説明

微粒子、液晶セルスペーサー及び液晶表示素子

【課題】表面に分子レベルの水溶性高分子を付加した新しい微粒子を得、液晶セルスペーサーとして基板に対して良好な接着性を発揮させ、スペーサー周辺での光抜け等をも安定して抑制する事である。
【解決手段】本発明は、微球体と、前記微球体の表面上に付着された高分子とを備える微粒子であって、微球体が、エチレン性不飽和基を有する単量体の重合物から形成されており、1〜20μmの平均粒子径を有しており、前記高分子が、前記微球体への水溶性高分子の付着によって、分子レベルの厚さで存在している、微粒子を提供する。かかる微粒子は、液晶セル接着スペーサーとして著しく優れた接着性を発揮し、液晶表示素子用のスペーサーとして大いに期待出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微球体表面に水溶性高分子を分子レベルで付与する事により得る事が出来る微粒子、及び液晶セルスペーサー、並びにかかる液晶セルスペーサーを用いる液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微粒子に接着性を発現させる方法として、微粒子表面にホットメルト型接着性樹脂をコーティングし、加熱する事により、基板に固着させる等の方法がある(例えば、特許文献1〜4参照)。特許文献1には、多孔性微粒子にホットメルトを含浸させ、接着性粒子を作製する方法が、特許文献2には、単官能モノマーと油溶性開始剤とを乳化、分散させ、粒状体に接着させる方法が、特許文献3には、樹脂微球体をアクリル酸エステル重合体で処理し、ホットメルト型接着剤層を形成させる方法が、特許文献4には、シリカ粒子をアクリル酸エステル重合体で処理し、ホットメルト型接着剤層を形成する方法等がある。
【0003】
特許文献3及び特許文献4では、更に、被膜を形成する方法として、以下の方法が提示されている。即ち、
(1)ホットメルト型接着剤層を形成する第1の方法としては、ホットメルト接着剤であるポリマーを溶剤に溶解した後、樹脂微球体やシリカ粒子のような微粒子と溶剤とを混合し、乾燥し、ボールミル等で解砕する方法。
(2)他の方法としては、ホットメルト接着剤であるポリマーを水不溶の溶剤に溶解した後、界面活性剤を用いて水中に乳化させ、そこに微粒子を懸濁分散させ、微粒子にホットメルト樹脂を付着させ、その後、液の温度を下げて樹脂を溶剤に対して過飽和の状態にするか、又は同時に沈殿剤を加えて析出させる方法。
(3)又、他の方法としては、ホットメルト樹脂の微粒子と被コーティング微粒子とに機械的に衝撃を与えて物理的にコーティングする、いわゆるハイブリダイゼーションという方法。
以上のような方法である。
【特許文献1】特開平6-172541号公報
【特許文献2】特開平6-179703号公報
【特許文献3】特開平8-101394号公報
【特許文献4】特開平8-248426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記(1)の方法では、溶剤を蒸発させる段階で粒子同士が接着や凝集を起こし、この凝集を強制的に解砕する為、コーティングの厚みが定まらず、且つ片方の粒子にのみホットメルト樹脂が付き、もう片方の粒子にはホットメルト樹脂が全くないという状態が発生する問題がある。
(2)の方法でも、水中に乳化した液滴の直径は均一でなくなり、直径の分布が広い為、各粒子へ液滴の衝突の確率は均一でも、付着する液滴の大きさが異なる為、(1)と同じようにコーティングの厚みが定まらないという問題がある。
(3)の方法では、コーティングの厚みはある程度一定であるが、機械的に弱い力でホットメルト樹脂微粒子が接着しているだけなので、ホットメルト樹脂微粒子が剥離し易く、液晶を汚染する等の問題がある。つまり、ホットメルトコーティング微粒子の基材への接触面積が異なる事により、各微粒子の接着力の違いが現れ、弱い力のスペーサーが振動により液晶セル中を移動する場合、液晶の配向異常が今までよりも強く現れたり、ひどい時にはポリイミド膜を傷付けたりして、液晶の表示性能を著しく低下させるという問題が発生し、それを解決出来ないままである。又、予め表面処理を施した微粒子にホットメルトコーティングをした場合、ホットメルトの膜厚によっては表面処理微粒子が本来の持つ性能を十分に活かされないという問題がある。
【0005】
即ち、従来のホットメルト被膜コーティングでは、均一な被覆層が得られ難く、接着性が不安定になり、又液晶中で微粒子周辺の液晶分子の配向異常、所謂光抜けが起こるという問題を解決出来ない。したがって、液晶セルスペーサーとして基材に良好に接着し、尚且つ光抜けを起こさない微粒子の開発が強く求められている。
【0006】
本発明の課題は、表面に分子レベルの水溶性高分子を付加した新しい微粒子を得、液晶セル接着スペーサーとして基板に対して良好な接着性を発揮し、スペーサー周辺での光抜け等をも安定して抑制する事が出来る微粒子を開発する事である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決する為、種々の方法を検討し、以下の結果を見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、微球体と、前記微球体の表面上に付着された高分子とを備える微粒子であって、微球体が、エチレン性不飽和基を有する単量体の重合物から形成されており、1〜20μmの平均粒子径を有しており、前記高分子が、前記微球体への水溶性高分子の付着によって、分子レベルの厚さで存在している、微粒子、かかる微粒子を用いる液晶セル接着スペーサー、及びかかるスペーサーを用いる液晶表示素子に係るものである。
【0008】
