛骨骨髄炎
B.細菌:黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)
前臨床は全て、イスラエル国動物実験規制の指針および研究施設の倫理委員会に従って行う。
【0248】
試験A):モデルの関連細菌負荷の測定:
1.骨の外傷を生じさせる(試験Aで決定されている通り)−動物10個体
2.リン酸三カルシウム(TCP)材料によって空隙を埋め(受傷骨)、骨ワックスで封止する。
3.この部位に定義されている量の細菌を、その部位に細菌を注射することによって負荷する。
4.期間−約22日。臨床徴候および体重(週3回)をモニタリングする。
5.インキュベーション時間の終了時に、基本血液学的検査および生化学的検査血液用に動物から採血する(試験終了前)。
6.試験終了前(約20日目)に脛骨にX線を照射する。
7.試験を終了し、細菌学的試験用に脛骨を採取する。
8.骨から細菌を抽出し、細菌濃度を測定する(下記の通り)。
【0249】
骨髄における細菌濃度の測定: 品質保証のグロス培養分析のために、骨髄および髄管を無菌のコットンチップアプリケーターでぬぐう。接種したアプリケーターを血液プレート上に画線塗布した後、5mLの無菌TSB中に入れる。その後、これらのプレートおよび試験管を37℃で24時間インキュベートし、増殖を記録する。
【0250】
骨1グラム当たりの細菌濃度の測定: 骨を無菌の50mL遠沈管に入れ、秤量する。次に、骨を砕き、最終産物を秤量する。無菌生理食塩水0.9%を3:1比(3mL生理食塩水/g骨)で加え、これらの懸濁液を2分間ボルテックスにかける。無菌生理食塩水0.9%で各懸濁液の10倍希釈液を6種類作製する。最初の懸濁液を含む各希釈液のサンプル(20μL)を3反復で血液寒天培地プレートに置き、37℃で24時間インキュベートし、各脛骨サンプルに対して最大希釈率においてコロニー形成単位を計数する。黄色ブドウ球菌濃度をCFU/g骨で計算する。
【表1】

【0251】
試験B) 本発明のマトリックス組成物の殺菌活性の測定:
1.骨の外傷を生じさせる(試験Aに記載の通り)−動物13個体
2.TCP材料によって空隙を埋め(受傷骨)、骨ワックスで封止する。
3.この部位に定義されている量の細菌を、その部位に細菌を注射することによって負荷する(負荷量は試験Aの結果に従って決定する)。
4.期間−約22日。臨床徴候および体重(週3回)をモニタリングする。
5.インキュベーション中、7日目と16日目(試験終了前)に基本血液学的検査および生化学的検査血液パネル用に動物から採血する。
6.約20日目の試験終了前に脛骨にX線を照射する。
7.試験を終了し、細菌学的試験用に脛骨を採取する。
8.骨から細菌を抽出し、細菌濃度を測定する(下記の通り)
9.局在薬物濃度をアッセイする。
【表2】

【0252】
試験C) 本発明のマトリックス組成物の毒性:
1.骨の外傷を生じさせる(試験Aに記載の通り)−動物24個体
2.TCP材料によって空隙を埋め(受傷骨)、骨ワックスで封止する。
3.この部位に定義されている量の細菌を、その部位に細菌を注射することによって負荷する(負荷量は試験Aの結果に従って決定する)。
4.期間−約45日。臨床徴候および体重(週3回)をモニタリングする。
5.インキュベーション中、0、10、30および45日目(試験終了前)に基本血液学的検査および生化学的検査血液パネル用に動物から採血する。
6.1、3、10、16および30日目に血中薬物濃度分析用に動物から採血する。
7.2、20、30および43日目の試験終了前に脛骨にX線を照射する。
8.試験を終了し、細菌学的試験用に脛骨を採取する。
9.動物の50%(12個体)に注射部位に関する組織学的検査を行う。
10.上記同様に、動物の50%(12個体)に対して、骨から細菌を抽出し、細菌濃度を測定する。
【表3】

【0253】
以上の特定の実施形態の記載は、本発明の一般的特徴を十分に明らかにするので、他者は現在の知識を適用することによって、過度な試験なく、一般概念から逸脱することなく、このような特定の実施形態を容易に改変し、かつ/または種々の用途に適合させることができ、従って、そのような適合および改変は、開示された実施形態の等価物の意図および範囲内に含まれるべきであり、含まれるものとする。本明細書で用いられる表現または用語は、制限ではなく説明を目的としていると理解すべきである。開示されている種々の機能を実施するための手段、材料および工程は、本発明から逸脱することなく、様々な選択的形態をとることができる。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.極性基を有する少なくとも1つのステロールを含む第一の脂質と結合した生体適合性非生分解性ポリマーと、
b.少なくとも14個の炭素の炭化水素鎖を有する少なくとも1つのリン脂質を含む第二の脂質と
c.医薬活性剤
を含み、医薬活性剤の徐放をもたらすよう適合された、マトリックス組成物。
【請求項2】
前記リン脂質が、少なくとも14個の炭素を有する脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンである、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項3】
生分解性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項4】
非生分解性ポリマーと生分解性ポリマーがブロックコポリマーを形成する、請求項3に記載のマトリックス組成物。
