説明

微多孔膜およびそのような膜を製造し使用する方法

本発明は、適度な透過性、機械的強度、電解液吸収特性、耐圧縮性および耐熱収縮性を有する微多孔膜、および、そのようなポリオレフィン微多孔膜を製造し使用する方法に関する。また、そのようなポリオレフィン微多孔膜を備える電池のセパレータ、および、そのような電池のセパレータを利用する電池にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適度な浸透性、機械的強度、耐熱収縮性、および、優れた電解液吸収特性、耐圧縮性を有する微多孔膜、並びに、そのような微多孔膜を製造し使用する方法に関する。また、そのような微多孔膜を備える電池のセパレータ、および、そのような電池のセパレータを利用する電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン微多孔膜は、一次電池用、および、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池、ニッケル亜鉛二次電池、銀亜鉛二次電池などの二次電池用のセパレータとして有用である。ポリオレフィン微多孔膜を電池の、特にリチウムイオン電池のセパレータとして用いると、膜の性能が電池の特性、生産性および安全性に大きく影響する。したがって、ポリオレフィン微多孔膜は、適度な透過性、機械的特性、耐熱性、寸法安定性、シャットダウン特性、メルトダウン特性、電解液吸収性等を有するのがよい。そのような電池では、電池の安全特性の改良、特に運転状態で高温に曝される電池用に、比較的低いシャットダウン温度と比較的高いメルトダウン温度とを有することが好ましい。セパレータの高い透過性は、高容量電池にとって好ましい。高い機械的強度のセパレータは、改良された電池の組立ておよび製造にとって好ましい。
【0003】
材料組成、延伸条件、熱処理条件等の最適化が提案され、電池のセパレータに用いられるポリオレフィン微多孔膜の特性を向上してきた。たとえば、特開平6−240036号公報では、改良された孔径とシャープな孔径分布を有するポリオレフィン微多孔膜を開示する。該ポリオレフィン微多孔膜は、7×10以上の重量平均分子量(Mw)を有する超高分子量ポリエチレンを1質量%以上含有し、10〜300の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)を有するポリエチレン樹脂から作られ、35〜95%の空孔率、0.05〜0.2μmの平均貫通孔径、0.2kg以上の破断強度(15mm幅)、1.5以下の孔径分布 (最大孔径/平均貫通孔径)を有する。この微多孔膜は、上記のポリエチレン樹脂と膜形成溶媒の溶融ブレンドをダイ押出しして、冷却して得られるゲル状シートを上記ポリエチレン樹脂の結晶分散温度(Tcd)から融点+10℃までの温度で延伸し、ゲル状シートから膜形成溶媒を除去し、得られた膜を上記ポリエチレン樹脂の融点−10℃以下の温度で1.5〜3倍の面倍率で再延伸し、上記ポリエチレン樹脂の結晶分散温度から融点までの温度で熱固定することにより製造される。
【0004】
国際公開第1999/48959号には、適度な強度や透過性に加え、透過性の局部的なムラのない均一な表面多孔構造を有するポリオレフィン微多孔膜が開示される。この膜は、50,000以上で5,000,000未満のMwと1以上30未満の分子量分布を有する、例えば、高密度ポリエチレンのようなポリオレフィン樹脂で形成され、均一に分散したミクロフィブリルにより形成された微細な空隙を有する網目構造を有しており、20〜100nmの平均ミクロフィブリルサイズと40〜400nmの平均ミクロフィブリル間隔を有する。この微多孔膜は、上記のポリオレフィン樹脂と膜形成溶媒の溶融ブレンドをダイ押出しし、冷却して得られるゲル状シートを上記ポリオレフィン樹脂の融点−50℃以上で融点未満の温度で延伸し、ゲル状シートから膜形成溶媒を除去し、上記ポリオレフィン樹脂の融点−50℃以上で融点未満の温度で1.1〜5倍に再延伸し、上記ポリオレフィン樹脂の結晶分散温度から融点までの温度で熱固定することにより製造される。
【0005】
国際公開第2000/20492号には、組成としてポリエチレンを備え、ポリエチレン微細フィブリルが5×10以上のMwを有することを特徴とする透過性を改良したポリオレフィン微多孔膜が開示される。ポリオレフィン微多孔膜は0.05〜5μmの平均孔径を有し、膜表面に対し角度θが80〜100°となるラメラの割合は長手および横断断面で40%以上である。このポリエチレン組成は、7×10以上の重量平均分子量を有する超高分子量ポリエチレンを1〜69重量%、高密度ポリエチレンを1〜98重量%、低密度ポリエチレンを1〜30重量%含む。この微多孔膜は、上記のポリエチレン組成と膜形成溶媒の溶融ブレンドをダイ押出しし、冷却して得られたゲル状シートを延伸し、上記ポリエチレンまたはその組成の結晶分散温度から融点+30℃までの温度で熱固定し、膜形成溶媒を除去することにより製造される。
【0006】
国際公開第2002/072248号には、透過性、微粒子阻止性能および強度を改良した微多孔膜が開示される。この微多孔膜は、380,000未満のMwを有するポリエチレン樹脂を用いて作られる。微多孔膜は、50〜95%の空孔率と0.01〜1μmの平均孔径を有する。この微多孔膜は、微多孔膜全体にわたって互いに接続された0.2〜1μmの平均直径のミクロフィブリルにより形成された三次元網目状の骨格と、該骨格により画定された、0.1μm以上で3μm未満の平均径の開口部を有する。この微多孔膜は、上記のポリエチレン樹脂と膜形成溶媒の溶融ブレンドをダイ押出しし、冷却して得られたゲル状シートから膜形成溶媒を除去し、20〜140℃の温度で2〜4倍に延伸し、80〜140℃の温度で延伸した膜を熱固定することにより製造される。
【0007】
国際公開第2005/113657号には、適度なシャットダウン特性、メルトダウン特性、寸法安定性および高温強度を有するポリオレフィン微多孔膜が開示される。この微多孔膜は、(a)10,000以下の分子量を有し、Mw/Mn比が11〜100である成分を8〜60質量%含むポリエチレン樹脂であって、ここでMnはポリエチレン樹脂の数平均分子量であり、粘度平均分子量(Mv)が100,000〜1,000,000であるポリエチレン樹脂と、(b)ポリプロピレンを含むポリオレフィン組成を用いて作られる。この微多孔膜は、20〜95%の空孔率と、100℃で10%以下の熱収縮率を有する。このポリオレフィン微多孔膜は、上記のポリオレフィンと膜形成溶媒の溶融ブレンドをダイ押出しし、冷却して得られたゲル状シートを延伸し、膜形成溶媒を除去し、シートを焼きなましすることにより製造される。
【0008】
セパレータの特性に関して、透過性、機械的強度、寸法安定性、シャットダウン特性、および、メルトダウン特性のみならず、電解液吸収性などの電池生産性や電解液保持特性などの電池サイクル特性に関する特性も、近年重要度が増してきている。特に、リチウムイオン電池用電極はリチウムの取り込みや離脱に従って膨張および収縮し、電池容量の上昇はより大きな膨張比となる。電極が膨張するとセパレータは圧縮されるので、圧縮されたときにセパレータが、電解液保持の低下についてできるだけ少ししか影響されないことが好ましい。
【0009】
さらに、改良された微多孔膜が、特開平6−240036号公報、国際公開第1999/48959号、国際公開第2000/20492号、国際公開第2002/072248号および国際公開第2005/113657号に開示されていても、さらなる改良、特に膜透過性、機械的強度、耐熱収縮性、耐圧縮性および電解液吸収特性で改良が必要である。このように、改良した透過性、機械的強度、耐熱収縮性、耐圧縮性および優れた電解液吸収特性を有する微多孔膜から電池のセパレータを形成することが好ましい。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、良好な透過性、機械的強度、並びに、改良した耐熱収縮特性、耐圧縮性、電解液吸収性およびシャットダウン特性を有する微多孔膜の発見に関する。本発明の実施の形態は、少なくとも2つのピークを有する水銀圧入ポロシメトリ(mercury intrusion porosimetry)によって得られる孔サイズ(あるいは、孔がほぼ円筒形のときには、孔径)分布曲線に特徴のある孔を備える微多孔膜に関する。そのような膜は改良された耐熱収縮性、耐圧縮性、シャットダウンおよび電解液吸収特性を有することが分かった。微多孔膜は、(1)ポリオレフィン組成と少なくとも1種の希釈剤、例えば、膜形成溶媒を混合してポリオレフィン組成を形成する工程で、ここでポリオレフィン組成は、例えば約2.5×10から約5×10の範囲のような、7×10未満の重量平均分子量と約10から約100までの分子量分布を有する約75重量%から約99重量%のポリエチレンと、約1×10から約4×10の重量平均分子量と80J/g以上の融解熱と約1から約100までの分子量分布を有する約1重量%から約25重量%のポリプロピレン樹脂とを備え、ここで%はポリオレフィン組成の重量に基く、工程、(2)混合したポリオレフィン組成と希釈剤とをダイ押出しして押出し成形品を形成する工程、(3)押出し成形品を冷却して冷却押出し成形品を形成する工程、(4)冷却押出し成形品を、冷却押出し成形品のポリエチレンの約TcdからTcd+約30℃の高延伸温度で少なくとも一方向に約9から約400倍の倍率に延伸する工程、(5)延伸したシートから、希釈剤または溶媒の少なくとも一部を除去して膜を形成する工程、(6)膜を、たとえば少なくとも一方向に約1.1から約1.8倍の範囲の高倍率に延伸し、延伸膜を形成する工程、(7)延伸膜を熱固定し、最終的な微多孔膜を形成する工程を備える方法により製造できる。
