説明

微細構造体の作製方法

【課題】微細孔内への金属充填の均一性を向上させることにより、微細孔内へ金属を充填した後に突出した部分を研磨等により除去して平滑にする表面処理工程を不要とでき、または、この表面処理工程をより短時間で行うことができ、その結果、作業効率に優れる、増強電場を発生させる微細金属体を有する微細構造体の作製方法を提供する。
【解決手段】基材の表面に微細孔を形成する微細孔形成工程(A)と、微細孔形成工程(A)において微細孔が形成された基材をメッキ液に浸漬させるメッキ液浸漬工程(B)と、メッキ液浸漬工程(B)の後に、加振手段により基体およびメッキ液を振動させて、メッキ液を微細孔内に浸入させる加振工程(C)と、加振工程(C)と並行してまたは加振工程(C)の後に、電解メッキにより微細孔内に金属を充填して、増強電場を発生させる微細金属体を形成する金属充填工程(D)とを有することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増強電場を発生させる微細金属体を有する微細構造体の作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラマン分光法は、物質に単波長光を照射して得られる散乱光を分光し、ラマン散乱光のスペクトル(ラマンスペクトル)を得る方法であり、物質の同定等に利用されている。このラマン散乱光は微弱な光であるため、ナノオーダーの金属の微細構造(以下「金属ナノ構造」という。)に起因する局在プラズモン共鳴(プラズモン効果)を利用して、このラマン散乱光を増強させる表面増強ラマン散乱(SERS)効果を発現させる方法が提案されている。
【0003】
また、10nm以下に近接した金属微粒子の間隙や、金属微粒子の凝集体の空隙には、近接効果によって、プラズモン効果による増強電場が、より強められることが知られている。この間隙や空隙に物質を配置することにより効率よくSERS効果を得ることができる。
一方、近接効果を利用せずにプラズモン効果による増強電場をより高める方法として、先端が先鋭化された金属ナノ構造を持つ微細構造体を作製し、その先鋭化された先端に電場を集中させるアンテナ効果を利用する方法も知られている。
【0004】
上記のような金属ナノ構造を有する微細構造体を作製する方法としては、基材の表層に複数の微細孔を形成し、この各微細孔にメッキ処理により金属を充填し、金属ナノ構造を有する微細構造体を作製する方法が知られている。しかしながら、従来、基材に形成した各微細孔内に金属を均一に充填することは困難であった。微細孔内への金属の充填むらが生ずると、この微細構造体をプラズモン共鳴デバイスとして使用したときに、信号強度が十分に大きくならない、信号強度の再現性が低くなるという問題が生ずるおそれがある。
【0005】
このような問題に対して、特許文献1には、微細孔への金属の充填むらを解消することにより、信号強度を十分に大きく、かつ、再現性に優れたものにすることができる構造体の作製方法が記載されている。この特許文献1に記載の構造体の製造方法は、アルミニウム部材の表面に陽極酸化処理を施して、マイクロポアが存在する陽極酸化皮膜を形成した後、マイクロポアを金属で充填する封孔処理を行い、この後、陽極酸化皮膜の上層表面の一部を除去し、この表面の平均表面粗さ(Ra)を30nm以下に表面処理し、表面処理後、封孔処理により充填した金属上に、電着により更に金属粒子を形成することにより、構造体を得る方法である。
【0006】
ところで、特許文献2には、細孔とセル径を制御可能とし、大面積基板に対して適用可能で、低コスト且つ簡易な装置による金属ナノ構造体を得る方法が記載されている。
この特許文献2に記載の金属ナノ構造体の製造方法は、ナノサイズの細孔を有するナノ構造体を鋳型とし、金属M2よりも酸化還元電位の低い金属M3のイオンを含む溶液に超音波をかけながら鋳型を浸漬して鋳型に金属イオンM3を担持させ、金属イオンM3を担持した鋳型を希薄酸溶液に浸漬し、金属M2のイオンを含む溶液に超音波をかけながら金属イオンM3を担持した鋳型を浸漬して鋳型に金属M2のコロイドを担持させ、金属イオンM2のコロイドを担持した鋳型を希薄酸溶液に浸漬し、金属M1のイオンおよび還元剤を含み平滑化剤の濃度を50ppm以下とした溶液に金属M2のコロイドを担持した鋳型を浸漬して無電解めっきを行う方法である。
【0007】
また、特許文献3には、メッキ液等の電解液中に僅かに存在するマイクロバブルやパーティクル等による欠陥の発生を防止して、歩留りを向上させる基板処理方法が記載されている。
この特許文献3に記載の基板処理方法は、第1電極に通電させた基板の被処理面とこの被処理面に対面する位置に配置される第2電極との間を電解液で満たし、基板および第2電極の少なくとも一方を振動させつつ、第1電極と第2電極との間に電圧を印加して電解処理を行う方法である。
【0008】
【特許文献1】特開2006−89788号公報
【特許文献2】特開2007−98563号公報
【特許文献3】特開2005−133160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されたような方法は、微細孔内に金属を過剰に充填した後に突出した部分を研磨等により除去して平滑にする表面処理工程が必要である分、作業効率が低下するという問題がある。
また、特許文献2に記載された方法は、微細孔内への金属の析出を無電解メッキにより行うが、無電解メッキでは、特許文献2の図1に示されるように各微細孔の内壁に皮膜のように金属が付着するため、増強電場を発生する金属ナノ構造を作製することは困難である。更に、特許文献2に記載された方法においては、超音波処理は、無電解メッキのための前処理段階でのみ用いられるため、微細孔内への金属の均一な充填を達成することは困難である。
また、特許文献3には、基板として半導体ウエハ等を使用することが記載されているが、上記のような局在プラズモン共鳴により増強電場を発生させる微細金属体を有する微細構造体については記載されていない。
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、増強電場を発生させる微細金属体を有する微細構造体を作製するに際し、微細孔内へめっき液を確実かつ十分に浸入させることができ、微細孔内への金属充填を確実かつ十分に行うことができるので、微細孔内への金属充填の均一性を向上させることができ、これにより、微細孔内へ金属を充填した後に突出した部分を研磨等により除去して平滑にする表面処理工程を不要にでき、または、この表面処理工程をより短時間で行うことができ、その結果、作業効率に優れた微細構造体の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、増強電場を発生させる微細金属体を有する微細構造体の作製方法であって、基材の表面に微細孔を形成する微細孔形成工程(A)と、前記微細孔形成工程(A)において前記微細孔が形成された前記基材をメッキ液に浸漬させるメッキ液浸漬工程(B)と、前記メッキ液浸漬工程(B)の後に、加振手段により前記基材および前記メッキ液を振動させて、前記メッキ液を前記微細孔内に浸入させる加振工程(C)と、前記加振工程(C)と並行してまたは前記加振工程(C)の後に、電解メッキにより前記微細孔内に金属を充填して、前記微細金属体を形成する金属充填工程(D)とを有することを特徴とする微細構造体の作製方法を提供するものである。
【0012】
ここで、前記加振工程(C)において、前記加振手段として超音波振動子を用いるのが好ましい。
また、前記金属充填工程(D)において、前記加振工程(C)と並行して、電解メッキにより前記微細孔内に金属を充填して、前記微細金属体を形成するのが好ましい。
また、前記加振工程(C)において、前記金属充填工程(D)の途中で、前記加振工程(C)を終了するのが好ましい。
