説明

微生物の増殖を検出するための検出方法および装置

1つまたは複数の微生物を含むと疑われる試料の変化を、そうした微生物の代謝過程によって引き起こされる、試料の誘電率の変化を監視することによって、非侵襲的に測定するためのシステムおよび方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体サンプルの汚染を回避するように、非侵襲的な方法で生体サンプルの変化を測定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、患者の体液内、特に血液内の細菌のような生物活性病原体の存在は、血液培養バイアルを用いて判断される。少量の血液が、密閉ゴム隔壁を通して、培地を含む滅菌バイアルに注入され、次に、該バイアルが、細菌増殖のために培養され、監視される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そして、培養バイアルの通常の目視検査は、バイアル内の液体懸濁液の濁度を監視すること、あるいは、その最終的な色の変化を観察することを含んでいる。既知の計器法を用いて、細菌増殖の代謝副生成物である、培養ボトルの二酸化炭素の含量の変化を検出することもできる。二酸化炭素含量の監視は、当技術分野において十分に確立された方法によって達成され得るが、これらの方法の大部分は、侵襲的な手技を必要とするものであり、バイアル内の交差汚染という周知の問題をもたらす場合がある。
【0004】
上記の問題に対する1つの解決法は、非侵襲的な赤外線微生物検出装置の使用を含み、この装置では赤外線透過ウィンドウを有する特別なバイアルが用いられる。しかしながら、これらのバイアルは、比較的高価である。さらに別の解決法においては、ガラス製バイアルが、自動化されたマニピュレータ・アームによって赤外分光計に移送され、該ガラス製バイアルを通して測定が行われる。このシステムの不利な点は、ガラスの高い赤外線吸収作用のため、ガラス壁厚の僅かな変化により、測定されるヘッドスペース・ガスの吸収において大きなエラーが生じ得る点である。これらの問題は、高品質のガラス製バイアルを用いることによって、ある程度は減少され得るが、この測定は、比較的高いバイアル・コストをもたらす。
【0005】
さらに他の解決法は、バイアル内部に配置された化学センサの使用を含んでいる。これらのセンサは、色を変化させることに、あるいは、蛍光強度を変化させることに基づいて、液相における二酸化炭素濃度の変化に反応する。これらの技術は、光度の測定に基づくものであり、励起および/または放出信号における分光フィルタリングを必要とする。しかしながら、このような解決法では、光源、光検出器、フィルタ、またはセンサのいずれかが、時間と共にエージング効果を示すとき、強度の応答性が変わり、エラーが生じることがある。
【0006】
したがって、サンプルの汚染を回避するように、非侵襲的な方法でサンプルの変化を測定するためのシステムおよび方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施形態において、本発明は、微生物が培地の本質的成分を代謝の副生成物に代謝する際、増殖培地の生体サンプルの誘電率の変化を測定するためのシステムおよび方法を提供する。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、種々の有機化合物および無機化合物の分解および形成による生体サンプルの誘電率の僅かな変化が静電容量値を変えるように、電気力学場を確立するためのシステムおよび方法を提供する。(ここに用いられる電気力学場は、例えば、容量性電極間の誘電率の変化を感知することができる様々な電場のような、物理変化または化学変化により測定可能な電位変化を引き起こすように構成された電場を指し示す。)
【0009】
更に別の実施形態において、本発明は、静電容量値の変化を測定し、生物学的増殖物質についての対応する変化値を求めるためのシステムおよび方法を提供する。
【0010】
実施形態によると、システムおよび方法は、サンプルに隣接して配置された、少なくとも1つの電極、好ましくは複数の電極に電気力学場を生成するために提供され、それは、サンプル内の僅かな静電容量の変化が測定され得るように仮想接地に対して適切な自己静電容量を有する。種々の有機化合物および無機化合物の分解および形成によるサンプルの誘電率の変化が、仮想接地に対する電極の静電容量を変え、発生するサンプルの変化に対応する測定を提供するので、電極は、サンプルと直接接触した状態で配置される必要はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記および他の目的および利点は、以下の図面および詳細な説明を考慮することで明らかになるであろう。本発明の実施形態が添付の図面に示される。
