説明

循環式掘削装置とスイベルジョイント

【課題】ドリリングパイプに礫等が詰まった場合、容易に礫等を取り除くことができて作業能率を向上させることができる循環式掘削装置を提供する。また、正逆循環式掘削工法のいずれの場合も軸受への漏水を防止し、軸受の寿命を延ばすことができる構成のスイベルジョイントを提供する。
【解決手段】供給ポンプ9の吐出ポート9aをスイベルジョイント5の導水管12と縦穴3に設置された配管13との間で切換え接続すると共に、吸上ポンプ10の吸込ポート10aを前記配管13と前記導水管12との間で切換え接続する切換弁11を設ける。スイベルジョイントのハウジングと駆動筒との間に、軸受への漏水を防止するパッキングを設ける。ハウジングの外部から軸受に連通させる貫通孔にグリスニップルを設ける。この貫通孔の反対側にハウジングの外部から軸受に連通させる貫通孔に細孔を有する孔付目めくらを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に掘削具を有するドリリングパイプを回転させ、ドリリングパイプを通して安定液を供給する正循環式掘削工法、およびドリリングパイプを通して安定液を吸い上げる逆循環式掘削工法に用いられる循環式掘削装置と、この循環式掘削装置に備えるスイベルジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
循環式掘削工法には、下端に掘削具を設けたドリリングパイプを回転させ、供給ポンプによりドリリングパイプ中に安定液を上方から供給しながら、吸上ポンプにより掘削した縦穴より安定液と共に土砂をプラントに吸い上げ排土する正循環式掘削工法と、プラントから供給ポンプにより掘削した縦穴内に安定液を送り込みながら、吸上ポンプによりドリリングパイプを通して安定液と共に土砂を吸い上げてプラントに排土する逆循環式掘削工法とがある。特許文献1、2には、これらのいずれの循環式掘削装置にも適用できるものとしてのスイベルジョイントが開示されている。
【0003】
一方、循環式掘削装置としては、正循環掘削工法を実施する掘削装置と、逆循環掘削工法を実施する掘削装置とは従来より別々に構成されている。
【0004】
前記スイベルジョイントにおいては、ドリリングパイプを回転するための駆動装置が搭載され、その駆動装置により回転駆動される駆動筒は、ハウジング内に軸受を介して回転可能に取付けられる。この駆動筒はスイベルジョイントのハウジングの上部に設けられた非回転の導水管に接続されるもので、導水管と駆動筒との間に隙間が形成されることは駆動筒を回転可能とする上で不可避であるから、この隙間から前記軸受側に漏水し、軸受を損傷し寿命を短命化するおそれがある。このため、ハウジングと駆動筒との間には、軸受への漏水を防止するためのパッキングが設けられる。
【0005】
特許文献1には、正逆循環のいずれの掘削工法にも適用できるスイベルジョイントとして、前記パッキングにラインパッキングを設けたものが開示されている。また、特許文献2においては、正循環式掘削工法における送水圧力を利用して軸受にグリスを加圧して供給するものが開示されている。また、特許文献3には、軸受にグリスを供給する手段として、ハウジングの一方に軸受につながる貫通孔を設けてその貫通孔にグリスニップルを取付け、ハウジングの他方に軸受につながる貫通孔を設けてその貫通孔に栓を取付けたものが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−339819号公報(図2)
【特許文献2】特開平8−189281号公報(図5)
【特許文献3】特開平9−14274号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の循環式掘削装置においては、安定液をドリリングパイプを通して掘削部から流出させる正循環式掘削工法用の掘削装置と、逆循環式掘削工法用の掘削装置とでは、安定液の循環系を別々に構成している。このため、逆循環式掘削工法を実施する掘削装置において、継ぎ足し式のドリリングパイプ中に礫等が詰まると、ドリリングパイプを引き上げ、礫等が詰まったそのドリリングパイプを分離してその代わりに新たなドリリングパイプを継ぎ足すことにより詰まりを解消して作業を続行している。このため作業の回復に非常に時間と労力を要するという問題点がある。
