説明

微小流体用アセンブリを覆う方法

プラスチックで作られた平らな表面の上に作られ、かつ異なる表面の性質を有する、2個またはそれ以上の部分を含むマイクロ・チャネル構造のセットを覆う方法。本方法は、(a)マイクロ・チャネル構造を含む表面を提供する;(b)1つの面が、熱接着剤のむらのない層を有するふたを形成するシートを提供する;(c)熱接着剤を有するシートの面を、マイクロ・チャネル構造を有する表面に当てる;(d)段階(c)で作られたアセンブリに熱をかけ、熱融解性接着剤を選択的に融解し、同時にシート状物質と基板の平らな表面を一緒にして圧力をかける;(e)得られたラミネートで覆ったマイクロ・チャネル構造を冷却する;段階からなる。アセンブリは、(a)異なる機能性を示す部分からなる、1個またはそれ以上の開いたマイクロ・チャネル構造のセットを、その表面に有する平らな基板、(b)マイクロ・チャネル構造を覆い、かつ1個もしくはそれ以上の、マイクロ・チャネル構造から環境雰囲気への開口部を有する、ふたを形成する物質、を含む。アセンブリは、表面とシート状物質の間を接合するものが、硬化し得る熱接着剤であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野 本発明は、プラスチックから作られた平らな基板の表面に製造された、開いたマイクロ・チャネル構造のセットをきっちりと覆う方法に関する。本カバーは典型的にはふた状である。本発明はまた、本方法によって得ることができ、かつふた状のものがマイクロチャネル構造を覆っている、微小流体用装置に関する。本発明のマイクロ・チャネル構造における異なる部分は、異なる機能性を表す。部分の表面の性質は、異なっていてもよい。以下を参照のこと。
【0002】
本装置は主に、水性の液体の流れが、1個またはそれ以上の薬剤および/または試料(1個またはそれ以上の分析物)を、本構造の部品の1つから他の部品に輸送する、分析系および分取系において使用する。以下を参照のこと。分取系は分離、合成などを含む。
【0003】
背景文献 本発明の分野内の初期の発明では、公表された発明の大部分が、シリコンを原料に作られた微細構造に関する。シリコンを原料に作られた、微細に作られた構造は、しばしば、有害な効果がないようさらに加工処理することが、比較的容易である。以後の発明において、原料はプラスチックに変わっている。
【0004】
開いたマイクロ・チャネル構造にふたを接着するための、代替候補物の幾つかは、手近にある。実例は、溶接によるもの、または普通の接着剤、硬化性接着剤、熱接着剤(熱融解性接着剤を含む)などの様々なタイプの接着剤の使用によるものである。各接着剤は、利点と欠点を有する(PCT出願 第 WO 9845693 号, Aclara Biosciences; 第 WO 9956954 号, Caliper Technologies)。しかし、関する構造がミクロ・フォーマットであり、プラスチック表面の本構造がしばしば熱に高感度であるため、前もって形成した微細構造において、有害な変化が起こる危険が顕著となった(PCT出願 第 WO 996954 号, Caliper Technologies)。
【0005】
PCT出願 第 WO 9116966 号(Amersham Parmacia Biotech AB)は、接着剤と組み合わせ得る、弾性体の基板を用いることによって、封をし得ることを開示している。その後、熱融解性接着剤を用いることが提案された(PCT出願 第 WO 9429400 号, Amersham Phrmacia Biotech AB;および米国特許 第 4,957,582 号, Eastman Kodak)。電気泳動に使用するための、マイクロ・チャネル構造におけるふたの熱ラミネート加工が、開示されている(Soaneら、米国特許 第 5,858,188 号、米国特許 第 6,054,034 号, Soaneら;および McCormickら、Anal. Chem. 69 (1997) 2626−2630)。
【0006】
これらの開示は、各々の構造の表面部分が、表面の性質において、本質的に同質であるマイクロ・チャネル構造を対象としている。本構造は、多くの場合、原則として1つの機能(大量輸送)のみを有することを意図しており、その表面は、用いられた物質の当初の疎水性/親水性のバランスを持ち続ける。
【0007】