また、前記金属充填工程(D)において、前記加振工程(C)の後に、電解メッキにより前記微細孔内に金属を充填して、前記微細金属体を形成するのが好ましい。
また、前記微細孔の孔径は、5〜400nmであるのが好ましい。
また、前記微細孔形成工程(A)は、陽極酸化処理により行われるのが好ましい。
また、前記微細構造体は、ラマン分光用デバイスとして用いられるのが好ましい。
【0013】
また、前記微細構造体は、局在プラズモン共鳴により増強電場を発生させる微細金属体を有する微細構造体であるのが好ましい。
また、前記微細孔形成工程(A)は、基材の表面において開口し、内径が深さ方向によって異なり、かつ、先端部分でより細く、突出する凹部を有する微細孔を前記基材に形成する工程であり、更に、前記金属充填工程(D)の後に、前記微細金属体の先端部分の側から前記基材の少なくとも一部を除去し、前記微細金属体の先端部分の突起を少なくとも露出させる露出工程を有するのが好ましい。
また、前記金属充填工程(D)は、電解メッキにより前記微細孔内に金属を充填し、更に、前記微細孔から金属をオーバーフローさせて、柱状体と突出部とからなる前記微細金属体を形成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、微細孔内へめっき液を確実かつ十分に浸入させることができ、微細孔内への金属充填を確実かつ十分に行うことができるので、微細孔内への金属充填の均一性を向上させることができ、微細孔内へ金属を充填した後に突出した部分を研磨等により除去して平滑にする表面処理工程を不要にすることができ、または、この表面処理工程をより短時間で行うことができ、その結果、優れた作業効率で、増強電場を発生させる微細金属体を有する微細構造体を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る微細構造体の作製方法について、添付の図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1(A)〜(E)は、本発明に係る微細構造体の作製方法の一実施形態を模式的に示す工程図である。図2は、本発明に係る微細構造体の作製方法を実施する微細構造体作製装置の一実施形態の概略構成を示す概念図である。図3は、図1(A)〜(E)に示す工程による本発明の微細構造体の作製方法に従って作成された微細構造体を模式的に示す斜視断面図である。
【0017】
以下、図1(A)〜(E)を参照して、本発明の微細構造体の作製方法の第1の実施形態を説明する。なお、図1(A)〜(E)は、微細構造体10の作製方法を工程順に模式的に示す断面図であり、微細構造体10および本実施形態の作製方法の各工程における中間構造体の一部を示す。
【0018】
図1(A)に示すように、基材12として、被陽極酸化金属基材12aを用意する。本実施形態では、被陽極酸化金属基材12aとしてAlを主成分とするものを用いる。ここで、本実施形態では、被陽極酸化金属基材12aの主成分とは、被陽極酸化金属基材12aを構成する成分の90%以上を占める成分をいう。
【0019】
次に、被陽極酸化金属基材12aに陽極酸化処理を施し、図1(B)に示すように、複数の微細孔14が開口された誘電体基材12bを形成する(微細孔形成工程(A))。
陽極酸化処理は、例えば、被陽極酸化金属基材12aを陽極とし、カーボンやアルミニウム等を陰極(対向電極)として、これらを陽極酸化用電解液に浸漬させ、陽極と陰極の間に電圧を印加することで実施できる。本発明に用いられる電解液としては特に制限されず、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等の酸を、1種または2種以上含む酸性電解液が好ましく用いられる。
【0020】
被陽極酸化金属基材12aを陽極酸化すると、表面12s(図示上面)から略垂直方向に酸化反応が進行し、アルミナを主成分とする誘電体基材12bが生成される。
陽極酸化により生成される誘電体基材12bは、平面視略正六角形状(図3参照)の微細柱状体13が隣接して配列した構造を有するものとなる。各微細柱状体13の略中心部には、誘電体基材12bの表面から深さ方向に、略同一の内径を持つ微細孔14が開孔される。ここで、略同一の内径を持つ微細孔14は、図3に示す微細構造体10の微細金属体18の柱状部18aを形成するためのものである。
また、基材12の非陽極酸化部分である被陽極酸化金属基材12aと、誘電体基材12bとの界面であり、各微細柱状体13の底面は、丸みを帯びた形状となる。陽極酸化により生成されるアルミナ層の構造は、益田秀樹、「陽極酸化法によるメソポーラスアルミナの調製と機能材料としての応用」、材料技術Vol.15,No.10、1997年、p.34等に記載されている。
【0021】
本実施形態では、陽極酸化処理の条件は、均一に配列された微細孔14が、複数開口された誘電体基材12b(メソポーラスアルミナ)を形成することができる条件であればよい。電解液としてシュウ酸を用いる場合、好適な条件としては、例えば、電解液濃度0.5M、液温15℃、印加電圧40Vが挙げられる。
また、陽極酸化処理の電解時間を変えることで、任意の層厚の誘電体基材12bを生成できる。本実施形態では、少なくとも、被陽極酸化金属基材12aが残存するように、電解時間を設定する。
【0022】
また、陽極酸化処理において、互いに隣接する微細孔14同士のピッチは、10〜500nmの範囲で、また、微細孔14の孔径は、5〜400nmの範囲でそれぞれ制御可能である。ところで、特開2001−9800号公報や特開2001−138300号公報には、微細孔の形成位置や孔径を制御する方法が開示されている。これらの方法を用いることにより、上記範囲内において任意の孔径を有する微細孔を、略規則的に配列形成することができる。
【0023】
ここで、図2を参照して、本発明に係る微細構造体の作製方法を実施する微細構造体作製装置20について詳細に説明する。
図2に示される微細構造体作製装置20は、本発明法の各工程、すなわち後述するメッキ液浸漬工程(B)、加振工程(C)および金属充填工程(D)を実施するのに使用される。
微細構造体作製装置20は、メッキ液16を収容する電解メッキ槽22と、電解メッキ槽22内のメッキ液16に浸漬される基材12を保持する保持手段24と、電解メッキ槽22内に設けられるアノード26と、基材12に電気的に接続するカソード28と、アノード26とカソード28との間に電圧を与える電源部30と、基材12およびメッキ液16に振動を与える加振手段32とを有する。更に、微細構造体作製装置20は、電解メッキ槽22を水34が収容された水槽36内に固定する固定手段(図示せず)を有する。
【0024】
メッキ液16は、特に制限的ではなく、後述する微細金属体18を形成する材料に応じて、公知のメッキ液から適宜選択すればよい。
例えば、銅を析出させる場合には硫酸銅水溶液が一般的に用いられるが、硫酸銅の濃度は、1〜300g/Lであるのが好ましく、100〜200g/Lであるのがより好ましい。また、電解液中に塩酸を添加すると析出を促進することができる。この場合、塩酸濃度は10〜20g/Lであるのが好ましい。
また、金を析出させる場合、テトラクロロ金の硫酸溶液を用い、交流電解でメッキを行うのが好ましい。
メッキ液16の温度は、特に制限的ではないが、例えば、25℃〜60℃であるのが好ましい。
【0025】
ここで、微細金属体18を形成する材料としては、局在プラズモンを発生させる種々の金属を使用でき、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Pt、Ni、Ti、およびこれらの合金等が挙げられる。また、微細金属体18は、これらの金属を2種以上含むもので形成してもよい。また、電場増強効果をより高くすることができるため、微細金属体18は、Au、Ag等を用いて形成することがより好ましい。
