説明

微粉末食品の製法およびそれにより得られた微粉末食品

【課題】製造時や保存時の酸化・変色等による品質劣化を生じにくく、品質の安定した微粉末食品の製法およびそれにより得られた微粉末食品を提供する。
【解決手段】植物をブランチング処理または蒸気加熱処理する工程と、上記処理した植物に,抗酸化剤水溶液による浸漬および噴霧の少なくとも一方の処理を行う工程と、上記抗酸化剤水溶液による処理をした植物を乾燥処理する工程と、上記乾燥処理した植物を微粉砕する工程とを備えている微粉末食品の製法とする。そして、この製法によって形成される微粉末食品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜,茶葉等の植物を原材料とする微粉末食品の製法およびそれにより得られた微粉末食品に関するものであり、詳しくは、スープ、インスタント食品、調味食品などの各種飲食品において使用できる微粉末食品の製法およびそれにより得られた微粉末食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バランスの良い食生活を送るためには、一日30品目程度の食材を摂取することが必要とされている。しかしながら、現代人の食生活は、外食産業の発達やインスタント食品の普及等にともない手軽さや嗜好性に重点が置かれる傾向にあるため、偏りやすく、その結果、バランスの良い食生活を送れていない人が多いのが現状である。このような偏食傾向にある食生活において、特に注意すべき問題として、野菜の摂取不足があげられる。すなわち、野菜の摂取不足は、ビタミンや食物繊維等の摂取不足につながることから、人体の機能障害、免疫力低下等の要因となるおそれがあるからである。一方、野菜ではないが、例えば緑茶等は、抽出して喫するだけではなく、最近では食べるお茶として粉末茶も人気があり、口当りの良いものが求められている。
【0003】
そのようななか、近年において、野菜等の植物を原材料とし、これを乾燥および粉砕してなる微粉末食品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、微粉末状であることから、あらゆる飲食品への添加が容易であり、また、野菜等の植物の摂取不足を解決するのに有効であるため、近年注目されている。さらに、微粉末状であることから、その原材料である植物の香味や色素を飲食品に付与する際にも有効であり、しかも、口当たりを損なうこともないといった利点も有する。そして、この微粉末食品は水分を殆ど有しないため、保存性にも優れ、同時に、嵩が低くなることから摂取等の点でも利点を有する。
【特許文献1】特開平9−187231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の製法をはじめとする従来の製法では、それにより得られた微粉末食品が、その保存に際し、酸化や変色を受けやすいといった品質上の問題を抱えていた。すなわち、粉末化は、最近ではミクロン単位まで微粉砕されるようになってきたが、微粉砕化されるほど、その微粉末粒子の表面積(空気との接触面積)が大きくなるため、これに起因し、酸化や変色が起り易くなるのである。また、上記特許文献1に記載の製法では、植物本来の有する栄養分(ビタミン類等)の欠損率が高いといった問題がみられることから、これらのことを解消すべく、何らかの解決手段が求められている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、製造時や保存時の酸化・変色等による品質劣化を生じにくく、品質の安定した微粉末食品の製法およびそれにより得られた微粉末食品の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、植物をブランチング処理または蒸気加熱処理する工程と、上記処理した植物に,抗酸化剤水溶液による浸漬および噴霧の少なくとも一方の処理を行う工程と、上記抗酸化剤水溶液による処理をした植物を乾燥処理する工程と、上記乾燥処理した植物を微粉砕する工程とを備えている微粉末食品の製法を第1の要旨とし、この製法によって形成される微粉末食品を第2の要旨とする。
