微小粒子分取のための装置及びマイクロチップ
【課題】サンプル間のクロスコンタミネーションやサンプルの汚染、使用者へのバイオハザード、高価なフローセルとオリフィス部品、フローセルとオリフィスの微調整作業を排除して、高速な解析、安全で高速で安価な分取を行うことができる微小粒子分取装置の提供。
【解決手段】微小粒子を含む液体が通流される流路11と、流路11を通流する液体をチップ外の空間に排出するオリフィス12と、が配設されたマイクロチップ1と、オリフィス12において液体を液滴化して吐出するための振動素子2と、吐出される液滴Dに電荷を付与するための荷電手段と、流路11を通流する微小粒子の光学特性を検出する光学検出手段3と、吐出された液滴Dの移動方向に沿って、移動する液滴Dを挟んで対向して配設された対電極4,4と、対電極間4,4を通過した液滴Dを回収する2以上の容器と、を備える微小粒子分取装置Aを提供する。
【解決手段】微小粒子を含む液体が通流される流路11と、流路11を通流する液体をチップ外の空間に排出するオリフィス12と、が配設されたマイクロチップ1と、オリフィス12において液体を液滴化して吐出するための振動素子2と、吐出される液滴Dに電荷を付与するための荷電手段と、流路11を通流する微小粒子の光学特性を検出する光学検出手段3と、吐出された液滴Dの移動方向に沿って、移動する液滴Dを挟んで対向して配設された対電極4,4と、対電極間4,4を通過した液滴Dを回収する2以上の容器と、を備える微小粒子分取装置Aを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小粒子分取のための装置及びマイクロチップに関する。より詳しくは、マイクロチップに形成された流路を通流する微小粒子の特性をチップ内において検出した後、微小粒子を含む液滴をチップ外に吐出し、検出された微小粒子の特性に基づき液滴の移動方向を制御して分取を行う微小粒子分取装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞や微生物、リポソームなどの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子などの微小粒子の特性を判別するため、微小粒子の分散液を流路内に導入し、流路内へ導入された微小粒子の特性を光学的に測定する装置が用いられている。
【0003】
特に生体関連微小粒子については、フローサイトメトリー(フローサイトメータ)と呼ばれる装置が広く用いられている(非特許文献1参照)。フローサイトメトリーには、微小粒子の特性測定のみを目的としたものや、さらに測定結果に基づいて所望の特性を備えた微小粒子のみを分取できるように構成されたものがある。後者のうち、特に細胞を分取対象とした装置を「セルソータ」と呼んでいる。現在、市販されているセルソータでは、毎秒数千〜数万個という高速で細胞の特性を測定し、分取することが可能である。
【0004】
従来のフローサイトメトリーでは、以下のようにして、細胞やマイクロビーズ等の微小粒子の大きさや構造等の特性を測定している。まず、フローセルにおいて測定対象とする微小粒子を含むサンプル溶液をシース液の層流の中心に流し、フローセル内に微小粒子を一列に配列させる。次に、光学検出部において、フローセル内に配列されて通流する微小粒子に測定光を照射し、微小粒子から生じる散乱光や蛍光を検出して微小粒子の特性を測定する。続いて、微小粒子の分取を行う場合には、サンプル液を、微小粒子を含む液滴としてフローセル外の空間に吐出し、液滴の移動方向を制御して、所望の特性を備えた微小粒子を分取する。
【0005】
特許文献1(第7図)には、従来のセルソータとして、蛍光標識試薬などで染色された細胞をフローセル内で一列に配列するための流体系と、細胞にレーザー光を照射して散乱光や蛍光を検出するための光学系と、フローセル外の空間に吐出された液滴の移動方向を制御するための分取系と、からなる装置が開示されている。
【0006】
これら従来のフローサイトメトリー(セルソータ)では、流路系を構成するフローセル部品が高価な石英製であることや、このフローセルとは別体のオリフィス部品から構成されており、使用者が簡単に使い捨て可能とされていないため、測定の都度にフローセル部品やオリフィス部品を十分に洗浄しても、測定間でのサンプルのクロスコンタミネーションが生じるおそれがあった。また、分取系を構成する空間が開放空間又は気密性の低い空間とされているため、測定の際に液滴形成の際に発生する微小液滴(エアロゾル)等の汚染物質がサンプルに混入する、あるいは、エアロゾルによる装置使用者への感染や暴露などのバイオハザードの恐れがあった。このようなサンプル間のクロスコンタミネーションやサンプルの汚染、使用者へのバイオハザード、高価なフローセルとオリフィス部品の利用は、特に、セルソータによって分取した幹細胞等を再生医療に用いるような場合には大きな障害となっている。
【0007】
サンプル間のクロスコンタミネーションやサンプルの汚染、使用者へのバイオハザード、高価なフローセルとオリフィス部品の利用を解決するための技術として、近年、シリコンやガラス製の基板上に化学的及び生物学的分析を行うための領域や流路を設けたマイクロチップが開発されてきている。このようなマイクロチップを用いた分析システムは、μ−TAS(micro-total-analysis system)やラボ・オン・チップ、バイオチップ等と称されている。
【0008】
微小粒子分取技術へのμ−TASの応用例として、マイクロチップ上に配設された流路や領域内で微小粒子の特性を光学的、電気的あるいは磁気的に分析する微小粒子分析技術がある。例えば、特許文献2には、基板上に、微粒子含有溶液導入流路と、当該流路の少なくとも一方の側部に配置されたシース流形成流路と、導入された微粒子を計測するための微粒子計測部位と、該微粒子計測部位の下流に設置された微粒子を分別回収するための2以上の微粒子分別流路と、を有する微粒子分別マイクロチップが開示されている。このマイクロチップは微粒子計測部位から微粒子分別流路への流路口付近に電極を有しており、このマイクロチップを備える微小粒子分取装置によれば、電極電界との相互作用によって微粒子の移動方向を制御し、微小粒子の分取を行うことが可能である。
【0009】
μ−TASを応用したフローサイトメトリー(セルソータ)では、ディスポーザブルユース(使い捨て)が可能なマイクロチップにより流路系を構成することができるため、測定間でのサンプルのクロスコンタミネーションが生じない。また、分取系をチップ上に配設された気密流路内に構成することができるため、測定の際にエアロゾル等の汚染物質がサンプルに混入することがない。しかし、一方で、チップ上に配設された流路内に微小粒子を含む液体を高圧で送液する必要があり、微小粒子の移動方向の制御を微小粒子が液体中を通流している状態で行う必要がある。そのため、微小粒子の通流速度や分取速度を高めることが困難で、従来のフローサイトメトリー(セルソータ)のように毎秒数千〜数万個という高速で細胞の特性を測定し、分取することが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−46947号公報
【特許文献2】特開2003−107099号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「細胞工学別冊 実験プロトコルシリーズ フローサイトメトリー自由自在」、中内啓光、秀潤社、第2版、2006年8月31日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の通り、従来のフローサイトメトリー(セルソータ)では、流路系を構成するフローセルが使い捨て可能な構成とされていないため、サンプル間のクロスコンタミネーションが生じるおそれがあった。また、分取系を構成する空間が開放空間又は気密性の低い空間とされているため、エアロゾル等によってサンプルが汚染されるがあった。また、μ−TASを応用したフローサイトメトリー(セルソータ)においても、微小粒子の通流速度や分取速度を高めることが困難なため、解析のハイスループット化が難しいという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、サンプル間のクロスコンタミネーションやサンプルの汚染、使用者へのバイオハザード、高価なフローセルとオリフィス部品の利用を排除して、高速な解析、安全で高速で安価な分取、を行うことができる微小粒子分取装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題解決のため、本発明は、微小粒子を含む液体が通流される流路と、この流路を通流する液体をチップ外の空間に液滴として排出するオリフィスと、が配設されたマイクロチップと、オリフィスにおいて液体を液滴化して吐出するための振動素子と、吐出される液滴に電荷を付与するための荷電手段と、オリフィスよりも送液方向上流において流路を通流する微小粒子の光学特性を検出する光学検出手段と、チップ外の空間に吐出された液滴の移動方向に沿って、移動する液滴を挟んで対向して配設された対電極と、対電極間を通過した液滴を回収する2以上の容器と、を備え、オリフィス部位の流路幅及び流路深さが、光学検出手段による微小粒子の光学特性検出が行われる部位の流路幅及び流路深さよりも小さく、あるいは、オリフィス部位の流路断面積が、光学検出手段による微小粒子の光学特性検出が行われる部位の流路断面積よりも小さく形成されている微小粒子分取装置を提供する。
この微小粒子分取装置は、光学検出手段による微小粒子の光学特性検出が行われる部位よりも送液方向上流において、流路を通流する液体Tの層流中に、微小粒子を含む他の液体Sの層流を導入する微小管を備えることができる。
また、この微小管を、電圧を印加可能な金属により形成することにより、微小管を荷電手段として構成することができる。
この微小粒子分取装置では、マイクロチップの少なくともオリフィス部分と、オリフィスからチップ外に吐出された液滴が移動する空間と、が光学検出手段からの光に対して光透過性を有するカートリッジ内空に構成されていることが好適となる。
さらに、このカートリッジは、内空が密閉可能に構成されていることが好適である。
本発明は、また、微小粒子を含む液体が通流される流路と、この流路を通流する液体をチップ外の空間に排出するオリフィスと、が配設され、流路の所定部位が、通流する微小粒子の光学特性を検出するための光学検出手段からの光が照射される光照射部として構成され、光照射部よりも送液方向上流に、流路を通流する液体Tの層流中に、微小粒子を含む他の液体Sの層流を導入する微小管が配設されており、オリフィス部位の流路幅及び流路深さが、光照射部の流路幅及び流路深さよりも小さく、あるいは、オリフィス部位の流路断面積が、光学検出手段による微小粒子の光学特性検出が行われる部位の流路断面積よりも小さく形成されているマイクロチップを提供する。
このマイクロチップは、オリフィスにおいて液体を液滴化して吐出させるための振動素子を備えることができる。
このマイクロチップでは、微小管が、電圧を印加可能な金属により形成されていることが好適である。
本発明は、さらに、上記のマイクロチップの少なくともオリフィス部分と、オリフィスからチップ外に吐出された液滴が移動する空間と、が内空に構成され、光学検出手段からの光を光照射部に透過させる光透過性を有するカートリッジを提供する。
このカートリッジは、内空が密閉可能に構成されていることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、サンプル間のクロスコンタミネーションやサンプルの汚染、使用者へのバイオハザード、高価なフローセルとオリフィス部品の利用を排除して、高速な解析、安全で高速で安価な分取、を行うことができる微小粒子分取装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る微小粒子分取装置Aの概略構成を示す図である。
【図2】微小粒子分取装置Aの概略構成を模式的に示す図である。
【図3】マイクロチップ1と振動素子2の概略構成を示す図である。
【図4】微小管16配設部位及び絞込部17近傍の流路11の構造と、通流するサンプル液層流及びシース液層流の様子を説明する断面模式図である。
【図5】昇圧部13及びオリフィス12近傍の流路11の構造と、通流するサンプル液層流及びシース液層流の様子を説明する断面図模式図である。
【図6】オリフィス12から液滴化されて吐出されるサンプル液及びシース液を模式的に示す図である。
