心臓弁の弁輪を再建するためのデバイス、システムおよび方法
デバイス、システムおよび方法は、機能不全の心臓弁の弁輪の中に、弁輪上に、または弁輪の近くに取り付けられるようなサイズおよび構成である移植片を採用する。使用時には、この移植片は、弁輪の短軸または弁輪の長軸のいずれかを横切って、あるいはその両方を横切って拡張する。この移植片は、この心臓弁の弁輪および弁尖を、より機能的な解剖学的形状および張力に回復させる。より機能的な解剖学的形状および張力は、この弁尖の癒合に適しており、このことが、今度は逆の流れすなわち逆流を低減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2003年10月1日に出願され、「Devices,Systems,and Methods for Reshaping a Heart Valve Annulus」と題する同時係属中の米国特許出願第10/677,104号の一部継続出願であり、この米国特許出願第10/677,104号は、2000年9月20日に出願され、「Heart Valve Annulus Device and Methods of Using Same」と題する米国特許出願第09/666,617号の利益を主張し、この米国特許出願第09/666,617号は、本明細書中に参考として援用される。本願はまた、2002年10月1日に出願され、「Systems and Devices for Heart Valve Treatments」と題する特許協力条約に基づく出願第PCT/US02/31376号の利益を主張し、この第PCT/US02/31376号は、2001年10月1日に出願された米国仮特許出願第60/326,590号の利益を主張し、この第PCT/US02/31376号は、本明細書中に参考として援用される。本願はまた、2002年11月26日に出願され、「Heart Valve Remodeling Devices」と題する米国仮特許出願60/429,444号;2002年11月26日に出願され、「Neo−Leaflet Medical Devices」と題する米国仮特許出願60/429,709号;および2002年11月26日に出願され、「Heart Valve Leaflet Retaining Devices」と題する米国仮特許出願60/429,462号の利益を主張し、これら各々は本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、例えば、僧帽弁逆流の処置において、心臓弁の機能を改善するためのデバイス、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
(I.健康な心臓の解剖学的構造)
心臓(図1を参照のこと)は、握りこぶしよりわずかに大きい。それは、二重(左側および右側)の、自己調節性の筋肉ポンプであり、そのパーツが調和して作動して、身体のすべての部分へと血液を推進する。心臓の右側は、上大静脈および下大静脈から、身体からの酸素付加量が少ない(静脈)血を受け取り、それを、酸素付加のために肺動脈を通して肺にポンプ輸送する。左側は、十分に酸素付加された(動脈)血を、肺から肺静脈を通して受け取り、それを身体への分配のために大動脈中へポンプ輸送する。
【0004】
心臓は、各側に2つずつ、4つの室(chamber)を有し、つまりそれらが、左右の心房および左右の心室である。心房は、血液を受け取る室であり、それは血液を心室へとポンプ輸送する。膜部分および筋肉部分から構成される壁(心房内中隔と呼ばれる)が右心房と左心房とを分離している。心室は、血液を放出する室である。膜部分および筋肉部分から構成される壁(心室内中隔と呼ばれる)が右心室と左心室とを分離している。
【0005】
心臓の左側および右側の同調したポンプ輸送作用は、心周期を構成する。この周期は、心室性拡張期と呼ばれる心室の弛緩期で始まる。この周期は、心室の収縮の期間(心室収縮と呼ばれる)で終わる。
【0006】
心臓は、心周期の間に血液が誤った方向に流れないこと、つまり血液が、心室から対応する心房へ逆流しないこと、または動脈から対応する心室へ逆流しないことを確実にする4つの弁(図2および3を参照のこと)を有する。左心房と左心室との間の弁が僧帽弁である。右心房と右心室との間の弁が、三尖弁である。肺動脈弁は、肺動脈の開口部にある。大動脈弁は、大動脈の開口部にある。
【0007】
心室性拡張期(心室の充填)(図2を参照のこと)の最初に、大動脈弁および肺動脈弁は閉じ、動脈から心室への逆流を防ぐ。その後まもなく、(図2が示すように)三尖弁および僧帽弁が開き、心房から対応する心室への流れが可能になる。心房収縮(すなわち、心室の空洞化(emptying))が始まって後まもなく、三尖弁および僧帽弁は閉じ(図3を参照のこと)、心室から対応する心房への逆流を防ぎ、そして大動脈弁および肺動脈弁が開き、対応する心室から動脈への血液の放出を許容する。
【0008】
心臓弁の開閉は、主に、圧力差の結果として起こる。例えば、僧帽弁の開閉は、左心房と左心室との間の圧力差の結果として起こる。心室性拡張期の間、心室が弛緩しているとき、肺静脈から左心房中への血液の静脈還流は、心房中の静脈還流を超えさせる。結果として、僧帽弁は開き、血液が心室に入ることが可能になる。心室収縮期の間、心室が収縮するとき、心室内圧力は心房中の圧力を超えて上昇し、そして僧帽弁を押して閉じる。
【0009】
僧帽弁および三尖弁は、コラーゲンの線維性リングにより規定され、各々、弁輪と呼ばれ、これら各々は、心臓の線維性骨格の一部を形成する。この弁輪は、僧帽弁の2つの心臓弁膜尖または弁尖(前尖および後尖と呼ばれる)ならびに三尖弁の3つの心臓弁膜尖または弁尖に対する結合を提供する。これらの弁尖は、1つ以上の乳頭筋からの腱索を受ける。健康な心臓では、これらの筋肉およびそれらの腱索は、僧帽弁および三尖弁を支持し、弁尖が左右心室の収縮(ポンプ輸送)の間に高められた高圧に抵抗することを可能にする。
【0010】
健康な心臓では、腱索は、張りつめた状態になり、弁尖が左右心房中に押され裏返ることを防ぐ。脱(出症)は、この状態を記述するために使用される用語である。これは、通常は、心室内の乳頭筋の収縮により防止され、乳頭筋は、腱索により僧帽弁弁尖に接続される。乳頭筋の収縮は、心室の収縮と同時であり、健康な弁尖を心室によって奏されるピーク収縮期圧力でしっかりと閉じたままに保つように働く。
【0011】
(II.僧帽弁機能不全の特徴および原因)
健康な心臓(図4を参照のこと)では、ピーク収縮圧力で僧帽弁輪の寸法は、弁尖が癒合して密な接合を形成するように解剖学的形状および張力を生成する。弁尖が輪の対向する内側および外側で癒合する場合は、弁尖の交連と呼ばれ、図4および他の図面でCM(内側交連を示す)およびCL(外側交連を示す)で指定されている。
【0012】
弁の機能不全は、伸張された状態にある腱索(索)およびある場合には引き裂かれている腱索(索)から生じ得る。索が引き裂かれると、弁尖が動揺する結果となる。また、正常な構造の弁は、弁輪の拡大または弁輪の形状変化に起因して、適正には機能しないことがあり得る。この状態は、弁輪の拡張(dilation)と呼ばれ、一般に、心筋の不全から生じる。さらに、弁は、生まれつきまたは後天的な疾患に起因して欠陥を有し得る。
【0013】
原因(図5を参照のこと)は何であれ、僧帽弁の機能不全は、弁尖がピーク収縮期圧力で癒合しないときに起こり得る。図5が示すように、2つの弁尖の癒合線は、心室収縮時に密ではない。結果として、左心室から左心房中への血液の望ましくない逆流が起こり得る。この状態は、逆流(regurgitation)と呼ばれる。
【0014】
いくつかの場合(図6を参照のこと)、交連から交連(CM〜CL)へ長軸に沿って測定され、そして/または前〜後(A〜P)へ短軸に沿って測定された僧帽弁輪の寸法が変化するので、弁尖は密な癒合接合部を形成しない。この変化した寸法は、もはや弁尖がピーク収縮期圧力で癒合する解剖学的形状および張力を生成しない。
【0015】
図4の健康な弁輪を図6の不健康な弁輪と比較すると、不健康な弁輪は、拡張しており、特に短軸に沿った前〜後の距離が増加している。結果として、この弁輪によって規定される形状および張力は、あまり卵型(図4を参照のこと)でなくなり、より丸く(図6を参照のこと)なる。この状態は、拡張(dilation)と呼ばれる。弁輪が拡張している場合、ピーク収縮期圧力で癒合に適する形状および張力は、次第に低下する。代わりに、ピーク収縮期圧力で、弁尖は、完全には癒合せず、隙間が弁尖の間に生成する。心室収縮の間、逆流がこの隙間を通って起こり得る。長軸に沿った交連〜交連間の距離と短軸に沿った前〜後距離との間の比が弁尖の癒合の有効性に関係を有していると考えられている。短軸に沿った前〜後距離が増加すると、この比が変化し、そしてこの比が特定の値に到達すると、逆流または逆流の可能性が示される。
【0016】
逆流の結果として、「余分な」血液が左心房中に逆流する。続く心室性拡張期(心臓が弛緩するとき)の間、この「余分な」血液は、左心室に戻り、容積の過負荷、すなわち左心室中のあまりに多い血液を生成する。引き続く心室収縮の間(心臓が収縮するとき)、予想よりも多くの血液が心室中に存在する。このことは、(1)余分な血液を移動させるために、心臓はより激しくポンプ輸送せねばならないこと;(2)あまりに少ない血液が、心臓から身体の残りの部分へ移動するかも知れない;そして(3)より多くの容積の血液を収容するために、経時的に、左心室は、拡張かつ拡大し、そして左心室はより弱くなり得る。
【0017】
僧帽弁逆流の軽度の場合はあまり問題は生じないが、より重篤で慢性的な場合は最終的に心臓を弱め、そして心不全を生じ得る。僧帽弁逆流は、急性状態または慢性状態であり得る。それは、僧帽弁不全と呼ばれることがある。
【0018】
(III.先行の処置様式)
僧帽弁逆流の処置において、利尿剤および/または血管拡張剤が、左心房の中へ逆流する血液の量を減らすのに役立てるために使用され得る。大動脈内バルールカウンタパルセイションデバイス(intra−aortic balloon counterpulsation device)は、その状態が医薬品によって安定化されていない場合に、使用され得る。慢性僧帽弁逆流または急性僧帽弁逆流に対して、僧帽弁を修復するかまたは置き換えるための手術が、多くの場合、必要である。
【0019】
これまでのところ、侵襲的な開放型の心臓外科的アプローチが僧帽弁機能不全を修復するために使用されてきた。これらの外科的修復手順の間、拡張した弁輪の部分を締めて切除し、そして/または拡張した弁輪の大部分を適所に固定するための努力がなされる。これらの外科的修復手順の間、弁輪は、環状リングもしくは半環状リングまたは類似のリング様デバイスで再建され得る。この修復デバイスは、代表的には、弁輪および周囲の組織に縫合糸ベースの固定具で固定される。修復デバイスは、弁輪および弁尖表面の頂部を覆って、そして弁輪および弁尖表面の周縁の多くまたはすべてを覆って延びる。
【0020】
医師は、不健康な僧帽弁を、修復するよりはむしろ置き換えようと決定するかも知れない。侵襲的な、開放型の心臓外科的アプローチは、本来の弁を機械的弁またはブタ、ウシ、またはウマから採取した生物学的組織(バイオ補綴具(bioprosthetic))で置き換えるために使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
例えば、心臓弁の機能不全の処置のため、例えば、僧帽弁逆流の処置における簡単で費用対効果の高い、そしてあまり侵襲的でない、デバイス、システム、および方法に対する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
(発明の要旨)
本発明は、少なくとも一部は、機能不全の心臓弁の弁輪の中、弁輪の上または弁輪の近くで取付けられるようなサイズおよび構成である移植片を採用するデバイス、システムおよび方法を提供する。使用時に、この移植片は、弁輪の短軸を短くするために弁輪の短軸を横切って延びるか、または長軸を伸ばすために長軸を横切って延びるかのいずれか、あるいはその両方である。この移植片は、心臓弁の弁輪および弁尖をより機能的な解剖学的形状および張力に回復させる。このより機能的な解剖学的形状は、弁尖の癒合に通じ、これが今後は逆の流れすなわち逆流を低減させる。
【0023】
本発明の1つの局面は、心臓弁の弁輪の形状に影響を及ぼすための多機能移植片システムを採用するデバイス、システムおよび方法を提供する。この移植片システムは、この弁輪の長軸に沿って組織を係合するようなサイズおよび構成である、第1の構成要素を備える。このシステムはまた、この第1の構成要素と同時に、この弁輪の短軸に沿って組織を係合して内側方向に変位させるようなサイズおよび構成である、第2の構成要素を備える。この第1の構成要素および第2の構成要素は、別々の構成要素を備えるか、または一体化された本体を形成する。
【0024】
本発明の別の局面は、心臓弁の弁輪の形状に影響を及ぼすための移植片を採用するデバイス、システムおよび方法を提供する。この移植片は、第1の部分およびこの第1の部分に接合される第2の部分を備える本体を備える。この第1の部分は、心臓弁の弁輪の近くまたは心臓弁の弁輪内で、心腔(heart chamber)内に静止するようなサイズおよび構成である。第2の部分は、この第1の部分に接合され、かつ中隔を通って延びて別の心腔中で静止するようなサイズおよび構成である。この本体は、全体として上記弁輪の長軸と整列されてもよく、弁輪の短軸と整列していてもよい。複数の本体が、同時に展開され得る。
【0025】
本発明の別の局面は、心臓弁の弁輪の形状に影響を及ぼすための磁力移植片システムを採用するデバイス、システムおよび方法を提供する。このシステムは、心臓弁の弁輪の組織中、または心臓弁の弁輪の近くの組織中で静止するようなサイズおよび構成である、第1の磁性または強磁性構成要素、およびこの第1の構成要素から間隔を空けて、この心臓弁の弁輪のの組織中、またはこの心臓弁の弁輪の近くの組織中で静止するようなサイズおよび構成である、第2の磁性構成要素を備える。この第1および第2の構成要素は、それらの間に、引き付け合うかまたは反発する磁場を生成する。この第1および第2の構成要素が、同じ心腔を占めてもよく、異なる心腔を占めてもよい。1つの実施形態では、この第1および第2の構成要素のうちの一方は、冠状静脈洞を占める。
【0026】
本発明の別の局面は、交連弁輪形成術を実施する移植片を採用するデバイス、システムおよび方法を提供する。この移植片は、弁尖の交連を有する心臓弁の輪の近くまたは該輪内に静止するようなサイズおよび構成である、本体を備える。この本体は、この弁尖の交連で、またはこの弁尖の交連の近くで組織と接するためのこの本体に付随した間隔を空けて離れた支柱を備える。この支柱は、この交連の組織、またはこの交連の近くの組織に対して引張り力を奏して、この交連で弁輪を一緒に押し付け(squeeze)、弁尖の癒合を促進する弾性の顎を備える。この本体、支柱、および顎のうちの少なくとも1つは、ワイヤ形態の構造体を備える。これらの本体、支柱、および顎は、カテーテル内の配置のために折り畳み可能である。
【0027】
本発明の他の特徴および利点は、添付の説明、図面、および特許請求の範囲に基づいて明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(詳細な説明)
本明細書の開示は、当業者が本発明を実施することが可能であるように、詳細で正確であるが、本明細書中に開示される物理的実施形態は、単に本発明を例示するに過ぎず、本発明は、他の具体的な構造体に具現化され得る。好ましい実施形態が記載されているが、その詳細は、本発明から逸脱することなく変更されてもよく、本発明は特許請求の範囲により規定される。
【0029】
(I.心臓弁の弁輪の短軸の直接短縮のための移植片)
(A.心房内移植片)
(1.構造)
図7Aおよび7Bは、心臓弁の弁輪に、または心臓弁の弁輪の近くに静止するようなサイズおよび構成である移植片10の実施形態を示す。図8および9では、僧帽弁に静止している図7Aの移植片10の実施形態が、示される。(図8および9が示すような)この配置では、移植片10は、短軸に沿って(すなわち、前〜後方向に弁輪を横切って)延びる。
【0030】
図8および9のように、移植片10は、使用時に、それが輪の短軸に沿って直接の機械的力を付与するようなサイズおよび形態である。この直接の機械的力は、組織を内側方向に変位させ(すなわち、組織を弁輪の中心に向かって変位させ)、弁輪を再建する働きをする。例示の実施形態(すなわち、僧帽弁)では、この機械的な力は、輪の短軸を短縮する働きをする。そうする場合、移植片10はまた、その長軸に沿って輪を反動的に再建し得、そして/または他の周囲の解剖学的構造体を反動的に再建し得る。
【0031】
他の弁構造体に置かれた場合、影響を受ける軸は、周囲の解剖学的構造に起因して、「長」軸および「短」軸でなくともよいことが理解されるべきである。治療的であるために、この移植片は、心室収縮の収縮のような心周期の一部の間、輪を再建する必要があるだけでもよいことも理解されるべきである。例えば、この移植片は、心室収縮の収縮の間、輪の内側への移動を回復するかまたは増加させるために、輪の少しの変位または無視できるほどの変位しかもたらさないようなサイズであってもよい。
【0032】
短軸を横切って移植片10により付与される機械的な力は、心臓弁の弁輪および弁尖により正常な解剖学的形状および張力を回復させる(図8および9を参照のこと)。このより正常な解剖学的形状および張力は、心室収縮の間の弁尖の癒合に通じ、これは今度は逆流を低減する。
【0033】
移植片10の最も基本的な形態では、移植片10は、生体適合性の金属材料もしくはポリマー材料から、または適切にコーティングされ、含浸され、もしくは生体適合性を付与するための材料で別様に処理されている金属材料もしくはポリマー材料、あるいはそのような材料の組合せから、例えば、曲げ、造形、連結、機械加工、成形または押出しにより、作製される。この材料はまた、望ましくは、X線透視検査による視覚化を容易にするために、放射線不透過性であるか、または放射線不透過特徴を組込む。
【0034】
図7Aおよび7Bが示すように、移植片10は、中間レール14により連結される一対の支柱12を備える。図8が示すように、支柱12は、弁輪下部位置(すなわち、弁輪の線維状本体を係合する)か、または弁輪上部位置(すなわち、弁輪もしくは弁輪の近くの組織を係合する)のいずれかを係合するようなサイズおよび構成である。レール14は、支柱12に橋をかける。レール14は、(支柱12と同様に)種々の形状を取り得、そして種々の断面形状を有し得る。レール14(および/または支柱12)は、例えば、ほぼ曲線からなる(すなわち、丸いか卵型)断面、またはほぼ直線で囲まれた断面(すなわち、正方形または矩形)、あるいはその組合せを有し得る。図7Aおよび8の実施形態では、移植片10のレール14は、左心房のドームに向かって弁の面の上に有意に延びるような構成である。図7Bに示される実施形態では、移植片10のレール14は、その弁の面の上に有意には延びないが、弁尖との干渉を避けるに十分なだけは延びるように構成されている。