【0007】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、野菜等の植物をブランチング処理または蒸気加熱処理した後、その植物に、抗酸化剤水溶液による浸漬処理や噴霧処理をし、植物に抗酸化剤を充分含浸させ、それを乾燥すると、従来に見られたような酸化や変色が生じにくくなるとの知見を得た。これは、上記ブランチング処理または蒸気加熱処理により、植物に含まれる酵素(パーオキシダーゼ)が不活性化されるため、変色等が抑えられ、また、抗酸化剤による酸化防止作用により、酸化の進行が抑えられるためと考えられる。そして、本発明者らが、このような処理を施した植物を微粉砕したところ、得られた物は、酸化や変色が抑えられると同時に、従来品に見られたような栄養分の欠損も抑えられるようになることを突き止めた。これは、先の抗酸化剤水溶液による処理により、乾燥時の熱や微粉砕時の摩擦熱による変性を防ぐことができ、同時に、栄養分の減少等も防ぐことができたためと考えられる。これらのことから、本発明の製法により、植物本来の栄養分を殆ど損なうことなく、しかも、酸化や変色を生じにくい、安定した品質の微粉末食品が、効率的に得られることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の微粉末食品の製法は、植物をブランチング処理または蒸気加熱処理した後に、その植物に、抗酸化剤水溶液による浸漬および噴霧の少なくとも一方の処理を行い、さらにこれを乾燥処理した後、微粉砕(パウダー化)することにより行うものである。このように、ブランチング処理等した植物を、乾燥処理前に抗酸化剤水溶液により処理していることから、これを粉砕し得られる微粉末食品は、その製造工程に起因する酸化や変色を殆ど受けておらず、さらに、保存時の酸化や変色も受けにくく、その結果、色が鮮やかな高品質のパウダーに製造することができる。そして、このようにして得られた微粉末食品は、色彩以外にも、栄養面にも優れており、植物本来の栄養分が殆ど損なわれることなく含まれている。したがって、この微粉末食品を、あらゆる飲食品に対し添加したり、複数種の粉末を組合わせて摂食することにより、不足しがちな野菜等の植物の摂取が容易となる。
【0009】
特に、上記微粉砕工程が、気流式粉砕機により粒径が20μm以下になるまで微粉砕することにより行われ、その後、得られた微粉末から粒径5μm未満のものを分級除去し、平均粒径が5〜20μmの範囲となるよう整粒すると、より酸化や変色のない、安定した品質の微粉末食品を得ることができる。
【0010】
また、上記分級除去が、強制気流式分級機により行われ、粒径5μm未満の粒子の割合が、微粉末食品全量の5重量%以下になるまで行われると、微粉末全体が白っぽくなるといった品質の低下を生じず、より色が鮮やかな高品質のパウダーに製造することができる。
【0011】
さらに、上記ブランチング処理が、90〜100℃の熱湯による0.5〜7分間の加熱処理であると、植物に含まれる酵素の不活性化、および、植物からの灰汁の除去が好適になされるようになる。
【0012】
また、上記蒸気加熱処理が、95〜100℃の温度で20〜60秒間の蒸気加熱処理であると、微粉末食品の栄養素の損失割合をより低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0014】
本発明の微粉末食品の製法は、先にも述べたように、植物をブランチング処理または蒸気加熱処理した後に、その植物に、抗酸化剤水溶液による浸漬および噴霧の少なくとも一方の処理を行い、さらにこれを乾燥処理した後、微粉砕することにより行うものである。
【0015】
原材料である植物としては、特に限定されるものではなく、例えば、小松菜,ほうれん草,白菜,キャベツ,高菜,大根菜,ケール,ゴーヤー等の葉菜類、人参,ごぼう,れんこん等の根菜類、カボチャ,トマト,キュウリ,ナス等の果菜類、ワラビ,ツクシ,キノコ等の山菜類、カリフラワー,ブロッコリー等の花菜類、緑茶等の茶類、ハーブといったものがあげられる。なかでも、人参は、その色素成分であるβ−カロチンが酸化されやすい傾向にあることから、従来の手法に従い微粉末化すると、変色が顕著にみられたが、本発明の製法により、このような問題が解消されるようになる。
