説明

微細化金属水酸化物粒子、及びその製造方法

【課題】耐熱性及び難燃性を保持し、成型品の薄型化に対応可能な粗大粒子を除いた金属水酸化物粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】最大粒径10μm以下であり、表面ナトリウム濃度がNaO換算で0.0018質量%以下である金属水酸化物粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れる微細化金属水酸化物粒子、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気及び電子機器部品等では、火災に対する安全性確保のため難燃性付与が要求されている。
難燃性付与の方法としては、例えば難燃性樹脂を用いる方法が挙げられ、臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン含有樹脂が一般的に用いられている。また、難燃性フィラが用いられる場合も多い。
【0003】
難燃性フィラとしては、水酸化アルミニウム(ギブサイト型、Al・3HO)、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物粒子があり、特に水酸化アルミニウムは豊富な構造水を含み難燃性に優れる、耐酸性及び耐アルカリ性に優れる、コスト面で有利である、といった理由から使用されている場合が多い。
【0004】
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物の難燃特性として、脱水開始温度(水酸化アルミニウム(ギブサイト)は約200℃、水酸化マグネシウムは約340℃)から脱水を開始することが知られている。また、水酸化アルミニウム(ギブサイト)はさらに50℃ほど高い温度付近で一部脱水し、1水和物のベーマイト(Al・HO)に転移することが知られている。しかし、上記の脱水が金属水酸化物粒子を用いた成型品の歩留りや物性を低下させる場合がある。
【0005】
例えば、電子基板上にはんだ付けする際の環境温度は230℃位になるため、水酸化アルミニウムが脱水し、歩留りを低下させる場合等がある。そのため、使用する金属水酸化物粒子には難燃性だけでなく、成型品の耐熱性を低下させないことも求められている。
特許文献1では、BET非表面積が1.0m/gでかつ含有Na濃度がNaO換算で0.1重量%以下という特定の水酸化アルミニウムを配合することで、耐熱性と難燃性を兼ね備えた積層板の製造方法を提案している。また、特許文献2では、半導体封止用のエポキシ樹脂の耐熱性の面より、水酸化アルミニウムに含まれるNaO含有量としては、通常0.3重量%以下、好ましくは0.1重量%以下であることが開示されている。特許文献3には、固定ナトリウム量が少ない水酸化アルミニウムの製造方法が開示されている。
【0006】
一方、近年の電気及び電子機器部品等の高集積・細密化によって、難燃性フィラを用いる積層板、配線板、半導体装置等の成型品の薄型化要求が高まり、難燃性フィラ中に含まれる粗大粒子が問題となっている。例えば、積層板において、塗工工程でガラス布上に塗布される樹脂層の厚みより大きいフィラが混入すると、プレス成型時にフィラが樹脂層から飛び出し、回路の断線、外観不良等の要因となると共に、レーザー加工性の悪化や絶縁性の低下等が懸念されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−246867号公報
【特許文献2】特開平11−228792号公報
【特許文献3】特開平8−325011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、耐熱性及び難燃性を保持し、成型品の薄型化に対応可能な粗大粒子を除いた金属水酸化物粒子及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は係る状況に鑑みなされたものであり、本発明者らは、積層板樹脂層が含有するフィラについて、フィラ中の粗大粒子が樹脂層から飛び出す問題について鋭意研究した。その結果、本発明者らは、例えば水酸化アルミニウム粒子等の金属水酸化物粒子は微粒化によって耐熱性の低下が認められるものの、特定の要件を満たす金属水酸化物粒子であれば、耐熱性及び難燃性が保持されることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明によれば、以下の金属水酸化物粒子等が提供される。