近年、関心は、個々のマイクロ・チャネル構造の異なる部分で、表面の性質に重要な違いを有する、より複雑な構造(いわゆるパターン化マイクロ・チャネル構造表面)に焦点が当てられている。例えば、PCT出願 第 WO 9955827 号、第 WO 9958245 号、スウェーデン特許 第 9901100-9 号および第 9904802-7号を参照のこと。この種の微小流体用装置の、単純で再現性があり、かつ信頼性のある工業生産方法を持つことが重要になった。
【0008】
本発明は、表面の性質が異なる部分を有する、開放マイクロ・チャネル構造の製造されたセットを覆うことに焦点を当てている。本発明を使用することによって、覆われたマイクロ・チャネル構造における、表面の性質の、事後発現の必要性を最小化しうる。
【0009】
マクロ・フォーマットからミクロ・フォーマットへの移行の際に遭遇する困難マクロ・スケールの系をミクロ・スケールの系に縮小すると、困難の性質は、しばしば、より悪い方向へ大きく変化する。系は、例えば蒸発や漏れなどに、より敏感になる。製造におけるセット内およびセット間の再現性の要求は、より厳しくなる。マクロ・フォーマットで許容され得る偏差が、ミクロ・フォーマットでは機能失陥と成り得る。マクロな系、例えばバルブ、液体の導管、反応領域および/または検出領域における、許容され得る物理的な変形、または疎水性/親水性のバランスに由来するわずかな偏差は、相当するミクロな系において、信頼できる分析結果を得ることを不可能にする。
【0010】
プラスチックで作られた開放マイクロ・チャネル構造の熱的な処理は、物理的な変形と表面の性質の望ましくない変化のために、かなりの危険を意味する。特に、疎水性のプラスチック(実用的に有用なほぼ全てのプラスチックが、本来疎水性である)の基板上の親水性の表面は、熱にかなり敏感である(F Garbassiら:Polymer Surfaces From Physics to Technology, p324-337, Wiley 1998)。主な理由は、ポリマー鎖のセグメントの動きやすさが増大し、表面の再構成が起こり、その結果極性な親水基が中へ入り非極性の疎水基が外へ出るためである。
【0011】
さらに、覆われたマイクロ・チャネル構造は、液体を満たした反応チャンバーなどを加熱するため、圧力の違いに耐えるべきである。ミクロな系において受ける力学的な圧力のレベルは、マクロな系におけるそれより大きく成り得る。
【0012】
発明の目的第一の目的は、異なる部分の性質の重要な変化を伴わない、上記で定義した通りのマイクロ・チャネル構造のセットを、再現性がありかつ漏れがないように覆うための方法を提供する。特に、本目的は、望ましくない構造内部の変動、またはセット内もしくはセット間の変動を避けることであり、すなわち高い再現性を有する、予め決められたマイクロ・チャネル構造のセットを製造することである。
【0013】
第2の目的は、安く実行でき、かつ覆われたマイクロ・チャネル構造のセットの大量生産に適した、上記で定義した通りの方法を提供することである。
【0014】
第3の目的は、上記で定義した通りの覆われたマイクロ・チャネル構造を提供することである。本目的は、特に、水接触角が30°以下、例えば25°、もしくは20°である境界付けした(delineated)親水性部分のセットがある、マイクロ・チャネル構造に関する。本目的はまた、例えば、個々の親水性部分を相互に境界付けした、例えば水接触角が>40°のような、>30°の疎水性部分を含む。一つの種類の疎水部分は、一つのマイクロ・チャネル構造の中で様々な形態の疎水性ブレーキとなる。
【0015】
第4の目的は、自動化し易しく、かつマイクロ・チャネル構造が閉鎖された後に、異なる部分における異なる表面特性を導入する必要性を最小化する、開いたマイクロ・チャネル構造のための覆う方法である。
第5の目的は、チャネル表面が、水が自己吸引によってチャネルに浸透するのに十分な程親水性を有する、閉鎖マイクロ・チャネル構造を提供することである。
【0016】
本発明 幾つかの代替物を試した後、覆いと基板の材料、接着剤、および熱の使用が適切に組み合わされば、これらの困難と目的が、上記で定義したようなマイクロ・チャネル構造に適合し得ることを見出している。従って、本発明の第一の態様は、上記で定義したような、各マイクロ・チャネル構造が異なる機能の表面と、異なる表面の性質を伴う部分を有する、マイクロ・チャネル構造のセットを覆う方法である。本方法に特有の特徴は:(a)マイクロ・チャネル構造のセットを作る、プラスチックで作られかつ少なくとも1つが平らな表面を有する基板を提供する(b)1つの面に熱接着剤のむらのない層を有する、ふたを形成する物質を提供する(c)熱接着剤を有するシート状物質の面を、マイクロ・チャネル構造の表面に当てることによって、マイクロ・チャネル構造を覆う(d)段階(c)で作ったアセンブリに熱をかけ、選択的に熱接着剤を融解し、同時にシート状物質と基板の平らな表面を一緒にして圧をかける(e)得られたラミネートで覆われたマイクロ・チャネル構造を、熱接着剤の融点以下に冷却することからなる。