【0016】
上記植物は、通常、水で洗浄し、適当な大きさにカットした後、ブランチング処理(浸漬加熱処理)または蒸気加熱処理される。上記ブランチング処理の手法は、特に限定されるものではないが、90〜100℃の熱湯による0.5〜7分間の加熱処理であると、植物に含まれる酵素の不活性化により、色の鮮やかさが向上し、さらに、植物からの灰汁の除去が好適になされるようになるため、好ましい。また、ブランチング処理が適当でない植物(例えば、緑茶等の茶類)は、蒸気加熱処理がなされる。この処理は、例えば、蒸籠等で蒸すことにより行っても良いし、または、加圧釜で加圧蒸気により蒸煮することにより行っても良い。そして、上記の蒸気加熱処理は、特に、95〜100℃の温度で20〜60秒間の蒸気加熱処理であると、微粉末食品の栄養素の損失割合を低く抑えることができ、好ましい。
【0017】
上記ブランチング処理または蒸気加熱処理を行った後、その植物に対し、抗酸化剤水溶液による浸漬および噴霧の少なくとも一方の処理を行う。この処理は、上記ブランチング処理等で加熱状態にある植物に対し、そのまま行っても良いが、上記ブランチング処理等したものを、例えば、井戸水を潜らせたり散布したりして一端冷ました後に、行ってもよい。上記抗酸化剤水溶液による浸漬処理は、通常、5〜40℃の液温で5〜15分間行われる。すなわち、このような処理条件で、植物に抗酸化剤を充分含浸させることができるからである。なお、上記抗酸化剤水溶液による処理は、通常、上記のような浸漬処理により行われるが、例えば緑茶等の茶類のように、その成分の溶出が著しいもの等に関しては、抗酸化剤水溶液の噴霧処理により行われる。上記浸漬処理および噴霧処理は、併用しておこなってもよい。そして、これらの処理に用いる抗酸化剤水溶液の濃度は、特に限定はないが、0.01〜1重量%の範囲に設定されると、本発明の効果が有効に得られるようになり、好ましい。より好ましくは、その濃度が0.05〜0.2重量%の範囲内である。
【0018】
上記抗酸化剤水溶液としては、特に限定されるものではないが、好適なものとして、具体的には、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、コーヒー豆抽出物(生または焙煎されたコーヒー豆の抽出物)、フラボノイドおよびカテキンの水溶液があげられる。これら抗酸化剤水溶液は、単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0019】
上記抗酸化剤水溶液による処理を行った後、その植物を、乾燥処理する。上記乾燥処理は、特に限定されるものではないが、植物本来の有する栄養分(ビタミン類等)の欠損率を少なくするため、40〜70℃の温風乾燥や、凍結乾燥により、含水量が10重量%以下となるまで行うことが好ましい。上記温風乾燥には、通常、気流式乾燥機等の従来公知の乾燥機が用いられる。
【0020】
続いて、このように乾燥された植物を、微粉砕する。具体的には、パワーミルなどの公知の方法で粒径1〜2mm程度に粗粉砕した後、振動ミル,ボールミル,フェザーミル,ハンマーミル,凍結粉砕機,気流式粉砕機等によって微粉砕(粒径20μm以下に微粉砕)を行う。なかでも、粉砕時の発熱が少なく、しかも、粒子のサイズを調整しやすく、高品質な微粉末食品が得られるといった点で、ジェット気流式粉砕機(衝突型)による微粉砕が好ましい。なお、この気流式粉砕に使用する気体は、通常は空気があるが、品質維持の点において、窒素ガスなどの不活性ガスを利用すると、好ましい。
【0021】