【0011】
実施の形態では、微多孔膜は、孔サイズ(あるいは、孔がほぼ円筒形のときには、孔径)分布曲線で0.01〜0.08μmの範囲に主たるピークに相当する緻密領域と、孔サイズ分布曲線で0.08〜1.5μmの範囲に少なくとも1つのサブピークに相当する粗大領域と、を有する。実施の形態では、緻密領域と粗大領域の孔体積比は、0.5〜49である。実施の形態では、微多孔膜は、3×10nm以上の膜表面の任意の2点間の高さの差の最大値としての表面粗さを有する。実施の形態では、微多孔膜の表面粗さの上限は3×10nmである。この範囲内の表面粗さでは、微多孔膜は、電池のセパレータとして用いられるときに電解液との大きな接触面積を有し、適度な電解液吸収特性を示す。
【0012】
ポリオレフィン組成を形成するのに用いられるポリマー樹脂は、約2.5×10から約7×10、たとえば約2.5×10から約5×10の重量平均分子量と、約10から約100まで、たとえば約10から約50までの分子量分布を有する、たとえば高密度ポリエチレン樹脂である、約75重量%から約99重量%のポリエチレン樹脂と、約1×10から約4×10の、たとえば約3×10から約1.5×10の重量平均分子量と、80J/g以上、たとえば80から約200J/gの融解熱と、約1から約100まで、たとえば約1.1から約50までの分子量分布を有する、約1重量%から約25重量%のポリプロピレン樹脂とを備え、パーセントはポリオレフィン組成の重量に基づく。ポリエチレン樹脂は約10から約20の分子量分布を適度に有する。別の実施の形態では、ポリオレフィン樹脂(結果として、最終的な膜も)は、膜の重量に基づいて、80重量%から95重量%のポリエチレンと、5重量%から20重量%のポリプロピレンとを含む。
【0013】
実施の形態では、微多孔膜は、
(1)ポリオレフィン組成と少なくとも1つの希釈剤あるいは溶媒、たとえば膜形成溶媒、を混合してポリオレフィン溶液を形成する工程で、ここでポリオレフィン組成は、約2.5×10から約4×10の重量平均分子量と約10から約100までの分子量分布を有する約75重量%から約99重量%のポリエチレン樹脂と、約1×10から約4×10の重量平均分子量と80から約200J/gの融解熱と約1から約100までの分子量分布を有する約1重量%から約25重量%のポリプロピレン樹脂とを備え、パーセントはポリオレフィン組成の重量に基づき、ポリオレフィン溶液は、ポリオレフィン重量に基づいて約25重量%から約50重量%、たとえば約30重量%から約50重量%の溶媒濃度を有するのが好ましい、工程と、(2)ポリオレフィン溶液をダイ押出しして押出し成形品を形成する工程と、(3)押出し成形品を冷却して高ポリオレフィン含有量を有する冷却押出し成形品を形成する工程と、(4)冷却押出し成形品を、冷却押出し成形品のポリエチレンの約Tcdから約Tcd+30℃までの高延伸温度で少なくとも1方向に、たとえば約9から約400倍の倍率で延伸して、延伸シートを形成する工程と、(5)延伸シートから希釈剤または溶媒の少なくとも一部を除去して膜を形成する工程と、(6)膜を少なくとも1方向に約1.1から約1.8倍の高倍率に延伸して、延伸膜を形成する工程と、(7)延伸膜を約Tcdから膜の溶融温度(℃)、好ましくはほぼ工程(6)の延伸温度から膜の溶融温度(℃)の熱固定温度で熱固定して微多孔膜を形成する工程とを備える方法により製造される。
【0014】
上記の方法において、工程(6)のポリオレフィン微多孔膜の延伸は、工程(4)の冷却押出し成形品の延伸の後に行われるので、「再延伸」と呼ばれる。
【0015】
さらに他の実施の形態では、本発明は、ポリエチレンとポリプロピレンとを含むポリオレフィン微多孔膜を含み、4.5以上の電解液吸収速度を有する微多孔膜に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、改良した特性、特に、電解液注入、収縮、圧縮、およびシャットダウン特性を改良した微多孔膜(またはフィルム)に関する。そのような膜を製造する方法での最初のステップとして、ある特定のポリエチレン樹脂とある特定のポリプロピレン樹脂とを、たとえば溶融ブレンドで混合し、ポリオレフィン組成を形成する。
【0017】
[1]微多孔膜を製造するために用いられる材料
(1) ポリオレフィン組成
ポリオレフィン組成は、7×10以下、たとえば約2.5×10から7×10の範囲の重量平均分子量と約10から約100の分子量分布を有する約75重量%から約99重量%のポリエチレン樹脂と、約1×10から約4×10の範囲の重量平均分子量と80J/g以上の融解熱と約1から約100の分子量分布を有する約1重量%から約25重量%、たとえば約3重量%から約20重量%、たとえば約5重量%から約15重量%のポリプロピレン樹脂と、ここで重量パーセントはポリオレフィン組成の重量に基づくが、を備える。実施の形態では、ポリオレフィン組成は、7×10より大きなMwを有するポリエチレンを含まない。
【0018】
(a) ポリエチレン樹脂
(i)組成
ポリエチレン樹脂、たとえば高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂は、約2.5×10から7×10の、または3×10から6×10の重量平均分子量(Mw)と、約10から約100の分子量分布(MWD)を有する。たとえば、ポリエチレン樹脂は、約2.5×10から約4×10のMwと、約10から約50の、たとえば約10から約20のMWDを有する。ポリエチレン樹脂は、エチレン・ホモポリマー、あるいは、たとえば約5モル%のような少量の第3のαオレフィンを含有するものなどのエチレン−αオレフィン・コポリマーでよい。第3のαオレフィンはエチレンではないが、それは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、またはスチレン、あるいはこれらの合成であるのが好ましい。そのようなコポリマーはシングルサイト触媒を用いて製造されるのが好ましい。
【0019】
(ii)MwとMWDの決定
MWDは、Mwの数平均分子量(Mn)に対する比に等しい。微多孔膜を製造するのに用いられるポリマーのMWDは、例えば、多段重合により、コントロールできる。ポリエチレン組成のMWDは、分子量とポリエチレン成分の混合比によりコントロールできる。
【0020】
ポリエチレンのMwとMnとは、示差屈折率検出器(DRI)を備える、高温サイズ排除クロマトグラフィー、あるいは、「SEC」(GPC PL220、Polymer Laboratories社)を用いて決定される。Polymer Laboratories社から市販のPLgel Mixed-B カラム3本を用いる。公称流速は0.5cm/分で、公称射出量は300μlであった。トランスファーライン、カラムおよびDRI検出器は、145℃に保たれたオーブン中に入れられた。測定は、「Macromolecules」34巻19号(2001)6812−6820頁に開示された手順に従って行われた。
【0021】
使用されるGPC溶媒は、約1000ppmのブチル化ハイドロキシトルエン(BHT)を含むフィルタしたアルドリッチ試薬グレード1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。TCBは、SECに導入される前にオンラインの脱気装置で脱気される。ポリマー溶液は、ガラス容器に乾燥ポリマーを置いて、所定量の上記TCB溶媒を加え、約2時間連続撹拌しながら混合物を160℃で加熱することにより準備した。UHMWPE溶液の濃度は0.25〜0.75mg/mlであった。サンプル溶液を、GPCに注入する前にオフラインで、Polymer Laboratories社から市販のSP260 Sample Prep Stationモデルを用いて2μmフィルタでろ過した。
【0022】
カラムセットの分離効率は、キャリブレーション曲線を生成するのに用いられる、約580から約10,000,000のMpの範囲の17の個々のポリスチレン標準を用いて生成したキャリブレーション曲線でキャリブレーションした。ポリスチレン標準はPolymer Laboratories社(米国マサチューセッツ州アマースト)から市販されている。キャリブレーション曲線(log MPと保持容量)は、各PS標準用のDRI信号でのピークの保持容量を記録し、そのデータを2次式に当てはめることにより生成される。サンプルは、Wave Metrics社から入手可能なIGOR Proを用いて分析される。
【0023】
(b)ポリプロピレン樹脂
ここで用いるポリプロピレンは、約3×10から約1.5×10、例えば約6×10から約1.5×10のMwと、80J/g以上の、非限定的な例として約80から約200J/gの融解熱(ΔHm)と、約1.0から約100の、例えば約1.1から約50のMWDを有し、プロピレン・ホモポリマーまたはプロピレンと他のもの、すなわち、第4のオレフィンとのコポリマーでもよく、ただし、ホモポリマーが好ましい。コポリマーは、ランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。プロピレン以外のオレフィンである第4のオレフィンは、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等のαオレフィン、およびブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のようなジオレフィンを含む。プロピレン・コポリマー中の第4のオレフィンのパーセントは、耐熱性、耐圧縮性、耐熱収縮性等のようなポリオレフィン微多孔膜の特性を低下させない範囲であることが好ましく、約10モル%未満、例えば約0から約10モル%未満までが好ましい。
