説明

微粉砕ビニルラクタムポリマーを基材とする、高強度錠剤用結合剤、ならびにその製造および使用

【課題】錠剤製造時に有用な粉末形態の微粉砕結合剤、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ビニルラクタムポリマーからなる粉末形態の微粉砕結合剤であって、平均粒度が35μm以下で、見かけ密度が0.2g/ml以下である、上記結合剤。その製造方法は、1〜35重量%の固形分を含むビニルラクタムポリマーの水溶液を、8MPa以上の圧力下で単一液体ノズルを用いて、または0.2MPa以上の圧力下で二液体ノズルを用いて、噴霧した後、熱気流で乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末形態の微粉砕ビニルラクタムポリマーを基材とする結合剤であって、平均粒度が35μm以下で、見かけ密度が0.2g/ml以下である、上記結合剤に関する。この結合剤は、壁厚が<3μmの中空球体またはそのような中空球体部分の形態をしているのが好ましく、その際、中空球体の直径の壁厚に対する比は>10である。本発明はさらに、このような結合剤粒子を製造する方法、ならびに、高い強度の錠剤を製造するための上記結合剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
結合剤は、通常、圧縮および脆砕性に対する抵抗を高める目的で、圧縮投与形態の製造に用いられる。錠剤の製造には一般に2つの方法:湿式造粒と直接タブレット成形が存在する。結合剤は、これらの用途に応じて液状結合剤とドライバインダーに分類される。ドライバインダーの使用は、その名が示すように、乾燥した形態で実施する。すなわち、溶剤への溶解を行なわない。直接タブレット成形は、個々の成分を単に混合するだけでよいため、当然こちらの方が費用有効的方法であるが、効率的なドライバインダーを入手できないために開発は失敗することが多い。錠剤に使用されている医薬物質、さらにまたその他多種の物質は往々にしてタブレット成形性が劣るが、これは特に、圧縮段階でこれら材料の固体粒子間に結合を全く生成することができない、もしくは材料の弾性が高すぎて、結合が弾性緩和により破壊されるためであると考えられる。もちろん、錠剤に高比率の結合剤を含有させることによりこれを補償することは原則として可能である。しかし、そのために錠剤の質量および体積が増大し、嚥下するのが極めて困難になることから、これは好ましくない。加えて、高比率の結合剤は活性成分の崩壊時間および溶解を長引かせる。従って、直接タブレット成形によって多くの医薬物質を製剤化することができない。
【0003】
ドライバインダーの効果はロール圧縮においても重要である。なぜなら、この場合も、錠剤成分の粒子間に強い凝集を生成することが必要だからである。そうならなければ、ロール圧縮の結果が機械的に不安定であり、粉砕時にまた元の粒度にまで崩壊し、流動性に乏しく、続くタブレット成形における圧縮および脆砕性に対する抵抗が不十分となる。
【0004】
現在のところ、これらの問題を解決するのに十分な結合剤特性を備えるドライバインダーで入手できるものは存在しない。
【0005】
よく用いられている通常の結合剤の例としてビニルラクタムポリマーが挙げられる。ビニルラクタムポリマーは市販のものが入手可能であり、例えば、Kollidon(登録商標)(BASF Aktiengesellschaft)およびPlasdone(登録商標)(International Speciality Products Inc.)の商品名で市販されている。これら製品の平均粒度は50〜250μmの範囲にある。粒子は、壁厚が厚いか、または不規則な構造をしており、比較的高い見かけ密度を有する(参照:V. Buhler in “Polyvinylpyrrolidone Excipients for Pharmacerticals”, pp.18-20および186-188, Springer-Verlag Berlin Hedelberg, 2005)。
【0006】
欧州特許出願第545209号は、水性分散液の噴霧により得られる、粉末形態の不水溶性ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーの調製を開示している。