ところで、上記微粉砕の過程で、あまりにも細かい超微紛が混在すると、その超微紛が他の粒子よりも表面積が大きく、酸化・変色しやすいといった問題が生じる。また、このような超微紛が多いと、微粉末全体が白っぽくなり、品質の安定化を阻害するおそれもある。そのため、単に微粉砕するだけでなく、以下のようにして超微紛の分級除去と組合わせて、目的とする微粉末食品を製造することが好ましい。その具体的な方法としては、上記微粉砕工程を、気流式粉砕機により粒径が20μm以下になるまで微粉砕することにより行い、その後、得られた微粉末から粒径5μm未満のものを分級除去し、平均粒径が5〜20μmの範囲となるよう整粒するのが好ましい。すなわち、このような条件で微粉砕および分級除去すると、より酸化や変色のない、安定した品質の微粉末食品を得ることができるようになる。また、上記分級除去を、強制気流式分級機により行い、粒径5μm未満の粒子の割合が、微粉末食品全量の5重量%以下になるまで行うと、製造時の品質劣化が一層抑えられるとともに、微粉末全体が白っぽくなるといった品質の低下が効果的に解消されるようになり、好ましい。
【0022】
そして、このような工程により得られた本発明の微粉末食品は、色が鮮やかで、保存性、栄養価等の品質に優れるとともに、その平均粒径が5〜20μmと非常に細かいことから、他の食品材料と混合しやすいといった利点も有する。また、微粉末状であることから、消化吸収等の点で良好であり、特に、野菜の摂取が難しい人(老人、子供、病人等)にとって有用な食品となり得る。さらに、この微粉末食品を、あらゆる飲食品中に添加したり、複数種の粉末を組合わせて摂食することにより、野菜等の植物の摂取不足が容易に解消されるようになる。
【0023】
なお、上記微粉末食品の使用用途としては、特に限定はないが、具体的には、スープ,インスタント食品,パン,菓子,ふりかけ,食肉水産加工品,ジュース,清涼飲料,茶等の一般的な飲食品をはじめ、健康食品や、スパイス,ドレッシング等の調味食品等があげられる。
【0024】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例1】
【0025】
市販の西洋人参10kgを、水で洗浄し、2〜3mm幅に千切りした。ついで、これを、95℃の熱湯に5分間浸漬してブランチング処理を行った。つぎに、このブランチング処理を行った人参を湯切りし、これを直ちに、濃度0.1重量%のアスコルビン酸ナトリウム水溶液(液温:約30℃)100リットル中にて、10分間浸漬処理した。この浸漬処理の後、人参を取り出し、気流式乾燥機(LC−284型、タバイエスペック社製)により温風乾燥(60℃の温風による18時間の乾燥処理)を行った。そして、上記温風乾燥により、その水分含量を6.8%にまで乾燥させた後、このものを、ジェット気流式粉砕機(ジェットオーマイザー304型、セイシン社製)によって、供給エア圧力0.6MPa,原料投入速度15kg/hで平均粒径11.0μmになるまで粉砕した。これを更に、強制気流式分級機(ターボプレックス50ATP型、ホソカワミクロン社製)で処理し、5μm以下の超微粒子を除去して、目的とする微粉末食品(平均粒径11.8μmの人参パウダー)を得た。
【実施例2】
【0026】
アスコルビン酸ナトリウムに代えて、アスコルビン酸を使用し、抗酸化剤水溶液を調製した。そして、この抗酸化剤水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にし、目的とする微粉末食品を得た。この最終生成物(微粉末食品)の平均粒径は11.0μmであった。
【実施例3】
【0027】
アスコルビン酸ナトリウムに代えて、エリソルビン酸ナトリウムを使用し、抗酸化剤水溶液を調製した。そして、この抗酸化剤水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にし、目的とする微粉末食品を得た。この最終生成物(微粉末食品)の平均粒径は10.7μmであった。
【実施例4】
【0028】
ジェット気流式粉砕機に代えて、日清エンジニアリング社製の気流式粉砕機(カレントジェットミルCJ−10型)を使用した。そして、このこと以外は、実施例1と同様にし、目的とする微粉末食品を得た。この最終生成物(微粉末食品)の平均粒径は12.1μmであった。
【実施例5】
【0029】
ジェット気流式粉砕機に代えて、日本ニューマティック工業社製の気流式粉砕機(PMJ−380)を使用した。そして、このこと以外は、実施例1と同様にし、目的とする微粉末食品を得た。この最終生成物(微粉末食品)の平均粒径は11.5μmであった。