【0017】
段階(c)−(e)の前または後の何れかで、基板および/またはふたを形成する物質は、環境雰囲気とマイクロ・チャネル構造の間を連結する開口部を提供し得る。これらの開口部は、通気口および/または薬剤試料と液体のための適応部分として機能し得る。開口部は点状または線状(直線、曲線、環状など)などである。
【0018】
本発明の第2の態様は、(a)それぞれが異なる機能性を示す部分からなる、1もしくはそれ以上の開いたマイクロ・チャネル構造を有する表面を有する平らな基板と、(b)該マイクロ・チャネル構造のセットを覆うふたからなるアセンブリである。特有の特徴は、表面とシート状物質が、硬化し得る熱融解性接着剤を用いて、互いに貼り付けてあることである。表面、マイクロ・チャネル構造、部分、ふたを形成する物質、熱融解性接着剤などは、本明細書中の他で定義した通りである。
【0019】
本発明の第3の態様は、分析工程および/または調整工程における、本発明のマイクロ構造のチャネルのセットを用いることである。
【0020】
熱接着剤および本発明で行われる接着 段階(c)における温度は、熱接着剤の融解温度(T)より低いことが好ましい。別法として、段階(c)および(d)は、同時に行ってもよい。
段階(d)の間、熱接着剤は融解し、熱接着剤と平らな基板表面の間に分子性接触を実現する。
【0021】
段階(d)において、熱接着剤の温度が上がると、接着可能な、粘性のより大きい、もしくはより小さい液体に変わる(接着温度)。液化温度は、しばしば、熱接着剤の粘度を徐々に減少させる間の温度を含む。その間の温度には、一般的に熱接着剤の、いわゆる融点(T)が含まれる。従って、一般的な使用法は、熱接着剤の温度は、少なくとも熱接着剤の液化温度まで上げるべきであるとしている。他の重要な加熱の態様は、マイクロ・チャネル構造が変形するため、基板のプラスチックを不要に柔らかくするのを避けるように実行されるべきである。第2の一般的な使用法は、平らな表面とその下にある層の温度を、基板表面を作っているプラスチックの熱変形温度以下もしくは付近に維持することである。この使用法は、多くの場合に、プラスチックの熱変形温度は、熱接着剤の融解温度より高いべきであるとしている。熱接着剤と基板表面が、他の点で選ばれるならば、プラスチックが低い熱伝導性を有すること、および/または非常に短い時間で加熱を実行し得ることが重要である。
【0022】
加熱時間は、典型的には5分より短く、例えば1分よりも、または10秒よりも短い。加熱時間はまた、1秒より短くてもよい。加熱時間の下限は1ミリ秒でもよく、例えば0.01秒、0.1秒または1マイクロ秒まで下がってもよい。最小の時間は、主に接着剤が融解し、基板表面と接触する分子を作るのに要する時間によって制御される。
第3の使用法は、物理的な変形と、他の表面の性質が変化する危険を最小にするために、高い温度での加熱時間をできる限り短くするべきであるとしている。
【0023】
温度の上昇は、例えばアセンブリ(ふたを形成する物質とプラスチックの基板)の照射、またはアセンブリの1つの平らな面に電熱線を当てるなどの、異なる方法で、達成し得る。好ましい加熱系では、熱はふたを形成する物質にむらなく当たり、次に熱接着剤へむらなく放散され、次にマイクロ・チャネル構造を含む平らな表面へ放散され得る。
【0024】
熱接着剤の製造業者は、しばしば適切な加熱温度と加熱回数を奨める。
典型的には、熱接着剤は、接着後に熱可塑性を維持している、熱可塑性熔融物として適用される。その動力学的スペクトルは、ガラス状相、ゴム状相、液化相(液体)を含む。本発明において有用な熱接着剤は、典型的に、室温以下の、約20℃のガラス転移温度(T)と、ほとんどの場合170℃以下の融解/液化温度を有する。TとT(融点)についての情報は、製造者とハンドブックが利用可能である。熱接着剤は、接着した後または接着する間に硬化し、接着部分は熱可塑性を失い得る。
【0025】