1.最大粒径10μm以下であり、表面ナトリウム濃度がNaO換算で0.0018質量%以下である金属水酸化物粒子。
2.平均粒径が2.5〜3.5μmである1に記載の金属水酸化物粒子。
3.金属水酸化物粒子群を最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群と最大粒径10μm超の金属水酸化物粒子群に分級し、
前記最大粒径10μm超の金属水酸化物粒子群を粉砕して、最大粒径を10μm以下とし、前記分級した最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群及び前記粉砕した最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群を混合して得られる1又は2に記載の金属水酸化物粒子。
4.水酸化アルミニウム粒子である1〜3のいずれかに記載の金属水酸化物粒子。
5.金属水酸化物粒子群を最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群と最大粒径10μm超の金属水酸化物粒子粒子群に分級し、
前記最大粒径10μm超の金属水酸化物粒子群を粉砕して、最大粒径を10μm以下とし、
前記分級した最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群及び前記粉砕した最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群を混合して調製する金属水酸化物粒子の製造方法。
6.1〜4のいずれかに記載の金属水酸化物粒子又は5に記載の製造方法により得られる金属水酸化物粒子を含む樹脂組成物をガラス布に含浸させてなる積層板。
7.樹脂層とガラス布の積層体である積層板であって、
前記樹脂層が充填材を含み、
前記充填材が、最大粒径が前記樹脂層の厚みの90%以下である粒子群、及び最大粒径が前記樹脂層の厚みの90%超である粒子群に分級し、前記最大粒径が樹脂層の厚みの90%超である粒子群を粉砕して最大粒径を樹脂層の厚みの90%以下とし、粉砕して得られた粒子群と前記最大粒径が前記樹脂層の厚みの90%以下である粒子群を混合してなる充填材である積層板。
8.前記充填材が水酸化アルミニウム粒子である7に記載の積層板。
9.前記水酸化アルミニウム粒子の表面ナトリウム濃度がNaO換算で0.0018質量%以下である8に記載の積層板。
10.前記水酸化アルミニウム粒子の平均粒径が2.5〜3.5μmである8又は9に記載の積層板。
11.前記水酸化アルミニウム粒子の最大粒径が10μm以下である8〜10のいずれかに記載の積層板。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱性及び難燃性を保持し、成型品の薄型化に対応可能な粗大粒子を除いた金属水酸化物粒子が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の金属水酸化物粒子は、最大粒径10μm以下であり、表面ナトリウム濃度がNaO換算で0.0018質量%以下である。
上記金属水酸化物粒子としては、水酸化アルミニウム粒子、水酸化マグネシウム粒子等が挙げられ、難燃性と耐薬品性の観点から、好ましくは水酸化アルミニウム粒子である。
【0013】
金属水酸化物粒子の最大粒径は10μm以下であり、好ましくは9μm以下である。
最大粒径が10μm超である金属水酸化物粒子を樹脂層厚みが10μm程度の薄型の積層板、配線板、半導体装置等の成型品の製造に用いた場合、プレス成型時に金属水酸化物粒子が樹脂層から飛び出し、回路の断線、外観不良等の要因となると共に、レーザー加工性の悪化や絶縁性が低下するおそれがある。
上記最大粒径は、レーザー回折散乱法、超音波減衰法、フロー式撮像方等により測定できるが、本発明の最大粒径は、レーザー回折散乱法にて測定して得られる値である。
【0014】
金属水酸化物粒子の最大粒径の下限は特に制限されない。しかし、最大粒径の小さくなることで、当該金属水酸化物粒子を含む樹脂組成物の粘度が増加するので、作業性の観点から、金属水酸化物粒子の最大粒径は例えば5μm以上である。
【0015】
本発明の金属酸化物粒子の表面ナトリウム濃度は、NaO換算で0.0018質量%以下であり、好ましくは0.0014質量%以下、より好ましくは0.0012質量%以下である。