【0008】
一方、スイベルジョイントについて検討すると、特許文献1に記載のスイベルジョイントは、パッキングとしてラインパッキングを設けているが、このスイベルジョイントの適用対象が基本的には正循環式掘削工法であり、駆動筒を通過する安定液が、プラントで土砂を除いた安定液であるため、安定液に混入している土砂が少なく、軸受へ漏水してもそれほど損傷の問題を生じない。しかし逆循環掘削工法の場合には、駆動筒を通過する安定液が土砂を混合したものであり、ラインパッキングだけではこの土砂を含んだ泥水の軸受への浸入が防げないため、軸受の寿命を短命化するおそれがある。
【0009】
また、特許文献2に記載のように、正循環式掘削工法における安定液の正圧を利用して軸受へのグリスの供給を行なうものにおいては、逆循環式掘削工法では採用できず、用途が狭くなるという欠点がある。
【0010】
また、特許文献3に記載のように、ハウジングの一方にグリスニップルを設け、他方に栓を設けたものでは、グリス供給時には栓を抜いてグリスニップルより軸受にグリスを供給し、装置稼働時には栓をして使用するが、これを逆循環式掘削工法に適用した場合、駆動筒内が負圧になり、軸受内も負圧になるので、軸受内に土砂を含んだ安定液が浸入し、土砂が軸受を損傷し、寿命を損なうという問題点がある。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑み、安定液の循環方向を正逆いずれにも容易に切り換えることができ、もって逆循環掘削工法を採用してドリリングパイプに礫等が詰まった場合でも容易に礫等を取り除くことができて作業能率を向上させることができる循環式掘削装置を提供することを目的とする。また本発明は、このように正逆循環系の切換えが容易にできるものに好適であって、軸受への漏水を確実に防止することができ、軸受の寿命を延ばすことができる構成のスイベルジョイントを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の循環式掘削装置は、先端に掘削具を取付けたドリリングパイプと、
このドリリングパイプを下部に接続し回転させる駆動装置を有しかつ上部に安定液を通す導水管を有するスイベルジョイントと、
前記安定液を溜めかつ安定液中の土砂を分離するプラントと、
前記掘削具により掘削された縦穴に前記プラントより安定液を供給する供給ポンプと、
前記掘削具による掘削部を経た安定液を前記プラントに吸い上げる吸上ポンプとを備えた循環式掘削装置において、
前記供給ポンプの吐出ポートを前記導水管と前記縦穴に設置された配管との間で切換え接続すると共に、前記吸上ポンプの吸込ポートを前記縦穴に設置された前記配管と前記導水管との間で切換え接続する切換弁を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項2のスイベルジョイントは、請求項1に記載の循環式掘削装置に設けられる前記スイベルジョイントにおいて、
前記導水管が上部に設けられ、かつ前記駆動装置が設けられるハウジングと、
前記導水管に連通すると共に、前記ハウジング内に軸受を介して回転可能に取付けられ、下部に前記ドリリングパイプが接続されるチャック装置を設けた駆動筒と、
前記ハウジングと前記駆動筒との間に設けられ、前記軸受への漏水を防止するパッキングと、
前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングの外部から前記軸受に連通させる第1の貫通孔と、
前記第1の貫通孔に取付けられたグリスニップルと、
前記ハウジングにおける前記第1の貫通孔の反対側に設けられ、前記ハウジングの外部から前記軸受に連通させる第2の貫通孔と、
前記第2の貫通孔に取付けられ、軸受とハウジングの外部とを連通させる細孔を有する孔付目めくらとを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項3のスイベルジョイントは、請求項2に記載のスイベルジョイントにおいて、
前記パッキングを上下に間隔を有して2段に設け、