【0007】
欧州特許出願第714 919号は、噴霧乾燥による粉末形態のビニルピロリドン/過酸化水素複合体の調製を開示しており、ここで、噴霧乾燥は比較的低圧で行なう。
【0008】
欧州特許出願第1 437 375号は、回転ディスクを用いた噴霧化により得られる、見かけ密度の高い粉末形態のビニルピロリドンポリマーを開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、極めて安定した錠剤を製造するために、改善された結合剤特性を有するポリビニルラクタムを基材とする結合剤をみいだすことであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、これが、1〜35μmの平均粒度を有する粉末形態の微粉砕(finely divided)ビニルラクタムポリマーを基材とする結合剤(binder)により達成されることをみいだした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
これらの結合剤は、中空球体または中空球体部分の形態をしているのが好ましく、その際、上記中空球体の壁厚は3μm以下であり、中空球体の直径と壁厚の比は10:1以上である。
【0012】
平均粒度を決定するのに用いる方法は、光の回析から導き出されるD(4,3)値である。粒度は35μm以下で、好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下、平均粒度の下限は2μmである。
【0013】
中空球体またはその部分もしくは断片の壁厚は、好ましくは3.0μm以下、特に2.5μm以下、特に好ましくは2.0μm以下で、その下限は0.05μmであり、中空球体の直径と壁厚の比は10:1以上、好ましくは12:1以上、特に好ましくは15:1以上である。
【0014】
見かけ密度(apparent density)は通常0.2g/ml以下、特に0.05〜0.18g/mlである。見かけ密度はPharm. Eur. 2.9.15に従い決定する。
【0015】
BET表面積は通常、1g当たり1m2以上で、50 m2 /g以下と考えられる。
【0016】
本発明のポリビニルラクタムとは、水溶性ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、ブロックポリマーもしくはグラフトコポリマーを意味する。これらのポリマーは、ラクタム構造を有する以下のモノマーと同様に、N-ビニルピロリドンまたはN-ビニルカプロラクタムもしくはこれらの混合物を含む。
【0017】
別の好適なコモノマーとして、飽和C1−C20カルボン酸のビニルエステルがあり、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニルが挙げられる。
【0018】
ビニルピロリドンおよび酢酸ビニルの水溶性コポリマーが特に好ましく、また、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの比は60:40〜80:20が極めて好ましく、特に、K値が25〜30で、6:4重量比のN-ビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマーが好ましい。
【0019】
また、N-ビニルピロリドンのホモポリマーも好ましい。
【0020】
ポリマーの分子量の測度であるフィッケンチャーのK値は、10〜120、好ましくは12〜90、特に好ましくは15〜60である。
【0021】
本発明の好ましい結合剤は、100重量%のポリビニルラクタムポリマーからなるものである。しかし、所望の場合には、別の物質を添加してもよい。
【0022】
従って、可塑化物質を添加して、結合剤の可塑性を高めることもできる。使用することができる可塑化物質は、典型的可塑剤、例えば、クエン酸トリエチエル、トリアセチン、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコールおよび同様の周知の物質である。本発明の結合剤におけるこれら物質の比率は0〜20重量%、好ましくは10重量%以下である。
【0023】