【0026】
また、電解メッキ槽22、保持手段24、アノード26、カソード28および電源部30は、特に制限的ではなく、一般に電解メッキに使用されるものを用いることができる。特に、電解メッキ槽22としては、加振手段32からの振動を基材12およびメッキ液16に効率よく伝播できるものが好ましく、例えば、ガラスビーカ等を好適に使用できる。
【0027】
加振手段32は、水34を収容する水槽36と、水槽36の側面および/または底面に一体的に設けられた超音波振動子38とを備える。超音波振動子38が超音波振動することにより、水槽36、水槽36内の水34および電解メッキ槽22を介して、基材12およびメッキ液16が振動し、基材12の微細孔14内にメッキ液16が確実かつ十分に浸入できる。
上記のような加振手段32としては、公知の超音波洗浄機等を使用することができる。
水槽36は、特に制限的ではなく、水34を収容でき、超音波振動子38からの振動を水槽36内に収容された水34に効率よく伝播できるものを好適に使用できる。
【0028】
超音波振動子36は、特に制限的ではなく、超音波領域の振動を発生できるものであればよい。超音波振動子36としては、磁歪振動子や電歪振動子がある。
磁歪振動子はニッケル等の強磁性体物質に交流磁場をかけるとその長さが伸縮する性質もつ素子である。交流の周波数を超音波領域の周波数に制御することにより、機械振動の周波数は超音波領域の振動になる。交流磁場はコイルに交流電流を流すことによって発生する。そのコイルの中に棒状の磁歪振動子を挿入すると超音波振動が発生する。磁歪振動子としては、例えば、ニッケル、鉄、フェライト等が挙げられる。
電歪振動子としては、例えば、圧電素子を両側から金属のブロックで挟みボルトで締めた構造のボルト締めランジュバン型振動子等が挙げられる。
【0029】
加振手段32としては、図2に示す構成以外に、例えば、電解メッキ槽22の底面または側面に一体的に超音波振動子を設けて、電解メッキ槽22を介して基材12およびメッキ液16を振動させるものでもよい。
また、超音波振動子を電解メッキ槽22内に設けて基材12およびメッキ液16に直接振動を与えてもよい。
また、超音波振動子を基材12または基材を保持する保持手段24に直接接続し、基材12を直接振動させることにより、基材12およびメッキ液16を振動させてもよい。
また、加振手段として、上記超音波振動子の代わりに、超音波振動子以外の圧電素子を使用したものを用いることもできる。
また、加振手段として、電気的または機械的に振動させる電動加振機や電動モータと偏心カム等を組み合せた機械式加振機等の公知の加振機を用いることもできる。このような加振手段を用いる場合には、例えば、水槽36または電解メッキ槽22をこれらの加振機に載置固定して振動させてもよいし、基材12または基材を保持する保持手段24に加振機の振動子を接続し、基材12を直接振動させても良い。
【0030】
微細構造体作製装置20では、水34を用いているが、水34の代わりに有機溶媒等の各種の液体を使用することもできる。
【0031】
次に、図2に示す微細構造体作製装置20を用いて、以下に示すようにメッキ液浸漬工程(B)、加振工程(C)および金属充填工程(D)を行う。
以下では、図1(C)〜図1(E)を参照して、メッキ液浸漬工程(B)、加振工程(C)および金属充填工程(D)の各工程を説明する。
【0032】
図2に示すように、微細孔14が形成された基材12にカソード28を接続して、基材12を保持手段24で保持し、メッキ液16に浸漬させる(メッキ液浸漬工程(B))。このとき、カソード28は、基材12の微細孔が設けられている表面12sの裏面に接続する。このように接続することにより、後述する金属充填工程(D)において、被陽極酸化金属基材12aが電極として機能し、電場が強い微細孔14の底部から優先的に金属が析出する。
このメッキ液浸漬工程(B)においては、図1(C)に示すように、基材12をメッキ液16に浸漬しただけでは、メッキ液16は、その表面張力によりナノオーダーの微細孔14内に十分に浸入できていない状態であると考えられる。
【0033】
上記メッキ液浸漬工程(B)の後、超音波振動子38を超音波振動させて、メッキ液16に振動を与える(加振工程(C))。
この加振工程(C)においては、図1(D)に示すように、基材12およびメッキ液16に振動を与えることにより、メッキ液16を微細孔14内に確実かつ十分に浸入させることができる。更に、基材12およびメッキ液16に振動を与えることによって、基材12に付着した異物や気泡などを除去することができ、異物や気泡による充填むらも低減できる。また、一部の微細孔で金属充填が早く進んだ場合でも、振動により過剰な充填を抑制し、金属充填を均一化することができる。
【0034】
基材12およびメッキ液16に振動を与えるときの超音波振動子の周波数は、メッキ液16が微細孔14内に十分浸入できるように適宜調整すればよい。
【0035】
図1(D)および図1(E)に示すように、上記加振工程(C)と並行して、電解メッキにより微細孔14内に金属を充填して、微細金属体18を形成する(金属充填工程(D))。
図1(D)に示すように、電解メッキ処理を行うと、被陽極酸化金属基材12aが電極として機能し、電場が強い微細孔14の底部から優先的に金属が析出する。この電解メッキ処理を行うことにより、微細孔14内に金属が充填されて微細金属体18の柱状部18aが形成される。このとき、微細孔14内にメッキ液16が確実かつ十分に浸入しているため、複数の微細孔14に充填される柱状部18aは均一に形成されていく。
【0036】
図1(E)に示すように、更に電解メッキ処理を続けると、微細孔14から金属がオーバーフローするが、微細孔14付近の電場が強いことから、微細孔14周辺に継続して金属が析出していき、柱状部18a上に誘電体基材12bの表面より突出し、柱状部18aの径よりも大きい径を有する突出部18bが形成される。電解メッキ処理は、隣接する突出部18b同士の隙間が10nm以下になるまで継続するのが、局在プラズモン共鳴による増強電場を発生しやすくなる点から好ましい。
以上のようにして、微細構造体10は作製される。
【0037】
ここで、上記加振工程(C)は、上記金属充填工程(D)の途中で終了させてもよく、所望の金属充填量になるまで行ってもよい。突出部18bを形成するときに基材12およびメッキ液16が振動していると突出部18bの形成が難しくなるため、微細孔14から金属がオーバーフローする前に加振工程(C)を終了するのが好ましい。
また、上記金属充填工程(D)は、上記加振工程(C)の後に行ってもよい。
【0038】
本実施形態の微細構造体10の製造方法によれば、基材12に、微細孔14を複数形成し、次いで、この基材12をメッキ液16に浸漬し、次いで、基材12およびメッキ液16に振動を与えてこれらの複数の微細孔14内にメッキ液16を確実かつ十分に浸入させると共に、電解メッキにより金属を充填して、柱状部18aと突出部18bとからなる微細金属体18を複数形成することにより、増強電場を発生させる微細構造体10を作製することができる。
【0039】
本実施形態では、メッキ液浸漬工程(B)の後に、加振手段32により基材12およびメッキ液16を振動させて、メッキ液16を微細孔14内に確実かつ十分に浸入させることにより、微細孔14内への金属充填の均一性を向上できる。その結果、微細孔14内へ金属を充填した後に突出した部分を研磨等により除去して平滑にする表面処理工程等が不要になり、作業効率を向上できる。更に、基材12およびメッキ液16に振動を与えることによって、基材12に付着した異物や気泡を除去することができ、異物や気泡による充填むらも低減できる。また、一部の微細孔で金属充填が早く進んでしまった場合でも、振動により過剰な充填を抑制して、金属充填を均一化することができる。