本発明は、エチレン性不飽和基を有する単量体を重合して得られる微球体、特に、平均粒子径1μm〜20μmの微球体の表面に、水溶性高分子を分子レベルで作用させ、付着させる事によって、接着性を発揮する新しい微粒子が得られ、かかる微粒子をポリイミド基板上に湿式散布後、加熱処理する事によって、ポリイミド基板と良好に接着する液晶セル接着スペーサーが得られるという知見に基づく。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微粒子は、その表面に、水溶性高分子を、分子レベルで、おそらく単分子レベルで、剥離が問題とならない程に強固に備える事が出来、これは、必要に応じて、湿式散布等の処理をした後、加熱する事により、水溶性高分子の粘着性や水素結合によって、配向膜であるポリイミド被膜と接着し、尚且つ可能な場合には、同時に存在する表面処理剤等の効果によって、微粒子周辺の光抜けを十分に抑制する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、接着性において極めて良好な微粒子を得るという目的を、水溶性高分子の分子レベルでの付着によって、液晶規制性等の微粒子自体が本来備える事が出来る性能を損なわずに実現させた。
【0011】
本発明では、微粒子は液晶セル接着スペーサーとして用いる事が出来、又この液晶セル接着スペーサーでは、予め微球体に、着色処理又は/及び液晶を規制する為の表面処理をする事が出来る。かかる液晶セル接着スペーサーを用いる事により、表面処理剤等による液晶を規制する力等によって、粒子自身及び粒子周りに光抜けの発生が無くなり、尚且つ振動や衝撃が発生しても、スペーサーの移動によるポリイミド基板の傷発生やギャップ変動等の無い、良好な液晶表示素子を得る事が出来る。
【0012】
従来は、微粒子上に接着性分子を強固に接着させる為には、化学反応を利用する方法が一般的であった。
しかし、本発明では、微球体と水溶性高分子水溶液とを接触させ、好ましくは同時に加熱する事のみによって、簡便に、水溶性高分子の単分子レベルが微球体表面に付着し、その後、接着性を発現し、しかも水溶性高分子が微球体に強固に付着して、微粒子が基板等に対して固着性を発現する。
【0013】
水溶性高分子の分子レベルの厚さでの存在は、水溶性高分子の分子レベルの付着層という事も出来るが、微球体上の他の分子、例えば、表面処理剤分子の存在を覆い隠すのではなく、その共存を許容する点で、通常の被膜とは異なる。分子レベルの厚さの存在は、得られる微粒子において、又は微球体の表面上において、水溶性高分子の厚みが観察されない程度の分子レベルでの付着を意味する。例えば、水溶性高分子の分子レベルの存在は、電子顕微鏡、コールターカウンター等の測定機器によって測定しても、厚みが確認出来ない程度のものである。又、水溶性高分子の分子レベルの厚さよりも厚い付着は、厚みや得られる微粒子の接着性等の性能発揮において観察する事が出来、好ましくない事が分り、水溶性高分子の分子レベルの厚さでの存在とは区別する事が出来る。付着は、完全に解明されたわけではないが、おそらく、水溶性高分子の微球体表面への単分子レベルでの付着であり、水溶性高分子と微球体間の、水素結合、粘接着、等のような作用が関係していると思われる。
【0014】
微球体又は微粒子は、平均粒子径が数μm〜数十μmという程度では、表面積、質量等が非常に小さい故に、ブロー試験のような空気の力によって、移動するか、又は移動しないかの違いがはっきりと分り、この違いから、かかる現象、つまり、水溶性高分子の分子レベル、おそらく、単分子レベルが微球体の表面に付着し、その後の接着性や粘着性の発現によって、微球体に強固に付着している事が判明した。微球体の平均粒子径が実証されるものを超えて大きく、特に、本明細書に記載に実験の2倍以上あって、質量が大きいときには、全ての微粒子が移動し、本発明にかかる現象は分らなかったであろうと考えられる。
【0015】
つまり、本発明の根底にあるものは、水溶性高分子が、微球体に作用するが、微球体との共有結合等のような反応で結合するのではなく、共有結合のような反応以外の反応、即ち、付着性、水素結合、粘着性といった、水溶性高分子と微球体との間の付着力等によって分子レベルで強固に付着し、付着した分子レベルの水溶性高分子が、基材等との間に著しく良好な接着性を発揮するという新しい現象とメカニズムである。基材等は、配向膜であるポリイミド配向膜等を備えているものでよく、接着性は、完全に解明されているわけではないが、水分子等を介在する水素結合、粘着性等によって、基材のポリイミド等に微粒子を固着させると考えられる。
【0016】
水溶性高分子溶液中での懸濁重合によって、水溶性高分子がグラフト重合する場合、表面に均一に水溶性高分子が付着するわけではないので、これに関わる水素結合での接着力は非常に小さい。したがって、この程度の微粒子は、実験では、特に、本明細書の実施例の試験(評価方法)では、基板には殆ど接着せず、基板にスペーサーとして残存しないのが現状である。
【0017】
又、微球体の作製の際、懸濁重合において保護コロイドとして水溶性高分子を用いる事があるが、保護コロイドは、微球体の表面に分子レベルの水溶性高分子を均一に付着させるものではない。他方、本発明の場合、水溶性高分子は、微球体表面上に分子レベルで均一に付着するようにされ、その後に十分な接着力が得られるようなもので、好ましくは、水溶性高分子は、保護コロイドに比べ、はるかに小さい分子量、500以上5000以下、又は500〜1000のものが用いられる。
【0018】