【0035】
支柱12は、各々、1つ以上の固定要素16を備える。提示された固定要素16は、弁輪下部または弁輪上部のいずれかで組織を掴むようなサイズおよび構成である。固定要素16は、望ましくは、少なくとも一部は弁輪および/または隣接する解剖学的構造体に頼り、移植片を係留しそしてその位置を固定し、そして弁輪からのその移動に抵抗する。
【0036】
図7では、組織を貫通するかえしのアレイを備える。図12および13(これらは後により詳細に説明される)は、固定要素16についての別の代表的な実施形態を示し、それは組織を掴むのを容易にする方向の二次的なかえし(secondary barb)を備え得る。組織固定要素16の他のタイプおよび形態は、例えば、組織貫通部材を備えていてもいなくてもよいパッド、および/または粗い表面、および/または内殖促進性材料(たとえば、ポリエステル布)を使用し得る。所望の場合、任意の固定要素16が、移植片をさらに固定するために、縫合糸、接着剤および類似の材料と組合され得る。
【0037】
輪の下に延びる付属肢がないので、移植後または移植の中の移植片位置の調整は容易である。移植片10はまた、組織およびその輪の下の解剖学的構造体に対する外傷または損傷のより低い可能性を提示する。
【0038】
図7〜9に示されるように、移植片10は、望ましくは「弾性的」である。レール14は、(図7に示される)正常な荷重のない形状または状態を保有するようなサイズおよび構成である。この状態では、レール14は、圧縮状態でもなく張力もかかっておらず、支柱12は、標的の心臓弁の弁輪の短軸の前〜後寸法よりも近い間隔を置かれている。移植片10の材料は、所望のばね定数を保有するように選択される。このばね定数は、レール14に弾性的に離れて広げられ、支柱で付与される外部伸長力に応答して、その正常な、荷重のない状態から張力をかけて配置される能力を与える。
【0039】
支柱12が広げられ、弁輪の組織または輪の近くの組織に係留されるとき、レール14は、弾性的に荷重のかかった、張力のかかった状態をとる。その弾性的に荷重のかかった、張力のかかった状態にあるとき、レール14は、支柱12および固定要素16を介して、弁輪の組織または弁輪の近くの組織で対向する引張り力を奏する。これらの力は、図8および9で矢印で印をつけたPFで示される。この引張り力は、組織を内側方向に変位させ、弁輪をその短軸に沿って短縮する。この引張り力はまた、長軸および/または周囲の解剖学的構造体を再建し得る。このようにして、移植片10は、弁輪を、弁尖の癒合により適する形状に向かって再建する。
【0040】
記載されるような弾性の移植片は、例えば、Nitinol材料のような超弾性合金から作製され得る。この構成では、移植片はまた、展開の際にカテーテルまたはシース内に嵌り込むように、弾性的に真直ぐにされ、そして/または折畳まれ得、そして展開の際に好ましい形状を回復する。
【0041】
移植片10のばね定数は、隣接する組織のばね定数よりも大きいように選択される。あるいは、移植片10のばね定数は、隣接する組織のばね定数と同等であるように選択され、それにより移植片10が使用の間に組織の形態に適合することが可能になるような従順さを提供する。移植片10のばね定数は、レール14の長さに沿って変動し、その結果、レール14のある部分は、レール14の他の部分よりも堅いかまたはより従順である。
【0042】
(2.移植)
たった今説明され、図7Aまたは7Bに示された移植片10は、種々の方法での心臓弁の弁輪への移植に適合している。移植片10は、例えば、開放型心臓外科手順で移植され得る。あるいは、移植片10は、画像による案内の下、末梢静脈接近部位(大腿静脈または頚静脈)または大腿動脈を介するカテーテルベースの技術を使用して移植され得る。あるいは、移植片10は、また画像化による案内の下、喉を通る胸腔鏡手段を使用して、または右心房を介する他の外科的接近により移植され得る。画像化による案内としては、X線透視検査、超音波、コンピューターによる断層撮影法、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
図10および11は、画像による案内の下、経皮の、カテーテルベースの手順による、図7A、8および9に示されるタイプの弾性的移植片10の展開の代表的な実施形態を示す。
【0044】
経皮脈管接近は、大腿静脈または頚静脈への従来の方法により達成される。図10Aが示すように、画像による案内の下、カテーテル52は、右心房への脈管系を通して操縦される。カテーテルの遠位端に保持されるニードルカニューレ54が展開され、右心房と左心房との間の中隔を穿刺する。図10Bが示すように、ガイドワイヤ56が、左心房へのニードルカテーテル52を通して、中隔を貫通して前進される。第1のカテーテル52は、(図10Cが示すように)引き込められ、そして画像による案内の下、移植片送達カテーテル58がガイドワイヤ56の上を左心房の中へ、僧帽弁の近傍へ前進される。あるいは、移植片送達カテーテル58は、右心房を通る外科的接近により、中隔を貫通して展開され得る。
【0045】
移植片送達カテーテル58は、その遠位端にシース60を保有する(図10Cを参照のこと)。移植片10は、シース内で折り畳まれた、真っ直ぐな状態で拘束されている。シース60は、(例えば、それを近位方向にスライドさせることにより)引き抜かれ、移植片10を段々と自由にするようなサイズおよび構成である。シース60から段々と自由にされて、弾性移植片10は、拡張され形状を得る。あるいは、カテーテル58中の可撓性押し棒が使用され、シース60から移植片10を押し出して、同じ結果を得るために使用される。
【0046】
望ましくは、支柱12は、畳み込まれたプロフィールを減少し、いったんシース60から自由にされると、移植片10の拡張を容易にするために、シース60内に折り畳まれる。図11Aが示すように、画像による案内の下で、移植片10の後端部上の支柱12は、最初にシース60から自由になる。後支柱12は、固定要素16を、後尖(posterior annulus)中の組織または後尖の近くの組織に配置するように操作される。図11Bが示すように、送達カテーテル58は、カテーテルが前〜後方向に輪の短軸を横切ってたどるので、シース60がさらに引き抜かれるときに、後支柱12上に力を維持する。送達カテーテル58は、は、後支柱上に力を維持するに十分なカラム強度を有するようなサイズおよび構成であり得る。シース60から段々と自由になると、前支柱12が広がるまで、弾性移植片10は形状をとる(図11Cを参照こと)。レール14は、バルーンBおよび/またはカテーテルにより展開された掴み器具を使用して、張力のかかった状態に置かれ得、前支柱12の固定要素16を輪の組織または輪の近くの組織に静止させる。いったん静止されると、支柱12は、カテーテル58から開放される。
【0047】
代替の実施形態では(図12を参照のこと)、移植片10は、それぞれレール14の前部分および後部分に沿って形成されるベル型の突起20および22を備える。図13が示すように、突起20は、移植されたときに、中隔を通って拡張し、そして右心房中に突出するようなサイズおよび構成である。そこで、前突起20は、右心房で展開された適切な掴み器具により、操作のために露出される。例えば、その掴み器具は、右心房で突起20を保持し、左心房内に張力のかかった状態でのレール14の配置を容易にする。左心房内の後突起22はまた、左心房中の器具により掴まれ、レールの位置決めおよび/または張力付与を支援してもよい。
【0048】
図13が示すように、中隔に対して支えられたかえしのついたステイ24は、前突起20に折られ、左心房中でレール14上で所望の程度の張力を維持するのを支援する。
【0049】
さらに、右心房中への前突起20の突出は、所望の場合、右心房からの移植片10の再位置決めおよび/または回収を容易にする。
【0050】
(B.中隔横断移植片)
(1.構造)
図14は、移植片の別の実施形態26を示し、この移植片26は、図15および16に示されるように、心臓の短軸に沿って機械的な力を付与するか、または心臓弁の弁輪、特に僧帽弁輪に隣接した組織を別様に安定化するようなサイズおよび構成である。図示された実施形態では、そして図7に示される移植片10と関連して説明されるように、図15および16の移植片26により付与される機械的力(矢印で示される)は、組織を内側に変位させる(すなわち、組織を弁輪の中心に向かって変位させる)て(図15および16を参照のこと)、短軸を短くし、弁を再建する働きをする。上で説明されたように、移植片26により短軸を横切って直接付与される機械的な力は、また反動的に弁輪の長軸を再建し、加えて他の周囲の解剖学的構造体を再建する。移植片26は、心臓弁の弁輪および弁尖を、心室収縮の間の弁尖の癒合に通じる、より正常な解剖学的形状および張力に回復させ、これが、次に逆流を低減させる。しかし、移植片26の存在は、短軸の長さに影響を及ぼすことなく、心臓弁の弁輪に隣接した組織を安定化する働きをし得ることが理解されるべきである。
【0051】
図14に示されるように、移植片26は、例えば、生体適合性の金属材料もしくはポリマー材料から、または適切にコーティングされ、含浸され、もしくは生体適合性を付与するための材料で別様に処理されている金属材料もしくはポリマー材料、あるいはそのような材料の組合せから、例えば、曲げ、造形、連結、機械加工、成形または押出しにより、作製される。この材料はまた、望ましくは、X線透視検査による視覚化を容易にするために、放射線不透過性である。
【0052】
図14に示されるように、移植片26は、中間レール32により連結される一対の支柱28および30を備える。レール32は、(支柱28および30と同様に)種々の形状を取り得、そして種々の断面形状を有し得る。レール32(および/または支柱28および30)は、例えば、ほぼ曲線からなる(すなわち、丸いか卵型)断面、またはほぼ直線で囲まれた断面(すなわち、正方形または矩形)、あるいはその組合せを有し得る。
【0053】
レール32の一端または両端にある支柱28および30は、組織への固定を増強する固定要素34を備える。種々の組織固定要素34が使用され得、それは例えば、(示されるような)組織に貫入するかえし、および/または粗い表面、および/または内殖促進性材料(たとえば、ポリエステル布)を備えたパッドである。所望の場合、任意の固定要素34が、移植片をさらに固定するために、縫合糸、接着剤および類似の材料と組合され得る。
【0054】
図15および16が示すように、前支柱30上の固定要素34は、左心房内で、後尖の上またはその近くで、弁輪下部または弁輪上部のいずれか(すなわち、弁輪の線維状本体を係合する)か、または弁輪上部位置(すなわち、心房組織を係合する)のいずれかで組織を係合するようなサイズおよび構成である。
【0055】
前支柱28上の固定要素34は、中隔を通過して右心房中に突き出るようなサイズおよび構成である。そこで、固定要素34自体は、中隔の組織を係合し得る。あるいは、図15および16が示すように、固定要素34は、アンカーボタン36を備え得る。アンカーボタン36は、前支柱28を捕らえ、右心房中で中隔に対して前支柱28を保持する。
【0056】
(2.移植)
移植片26は、図10A、10Bおよび10Cに示されるのと同じ様式で、カテーテル52内で右心房から左心房へ展開され得る。後支柱30上の固定要素34は、後尖の弁輪下部位置または弁輪上部位置のいずれかで(図17Aが示すように)、組織と係合して配置され、そして前支柱28は、(図17Bに示されるように)中隔を通って導かれる。
【0057】
図17Bが示すように、右心房内で(すなわち、中隔を通して)前支柱28を引っ張ると、(図17Bで矢印により示されるように)後尖またはその近くで組織に引張り力が奏される。この引張り力は、後尖を、前尖(anterior annulus)に向かって内側に引き、それによりその短軸に沿って弁輪を短くする。上に説明したように、この引張り力はまた、その長軸に沿って弁輪を反動的に再建し、加えて周囲の解剖学的構造体を再建し得る。このようにして、移植片は、弁輪を上に説明したまさに移植片10のように、弁尖の癒合により適した形状に向かって再建する。
【0058】
図15および16に図示される実施形態示されるように、少なくとも2つの移植片26が、望ましくは同時に使用され、短軸の内側および外側に沿って引張り力を分配する。この構成では、前支柱30上の固定要素34は、後尖の上、近くまたはその中で間隔を空けた位置で、左心房内で組織を掴む。前支柱28上の固定要素34は、一緒に中隔を通過する。右心房内から前支柱28を引っ張ると、後尖は前尖に向かって引かれ、それにより弁輪をその短軸を横切って短くする。前支柱28は、個々にまたは同時に引っ張られ得、所望の再建が達成される。
【0059】
この構成では、図16が最もよく示すように、1つの移植片26は、左心房の中隔の壁に向かって外方向に力を向けるように形作られ、他方、他の移植片26は、左心房の外側の壁に向かって外側に力を向けるように形作られている。生じる力は、後尖に沿って均一に分配される。
【0060】
いったん所望の程度の引張り力が確立されると、前支柱28は、アンカーボタン36により中隔に対して一緒に固定され得る。上に説明されたように、固定要素34自体は、アンカーボタン36の使用なしで保持力を付与し得る。
【0061】
(C.磁力システム)
(1.構造)
図18A/18B/18Cおよび19A/Bは、使用時には、1つ以上の移植された磁気要素64を使用して心臓弁の軸を短くする磁力システム62の種々の実施形態を示す。移植された磁気要素64は、弁輪の組織領域を互いに向かって引きつける磁場の力を発生する。
【0062】
図18A/18B/18C〜19A/Bに示されるように、この組織領域は、僧帽弁輪の後エッジおよび前エッジを含む。この磁場の力は、この組織領域を輪の短軸を横切って近づけて一緒になるように引く。弁輪の短軸は、それにより短くなる。すでに説明されたように、短軸が短くなることで、弁弁は再建され得、そして他の周囲の解剖学的構造体を再建し得、そして心臓弁の弁輪および弁尖を、心室収縮の間の弁尖の癒合に通じる、より機能的な解剖学的形状および張力に回復させ、これは今度は逆流を低減する。
【0063】
図18Aおよび18Bでは、磁気要素64は、2個以上の永久磁石66を備える。永久磁石66は、例えば、ネオジム−鉄−ホウ素の合金(NdFeB)、アルミニウム−ニッケル−コバルトの合金(AlNiCo)、およびサマリウムコバルト(SmCo)を含む。永久磁石66は、外部磁場を発生する。図18Aおよび18Bが示すように、2つの永久磁石66Aおよび66Bは、左心房の弁輪上またはそれよりも上に、反対の極が互いに向かい合って(N−SまたはS−N)固定される。対向する極性の極は、磁力によって互いに引き合う。磁気的引力は、磁石の強さおよびそれらの間の距離に依存する。
【0064】
図18Aおよび18Bでは、対向する極の2つの永久磁石66Aおよび66Bが、それぞれ、輪の前領域および後領域に、またはそれより上に固定され、弁輪の短軸をほぼ横切って整列される。磁気的な引力(矢印で示される)は、前尖および後尖を互いに向かって引き、短軸を短くする(図18Cも参照のこと)。
【0065】
図18Bでは、少なくとも1つの追加の永久磁石66Cが、短軸上に整列された磁石の片側または両側上で、後尖上またはそれよりも上に提供される。追加の永久磁石66Cは、隣接する短軸磁石66Aと同じである、隣接する短軸磁石66Aに面する極を有する。同じ極性の極は、磁力で互いに反発する。磁気的反発力は、追加の永久磁石66Cを押し、隣接する短軸磁石66Aを離し、2つの磁石66Aおよび66Cを後尖上に離して維持し、そして磁石66Aと66Cとの間の組織を引き伸ばす。同時に、追加の磁石の存在に起因して、後尖および前尖66B上の永久磁石66Aと66Cとの間の磁気的引力は増幅され、さらに後尖および前尖を互いに向かって引く力が増強され、短軸が短くなる。
【0066】
図19Aおよび19Bでは、永久磁石66Dが前尖または後尖上、またはそのいずれかよりも上に、短軸にほぼ整列して固定される。図19Aおよび19Bでは、永久磁石66Dは、前尖上またはそれよりも上に固定されて示される。対向する弁輪(それは、図19Aおよび19Bでは、後尖を含む)上に、軟質強磁性材料68(例えば、鉄(Fe))が固定される。
【0067】
軟質磁性材料68は、永久磁石66Dにより引きつけられる。磁気的引力は、後尖および前尖を互いに向かって引張り、短軸を短くする。この引力は、短軸永久磁石66Dに隣接する前尖上またはそれよりも上に追加の永久磁石66Eを固定することにより、強められ得る(図19Bを参照のこと)。図18Bに示される実施形態に関して説明されたように、追加の永久磁石66Eは、隣接する短軸磁石66Dの極と同じである、隣接する短軸磁石に面した極を有する。磁気的反発力は、この追加の永久磁石および短軸磁石を押し離し、これら2つの磁石を前尖上で離して維持し、2つの磁石66Dと66Eとの間の組織引き伸ばす。
【0068】
図20に示されるように、対向する磁極を有する2つ以上の永久磁石66Fおよび66Gが、輪の所定の領域(ここでは、前尖)上またはそれよりも上に、対となる向かい合って間隔を空けた磁石なしに、固定され得る。この磁気的引力は、永久磁石を一緒に引張り、後尖の周縁に沿って組織を引き伸ばす。この構成で生じる磁力場での再建は、短軸を短くし、弁輪を再建する。
【0069】
図21および22が示すように、永久磁石66および/または軟質強磁性材料68は、種々の形態のパケット70に機械加工、レーザー切断、化学的エッチングまたはEDM製造され得る。パケット70は、望ましくは、不活性な絶縁材料(例えば、金)中に入れられるか、梱包される。このパケットは、1つ以上の固定要素72を備え、この固定要素72は、パケット70を標的の弁輪上またはそれより上で、組織中に係留される。
【0070】
図21および22では、パケット70は、ボタン形状であり、固定要素72は、組織に貫入するかえしを備える。他の形状および構成は、当然、使用され得る。
【0071】
図23A/Bでは、パケット70は、ボタン形状であり、さらに弁尖保持付属肢76を備える。輪上またはそれよりも上の組織に係留される場合(図24を参照のこと)、弁尖保持付属肢76は、1つ以上の本来の弁尖の少なくとも一部を覆う。弁尖保持付属肢76は、弁尖の外転/または脱出に抵抗する。このようにして、磁気的移植片のシステムは、短軸に沿って弁輪を再建するだけでなく、逆の流れすなわち逆流を防止するかまたは低減する。弁尖保持付属肢76は、順方向の流れの間の、弁尖の開口部および弁尖を通る血流とは干渉しない。
【0072】
図25は、磁力システムの別の実施形態78を示し、この磁力システム78は、使用時に、1つ以上の移植された磁石80および82を使用して心臓弁の軸を短くする。図25では、磁石80および82は、心臓弁により占められている心腔内の弁輪上またはそれよりも上に係留されていない。代わりに、磁石80および82は、心腔の外側に配置され、弁輪の組織領域を互いに向かって引きつける磁気的引力を発生する。