有用な熱接着剤は、2つのカテゴリー:(1)処方依存性、(2)合成計画性の何れかに属する。前者は、典型的に1もしくはそれ以上の基礎組成物および様々な添加剤を含む。典型的な基礎組成物は、ポリビニル酢酸 ポリエチレン コポリマー(EVA)、低密度ポリエチレン、ポリエチルアクリル酸、ポリエチルアクリル酸 ポリエチレン コポリマー、パラフィンろう、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン ブロック コポリマー、スチレン−イソプレン ブロックコポリマー、フェノキシレンなどから選ぶ。タイプ2において、基礎組成物は、接着する性質を与え、かつ特定の接着の要求に合うよう合成時に設計されている。このことは、しばしば添加物が必要としないことを意味する。タイプ2の典型的な基礎組成物は、ポリマーであり、ポリアミドとポリエステルから選ぶ。
【0026】
幾つかの使用において、プラスチック表面とふたを形成する物質の間の接合を強化する、硬化する熱接着剤を用いることが有益であり得る。再強化は、架橋結合の形成を介して、またはプラスチック表面との、および/またはふたを形成する物質との、共有結合がより重要になることによって、起こり得る。
【0027】
接着部分の強度は、例えば剥離試験、重ね合わせ剪断試験(shear-lap test)、引っ張り突き合せ試験(tensile butt test)、または浮き試験(blister test)などの、多くの標準化された試験方法の1つによって、決定し得る。かなり単純化した処理において、接着強度は、a)本当に接着表面の間に接触する分子の広がり、b)分子性接触状態にある接着物間の引力の相互作用の程度、およびc)接合部分間の物質の粘性エネルギーの散逸の可能性に依存する。
【0028】
液化した接着剤が固体の基板表面に接触している場合、接触している分子の広がりは、濡れの工程によって決定される。液化した接着剤は、基板への接触角が低ければ(理想的には0°だが、実際の値は10−20°以上)、マイクロスケールおよびナノスケールの裂け目と、基板表面上の他の凹凸を全て満たし、かつ全ての接合部分に渡って、緊密な分子性接触を形成する。接触角がより高ければ、裂け目を完全には満たせず、その結果、接着剤と基板の間で接触している分子がない、ミクロな穴が生成する。接触角は基板の表面エネルギー(例えば臨界表面張力として表される)、液化した接着剤の表面張力、液化した接着剤の粘度と接触時間に依存する。
【0029】
固化した接着剤と基板表面の間の引力の相互作用は、典型的には van der Waals 力と、酸−塩基相互作用である。特に水のような極性な液体に接触している場合は例外であるが、両表面が極性(例えば臨界表面張力として表される)を有するならば、これらの相互作用の力の総計は、たいていより高い。高い耐水性が必要である場合は、たいていは、硬化の工程の間に、基板の表面の基と共有結合を形成する反応性の接着剤を選択することによって、表面の間に共有結合を形成する必要があり得る。
【0030】
一方もしくは両方の接着物質が粘弾性を有するならば、粘度散逸によって、変形し、力学的なエネルギーを吸収し得る。このことは、界面領域における圧力レベルを減少させ、かつ破壊を引き起こす割れ目の広がりを妨げ得る。従って、特に短期間の接着試験では、より高い接着強度レベルが観測し得る。長期間の試験では、時々、粘弾性材料では粘着性クリープ破壊のために、強度はより低くなり得る。
【0031】
熱接着剤/熱融解性接着剤の選択と使用に関する一般的な情報は、例えば Adhension and Adhesives Technology の10章(Alphonsus V. Pocius 編、Hancer/Gardner Publications Inc, Cincinnati (1997), 特に第10章の 246−260 ページ)などのテキストに、見出され得る。
【0032】
ふたを形成する物質 ふたを形成する物質は、熱接着剤、熱源などと反応しない限り限界はない。ふたを形成する物質は、典型的にはラミネート化されたシート状の形態であり、かつマイクロ・チャネル構造を含む基板と比べて比較的薄く、例えば10%以下である。有用なラミネートシート状物質の、外側の層の一つが、常に熱接着剤である。他の1もしくはそれ以上の層は、典型的にプラスチック、金属のホイルなどから作られる。有用なプラスチックは、マイクロ・チャネル構造を含む平らな表面のプラスチックで使われ得るものと同種のポリマーを基礎とする。また、他の種類の物質も可能である。