例えば水酸化アルミニウムのギブサイト型からベーマイトへの脱水を伴う転移は、アルカリ雰囲気下で起こりやすいため、不純物であるアルカリ分NaOを少なくすることで耐熱性を向上させることができる。従って、特に金属酸化物粒子が水酸化アルミニウム粒子である場合に、水酸化アルミニウム粒子の表面ナトリウム濃度をNaO換算で0.0018質量%以下とすることで、ベーマイト化が抑制され、組成物の耐熱性を向上させることができる。
表面ナトリウム濃度の測定方法は、イオンクロマトグラフ、原子吸光光度法、誘導結合プラズマ発光分光分析等があるが、本発明の表面ナトリウム濃度は、原子吸光光度法(JIS−K010248)にて測定して得られる値をいう。
【0016】
金属水酸化物粒子の平均粒径D50は、好ましくは2.5〜3.5μmであり、より好ましくは2.8〜3.2μmである。
金属水酸化物粒子の平均粒径が2.5μm未満の場合、比表面積が大きくなるため、それに伴い表面ナトリウム濃度が増加し、耐熱性低下の要因となりうる。また樹脂組成物の粘度が高くなり、作業性が低下するおそれがある。一方、平均粒径が3.5μm超の場合、最大粒径を目標とする粒径にすることが困難となるおそれがある。
尚、上記平均粒径は、上記最大粒径と同様の測定方法によって得られる粒径であって、累積頻度50%粒径を指す。
【0017】
本発明の金属水酸化物粒子は、下記(1)〜(3)の工程により容易且つ高い歩留りで調製できる。
(1)金属水酸化物粒子群を、最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群と最大粒径10μm超の金属水酸化物粒子群に分級する。
(2)最大粒径10μm超の金属水酸化物粒子群を粉砕して、最大粒径を10μm以下とする。
(3)上記工程(1)で分級した最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群と、上記工程(2)で粉砕した最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群とを混合する。
【0018】
上記工程(1)において、分級前の金属水酸化物粒子群の表面ナトリウム濃度が、NaO換算で0.0018質量%以下である金属水酸化物粒子群を用いることにより、分級後に、最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群のみを選択することによっても製造可能である。しかしながら、分級のみの場合は歩留りが低いという欠点がある。
また、工程(1)の分級を行わずに、工程(2)の粉砕のみによっても最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子を高歩留りに得られるが、粉砕のみでは、得られる金属水酸化物粒子の比表面積が大きく増加し、それに伴い表面NaO分濃度も増加することで耐熱性が低下するおそれがある。
【0019】
本発明の金属水酸化物粒子の製造方法において、工程(1)の分級前の金属水酸化物粒子群の表面ナトリウム濃度は、NaO換算で0.0018質量%以下であることが好ましく、0.0014質量%以下であることがより好ましく、0.0012質量%以下であることがさらに好ましい。
異物混入のおそれを少なくでき、且つ分級機と粉砕機の連結に問題が無ければ、手段は特に制限されないが、分級手段としては、気流式分級機、湿式遠心分級機等が挙げられ、粉砕手段としては、気流式粉砕機や機械式粉砕機等が挙げられる。
【0020】
本発明の金属水酸化物粒子は、難燃性及び耐熱性を兼ね備えているので、積層板、配線板、半導体装置等の成型品の原料である樹脂組成物が含有する難燃性フィラとして好適に用いることができる。
【0021】
金属水酸化物粒子を含む樹脂組成物の樹脂成分としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、トリアジン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、耐熱性、吸湿性等の特性やコスト等のバランスから、好ましくはエポキシ樹脂である。
【0022】
上記エポキシ樹脂としては特に制約はなく、積層板に一般的に使用されるものが使用でき、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用して用いることができる。上記エポキシ樹脂中でも耐熱性の観点からは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0023】