【0040】
また、本実施形態では、被陽極酸化金属基材12aを電極として、電解メッキ処理により、微細孔14への金属の充填を行うことにより、電場が強い微細孔14の底部から優先的に析出させることができ、微細孔14のそれぞれに確実に金属を充填することができ、メッキ処理による充填むらを低減できる。
【0041】
また、本実施形態では、陽極酸化処理により、大面積の基材12でも容易に微細孔14を形成することができ、これにより、複数の微細金属体18を容易に形成することができる。すなわち、本実施形態によれば、微細構造体10を、大面積に、容易に作製することができる。
【0042】
ここで、本実施形態では、被陽極酸化金属基材12aとして、Alを使用しているが、陽極酸化可能な金属であれば、任意の金属を使用できる。Al以外では、例えば、Ti、Ta、Hf、Zr、Si、In、Zn等が挙げられ、これら金属(Alを含む)の2種以上を含むものであってもよい。誘電体基材12bは、アルミナを主成分とするとしたが、これに制限されず、陽極酸化処理可能な金属を被陽極酸化金属基材12aとして、陽極酸化処理により酸化された金属酸化物であればよい。
【0043】
また、本実施形態では、微細金属体18を形成するためのテンプレートである、微細孔14を、被陽極酸化金属基材12aに陽極酸化処理により形成したが、本発明はこれに限定されず、電子線(EB)リソグラフィ、近接場光リソグラフィ、ナノインプリント、収束イオンビーム(FIB)等の微細構造を作製可能な方法を利用してもよい。
例えば、エッチングにより、深さ方向に延びる柱状の微細孔を形成することができる。また、ナノインプリントにより、樹脂等の材料を用いて、微細孔を有するテンプレートを作製することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、微細孔14を基材に形成するのに陽極酸化処理を用いたが、陽極酸化処理以外の方法を用いる場合は、基材の材料は、上記の陽極酸化可能な金属に限定されず、使用する方法に応じて微細加工が可能な材料であり、かつ、ドライエッチングやウェットエッチング等により除去可能な材料であればよい。
【0045】
更に、上記金属充填工程(D)において形成した複数の微細金属体18の突出部18bの少なくとも一部を研磨等により除去して平滑化した後、微細金属体18の上に突出部18bを形成する工程を含んでもよい。
本発明によれば、微細孔14内への金属充填の均一性が高いため、微細金属体18の突出部18bの平滑化のための過剰な金属充填部分の除去を短時間で行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0046】
上記のようにして作製される微細構造体10は、図3に示すように、誘電体基材12bおよび誘電体基材12bの一面に配置された被陽極酸化金属基材12aで構成される基材12と、誘電体基材12bの被陽極酸化金属基材12aが配置された面とは反対側の面に配置された、柱状部18aおよび突出部18bで構成される微細金属体18とを有する。
【0047】
上述した実施形態では、上記金属充填工程(D)において、微細孔14から金属をさせて突出部18bを形成したが、突出部18bを形成せずに柱状部18aのみからなる微細金属体18を有する微細構造体としてもよい。
【0048】
以下、本発明に係る微細構造体の作製方法の第2の実施形態について説明する。
図4(A)〜(I)は、本発明に係る微細構造体の作製方法の第2の実施形態を模式的に示す工程図である。図5は、図4(A)〜(I)に示す工程による本発明の微細構造体の作製方法に従って作製された微細構造体を模式的に示す斜視断面図である。
以下、図4(A)〜(I)を参照して、本発明の微細構造体の作製方法の第2の実施形態を説明する。
本実施形態の微細構造体100の作製方法では、図1に示す微細構造体10の作製方法と異なり、基材112に、微細孔114aの先端(底部)から、複数に分岐する、微細孔114aより細い枝分れ形状を持つ分岐凹部114bを形成し、この微細孔114aおよび分岐凹部114bをテンプレートとして、微細金属体116を形成する。なお、本発明の微細構造体の作製方法は、図5に示す微細構造体100を作製するのにより適した方法である。
【0049】
図4(A)〜(I)は、微細構造体100の作製方法を工程順に模式的に示す断面図であり、微細構造体100および本実施形態の作製方法の各工程における中間構造体の一
部を示す。
まず、上述した図1に示す微細構造体10の作製方法と同様に、基材として、被陽極酸化金属基材112aを用意し、陽極酸化処理を施し、複数の微細孔114aが開口された誘電体基材112bを形成する(図4(A)および図4(B)参照)。
本実施形態においても、被陽極酸化金属基材112aを陽極酸化すると、表面112s(図示上面)から略垂直方向に酸化反応が進行し、アルミナを主成分とする誘電体基材112bが生成される。陽極酸化により生成される誘電体基材112bは、平面視略正六角形状の微細柱状体124が隣接して配列した構造を有するものとなる。各微細柱状体124の略中心部には、誘電体基材112bの表面から深さ方向に、略同一の内径を持つ微細孔114aが開孔されている。
【0050】
次いで、電流回復処理を施し、図4(C)に示すように、微細孔114aの先端から複数に分岐する、微細孔114aより細い枝分れ形状を持つ分岐凹部114bを形成する。
本実施形態において、電流回復処理とは、上述の陽極酸化処理における印加電圧を断続的に減少させて、被陽極酸化金属基材112aに陽極酸化処理を施すものである。
具体的には、上述の陽極酸化処理により一定電圧を印加して微細孔114aを形成した後に、その印加電圧よりも低い電圧を印加すると、電流値が減少する。電圧を印加し続けると、微細孔114aの先端から、微細孔114aよりも内径が細い凹部が形成され、徐々に、電流値が増大する。
電流値の増大が緩やかになるか、または電流値が一定になったら、印加していた電圧よりもさらに低い電圧を印加して、さらに細い凹部を形成する。電圧を印加し続け、電流値の増大が緩やかになる、または電流値が一定になったら、再び、印加電圧を減少させる。
このように、陽極酸化処理において、断続的に印加電圧を減少させる電流回復処理を行うことにより、先端に向かって徐々に細くなる枝分れ形状の凹部を持つ分岐凹部114bを形成することができる。
【0051】
このようにして形成された、分岐凹部114bは、後述する微細金属体116の分岐突起部120を形成するためのテンプレートとなる微細な空隙(凹部)である。分岐凹部114bは、微細孔114aよりも細い径を有する凹部であり、微細孔114aの先端(底面)から1以上に分岐した枝分れ形状の凹部を有する。分岐凹部114bの枝分れ形状の凹部は、微細孔114aの先端から分岐した先で、さらに複数に分岐している形状の凹部をも含む。分岐凹部114bは、基本的に異なる方向に向かって形成され、枝分れ形状の凹部の各先端は、基本的に互いに異なる方向を向いている。なお、本実施形態において、枝分れ形状の凹部の各先端のうち、同一方向を向いているものが存在する場合があることは言うまでもない。
枝分れ形状を有する分岐凹部114bの内径は、分岐突起部120の枝状の突起の外径と略同様であり、200nm以下の範囲であることが好ましい。
【0052】
なお、電流回復処理は、陽極酸化処理において、印加していた電圧よりも低い電圧を、電流値の増大が緩やかになる、または電流値が一定になるまで印加するステップを繰り返し行う処理である。上記ステップの繰り返し回数や、各ステップにおける印加電圧等は、被陽極酸化金属基材の材質や、電解液の種類、電解液の濃度および温度等の陽極酸化の条件や、形成する微細孔114aの形状に応じて適宜設定すればよい。