【0033】
物質の、熱接着剤の層と反対の面には、使用上の指示などや他の製造者情報が印刷され得る。典型的には、意図した流れの方向を示した矢印と、試薬、液体、試料などのための適用領域として意図された各開口部を含む導入口であり得る。
【0034】
平らな表面のプラスチック材料 典型的には、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合のような不飽和結合からなるモノマーの重合によって得られるポリマーを基礎とする。
【0035】
該ポリマーは、例えばビニル化合物や、他の不飽和結合を含む化合物などの、モノ−、ジ−およびポリ/オリゴ不飽和化合物から選択し得る。モノマーの実例を挙げる:(i)アルケン/アルカジエン(エチレン、ブタジエン、プロピレン、およびビニルエステルなどの置換された形態などを含む)、シクロアルケン、ポリフルオロビニルヒドロ炭素(例えばテトラフルオロエチレン)、アルケンを含む酸、エステル、アミド、ニトリルなど(例えば様々なメタクリル/アクリル化合物)
(ii)任意に例えば低級アルキル基(C1−6)などで置換され得る、ビニルアリール化合物(モノ−、ジ−およびトリビニルベンゼンなど)
他の有用なプラスチックは、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシなどの基から選んだ、2もしくはそれ以上の基を持つ化合物からモノマーを選ぶ、縮合ポリマーを基礎とする。こういった種類のプラスチックは、典型的にポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミン、ポリエーテルなどである。ポリエステルは、シリコン・ラバーなどの、相当するシリコン類似体を含む。
【0036】
プラスチックのポリマーは、架橋した形態であってもよい。該プラスチックは、2またはそれ以上の異なるポリマー/コポリマーの混合物であってもよい。
【0037】
特に興味深いプラスチックは、200−800nm の間の励起波長と、400−900nm の間の放出波長において、重要な蛍光を有さないものである。重要な蛍光を有さないことによって、上記で示した放出波長の蛍光強度は、参照プラスチック(蛍光を持つ添加物を含まない、ビスフェノールAのポリカーボネート)の蛍光強度<50%であるべきである。事実、プラスチックの蛍光強度が、参照プラスチックの蛍光強度<30%、もしくは<15%のような、または<5%もしくは<1%のような場合、害にならない。許容され得る蛍光を有する典型的なプラスチックは、シクロアルケン(例えばノルボルネン、置換されたノルボルネンなど)、エチレン、プロピレンなどのような、重合可能な炭素−炭素二重結合を含む、脂肪族のモノマーのポリマー、および、例えば特定のグレードのポリメチルメタクリレートなどの、高純度の他の芳香族ではないポリマーを基礎とする。
【0038】
マイクロ・チャネル構造 マイクロ・チャネル構造の各セットは、1、2、またはそれ以上の、例えば5以上のマイクロ・チャネル構造からなる。マイクロ・チャネル構造はミクロ・フォーマットであり、深さおよび/または幅が10μm以下、好ましくは10μm以下である、1またはそれ以上の空洞および/またはチャネルを含むことを意味する。本構造のセットは、平らな基板物質の表面に広がっている。セットの個々のマイクロ・チャネル構造の間で液体を移送する、繋ぎチャネルがある。加えて、繋ぎチャネルはまた、主に共通の平面に垂直な、他の方向にもある。こういった他方向への繋ぎチャネルは、試料、または液体を当てる開口部、または表面のマイクロ・チャネル構造と同一平面にはない、他のマイクロ・チャネル構造のセットとして機能し得る。拡張チャネルもまた、ミクロ・フォーマットされ得る。
【0039】
マイクロ・チャネル構造のチャネルにおいて、2つの向かい合う壁の間の距離は、典型的には1000μm、例えば100μmであり、または10μm、例えば1μmでさえある。本構造はまた、チャネルに連結し、体積が500μl、例えば100μlであり、および10μl、例えば1μlでさえある、1個もしくはそれ以上のチャンバーを含む。チャンバーの深さは、典型的には1000μm以下、例えば100μm以下の範囲であり、10μm以下、または1μmでさえあってもよい。低限は、常に使用される薬剤の最大値より、かなり大きい。乾燥した形態で送達される装置における低限は、典型的に0.1−0.01μmの範囲である。
【0040】