【0024】
実施の形態では、ポリプロピレンのMWDは約1.0から約100で、例えば、約2から約50あるいは約2.5から6である。
【0025】
ポリプロピレンのMw、MWDおよびΔHmは、米国特許出願公開US2008/0057389号に開示された方法に従って計測され、米国特許出願公開US2008/0057389号の全文が本書に参照して組み込まれる。
【0026】
ポリオレフィン組成中のポリプロピレン樹脂の量は、ポリオレフィン組成の重量に基づいて約1重量%から約25重量%である。ポリプロピレン樹脂の量が25重量%より高いと、得られる微多孔膜は相対的に低強度となり、二峰性構造に形成するのが難しくなる。ポリプロピレン樹脂の量はポリオレフィン組成の重量に基づいて、約3重量%から約20重量%であるのが好ましく、さらに好ましくは約5重量%から約15重量%である。
【0027】
(2) 他の成分
上記の成分に加え、ポリオレフィン組成は、(a)追加のポリオレフィン、および/または、(b)約170℃以上の融点またはガラス転移温度(Tg)を有する耐熱ポリマー樹脂を、微多孔膜の特性を低下させない量で、例えばポリオレフィン組成の質量に基づいて10質量%以下、含んでもよい。
【0028】
(a)追加のポリオレフィン
追加のポリオレフィンは、(a)各々が1×10から4×10のMwを有する、ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ酢酸ビニル、ポリメチル・メタクリレート、ポリスチレンおよびエチレン/αオレフィンのコポリマーと、(b)1×10から1×10のMwを有するポリエチレン・ワックスの少なくとも1種でよい。ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ酢酸ビニル、ポリメチル・メタクリレートおよびポリスチレンはホモポリマーに限定されず、さらに他のαオレフィンを含むコポリマーであってもよい。
【0029】
(b)耐熱性樹脂
耐熱性樹脂は、(i)約170℃以上の融点を有し、部分的に結晶構造のアモルファス樹脂、および、(ii)約170℃以上のTgを有する完全にアモルファスな樹脂とそれらの混合物であることが好ましい。融点とTgはJIS K7121の方法に準拠した示差走査熱量測定法(DSC)により決められる。耐熱性樹脂の具体例には、ポリブチレン・テレフタレート(融点:約160〜230℃)、ポリエチレン・テレフタレート(融点:約250〜270℃)等のポリエステル、フッ素樹脂、ポリアミド(融点:215〜265℃)、ポリアリーレンスルフィド、ポリイミド(Tg:280℃以上)、ポリアミドイミド(Tg:280℃)、ポリエーテルスルホン(Tg:223℃)、ポリエーテルエーテルケトン(融点:334℃)、ポリカーボネート(融点:220〜240℃)、酢酸セルロース(融点:220℃)、三酢酸セルロース(融点:300℃)、ポリスルホン(Tg:190℃)、ポリエーテルイミド(融点:216℃)等が含まれる。
【0030】
(c)含有量
追加のポリオレフィンおよび耐熱性樹脂の合計量は、混合した希釈剤とポリオレフィン組成の重量に基づいて、20重量%以下が好ましく、例えば約0重量%から約20重量%である。
【0031】
[2]微多孔膜の製造方法
本発明は、優れた電解液吸収、収縮、圧縮およびシャットダウン特性を有する微多孔膜の製造方法に関し、その製造方法は、(1)ある特定のポリオレフィン(一般的にポリオレフィン樹脂の形)と少なくとも1種の溶媒または希釈剤を混合してポリオレフィン溶液を形成する工程と、(2)ポリオレフィン溶液をダイ押出しして押出し成形品を形成する工程と、(3)押出し成形品を冷却して冷却押出し成形品を形成する工程と、(4)冷却押出し成形品をある特定温度で延伸して延伸シートを形成する工程と、(5)延伸シートから溶媒または希釈剤を除去して膜を形成する工程と、(6)膜をある特定温度である特定高倍率まで延伸して延伸膜を形成する工程と、(7)延伸膜を熱固定して微多孔膜を形成する工程とを備える。必要なら、工程(4)と工程(5)との間で、(4i)熱固定処理工程、(4ii)加熱ロール処理工程、および/または、(4iii)高温溶媒処理工程を実行してもよい。工程(5)と工程(6)との間で、(5i)熱固定処理工程を実行してもよい。必要なら、工程(6)の前に工程(5i)に続けて(5ii)電離放射による架橋結合の工程、および、工程(7)の後で(7i)親水化処理工程および(7ii)表面コーティング処理工程を実行してもよい。
【0032】
(1)ポリマーと希釈剤の混合
ポリエチレンとポリプロピレンとを備えるポリオレフィン組成は、少なくとも1種の希釈剤と混ぜ合わせられ、混合物を形成する。混合物は、必要なら、本発明の効果を低下させない範囲で、抗酸化剤、ケイ酸塩微粒子(孔形成材料)、等の種々の添加剤を含んでもよい。
【0033】
比較的高倍率のよりよい延伸を可能にするために、希釈剤は室温で液体であることが好ましい。希釈剤が混合物中のポリマーの1種以上に対して溶媒であると、「溶媒」または「膜形成溶媒」と呼ばれる。希釈剤が溶媒(または膜形成溶媒)であると、混合物は「ポリオレフィン溶液」と呼ばれる。希釈剤は、例えば、ノナン、デカン、デカリン、p−キシレン、ウンデカン、ドデカン、液体パラフィン、上記の炭化水素の沸点と同等の沸点を有する鉱油の蒸留物、および、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルなどの室温で液体のフタル酸エステル等の、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素でよい。安定した溶媒含有量を有するゲル状シートとして押出し成形品を最も効率的に得るために、液体パラフィンのような不揮発性液体溶媒を用いるのが好ましい。実施の形態では、溶融ブレンドする間にポリオレフィン組成と混和性であるが室温では固体である1種以上の固体溶媒を液体溶媒に加えてもよい。そのような固体溶媒は、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィン・ワックスなどであるのが好ましい。別の実施の形態では、固体溶媒は、液体溶媒なしで用いられる。しかし、固体溶媒だけを用いるときは、不均一な延伸等が生じ得る。
【0034】
液体溶媒の粘性は、25℃の温度で測定して約30から約500cStであるのが好ましく、より好ましくは約30から約200cStである。25℃での粘性が30cStより小さいと、ポリオレフィン溶液が泡立ち、混ぜるのが難しくなる。一方、粘性が500cStより大きいと、液体溶媒の除去が難しくなる。
【0035】
特に制約はないが、ポリオレフィン溶液は二軸押出機で溶融ブレンドされ、高樹脂濃度ポリオレフィン溶液を準備するのが好ましい。膜形成溶媒を溶融ブレンドを始める前に加えてもよく、あるいはブレンドする間に中間部で二軸押出機に供給してもよいが、後者の方が好ましい。
【0036】
ポリオレフィン溶液の溶融ブレンド温度は、ポリエチレン樹脂の融点(Tm)+10℃からTm+120℃の範囲であるのが好ましい。融点は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量測定法(DSC)により測定される。実施の形態では、特にポリエチレン樹脂が約130から約140℃の融点を有する場合に、溶融ブレンド温度は約140から約250℃で、好ましくは約170から約240℃である。
【0037】
ハイブリッド構造を得るために、ポリオレフィン溶液中のポリオレフィン組成濃度は、ポリオレフィン溶液の重量に基づいて、約25重量%から約50重量%が好ましく、例えば、約25重量%から約45重量%である。
【0038】
二軸押出機のスクリュー長さLのスクリュー径Dに対する比L/Dは、好ましくは約20から約100の範囲であり、より好ましくは、約35から約70の範囲である。L/Dが20より小さいと、溶融ブレンドが不十分になる。L/Dが100より大きいと、二軸押出機中のポリオレフィン溶液の滞留時間が長くなりすぎる。後者の場合、過度の剪断と加熱の結果として膜のMwが低下し、このことは好ましくはない。二軸押出機のシリンダーは、好ましくは約40から約100mmの内径を有する。
【0039】
二軸押出機では、充填したポリオレフィン溶液の量Q(kg/h)のスクリュー回転数Ns(rpm)に対する比Q/Nsは好ましくは約0.1から約0.55kg/h/rpmである。Q/Nsが0.1kg/h/rpmより小さいと、ポリオレフィンが剪断により損傷され、強度とメルトダウン温度の低下という結果を生ずる。Q/Nsが0.55kg/h/rpmより大きいと、均一なブレンドが行えない。Q/Nsは、より好ましくは約0.2から約0.5kg/h/rpmである。スクリュー回転数Nsは好ましくは180rpm以上である。特に制約はないが、スクリュー回転数Nsの上限は、好ましくは約500rpmである。
【0040】
(2)押出し
ポリオレフィン溶液は押出機で溶融ブレンドされ、ダイ押出しされる。別の実施の形態では、ポリオレフィンは押出され、ペレット化される。この後者の実施の形態では、ペレットは第2の押出しにて溶融ブレンドされ押出されてゲル状の成形品またはシートを作る。いずれの実施の形態においても、ダイは矩形開口部を有するシート形成ダイ、二重円筒形の中空ダイ、インフレーションダイ、等でよい。シート形成ダイの場合には、ダイの隙間は、好ましくは約0.1から約5mmである。押出し温度は好ましくは約140から約250℃であり、押出し速さは好ましくは約0.2から約15m/分である。押出し方向(すなわち、押出しと押出しの下流側工程の間の押出し成形品の移動方向)は縦方向(machine direction)または「MD」と呼ばれる。膜厚とMDの両方に直交する方向は横断方向(transverse direction)または「TD」と呼ばれる。
