説明

微細繊維状セルロースの製造方法

【課題】
本発明は、微細繊維状セルロースを効率よく製造する方法であり、最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを簡便な方法により効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】
最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースの製造方法において、セルロース繊維をオゾン処理した後、水に分散し、得られたセルロース繊維の水系懸濁液を粉砕処理することを特徴とする微細繊維状セルロースの製造方法である。オゾン処理におけるオゾン添加率を絶乾セルロース繊維質量当たり0.1〜30質量%とする。粉砕処理は石臼粉砕、高圧ホモジナイザー、ボールミルから選択される少なくとも1種である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細繊維状セルロースを効率よく製造する方法であり、最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを簡便な方法により効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
近年、物質をナノメートルサイズの大きさにすることによりバルクや分子レベルとは異なる物性を得ることを目的としたナノテクノロジーが注目されている。一方で、石油資源の代替および環境意識の高まりから再生産可能な天然繊維の応用にも注目が集まっている。
天然繊維の中でもセルロース繊維、とりわけ木材由来のセルロース繊維(パルプ)は主に紙製品として幅広く使用されている。紙に使用されるセルロース繊維の幅は10〜50μmのものがほとんどである。このようなセルロース繊維から得られる紙(シート)は不透明であり、不透明であるが故に印刷用紙として幅広く利用されている。一方、セルロース繊維をレファイナーやニーダー、サンドグラインダーなどで処理(叩解、粉砕)し、セルロース繊維を微細化(ミクロフィブリル化)すると透明紙(グラシン紙等)が得られる。しかし、この透明紙の透明性は半透明レベルであり、光の透過性は高分子フィルムに比べると低く、曇り度合い(ヘーズ値)も大きい。
【0003】
また、セルロース繊維は弾性率が高く、熱膨張率の低いセルロース結晶の集合体であり、セルロース繊維を樹脂と複合化することによって耐熱寸法安定性が高まるため、積層板などに利用されている。ただし、通常のセルロース繊維は結晶の集合体であり、筒状の空隙のある繊維のため寸法安定性には限界がある。
さらに、セルロース繊維を機械的に粉砕し、その繊維幅を50nm以下とした微細繊維状セルロースの水分散液は透明である。他方、微細繊維状セルロースシートは空隙を含むため白く乱反射し、不透明性が高くなるが、微細繊維状セルロースシートに樹脂を含浸すると空隙が埋まるため、透明なシートが得られる。微細繊維状セルロースシートの繊維はセルロース結晶の集合体であり、非常に剛直で、また、繊維幅が小さいため、通常のセルロースシート(紙)に比べると同質量において繊維の本数が飛躍的に多くなり、樹脂と複合化すると樹脂中で細い繊維がより均一かつ緻密に分散し、耐熱寸法安定性が飛躍的に高まる。さらに、繊維が細いため透明性も高い。このような特性を有する微細繊維状セルロースの複合体は、有機ELや液晶ディスプレイ用のフレキシブル透明基板(曲げたり折ったりすることのできる透明基板)として非常に大きな期待が寄せられている。
【0004】
ところで、セルロース繊維を機械的に粉砕して微細なセルロース繊維を製造する方法として、回転型ミルやジェットミルのような高速衝撃粉砕法、ロールクラッシャー法などが主に使用されている。しかしながら、セルロースは有機物であり、柔らかいため機械的な粉砕処理のみでは微細なセルロース繊維を得ることが難しく、本発明の最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを得るためには、化学的処理と機械的粉砕処理とを組合せた方法が一般的に使用されている。
【0005】
具体的に、化学的処理と機械的粉砕処理とを組合せた方法としては、パルプを軽度に加水分解し、濾過水洗後、乾燥、粉砕して一部非晶領域を含むセルロース微粒子の製造方法や精製パルプを塩酸または硫酸で加水分解して結晶領域のみを残して微粉化する技術が開示されているが、微細化のレベルとしては充分ではなく、得られた微細繊維状セルロースの水系懸濁液の透明性も不充分である(非特許文献1)。
【0006】