マイクロ・チャネル構造の底および/または側面の壁は、部分の予め決まったパターンで定義される。互いに隣り合う部分は、別個の機能性を示し得、かつ表面の性質および/または表面の外形(深さおよび幅を含む)において、異ない得る。表面の性質における違いは、親水性および/または疎水性、化学的組成物、共有結合形成または親和性の反応に関するような反応性などにおける違いのような、化学的な性質に関し得る。従って:a)適用チャンバー/空洞/部分;
b)液体を輸送するための導管;
c)反応チャンバー/空洞/部分;
d)容積規定ユニット;
e)混合チャンバー/空洞/部分f)試料中の組成物を分離するためのチャンバーg)検出チャンバー/h)廃棄用導管/チャンバー/空洞i)内部バルブj)環境雰囲気へのバルブなどの、1もしくはそれ以上の別個の機能の部分であり得る。これらの部分の多くは、1個以上の機能性を有し得る。また、その中で、分離、合成、またはマイクロ・チャネル構造中の別の工程を経た化合物を集め、例えばマス・スペクトル分析器のような分析器などの、他の幾つかの機器に輸送する、集積チャンバー/空所であり得る。
【0041】
例えば反応空所および/または検出部分などの特定の機能部分は、各々が異なる化学的または生化学的反応性(反応領域または検出領域)を示し得る、次いで多数の下位区分に分けられた底面を有し得る。
【0042】
こういった種類の反応および/または検出下位区分の周辺では、近接した位置の下位区分の間で“読みすぎ”(over-hearing)を最小化するために、不活性な部分で縁取りし得る。
【0043】
本構造が使われる場合、必要な薬剤および/または検体を含む試料は、適応部分に適応され、そして適応された液体の流れによって構造の下流に輸送される。代わって、薬剤は、1もしくはそれ以上の予め決められた部分に、前もって組み込んでもよい。液体の流れは、毛細管現象、および/または向心力、マイクロ・チャネル構造に外部からかけた圧力差によって、および液体と検体と薬剤を同方向へ輸送する、外部からかけた非電動力学な力によって起こり得る。また、電気的内浸透圧(electroendoosmosis)は、液体の流れを生むために利用し得る。従って、液体の流れは、薬剤、検体、および他の組成物を、他の適応部分/空所/チャンバーから、予め選んだ(b)から(j)の部分への順序で輸送している。典型的な順序は、液体の流れと、適応部分から反応部分および/または検出部分を介した、最後に排出部分への輸送からなる。
【0044】
液体の流れは、薬剤および/または検体が、例えば分離部分におけるキャピラリー電気泳動、反応部分における反応、検出部分における検出などの、特定の処置を必要とする、予め選ばれた部分に達した時に止まる。
【0045】
微小流体用装置は、様々な外形のディスク型であり得、好ましい形は円形(CD型)である。
【0046】
円形において、マイクロ・チャネル構造は、内部の適応部分からディスクの周辺部に向かう、意図した流れの方向を持って放射線状に並び得る。この形態において、大部分の流れを作る実用的な方法は、毛細管現象、向心力(ディスクの回転)によるものである。
【0047】
本発明の微小流体用装置の好ましい形態は、乾燥状態で顧客に送付されることであると信じられている。装置のマイクロ・チャネル構造の表面は、本構造のチャネルにおける適応部分から、自己吸引によって水が浸透し得るのに十分なほどの親水性を有する。
【0048】
本発明の微小流体用アセンブリを用い得る応用 本明細書に記載の微小流体用アセンブリにおける典型的な分析系は、(a)試料調整、(b)アッセイの反応、(c)検出の、1またはそれ以上の主要な段階として構成され得る。試料調整は、アッセイの反応、および/または特定の活性もしくは分子の構成要素の検出に適した試料調整を意味する。このことは、例えばアッセイの反応および/または検出を邪魔する物質を除去するか、または別の方法で中和すること、物質を増幅するおよび/もしくは誘導体化することなどを意味する。典型的な実施例は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって試料中の1もしくはそれ以上の核酸配列を増幅すること、親和性反応などを含むアッセイで分析物と交差反応する種を除去することである。典型的なアッセイ反応は、細胞を含む反応と、例えば免疫反応、酵素反応、ハイブリダイゼーション/アニーリングなどを含む生物学的に特異的な親和性などの親和性反応と、沈殿反応と、共有結合およびその他の多くの結合の形成または切断を含む純粋な化学反応がある。検出反応は、蛍光測定法、化学ルミネセンス測定法、質量分析法、比濁分析法、濁度測定法などである。従って、適切な分析系は免疫アッセイ、ハイブリダイゼーション・アッセイ、細胞生物学アッセイ、変異検出、遺伝子同定、酵素アッセイ、新しい親和性の組み合わせを発見するためのスクリーニング・アッセイなどを含み得る。たんぱく質、核酸、炭水化物、脂質、および特定の重要性を有する他の生物有機化学分子の中の他の分子の、試料内容の分析方法もまた、含まれる。