【0041】
(3)押出し成形品の冷却
ダイから製造された押出し成形品は冷却され、冷却押出し成形品、たとえば、高樹脂含有量ゲル状成形品またはシートを形成する。冷却は、押出し成形品を、約50℃/分以上の冷却速度で押出し成形品のゲル化温度以下の温度に曝すことにより行われる。冷却は、約25℃以下まで行われるのが好ましい。このような冷却により、膜形成溶媒によって分離されたポリオレフィンのミクロ相を固定する。一般的に、遅い冷却速度は、大きな擬似セル単位を有するゲル状シートを提供し、粗い高次構造となる。一方、速い冷却速度は、密なセル単位となる。50℃/分未満の冷却速度は高い結晶化度となり、ゲル状シートに適度な延伸性をもたらすことが難しくなる。使用可能な冷却方法には、押出し成形品を冷却空気、冷却水などの冷却媒体に接触させること、押出し成形品を冷却ローラに接触させること等がある。
【0042】
実施の形態では、押出し用に混合されたポリオレフィン組成と希釈剤の相対的な量は、冷却押出し成形品が高ポリオレフィン含有量となるように選定される。
【0043】
高ポリオレフィン含有量により、冷却押出し成形品は、ポリオレフィン組成を製造するのに使用されたポリオレフィン由来のポリオレフィンを、冷却押出し成形品の重量に基づいて、少なくとも約25重量%、たとえば約25重量%から約50重量%含むことになる。冷却押出し成形品のポリオレフィン含有量が約25重量%未満であると、小さな孔と大きな孔の両方を有するハイブリッド微多孔膜構造を形成するのが難しくなると考えられる。ポリオレフィン含有量が約50重量%を超えると高粘性となり、所望のハイブリッド構造を形成するのが難しくなる。冷却押出し成形品は、好ましくは、ポリオレフィン溶液と少なくとも同じだけ高いポリオレフィン含有量を有するのが好ましい。
【0044】
(4)冷却押出し成形品の延伸
冷却押出し成形品を少なくとも一方向に延伸する。どんな理論やモデルにも縛られたくはないが、冷却押出し成形品(たとえば、ゲル状シート)は、シートが膜形成溶媒を含有するので、均一に延伸されると考えられる。ゲル状シートは、たとえばテンター法、ロール法、インフレーション法あるいはそれらの組み合わせにより加熱した後に所定倍率に延伸されるのが好ましい。延伸は、一軸または二軸で行われるが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合は、同時二軸延伸、逐次延伸あるいは多段延伸(例えば、同時二軸延伸と逐次延伸の組み合わせ)の何れを用いてもよいが、同時二軸延伸が好ましい。二軸延伸を用いるとき、各方向への延伸量は同じでなくてもよい。
【0045】
この第1の延伸工程での延伸倍率は、一軸延伸の場合に、2倍以上が好ましく、さらに好ましくは3から30倍である。二軸延伸の場合には、延伸倍率はいずれの方向でも3倍以上が好ましく、すなわち、面倍率で9倍以上が好ましく、より好ましくは16倍以上で、最も好ましくは25倍以上である。一実施の形態では、冷却押出し成形品は同時にMDに3から7倍(例えば5倍)とTDに3から7倍(例えば5倍)延伸される。第1の延伸工程の例には、約9倍から約400倍延伸することが含まれる。さらなる例では約16倍から約49倍延伸する。9倍以上の面倍率で、微多孔膜のピン破壊強度は改善される。面倍率が400倍を超えると、延伸装置、延伸作業等は大型延伸装置を含むことになり、操作が難しくなる。
【0046】
延伸の間、押出し成形品は、押出し成形品を製造するのに用いたポリエチレンのほぼ結晶分散温度(Tcd)から約Tcd+30℃の範囲の温度、例えば冷却押出し成形品の混合したポリエチレン成分のTcdからTcd+25℃の範囲、より好ましくはTcd+10℃からTcd+25℃の範囲、最も好ましくはTcd+15℃からTcd+25℃の範囲の温度に曝される。冷却押出し成形品の延伸温度がTcd未満であると、ポリエチレン樹脂が十分に軟化されないのでゲル状シートは延伸により壊れ易く、高倍率の延伸をできないと考えられる。
【0047】
結晶分散温度は、ASTM D 4065に準拠した動的粘弾性の温度特性を測定することにより決められる。ポリエチレン樹脂は約90から100℃の結晶分散温度を有するので、延伸温度は約90℃から125℃、好ましくは約100℃から125℃、より好ましくは105℃から125℃である。
【0048】
上記の延伸により、ポリエチレン・ラメラの間に亀裂を生じ、ポリエチレン相をより細かくして、多数のフィブリルを形成する。フィブリルは3次元網目構造を形成する。延伸は、最終的な微多孔膜の機械的強度を改善すると考えられ、孔を拡張し、微多孔膜を電池のセパレータとして用いるのに適したものとする。
【0049】
所望の特性によっては、延伸は膜厚方向に温度分布を有して行われ、最終的な微多孔膜にさらに改善された機械的強度を付与するようにしてもよい。この方法の詳細な説明は、日本国特許第3347854号に記載されている。
【0050】
(5)希釈剤除去
冷却押出し成形品から少なくとも一部の希釈剤を除去するのには、いかなる使いやすい方法を用いてもよい。たとえば、洗浄溶剤を用いて除去(たとえば、洗浄、移動、または、分解)することができる。ポリオレフィン組成相は、膜形成溶媒相から相分離しているので、希釈剤の除去により微多孔膜が提供される。液体溶媒の除去は1種以上の適切な洗浄溶剤、すなわち、膜から液体溶媒を移動できるもの、を用いて行うことができる。洗浄溶剤の例としては、揮発性溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル、メチルエーテルケトン等のケトン、トリフルオロエタン、C14等の線状フッ化炭素、C等の環状ヒドロフルオロカーボン、COCH、COC等のヒドロフルオロエーテル、COCF、COC等のペルフルオロエーテル、およびこれらの混合物が含まれる。
【0051】
延伸した膜の洗浄は、洗浄溶剤中の浸漬、および/または、洗浄溶剤をかけることにより行うことができる。使用される洗浄溶剤は、延伸した膜の100質量部に対し、約300質量部から約30,000質量部であるのが好ましい。洗浄温度は、通常約15から約30℃で、必要なら、洗浄中に加熱をしてもよい。洗浄中の加熱温度は約80℃以下であるのが好ましい。残留液体溶媒の量が押出し前のポリオレフィン溶液に存在していた液体溶媒の量の1重量%未満になるまで、洗浄を行うのが好ましい。
【0052】
膜形成溶媒を取り除かれた微多孔膜を、加熱乾燥法、風乾燥(例えば、移動する空気を用いる空気乾燥)法などにより乾燥する。大量の洗浄溶剤を除去できるいかなる乾燥法を用いてもよい。好ましくは、乾燥中に洗浄溶剤のほとんどすべてが除去される。乾燥中に、膜は、好ましくはTcdと同じか低い、より好ましくはTcdより5℃以上低い温度に曝されてもよい。乾燥は、微多孔膜の重量(乾燥状態の)に基づいて、残留洗浄溶剤が好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下になるまで、行われる。乾燥が不十分なことは、微多孔膜の空孔率の好ましくない低下を生ずるので、認識することができる。
【0053】
(6)乾燥微多孔膜の延伸
乾燥微多孔膜は少なくとも一軸で高倍率に第2の延伸工程で延伸(再延伸)される。微多孔膜の再延伸は、例えば、第1の延伸工程と同様に、テンター法等により、加熱中に、実行することができる。再延伸は、一軸でも、二軸でもよい。二軸延伸の場合には、同時二軸延伸、逐次延伸の何れをも用いることができるが、同時二軸延伸が好ましい。再延伸は、延伸したゲル状シートから得られる、長いシート形状の微多孔膜で実行されるのが普通なので、再延伸でのMDとTDの方向は、冷却押出し成形品の延伸での方向と同じであるのが普通である。この工程での高延伸倍率は、少なくとも1つの方向で約1.1から約1.8倍、たとえば約1.2から約1.6倍である。延伸量は、各延伸方向で同じである必要はない。
【0054】
第2の延伸については、好ましくはTm以下、より好ましくは、TcdからTmの範囲の第2の温度(「第2の延伸温度」)に膜を曝しながら実行する。第2の延伸温度がTmより高いと、溶融粘度が良好な延伸をするのには一般的に低すぎて、低い透過性となってしまうと考えられる。第2の延伸温度がTcdより低いと、ポリオレフィンが十分に軟化せず、膜が延伸により壊れる、すなわち、均一な延伸ができない、と考えられる。一実施の形態では、第2の延伸温度は通常は約90から約135℃、たとえば約95から約130℃である。
【0055】
この工程における微多孔膜の一軸の第2の延伸倍率は、上記のとおり、約1.1から約1.8倍であるのが好ましい。1.1から1.8倍の倍率は、通常、本発明の微多孔膜を平均孔サイズの大きなハイブリッド構造とする。一軸の第2の延伸の場合、倍率は、長手方向または横断方向で1.1から1.8倍でよい。二軸の第2の延伸の場合、微多孔膜は、両方向での延伸倍率が1.1から1.8倍であれば、同じ倍率ででも異なった倍率ででも延伸できるが、同じ倍率であるのが好ましい。
【0056】
微多孔膜の第2の延伸倍率が1.1倍より小さいと、ハイブリッド構造を有し、最終的膜で良好な透過性、電解液吸収能および耐圧縮性を有する膜を製造するのが難しくなるであろう。第2の延伸倍率が1.8倍より大きいと、繊維構造を保つのが難しくなり、膜の耐熱収縮性と電解液吸収特性が低下すると考えられる。この第2の延伸倍率は、たとえば、1.2から1.6倍でよい。
【0057】
