説明

微粉粒体の漏れ防止用のシール材

【課題】ビニロン繊維が接着層を介してクッション層に直接植毛されて表面シール層を形成することにより、トナーなどの微粉粒体の漏れを改善するとともに、表面シール層の繊維の脱落又は切断を改善した微粉粒体の漏れ防止用のシール材を提供する。
【解決手段】本発明のシール材1は、微粉粒体の漏れ防止用のシール材であって、クッション層10と表面シール層11と含み、表面シール層11は、ビニロン繊維が接着層12を介してクッション層10に直接植毛されて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーなどの微粉粒体の漏れ防止用のシール材に関する。詳細には、電子写真方式により画像を現出する装置に用いられる、トナーなどの微粉粒体の漏れ防止用のシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による現像装置は、図2に示すような、ハウジング20内にトナーを収容し、ハウジングの開口部21にトナー供給ローラ22を回転自在に軸支したトナーカートリッジを含むものであって、トナー供給ローラ22の表面にトナーを付着させ、そのトナーを露光した感光体に供給し、感光体から記録用紙などにトナーを転写し、それを熱と圧力によって用紙表面に定着させることが行われている。
【0003】
そしてトナーカートリッジのハウジング20におけるトナー供給ローラ22の両端を受ける軸受部23には、トナーシール材が設けられ、ハウジング20内のトナーが軸受部23から側方に漏出するのを防止するようになっている。
【0004】
従来、トナーシール材としては、繊維素材の表面シール層とクッション層を含む複合クッション材が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、通常、複合クッション材は、まず織物などに繊維を植毛し、表面シール層を作製した後に発泡ウレタン、不織布などのクッション層と複合して作製していた。しかし、このような複合クッション材をトナーシール材として、湾曲させて使用する場合、織物層とクッション層の湾曲率の差が原因となり表面シール層の表面に皺が発生する。そして、この状態で複写機やプリンターのトナーカートリッジにおけるトナー供給ローラの両端を受ける軸受部に使用した場合、皺が拡がりその隙間からトナーが漏れるという致命的な現象が起きてしまう。また、近年は軸の直径が6mm以下の細い軸のトナー供給ローラが用いられる傾向や、トナーの直径も5μm程度と小さくなる傾向があるため、トナーシール材の表面の微量な皺でもトナーカートリッジからトナーが漏れてしまうといった致命的現象に繋がるという問題がある。
【0005】
さらに、表面シール層から繊維が脱落又は切断されてカートリッジ内に入り込むと、トナーと混ざりトナー供給ローラに均一なトナー層を形成することを妨げ、画像を不具合にする原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−113750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、ビニロン繊維が接着層を介してクッション層に直接植毛されて表面シール層を形成することにより、トナーなどの微粉粒体の漏れを改善するとともに、表面シール層の繊維の脱落又は切断を改善した微粉粒体の漏れ防止用のシール材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシール材は、微粉粒体の漏れ防止用のシール材であって、クッション層と表面シール層とを含み、前記表面シール層は、ビニロン繊維が接着層を介して前記クッション層に直接植毛されて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、クッション層と表面シール層とを含み、ビニロン繊維が接着層を介してクッション層に直接植毛されて表面シール層を形成することにより、クッション層と表面シール層間の湾曲率の差をなくし、湾曲して使用する時における表面シール層の皺の発生を低減させて、トナーなどの微粉粒体の漏れを効果的に防止できるとともに、表面シール層の繊維の脱落又は切断も効果的に防止できる微粉粒体の漏れ防止用のシール材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の微粉粒体の漏れ防止用シール材の他の例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、トナーカートリッジの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のシール材は、クッション層と表面シール層とを含み、ビニロン繊維が接着層を介して前記クッション層に直接植毛されて表面シール層を形成している。以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0012】
図1は、本発明の微粉粒体の漏れ防止用シール材の一例を示す概略断面図である。図1に示しているように、微粉粒体の漏れ防止用シール材1は、ビニロン繊維が接着層12を介してクッション層10に直接植毛されて表面シール層11を形成している。
【0013】