【0049】
本発明の微小流体用アセンブリはまた、例えば固相合成によって合成されたペプチドやオリゴ核酸のライブラリーを含む化合物のライブラリーの構築のための使用もまた見出し得る。いわゆる化合物ライブラリーなどもまた含む。
【0050】
本発明は、原理の証明を構成する新規の(patent)実施例によって表されるが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。本発明は、さらに付属の特許請求書で定義される。
【0051】
実験部実施例1.マイクロ・チャネル構造の物理的安定性と表面の親水性の安定性 微細に作られた窪んだチャネルを表面に有した、ポリカーボネート(ビスフェノールAのポリカーボネート、Macrolon DP-1265, Bayer AG, ドイツ)から作られたCDディスクを、プラズマ反応器(BOC Coating Technology, Concord Ca USA の、Plasma Science PS0500)の中に置き、酸素プラズマ(ガスの流速 5cm3/min、500W RF power)で、10分間処理した。チャネルと空所の幅と深さは構造に沿って変えたが、その範囲は15−100μmの範囲内とした。処理後、ディスク表面は水接触角が6°以下であった。55 m ポリ(エチレン テレフタレート)と熱封層の2層からなる、ふた(MA 020060, Lawson Mardon Packaging)を、ディスクの上に置いた。CDとふたとの封は、United silicon, Lancaster, N.Y. U.S.A.の、“Hot stamping and Pod pinning system”(Model US 75, head size 12”×24”)を用いて、温度を150℃、衝撃時間を0.05秒に設定して行った。次いでふたの、マイクロ・チャネル構造の両端に穴をあけた。水溶液をチャネルに導入した。溶液はマイクロ・チャネル構造に自己吸引によって浸透した。これは、プラズマ処理によって誘発された親水性が、本質的に変化していなかったことを示している。チャネル表面の親水性−疎水性のバランスにおいて、有害な物理的な変形または変化は検出できなかった。
【0052】
実施例2.それぞれ異なる親水性および疎水性部分の性質の維持 微細に作られた窪んだチャネルを表面に有した、ポリカーボネート(ビスフェノールAのポリカーボネート、Macrolon DP-1265, Bayer AG, ドイツ)から作られたCDディスクを、プラズマ反応器(BOC Coating Technology, Concord Ca USA の、Plasma Science PS0500)の中に置き、酸素プラズマ(ガスの流速5cm3/min、500W RF power)で、10分間処理した。チャネルと空所の幅と深さは、構造に沿って変えたが、その範囲は15−100μmの範囲内とした。処理後、ディスク表面は水接触角が6°以下であった。次いで、水素をフッ素で置換したポリメタクリレート溶液(FC 732, 3M)を、選択したスポットに局所的に当て、乾燥した。50μmのポリ(エチレン テレフタレート)と、15μmの薄い修飾したポリ(エチレン テレフタレート)の封層(Skultuna Flexible, Skultuna, Sweden)の、2層からなるふたを、ディスクの上に置いた。CDとふたとの封は、United Silicon, Lancaster, N.Y. U.S.A の、“Hot stamping and Pod pinning system”(Model US 75, head size 12”×24”)を用いて、温度を150℃、衝撃時間を0.05秒に設定して行った。次いで、マイクロ・チャネル構造に沿って、ふたの望ましいスポットに穴をあけた。水溶液をチャネルに導入した。溶液は親水性のチャネル部分には自己吸引によって浸透したが、疎水性でマスクされた部分で止まった。