延伸速さは、延伸方向で、好ましくは3%/秒以上である。一軸延伸の場合、延伸速さは、MDまたはTDで3%/秒以上である。二軸延伸の場合、延伸速さは、MDとTDの両方で3%/秒以上である。3%/秒未満の延伸速さは、TDにわたって不適当な透過性のばらつきのない、良好な透過性を有する膜を製造するのを難しくし得る。延伸速さは、好ましくは5%/秒以上であり、より好ましくは10%/秒以上である。特に制限はないが、延伸速さの上限は、例えば、延伸中の膜の破断を避けるため、50%/秒である。
【0058】
(7)熱処理
乾燥微多孔膜は、熱的に処理(熱固定)されて、結晶を安定化し、膜中に均一なラメラを作る。熱固定は、テンター法またはロール法にて行われる。熱固定は、膜を第2の延伸温度±5℃の範囲、より好ましくは第2の延伸温度±3℃の範囲の温度に曝している間に実行される。熱固定温度が低すぎると、所望のピン破壊強度、引張り破断強度、引張り破断伸び、耐熱収縮性を有する膜を製造するのが難しくなり、熱固定温度が高すぎると、膜の透過性に悪影響を与えると考えられる。
【0059】
焼なまし処理は、熱固定工程後に行われる。焼なましは、微多孔膜に荷重をかけることのない熱処理であり、例えば、ベルトコンベア付加熱チャンバまたは空中浮遊形加熱チャンバを用いて実行される。焼なましは、テンターを緩めて熱固定後に連続的に行われてもよい。焼なましは、膜をTm以下、より好ましくは約60℃から約Tm−5℃の範囲の温度に曝して行われる。焼きなましは、微多孔膜の透過性と強度とを改善すると考えられる。オプションとして、膜は、事前の熱固定なしで、焼きなましされてもよい。
【0060】
(8)延伸ゲル状シートの熱固定処理
工程(4)と工程(5)の間の延伸押出し成形品を、必要により熱固定してもよい。熱固定の方法は、工程(7)に関して上記で説明したのと同じ方法で実行できる。
【0061】
(9)加熱ローラ処理
工程(4)の後に、工程(4)から(7)のいずれかに続いて、工程(4)の延伸押出し成形品の少なくとも1つの面を1つ以上の加熱ローラに接触させてもよい。ローラ温度は、好ましくは、Tcd+10℃からTmの範囲である。延伸押出し成形品との加熱ロールの接触時間は、好ましくは、約0.5秒から約1分である。加熱ロールは、平らな表面または粗い表面を有していてもよい。加熱ロールは、溶媒を除去する吸引機能を有していてもよい。特に制限はないが、ローラ加熱システムの一例では、ローラ表面に接触する加熱オイルを保持する。
【0062】
(10)高温溶媒処理
延伸押出し成形品は、工程(4)と工程(5)との間で高温溶媒と接触するようにされてもよい。高温溶媒処理は、延伸により形成されたフィブリルをかなり太い繊維基幹の葉脈形に変え、微多孔膜に大きな孔サイズと適度な強度および透過性を与える。用語「葉脈形」は、フィブリルが太い繊維基幹と、その基幹から複雑な網目構造で広がる細い繊維を有することを意味する。高温溶媒処理の詳細は、国際公開WO2000/20493号に記載されている。
【0063】
(11)洗浄溶剤を含む微多孔膜の熱固定
洗浄溶剤の少なくとも一部を含む微多孔膜は、必要により工程(5)と工程(6)の間で熱固定されてもよい。熱固定の手順は、工程(7)で上記に説明したのと同じである。
【0064】
(12)架橋結合
熱固定された微多孔膜は、α線、β線、γ線、電子ビーム等の電離放射線で架橋結合することができる。電子ビームを照射する場合は、電子ビームの量は好ましくは約0.1から約100Mradであり、加速電圧は好ましくは約100から約300kVである。架橋結合処理は、微多孔膜のメルトダウン温度を上昇させると考えられる。
【0065】
(13)親水化処理
熱固定した微多孔膜は、親水化処理(膜をより親水性にする処理)に供される。親水化処理は、モノマーグラフト処理、界面活性剤処理、コロナ放電処理等でよい。オプションとして、架橋結合処理後にモノマーグラフト処理を行う。
【0066】
熱固定された微多孔膜を界面活性剤処理で親水化する場合、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤および両性界面活性剤のいずれを用いてもよく、非イオン界面活性剤が好適である。微多孔膜は、水もしくはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール中の界面活性剤の溶液に浸漬し、または、ドクターブレード法にて溶液でコーティングされる。
【0067】
(14)表面コーティング処理
オプションとして、工程(7)から得られた熱固定された微多孔膜を、多孔質ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレンなどの多孔質フッ素樹脂、多孔質ポリイミド、多孔質ポリフェニレンサルファイド等でコーティングして、膜が電池のセパレータとして使用されたときのメルトダウン特性を改良する。コーティングに使用するポリプロピレンは、好ましくは、約5,000から約500,000のMwと、25℃でトルエン100g中約0.5g以上の溶解度を有する。そのようなポリプロピレンは、さらに好ましくは、約0.12から約0.88の分率のラセミダイアド(racemic diade)を有し、ラセミダイアドは、2つの隣接モノマー単位が互いに鏡像異性体である構成単位のことである。表面コーティング層は、例えば、良好な溶媒中の上記のコーティング樹脂の溶液を微多孔膜に塗布し、溶媒の一部を除去して樹脂濃度を高め、それにより樹脂相と溶媒相が分離した構造を形成し、残りの溶媒を除去することにより、塗布される。本目的で良好な溶媒の例には、トルエンやキシレンなどの芳香族化合物が含まれる。
【0068】
[3]微多孔膜の構造、特性および組成
(1)構造
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン樹脂由来のハイブリッド構造を有し、水銀圧入ポロシメトリで得られる孔サイズ分布曲線は少なくとも2つのピーク(主たるピークと少なくとも1つのサブピーク)を有する。主たるピークとサブピークはそれぞれポリエチレン相の緻密領域と粗大領域に対応する。
【0069】
上記に説明した方法で製造された微多孔膜は、差分細孔容積曲線としてプロットすると、比較的広い孔サイズ分布を有する。孔サイズ分布は、例えば、水銀ポロシメトリ等の従来の方法で測定できる。
【0070】
膜中の孔サイズと孔容積の分布を測定するのに水銀ポロシメトリを用いるとき、膜の孔径、孔容積および比表面積を従来から測定している。測定をして、
【数1】

として表される差分細孔容積を求め、ここで、Vpは孔容積、rは円筒形孔と仮定した孔半径である。差分細孔容積は、孔径をx軸としてy軸にプロットすると、従来から「孔サイズ分布」と呼ばれる。ハイブリッド構造を示す膜では、差分細孔容積の少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%が、約100ナノメートル以上の大きさ(直径)の孔に関連する。別の表現では、孔径に対する
【数2】

の曲線では、約100ナノメートルから約1,000ナノメートルの孔径の曲線の下の面積の割合は、約10ナノメートルから約1,000ナノメートルの孔サイズ(または円筒形孔として孔径)の曲線の下の全面積の少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%である。一実施の形態では、約100ナノメートルから約1,000ナノメートルの孔径の曲線の下の面積は、約10ナノメートルから約1,000ナノメートルの孔径の曲線の下の全面積の約25%から約60%、または約30%から約55%、または約35%から約50%の範囲である。
【0071】
制限ではないが、緻密領域(相対的に小さな孔)と粗大領域(相対的に大きな孔)は不規則に絡み、長手方向と横断方向に見たポリオレフィン微多孔膜のどの断面においてもハイブリッド構造を形成する。ハイブリッド構造は、透過型電子顕微鏡(TEM)等で観察できる。
【0072】
本発明の微多孔膜は、粗大領域のために比較的大きな内部空間と開口を有するので、圧縮されたときにほとんど透気度(空気透過度)の変化のない、適度な透過性と電解液吸収性を有する。本微多孔膜はまた相対的に小さな内部空間と開口を有し、内部空間と開口は、シャットダウン温度やシャットダウン速度などの電池のセパレータとして使用されたときの膜の安全性特性に影響する。したがって、そのような微多孔膜で形成されるセパレータを備えるリチウムイオン二次電池のようなリチウムイオン電池は、安全性能を高く維持したまま、適度な生産性とサイクル特性を有する。
【0073】
微多孔膜構造を決めるのに用いられる水銀圧入ポロシメトリ法は、Pore Sizer 9320(Micromeritics社)、3.6kPaから207MPaの圧力範囲、および、15cmのセル容積を使用することを含む。測定では、141.3の水銀の接触角と484ダイン/cmの水銀の表面張力を用いた。このことで得られたパラメータには、孔容積、表面積比、孔サイズの最大値、平均孔サイズおよび空孔率が含まれる。この方法を教示する文献には、Raymond P. MayerおよびRobert A. Stowe、J. Phys. Chem.70、12(1966);L. C. Drake、Ind.Eng.Chem.、41、780(1949);H. L. RitterおよびL. C. Drake、Ind.Eng.Chem.Anal、 17、782(1945)およびE. W. Washburn、Proc.Nat.Acad.Sci.、7、 115(1921 )が含まれる。
【0074】
