説明

微粒子−可溶性グルカン調製物

微粒子β−グルカンを上昇させた圧力および温度で可溶化して、微粒子−可溶性β−グルカンを形成する。微粒子−可溶性β−グルカンは粉末形態に乾燥することができ、続いて再可溶化することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2007年5月8日に出願された、可溶性グルカンの調製と題された米国仮出願第60/916,690号の利益を主張する。
【0002】
本発明は微粒子−可溶性β−グルカンに関する。より詳細には、本発明は微粒子−可溶性β−グルカンの改善された方法および組成物に関する。
【0003】
グルカンは、グルコースのポリマーとして一般的に記載され、酵母、細菌および真菌、ならびにオートミールおよび大麦などの植物に由来する。β(1−3)−結合グルコピラノース骨格を含むグルカンは生物学的活性を有することが公知であり、具体的には、免疫系を修飾し、最近になって造血幹細胞および造血前駆細胞(HSPC)の移動を誘導することが示されている。
【0004】
過去においては、高品質の可溶性β−グルカンの産生は高価であった。例えば、β−グルカンは高価さのために栄養補給剤または食品原料成分としては非常に費用がかかる。したがって、改善された可溶性β−グルカンの必要性がある。
【発明の概要】
【0005】
微粒子β−グルカンは、上昇させた温度および圧力で酸性溶液の中で可溶化される。結果として生じる可溶性β−グルカンを、例えば、遠心分離および/またはクロマトグラフ法を使用して、さらに清澄化および精製することができる。結果として生じる製品は、高分子量グルカンを含む場合でさえ、粉末に乾燥して、続いて再可溶化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】微粒子−可溶性β−グルカンサンプルのRIトレースおよびデーター変換グラフである。
【図2】微粒子可溶性β−グルカンサンプルの放射性同位体トレースおよびデーター変換グラフである。
【図3】微粒子可溶性β−グルカンサンプルの放射性同位体トレースおよびデーター変換グラフである。
【図4】微粒子可溶性β−グルカンサンプルの放射性同位体トレースおよびデーター変換グラフである。
【図5】様々なβ−グルカンによって誘導されたTNFa産生の図解説明である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において使用される出発材料は、任意の方法によって産生された微粒子または不溶性のβ−グルカンである。微粒子β−グルカン出発材料は、完全なグルカン粒子〜サブミクロンサイズにした粒子のサイズにわたりうる。出発材料内の不純物のレベルもまた変化しうる。しかしながら、出発材料内の不純物のレベルが増加するにつれて、回収される可溶性グルカンの量は減少する。適切な出発材料の1つの例は、バイオセラ(Biothera)社からのWGP3−6(登録商標)である。
【0008】
任意のb−グルカンの多数のソースを本発明のために使用することができる。かかるソースの例は、酵母、わずかにオートミール、キノコおよび他の真菌などである。
【0009】
微粒子β−グルカンを圧力および上昇させた温度下で酸により処理して、可溶性β−グルカンを産生する。始めにペレットにした微粒子β−グルカンを、シール可能な反応容器中で緩衝液溶液中に再懸濁および混合し、pH3.6にする。最終的な懸濁混合物の1リットルあたり(全体積)が、約0.61gの酢酸ナトリウム、5.24mlの氷酢酸および430gのペレットにした微粒子β−グルカンを含むように、緩衝液試薬を追加した。容器を窒素によりパージして、酸素を除去し反応容器内の圧力を増加する。
【0010】
典型的には、容器の内部の圧力は35PSIにし、懸濁物を最大約5.5時間、約135℃に加熱する。これらの条件下でβ−グルカンが可溶化するであろうことが見出された。温度が135℃から減少するにつれて、可溶化量もまた減少する。
【0011】
この温度および圧力が、ここで記述された実施形態のために最適化されることが注目されるべきである。反応条件および/または試薬のいずれかが変更されるならば、温度および圧力の最適化および調整が必要とされうる。
【0012】