また、上記樹脂組成物は、さらに硬化剤を含んでもよい。
上記硬化剤としては、耐熱性や難燃性に支障のない範囲であれば特に制約はない。例えば、樹脂成分としてエポキシ樹脂に用いる場合の硬化剤としては、アミン化合物、フェノール化合物、酸無水物化合物等が挙げられる。
硬化剤の添加量は特に制限されないが、樹脂成分100質量部に対して、0.1〜150質量部使用することが好ましい。
【0024】
また、樹脂組成物には、必要に応じて、硬化促進剤、オリゴマー、接着剤、UV遮蔽剤、難燃助剤等を含んでもよい。例えば、硬化促進剤としてはイミダゾール等、充填剤の表面剤であるオリゴマー、接着剤としてはエトキシシラン等、UV遮蔽剤としてはピラリゾン等、難燃助剤としてはモリブデン酸亜鉛等が挙げられる。
上記硬化促進剤等は、耐熱性や難燃性に支障のない範囲であれば特に制約はない。
【0025】
本発明の金属水酸化物粒子を用いた樹脂組成物は、耐熱性及び難燃性に優れるため、樹脂層とガラス布の積層体である積層板の樹脂層材料として特に好適に用いることができる。
上記ガラス布は、積層板の一般的に使用されるもので、積層板の厚みに応じたものを選択すればよい。
【0026】
積層板の樹脂層に含まれる充填材(本発明の金属水酸化物粒子)は、最大粒径が樹脂層の厚みの90%以下である粒子、及び最大粒径が樹脂層の厚みの90%超である粒子に分級し、最大粒径が樹脂層の厚みの90%超である粒子を粉砕して最大粒径を樹脂層の厚みの90%以下とし、粉砕して得られた粒子と最大粒径が前記樹脂層の厚みの90%以下である粒子を混合してなる充填材である。
尚、分級及び粉砕の方法は、上述の通りである。
【0027】
また、積層板には、一般に金属箔が用いられるが、本発明の積層板においては、安価であることから銅箔を用いることが好ましい。銅箔としては、積層板の一般的に使用されるもので、積層板の厚みに応じたものを選択すればよい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1
[水酸化アルミニウム粒子Aの製造]
定量供給装置(日清エンジニアリング(株)製、フィードコンミュ−M−200F型)を用いて、強制渦式分級機(日清エンジニアリング(株)製TC−15)の投入口から原材料である水酸化アルミニウムE(昭和電工(株)製HP−360)を供給し、最大粒径10μm以下の粒子群と最大粒径10μm超の粒子群に分級し、それぞれ別々にサイクロンで回収した。
【0030】
分級した最大粒径10μm超の粒子群のみをダブルダンパを経て定量供給装置によって気流式粉砕機(日清エンジニアリング(株)製、SJ−500)に供給し、最大粒径10μm以下に粉砕し、強制渦式分級機により分級して、最大粒径10μm以下の粒子群を調製した。
得られた最大粒径10μm以下の粒子群を、分級のみで得られた上述の最大粒径10μm以下の粒子群と混合し、水酸化アルミニウム粒子Aを得た。
尚、強制渦式分級機TC−15は、粒子に作用する遠心力と空気流のバランスにより粒子を分級するもので、気流式粉砕機SJ−500は高圧に噴射した粒子同士の衝突によって粉砕を行うものである。
【0031】
得られた水酸化アルミニウム粒子A及び出発原料である水酸化アルミニウムEを評価した。
その結果、水酸化アルミニウム粒子Aの最大粒径は9.25μm、平均粒径は2.934μm、表面ナトリウム濃度(NaO濃度)は0.0011質量%、1%重量減少温度は254.5℃、歩留まりは80.5%であった。
水酸化アルミニウムEの最大粒径は11μm、平均粒径は3.123μm、表面ナトリウム濃度(NaO濃度)は0.0011質量%、1%重量減少温度は251.7℃であった。
【0032】
水酸化アルミニウム粒子の評価方法は以下の通りである。
[最大粒径及び平均粒径]
レーザー回折散乱法(マイクロトラックMT3300EX−II、日機装製)を用いて最大粒径及び平均粒径を測定した。測定サンプルは、水酸化アルミニウム粒子を分散液(分散溶媒:水、分散剤:ヘキサメタリン酸ナトリウム(0.2重量%))に添加し、超音波分散(80W、5分)して調製した。溶媒屈折率は1.333、粒子屈折率は1.57とした。
[NaO換算の表面ナトリウム濃度(質量%)]