具体的には、本発明では、所定の水溶性高分子水溶液中で、好ましくは加熱により、水溶性高分子を微球体に作用させ、又は付着するように作用させ、その後、不要な水溶性高分子を洗浄等によって除去する事で、微球体表面に分子レベルの水溶性高分子が強固に付着した微粒子を得る。又、この状態では、液晶を規制する表面処理剤と分子レベルの水溶性高分子とがスペーサー表面として同時に存在し得るので、極めて良好な接着性と同時にスペーサー周りの光抜けを良好に防止する事が出来る。
【0019】
(a)(微粒子)
微粒子は、微球体の表面上に、高分子の分子レベルの付着層を形成する事、即ち、分子レベルの水溶性高分子を作用させ、付加する事によって作製出来る。微球体表面に分子レベルの水溶性高分子を作用させ、付着させるには、例えば、微球体を水中に分散させた後、水溶性高分子を、この分散液中で溶解するか、又は分散させるか等して、これらを、場合によっては加熱等を施し、互いに作用させ、付着させる。本発明では、微粒子は、その後、不要な水溶性高分子を湯等の洗浄液で十分に洗浄する事によって、良好な品質のものとして得る事が出来る。これにより、微球体表面上で、分子レベルの水溶性高分子の付着が安定化する。
【0020】
その他の方法としては、微球体自体を所定の水溶性高分子水溶液中に直接添加しても良く、微球体の分散液としては、所定の水溶性高分子水溶液とは別に調製して、これらの分散液と溶液とを互いに混合しても良い。
上記方法によって、微球体表面上に分子レベルの水溶性高分子が作用し、付加し、水溶性高分子の分子レベルの付着層が形成され、良好な接着性を発揮する微粒子を得る事が出来る。
【0021】
(b)(微粒子表面の高分子)
分子レベルの水溶性高分子が付加された微粒子は、湿式散布後、加熱する事により、ポリイミド基材との水素結合等によって、基材との接着性を発現するが、微粒子表面の水溶性高分子は分子レベルである為、電子顕微鏡やコールターカウンター等で確認出来る程の厚みは確認出来ない。これは、ホットメルトコーティング樹脂層等の膜厚が確認出来るものに比べ、膜厚としてのばらつきが全く無い事を意味し、液晶セルのギャップ制御を極めて容易に行う事が出来る。
【0022】
分子レベルの水溶性高分子が表面に付加された微粒子は、湿式散布時の分散工程等で親水基が微粒子外側に向き、親水性となり、水分を含み、散布工程で微粒子は水分を含んだ状態で基材に散布され、加熱により微粒子表面と基材が水素結合をする。その後の完全に乾燥した状態では、基材との接点以外、親水基が微粒子内側を向き、疎水性となる。
【0023】
かかる接着性は、微粒子と基材間でのみ発現され、液晶を汚染する事なく、強固な接着をし、液晶セルスペーサーの接着性を発現するのに極めて良好である。
【0024】
(c)(表面処理微球体)
又、予め表面処理を施した微球体を被着粒子として、分子レベルの水溶性高分子を微球体表面に付着させた場合、上記性能に加え、表面処理の補助効果を発現し、表面処理剤単独の場合よりも、液晶の規制力並びに規制安定性が更に向上する。
【0025】
その理由は以下のような機構であると推測する。
即ち、分子レベルの水溶性高分子は鎖状構造を有しており、その分子長故に粒子表面への反応及び付着時において、表面処理分子に絡み付くように被着する。
絡み付いた水溶性高分子は表面処理剤分子の根元を保護するように形成され、液晶セル作製後の衝撃等、外力による表面処理剤分子の偏り等を抑制するか、又は制御し、表面処理単独の場合よりも安定した液晶セルスペーサーとなり得る。
【0026】
以上を更に詳しく説明する。
(1)(微球体)
分子レベルの水溶性高分子を付加する微球体(球状微粒子)は、エチレン性不飽和基を有する単量体を重合して得られる重合物から形成され、特に制限される事なく、種々の材料を使用する事が出来るが、一般にスペーサーとしては、粒子径分布の狭いほぼ真球である球状架橋樹脂微球体が使用されるので、かかる微球体を用いる事が出来る。
【0027】
微球体は、平均粒子径が数μmという程度、好ましくは、1μm〜20μm、1μm〜10μm、1μm〜6μm、又より一層小さい程度の範囲を含むもので良い。微球体、特に、微粒子をスペーサーとして用いる微球体の場合は、水溶性高分子を付着させた後にも、微球体自体の、ほぼ真球の形状、平均粒子径等が変らないものを用いるのが良い。
【0028】
球状架橋樹脂微球体の原料体としては、ビニルモノマーやアクリル酸エステル等が用いられ、これらを単独又は共重合させて、微球体を製造する事が出来るが、これらの原料に限られたものではない。
【0029】
粒子分布の狭い微球体を製造する方法としては、スチレンのポリマーやポリメタクリル酸メチル(PMMA)を核として、これにモノマーを吸収させるか、又はこれを膨潤させてから重合させる、シード重合法や、水に不溶なモノマーを界面活性能の効果がある水系の分散媒中で高速撹拌して懸濁状態にし、次いで加熱する事により重合させる、懸濁重合法を採用する事が出来る。
【0030】
この場合、得られる微球体は、シード重合では、元々粒子径分布が小さいのでそのまま使用されるが、懸濁重合では、粒子径分布が広い為、分級等の工程を必要とする場合が多い。
【0031】
かかる微球体は、それ自体、着色粒子である事も可能であり、その表面に水溶性高分子を付着させて、本発明にかかる着色した微粒子を形成する事も出来る。又、かかる微球体は、水溶性高分子を作用させるのに先立って、液晶を規制して粒子周りの光抜けを防止する為に、予め表面処理を行う事が出来、表面処理済みの微球体表面上に水溶性高分子を作用させて、接着性を発揮し、尚且つ光抜け防止に有効な微粒子を形成する事が出来る。又、着色粒子の表面上に表面処理を施した後、粒子自身の光抜け及び粒子周りの光抜けを防止した微粒子を形成する事も出来る。
【0032】