水銀圧入ポロシメトリ法を以下に短く要約する。圧力Pで加圧水銀を微多孔膜の平らな面に加える。この圧力は水銀に仕事W1を行い、平衡になるまで水銀を微多孔膜の孔に押し込む。平衡状態では、圧力Pにより作用する水銀の表面上の力F1は、F1と同じ大きさだが逆方向に作用する力F2と釣り合う。従来のWashbumモデルに従い、水銀表面を孔中に動かすのに必要な仕事量W1=2πrLγcosθは、W2=PπrLで表わされる対抗力によりなされる仕事と釣り合う。これらの式で、孔を円筒形として、Lは孔の深さ、rは孔の半径である。水銀の接触角はθで表わされる。水銀の表面張力はγで表わされ、通常は0.48Nm−1とされている。したがって、Washbumモデルによれば、孔半径rは次式による圧力Pの関数として表わされる。
【数3】

すると、差分細孔容積の測定は以下のように行われる。第1に、孔に押し込められる水銀の容積Vは、圧力Pの関数として測定される。Pの測定値を用いて、上記で説明したように、孔半径rを計算する。Pを徐々に増大させ、水銀の容積をPの各値で求める。この方法で、特定のrの孔に関する孔容積を示す表が作成され、測定用に選ばれたPの範囲により決まるrの範囲にわたり表が作成される。rの表にされた値は、便利なようにLog(r)に変換される。孔容積Vpは一般的に微多孔膜1g当たりのcm(cm/g)で表わされる。
【数4】

で表わされる差分細孔容積は、Vpとrの表の値から計算でき、ここで、dVpはVpの隣接する表の値間の差で近似され、dLog(r)は,Log(r)の隣接する表の値間の差で近似される。
【0075】
ポリオレフィン微多孔膜は、粗大領域のために相対的に大きな内部空間と開口部とを有するので、圧縮されたときにほとんど透気度に変化なく適度な透過性と電解液吸収性を有する。したがって、そのようなポリオレフィン微多孔膜から形成されたセパレータを備えるリチウムイオン二次電池のようなリチウムイオン電池は、適度な生産性とサイクル特性を有する。
【0076】
実施の形態では、ポリオレフィン微多孔膜は単層膜で、膜はハイブリッド構造を有し、例えば、微多孔層材料は、約100nmから約1,000nmの孔径の範囲の差分細孔容積曲線の下の面積が、約10nmから約1,000nmの孔径の範囲の差分細孔容積曲線の下の全面積の約25%以上である、差分細孔容積曲線を特徴とする。
【0077】
膜中の7×10以下のMwを有するポリエチレンのパーセントが、膜中のポリオレフィンの全重量に基づいて99重量%を超えると、ハイブリッド構造は製造しにくくなる。ハイブリッド構造を有する膜は、一般的に、ハイブリッド構造を有していない膜よりも優れた電解液吸収特性を有する。
【0078】
微多孔膜の好適な実施の形態では、主たるピークは0.01μmから0.08μmの孔サイズの範囲にあり、少なくとも1つのサブピークは0.08μmから1.5μmの範囲にある。言い方を変えると、少なくとも1つのサブピークは、0.08μmより大きく、1.5μm以下の孔サイズを有する。より好ましくは、主たるピークは約0.04μmから0.07μmの孔サイズの範囲の第1のピークであり、サブピークは約0.1μmから0.11μmの孔サイズの範囲の第2のピーク、約0.7μmの孔サイズの第3のピーク、および、約1μmから1.5μmの孔サイズの範囲の第4のピークを備える。しかし、サブピークは、第3および第4のピークを有している必要はない。たとえば、孔サイズ分布曲線は、約0.06μm、約0.1μm、約0.7μm、約1.1μmの第1〜第4のピークを有していてもよい。
【0079】
本発明の微多孔膜の粗大領域に対する緻密領域の孔容積比は、国際公開公報第WO2008/016174号に開示されるように、透過型電子顕微鏡(TEM)、水銀圧入ポロシメトリ等を用いる標準的な方法で求められ、国際公開公報第WO2008/016174号の全体を参照して本書に組み込む。上記国際公開公報で分かるように、小径側と第1のピークを通過する縦線Lのハッチを付けた面積Sは緻密領域の孔容積に対応し、大径側と第2のピークを通過する縦線Lのハッチを付けた面積Sは粗大領域の孔容積に対応する。粗大領域に対する緻密領域の孔容積比S/Sは、好ましくは約0.5から約49で、より好ましくは約0.6から約10で、最も好ましくは0.7から2である。生のポロシメトリのデータにはっきりしたピークが認められないときには、例えば従来のピーク・デコンボリューション解析を用いて、近似位置を求める。たとえば、x軸に孔サイズとy軸に孔の数を示す曲線の一次導関数を用いて、より明確に曲線の傾きの変化(例えば、変曲点)を特定できる。
【0080】
特に制約はないが、緻密領域と粗大領域とは不規則に入り混じり、長手方向および横断方向で観察されるポリオレフィン微多孔膜のいかなる断面でもハイブリッド構造を形成する。ハイブリッド構造は透過型電子顕微鏡(TEM)などにより観察できる。
【0081】
(2)特性
最終的な微多孔膜の膜厚は、通常、3μmから200μmの範囲である。たとえば、微多孔膜は、約5μmから約50μmの範囲、たとえば約15μmから約30μmの範囲の膜厚を有する。微多孔膜の膜厚は、たとえば、10cmの幅で1cmの長手方向間隔で接触厚さ計で測定され、平均して膜厚とされる。ミツトヨ社から購入可能なライトマチック(Litematic)のような厚さ計が適している。たとえば光学厚さ計測法のような非接触厚さ計測法も適している。
【0082】
最終的な微多孔膜の膜厚は、通常、3μmから200μmの範囲である。たとえば、微多孔膜は、約5μmから約50μmの範囲、たとえば約15μmから約30μmの範囲の膜厚を有する。微多孔膜の膜厚は、たとえば、10cmの幅で1cmの長手方向間隔で接触厚さ計で測定され、平均して膜厚とされる。ミツトヨ社から購入可能なライトマチック(Litematic)のような厚さ計が適している。たとえば光学厚さ計測法のような非接触厚さ計測法も適している。
【0083】
(a)500秒/100cm以下の透気度(20μm膜厚の値に変換して)
微多孔膜の透気度は、JIS P8117に準拠して測定される。一実施の形態では、微多孔膜の透気度は、20から400秒/100cmの範囲である。必要なら、JIS P8117に準拠して膜厚Tの微多孔膜に関して測定された透気度Pは、式P=(P×20)/Tにより、膜厚20μmでの透気度Pに変換される。
【0084】
(b)約25から約80%の空孔率
微多孔膜の空孔率は、微多孔膜の実重量を100%ポリエチレンの同等な無孔膜の重量(同じ長さ、幅、膜厚を有するという点で同等)に対して比較することにより従来の方法で測定される。そして、空孔率は、式:空孔率%=100×(W2−W1)/W2、ここで、W1は微多孔膜の実重量、W2は同じ大きさと膜厚の100%ポリエチレンの同等な無孔膜の重量である、を用いて決められる。
【0085】
(c)2,000mN以上のピン破壊強度(20μm膜厚の膜の同等値に変換して)
微多孔膜のピン破壊強度(20μm膜厚の膜の値に変換して)は、微多孔膜を直径1mmで半球端面(曲率の半径R:0.5mm)の針で2mm/秒の速さで刺したときに計測される最大荷重で表される。ピン破壊強度が2,000mN/20μmより小さいと、微多孔膜で形成されたセパレータを有する電池で短絡を生じ得る。一実施の形態では、微多孔膜のピン破壊強度(20μm膜厚に変換して)は4,000から5,000mNの範囲である。
【0086】
の膜厚の微多孔膜のそれぞれを直径1mmで半球端面(曲率の半径R:0.5mm)の針で2mm/秒の速さで刺したときの最大荷重が計測される。計測された最大荷重Lは、L=(L×20)/Tの式により20μmの膜厚での最大荷重Lに変換され、ピン破壊強度として定義される。
【0087】
(d)49,000kPa以上の引張り強度
長手および横断の両方向での49,000kPa以上の引張り強度(ASTM D−882に準拠して10mm幅の試験片を用いて測定)は、特に電池のセパレータとして使用されるとき、適度な耐久性のある微多孔膜の特徴である。引張り破断強度は、好ましくは約80,000kPa以上である。
【0088】
(e)100%以上の引張り伸び
長手および横断の両方向での100%以上の引張り伸び(ASTM D−882に準拠して測定)は、特に電池のセパレータとして使用されるとき、適度な耐久性のある微多孔膜の特徴である。
【0089】
(f)MDおよびTDにおける12%以下の熱収縮率
105℃における直交平面方向(たとえば、縦方向または横断方向)の熱収縮率は次のように測定される。(i)縦方向と横断方向の両方で室温での微多孔膜の試験片のサイズを測定する、(ii)荷重を掛けずに8時間105℃の温度で微多孔膜の試験片を平衡させる、そして、(iii)縦方向と横断方向の両方で微多孔膜のサイズを測定する。縦方向あるいは横断方向の加熱(または「熱」)収縮率は、測定(i)の結果を測定(iii)の結果で除し、結果の割合をパーセントで表すことにより求められる。
【0090】
一実施の形態では、微多孔膜は、3%から10%、たとえば3.5%から5%の範囲の105℃でのTD熱収縮率と、1%から8%、たとえば1.5%から3%の範囲の105℃でのMD熱収縮率を有する。
【0091】
(g)加熱圧縮後の21%以下の膜厚変化率(絶対値で表して)
2.2MPaの圧力下5分間の90℃での加熱圧縮後の膜厚変化率は、圧縮前の膜厚100%に対し、一般的に20%以下である。20%以下の膜厚変化率の微多孔膜セパレータを備える電池は、適度に大きな容量と良好なサイクル特性を有する。一実施の形態では、微多孔膜の膜厚変化率は10%から20%の範囲である。
【0092】
加熱圧縮後の膜厚変化率を測定するため、微多孔膜のサンプルは、一対の十分に平らな板の間に置かれ、90℃で5分間2.2MPa(22kgf/cm)の圧力下でプレス機械により加熱圧縮され、上述と同様の方法で平均膜厚を定める。膜厚変化率は、(加熱圧縮後の平均膜厚−圧縮前の平均膜厚)/(圧縮前の平均膜厚)×100の式により計算される。
【0093】
(h)700秒/100cm以下の加熱圧縮後の透気度