【請求項5】
非生分解性ポリマーがポリエチレングリコール(PEG)、PEGアクリレート、PEGメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、ポリスチレン、誘導体化ポリスチレン、ポリリジン、ポリN−エチル−4−ビニル−ピリジニウムブロミド、ポリ−メチルアクリレート、シリコーン、ポリオキシメチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸およびそれらの誘導体単独またはそれらのコポリマー混合物としてのものからなる群から選択される、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項6】
非生分解性ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項1のいずれか一項に記載のマトリックス組成物。
【請求項7】
ステロールがコレステロールである、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項8】
前記コレステロールが前記マトリックス組成物の総脂質含量の5〜50モルパーセントの量で存在する、請求項7に記載のマトリックス組成物。
【請求項9】
医薬活性剤が抗生物質、抗真菌薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ステロイド、抗癌剤、骨形成因子、骨吸収阻害剤およびその任意の組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項10】
総脂質と前記生体適合性ポリマーの比が1.5:1〜9:1(含む)の間である、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項11】
前記マトリックス組成物が均質である、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項12】
スフィンゴ脂質を含む、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項13】
トコフェロールを含む、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項14】
前記マトリックス組成物が水を実質的に含まない、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項15】
ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロールおよびホスファチジルイノシトールからなる群から選択される付加的リン脂質をさらに含む、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項16】
14個以上の炭素原子を有する遊離脂肪酸をさらに含む、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項17】
コラーゲン分子、フィブリン分子およびヘパリンからなる群から選択される標的分子と相互作用し得るターゲティング部分をさらに含む、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項18】
ペグ化脂質をさらに含む、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項19】
前記医薬活性剤の少なくとも40%が組成物から零次反応速度論で放出される、前記医薬活性剤の徐放のための請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項20】
前記医薬活性剤の少なくとも50%が組成物から零次反応速度論で放出される、前記医薬活性剤の徐放のための請求項19に記載のマトリックス組成物。
【請求項21】
前記医薬活性剤の少なくとも60%が組成物から零次反応速度論で放出される、前記医薬活性剤の徐放のための請求項20に記載のマトリックス組成物。
【請求項22】
請求項1に記載のマトリックス組成物を含むインプラント。
【請求項23】
請求項1に記載のマトリックス組成物を含む活性剤の徐放のための医薬組成物。
【請求項24】
活性剤が抗生物質、抗真菌薬、非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド、および抗癌剤、骨形成因子、骨吸収阻害剤およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
必要とする被験体に抗生物質を投与する方法であって、医薬活性剤が抗生物質である請求項9に記載のマトリックス組成物を該被験体に投与し、それにより、必要とする被験体に抗生物質を投与することを含む、方法。
【請求項26】
必要とする被験体において歯周炎を処置する方法であって、医薬活性剤が骨形成因子、骨吸収阻害剤またはそれらの組合せである請求項9に記載のマトリックス組成物を該被験体に投与し、それにより、必要とする被験体において歯周炎を処置することを含む、方法。
【請求項27】
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を、必要とする被験体に投与する方法であって、医薬活性剤がNSAIDである請求項9に記載のマトリックス組成物を該被験体に投与することを含み、それにより、NSAIDを、必要とする被験体に投与する、方法。