【0012】
図面において、同様の番号は同様の要素を示すことが理解されるであろう。
【0013】
本発明の1つの実施形態においては、少なくとも1つの電極、好ましくは複数の電極を用いて電気力学場が生成され、それら電極は、典型的には増殖培地内の、細菌のような微生物を含み得る生体サンプルを含有するサンプルに隣接して配置され、かつ、僅かな変化が測定され得るように仮想接地に対して適切な自己容量を有する。種々の有機化合物および無機化合物の分解および形成によるサンプルの誘電率の変化が、仮想接地に対する電極の静電容量を変化させるので、電極は、サンプルと直接接触した状態で配置される必要がない。典型的には、全サンプルの誘電率が測定されるが、例えば、周囲部分のようなサンプルの部分を監視するように、電極を構成することが可能である。増殖培地における流体サンプルが一般的であるが、食品または組織のような固体サンプルもまた考えられる。
【0014】
図1に概略的に示される本発明の実施形態において、2つの導電性電極102および104を含む回路100が、絶縁性の増殖容器またはボトル106の周りに配置される。1つの態様においては、図2Aにおいて明確に示されているように、電極102、104は、互いに組み合わされた形式で構成される。電極102は、センサ電極として構成され得、電極104は、接地基準電極として構成され得る。フレキシブル回路100は、典型的には、容器またはボトル106の周りに巻き付けられるので、電極の表面領域は、内部の液体サンプル108に物理的に近接しており、そこでサンプル108の誘電率が微生物の増殖および代謝産物の放出と共に変化する。
【0015】
両電極102および104についての導電性シートは、回路インピーダンスを定量化するために正弦波を生成する差動交流信号生成装置110に接続される。図1の装置において、一方の電極に適用される信号は、他方の電極に適用される信号とは、180度だけ位相がずれている。当業者には既知の標準的な方法によって容易に定量化することができる相互静電容量を介して、電流を一方の電極から他方の電極に提供するように、信号の周波数が選択される。
【0016】
抵抗器112は、信号生成装置110とセンサ電極102との間に直列に電気的に結合され、そこで、電流は、電極102と104との間の静電容量に反比例する割合で、抵抗器112を通って変化する。そして、デジタル・マルチメータ(DMM)のような試験装置114を用いて、抵抗器112の両端の電圧値を測定することができる。
【0017】
上述したように、電流は、電極102と104との間の静電容量に反比例して抵抗器112を通って変化する。電極102と104との間の静電容量は、モデル回路116によって示され得、モデル回路116は、電極102と104との間、電極104と接地との間、および電極102と接地との間の自由空間の静電容量における変化を表している。当業者にとって既知のように、静電容量は、介在する材料(すなわち、ボトル116および内部のサンプル108)のサイズ、間隔、および誘電特性によって、電極と他の物体との間で変化する。
【0018】
図2Aは、本発明の実施形態による電極の構成を示す。図2Aにおいて、両手の指が組み合わされたような電極102および104が、マイラー膜またはケブラー膜のようなフレキシブル回路基板105上またはフレキシブル回路基板105内に提供される。幾つかの実施形態において、電極102および104には、各電極を信号生成装置110と電気的に結合させる手段を提供するための接触タブ101および103が設けられる。所望の静電容量値を確立するために、電極102と104との間に、任意の数の隙間または間隔を提供することができる。そして、図2Bに示されているように、培養バイアルまたはボトル106を取り囲むために、フレキシブル基板105が用いられ得る。一旦取り囲まれると、当業者には明らかなように、電磁場が確立される。
【0019】
ボトル106内のサンプル108の誘電率が変化するので、電極102と104との間の電流は、サンプル・ボトルの誘電率の変化に反比例する形で変化する。これは、選択された周波数における容量性リアクタンスの変化の結果である。例えば、サンプル108内の微生物が糖を代謝して溶解ガス、酵素、たんぱく質、および老廃物にするとき、誘電率が変化する。測定に影響を与える任意の数の可能な変数を評価することができ、これらは例として与えられるにすぎない。
【0020】