【図7】流路11の幅及び深さを説明する断面模式図である。(A)は微小管16の開口位置、(B)は光照射部33、(C)はオリフィス12部位における流路11の断面を示す。
【図8】流路11の幅及び深さについて他の好適な実施形態を説明する図である。
【図9】微小粒子分取装置Aによる微小粒子の分取を模式的に示す図である。
【図10】本発明に係るカートリッジの第一実施形態を説明する図である。
【図11】本発明に係るカートリッジの第二実施形態を説明する図である。
【図12】本発明に係るカートリッジの第三実施形態を説明する図である。
【図13】本発明に係るカートリッジの第四実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。
1.微小粒子分取装置
2.マイクロチップ
(1)流路
(2)微小管と絞込部
(3)光照射部
(4)昇圧部とオリフィス
3.振動素子
4.マイクロチップの各部位における流路幅及び深さ
5.微小流分取装置の動作
6.カートリッジ
【0018】
1.微小粒子分取装置
図1は、本発明に係る微小粒子分取装置の概略構成を示す図である。図中、符号Aで示す微小粒子分取装置は、マイクロチップ1を構成要素とするカートリッジ7と、マイクロチップ1の所定部位に光を照射する光学検出手段3を備える装置本体と、から大略構成されている。マイクロチップ1は、一部がカートリッジ外に露出し、残りの部分がカートリッジ7内に収容された状態となっている。カートリッジ7の内部には、一対の対電極4,4が配設されている。また、カートリッジ7のマイクロチップ1の反対側には、3つの容器(符号51,52,53)が、各容器の内部がカートリッジ内空と連通するように、接続されている。マイクロチップ1及び対電極4,4、容器51〜53を構成要素とするカートリッジ7は、微小粒子分取装置A本体に着脱可能に取り付けられている。微小粒子分取装置A本体には、カートリッジ7の取り付け時において、マイクロチップ1の一部に当接する位置に振動素子(不図示)が配設されている。
【0019】
微小粒子分取装置Aの構成について、図2を参照しながらさらに詳しく説明する。図2は、微小粒子分取装置Aの概略構成を模式的に示す図である。図には、上述したマイクロチップ1と光学検出手段3、対電極4,4、容器51〜53が示されている。図中、符号2は、微小粒子分取装置A本体へのカートリッジ7の取り付け時において、マイクロチップ1の一部に当接するように配設された振動素子を示している。また、符号6,6は、接地されたグランド接地対電極を示す。なお、ここでは、カートリッジ7の図示を省略した。
【0020】
マイクロチップ1には、分取対象とする微小粒子を含む液体(サンプル液)が通流される流路11が形成されている。光学検出手段3は、流路11の所定部位に光(測定光)を照射し、流路11を通流する微小粒子から発生する光(測定対象光)を検出する。以下、流路11において光検出手段3からの測定光が照射される部位を「光照射部」というものとする。
【0021】
マイクロチップ1は、ガラスや各種プラスチック(PP,PC,COP、PDMSなど)により形成できる。マイクロチップの材質は、光学検出手段3から照射される測定光に対して透過性を有し、自家蛍光が少なく、波長分散が小さいために光学誤差が少ない材質とすることが望ましい。
【0022】
マイクロチップ1への流路11の成形は、ガラス製基板のウェットエッチングやドライエッチングによって、またプラスチック製基板のナノインプリントや射出成型、機械加工によって行うことができる。マイクロチップ1は、流路11等を成形した基板を、同じ材質又は異なる材質の基板で封止することで形成することができる。
【0023】
光学検出手段3は、従来のフローサイトメトリーと同様に構成することができる。具体的には、レーザー光源と、微小粒子に対しレーザー光を集光・照射するための集光レンズやダイクロイックミラー、バンドパスフィルター等からなる照射系と、レーザー光の照射によって微小粒子から発生する測定対象光を検出する検出系と、によって構成される。検出系は、例えば、PMT(photo multiplier tube)や、CCDやCMOS素子等のエリア撮像素子等によって構成される。なお、図2では、照射系と検出系を別体に構成した場合を示しているが、照射系と検出系は同一の光学経路により構成してもよい(図1参照)。
【0024】
光学検出手段3の検出系により検出される測定対象光は、測定光の照射によって微小粒子から発生する光であって、例えば、前方散乱光や側方散乱光、レイリー散乱やミー散乱等の散乱光や蛍光などとすることができる。これらの測定対象光は電気信号に変換され、微小粒子の光学特性はこの電気信号に基づいて検出される。
【0025】
光照射部を通過したサンプル液は、流路11の一端に設けられたオリフィスからチップ外の空間に排出される。この際、振動素子2によってマイクロチップ1を振動させることで、サンプル液を液滴化してチップ外の空間に吐出することができる。図2中、符号Dは、チップ外の空間に吐出された液滴を示している。
【0026】
液滴Dには、分取対象とする微小粒子が含まれ得る。対電極4,4は、チップ外の空間に吐出された液滴の移動方向に沿って配設されており、移動する液滴を挟んで対向するように配置されている。吐出された液滴には不図示の荷電手段によって電荷が付与され、対電極4,4は液滴に付与された電荷との電気的な反発力(又は吸引力)によって液滴の移動方向を制御し、液滴を容器51〜53のいずれかに誘導する。なお、液滴を回収する容器52と53は、図示したような、通常利用されるプラスチック製の試験管容器などでもよいし、プラスチック基板上に96個のウェルなどが設けられている分注プレート容器などでもよい。
【0027】
微小粒子分取装置Aは、このように、光学検出手段3による微小粒子の特性検出までをマイクロチップ1において行い、その後、微小粒子の移動方向の制御をチップ外の空間において行うことを特徴としている。微小粒子分取装置Aでは、光学検出手段3により検出された微小粒子の光学特性に基づいて、その微小粒子が含まれる液滴の移動方向を対電極4,4により制御することで、所望の特性を備えた微小粒子を容器51〜53のいずれかに回収し、分取することができる。
【0028】
なお、微小粒子分取装置Aにおいて、光学検出手段3は、例えば、電気的又は磁気的な検出手段に置換されてもよい。微小粒子の特性を電気的又は磁気的に検出する場合には、流路11に両側に微小電極を対向させて配設し、抵抗値、容量値(キャパシタンス値)、インダクタンス値、インピーダンス、電極間の電界の変化値、あるいは、磁化、磁界変化、磁場変化等を測定する。この場合、微小粒子の分取は、微小粒子の電気的又は磁気的な特性に基づいて行われる。
【0029】
以下、微小粒子分取装置Aの各構成の詳細とその機能について順に説明する。まず、図3〜図8を参照して、マイクロチップ1と振動素子2について説明する。
【0030】
2.マイクロチップ
(1)流路
図3は、マイクロチップ1と振動素子2の概略構成を示す図である。マイクロチップ1には、サンプル液が導入されるサンプルインレット15と、シース液が導入されるシース液インレット14が形成されている。シース液インレット14に導入されたシース液は、Y軸正方向及び負方向の2方向に分岐して流路11を送液され、略90度に2回折り曲げられた後に合流し、下流に送液される
【0031】
(2)微小管と絞込部
流路11のシース液が合流する部位には、サンプルインレット15から導入されたサンプル液をシース液層流中に導入するための微小管16が配設されている。サンプル液の層流は、微小管16内を通流して、シース液インレット14から導入されて流路11を通流するシース液層流中に導入される。これにより、サンプル液層流を、周囲がシース液層流によって取り囲まれた状態で、流路11下流に送液することができる。
【0032】
微小管16は、電圧を印加可能な金属で形成されており、流路11を通流するシース液及びサンプル液に対し、正又は負の電荷を付与する荷電手段として構成されている。サンプル液及びシース液は、流路11の一端に設けられたオリフィス12において液滴化され、チップ外の空間に吐出される。このとき、微小管16に電圧を印加することで、吐出される液滴に正又は負の電荷を付与することができる。
【0033】
図3中、符号17は、流路11に設けられた絞込部を示す。絞込部17は、送液方向に対する垂直断面の面積が、流路上流から下流へ次第に小さくなるように形成されている。
【0034】
図4は、微小管16の配設部位と絞込部17の近傍の流路11の構造と、通流するサンプル液層流及びシース液層流の様子を説明する断面模式図である。(A)は水平断面図(XY断面図)、(B)は垂直断面図(ZX断面図)を示す。図中、符号Sはサンプル液層流、符号Tはシース液層流を示し、符号Pはサンプル液に含まれる分取対象微小粒子を示している。
【0035】
サンプル液層流Sは、微小管16によって流路11を通流するシース液層流T中に導入され、図に示すように、シース液層流Tで取り囲まれた状態(3次元層流)となって送液されている。
【0036】
絞込部17の流路側壁は送液方向に従って図中Y軸方向に狭窄するように形成されており、絞込部17はその上面視において次第に細くなる錘形とされている。この形状によって、絞込部17は、シース液とサンプル液の層流幅を図中Y軸方向に絞り込んで送液する。また、絞込部17は、その流路底面が上流から下流に向かって深さ方向(Z軸正方向)に高くなる傾斜面となるように形成されており、同方向にも層流幅の絞り込みを行う。
【0037】
このように、サンプル液層流Sがシース液層流Tによって取り囲まれた3次元層流を形成し、この3次元層流の層流幅を絞り込んで送液することにより、絞り込まれたサンプル液層流S中に微小粒子Pをひとつずつ配列させて送流することができる。そして、流路11内における微小粒子Pの送流位置を位置決めして、光学検出手段3からの測定光を精度良く微小粒子Pに照射することが可能となる。
【0038】
特に、絞込部17によれば、マイクロチップ1の水平方向(図4(A)Y軸方向)のみならず、垂直方向(同(B)Z軸方向)にもサンプル液層流Sの層流幅を絞り込むことができるため、流路11の深さ方向における測定光の焦点位置を微小粒子Pの送流位置と精緻に一致させることできる。このため、微小粒子Pに精度良く測定光を照射して高い測定感度を得ることが可能となる。
【0039】
ここで、流路11を十分に細い流路として形成し、この流路11を通流するシース液層流T中に、径の小さい微小管16を用いてサンプル液層流Sを導入すれば、予め層流幅が絞り込まれた3次元層流を形成することも可能と考えられる。しかしながら、この場合には、微小管16の径を小さくすることによって、微小管16に微小粒子Pが詰まる可能性がある。
【0040】
マイクロチップ1では、絞込部17を設けたことにより、サンプル液中に含まれる微小粒子Pの径に対して十分に大きい径の微小管16を用いて3次元層流の形成を行った後に、層流幅の絞り込みを行うことができる。従って、上記のような微小管16の詰まりの問題が生じない。
【0041】
図4では、微小管16を、その中心が流路11の中心と同軸上に位置するように配設した場合を示した。この場合、サンプル液層流Sは、流路11を通流するシース液層流Tの中心に導入されることになる。シース液層流T中におけるサンプル液層流Sの位置は、流路11内における微小管16の開口位置を調節することによって任意に設定することができる。また、層流幅の絞込みのためには、絞込部17は、送液方向に対する垂直断面の面積が、流路上流から下流へ次第に小さくなるように形成されていればよく、図4に示した形状に限られず、例えば流路底面及び上面の両方を傾斜面として形成し絞り込みを行うこともできる。
【0042】
微小管16の内径は、分取対象とする微小粒子Pの径に応じて適宜設定することができる。例えば、サンプル液として血液を用い、血球細胞の分析を行う場合には、好適な微小管16の内径は10〜500μm程度である。また、微小管16の開口位置における流路11の幅及び深さは、微小粒子Pの径を反映した微小管16の外径に応じて適宜設定すればよい。例えば、微小管16の内径が10〜500μm程度である場合、微小管16の開口位置における流路11の幅及び深さはそれぞれ100〜2000μm程度が好適である。なお、微小管の断面形状は、円形以外にも、楕円形や四角形、三角形など任意の形状とすることができる。
【0043】