上記の条件で加熱圧縮されると、ポリオレフィン微多孔膜は通常700秒/100cm以下の透気度(ガーレー値、Gurley value)を有する。そのような微多孔膜を用いる電池は、適度に大きな容量とサイクル特性を有する。透気度は好ましくは650秒/100cm以下であり、たとえば400秒/100cmから500秒/100cmの範囲である。
【0094】
加熱圧縮後の透気度は、JIS P8117に準拠して測定される。
【0095】
(i)3×10nm以上の表面粗さ
原子間力顕微鏡(AFM)のダイナミックフォースモードにより測定した微多孔層の表面粗さは、通常3×10nm以上(微多孔膜中での平均最大高低差で測定)である。微多孔層の表面粗さは、好ましくは3.5×10nm以上、たとえば400nmから700nmの範囲である。
【0096】
(j)4.5以上の電解液吸収速度
動的表面張力測定装置(EKO社から市販の精密電子天秤付きDCAT21)を用い、18℃に保持した電解液(電解質:LiPFを1mol/L、溶媒:エチレンカーボネート/ジメチルカーボネートを3/7の容積比)に微多孔膜試験片を600秒間浸漬し、[浸漬後の微多孔膜の重量(g)/浸漬前の微多孔膜の重量(g)]の式により電解液吸収速度を求めた。電解液吸収速度は、比較例1の微多孔膜の電解液吸収速度を1として、相対値により表される。一実施の形態では、微多孔膜の電解液吸収速度は、4.5から10、たとえば4.6から6の範囲である。
【0097】
(k)孔サイズ分布
微多孔膜の孔サイズ分布は水銀圧入ポロシメトリにより求められる。少なくとも約25%の差分細孔容積は、100ナノメートル(nm)より大きな孔に関連する。
【0098】
(l)表面粗さ
ダイナミックフォースモード(DFM)のAFMにより測定された表面の最大高低差を表面粗さとして使用する。
【0099】
(m)140℃以下のシャットダウン温度
微多孔膜のシャットダウン温度は140℃以下、たとえば、130℃から139℃の範囲である。微多孔膜のシャットダウン温度は、熱機械分析計(セイコーインスツル社から市販のTMA/SS6000)により次のように測定される。試験片の長軸が微多孔膜の横断方向に、短軸が縦方向となるように、微多孔膜から3mm×50mmの長方形試験片を切り出す。その試験片を熱機械分析計に、10mmのチャック間距離、すなわち、上部チャックから下部チャックまでの距離を10mmとしてセットする。下部チャックは固定され、上部チェックで試験片に19.6mNの荷重を掛けた。チェックと試験片は、加熱できるチューブに入れられる。30℃で始めて、チューブ内の温度を5℃/分の速度で昇温し、19.6mNの荷重下での試験片長さの変化を0.5秒間隔で測定し、温度が上昇すると共に記録する。200℃まで昇温する。「シャットダウン温度」は、膜を製造するのに用いたポリマー中で最低融点を有するポリマーのほぼ融点で観測される変曲点の温度として定義される。
【0100】
(3)微多孔膜の組成
(1)ポリオレフィン
本発明の微多孔膜の実施の形態は、良好な電解液吸収性、収縮特性、圧縮特性およびシャットダウン特性を有し、7×10以下、たとえば約2.5×10から約6×10のMwと約10から約100のMWDを有するポリエチレン樹脂由来の約75重量%から約99重量%のポリエチレンと、約1×10から約4×10のMwと80J/g以上の融解熱と約1から約100のMWDとを有するポリプロピレン樹脂由来の約1重量%から約25重量%、たとえば約3重量%から約20重量%、たとえば約5重量%から約15重量%のポリプロピレンと、ここで重量パーセントは微多孔膜の重量に基づくが、を備える。一実施の形態では、ポリプロピレンの融解熱は、110J/gから120J/gの範囲である。一実施の形態では、微多孔膜は、(i)ポリプロピレンと(ii)7×10以下のMwを有するポリエチレンから、実質的に成り、または成る。別の実施の形態では、微多孔膜は、微多孔膜の重量に基づいて、1重量%以下の量の7×10を超えるMwを有するポリエチレンを含む。
【0101】
[4]電池のセパレータ
一実施の形態では、本発明の上記のいずれかのポリオレフィン微多孔膜から形成された電池のセパレータは、約3から約200μmの、または約5から約50μmの、または約7から約35μmの膜厚を有するが、最適な膜厚は、製造される電池のタイプに応じて適切に選択される。
【0102】
[5]電池
特に限定はしないが、本発明のポリオレフィン微多孔膜は一次電池や二次電池用の、特にリチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池、ニッケル亜鉛二次電池、銀亜鉛二次電池用など、特にリチウムイオン二次電池用のセパレータとして使用できる。
【0103】
リチウムイオン二次電池は、セパレータを介して積層された陽極と陰極と、通常は電解液(「電解質」)の形の電解質を含むセパレータとを備える。電極の構造は限定されない。従来構造は適している。たとえば、電極構造は、円盤形の正極および陰極が対向しているコイン型、平面の正極と陰極が交互に積層している積層型、帯状の正極と陰極が巻回される巻回型、などでよい。
【0104】
陽極は通常集電体と、集電体上に形成されリチウムイオンを吸収し放出することができる陽極活物質層とを備える。陽極活物質は、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物(リチウム複合酸化物)、遷移金属硫化物等の無機化合物等でよい。遷移金属は、V、Mn、Fe、Co、Ni等でよい。リチウム複合酸化物の好ましい例としては、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、α−NaFeO型構造を母体とする層状リチウム複合酸化物等が挙げられる。陰極は、集電体と、集電体上に形成された陰極活物質層とを備える。陰極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス、カーボンブラック等の炭素質材料でよい。
【0105】
電解液は、リチウム塩を有機溶媒に溶解することにより得られる溶液でよい。リチウム塩は、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、Li10Cl10、LiN(CSO、LiPF(CF、LiPF(C、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl等でよい。これらのリチウム塩は、単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等の高沸点及び高誘電率の有機溶媒、および/または、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキソラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の低沸点及び低粘度の有機溶媒でよい。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。高誘電率の有機溶媒は通常粘度が高く、低粘度の有機溶媒は通常誘電率が低いため、両者の混合物を用いるのが好ましい。
【0106】
電池を組み立てる際、セパレータに電解液を含浸させ、セパレータ(ポリオレフィン微多孔膜)にイオン透過性を付与する。含浸処理は通常、微多孔膜を室温で電解液に浸漬することにより行う。円筒型電池を組み立てる場合、たとえば陽極シート、微多孔膜セパレータ、陰極シートをこの順序で積層し、出来上がった積層品を巻回型電極アセンブリに巻回する。出来上がった電極アセンブリを電池缶に装填形成し、それから上記の電解液に含浸し、安全弁を備えた陽極端子として作動する電池蓋をガスケットを介して電池缶にかしめ、電池を製造する。
【0107】
本発明を、本発明の範囲を限定する意図なく以下の実施例を参照して、さらに詳細に説明する。
【0108】
[実施例1]
(i)3.5×10のMwと13.5のMw/Mnを有する高密度ポリエチレン(HDPE)を95%と(ii)5.3×10のMwと1から100の間のMw/Mnと83.3J/gのΔHを有するポリプロピレンを5%とを備えるポリオレフィン組成100質量部と、酸化防止剤としてのテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタンの最終ポリオレフィン溶液0.2質量部とをドライブレンドして混合物を形成した。混合物中のポリエチレンは135℃の融点と100℃の結晶分散温度を有する。
【0109】
出来上がった混合物の40質量部を、内径58mm、L/D=42の強ブレンド二軸押出機に詰め、液体パラフィン(40℃で50cSt)60質量部をサイドフィーダーを介して二軸押出機に供給した。210℃、200rpmで溶融ブレンドし、ポリエチレン溶液を調整した。このポリエチレン溶液を二軸押出機に搭載したTダイから押し出した。40℃に調整した冷却ロールを通過する間に押出し成形品を冷却し、ゲル状シートを形成した。
【0110】
テンター延伸機を用いて、ゲル状シートを118.5℃で長手および横断の両方向に同時に二軸に5倍延伸した。延伸したゲル状シートを20cm×20cmのアルミニウム枠板に固定し、25℃に調整された塩化メチレン浴中に浸漬して3分間の100rpmの振動で液体パラフィンを除去し、室温の空気流で乾燥した。乾燥した膜をバッチ式延伸機により129℃で横断方向に1.5倍の倍率で再延伸した。バッチ式延伸機に固定されたままの再延伸した膜を、129℃で30秒間熱固定して、ポリエチレン微多孔膜を製造した。
【0111】
[実施例2]
ポリオレフィン組成が3×10の重量平均分子量(Mw)と10.4のMw/Mnを有するHDPE樹脂を90質量%と5.3×10の重量平均分子量を有するPP樹脂を10質量%を備えること以外は、実施例1を繰り返した。