例えば、被陽極酸化金属基材としてアルミニウムを、電解液としてシュウ酸を使用することができ、この場合の電流回復処理の条件は、佐藤敏彦、「アルマイト理論 百問百答―アルマイト技術の理論的裏付け―」に記載されている。
【0053】
次に、上述した本発明の第2の実施形態と同様に、図2に示す微細構造体作製装置20を用いて、微細孔114aおよび分岐凹部114bを形成した基材112をメッキ液115に浸漬した後、メッキ液115に振動を与える(図4(D)および図4(E)参照)。
【0054】
基材112およびメッキ液115に振動を与える工程と並行して、電解メッキにより微細孔114aおよび分岐凹部114b内に金属を充填して、微細金属体116を形成する(図4(E)および図4(F)参照)。
本実施形態では、電解メッキ処理は、基材112の被陽極酸化金属基材112aを電極として行うため、電場が強い分岐凹部114bから優先的に析出させることができる(図4(E)参照)。電解メッキ処理を継続して行うことにより、分岐凹部114bに金属が充填され、微細金属体116の分岐突起部120が形成される。次いで、微細孔114aに金属が充填され、微細金属体116の柱状部118が形成される。このようにして、微細孔114aおよび分岐凹部114bの内部に金属が充填されて微細金属体116が形成される。
【0055】
ここで、上記加振工程(C)は上記金属充填工程(D)の途中で終了させてもよく、所望の金属充填量になるまで行ってもよい。
また、上記金属充填工程(D)は、上記加振工程(C)の後に行ってもよい。
【0056】
次に、図4(G)に示すように、微細金属体116が形成された基材112を、表面112s側を下方にして基板122に配設する。基材112を基板122に固定するために接着剤を使用することができる。使用する接着剤は、後述する、基材112の一部を除去するウェットエッチング工程で用いられる処理液に対して、耐性を有するものであればよく、例えば、公知の各種の樹脂系接着剤を使用することができる。
【0057】
基板122は、誘電体基材112bおよび複数の微細金属体116を支持する基板である。基板122としては、特に制限はなく、微細構造体100の作製プロセスや、用途に応じて適宜選択すればよい。たとえば、微細構造体100の作製工程にエッチング工程が含まれる場合には、エッチング耐性を有するものであるのが好ましく、また、微細構造体100をラマン分光測定に用いる場合に測定結果に影響を与えることがないものであるのが好ましい。
基板としては、例えば、シリコン、ガラス、ステンレス(SUS)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、サファイヤ、およびシリコンカーバイド等が挙げられる。
【0058】
次に、図4(G)および(H)に示すように、基材112の被陽極酸化金属基材112aを除去する。本除去工程は、被陽極酸化金属基材112aを除去可能な方法であればよく、ウェットエッチングやドライエッチングを用いることができる。本実施形態では、例えば、ウェットエッチングによりAlの被陽極酸化金属基材112aを除去する。
次に、図4(I)に示すように、微細金属体116の先端側から、基材112の誘電体基材112bの少なくとも一部を、除去して、微細金属体116の分岐突起部120を露出させる。本工程は、微細金属体116の分岐突起部120を除去せず、誘電体基材112bのみを除去可能な方法であればよく、例えば、ウェットエッチングやドライエッチング等により誘電体基材112bのみを選択的に除去すればよい。
図4(H)および図4(I)に示すように、微細金属体116の分岐突起部120が形成された側(先端側)から、基材112の一部を除去して、分岐突起部120を露出させることで、微細構造体100を作製する。
【0059】
本実施形態の微細構造体100の作製方法によれば、基材112に、その先端が先鋭化された枝状の凹部をもつ微細孔を複数形成し、次いで、この基材112をメッキ液115に浸漬し、次いで、基材112およびメッキ液115に振動を与えてこれらの複数の微細孔内にメッキ液を十分浸入させると共に、電解メッキにより金属を充填して、その先端が先鋭化された枝状の突起を持つ微細金属体116を複数形成し、次いで、微細孔の深さ方向の微細金属体116の先端側から基材112の少なくとも一部を除去して、少なくとも微細金属体116の先鋭化された枝状の突起を露出させることにより、増強電場を発生させる微細構造体100を作製することができる。
【0060】
特に、本実施形態で用いる基材112は、分岐凹部114bを有しているが、この分岐凹部114bは微細孔114aよりも更に小さい径を有するため、従来の方法ではメッキ液115を分岐凹部114bに十分浸入させることは難しかった。しかしながら、基材112およびメッキ液115に振動を与えることにより、メッキ液115が微細孔114aおよび分岐凹部114b内に確実かつ十分に浸入できる。その結果、微細孔114aおよび分岐凹部114b内への金属充填の均一性を向上できる。その結果、微細孔114aおよび分岐凹部114b内へ金属を充填した後に突出した部分を研磨等により除去して平滑にする表面処理工程が不要になり、作業効率を向上できる。更に、基材112およびメッキ液115に振動を与えることによって、基材112に付着した異物や気泡を除去することができ、異物や気泡による充填むらも低減できる。また、一部の微細孔で金属充填が早く進んでしまった場合でも、振動により過剰な部分の生成を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、陽極酸化処理により微細孔114aを形成した後に、電流回復処理を施すことにより、先端が先鋭化された分岐凹部114bを形成することができ、この分岐凹部114bに金属を充填することにより、先端が先鋭化された分岐突起部120を有する微細金属体116を形成できる。すなわち、本実施形態によれば、先端が先鋭化された分岐突起部120を有する新規な微細構造体100を作製することができる。
【0062】
また、本実施形態では、被陽極酸化金属基材112aを電極として、電解メッキ処理により、微細孔114aおよび分岐凹部114bへの金属の充填を行うことにより、電場が強い分岐凹部114bから優先的に析出させることができ、分岐凹部114bのそれぞれに確実に金属を充填することができ、メッキ処理による充填むらがなく、基材112の面方向に略均一に分岐突起部120を形成することができる。
【0063】
また、微細金属体116の分岐突起部120が形成された側(先端側)から、基材112の一部を除去して、分岐凹部114bをテンプレートとして略均一に形成された分岐突起部120を露出させることにより、基材112の面方向に略均一に分岐突起部120が配置された微細構造体を作製することができる。
【0064】
また、本実施形態では、陽極酸化処理および電流回復処理により、大面積の基材112でも容易に微細孔114aおよび分岐凹部114bを形成することができ、これにより、複数の微細金属体116を容易に形成することができる。すなわち、本実施形態によれば、本発明の新規な微細構造体100を、大面積に、容易に作製することができる。
【0065】
ここで、本実施形態では、被陽極酸化物金属基材112aとして、Alを使用しているが、陽極酸化可能な金属であれば、任意の金属を使用できる。Al以外では、例えば、Ti、Ta、Hf、Zr、Si、In、Zn等が挙げられ、これら金属(Alを含む)の2種以上を含むものであってもよい。誘電体基材112bは、アルミナを主成分とするとしたが、これに制限されず、陽極酸化処理可能な金属を被陽極酸化金属基材112aとして、陽極酸化処理により酸化された金属酸化物であればよい。
【0066】