絞込部17における絞り込み前のサンプル液層流S及びシース液層流Tの層流幅は、流路11の幅及び深さと微小管16の径に依存して変化し得るが、絞込部17の送液方向に対する垂直断面の面積を適宜調整することによって任意の層流幅にまで絞り込むことができる。例えば、図4(B)において、絞込部17の流路長をL、流路底面の傾斜角度をθ3とした場合、絞込部17における3次元層流の絞り込み幅はL・tanθ3となる。従って、流路長L及び傾斜角度θ3を適宜調整することによって任意の絞り込み幅を設定することが可能である。さらに、図4(A)中、絞込部17流路側壁のY軸方向における狭窄角度をそれぞれθ1、θ2とし、これらと上記θ3を「θ3=2×θ1、θ1=θ2」となるように形成することで、サンプル液層流Sとシース液層流Tを等方的に縮小して、微小管16により形成された3次元層流を乱すことなく層流幅を絞り込むことができる。
【0044】
(3)光照射部
図3中、符号33は、光学検出手段3からの測定光が照射される光照射部を示す。光照射部33では、光学検出手段3からの測定光の照射によって微小粒子から発生する測定対象光の検出が行われる。
【0045】
既に説明したように、光照射部33では、絞込部17によってサンプル液層流及びシース液層流の層流幅が絞り込まれているため、流路11内におけるサンプル液層流Sの送流位置に測定光の焦点位置を精緻に一致させ、微小粒子に精度良く測定光を照射することが可能である。
【0046】
光照射部33におけるサンプル液層流S及びシース液層流Tの層流幅は、絞込部17の送液方向に対する垂直断面の面積を適宜調整することによって任意の層流幅とすることができるが、流路11の幅及び深さでそれぞれ20〜2000μm程度が好適である。
【0047】
(4)昇圧部とオリフィス
図3中、符号12は、光照射部33を通過したシース液及びサンプル液をチップ外の空間に排出するオリフィスを示す。シース液及びサンプル液は、次に説明する振動素子2の作用によってオリフィス12で液滴化され、チップ外に吐出される。
【0048】
符号13は、オリフィス12よりも上流であって、光照射部33よりも下流の流路11に設けられた昇圧部を示す。昇圧部13は、送液方向に対する垂直断面の面積が、流路上流から下流へ次第に小さくなるように形成されている。すなわち、絞込部17と同様に、流路側壁が送液方向に従って図中Y軸方向に狭窄するように形成されており、流路底面が上流から下流に向かって深さ方向(Z軸正方向)に高くなる傾斜面となるように形成されている。
【0049】
図5は、昇圧部13とオリフィス12の近傍の流路11の構造と、通流するサンプル液層流及びシース液層流の様子を説明する断面図模式図である。(A)は水平断面図(XY断面図)、(B)は垂直断面図(ZX断面図)を示す。図中、符号Sはサンプル液層流、符号Tはシース液層流を示し、符号Pはサンプル液に含まれる分取対象微小粒子を示している。
【0050】
サンプル液層流S及びシース液層流Tは、昇圧部13において図中Y軸方向及びZ軸方向に層流幅を絞り込まれて送液されている。この層流幅の絞り込みによって、昇圧部13は、サンプル液及びシース液の流路11内における送液圧を高め、これらを高圧でオリフィス12から排出するために機能する。この昇圧部13の機能により、オリフィス12で液滴化される際に、より高い周波数で液滴を形成することが可能となり、高速の分取が可能となる。図3及び図5中、吐出された液滴の移動方向を符号Fで示す。
【0051】
オリフィス12部位のサンプル液層流S及びシース液層流Tの層流幅は、昇圧部13の送液方向に対する垂直断面の面積を適宜調整することによって任意の層流幅にまで絞り込むことができる。例えば、図5(B)において、昇圧部13の流路長をl、流路底面の傾斜角度をθ3とした場合、昇圧部13における3次元層流の絞り込み幅はL・tanθ3となる。従って、流路長l及び傾斜角度θ3を適宜調整することによって任意の絞り込み幅を設定することが可能である。オリフィス12部位におけるサンプル液層流S及びシース液層流Tの層流幅は、オリフィス12部位の幅及び深さでそれぞれ20〜500μm程度が好適である。
【0052】
なお、サンプル液層流Sとシース液層流Tの層流幅の絞り込みは、昇圧部13の流路底面及び上面の両方を傾斜面として行うこともでき、昇圧部13の形状は図に示す形状に限定されない点は、絞込部17に同じである。また、図5(A)中、昇圧部13流路側壁のY軸方向における狭窄角度θ1、θ2及びZ軸方向における狭窄角度θ3を、「θ3=2×θ1、θ1=θ2」となるように形成することで、微小管16により形成された3次元層流を等方的に縮小し、乱すことなく層流幅を絞り込むことができる点も、絞込部17で説明した通りである。
【0053】
3.振動素子
図3中、符号2は、微小粒子分取装置A本体へのカートリッジ7の取り付け時(図1参照)において、マイクロチップ1の一部に当接する振動素子を示している。ここでは、振動素子2を微小粒子分取装置A本体側に配設した場合として説明するが、振動素子2はマイクロチップ1の内部構成としてチップと一体に設けられるものであってもよい。
【0054】
振動素子2は、マイクロチップ1を所定周波数で振動させることにより、オリフィス12においてサンプル液及びシース液を液滴化してチップ外の空間に吐出させる。このような振動素子を用いたサンプル液及びシース液の液滴化は、従来のフローセルを用いたフローサイトメトリーと同様にして行うことができる。振動素子2は、例えば、インクジェットプリンタにも採用されるピエゾ振動素子等によって構成される。
【0055】
図6は、オリフィス12から液滴化されて吐出されるサンプル液及びシース液を模式的に示す図である。微小粒子Pを含むサンプル液層流Sは、シース液層流Tとともに、オリフィス12において液滴化され、液滴Dとなって図中矢印F方向に吐出される。
【0056】
振動素子2は、所定の周波数でマイクロチップ1を振動させることにより、図に示すように、吐出される各液滴Dに微小粒子Pがひとつずつ含まれるようにサンプル液及びシース液を液滴化する。この際、振動素子2の周波数は、光照射部33において光学検出手段3により検出される微小粒子Pの送流速度(流速)及び送液圧力、マイクロチップ1の共振周波数等に基づいて設定される。また、振動素子2の周波数は、オリフィス12部位における流路11の幅と深さ(すなわち、垂直断面の面積)によっても設定される。
【0057】
4.マイクロチップの各部位における流路幅及び深さ
図7は、流路11の各部位における幅及び深さを説明する断面模式図である。図は、流路11のYZ断面を示し、(A)は微小管16の開口位置、(B)は光照射部33、(C)はオリフィス12部位における流路11の断面を示す。
【0058】
図7(A)に示すように、微小管16の開口位置では、サンプル液層流Sとシース液層流Tは、サンプル液層流Sの周囲をシース液層流Tが取り囲んだ3次元層流として送液されている。既に説明したように、微小管16の開口位置における流路11の幅及び深さは、微小粒子Pの径を反映した微小管16の外径に応じて適宜設定され、例えば、100〜2000μm程度とされる。
【0059】
微小管16により形成された3次元層流は、絞込部17によって層流幅を絞り込まれた状態で光照射部33に送液されてくる(図7(B)参照)。絞込部17によって層流幅を絞り込むことにより、光照射部33には、サンプル液層流S中に微小粒子Pがひとつずつ配列されて送流されてくる。
【0060】
光照射部33におけるサンプル液層流S及びシース液層流Tの層流幅は、絞込部17の送液方向に対する垂直断面の面積を適宜調整することによって任意に設定できる。光照射部33における流路11の幅(W)及び深さ(H)は、光検出手段3による光学的検出角度(光学系の開口数)を十分大きくするため、それぞれ20〜2000μm程度とすることで、光学的検出角度δ及び開口数を十分に大きくとることが可能となる。
【0061】
さらに、光照射部33における流路11の形状は、深さ(H)に対して幅(W)を大きくし、光検出手段3による測定光の照射方向に対して長方形形状とすることが好ましい。光照射部33における流路11をこのような幅広な形状とすることで、光学系の開口数をより大きくとることが可能となる。
【0062】
光照射部33を通過したサンプル液層流S及びシース液層流Tは、昇圧部13によって、図7(C)に示すように再度層流幅を絞り込まれてオリフィス12に送液される。昇圧部13よって層流幅を絞り込むことにより、オリフィス12からのサンプル液及びシース液の排出圧を高めることができる。
【0063】
オリフィス12部位におけるサンプル液層流S及びシース液層流Tの層流幅は、昇圧部13の送液方向に対する垂直断面の面積を適宜調整することによって任意に設定できる。オリフィス12において、高速で高周波の液滴を形成するためには、オリフィス12部位におけるサンプル液層流S及びシース液層流Tの層流幅を小さくして、サンプル液及びシース液の排出圧を十分に高めることが好ましい。このため、オリフィス12の開口における流路11の幅(w)及び深さ(h)は、光照射部33における幅(W)及び深さ(H)よりも小さくする。あるいは、オリフィス12の開口における流路11の断面面積を、光照射部33における断面面積よりも小さくする。したがって、オリフィス12の開口における流路11の幅(w)及び深さ(h)は、それぞれ20〜500μm程度とすることが好適となる。
【0064】
ここでは、微小管16により形成された3次元層流の層流幅を、まず絞込部17によって光照射部33における微小粒子の光学検出に適した幅とし、次いで昇圧部13によって高周波の液滴形成が可能な幅とする場合を説明した。流路11における層流幅の絞り込みは、絞込部17及び昇圧部13の2段階で行う必要はなく、例えば図8に示すように、流路11の微小管16の開口位置からオリフィス12までの間で、連続して徐々に流路幅及び深さ、あるいは流路断面面積が小さくなるようにして行うこともできる。
【0065】
この他、流路11の形状は、微小管16の開口位置、光照射部33及びオリフィス12部位における流路幅及び深さが上記の好適な数値範囲とされる限りにおいて、、あるいは流路断面面積が上記の大小関係を満たす限りにおいて、様々な形状に形成され得るものとする。
【0066】
また、オリフィス12の開口の形状は、正方形や長方形、円形などの任意の形状とすることが可能である。さらに、図8に示すように、開口部の端面部分を逆テーパ形状に形成することもできる。オリフィス12の開口端面部分を、このようなラッパ形状とすることで、形成される液滴の水切れをよくすることができる。
【0067】
5.微小粒子分取装置の動作
続いて、微小粒子分取装置Aの動作について図9を参照しながら説明する。
【0068】
流路11の光照射部を通過したサンプル液及びシース液は、オリフィス12からチップ外の空間に排出される。光照射部では、光学検出手段によって、微小粒子の光学特性の検出と同時に、微小粒子の送流速度(流速)及び微小粒子の間隔等の検出が行われている。検出された微小粒子の光学特性、流速及び間隔等は、電気的信号に変換され装置の全体制御部(不図示)に出力される。全体制御部は、この信号に基づいて振動素子2の振動数を制御し、オリフィス12において形成される液滴D中に微小粒子Pがひとつずつ含まれるようにマイクロチップ1を振動させる。
【0069】
さらに、全体制御部は、微小管16に印加される電圧を、振動素子2の振動周波数に同調させて制御することにより、流路11を通流するシース液及びサンプル液に付与される電荷の正負を切り換え、オリフィス12において形成される液滴Dに正又は負の電荷を付与する。光学検出手段によって検出された微小粒子の光学特性は、電気信号に変換されて全体制御部に出力されており、全体制御部は、この信号に基づいて微小管16に印加される電圧を制御し、各液滴に含まれる微小粒子の光学特性に応じて液滴に付与する電荷を決定する。具体的には、全体制御部は、例えば、所望の特性を有する分取対象微小粒子を含む液滴を正に、分取対象微小粒子を含まない液滴を負に帯電させる。
【0070】
この際、液滴Dの荷電状態を安定化させるため、微小粒子分取装置Aでは、オリフィス12近傍に、チップ外の空間に吐出された液滴の移動方向に沿って、グランド接地対電極6,6を配置している。グランド接地電極6,6は、移動する液滴を挟んで対向するように配置されており、微小粒子の移動方向を制御するための対電極41,42とオリフィス12との間に配設される。
【0071】