本発明の結合剤は、ビニルラクタムポリマー以外に、界面活性物質も含む。界面活性物質は、界面での界面張力を低減する物質である。本発明に従い用いられる界面活性物質は、界面活性剤、特に、10を超えるHLB(HLB=hydrophilic-lipophilic balance)を有する界面活性剤である。好適な界面活性剤の一覧がFiedler, Lexikon der Hilfsstoffe, Editio Cantor Verlag Aulendorf, 第5版、pp. 117-121に記載されている。好適な界面活性剤の例として、脂肪酸の塩、例えば、ドデシル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムもしくはパルミン酸ナトリウム、ならびに、硫酸アルキルの塩、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。また、ポリエトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ポリソルベート20またはエトキシル化12-ヒドロキシステアリン酸またはポリグリセロール脂肪酸エステルも好適である。ヒマシ油または水素化ヒマシ油のエトキシル化誘導体も適しており、例えば、35モルのエチレンオキシドとヒマシ油、または40 mlのエチレンオキシドと水素化ヒマシ油の反応から得られた生成物が挙げられる。このような界面活性剤は、0〜20重量%、好ましくは10重量%以下の量使用することができる。
【0024】
噴霧乾燥方法が本発明の結合剤を製造するのに適しており、これにより、ノズルを用いてビニルラクタムポリマーの溶液を微細に噴霧した後、熱気流の下で乾燥させる。水溶液を処理するのが好ましい。
【0025】
噴霧には、単一液体ノズルまたは多液体ノズルを用いることができる。特に好適な多液体ノズルは二液体ノズル(dual fluid nozzles)である。液体微粒子を達成し、乾燥した粒子が互いに接着しないことが重要である。
【0026】
特定タイプのノズルの場合、高圧で噴霧を実施する。単一液体ノズルによる噴霧では、0.1〜3mm、好ましくは0.2〜1mm、特に好ましくは0.4〜0.8 mmのノズル直径が適していることがわかっており、8Mpa以上、好ましくは12 Mpa以上、極めて好ましくは16 Mpa以上の圧力が適切であることが証明されている。単一液体ノズルの場合の噴霧圧力は25 Mpa以下でよい。二液体ノズルによる噴霧では、0.6〜10 mm、好ましくは0.8〜3mm、特に好ましくは1〜3mmのノズル直径(液体側)が適していることがわかっており、0.2 Mpa以上、特に好ましくは0.4 Mpa以上、極めて好ましくは0.6 Mpa以上の圧力が適切であることが証明されている。噴霧ガスの圧力は1Mpa以下でよい。好適な噴霧ガスは乾燥に用いるのと同じガスである。
【0027】
噴霧しようとする溶液の固形分濃度は、1〜35重量%、好ましくは3〜25重量%、特に5〜15重量%である。
【0028】
好ましい実施形態では、噴霧溶液を40〜180℃に予熱する。
【0029】
噴霧は、通常設計の噴霧塔で実施することができる。用いることができる乾燥ガスは、空気または、窒素、アルゴンもしくはヘリウムのような不活性ガスであり、このようなガスを液体微粒子に対し並流または向流で乾燥塔に通過させる。乾燥ガスは並流で用いるのが好ましい。乾燥ガスの塔入口温度は80〜250℃、好ましくは100〜200℃である。塔入口温度は40〜130℃、好ましくは50〜110℃である。
【0030】
溶剤の蒸発は、大気圧下、ならびに、これよりやや高いまたは低い(±0.01 MPa)圧力下で実施することができる。こうして得られた粉末は、例えば、サイクロンまたはフィルターを介してガス流から回収することができる。
【0031】
驚くことに、ビニルラクタムポリマーを基材とする結合剤で、特定の粒子形状をしたものは、大幅に改善された結合剤活性を有することがわかっている。
【0032】
図面に、本発明の粒子(I)と従来技術の粒子(市販の製品;II:Kollidon VA 64; III:Plasdone S 630)を概略的に示す。
【0033】