また、本実施形態では、先端が先鋭化された微細金属体116を形成するためのテンプレートである、微細孔114aおよび分岐凹部114bを、被陽極酸化金属基材に陽極酸化処理および電流回復処理により形成したが、本発明はこれに限定されず、電子線(EB)リソグラフィ、近接場光リソグラフィ、ナノインプリント、収束イオンビーム(FIB)等の微細構造を作製可能な方法を利用してもよい。
【0067】
例えば、エッチングにより、深さ方向に延びる柱状の微細孔を形成し、次いで、電子線(EB)リソグラフィ、近接場光リソグラフィ等の微細加工技術を利用して、この微細孔の底部に、この柱状の微細孔よりも小さい内孔径の凹部(空隙)を深さ方向に複数形成する。このようにして形成された上記凹部および微細孔に金属を充填することにより、柱状部と、この柱状部の先端に柱状部よりも径が小さく、柱状部の延在方向に枝分れ形状に伸びた複数の突起を持つ分岐突起部とを有し、したがって、先端が先鋭化されている微細金属体を複数形成することができる。また、ナノインプリントにより、樹脂等の材料を用いて、先端に枝状の凹部を持つ微細孔と同様の形状を有するテンプレートを作製することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、先端に枝状の凹部を持つ微細孔を基材に形成するのに陽極酸化処理を用いたが、陽極酸化処理以外の方法を用いる場合は、基材の材料は、上記の陽極酸化可能な金属に限定されず、使用する方法に応じて微細加工が可能な材料であり、かつ、ドライエッチングやウェットエッチング等により除去可能な材料であればよい。
【0069】
更に、上記金属充填工程(D)において充填した複数の微細金属体18の突出した部分を研磨等を行うことにより除去した後、微細金属体18の上に突出部18bを形成する工程を含んでもよい。本発明によれば、微細孔14内への金属充填の均一性が高いため、微細金属体18の突出した部分の除去を短時間で行うことができ、作業効率を向上できる。
【0070】
図5に示す上述した方法で作製された微細構造体100は、基板122と、基板122上に配設され、その表面で開口し、規則的に配列された複数の微細孔114aが形成された誘電体基材112bと、柱状部118および柱状部118から延設された複数に分岐するより細い枝分れ形状を持つ分岐突起部120を備える複数の微細金属体116とを有する。
微細構造体100は、微細金属体116の先端に延設された分岐突起部120を有することにより、アンテナ効果を利用して増強電場を発生させることができる。
【0071】
本実施形態において、誘電体基材112bは、アルミナ(Al)を主成分とする誘電体の板状部材である。
誘電体基材112bには、複数の微細孔114aが略均一に配列されるように形成されている。
ここで、隣接する微細孔114a同士のピッチや、微細孔114aの孔径は、特に制限的ではなく、陽極酸化処理によって、隣接する微細孔114a間のピッチ、各微細孔114aの形状、および微細孔114aの径が、略均一となるように制御可能な範囲であればよく、一例として、隣接する微細孔114a同士のピッチが、10〜500nmであり、微細孔14aの孔径が、5〜400nmである。
【0072】
微細金属体116は、微細孔114aの内部に充填された柱状部118と、この柱状部118の先端から延設された分岐突起部120とを備える。
柱状部118は、微細孔114aと同一の径を有する柱状の金属部材であり、基板22側を基端として、誘電体基材112bの開口部まで延設されている。
柱状部112の先端から分岐突起部120が延設されている。分岐突起部120は、柱状部118よりも細い外径を有し、柱状部118の先端から1以上に分岐した枝分れ形状の突起を有する。なお、枝分れ形状の突起は、柱状部118の先端から分岐した先で、さらに複数に分岐している形状の突起を含む。
分岐突起部120では、柱状部118の先端から枝分れした枝分れ形状の突起は、それぞれ、基本的に異なる方向に向かって延設され、枝分れ形状の突起の各先端は、それぞれ、基本的に異なる方向を向いている。なお、本実施形態において、枝分れ形状の突起の各先端のうち、同一方向を向いているものが存在する場合があることは言うまでもない。
【0073】
このように、微細金属体116は、柱状部118よりも細い径を有し、複数に分岐した枝状の突起を有する分岐突起部120を有し、先端部が先鋭化されている。これにより、先鋭化された先端、すなわち分岐突起部120における局在プラズモン共鳴現象により分岐突起部120に電場が集中し、分岐突起部120の周辺に増強電場が発生する(アンテナ効果)。
【0074】
分岐突起部120における枝状の突起の径は、電場増強効果を好適に得ることができる値であれば特に制限はなく、微細金属体116に用いる金属や、所望する増強電場の強度等に応じて適宜成形すればよい。なお、分岐突起部120は、その形状がより先鋭であるのが好ましい。
【0075】
微細金属体116としては、局在プラズモン共鳴現象を生じる金属であればどのようなものでもよいが、局在プラズモン共鳴現象を発生しやすい金属としては、Au、Ag、Cu、Pt、Ni、Ti、Al等が挙げられ、電場増強効果が高いAu、Ag等が特に好ましい。
【0076】
本実施形形態の微細構造体100によれば、柱状部118の先端から延設され、この柱状部よりも細い分岐突起部120を有することにより、微細金属体116の先端が先鋭化されている。この先鋭化された先端を形成する分岐突起部120に電場が集中する、アンテナ効果により、分岐突起部120の周辺領域に増強電場を発生させることができる。
【0077】
ところで、増強電場を発生させる微細構造体をラマン散乱分光測定装置に用いる場合、SERS効果を得るためには、増強電場発生領域に測定対象物質を配置する必要があるが、近接効果を利用した微細構造体では、10nmを超えるような大サイズの物質を増強電場発生領域内に配置するのが困難であった。一方、本実施形態の微細構造体100によれば、分岐突起部120の周辺領域に増強電場を発生させるため、分岐突起部120上に測定対象物質を配置することで、増強電場発生領域内に配置することができる。例えば、10nmを超えるサイズの物質であっても、増強電場発生領域内に配置できる。すなわち、本実施形態の微細構造体100は、増強電場発生領域に配置する物質に関して、サイズの制約を受けることがない点から好ましい。
【0078】
また、分岐突起部120が、柱状部118の先端から、複数の方向に向かって延設されており、枝分れしたそれぞれの先鋭化された枝状の突起において増強電場を発生させることができるため、増強電場発生領域を基材112の面方向に拡大することができる。
また、微細金属体116が、略均一に配置されているため、増強電場発生領域を基材112の面方向に略均一に配置することができる。
【0079】
また、微細構造体100では、先端が枝状の突起として先鋭化された微細金属体116が規則的に配置されているために、単純な金属微粒子分散による金属ナノ構造、島状構造による金属ナノ構造、および、金属粗面等の、面方向に不均一な形状を有する微細構造体よりも、高く安定した電場増強効果を得ることができる。
【0080】
以下、本発明に係る微細構造体の作製方法の第3の実施形態について説明する。
図6(A)〜(I)は、本発明に係る微細構造体の作製方法の第3の実施形態を模式的に示す工程図である。図7は、図6(A)〜(I)に示す工程による本発明の微細構造体の作製方法に従って作製された微細構造体を模式的に示す斜視断面図である。
本実施形態の微細構造体200の作製方法では、図4(A)〜(I)に示す微細構造体100の作製方法と異なり、基材212に、先端が先鋭化した所定のテーパ形状の微細孔214bを形成し、このテーパ形状の微細孔214bをテンプレートとして、微細金属体216を形成する。
以下、図6(A)〜(I)を参照して、テーパ形状の微細孔214bの形成方法の一例を説明するとともに、微細構造体200の作製方法を説明する。