かかる微球体の平均粒子径(直径)は、特に制限される事なく、多種多様の市販の微球体を用いる事が出来ることもあって、粒子径分布の均一な微球体で、特に、スペーサー用樹脂微球体が比較的容易に入手出来るので、これらが好ましい。
このようにして得る事が出来る微球体、特に、スペーサー用微球体の分散液中で、微球体表面上に水溶性高分子を作用させる事が出来る。
【0033】
(2)(水溶性高分子溶液の作製)
水溶性高分子溶液の材料としては、一般の水溶性高分子ポリマーであり、これを、水等で、常温又は加熱して溶解し、水溶液とする事が出来る。かかるポリマーは、利用可能なものとしては、ポリビニルアコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール等があり、これらは、単独若しくは複数を溶解させて、水溶性高分子溶液の材料としても良い。
【0034】
水溶性高分子は、分子量が、5000以上400000以下、又は20000〜200000のものが好ましい。重合度では、5000以下、100〜5000か、300〜1000か、500〜1000を含む範囲のものが好ましい。
【0035】
好ましくは、選定した上記ポリマーを、水又は温水(100℃未満、特に室温から90℃程度の温度を含む範囲のもの)に溶解させ、水溶性高分子溶液を作製する。このとき、水溶性高分子溶液の濃度は、飽和状態の方がよく、液温を上昇させてポリマーを溶解させ、溶液作製後もポリマーの膜が溶液表面に発生しないように、液温を上げた状態で撹拌を行う事が望ましい。水溶性高分子の溶解又は分散のための条件は、特に制限されないが、概して、80℃程度の温度を含む範囲、400rpm程度の撹拌を含む範囲、1時間程度の時間を含む範囲のもので良い。
【0036】
水溶性高分子を溶解又は分散させる溶媒は、代表的には水であるが、特に制限される事なく、水溶性高分子の微球体への付着を妨げない限り、種々の溶媒を用いる事が出来、種々の添加剤を配合する事が出来る。水溶性高分子の種類によっては、加熱しないと溶解しないものや、撹拌しながら添加しないとダマになり、溶解し難いものもあるので、取扱いは説明書に従う。
【0037】
又、溶解していないポリマーが残存し、溶液中にある場合、不純物として、回収した微粒子と一緒に残る為、作製した溶液を一度濾過し、不純物が無い状態で使用する事が望ましい。
【0038】
(3)(分子レベル水溶性高分子の微球体表面への付着)
水溶性高分子水溶液中に微球体を分散させる事で、水溶性高分子を微球体表面上に作用させ、及び付着させる事が出来る。かかる作用又は付着を行う場合、水溶性高分子の濃度は飽和状態がよく、好ましくは、温度を加えながら撹拌を行う。又、水溶性高分子、濃度、溶媒の種類等の条件にもよるが、概して、溶液が沸騰しないように、60℃以上100℃以下、代表的には、80℃程度を含む範囲で、1時間以上、代表的には、2時間〜4時間程度を含む範囲、100rpm以上300rpm〜500rpm程度の撹拌を含む範囲のものによって、作用又は接触による付着を行う。
【0039】
又、撹拌時、溶液粘度が高い為、撹拌速度が低いと微球体表面に作用に十分な水溶性高分子が接触しない可能性がある為、撹拌速度は300rpm以上や400rpm以上が望ましい。
【0040】
微粒子表面に反応又は付着した水溶性高分子を分子レベルで作用させるには、好ましくは、微粒子が分散した溶液を濾過する際に、微粒子に付着した不要な水溶性高分子を大量の湯等の洗浄液により洗浄する。不要な水溶性高分子を除去する手段は、代表的には洗浄液であり、又例えば、湯等であるが、特に制限される事なく、不要な水溶性高分子を除去できる限り、種々の溶媒、溶液等の種々の手段を用いる事が出来る。湯を使用する場合、水溶性高分子の溶解性を上げるために50℃以上が好ましい。
【0041】
又、濾過時に粒子表面が空気に接触乾燥すると、水溶性高分子の好ましくない付着、皮膜形成が起こり易く、余分な水溶性高分子が微球体に付着してしまう為、洗浄が終了するまで、微粒子を空気に接触させない事が好ましい。
【0042】
その後、反応微粒子表面上の水溶性高分子を安定させる為、乾燥を行う事で、分子レベルの水溶性高分子を備える好ましい微粒子を作製する事が出来る。乾燥によって疎水性雰囲気に置くことにより、微粒子表面上の水溶性高分子の親水基は、微粒子の内側を向く為、水に接触しない限り、化学的、物理的に安定で、尚且つ接着性を発現しない。
【0043】
又、乾燥時に高温で乾燥をする場合、微粒子表面上に反応した水溶性高分子の急激な収縮と分子間での水分の奪取が発生し易い為に、微粒子間でのいわゆる凝集が起こり、その後の分散処理が困難になることがあり、乾燥温度は60℃以上80℃以下、例えば、65℃を含む範囲で、乾燥時間は24時間以上が望ましい。
【0044】
乾燥及び分散後の分子レベルの水溶性高分子を有する微粒子は、粉体(パウダー)として用いる事が出来、液晶セルスペーサーとしても利用される。保存する場合、水分や水分等を含むものと接触すると、水溶性高分子の親水基が活性化し、微粒子表面が不安定になる為、必要に応じてデシケータ内で保存を行う。
【0045】
(3-1)(被膜としての膜厚)
膜厚の測定は、電子顕微鏡やコールターカウンター等を用いて確認出来る。この場合、全く同じ粒子径の微粒子は事実上製造する事が困難な為、多くの場合、ある程度の数の微粒子群を測定し、統計的に粒子径を推測する事が必要である。膜厚の推測の為には、100個以上、好ましくは10000個以上の測定が望ましい。
水溶性高分子の存在は、電子顕微鏡やコールターカウンター等で粒子径の変化が確認出来る程に厚くてはいけない。水溶性高分子の付着層は、分子レベルの付着層で、特に、単分子レベルの付着層が好ましい。
【0046】
ホットメルト樹脂被膜は、熱により軟化し、垂れ落ちたホットメルト樹脂と基板が接着する為に膜厚を必要とするが、分子レベルの水溶性高分子は、水分等を含んだ状態で粘着性を発現し、基材と接触後の乾燥により基板と水素結合をする為、皮膜層が形成される事が無く、従って熱によって流動しない。水溶性高分子が膜厚として確認出来る程厚い場合、かかる水溶性高分子の皮膜が液晶を規制する表面処理剤の分子を覆い隠してしまい、表面処理微球体自体が予め有する液晶規制力等の性能を発揮出来ない事があって好ましくない。
【0047】
(4)(接着性)
微粒子表面上に形成された分子レベルの水溶性高分子は、微粒子を所望の基材と接着させる事等に用いる事が出来る。一対の基材間の距離を所定の間隔に保つスペーサーとして微粒子を用いる場合、微粒子は湿式散布された基材に接着する。
【0048】
基材としては、特に制限される事なく、種々の材質、形状等の基材で良く、液晶セルスペーサーの場合には、通常のポリイミド等がコーティングされた液晶表示素子用基板等で良い。
【0049】
微粒子は、代表的には、水分の存在下での水素結合によって、それ自体で基材に対する接着性を発揮するが、接着性の発揮の為には、水分等の条件に特に制限される事なく、種々の条件、例えば、微粒子自体の粘着性を利用するようにするか、又は他の成分を用いることによって、基材に対する種々の接着性を発揮させる事が出来る。
【0050】
接着性を発揮する微粒子は、湿式散布時等の水分と反応し、粘着性を発現し、基材に散布された後の加熱により、微粒子表面の分子レベルの水溶性高分子と基材とが水素結合等をする事で、十分な接着力の接着性を発揮する事が出来る。
【0051】
接着性の液晶セルスペーサーを、ラビング処理されたポリイミド等の液晶セル用の基板、即ち配向膜に接着させるには、通常、ポリイミド上にスペーサーを湿式散布した後、ポリイミドがコーティングされたガラスを張り合わせた後、ガラス両面から圧力を加えた状態で、シール部分のエポキシを硬化させる為の加熱をする。
【0052】
かかる加熱に必要な温度は、熱硬化型エポキシ樹脂が硬化する温度、つまり100℃より高ければ良い。100℃よりも低い温度でも多少は接着するが、本来機能する十分な接着力を得られる事は少ない。加熱条件としては80℃〜250℃が望ましく、条件が可能な場合は150℃〜200℃の温度が望ましい。又、スペーサーと基材が十分な接着力を確保する為には、加熱時間もある程度必要である。エポキシ樹脂の硬化条件にもよるが、可能な場合、30分以上の加熱時間が望ましい。
【0053】
(5)(液晶セルスペーサー)
スペーサーは当然ながら液晶とは異なる組成をしており、液晶にとっては異物である為、スペーサー周辺では液晶の配向が乱れてスペーサー周辺のみ光が洩れるという、所謂光抜けの現象が発生する。この現象を解消する為には、スペーサーに表面処理を施し、スペーサーに対して液晶を垂直に配向するように規制する方法が取られている。
【0054】
液晶セル接着スペーサーを製造する為の微球体に分子レベルの水溶性高分子を付加する前に、微球体に表面処理を行う事は有効な手段である。
【0055】
表面処理としては、特に制限される事なく、水溶性高分子の付着や、その後の接着性の発現を妨げない限りにおいて、又水性高分子の付着後においても、種々のものを用いる事が出来る。
【0056】
表面処理が施されたスペーサーの表面に、更にホットメルトコーティング処理をした場合、熱を加える前は液晶を規制する能力は無く、熱を加える事によるホットメルトの溶融により、表面にコーティングされたホットメルトが垂れ落ち、表面処理効果が発現し、垂れたホットメルトが冷却され再度固化する事により、スペーサーが接着する。このホットメルトコーティング被膜は、加熱不足等により、ホットメルト層が十分に溶融しなかった場合、十分な接着力を得る事が出来ず、更にスペーサー表面のホットメルト被膜により表面処理効果も発現しない。この場合、液晶表示素子の機能を著しく低下させる原因となる。
【0057】
一方、分子レベルの水溶性高分子を表面処理が施された微球体に更に付加する場合、付加された後に何らエネルギーをかけなくても、既に表面処理効果が発現している。
【0058】
接着性が発現するのは、水分を含んだスペーサーが基材に散布され、加熱された後である。この場合、ホットメルト層のような被膜層を溶融させて固着力を発現させない為、スペーサーを接着させる条件を安定して得る事が出来る。この事により、常に一定の表面処理効果と接着性を得る事が出来る。
【0059】
更に、着色したスペーサーに、本発明にかかる方法により、分子レベルの水溶性高分子を付加する事が出来る。スペーサーが透明な場合は、スペーサー部分には液晶が無い為光を通してしまうが、スペーサーを着色する事等によって、この部分の光抜けを防止する事が出来る。したがって、ノーマリーブラック表示やカラー表示の場合、液晶表示装置(ディスプレイ)のコントラストを大幅に向上させる事が出来る。この場合も、勿論、着色した粒子の表面を表面処理した後、分子レベルの水溶性高分子を付着させる事は、液晶ディスプレイのコントラストの改善に更に有効であり、十分利用価値が高い。
【0060】
着色処理としては、特に制限される事なく、水溶性高分子の付着や、その後の接着性の発現を妨げない限りにおいて、又水性高分子の付着後においても、種々のものを用いる事が出来る。
【0061】
振動等によりスペーサーが移動すると、移動したスペーサーによって液晶の配向が乱され、液晶セルを作製後に、光抜けが著しく発生する場合がある。液晶パネルが使用されているときに、振動によりスペーサーが移動すると、光抜けと同時に配向膜を傷付けることがあって、表示性能を更に大きく低下させる場合がある。特に、車載用途では、常時振動が加わる為、いつ移動が発生するのか分らず、非常に危険な状態である。
【0062】
又、液晶パネルを指等で強く押えたり、落下させる等、激しい衝撃が液晶パネルに加わった場合、スペーサーの著しい移動等により、液晶を規制している表面処理分子そのものが絡まったり、異常な方向を向いたりして、液晶を規制しなくなるだけでなく、液晶の表示性能を著しく低下させる場合がある。
【0063】
ホットメルトコーティング処理の場合、加熱によりホットメルト樹脂が垂れてしまう為、理想的には、表面処理剤を保護する効果も消滅し、衝撃等による表面処理剤分子の並び方を制御する為の効果を期待出来ない。
一方、分子レベルの水溶性高分子は、スペーサー表面の表面処理剤分子の根元に絡むように形成され、加熱による薄膜の垂れがない為、加熱処理後も表面処理剤分子の並びを保護する効果、所謂アンカー効果を発揮し、衝撃による表面処理剤分子の並び方を制御する為の効果を発揮する事が出来る。
【0064】
本発明では、かかる振動から発生するスペーサー移動による表示性能の低下や、衝撃等による表面処理剤分子の異常による表示性能の低下を解決する事が出来る為、液晶セル形成後も安心して使用する事が出来、非常に有用である。以上のように、本発明により、振動や衝撃の発生があっても、表示の良好な液晶パネルを製造する事が可能となる。
【実施例】
【0065】
以下に、各種測定方法、評価方法及び実施例を挙げて、更に詳しく本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0066】
(測定方法)
<接着成分の厚さの測定方法>
接着成分の厚さは、本発明においては、主として、水溶性高分子の付加による厚さの事であり、水溶性高分子を付加する前に、微粒子に被膜を形成した場合には、その厚さを除いて算出される。
接着成分付与前の微球体を、予めコールターカウンターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)を用い、30000個測定し、個数平均粒子径を測定する。次に、同様の方法で、分子レベルの水溶性高分子が付加された微粒子の個数平均粒子径を測定する。又は、水溶性高分子の皮膜が形成された微粒子の個数平均粒子径を測定する。
【0067】
接着成分の厚みは、以下の計算で推測出来る。
接着成分の厚み=(分子レベルの水溶性高分子が付加された微粒子の粒子径-接着成分付与前の微球体の粒子径)/2、又は=(水溶性高分子の皮膜が形成された粒子径-接着成分付与前の粒子径)/2
【0068】
評価方法を以下に示す。
(接着性)
イソプロピルアルコール(IPA)/水=7/3の割合で分散媒を100mL作製し、その溶液中に測定粒子を1g入れ、超音波をかけながら5分間撹拌を行い、湿式散布用溶液を作製する。次に、作製した湿式散布用溶液を、霧吹きを用いて、ポリイミドがコーティングされたガラス基板に、100個/mm2で散布する。次に、ガラス基板を150℃のオーブンに30分間入れ、加熱処理を行う。
冷却後、エアーガンを使用し、ガラス基板から1cm離れた距離から、ガラス基板に対して90゜の角度で0.4MPaの圧力で、圧縮空気を30秒間噴射し、圧縮空気の当たった部分のスペーサーの残存率を、透過顕微鏡を用いて測定する。残存率(%)は次の式で与えられる。
残存率(%)=圧縮空気噴射後のスペーサー数/散布直後のスペーサー数×100
指標として、○:移動や飛散なし、△:一部に移動、飛散あり、×:ほぼ全て移動、飛散、を用いる。
【0069】
(表面形状)
電子顕微鏡JSM-6060(日本電子テクニクス社製)を使用し、粒子の凹凸の様子を確認する。指標として、○:滑らか、×:凹凸あり、を用いる。
【0070】
(粒子自身の光抜け)
液晶セルを組み立て、ブラックモードで電圧をかけない状態、及び電圧をかけた状態の双方でバックライトを当てて、目視及び透過顕微鏡によって、スペーサー部分の光抜けを観察する。指標として、○:なし、×:あり、を用いる。
【0071】
(粒子周辺の光抜け)
液晶セルを組み立て、ブラックモードで電圧をかけない状態、及び電圧をかけた状態の双方でバックライトを当てて、目視及び透過顕微鏡によって、スペーサー部分の光抜けを観察する。指標として、○:なし、△:一部光抜けあり、×:全周で光抜けあり、を用いる。
【0072】
(衝撃後の光抜け)
液晶セルを組み立て、ブラックモードで電圧をかけない状態、及び電圧をかけた状態の双方でバックライトを当てて、目視及び透過顕微鏡によって、スペーサー部分の光抜けを観察する。その後、液晶セルに、高さ3cmの所から重量60gの重りを自由落下させて、前記と同様にしてスペーサー部分の光抜けを観察し、衝撃前後でのスペーサー部分の光抜け、配向の変化を観察する。指標として、○:変化なし、△:やや悪化する、×:悪化する、を用いる。
【0073】
(総合評価)
以上の項目を総合的に判断して、以下の総合評価とする。指標として、◎:非常に良好、○:良好、△:使用可能、×:不良又は性能低下、を用いる。
【0074】
(実施例1)
実験内容を表1に、結果を表2にまとめる。
300mLのセパラブルフラスコ中ヘ、ポビニルアルコール(PVA、重合度約1000)20重量部、90℃脱イオン水180重量部を投入し、400rpmの回転数で撹拌し、80℃で1時間分散を行い、PVA溶液を作製する。
【0075】
上記PVA溶液を濾過し、濾過後の溶液を80℃に液温を保持しつつ、400rpmの回転数で撹拌しながら、スペーサー[早川ゴム(株)製、ハヤビースL-11、粒子径6.0μm]20重量部を投入し、2時間反応させる事でスペーサーに水溶性高分子を反応させる。2時間反応後、熱いままの溶液の濾過を行い、その後、大量の湯をファンネルに投入し、不要な水溶性高分子を洗浄する。この時、スペーサー表面が、空気に接触し、乾燥しないよう注意して行う。濾過後のスペーサーを65℃にて乾燥を行い、単分子の水溶性高分子の付着が表面に形成されたスペーサーを得る。
【0076】
単分子の水溶性高分子を表面に有する液晶セルスペーサー粒子の平均粒子径は6.0μmであり、膜厚は確認されない。
又、電子顕微鏡の観察では、スペーサー表面は滑らかである。セル形成後、衝撃等による粒子の移動は発生しない。又、衝撃前後の光抜けのレベルは変化しない。但し、スペーサー自身及びスペーサー周辺の光抜けは存在する。以上を総合的に判断すると、表示性能は一般的に使用出来るレベルである。
【0077】
(実施例2)
実験内容を表1に、結果を表2にまとめる。
300mLのセパラブルフラスコ中ヘPVA(重合度約500)20重量部、90℃脱イオン水180重量部を投入し、400rpmの回転数で撹拌し、80℃で1時間分散を行い、PVA溶液を作製する。
【0078】
上記PVA溶液を濾過し、濾過後の溶液を80℃に液温を保持しつつ、400rpmの回転数で撹拌しながら、スペーサー[早川ゴム(株)製、ハヤビーズL-11、粒子径6.0μm]20重量部を投入し、2時間反応させる事で、スペーサーに単分子の水溶性高分子を付加する。
【0079】
2時間反応後、熱いままの溶液の濾過を行い、その後、大量の湯をファンネルに投入し、不要な水溶性高分子を洗浄する。この時、スペーサー表面が、空気に接触し、乾燥しないよう注意して行う。濾過後のスペーサーを65℃にて乾燥を行う事で、単分子の水溶性高分子が表面に形成されたスペーサーを得る。
【0080】
単分子の水溶性高分子を表面に有する液晶セルスペーサー粒子の平均粒子径は6.0μmであり、膜厚は確認されない。又、電子顕微鏡の観察では、スペーサー表面は滑らかである。セル形成後、衝撃等による粒子の移動は発生しない。又、衝撃前後の光抜けのレベルは変化しない。但し、スペーサー自身及びスペーサー周辺の光抜けは存在する。以上を総合的に判断すると、表示性能は一般的に使用出来るレベルである。
【0081】
(実施例3)
実験内容を表1に、結果を表2にまとめる。
300mLのセパラブルフラスコ中ヘPVA(重合度約500)20重量部、90℃脱イオン水180重量部を投入し、400rpmの回転数で撹拌しながら、80℃で1時間溶解処理を行い、PVA水溶液を作製する。
【0082】
上記PVA溶液を濾過し、濾過後の溶液を80℃に液温を保持しつつ、400rpmの回転数で撹拌しながら、黒スペーサー[早川ゴム(株)製、ハヤビーズL-34、粒子径6.0μm]20重量部投入し、2時間反応させる事で、スペーサーに単分子の水溶性高分子が反応する。
【0083】
2時間反応後、熱いままの溶液の濾過を行い、その後、大量の湯をファンネルに投入し、不要な水溶性高分子を洗浄する。この時、スペーサー表面が、空気に接触し、乾燥しないよう注意して行う。濾過後のスペーサーを65℃にて乾燥を行う事で、単分子の水溶性高分子が表面に形成されたスペーサーを得る。
【0084】
単分子の水溶性高分子を表面に有する液晶セルスペーサー粒子の平均粒子径は6.0μmであり、膜厚は確認されない。又、電子顕微鏡の観察では、スペーサー表面は滑らかである。セル形成後、衝撃等による粒子の移動はない。又、衝撃前後の光抜けのレベルは変化しない。スペーサー自身の光抜けはなく、衝撃後も光抜けが発生しない。しかし、スペーサー周辺の光抜けは存在する。以上を総合的に判断すると、表示性能は良好に使用出来るレベルである。
【0085】
(実施例4)
実験内容を表1に、結果を表2にまとめる。
300mLのセパラブルフラスコ中ヘPVA(重合度約500)20重量部、90℃脱イ才ン水180重量部を投入し、400rpmの回転数で撹拌して、80℃で1時間溶解処理を行い、PVA溶液を作製する。
【0086】
上記PVA溶液を濾過し、濾過後の溶液を80℃に液温を保持しつつ、400rpmの回転数で撹拌しながら、炭素数12の直鎖アルキルを付加した黒表面処理スペーサー[早川ゴム(株)製、ハヤビーズL-34-DE、粒子径5.5μm]20重量部を投入し、2時間反応させる事で、スペーサーに単分子の水溶性高分子が反応する。
【0087】
2時間反応後、熱いままの溶液の濾過を行い、その後、大量の湯をファンネルに投入し、不要な水溶性高分子を洗浄する。この時、スペーサー表面が、空気に接触し、乾燥しないよう注意して行う。濾過後のスペーサーを65℃にて乾燥を行う事で、単分子の水溶性高分子が表面に付着したスペーサーを得る。
【0088】
単分子の水溶性高分子を表面に有する液晶セルスペーサー粒子の平均粒子径は5.5μmであり、膜厚は確認されない。又、電子顕微鏡の観察では、スペーサー表面は滑らかである。セル形成後、衝撃等による粒子の移動は発生しない。又、衝撃前後の光抜けのレベルは変化しない。スペーサー白身の光抜けは存在しないが、スペーサー周辺の光抜けが若干存在する。衝撃後のスペーサー白身及びスペーサー周辺の光抜けの悪化はなく、衝撃後の光抜けのレベルは変化しない。以上を総合的に判断すると、表示性能は非常に良好に使用出来るレベルである。
【0089】
(実施例5)
実験内容を表1に、結果を表2にまとめる。
300mLのセパラブルフラスコ中へポリビニルピロリドンK-30[和光純薬(株)製]30重量部、90℃脱イオン水170重量部を投入し、400rpmの回転数で撹拌して、80℃で1時間溶解処理を行い、ポリビニルピロリドン水溶液を作製する。
【0090】
上記水溶液を濾過し、濾過後の溶液を80℃に液温を保持しつつ、400rpmの回転数で撹拌しながら、炭素数12の直鎖アルキルを付加した黒表面処理スペーサー[早川ゴム(株)製、ハヤビーズL-34-DE、粒子径5.5μm]20重量部を投入し、2時間反応させる事で、スペーサーに単分子の水溶性高分子を作用させる。
【0091】
2時間反応後、熱いままの溶液の濾過を行い、その後、大量の湯をファンネルに投入し、不要な水溶性高分子を洗浄する。この時、スペーサー表面が、空気に接触し、乾燥しないよう注意して行う。濾過後のスペーサーを65℃にて乾燥を行う事で、単分子の水溶性高分子が表面に付着したスペーサーを得る。
【0092】
単分子の水溶性高分子を表面に有する液晶セルスペーサー粒子の平均粒子径は5.5μmであり、膜厚は確認されない。又、電子顕微鏡の観察では、スペーサー表面は滑らかである。セル形成後、衝撃等による粒子の移動は発生しない。又、衝撃前後の光抜けのレベルは変化しない。スペーサー自身及びスペーサー周辺の光抜けもなく、衝撃後も光抜けが発生しない。以上を総合的に判断すると、表示性能は非常に良好に使用出来るレベルである。
【0093】
(比較例1)
実験内容を表1に、結果を表2にまとめる。
原料微粒子[早川ゴム(株)製、ハヤビーズL-11、粒子径6.0μm]そのものを使用して液晶セルを作製する。
接着試験では、殆どの粒子が、移動、飛散する。スペーサー自身及びスペーサー周辺の光抜けが存在する。又、セル形成後、衝撃による移動が発生し、スペーサー周辺の光抜けが悪化する。以上を総合的に判断すると、衝撃が加わる環境では使用出来ないレベルである。
【0094】
(比較例2)
実験内容を表1に、結果を表2にまとめる。
表面処理なしの黒粒子[早川ゴム(株)製、ハヤビーズL-34、粒子径6.0μm]そのものを使用して液晶セルを作製する。接着試験では、全部の粒子が、移動、飛散する。スペーサー白身の光抜けは存在しないが、スペーサー周辺の光抜けが存在する。又、セル形成後、衝撃による移動が発生し、スペーサー周辺の光抜けが悪化する。以上を総合的に判断すると、衝撃が加わる環境では使用出来ないレベルである。
【0095】
(比較例3)
実験内容を表1に、結果を表2にまとめる。
表面処理済み黒粒子[早川ゴム(株)製、ハヤビーズL-34-DE、粒子径5.5μm]そのものを使用して液晶セルを作製する。
接着試験では、殆どの粒子が、移動、飛散する。スペーサー自身及びスペーサー周辺の光抜けは存在しない。セル形成後、衝撃による移動が発生し、スペーサー周辺の光抜けが発生する。以上を総合的に判断すると、衝撃が加わる環境では一般に使用出来ないレベルである。
【0096】
(比較例4)
実験内容を表1に、結果を表2にまとめる。
300mLのセパラプルフラスコ中ヘPVA(重合度約1000)20重量部、90℃脱イオン水180重量部を投入し、400rpmの回転数で撹拌し、80℃で1時間溶解処理を行い、PVA水溶液を作製する。
上記PVA水溶液を濾過し、濾過後の溶液を80℃に液温を保持しつつ、400rpmの回転数で撹拌しながら、スペーサー[早川ゴム(株)製、ハヤビーズL-11、粒子径6.0μm]20重量部を投入し、2時間反応させる事で、スペーサーに水溶性高分子を反応させる。
2時間反応後、熱いままの溶液の濾過を行うが、その後、脱イオン水は投入せず洗浄しない。濾過後のスペーサーを65℃にて乾燥を行う事で、水溶性高分子膜が表面に形成されたスペーサーを得る。
水溶性高分子膜を有する液晶セルスペーサー粒子の平均粒子径は6.2μmであり、膜厚0.1μmの水溶性高分子膜が粒子表面に存在する。電子顕微鏡の観察では、スペーサー表面に凹凸がある。セル形成後、衝撃等による粒子の移動が一部発生する。又、衝撃前後の光抜けのレベルは悪化する。スペーサー白身及びスペーサー周辺の光抜けも存在する。以上を総合的に判断すると、表示性能は低下し、使用不可能なレベルである。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
表1及び2に示すように、実施例1〜4のスペーサーは、比較例1〜4の微粒子に比べ、単分子レベルで水溶性高分子が付加されており、接着性、スペーサーの移動抑制等に優れた性能を発揮し、必要に応じた処理によって、光抜け防止、等の優れた性能を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、水溶性高分子の単分子レベルの付加によって極めて安定した接着性を示す微粒子が提供出来るので、良好な接着性が要求されるスペーサー、特に、優れた表示性能が要求される液晶スペーサーとして大いに期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微球体と、前記微球体の表面上に付着された高分子とを備える微粒子であって、微球体が、エチレン性不飽和基を有する単量体の重合物から形成されており、1〜20μmの平均粒子径を有しており、前記高分子が、前記微球体への水溶性高分子の付着によって、分子レベルの厚さで存在している、微粒子。
【請求項2】
水溶性高分子が、5000以下、又は300〜1000の重合度を有する、請求項1記載の微粒子。
【請求項3】
液晶セルスペーサーであって、請求項1又は2記載の微粒子の湿式散布後の加熱処理によって接着性が発現する、液晶セルスペーサー。
【請求項4】
予め微球体又は微粒子に、着色処理及び液晶の規制のための表面処理の一方又は双方の処理を施してある、請求項3記載の液晶セルスペーサー。
【請求項5】
液晶表示素子であって、請求項3又は4記載の液晶セルスペーサーを用いる、液晶表示素子。

【公開番号】特開2007−256309(P2007−256309A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76716(P2006−76716)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)
【Fターム(参考)】