微小な繊維幅の繊維状セルロースの製造方法として、繊維状セルロースの水懸濁液を少なくとも3000psiの圧力差で小径オリフィスを高速度で通過させる方法、すなわち高圧均質化装置(高圧ホモジナイザー)により繊維状セルロース懸濁液を処理する方法が開示されている(特許文献1、2)が、繊維状セルロース懸濁液に高圧をかけて細いオリフィスを通す必要があるため、処理効率が非常に低いという問題がある。
【0007】
紙の紙力を増加させたり、透気度を高めることができる微細繊維化セルロースの製造方法として、予め叩解処理したパルプを粒度が16〜120番の砥粒からなる砥粒板を複数枚擦り合わせ配置した砥粒板擦り合わせ装置を用いて微細化する技術が開示されている(特許文献3)が、微細化に供するパルプスラリーの固形分濃度を高くすると急激に処理効率が低下するという問題が依然として残されている。
【0008】
N−オキシル化合物によるセルロースの表面酸化反応を利用し、最大繊維径1000nm以下かつ数平均繊維径が2〜150nmであり、セルロースの水酸基の一部がカルボキシル基およびアルデヒド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基に酸化されており、且つセルロースI型結晶構造を有する微細セルロースを提供する技術(特許文献4)が開示されているが、工程が複雑で実用性に乏しい。
【0009】
また、酵素または薬品により前処理した繊維状セルロースを振動ミル粉砕機にて湿式粉砕する技術が開示されている(特許文献5)が、酵素反応や化学反応の効率が依然として低く、生産性の高い微細繊維状セルロースの製造方法とはいえない。
【0010】
上記のように、繊維状セルロースを微細化する技術が種々開示されているが、工業的なレベルの生産性を確保するまでには至っておらず、繊維状セルロースを微細化する簡便な方法の提供が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】山口章「セルロースの微粉化・ミクロフィブリル化」紙パルプ技術タイムス28巻9号5頁以下(1985年)
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公昭60−19921号公報
【特許文献2】特公昭63−44763号公報
【特許文献3】特許第3036354号公報
【特許文献4】特開2008−1728号公報
【特許文献5】特開平6−10288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、微細繊維状セルロースを効率よく製造する方法であり、最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを簡便な方法により効率的に製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースの製造方法において、セルロース繊維をオゾン処理した後、水に分散し、得られたセルロース繊維の水系懸濁液を粉砕処理する微細繊維状セルロースの製造方法。
【0015】
(2)オゾン処理におけるオゾン添加率が絶乾セルロース繊維質量当たり0.1〜30質量%である(1)に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
【0016】
(3)粉砕処理が石臼粉砕、高圧ホモジナイザー、ボールミルから選択される少なくとも1種である(1)または(2)に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
【0017】
(4)粉砕処理における水系懸濁液の濃度が0.1〜3質量%である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
【0018】
(5)オゾン処理の後に洗浄処理、粉砕処理を順次行う(1)〜(4)のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明者らは、セルロース繊維を膨潤させ得る方法を種々検討し、セルロース繊維に前処理としてオゾン処理を施すことによりセルロース繊維を膨潤し、微細なフィブリル間、さらには結晶領域を構成するミクロフィブリル間の結合力を弱め、後続する粉砕処理により原料の繊維状セルロースを効率よく微細化できることを見出した。
【0020】
従来から、セルロース繊維を膨潤させる方法として、酵素(キシラナーゼ、セルラーゼ)処理や薬品(アルカリ、塩化亜鉛、エチレンジアミン、チオ尿素、ベンゼンスルホン酸)処理が知られているが、本発明ではオゾン処理を採用したことに特徴を有するものである。本発明によって、微細繊維状セルロースを非常に効率よく生産できる製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明においては、セルロース繊維を微細化するに当たり、前処理としてオゾン処理を採用するものである。オゾン処理は他の酵素処理や薬品処理と比べて、反応時間が短い、洗浄負荷が低いといった優れた特性がある。但し、オゾン処理を過度に進めるとセルロース繊維の分解・切断が進行し過ぎ、粉砕処理により繊維状セルロースの微細化と同時に微小化も早く進行するため、要求される微細繊維状セルロースの物性ごとに処理条件を適正に調節する必要がある。