図3は、多数のボトル106をインキュベータ組立体302に挿入することができるシステムの実施形態を示す(便宜上、たった一つのボトル106のみが示されている)。この実施形態によると、各ボトル108は、例えば、上述のようなタイプのフレキシブル基板およびフレキシブル回路100の電極で囲まれる。次に、囲まれたバイアル106は、インキュベータ組立体302の各々のインキュベータ・ウェル300に嵌められ得る。各々のウェル300内には、フレキシブル回路100のフレキシブル基板に配置された各電極102および104の接触タブ101および103を受けるように、電気コネクタが設けられ得る(図示せず)。一旦配置されると、生物学的増殖培地における誘電率の変化といった、サンプルの変化を測定する方法が、ここに説明されるように実施され得る。
【0021】
本発明の方法の実施形態が、図4のフローチャートに示される。具体的には、各ボトル106にフレキシブル回路100が提供され、各ボトル106がインキュベータ組立体302内に配置されると、ユーザ要求がその内部の変化を検出するためになされ得、それは以下のステップ402乃至436において達成することができる。ステップ402でのボトル106内の代謝産物の変化を判断するための要求に基づいて、ステップ404において、本発明の実施形態が、電気力学場(e−場)センサ・セット(例えば、電極102および104)の走査を開始する。(図4において、「EF」は、電場の読み取り値を指し、「En」は、電極のセット数(ボトルごとに1セット)を指し示す。)この時点で、システムは、次に、ステップ406において、第1のボトルのe−場センサ・セット・データ(EF1)を記録し、その測定値にタイムスタンプを押す。その後、ステップ408において、システムは、次のe−場センサ・セット(En)に移動し、e−場センサ・セット・データを記録し、測定値にタイムスタンプを押す。システムは、e−場センサの各セットが測定され、記録されるまで、ステップ406および408を繰り返し続け、次に、全てのボトル106のe−場センサが測定されたとき、始めに戻る。
【0022】
ステップ406および408において、全てのセンサ・セットを完全に通し終えると、次に、システムは、ステップ410において、測定値を、それぞれ、特定のセンサ・セットについての記録内に格納する。ステップ412において、次に、システムは、各センサ・セットに関する連続的な記録を評価することができる。次に、ステップ416において、システムは、測定された値の変化を検出することができ、例えば、この例においては、電流の電場読み取り値がその前の3つの読み取り値の各々と比較して2%より大きい増加を示すかどうかを検出する。示さない場合には、システムは、ステップ418においてその情報を評価し、その前の5つの読み取り値と比較して10%より多い電場読み取り値の減少があるかどうかを判断する。ステップ416において増加がある場合には、システムは、次に、ステップ420においてその前の4つの電場読み取り値が、正の二次導関数を示すかどうかを判断する。
【0023】
ステップ420において、読み取り値が正の二次導関数を示さない場合には、システムは、ステップ422においてその情報を評価し、この前の4つの電場読み取り値が負の二次導関数を示すかどうかを判断する。ステップ420において正の二次導関数がある場合には、システムは、次に、ステップ424において、電流読み取り値の増加が以前の読み取りの値の90%より大きいかどうかを判断する。ステップ424において、電流読み取り値の増加が以前の読み取りの値の90%より大きい場合には、システムは、次に、ステップ426において、電極に対して陽性培養を示すと判断する。言い換えると、電流読み取り値が、以前の読み取り値の少なくとも90%またはそれより高い信号強度値を示す場合には、「陽性」と判定される。ステップ424において試験された読み取り値が以前の読み取り値の90%より少ない場合には、システムは、ステップ428に進み、走査されている電極に属する培養が、試験プロトコルによって確立された最短期間、試験されたかどうかを判断する。試験プロトコル期間が満たされている場合には、ステップ432において、システムは、陰性培養を示すと判断する。試験プロトコル期間が満たされていない場合には、ステップ402において、システムは、走査を再び始める。
【0024】
ステップ418に戻ると、ステップ418において、その前の5つの読み取り値と比較して10%より多い電場読み取り値の減少がある場合には、システムは、ステップ422に進む。減少がない場合には、システムは、ステップ428においてその情報を評価し、電極に属する培養が、プロトコルによって確立された最短期間、試験されたかどうかを判断する。期間が満足のいくものである場合には、ステップ432において、システムは、電極に対して陰性培養を示すかどうかを判断する。言い換えると、電流読み取り値が、以前の読み取り値からの信号強度の低下を示さない場合には、「陰性」と判定される。培養ボトルの液体内容物の誘電率の低下がないことは、代謝過程の変化が生じなかったことを示し得る。期間が満足のいくものでない場合には、システムは、ステップ412に戻る。