このことは、親水性部分と疎水性部分は、封をする工程で、それぞれ十分にその性質を維持していることを示している。チャネル表面の有害な物理的な変形は検出されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 プラスチックから作られた平らな基板の表面に作られた、かつ2個またはそれ以上の異なる性質を有する部分からなる、開放マイクロ・チャネル構造のセットを覆うための方法であって、各段階:(a)マイクロ・チャネル構造のセットからなる基板を提供する(b)1つの面に熱接着剤(熱融解性接着剤など)のむらのない層を有する、ふたを形成する物質を提供する(c)当該物質の熱接着剤を有する面を、マイクロ・チャネル構造を有する表面に当てることによって、マイクロ・チャネル構造を覆う(d)段階(c)で作ったアセンブリに熱をかけ、熱接着剤を選択的に融解させ、同時にシート状物質と基板の平らな表面を一緒にして圧をかける(e)得られたラミネートで覆われたマイクロ・チャネル構造を、熱接着剤の融点未満に冷却することを特徴とする方法。
【請求項2】 親水性および/または疎水性について、2個もしくはそれ以上の部分のうち、少なくとも2個が異なることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】 マイクロ・チャネル構造のチャネルが、自己吸引するのに十分な親水性を有する、請求項1−2の何れかに記載の方法。
【請求項4】 ふたを形成する物質に熱をかけることを特徴とする、請求項1−3の何れかに記載の方法。
【請求項5】 1秒以下の時間熱をかけることを特徴とする、請求項1−4の何れかに記載の方法。
【請求項6】 該セットが、2個もしくはそれ以上のマイクロ・チャネル構造を含むことを特徴とする、請求項1−5の何れかに記載の方法。
【請求項7】 (a)平らな基板であって、各部分が異なる表面の性質を示す、1個またはそれ以上の開放マイクロ・チャネル構造のセットを、その表面に有する基板と、(b)マイクロ・チャネル構造のセットを覆い、かつマイクロ・チャネル構造から環境雰囲気への、1個もしくはそれ以上の開口部を有するふたを形成するシート状物質を含む微小流体用アセンブリであって、表面とシート状物質の間を接合するものが、硬化させ得る熱接着剤(熱融解性接着剤など)であることを特徴とする微小流体用アセンブリ。
【請求項8】 親水性および/または疎水性に関して、少なくとも2つの部分が異なることを特徴とする、請求項7に記載のアセンブリ。
【請求項9】 該セットが2個またはそれ以上のマイクロ・チャネル構造を含むことを特徴とする、請求項7−8の何れかに記載のアセンブリ。
【請求項10】 少なくとも2つの部分が、関連する部分とマイクロチャネル構造の深さまたは幅などの物理学的性質において、異なることを特徴とする、請求項7−9の何れかに記載のアセンブリ。
【請求項11】 少なくとも1つの部分が反応体からなり、少なくとも1つの他の部分が反応体を含まないことを特徴とする、請求項7−10の何れかに記載のアセンブリ。
【請求項12】 少なくとも2つの部分が、化学的組成物において異なることを特徴とする、請求項7−11の何れかに記載のアセンブリ。
【請求項13】 少なくとも2つの部分がa)適用チャンバー/空洞/部分b)液体輸送用導管c)反応チャンバー/空洞d)容積規定ユニットe)混合チャンバー/空洞f)例えばキャピラリー電気泳動、クロマトグラフィーなどの、試料内の成分を分離するためのチャンバーg)検出チャンバー/空洞h)廃液用導管/チャンバー/空洞i)内部バルブj)環境雰囲気へのバルブからなる、請求項7−12の何れかに記載のアセンブリ。

【公表番号】特表2003−520690(P2003−520690A)
【公表日】平成15年7月8日(2003.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−554786(P2001−554786)
【出願日】平成13年1月22日(2001.1.22)
【国際出願番号】PCT/EP01/00653
【国際公開番号】WO01/054810
【国際公開日】平成13年8月2日(2001.8.2)
【出願人】
【氏名又は名称】ユィロス・アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】GYROS AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】