【0073】
図25に示される実施形態では、心臓弁は、左心房の僧帽弁を含む。永久磁石80は、後尖の近くの冠状静脈洞または前尖に近い右心房の中隔に移植される。図25では、永久磁石80は、冠状静脈洞に移植されて示されている。第2の磁気的要素82は、他の位置、ここでは前尖に近い右心房の中隔に移植されている。第2の磁気的要素82は、第1の永久磁石の極性と反対の極性を備え得るか、またはそれは軟質強磁性材料を備え得る。永久磁石80と第2の磁気的要素82との間の磁気的引力は、後尖と前尖とを互いに向かって引き込み、短軸を短くする。
【0074】
心臓弁の軸を短くする磁力システム62または78は、開放型外科手順また胸腔鏡手段の間、展開され得る。あるいは、カテーテルべースのアプローチも、使用され得る。
【0075】
(II.短軸を直接的に短くしつつ、直接的に輪の長軸を長くするための移植片システム)
ここで説明されたタイプの任意の移植片は、単独で使用され、輪の短軸に沿っての直接的な短縮を提供し得る。これはまた、反動的にその長軸に沿って輪の引き伸ばしを提供し得る。
【0076】
図26および27が示すように、所定の短軸移植片84はまた、短軸移植片86と組み合わせて使用され得、組合せシステム88を形成し得る。システム88では、長軸移植片86は、輪の長軸に沿って直接的な長軸の引き伸ばしを提供する。システム88では、(長軸移植片86による)長軸の能動的引き伸ばしは、(短軸移植片84による)短軸の能動的短縮を伴う。長軸移植片86の使用は、短軸移植片84を補完し、短軸移植片84の使用により発生する長軸の反動的な引き伸ばしを増強する。
【0077】
当然、長軸移植片86は単独で使用され得る。単独で使用される場合、長軸移植片86は、反動的に短軸では短くなり、そして対応して他の解剖学的構造体を再建する。
【0078】
長軸移植片86は、他の目的を達成するようなサイズおよび構成であり得る。長軸移植片86は、例えば、長軸を短くするようなサイズおよび構成であり得る。あるいは、長軸移植片86は、長軸の付随的な引き伸ばしも短縮もなく、組織を単に安定化するだけのサイズおよび構成であってもよい。上で記述したように、これらの代替のサイズおよび構成の長軸移植片86は、単独で、または短軸移植片と組み合わせて使用され得る。
【0079】
(A.弾性移植片システム)
(1.単機能長軸移植片構造体)
例えば、僧帽弁輪を再建するための1つの代表的な実施形態(図26および27を参照のこと)では、長軸移植片86は、単機能構成要素として、単独で、または単機能短軸移植片84と組み合わせて、弁輪よりも上かつ/または弁輪に沿って、弁輪の長軸に沿って静止するようなサイズおよび構成である。長軸移植片86は、2003年10月1日に出願され、「Devices,systems,and Methods for Reshaping a Heart Valve Annulus」と題する、同時係属中の米国特許出願第10/677,104号に記載されるタイプのものであり得る。この米国特許出願は、本明細書中に参考として援用される。
【0080】
上で特定された出願に記載されるように、長軸移植片86は、は、生体適合性の超弾性金属材料から、例えば、曲げ、造形、連結、機械加工、成形または押出しにより、作製される。図28に示されるように、長軸移植片86は、中間レール92により連結された一対の支柱90を備える。図27および28が示すように、長軸移植片86の支柱90は、弁尖の交連中に、弁尖の交連に、または弁尖の交連の近くに静止するようなサイズおよび構成である。移植片86の超弾性材料は、弾性的に荷重のかかった状態に弾性的に圧縮され、弁尖の交連中、弁尖の交連に、または弁尖の交連の近くの組織を係合して静止する能力をレール92に与える所望のばね定数を保有するように選択される。その弾性的に荷重のかかった、圧縮された状態では、レール92は、支柱90を介して、交連中、交連に、または交連の近くの組織に対向する力を奏し、組織を外側方向に変位させ、輪をその長軸に沿って引き伸ばす傾向がある。
【0081】
図29および30は、単機能長軸移植片86の別の代表例を示す。長軸移植片86は、図26および27に示されるタイプのシステムを形成するために、単独で使用されてもよく(図29および30が示すように)、単機能短軸移植片84と連携して使用されてもよい。移植片86は、閉じたレール構造を形成する2つのレール92を備える。レール92は、脚134により支持される。脚134は、ほぼ180°間隔を空けられている。使用時には(図30を参照のこと)、移植片86は、心房中の僧帽弁の上に存在する。各脚134のぶら下がっている基部は、固定要素136を保有する。固定要素136は、弁輪の長軸に沿って、交連の上または交連の近くで心房組織を掴む。脚134およびレール92のばね力は、長軸に沿って組織を引き伸ばす広げようとする力を付与する。高所のレール92は、弁尖の広がりに対して防御する。
【0082】
図示された実施形態では、固定要素136は、弁輪上の心房組織に貫入するかえしのパッドを備える。しかし、他のタイプの組織係合機構、例えば、粗い表面、または組織の内殖を促進する材料が使用され得る。弁輪の上の組織を係合する多数の固定要素136を脚134に配置することで、単位組織表面積あたりに付与される力を低減することが可能になる。所望の場合、任意の固定要素136が、移植片をさらに固定するために、縫合糸、接着剤および類似の材料と組合され得る。
【0083】
図29および30に示される長軸移植片86に類似した長軸移植片86が、交連の正確な位置を識別する必要なしに、置かれ得る。移植後または移植の間の移植片の位置の調整も容易にされる。なぜなら、交連から支柱を取り除く必要はないからである。図29および30に示される長軸移植片86に類似した長軸移植片86はまた、輪の下の組織および解剖学的構造体に対する外傷または損傷のより低い可能性を提示する。
【0084】
(2.多機能長軸および短軸移植片構造体)
例えば、僧帽弁輪を再建するための別の代表的な実施形態(図31を参照のこと)では、多機能移植片138は、(図32が示すように)弁輪の周りに静止して長軸および短軸の両方を再建するように機能するようなサイズおよび構成であり得る。
【0085】
多機能移植片138は、望ましくは、生体適合性の超弾性金属材料から、例えば、曲げ、造形、連結、機械加工、成形または押出しにより、作製される。図31に示されるように、移植片138は、対向して間隔を空けた一対のレール142および144により連結されリング様構造体を形成する、一対の支柱140を備える。レール142および144は、当然、種々の形態を取り得る。
【0086】
図32が示すように、移植片138の支柱140は、弁尖の交連中に、弁尖の交連に、または弁尖の交連の近くに静止するようなサイズおよび構成である。移植片138の超弾性材料は、弾性的に荷重のかかった状態に弾性的に圧縮され、弁尖の交連中、弁尖の交連に、または弁尖の交連の近くの組織を係合して静止する能力をレール142および144に与える所望のばね定数を保有するように選択される。その弾性的に荷重のかかった、圧縮された状態にあるとき、レール142および144は、支柱140を介して、交連中、交連に、または交連の近くの組織に対向する力を奏し、組織を外側方向に変位させ、輪をその長軸に沿って引き伸ばす傾向がある。あるいは、支柱140は、弁輪の上の心房組織の掴みを収容するために、図29および30に示されるような脚および固定要素または他の形態の組織固定要素を備え得、同じ機能を果たし得る。
【0087】
図31が示すように、レール142および144は、固定要素146を備え、この固定要素146は、図示された実施形態では組織に貫入するかえしの形態をとる。レール142および144上の固定要素146は、それぞれ、(図32が示すように)前尖および後尖に隣接した弁輪中、弁輪下部中または弁輪上部中の組織を掴むようなサイズおよび構成である。移植片138の超弾性材料は、弁尖の交連中、弁尖の交連に、または弁尖の交連の近くの組織を係合して静止するとき、引き伸ばされ張力のかかった状態で配置される能力をレール142および144に与える所望のばね定数を保有するように選択される。その弾性的に荷重のかかった、圧縮された状態では、レール142および144は、輪の近くの組織に対向する引張り力を奏する。これは、弁輪を、その短軸に沿って短くする機能を提供する。レール142および144は、例えば、レール142と144との間に配置され膨張されるバルーン148の使用により、離れるように拡張され得、固定要素146を組織と接触するように配置し得る。このバルーンを折り畳むことで、移植片が、組織に取り付けられて所望の形状をとることを可能にする。
【0088】
他のタイプおよび形態の組織固定要素146が使用され得る。例えば、図33に示されるように、組織固定要素146は、内側方向に折り畳まれた状態で展開されるかえしを備える。かえし146は、レール142および144が、例えば、レール142と144との間に配置され膨張されるバルーン148の使用により、離れるように拡張されるとき(図34を参照のこと)、外方向に折り畳まれ得る。バルーン148のさらなる膨張の際に(図35および36を参照のこと)、かえし146は、前尖および後尖に隣接した弁輪下部組織または弁輪上部組織中へ駆動される(図37を参照のこと)。バルーン148はまた、レール142および144を張力をかけた状態に置き、弁輪の短軸を短くするというそれらの意図された機能を果たす。
【0089】
他の実施形態では、組織固定要素146は、組織貫通部材を備えていてもいなくてもよいパッド、および/または粗い表面、および/または内殖促進性材料(たとえば、ポリエステル布)の形態をとり得る。所望の場合、任意の固定要素146は、移植片138をさらに固定するために、縫合糸、接着剤および類似の材料と組合され得る。
【0090】
(3.移植)
全体的に図10Cに示されるように、単機能移植片86または多機能移植片138のいずれかが、カテーテルまたはシース内に嵌り込むように、弾性的に真直ぐにされ、そして/または折畳まれ得る。あるいは、単機能移植片86または多機能移植片138は、開放型外科手順また胸腔鏡手段の間、展開され得る。
【0091】
例えば、単機能長軸移植片86に関して、右心房から中隔を通って左心房の中への接近は、図10A、10B、および10Cに示されるように、達成され得る。移植片送達カテーテル58は、長軸移植片86を、畳み込まれ、真直ぐにされた状態で、シース60中にその遠位端に保有する(図38Aを参照のこと)。図38Aが示すように、画像化による案内の下で、長軸移植片86の先導端部上の支柱90は、シース60から自由であり、弁輪の中央交連に逆向きに静止する。シース60は、癒合線に沿って横方向に、癒合線と一直線に引き込まれる。段々とシース60から自由になると、外側の交連内で追随支柱90が広がり、そして静止するまで、(図38Bおよび38Cが示すように)長軸移植片86は、形を作り、静止する。移植片86はまた、カテーテルで展開された掴み器具を使用して、画像化による案内の下で、左心房内に位置決めまたは再位置決めされ得る。
【0092】
代替の実施形態(図39を参照のこと)では、長軸移植片86は、レール92の中央部分および外側部分に沿って形成されるベル型の突起94および96を備え得る。図40が示すように、中央突起94は、中隔を通って延び、右心房に突き出るようなサイズおよび構成である。そこで、中央突起94は、右心房中に展開された掴み器具により係合されるために露出される。右心房中の掴み器具は、突起94を掴み得、左心房内への圧縮状態でのレール92の設置を容易にする。かえしのついたステイ98は、中央突起94へと折り曲げられ得、レール92上での圧縮を維持するのを支援する。右心房に突き出た中央掴み部位はまた、長軸移植片86の再位置決めおよび/または回収を容易にする。外側突起96は、同様に、圧縮状態でのレール92の配置のために、左心房中で器具により掴まれ得る。
【0093】
図41に示されるように、短軸移植片84および長軸移植片86の両方は、中隔を通って右心房に一緒に突き出る掴み突起100および102を備え得る。突起100および102の両方は、上に説明されたように、短軸移植片84を張力のかかった状態に配置し、そして長軸移植片86を圧縮状態に設置するように操作され得、弁輪の所望の再建を達成する。
【0094】
(B.弾性移植片−磁力場システム)
直接の長軸再建および短軸再建を同時に達成する他のタイプのシステムが可能である。例えば、図42は、システム104の代表的な実施形態を示し、このシステム104は、弁輪の1つの軸に沿う直接の再建を提供するための弾性構成要素106、および弁輪の別の軸に沿う直接の再建を提供するための磁力場構成要素108を備える。
【0095】
図42に示される実施形態では、再建されるべき弁は、左心房の僧帽弁である。この構成では、弾性構成要素106は、すでに説明した(例えば、図30または39に示されるようなもの)タイプの長軸移植片を備え、この長軸移植片は、弁輪の上および/または弁輪に沿って、弁輪の長軸に沿って静止するようなサイズおよび構成である。上に説明されたように、弾性の長軸移植片106は、長軸に沿って弁輪を引き伸ばす。
【0096】
この構成では、磁力場構成要素108は、上に説明されたタイプ(例えば、図21A〜21Eに示されるようなもの)の磁気要素132を備える。磁気要素132は、間隔を空けて離れた関係で、短軸を横切って、前尖および後尖上またはそれらよりも上に置かれる。磁気要素132は、対向する極性の2つの永久磁石、あるいは1つの永久磁石と1つの軟質強磁性材料を備え得る。例示の実施形態では、磁気要素132は、その支柱の1つの近くで弾性長軸移植片106に連結されたヨーク110の対向する端部で、安定化される。磁気要素132は、輪上またはそれよりも上の組織に移植される。磁気構成要素132間の磁気的引力は、後尖および前尖を互いに向かって引き、短軸を短くする。
【0097】
磁気要素132を支持するヨーク110は、ばね定数を有していてもよい。磁気要素132が輪上またはそれよりも上に移植されたときにヨーク110を張力のかかった状態に配置することで、補助的な機械的力が提供され、短軸を短くするように働く磁力が増強される。
【0098】
(III.弁輪形成システム)
(A.点荷重)
図43は、心臓弁の弁輪を再建するための点荷重弁輪形成システム112を示す。システム112は、心臓弁の弁輪の全周のまわりに機械的な力を付与する。この機械的な力は、弁輪を引き、弁尖の癒合に適するほぼ卵形形状を回復させる。例示の目的のために、図43は、心臓弁の弁輪を左心房に僧帽弁を含むように示す。
【0099】
図43では、システム112は、弁輪上、またはそれよりも上の隣接する部位を、生体適合性弾性フレーム114で周縁方向につなげることにより機械的な力を生成する。図示された実施形態では、フレーム114は、弾性材料(例えば、SelasticTM材料)を含む。フレーム114は、弁輪上、またはそれよりも上の組織に挿入されるファスナー116のネットワークを通すことにより、部位をつなぐ。図44A〜44Cは、ファスナー116の代表的な実施形態を示し、このファスナー116は、フレーム114の通過を収容するためのクリップ構成要素118およびクリップ構成要素を組織に固定するかえし120を備える。弾性フレーム114は、ファスナー116のネットワーク内で張力のかかった状態にある。フレーム114により付与される張力は、組織を、弁輪の中でまたは弁輪に沿って一緒に引張り、それにより弁輪をぴんと張って非膨張形状を回復する。
【0100】
点荷重弁輪形成システムの代替の実施形態122が図45に示される。図45では、図43におけるように、弾性フレーム114が、弁輪上、またはそれよりも上の組織に挿入されるファスナー116のネットワークを通して張力のかかった状態になるように配置される。図43では、ファスナー116のすべては、弁輪の中または弁輪に沿って置かれていた。図45では、1つのファスナー116’は、左心房の外の右心房に置かれている。このファスナー116’は、中隔を係合する。この構成では、フレーム114は、中隔を通り、中隔を左心房に向かって中隔を横方向に引張り、前尖に沿って組織を再建する。
【0101】
(B.交連弁輪形成)
図46は、交連弁輪形成を実施するための移植片124を示す。図47が示すように、移植片124は、使用時に、弁輪の上および/または弁輪に沿って心臓弁の弁輪の長軸に沿って静止するようなサイズおよび構成である。図示される実施形態(図47を参照のこと)では、移植片124は、左心房の僧帽弁輪の長軸に沿って静止する。
【0102】
移植片124は、生体適合性の金属材料もしくはポリマー材料から、例えば、曲げ、造形、連結、機械加工、成形または押出しにより、作製される。図39に示されるように、移植片124は、中間レール128により連結される一対の支柱126を備える。
【0103】
図47が示すように、支柱126は、中央弁尖の交連または外側弁尖の交連に隣接して、弁輪の、または弁輪の近くの弁輪下部位置か、または弁輪上部位置のいずれかで静止するようなサイズおよび構成である。
【0104】
移植片124は、各支柱126に付随している顎130を備える。顎130は、正常な荷重のない形状または状態(図46に示される)を保有するようなサイズおよび構成である。この状態では、顎130は、圧縮状態でも張力のかかった状態でもない。各顎の材料は、所望のばね定数を保有するように選択される。このばね定数は、各顎130に、弾性的に離れて広げられ(図48Aを参照のこと)、顎130に付与される外部伸長力に応答して、その正常な、荷重のない状態から張力をかけて配置される能力を与える。
【0105】
顎130が引き伸ばされて離された状態で広げられ、交連の組織または交連の近くの組織に係留されるとき、顎130は、弾性的に荷重のかかった、張力のかかった状態をとる。この弾性的に荷重のかかった、張力のかかった状態にあるとき、顎130は、交連の組織または交連の近くの組織で対向する引張り力を奏する。これらの力は、図48Bに矢印で示される。この引張り力は、交連の組織を内側方向に変位させ、交連で一緒に輪を押しつけ弁尖の癒合を促進する。
【0106】
移植片124は、圧縮状態および/または張力のかかった状態にあることもなく、図47に示されるように静止し、それによりそれ自身、弁輪の長軸かまたは短軸のいずれかに沿って、組織に対して押す力も引っ張る力も付与しない。あるいは、移植片124は、弾性材料から作製され得る。これにより、弾性的に荷重のかかった状態に弾性的に圧縮され、弁尖の交連中、弁尖の交連に、または弁尖の交連の近くの組織を係合して静止する能力がレール128に付与される。この状態にあるとき、レール124は、支柱126を介して、交連中、交連に、または交連の近くの組織に対向する力を奏し、組織を外側方向に変位させ、弁輪をその長軸に沿って引き伸ばす傾向がある。
【0107】