【0022】
オゾン処理は、セルロース繊維をオゾン分子と接触させて、酸化反応とともにセルロース繊維を膨潤させることを目的とする。該オゾン処理は、セルロース繊維を暴露することによって行われる。暴露方法は、オゾンが存在する雰囲気に所定時間保持する方法、オゾン気流中に所定時間暴露する方法等適宜の方法で行うことができる。
【0023】
オゾンは、空気、酸素ガス、または酸素添加空気等の酸素含有気体を公知のオゾン発生装置に供給することによって発生させることができる。得られたオゾン含有気体を、上記材料を保持してある容器、槽等に導入してオゾン処理を行う。オゾン含有気体中のオゾン濃度、セルロース繊維に対するオゾン添加率、処理温度、処理時間等の諸条件は、セルロース繊維を膨潤させるという目的に応じて適宜定めることができる。
【0024】
ここで、オゾン含有気体中のオゾン濃度としては、50〜1000g/mであることが好ましく、100〜500g/mであることがより好ましい。オゾン濃度が50g/m未満であると酸化反応とともにセルロース繊維を分解・切断する効果に乏しくなるおそれがある。オゾン濃度が1000g/mを超えると後続する粉砕処理においてセルロース繊維の切断が過度に進行してしまう、あるいは過度に分解した低分子物質・酸化物質、ラジカルが発生し、加熱による変色などを引き起こすおそれがある。
【0025】
セルロース繊維に対するオゾン添加率としては、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。オゾン添加率が0.1質量%未満であると酸化反応とともにセルロース繊維を分解・切断する効果に乏しくなるおそれがある。オゾン添加率が30質量%を超えると後続する粉砕処理においてセルロース繊維の切断が過度に進行してしまう、あるいは過度に分解した低分子物質・酸化物質、ラジカルが発生し、加熱による変色などを引き起こすおそれがある。
【0026】
処理温度としては、0〜100℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましい。処理温度が0℃未満であると試料の取り扱いが難しく、装置も大型化し、コスト的に不利になるおそれがある。処理温度が100℃を超えるとオゾンが容易に分解し、酸化反応とともにセルロース繊維を分解・切断する効果に乏しくなるおそれがある。
【0027】
処理時間としては、1〜60分であることが好ましく、5〜30分であることがより好ましい。処理時間が1分未満であると酸化反応とともにセルロース繊維を分解・切断する効果に乏しくなるおそれがある。処理時間が60分を超えるとオゾンによる酸化反応はレベルオフし、それ以上はほとんど進行しない。
【0028】
本発明はリファイナー、シュレッダーといった繊維破砕・切断のような物理的処理、NaOH水溶液、アンモニア、エチレンジアミンその他のアルカリ系薬品処理といった化学処理を反応前に施したパルプに対して行うと更に効果が高い。
【0029】
本発明においては、オゾン処理の後に水、アルカリ性水溶液(NaOH等)、酸性水溶液(塩酸等)等により洗浄してから粉砕処理を施すことが好ましい実施態様である。
【0030】
上記オゾン処理を施したセルロース繊維は水に分散され、水性懸濁液として粉砕処理に供される。該水性懸濁液の濃度としては0.1〜3質量%であることが好ましく、0.3〜1質量%であることがより好ましい。因みに、濃度が0.1質量%未満であると後工程のセルロース解繊負荷低減効果がほとんどなくなるおそれがある。濃度が3質量%を超えると粉砕処理中に粘度が上昇し過ぎ、取扱いが非常に困難となるおそれがある。
【0031】
本発明において、繊維状セルロースの粉砕方法には特に制限はないが、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混錬機(二軸押出機)、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなどの機械的作用を利用する湿式粉砕でセルロース系繊維を細くする方法が好ましい。なかでも、石臼粉砕、高圧ホモジナイザー、ボールミル処理が微細な繊維が効率的に得られるため、特に好ましい。微細化するセルロース系繊維としては、植物由来のセルロース、動物由来のセルロース、バクテリア由来のセルロースなどが挙げられる。より具体的には、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材系製紙用パルプ、コットンリンターやコットンリントなどの綿系パルプ、麻や麦わら、バガスなどの非木材系パルプ、ホヤや海草などから単離されるセルロースなどが挙げられる。これらの中でも木材系製紙用パルプや非木材系パルプが入手のし易さという点で好ましい。