クッション層10は、例えば、比較的弾力性に富んだ不織布、樹脂シートなどの弾性体で構成されればよく、特に限定されない。湾曲して使用する時の皺の発生をより低減させるという観点から、クッション層10の厚みは0.1〜3.0mmであることが好ましく、0.5〜2.0mmであることがより好ましい。クッション層10は、トナー供給ローラなどの回転体の軸受部に沿ってU字形に湾曲させたときに、皺が生じることがない程度の柔軟性が必要であり、トナー供給ローラなどの回転体を軸支し得る程度の弾性を有するものであることが必要である。弾力性に優れるという観点から、樹脂シートとしては例えば発泡ウレタンなどの発泡体を用いることが好ましく、不織布としては羊毛・獣毛フェルト、ニードルパンチ不織布を用いることが好ましい。また、弾力性の観点から、発泡ウレタンは密度が50〜500kg/m3であることが好ましく、不織布は密度が50〜500kg/m3であることが好ましく、80〜350kg/m3であることがより好ましい。
【0014】
接着層12は、クッション層10と表面シール層11と接触するクッション層10の表面に接着剤をコーティングすることにより形成される。シール材1において、接着層12は、接着層12を介してクッション層10に植毛された繊維を固定する役割を果たす。接着層12の厚みは、0.05〜1.0mmであればよく、湾曲して使用する時のシール材の皺の発生をより低減させるという観点から、0.1〜0.3mmであることが好ましい。
【0015】
上記接着剤としては、例えばポリウレタン系、アクリル系、ポリエステル系などの接着剤を用いることができ、特に限定されないが、植毛する繊維の素材、又はクッション層の素材と相性の良いものを用いることが好ましい。
【0016】
表面シール層11は、ビニロン繊維が接着層12を介してクッション層10に直接植毛されることにより形成される。植毛は、静電植毛であればよく、一般的に用いられる方法で行えばよい。湾曲して使用する時の皺の発生をより低減させるという観点から、表面シール層11の厚みは0.3〜3.0mmであることが好ましく、0.5〜1.5mmであることがより好ましい。また、シール性の向上の観点から、植毛した繊維の重量(目付)は、30〜300g/m2であることが好ましく、70〜120g/m2であることがより好ましい。
【0017】
トナーシール材において表面シール層の繊維素材として、通常レーヨン繊維がよく使用されるが、レーヨン繊維にはコシがなく即ちヤング率が低く、トナーロールなどの回転体の重さで弾性が低下して厚さが変化し、表面シール層の表面の一部に皺が発生してトナー漏れの原因となることがある。また、回転の負荷により繊維が切断されて、切断した繊維がトナーと混ざり画像不良を起こすこともある。また、半合成繊維であることから、水分率を多く含み得るため、梅雨の期間は繊維への荷電が安定せず、植毛密度にムラが発生し易い。また、その対策として、コシのあるナイロン繊維を使用した場合は、ナイロン繊維は剛直なため、トナー供給ローラなどの回転体を研磨してしまい、削れたロール屑が発生する。そのロール屑とトナーが混ざり画像不良を起こす原因となる。本発明では、ビニロン繊維を用いることにより、表面シール層から繊維が脱落又は切断されてカートリッジ内に入り込むことを防ぐとともに、トナー供給ローラなどの回転体の研磨を低減している。
【実施例】
【0018】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0019】
(製造例1)
厚さ1.5mmの発泡ウレタン(イノアック社製“ポロンLE−20”、密度200kg/m3)の表面にポリウレタン系接着剤を塗布した後、長さ1.2mmで繊度2.2dtexのビニロン繊維を目付120g/m2で静電植毛して厚さが2.7mmmの製造例1のシール材を作製した。
【0020】
(製造例2)
厚さ1.5mmのポリエステル繊維100%の不織布(密度200kg/m3)の表面にポリエステル系接着剤を塗布した後、長さ1.2mmで繊度2.2dtexのビニロン繊維を目付120g/m2で静電植毛して厚さが2.7mmmの製造例2のシール材を作製した。
【0021】
(製造例3)
植毛する繊維としてビニロン繊維の代わりに、長さ1.2mmで繊度2.2dtexのレーヨン繊維を用いた以外は、製造例1と同様にして、製造例3のシール材を得た。
【0022】
(製造例4)
植毛する繊維としてビニロン繊維の代わりに、長さ1.2mmで繊度2.2dtexのナイロン繊維を用いた以外は、製造例1と同様にして、製造例4のシール材を得た。
【0023】
(製造例5)
ポリエステルマルチフィラメントで織られた厚さ0.4mmの織物(目付200g/m2)にポリウレタン系接着剤を塗布した後、長さ0.8mmで繊度2.2dtexのレーヨン繊維を目付120g/m2で植毛して厚さ1.2mmの基材を作製した。得られた基材と厚さ1.5mmの発泡ウレタン(イノアック製“ポロンLE−20”)とを不織布基材レスの両面テープ(SONY社製“NP203”)で接着して厚さ2.7mmの製造例5のシール材を作製した。
【0024】
(製造例6)
ポリエステルマルチフィラメントで織られた厚さ0.4mmの織物(目付200g/m2)にポリウレタン系接着剤を塗布した後、長さ0.8mmで繊度2.2dtexのビニロン繊維を目付120g/m2で植毛して厚さ1.2mmの基材を作製した。得られた基材と厚さ1.5mmのポリエステル繊維100%の不織布(密度200kg/m3)とを不織布基材レスの両面テープ(SONY社製“NP203”)で接着して厚さ2.7mmの製造例6のシール材を作製した。