さらに、図49に示されるように、移植片124の顎130の内の一方または両方は、弁輪の中央および外側の輪郭に追随するように伸ばされ、形作られ得、図42に示されるヨーク110に類似して、前尖および後尖上で対向して面する関係で終結する。この構成では、顎130は、ばね定数を保有する。移植の時に顎130を(図49が示すように)弁輪の短軸を横切って張力のかかった状態に置くことで、上に説明した様式で、短軸を短くする機械的な力が提供される。顎130は、さらに引き伸ばされ得、そして完全リング様の構造を形成するように形作られ得る。
【0108】
図50に示されるように、移植片124は、上に説明した(例えば、図21A〜21Eに示されるような)タイプの磁力場構成要素132と連携して使用され得る。磁気構成要素132は、前尖および後尖の上またはそれよりも上で間隔を空けた関係で置かれる。磁気構成要素132は、対向する極性の2つの永久磁石、または1つの永久磁石と1つの軟質強磁性材料とを備え得る。図示される実施形態では、磁気構成要素132は、弁輪上またはそれよりも上の組織に移植される。磁気要素132間の磁気的引力は、前尖および後尖を互いに向かって引き、短軸を短くする。
【0109】
短軸の直接的短縮、および/または長軸の直接的伸張に影響を及ぼす移植片システムが、単独で、または機械的手段および/または磁気的手段を使用して組み合わせて、提供され得ることは上記の記載に基づいて明らかである。心臓弁の弁輪の造形が、その輪の周りで周縁方向に付与される機械的力および/または磁力により、ならびに/あるいは単独で、または輪をその長軸および/または短軸に沿って再建する機械的力および/または磁力と組み合わせて、交連の組織を再建することにより達成され得ることも明らかである。
【0110】
新しいデバイスおよび方法が、心臓の僧帽弁の処置という文脈で、より具体的に説明されてきたが、他の心臓弁のタイプが、同じかまたは等価な様式で処置され得ることが理解されるべきである。例として、そして限定ではないものとして、本システムおよび方法は、任意の心臓弁の弁輪における逆の流れを防ぐか低減するために使用され得、その弁輪としては、三尖弁、肺動脈弁、または大動脈弁が挙げられる。さらに、他の実施形態および本発明の使用は、本明細書の考察および本明細書中に開示される本発明の実施から、当業者には明らかである。本明細書および実施例は、例示的なものであり、単に重要な技術的な特徴および原理を記載するものにすぎないと考えられるべきであり、それは限定的であることを意図されていない。本発明の真の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲により規定される。当業者には容易に理解されるように、開示された実施形態の各々のバリエーションおよび改変は、添付の特許請求の範囲により規定される通りの本発明の範囲内で、容易になされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、健康な心臓の内部の斜視図による前から見た解剖図である。
【図2】図2は、心房が取り除かれた健康な心臓の内部の上から見た解剖図であり、心室性拡張期の間の心臓弁の状態を示す。
【図3】図3は、心房が取り除かれた健康な心臓の内部の上から見た解剖図であり、心室収縮の間の心臓弁の状態を示す。
【図4】図4は、心室収縮の間の健康な僧帽弁の上から見た解剖図であり、弁尖が適正に癒合していることを示す。
【図5】図5は、心房が取り除かれた心臓の内部の上から見た解剖図であり、心室収縮の間の心臓弁の状態を示し、そして弁尖が適正に癒合しておらず、逆流を起こしている機能不全の僧帽弁をさらに示す。
【図6】図6は、心室収縮の間の機能不全の僧帽弁の上から見た解剖図であり、弁尖が適正に癒合しておらず、逆流を起こしていることを示す。
【図7A】図7Aは、心臓弁の弁輪で、または心臓弁の弁輪の近くで静止し、弁輪の短軸に沿って直接の機械的な力を付与して組織を弁輪の中央に向かって内側に変位させるようなサイズおよび構成である移植片の側方斜視図であり、図7Aに示される移植片は、弁の面の上に有意に延びるように構成されている。
【図7B】図7Bは、心臓弁の弁輪で、または心臓弁の弁輪の近くで静止し、弁輪の短軸に沿って直接の機械的な力を付与して組織を弁輪の中央に向かって内側に変位させるようなサイズおよび構成である移植片の側方斜視図であり、図7Bに示される移植片は、弁の面の上に短い距離だけ延びるように構成されている。
【図8】図8は、左心房の僧帽弁輪で、または僧帽弁輪の近くで展開された、図7Aに示される移植片の横方向斜視図である。
【図9】図9は、図8に示される移植片および心臓の上から見た図である。
【図10A】図10Aは、図7Aに示されるタイプの移植片を移植するために、右心房から中隔を横切り左心房へと脈管内に展開されたカテーテルの前からみた斜視図である。
【図10B】図10Bは、図7Aに示されるタイプの移植片を移植するために、右心房から中隔を横切り左心房へと脈管内に展開されたカテーテルの前からみた斜視図である。
【図10C】図10Cは、図7Aに示されるタイプの移植片を移植するために、右心房から中隔を横切り左心房へと脈管内に展開されたカテーテルの前からみた斜視図である。
【図11A】図11Aは、左心房における図10A、10B、および10Cに示されるカテーテルからの、図7Aに示される移植片の逐次的拡張の横方向斜視図である。
【図11B】図11Bは、左心房における図10A、10B、および10Cに示されるカテーテルからの、図7Aに示される移植片の逐次的拡張の横方向斜視図である。
【図11C】図11Cは、左心房における図10A、10B、および10Cに示されるカテーテルからの、図7Aに示される移植片の逐次的拡張の横方向斜視図であり、移植片を僧帽弁の短軸を横切って張力のかかった状態に置くためにバルーンが膨張されて、示されている。
【図12】図12は、心臓弁の弁輪で、または心臓弁の弁輪の近くで静止し、弁輪の短軸に沿って直接の機械的な力を付与して組織を弁輪の中央に向かって内側に変位させるようなサイズおよび構成である移植片の代替の実施形態の側方斜視図であり、図12に示される移植片は、移植片の位置決めおよび/または張力付与を支援するために把持され得るベル型の突起を備える。
【図13】図13は、左心房の僧帽弁で、またはその近くで拡張された、図12に示された側方斜視図であり、ベル型の突起の1つが右心房の中隔を通って延び、それに係留されている。
【図14】図14は、心臓弁の弁輪で、または心臓弁の弁輪の近くで静止し、輪の短軸に沿って直接の機械的な力を付与して組織を輪の中央に向かって内側に変位させるようなサイズおよび構成である移植片の代替の実施形態の側面図であり、図14に示される移植片は、中隔を通り、右心房に突き出るようなサイズおよび構成である前構成要素を有する。
【図15】図15は、左心房の僧帽弁輪で、またはその近くで展開された、一対の図14に示される移植片の横方向斜視図であり、前構成要素が、右心房の中隔を通って延び、それに係留されている。
【図16】図16は、図15に示される移植片および心臓の上から見た図である。
【図17A】図17Aは、図15および16に示される移植片のうちの1つの、右心房から中隔を通って左心房への展開の横方向側面図である。
【図17B】図17Bは、図15および16に示される移植片のうちの1つの、右心房から中隔を通って左心房への展開の横方向側面図である。
【図18A】図18Aは、弁輪に、または弁輪の近くに移植された、磁力システムの異なる実施形態を有する僧帽弁輪の上から見た図である。この磁力システムは、弁輪の組織領域を互いに引き付ける磁場を生成するためのものであり、この磁力システムは、弁輪の短軸を短くするように配置されている。
【図18B】図18Bは、弁輪に、または弁輪の近くに移植された、磁力システムの異なる実施形態を有する僧帽弁輪の上から見た図である。この磁力システムは、弁輪の組織領域を互いに向かって引き付ける磁場を生成するためのものであり、この磁力システムは、弁輪の短軸を短くするように配置されている。
【図18C】図18Cは、図18Aおよび18Bに示された磁力システムの前からみた側面図である。
【図19A】図19Aは、僧帽弁輪に、またはその近くに移植された図18A、18Bおよび18Cに示されるタイプの移植された磁力システムの他の代替の実施形態を備えた僧帽弁輪の上から見た図であり、この磁力システムは、弁輪の組織領域を互いに向かって引き付けて、弁輪の短軸を短くする磁場を生成するためのものである。
【図19B】図19Bは、僧帽弁輪に、またはその近くに移植された図18A、18Bおよび18Cに示されるタイプの移植された磁力システムの他の代替の実施形態を備えた僧帽弁輪の上から見た図であり、この磁力システムは、弁輪の組織領域を互いに向かって引き付けて、弁輪の短軸を短くする磁場を生成するためのものである。
【図20】図20は、僧帽弁輪の1つの側面に沿って、この僧帽弁輪に、またはその近くに移植された、移植された磁力システムの代替の実施形態を備えた僧帽弁輪の上から見た図であり、この磁力システムは、輪の組織領域を、この輪の側面に沿って、互いに向かって引き付ける磁場を生成するためのものである。
【図21】図21は、図18A、18B,18C、19A、19Bおよび20に示される磁力システムを生成するために使用され得るボタン形状の磁気要素の代表的な実施形態である。
【図22】図22は、ほぼ図21の線22−22に沿って取られたボタン形状の磁気要素の側断面図である。
【図23A】図23Aは、図18A、18B,18C、19A、19Bおよび20に示される磁力システムを生成するために使用され得るボタン形状の磁気要素の代表的な実施形態であり、この磁気要素は、本来の弁尖を覆う保持付属肢を備える。図23Aは、この磁気要素および付属肢の側方斜視図である。
【図23B】図23Bは、図18A、18B,18C、19A、19Bおよび20に示される磁力システムを生成するために使用され得るボタン形状の磁気要素の代表的な実施形態であり、この磁気要素は、本来の弁尖を覆う保持付属肢を備える。図23Bは、この磁気要素および付属肢の側断面図である。
【図24】図24は、僧帽弁輪の対向する前側および後側に沿って移植された、図23Aおよび23Bに示される磁気要素を備えた僧帽弁の上からみた図である。
【図25】図25は、心臓の上からみた図であり、僧帽弁の後尖の上で冠状静脈洞内に移植された1つの磁気要素、および僧帽弁の前尖の近くで、右心房中の中隔に移植された第2の磁気要素を有する磁力システムの存在を示し、この磁力システムは、これらの磁気要素の間に、僧帽弁の短軸を短くする磁気的引力を生成するためのものである。
【図26】図26は、左心房の横方向斜視図であり、僧帽弁での、またはその近くでの長軸に沿った1つの移植片および短軸に沿った1つの移植片の移植を示し、これらの移植片は、同時に、長軸を伸ばし、短軸を短くし得る組合わせ移植システムを形成する。
【図27】図27は、図26に示される組合わせ移植システムおよび心臓の上からみた図である。
【図28】図28は、図26および図27に示されるシステムと連携して弁輪の長軸に沿って移植され得る移植片の代表的な実施形態の側面図であり、この移植片は、長軸を伸ばすために、輪の長軸に沿って直接の機械的な力を付与するようなサイズである。
【図29】図29は、図26および図27に示されるシステムと連携して弁輪の長軸に沿って移植され得る移植片の代替の実施形態の側方斜視図である。
【図30】図30は、左心房内で僧帽弁の長軸に沿って移植された、図29に示される移植片を示す横方向斜視図である。
【図31】図30は、僧帽弁の周りに静止して、長軸およひ短軸の両方に沿って弁輪を同時に再建するようなサイズおよび構成である多機能移植片の側方斜視図であり、図31の移植片は、輪の組織、またはその近くの組織と接触するように配置され得るかえしを有する。
【図32】図32は、左心房内で僧帽弁の周りに移植された図31に示される移植片を示す横方向斜視図である。
【図33】図33は、僧帽弁の周りに静止して、長軸およひ短軸の両方に沿って弁輪を同時に再建するようなサイズおよび構成である多機能移植片の代替の実施形態の側方斜視図であり、図33の移植片は、内側方向に折り畳まれたかえしを有し、このかえしは弁輪の、または弁輪の近くの組織と接触するように移植片を拡張することにより、外方向に折り曲げられ得る。
【図34】図34は、バルーンの膨張に応答した、図33に示される移植片のかえしの外方向の折り曲げの上から見た図である。
【図35】図35は、バルーンの膨張に応答した、図33に示される移植片のかえしの外方向の折り曲げの上から見た図である。
【図36】図36は、バルーンの膨張に応答した、図33に示される移植片のかえしの外方向の折り曲げの上から見た図である。
【図37】図37は、左心房内の僧帽弁の周りに移植された、図33に示された移植片を示す横方向斜視図である。
【図38A】図38Aは、図10A、10Bおよび10Cのカテーテルからの図28に示された移植片の逐次展開の横方向斜視図であり、この移植片は、左心房の僧帽弁の長軸を横切って圧縮状態で展開されている。
【図38B】図38Bは、図10A、10Bおよび10Cのカテーテルからの図28に示された移植片の逐次展開の横方向斜視図であり、この移植片は、左心房の僧帽弁の長軸を横切って圧縮状態で展開されている。
【図38C】図38Cは、図10A、10Bおよび10Cのカテーテルからの図28に示された移植片の逐次展開の横方向斜視図であり、この移植片は、左心房の僧帽弁の長軸を横切って圧縮状態で展開されている。
【図39】図39は、図26および27に示されるシステムと連携して弁輪の長軸に沿って移植され得る移植片の代替の実施形態の側方斜視図であり、この移植片は、心臓弁の弁輪で、または心臓弁の弁輪の近くで静止し、弁輪の長軸に沿って直接の機械的な力を付与して組織を輪の中央から離れるように外側へ変位させるようなサイズおよび構成であり、図39に示される移植片は、圧縮状態への移植片の位置決めおよび/または配置を支援するために把持され得るベル型の突起を備え得る。
【図40】図40は、左心房の僧帽弁で、またはその近くで展開された、図39に示される移植片の横方向斜視図であり、ベル型突起のうちの1つが右心房の中隔を通って延び、そしてそれに係留されている。
【図41】図41は、同時に長軸を伸ばし、短軸を短くし得る図26に示されたタイプの組合せ移植片システムの横方向斜視図であり、このシステムは、長軸移植片および短軸移植片を備え、これらの移植片の両方は、右心房の中隔を通って延び、そしてそれに係留されているベル型突起を備える。
【図42】図42は、弁輪で、または弁輪の近くで静止して、長軸および短軸の両方に沿って同時に再建するようなサイズおよび構成である多機能移植片システムの代替の実施形態の側方斜視図であり、図42の移植片は、図28に示されるタイプの弾性部材を備える長軸構成要素および図18Aに示されるタイプの磁力システムを備える短軸構成要素を備える。
【図43】図43は、僧帽弁輪の周りでの点荷重弁輪形成の設置を示す、心臓の上方断面図である。
【図44A】図44Aは、図43に示される点荷重弁輪形成システムを作製するための弾性フレームの通過を収容するクリップ構成要素の代表的な実施形態の斜視図である。
【図44B】図44Bは、図43に示される点荷重弁輪形成システムを作製するための弾性フレームの通路を収容するクリップ構成要素の代表的な実施形態の斜視図である。
【図44C】図44Cは、図43に示される点荷重弁輪形成システムを作製するための弾性フレームの通路を収容するクリップ構成要素の代表的な実施形態の斜視図である。
【図45】図45は、僧帽弁輪の周りでの点荷重弁輪形成の代替の実施形態の設置を示す、心臓の上方断面図であり、図45に示されるシステムは、中隔を横切る右心房中の点取り付けを有する。
【図46】図46は、左心房の僧帽弁に、またはその近くで交連弁輪形成術を実施するようなサイズおよび構成である移植片の斜視図であり、この移植片は、交連で輪を一緒に押し付け、弁尖の癒合を促進する弾性の顎を備える。
【図47】図47は、左心房の横方向斜視図であり、交連弁輪形成を実施するための、図46に示される移植片の僧帽弁における設置を示す。
【図48A】図48Aは、交連での引張り力を生成するために含まれる、図46に示される移植片が備える弾性の顎の拡大した上から見た図であり、交連での、またはその近くでの組織を係合するために離れて広げられた顎を示す。
【図48B】図48Bは、交連での引張り力を生成するために含まれる、図46に示される移植片が備える弾性の顎の拡大した上から見た図であり、交連で輪を一緒に押し付け、弁尖の癒合を促進するために、張力のかかった状態にある顎を示す。
【図49】図49は、図46に示される移植片の構造的バリエーションが移植されている僧帽弁の前からみた斜視図であり、この構造的バリエーションは、図9に示される様式で短軸を短くする機械的力を提供するために、輪の短軸を横切って張力のかかった状態にして配置されるべき上記輪の内側輪郭および外側輪郭に追随するように伸ばされ形作られた弾性の顎を有する。
【図50】図50は、図46に示される移植片のバリエーションの斜視図であり、このバリエーションは、図18Aに示される様式で短軸を短くする磁力を提供するための磁気要素を保有するリング様構造体を備える。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2003年10月1日に出願され、「Devices,Systems,and Methods for Reshaping a Heart Valve Annulus」と題する同時係属中の米国特許出願第10/677,104号の一部継続出願であり、この米国特許出願第10/677,104号は、2000年9月20日に出願され、「Heart Valve Annulus Device and Methods of Using Same」と題する米国特許出願第09/666,617号の利益を主張し、この米国特許出願第09/666,617号は、本明細書中に参考として援用される。本願はまた、2002年10月1日に出願され、「Systems and Devices for Heart Valve Treatments」と題する特許協力条約に基づく出願第PCT/US02/31376号の利益を主張し、この第PCT/US02/31376号は、2001年10月1日に出願された米国仮特許出願第60/326,590号の利益を主張し、この第PCT/US02/31376号は、本明細書中に参考として援用される。本願はまた、2002年11月26日に出願され、「Heart Valve Remodeling Devices」と題する米国仮特許出願60/429,444号;2002年11月26日に出願され、「Neo−Leaflet Medical Devices」と題する米国仮特許出願60/429,709号;および2002年11月26日に出願され、「Heart Valve Leaflet Retaining Devices」と題する米国仮特許出願60/429,462号の利益を主張し、これら各々は本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、例えば、僧帽弁逆流の処置において、心臓弁の機能を改善するためのデバイス、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