【実施例6】
【0030】
乾燥物の粉砕処理を、ピンミル粉砕機(ファインインパクトミル、ホソカワミクロン社製)で行い、かつ、分級処理は行わなかった。それ以外は、実施例1と同様にして、目的とする微粉末食品(平均粒径34μmの人参パウダー)を得た。
【実施例7】
【0031】
乾燥物の粉砕処理を、マイクロパルペライザー粉砕機(ホソカワミクロン社製)で行い、かつ、分級処理は行わなかった。それ以外は、実施例1と同様にして、目的とする微粉末食品(平均粒径43μmの人参パウダー)を得た。
【実施例8】
【0032】
市販のほうれん草10kgを、水で洗浄し、50〜70mm幅にカットした。ついで、これを、95℃の熱湯に3分間浸漬してブランチング処理を行った。つぎに、このブランチング処理を行ったほうれん草を湯切りした後、井戸水(約15℃)を散布し、ついで、濃度0.1重量%のアスコルビン酸ナトリウム水溶液(液温:約30℃)100リットル中にて、10分間浸漬処理した。この浸漬処理の後、ほうれん草を取り出し、気流式乾燥機(LC−284型、タバイエスペック社製)により温風乾燥(60℃の温風による16時間の乾燥処理)を行った。そして、上記温風乾燥により、その水分含量を5.4%にまで乾燥させた後、このものを、ジェット気流式粉砕機(ジェットオーマイザー304型、セイシン社製)によって、供給エア圧力0.6MPa,原料投入速度15kg/hで平均粒径11.0μmになるまで粉砕した。このようにして、目的とする微粉末食品(ほうれん草パウダー)を得た。
【実施例9】
【0033】
市販のカボチャ8kgを、水で洗浄し、皮を剥き種を抜いた後、3mm厚にスライスした。ついで、このスライスしたカボチャを、100℃の熱湯に10分間浸漬してブランチング処理を行った。つぎに、このブランチング処理を行ったカボチャを湯切りし、これを直ちに、濃度0.2重量%のエリソルビン酸ナトリウム水溶液(液温:約30℃)100リットル中にて、15分間浸漬処理した。この浸漬処理の後、カボチャを取り出し、水切りを充分に行い、それを、−35℃で急速凍結し、さらに凍結乾燥機(東京理化機械社製のFD−1型)で乾燥して、乾燥カボチャ(水分含量6.2%)を得た。そして、このものを、ジェット気流式粉砕機(ジェットオーマイザー304型、セイシン社製)によって、供給エア圧力0.6MPa,原料投入速度15kg/hで平均粒径10.4μmになるまで粉砕した。このようにして、目的とする微粉末食品(カボチャパウダー)を得た。
【実施例10】
【0034】
生の茶葉5kgを、蒸籠を利用し、100℃の温度で30秒間の蒸気加熱処理を行った。つぎに、この蒸気加熱処理を行った茶葉に、直ちに、濃度0.1重量%のアスコルビン酸ナトリウム水溶液(液温:約30℃)を満遍なく噴霧した。その後、茶葉をローリング(揉捻)して乾燥し、水分含量3.8%の乾燥茶葉を得た。そして、このものを、フェザーミルにより数ミリに裁断した後、ジェット気流式粉砕機(ジェットオーマイザー304型、セイシン社製)によって、供給エア圧力0.6MPa,原料投入速度15kg/hで平均粒径8.7μmになるまで粉砕した。このようにして、目的とする微粉末食品(緑茶パウダー)を得た。
【0035】
〔比較例1〕
アスコルビン酸ナトリウム水溶液(抗酸化剤水溶液)への浸漬処理を行わなかった。それ以外は、実施例1と同様にして、微粉末食品(人参パウダー)を作製した。
【0036】
〔比較例2〕
アスコルビン酸ナトリウム水溶液(抗酸化剤水溶液)への浸漬処理を行わなかった。それ以外は、実施例8と同様にして、微粉末食品(ほうれん草パウダー)を作製した。
【0037】
〔比較例3〕
エリソルビン酸ナトリウム水溶液(抗酸化剤水溶液)への浸漬処理を行わなかった。それ以外は、実施例9と同様にして、微粉末食品(カボチャパウダー)を作製した。
【0038】
〔比較例4〕
アスコルビン酸ナトリウム水溶液(抗酸化剤水溶液)の噴霧処理を行わなかった。それ以外は、実施例10と同様にして、微粉末食品(緑茶パウダー)を作製した。
【0039】