所望であれば、本発明の結合剤の粒度をさらに小さくするために、通常のミル、例えば、エアジェットミル、ピン留めディスクミルを用いて、このように噴霧した結合剤を粉砕することも可能である。粉砕により、平均粒度を例えば1〜20μmの値に調節することができる。
【0034】
本発明の結合剤は、製剤の他の成分と混合した後、錠剤または圧縮粉に圧縮することにより通常用いる。これに関して決定的な点は、ドライバインダーが混合物中に均一に分布していることである。具体的実施形態では、混合後、水、蒸気もしくは有機溶剤を添加し、これにより微小粒子を部分的に溶解させ、高い強度の錠剤または圧縮粉を達成することも可能である。
【0035】
錠剤は通常タブレット成形機で製造し、圧縮粉はロール圧縮機で製造する。さらに加工するために、圧縮粉を再び顆粒に粉砕し、この顆粒をさらに別の添加剤と混合した後、例えば、圧縮して錠剤にすることができる。ロール圧縮の工程は乾式造粒とも呼ばれる。
【0036】
錠剤への圧縮は800 Mpa以下の圧縮力下で実施することができる。
【0037】
本発明の結合剤を用いて得られる錠剤は、高い強度を有する。この強度は40〜600 Nである。
【0038】
製剤におけるドライバインダーの比率は、0.5〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは2〜12重量%とすべきである。本発明のドライバインダーは、極めて優れた結合性を有するため、圧縮しにくい活性成分および賦形剤の圧縮も(特にそれらが高濃度で存在する場合)可能にする。
【0039】
本発明の結合剤自体は、微粒子であるために、流動性が比較的劣っている。従って、他の成分との混合時に生じる流動性も比較的劣っているはずである。ところが、驚くことに、このような場合、流動性が改善していることがわかった。
【0040】
結合剤は往々にして粘着性の物質であり、これがタブレット成形時に突出力を増すために、様々な問題、例えば、錠剤の強度の低下、キャッピング、圧縮器具およびダイ壁温度の大幅な上昇、成形機の磨耗増加などが発生する。全く予想外なことに、本発明の結合剤では、タブレット成形時の残留および突出力が、この結合剤を用いない場合または従来の結合剤を用いた場合と比較して顕著に低いため、本発明の結合剤は減摩効果を示す。
【0041】
製造方法、ならびに好ましい中空球体またはシェル様構造は、結合剤の特定の効果(錠剤の圧縮抵抗および低脆砕性として示される)に非常に重要である。従って、粉砕により製造される結合剤は、同じ平均粒度の結合剤の中でもかなり低い効果しか呈示しない。
【0042】
驚くことに、錠剤の機械的強度が高くなったにもかかわらず、崩壊時間を延長させないことが可能である。全体として、本発明の結合剤を含む錠剤の崩壊時間は速くなっている。
【0043】
要約すると、本発明の結合剤により、極めて優れた機械的性質を備える錠剤が得られ、本発明の結合剤は、圧縮しにくい、または圧縮不可能な医薬物質の圧縮、ならびに、錠剤質量または錠剤体積の低減を可能にすると共に、タブレット成形工程を支障なく遂行することを確実にする。
【0044】
本発明のバインダーは、通常圧縮することが困難な以下の活性医薬成分の錠剤を製造するのに特に適している:
パラセタモール、カルバマゼピン、アセチルサリチル酸、アスコルビン酸、酒石酸メトプロロール、イブプロフェン、プソイドエフェソリンHCl、ジフェンヒドラミンHCl、ジメンヒドリネート、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、N-アセチルシステイン、アルベンダゾール、αメチルドパ、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、アンピリシン、アテノロールHCl、カプトプリル、シメチジン、ジルチアゼム、グリセオフルビン、レバミソール、マガルドレート、炭酸マグネシウム、メゼンダゾール、メプロバメート、メタミゾール、メトロニダゾール、硫酸ネオマイシン、オキシテトラシクリンHCl、ニトロフラントイン、ニスタチン、ニコチン酸、フェニトイン、ピロキシカム、ピラジンアミド、ラニチジン、テトラシクリン、アモキシシリン、二リン酸クロロキン、エタンブトール、ゲンフィブロジル、メフェナム酸、メトフォルミンHCl、ナリジクス酸、ナプロキセン、プロフェネシド、リファンピシン、スルファジアジン、スルファジミジン、スルファドキシン、スルファメトキサゾール、スルファチアゾール、バルプロ酸、ベラパミル、アシクロビル、アロプリノール、ベザフィブレート、カルビドパ、セフロキシム、セファクロル、シプロフロキサシン、フェノフィブレート、α−リポ酸、ペントキシフィリン、ピラセタム、プロパフェノンHCl、ロキシトロマイシン、ソタロール、スルピリド、トラマドール、チリジン。