(I.健康な心臓の解剖学的構造)
心臓(図1を参照のこと)は、握りこぶしよりわずかに大きい。それは、二重(左側および右側)の、自己調節性の筋肉ポンプであり、そのパーツが調和して作動して、身体のすべての部分へと血液を推進する。心臓の右側は、上大静脈および下大静脈から、身体からの酸素付加量が少ない(静脈)血を受け取り、それを、酸素付加のために肺動脈を通して肺にポンプ輸送する。左側は、十分に酸素付加された(動脈)血を、肺から肺静脈を通して受け取り、それを身体への分配のために大動脈中へポンプ輸送する。
【0004】
心臓は、各側に2つずつ、4つの室(chamber)を有し、つまりそれらが、左右の心房および左右の心室である。心房は、血液を受け取る室であり、それは血液を心室へとポンプ輸送する。膜部分および筋肉部分から構成される壁(心房内中隔と呼ばれる)が右心房と左心房とを分離している。心室は、血液を放出する室である。膜部分および筋肉部分から構成される壁(心室内中隔と呼ばれる)が右心室と左心室とを分離している。
【0005】
心臓の左側および右側の同調したポンプ輸送作用は、心周期を構成する。この周期は、心室性拡張期と呼ばれる心室の弛緩期で始まる。この周期は、心室の収縮の期間(心室収縮と呼ばれる)で終わる。
【0006】
心臓は、心周期の間に血液が誤った方向に流れないこと、つまり血液が、心室から対応する心房へ逆流しないこと、または動脈から対応する心室へ逆流しないことを確実にする4つの弁(図2および3を参照のこと)を有する。左心房と左心室との間の弁が僧帽弁である。右心房と右心室との間の弁が、三尖弁である。肺動脈弁は、肺動脈の開口部にある。大動脈弁は、大動脈の開口部にある。
【0007】
心室性拡張期(心室の充填)(図2を参照のこと)の最初に、大動脈弁および肺動脈弁は閉じ、動脈から心室への逆流を防ぐ。その後まもなく、(図2が示すように)三尖弁および僧帽弁が開き、心房から対応する心室への流れが可能になる。心房収縮(すなわち、心室の空洞化(emptying))が始まって後まもなく、三尖弁および僧帽弁は閉じ(図3を参照のこと)、心室から対応する心房への逆流を防ぎ、そして大動脈弁および肺動脈弁が開き、対応する心室から動脈への血液の放出を許容する。
【0008】
心臓弁の開閉は、主に、圧力差の結果として起こる。例えば、僧帽弁の開閉は、左心房と左心室との間の圧力差の結果として起こる。心室性拡張期の間、心室が弛緩しているとき、肺静脈から左心房中への血液の静脈還流は、心房中の静脈還流を超えさせる。結果として、僧帽弁は開き、血液が心室に入ることが可能になる。心室収縮期の間、心室が収縮するとき、心室内圧力は心房中の圧力を超えて上昇し、そして僧帽弁を押して閉じる。
【0009】
僧帽弁および三尖弁は、コラーゲンの線維性リングにより規定され、各々、弁輪と呼ばれ、これら各々は、心臓の線維性骨格の一部を形成する。この弁輪は、僧帽弁の2つの心臓弁膜尖または弁尖(前尖および後尖と呼ばれる)ならびに三尖弁の3つの心臓弁膜尖または弁尖に対する結合を提供する。これらの弁尖は、1つ以上の乳頭筋からの腱索を受ける。健康な心臓では、これらの筋肉およびそれらの腱索は、僧帽弁および三尖弁を支持し、弁尖が左右心室の収縮(ポンプ輸送)の間に高められた高圧に抵抗することを可能にする。
【0010】
健康な心臓では、腱索は、張りつめた状態になり、弁尖が左右心房中に押され裏返ることを防ぐ。脱(出症)は、この状態を記述するために使用される用語である。これは、通常は、心室内の乳頭筋の収縮により防止され、乳頭筋は、腱索により僧帽弁弁尖に接続される。乳頭筋の収縮は、心室の収縮と同時であり、健康な弁尖を心室によって奏されるピーク収縮期圧力でしっかりと閉じたままに保つように働く。
【0011】
(II.僧帽弁機能不全の特徴および原因)
健康な心臓(図4を参照のこと)では、ピーク収縮圧力で僧帽弁輪の寸法は、弁尖が癒合して密な接合を形成するように解剖学的形状および張力を生成する。弁尖が輪の対向する内側および外側で癒合する場合は、弁尖の交連と呼ばれ、図4および他の図面でCM(内側交連を示す)およびCL(外側交連を示す)で指定されている。
【0012】
弁の機能不全は、伸張された状態にある腱索(索)およびある場合には引き裂かれている腱索(索)から生じ得る。索が引き裂かれると、弁尖が動揺する結果となる。また、正常な構造の弁は、弁輪の拡大または弁輪の形状変化に起因して、適正には機能しないことがあり得る。この状態は、弁輪の拡張(dilation)と呼ばれ、一般に、心筋の不全から生じる。さらに、弁は、生まれつきまたは後天的な疾患に起因して欠陥を有し得る。
【0013】
原因(図5を参照のこと)は何であれ、僧帽弁の機能不全は、弁尖がピーク収縮期圧力で癒合しないときに起こり得る。図5が示すように、2つの弁尖の癒合線は、心室収縮時に密ではない。結果として、左心室から左心房中への血液の望ましくない逆流が起こり得る。この状態は、逆流(regurgitation)と呼ばれる。
【0014】
いくつかの場合(図6を参照のこと)、交連から交連(CM〜CL)へ長軸に沿って測定され、そして/または前〜後(A〜P)へ短軸に沿って測定された僧帽弁輪の寸法が変化するので、弁尖は密な癒合接合部を形成しない。この変化した寸法は、もはや弁尖がピーク収縮期圧力で癒合する解剖学的形状および張力を生成しない。
【0015】
図4の健康な弁輪を図6の不健康な弁輪と比較すると、不健康な弁輪は、拡張しており、特に短軸に沿った前〜後の距離が増加している。結果として、この弁輪によって規定される形状および張力は、あまり卵型(図4を参照のこと)でなくなり、より丸く(図6を参照のこと)なる。この状態は、拡張(dilation)と呼ばれる。弁輪が拡張している場合、ピーク収縮期圧力で癒合に適する形状および張力は、次第に低下する。代わりに、ピーク収縮期圧力で、弁尖は、完全には癒合せず、隙間が弁尖の間に生成する。心室収縮の間、逆流がこの隙間を通って起こり得る。長軸に沿った交連〜交連間の距離と短軸に沿った前〜後距離との間の比が弁尖の癒合の有効性に関係を有していると考えられている。短軸に沿った前〜後距離が増加すると、この比が変化し、そしてこの比が特定の値に到達すると、逆流または逆流の可能性が示される。
【0016】
逆流の結果として、「余分な」血液が左心房中に逆流する。続く心室性拡張期(心臓が弛緩するとき)の間、この「余分な」血液は、左心室に戻り、容積の過負荷、すなわち左心室中のあまりに多い血液を生成する。引き続く心室収縮の間(心臓が収縮するとき)、予想よりも多くの血液が心室中に存在する。このことは、(1)余分な血液を移動させるために、心臓はより激しくポンプ輸送せねばならないこと;(2)あまりに少ない血液が、心臓から身体の残りの部分へ移動するかも知れない;そして(3)より多くの容積の血液を収容するために、経時的に、左心室は、拡張かつ拡大し、そして左心室はより弱くなり得る。
【0017】
僧帽弁逆流の軽度の場合はあまり問題は生じないが、より重篤で慢性的な場合は最終的に心臓を弱め、そして心不全を生じ得る。僧帽弁逆流は、急性状態または慢性状態であり得る。それは、僧帽弁不全と呼ばれることがある。
【0018】
(III.先行の処置様式)
僧帽弁逆流の処置において、利尿剤および/または血管拡張剤が、左心房の中へ逆流する血液の量を減らすのに役立てるために使用され得る。大動脈内バルールカウンタパルセイションデバイス(intra−aortic balloon counterpulsation device)は、その状態が医薬品によって安定化されていない場合に、使用され得る。慢性僧帽弁逆流または急性僧帽弁逆流に対して、僧帽弁を修復するかまたは置き換えるための手術が、多くの場合、必要である。
【0019】
これまでのところ、侵襲的な開放型の心臓外科的アプローチが僧帽弁機能不全を修復するために使用されてきた。これらの外科的修復手順の間、拡張した弁輪の部分を締めて切除し、そして/または拡張した弁輪の大部分を適所に固定するための努力がなされる。これらの外科的修復手順の間、弁輪は、環状リングもしくは半環状リングまたは類似のリング様デバイスで再建され得る。この修復デバイスは、代表的には、弁輪および周囲の組織に縫合糸ベースの固定具で固定される。修復デバイスは、弁輪および弁尖表面の頂部を覆って、そして弁輪および弁尖表面の周縁の多くまたはすべてを覆って延びる。
【0020】
医師は、不健康な僧帽弁を、修復するよりはむしろ置き換えようと決定するかも知れない。侵襲的な、開放型の心臓外科的アプローチは、本来の弁を機械的弁またはブタ、ウシ、またはウマから採取した生物学的組織(バイオ補綴具(bioprosthetic))で置き換えるために使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
例えば、心臓弁の機能不全の処置のため、例えば、僧帽弁逆流の処置における簡単で費用対効果の高い、そしてあまり侵襲的でない、デバイス、システム、および方法に対する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
(発明の要旨)
本発明は、少なくとも一部は、機能不全の心臓弁の弁輪の中、弁輪の上または弁輪の近くで取付けられるようなサイズおよび構成である移植片を採用するデバイス、システムおよび方法を提供する。使用時に、この移植片は、弁輪の短軸を短くするために弁輪の短軸を横切って延びるか、または長軸を伸ばすために長軸を横切って延びるかのいずれか、あるいはその両方である。この移植片は、心臓弁の弁輪および弁尖をより機能的な解剖学的形状および張力に回復させる。このより機能的な解剖学的形状は、弁尖の癒合に通じ、これが今後は逆の流れすなわち逆流を低減させる。
【0023】
本発明の1つの局面は、心臓弁の弁輪の形状に影響を及ぼすための多機能移植片システムを採用するデバイス、システムおよび方法を提供する。この移植片システムは、この弁輪の長軸に沿って組織を係合するようなサイズおよび構成である、第1の構成要素を備える。このシステムはまた、この第1の構成要素と同時に、この弁輪の短軸に沿って組織を係合して内側方向に変位させるようなサイズおよび構成である、第2の構成要素を備える。この第1の構成要素および第2の構成要素は、別々の構成要素を備えるか、または一体化された本体を形成する。
【0024】
本発明の別の局面は、心臓弁の弁輪の形状に影響を及ぼすための移植片を採用するデバイス、システムおよび方法を提供する。この移植片は、第1の部分およびこの第1の部分に接合される第2の部分を備える本体を備える。この第1の部分は、心臓弁の弁輪の近くまたは心臓弁の弁輪内で、心腔(heart chamber)内に静止するようなサイズおよび構成である。第2の部分は、この第1の部分に接合され、かつ中隔を通って延びて別の心腔中で静止するようなサイズおよび構成である。この本体は、全体として上記弁輪の長軸と整列されてもよく、弁輪の短軸と整列していてもよい。複数の本体が、同時に展開され得る。
【0025】
本発明の別の局面は、心臓弁の弁輪の形状に影響を及ぼすための磁力移植片システムを採用するデバイス、システムおよび方法を提供する。このシステムは、心臓弁の弁輪の組織中、または心臓弁の弁輪の近くの組織中で静止するようなサイズおよび構成である、第1の磁性または強磁性構成要素、およびこの第1の構成要素から間隔を空けて、この心臓弁の弁輪のの組織中、またはこの心臓弁の弁輪の近くの組織中で静止するようなサイズおよび構成である、第2の磁性構成要素を備える。この第1および第2の構成要素は、それらの間に、引き付け合うかまたは反発する磁場を生成する。この第1および第2の構成要素が、同じ心腔を占めてもよく、異なる心腔を占めてもよい。1つの実施形態では、この第1および第2の構成要素のうちの一方は、冠状静脈洞を占める。
【0026】
本発明の別の局面は、交連弁輪形成術を実施する移植片を採用するデバイス、システムおよび方法を提供する。この移植片は、弁尖の交連を有する心臓弁の輪の近くまたは該輪内に静止するようなサイズおよび構成である、本体を備える。この本体は、この弁尖の交連で、またはこの弁尖の交連の近くで組織と接するためのこの本体に付随した間隔を空けて離れた支柱を備える。この支柱は、この交連の組織、またはこの交連の近くの組織に対して引張り力を奏して、この交連で弁輪を一緒に押し付け(squeeze)、弁尖の癒合を促進する弾性の顎を備える。この本体、支柱、および顎のうちの少なくとも1つは、ワイヤ形態の構造体を備える。これらの本体、支柱、および顎は、カテーテル内の配置のために折り畳み可能である。
【0027】
本発明の他の特徴および利点は、添付の説明、図面、および特許請求の範囲に基づいて明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(詳細な説明)
本明細書の開示は、当業者が本発明を実施することが可能であるように、詳細で正確であるが、本明細書中に開示される物理的実施形態は、単に本発明を例示するに過ぎず、本発明は、他の具体的な構造体に具現化され得る。好ましい実施形態が記載されているが、その詳細は、本発明から逸脱することなく変更されてもよく、本発明は特許請求の範囲により規定される。
【0029】
(I.心臓弁の弁輪の短軸の直接短縮のための移植片)
(A.心房内移植片)
(1.構造)
図7Aおよび7Bは、心臓弁の弁輪に、または心臓弁の弁輪の近くに静止するようなサイズおよび構成である移植片10の実施形態を示す。図8および9では、僧帽弁に静止している図7Aの移植片10の実施形態が、示される。(図8および9が示すような)この配置では、移植片10は、短軸に沿って(すなわち、前〜後方向に弁輪を横切って)延びる。
【0030】
図8および9のように、移植片10は、使用時に、それが輪の短軸に沿って直接の機械的力を付与するようなサイズおよび形態である。この直接の機械的力は、組織を内側方向に変位させ(すなわち、組織を弁輪の中心に向かって変位させ)、弁輪を再建する働きをする。例示の実施形態(すなわち、僧帽弁)では、この機械的な力は、輪の短軸を短縮する働きをする。そうする場合、移植片10はまた、その長軸に沿って輪を反動的に再建し得、そして/または他の周囲の解剖学的構造体を反動的に再建し得る。
【0031】
他の弁構造体に置かれた場合、影響を受ける軸は、周囲の解剖学的構造に起因して、「長」軸および「短」軸でなくともよいことが理解されるべきである。治療的であるために、この移植片は、心室収縮の収縮のような心周期の一部の間、輪を再建する必要があるだけでもよいことも理解されるべきである。例えば、この移植片は、心室収縮の収縮の間、輪の内側への移動を回復するかまたは増加させるために、輪の少しの変位または無視できるほどの変位しかもたらさないようなサイズであってもよい。
【0032】
短軸を横切って移植片10により付与される機械的な力は、心臓弁の弁輪および弁尖により正常な解剖学的形状および張力を回復させる(図8および9を参照のこと)。このより正常な解剖学的形状および張力は、心室収縮の間の弁尖の癒合に通じ、これは今度は逆流を低減する。
【0033】
移植片10の最も基本的な形態では、移植片10は、生体適合性の金属材料もしくはポリマー材料から、または適切にコーティングされ、含浸され、もしくは生体適合性を付与するための材料で別様に処理されている金属材料もしくはポリマー材料、あるいはそのような材料の組合せから、例えば、曲げ、造形、連結、機械加工、成形または押出しにより、作製される。この材料はまた、望ましくは、X線透視検査による視覚化を容易にするために、放射線不透過性であるか、または放射線不透過特徴を組込む。
【0034】
図7Aおよび7Bが示すように、移植片10は、中間レール14により連結される一対の支柱12を備える。図8が示すように、支柱12は、弁輪下部位置(すなわち、弁輪の線維状本体を係合する)か、または弁輪上部位置(すなわち、弁輪もしくは弁輪の近くの組織を係合する)のいずれかを係合するようなサイズおよび構成である。レール14は、支柱12に橋をかける。レール14は、(支柱12と同様に)種々の形状を取り得、そして種々の断面形状を有し得る。レール14(および/または支柱12)は、例えば、ほぼ曲線からなる(すなわち、丸いか卵型)断面、またはほぼ直線で囲まれた断面(すなわち、正方形または矩形)、あるいはその組合せを有し得る。図7Aおよび8の実施形態では、移植片10のレール14は、左心房のドームに向かって弁の面の上に有意に延びるような構成である。図7Bに示される実施形態では、移植片10のレール14は、その弁の面の上に有意には延びないが、弁尖との干渉を避けるに十分なだけは延びるように構成されている。
【0035】
支柱12は、各々、1つ以上の固定要素16を備える。提示された固定要素16は、弁輪下部または弁輪上部のいずれかで組織を掴むようなサイズおよび構成である。固定要素16は、望ましくは、少なくとも一部は弁輪および/または隣接する解剖学的構造体に頼り、移植片を係留しそしてその位置を固定し、そして弁輪からのその移動に抵抗する。
【0036】
図7では、組織を貫通するかえしのアレイを備える。図12および13(これらは後により詳細に説明される)は、固定要素16についての別の代表的な実施形態を示し、それは組織を掴むのを容易にする方向の二次的なかえし(secondary barb)を備え得る。組織固定要素16の他のタイプおよび形態は、例えば、組織貫通部材を備えていてもいなくてもよいパッド、および/または粗い表面、および/または内殖促進性材料(たとえば、ポリエステル布)を使用し得る。所望の場合、任意の固定要素16が、移植片をさらに固定するために、縫合糸、接着剤および類似の材料と組合され得る。
【0037】
輪の下に延びる付属肢がないので、移植後または移植の中の移植片位置の調整は容易である。移植片10はまた、組織およびその輪の下の解剖学的構造体に対する外傷または損傷のより低い可能性を提示する。
【0038】
図7〜9に示されるように、移植片10は、望ましくは「弾性的」である。レール14は、(図7に示される)正常な荷重のない形状または状態を保有するようなサイズおよび構成である。この状態では、レール14は、圧縮状態でもなく張力もかかっておらず、支柱12は、標的の心臓弁の弁輪の短軸の前〜後寸法よりも近い間隔を置かれている。移植片10の材料は、所望のばね定数を保有するように選択される。このばね定数は、レール14に弾性的に離れて広げられ、支柱で付与される外部伸長力に応答して、その正常な、荷重のない状態から張力をかけて配置される能力を与える。
【0039】
支柱12が広げられ、弁輪の組織または輪の近くの組織に係留されるとき、レール14は、弾性的に荷重のかかった、張力のかかった状態をとる。その弾性的に荷重のかかった、張力のかかった状態にあるとき、レール14は、支柱12および固定要素16を介して、弁輪の組織または弁輪の近くの組織で対向する引張り力を奏する。これらの力は、図8および9で矢印で印をつけたPFで示される。この引張り力は、組織を内側方向に変位させ、弁輪をその短軸に沿って短縮する。この引張り力はまた、長軸および/または周囲の解剖学的構造体を再建し得る。このようにして、移植片10は、弁輪を、弁尖の癒合により適する形状に向かって再建する。