圧力および温度の増加は、実質的にはプロセスから危険薬品の使用を除去して、β−グルカンを可溶化する先行技術プロセスに対して優位性を与える。今までに使用されている危険薬品は、例えば、エーテルおよびエタノールなどの引火性揮発性有機化合物、ギ酸および硫酸などの非常に強い酸、ならびに非常に高いpHの苛性アルカリ溶液を含む。本プロセスは安全なだけではなく、使用される異なる化学物質の数および関係する工程の数を減少させることによって、より経済的である。
【0013】
本プロセスの追加の優位性は、上述の処理の長さが、結果として生じる微粒子−可溶性β−グルカンの分子量を制御するということである。「微粒子−可溶性β−グルカン」は、この用語が本明細書において使用される場合、可溶性形態、微粒子形態または再可溶化形態のいずれかでありえる。処理時間の長さは、結果として生じる分子量サイズに反比例する。言いかえれば、処理時間が増加するにつれて、微粒子−可溶性β−グルカンの結果として生じる平均分子量は減少する。この主要なものを以下において図示する。
【0014】
4つのサンプルを、上述のプロセスの間の様々なタイムポイント(60、90、120および240分)で微粒子−可溶性β−グルカン懸濁物のバッチから集めた。サンプルの分子量を、デキストラン分子量マーカーに対するサイズ排除クロマトグラフィーによって決定した。結果を表1中に要約する。
【0015】
【表1】

【0016】
上述のデーターによって証明されるように、微粒子β−グルカンは、約90分で生じる最大の平均サイズから、ゆっくり分解し始める。90分のタイムポイント後に、平均サイズは減少する。タイムポイント特異的データーを図1〜4中に示す。
【0017】
図1はパネルAおよびBを含む。パネルAは、60分のサンプルの屈折率(RI)トレースである。パネルBにおいて、パネルAで作製されたデーターのセクションを、示されたグラフ上に転換およびプロットした。曲線10は転換した生データーを表わす。曲線12は、特異的分子量の累積パーセンテージを表わす。分子量は既知サイズのデキストランにより作製された標準曲線によって決定された(データー不掲載)。
【0018】
90分のサンプルから作製されたデーターを、図2中に示す。曲線14および16のパネルAおよびパネルBは、図1のパネルAおよびBに対応する。
【0019】
120分のサンプルから作製されたデーターを図3中に示す。曲線18および20のパネルAおよびパネルBは、図1のパネルAおよびBに対応する。
【0020】
240分のサンプルから作製されたデーターを図4中に示す。曲線22および24のパネルAおよびパネルBは、図1のパネルAおよびBに対応する。
【0021】
微粒子−可溶性グルカンの特異的サイズが、特異的適用のためにより有用でありえる。例えば、局所的に適用された場合、より小さな分子量の分子はより皮膚に透過しうる。一方、より大きな分子量分子は、経口投与により適合しうる。したがって、グルカン分子の平均サイズを容易に制御する能力は、重要な競争上の優位性を提供する。
【0022】
熱処理の厳密な継続期間は、典型的には、反応装置内容物のサンプリングによって実験的に決定される。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)分析などの様々な試験を行なうことができる。このプロセスは、特定の明細書プロファイルおよび不純物レベルを満たす、微粒子−可溶性材料の収率を最大化する。一旦β−グルカンが可溶化されれば、混合物を冷却して反応を中止する。
【0023】
微粒子−可溶性β−グルカンはこの時点で洗浄および利用できるが、薬学的適用のために典型的にはさらなる精製を実行する。1つまたは複数の以下の工程の任意の組合せを使用して、微粒子−可溶性β−グルカンをさらに精製および/または清澄化する。所望されるならば、当該技術分野における公知の他の手段もまた使用することができる。適切な手段は、例えば、遠心分離または連続流遠心分離を含み、有意な量の脂質不純物を除去する。
【0024】
いくつかの実例において、微粒子−可溶性β−グルカンの中に脂質を包含することは、特定の感染症に対する有効性または免疫系の促進を増加することができる。ここで提示されたプロセスは、微粒子−可溶性β−グルカン組成物中の脂質の量を効果的に制御および変化する手段を提供する。
【0025】
あるいはまたはそれに加えて、微粒子−可溶性β−グルカンを濾過することができる。1つの実施形態において、材料は0.2μmフィルターを介して濾過される。
【0026】