【0032】
本発明により得られる微細繊維状セルロースは通常製紙用途で用いるパルプ繊維よりもはるかに細いセルロース繊維あるいは棒状粒子である。微細繊維状セルロースは結晶状態のセルロース分子の集合体であり、その結晶構造はI型(平行鎖)である。微細繊維状セルロースの幅は電子顕微鏡で観察して1nm〜1000nmが好ましく、より好ましくは2nm〜500nm、さらに好ましくは4nm〜100nmである。繊維の幅が1nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維としての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しなくなる。1000nmを超えると微細繊維とは言えず、通常のパルプに含まれる繊維にすぎないため、微細繊維としての物性(強度や剛性、寸法安定性)が得られない。微細繊維状セルロースに透明性が求められる用途であると、微細繊維の幅は50nm以下が好ましい。これらの微細繊維状セルロースから得られる複合材料は密度が高く、緻密な構造体となるために強度が高く、セルロース結晶に由来した高い弾性率が得られることに加え、可視光の散乱が少ないため高い透明性も得られる。
【0033】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の部及び%は特に断らない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
【実施例】
【0034】
<実施例1>
容器にLBKP(セニブラ社製:水分50%、フリーネス600mLcsf)40gおよび空気2Lを加えた後、オゾン濃度200g/mのオゾン/酸素混合気体を1L加え、25℃で2分間振とうした後、30分静置した。この時のオゾン添加率はパルプ乾燥質量に対して1質量%である。オゾン処理後のパルプをイオン交換水で十分に洗浄した後に、パルプ濃度が1%になるように水を加えてディスインテグレーターで解繊した。
得られたパルプ懸濁液を0.5%に希釈し、このパルプ懸濁液を石臼型分散機(増幸産業社製「スーパーマスコロイダー」)を用いて4回処理を行った後、高圧衝突型分散機(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で10回処理し、最後に20KHzの超音波処理を1分間行い、微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。
得られた微細繊維状セルロース懸濁液について遠心分離機(コクサン社製「H−200NR」)を用いて約5000Gで5分間処理し、上澄濃度を測定したところ、0.34%であった。ここで得られた上澄液を孔径0.45μmのメンブレンフィルター上で吸引ろ過し、シート化したところ歩留りはほぼ100%であった。また、上澄み液中の繊維を電子顕微鏡で観察したところ、繊維径は200nm以下であった。
【0035】
<実施例2>
容器にLBKP(セニブラ社製:水分50%、フリーネス600mLcsf)40gおよび空気2Lを加えた後、オゾン濃度200g/mのオゾン/酸素混合気体を3L加え、25℃で2分間振とうした後、30分静置した。この時のオゾン添加率はパルプ乾燥質量に対して3質量%である。処理後のパルプをイオン交換水で十分に洗浄した後に、パルプ濃度が1%になるように水を加えてディスインテグレーターで解繊した。
得られたパルプ懸濁液を0.5%に希釈し、このパルプ懸濁液を石臼型分散機(増幸産業社製「スーパーマスコロイダー」)を用いて4回処理を行った後、高圧衝突型分散機(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で10回処理し、最後に20KHzの超音波処理を1分間行い、微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。
微細繊維状セルロース水系懸濁液について遠心分離機(コクサン社製「H−200NR」)を用いて約5000Gで5分間処理し、上澄濃度を測定したところ、0.35%であった。また、上澄み液中の繊維を電子顕微鏡で観察したところ、繊維径は200nm以下であった。
【0036】
<実施例3>
容器にLBKP(セニブラ社製:水分50%、フリーネス600mLcsf)40gおよび空気2Lを加えた後、オゾン濃度200g/mのオゾン/酸素混合気体を5L加え、25℃で2分間振とうした後、30分静置した。この時のオゾン添加率はパルプ乾燥質量に対して5質量%である。処理後のパルプをイオン交換水で十分に洗浄した後に、パルプ濃度が1%になるように水を加えてディスインテグレーターで解繊した。