【0040】
記載されるような弾性の移植片は、例えば、Nitinol材料のような超弾性合金から作製され得る。この構成では、移植片はまた、展開の際にカテーテルまたはシース内に嵌り込むように、弾性的に真直ぐにされ、そして/または折畳まれ得、そして展開の際に好ましい形状を回復する。
【0041】
移植片10のばね定数は、隣接する組織のばね定数よりも大きいように選択される。あるいは、移植片10のばね定数は、隣接する組織のばね定数と同等であるように選択され、それにより移植片10が使用の間に組織の形態に適合することが可能になるような従順さを提供する。移植片10のばね定数は、レール14の長さに沿って変動し、その結果、レール14のある部分は、レール14の他の部分よりも堅いかまたはより従順である。
【0042】
(2.移植)
たった今説明され、図7Aまたは7Bに示された移植片10は、種々の方法での心臓弁の弁輪への移植に適合している。移植片10は、例えば、開放型心臓外科手順で移植され得る。あるいは、移植片10は、画像による案内の下、末梢静脈接近部位(大腿静脈または頚静脈)または大腿動脈を介するカテーテルベースの技術を使用して移植され得る。あるいは、移植片10は、また画像化による案内の下、喉を通る胸腔鏡手段を使用して、または右心房を介する他の外科的接近により移植され得る。画像化による案内としては、X線透視検査、超音波、コンピューターによる断層撮影法、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
図10および11は、画像による案内の下、経皮の、カテーテルベースの手順による、図7A、8および9に示されるタイプの弾性的移植片10の展開の代表的な実施形態を示す。
【0044】
経皮脈管接近は、大腿静脈または頚静脈への従来の方法により達成される。図10Aが示すように、画像による案内の下、カテーテル52は、右心房への脈管系を通して操縦される。カテーテルの遠位端に保持されるニードルカニューレ54が展開され、右心房と左心房との間の中隔を穿刺する。図10Bが示すように、ガイドワイヤ56が、左心房へのニードルカテーテル52を通して、中隔を貫通して前進される。第1のカテーテル52は、(図10Cが示すように)引き込められ、そして画像による案内の下、移植片送達カテーテル58がガイドワイヤ56の上を左心房の中へ、僧帽弁の近傍へ前進される。あるいは、移植片送達カテーテル58は、右心房を通る外科的接近により、中隔を貫通して展開され得る。
【0045】
移植片送達カテーテル58は、その遠位端にシース60を保有する(図10Cを参照のこと)。移植片10は、シース内で折り畳まれた、真っ直ぐな状態で拘束されている。シース60は、(例えば、それを近位方向にスライドさせることにより)引き抜かれ、移植片10を段々と自由にするようなサイズおよび構成である。シース60から段々と自由にされて、弾性移植片10は、拡張され形状を得る。あるいは、カテーテル58中の可撓性押し棒が使用され、シース60から移植片10を押し出して、同じ結果を得るために使用される。
【0046】
望ましくは、支柱12は、畳み込まれたプロフィールを減少し、いったんシース60から自由にされると、移植片10の拡張を容易にするために、シース60内に折り畳まれる。図11Aが示すように、画像による案内の下で、移植片10の後端部上の支柱12は、最初にシース60から自由になる。後支柱12は、固定要素16を、後尖(posterior annulus)中の組織または後尖の近くの組織に配置するように操作される。図11Bが示すように、送達カテーテル58は、カテーテルが前〜後方向に輪の短軸を横切ってたどるので、シース60がさらに引き抜かれるときに、後支柱12上に力を維持する。送達カテーテル58は、は、後支柱上に力を維持するに十分なカラム強度を有するようなサイズおよび構成であり得る。シース60から段々と自由になると、前支柱12が広がるまで、弾性移植片10は形状をとる(図11Cを参照こと)。レール14は、バルーンBおよび/またはカテーテルにより展開された掴み器具を使用して、張力のかかった状態に置かれ得、前支柱12の固定要素16を輪の組織または輪の近くの組織に静止させる。いったん静止されると、支柱12は、カテーテル58から開放される。
【0047】
代替の実施形態では(図12を参照のこと)、移植片10は、それぞれレール14の前部分および後部分に沿って形成されるベル型の突起20および22を備える。図13が示すように、突起20は、移植されたときに、中隔を通って拡張し、そして右心房中に突出するようなサイズおよび構成である。そこで、前突起20は、右心房で展開された適切な掴み器具により、操作のために露出される。例えば、その掴み器具は、右心房で突起20を保持し、左心房内に張力のかかった状態でのレール14の配置を容易にする。左心房内の後突起22はまた、左心房中の器具により掴まれ、レールの位置決めおよび/または張力付与を支援してもよい。
【0048】
図13が示すように、中隔に対して支えられたかえしのついたステイ24は、前突起20に折られ、左心房中でレール14上で所望の程度の張力を維持するのを支援する。
【0049】
さらに、右心房中への前突起20の突出は、所望の場合、右心房からの移植片10の再位置決めおよび/または回収を容易にする。
【0050】
(B.中隔横断移植片)
(1.構造)
図14は、移植片の別の実施形態26を示し、この移植片26は、図15および16に示されるように、心臓の短軸に沿って機械的な力を付与するか、または心臓弁の弁輪、特に僧帽弁輪に隣接した組織を別様に安定化するようなサイズおよび構成である。図示された実施形態では、そして図7に示される移植片10と関連して説明されるように、図15および16の移植片26により付与される機械的力(矢印で示される)は、組織を内側に変位させる(すなわち、組織を弁輪の中心に向かって変位させる)て(図15および16を参照のこと)、短軸を短くし、弁を再建する働きをする。上で説明されたように、移植片26により短軸を横切って直接付与される機械的な力は、また反動的に弁輪の長軸を再建し、加えて他の周囲の解剖学的構造体を再建する。移植片26は、心臓弁の弁輪および弁尖を、心室収縮の間の弁尖の癒合に通じる、より正常な解剖学的形状および張力に回復させ、これが、次に逆流を低減させる。しかし、移植片26の存在は、短軸の長さに影響を及ぼすことなく、心臓弁の弁輪に隣接した組織を安定化する働きをし得ることが理解されるべきである。
【0051】
図14に示されるように、移植片26は、例えば、生体適合性の金属材料もしくはポリマー材料から、または適切にコーティングされ、含浸され、もしくは生体適合性を付与するための材料で別様に処理されている金属材料もしくはポリマー材料、あるいはそのような材料の組合せから、例えば、曲げ、造形、連結、機械加工、成形または押出しにより、作製される。この材料はまた、望ましくは、X線透視検査による視覚化を容易にするために、放射線不透過性である。
【0052】
図14に示されるように、移植片26は、中間レール32により連結される一対の支柱28および30を備える。レール32は、(支柱28および30と同様に)種々の形状を取り得、そして種々の断面形状を有し得る。レール32(および/または支柱28および30)は、例えば、ほぼ曲線からなる(すなわち、丸いか卵型)断面、またはほぼ直線で囲まれた断面(すなわち、正方形または矩形)、あるいはその組合せを有し得る。
【0053】
レール32の一端または両端にある支柱28および30は、組織への固定を増強する固定要素34を備える。種々の組織固定要素34が使用され得、それは例えば、(示されるような)組織に貫入するかえし、および/または粗い表面、および/または内殖促進性材料(たとえば、ポリエステル布)を備えたパッドである。所望の場合、任意の固定要素34が、移植片をさらに固定するために、縫合糸、接着剤および類似の材料と組合され得る。
【0054】
図15および16が示すように、前支柱30上の固定要素34は、左心房内で、後尖の上またはその近くで、弁輪下部または弁輪上部のいずれか(すなわち、弁輪の線維状本体を係合する)か、または弁輪上部位置(すなわち、心房組織を係合する)のいずれかで組織を係合するようなサイズおよび構成である。
【0055】
前支柱28上の固定要素34は、中隔を通過して右心房中に突き出るようなサイズおよび構成である。そこで、固定要素34自体は、中隔の組織を係合し得る。あるいは、図15および16が示すように、固定要素34は、アンカーボタン36を備え得る。アンカーボタン36は、前支柱28を捕らえ、右心房中で中隔に対して前支柱28を保持する。
【0056】
(2.移植)
移植片26は、図10A、10Bおよび10Cに示されるのと同じ様式で、カテーテル52内で右心房から左心房へ展開され得る。後支柱30上の固定要素34は、後尖の弁輪下部位置または弁輪上部位置のいずれかで(図17Aが示すように)、組織と係合して配置され、そして前支柱28は、(図17Bに示されるように)中隔を通って導かれる。
【0057】
図17Bが示すように、右心房内で(すなわち、中隔を通して)前支柱28を引っ張ると、(図17Bで矢印により示されるように)後尖またはその近くで組織に引張り力が奏される。この引張り力は、後尖を、前尖(anterior annulus)に向かって内側に引き、それによりその短軸に沿って弁輪を短くする。上に説明したように、この引張り力はまた、その長軸に沿って弁輪を反動的に再建し、加えて周囲の解剖学的構造体を再建し得る。このようにして、移植片は、弁輪を上に説明したまさに移植片10のように、弁尖の癒合により適した形状に向かって再建する。
【0058】
図15および16に図示される実施形態示されるように、少なくとも2つの移植片26が、望ましくは同時に使用され、短軸の内側および外側に沿って引張り力を分配する。この構成では、前支柱30上の固定要素34は、後尖の上、近くまたはその中で間隔を空けた位置で、左心房内で組織を掴む。前支柱28上の固定要素34は、一緒に中隔を通過する。右心房内から前支柱28を引っ張ると、後尖は前尖に向かって引かれ、それにより弁輪をその短軸を横切って短くする。前支柱28は、個々にまたは同時に引っ張られ得、所望の再建が達成される。
【0059】
この構成では、図16が最もよく示すように、1つの移植片26は、左心房の中隔の壁に向かって外方向に力を向けるように形作られ、他方、他の移植片26は、左心房の外側の壁に向かって外側に力を向けるように形作られている。生じる力は、後尖に沿って均一に分配される。
【0060】
いったん所望の程度の引張り力が確立されると、前支柱28は、アンカーボタン36により中隔に対して一緒に固定され得る。上に説明されたように、固定要素34自体は、アンカーボタン36の使用なしで保持力を付与し得る。
【0061】
(C.磁力システム)
(1.構造)
図18A/18B/18Cおよび19A/Bは、使用時には、1つ以上の移植された磁気要素64を使用して心臓弁の軸を短くする磁力システム62の種々の実施形態を示す。移植された磁気要素64は、弁輪の組織領域を互いに向かって引きつける磁場の力を発生する。
【0062】
図18A/18B/18C〜19A/Bに示されるように、この組織領域は、僧帽弁輪の後エッジおよび前エッジを含む。この磁場の力は、この組織領域を輪の短軸を横切って近づけて一緒になるように引く。弁輪の短軸は、それにより短くなる。すでに説明されたように、短軸が短くなることで、弁弁は再建され得、そして他の周囲の解剖学的構造体を再建し得、そして心臓弁の弁輪および弁尖を、心室収縮の間の弁尖の癒合に通じる、より機能的な解剖学的形状および張力に回復させ、これは今度は逆流を低減する。
【0063】
図18Aおよび18Bでは、磁気要素64は、2個以上の永久磁石66を備える。永久磁石66は、例えば、ネオジム−鉄−ホウ素の合金(NdFeB)、アルミニウム−ニッケル−コバルトの合金(AlNiCo)、およびサマリウムコバルト(SmCo)を含む。永久磁石66は、外部磁場を発生する。図18Aおよび18Bが示すように、2つの永久磁石66Aおよび66Bは、左心房の弁輪上またはそれよりも上に、反対の極が互いに向かい合って(N−SまたはS−N)固定される。対向する極性の極は、磁力によって互いに引き合う。磁気的引力は、磁石の強さおよびそれらの間の距離に依存する。
【0064】
図18Aおよび18Bでは、対向する極の2つの永久磁石66Aおよび66Bが、それぞれ、輪の前領域および後領域に、またはそれより上に固定され、弁輪の短軸をほぼ横切って整列される。磁気的な引力(矢印で示される)は、前尖および後尖を互いに向かって引き、短軸を短くする(図18Cも参照のこと)。
【0065】
図18Bでは、少なくとも1つの追加の永久磁石66Cが、短軸上に整列された磁石の片側または両側上で、後尖上またはそれよりも上に提供される。追加の永久磁石66Cは、隣接する短軸磁石66Aと同じである、隣接する短軸磁石66Aに面する極を有する。同じ極性の極は、磁力で互いに反発する。磁気的反発力は、追加の永久磁石66Cを押し、隣接する短軸磁石66Aを離し、2つの磁石66Aおよび66Cを後尖上に離して維持し、そして磁石66Aと66Cとの間の組織を引き伸ばす。同時に、追加の磁石の存在に起因して、後尖および前尖66B上の永久磁石66Aと66Cとの間の磁気的引力は増幅され、さらに後尖および前尖を互いに向かって引く力が増強され、短軸が短くなる。
【0066】
図19Aおよび19Bでは、永久磁石66Dが前尖または後尖上、またはそのいずれかよりも上に、短軸にほぼ整列して固定される。図19Aおよび19Bでは、永久磁石66Dは、前尖上またはそれよりも上に固定されて示される。対向する弁輪(それは、図19Aおよび19Bでは、後尖を含む)上に、軟質強磁性材料68(例えば、鉄(Fe))が固定される。
【0067】
軟質磁性材料68は、永久磁石66Dにより引きつけられる。磁気的引力は、後尖および前尖を互いに向かって引張り、短軸を短くする。この引力は、短軸永久磁石66Dに隣接する前尖上またはそれよりも上に追加の永久磁石66Eを固定することにより、強められ得る(図19Bを参照のこと)。図18Bに示される実施形態に関して説明されたように、追加の永久磁石66Eは、隣接する短軸磁石66Dの極と同じである、隣接する短軸磁石に面した極を有する。磁気的反発力は、この追加の永久磁石および短軸磁石を押し離し、これら2つの磁石を前尖上で離して維持し、2つの磁石66Dと66Eとの間の組織引き伸ばす。
【0068】
図20に示されるように、対向する磁極を有する2つ以上の永久磁石66Fおよび66Gが、輪の所定の領域(ここでは、前尖)上またはそれよりも上に、対となる向かい合って間隔を空けた磁石なしに、固定され得る。この磁気的引力は、永久磁石を一緒に引張り、後尖の周縁に沿って組織を引き伸ばす。この構成で生じる磁力場での再建は、短軸を短くし、弁輪を再建する。
【0069】
図21および22が示すように、永久磁石66および/または軟質強磁性材料68は、種々の形態のパケット70に機械加工、レーザー切断、化学的エッチングまたはEDM製造され得る。パケット70は、望ましくは、不活性な絶縁材料(例えば、金)中に入れられるか、梱包される。このパケットは、1つ以上の固定要素72を備え、この固定要素72は、パケット70を標的の弁輪上またはそれより上で、組織中に係留される。
【0070】
図21および22では、パケット70は、ボタン形状であり、固定要素72は、組織に貫入するかえしを備える。他の形状および構成は、当然、使用され得る。
【0071】
図23A/Bでは、パケット70は、ボタン形状であり、さらに弁尖保持付属肢76を備える。輪上またはそれよりも上の組織に係留される場合(図24を参照のこと)、弁尖保持付属肢76は、1つ以上の本来の弁尖の少なくとも一部を覆う。弁尖保持付属肢76は、弁尖の外転/または脱出に抵抗する。このようにして、磁気的移植片のシステムは、短軸に沿って弁輪を再建するだけでなく、逆の流れすなわち逆流を防止するかまたは低減する。弁尖保持付属肢76は、順方向の流れの間の、弁尖の開口部および弁尖を通る血流とは干渉しない。
【0072】
図25は、磁力システムの別の実施形態78を示し、この磁力システム78は、使用時に、1つ以上の移植された磁石80および82を使用して心臓弁の軸を短くする。図25では、磁石80および82は、心臓弁により占められている心腔内の弁輪上またはそれよりも上に係留されていない。代わりに、磁石80および82は、心腔の外側に配置され、弁輪の組織領域を互いに向かって引きつける磁気的引力を発生する。
【0073】
図25に示される実施形態では、心臓弁は、左心房の僧帽弁を含む。永久磁石80は、後尖の近くの冠状静脈洞または前尖に近い右心房の中隔に移植される。図25では、永久磁石80は、冠状静脈洞に移植されて示されている。第2の磁気的要素82は、他の位置、ここでは前尖に近い右心房の中隔に移植されている。第2の磁気的要素82は、第1の永久磁石の極性と反対の極性を備え得るか、またはそれは軟質強磁性材料を備え得る。永久磁石80と第2の磁気的要素82との間の磁気的引力は、後尖と前尖とを互いに向かって引き込み、短軸を短くする。
【0074】
心臓弁の軸を短くする磁力システム62または78は、開放型外科手順また胸腔鏡手段の間、展開され得る。あるいは、カテーテルべースのアプローチも、使用され得る。
【0075】
(II.短軸を直接的に短くしつつ、直接的に輪の長軸を長くするための移植片システム)
ここで説明されたタイプの任意の移植片は、単独で使用され、輪の短軸に沿っての直接的な短縮を提供し得る。これはまた、反動的にその長軸に沿って輪の引き伸ばしを提供し得る。
【0076】
図26および27が示すように、所定の短軸移植片84はまた、短軸移植片86と組み合わせて使用され得、組合せシステム88を形成し得る。システム88では、長軸移植片86は、輪の長軸に沿って直接的な長軸の引き伸ばしを提供する。システム88では、(長軸移植片86による)長軸の能動的引き伸ばしは、(短軸移植片84による)短軸の能動的短縮を伴う。長軸移植片86の使用は、短軸移植片84を補完し、短軸移植片84の使用により発生する長軸の反動的な引き伸ばしを増強する。
【0077】
当然、長軸移植片86は単独で使用され得る。単独で使用される場合、長軸移植片86は、反動的に短軸では短くなり、そして対応して他の解剖学的構造体を再建する。
【0078】
長軸移植片86は、他の目的を達成するようなサイズおよび構成であり得る。長軸移植片86は、例えば、長軸を短くするようなサイズおよび構成であり得る。あるいは、長軸移植片86は、長軸の付随的な引き伸ばしも短縮もなく、組織を単に安定化するだけのサイズおよび構成であってもよい。上で記述したように、これらの代替のサイズおよび構成の長軸移植片86は、単独で、または短軸移植片と組み合わせて使用され得る。
【0079】
(A.弾性移植片システム)
(1.単機能長軸移植片構造体)