クロマトグラフィーもまた精製のために使用することができる。微粒子−可溶性β−グルカンは、クロマトグラフィーのための調製におけるいくつかの点で条件付けることができる。例えば、クロマトグラフィー工程が疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を含んでいるならば、微粒子−可溶性β−グルカンを、硫酸アンモニウムおよび酢酸ナトリウムの溶液により適切な伝導度およびpHに調整することができる。適切な溶液は3.0M硫酸アンモニウム、0.1M酢酸ナトリウムであり、それを使用して5.5にpHを合わせる。
【0027】
利用することができる別のクロマトグラフィー工程は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)である。複数のクロマトグラフィーサイクルは、充填量がカラムの能力を上回らないと保証することが必要でありうる。
【0028】
この点で、微粒子−可溶性β−グルカンは精製され、使用のための準備がされている。一般的に集められた微粒子−可溶性β−グルカンは、>1,000,000Daの平均分子量を有し、高い多分散性を備えている。この微粒子−可溶性β−グルカン製品(特に、100万ダルトン(Da)を超えるような高分子量)の優位性は、製品を粉末形態に噴霧乾燥することができ、続いて約5以上のpH(本質的には弱酸性〜強塩基性)の溶液中で再可溶化することができるということである。さらに、再可溶化がおよそ室温(〜25℃)という低い温度で生じる。再可溶化後の最終濃度および使用される溶媒に依存して、再可溶化のための時間および温度の要求性は変化するだろう。
【0029】
製品の再可溶化能により、β−グルカンは、例えばインスタント飲料の粉末に適切なインスタント化(instantized)形態の生成のために理想的になる。簡潔には、乾燥形態の微粒子−可溶性β−グルカンを再び湿らせて、約9%〜12%の水分含量を達成し、凝集体を形成する。レシチンなどの界面活性剤を二流体ノズル経由で凝集体に追加する。界面活性剤の濃度は、使用される界面活性剤、および製品が最終的に溶解される条件および溶媒に依存して変化するだろう。次に、凝集体は流動層乾燥機の3つのステージに通される。第1のステージは製品を加熱し、第2のステージは製品に条件付けし、第3のステージは製品を冷やす。結果として生じる製品をふるいにかけて、インスタント化製品を形成する。
【0030】
インスタント化製品を形成する別の方法は、グラニュー糖または塩(NaCl)などの第2の乾燥形態可溶性成分の追加を介するものである。1つの例において、200mgの粉末にした微粒子−可溶性β−グルカンおよび約0.5〜約1.0gのスクロース結晶を混合し、約2〜3分間モーターボウル中で破砕した。混合物を500mlの室温水に追加し、力強く振盪した。微粒子−可溶性β−グルカンを再可溶化した。同一の実験をNaClにより実行し、同一の結果を得た。
【0031】
微粒子−可溶性β−グルカン製品は、可溶化した形態、粉末形態または再可溶化した形態においても、多数の適用のいずれかのために使用できる。微粒子−可溶性β−グルカンは、ヒトおよび農業用動物/ペット用動物/外来動物で使用される栄養補給剤、食品原料成分、化粧品成分および薬剤製品としての使用のために理想的である。
【0032】
微粒子−可溶性β−グルカンの乾燥形態または湿潤形態を追加することができる典型的な食品は、例えば、穀物および穀物製品、焼き菓子およびベーキングミックス、飲料および飲料ベース、豆乳、牛乳および乳製品などの酪農製品アナログ、植物タンパク質製品、加工果実および果汁、ソフトキャンディー、スープおよびスープミックス、ヨーグルト、ボトル入り水および飲み物、ニュートリションバーなどを含む。必要ならば、様々なマスキング剤および他の添加物を追加して、風味およびテクスチャーを改善することができる。
【0033】
液体形態において、微粒子−可溶性β−グルカンを使用して、可食フィルムを作製することができる。液体製品の薄層は、当該技術分野において公知の多数の手段のいずれかによって乾燥される。添加物を液体製品に追加して、様々なテクスチャーのフィルムを生成するか、またはそれらを多少柔軟にすることができる。フィルムは医薬品またはサプリメント製品のための担体として有用である。ここで再び、様々なマスキング剤を追加して、フィルムの香りを改善することができる。