オリフィス12から荷電されて吐出される液滴Dは、対電極41,42との間に作用する電気的力によって移動方向を制御される。この際、移動方向の制御を正確に行うためには、安定した電荷が液滴に付与されていることが必要である。対電極41,42には、非常に高い電圧が印加されるため、対電極41,42の高電位が、オリフィス12において微小管16から液滴Dに付与される電荷に影響を与えると、液滴Dの荷電状態が不安定になるおそれがある。そこで、微小粒子分取装置Aでは、オリフィス12と対電極41,42との間に接地されたグランド接地電極6,6を配することで、このような対電極41,42の高電位による影響を排除している。
【0072】
オリフィス12から吐出される液滴Dの移動方向の制御は、例えば、以下のように行われる。すなわち、所望の特性を有する分取対象微小粒子が含まれる液滴を正に、分取対象微小粒子を含まない液滴を負に帯電させる先の例では、対電極41を正に、対電極42を負に帯電させることにより、分取対象微小粒子のみを容器53に分取することができる。具体的には、正電荷が付与された分取対象微小粒子を含む液滴は、対電極41との電気的反発力及び対電極42との電気的吸引力によって、移動方向を矢印f3方向に制御され容器53に誘導される。一方、負電荷が付与された分取対象微小粒子を含まない液滴は、動方向を矢印f2方向に制御され容器52に誘導される。
【0073】
あるいは、例えば、所望の特性を有する分取対象微小粒子が含まれる液滴に電荷を付与せず、分取対象微小粒子を含まない液滴を正又は負に帯電させ、対電極41,42を正又は負に帯電させれば、分取対象微小粒子のみを容器51に分取することができる。その他、液滴Dに付与する電荷と、対電極41,42による液滴の移動方向の制御は、従来のフローサイトメトリーと同様に様々な組合せにおいて行うことができる。なお、液滴Dを回収するための容器は2以上設けられ、3つに限定されることはないものとする。さらに、これらの容器は、回収した液滴を貯留することなく排出する排出路として構成されていてもよく、回収された分取対象でない微小粒子が破棄されるようにしてもよい。
【0074】
ここでは、液滴Dに、その液滴に含まれる微小粒子の特性に基づいて正又は負の電荷を切り換えて付与して分取を行う場合を例に説明した。液滴の分取は、液滴Dには全てに正又は負のどちらかに帯電させ、対電極41,42に印加する電圧のほうを微小粒子の特性に基づいて切り換えることにより行うこともできる。また、光学検出手段を電気的又は磁気的な検出手段に置換した場合にも、微小粒子の電気的又は磁気的特性に基づき同様にして液滴の移動方向を制御することで、所望の特性を備えた微小粒子を容器51〜53のいずれかに回収し、分取することが可能である。
【0075】
以上のように、微小粒子分取装置Aによる微小粒子の分取は、光学検出手段3による微小粒子の特性検出までをマイクロチップ1において行い、その後、微小粒子の移動方向の制御をチップ外の空間に吐出された液滴として行うことを特徴としている。
【0076】
先に説明したように、従来のフローセルを用いたフローサイトメトリーでは、層流形成のための流路系を構成するフローセル部品と、液滴を形成するためのオリフィス部品が、高価で、それぞれの位置を層流が乱れないように微調整(アライメント)する必要があり、使い捨て可能な構成とされていないため、サンプル間のクロスコンタミネーションが生じるおそれがあった。これに対して、微小粒子分取装置Aでは、層流形成及び微小粒子の特性検出を、フローセル部品とオリフィス部品を一体としたディスポーザブルユースが可能なマイクロチップ1において行うため、測定間でのサンプルのクロスコンタミネーションが生じない。さらに、従来のようなアライメントが不要になり、使用者がより簡便に分取を行うことが可能となる。
【0077】
また、微小粒子分取装置Aでは、微小粒子の移動方向の制御をチップ外の空間で行うことで、従来のμ−TASを応用したフローサイトメトリーのように、微小粒子の移動方向の制御を通流する液体中で行う必要がなく、より高い分取速度を達成することができる。さらに、微小粒子分取装置Aでは、流路11内においてサンプル液及びシース液の送液圧を十分に高め、オリフィス12から高速で高周波の液滴を吐出することが可能であり、高い分取速度が得られる。
【0078】
6.カートリッジ
さらに、微小粒子分取装置Aでは、液滴の移動方向の制御が行われる空間を、密閉可能なカートリッジ7(図1参照)内空に構成することが好適となる。すなわち、図10に示すように、マイクロチップ1の少なくともオリフィス12部分と、オリフィス12からチップ外に吐出された液滴Dが移動する空間と、はカートリッジ7内の気密空間に配されることが望ましい。このとき、オリフィス12での液滴形成が阻害されないように、マイクロチップ1は、振動素子2からの振動によりオリフィス12部分が所定の振動数で振動できるようにカートリッジ7に取り付けられる。具体的には、マイクロチップ1は、オリフィス12とは反対端側でカートリッジ7に固定され、オリフィス12端側はカートリッジ7と接触していないことが望ましい。
【0079】
カートリッジ7の内空には、液滴の移動方向制御のための対電極4,4及びグランド接地電極6,6が配設されている。液滴を回収するための容器51〜53は、カートリッジ7に着脱可能に取り付けられており、取り付け時においてカートリッジ7の内空に気密に接続するようにされている。
【0080】
このように、液滴が吐出されるオリフィス12から、液滴が回収される容器51〜53までの空間を密閉可能なカートリッジ7内空に構成することで、オリフィスから液滴を形成する際に発生する微小液滴(エアロゾル)等の汚染物質がサンプルに混入することを防止できる。また、同時に、液滴や液滴形成時に発生するエアロゾルをカートリッジ7内に閉じ込めることができ、感染性の細胞などの危険性を伴う微小粒子を分取する場合に、使用者に対する暴露や環境の汚染を防止できる。
【0081】
カートリッジ7は、マイクロチップ1と同様に、全体をガラスや各種プラスチックにより形成し、光学検出手段からの測定光に対して光透過性を有することが望ましい。あるいは、図に示すように、マイクロチップ1の光照射部に対応する位置に光学窓34を設けて、この光学窓34部分のみに測定光に対する透過性を付与してもよい。あるいは、光学窓34をカートリッジ7の一部をくり抜いて設けた場合には、光学検出手段として開口数が高く、動作距離が小さい対物レンズを用いた場合にも、対物レンズがマイクロチップ1の光照射部面に近接することができる。この場合、開放された光学窓からの汚染を防止するため、マイクロチップ1のオリフィス12端を細く形成し、図11に示すように、マイクロチップ1と液滴の移動方向の制御が行われる空間との接続口の開口を小さくすることが望ましい。マイクロチップ1のオリフィス12端を細く形成することで、図10に比べて接続口の開口を小さくすることができる。さらに、細く形成したオリフィス12端を液滴の移動方向の制御が行われる空間内に挿入することで、液滴や液滴形成時に発生するエアロゾルの封止効率を高めることができる。
【0082】
カートリッジ7内の気密性をさらに高めるためには、光学窓34は、ガラス等の光透過性の材質によって形成されることが好ましい。この場合、光学窓34は、例えば、表面に反射防止膜や反射防止ナノ構造を形成したプラスチックや、石英等の高透過材料によって形成し、光学窓の厚さを可能な限り薄く形成して、光学損失ができるだけ小さくなるようにする。
【0083】
図12及び図13、カートリッジ7の他の好適な実施形態を示す図である。図12に示すように、液滴の移動方向の制御を行う対電極4,4及びグランド接地対電極6,6は、微小粒子分取装置A本体側に設けることもできる。この場合、カートリッジ7に嵌め込み穴を設け、装置本体への取り付け時において、この嵌め込み穴に対電極4,4及びグランド接地対電極6,6が挿入されるようにする。嵌め込み穴に挿入された状態において、対電極4,4及びグランド接地対電極6,6は、マイクロチップ1のオリフィスから吐出される液滴の移動方向に沿って配置される。
【0084】
また、図13に示すように、カートッジ7には、マイクロチップ1にサンプル液を供給するためのサンプル液リザーバ8を設けてもよい。サンプル液リザーバ8からのサンプル液は、サンプル液インレット15からマイクロチップ1に供給される。これにより、サンプル液の供給路についても、ディスポーザブルユースが可能な構成とでき、測定間でのサンプルのクロスコンタミネーションを一層防止できる。
【符号の説明】
【0085】
A 微小粒子分取装置
D 液滴
P 微小粒子
S サンプル液層流
T シース液層流
1 マイクロチップ
11 流路
12 オリフィス
13 昇圧部
14 シース液インレット
15 サンプル液インレット
16 微小管
17 絞込部
2 振動素子
3 光学検出手段
33 光照射部
34 光学窓
4、41、42 対電極
51、52、53 容器
6 グランド接地電極
7 カートリッジ
8 サンプル液リザーバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小粒子分取のための装置及びマイクロチップに関する。より詳しくは、マイクロチップに形成された流路を通流する微小粒子の特性をチップ内において検出した後、微小粒子を含む液滴をチップ外に吐出し、検出された微小粒子の特性に基づき液滴の移動方向を制御して分取を行う微小粒子分取装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞や微生物、リポソームなどの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子などの微小粒子の特性を判別するため、微小粒子の分散液を流路内に導入し、流路内へ導入された微小粒子の特性を光学的に測定する装置が用いられている。
【0003】
特に生体関連微小粒子については、フローサイトメトリー(フローサイトメータ)と呼ばれる装置が広く用いられている(非特許文献1参照)。フローサイトメトリーには、微小粒子の特性測定のみを目的としたものや、さらに測定結果に基づいて所望の特性を備えた微小粒子のみを分取できるように構成されたものがある。後者のうち、特に細胞を分取対象とした装置を「セルソータ」と呼んでいる。現在、市販されているセルソータでは、毎秒数千〜数万個という高速で細胞の特性を測定し、分取することが可能である。
【0004】
従来のフローサイトメトリーでは、以下のようにして、細胞やマイクロビーズ等の微小粒子の大きさや構造等の特性を測定している。まず、フローセルにおいて測定対象とする微小粒子を含むサンプル溶液をシース液の層流の中心に流し、フローセル内に微小粒子を一列に配列させる。次に、光学検出部において、フローセル内に配列されて通流する微小粒子に測定光を照射し、微小粒子から生じる散乱光や蛍光を検出して微小粒子の特性を測定する。続いて、微小粒子の分取を行う場合には、サンプル液を、微小粒子を含む液滴としてフローセル外の空間に吐出し、液滴の移動方向を制御して、所望の特性を備えた微小粒子を分取する。
【0005】
特許文献1(第7図)には、従来のセルソータとして、蛍光標識試薬などで染色された細胞をフローセル内で一列に配列するための流体系と、細胞にレーザー光を照射して散乱光や蛍光を検出するための光学系と、フローセル外の空間に吐出された液滴の移動方向を制御するための分取系と、からなる装置が開示されている。
【0006】
これら従来のフローサイトメトリー(セルソータ)では、流路系を構成するフローセル部品が高価な石英製であることや、このフローセルとは別体のオリフィス部品から構成されており、使用者が簡単に使い捨て可能とされていないため、測定の都度にフローセル部品やオリフィス部品を十分に洗浄しても、測定間でのサンプルのクロスコンタミネーションが生じるおそれがあった。また、分取系を構成する空間が開放空間又は気密性の低い空間とされているため、測定の際に液滴形成の際に発生する微小液滴(エアロゾル)等の汚染物質がサンプルに混入する、あるいは、エアロゾルによる装置使用者への感染や暴露などのバイオハザードの恐れがあった。このようなサンプル間のクロスコンタミネーションやサンプルの汚染、使用者へのバイオハザード、高価なフローセルとオリフィス部品の利用は、特に、セルソータによって分取した幹細胞等を再生医療に用いるような場合には大きな障害となっている。
【0007】