【0081】
まず、図6(A)に示すように、基材212として、被陽極酸化金属基材212aを用意する。
次に、被陽極酸化金属基材212aに陽極酸化処理を施し、図6(B)に示すように、複数の微細孔214aが開口された誘電体基材212bを形成する。本実施形態においても、被陽極酸化金属基材212aを陽極酸化すると、表面212s(図示上面)から略垂直方向に酸化反応が進行して、誘電体基材212bが生成される。陽極酸化により生成される誘電体基材212bは、微細構造体10および微細構造体100と同様に、平面視略正六角形状の微細柱状体224が隣接して配列した構造を有するものとなる。各微細柱状体224の略中心部には、誘電体基材212bの表面から深さ方向に、略同一径の微細孔214aが開孔されている。
【0082】
次いで、この微細孔214aをドライエッチングにより成形して、図6(C)に示すように、深さ方向に略一定のテーパ角で孔径が減少する、テーパ形状の微細孔214bを形成する。このようにして形成された、テーパ形状の微細孔214bは、その先端が先鋭化されたテーパ形状を有し、後述する先鋭化された先端突起220を持つ微細金属体216を形成するためのテンプレートとなる。
【0083】
次に、上述した図1に示す微細構造体10の作製方法と同様に、図2に示す微細構造体作製装置20を用いて、テーパ形状の微細孔214bを形成した基材212をメッキ液215に浸漬した後、基材212およびメッキ液215に振動を与える(図6(D)および図6(E)参照)。
【0084】
基材212およびメッキ液215に振動を与える工程と並行して、電解メッキによりテーパ形状の微細孔214b内に金属を充填して、微細金属体216を形成する(図6(E)および図6(F)参照)。
本実施形態においても、微細孔214bの先端から優先的に析出させることができ、先鋭化された先端突起220を持つテーパ形状の微細金属体216が形成される。
【0085】
ここで、上記加振工程(C)は上記金属充填工程(D)の途中で終了させてもよく、所望の金属充填量になるまで行ってもよい。
また、上記金属充填工程(D)は、上記加振工程(C)の後に行ってもよい。
【0086】
次に、図6(G)に示すように、微細金属体216が形成された基材212を、表面212s側を下方にして、基板222に接着剤を用いて固定する。基板222は、上述した基板122と同様である。
次に、図6(H)に示すように、基材212の被陽極酸化金属基材212aを除去し、次に、図6(I)に示すように、基材212の誘電体基材212bの少なくとも一部を、微細金属体216の先端側から除去して、微細金属体216の先端突起220を露出させる。
このようにして、微細構造体200は作製される。
【0087】
本実施形態の微細構造体200の製造方法によれば、基材212に、その先端がテーパ形状(針状)に先鋭化されたテーパ形状の微細孔214bを複数形成し、次いで、この基材212をメッキ液215に浸漬し、次いで、基材212およびメッキ液215に振動を与えて、これらの複数の微細孔214b内にメッキ液215を十分浸入させると共に、電解メッキにより金属を充填して、先鋭化された先端突起220をもつ微細金属体216を複数形成し、次いで、微細孔の深さ方向の下方にあたる微細金属体216の先端側から基材212の少なくとも一部を除去して、少なくとも微細金属体216の先鋭化された先端突起220を露出させることにより、増強電場を発生させる微細構造体200を作製することができる。
【0088】
特に、本実施形態で用いる基材212は、その先端がテーパ形状(針状)に先鋭化されたテーパ形状の微細孔214bを有しているが、この微細孔214bの先端部は非常に径が小さいため、従来の方法ではメッキ液215を十分浸入させることは困難である。しかしながら、基材212およびメッキ液215に振動を与えることにより、メッキ液215がテーパ形状の微細孔214bの先端部まで十分浸入できる。その結果、テーパ形状の微細孔214b内への金属充填の均一性を向上できる。その結果、テーパ形状の微細孔214b内へ金属を充填した後に突出した部分を研磨等により除去して平滑にする表面処理工程が不要になり、作業効率を向上できる。更に、基材212およびメッキ液215に振動を与えることによって、基材212に付着した異物や気泡を除去することができ、異物や気泡による充填むらも低減できる。また、一部の微細孔で金属充填が早く進んでしまった場合でも、振動により過剰な部分を削ぎ落とすことができる。
【0089】
特に、本実施形態では、テーパ状の微細孔214bを形成するための微細孔214aを陽極酸化処理により形成することにより、微細孔214aが等間隔に配列させることができる。これにより、テーパ状の微細孔214bおよびこれをテンプレートとして形成される微細金属体216も等間隔に配列させることができる。
【0090】
また、本実施形態においても、被陽極酸化金属基材212aを電極として電解メッキ処理を行うため、テーパ形状の微細孔214bのそれぞれに確実に金属を充填することができ、メッキ処理による充填むらがなく、各微細孔214b間で略均一な先端突起220を形成することができる。
また、微細金属体216の先端突起220の側から、基材212の一部を除去して、略均一に形成された先端突起220を露出させることにより、基材212の面方向に略均一に微細金属体216の先端突起220が配置された、面内均一性が高い微細構造体200を作製することができる。
【0091】
ここで、本実施形態では、陽極酸化処理を用いて、深さ方向に略均一な孔径の微細孔214aを形成した後に、この微細孔214aを下穴として、ドライエッチングによりテーパ形状の微細孔214bを形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、陽極酸化と孔径拡大処理を繰り返して当該構造を作製する方法が、特開2005−156695号公報に開示されている。
【0092】
上述した方法により作製された微細構造体200は、図7に示すように、基板222と、基板222上に配設され、規則的に配列された複数の微細孔214bが形成された誘電体基材212bと、複数の微細金属体216とを有する。本実施形態の微細構造体200は、テーパ状の微細孔214bを有し、その微細孔214b内部にテーパ状の微細金属体216が形成されており、テーパ状の微細金属体216の先鋭化された先端(先端突起220)におけるアンテナ効果を利用して増強電場を発生させる。
【0093】
本実施形形態の微細構造体200によれば、基板222を基端として先端に向かって径が減少するテーパ形状により、微細金属体216の先端が先鋭化されている。この先鋭化された先端突起220に電場が集中するアンテナ効果により、先端突起220の周辺領域に増強電場を発生させることができる。
また、先端突起220の周辺領域に増強電場が発生するため、先端突起220上に測定対象物質を配置することで、増強電場発生領域内に配置することができ、微細構造体100と同様に、例えば、10nmを超えるような大サイズの物質であっても、増強電場発生領域内に容易に配置できる。
【0094】
なお、上記第2および第3の実施形態では、露出工程において、微細金属体の先鋭化された先端(図4の分岐突起部120、図6のテーパ形状の先端突起220)が露出するように、基材(誘電体基材)の一部を除去したが、本発明はこれに限定されず、基板と基板上に配設された複数の微細金属体のみを残して、基材を全て除去してもよい。例えば、図8に示すように、微細構造体200の誘電体基材212bを全て除去して、基板222と、基板222上に配設された複数の微細金属体216を有する微細構造体210としてもよい。この場合、基板222と誘電体基材212bを接着する工程(図6(E)参照)を行う際に、必要に応じて表面212sを研磨する等により、表面212sと微細金属体216の基端面とを同一面とし、微細金属体216を基板222上に確実に固定するのが好ましい。