得られたパルプ懸濁液を0.5%に希釈し、このパルプ懸濁液を石臼型分散機(増幸産業社製「スーパーマスコロイダー」)を用いて4回処理を行った後、高圧衝突型分散機(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で10回処理し、最後に20KHzの超音波処理を1分間行い、微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。
得られた微細繊維状セルロースの水系懸濁液について遠心分離機(コクサン社製「H−200NR」)を用いて約5000Gで5分間処理し、上澄濃度を測定したところ、0.37%であった。また、上澄み液中の繊維を電子顕微鏡で観察したところ、繊維径は200nm以下であった。
【0037】
<実施例4>
容器にLBKP(セニブラ社製:水分53.0%、フリーネス600mLcsf)40gおよび空気2Lを加えた後、オゾン濃度200g/mのオゾン/酸素混合気体を20L加え、25℃で2分間振とうした後、30分静置した。この時のオゾン添加率はパルプ乾燥質量に対して20質量%である。処理後のパルプをイオン交換水で十分に洗浄した後に、パルプ濃度が1%になるように水を加えてディスインテグレーターで解繊した。
得られたパルプ懸濁液を0.5%に希釈し、このパルプ懸濁液を石臼型分散機(増幸産業社製「スーパーマスコロイダー」)を用いて4回処理を行った後、高圧衝突型分散機(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で10回処理し、最後に20KHzの超音波処理を1分間行い、微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。
得られた微細繊維状セルロースの水系懸濁液について遠心分離機(コクサン社製「H−200NR」)を用いて約5000Gで5分間処理し、上澄濃度を測定したところ、0.39%であった。また、上澄み液中の繊維を電子顕微鏡で観察したところ、繊維径は200nm以下であった。
【0038】
<比較例1>
LBKP(セニブラ社製:水分50%、フリーネス600mLcsf)40gをパルプ濃度が1%になるように水を加えてディスインテグレーターで解繊した。
得られたパルプ懸濁液を0.5%に希釈し、このパルプ懸濁液を石臼型分散機(増幸産業社製「スーパーマスコロイダー」)を用いて4回処理を行った後、高圧衝突型分散機(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で10回処理し、最後に20KHzの超音波処理を1分間行い、微細繊維状セルロース水系懸濁液を得た。
遠心分離機(コクサン社製「H−200NR」)を用いて約5000Gで5分間処理し、上澄濃度を測定したところ、0.17%であった。また、上澄み液中の繊維を電子顕微鏡で観察したところ、繊維径は200nm以下であった。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明により、最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースを簡便な方法により効率的に製造することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースの製造方法において、セルロース繊維をオゾン処理した後、水に分散し、得られたセルロース繊維の水系懸濁液を粉砕処理することを特徴とする微細繊維状セルロースの製造方法。
【請求項2】
オゾン処理におけるオゾン添加率が絶乾セルロース繊維質量当たり0.1〜30質量%であることを特徴とする請求項1に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
【請求項3】
粉砕処理が石臼粉砕、高圧ホモジナイザー、ボールミルから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
【請求項4】
粉砕処理における水系懸濁液の濃度が0.1〜3質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
【請求項5】
オゾン処理の後に洗浄処理、粉砕処理を順次行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。

【公開番号】特開2010−254726(P2010−254726A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102630(P2009−102630)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】