【実施例】
【0045】
用いた噴霧乾燥機は、Niro製、Minor型のパイロットプラント噴霧塔(実施例1、3〜8、12、13)またはZimmerling製の直径7の製造用噴霧塔(実施例2)であった。
【0046】
別途記載のない限り、%は重量パーセントを意味する。
【0047】
実施例1
Kollidon K30、すなわち、K値が30(1重量%溶液で測定)のポリビニルピロリドンの10%濃度水溶液を入口空気温度170℃の噴霧乾燥機で乾燥させた。噴霧の前に噴霧溶液を80℃に加熱し、液体微粒子への噴霧化は、圧力16 Mpaの単一液体ノズル(直径0.5 mm)を用いて実施した。出口空気温度は85℃であった。
【0048】
平均粒度が17μmで、見かけ密度が0.12g/mlの微粉を取得した。
【0049】
顕微鏡検査により、中空球体およびそれらの断片(シェル)の存在が認められた。
【0050】
実施例2
Kollidon VA 64、すなわち、のN-ビニルピロリドン(VP)と酢酸ビニル(VAc)の重量比6:4のコポリマー(1重量%水溶液で測定したK値が28)の10%濃度水溶液を入口空気温度150℃の噴霧乾燥機で乾燥させた。噴霧の前に噴霧溶液を80℃に加熱し、液体微粒子への噴霧化は、圧力18 Mpaの単一液体ノズル(直径1.2 mm)を用いて実施した。出口空気温度は72℃であった。
【0051】
平均粒度が15μmで、見かけ密度が0.10g/mlの微粉を取得した。
【0052】
顕微鏡検査により、壁厚が1.0μmの中空球体および中空球体の断片(シェル)の存在が認められた。
【0053】
実施例3
10%Kollidon 30(K値が30のポリビニルピロリドン)と0.3%クエン酸トリエチルの水溶液を調製し、入口空気温度145℃の噴霧乾燥機で乾燥させた。噴霧の前に噴霧溶液を75℃に加熱し、液体微粒子への噴霧化は、圧力16 MPaの単一液体ノズル(直径0.5 mm)を用いて実施した。出口空気温度は71℃であった。
【0054】
平均粒度が16μmで、見かけ密度が0.11g/mlの微粉を取得した。
【0055】
顕微鏡検査により、壁厚が1.2μmの中空球体および中空球体の断片(シェル)の存在が認められた。
【0056】
実施例4
10%Kollidon 30と0.5%ポリソルベート80の水溶液を調製し、入口空気温度145℃の噴霧乾燥機で乾燥させた。噴霧の前に噴霧溶液を75℃に加熱し、液体微粒子への噴霧化は、圧力16 Mpaの単一液体ノズル(直径0.4 mm)を用いて実施した。出口空気温度は71℃であった。
【0057】
平均粒度が13μmで、見かけ密度が0.11g/mlの微粉を取得した。
【0058】
顕微鏡検査により、壁厚が0.9μmの中空球体および中空球体の断片(シェル)の存在が認められた。
【0059】
実施例5
5%Kollidon VA 64と0.1%ラウリル硫酸ナトリウムの水溶液を調製し、入口空気温度165℃の噴霧乾燥機で乾燥させた。噴霧の前に噴霧溶液を78℃に加熱し、液体微粒子への噴霧化は、圧力20 Mpaの単一液体ノズル(直径0.4 mm)を用いて実施した。出口空気温度は79℃であった。
【0060】
平均粒度が13μmで、見かけ密度が0.09g/mlの微粉を取得した。
【0061】
顕微鏡検査により、壁厚が0.8μmの中空球体および中空球体の断片(シェル)の存在が認められた。
【0062】
実施例6
N-ビニルピロリドンとN-ビニルカプロラクタムの重量比1:1のコポリマー(1重量%水溶液で測定したK値が65)の10%濃度水溶液を入口空気温度170℃の噴霧乾燥機で乾燥させた。噴霧の前に噴霧溶液を80℃に加熱し、液体微粒子への噴霧化は、圧力18.5 Mpaの単一液体ノズル(直径0.4 mm)を用いて実施した。出口空気温度は83℃であった。