【0025】
ステップ422に戻ると、ステップ422において、その前の4つの電場読み取り値が負の二次導関数を示す場合には、システムは、ステップ426に進む。培養ボトルの液体内容物の誘電率の突然の急激な低下は、何らかの微生物の存在による代謝過程の変化を示し得る。例えば、グルコース代謝から異化代謝への変換である。示さない場合には、システムは、次に、ステップ428に進む。完了時に、システムは、ステップ434においてe−場センサの走査を停止し、ステップ436において待機モードに入る。
【0026】
例えば、特定のシステムまたは特定のサンプルのタイプのパラメータによって、当然のことながら、上述のプロセスの変形も可能である。
【実施例】
【0027】
BDのBACTEC(tm) Plus Aerobic/Fの培養ボトルが手に入れられた。図2Aに示されるタイプの単一のフレキシブル電極が組み立てられた。スズで被覆された銅の粘着テープが、互いに組み合わされたフィンガを形成するように予め切断され、0.127mm(0.005inch)の厚さのマイラー基板上に配置された。2つの電極への電気的接続が、フィンガから延びている2つのタブによって形成され、それらは電気回路基板に接続された。電極はボトルの上に、周囲を取り囲むように、配置された。
【0028】
自然発生の電場内の物体を感知するように設計された装置である、モトローラ33794電場イメージング装置(Motorola 33794 Electric Field Imaging Device)評価モジュールに、電極は取り付けられた。データは、33794装置のために特に設計されたLabView「仮想機器」アプリケーションを実行するパーソナル・コンピュータによって記録された。プログラムは、シリアル・データ接続を介して、デジタル信号を33794装置に定期的に送信し、33794装置の集積回路は、電極内の場の量を測定し、格納のためにこれをコンピュータに送信した。図5のプロットが、そのデータの表示である。図5は、大腸菌の増殖に基づいたボトル内の静電容量の変化を示し、マイクロファラッドで測定された静電容量を示す縦軸と、秒で時間を示す横軸とを有する。ポイント502において、0.1mlの大腸菌が、ボトル内に植え付けられた。約26分後、ポイント504において、電極によって測定された静電容量に上昇が示された。約55秒後のポイント506で、飽和が終了し、測定された静電容量の、ポイント508での値までの減少によって特徴付けられた。約4時間後、静電容量は、平衡ポイント510に戻った。サンプル内のこれらの僅かな静電容量の変化は、電極を介して測定され、発生するサンプルの変化に対応する測定値を提供する。
【0029】
上記に示されたボトルに加えて、本発明の実施形態に従って他のコンテナが使用され得る。図6の実施形態では、プレート605および607は、反対側に対の導電性電極602および604を含み、各対の電極は、マイクロタイター・ウェル606の上方および下方に配置される。図1において実質的に上述されたように、電極602は、センサ電極として構成され得、電極604は、接地基準電極として構成され得る。プレート605および607は、電極の表面領域がマイクロタイター・ウェル606に物理的に近接するように配置され、マクロタイター・ウェル606の誘電率は、ウェル内に配置されたサンプル内の、微生物の増殖および代謝産物の放出に関係して変化する。電極602および604の残りの機能および実装は、実質的に、上述のものと同じである。
【0030】
例えば食物や組織といった粘性サンプルや固体サンプルを用いるのに有用な本発明の実施形態が、図7に示される。この実施形態によると、コンテナは、サンプル628を囲むための使い捨て可能な圧縮プレート626で構成される。電極プレート622および624は、示されるように提供され得、それぞれタブ623および625を有する。導電性電極プレート622および624は、サンプル圧縮プレート626の上方および下方に配置される。図1に示されたような構成において、電極622は、センサ電極として構成され得、電極624は、接地基準電極として構成され得る。サンプル628の誘電率が微生物の増殖および代謝産物の放出に関係して変化するとき、サンプル628の誘電率の測定を可能にするべく、電極の表面領域がサンプル628に対して十分に近くにあるように、電極およびプレートは配置される。図7の実施形態の残りの機能および実装は、実質的に、上述のものと同じである。
【0031】
本発明の実施形態は、様々な培地充填密度、様々なバイアル幾何学的形状、コンテナ材料の透明性、コンテナ内容物における固体、液体、および半固体成分の混合、プラスチックであるかガラスであるかといったコンテナ材料の相違と関連した問題を解決することができる。システムの異なるコンポーネントに対するセンサの感度および選択性を判断するために、問い合わせ電極の設計がさらに用いられ得る。