これらのパッキングの間と前記ハウジングの外部とを連通させる第3の貫通孔を設け、
前記第3の貫通孔における前記第3の貫通孔を設けた箇所の反対側に、前記2段のパッキングの間と前記ハウジングの外部とを連通させる第4の貫通孔を設け、
前記第3の貫通孔にグリスニップルを取付け、前記第4の貫通孔に孔付目めくらを取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、逆循環式掘削工法により掘削装置を稼働させている際に、ドリリングパイプに礫等が詰まった場合、切換弁の操作により循環系を正循環式掘削工法を実施する循環系の流路構成に切り換えることにより、ドリリングパイプ内を正圧にして礫を押し出すことを可能とし、これによりドリリングパイプの詰まりを解消して掘削を続行させることができ、ドリリングパイプを外すことなく、迅速に掘削作業を回復させることができる。また、正循環式掘削工法が好ましい場合には、切換弁の切換え操作だけで容易に正循環式掘削工法による掘削を行なうことが可能となり、現場への対応が迅速に行なえる。
【0016】
請求項2の発明によれば、正循環掘削工法による掘削を行なっている場合、すなわち駆動筒内の液圧が正圧である際には、パッキングとグリスにより駆動筒内から軸受への漏水が良好に阻まれる。一方、逆循環掘削工法による掘削の際には、駆動筒内の液圧は負圧になるが、孔付目めくらより外気が軸受側に入るので、軸受内が負圧になることが防止され、これにより、泥水を含んだ排水が軸受内に入ることが防止され、軸受が土砂中の小砂等により損傷することが防止される。従って、正循環掘削工法、逆循環掘削工法のいずれの掘削工法を適用する場合にも軸受への漏水による軸受の損傷等の悪影響が防止できる。
【0017】
本発明のスイベルジョイントは、現場の地盤の状況に応じて掘削工法を正循環掘削工法と逆循環掘削工法のいずれかを選択して施工する際に、いずれの掘削工法においても軸受への泥水の浸入が防止されるため、この両掘削工法を選択できるように構成された杭打ちのための掘削装置におけるスイベルジョイントの延命化が達成できる。
【0018】
また、ハウジングの一方にグリスニップルを設け、他方に孔付目めくらを設けているので、グリスニップルからグリスを注入する際に、いちいち栓を着脱する必要がなく、グリスの注入作業が容易となり、グリスの注入を頻繁に行なうことにより、軸受を常に新鮮なグリスで満たしておくことができ、軸受の延命化が促進される。また、軸受がグリスで満たされたか否かは、孔付目めくらからのグリスが漏れ出たか否かで容易に判別でき、充填作業が容易となり、グリスの充填不足を解消することができる。また、孔付目めくらに設ける孔は細孔であるから、塵埃の軸受への侵入の心配がない。
【0019】
請求項3の発明によれば、パッキングを上下2段に設け、その上下のパッキング間にグリスを供給しているため、漏水防止機能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明による掘削装置の一実施の形態を示す構成図である。1は先端に掘削具2を取付けたドリリングパイプ、3は掘削された縦穴、4は縦穴3に供給された安定液、5はドリリングパイプ1を駆動する駆動装置を備えたスイベルジョイント、27はこのスイベルジョイント5を上下に案内し、かつ上下に昇降させる昇降装置7を有するリーダ、8は地面(トンネルや地下等の地面を含む。)に設置されたプラントで、安定液4を溜めると共に、安定液から土砂を分離する働きを有するものである。
【0021】
9はプラント8から掘削部に安定液を供給するための供給ポンプ、10は掘削部に供給され縦穴3内の安定液4をプラント8に戻す吸上ポンプである。
【0022】
11は安定液の循環系を正逆に切り換えるための切換弁であり、供給ポンプ9の吐出ポート9aをスイベルジョイント5の上部の導水管12と前記縦穴3に設置される配管13との間で切換え接続すると共に、前記吸上ポンプ10の吸込ポート10aを前記縦穴3に設置される前記配管13と前記導水管12との間で切換え接続するものである。14、15はそれぞれ供給ポンプ9の吸込管と吐出管、16、17はそれぞれ吸上ポンプ10の吸込管と吐出管である。
【0023】