サンプル間のクロスコンタミネーションやサンプルの汚染、使用者へのバイオハザード、高価なフローセルとオリフィス部品の利用を解決するための技術として、近年、シリコンやガラス製の基板上に化学的及び生物学的分析を行うための領域や流路を設けたマイクロチップが開発されてきている。このようなマイクロチップを用いた分析システムは、μ−TAS(micro-total-analysis system)やラボ・オン・チップ、バイオチップ等と称されている。
【0008】
微小粒子分取技術へのμ−TASの応用例として、マイクロチップ上に配設された流路や領域内で微小粒子の特性を光学的、電気的あるいは磁気的に分析する微小粒子分析技術がある。例えば、特許文献2には、基板上に、微粒子含有溶液導入流路と、当該流路の少なくとも一方の側部に配置されたシース流形成流路と、導入された微粒子を計測するための微粒子計測部位と、該微粒子計測部位の下流に設置された微粒子を分別回収するための2以上の微粒子分別流路と、を有する微粒子分別マイクロチップが開示されている。このマイクロチップは微粒子計測部位から微粒子分別流路への流路口付近に電極を有しており、このマイクロチップを備える微小粒子分取装置によれば、電極電界との相互作用によって微粒子の移動方向を制御し、微小粒子の分取を行うことが可能である。
【0009】
μ−TASを応用したフローサイトメトリー(セルソータ)では、ディスポーザブルユース(使い捨て)が可能なマイクロチップにより流路系を構成することができるため、測定間でのサンプルのクロスコンタミネーションが生じない。また、分取系をチップ上に配設された気密流路内に構成することができるため、測定の際にエアロゾル等の汚染物質がサンプルに混入することがない。しかし、一方で、チップ上に配設された流路内に微小粒子を含む液体を高圧で送液する必要があり、微小粒子の移動方向の制御を微小粒子が液体中を通流している状態で行う必要がある。そのため、微小粒子の通流速度や分取速度を高めることが困難で、従来のフローサイトメトリー(セルソータ)のように毎秒数千〜数万個という高速で細胞の特性を測定し、分取することが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−46947号公報
【特許文献2】特開2003−107099号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「細胞工学別冊 実験プロトコルシリーズ フローサイトメトリー自由自在」、中内啓光、秀潤社、第2版、2006年8月31日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の通り、従来のフローサイトメトリー(セルソータ)では、流路系を構成するフローセルが使い捨て可能な構成とされていないため、サンプル間のクロスコンタミネーションが生じるおそれがあった。また、分取系を構成する空間が開放空間又は気密性の低い空間とされているため、エアロゾル等によってサンプルが汚染されるがあった。また、μ−TASを応用したフローサイトメトリー(セルソータ)においても、微小粒子の通流速度や分取速度を高めることが困難なため、解析のハイスループット化が難しいという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、サンプル間のクロスコンタミネーションやサンプルの汚染、使用者へのバイオハザード、高価なフローセルとオリフィス部品の利用を排除して、高速な解析、安全で高速で安価な分取、を行うことができる微小粒子分取装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題解決のため、本発明は、微小粒子を含む液体が通流される流路と、この流路を通流する液体をチップ外の空間に液滴として排出するオリフィスと、が配設されたマイクロチップと、オリフィスにおいて液体を液滴化して吐出するための振動素子と、吐出される液滴に電荷を付与するための荷電手段と、オリフィスよりも送液方向上流において流路を通流する微小粒子の光学特性を検出する光学検出手段と、チップ外の空間に吐出された液滴の移動方向に沿って、移動する液滴を挟んで対向して配設された対電極と、対電極間を通過した液滴を回収する2以上の容器と、を備え、オリフィス部位の流路幅及び流路深さが、光学検出手段による微小粒子の光学特性検出が行われる部位の流路幅及び流路深さよりも小さく、あるいは、オリフィス部位の流路断面積が、光学検出手段による微小粒子の光学特性検出が行われる部位の流路断面積よりも小さく形成されている微小粒子分取装置を提供する。
この微小粒子分取装置は、光学検出手段による微小粒子の光学特性検出が行われる部位よりも送液方向上流において、流路を通流する液体Tの層流中に、微小粒子を含む他の液体Sの層流を導入する微小管を備えることができる。
また、この微小管を、電圧を印加可能な金属により形成することにより、微小管を荷電手段として構成することができる。
この微小粒子分取装置では、マイクロチップの少なくともオリフィス部分と、オリフィスからチップ外に吐出された液滴が移動する空間と、が光学検出手段からの光に対して光透過性を有するカートリッジ内空に構成されていることが好適となる。
さらに、このカートリッジは、内空が密閉可能に構成されていることが好適である。
本発明は、また、微小粒子を含む液体が通流される流路と、この流路を通流する液体をチップ外の空間に排出するオリフィスと、が配設され、流路の所定部位が、通流する微小粒子の光学特性を検出するための光学検出手段からの光が照射される光照射部として構成され、光照射部よりも送液方向上流に、流路を通流する液体Tの層流中に、微小粒子を含む他の液体Sの層流を導入する微小管が配設されており、オリフィス部位の流路幅及び流路深さが、光照射部の流路幅及び流路深さよりも小さく、あるいは、オリフィス部位の流路断面積が、光学検出手段による微小粒子の光学特性検出が行われる部位の流路断面積よりも小さく形成されているマイクロチップを提供する。
このマイクロチップは、オリフィスにおいて液体を液滴化して吐出させるための振動素子を備えることができる。
このマイクロチップでは、微小管が、電圧を印加可能な金属により形成されていることが好適である。
本発明は、さらに、上記のマイクロチップの少なくともオリフィス部分と、オリフィスからチップ外に吐出された液滴が移動する空間と、が内空に構成され、光学検出手段からの光を光照射部に透過させる光透過性を有するカートリッジを提供する。
このカートリッジは、内空が密閉可能に構成されていることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、サンプル間のクロスコンタミネーションやサンプルの汚染、使用者へのバイオハザード、高価なフローセルとオリフィス部品の利用を排除して、高速な解析、安全で高速で安価な分取、を行うことができる微小粒子分取装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る微小粒子分取装置Aの概略構成を示す図である。
【図2】微小粒子分取装置Aの概略構成を模式的に示す図である。
【図3】マイクロチップ1と振動素子2の概略構成を示す図である。
【図4】微小管16配設部位及び絞込部17近傍の流路11の構造と、通流するサンプル液層流及びシース液層流の様子を説明する断面模式図である。
【図5】昇圧部13及びオリフィス12近傍の流路11の構造と、通流するサンプル液層流及びシース液層流の様子を説明する断面図模式図である。
【図6】オリフィス12から液滴化されて吐出されるサンプル液及びシース液を模式的に示す図である。
【図7】流路11の幅及び深さを説明する断面模式図である。(A)は微小管16の開口位置、(B)は光照射部33、(C)はオリフィス12部位における流路11の断面を示す。
【図8】流路11の幅及び深さについて他の好適な実施形態を説明する図である。
【図9】微小粒子分取装置Aによる微小粒子の分取を模式的に示す図である。
【図10】本発明に係るカートリッジの第一実施形態を説明する図である。
【図11】本発明に係るカートリッジの第二実施形態を説明する図である。
【図12】本発明に係るカートリッジの第三実施形態を説明する図である。
【図13】本発明に係るカートリッジの第四実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。
1.微小粒子分取装置
2.マイクロチップ
(1)流路
(2)微小管と絞込部
(3)光照射部
(4)昇圧部とオリフィス
3.振動素子
4.マイクロチップの各部位における流路幅及び深さ
5.微小流分取装置の動作
6.カートリッジ
【0018】
1.微小粒子分取装置
図1は、本発明に係る微小粒子分取装置の概略構成を示す図である。図中、符号Aで示す微小粒子分取装置は、マイクロチップ1を構成要素とするカートリッジ7と、マイクロチップ1の所定部位に光を照射する光学検出手段3を備える装置本体と、から大略構成されている。マイクロチップ1は、一部がカートリッジ外に露出し、残りの部分がカートリッジ7内に収容された状態となっている。カートリッジ7の内部には、一対の対電極4,4が配設されている。また、カートリッジ7のマイクロチップ1の反対側には、3つの容器(符号51,52,53)が、各容器の内部がカートリッジ内空と連通するように、接続されている。マイクロチップ1及び対電極4,4、容器51〜53を構成要素とするカートリッジ7は、微小粒子分取装置A本体に着脱可能に取り付けられている。微小粒子分取装置A本体には、カートリッジ7の取り付け時において、マイクロチップ1の一部に当接する位置に振動素子(不図示)が配設されている。
【0019】
微小粒子分取装置Aの構成について、図2を参照しながらさらに詳しく説明する。図2は、微小粒子分取装置Aの概略構成を模式的に示す図である。図には、上述したマイクロチップ1と光学検出手段3、対電極4,4、容器51〜53が示されている。図中、符号2は、微小粒子分取装置A本体へのカートリッジ7の取り付け時において、マイクロチップ1の一部に当接するように配設された振動素子を示している。また、符号6,6は、接地されたグランド接地対電極を示す。なお、ここでは、カートリッジ7の図示を省略した。
【0020】
マイクロチップ1には、分取対象とする微小粒子を含む液体(サンプル液)が通流される流路11が形成されている。光学検出手段3は、流路11の所定部位に光(測定光)を照射し、流路11を通流する微小粒子から発生する光(測定対象光)を検出する。以下、流路11において光検出手段3からの測定光が照射される部位を「光照射部」というものとする。
【0021】
マイクロチップ1は、ガラスや各種プラスチック(PP,PC,COP、PDMSなど)により形成できる。マイクロチップの材質は、光学検出手段3から照射される測定光に対して透過性を有し、自家蛍光が少なく、波長分散が小さいために光学誤差が少ない材質とすることが望ましい。
【0022】
マイクロチップ1への流路11の成形は、ガラス製基板のウェットエッチングやドライエッチングによって、またプラスチック製基板のナノインプリントや射出成型、機械加工によって行うことができる。マイクロチップ1は、流路11等を成形した基板を、同じ材質又は異なる材質の基板で封止することで形成することができる。
【0023】
光学検出手段3は、従来のフローサイトメトリーと同様に構成することができる。具体的には、レーザー光源と、微小粒子に対しレーザー光を集光・照射するための集光レンズやダイクロイックミラー、バンドパスフィルター等からなる照射系と、レーザー光の照射によって微小粒子から発生する測定対象光を検出する検出系と、によって構成される。検出系は、例えば、PMT(photo multiplier tube)や、CCDやCMOS素子等のエリア撮像素子等によって構成される。なお、図2では、照射系と検出系を別体に構成した場合を示しているが、照射系と検出系は同一の光学経路により構成してもよい(図1参照)。
【0024】
光学検出手段3の検出系により検出される測定対象光は、測定光の照射によって微小粒子から発生する光であって、例えば、前方散乱光や側方散乱光、レイリー散乱やミー散乱等の散乱光や蛍光などとすることができる。これらの測定対象光は電気信号に変換され、微小粒子の光学特性はこの電気信号に基づいて検出される。
【0025】
光照射部を通過したサンプル液は、流路11の一端に設けられたオリフィスからチップ外の空間に排出される。この際、振動素子2によってマイクロチップ1を振動させることで、サンプル液を液滴化してチップ外の空間に吐出することができる。図2中、符号Dは、チップ外の空間に吐出された液滴を示している。
【0026】