【0032】
電気力学場の使用は、ボトル源、培地のタイプ、樹脂充填物、および人工物の影響(発泡体、磁気攪拌要素、沈降など)のばらつきと関連した測定の問題を実質的に回避する。例えば、発泡、攪拌要素の有無、血液の沈降、および培養容器内の血液の有無のような影響は、通常、電気力学場の変化に基づいた測定に影響を及ぼさない。同様に、コンテナ、容器、バイアル、またはボトルの底部は、完全に平坦である必要も、図1に示されるように陥凹している必要もない。
【0033】
本発明の実施形態は、感染症/抗生物質感受性試験、または、特定の微生物の分離株の同定および抗菌物質感受性試験のような、種々の生体感知の用途に適用することが可能である。別の用途は、食品および薬剤における有機体の汚染の検出である。
【0034】
本発明の実施形態は、さらに、元の反応物とは測定できる程度に異なる誘電率を有する化合物の形成をもたらす無機化学反応または有機化学反応の感知に適用することができる。様々な化学組成のために異なる培地のタイプにおいて生じる可変の最初の誘電率は、通常、正しい解釈アルゴリズムを適用するために、培地のタイプの予知を必要とする。
【0035】
また、本発明の実施形態は、コンテナ内の容積レベル、および、攪拌の程度を検出するために用いられ得る。例えば、充填容量は、60mlのコンテナについて1ml以内に見積もることができる(2%より小さいエラー)。したがって、増殖の検出に優る使用が可能である。
【0036】
本発明は、実質的に増大される感度のために、微生物の増殖を検出する他の方法より優れていると考えられる。例えば、微生物のストレスに続く増殖の回復は、本発明を用いて大腸菌および表皮ブドウ球菌に対して1時間以内に検出され得ることが示されている。
【0037】
増殖を検出する時間の低減に加えて、本発明は、現在の方法よりずっと低い濃度の有機体を検出できると考えられる。本発明の実施形態によって提供される付加的な利点は、測定値がボトルの外側から電気的に取得され得、よって、コンテナが光透過性であることを必要としない点である。
【0038】
本発明の特定の例示的な実施形態だけが上記に詳細に説明されたが、当業者であれば、本発明の新規の教示および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの変更が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、全てのこのような変更は、添付の特許請求の範囲およびその均等物において定義されるように、本発明の範囲内に含まれるように意図される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態の概略図である。
【図2A】本発明の実施形態によるフレキシブル回路を示す。
【図2B】本発明の実施形態によるフレキシブル回路を示す。
【図3】本発明の実施形態による非侵襲的な誘電感知装置である。
【図4A】本発明の実施形態による誘電感知方法についてのフローチャートである。
【図4B】本発明の実施形態による誘電感知方法についてのフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態による非侵襲的な誘電感知装置を用いて検出可能な静電容量の変化の例を示すグラフである。
【図6】本発明の別の実施形態を示す。
【図7】本発明の更に別の実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持するための容積を含むコンテナと、
前記コンテナと接触した状態で、または該コンテナに近接して配置された少なくとも1つの電極と、
電気力学場が前記容積の少なくとも一部を通じて形成されるように、前記少なくとも1つの電極を通る電流を方向づけることができる信号生成装置と、そして
前記電気力学場の値を測定することができる試験装置と、
を含む回路と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記コンテナは、円筒形であるか、または円筒形部分を含み、前記少なくとも1つの電極は、前記コンテナの周囲に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムが2つの電極を含み、前記2つの電極は、実質的に平坦であり、かつ、前記コンテナの反対側の側部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの電極は2つの互いに組み合わされた導電性要素を含み、該2つの互いに組み合わされた導電性要素の第1のものがセンサ電極であり、前記2つの互いに組み合わされた導電性要素の第2のものが接地基準電極であることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの電極は2つの導電性要素を含み、該2つの導電性要素の第1のものがセンサ電極であり、前記2つの互いに組み合わされた導電性要素の第2のものが接地基準電極であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記信号生成装置は、前記センサ電極および前記接地基準電極と接続され、前記信号生成装置は正弦波を生成し、前記センサ電極に適用される信号は、前記接地基準電極に適用される信号と180°位相がずれていることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの電極は、絶縁性フレキシブル基板に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
複数のコンテナと、該コンテナを収容するための、1つまたは複数のインキュベータ・ウェルを含むインキュベータ組立体と、そして前記少なくとも2つの電極の少なくとも一部とをさらに備え、前記インキュベータ・ウェルは、前記少なくとも1つの電極のための電気的接続を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コンテナは、増殖培地を含む血液培養ボトルであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記コンテナが試料を含み、該試料は、1つまたは複数の微生物を含むと疑われる生物学的試料であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、前記1つまたは複数の微生物の代謝過程によって引き起こされる前記試料の変化を監視できることを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記電気力学場の変化は、前記試料の誘電率の変化を示す静電容量の変化であることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
試料の変化を検出する方法であって、
1つまたは複数の微生物を含むと疑われる試料を含むコンテナを準備するステップと、
前記コンテナと接触した状態でまたは該コンテナに近接して、少なくとも1つの電極を準備するステップと、
前記少なくとも1つの電極を用いて、前記試料の少なくとも一部を通じて電気力学場を生成するステップと、そして
前記電気力学場の変化を検出するステップであって、前記変化は前記試料の誘電率の変化を示す静電容量の変化である、ステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記変化は、前記1つまたは複数の微生物の代謝過程によって引き起こされることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コンテナは、増殖培地および血液サンプルを含む血液培養ボトルであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記変化を検出するステップは、
電気力学場の値を測定し、時間および前記値を記録するステップと、
1回または複数回、前記測定して記録するステップを繰り返すステップと、そして
前記記録を評価するステップと、
を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
複数の前記コンテナを準備するステップと、該コンテナの各々について前記測定するステップ、前記記録するステップ、および前記繰り返すステップを行うステップをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記記録を評価するステップは、1組のクエリを前記記録に適用し、前記試料が微生物の増殖について陽性であるか、または陰性であるかを判断するステップを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの電極は、少なくとも2つの電極を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−525821(P2008−525821A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549517(P2007−549517)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/046873
【国際公開番号】WO2006/071800
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】