例えば、僧帽弁輪を再建するための1つの代表的な実施形態(図26および27を参照のこと)では、長軸移植片86は、単機能構成要素として、単独で、または単機能短軸移植片84と組み合わせて、弁輪よりも上かつ/または弁輪に沿って、弁輪の長軸に沿って静止するようなサイズおよび構成である。長軸移植片86は、2003年10月1日に出願され、「Devices,systems,and Methods for Reshaping a Heart Valve Annulus」と題する、同時係属中の米国特許出願第10/677,104号に記載されるタイプのものであり得る。この米国特許出願は、本明細書中に参考として援用される。
【0080】
上で特定された出願に記載されるように、長軸移植片86は、は、生体適合性の超弾性金属材料から、例えば、曲げ、造形、連結、機械加工、成形または押出しにより、作製される。図28に示されるように、長軸移植片86は、中間レール92により連結された一対の支柱90を備える。図27および28が示すように、長軸移植片86の支柱90は、弁尖の交連中に、弁尖の交連に、または弁尖の交連の近くに静止するようなサイズおよび構成である。移植片86の超弾性材料は、弾性的に荷重のかかった状態に弾性的に圧縮され、弁尖の交連中、弁尖の交連に、または弁尖の交連の近くの組織を係合して静止する能力をレール92に与える所望のばね定数を保有するように選択される。その弾性的に荷重のかかった、圧縮された状態では、レール92は、支柱90を介して、交連中、交連に、または交連の近くの組織に対向する力を奏し、組織を外側方向に変位させ、輪をその長軸に沿って引き伸ばす傾向がある。
【0081】
図29および30は、単機能長軸移植片86の別の代表例を示す。長軸移植片86は、図26および27に示されるタイプのシステムを形成するために、単独で使用されてもよく(図29および30が示すように)、単機能短軸移植片84と連携して使用されてもよい。移植片86は、閉じたレール構造を形成する2つのレール92を備える。レール92は、脚134により支持される。脚134は、ほぼ180°間隔を空けられている。使用時には(図30を参照のこと)、移植片86は、心房中の僧帽弁の上に存在する。各脚134のぶら下がっている基部は、固定要素136を保有する。固定要素136は、弁輪の長軸に沿って、交連の上または交連の近くで心房組織を掴む。脚134およびレール92のばね力は、長軸に沿って組織を引き伸ばす広げようとする力を付与する。高所のレール92は、弁尖の広がりに対して防御する。
【0082】
図示された実施形態では、固定要素136は、弁輪上の心房組織に貫入するかえしのパッドを備える。しかし、他のタイプの組織係合機構、例えば、粗い表面、または組織の内殖を促進する材料が使用され得る。弁輪の上の組織を係合する多数の固定要素136を脚134に配置することで、単位組織表面積あたりに付与される力を低減することが可能になる。所望の場合、任意の固定要素136が、移植片をさらに固定するために、縫合糸、接着剤および類似の材料と組合され得る。
【0083】
図29および30に示される長軸移植片86に類似した長軸移植片86が、交連の正確な位置を識別する必要なしに、置かれ得る。移植後または移植の間の移植片の位置の調整も容易にされる。なぜなら、交連から支柱を取り除く必要はないからである。図29および30に示される長軸移植片86に類似した長軸移植片86はまた、輪の下の組織および解剖学的構造体に対する外傷または損傷のより低い可能性を提示する。
【0084】
(2.多機能長軸および短軸移植片構造体)
例えば、僧帽弁輪を再建するための別の代表的な実施形態(図31を参照のこと)では、多機能移植片138は、(図32が示すように)弁輪の周りに静止して長軸および短軸の両方を再建するように機能するようなサイズおよび構成であり得る。
【0085】
多機能移植片138は、望ましくは、生体適合性の超弾性金属材料から、例えば、曲げ、造形、連結、機械加工、成形または押出しにより、作製される。図31に示されるように、移植片138は、対向して間隔を空けた一対のレール142および144により連結されリング様構造体を形成する、一対の支柱140を備える。レール142および144は、当然、種々の形態を取り得る。
【0086】
図32が示すように、移植片138の支柱140は、弁尖の交連中に、弁尖の交連に、または弁尖の交連の近くに静止するようなサイズおよび構成である。移植片138の超弾性材料は、弾性的に荷重のかかった状態に弾性的に圧縮され、弁尖の交連中、弁尖の交連に、または弁尖の交連の近くの組織を係合して静止する能力をレール142および144に与える所望のばね定数を保有するように選択される。その弾性的に荷重のかかった、圧縮された状態にあるとき、レール142および144は、支柱140を介して、交連中、交連に、または交連の近くの組織に対向する力を奏し、組織を外側方向に変位させ、輪をその長軸に沿って引き伸ばす傾向がある。あるいは、支柱140は、弁輪の上の心房組織の掴みを収容するために、図29および30に示されるような脚および固定要素または他の形態の組織固定要素を備え得、同じ機能を果たし得る。
【0087】
図31が示すように、レール142および144は、固定要素146を備え、この固定要素146は、図示された実施形態では組織に貫入するかえしの形態をとる。レール142および144上の固定要素146は、それぞれ、(図32が示すように)前尖および後尖に隣接した弁輪中、弁輪下部中または弁輪上部中の組織を掴むようなサイズおよび構成である。移植片138の超弾性材料は、弁尖の交連中、弁尖の交連に、または弁尖の交連の近くの組織を係合して静止するとき、引き伸ばされ張力のかかった状態で配置される能力をレール142および144に与える所望のばね定数を保有するように選択される。その弾性的に荷重のかかった、圧縮された状態では、レール142および144は、輪の近くの組織に対向する引張り力を奏する。これは、弁輪を、その短軸に沿って短くする機能を提供する。レール142および144は、例えば、レール142と144との間に配置され膨張されるバルーン148の使用により、離れるように拡張され得、固定要素146を組織と接触するように配置し得る。このバルーンを折り畳むことで、移植片が、組織に取り付けられて所望の形状をとることを可能にする。
【0088】
他のタイプおよび形態の組織固定要素146が使用され得る。例えば、図33に示されるように、組織固定要素146は、内側方向に折り畳まれた状態で展開されるかえしを備える。かえし146は、レール142および144が、例えば、レール142と144との間に配置され膨張されるバルーン148の使用により、離れるように拡張されるとき(図34を参照のこと)、外方向に折り畳まれ得る。バルーン148のさらなる膨張の際に(図35および36を参照のこと)、かえし146は、前尖および後尖に隣接した弁輪下部組織または弁輪上部組織中へ駆動される(図37を参照のこと)。バルーン148はまた、レール142および144を張力をかけた状態に置き、弁輪の短軸を短くするというそれらの意図された機能を果たす。
【0089】
他の実施形態では、組織固定要素146は、組織貫通部材を備えていてもいなくてもよいパッド、および/または粗い表面、および/または内殖促進性材料(たとえば、ポリエステル布)の形態をとり得る。所望の場合、任意の固定要素146は、移植片138をさらに固定するために、縫合糸、接着剤および類似の材料と組合され得る。
【0090】
(3.移植)
全体的に図10Cに示されるように、単機能移植片86または多機能移植片138のいずれかが、カテーテルまたはシース内に嵌り込むように、弾性的に真直ぐにされ、そして/または折畳まれ得る。あるいは、単機能移植片86または多機能移植片138は、開放型外科手順また胸腔鏡手段の間、展開され得る。
【0091】
例えば、単機能長軸移植片86に関して、右心房から中隔を通って左心房の中への接近は、図10A、10B、および10Cに示されるように、達成され得る。移植片送達カテーテル58は、長軸移植片86を、畳み込まれ、真直ぐにされた状態で、シース60中にその遠位端に保有する(図38Aを参照のこと)。図38Aが示すように、画像化による案内の下で、長軸移植片86の先導端部上の支柱90は、シース60から自由であり、弁輪の中央交連に逆向きに静止する。シース60は、癒合線に沿って横方向に、癒合線と一直線に引き込まれる。段々とシース60から自由になると、外側の交連内で追随支柱90が広がり、そして静止するまで、(図38Bおよび38Cが示すように)長軸移植片86は、形を作り、静止する。移植片86はまた、カテーテルで展開された掴み器具を使用して、画像化による案内の下で、左心房内に位置決めまたは再位置決めされ得る。
【0092】
代替の実施形態(図39を参照のこと)では、長軸移植片86は、レール92の中央部分および外側部分に沿って形成されるベル型の突起94および96を備え得る。図40が示すように、中央突起94は、中隔を通って延び、右心房に突き出るようなサイズおよび構成である。そこで、中央突起94は、右心房中に展開された掴み器具により係合されるために露出される。右心房中の掴み器具は、突起94を掴み得、左心房内への圧縮状態でのレール92の設置を容易にする。かえしのついたステイ98は、中央突起94へと折り曲げられ得、レール92上での圧縮を維持するのを支援する。右心房に突き出た中央掴み部位はまた、長軸移植片86の再位置決めおよび/または回収を容易にする。外側突起96は、同様に、圧縮状態でのレール92の配置のために、左心房中で器具により掴まれ得る。
【0093】
図41に示されるように、短軸移植片84および長軸移植片86の両方は、中隔を通って右心房に一緒に突き出る掴み突起100および102を備え得る。突起100および102の両方は、上に説明されたように、短軸移植片84を張力のかかった状態に配置し、そして長軸移植片86を圧縮状態に設置するように操作され得、弁輪の所望の再建を達成する。
【0094】
(B.弾性移植片−磁力場システム)
直接の長軸再建および短軸再建を同時に達成する他のタイプのシステムが可能である。例えば、図42は、システム104の代表的な実施形態を示し、このシステム104は、弁輪の1つの軸に沿う直接の再建を提供するための弾性構成要素106、および弁輪の別の軸に沿う直接の再建を提供するための磁力場構成要素108を備える。
【0095】
図42に示される実施形態では、再建されるべき弁は、左心房の僧帽弁である。この構成では、弾性構成要素106は、すでに説明した(例えば、図30または39に示されるようなもの)タイプの長軸移植片を備え、この長軸移植片は、弁輪の上および/または弁輪に沿って、弁輪の長軸に沿って静止するようなサイズおよび構成である。上に説明されたように、弾性の長軸移植片106は、長軸に沿って弁輪を引き伸ばす。
【0096】
この構成では、磁力場構成要素108は、上に説明されたタイプ(例えば、図21A〜21Eに示されるようなもの)の磁気要素132を備える。磁気要素132は、間隔を空けて離れた関係で、短軸を横切って、前尖および後尖上またはそれらよりも上に置かれる。磁気要素132は、対向する極性の2つの永久磁石、あるいは1つの永久磁石と1つの軟質強磁性材料を備え得る。例示の実施形態では、磁気要素132は、その支柱の1つの近くで弾性長軸移植片106に連結されたヨーク110の対向する端部で、安定化される。磁気要素132は、輪上またはそれよりも上の組織に移植される。磁気構成要素132間の磁気的引力は、後尖および前尖を互いに向かって引き、短軸を短くする。
【0097】
磁気要素132を支持するヨーク110は、ばね定数を有していてもよい。磁気要素132が輪上またはそれよりも上に移植されたときにヨーク110を張力のかかった状態に配置することで、補助的な機械的力が提供され、短軸を短くするように働く磁力が増強される。
【0098】
(III.弁輪形成システム)
(A.点荷重)
図43は、心臓弁の弁輪を再建するための点荷重弁輪形成システム112を示す。システム112は、心臓弁の弁輪の全周のまわりに機械的な力を付与する。この機械的な力は、弁輪を引き、弁尖の癒合に適するほぼ卵形形状を回復させる。例示の目的のために、図43は、心臓弁の弁輪を左心房に僧帽弁を含むように示す。
【0099】
図43では、システム112は、弁輪上、またはそれよりも上の隣接する部位を、生体適合性弾性フレーム114で周縁方向につなげることにより機械的な力を生成する。図示された実施形態では、フレーム114は、弾性材料(例えば、SelasticTM材料)を含む。フレーム114は、弁輪上、またはそれよりも上の組織に挿入されるファスナー116のネットワークを通すことにより、部位をつなぐ。図44A〜44Cは、ファスナー116の代表的な実施形態を示し、このファスナー116は、フレーム114の通過を収容するためのクリップ構成要素118およびクリップ構成要素を組織に固定するかえし120を備える。弾性フレーム114は、ファスナー116のネットワーク内で張力のかかった状態にある。フレーム114により付与される張力は、組織を、弁輪の中でまたは弁輪に沿って一緒に引張り、それにより弁輪をぴんと張って非膨張形状を回復する。
【0100】
点荷重弁輪形成システムの代替の実施形態122が図45に示される。図45では、図43におけるように、弾性フレーム114が、弁輪上、またはそれよりも上の組織に挿入されるファスナー116のネットワークを通して張力のかかった状態になるように配置される。図43では、ファスナー116のすべては、弁輪の中または弁輪に沿って置かれていた。図45では、1つのファスナー116’は、左心房の外の右心房に置かれている。このファスナー116’は、中隔を係合する。この構成では、フレーム114は、中隔を通り、中隔を左心房に向かって中隔を横方向に引張り、前尖に沿って組織を再建する。
【0101】
(B.交連弁輪形成)
図46は、交連弁輪形成を実施するための移植片124を示す。図47が示すように、移植片124は、使用時に、弁輪の上および/または弁輪に沿って心臓弁の弁輪の長軸に沿って静止するようなサイズおよび構成である。図示される実施形態(図47を参照のこと)では、移植片124は、左心房の僧帽弁輪の長軸に沿って静止する。
【0102】
移植片124は、生体適合性の金属材料もしくはポリマー材料から、例えば、曲げ、造形、連結、機械加工、成形または押出しにより、作製される。図39に示されるように、移植片124は、中間レール128により連結される一対の支柱126を備える。
【0103】
図47が示すように、支柱126は、中央弁尖の交連または外側弁尖の交連に隣接して、弁輪の、または弁輪の近くの弁輪下部位置か、または弁輪上部位置のいずれかで静止するようなサイズおよび構成である。
【0104】
移植片124は、各支柱126に付随している顎130を備える。顎130は、正常な荷重のない形状または状態(図46に示される)を保有するようなサイズおよび構成である。この状態では、顎130は、圧縮状態でも張力のかかった状態でもない。各顎の材料は、所望のばね定数を保有するように選択される。このばね定数は、各顎130に、弾性的に離れて広げられ(図48Aを参照のこと)、顎130に付与される外部伸長力に応答して、その正常な、荷重のない状態から張力をかけて配置される能力を与える。
【0105】
顎130が引き伸ばされて離された状態で広げられ、交連の組織または交連の近くの組織に係留されるとき、顎130は、弾性的に荷重のかかった、張力のかかった状態をとる。この弾性的に荷重のかかった、張力のかかった状態にあるとき、顎130は、交連の組織または交連の近くの組織で対向する引張り力を奏する。これらの力は、図48Bに矢印で示される。この引張り力は、交連の組織を内側方向に変位させ、交連で一緒に輪を押しつけ弁尖の癒合を促進する。
【0106】
移植片124は、圧縮状態および/または張力のかかった状態にあることもなく、図47に示されるように静止し、それによりそれ自身、弁輪の長軸かまたは短軸のいずれかに沿って、組織に対して押す力も引っ張る力も付与しない。あるいは、移植片124は、弾性材料から作製され得る。これにより、弾性的に荷重のかかった状態に弾性的に圧縮され、弁尖の交連中、弁尖の交連に、または弁尖の交連の近くの組織を係合して静止する能力がレール128に付与される。この状態にあるとき、レール124は、支柱126を介して、交連中、交連に、または交連の近くの組織に対向する力を奏し、組織を外側方向に変位させ、弁輪をその長軸に沿って引き伸ばす傾向がある。
【0107】
さらに、図49に示されるように、移植片124の顎130の内の一方または両方は、弁輪の中央および外側の輪郭に追随するように伸ばされ、形作られ得、図42に示されるヨーク110に類似して、前尖および後尖上で対向して面する関係で終結する。この構成では、顎130は、ばね定数を保有する。移植の時に顎130を(図49が示すように)弁輪の短軸を横切って張力のかかった状態に置くことで、上に説明した様式で、短軸を短くする機械的な力が提供される。顎130は、さらに引き伸ばされ得、そして完全リング様の構造を形成するように形作られ得る。
【0108】
図50に示されるように、移植片124は、上に説明した(例えば、図21A〜21Eに示されるような)タイプの磁力場構成要素132と連携して使用され得る。磁気構成要素132は、前尖および後尖の上またはそれよりも上で間隔を空けた関係で置かれる。磁気構成要素132は、対向する極性の2つの永久磁石、または1つの永久磁石と1つの軟質強磁性材料とを備え得る。図示される実施形態では、磁気構成要素132は、弁輪上またはそれよりも上の組織に移植される。磁気要素132間の磁気的引力は、前尖および後尖を互いに向かって引き、短軸を短くする。
【0109】
短軸の直接的短縮、および/または長軸の直接的伸張に影響を及ぼす移植片システムが、単独で、または機械的手段および/または磁気的手段を使用して組み合わせて、提供され得ることは上記の記載に基づいて明らかである。心臓弁の弁輪の造形が、その輪の周りで周縁方向に付与される機械的力および/または磁力により、ならびに/あるいは単独で、または輪をその長軸および/または短軸に沿って再建する機械的力および/または磁力と組み合わせて、交連の組織を再建することにより達成され得ることも明らかである。
【0110】
新しいデバイスおよび方法が、心臓の僧帽弁の処置という文脈で、より具体的に説明されてきたが、他の心臓弁のタイプが、同じかまたは等価な様式で処置され得ることが理解されるべきである。例として、そして限定ではないものとして、本システムおよび方法は、任意の心臓弁の弁輪における逆の流れを防ぐか低減するために使用され得、その弁輪としては、三尖弁、肺動脈弁、または大動脈弁が挙げられる。さらに、他の実施形態および本発明の使用は、本明細書の考察および本明細書中に開示される本発明の実施から、当業者には明らかである。本明細書および実施例は、例示的なものであり、単に重要な技術的な特徴および原理を記載するものにすぎないと考えられるべきであり、それは限定的であることを意図されていない。本発明の真の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲により規定される。当業者には容易に理解されるように、開示された実施形態の各々のバリエーションおよび改変は、添付の特許請求の範囲により規定される通りの本発明の範囲内で、容易になされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、健康な心臓の内部の斜視図による前から見た解剖図である。