【0034】
微粒子−可溶性β−グルカン製品はまた、先行技術の微粒子β−グルカンよりも効果的でありえる。例えば、製品は感染症または癌に対してより効果的でありえる。有効性の増加は、よりよい取り込み、よりよい免疫系促進、減少した投薬レジメントなどの面においてでありえる。
【0035】
この目的のために、インビトロの研究は、300μg/mLまでの濃度で微粒子−可溶性β−グルカンがヒト末梢血単核細胞(PBMC)からTNFαを誘導しないことを示した。具体的には、ヒトPBMCを5%非動化FCS含有cRPMI培地中で培養した。細胞を、様々なβグルカン(すべてエンドトキシン不含有)、TLR7/8アゴニスト、または媒質により刺激した。βグルカンを様々な濃度で使用した。37℃、5%CO2で一晩のインキュベーション後に、無細胞の上清を集め、ELISAによるサイトカイン分析まで−20℃で保存した。3つの重複測定からの結果を図5中に示す。グラフによって証明されるように、完全なグルカン粒子はTNFα産生を刺激するが、微粒子−可溶性製品は刺激しない。TNFαが炎症性反応に関与する主なサイトカインであるので、微粒子−可溶性製品は炎症性反応を誘導すると予想されない。
【0036】
本発明は特定の実施形態への参照により示され記述されたが、形態および細部の様々な変化が、添付された請求項によって包含される本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、その中で行なわれてもよいことは当業者によって理解されるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末形態に乾燥することができ、次に約5以上のpHを有する溶液において再可溶化される微粒子−可溶性β−グルカンを含む、組成物。
【請求項2】
前記微粒子−可溶性β−グルカンが酵母に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記微粒子−可溶性b−グルカンがインスタント化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
さらに第2の乾燥形態の可溶性成分を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記溶液の温度が、およそ室温であるかまたはそれより高い、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
溶液中で可溶化された微粒子−可溶性b−グルカンを含み、該溶液が弱酸性〜強塩基性の範囲のいずれかである、組成物。
【請求項7】
前記溶液がおよそ室温〜約60℃にわたる温度を有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記溶液が、ヒトのための飲料および/または動物飼料である、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
粉末形態に乾燥することができ、次に約25℃またはそれ以上の温度を有する溶液中で再可溶化される微粒子−可溶性β−グルカンを含む、組成物。
【請求項10】
微粒子−可溶性b−グルカンを含む組成物であって、液体形態または乾燥形態のいずれかであり、乾燥形態が約5以上のpHを有する液体中に再可溶化が可能である、組成物。
【請求項11】
前記微粒子−可溶性b−グルカンが、約1,000,000Daをこえる平均分子量を有する、請求項10に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−526810(P2010−526810A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507462(P2010−507462)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/005914
【国際公開番号】WO2008/140744
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(508367740)バイオポリマー エンジニアリング インコーポレイテッド ディービーエイ バイオセラ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】