【0063】
平均粒度が19μmで、見かけ密度が0.12g/mlの微粉を取得した。
【0064】
顕微鏡検査により、壁厚が1.4μmの中空球体および中空球体の断片(シェル)の存在が認められた。
【0065】
実施例7
重量比90:10のビニルピロリドンとラウリン酸ビニルのコポリマー(平均分子量20,000ダルトン、K値19)の12%水溶液を入口空気温度160℃の噴霧乾燥機で乾燥させた。噴霧の前に噴霧溶液を90℃に加熱し、液体微粒子への噴霧化は、圧力16 Mpaの単一液体ノズル(直径0.5 mm)を用いて実施した。出口空気温度は77℃であった。
【0066】
平均粒度が16μmで、見かけ密度が0.11g/mlの微粉を取得した。
【0067】
顕微鏡検査により、壁厚が1.0μmの中空球体および中空球体の断片(シェル)の存在が認められた。
【0068】
実施例8
10%Kollidon VA 64と0.25%Cremophor RH 40(水素化ヒマシ油と45モルのエチレンオキシドとの反応生成物)の水溶液を調製し、入口空気温度165℃の噴霧乾燥機で乾燥させた。噴霧の前に噴霧溶液を78℃に加熱し、液体微粒子への噴霧化は、圧力20 Mpaの単一液体ノズル(直径0.4 mm)を用いて実施した。出口空気温度は79℃であった。
【0069】
平均粒度が13μmで、見かけ密度が0.10g/mlの微粉を取得した。
【0070】
顕微鏡検査により、壁厚が1.0μmの中空球体および中空球体の断片(シェル)の存在が認められた。
【0071】
実施例9
アスコルビン酸製剤における結合剤の効果に関する試験
2.00 kgのアスコルビン酸、2.31 kgのLudipress(登録商標)(93.0%ラクトース、3.5%ポビドンおよび3.5%クロスポビドンの共処理生成物)、0.50 kgの結合剤、0.15 kgのクロスポビドン(Kollidon CL、BASF)、0.0125 kgのコロイドシリカ(Aerosil 200、Degussa)および0.025 kgのステアリン酸マグネシウムを0.8 mm篩にかけた後、Turbulaミキサーに導入し、10分混合した。この混合物を計装偏心プレス(EKO、Korsch製)で圧縮することにより、直径12 mm、総重量500 mgの二面錠剤にした。圧縮力は18 kVであった。
【0072】
以下のバインダーを試験した:
実施例2で得た生成物
実施例5で得た生成物
実施例8で得た生成物
市販の製品:Kollidon VA 64(BASF);平均粒度54μm、見かけ密度0.26g/ml
市販の製品:Plasdone S 630(6.4 VP/Vacコポリマー)ISP;平均粒度64μm、見かけ密度0.23g/ml
市販の製品:Ground Kollidon VA 64(BASF);平均粒度18μm
【表1】

【0073】
実施例10
パラセタモール製剤における結合剤の効果に関する試験
2.5 kgのパラセタモール、0.655 kgの微晶質セルロース、0.225 kgのバインダー、0.105 kgのクロスポビドン(Kollidon CL、BASF)、0.025 kgのコロイドシリカ(Aerosil 200)および0.015 kgのステアリン酸マグネシウムを0.8 mm篩にかけた後、Turbulaミキサーに導入し、20分混合した。この混合物を回転タブレット成形機(Korsch PH 106)で圧縮することにより、直径16 mm、総重量705 mgの錠剤にした。圧縮力は10 kVであった。
【0074】
以下の結合剤を試験した:
実施例2で得た生成物
市販の製品:Kollidon VA 64(BASF);平均粒度54μm
【表2】

【0075】
実施例11
イブプロフェン製剤における結合剤の効果に関する試験
4.0 kgのイブプロフェン、0.3 kgの微晶質セルロース、0.3 kgの結合剤、0.2 kgのクロスポビドン(Kollidon CL、BASF)、0.06 kgのコロイドシリカ(Aerosil 200)および0.03 kgのステアリン酸マグネシウムを0.8 mm篩にかけた後、Diosnaミキサーに導入し、10分混合した。この混合物を回転タブレット成形機(Korsch PH 106)で圧縮することにより、直径12 mm、総重量489 mgの錠剤にした。圧縮力は9kVであった。