【0112】
[実施例3]
ポリオレフィン組成が3.5×10の重量平均分子量と13.5のMw/Mnを有するHDPE樹脂を80質量%と5.3×10の重量平均分子量と83.3J/gのΔHを有するPP樹脂を20質量%を備え、再延伸温度を128.5℃とし、熱固定温度を128.5℃とすること以外は、実施例1を繰り返した。
【0113】
[比較例1]
ポリオレフィン組成が2×10の重量平均分子量と8のMw/Mnを有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)樹脂を20質量%と3.5×10の重量平均分子量と13.5のMw/Mnを有するHDPE樹脂を80質量%を備えること以外は、実施例1を繰り返した。この比較例1の実施例1からの他の相違点は、30質量部の出来上がったポリオレフィン組成と70質量部の液体パラフィン(40℃で50cSt)を二軸延伸機に詰め、延伸温度を115℃とし、熱固定温度を126.8℃としたことである。
【0114】
実施例と比較例で得られた微多孔膜の特性は以下の方法で測定された。結果を表1に示す。
【表1】

【0115】
表1からも明らかなように、本発明の微多孔膜は、0.01μmから0.08μmの孔サイズに第1のピークがあり、0.08μm以上で1.5μm以下の孔サイズに第2のピークがある水銀圧入ポロシメトリにより求めた孔サイズ分布曲線を示し、最大高低差である表面粗さは3×10nm以上であった。比較例による膜と比較して、本発明の微多孔膜は良好な透気度、ピン破壊強度、引張り破断強さ、引張り破断伸び特性に加え、加熱圧縮後にほとんど膜厚と透気度が変化せず、優れた電解液吸収性、耐熱収縮性、および圧縮特性を有する。本発明のポリオレフィン微多孔膜により形成されたセパレータは、電池に適度な安全性、耐熱性、貯蔵特性および生産性を付与する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンとポリプロピレンを備え、電解液吸収速度が4.5以上である;
ポリオレフィン微多孔膜。
【請求項2】
前記ポリオレフィン微多孔膜の電解液吸収速度が4.6から6の範囲である;
請求項1のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項3】
前記ポリオレフィン微多孔膜は、前記ポリオレフィン微多孔膜の重量に基づいて、7×10以下のMwを有するポリエチレンを75重量%から99重量%備える;
請求項1または請求項2のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項4】
前記ポリオレフィン微多孔膜は、前記ポリオレフィン微多孔膜の重量に基づいて、7×10を超えるMwを有するポリエチレンを1重量%未満備える;
請求項1ないし請求項3のいずれか1項のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項5】
前記ポリオレフィン微多孔膜は、前記ポリオレフィン微多孔膜の重量に基づいて、1重量%から25重量%の範囲の量で前記ポリプロピレンを含み、前記ポリプロピレンは80J/g以上の融解熱と3×10から1.5×10の範囲のMwを有する;
請求項1ないし請求項4のいずれか1項のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項6】
前記ポリオレフィン微多孔膜は、少なくとも2つのピークを有する孔サイズ分布曲線を有する;
請求項1ないし請求項5のいずれか1項のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項7】
前記ポリオレフィン微多孔膜の差分細孔容積の25%から60%は、100nm以上の直径を有する孔に関連する;
請求項1ないし請求項6のいずれか1項のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項8】
前記ポリオレフィン微多孔膜の差分細孔容積曲線は、10nmから1000nmの範囲の直径を有する孔に関連する第1の面積と、200nmから1000nmの直径を有する孔に関連する第2の面積を示し;
前記第2の面積は、前記第1の面積の25%から60%の範囲である;
請求項1ないし請求項7のいずれか1項のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項9】
前記ポリオレフィン微多孔膜は、140℃以下のシャットダウン温度を有する;
請求項1ないし請求項8のいずれか1項のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項10】
前記ポリオレフィン微多孔膜は、前記ポリオレフィン微多孔膜の重量に基づいて、前記ポリエチレンを80重量%から95重量%、前記ポリプロピレンを5重量%から20重量%備える;
請求項3ないし請求項9のいずれか1項のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項11】
(1)ポリオレフィン組成と希釈剤とを混合する工程であって、前記ポリオレフィン組成は、(a)7×10以下のMwを有するポリエチレンを75重量%から99重量%、(b)80J/g以上の融解熱と3×10から1.5×10の範囲のMwを有するポリプロピレンを1重量%から25重量%備え、ここで、重量%は前記ポリオレフィン組成の重量に基づく、工程と;
(2)前記混合したポリオレフィン組成と希釈剤をダイ押し出しして押出し成形品を形成する工程と;
(3)前記押出し成形品を冷却して、冷却押出し成形品を形成する工程と;
(4)前記冷却押出し成形品をTcdからTcd+30℃の延伸温度で少なくとも1方向で9から400倍の倍率に延伸して、延伸押出し成形品を形成する工程と;
(5)前記延伸押出し成形品から前記希釈剤の少なくとも一部を除去する工程と;
(6)前記希釈剤を除去した押出し成形を少なくとも1方向で1.1から1.8倍の倍率に延伸して、延伸フィルムを形成する工程と;
(7)前記延伸フィルムを熱固定して、微多孔膜を形成する工程とを備える;
微多孔膜の製造方法。
【請求項12】
前記工程(4)と工程(5)との間に熱固定処理工程(4i)をさらに備え、前記延伸押出し成形品を前記延伸温度±5℃の温度で熱固定する;
請求項11の製造方法。
【請求項13】
前記工程(4i)の後で前記工程(5)の前に熱ロール処理工程(4ii)をさらに備え、前記延伸押出し成形品は前記ポリオレフィン組成の結晶分散温度から前記ポリオレフィン組成の融点+10℃の温度に加熱されたロールに接触する;
請求項11または請求項12の製造方法。
【請求項14】
前記工程(4ii)の後で前記工程(5)の前に高温溶媒処理工程(4iii)をさらに備え、前記延伸押出し成形品は高温溶媒に接触させられる;
請求項11ないし請求項18のいずれか1項の製造方法。
【請求項15】
前記工程(5)と工程(6)との間で行われる熱固定処理工程(5i)をさらに備え、前記延伸押出し成形品を前記延伸温度±5℃の温度で熱固定する;
請求項11ないし請求項14のいずれか1項の製造方法。
【請求項16】
前記工程(5i)の後で前記工程(6)の前に架橋結合工程(5ii)をさらに備え、前記熱固定された膜は、α線、β線、γ線および電子ビームの1または複数から選択された電離放射線により架橋結合される;
請求項11ないし請求項15のいずれか1項の製造方法。
【請求項17】
前記工程(7)の後に親水化処理工程(7i)をさらに備え、前記熱固定された微多孔膜は、モノマーグラフト処理、界面活性剤処理、コロナ放電処理の1または複数によってより親水化される;
請求項11ないし請求項16のいずれか1項の製造方法。
【請求項18】
前記工程(7)の後に表面コーティング処理工程(8)をさらに備え、前記熱固定された微多孔膜は、多孔質ポリプロピレン、多孔質フッ素樹脂、多孔質ポリイミドおよび多孔質ポリフェニレンサルファイドの1または複数によってコーティングされる;
請求項11ないし請求項17のいずれか1項の製造方法。
【請求項19】
前記ポリオレフィン組成は、(c)80J/g以上の融解熱と3×10から1.5×10の範囲のMwを有するポリプロピレンを、前記膜の重量に基づいて0重量%から25重量%さらに備える;
請求項11ないし請求項18のいずれか1項の製造方法。
【請求項20】
前記希釈剤は、室温で液体である;
請求項11ないし請求項19のいずれか1項の製造方法。
【請求項21】
請求項11の方法で製造された膜。
【請求項22】
陰極と、陽極と、電解液と、前記陰極と前記陽極の間に配置された少なくとも1の電池のセパレータを備える電池であって、
前記セパレータは請求項1ないし11および請求項21のいずれかの膜を備える;
電池。
【請求項23】
前記電池はリチウムイオン電池である;
請求項22の電池。
【請求項24】
電気自動車またはハイブリッド電気自動車の電源として用いられる;
請求項21または請求項22の電池。

【公表番号】特表2010−540690(P2010−540690A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525544(P2010−525544)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/JP2008/067575
【国際公開番号】WO2009/038229
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000221627)東燃化学株式会社 (45)
【Fターム(参考)】