なおこの例では切換弁11を1つの弁で構成した例を示すが、複数個の弁で構成してもよい。また、導水管12に繋がる配管や縦穴3に設置される配管13のうちの一方、または双方を、それぞれポンプ9、10に対応させて2本ずつ設けてもよい。
【0024】
図1において、正循環式掘削工法により掘削を行なう際には、切換弁11において、供給ポンプ9の吐出ポート9aに繋がる吐出管15をスイベルジョイント5の上部の導水管12に接続すると共に、前記吸上ポンプ10の吸込ポート10aに繋がる吸込管16を前記縦穴3に設置される前記配管13に接続する。
【0025】
この正循環掘削工法を採用する場合には、プラント8内の安定液4は、吸込管14、供給ポンプ9、吐出管15、切換弁11、導水管12、スイベルジョイント5内の後述の駆動筒19(図3参照)およびドリリングパイプ1を通して掘削具2の先端から掘削部に供給される。一方ドリリングパイプ1はスイベルジョイント5に設けた駆動装置により回転駆動されると共に、昇降装置7により必要に応じて押し下げながら掘削具2と共に回転される。
【0026】
このようにして掘削具2により掘削された土砂は、安定液4と共に縦穴3内を上昇し、吸上ポンプ10による吸引力により、土砂と共に配管13、切換弁11、吸込管16、吸上ポンプ10、吐出管17を通してプラント8に戻される。なおこのような正循環式掘削工法を採用する場合には、排土に際して縦穴3内で土砂にかかる浮力をなるべく大きくして排土を良好にするために、通常は比重が1.2以上の安定液を使用する。
【0027】
一方、逆循環掘削工法を採用する際には、供給ポンプ9の吐出ポート9aに繋がる吐出管15を前記縦穴3に設置される配管13に接続すると共に、前記吸上ポンプ10の吸込ポート10aに繋がる吸込管16を前記スイベルジョイント5の上部の前記導水管12に接続する。
【0028】
この逆循環掘削工法を採用する場合には、プラント8からの安定液4は、吸込管14、供給ポンプ9、吐出管15、切換弁11、縦穴3に設置される配管13を通して縦穴3内に供給される。そして前述した掘削具2の回転により掘削された土砂は、吸上ポンプ10による吸引力により、安定液4と共にドリリングパイプ1内を通り、駆動筒19、導水管12、切換弁11、吸込管16、吸上ポンプ10、吐出管17を通してプラント8に戻される。なお、ドリリングパイプ1は外径が例えば20cmのもので、流路断面積が縦穴3の流路断面積より小さいため、この逆循環掘削工法を採用する場合には、吸上ポンプ10によりドリリングパイプ1内に付与される安定液および土砂の吸い上げ力は大きくなるので、安定液4には比重の大きいものを使用する必要がなく、通常は1.05以下の比重のものが用いられる。
【0029】
いま、逆循環掘削工法により、縦穴3に設置された配管13より安定液を縦穴3内に供給しながら、ドリリングパイプ1を通して安定液と共に土砂を吸い上げて排土している際に、掘削具2により掘削された礫等がドリリングパイプ1内で詰まった場合、いったん作業を中止し、切換弁11を正循環式掘削工法を実施する側に切換える。すなわち供給ポンプ9の吐出管15を導水管12に接続し、縦穴3に設置される配管13を吸上ポンプ10の吸込管16に接続し、ポンプ9、10を作動させる。するとドリリングパイプ1内が正圧となり、ドリリングパイプ1内に詰まった礫等をドリリングパイプ1の下端から押し出すことができる。そして掘削具2の回転により詰まりを起こした礫を細かく破砕する等の処理を行なった後、切換弁11を元に戻して作業を再開することにより、迅速に作業を回復することができる。従って逆循環式掘削工法を採用した場合のドリリングパイプ1の詰まりによる作業能率の低下を防止し、作業能率を向上させることができる。
【0030】
また、正循環式掘削工法が好ましい場合には、切換弁11の切換え操作だけで容易に正循環式掘削工法による掘削を行なうことが可能となり、配管の接続換えを行なうことなく、現場への対応が迅速に行なえる。
【0031】