液滴Dには、分取対象とする微小粒子が含まれ得る。対電極4,4は、チップ外の空間に吐出された液滴の移動方向に沿って配設されており、移動する液滴を挟んで対向するように配置されている。吐出された液滴には不図示の荷電手段によって電荷が付与され、対電極4,4は液滴に付与された電荷との電気的な反発力(又は吸引力)によって液滴の移動方向を制御し、液滴を容器51〜53のいずれかに誘導する。なお、液滴を回収する容器52と53は、図示したような、通常利用されるプラスチック製の試験管容器などでもよいし、プラスチック基板上に96個のウェルなどが設けられている分注プレート容器などでもよい。
【0027】
微小粒子分取装置Aは、このように、光学検出手段3による微小粒子の特性検出までをマイクロチップ1において行い、その後、微小粒子の移動方向の制御をチップ外の空間において行うことを特徴としている。微小粒子分取装置Aでは、光学検出手段3により検出された微小粒子の光学特性に基づいて、その微小粒子が含まれる液滴の移動方向を対電極4,4により制御することで、所望の特性を備えた微小粒子を容器51〜53のいずれかに回収し、分取することができる。
【0028】
なお、微小粒子分取装置Aにおいて、光学検出手段3は、例えば、電気的又は磁気的な検出手段に置換されてもよい。微小粒子の特性を電気的又は磁気的に検出する場合には、流路11に両側に微小電極を対向させて配設し、抵抗値、容量値(キャパシタンス値)、インダクタンス値、インピーダンス、電極間の電界の変化値、あるいは、磁化、磁界変化、磁場変化等を測定する。この場合、微小粒子の分取は、微小粒子の電気的又は磁気的な特性に基づいて行われる。
【0029】
以下、微小粒子分取装置Aの各構成の詳細とその機能について順に説明する。まず、図3〜図8を参照して、マイクロチップ1と振動素子2について説明する。
【0030】
2.マイクロチップ
(1)流路
図3は、マイクロチップ1と振動素子2の概略構成を示す図である。マイクロチップ1には、サンプル液が導入されるサンプルインレット15と、シース液が導入されるシース液インレット14が形成されている。シース液インレット14に導入されたシース液は、Y軸正方向及び負方向の2方向に分岐して流路11を送液され、略90度に2回折り曲げられた後に合流し、下流に送液される
【0031】
(2)微小管と絞込部
流路11のシース液が合流する部位には、サンプルインレット15から導入されたサンプル液をシース液層流中に導入するための微小管16が配設されている。サンプル液の層流は、微小管16内を通流して、シース液インレット14から導入されて流路11を通流するシース液層流中に導入される。これにより、サンプル液層流を、周囲がシース液層流によって取り囲まれた状態で、流路11下流に送液することができる。
【0032】
微小管16は、電圧を印加可能な金属で形成されており、流路11を通流するシース液及びサンプル液に対し、正又は負の電荷を付与する荷電手段として構成されている。サンプル液及びシース液は、流路11の一端に設けられたオリフィス12において液滴化され、チップ外の空間に吐出される。このとき、微小管16に電圧を印加することで、吐出される液滴に正又は負の電荷を付与することができる。
【0033】
図3中、符号17は、流路11に設けられた絞込部を示す。絞込部17は、送液方向に対する垂直断面の面積が、流路上流から下流へ次第に小さくなるように形成されている。
【0034】
図4は、微小管16の配設部位と絞込部17の近傍の流路11の構造と、通流するサンプル液層流及びシース液層流の様子を説明する断面模式図である。(A)は水平断面図(XY断面図)、(B)は垂直断面図(ZX断面図)を示す。図中、符号Sはサンプル液層流、符号Tはシース液層流を示し、符号Pはサンプル液に含まれる分取対象微小粒子を示している。
【0035】
サンプル液層流Sは、微小管16によって流路11を通流するシース液層流T中に導入され、図に示すように、シース液層流Tで取り囲まれた状態(3次元層流)となって送液されている。
【0036】
絞込部17の流路側壁は送液方向に従って図中Y軸方向に狭窄するように形成されており、絞込部17はその上面視において次第に細くなる錘形とされている。この形状によって、絞込部17は、シース液とサンプル液の層流幅を図中Y軸方向に絞り込んで送液する。また、絞込部17は、その流路底面が上流から下流に向かって深さ方向(Z軸正方向)に高くなる傾斜面となるように形成されており、同方向にも層流幅の絞り込みを行う。
【0037】
このように、サンプル液層流Sがシース液層流Tによって取り囲まれた3次元層流を形成し、この3次元層流の層流幅を絞り込んで送液することにより、絞り込まれたサンプル液層流S中に微小粒子Pをひとつずつ配列させて送流することができる。そして、流路11内における微小粒子Pの送流位置を位置決めして、光学検出手段3からの測定光を精度良く微小粒子Pに照射することが可能となる。
【0038】
特に、絞込部17によれば、マイクロチップ1の水平方向(図4(A)Y軸方向)のみならず、垂直方向(同(B)Z軸方向)にもサンプル液層流Sの層流幅を絞り込むことができるため、流路11の深さ方向における測定光の焦点位置を微小粒子Pの送流位置と精緻に一致させることできる。このため、微小粒子Pに精度良く測定光を照射して高い測定感度を得ることが可能となる。
【0039】
ここで、流路11を十分に細い流路として形成し、この流路11を通流するシース液層流T中に、径の小さい微小管16を用いてサンプル液層流Sを導入すれば、予め層流幅が絞り込まれた3次元層流を形成することも可能と考えられる。しかしながら、この場合には、微小管16の径を小さくすることによって、微小管16に微小粒子Pが詰まる可能性がある。
【0040】
マイクロチップ1では、絞込部17を設けたことにより、サンプル液中に含まれる微小粒子Pの径に対して十分に大きい径の微小管16を用いて3次元層流の形成を行った後に、層流幅の絞り込みを行うことができる。従って、上記のような微小管16の詰まりの問題が生じない。
【0041】
図4では、微小管16を、その中心が流路11の中心と同軸上に位置するように配設した場合を示した。この場合、サンプル液層流Sは、流路11を通流するシース液層流Tの中心に導入されることになる。シース液層流T中におけるサンプル液層流Sの位置は、流路11内における微小管16の開口位置を調節することによって任意に設定することができる。また、層流幅の絞込みのためには、絞込部17は、送液方向に対する垂直断面の面積が、流路上流から下流へ次第に小さくなるように形成されていればよく、図4に示した形状に限られず、例えば流路底面及び上面の両方を傾斜面として形成し絞り込みを行うこともできる。
【0042】
微小管16の内径は、分取対象とする微小粒子Pの径に応じて適宜設定することができる。例えば、サンプル液として血液を用い、血球細胞の分析を行う場合には、好適な微小管16の内径は10〜500μm程度である。また、微小管16の開口位置における流路11の幅及び深さは、微小粒子Pの径を反映した微小管16の外径に応じて適宜設定すればよい。例えば、微小管16の内径が10〜500μm程度である場合、微小管16の開口位置における流路11の幅及び深さはそれぞれ100〜2000μm程度が好適である。なお、微小管の断面形状は、円形以外にも、楕円形や四角形、三角形など任意の形状とすることができる。
【0043】
絞込部17における絞り込み前のサンプル液層流S及びシース液層流Tの層流幅は、流路11の幅及び深さと微小管16の径に依存して変化し得るが、絞込部17の送液方向に対する垂直断面の面積を適宜調整することによって任意の層流幅にまで絞り込むことができる。例えば、図4(B)において、絞込部17の流路長をL、流路底面の傾斜角度をθ3とした場合、絞込部17における3次元層流の絞り込み幅はL・tanθ3となる。従って、流路長L及び傾斜角度θ3を適宜調整することによって任意の絞り込み幅を設定することが可能である。さらに、図4(A)中、絞込部17流路側壁のY軸方向における狭窄角度をそれぞれθ1、θ2とし、これらと上記θ3を「θ3=2×θ1、θ1=θ2」となるように形成することで、サンプル液層流Sとシース液層流Tを等方的に縮小して、微小管16により形成された3次元層流を乱すことなく層流幅を絞り込むことができる。
【0044】
(3)光照射部
図3中、符号33は、光学検出手段3からの測定光が照射される光照射部を示す。光照射部33では、光学検出手段3からの測定光の照射によって微小粒子から発生する測定対象光の検出が行われる。
【0045】
既に説明したように、光照射部33では、絞込部17によってサンプル液層流及びシース液層流の層流幅が絞り込まれているため、流路11内におけるサンプル液層流Sの送流位置に測定光の焦点位置を精緻に一致させ、微小粒子に精度良く測定光を照射することが可能である。
【0046】
光照射部33におけるサンプル液層流S及びシース液層流Tの層流幅は、絞込部17の送液方向に対する垂直断面の面積を適宜調整することによって任意の層流幅とすることができるが、流路11の幅及び深さでそれぞれ20〜2000μm程度が好適である。
【0047】
(4)昇圧部とオリフィス
図3中、符号12は、光照射部33を通過したシース液及びサンプル液をチップ外の空間に排出するオリフィスを示す。シース液及びサンプル液は、次に説明する振動素子2の作用によってオリフィス12で液滴化され、チップ外に吐出される。
【0048】
符号13は、オリフィス12よりも上流であって、光照射部33よりも下流の流路11に設けられた昇圧部を示す。昇圧部13は、送液方向に対する垂直断面の面積が、流路上流から下流へ次第に小さくなるように形成されている。すなわち、絞込部17と同様に、流路側壁が送液方向に従って図中Y軸方向に狭窄するように形成されており、流路底面が上流から下流に向かって深さ方向(Z軸正方向)に高くなる傾斜面となるように形成されている。
【0049】
図5は、昇圧部13とオリフィス12の近傍の流路11の構造と、通流するサンプル液層流及びシース液層流の様子を説明する断面図模式図である。(A)は水平断面図(XY断面図)、(B)は垂直断面図(ZX断面図)を示す。図中、符号Sはサンプル液層流、符号Tはシース液層流を示し、符号Pはサンプル液に含まれる分取対象微小粒子を示している。
【0050】
サンプル液層流S及びシース液層流Tは、昇圧部13において図中Y軸方向及びZ軸方向に層流幅を絞り込まれて送液されている。この層流幅の絞り込みによって、昇圧部13は、サンプル液及びシース液の流路11内における送液圧を高め、これらを高圧でオリフィス12から排出するために機能する。この昇圧部13の機能により、オリフィス12で液滴化される際に、より高い周波数で液滴を形成することが可能となり、高速の分取が可能となる。図3及び図5中、吐出された液滴の移動方向を符号Fで示す。
【0051】
オリフィス12部位のサンプル液層流S及びシース液層流Tの層流幅は、昇圧部13の送液方向に対する垂直断面の面積を適宜調整することによって任意の層流幅にまで絞り込むことができる。例えば、図5(B)において、昇圧部13の流路長をl、流路底面の傾斜角度をθ3とした場合、昇圧部13における3次元層流の絞り込み幅はL・tanθ3となる。従って、流路長l及び傾斜角度θ3を適宜調整することによって任意の絞り込み幅を設定することが可能である。オリフィス12部位におけるサンプル液層流S及びシース液層流Tの層流幅は、オリフィス12部位の幅及び深さでそれぞれ20〜500μm程度が好適である。
【0052】
なお、サンプル液層流Sとシース液層流Tの層流幅の絞り込みは、昇圧部13の流路底面及び上面の両方を傾斜面として行うこともでき、昇圧部13の形状は図に示す形状に限定されない点は、絞込部17に同じである。また、図5(A)中、昇圧部13流路側壁のY軸方向における狭窄角度θ1、θ2及びZ軸方向における狭窄角度θ3を、「θ3=2×θ1、θ1=θ2」となるように形成することで、微小管16により形成された3次元層流を等方的に縮小し、乱すことなく層流幅を絞り込むことができる点も、絞込部17で説明した通りである。
【0053】
3.振動素子
図3中、符号2は、微小粒子分取装置A本体へのカートリッジ7の取り付け時(図1参照)において、マイクロチップ1の一部に当接する振動素子を示している。ここでは、振動素子2を微小粒子分取装置A本体側に配設した場合として説明するが、振動素子2はマイクロチップ1の内部構成としてチップと一体に設けられるものであってもよい。
【0054】