このようにして得られた実施例品および比較例品の微粉末食品に対して、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表1に示した。
【0040】
〔β−カロチン含量〕
所定の溶離液(酢酸エチル:ヘキサン:酢酸=5:4:1)を用い、高速液体クロマトグラフ(HPLC)(シリカゲルカラム)により、得られた微粉末食品のβ−カロチン含量(μg/100g)を測定した。なお、表において、「初期値」とは、粉砕直後の微粉末食品のβ−カロチン含量を示すものであり、「保存試験後」とは、得られた微粉末食品を、温度50℃、湿度90%、照明なしで12週間の保存を行ったものである。
【0041】
〔色差〕
分光測色器(CM−3600D、ミノルタ社製)により微粉末食品の色度を測定し、その初期値(粉砕直後の微粉末食品の色度)と、保存試験後(温度50℃、湿度90%、照明なしで12週間の保存を行った後の微粉末食品の色度)との色差(ΔE)を測定した。
【0042】
【表1】

【0043】
上記結果から、実施例品は、β−カロチン含量が多く、色が鮮やかで栄養価に優れ、また、色差が小さいことから、保存による品質劣化が少ないことがわかる。なかでも、実施例1〜5品や、実施例8〜10品は、気流式粉砕機により粉砕を行っているため、粉砕時の発熱による劣化が生じず、より高品質の微粉末食品が得られた。さらに、強制気流式分級機による分級処理を行った実施例では、それを行わなかった場合よりも鮮やかな色彩の微粉末食品を得ることができた。これに対し、比較例品は、β−カロチン含量が少なく、また、保存による色差も大きいことから、品質劣化しやすいことがわかる(実施例1〜7品に対する比較例1品、実施例8品に対する比較例2品、実施例9品に対する比較例3品、実施例10品に対する比較例4品)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物をブランチング処理または蒸気加熱処理する工程と、上記処理した植物に,抗酸化剤水溶液による浸漬および噴霧の少なくとも一方の処理を行う工程と、上記抗酸化剤水溶液による処理をした植物を乾燥処理する工程と、上記乾燥処理した植物を微粉砕する工程とを備えていることを特徴とする微粉末食品の製法。
【請求項2】
上記微粉砕工程が、気流式粉砕機により粒径が20μm以下になるまで微粉砕することにより行われ、その後、得られた微粉末から粒径5μm未満のものを分級除去し、平均粒径が5〜20μmの範囲となるよう整粒する請求項1記載の微粉末食品の製法。
【請求項3】
上記分級除去が、強制気流式分級機により行われ、粒径5μm未満の粒子の割合が、微粉末食品全量の5重量%以下になるまで行われる請求項2記載の微粉末食品の製法。
【請求項4】
上記抗酸化剤水溶液が、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、コーヒー豆抽出物、フラボノイドおよびカテキンからなる群から選ばれた少なくとも一つの水溶液である請求項1〜3のいずれか一項に記載の微粉末食品の製法。
【請求項5】
上記ブランチング処理が、90〜100℃の熱湯による0.5〜7分間の加熱処理である請求項1〜4のいずれか一項に記載の微粉末食品の製法。
【請求項6】
上記蒸気加熱処理が、95〜100℃の温度で20〜60秒間の蒸気加熱処理である請求項1〜4のいずれか一項に記載の微粉末食品の製法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の微粉末食品の製法によって形成されることを特徴とする微粉末食品。

【公開番号】特開2006−20535(P2006−20535A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199555(P2004−199555)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(504005035)三笠産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】