図2はこのような杭打ちのための掘削作業を行なう掘削機(杭打機)の一例を示す側面図である。この掘削機の本体(べースマシン)21は、走行体22上に旋回装置23を介して旋回体24を設置し、旋回体24上に液圧源となるパワーユニット25や運転室26等を搭載して構成される。28は旋回体24に取付けられ、リーダ(本実施の形態では伸縮リーダ)27を搭載する前後伸縮フレームであり、伸縮リーダ27はこの前後伸縮フレーム28の伸縮により前後位置を調整可能である。この伸縮リーダ27は固定リーダ27aに可動リーダ27bを液圧シリンダ29の伸縮により昇降可能に装着したものである。伸縮リーダ27は、旋回体24に軸31を中心に液圧シリンダ32により後方に倒すことができるように起伏可能に取付けられる。
【0032】
30は前記旋回体24の後部の左右および前記前後伸縮フレーム28の左右に取付けたアウトリガーであり、作業時に着地して掘削反力を受けるものである。
【0033】
可動リーダ27bは前面が開口された構造を有し、内部に前記昇降装置7を構成するための同サイズの2本の液圧シリンダ33、34が収容される。これらの液圧シリンダ33、34は、それぞれチューブを連結し、各ピストンロッドがそれぞれ下向き、上向きになるように連結する。また、一方の液圧シリンダ33のピストンロッドは可動リーダ27bに連結し、他方の油圧シリンダ34のピストンロッドはブラケット36に連結する。ブラケット36には前記スイベルジョイント5を取付ける。
【0034】
ブラケット36の左右にガイドギブ38を有し、これらのガイドギブ38を、可動リーダ27bの左右に設けたガイドレール39に摺動可能に嵌合することにより、スイベルジョイント5を可動リーダ27bに沿って昇降可能に装着する。
【0035】
スイベルジョイント5は、ドリリングパイプ1を回転させるための駆動用モータ40や後述の出力歯車53、外歯歯車54(図3参照)等からなる駆動装置を備える。また、駆動筒19に固定するためのチャック装置42を有する。図2は液圧シリンダ33、34を収縮させてスイベルジョイント5を下げた状態を示す。
【0036】
43はドリリングパイプ1等を継ぎ足し、分離したり、杭施工のための各種道具や材料を吊り上げるために旋回体24上に設置したウインチ、44は前記伸縮リーダ27に並設したフレームに旋回機構45を介して設置した伸縮フレームである。ウインチ43に巻かれた吊り上げロープ46は、伸縮フレーム44の基端部のシーブ47と先端のシーブ48に掛け、フック49に接続される。
【0037】
図3は図2に示したスイベルジョイント5の詳細を示す断面図である。なおこの図3の構成は、図1に示した切換弁11を有しない掘削装置に用いてもよい。図3に示すように、スイベルジョイント5のハウジング50内には上下の軸受51、52により支持して駆動筒19が回転可能に内蔵される。ドリリングパイプ1を接続するチャック装置42は駆動筒19の下部に設けられる。
【0038】
ハウジング50上には、前記モータ40が搭載される。駆動筒19の外側には外歯歯車54が取付けられ、前記モータ40の出力歯車53を前記外歯歯車54に噛合させる。これによりモータ40の回転で駆動筒19ならびにこの駆動筒19にチャック装置42を介して接続されるドリリングパイプ1を回転させることができる。
【0039】
図4、図5は図3の右側部分、左側部分をそれぞれ拡大して示す断面図である。図3ないし図5において、55は駆動筒19と導水管12との間の隙間56から軸受51に泥水が浸入することを防止するパッキングであり、ゴムにより構成される。57はハウジング50に設けた第1の貫通孔であり、この孔57はハウジング50の外部を軸受51に連通させるものである。60はこの第1の貫通孔57に取付けたグリスニップルである。
【0040】
59はハウジング50における第1の貫通孔57の反対側に設けられ、ハウジング50の外部を軸受51に連通させる第2の貫通孔である。61はこの第2の貫通孔59に取付けられ、軸受51とハウジング50の外部とを連通させる細孔61aを有する孔付目めくらである。62は軸受51の収容部からグリスが外部に漏れることを防止するオイルシールである。
【0041】
本実施の形態においては、パッキング55を上下に間隔を有して2段に設け、これらのパッキング55、55の間とハウジング50の外部とを連通させる第3の貫通孔63を設けている。65はこの第3の貫通孔63に取付けたグリスニップルである。
【0042】