【0076】
以下のバインダーを試験した:
実施例5で得た生成物
市販の製品:Kollidon VA 64(BASF);平均粒度54μm
【表3】

【0077】
実施例12
ポリビニルカプロラクタム(5%濃度エタノール溶液でのK値が23.5)の18%濃度水溶液を入口空気温度135℃の噴霧乾燥機で乾燥させた。液体微粒子への噴霧化は、ガス圧0.4 Mpaの二液体ノズル(直径:液体供給3mm、ガスの環状ギャップ1mm)を用いて実施した。出口空気温度は74℃であった。
【0078】
平均粒度が15μmで、見かけ密度が0.10g/mlの微粉を取得した。
【0079】
顕微鏡検査により、壁厚が1.1μmの中空球体および中空球体の断片(シェル)の存在が認められた。
【0080】
実施例13
Kollidon VA 64の30%濃度水溶液を入口空気温度153℃の噴霧乾燥機で乾燥させた。噴霧の前に噴霧溶液を87℃に加熱し、液体微粒子への噴霧化は、ガス圧0.6 Mpaの二液体ノズル(直径:液体供給2mm、ガスの環状ギャップ1mm)を用いて実施した。出口空気温度は83℃であった。
【0081】
平均粒度が15μmで、見かけ密度が0.12g/mlの微粉を取得した。
【0082】
顕微鏡検査により、壁厚が1.5μmの中空球体および中空球体の断片(シェル)の存在が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の粒子(I)と従来技術の粒子(市販の製品;II:Kollidon VA 64; III:Plasdone S 630)を概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルラクタムポリマーからなる粉末形態の微粉砕結合剤であって、平均粒度が35μm以下で、見かけ密度が0.2g/ml以下である、上記結合剤。
【請求項2】
壁厚が3.0μm以下の中空球体またはそのような中空球体部分の形態をしており、該中空球体の直径と壁厚の比が10:1である、請求項1に記載の結合剤。
【請求項3】
前記結合剤が30μm以下の平均粒度を有する、請求項1または2に記載の結合剤。
【請求項4】
前記結合剤が20μm以下の平均粒度を有する、請求項1または2に記載の結合剤。
【請求項5】
前記結合剤が2.5μm以下の壁厚を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の結合剤。
【請求項6】
前記結合剤が2.0μm以下の壁厚を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の結合剤。
【請求項7】
前記中空球体の直径と壁厚の比が12:1である、請求項1〜6のいずれかに記載の結合剤。
【請求項8】
前記中空球体の直径と壁厚の比が15:1である、請求項1〜6のいずれかに記載の結合剤。
【請求項9】
前記ビニルラクタムポリマーが、40〜100重量%のビニルピロリドンまたはビニルカプロラクタムもしくはそれらの混合物と、0〜60重量%のC1-C20カルボン酸のビニルエステルから得られる、請求項1〜8のいずれかに記載の結合剤。
【請求項10】
前記ビニルラクタムポリマーが、ビニルピロリドンと酢酸ビニルから得られる、請求項1〜9のいずれかに記載の結合剤。
【請求項11】
前記ビニルラクタムポリマーが、40:60〜80:20重量比のビニルピロリドンと酢酸ビニルから得られる、請求項1〜10のいずれかに記載の結合剤。
【請求項12】
前記ビニルラクタムポリマーが、50:50〜70:30重量比のビニルピロリドンと酢酸ビニルから得られる、請求項1〜11のいずれかに記載の結合剤。
【請求項13】
前記ビニルラクタムポリマーが、60:40重量比のビニルピロリドンと酢酸ビニルから得られる、請求項1〜12のいずれかに記載の結合剤。
【請求項14】
前記結合剤が、ビニルラクタムポリマー以外に、可塑剤若しくは界面活性剤又はそれらの混合物を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の結合剤。
【請求項15】
前記結合剤が、10重量%以下の可塑剤を含む、請求項1〜14のいずれかに記載の結合剤。
【請求項16】