【請求項28】
必要とする被験体に骨吸収阻害剤を投与する方法であって、医薬活性剤が骨吸収阻害剤である請求項9に記載のマトリックス組成物を該被験体に投与し、それにより、必要とする被験体に骨吸収阻害剤を投与することを含む、方法。
【請求項29】
必要とする被験体において骨造成を刺激する方法であって、請求項9に記載のマトリックス組成物を該被験体に投与し、それにより、必要とする被験体において骨造成を刺激することを含む、方法。
【請求項30】
該基板の少なくとも一部に施された生体適合性コーティングとを含み、該生体適合性コーティングが請求項1に記載のマトリックス組成物を含む、医療機器。
【請求項31】
前記生体適合性コーティングが多層を含む、請求項30に記載の医療機器。
【請求項32】
前記基板が、ヒドロキシアパタイト、ステンレス鋼、コバルト−クロム、チタン合金、タンタル、セラミックおよびゼラチンからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項30に記載の医療機器。
【請求項33】
前記基板が整形外科用ネイル、整形外科用ネジ、整形外科用ステープル、整形外科用ワイヤ、整形外科用ピン、金属またはポリマーインプラント、骨充填材粒子、コラーゲンおよび非コラーゲン膜、縫合糸材料、整形外科用セメントおよびスポンジから選択される、請求項30に記載の医療機器。
【請求項34】
前記骨充填材粒子が同種、異種および人工骨粒子から選択される、請求項33に記載の医療機器。
【請求項35】
整形外科用ネイル、整形外科用ネジ、整形外科用ステープル、整形外科用ワイヤ、整形外科用ピン、金属またはポリマーインプラント、骨充填材粒子、コラーゲンおよび非コラーゲン膜、縫合糸材料、整形外科用セメントおよびスポンジから選択される基板の被覆のための、請求項1〜21のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項36】
マトリックス組成物を作製する方法であって、
a.第一の揮発性有機溶媒に、(i)生体適合性非生分解性ポリマー、および(ii)極性基を有する少なくとも1つのステロールを含む第一の脂質を混合する工程;
b.第二の揮発性有機溶媒に、(i)少なくとも1つの医薬活性剤、(ii)少なくとも14個の炭素の炭化水素鎖を有するリン脂質から選択される第二の脂質を混合する工程;
c.工程(a)および(b)から得られた生成物を混合して均質な混合物を作製する工程;および
d.揮発性有機溶媒を蒸発させる工程
を含み、それにより、均質なマトリックス組成物を作製する、方法。
【請求項37】
生分解性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
非生分解性ポリマーと生分解性ポリマーがブロックコポリマーを形成する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記リン脂質が少なくとも14個の炭素を有する脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンである、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記第一の脂質が、少なくとも14個の炭素を有する脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
非生分解性ポリマーがポリエチレングリコール(PEG)、PEGアクリレート、PEGメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、ポリスチレン、誘導体化ポリスチレン、ポリリジン、ポリN−エチル−4−ビニル−ピリジニウムブロミド、ポリ−メチルアクリレート、シリコーン、ポリオキシメチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、およびそれらの誘導体単独またはそれらのコポリマー混合物としてのものからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
非生分解性ポリマーがポリエチレングリコール(PEG)である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ステロールがコレステロールである、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記方法の各工程が水溶液を実質的に含まない、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
歯周炎の処置のための、医薬活性剤が骨形成因子、骨吸収阻害剤またはそれらの組合せである請求項9に記載のマトリックス組成物の使用。

【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2012−533334(P2012−533334A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520148(P2012−520148)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000563
【国際公開番号】WO2011/007353
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(512008532)ポリピッド リミテッド (1)
【Fターム(参考)】