64は第4の貫通孔であり、この孔64は、ハウジング50における第3の貫通孔63を設けた箇所の反対側に、2段のパッキング55、55の間とハウジング50の外部とを連通させるものである。66はこの第4の貫通孔64に取付けた細孔66a付の孔付目めくらである。
【0043】
さらに本実施の形態においては、導水管12におけるハウジング50への取付けのための厚肉部12aとハウジング50との間に、下方から順に、ゴムでなるパッキング67と、金属製Oリング68と、塵埃侵入防止用のダストシール69とを取付けている。本実施の形態においては、ハウジング50と導水管12の厚肉部12aとの間の隙間とハウジング50の外部との間を連通させる第5の貫通孔70を設け、この貫通孔70にグリスニップル72を取付けている。また、ハウジング50におけるこの貫通孔70の反対側に、ハウジング50と導水管12の厚肉部12aとの間の隙間とハウジング50の外部との間を連通させる第6の貫通孔71を設け、この貫通孔71に細孔73aを有する孔付目めくら73を取付けている。
【0044】
図3ないし図5に示した構成において、正循環掘削工法による掘削を行なっている場合、すなわち駆動筒19内の液圧が正圧である際には、グリスニップル60から第1の貫通孔57を通して軸受51に充填されるグリスにより、駆動筒19内から軸受51への漏水が良好に阻まれる。
【0045】
一方、逆循環掘削工法による掘削の際には、駆動筒19内の液圧は負圧になるが、孔付目めくら61の細孔61aより外気が軸受51側に入るので、軸受収容室内が負圧になることが防止され、これにより、泥水を含んだ排水が軸受51内に入ることが防止され、軸受51が土砂中の小砂等により損傷することが防止される。従って、正循環掘削工法、逆循環掘削工法のいずれの掘削工法を適用する場合にも軸受51への漏水による軸受の損傷等の悪影響が防止できる。したがってスイベルジョイント5の延命化が達成できる。
【0046】
また、本実施の形態においては、パッキング55を上下2段に設け、その上下のパッキング55、55間にグリスを供給しているため、軸受51への漏水防止機能を高めることができる。
【0047】
また、本実施の形態においては、導水管12の厚肉部12aとハウジング50との間におけるパッキング67とOリング68との間の隙間を貫通孔70、71によりハウジング50の外部に連通させ、各貫通孔70、71にそれぞれグリスニップル72と孔付目めくら73を設けたので、パッキング67とOリング68との間の隙間にもグリスを充填することができ、ハウジング50の外部への漏水も良好に防止することができる。
【0048】
また、ハウジング50の一方にグリスニップル60、65、72を設け、他方に孔付目めくら61、66、73を設けているので、グリスニップル60、65、72からグリスを注入する際に、いちいち栓を着脱する必要がなく、グリスの注入作業が容易となる。また、グリスの注入を容易に業なうことができるため、グリスの注入が促進され、軸受51を常に新鮮なグリスで満たしておくことができ、軸受51の延命化が促進される。
【0049】
また、軸受51がグリスで満たされたか否かは、孔付目めくら61からのグリスが漏れ出たか否かで容易に判別でき、充填作業が容易となり、グリスの充填不足を解消することができる。また、孔付目めくら61、66、73に設ける孔は細孔61a、66a、73aであるから、塵埃の軸受等への侵入の心配がない。なお、この細孔61a、66a、73aの直径は実施の形態では0.8mmとしたが、負圧による外気の導入を行なう機能を果たす意味ではこの直径は0.5mm以上であることが好ましく、一方、塵埃の侵入を防止する意味では2mm以下であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による掘削装置の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】本発明を適用する掘削機の一実施の形態を示す側面図である。
【図3】本発明のスイベルジョイントの一実施の形態を示す側面断面図である。
【図4】図3の右側部分の要部を拡大して示す断面図である。