【0025】
(製造例7)
ポリエステルマルチフィラメントで織られた厚さ0.4mmの織物(目付200g/m2)にポリウレタン系接着剤を塗布した後、長さ0.8mmで繊度2.2dtexのビニロン繊維を目付120g/m2で植毛して厚さ1.2mmの基材を作製した。得られた基材と厚さ1.5mmの発泡ウレタン(イノアック製“ポロンLE−20”)とを不織布基材レスの両面テープ(SONY社製“NP203”)で接着して厚さ2.7mmの製造例7のシール材を作製した。
【0026】
製造例1〜7のシール材のシール性を、以下のように皺の状態及びトナーの漏れまでの回転数により評価した。
【0027】
(皺の状態)
シール材の生地を幅5mm、長さ18mmにカットし、直径8mmのトナー供給ロールの両端にロールに添うようにセットし、皺の状態を以下のような2段階で評価した。
皺無し:1
皺有り:2
【0028】
(トナーの漏れ)
シール材の生地を幅5mm、長さ18mmにカットし、図2に示しているような、直径8mmのトナー供給ロール22の両端にトナー供給ロール22に添うようにセットした後、トナー供給ロール22をシール材の圧縮率が10%になるようにハウジングの開口部21に固定し、トナー供給ロール22の裏面から粒径5〜8μmのトナーをハウジング20に充填した。次いで、約360回転/分でトナー供給ロール22を回転させ、1000回転毎にトナー漏れの確認を行った。トナー漏れの判断は、シール材の外部に2mm角の両面接着テープを設置し、テープの全面をトナーが覆った時点をトナー漏れが起きた時点とした。ここで、シール材の圧縮率とは、下記式で示されるものである。以下においても同様である。
【0029】
(数1)
圧縮率(%)=(元のシール材の厚さ−トナー供給ロールをセットした後のシール材の厚さ)/元のシール材の厚さ×100
下記表1に、製造例1〜7のシール材の皺の状態及びトナーの漏れの結果を示した。製造例1〜7において、製造例1〜2は実施例であり、製造例3〜4は参考例であり、製造例5〜7は比較例である。
【0030】
【表1】

【0031】
表1の結果から、織物層を抜いて、クッション層に接着層を介して繊維を直接植毛したシール材の方が、湾曲して使用する時に皺の発生が少なく、トナーなどの微粉粒体の漏れに対して寿命が長くなることが分かった。
【0032】
製造例1、3及び4のシール材における繊維の切れ及びシール材の表面シール層の繊維によるトナー供給ロールの損傷を以下のよう評価した。
【0033】
(繊維の切れ及びロールの損傷)
幅12mm長さ18mmのシール材を用い、シール材の最下層に、両面テープ日東5000NS(再離型タイプ)を付け、離型紙を剥がした。次いで、表面の付着物を、掃除機で吸い取った後、シール材の重量を測定した。トナー供給ロール22の重量も測定した。次いで、トナー供給ロール22をシール材の圧縮率が10%になるようにハウジングの開口部21に固定し、トナーは充填させず、約360回転/分で5万回転させた。回転後、シール材を剥がし、余計な異物がないよう掃除機で表面の付着物を吸い取った後、再度重量を測定し、回転前後でのシール材の重量変化(回転前のシール材の重量−回転後のシール材の重量)を計算し、繊維の切れを評価した。トナー供給ロール22も同様に掃除機で表面の付着物を吸い取った後、重量をはかった。また、目視でトナー供給ロール22のキズの有無を確認した。
【0034】
下記の表2に製造例1、3及び4のシール材の繊維の切れ及びロールの損傷の結果を示した。
【0035】
【表2】

【0036】
表2の結果から、ビニロン繊維の方が、毛切れも少なく、ロールに傷も付けず、植毛する繊維として優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のシール材は、電子写真方式により画像を現出する装置において、トナーなどの微粉粒体の漏出を防止するために用いられるものであるが、これに限定されるものではなく、トナーカートリッジにおける現像機構とクリーニング機構との間隔保持、各種の回転ローラや往復作動部材の気密保持などにも利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 微粉粒体の漏れ防止用のシール材
10 クッション層
11 表面シール層
12 接着層
2 トナーカートリッジ
20 ハウジング
21 ハウジングの開口部
22 トナー供給ロール
23 ハウジングの軸受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉粒体の漏れ防止用のシール材であって、クッション層と表面シール層と含み、前記表面シール層は、ビニロン繊維が接着層を介して前記クッション層に直接植毛されて形成されていることを特徴とするシール材。
【請求項2】
前記クッション層は、樹脂シート又は不織布で形成されている請求項1に記載のシール材
【請求項3】
前記不織布が、羊毛フェルトである請求項2に記載のシール材。
【請求項4】
上記樹脂シートが、発泡体である請求項2に記載のシール材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate