説明

微粒子分散液、有機EL素子材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置

【課題】 リン光発光性有機金属錯体を含む微粒子分散液、前記分散液を含む、有用な有機EL素子材料を設計し、該有機EL素子材料を用いることにより、高い外部取り出し量子効率を示し、発光寿命が長く、且つ、駆動電圧の低い有機EL素子、照明装置および表示装置を提供する。
【解決手段】 リン光発光性有機金属錯体を含むことを特徴とする微粒子分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子分散液、該微粒子分散液を含む有機EL素子材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子ともいう)が挙げられる。無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。
【0003】
一方、有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光する化合物を含有する発光層を、陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子および正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・リン光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、さらに、自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
【0004】
また、今後の実用化に向けた有機エレクトロルミネッセンス素子の開発としては、効率よく高輝度に発光し、長寿命である有機エレクトロルミネッセンス素子が望まれている(例えば、特許文献1、2、3、4、5及び6参照。)。
【0005】
近年、高い発光効率を有する有機エレクトロルミネッセンス素子として、発光性物質同士が接近することによって発生する濃度消光を抑えることにより、発光効率を向上させるという観点から、置換基を有するオリゴフェニレン部分を有するリン光性ドーパントの例が報告された(例えば、非特許文献3参照。)。前記記載の技術は、リン光性ドーパントにかさ高い置換基を導入することによってリン光性ドーパント同士の接近を防ぎ、リン光性化合物が接近することで発生する濃度消光を抑制していると考えられる。
【0006】
更に近年、濃度消光の抑制を目的として、置換基が多重に分岐して樹状構造を形成した、いわゆるデンドリマー構造をもつ発光性化合物が提案され始めている(例えば、非特許文献1、2及び3参照。)。
【0007】
また、有機蛍光色素をシクロデキストリン誘導体に包接させた固定化有機蛍光色素を有する蛍光色変換膜をもちいた有機発光素子(例えば、特許文献8参照。)や、有機化合物とシクロデキストリン類の包接錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子(例えば、特許文献7参照。)等が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記のデンドリマー構造を有する発光性化合物や、シクロデキストリン誘導体に有機蛍光色素を包接させる技術では、包接により、エキサイプレックス形成の抑制や、濃度消光の低減等に若干の効果は得られているが、リン光発光性化合物(発光ドーパント)を用いる有機EL素子の外部取り出し量子効率や発光寿命の向上、駆動電圧の低減等の効果についてはいまだ、実用レベルには達していないのが現状である。
【0009】
また、従来公知のである近年のEL材料は種々の溶媒に難溶性のものが多く、塗布系に用いるには不適であった。そのため溶解性向上のためアルキル鎖等の導入により、その溶解性向上が図られているが分子設計上の選択幅が狭まる点や合成上より困難になる点などデメリットが大きい等の問題点があった。
【0010】
更に、溶液中では観察されない分子間の相互作用によるエキシマー発光等が成膜時に発現する場合があるが、蒸着による成膜では蒸着スピードのコントロール程度しか解決手段が無く、材料の基本的な性質に対する依存度が大きい、即ち、材料を合成して、成膜してみなければわからないため、開発コストや時間がかかり、且つ、「成膜時に分子間相互作用し難い分子」という限定要素が入るため、分子設計の観点からも材料開発の選択幅が狭まってしまう等の問題点があり、これらの問題点は、有機EL素子の発光効率の増加、長寿命化等の技術向上の観点からも大きなデメリットであり、解決が待たれている。
【特許文献1】特開2001−181616号公報
【特許文献2】特開2001−247859号公報
【特許文献3】特開2002−83684号公報
【特許文献4】特開2002−175884号公報
【特許文献5】特開2002−338588号公報
【特許文献6】特開2003−7469号公報
【特許文献7】特開2003−243175号公報
【特許文献8】特許第3463867号公報
【非特許文献1】Applied Physics Letters、第80巻2645ページ(2002)
【非特許文献2】IDW02予稿集(1124ページ)
【非特許文献3】第50回応用物理学関係講演会予稿集
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、リン光発光性有機金属錯体を含む微粒子分散液、前記分散液を含む、有用な有機EL素子材料を設計し、該有機EL素子材料を用いることにより、高い外部取り出し量子効率を示し、発光寿命が長く、且つ、駆動電圧の低い有機EL素子、照明装置および表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は下記の構成1〜11により達成された。
【0013】
(請求項1)
リン光発光性有機金属錯体を含むことを特徴とする微粒子分散液。
【0014】
(請求項2)
前記リン光発光性有機金属錯体が、包接化合物に包接され、複合体を形成していることを特徴とする請求項1に記載の微粒子分散液。
【0015】
(請求項3)
前記リン光発光性有機金属錯体が下記一般式(C)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子分散液。
【0016】
一般式(C)
M(L1)n(L2)m
〔式中、Mは、中心金属を表し、L1、L2は各々、配位子を表し、L1は少なくとも一つの高分子鎖を有する。nは1以上の整数、mは0以上の整数を表す。〕
(請求項4)
前記高分子鎖が多重分岐構造を有することを特徴とする請求項3に記載の微粒子分散液。
【0017】
(請求項5)
前記微粒子分散液の調製時に、再沈法を用いて分散液調製したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子分散液。
【0018】
(請求項6)
請求項1〜5のいずれか1項に記載の微粒子分散液を含むことを特徴とする有機EL素子材料。
【0019】
(請求項7)
陰極と陽極との間に、少なくとも1層の発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該発光層の少なくとも1層が、請求項6に記載の有機EL素子材料を用いて作製されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0020】
(請求項8)
陰極と陽極との間に、少なくとも1層の有機物含有層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機物含有層の少なくとも1層が、請求項6に記載の有機EL素子材料を用いて作製されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0021】
(請求項9)
白色に発光することを特徴とする請求項7または8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0022】
(請求項10)
請求項7〜9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えたことを特徴とする表示装置。
【0023】
(請求項11)
請求項7〜9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えたことを特徴とする照明装置。
【0024】
(請求項12)
請求項11に記載の照明装置と、表示手段として液晶素子と、を備えたことを特徴とする表示装置。
【発明の効果】
【0025】
リン光発光性有機金属錯体を含む微粒子分散液、前記分散液を含む、有用な有機EL素子材料を設計し、該有機EL素子材料を用いることにより、高い外部取り出し量子効率を示し、発光寿命が長く、且つ、駆動電圧の低い有機EL素子、照明装置および表示装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
請求項1〜5のいずれか1項に規定される構成を有するように調製された、リン光発光性有機金属錯体の微粒子分散液は、有用な有機EL素子材料として用いることが出来、前記有機EL素子材料を用いて作製された、本発明の有機EL素子は、外部取り出し量子効率が高く、発光寿命が長い等の優秀な素子特性を示すことがわかった。また、前記有機EL素子を用いて、高輝度の表示装置、照明装置を得ることにも併せて成功した。
【0027】
以下、本発明に係る各構成要素の詳細について、順次説明する。
【0028】
《微粒子分散液》
本発明の微粒子分散液について説明する。
【0029】
本発明の微粒子分散液はリン光発光性有機金属錯体(リン光発光性有機金属錯体については後で詳細に説明する)を含むことが特徴である。従来、有機金属錯体(本発明に係るリン光発光性有機金属錯体もこの範疇である)を素子材料として用いて素子の構成層を形成するときには、蒸着(スパッタリング等)や、溶液を用いての塗布による方法が考えられる。
【0030】
ここで、特に、コストメリットに優れている、溶液系での塗布を考えると、従来、有機金属錯体を溶解するためには、当該業者においては極性溶媒が使用されることが一般的であった。しかしながら、前記有機金属錯体が溶解しやすい極性溶媒を用いることにより、従来の有機EL素子材料の中で、濃度消光の抑制効果が高いとされている、包接型の有機金属錯体や、デンドリマー構造をもつ発光性化合物、ポリマー鎖を含む配位子を有する有機金属錯体等では、本来の濃度消光機能が十分に発揮されないという問題点があった。
【0031】
本発明者等は種々検討の結果、有機金属錯体を溶解するのではなく、微粒子分散系として用いることで、包接型の有機金属錯体や、ポリマー鎖を含む配位子を有する有機金属錯体が本来持っている濃度消光抑制機能が十分に発揮されることを見出した。
【0032】
更に、有機金属錯体を溶液として用いるのではなく、微粒子分散系として用いるので、平均粒子径や分散濃度の変化により個々の材料に対する最適化(チューニング)調整が可能となり、薄膜物性のコントロールが可能になるというメリットが得られた。
【0033】
また、分散系は均一溶液系に比べても、ミクロな範囲で分子間相互作用を持たせることができるため、個々の材料に対する薄膜物性の最適化(チューニング)が容易となるということが併せて、本発明の効果として得られた。
【0034】
本発明の微粒子分散液では、リン光発光性有機金属錯体が微粒子として分散されているが、前記微粒子とは、平均粒径が1nm〜300nmの範囲にはいるものを微粒子として定義し、好ましくは1nm〜100nm、更に好ましくは、2nm〜50nmの範囲で分散系が形成されている。
【0035】
また、リン光発光性有機金属錯体を微粒子分散させる溶媒としては、特に分散可能な溶媒であればなんでも良いが、本発明の効果を最大限活かすために、一般的に貧溶媒と考えられる非極性溶媒、アルコールまたは水等が好ましい。
【0036】
《微粒子の平均粒径》
ここで、本発明の微粒子分散液中の微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡で、100個以上の任意の粒子を観察し粒径を求めて、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで、個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0037】
《微粒子分散液の調製方法》
本発明の微粒子分散液の調製方法について説明する。
【0038】
微粒子分散液の調製方法としては、従来公知の高分子微粒子を製造する方法を適用することが可能である。例えば、ホモジナイザー(高圧、超音波等)、ビーズミル、ジェットミル、アルティマイザーによる物理的な力による分散方法が適用可能である。
【0039】
一方、上記方法に加えて、気相重合、乳化重合、懸濁重合等の方法により、高分子微粒子(配位子としての機能を有している)を合成し、金属と配位結合を形成させて、有機金属錯体の分散液(場合によっては、再分散が必要な場合もある)とする等の方法がある。
【0040】
また、ナノ粒子の調整法として、再沈法を適用することが好ましい。本発明に係る再沈法は、例えば、化学と工業、137ページ、2002年等に記載の方法を参照して実施が可能である。前記再沈法を用いることにより、ナノサイズの直系を持つナノ粒子の製造が可能であり、本発明の微粒子分散液の調製方法としては、最も好ましい方法である。
【0041】
《複合体》
ここで、本発明に係る複合体について説明する。
【0042】
本発明の微粒子分散液に含まれる、リン光発光性有機金属錯体(リン光発光性有機金属錯体については後で詳細に説明する)は、請求項2に記載のように、前記リン光発光性有機金属錯体が、包接化合物に包接され、複合体を形成していることが好ましい態様の一つとしてあげられる。
【0043】
本発明に係る複合体は、包接化合物に、リン光発光性有機金属錯体(発光ドーパントともいい、説明は後述する。)を包接させた状態で存在することを特徴とする。また、包接化合物は、正孔輸送性基または電子輸送性基を有することが好ましい。前記正孔輸送性基、電子輸送性基については、包接化合物のところで説明する。
【0044】
更に、本発明に係る包接化合物は、包接機能を有する部分構造を繰り返し単位として有する重合体の形態としても用いることが出来る。
【0045】
本発明者等は、上記の問題点を本発明の複合体を用いて作製された有機EL素子により、素子の外部取り出し量子効率や発光寿命の向上、駆動電圧の低減等を達成したが、その経緯を下記に示す。
【0046】
従来公知の、デンドリマー構造をもつ発光性化合物、有機蛍光色素をシクロデキストリン誘導体に包接させた固定化有機蛍光色素を有する蛍光色変換膜をもちいた有機発光素子や、有機化合物とシクロデキストリン類の包接錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子においては、各々の発光性化合物が包接化合物の内部空間に包接されたことによる、包接効果(籠効果ともいい、立体的な要因によりドーパント同士の接近が妨げられることによる濃度消光の抑制、材料の劣化防止、素子の安定性向上等)を得ることには成功しているが、反面、有機EL素子の発光に欠かせない正孔と電子の再結合の効率が低下したり、正孔と電子の再結合により生成したホスト化合物の励起三重項状態からリン光発光性化合物(有機金属錯体)へのスムースなエネルギー移動が抑制され、発光効率の低下、駆動電圧の増加等の好ましくない現象が招来される等の傾向があった。
【0047】
本発明者等は、種々検討の結果、包接効果と電荷注入のバランスの調整が上記問題点解決のキーと考え、前記バランスを調整する手段として、包接化合物と有機金属錯体の分子間相互作用(ここで、分子間相互作用とは有機金属錯体が包接化合物により包接されている度合いを示す)に着目した。
【0048】
そして、前記分子間相互作用の強さを表すパラメーターとして、有機金属錯体、複合体の各々の濃度消光の抑制度(本発明では蛍光強度測定から濃度消光を示す濃度を算出する、これについては、包接化合物のところで詳細に説明する)を測定することにより、包接効果と電荷注入のバランスの状態を推定することが可能になった。
【0049】
尚、本発明に係る複合体は、種々の表示デバイス、ディスプレーに加えて、各種発光光源、照明装置の形成材料として用いる、家庭用照明、車内照明、また露光光源のような一種のランプ用形成材料としても有用であり、また、液晶表示装置のバックライト等、表示装置用の形成材料としても有用である。中でも、上記の表示装置、照明装置に用いられる有機EL素子の形成材料として好ましく用いられ、特に、有機EL素子の構成層である発光層(発光層についての詳細は後述する)の形成用材料として好ましく用いられる。
【0050】
また、複合体の合成に当たっては、包接化合物をリン光発光性有機金属錯体に包接させるわけであるが、従来公知の包接体(包接化合物がゲスト分子を包接化合物の内部空間に取りこんだ状態)の合成方法(これら合成は、当該業者にとっては周知の合成方法である。)を参照することにより、本発明の複合体の合成を実施出来る。
【0051】
《包接化合物》
本発明に係る包接化合物について説明する。
【0052】
本発明に係る包接化合物は下記に示すような包接機能を有する化合物である。
【0053】
(包接)
本発明に係る包接とは、イオン結合力、イオン−双極子相互作用、水素結合、電荷移動相互作用、配位結合、ファンデルワールス力、π−π相互作用(πスタック)等の結合力により、包接化合物が包接される化合物(本発明では、リン光発光性有機金属錯体が包接される化合物である。)を取り囲んで、本発明の複合体を生成する現象を示す。
【0054】
また、本発明においては、包接化合物がゲスト分子を取り囲むという状態は、包接化合物の内部空間にゲスト化合物が完全または部分的に取り込まれる状態はもちろんであるが、包接化合物がゲスト分子との分子間相互作用により分子集合体を形成する場合も含み、前記包接化合物の内部空間にゲスト化合物が完全に取り込まれていない状態も包接されている状態として含む。本発明においては、包接化合物の内部空間にゲスト化合物分子が完全に取り込まれていない状態のほうが、本発明に記載の効果(素子の外部取り出し量子効率の向上)をより好ましく得ることができる。
【0055】
(包接の確認法法)
本発明に係るリン光発光性有機金属錯体が包接化合物に包接されて複合体を形成したか、または未包接体の状態で存在しているかの確認方法としては、従来公知の包接体の一般的な確認方法を使用することができる。
【0056】
例えば、包接化合物は溶解するが、有機金属錯体は溶解しないような溶媒系で包接を行うことで、溶液中での有機金属錯体の消失をもって包接体の生成を確認出来る。
【0057】
より定量的な確認手段としては、1H−NMR(核磁気共鳴分析)または、13C−NMR(核磁気共鳴分析)等を用いることで、単独の有機金属錯体で存在しているか、包接化合物と複合体を形成しているかどうかを定量的に確認することが出来る。
【0058】
また、包接効果と電荷注入のバランス、即ち、包接化合物と有機金属錯体の分子間相互作用の大きさは、下記で詳述する、濃度消光の抑制度を算出することにより包接の度合い(濃度消光の抑制度ともいう)を確認することができる。
【0059】
以下に、包接の度合いについて説明する。
【0060】
《包接の度合い(濃度消光の抑制度)の算出方法》
包接の度合いの算出方法としては、本発明の複合体、未包接状態の有機金属錯体の蛍光強度測定から濃度消光を示す濃度を各々測定し、濃度消光の抑制度を算出し、包接の度合いを推定した。
【0061】
具体的には、次のような操作により算出することができる。合成した複合体(包接体ともいう)をゲル濾過クロマトグラフィー、もしくはカラムクロマトグラフィー等により精製した後、濃度を変えて蛍光測定(測定は各々N=3)を行い、その平均値を用いた。
【0062】
各濃度での蛍光強度から、濃度消光を示す濃度[C]を決定した。同様にして、ブランクとなる未包接体の有機金属錯体の濃度消光を示す濃度[C0]を決定し、両者の関係が、(C/C0)>1.1のとき、包接体(有機金属錯体が包接化合物により包摂されている)と定義した。ここで、本発明においては、(C/C0)の値が1.2以上であることが好ましく、更に好ましくは、1.4〜3.0の範囲である。
【0063】
また、包接体中のリン光ドーパントの濃度は、当該業者周知の無機金属の定量方法であるICP(誘導結合プラズマ)発光分析により決定し、算出することが出来る。
【0064】
以上から、本発明者等は、上記の包接の度合い(濃度消光の抑制度)から、包接化合物と有機金属錯体の分子間相互作用を考慮することによって、包接効果と電荷注入のバランスを最適化し、リン光発光型有機EL素子の高い発光効率を生かしながら、且つ、高い発光寿命を有する有機EL素子の開発に至ったものである。また、本発明の有機EL素子は、駆動電圧も低いという優れた特性を示すことがわかった。
【0065】
また、包接化合物と、該包接化合物に包接したリン光発光性有機金属錯体により形成された複合体における、該有機金属錯体の包接状態のコントロールの一つの方法としては、包接化合物とリン光発光性ドーパントの組み合わせを選択することで、例えば1:1包接体、2:1包接体と言ったように、包接時の包接化合物と有機金属錯体(リン光ドーパント)のとの包接比を調節することができる。前述のように、包接状態のコントロール(具体的には、包接効果と分子間相互作用とのバランス調整ということである)の結果、後述の実施例に示すように、外部取り出し量子効率や発光寿命の向上だけではなく、素子の駆動電圧の低減という効果をも併せて実現することが出来る。
【0066】
《包接化合物の具体例》
本発明に係る包接化合物とは、下記に示す包接機能を有する化合物を指し、例えば、クラウンエーテル誘導体、シクロファン誘導体、カリックスアレーン誘導体、カーボンナノチューブ誘導体、シクロデキストリン誘導体、シクロトリフォスファゼン誘導体、クリプタンド誘導体、ポタンド誘導体等があげられるが、中でも、カリックスアレーン誘導体、クラウンエーテル誘導体、シクロデキストリン誘導体が好ましく、更に好ましくは、カリックスアレーン誘導体、クラウンエーテル誘導体が挙げられる。
【0067】
また、本発明に係る包接化合物として好ましく用いられるカリックスアレーン誘導体、カーボンナノチューブ誘導体、シクロデキストリン誘導体について、以下に具体的に説明する。
【0068】
(カリックスアレーン誘導体)
本発明に係るカリックスアレーン誘導体とは、フェノール誘導体をアルキレン基またはオキシアルキレン基で結合した環状構造を有する化合物の総称を表し、また、分子内のフェノール性水酸基は置換基で置換されていて構わない。
【0069】
(クラウンエーテル誘導体)
本発明に係るクラウンエーテル誘導体とは、環状ポリエーテルであって、環全体が多座配位子となり、金属イオンや有機イオンと包接する機能を持つ化合物の総称を表し、且つ、酸素原子の代わりにその一部、または全てが窒素、硫黄で置換されても良い。
【0070】
(シクロデキストリン誘導体)
本発明に係るシクロデキストリン誘導体とは、複数のD−グルコピラノース基がα−1、4グリコシド結合によって環化した構造を有する化合物の総称。分子内に存在する1級と2級の水酸基は置換基で置換されていて構わない。
【0071】
また、本発明に係る包接化合物は、素子の発光効率向上の観点から、少なくとも正孔輸送性基または電子輸送性基を有することが好ましい。以下に、本発明に係る包接化合物が有する正孔輸送性基、電子輸送性基について説明する。
【0072】
(包接化合物が有する正孔輸送性基)
本発明に係る包接化合物が有する正孔輸送性基について説明する。
【0073】
本発明に係る包接化合物が有する正孔輸送性基としては、後述する、本発明の有機EL素子の構成層として用いられる正孔輸送性層に含有される正孔輸送材料から誘導される置換基が好ましく用いられる。
【0074】
前記置換基(正孔輸送性基)を分子内に部分構造として含む正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよいが、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾールとは、前記カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを表す。)、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等の従来公知の材料や、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、芳香族第三級アミン化合物等が挙げられる。
【0075】
芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0076】
(一般式(1A)で表される部分構造)
上記の中でも、好ましく用いられるのは、カルバゾール誘導体、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体であり、特に好ましく用いられるは、下記一般式(1A)で表される部分構造を有する、カルバゾール誘導体、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体である。
【0077】
【化1】

【0078】
式中、R1〜R5は、各々水素原子または置換基を表し、Qは、5員〜6員の芳香族炭化水素環または、構成原子として少なくとも一つの窒素原子を含む5員〜6員の芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。
【0079】
一般式(1A)において、R1〜R5で、各々表される置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシル基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、等が挙げられる。
【0080】
これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成してもよい。
【0081】
一般式(1A)において、Qにより形成される、5員〜6員の芳香族炭化水素環、構成原子として少なくとも一つの窒素原子を含む、5員〜6員の芳香族複素環としては、ベンゼン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環等が挙げられる。
【0082】
また、上記の環は、一般式(1A)において、R1〜R5で、各々表される置換基を有していてもよい。
【0083】
(包接化合物が有する電子輸送性基)
本発明に係る包接化合物が有する電子輸送性基について説明する。
【0084】
本発明に係る包接化合物が有する電子輸送性基としては、後述する、本発明の有機EL素子の構成層として用いられる電子輸送性層に含有される電子輸送材料から誘導される置換基が好ましく用いられる。
【0085】
前記置換基(電子輸送性基)を分子内に部分構造として含む電子輸送材料の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引性基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体等も挙げられる。
【0086】
中でも、本発明に係る電子輸送性基として、好ましく用いられるのは、下記一般式(2A)または(2B)で表される化合物から誘導される置換基である。
【0087】
【化2】

【0088】
式中、R6〜R15は、各々水素原子または置換基を表す。
【0089】
一般式(2A)において、R6、R7で、各々表される置換基、一般式(2B)において、R8〜R15で、各々表される置換基は、上記一般式(1A)において、R1〜R5で、各々表される置換基と同義である。
【0090】
また、本発明においては、上記一般式(1A)で表される部分構造を有する、カルバゾール誘導体、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン環を構成する炭素原子の任意のひとつが窒素原子で置き換わった環構造を有するものをジアザカルバゾール環とし、前記ジアザカルバゾール環を有する化合物を示す。)から誘導される基も、本発明に係る電子輸送性基として好ましく用いることが出来る。
【0091】
また、本発明に係る包接化合物としては、一般に包接化合物として市販されている化合物をそのまま使用することもできるが、包接化合物自体の溶解性または、包接化合物とリン光発光性有機金属錯体との分子間相互作用を調節するために置換基を導入することが好ましく、分子間相互作用調節の為の置換基としても、上記一般式(1A)において、R1〜R5で、各々表される置換基を用いることが出来る。
【0092】
以下、本発明に係る包接化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0093】
【化3】

【0094】
【化4】

【0095】
【化5】

【0096】
【化6】

【0097】
【化7】

【0098】
【化8】

【0099】
【化9】

【0100】
【化10】

【0101】
【化11】

【0102】
【化12】

【0103】
以下に、本発明に係る包接化合物の合成例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0104】
《合成例1:包接化合物CA−5(n=5)の合成》
4−tertブチルカリックス[8]アレーン1.3g(1.0mmol)を10mlのピリジンに溶解し、無水酢酸0.6g(6.0mmol)を加え、2時間加熱還流を行った。反応混合物は4〜8ヵ所の水酸基がアセチル化された、アセチル化4−tertブチルカリックス[8]アレーン混合物であり、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:トルエン1/1)により精製し、4ヵ所がアセチル化された、[4]アセチル化4−tertブチルカリックス[8]アレーン[包接化合物CA−5(n=5)]を収率58%(0.8g)で得た。
【0105】
得られた包接化合物CA−5(n=5)の構造は1H−NMRと質量分析により同定した。
【0106】
《合成例2:包接化合物CA−6(n=5)の合成》
28.7g(100mmol)の4−カルバゾリル−2,6−ジメチルフェノール、39.2g(220mmol)のN−ブロモスクシンイミドを100mlのトルエンに溶解し、加熱還流を行った。反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:トルエン7/3)により精製し、4−カルバゾリル−(2,6−ブロモメチル)フェノールを収率63%(28.0g)で得た。
【0107】
得られた、22.3g(50mmol)の4−カルバゾリル−(2,6−ブロモメチル)フェノール、13.0g(50mmol)の4−カルバゾリルフェノールを100mlのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、四塩化チタン1.0g(5mmol)を加え、加熱還流を20時間行った。
【0108】
得られた反応混合物をゲル濾過クロマトグラフィーを用いて精製し、カリックス[8]アレーン(包接化合物CA−6(n=5))を収率3%(0.7g)で得た。
【0109】
包接化合物CA−6(n=5)の構造は、1H−NMRと質量分析により同定した。
【0110】
《合成例3:包接化合物CE−10(n=3)の合成》
3.6g(10mmol)のジベンゾ18クラウン6を15mlのクロロホルムに加え、15分間撹拌した。この溶液に、3.5g(20mmol)のN−ブロモスクシンイミドを加え、さらに3時間撹拌を行った。
【0111】
反応終了後、沈殿物を濾取しクロロホルム/2−メトキシエタノールから再結晶を行い、ジブロモ体5.0g(97%)を得た。
【0112】
次に、ジブロモ体2.6g(5mmol)、4−カルバゾリルフェニルボロン酸3.5g(12mmol)、炭酸カリウム3.0g(22mmol)をTHF/純水(3/1)50mlに加えた。撹拌しながら、反応系内を十分に窒素置換した後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.6g(0.5mmol)を加え、8時間加熱還流を行った。シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)を用いて反応混合物を精製し、目的の包接化合物CE−10(n=3)を収率62%(2.6g)で得た。
【0113】
包接化合物CE−10(n=3)の構造は、1H−NMRと質量分析により同定した。
【0114】
これら包接化合物の合成は、当業者にとって従来公知の合成手法を参照することにより合成可能であるが、例えば、「超分子科学:中嶋直敏編著;化学同人出版;2004年3月発刊」及び、同書に参考文献として挙げられている文献記載の方法を参照することによっても合成可能である。
【0115】
本発明に係る複合体、即ち、包接化合物にリン光発光を示す有機金属鎖錯体を包接した複合体の合成方法(包接方法ともいう)については、一般に良く知られた方法をいずれの場合も用いることができる。この際のリン光発光性化合物として、後述するリン光発光性有機金属錯体を使用し、包接化合物としては、上記のクラウンエーテル、シクロファン、カリックスアレーン、カーボンナノチューブ、シクロデキストリン等を用いることができる。以下に、本発明に係る複合体の合成例の一例として、代表的な包接化合物を用いて、リン光発光を示す有機金属鎖錯体を包接して得られる複合体の製造方法を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0116】
《合成例A:複合体CL−1の製造》
ジベンゾ18クラウン6誘導体(包接化合物CE−10(n=3))0.25g(0.3mmol)を5mlの酢酸エチル/テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、ここに、後述するリン光発光性有機金属錯体のひとつである、PL14(トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3))0.1g(0.15mmol)を加え、5時間撹拌の後、12時間静置した。沈殿物を濾別した後、濾液から包接されたPL14(Ir(ppy)3)として、複合体CL−1を得た。得られた、複合体CL−1(包接Ir(ppy)3)をゲル濾過クロマトグラフィーを用いて精製し、収率89%(0.3g)で得た。
【0117】
《複合体CL−2〜CL10の合成》
合成例Aの複合体CL−1の合成において、包接化合物を表1に記載のように変更した以外は同様にして、複合体CL−2〜CL10を各々合成した。
【0118】
得られた複合体の包接化合物、リン光発光を示す有機金属錯体、前記包接化合物と有機金属錯体の複合体形成時のモル比データを以下に示す。
【0119】
【化13】

【0120】
《リン光発光性有機金属錯体》
本発明の微粒子分散液に含まれるリン光発光性有機金属錯体(リン光発光性有機金属錯体、リン光性発光ドーパント、リン光発光性ドーパント等ともいう)について説明する。
【0121】
本発明に係るリン光発光性有機金属錯体の少なくとも1種は、上記の包接化合物と複合体形成した状態で、上記微粒子分散液中に含まれることが好ましい態様の一つであり、また、前記微粒子分散液を用いて、本発明の有機EL素子の発光層やその他の層(有機EL素子の構成層であり、例えば、発光層の隣接層等でもよい)を作製することが好ましい。
【0122】
本発明に係るリン光発光性有機金属錯体は、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。例えば、特開2001−247859号公報に記載のイリジウム錯体、国際公開第00/70,655号パンフレット16〜18ページに挙げられるような式で表される、例えば、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム等やオスミウム錯体、あるいは2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金錯体のような白金錯体もドーパントとして挙げられる。ドーパントとしてこのようなリン光性化合物を用いることにより、内部量子効率の高い発光有機EL素子を実現できる。
【0123】
本発明に係るリン光発光性有機金属錯体(リン光性化合物)としては、好ましくは元素周期表の8族、9族、10族に属するいずれか1種の金属を含有する錯体系化合物が挙げられるが、更に好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも、最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0124】
本発明に係るリン光発光性有機金属錯体は、励起三重項からの発光が観測されるが更に、前記有機金属錯体のリン光量子収率が、25℃において0.001以上であることが好ましく、更に好ましくは、リン光量子収率が0.01以上であり、特に好ましくは0.1以上である。
【0125】
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、任意の溶媒の何れかにおいて上記リン光量子収率が達成されれば良い。
【0126】
《一般式(C)で表されるリン光発光性有機金属錯体》
また、本発明に係るリン光発光性有機金属錯体としては、前記一般式(C)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0127】
一般式(C)において、Mで表される中心金属としては、元素周期表の8族、9族、10族に属するいずれか1種の金属が挙げられるが、更に好ましくは、イリジウム、オスミウム、または白金であり、中でも、最も好ましいのはイリジウム、白金である。
【0128】
一般式(C)において、L1、L2で、各々表される配位子としては、従来公知の、単座配位子、二座配位子、三座配位子、四座配位子等を用いることができるが、L1は、少なくとも一つの高分子鎖を有し、好ましくは、前記高分子鎖が多重分岐構造を有することである。また、上記L1、L2が結合して、三座配位子、四座配位子等多座配位子を形成してもよい。
【0129】
一般式(C)において、L1で表される配位子の数nは、1〜4の数が好ましく、L2で表される配位子の数mは0〜4の範囲になるように調整することが好ましい。
【0130】
《高分子鎖が有する多重分岐構造》
本発明に係る、高分子鎖が有する多重分岐構造とは、いわゆる、多重分岐化合物の残基を繰り返し単位に有する、または、高分子鎖が置換基として前記残基を有する等の種々の態様が考えられる。また、多重分岐化合物とは、1次方向に伸びた直鎖型ポリマーや部分的に分岐構造を有するいわゆるペンダント(グラフト)型ポリマーとは異なり、3価以上の結合手を有する基をコア化合物にして、そこから一方向に分岐しながら成長し、平面、あるいは立体的広がりを持った分子構造を持つ化合物を指す。分岐様式は不規則でも規則性を持っていても良い。
【0131】
本発明では、リン光発光性有機金属錯体の配位子として、多重分岐構造を有する配位子を用いることにより、有機EL素子の発光効率の更なるアップ、発光寿命の更なる長寿命化を併せて達成することができた。
【0132】
《L1、L2で各々表される配位子について》
L1、L2で、各々表される二座の配位子としては、オキシカルボン酸、オキシアルデヒド及びその誘導体(例えば、サリチルアルデヒダト、オキシアセトフェノナト等)、ジオキシ化合物(例えば、ビフェノラト等)、ジケトン類(例えば、アセチルアセトナト、ジベンゾイルメタナト、ジエチルマロナト、エチルアセトアセタト等)、オキシキノン類(例えば、ピロメコナト、オキシナフトキノナト、オキシアントラキノナト等)、トロポロン類(例えば、トロポナト、ヒノキチオラト等)、N−オキシド化合物、アミノカルボン酸及び類似化合物(例えば、グリシナト、アラニナト、アントラニラト、ピコリナト等)、ヒドロキシルアミン類(例えば、アミノフェノラト、エタノールアミナト、メルカプトエチルアミナト等)、オキシン類(例えば、8−オキシキノリナト等)、アルジミン類(例えば、サリチルアルジミナト等)、オキシオキシム類(例えば、ベンゾインオキシマト、サリチルアルドキシマト等)、オキシアゾ化合物(例えば、オキシアゾベンゾナト、フェニルアゾナフトラト等)、ニトロソナフトール類(例えば、β−ニトロソ−α−ナフトラト等)、トリアゼン類(例えば、ジアゾアミノベンゼナト等)、ビウレット類(例えば、ビウレタト、ポリペプチド基等)、ホルマゼン類及びジチゾン類(例えば、ジフェニルカルバゾナト、ジフェニルチオカルバゾナト等)、ピグアニド類(例えば、ピグアニダト等)、グリオキシム類(例えば、ジメチルグリオキシマト等)等が挙げられる。
【0133】
以下に、本発明に好ましく用いられる、二座配位子の一般式及び具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0134】
【化14】

【0135】
上記の二座配位子の一般式において、Ra〜Rvは、各々アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)またはハロゲン化アルキル基(例えば、前記アルキル基の水素原子の少なくとも一つがフッ素原子、塩素原子、臭素原子または沃素原子等により置換されたものが挙げられる。)を表す。
【0136】
上記の二座配位子の一般式において、Ara〜Arcは、アリール基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等)または芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、フタラジニル基等)を表す。
【0137】
L1、L2で、各々表される三座の配位子としては、ジエチレントリアミン、2,2′,2″−テルピリジル、1,2,3−トリアミノプロパン、アスパラギン酸、グリシルグリシン、イミノジ酢酸、ジピコリン酸等が挙げられる。
【0138】
《L1で表される配位子》
本発明に係るL1で表される配位子は、具体的には、下記のL1−1〜L1−34からなる配位結合している構造を示す部分構造群から選択される少なくとも一つの部分構造と、下記HP−1〜HP−12からなる群から選択される少なくとも一つの高分子鎖とを組み合わせることにより形成される。また、高分子鎖としては、好ましくは、下記のHB−1〜HB−8からなる群から選択される少なくとも一つの、多重分岐構造を有する高分子鎖が好ましい。
【0139】
【化15】

【0140】
【化16】

【0141】
【化17】

【0142】
【化18】

【0143】
【化19】

【0144】
【化20】

【0145】
上記化合物において、Rは水素原子または、炭素数1〜8のアルキル基を表し、nは1〜4の整数を表す。
【0146】
《L2で表される配位子》
本発明に係るL2で表される配位子は、具体的には、下記のL2−1〜L2−18からなる配位結合している構造を示す部分構造群から選択される少なくとも一つの部分構造から選択される
【0147】
【化21】

【0148】
また、上記L1、L2で各々表される配位子は、一般式(1A)において、R1〜R5で、各々表される置換基を有していてもよい。
【0149】
以下に、上記のL1−1〜L1−34からなる配位結合している構造を示す部分構造群から選択される少なくとも一つの部分構造と、下記HP−1〜HP−12からなる群から選択される少なくとも一つの高分子鎖とを組み合わせることにより形成される、本発明に係るリン光発光性有機金属錯体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0150】
【化22】

【0151】
次に、上記のL1−1〜L1−34からなる配位結合している構造を示す部分構造群から選択される少なくとも一つの部分構造と、HB−1〜HB−8からなる群から選択される少なくとも一つの、多重分岐構造を有する高分子鎖とを組み合わせることにより形成される、本発明に係るリン光発光性有機金属錯体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0152】
【化23】

【0153】
また、本発明では、以下に示すリン光発光性を示す有機金属錯体についても、本発明の微粒子分散液の調製に用いることが出来る。
【0154】
【化24】

【0155】
【化25】

【0156】
【化26】

【0157】
また、上記PL−1〜PL−35の各有機金属錯体は、単独で用いてもよく、2種以上の化合物を併用して用いてもよい。尚、これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等を参照することにより合成可能である。
【0158】
更に、本発明のリン光発光性有機金属錯体としては、励起三重項からの発光が青色である、いわゆる、青色発光ドーパントとして下記のような青色発光性オルトメタル錯体が好ましく用いられる。
【0159】
《青色発光性オルトメタル錯体》
本発明に用いられる青色発光性オルトメタル錯体について説明する。
【0160】
本発明に係る青色発光性オルトメタル錯体とは、発光極大波長が400nm〜500nmの範囲にある、遷移金属を中心金属とするオルトメタル錯体であり、その最も短波な発光極大波長が455nm以下であることが好ましい。
【0161】
本発明に係る青色発光性オルトメタル錯体として用いられるものとしては、下記に示す7種の態様に分類される錯体が好ましく用いられる。ここでは、前記7種の態様を(a)〜(h)に分類し、各7種の態様について、各々具体的に説明する。
【0162】
《態様(a)》青色発光性オルトメタル錯体が、下記一般式(1)〜(6)で表される部分構造の少なくとも1種または該一般式(1)〜(6)で表される部分構造の各々の互変異性体の少なくとも1種を部分構造として有する場合。
【0163】
【化27】

【0164】
〔式中、Z11は、芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。R11、R12、R13は、各々水素原子または置換基を表す。M11は、元素周期表における8族〜10族の金属を表す。〕
【0165】
【化28】

【0166】
〔式中、Z21は芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。R21、R22、R23は、各々水素原子または置換基を表す。M21は、元素周期表における8族〜10族の金属を表す。〕
【0167】
【化29】

【0168】
〔式中、Z31は、芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。X31、X32、X33は、各々炭素原子、−C(R3)−、窒素原子または−N(R3)−(ここで、R3は、水素原子または置換基を表す。)を表す。C31は炭素原子を表す。M31は、元素周期表における8族〜10族の金属を表す。C31とNとの間の結合、NとX33との間の結合、X32とX33との間の結合、X31とX32との間の結合、C31とX31との間の結合は、各々単結合または二重結合を表す。〕
【0169】
【化30】

【0170】
〔式中、Z41は、芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。X41、X42の少なくとも1つは、窒素原子または−N(R4)−(ここで、R4は、水素原子または置換基を表す。)を表す。M41は、元素周期表における8族〜10族の金属を表す。C41、C42、C43は、各々炭素原子を表す。M41は、元素周期表における8族〜10族の金属を表す。C41とC42との間の結合、C41とX42との間の結合、X41とX42との間の結合、X41とC43との間の結合、C42とC43との間の結合は、単結合または二重結合を表す。〕
【0171】
【化31】

【0172】
〔式中、Z51は、芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。X51は、酸素原子または硫黄原子を表す。R51、R52は、水素原子または置換基を表す。M51は、元素周期表における8族〜10族の金属を表す。〕
【0173】
【化32】

【0174】
〔式中、Z61は、芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。X61、X62、X63は、各々炭素原子、−C(R6)−、窒素原子または−N(R6)−(ここで、R6は、水素原子または置換基を表す。)を表す。M61は、元素周期表における8族〜10族の金属を表す。〕
前記一般式(1)〜(6)または該一般式(1)〜(6)の各々の互変異性体を部分構造として有する金属錯体の含有層としては、発光層及び/または正孔阻止層が好ましく、また、発光層に含有する場合は、発光層中の発光ドーパントとして用いることにより、本発明の有機EL素子の外部取り出し量子効率の効率アップ(高輝度化)や発光寿命の長寿命化を達成することができる。
【0175】
《一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体》
一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、Z11で表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。
【0176】
中でも好ましく用いられるのは、ベンゼン環である。更に、前記芳香族炭化水素環は、後述する、前記一般式(1)においてR11、R12、R13で各々表される置換基を有してもよい。
【0177】
一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、Z11で表される芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくともひとつが更に窒素原子で置換されている環等が挙げられる。
【0178】
中でも好ましいのは、ピリジン環である。更に、前記芳香族複素環は、後述する、前記一般式(1)においてR11、R12、R13で各々表される置換基を有してもよい。
【0179】
一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体においてR11、R12、R13で各々表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、2−フェネチル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(ジアザカルバゾリル基とは、該カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の任意にひとつが窒素原子で置換されたものを示す。)、フタラジニル基等)、アルコキシル基(例えば、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、シアノ基、水酸基、アルケニル基(例えば、ビニル基等)、スチリル基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子、フッ素原子等)等が挙げられる。これらの基は、更に置換されていてもよい。
【0180】
中でも、本発明では、上記R11、R12、R13で表される基の少なくともひとつは、上記の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であることが好ましい。
【0181】
一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、M11は、元素周期表における8族〜10族の金属(金属原子でも、イオンでもよい)を表すが、中でも好ましく用いられるのは、白金(Pt)とイリジウム(Ir)である。また、一般式(1)または該一般式(1)の互辺異性体を部分構造として有する金属錯体において、M11は、金属でもよく、イオンでもよい。
【0182】
本発明では、上記一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体とM11で表される中心金属(金属でもイオンでもよい)との間で配位結合が形成(錯形成ともいう)されて金属錯体が形成される。
【0183】
《一般式(2)または該一般式(2)の互変異性体》
一般式(2)または該一般式(2)の互変異性体において、Z21で表される芳香族炭化水素環は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、Z11で表される芳香族炭化水素環と同義である。
【0184】
一般式(2)または該一般式(2)の互変異性体において、Z21で表される芳香族複素環は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、Z11で表される芳香族複素環と同義である。
【0185】
一般式(2)または該一般式(2)の互変異性体において、R21、R22、R23で、各々表される置換基は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体においてR11、R12、R13で各々表される置換基と同義である。
【0186】
一般式(2)または該一般式(2)の互変異性体において、M21で表される、元素周期表における8族〜10族の金属(イオンでもよい)は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、M11で表される、元素周期表における8族〜10族の金属と同義である。
【0187】
《一般式(3)または該一般式(3)の互変異性体》
一般式(3)または該一般式(3)の互変異性体において、Z31で表される芳香族炭化水素環は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、Z11で表される芳香族炭化水素環と同義である。
【0188】
一般式(3)または該一般式(3)の互変異性体において、Z31で表される芳香族複素環は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、Z11で表される芳香族複素環と同義である。
【0189】
一般式(3)または該一般式(3)の互変異性体において、X31、X32、X33で各々表される−N(R3)−のR3で表される置換基は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体においてR11、R12、R13で各々表される置換基と同義である。
【0190】
一般式(3)または該一般式(3)の互変異性体において、M31で表される、元素周期表における8族〜10族の金属(イオンでもよい)は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、M11で表される、元素周期表における8族〜10族の金属と同義である。
【0191】
《一般式(4)または該一般式(4)の互変異性体》
一般式(4)または該一般式(4)の互変異性体において、Z41で表される芳香族複素環は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、Z11で表される芳香族複素環と同義である。
【0192】
一般式(4)または該一般式(4)の互変異性体において、X41、X42で各々表される−N(R4)−のR4で表される置換基は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体においてR11、R12、R13で各々表される置換基と同義である。
【0193】
一般式(4)または該一般式(4)の互変異性体において、M41で表される、元素周期表における8族〜10族の金属(イオンでもよい)は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、M11で表される、元素周期表における8族〜10族の金属と同義である。
【0194】
《一般式(5)または該一般式(5)の互変異性体》
一般式(5)または該一般式(5)の互変異性体において、Z51で表される芳香族炭化水素環は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、Z11で表される芳香族炭化水素環と同義である。
【0195】
一般式(5)または該一般式(5)の互変異性体において、Z51で表される芳香族複素環は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、Z11で表される芳香族複素環と同義である。
【0196】
一般式(5)または該一般式(5)の互変異性体において、R51、R52で各々表される置換基は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体においてR11、R12、R13で各々表される置換基と同義である。
【0197】
一般式(5)または該一般式(5)の互変異性体において、M51で表される、元素周期表における8族〜10族の金属(イオンでもよい)は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、M11で表される、元素周期表における8族〜10族の金属と同義である。
【0198】
《一般式(6)または該一般式(6)の互変異性体》
一般式(6)または該一般式(6)の互変異性体において、Z61で表される芳香族炭化水素環は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、Z11で表される芳香族炭化水素環と同義である。
【0199】
一般式(6)または該一般式(6)の互変異性体において、Z61で表される芳香族複素環は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、Z11で表される芳香族複素環と同義である。
【0200】
一般式(6)または該一般式(6)の互変異性体において、M61で表される、元素周期表における8族〜10族の金属(イオンでもよい)は、一般式(1)または該一般式(1)の互変異性体において、M11で表される、元素周期表における8族〜10族の金属と同義である。
【0201】
以下、本発明に係る、前記一般式(1)〜(6)または該一般式(1)〜(6)の各々の互変異性体を部分構造として有する金属錯体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0202】
【化33】

【0203】
【化34】

【0204】
【化35】

【0205】
【化36】

【0206】
【化37】

【0207】
【化38】

【0208】
【化39】

【0209】
【化40】

【0210】
【化41】

【0211】
【化42】

【0212】
【化43】

【0213】
【化44】

【0214】
《態様(b)》青色発光性オルトメタル錯体が、下記一般式(7)で表される白金錯体で表される場合。
【0215】
【化45】

【0216】
〔式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は水素原子または置換基を表すが、その少なくとも一つは必ず置換基である。Raは置換基を表し、Xaは酸素原子または硫黄原子を表す。Y1−L1−Y2は2座の配位子を表し、Y1、Y2は各々独立に酸素原子、窒素原子、炭素原子または硫黄原子を表し、L1はY1、Y2と共に2座の配位子を形成するのに必要な原子群を表す。〕
《一般式(7)で表される金属錯体》
前記一般式(7)で表される白金錯体について説明する。
【0217】
一般式(7)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は水素原子または置換基で表されるが、その少なくとも一つは必ず置換基を表す。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7の二つ以上が置換基で表される場合でも、それらは互いに結合して環を形成することはない。また、Raは置換基を表し、Xaは酸素原子または硫黄原子を表す。
【0218】
一般式(7)において、前記Raで表される置換基としては、特に制限はないが、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、2−ナフチル基、2−ピリジル基、2−チエニル基、3−フリル基等)、ヘテロ環基(N−モルホリル基、2−テトラヒドロフラニル基等)等が挙げられる。
【0219】
これらの中、Raは炭素数1〜30のアルキル基であることが好ましく、Ra−Xa−はアルコキシル基、アルキルチオ基であることが好ましい。
【0220】
また、前記R1〜R7で表される置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、2−ナフチル基、9−フェナンスリル基、2−ピリジル基、メシチル基、カルバゾリル基、フルオレニル基、2−チエニル基、3−フリル基等)、ヘテロ環基(N−モルホリル基、2−テトラヒドロフラニル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、パーフルオロフェノキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、カルボアルコキシル基(例えば、カルボエトキシ基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基等)、シアノ基、フッ化炭化水素基(例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基等)等があげられる。
【0221】
一般式(7)において、Y1−L2−Y2は2座の配位子を表し、Y1、Y2は、各々独立に酸素原子、窒素原子、炭素原子、または、硫黄原子を表し、L1は、Y1、Y2と共に2座の配位子の形成するのに必要な原子群を表す。
【0222】
1−L2−Y2で表される2座の配位子の具体例としては、特に制限はないが、置換基を有しても良いフェニルピリジン、酢酸、アセチルアセトン、チオカルバミン酸誘導体、2−アシルフェノール、ピコリン酸等の誘導体であることが好ましい。
【0223】
また、前記アルコキシル基、アルキルチオ基等と共に、前記構造における3p〜6p位に導入され、かつ、互いに結合して環を形成しないことが好ましい少なくとも一つの置換基としては、前記一般式(7)におけるそれぞれR1、R2、R3、R4で表される基であり、これらのR1〜R4で表される置換基の少なくとも1つが、前記の置換基の中、電子供与性の置換基であることが好ましい。また、さらに好ましいのは、R1、R2、R3、R4で表される基の中、少なくとも二つが電子供与性の置換基である場合である。
【0224】
また、最も好ましいのは、一般式(7)においてR2とR4が電子供与性の置換基である場合である。
【0225】
電子供与性の置換基としては、前記の基の中、最も好ましくはアルキル基、アルコキシル基、アルキルアミノ基が挙げられる。
【0226】
次にこれらの置換基として好ましいのは、ハロゲン原子、中でもフッ素原子である。フッ素原子はπドナー性をもっているため、電子供与的に働く場合があり、その効果で好ましい素子性能を付与できるものと考えられる。
【0227】
以下に、本発明に用いられる前記一般式(7)で表される白金錯体について、具体的化合物例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0228】
【化46】

【0229】
【化47】

【0230】
【化48】

【0231】
【化49】

【0232】
【化50】

【0233】
【化51】

【0234】
【化52】

【0235】
【化53】

【0236】
【化54】

【0237】
【化55】

【0238】
【化56】

【0239】
《態様(c)》前記青色発光性オルトメタル錯体が、下記一般式(8)、(9)で各々で表される白金錯体の場合。
【0240】
【化57】

【0241】
〔式中、A、B、Cは水素原子または置換基を表し、その少なくとも二つは、−Xa−(Ra)na(Raは置換基を表す。Xaは、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を表す。naは1または2を表す。)で表され、互いに同一でも異なっていてもよい。R1、R2、R3、R4、R5は水素原子または置換基を表す。M1は元素周期表における第8族、第9族または第10族の元素を表す。〕
【0242】
【化58】

【0243】
〔式中、Rb、Rc、Rdは置換基を表し、Xb、Xc、Xdは酸素原子、硫黄原子または窒素原子を表す。nb、nc、ndは1または2を表す。R6、R7、R8、R9、R10は水素原子または置換基を表す。M2は元素周期表における第8族、第9族または第10族の元素を表す。〕
《一般式(8)で表される金属錯体》
前記一般式(8)で表される金属錯体について説明する。
【0244】
一般式(8)において、A、B、Cは水素原子または置換基で表されるが、その少なくとも二つは前記一般式(2)で表され、互いに異なっていてもよい。A、B、Cで表される置換基としては特に制限はないが、好ましくはアルキル基(例えば、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、2−ナフチル基、9−フェナンスリル基、2−ピリジル基、2−チエニル基、3−フリル基、メシチル基、カルバゾリル基、フルオレニル基等)、ヘテロ環基(N−モルホリル基、2−テトラヒドロフラニル基等)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、パーフルオロフェノキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、シアノ基、フッ化炭化水素基(例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シリル基(例えば、トリフェニルシリル基、トリメチルシリル基等)が挙げられる。この中で特に好ましいものは、アミノ基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基である。最も好ましくは、アミノ基、アルコキシル基、アルキルチオ基である。
【0245】
一般式(8)において、R1、R2、R3、R4、R5は水素原子または置換基を表す。R1、R2、R3、R4、R5で表される置換基としては、前記A、B、Cで表される置換基として説明したものと同義である。
【0246】
一般式(8)において、M1は元素周期表における第8族、第9族または第10族の元素を表す。第8族、第9族または第10族の元素としては、好ましくはルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金であり、最も好ましくはイリジウム、白金である。
【0247】
一般式(2)において、Raは置換基を表す。Raで表される置換基としては、前記A、B、Cで表される置換基として説明したものと同義である。この中で特に好ましいものは、アルキル基である。
【0248】
一般式(8)において、Xaは酸素原子、硫黄原子または窒素原子を表す。naは1または2を表す。
【0249】
一般式(8)において、A、B、Cの三つが一般式(2)で表される場合が最も好ましい。
【0250】
一般式(8)において、A、B、Cの二つが一般式(2)で表される場合、最も好ましくは一般式(2)が4位と6p位に置換される場合、好ましくは一般式(2)が4位と4p位に置換される場合である。
【0251】
《一般式(9)で表される金属錯体》
前記一般式(9)で表される金属錯体について説明する。
【0252】
一般式(9)において、Rb、Rc、Rdは置換基を表し、Rb、Rc、Rdで表される置換基としては、前記一般式(8)のA、B、Cで表される置換基として説明したものと同義である。Rb、Rc、Rdの置換基としてはアルキル基であることが好ましい。
【0253】
一般式(9)において、Xb、Xc、Xdは酸素原子、硫黄原子または窒素原子を表す。Xb、Xc、Xdの原子の組み合わせとしては、(1)Xdが窒素原子で、Xb、Xcが酸素原子、(2)Xdが硫黄原子であり、Xb、Xcが酸素原子、または(3)Xb、Xc、Xdが酸素原子であることが好ましい。
【0254】
一般式(9)において、nb、nc、ndは1または2を表す。
【0255】
一般式(9)において、R6、R7、R8、R9、R10は水素原子または置換基を表す。R6、R7、R8、R9、R10で表される置換基としては、前記一般式(8)のA、B、Cで表される置換基として説明したものと同義である。
【0256】
一般式(9)において、M2は元素周期表における第8族、第9族または第10族の元素を表す。第8族、第9族または第10族の元素としては、好ましくはルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金であり、最も好ましくはイリジウム、白金である。
【0257】
以下に、一般式(8)または(9)で表される錯体の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0258】
【化59】

【0259】
【化60】

【0260】
【化61】

【0261】
【化62】

【0262】
【化63】

【0263】
【化64】

【0264】
【化65】

【0265】
【化66】

【0266】
【化67】

【0267】
【化68】

【0268】
【化69】

【0269】
【化70】

【0270】
【化71】

【0271】
【化72】

【0272】
【化73】

【0273】
【化74】

【0274】
【化75】

【0275】
【化76】

【0276】
【化77】

【0277】
《態様(d)》青色発光性オルトメタル錯体が、下記一般式(10)で表される配位子を有する金属錯体、下記一般式(11)または(12)で表される部分構造を有する金属錯体または該一般式(11)または(12)で表される部分構造の各々の互変異生体を有する金属錯体である場合。
【0278】
【化78】

【0279】
〔式中、X1、X2、X3、X4は、各々独立に炭素原子または窒素原子を表し、C1、C2は炭素原子を表し、Z1は、C1、X1、X3と共に、Z2は、C2、X2、X4と共に、各々芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。A1は窒素原子またはホウ素原子を表し、R1は置換基を表す。C1とX1との間の結合、C2とX2との間の結合、X1とX3との間の結合、X2とX4との間の結合は単結合または二重結合を表す。〕
【0280】
【化79】

【0281】
〔式中、C3、C4、C5、C6、C7は、各々炭素原子を表し、Z3は、C3、C4、C5と共に芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、Z4は、C6、C7、Nと共に芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。A2は窒素原子またはホウ素原子を表し、R2は置換基を表し、M11は、元素周期表における第8族〜第10族の元素を表す。C3とC4との間の結合、C4とC5との間の結合、C6とC7との間の結合、C7とNとの間の結合は単結合または二重結合を表す。〕
【0282】
【化80】

【0283】
〔式中、A3は窒素原子またはホウ素原子を表し、R3は置換基を表し、R4、R5は置換基を表す。n1、n2は、各々0〜3の整数を表す。M12は元素周期表における第8族〜第10族の元素を表す。〕
《一般式(10)で表される配位子を有する金属錯体》
一般式(10)で表される配位子を有する金属錯体について説明する。
【0284】
最初に、一般式(10)で表される配位子について説明する。
【0285】
一般式(10)において、Z1がC1、X1、X3と共に、Z2がC2、X2、X4と共に、各々形成する芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。
【0286】
中でも好ましく用いられるのは、ベンゼン環である。更に、前記芳香族炭化水素環は、後述する、前記一般式(10)においてR1で表される置換基を有してもよい。
【0287】
一般式(10)において、Z1がC1、X1、X3と共に、Z2がC2、X2、X4と共に、各々形成する芳香族複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくともひとつが更に窒素原子で置換されている環等が挙げられる。
【0288】
中でも好ましいのは、ピリジン環である。更に、前記芳香族複素環は、後述する、前記一般式(10)においてR1で表される置換基を有してもよい。
【0289】
一般式(10)において、R1で表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、2−フェネチル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、フタラジニル基等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、シアノ基、水酸基、アルケニル基(例えば、ビニル基等)、スチリル基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子、フッ素原子等)等が挙げられる。これらの基は、更に置換されていてもよい。
【0290】
中でも、本発明では、上記R1で表される基の少なくともひとつは、上記の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であることが好ましい。
【0291】
上記一般式(10)で表される配位子と中心金属(金属でもイオンでもよい)との間で配位結合が形成(錯形成ともいう)されて金属錯体が形成される。
【0292】
ここで、前記配位子と中心金属(後述する)との間で配位結合が形成されるのは、前記一般式(10)で表される配位子を構成する原子の中で、X3及び/またはX4との間で配位結合または共有結合が形成されることが好ましい。
【0293】
《一般式(11)またはその互変異生体を部分構造として有する金属錯体》
一般式(11)またはその互変異生体を部分構造として有する金属錯体について説明する。
【0294】
一般式(11)において、Z3がC3、C4、C5と共に形成する芳香族炭化水素環は、前記一般式(10)において、Z1がC1、X1、X3と共に形成する芳香族炭化水素環と同義である。
【0295】
一般式(11)において、Z3がC3、C4、C5と共に形成する芳香族複素環は、前記一般式(10)において、Z1がC1、X1、X3と共に形成する芳香族複素環と同義である。
【0296】
一般式(11)において、Z4がC6、C7、Nと共に形成する芳香族複素環は、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくともひとつが更に窒素原子で置換されている環等が挙げられる。更に、前記芳香族複素環は、前記一般式(10)においてR1で表される置換基を有してもよい。
【0297】
一般式(11)において、R2で表される置換基は、前記一般式(10)においてR1で表される置換基と同義である。
【0298】
一般式(11)において、M11で表される、元素周期表における第8族〜第10族の元素としては、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等が好ましい。また、一般式(11)において、M11は、金属でもよく、イオンでもよい。
【0299】
《一般式(12)またはその互変異性体を部分構造として有する金属錯体》
一般式(12)またはその互変異性体を部分構造として有する金属錯体について説明する。
【0300】
一般式(12)において、R3で表される置換基は、前記一般式(10)においてR1で表される置換基と同義である。
【0301】
一般式(12)において、R4、R5で各々表される置換基は、前記一般式(10)においてR1で表される置換基と同義である。
【0302】
一般式(12)において、M12で表される、元素周期表における第8族〜第10族の元素としては、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等が好ましい。また、一般式(12)において、M12は、金属でもよく、イオンでもよい。
【0303】
以下に、一般式(10)で表される配位子を有する金属錯体、下記一般式(11)または(12)で表される部分構造を有する金属錯体または該一般式(11)または(12)で表される部分構造の各々の互変異生体を有する金属錯体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0304】
【化81】

【0305】
【化82】

【0306】
【化83】

【0307】
【化84】

【0308】
【化85】

【0309】
【化86】

【0310】
【化87】

【0311】
【化88】

【0312】
【化89】

【0313】
【化90】

【0314】
【化91】

【0315】
【化92】

【0316】
【化93】

【0317】
【化94】

【0318】
【化95】

【0319】
【化96】

【0320】
《態様(e)》青色発光性オルトメタル錯体が、下記一般式(13)で表される配位子を有する金属錯体、下記一般式(14)で表される部分構造を有する金属錯体、下記一般式(15)で表される部分構造またはその互変異性体を部分構造として有する金属錯体、下記一般式(16)で表される配位子を有する金属錯体、下記一般式(17)で表される部分構造を有する金属錯体、または下記一般式(18)で表される部分構造を有する金属錯体である場合。
【0321】
【化97】

【0322】
〔式中、X1、X2、X3、X4は、各々独立に炭素原子または窒素原子を表し、C1、C2は、各々炭素原子を表し、Z1は、C1、X1、X3と共に、Z2は、C2、X2、X4と共に、各々芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。A1は炭素原子またはケイ素原子を表し、R1、R2は、各々独立に水素原子または置換基を表す。C1とX1との間の結合、C2とX2との間の結合、X1とX3との間の結合、X2とX4との間の結合は、各々単結合または二重結合を表す。〕
【0323】
【化98】

【0324】
〔式中、C3、C4、C5、C6、C7は、炭素原子を表し、Z3は、C5、C3、C7と共に芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、Z4は、C6、C4、Nと共に芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、A2は炭素原子またはケイ素原子を表し、R3、R4は、各々独立に水素原子または置換基を表す。M11は元素周期表における第8族〜第10族の元素を表す。C5とC3との間の結合、C3とC7との間の結合、C6とC4との間の結合、C4とNとの間の結合は、各々単結合または二重結合を表す。〕
【0325】
【化99】

【0326】
〔式中、A3は炭素原子またはケイ素原子を表し、R5、R6は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R7、R8は、各々独立に置換基を表す。n1、n2は、各々独立に0〜3の整数を表す。M12は、元素周期表における第8族〜第10族の元素を表す。〕
【0327】
【化100】

【0328】
〔式中、X3、X4、X5、X6は、各々独立に炭素原子または窒素原子を表し、C8〜C13は、各々炭素原子を表し、Z5は、C8、X3、X5と共に、Z6は、C9、X4、X6と共に、Z7は、C10、C11と共に、Z8は、C12、C13と共に、各々独立に芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。A4は炭素原子またはケイ素原子を表す。X3とX5との間の結合、X4とX6との間の結合、C8とX3との間の結合、C9とX4との間の結合、C10とC11との間の結合、C12とC13との間の結合は、各々単結合、または、二重結合を表す。〕
【0329】
【化101】

【0330】
〔式中、C14〜C22は、各々炭素原子を表し、Z9は、C16、C14、C18と共に、Z11は、C19、C20と共に、Z12は、C21、C22と共に、各々芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、Z10は、C17、C15、Nと共に、芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。A5は炭素原子またはケイ素原子を表す。M21は、元素周期表における第8族〜第10族の元素を表す。C18とC14との間の結合、C14とC16との間の結合、C17とC15との間の結合、C15とNとの間の結合、C19とC20との間の結合、C21とC22との間の結合は、各々単結合または二重結合を表す。〕
【0331】
【化102】

【0332】
〔式中、Z13は、C23、C24と共に、Z14は、C25、C26と共に、各々芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、A6は炭素原子またはケイ素原子を表す。R9、R10は各々独立に置換基を表す。n3、n4は、各々独立に0〜3の整数を表す。M22は元素周期表における第8族〜第10族の元素を表す。C23とC24との間の結合、C25とC26との間の結合は、各々単結合または二重結合を表す。〕
《一般式(13)で表される配位子を有する金属錯体》
一般式(13)で表される配位子を有する金属錯体について説明する。
【0333】
最初に、一般式(13)で表される配位子について説明する。
【0334】
一般式(13)において、Z1とC1、X1、X3と共に形成される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。
【0335】
中でも好ましく用いられるのは、ベンゼン環である。更に、前記芳香族炭化水素環は、後述する、前記一般式(13)においてR1、R2で各々表される置換基を有してもよい。
【0336】
一般式(13)において、Z1とC1、X1、X3と共に形成される芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくともひとつが更に窒素原子で置換されている環等が挙げられる。
【0337】
中でも好ましいのは、ピリジン環である。更に、前記芳香族複素環は、後述する、前記一般式(13)においてR1、R2で各々表される置換基を有してもよい。
【0338】
一般式(13)において、R1、R2で各々独立に表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、2−フェネチル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、フタラジニル基等)、アルコキシル基(例えば、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、シアノ基、水酸基、アルケニル基(例えば、ビニル基等)、スチリル基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子、フッ素原子等)等が挙げられる。これらの基は、更に置換されていてもよい。
【0339】
中でも、本発明では、上記R1、R2で表される基の少なくともひとつは、上記の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であることが好ましい。
【0340】
上記一般式(13)で表される配位子と中心金属(金属でもイオンでもよい)との間で配位結合が形成(錯形成ともいう)されて金属錯体が形成される。
【0341】
ここで、前記配位子と中心金属(後述する)との間で配位結合が形成されるのは、前記一般式(13)で表される配位子を構成する原子の中で、X3及び/またはX4との間で配位結合または共有結合が形成されることが好ましい。
【0342】
《一般式(14)で表される部分構造を有する金属錯体》
一般式(14)で表される部分構造を有する金属錯体について説明する。
【0343】
一般式(14)において、Z3がC5、C3、C7と共に形成する芳香族炭化水素環は、前記一般式(13)において、Z1がC1、X1、X3と共に形成する芳香族炭化水素環と同義である。
【0344】
一般式(14)において、Z3がC5、C3、C7と共に形成する芳香族複素環は、前記一般式(13)において、Z1とC1、X1、X3と共に形成する芳香族複素環と同義である。
【0345】
一般式(14)において、Z4が、C6、C4、Nと共に形成する芳香族複素環としては、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくともひとつが更に窒素原子で置換されている環等が挙げられる。更に、前記芳香族複素環は、前記一般式(13)においてR1、R2で各々表される置換基を有してもよい。
【0346】
一般式(14)において、R3、R4で、各々独立に表される置換基は、前記一般式(13)において、R1、R2で各々独立に表される置換基と同義である。
【0347】
一般式(14)において、M11は元素周期表における第8族〜第10族の第VIII族の元素を表すが、中でも好ましく用いられるのは、白金(Pt)とイリジウム(Ir)である。また、一般式(14)において、M11は、金属でもよく、イオンでもよい。
【0348】
《一般式(15)またはその互変異性体を部分構造として有する金属錯体》
一般式(15)またはその互変異性体を部分構造として有する金属錯体について説明する。
【0349】
一般式(15)において、R5、R6で各々独立に表される置換基、R7、R8で各々独立に表される置換基は、前記一般式(13)において、R1、R2で各々独立に表される置換基と同義である。
【0350】
また、一般式(15)において、R5、R6の少なくとも一つは芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であることが好ましい。
【0351】
一般式(15)において、M12で表される元素周期表における第8族〜第10族の元素は、一般式(14)において、M11は元素周期表における第8族〜第10族の元素と同義である。
【0352】
《一般式(16)で表される配位子を有する金属錯体》
一般式(16)で表される配位子を有する金属錯体について説明する。
【0353】
一般式(16)において、Z5が、C8、X3、X5と共に、Z6が、C9、X4、X6と共に、Z7が、C10、C11と共に、Z8が、C12、C13と共に、各々独立に形成する芳香族炭化水素環は、前記一般式(13)において、Z1がC1、X1、X3と共に形成する芳香族炭化水素環と同義である。
【0354】
一般式(16)において、Z5が、C8、X3、X5と共に、Z6が、C9、X4、X6と共に、Z7が、C10、C11と共に、Z8が、C12、C13と共に、各々独立に形成する芳香族複素環は、前記一般式(13)において、Z1がC1、X1、X3と共に形成する芳香族複素環と同義である。
【0355】
《一般式(17)で表される部分構造を有する金属錯体》
一般式(17)で表される部分構造を有する金属錯体について説明する。
【0356】
一般式(17)において、Z9が、C16、C14、C18と共に、Z11が、C19、C20と共に、Z12が、C21、C22と共に、各々独立に形成する芳香族炭化水素環は、前記一般式(13)において、Z1がC1、X1、X3と共に形成する芳香族炭化水素環と同義である。
【0357】
一般式(17)において、Z9が、C16、C14、C18と共に、Z11が、C19、C20と共に、Z12が、C21、C22と共に、各々独立に形成する芳香族複素環は、前記一般式(13)において、Z1がC1、X1、X3と共に形成する芳香族複素環と同義である。
【0358】
一般式(17)において、Z10が、C17、C15、Nと共に形成する、芳香族複素環は、一般式(14)において、Z4が、C6、C4、Nと共に形成する芳香族複素環と同義である。
【0359】
一般式(17)において、M21で表される、元素周期表における第8族〜第10族の元素は、一般式(14)において、M11は元素周期表における第8族〜第10族の元素と同義である。
【0360】
《一般式(18)で表される部分構造を有する金属錯体》
一般式(18)で表される部分構造を有する金属錯体について説明する。
【0361】
一般式(18)において、Z13が、C23、C24と共に、Z14が、C25、C26と共に、各々形成する芳香族炭化水素環は、前記一般式(13)において、Z1がC1、X1、X3と共に形成する芳香族炭化水素環と同義である。
【0362】
一般式(18)において、Z13が、C23、C24と共に、Z14が、C25、C26と共に、各々形成する芳香族複素環は、前記一般式(13)において、Z1とC1、X1、X3と共に形成する芳香族複素環と同義である。
【0363】
一般式(18)において、R9、R10で、各々独立に表される置換基は、一般式(13)において、R1、R2で各々独立に表される置換基と同義である。
【0364】
一般式(18)において、M22で表される、元素周期表における第8族〜第10族の元素は、一般式(14)において、M11は元素周期表における第8族〜第10族の元素と同義である。
【0365】
以下に、一般式(13)で表される配位子を有する金属錯体、一般式(14)で表される部分構造を有する金属錯体、一般式(15)で表される部分構造またはその互変異性体を部分構造として有する金属錯体、一般式(16)で表される配位子を有する金属錯体、一般式(17)で表される部分構造を有する金属錯体、または一般式(18)で表される部分構造を有する金属錯体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0366】
【化103】

【0367】
【化104】

【0368】
【化105】

【0369】
【化106】

【0370】
【化107】

【0371】
【化108】

【0372】
【化109】

【0373】
【化110】

【0374】
【化111】

【0375】
【化112】

【0376】
【化113】

【0377】
【化114】

【0378】
【化115】

【0379】
【化116】

【0380】
【化117】

【0381】
【化118】

【0382】
【化119】

【0383】
【化120】

【0384】
【化121】

【0385】
【化122】

【0386】
【化123】

【0387】
【化124】

【0388】
《態様(f)》青色発光性オルトメタル錯体として、下記一般式(19)〜(27)からなる群から選択される少なくとも1種の白金錯体を用いる場合。
【0389】
【化125】

【0390】
〔式中、R1、R2は、各々水素原子または置換基を表す。但し、R1、R2の少なくとも一つは該置換基である。X1、X2は、各々炭素原子、窒素原子、酸素原子、または、硫黄原子を表し、Z1、Z2は、各々芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。n1は、1または2の整数を表し、n1が1の時、L1は二座配位子を表す。p1、q1は、各々0〜4の整数を表す。〕
【0391】
【化126】

【0392】
〔式中、R3、R4は、各々水素原子または置換基を表す。但し、R3、R4の少なくとも一つは該置換基である。n2は、1または2の整数であり、n2が1の時、L2は二座配位子を表す。p2、q2は、各々0〜4の整数を表す。〕
【0393】
【化127】

【0394】
〔式中、R5、R6は、各々水素原子または置換基を表す。Z3は芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。n3は、1または2の整数であり、n3が1の時、L3は、二座配位子を表す。p3は0〜3の整数、q3は0〜4の整数を表す。〕
【0395】
【化128】

【0396】
〔式中、R7、R8は、各々水素原子または置換基を表す。R9〜R13は、各々水素原子または置換基を表す。n4は、1または2の整数であり、n4が1の時、L4は二座配位子を表す。p4は0〜3の整数、q4は0〜4の整数を表す。〕
【0397】
【化129】

【0398】
〔式中、R14、R15は、各々水素原子または置換基を表す。Z4は芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。n5は、1または2の整数であり、n5が1の時、L5は二座配位子を表す。p5は0〜4の整数、q5は0〜3の整数を表す。〕
【0399】
【化130】

【0400】
〔式中、R16、R17は、各々水素原子または置換基を表す。R18〜R22は、各々水素原子または置換基を表す。n6は、1または2の整数であり、n6が1の時、L6は二座配位子を表す。p6は0〜3の整数、p7は0〜4の整数を表す。〕
【0401】
【化131】

【0402】
〔式中、R23、R24は、各々水素原子または置換基を表す。Z5は、窒素原子と共に芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。n7は、1または2の整数であり、n7が1の時、L7は二座配位子を表す。p8は0〜3の整数、q6は0〜4の整数を表す。〕
【0403】
【化132】

【0404】
〔式中、R25、R26は、各々水素原子または置換基を表す。Z6は、窒素原子と共に芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。n8は、1または2の整数であり、n8が1の時、L8は二座配位子を表す。p9は0〜3の整数、q7は0〜4の整数を表す。〕
【0405】
【化133】

【0406】
〔式中、R27、R28は、各々水素原子または置換基を表す。R27、R28の少なくとも一つは該置換基である。L0は二価の連結基を表す。X3、X4は、各々炭素原子、窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表し、Z7、Z8は、各々芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。n9は、1または2の整数であり、n9が1の時、L9は二座配位子を表す。p10、q8は、各々0〜4の整数を表す。〕
《一般式(19)で表される白金錯体》
一般式(19)で表される白金錯体について説明する。本発明では、前記一般式(19)の互変異生体で表されるものも含むものとする。
【0407】
一般式(19)において、R1、R2で、各々表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、フタラジニル基等)、アルコキシル基(例えば、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、シアノ基、水酸基、アルケニル基(例えば、ビニル基等)、スチリル基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子、フッ素原子等)等が挙げられる。これらの基は、更に置換されていてもよい。
【0408】
一般式(19)において、Z1が形成する芳香族炭化水素環または芳香族複素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられる。中でも好ましいのは、ベンゼン環である。
【0409】
一般式(19)において、Z2が形成する芳香族炭化水素環または芳香族複素環としては、例えば、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キナゾリン環、フタラジン環等が挙げられる。中でも好ましいのは、ピリジン環である。
【0410】
一般式(19)において、n1は、1または2の整数であり、n1が1の時、L1は二座配位子を表す。L1で表される二座の配位子としては、上記一般式(C)において、L1で表される二座の配位子として記載されているものを用いることが出来る。
【0411】
《一般式(20)で表される白金錯体》
本発明に係る一般式(2)で表される白金錯体について説明する。
【0412】
一般式(20)において、R3、R4で各々表される置換基は、前記一般式(19)においてR1、R2で各々表される置換基と同義である。
【0413】
一般式(20)において、L2で表される二座配位子は、前記一般式(19)において、L1で表される二座配位子と同義である。
【0414】
《一般式(21)で表される白金錯体》
本発明に係る一般式(21)で表される白金錯体について説明する。
【0415】
一般式(21)において、R5、R6で各々表される置換基は、前記一般式(19)においてR1、R2で各々表される置換基と同義である。
【0416】
一般式(21)において、L3で表される二座配位子は、前記一般式(19)において、L1で表される二座配位子と同義である。
【0417】
一般式(21)において、Z3とC(炭素原子)とで形成される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。更に、前記芳香族炭化水素環は、前記一般式(19)においてR1、R2で各々表される置換基を有してもよい。
【0418】
一般式(21)において、Z3とC(炭素原子)とで形成される芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくともひとつが更に窒素原子で置換されている環等が挙げられる。更に、前記芳香族複素環は、前記一般式(19)においてR1、R2で各々表される置換基を有してもよい。
【0419】
《一般式(22)で表される白金錯体》
本発明に係る一般式(22)で表される白金錯体について説明する。
【0420】
一般式(22)において、R7〜R13で各々表される置換基は、前記一般式(19)においてR1、R2で各々表される置換基と同義である。
【0421】
一般式(22)において、L4で表される二座配位子は、前記一般式(19)において、L1で表される二座配位子と同義である。
【0422】
《一般式(23)で表される白金錯体》
本発明に係る一般式(23)で表される白金錯体について説明する。
【0423】
一般式(23)において、R14、R15で各々表される置換基は、前記一般式(19)においてR1、R2で各々表される置換基と同義である。
【0424】
一般式(23)において、L5で表される二座配位子は、前記一般式(19)において、L1で表される二座配位子と同義である。
【0425】
一般式(23)において、Z4とC(炭素原子)とで形成される芳香族炭化水素環は、一般式(21)において、Z3とC(炭素原子)とで形成される芳香族炭化水素環と同義である。
【0426】
一般式(23)において、Z4とC(炭素原子)とで形成される芳香族複素環は、一般式(21)において、Z3とC(炭素原子)とで形成される芳香族複素環と同義である。
【0427】
《一般式(24)で表される白金錯体》
本発明に係る一般式(24)で表される白金錯体について説明する。
【0428】
一般式(24)において、R16〜R22で各々表される置換基は、前記一般式(19)においてR1、R2で各々表される置換基と同義である。
【0429】
一般式(24)において、L6で表される二座配位子は、前記一般式(19)において、L1で表される二座配位子と同義である。
【0430】
《一般式(25)で表される白金錯体》
本発明に係る一般式(25)で表される白金錯体について説明する。
【0431】
一般式(25)において、R23、R24で各々表される置換基は、前記一般式(19)においてR1、R2で各々表される置換基と同義である。
【0432】
一般式(25)において、L7で表される二座配位子は、前記一般式(19)において、L1で表される二座配位子と同義である。
【0433】
一般式(25)において、Z5とN(窒素原子)とで形成される芳香族複素環としては、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つが更に窒素原子で置換されている環等が挙げられる。更に、前記芳香族複素環は、前記一般式(19)においてR1、R2で各々表される置換基を有してもよい。
【0434】
《一般式(26)で表される白金錯体》
本発明に係る一般式(26)で表される白金錯体について説明する。
【0435】
一般式(26)において、R25、R26で各々表される置換基は、前記一般式(19)においてR1、R2で各々表される置換基と同義である。
【0436】
一般式(26)において、L8で表される二座配位子は、前記一般式(19)において、L1で表される二座配位子と同義である。
【0437】
一般式(26)において、Z6とN(窒素原子)とで形成される芳香族複素環としては、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つが更に窒素原子で置換されている環等が挙げられる。更に、前記芳香族複素環は、前記一般式(19)においてR1、R2で各々表される置換基を有してもよい。
【0438】
《一般式(27)で表される白金錯体》
本発明に係る一般式(27)で表される白金錯体について説明する。
【0439】
一般式(27)において、R27、R28で各々表される置換基は、前記一般式(19)においてR1、R2で各々表される置換基と同義である。
【0440】
一般式(27)において、L9で表される二座配位子は、前記一般式(19)において、L1で表される二座配位子と同義である。
【0441】
一般式(27)において、Z7が形成する5員または6員の環は、前記一般式(19)において、Z1が形成する5員または6員の環と同義である。
【0442】
一般式(27)において、Z8が形成する5員または6員の環は、前記一般式(19)において、Z2が形成する5員または6員の環と同義である。
【0443】
一般式(27)において、L0で表される二価の連結基としては、アルキレン基(例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、シクロヘキシレン基(例えば、1,6−シクロヘキサンジイル基等)、シクロペンチレン基(例えば、1,5−シクロペンタンジイル基など)等)、アルケニレン基(例えば、ビニレン基、プロペニレン基等)、アルキニレン基(例えば、エチニレン基、3−ペンチニレン基等)、アリーレン基などの炭化水素基のほか、ヘテロ原子を含む基(例えば、−O−、−S−等のカルコゲン原子を含む2価の基、−N(R)−基、ここで、Rは、水素原子またはアルキル基を表し、該アルキル基は、前記一般式(19)において、R1、R2で各々表される置換基に記載のアルキル基等)が用いられる。
【0444】
以下に、本発明の有機EL素子材料として用いられる白金錯体化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。尚、以下に示す具体例において、自由回転できないアリール基または自由回転できない芳香族複素環基の周囲を各々点線で表示した。
【0445】
《自由回転できないアリール基、自由回転できない芳香族複素環基》
本発明において、「自由回転できないアリール基、自由回転出来ない芳香族複素環基」とは、立体障害により結合の自由回転ができない置換基を表す。
【0446】
但し、自由回転できないという状態としては、前記アリール基、前記芳香族複素環基が周囲に配置されている他の置換基等とが近接していることにより、物理的に自由回転不可能な場合は当然であるが、アリール基の結合軸、または芳香族複素環基の結合軸を通して結合生成している置換基との配座エネルギーに由来する結合回転障壁が存在する場合も、自由回転できないアリール基、自由回転できない芳香族複素環基として定義出来る。
【0447】
ここで、結合回転障壁を生成させる、配座エネルギーとしては、105kJ/モル以上であることが好ましい。
【0448】
また、本発明では、各々物理的に自由回転不可能な状態である、アリール基、芳香族複素環基であることが好ましい。
【0449】
自由回転出来ないアリール基として用いることの可能なアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0450】
自由回転出来ない芳香族複素環基として用いることの可能な芳香族複素環基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等が挙げられる。
【0451】
【化134】

【0452】
【化135】

【0453】
【化136】

【0454】
【化137】

【0455】
【化138】

【0456】
【化139】

【0457】
【化140】

【0458】
【化141】

【0459】
【化142】

【0460】
【化143】

【0461】
【化144】

【0462】
【化145】

【0463】
【化146】

【0464】
【化147】

【0465】
《態様g》青色発光性オルトメタル錯体が、下記一般式(28)〜(32)からなる群から選択される少なくとも1種の部分構造または該部分構造の互変異生体を含む場合。
【0466】
【化148】

【0467】
〔式中、Cは炭素原子、Nは窒素原子を表し、Z11は炭素原子および窒素原子とともに芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、Z12は炭素原子とともに非芳香族環を形成するのに必要な原子群を表し、Mは金属を表す。〕
【0468】
【化149】

【0469】
〔式中、Cは炭素原子、Nは窒素原子を表し、Z21およびZ22は、それぞれ炭素原子および窒素原子とともに芳香環を形成するのに必要な原子群を表し、Mは金属を表す。〕
【0470】
【化150】

【0471】
〔式中、Cは炭素原子、Nは窒素原子を表し、Z31は炭素原子および窒素原子とともに芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、Z32は炭素原子とともに5員または6員の芳香族複素環を形成するのに必要な炭素原子、窒素原子または酸素原子により構成される原子群を表し、Mは金属を表す。〕
【0472】
【化151】

【0473】
〔式中、Cは炭素原子、Nは窒素原子を表し、Z41は炭素原子および窒素原子とともに環を形成するのに必要な原子群を表し、Z42は炭素原子とともに環を形成するのに必要な原子群を表し、Mは金属を表す。〕
【0474】
【化152】

【0475】
〔式中、Cは炭素原子、Nは窒素原子を表し、Z51は炭素原子および窒素原子とともに芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、Z52は炭素原子とともにアズレン環を形成する原子群を表し、Mは金属を表す。〕
一般式(28)〜(32)で各々表される特定構造を有する金属錯体化合物について説明する。
【0476】
前記一般式(28)において、Z11は炭素原子および窒素原子とともに芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、Z12は炭素原子とともに非芳香族環を形成するのに必要な原子群を表し、Mは金属を表す。Z11で形成される芳香族複素環としては、例えば、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キナゾリン環、フタラジン環等が挙げられる。Z12で形成される非芳香族環としては、例えば、以下に記載の環が挙げられる。
【0477】
【化153】

【0478】
一般式(28)において、好ましくはZ12で表される非芳香環が、R−2またはR−6である。
【0479】
次に、一般式(29)について説明する。
【0480】
一般式(29)において、Z21およびZ22は、各々炭素原子および窒素原子とともに芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、Mは金属を表す。Z21で形成される芳香環は、前記Z11と同様の芳香族複素環が挙げられ、Z22で形成される芳香族複素環としては、例えば、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環等が挙げられる。好ましくは、ピロール環、トリアゾール環の時である。
【0481】
次に、一般式(30)について説明する。
【0482】
一般式(30)において、Z31は炭素原子および窒素原子とともに芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、Z32は炭素原子とともに芳香族5員環を形成するのに必要な、炭素、窒素または酸素原子により構成される原子群を表し、Mは金属を表す。Z31で形成される芳香族複素環としては前記Z11と同様の芳香族複素環が挙げられ、Z32で形成される芳香族5員環としては、例えば、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環等を挙げることができ、好ましくは含窒素芳香族複素環であり、より好ましくは窒素または酸素原子が複数個含まれる含窒素芳香族複素環である。
【0483】
次に、一般式(31)について説明する。
【0484】
一般式(31)において、Z41は炭素原子および窒素原子とともに芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、Z42は炭素原子とともに環を形成するのに必要な原子群を表し、Mは金属を表す。Z41で形成される芳香族複素環は、前記Z11と同様の芳香族複素環が挙げられ、Z42で形成される環は、芳香環でも非芳香環でもかまわないが、好ましくは非芳香環である。
【0485】
次に、一般式(32)について説明する。
【0486】
一般式(32)において、Z51は炭素原子および窒素原子とともに芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、Z52は炭素原子とともにアズレン環を形成するのに必要な原子群を表し、Mは金属を表す。Z51で形成される芳香族複素環はZ11と同様の芳香族複素環が挙げられる。
【0487】
上記説明した一般式(28)〜(32)において、Z11、Z12、Z21、Z22、Z31、Z32、Z41、Z42、Z51およびZ52によって形成される環は、更に置換基を有していても良く、また、置換基同士が結合して、更に環を形成しても良い。また、一般式(28)〜(32)において、Mは元素周期表で8族〜10族の金属であることが好ましく、より好ましくはMがイリジウム、オスミウムまたは白金であり、最も好ましくはMがイリジウムである。
【0488】
以下に、一般式(28)〜(32)のいずれかで表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0489】
【化154】

【0490】
【化155】

【0491】
【化156】

【0492】
【化157】

【0493】
【化158】

【0494】
【化159】

【0495】
【化160】

【0496】
【化161】

【0497】
【化162】

【0498】
【化163】

【0499】
《態様h》青色発光性オルトメタル錯体が、下記一般式(A)または(B)で表される部分構造を有する白金錯体で表される場合。
【0500】
【化164】

【0501】
〔式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、各々水素原子または置換基を表すが、R1、R2、R3、R4の少なくとも一つは電子供与性基である。Ra、Rbは、各々置換基を表す。〕
【0502】
【化165】

【0503】
〔式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17は、各々水素原子または置換基を表すが、R11、R13の少なくとも一つは電子吸引性基である。Rc,Rdは置換基を表す。〕
一般式(A)または(B)で表される少なくとも1種の白金錯体について説明する。
【0504】
《一般式(A)で表される部分構造を有する白金錯体》
一般式(A)で表される部分構造を有する白金錯体について説明する。
【0505】
一般式(A)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7で、各々表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、(t)ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、フェナントリル基、メシチル基、フルオレニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、カルバゾリル基等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシル基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等)等が挙げられる。
【0506】
本発明では、R1、R2、R3、R4で表される基の少なくとも一つは電子供与性基であることが好ましく、更に好ましくは、前記R1、R2、R3、R4で表される基の少なくとも二つが電子供与性基であり、また、前記電子供与性基の少なくとも一つのσpが、−0.20以下のものが用いられることであるが、最も好ましいのは、前記電子供与性基が、一般式(A)のR2またはR4に導入されることである。
【0507】
《σpが−0.20以下の電子供与性基》
ここで、σpが−0.20以下の電子供与性基としては、例えば、シクロプロビル基(−0.21)、シクロヘキシル基(−0.22)、tert−ブチル基(−0.20)、−CH2Si(CH33(−0.21)、アミノ基(−0.66)、ヒドロキシルアミノ基(−0.34)、−NHNH2(−0.55)、−NHCONH2(−0.24)、−NHCH3(−0.84)、−NHC25(−0.61)、−NHCONHC25(−0.26)、−NHC49(−0.51)、−NHC65(−0.40)、−N=CHC65(−0.55)、−OH(−0.37)、−OCH3(−0.27)、−OCH2COOH(−0.33)、−OC25(−0.24)、−OC37(−0.25)、−OCH(CH32(−0.45)、−OC511(−0.34)、−OCH265(−0.42)等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0508】
一般式(A)において、Ra、Rbで、各々表される置換基は、一般式(A)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7で、各々表される置換基と同義であるが、好ましくは、Ra、Rbが、共にアルキル基の場合である。
【0509】
《一般式(B)で表される配位子を有する白金錯体》
一般式(B)で表される部分構造を有する白金錯体について説明する。
【0510】
一般式(B)において、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17は、各々表される置換基は、一般式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7で、各々表される置換基と同義である。但し、R11、R13の少なくとも一つは電子吸引性基であり、R11、R13が共に電子吸引性基であることが好ましく、更に好ましくは、前記電子吸引性基のσpが0.10以上である。
【0511】
《σpが0.10以上の電子吸引性基》
ここで、σpが0.10以上の電子吸引性基としては、例えば、−B(OH)2(0.12)、臭素原子(0.23)、塩素原子(0.23)、沃素原子(0.18)、−CBr3(−0.29)、−CCl3(0.33)、−CCF3(0.54)、−CN(0.66)、−CHO(0.42)、−COOH(0.45)、CONH2(0.36)、−CH2SO2CF3(0.31)、−COCH3(0.45)、3−バレニル基(0.19)、−CF(CF32(0.53)、−CO225(0.45)、−CF2CF2CF2CF3(0.52)、−C65(0.41)、2−ベンゾオキサゾリル基(0.33)、2−ベンゾチアサゾリル基(0.29)、−C=O(C65)(0.43)、−OCF3(0.35)、−OSO2CH3(0.36)、−SO2(NH2)(0.57)、−SO2CH3(0.72)、−COCH2CH3(0.48)、−COCH(CH32(0.47)、−COC(CH33(0.32)等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0512】
一般式(B)において、Rc、Rdで、各々表される置換基は、一般式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7で、各々表される置換基と同義であるが、好ましくは、Rc、Rdが、共にアルキル基の場合である。
【0513】
以下に、本発明に係る一般式(A)または(B)で表される部分構造を有する白金錯体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0514】
【化166】

【0515】
【化167】

【0516】
【化168】

【0517】
【化169】

【0518】
【化170】

【0519】
【化171】

【0520】
【化172】

【0521】
【化173】

【0522】
【化174】

【0523】
本発明の有機EL素子に係る金属錯体は、例えばOrganic Letter誌、vol3、No.16、p2579〜2581(2001)、Inorganic Chemistry,第30巻、第8号、1685〜1687ページ(1991年)、J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304ページ(2001年)、Inorganic Chemistry,第40巻、第7号、1704〜1711ページ(2001年)、Inorganic Chemistry,第41巻、第12号、3055〜3066ページ(2002年)、New Journal of Chemistry.,第26巻、1171ページ(2002年)、更に、これらの文献中に記載の参考文献等の方法を適用することにより合成できる。
【0524】
このほかにも、例えば、J.Am.Chem.Soc.123巻4304〜4312頁(2001年)、国際公開第00/70655号パンフレット、同第02/15645号パンフレット、特開2001−247859号公報、同2001−345183号公報、同2002−117978号公報、同2002−170684号公報、同2002−203678号公報、同2002−235076号公報、同2002−302671号公報、同2002−324679号公報、同2002−332291号公報、同2002−332292号公報、同2002−338588号公報等に記載の一般式であげられるイリジウム錯体、あるいは、具体的例として挙げられるイリジウム錯体、特開2002−8860号公報記載の式(IV)で表されるイリジウム錯体等が挙げられる。
【0525】
本発明に係るリン光発光性有機金属錯体(リン光性化合物)は、溶液中のリン光量子収率が25℃において0.001以上であることが好ましく、更に好ましくは0.01以上であり、特に好ましくは0.1以上である。
【0526】
リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398ページ(1992年版、丸善)に記載の方法で測定することが出来る。
【0527】
《蛍光発光を示す化合物(蛍光発光性ドーパントともいう)》
本発明に係るリン光発光性有機金属錯体化合物と併用可能な蛍光を示す化合物(蛍光発光性ドーパントともいう)について述べる。
【0528】
本発明に用いてもよい、蛍光発光を示す化合物としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または、希土類錯体系蛍光体、その他公知の蛍光性化合物等が挙げられる。
【0529】
また、高い蛍光量子収率を得るためには、発光層中の含有量が層全体の質量の10質量%以上であることが好ましく、特に好ましくは30%以上である。
【0530】
蛍光量子収率が高い部分構造を有する、蛍光性有機分子としては、例えば、従来公知のクマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンゾアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素などが挙げられ、これらの部分構造を有する基を蛍光性発光性基として用いることが好ましい。
【0531】
《有機EL素子の構成層》
本発明の有機EL素子の構成層について説明する。
【0532】
本発明において、有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
《発光層》
本発明に係る発光層について説明する。
【0533】
本発明に係る発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
【0534】
本発明に係る発光層には、本発明の、上記のリン光発光性有機金属錯体(リン光性発光ドーパント)を含む微粒子分散液を用いて作製された発光層を用いることで、発光効率が高く、長寿命の有機EL素子を作製することができる。
【0535】
また、本発明の「リン光発光性有機金属錯体を含む微粒子分散液」を有機ELの発光層として用いる場合、リン光発光性有機金属錯体の他に、いわゆる発光ホストを一緒に微粒子分散液にすることで、効率の良い有機EL素子を得ることができる。発光ホストとしては、有機EL素子に用いられる発光ホストであれば、好適に用いることができる。
【0536】
リン光性化合物の発光は、原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光性化合物に移動させることでリン光性化合物からの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはリン光性化合物がキャリアトラップとなり、リン光性化合物上でキャリアの再結合が起こりリン光性化合物からの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、リン光性化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
【0537】
本発明においては、リン光性化合物のリン光発光極大波長としては特に制限されるものではなく、原理的には、中心金属、配位子、配位子の置換基等を選択することで得られる発光波長を変化させることができるが、リン光性化合物のリン光発光波長が380nm〜480nmにリン光発光の極大波長を有することが好ましい。
【0538】
このようなリン光発光波長を有するものとしては、青色に発光する有機EL素子や白色に発光する有機EL素子が挙げられるが、これらの素子はより発光電圧を抑え、低消費電力で作動させることができる。
【0539】
また、リン光性化合物を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。リン光性化合物の種類、ドープ量を調整することで白色発光が可能であり、照明、バックライトへの応用もできる。
【0540】
また、本発明に用いられるホスト化合物とは、発光層に含有される化合物のうちで室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.01未満の化合物である。
【0541】
本発明に係る発光層においては、ホスト化合物として、公知のホスト化合物を複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種もちいることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。これらの公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
【0542】
公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が挙げられる。
【0543】
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等である。
【0544】
また、発光層は、ホスト化合物としてさらに蛍光極大波長を有するホスト化合物を含有していてもよい。この場合、他のホスト化合物とリン光性化合物から蛍光性化合物へのエネルギー移動で、有機EL素子としての電界発光は蛍光極大波長を有する他のホスト化合物からの発光も得られる。蛍光極大波長を有するホスト化合物として好ましいのは、溶液状態で蛍光量子収率が高いものである。ここで、蛍光量子収率は10%以上、特に30%以上が好ましい。具体的な蛍光極大波長を有するホスト化合物としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素等が挙げられる。蛍光量子収率は、前記第4版実験化学講座7の分光IIの362頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定することができる。
【0545】
本明細書の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(ミノルタ製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
【0546】
発光層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。発光層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μm、好ましくは5nm〜200nmの範囲で選ばれる。この発光層は、これらのリン光性化合物やホスト化合物が1種または2種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0547】
《阻止層:正孔阻止層、電子阻止層》
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層であり、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0548】
正孔阻止層は、正孔輸送層から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物により形成される。正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、及び正孔を効率的に発光層内に閉じこめるために、発光層のイオン化ポテンシャルより大きいイオン化ポテンシャルの値を有するか、発光層のバンドギャップより大きいバンドギャップを有することが好ましい。正孔阻止材料としては、スチリル化合物、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ボロン誘導体の少なくとも1種を用いることも本発明の効果を得るうえで有効である。
【0549】
その他の化合物例として、特開2003−31367号公報、同2003−31368号公報、特許第2721441号明細書等に記載の例示化合物が挙げられる。
【0550】
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層であり、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0551】
この正孔阻止層、電子阻止層は、上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
【0552】
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0553】
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。
【0554】
本発明に係る正孔輸送層には、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等の従来公知の材料を用いてもよい。
【0555】
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0556】
芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0557】
さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si,p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
【0558】
正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5nm〜200nmである。この正孔輸送層は、上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0559】
《電子輸送層》
本発明に係る電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。また、電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料を含有し、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0560】
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引性基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0561】
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0562】
または、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0563】
また、以下に、電子輸送性を付与する機能を有する部分構造の例を示す(ここで、下記に示す部分構造のいずれかの原子部位に結合手が設けられ、電子輸送性を有する基となる)が、本発明はこれらにより限定されない。
【0564】
【化175】

【0565】
【化176】

【0566】
【化177】

【0567】
【化178】

【0568】
【化179】

【0569】
【化180】

【0570】
その他、メタルフリーまたはメタルフタロシアニン、更には、それらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。または、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0571】
この電子輸送層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の薄膜形成法により製膜して形成することができる。
【0572】
(電子輸送層の膜厚)
電子輸送層は、上記電子輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5nm〜200nmである。電子輸送層は、上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0573】
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1000nm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
【0574】
《陰極》
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
【0575】
陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0576】
また、陰極に上記金属を1nm〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0577】
次に、本発明の有機EL素子の構成層として用いられる、注入層、阻止層、電子輸送層等について説明する。
【0578】
《バッファ層》:陽極バッファ層、陰極バッファ層
注入層は必要に応じて設け、陰極バッファ層(電子注入層)と陽極バッファ層(正孔注入層)があり、上記のごとく陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び、陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0579】
バッファ層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファ層と陰極バッファ層とがある。
【0580】
陽極バッファ層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファ層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファ層、アモルファスカーボンバッファ層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファ層等が挙げられる。
【0581】
陰極バッファ層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファ層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファ層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファ層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファ層等が挙げられる。上記バッファ層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
【0582】
《基体(基板、基材、支持体等ともいう)》
本発明の有機EL素子は基体上に形成されているのが好ましい。
【0583】
本発明の有機EL素子に係る基体としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また、透明のものであれば特に制限はないが、好ましく用いられる基板としては例えばガラス、石英、光透過性樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい基体は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
【0584】
樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等を有するフィルム等が挙げられる。また、樹脂フィルムの表面には、無機物または有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよい。
【0585】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光の室温における外部取り出し効率は1%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
【0586】
また、カラーフィルタ等の色相改良フィルタ等を併用しても、有機EL素子からの発光色を蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルタを併用してもよい。色変換フィルタを用いる場合においては、有機EL素子の発光のλmaxは480nm以下が好ましい。
【0587】
《有機EL素子の作製方法》
本発明の有機EL素子の作製方法の一例として、陽極/陽極バッファ層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファ層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
【0588】
まず適当な基体上に、所望の電極物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を作製する。次に、この上に有機EL素子材料である陽極バッファ層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、陰極バッファ層の有機化合物薄膜を形成させる。
【0589】
この有機化合物薄膜の薄膜化の方法としては、前記の如く蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法が特に好ましい。さらに層ごとに異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50℃〜450℃、真空度10-6Pa〜10-2Pa、蒸着速度0.01nm/秒〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚0.1nm〜5μm、好ましくは5nm〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0590】
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施してもかまわない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
【0591】
本発明の多色の表示装置は、発光層形成時のみシャドーマスクを設け、他層は共通であるのでシャドーマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、スプレー法、印刷法等で膜を形成できる。
【0592】
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、印刷法である。蒸着法を用いる場合においてはシャドーマスクを用いたパターニングが好ましい。
【0593】
また作製順序を逆にして、陰極、陰極バッファ層、電子輸送層、正孔輸送層、発光層、正孔輸送層、陽極バッファ層、陽極の順に作製することも可能である。このようにして得られた多色の表示装置に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0594】
本発明の表示装置は、表示デバイス、ディスプレー、各種発光光源として用いることができる。表示デバイス、ディスプレーにおいて、青、赤、緑発光の3種の有機EL素子を用いることにより、フルカラーの表示が可能となる。
【0595】
表示デバイス、ディスプレーとしてはテレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリックス(パッシブマトリックス)方式でもアクティブマトリックス方式でもどちらでもよい。
【0596】
本発明の照明装置は、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサの光源等が挙げられるがこれに限定するものではない。
【0597】
また、本発明に係る有機EL素子に共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよい。
【0598】
このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザ発振をさせることにより、上記用途に使用してもよい。
【0599】
《表示装置》
本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような1種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。または、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を3種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。または、一色の発光色、例えば白色発光をカラーフィルタを用いてBGRにし、フルカラー化することも可能である。さらに、有機ELの発光色を色変換フィルタを用いて他色に変換しフルカラー化することも可能であるが、その場合、有機EL発光のλmaxは480nm以下であることが好ましい。
【0600】
本発明の有機EL素子を構成として有する表示装置の一例を図面に基づいて説明する。
【0601】
図1は、有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
【0602】
ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。
【0603】
制御部Bは、表示部Aと電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線毎の画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
【0604】
図2は、表示部Aの模式図を表す。
【0605】
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。図2においては、画素3の発光した光が、白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
【0606】
配線部の走査線5及び複数のデータ線6は、各々導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。
【0607】
画素3は、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を、適宜、同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0608】
次に、画素の発光プロセスを説明する。
【0609】
図3は、画素の模式図を表す。
【0610】
画素は、有機EL素子10、スイッチングトランジスタ11、駆動トランジスタ12、コンデンサ13等を備えている。複数の画素に有機EL素子10として、赤色、緑色、青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
【0611】
図3において、制御部Bからデータ線6を介してスイッチングトランジスタ11のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線5を介してスイッチングトランジスタ11のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサ13と駆動トランジスタ12のゲートに伝達される。
【0612】
画像データ信号の伝達により、コンデンサ13が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスタ12の駆動がオンする。駆動トランジスタ12は、ドレインが電源ライン7に接続され、ソースが有機EL素子10の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン7から有機EL素子10に電流が供給される。
【0613】
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフしてもコンデンサ13は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ12の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子10の発光が継続する。順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ12が駆動して有機EL素子10が発光する。
【0614】
すなわち、有機EL素子10の発光は、複数の画素それぞれの有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ11と駆動トランジスタ12を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子10の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
【0615】
ここで、有機EL素子10の発光は、複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。
【0616】
また、コンデンサ13の電位の保持は、次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
【0617】
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
【0618】
図4は、パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図4において、複数の走査線5と複数の画像データ線6が画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。
【0619】
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子がなく、製造コストの低減が計れる。
【0620】
本発明の有機EL素子材料は、また、照明装置として、実質白色の発光を生じる有機EL素子に適用可能である。複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を得る。複数の発光色の組み合わせとしては、青色、緑色、青色の3原色の3つの発光極大波長を含有させたものでも良いし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有したものでも良い。
【0621】
また、複数の発光色を得るための発光材料の組み合わせは、複数のリン光または蛍光を発光する材料(発光ドーパント)を、複数組み合わせたもの、蛍光またはリン光を発光する発光材料と、該発光材料からの光を励起光として発光する色素材料とを組み合わせたもののいずれでも良いが、本発明に係わる白色有機エレクトロルミネッセンス素子においては、発光ドーパントを複数組み合わせる方式が好ましい。
【0622】
複数の発光色を得るための有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成としては、複数の発光ドーパントを、一つの発光層中に複数存在させる方法、複数の発光層を有し、各発光層中に発光波長の異なるドーパントをそれぞれ存在させる方法、異なる波長に発光する微小画素をマトリックス状に形成する方法等が挙げられる。
【0623】
本発明に係わる白色有機エレクトロルミネッセンス素子においては、必要に応じ製膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもいいし、電極と発光層をパターニングしてもいいし、素子全層をパターニングしてもいい。
【0624】
発光層に用いる発光材料としては特に制限はなく、例えば液晶表示素子におけるバックライトであれば、CF(カラーフィルター)特性に対応した波長範囲に適合するように、本発明に係わる白金錯体、また公知の発光材料の中から任意のものを選択して組み合わせて白色化すれば良い。
【0625】
このように、本発明の白色発光有機EL素子は、前記表示デバイス、ディスプレーに加えて、各種発光光源、照明装置として、家庭用照明、車内照明、露光光源のような一種のランプとして、また、液晶表示装置のバックライト等の表示装置にも有用に用いられる。
【0626】
その他、時計等のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体等の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等、更には表示装置を必要とする一般の家庭用電気器具等広い範囲の用途が挙げられ
【実施例】
【0627】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0628】
実施例1
《微粒子分散液1の調製》
4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(CBP)30mg、PL−14(トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3))1.8mgを3mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。次に、エタノール/THF(1/1)溶液5mlを激しく撹拌し、これに前述のTHF溶液0.3mlをマイクロシリンジを用いて滴下し、微粒子分散液1を得た。
【0629】
《微粒子分散液2〜12の調製》
微粒子分散液1の調製において、リン光発光性有機金属錯体、発光ホストの種類や混合比率、分散溶媒等を表1に記載のように変更した以外は同様にして、微粒子分散液2〜12を得た。
【0630】
得られた微粒子分散液1〜12の組成、微粒子の平均粒径等のデータについて下記の表1に示す。
【0631】
【表1】

【0632】
実施例2
《有機EL素子1−1の作製》:比較例
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この透明支持基板上にポリビニルカルバゾール(PVK)30mgとPL−14を1.8mgとをジクロロベンゼン1mlに溶解させ、1000rpm、5秒の条件下、スピンコートし(膜厚約100nm)、60度で1時間真空乾燥し、発光層とした。
【0633】
これを真空蒸着装置に取付け、次いで、真空槽を4×10-4Paまで減圧し、陰極バッファー層としてフッ化リチウム0.5nm及び陰極としてアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成した。最後にガラス封止をし、有機EL素子1−1を作製した。
【0634】
《有機EL素子1−2〜1−13の作製》
有機EL素子1−1の発光層に用いたPVKとPL−14をジクロロベンゼンに溶解した均一溶液の代わりに、表1に示す組成、製法で調整したリン光発光性有機金属錯体を含む微粒子分散液1〜12に各々変更した以外は同様にして、有機EL素子1−2〜1−13を作製した。
【0635】
【表2】

【0636】
《有機EL素子1−1〜1−13の評価》
得られた有機EL素子1−1〜1−13について下記に示す評価を行った。
【0637】
《外部取りだし量子効率》
作製した有機EL素子について、23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で2.5mA/cm2定電流を印加した時の外部取り出し量子効率(%)を測定した。なお測定には同様に分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ製)を用いた。
【0638】
《発光寿命》
23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で2.5mA/cm2の一定電流で駆動したときに、輝度が発光開始直後の輝度(初期輝度)の半分に低下するのに要した時間を測定し、これを半減寿命時間(τ0.5)として寿命の指標とした。なお測定には分光放射輝度計CS−1000(ミノルタ製)を用いた。
【0639】
《駆動電圧》
温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で発光開始の電圧を測定した。なお、発光開始の電圧は、輝度50cd/m2以上となったときの電圧値を測定した。輝度の測定には分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ製)を用いた。
【0640】
有機EL素子1−1〜1−13の外部取り出し量子効率、発光寿命、駆動電圧の測定結果は、有機EL素子1−1を100とした時の相対値で表3に示した。
【0641】
【表3】

【0642】
表3より、本発明の有機EL素子は、発光輝度、発光効率、発光寿命が高く、さらに駆動電力が抑えられていることが明らかである。
【0643】
実施例2
《フルカラー表示装置の作製》
(青色発光有機EL素子)
実施例1の有機EL素子1−8の作製に用いた分散液7中のリン光発光性有機金属錯体P−37をP−40に変更した以外は有機EL素子1−8と同様の方法で作製した有機EL素子1−8Bを用いた。
【0644】
(緑色発光有機EL素子)
実施例1で作製した有機EL素子1−8を用いた。
【0645】
(赤色発光有機EL素子)
実施例1の有機EL素子1−8の作製に用いた分散液7中のリン光発光性有機金属錯体P−37をP−41に変更した以外は有機EL素子1−8と同様の方法で作製した有機EL素子1−8Rを用いた。
【0646】
上記の赤色、緑色及び青色発光有機EL素子を、同一基板上に並置し、図1に記載の形態を有するアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製し、図2には、作製した前記表示装置の表示部Aの模式図のみを示した。即ち、同一基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、並置した複数の画素3(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。前記複数の画素3は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。この様に各赤、緑、青の画素を適宜、並置することによって、フルカラー表示装置を作製した。
【0647】
該フルカラー表示装置を駆動することにより、発光効率が高い発光寿命の長いフルカラー動画表示が得られることを確認することができた。
【0648】
実施例3
《照明装置の作製:白色の有機EL素子使用》
実施例1の有機EL素子1−8の作製において、分散液7中のリン光発光性有機金属錯体P−37をP−37、P−40、P−41の混合物に変更した以外は有機EL素子1−8と同様にして作製した有機EL素子1−8Wを用いた。有機EL素子1−8Wの非発光面をガラスケースで覆い、図5、図6に示すような照明装置とした。照明装置は、発光効率が高く発光寿命の長い白色光を発する薄型の照明装置として使用することができた。
【0649】
図5は照明装置の概略図で、図6は照明装置の断面図である。有機EL素子101をガラスカバー102で覆い、電源線(陽極)103と、電源線(陰極)104で接続している。105は陰極で106は有機EL層である。なおガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、補水剤109が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0650】
【図1】有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。
【図2】表示部の模式図である。
【図3】画素の模式図である。
【図4】パッシブマトリクス方式フルカラー表示装置の模式図である。
【図5】照明装置の概略図である。
【図6】照明装置の断面図である。
【符号の説明】
【0651】
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
10 有機EL素子
11 スイッチングトランジスタ
12 駆動トランジスタ
13 コンデンサ
A 表示部
B 制御部
102 ガラスカバー
103 電源線(陽極)
104 電源線(陰極)
105 陰極
106 有機EL層
107 透明電極付きガラス基板
108 窒素ガス
109 捕水剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン光発光性有機金属錯体を含むことを特徴とする微粒子分散液。
【請求項2】
前記リン光発光性有機金属錯体が、包接化合物に包接され、複合体を形成していることを特徴とする請求項1に記載の微粒子分散液。
【請求項3】
前記リン光発光性有機金属錯体が下記一般式(C)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子分散液。
一般式(C)
M(L1)n(L2)m
〔式中、Mは、中心金属を表し、L1、L2は各々、配位子を表し、L1は少なくとも一つの高分子鎖を有する。nは1以上の整数、mは0以上の整数を表す。〕
【請求項4】
前記高分子鎖が多重分岐構造を有することを特徴とする請求項3に記載の微粒子分散液。
【請求項5】
前記微粒子分散液の調製時に、再沈法を用いて分散液調製したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子分散液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の微粒子分散液を含むことを特徴とする有機EL素子材料。
【請求項7】
陰極と陽極との間に、少なくとも1層の発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該発光層の少なくとも1層が、請求項6に記載の有機EL素子材料を用いて作製されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
陰極と陽極との間に、少なくとも1層の有機物含有層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機物含有層の少なくとも1層が、請求項6に記載の有機EL素子材料を用いて作製されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
白色に発光することを特徴とする請求項7または8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項12】
請求項11に記載の照明装置と、表示手段として液晶素子と、を備えたことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−96697(P2006−96697A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284235(P2004−284235)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】