ビーカーに水酸化アルミニウム粒子5gと、約80℃の温湯60mLを加え、80℃で30分間保温した。200mL計量フラスコに溶液と共に沈殿を洗い出し、冷却後標線に合わせ、その上澄み液をJIS−K010248原子吸光光度法にて表面ナトリウム濃度を測定し、NaO濃度に換算した。
[1%重量減少温度]
TG/DTA(TG/DTA7300高温型、SII製)を用い、1%減量温度を測定し、耐熱性の指標とした。測定サンプルは10mg、測定温度範囲は30〜800℃、昇温速度は10℃/分、サンプリングタイムは1秒とした。
【0033】
実施例2
[水酸化アルミニウム粒子Bの製造]
水酸化アルミニウム粒子Eについて、分級のみを行って、粉砕しなかった他は実施例1と同様にして、最大粒径10μm以下の粒子群である水酸化アルミニウム粒子Bを調製し、評価した。
水酸化アルミニウム粒子Bの最大粒径は9.25μm、平均粒径は2.483μm、表面ナトリウム濃度(NaO濃度)は0.0016質量%、1%重量減少温度は247.3℃、歩留まりは61.1%であった。
【0034】
比較例1
[水酸化アルミニウム粒子Cの製造]
分級操作は行わずに、定量供給装置により原材料である水酸化アルミニウム粒子Eを粉砕機(日清エンジニアリング(株)製SJ−500)に供給し、最大粒径10μm以下の粒子となるよう粉砕し、水酸化アルミニウム粒子Cを得た。
水酸化アルミニウム粒子Cの最大粒径は7.78μm、平均粒径は2.264μm、表面ナトリウム濃度(NaO濃度)は0.0022質量%、1%重量減少温度は242.0℃、歩留まりは78.5%であった。
【0035】
比較例2
[水酸化アルミニウム粒子Dの製造]
定量供給装置を用いて、原材料である水酸化アルミニウムEを、粉砕機(日清エンジニアリング(株)製、SJ−500)に供給し、最大粒径がほぼ10μm以下となるように粗く粉砕を行って、粉砕した粒子を全て回収した。
回収した粒子を分級機(日清エンジニアリング(株)製TC−15)に投入し、最大粒径10μm以下の粒子群(水酸化アルミニウム粒子D−1)と、最大粒径10μm超の粒子群(水酸化アルミニウム粒子D−2)をそれぞれ回収した。
水酸化アルミニウム粒子D−2を、同様の方法で再度粉砕及び分級し、最大粒径10μm以下の粒子群(水酸化アルミニウム粒子D−3)得た。水酸化アルミニウム粒子D−1と水酸化アルミニウム粒子D−3を混合することで、水酸化アルミニウム粒子Dを得た。
水酸化アルミニウム粒子Dの最大粒径は7.78μm、平均粒径は2.459μm、表面ナトリウム濃度(NaO濃度)は0.0022質量%、1%重量減少温度は229.7.0℃、歩留まりは91.3%であった。
【0036】
実施例1及び2の水酸化アルミニウム粒子は、比較例1及び2の水酸化アルミニウム粒子と比べて、1%重量減少温度は245℃以上と耐熱性が高いことが分かる。特に本発明の製造方法によって調製した実施例1の水酸化アルミニウム粒子は、1%重量減少温度が原料粒子よりも高く、且つ歩留まりも高かった。
【0037】
実施例3
[積層板の製造]
85重量部の実施例1で得られた水酸化アルミニウム粒子Aに、樹脂成分としてビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製EPICRON N−865、エポキシ当量205)を65.4重量部、硬化剤としてフェノールノボラック型樹脂(明和化成株式会社製HF−4、水酸基当量:108)を34.6重量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成株式会社製2E4MZ)を0.2重量部、充填剤として球状シリカ(アドマテックス製SO−25H)を30重量部、難燃助剤としてモリブデン酸亜鉛担持タルク(シャーウインウイリアムズ社製 Kemgard 911C)を5重量部、及びメチルエチルケトンを94.4重量部を加えて攪拌・分散し、エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0038】
得られた樹脂組成物を、ガラス布(厚さ0.1mm#2116、旭シュエーベル(株)製E−ガラス)に樹脂分が51重量%となるように含浸し、130〜170℃の乾燥装置で6.4分乾燥後させてプリプレグを作製した。
このプリプレグ4枚を重ねて積層体とし、積層方向の両面に厚さ18μmの銅箔を重ねて、圧力3MPa、温度185℃で60分加熱加圧成型を行い、厚さ0.4mmの両面銅張積層板を得た。
【0039】
得られた積層板の耐熱性を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