振動素子2は、マイクロチップ1を所定周波数で振動させることにより、オリフィス12においてサンプル液及びシース液を液滴化してチップ外の空間に吐出させる。このような振動素子を用いたサンプル液及びシース液の液滴化は、従来のフローセルを用いたフローサイトメトリーと同様にして行うことができる。振動素子2は、例えば、インクジェットプリンタにも採用されるピエゾ振動素子等によって構成される。
【0055】
図6は、オリフィス12から液滴化されて吐出されるサンプル液及びシース液を模式的に示す図である。微小粒子Pを含むサンプル液層流Sは、シース液層流Tとともに、オリフィス12において液滴化され、液滴Dとなって図中矢印F方向に吐出される。
【0056】
振動素子2は、所定の周波数でマイクロチップ1を振動させることにより、図に示すように、吐出される各液滴Dに微小粒子Pがひとつずつ含まれるようにサンプル液及びシース液を液滴化する。この際、振動素子2の周波数は、光照射部33において光学検出手段3により検出される微小粒子Pの送流速度(流速)及び送液圧力、マイクロチップ1の共振周波数等に基づいて設定される。また、振動素子2の周波数は、オリフィス12部位における流路11の幅と深さ(すなわち、垂直断面の面積)によっても設定される。
【0057】
4.マイクロチップの各部位における流路幅及び深さ
図7は、流路11の各部位における幅及び深さを説明する断面模式図である。図は、流路11のYZ断面を示し、(A)は微小管16の開口位置、(B)は光照射部33、(C)はオリフィス12部位における流路11の断面を示す。
【0058】
図7(A)に示すように、微小管16の開口位置では、サンプル液層流Sとシース液層流Tは、サンプル液層流Sの周囲をシース液層流Tが取り囲んだ3次元層流として送液されている。既に説明したように、微小管16の開口位置における流路11の幅及び深さは、微小粒子Pの径を反映した微小管16の外径に応じて適宜設定され、例えば、100〜2000μm程度とされる。
【0059】
微小管16により形成された3次元層流は、絞込部17によって層流幅を絞り込まれた状態で光照射部33に送液されてくる(図7(B)参照)。絞込部17によって層流幅を絞り込むことにより、光照射部33には、サンプル液層流S中に微小粒子Pがひとつずつ配列されて送流されてくる。
【0060】
光照射部33におけるサンプル液層流S及びシース液層流Tの層流幅は、絞込部17の送液方向に対する垂直断面の面積を適宜調整することによって任意に設定できる。光照射部33における流路11の幅(W)及び深さ(H)は、光検出手段3による光学的検出角度(光学系の開口数)を十分大きくするため、それぞれ20〜2000μm程度とすることで、光学的検出角度δ及び開口数を十分に大きくとることが可能となる。
【0061】
さらに、光照射部33における流路11の形状は、深さ(H)に対して幅(W)を大きくし、光検出手段3による測定光の照射方向に対して長方形形状とすることが好ましい。光照射部33における流路11をこのような幅広な形状とすることで、光学系の開口数をより大きくとることが可能となる。
【0062】
光照射部33を通過したサンプル液層流S及びシース液層流Tは、昇圧部13によって、図7(C)に示すように再度層流幅を絞り込まれてオリフィス12に送液される。昇圧部13よって層流幅を絞り込むことにより、オリフィス12からのサンプル液及びシース液の排出圧を高めることができる。
【0063】
オリフィス12部位におけるサンプル液層流S及びシース液層流Tの層流幅は、昇圧部13の送液方向に対する垂直断面の面積を適宜調整することによって任意に設定できる。オリフィス12において、高速で高周波の液滴を形成するためには、オリフィス12部位におけるサンプル液層流S及びシース液層流Tの層流幅を小さくして、サンプル液及びシース液の排出圧を十分に高めることが好ましい。このため、オリフィス12の開口における流路11の幅(w)及び深さ(h)は、光照射部33における幅(W)及び深さ(H)よりも小さくする。あるいは、オリフィス12の開口における流路11の断面面積を、光照射部33における断面面積よりも小さくする。したがって、オリフィス12の開口における流路11の幅(w)及び深さ(h)は、それぞれ20〜500μm程度とすることが好適となる。
【0064】
ここでは、微小管16により形成された3次元層流の層流幅を、まず絞込部17によって光照射部33における微小粒子の光学検出に適した幅とし、次いで昇圧部13によって高周波の液滴形成が可能な幅とする場合を説明した。流路11における層流幅の絞り込みは、絞込部17及び昇圧部13の2段階で行う必要はなく、例えば図8に示すように、流路11の微小管16の開口位置からオリフィス12までの間で、連続して徐々に流路幅及び深さ、あるいは流路断面面積が小さくなるようにして行うこともできる。
【0065】
この他、流路11の形状は、微小管16の開口位置、光照射部33及びオリフィス12部位における流路幅及び深さが上記の好適な数値範囲とされる限りにおいて、、あるいは流路断面面積が上記の大小関係を満たす限りにおいて、様々な形状に形成され得るものとする。
【0066】
また、オリフィス12の開口の形状は、正方形や長方形、円形などの任意の形状とすることが可能である。さらに、図8に示すように、開口部の端面部分を逆テーパ形状に形成することもできる。オリフィス12の開口端面部分を、このようなラッパ形状とすることで、形成される液滴の水切れをよくすることができる。
【0067】
5.微小粒子分取装置の動作
続いて、微小粒子分取装置Aの動作について図9を参照しながら説明する。
【0068】
流路11の光照射部を通過したサンプル液及びシース液は、オリフィス12からチップ外の空間に排出される。光照射部では、光学検出手段によって、微小粒子の光学特性の検出と同時に、微小粒子の送流速度(流速)及び微小粒子の間隔等の検出が行われている。検出された微小粒子の光学特性、流速及び間隔等は、電気的信号に変換され装置の全体制御部(不図示)に出力される。全体制御部は、この信号に基づいて振動素子2の振動数を制御し、オリフィス12において形成される液滴D中に微小粒子Pがひとつずつ含まれるようにマイクロチップ1を振動させる。
【0069】
さらに、全体制御部は、微小管16に印加される電圧を、振動素子2の振動周波数に同調させて制御することにより、流路11を通流するシース液及びサンプル液に付与される電荷の正負を切り換え、オリフィス12において形成される液滴Dに正又は負の電荷を付与する。光学検出手段によって検出された微小粒子の光学特性は、電気信号に変換されて全体制御部に出力されており、全体制御部は、この信号に基づいて微小管16に印加される電圧を制御し、各液滴に含まれる微小粒子の光学特性に応じて液滴に付与する電荷を決定する。具体的には、全体制御部は、例えば、所望の特性を有する分取対象微小粒子を含む液滴を正に、分取対象微小粒子を含まない液滴を負に帯電させる。
【0070】
この際、液滴Dの荷電状態を安定化させるため、微小粒子分取装置Aでは、オリフィス12近傍に、チップ外の空間に吐出された液滴の移動方向に沿って、グランド接地対電極6,6を配置している。グランド接地電極6,6は、移動する液滴を挟んで対向するように配置されており、微小粒子の移動方向を制御するための対電極41,42とオリフィス12との間に配設される。
【0071】
オリフィス12から荷電されて吐出される液滴Dは、対電極41,42との間に作用する電気的力によって移動方向を制御される。この際、移動方向の制御を正確に行うためには、安定した電荷が液滴に付与されていることが必要である。対電極41,42には、非常に高い電圧が印加されるため、対電極41,42の高電位が、オリフィス12において微小管16から液滴Dに付与される電荷に影響を与えると、液滴Dの荷電状態が不安定になるおそれがある。そこで、微小粒子分取装置Aでは、オリフィス12と対電極41,42との間に接地されたグランド接地電極6,6を配することで、このような対電極41,42の高電位による影響を排除している。
【0072】
オリフィス12から吐出される液滴Dの移動方向の制御は、例えば、以下のように行われる。すなわち、所望の特性を有する分取対象微小粒子が含まれる液滴を正に、分取対象微小粒子を含まない液滴を負に帯電させる先の例では、対電極41を正に、対電極42を負に帯電させることにより、分取対象微小粒子のみを容器53に分取することができる。具体的には、正電荷が付与された分取対象微小粒子を含む液滴は、対電極41との電気的反発力及び対電極42との電気的吸引力によって、移動方向を矢印f3方向に制御され容器53に誘導される。一方、負電荷が付与された分取対象微小粒子を含まない液滴は、動方向を矢印f2方向に制御され容器52に誘導される。
【0073】
あるいは、例えば、所望の特性を有する分取対象微小粒子が含まれる液滴に電荷を付与せず、分取対象微小粒子を含まない液滴を正又は負に帯電させ、対電極41,42を正又は負に帯電させれば、分取対象微小粒子のみを容器51に分取することができる。その他、液滴Dに付与する電荷と、対電極41,42による液滴の移動方向の制御は、従来のフローサイトメトリーと同様に様々な組合せにおいて行うことができる。なお、液滴Dを回収するための容器は2以上設けられ、3つに限定されることはないものとする。さらに、これらの容器は、回収した液滴を貯留することなく排出する排出路として構成されていてもよく、回収された分取対象でない微小粒子が破棄されるようにしてもよい。
【0074】
ここでは、液滴Dに、その液滴に含まれる微小粒子の特性に基づいて正又は負の電荷を切り換えて付与して分取を行う場合を例に説明した。液滴の分取は、液滴Dには全てに正又は負のどちらかに帯電させ、対電極41,42に印加する電圧のほうを微小粒子の特性に基づいて切り換えることにより行うこともできる。また、光学検出手段を電気的又は磁気的な検出手段に置換した場合にも、微小粒子の電気的又は磁気的特性に基づき同様にして液滴の移動方向を制御することで、所望の特性を備えた微小粒子を容器51〜53のいずれかに回収し、分取することが可能である。
【0075】
以上のように、微小粒子分取装置Aによる微小粒子の分取は、光学検出手段3による微小粒子の特性検出までをマイクロチップ1において行い、その後、微小粒子の移動方向の制御をチップ外の空間に吐出された液滴として行うことを特徴としている。
【0076】
先に説明したように、従来のフローセルを用いたフローサイトメトリーでは、層流形成のための流路系を構成するフローセル部品と、液滴を形成するためのオリフィス部品が、高価で、それぞれの位置を層流が乱れないように微調整(アライメント)する必要があり、使い捨て可能な構成とされていないため、サンプル間のクロスコンタミネーションが生じるおそれがあった。これに対して、微小粒子分取装置Aでは、層流形成及び微小粒子の特性検出を、フローセル部品とオリフィス部品を一体としたディスポーザブルユースが可能なマイクロチップ1において行うため、測定間でのサンプルのクロスコンタミネーションが生じない。さらに、従来のようなアライメントが不要になり、使用者がより簡便に分取を行うことが可能となる。
【0077】
また、微小粒子分取装置Aでは、微小粒子の移動方向の制御をチップ外の空間で行うことで、従来のμ−TASを応用したフローサイトメトリーのように、微小粒子の移動方向の制御を通流する液体中で行う必要がなく、より高い分取速度を達成することができる。さらに、微小粒子分取装置Aでは、流路11内においてサンプル液及びシース液の送液圧を十分に高め、オリフィス12から高速で高周波の液滴を吐出することが可能であり、高い分取速度が得られる。
【0078】
6.カートリッジ
さらに、微小粒子分取装置Aでは、液滴の移動方向の制御が行われる空間を、密閉可能なカートリッジ7(図1参照)内空に構成することが好適となる。すなわち、図10に示すように、マイクロチップ1の少なくともオリフィス12部分と、オリフィス12からチップ外に吐出された液滴Dが移動する空間と、はカートリッジ7内の気密空間に配されることが望ましい。このとき、オリフィス12での液滴形成が阻害されないように、マイクロチップ1は、振動素子2からの振動によりオリフィス12部分が所定の振動数で振動できるようにカートリッジ7に取り付けられる。具体的には、マイクロチップ1は、オリフィス12とは反対端側でカートリッジ7に固定され、オリフィス12端側はカートリッジ7と接触していないことが望ましい。
【0079】