前記結合剤が、20重量%以下の界面活性剤を含む、請求項1〜15のいずれかに記載の結合剤。
【請求項17】
ノズルを用いて、5〜35重量%の固形分を含む溶液を圧力下で噴霧することにより得られる、請求項1〜16のいずれかに記載の結合剤。
【請求項18】
高強度錠剤を製造するための、請求項1〜17のいずれかに記載の粉末形態の微粉砕結合剤の使用。
【請求項19】
前記結合剤は他の錠剤成分と乾式混合されて、圧縮される、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
錠剤の総重量における前記結合剤の比率が、0.5〜20重量%である、請求項18または19に記載の使用。
【請求項21】
錠剤の総重量における前記結合剤の比率が、1〜15重量%である、請求項18〜20のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
錠剤の総重量における前記結合剤の比率が、2〜12重量%である、請求項18〜21のいずれかに記載の使用。
【請求項23】
前記結合剤を他の錠剤成分と混合した後、タブレット成形する、請求項18〜22のいずれかに記載の使用。
【請求項24】
前記結合剤を他の錠剤成分と混合してから、ロール圧縮し、微粉砕した後、タブレット成形する、請求項18〜22のいずれかに記載の使用。
【請求項25】
前記結合剤を他の錠剤成分と混合し、さらに水、蒸気もしくは適当な有機溶剤を添加しながら混合し、必要であれば乾燥させた後、タブレット成形する、請求項18〜24のいずれかに記載の使用。
【請求項26】
前記結合剤を粉砕工程によりさらに微粉砕した後、錠剤に加工する、請求項18〜25のいずれかに記載の使用。
【請求項27】
請求項1〜17のいずれかに記載のビニルラクタムポリマーからなる粉末形態の微粉砕結合剤を噴霧により製造する方法であって、その際、1〜35重量%の固形分を含むビニルラクタムポリマーの水溶液をノズルにより圧力下で噴霧した後、熱気流で乾燥させるが、この噴霧は、8MPa以上の圧力下で単一液体ノズルを用いて、または0.2MPa以上の圧力下で二液体ノズルを用いて実施される、上記方法。
【請求項28】
前記噴霧が、12 MPa以上の圧力下で単一液体ノズルを用いて実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記噴霧が、16 MPa以上の圧力下で単一液体ノズルを用いて実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記噴霧が、0.4 MPa以上の圧力下で二液体ノズルを用いて実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記噴霧が、0.6 MPa以上の圧力下で二液体ノズルを用いて実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
噴霧溶液の固形分が3〜25重量%である、請求項27〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
噴霧溶液の固形分が5〜15重量%である、請求項27〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
噴霧の前に、噴霧溶液を40〜180℃の温度に加熱する、請求項27〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
噴霧溶液の固形分に対して10重量%以下の可塑剤を該噴霧溶液に添加する、請求項27〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
噴霧溶液の固形分に対して20重量%以下の界面活性剤を該噴霧溶液に添加する、請求項27〜35のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−316266(P2006−316266A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−114546(P2006−114546)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】