[1%減量温度]
TG−DTA法を用い、積層板の1%重量減少温度を耐熱性として評価した。
TG/DTA(TG/DTA7300高温型、SII製)を用い、1%減量温度を測定し、耐熱性の指標とした。測定サンプルは10mg、測定温度範囲は30〜800℃、昇温速度は10℃/分、サンプリングタイムは1秒とした。また測定サンプルは、エッチング処理により両面の金属箔を全て除いた積層板を使用した。
[はんだ耐熱性試験]
50mm×50mmに断裁した積層板をはんだバス(288℃)に浮かべて銅箔の膨れを目視で確認し、膨れが生じるまでの時間を測定した。最大3600秒とした。
【0040】
実施例4及び比較例3−5
水酸化アルミニウム粒子Aの代わりに表1に示す水酸化アルミニウム粒子を用いた他は実施例3と同様にして積層板を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の金属水酸化物粒子は、難燃性及び耐熱性を兼ね備えているので、積層板、配線板、半導体装置等の成型品の原料である樹脂組成物に配合される難燃性フィラとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大粒径10μm以下であり、表面ナトリウム濃度がNaO換算で0.0018質量%以下である金属水酸化物粒子。
【請求項2】
平均粒径が2.5〜3.5μmである請求項1に記載の金属水酸化物粒子。
【請求項3】
金属水酸化物粒子群を最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群と最大粒径10μm超の金属水酸化物粒子群に分級し、
前記最大粒径10μm超の金属水酸化物粒子群を粉砕して、最大粒径を10μm以下とし、前記分級した最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群及び前記粉砕した最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群を混合して得られる請求項1又は2に記載の金属水酸化物粒子。
【請求項4】
水酸化アルミニウム粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の金属水酸化物粒子。
【請求項5】
金属水酸化物粒子群を最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群と最大粒径10μm超の金属水酸化物粒子粒子群に分級し、
前記最大粒径10μm超の金属水酸化物粒子群を粉砕して、最大粒径を10μm以下とし、
前記分級した最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群及び前記粉砕した最大粒径が10μm以下の金属水酸化物粒子群を混合して調製する金属水酸化物粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の金属水酸化物粒子又は請求項5に記載の製造方法により得られる金属水酸化物粒子を含む樹脂組成物をガラス布に含浸させてなる積層板。
【請求項7】
樹脂層とガラス布の積層体である積層板であって、
前記樹脂層が充填材を含み、
前記充填材が、最大粒径が前記樹脂層の厚みの90%以下である粒子群、及び最大粒径が前記樹脂層の厚みの90%超である粒子群に分級し、前記最大粒径が樹脂層の厚みの90%超である粒子群を粉砕して最大粒径を樹脂層の厚みの90%以下とし、粉砕して得られた粒子群と前記最大粒径が前記樹脂層の厚みの90%以下である粒子群を混合してなる充填材である積層板。
【請求項8】
前記充填材が水酸化アルミニウム粒子である請求項7に記載の積層板。
【請求項9】
前記水酸化アルミニウム粒子の表面ナトリウム濃度がNaO換算で0.0018質量%以下である請求項8に記載の積層板。
【請求項10】
前記水酸化アルミニウム粒子の平均粒径が2.5〜3.5μmである請求項8又は9に記載の積層板。
【請求項11】
前記水酸化アルミニウム粒子の最大粒径が10μm以下である請求項8〜10のいずれかに記載の積層板。

【公開番号】特開2012−6778(P2012−6778A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142811(P2010−142811)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】