カートリッジ7の内空には、液滴の移動方向制御のための対電極4,4及びグランド接地電極6,6が配設されている。液滴を回収するための容器51〜53は、カートリッジ7に着脱可能に取り付けられており、取り付け時においてカートリッジ7の内空に気密に接続するようにされている。
【0080】
このように、液滴が吐出されるオリフィス12から、液滴が回収される容器51〜53までの空間を密閉可能なカートリッジ7内空に構成することで、オリフィスから液滴を形成する際に発生する微小液滴(エアロゾル)等の汚染物質がサンプルに混入することを防止できる。また、同時に、液滴や液滴形成時に発生するエアロゾルをカートリッジ7内に閉じ込めることができ、感染性の細胞などの危険性を伴う微小粒子を分取する場合に、使用者に対する暴露や環境の汚染を防止できる。
【0081】
カートリッジ7は、マイクロチップ1と同様に、全体をガラスや各種プラスチックにより形成し、光学検出手段からの測定光に対して光透過性を有することが望ましい。あるいは、図に示すように、マイクロチップ1の光照射部に対応する位置に光学窓34を設けて、この光学窓34部分のみに測定光に対する透過性を付与してもよい。あるいは、光学窓34をカートリッジ7の一部をくり抜いて設けた場合には、光学検出手段として開口数が高く、動作距離が小さい対物レンズを用いた場合にも、対物レンズがマイクロチップ1の光照射部面に近接することができる。この場合、開放された光学窓からの汚染を防止するため、マイクロチップ1のオリフィス12端を細く形成し、図11に示すように、マイクロチップ1と液滴の移動方向の制御が行われる空間との接続口の開口を小さくすることが望ましい。マイクロチップ1のオリフィス12端を細く形成することで、図10に比べて接続口の開口を小さくすることができる。さらに、細く形成したオリフィス12端を液滴の移動方向の制御が行われる空間内に挿入することで、液滴や液滴形成時に発生するエアロゾルの封止効率を高めることができる。
【0082】
カートリッジ7内の気密性をさらに高めるためには、光学窓34は、ガラス等の光透過性の材質によって形成されることが好ましい。この場合、光学窓34は、例えば、表面に反射防止膜や反射防止ナノ構造を形成したプラスチックや、石英等の高透過材料によって形成し、光学窓の厚さを可能な限り薄く形成して、光学損失ができるだけ小さくなるようにする。
【0083】
図12及び図13、カートリッジ7の他の好適な実施形態を示す図である。図12に示すように、液滴の移動方向の制御を行う対電極4,4及びグランド接地対電極6,6は、微小粒子分取装置A本体側に設けることもできる。この場合、カートリッジ7に嵌め込み穴を設け、装置本体への取り付け時において、この嵌め込み穴に対電極4,4及びグランド接地対電極6,6が挿入されるようにする。嵌め込み穴に挿入された状態において、対電極4,4及びグランド接地対電極6,6は、マイクロチップ1のオリフィスから吐出される液滴の移動方向に沿って配置される。
【0084】
また、図13に示すように、カートッジ7には、マイクロチップ1にサンプル液を供給するためのサンプル液リザーバ8を設けてもよい。サンプル液リザーバ8からのサンプル液は、サンプル液インレット15からマイクロチップ1に供給される。これにより、サンプル液の供給路についても、ディスポーザブルユースが可能な構成とでき、測定間でのサンプルのクロスコンタミネーションを一層防止できる。
【符号の説明】
【0085】
A 微小粒子分取装置
D 液滴
P 微小粒子
S サンプル液層流
T シース液層流
1 マイクロチップ
11 流路
12 オリフィス
13 昇圧部
14 シース液インレット
15 サンプル液インレット
16 微小管
17 絞込部
2 振動素子
3 光学検出手段
33 光照射部
34 光学窓
4、41、42 対電極
51、52、53 容器
6 グランド接地電極
7 カートリッジ
8 サンプル液リザーバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小粒子を含む液体が通流される流路と、この流路を通流する液体をチップ外の空間に排出するオリフィスと、が配設されたマイクロチップと、
オリフィスにおいて液体を液滴化して吐出するための振動素子と、
吐出される液滴に電荷を付与するための荷電手段と、
オリフィスよりも送液方向上流において流路を通流する微小粒子の光学特性を検出する光学検出手段と、
チップ外の空間に吐出された液滴の移動方向に沿って、移動する液滴を挟んで対向して配設された対電極と、
対電極間を通過した液滴を回収する二以上の容器と、を備え、
オリフィス部位の流路幅及び流路深さが、光学検出手段による微小粒子の光学特性検出が行われる部位の流路幅及び流路深さよりも小さく形成されている微小粒子分取装置。
【請求項2】
微小粒子を含む液体が通流される流路と、この流路を通流する液体をチップ外の空間に排出するオリフィスと、が配設されたマイクロチップと、
オリフィスにおいて液体を液滴化して吐出するための振動素子と、
吐出される液滴に電荷を付与するための荷電手段と、
オリフィスよりも送液方向上流において流路を通流する微小粒子の光学特性を検出する光学検出手段と、
チップ外の空間に吐出された液滴の移動方向に沿って、移動する液滴を挟んで対向して配設された対電極と、
対電極間を通過した液滴を回収する二以上の容器と、を備え、
オリフィス部位の流路断面積が、光学検出手段による微小粒子の光学特性検出が行われる部位の流路断面積よりも小さく形成されている微小粒子分取装置。
【請求項3】
光学検出手段による微小粒子の光学特性検出が行われる部位よりも送液方向上流において、流路を通流する液体Tの層流中に、微小粒子を含む他の液体Sの層流を導入する微小管を備える請求項1又は2記載の微小粒子分取装置。
【請求項4】
電圧を印加可能な金属により形成した微小管を荷電手段として構成した請求項3記載の微小粒子分取装置。
【請求項5】
マイクロチップの少なくともオリフィス部分と、オリフィスからチップ外に吐出された液滴が移動する空間と、が光学検出手段からの光に対して光透過性を有するカートリッジ内空に構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の微小粒子分取装置。
【請求項6】
カートリッジ内空が密閉可能に構成されている請求項5記載の微小粒子分取装置。
【請求項7】
微小粒子を含む液体が通流される流路と、この流路を通流する液体をチップ外の空間に排出するオリフィスと、が配設され、
流路の所定部位が、通流する微小粒子の光学特性を検出するための光学検出手段からの光が照射される光照射部として構成され、
光照射部よりも送液方向上流に、流路を通流する液体Tの層流中に、微小粒子を含む他の液体Sの層流を導入する微小管が配設されており、
オリフィス部位の流路幅及び流路深さが、光照射部の流路幅及び流路深さよりも小さく形成されているマイクロチップ。
【請求項8】
微小粒子を含む液体が通流される流路と、この流路を通流する液体をチップ外の空間に排出するオリフィスと、が配設され、
流路の所定部位が、通流する微小粒子の光学特性を検出するための光学検出手段からの光が照射される光照射部として構成され、
光照射部よりも送液方向上流に、流路を通流する液体Tの層流中に、微小粒子を含む他の液体Sの層流を導入する微小管が配設されており、
オリフィス部位の流路断面積が、光照射部の流路断面積よりも小さく形成されているマイクロチップ。
【請求項9】
オリフィスにおいて液体を液滴化して吐出させるための振動素子を備える請求項7又は8記載のマイクロチップ。
【請求項10】
微小管が、電圧を印加可能な金属により形成されている請求項9記載のマイクロチップ。
【請求項11】
請求項10記載のマイクロチップの少なくともオリフィス部分と、オリフィスからチップ外に吐出された液滴が移動する空間と、が内空に構成され、光学検出手段からの光を光照射部に透過させる光透過性を有するカートリッジ。
【請求項12】
内空が密閉可能に構成されている請求項11記載のカートリッジ。
【請求項1】
微小粒子を含む液体が通流される流路と、この流路を通流する液体をチップ外の空間に排出するオリフィスと、が配設されたマイクロチップと、
オリフィスにおいて液体を液滴化して吐出するための振動素子と、
吐出される液滴に電荷を付与するための荷電手段と、
オリフィスよりも送液方向上流において流路を通流する微小粒子の光学特性を検出する光学検出手段と、
チップ外の空間に吐出された液滴の移動方向に沿って、移動する液滴を挟んで対向して配設された対電極と、
対電極間を通過した液滴を回収する二以上の容器と、を備え、
オリフィス部位の流路幅及び流路深さが、光学検出手段による微小粒子の光学特性検出が行われる部位の流路幅及び流路深さよりも小さく形成されている微小粒子分取装置。
【請求項2】
微小粒子を含む液体が通流される流路と、この流路を通流する液体をチップ外の空間に排出するオリフィスと、が配設されたマイクロチップと、
オリフィスにおいて液体を液滴化して吐出するための振動素子と、
吐出される液滴に電荷を付与するための荷電手段と、
オリフィスよりも送液方向上流において流路を通流する微小粒子の光学特性を検出する光学検出手段と、
チップ外の空間に吐出された液滴の移動方向に沿って、移動する液滴を挟んで対向して配設された対電極と、
対電極間を通過した液滴を回収する二以上の容器と、を備え、
オリフィス部位の流路断面積が、光学検出手段による微小粒子の光学特性検出が行われる部位の流路断面積よりも小さく形成されている微小粒子分取装置。
【請求項3】
光学検出手段による微小粒子の光学特性検出が行われる部位よりも送液方向上流において、流路を通流する液体Tの層流中に、微小粒子を含む他の液体Sの層流を導入する微小管を備える請求項1又は2記載の微小粒子分取装置。
【請求項4】
電圧を印加可能な金属により形成した微小管を荷電手段として構成した請求項3記載の微小粒子分取装置。
【請求項5】
マイクロチップの少なくともオリフィス部分と、オリフィスからチップ外に吐出された液滴が移動する空間と、が光学検出手段からの光に対して光透過性を有するカートリッジ内空に構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の微小粒子分取装置。
【請求項6】
カートリッジ内空が密閉可能に構成されている請求項5記載の微小粒子分取装置。
【請求項7】
微小粒子を含む液体が通流される流路と、この流路を通流する液体をチップ外の空間に排出するオリフィスと、が配設され、
流路の所定部位が、通流する微小粒子の光学特性を検出するための光学検出手段からの光が照射される光照射部として構成され、
光照射部よりも送液方向上流に、流路を通流する液体Tの層流中に、微小粒子を含む他の液体Sの層流を導入する微小管が配設されており、
オリフィス部位の流路幅及び流路深さが、光照射部の流路幅及び流路深さよりも小さく形成されているマイクロチップ。
【請求項8】
微小粒子を含む液体が通流される流路と、この流路を通流する液体をチップ外の空間に排出するオリフィスと、が配設され、
流路の所定部位が、通流する微小粒子の光学特性を検出するための光学検出手段からの光が照射される光照射部として構成され、
光照射部よりも送液方向上流に、流路を通流する液体Tの層流中に、微小粒子を含む他の液体Sの層流を導入する微小管が配設されており、
オリフィス部位の流路断面積が、光照射部の流路断面積よりも小さく形成されているマイクロチップ。
【請求項9】
オリフィスにおいて液体を液滴化して吐出させるための振動素子を備える請求項7又は8記載のマイクロチップ。
【請求項10】
微小管が、電圧を印加可能な金属により形成されている請求項9記載のマイクロチップ。
【請求項11】
請求項10記載のマイクロチップの少なくともオリフィス部分と、オリフィスからチップ外に吐出された液滴が移動する空間と、が内空に構成され、光学検出手段からの光を光照射部に透過させる光透過性を有するカートリッジ。
【請求項12】
内空が密閉可能に構成されている請求項11記載のカートリッジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−190680(P2010−190680A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34337(P2009−34337)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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