【0095】
なお、上記第2および第3の実施形態では、基板上に、複数の微細金属体が形成された基材を配設しているが、本発明はこれに限定されず、微細金属体のテンプレートとなる基材が、微細構造体の自重に対して十分な強度を有するものであれば、基板は必ずしも必要ではなく、基板を除く、基材と基材の内部に形成された微細金属体とを微細構造体としてもよい。
【0096】
上述した本発明に係る微細構造体の作製方法により作製される微細構造体は、ラマン分光測定におけるラマン分光用デバイスとして好適に用いることができる。本発明の微細構造体の複数の微細金属体の先端に測定対象物質を配置し、光照射手段からこの微細構造体に特定波長の光を照射し、発生した散乱光を分光手段で分光してラマン散乱光のスペクトル(ラマンスペクトル)を得る。このように、本発明の微細構造体をラマン分光用デバイスとして使用すれば、微細金属体の先鋭化され先端周辺に発生する増強電場により、好適にSERS効果を得ることができ、高精度のラマン分光測定を実施できる。
【0097】
以上、本発明に係る微細構造体の作製方法およびこの方法により作製された微細構造体について詳細に説明したが、本発明は上記実施態様に限定はされず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例】
【0098】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
(実施例1)
図1(A)〜(E)に示す微細構造体の作製方法により、図2に示す微細構造体作製装置20を用いて図1(E)および図3に示す微細構造体10を作製した。
微細構造体作製装置20は、電解メッキ槽22としてガラスビーカ、加振手段32として超音波洗浄機(SIBATA社製 超音波洗浄器 SU−3TH)を用いて構成した。
まず、アルミニウムの被陽極酸化基材12aに陽極酸化処理を行った。陽極酸化処理の条件は、電解液としてシュウ酸を用い、電解液濃度0.5M、液温15℃、印加電圧40Vとした。
次に、電解メッキ槽22において、陽極酸化処理により微細孔14を形成した基材12にカソード28を接続し、基材12を保持手段24で保持し、電解メッキ槽22内のメッキ液16に浸漬させた。カソード28は、基材12の微細孔14が設けられている表面の裏側の面に接続した。メッキ液16として、四塩化金酸水和物の水溶液を用いて、その温度は30℃とした。
次に、超音波洗浄機を34KHzの設定で作動させてメッキ液を振動させた。
超音波洗浄機の作動開始とほぼ同時にAC11Vの条件で電解メッキを開始した。
超音波洗浄機を作動させてから1分後に超音波洗浄機を停止した。その後、超音波振動を与えずに、金属が微細孔14から突出するように突出部18bを形成するまで電解メッキを行い、実施例1の微細構造体10を得た。
図9に、実施例1で得られた微細構造体10の断面のSEM像を示す。
【0099】
図9に示す実施例1の微細構造体のSEM像から明らかなように、実施例1の微細構造体は、基体やメッキ液に振動を与えたことにより、微細孔内への金属充填の均一性が向上したので、各微細金属体の突出部の大きさがほぼ均一であった。すなわち、微細孔内への金属充填の均一性が向上したことにより、微細孔内へ金属を充填した後に突出した部分を研磨等により除去して平滑にする表面処理工程が不要となり、作業効率に優れていることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】(A)〜(E)は、それぞれ本発明に係る微細構造体の作製方法の一実施形態を模式的に示す工程図である。
【図2】本発明に係る微細構造体の作製方法に用いられる微細構造体作製装置の一実施形態の概略構成を示す概念図である。
【図3】図1(A)〜(E)に示す微細構造体の作製方法によって作製された微細構造体を模式的に示す斜視断面図である。
【図4】(A)〜(I)は、それぞれ本発明に係る微細構造体の作製方法の他の実施形態を模式的に示す工程図である。
【図5】図4(A)〜(I)に示す微細構造体の作製方法によって作製された微細構造体を模式的に示す斜視断面図である。
【図6】(A)〜(I)は、それぞれ本発明に係る微細構造体の作製方法の一実施形態を模式的に示す工程図である。
【図7】図6(A)〜(I)に示す微細構造体の作製方法によって作製された微細構造体を模式的に示す断面図である。
【図8】図7に示す微細構造体の変形例を示す断面図である。
【図9】図1(A)〜(E)に示す微細構造体の作製方法で作製された実施例の微細金属体の断面のSEM像である。
【符号の説明】
【0101】
10、100、200、210 微細構造体
12、112、212 基材
12a、112a、212a 被陽極酸化金属基材
12b、112b、212b 誘電体基材
12s、112s、212s 表面
13、124、224 各微細柱状体
14、114a、214a 微細孔
16、115,215 メッキ液
18、116、216 微細金属体
18a、118 柱状部
18b 突出部
20 微細構造体作製装置
22 電解メッキ槽
24 保持手段
26 アノード
28 カソード
30 電源部
32 加振手段
34 水
36 水槽
38 超音波振動子
114b 分岐凹部
120 分岐突起部
122、222 基板
214b テーパ形状の微細孔
220 先端突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増強電場を発生させる微細金属体を有する微細構造体の作製方法であって、
基材の表面に微細孔を形成する微細孔形成工程(A)と、
前記微細孔形成工程(A)において前記微細孔が形成された前記基材をメッキ液に浸漬させるメッキ液浸漬工程(B)と、
前記メッキ液浸漬工程(B)の後に、加振手段により前記基材および前記メッキ液を振動させて、前記メッキ液を前記微細孔内に浸入させる加振工程(C)と、
前記加振工程(C)と並行してまたは前記加振工程(C)の後に、電解メッキにより前記微細孔内に金属を充填して、前記微細金属体を形成する金属充填工程(D)とを有することを特徴とする微細構造体の作製方法。
【請求項2】
前記加振工程(C)において、前記加振手段として超音波振動子を用いる請求項1に記載の微細構造体の作製方法。
【請求項3】
前記金属充填工程(D)において、前記加振工程(C)と並行して、電解メッキにより前記微細孔内に金属を充填して、前記微細金属体を形成する請求項1または2に記載の微細構造体の作製方法。
【請求項4】
前記加振工程(C)において、前記金属充填工程(D)の途中で、前記加振工程(C)を終了する請求項3に記載の微細構造体の作製方法。
【請求項5】
前記金属充填工程(D)において、前記加振工程(C)の後に、電解メッキにより前記微細孔内に金属を充填して、前記微細金属体を形成する請求項1または2に記載の微細構造体の作製方法。
【請求項6】
前記微細孔の孔径は、5〜400nmである請求項1〜5のいずれかに記載の微細構造体の作製方法。
【請求項7】
前記微細孔形成工程(A)は、陽極酸化処理により行われる請求項1〜6のいずれかに記載の微細構造体の作製方法。
【請求項8】
前記微細構造体は、ラマン分光用デバイスとして用いられる請求項1〜7のいずれかに記載の微細構造体の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−235505(P2009−235505A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84082(P2008−84082)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】