【図5】図3の左側部分の要部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1:ドリリングパイプ、2:掘削具、3:縦穴、4:安定液、5:スイベルジョイント、7:昇降装置、8:プラント、9:供給ポンプ、10:吸上ポンプ、11:切換弁、12:導水管、13:配管、14、16:吸込管、15、17:吐出管、19:駆動筒、21:掘削機本体、22:走行体、23:旋回装置、24:旋回体、25:パワーユニット、26:運転室、27:リーダ、27a:固定リーダ、27b:可動リーダ、28:前後伸縮フレーム、29:液圧シリンダ、30:アウトリガー、31:軸、32:液圧シリンダ、33、34:液圧シリンダ、36:ブラケット、38:ガイドギブ、39:ガイドレール、40:モータ、42:チャック装置、43:ウインチ、44:伸縮フレーム、45:旋回機構、46:吊り上げロープ、47、48:シーブ、49:フック、50:ハウジング、51、52:軸受、53:出力歯車、54:外歯歯車、55、67:パッキング、56:隙間、57:第1の貫通孔、59:第2の貫通孔、60、65、72:グリスニップル、61、66、73:孔付目めくら、61a、66a、73a:細孔、62:オイルシール、68:Oリング、69:ダストシール、63:第3の貫通孔、64:第4の貫通孔、70:第5の貫通孔、71:第6の貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に掘削具を取付けたドリリングパイプと、
このドリリングパイプを下部に接続し回転させる駆動装置を有しかつ上部に安定液を通す導水管を有するスイベルジョイントと、
前記安定液を溜めかつ安定液中の土砂を分離するプラントと、
前記掘削具により掘削された縦穴に前記プラントより安定液を供給する供給ポンプと、
前記掘削具による掘削部を経た安定液を前記プラントに吸い上げる吸上ポンプとを備えた循環式掘削装置において、
前記供給ポンプの吐出ポートを前記導水管と前記縦穴に設置された配管との間で切換え接続すると共に、前記吸上ポンプの吸込ポートを前記縦穴に設置された前記配管と前記導水管との間で切換え接続する切換弁を設けたことを特徴とする循環式掘削装置。
【請求項2】
請求項1に記載の循環式掘削装置に設けられる前記スイベルジョイントにおいて、
前記導水管が上部に設けられ、かつ前記駆動装置が設けられるハウジングと、
前記導水管に連通すると共に、前記ハウジング内に軸受を介して回転可能に取付けられ、下部に前記ドリリングパイプが接続されるチャック装置を設けた駆動筒と、
前記ハウジングと前記駆動筒との間に設けられ、前記軸受への漏水を防止するパッキングと、
前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングの外部から前記軸受に連通させる第1の貫通孔と、
前記第1の貫通孔に取付けられたグリスニップルと、
前記ハウジングにおける前記第1の貫通孔の反対側に設けられ、前記ハウジングの外部から前記軸受に連通させる第2の貫通孔と、
前記第2の貫通孔に取付けられ、軸受とハウジングの外部とを連通させる細孔を有する孔付目めくらとを備えたことを特徴とするスイベルジョイント。
【請求項3】
請求項2に記載のスイベルジョイントにおいて、
前記パッキングを上下に間隔を有して2段に設け、
これらのパッキングの間と前記ハウジングの外部とを連通させる第3の貫通孔を設け、
前記第3の貫通孔における前記第3の貫通孔を設けた箇所の反対側に、前記2段のパッキングの間と前記ハウジングの外部とを連通させる第4の貫通孔を設け、
前記第3の貫通孔にグリスニップルを取付け、前記第4の貫通孔に孔付目めくらを取付けたことを特徴とするスイベルジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−75287(P2008−75287A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253576(P2006−253576)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(599021837)杉崎基礎株式会社 (2)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】