【図2】図2は、心房が取り除かれた健康な心臓の内部の上から見た解剖図であり、心室性拡張期の間の心臓弁の状態を示す。
【図3】図3は、心房が取り除かれた健康な心臓の内部の上から見た解剖図であり、心室収縮の間の心臓弁の状態を示す。
【図4】図4は、心室収縮の間の健康な僧帽弁の上から見た解剖図であり、弁尖が適正に癒合していることを示す。
【図5】図5は、心房が取り除かれた心臓の内部の上から見た解剖図であり、心室収縮の間の心臓弁の状態を示し、そして弁尖が適正に癒合しておらず、逆流を起こしている機能不全の僧帽弁をさらに示す。
【図6】図6は、心室収縮の間の機能不全の僧帽弁の上から見た解剖図であり、弁尖が適正に癒合しておらず、逆流を起こしていることを示す。
【図7A】図7Aは、心臓弁の弁輪で、または心臓弁の弁輪の近くで静止し、弁輪の短軸に沿って直接の機械的な力を付与して組織を弁輪の中央に向かって内側に変位させるようなサイズおよび構成である移植片の側方斜視図であり、図7Aに示される移植片は、弁の面の上に有意に延びるように構成されている。
【図7B】図7Bは、心臓弁の弁輪で、または心臓弁の弁輪の近くで静止し、弁輪の短軸に沿って直接の機械的な力を付与して組織を弁輪の中央に向かって内側に変位させるようなサイズおよび構成である移植片の側方斜視図であり、図7Bに示される移植片は、弁の面の上に短い距離だけ延びるように構成されている。
【図8】図8は、左心房の僧帽弁輪で、または僧帽弁輪の近くで展開された、図7Aに示される移植片の横方向斜視図である。
【図9】図9は、図8に示される移植片および心臓の上から見た図である。
【図10A】図10Aは、図7Aに示されるタイプの移植片を移植するために、右心房から中隔を横切り左心房へと脈管内に展開されたカテーテルの前からみた斜視図である。
【図10B】図10Bは、図7Aに示されるタイプの移植片を移植するために、右心房から中隔を横切り左心房へと脈管内に展開されたカテーテルの前からみた斜視図である。
【図10C】図10Cは、図7Aに示されるタイプの移植片を移植するために、右心房から中隔を横切り左心房へと脈管内に展開されたカテーテルの前からみた斜視図である。
【図11A】図11Aは、左心房における図10A、10B、および10Cに示されるカテーテルからの、図7Aに示される移植片の逐次的拡張の横方向斜視図である。
【図11B】図11Bは、左心房における図10A、10B、および10Cに示されるカテーテルからの、図7Aに示される移植片の逐次的拡張の横方向斜視図である。
【図11C】図11Cは、左心房における図10A、10B、および10Cに示されるカテーテルからの、図7Aに示される移植片の逐次的拡張の横方向斜視図であり、移植片を僧帽弁の短軸を横切って張力のかかった状態に置くためにバルーンが膨張されて、示されている。
【図12】図12は、心臓弁の弁輪で、または心臓弁の弁輪の近くで静止し、弁輪の短軸に沿って直接の機械的な力を付与して組織を弁輪の中央に向かって内側に変位させるようなサイズおよび構成である移植片の代替の実施形態の側方斜視図であり、図12に示される移植片は、移植片の位置決めおよび/または張力付与を支援するために把持され得るベル型の突起を備える。
【図13】図13は、左心房の僧帽弁で、またはその近くで拡張された、図12に示された側方斜視図であり、ベル型の突起の1つが右心房の中隔を通って延び、それに係留されている。
【図14】図14は、心臓弁の弁輪で、または心臓弁の弁輪の近くで静止し、輪の短軸に沿って直接の機械的な力を付与して組織を輪の中央に向かって内側に変位させるようなサイズおよび構成である移植片の代替の実施形態の側面図であり、図14に示される移植片は、中隔を通り、右心房に突き出るようなサイズおよび構成である前構成要素を有する。
【図15】図15は、左心房の僧帽弁輪で、またはその近くで展開された、一対の図14に示される移植片の横方向斜視図であり、前構成要素が、右心房の中隔を通って延び、それに係留されている。
【図16】図16は、図15に示される移植片および心臓の上から見た図である。
【図17A】図17Aは、図15および16に示される移植片のうちの1つの、右心房から中隔を通って左心房への展開の横方向側面図である。
【図17B】図17Bは、図15および16に示される移植片のうちの1つの、右心房から中隔を通って左心房への展開の横方向側面図である。
【図18A】図18Aは、弁輪に、または弁輪の近くに移植された、磁力システムの異なる実施形態を有する僧帽弁輪の上から見た図である。この磁力システムは、弁輪の組織領域を互いに引き付ける磁場を生成するためのものであり、この磁力システムは、弁輪の短軸を短くするように配置されている。
【図18B】図18Bは、弁輪に、または弁輪の近くに移植された、磁力システムの異なる実施形態を有する僧帽弁輪の上から見た図である。この磁力システムは、弁輪の組織領域を互いに向かって引き付ける磁場を生成するためのものであり、この磁力システムは、弁輪の短軸を短くするように配置されている。
【図18C】図18Cは、図18Aおよび18Bに示された磁力システムの前からみた側面図である。
【図19A】図19Aは、僧帽弁輪に、またはその近くに移植された図18A、18Bおよび18Cに示されるタイプの移植された磁力システムの他の代替の実施形態を備えた僧帽弁輪の上から見た図であり、この磁力システムは、弁輪の組織領域を互いに向かって引き付けて、弁輪の短軸を短くする磁場を生成するためのものである。
【図19B】図19Bは、僧帽弁輪に、またはその近くに移植された図18A、18Bおよび18Cに示されるタイプの移植された磁力システムの他の代替の実施形態を備えた僧帽弁輪の上から見た図であり、この磁力システムは、弁輪の組織領域を互いに向かって引き付けて、弁輪の短軸を短くする磁場を生成するためのものである。
【図20】図20は、僧帽弁輪の1つの側面に沿って、この僧帽弁輪に、またはその近くに移植された、移植された磁力システムの代替の実施形態を備えた僧帽弁輪の上から見た図であり、この磁力システムは、輪の組織領域を、この輪の側面に沿って、互いに向かって引き付ける磁場を生成するためのものである。
【図21】図21は、図18A、18B,18C、19A、19Bおよび20に示される磁力システムを生成するために使用され得るボタン形状の磁気要素の代表的な実施形態である。
【図22】図22は、ほぼ図21の線22−22に沿って取られたボタン形状の磁気要素の側断面図である。
【図23A】図23Aは、図18A、18B,18C、19A、19Bおよび20に示される磁力システムを生成するために使用され得るボタン形状の磁気要素の代表的な実施形態であり、この磁気要素は、本来の弁尖を覆う保持付属肢を備える。図23Aは、この磁気要素および付属肢の側方斜視図である。
【図23B】図23Bは、図18A、18B,18C、19A、19Bおよび20に示される磁力システムを生成するために使用され得るボタン形状の磁気要素の代表的な実施形態であり、この磁気要素は、本来の弁尖を覆う保持付属肢を備える。図23Bは、この磁気要素および付属肢の側断面図である。
【図24】図24は、僧帽弁輪の対向する前側および後側に沿って移植された、図23Aおよび23Bに示される磁気要素を備えた僧帽弁の上からみた図である。
【図25】図25は、心臓の上からみた図であり、僧帽弁の後尖の上で冠状静脈洞内に移植された1つの磁気要素、および僧帽弁の前尖の近くで、右心房中の中隔に移植された第2の磁気要素を有する磁力システムの存在を示し、この磁力システムは、これらの磁気要素の間に、僧帽弁の短軸を短くする磁気的引力を生成するためのものである。
【図26】図26は、左心房の横方向斜視図であり、僧帽弁での、またはその近くでの長軸に沿った1つの移植片および短軸に沿った1つの移植片の移植を示し、これらの移植片は、同時に、長軸を伸ばし、短軸を短くし得る組合わせ移植システムを形成する。
【図27】図27は、図26に示される組合わせ移植システムおよび心臓の上からみた図である。
【図28】図28は、図26および図27に示されるシステムと連携して弁輪の長軸に沿って移植され得る移植片の代表的な実施形態の側面図であり、この移植片は、長軸を伸ばすために、輪の長軸に沿って直接の機械的な力を付与するようなサイズである。
【図29】図29は、図26および図27に示されるシステムと連携して弁輪の長軸に沿って移植され得る移植片の代替の実施形態の側方斜視図である。
【図30】図30は、左心房内で僧帽弁の長軸に沿って移植された、図29に示される移植片を示す横方向斜視図である。
【図31】図30は、僧帽弁の周りに静止して、長軸およひ短軸の両方に沿って弁輪を同時に再建するようなサイズおよび構成である多機能移植片の側方斜視図であり、図31の移植片は、輪の組織、またはその近くの組織と接触するように配置され得るかえしを有する。
【図32】図32は、左心房内で僧帽弁の周りに移植された図31に示される移植片を示す横方向斜視図である。
【図33】図33は、僧帽弁の周りに静止して、長軸およひ短軸の両方に沿って弁輪を同時に再建するようなサイズおよび構成である多機能移植片の代替の実施形態の側方斜視図であり、図33の移植片は、内側方向に折り畳まれたかえしを有し、このかえしは弁輪の、または弁輪の近くの組織と接触するように移植片を拡張することにより、外方向に折り曲げられ得る。
【図34】図34は、バルーンの膨張に応答した、図33に示される移植片のかえしの外方向の折り曲げの上から見た図である。
【図35】図35は、バルーンの膨張に応答した、図33に示される移植片のかえしの外方向の折り曲げの上から見た図である。
【図36】図36は、バルーンの膨張に応答した、図33に示される移植片のかえしの外方向の折り曲げの上から見た図である。
【図37】図37は、左心房内の僧帽弁の周りに移植された、図33に示された移植片を示す横方向斜視図である。
【図38A】図38Aは、図10A、10Bおよび10Cのカテーテルからの図28に示された移植片の逐次展開の横方向斜視図であり、この移植片は、左心房の僧帽弁の長軸を横切って圧縮状態で展開されている。
【図38B】図38Bは、図10A、10Bおよび10Cのカテーテルからの図28に示された移植片の逐次展開の横方向斜視図であり、この移植片は、左心房の僧帽弁の長軸を横切って圧縮状態で展開されている。
【図38C】図38Cは、図10A、10Bおよび10Cのカテーテルからの図28に示された移植片の逐次展開の横方向斜視図であり、この移植片は、左心房の僧帽弁の長軸を横切って圧縮状態で展開されている。
【図39】図39は、図26および27に示されるシステムと連携して弁輪の長軸に沿って移植され得る移植片の代替の実施形態の側方斜視図であり、この移植片は、心臓弁の弁輪で、または心臓弁の弁輪の近くで静止し、弁輪の長軸に沿って直接の機械的な力を付与して組織を輪の中央から離れるように外側へ変位させるようなサイズおよび構成であり、図39に示される移植片は、圧縮状態への移植片の位置決めおよび/または配置を支援するために把持され得るベル型の突起を備え得る。
【図40】図40は、左心房の僧帽弁で、またはその近くで展開された、図39に示される移植片の横方向斜視図であり、ベル型突起のうちの1つが右心房の中隔を通って延び、そしてそれに係留されている。
【図41】図41は、同時に長軸を伸ばし、短軸を短くし得る図26に示されたタイプの組合せ移植片システムの横方向斜視図であり、このシステムは、長軸移植片および短軸移植片を備え、これらの移植片の両方は、右心房の中隔を通って延び、そしてそれに係留されているベル型突起を備える。
【図42】図42は、弁輪で、または弁輪の近くで静止して、長軸および短軸の両方に沿って同時に再建するようなサイズおよび構成である多機能移植片システムの代替の実施形態の側方斜視図であり、図42の移植片は、図28に示されるタイプの弾性部材を備える長軸構成要素および図18Aに示されるタイプの磁力システムを備える短軸構成要素を備える。
【図43】図43は、僧帽弁輪の周りでの点荷重弁輪形成の設置を示す、心臓の上方断面図である。
【図44A】図44Aは、図43に示される点荷重弁輪形成システムを作製するための弾性フレームの通過を収容するクリップ構成要素の代表的な実施形態の斜視図である。
【図44B】図44Bは、図43に示される点荷重弁輪形成システムを作製するための弾性フレームの通路を収容するクリップ構成要素の代表的な実施形態の斜視図である。
【図44C】図44Cは、図43に示される点荷重弁輪形成システムを作製するための弾性フレームの通路を収容するクリップ構成要素の代表的な実施形態の斜視図である。
【図45】図45は、僧帽弁輪の周りでの点荷重弁輪形成の代替の実施形態の設置を示す、心臓の上方断面図であり、図45に示されるシステムは、中隔を横切る右心房中の点取り付けを有する。
【図46】図46は、左心房の僧帽弁に、またはその近くで交連弁輪形成術を実施するようなサイズおよび構成である移植片の斜視図であり、この移植片は、交連で輪を一緒に押し付け、弁尖の癒合を促進する弾性の顎を備える。
【図47】図47は、左心房の横方向斜視図であり、交連弁輪形成を実施するための、図46に示される移植片の僧帽弁における設置を示す。
【図48A】図48Aは、交連での引張り力を生成するために含まれる、図46に示される移植片が備える弾性の顎の拡大した上から見た図であり、交連での、またはその近くでの組織を係合するために離れて広げられた顎を示す。
【図48B】図48Bは、交連での引張り力を生成するために含まれる、図46に示される移植片が備える弾性の顎の拡大した上から見た図であり、交連で輪を一緒に押し付け、弁尖の癒合を促進するために、張力のかかった状態にある顎を示す。
【図49】図49は、図46に示される移植片の構造的バリエーションが移植されている僧帽弁の前からみた斜視図であり、この構造的バリエーションは、図9に示される様式で短軸を短くする機械的力を提供するために、輪の短軸を横切って張力のかかった状態にして配置されるべき上記輪の内側輪郭および外側輪郭に追随するように伸ばされ形作られた弾性の顎を有する。
【図50】図50は、図46に示される移植片のバリエーションの斜視図であり、このバリエーションは、図18Aに示される様式で短軸を短くする磁力を提供するための磁気要素を保有するリング様構造体を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁の弁輪の形状に影響を及ぼすための移植片システムであって、該移植片システムは、
該輪の長軸に沿って組織を係合するようなサイズおよび構成である、第1の構成要素、および
該第1の構成要素と同時に、該輪の短軸に沿って組織を係合して内側方向に変位させるようなサイズおよび構成である、第2の構成要素、
を備える、移植片システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素が、前記長軸に沿って組織を外側方向に変位させるようなサイズおよび構成である、移植片システム。
【請求項3】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素が、前記長軸に沿って組織を内側方向に変位させるようなサイズおよび構成である、移植片システム。
【請求項4】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素が、前記長軸に沿って組織を安定化させるようなサイズおよび構成である、移植片システム。
【請求項5】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素および第2の構成要素が、別々の構成要素を備える、移植片システム。
【請求項6】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素および第2の構成要素が一体化された本体を備える、移植片システム。
【請求項7】
請求項1に記載の移植片であって、前記第1の構成要素が、圧縮状態にある間に組織を係合するようなサイズおよび構成である、移植片。
【請求項8】
請求項1に記載の移植片であって、前記第2の構成要素が、張力のかかった状態にある間に、組織を係合するようなサイズおよび構成である、移植片。
【請求項9】
請求項1に記載の移植片であって、前記第1の構成要素が、圧縮状態にある間、組織を係合するようなサイズおよび構成であり、そして前記第2の構成要素が張力のかかった状態にある間、組織を係合するようなサイズおよび構成である、移植片。
【請求項10】
請求項1に記載の移植片であって、前記第1の構成要素および第2の構成要素のうちの少なくとも一方が、ワイヤ形態の構造体を備える、移植片。
【請求項11】
請求項1に記載の移植片であって、前記第1の構成要素および第2の構成要素の両方が、ワイヤ形態構造体を備える、移植片。
【請求項12】
請求項1に記載の移植片であって、前記第1の構成要素および第2の構成要素のうちの少なくとも一方が、カテーテル内への配置のために折り畳み可能である、移植片。
【請求項13】
請求項1に記載の移植片であって、前記第1の構成要素および第2の構成要素の両方が、カテーテル内への配置のために折り畳み可能である、移植片。
【請求項14】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素が弾性材料を備える、移植片システム。
【請求項15】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素が、前記輪の弁尖の交連で、弁尖の交連の近くで、または弁尖の交連中で組織を係合する固定要素を備える、移植片システム。
【請求項16】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素が、前記輪の弁尖の交連の上および弁尖の交連の近くで組織を係合する固定要素を備える、移植片システム。
【請求項17】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第2の構成要素が弾性材料を備える、移植片システム。
【請求項18】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第2の構成要素が、前記弁輪で、弁輪の近くで、または弁輪中で組織を係合する固定要素を備える、移植片システム。
【請求項19】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第2の構成要素が、前記弁輪の上および弁輪の近くで組織を係合する固定要素を備える、移植片システム。
【請求項20】
心臓弁の弁輪の形状に影響を及ぼすための移植片であって、該移植片は、
心臓弁の弁輪の近くまたは心臓弁の弁輪内で、心腔内に静止するようなサイズおよび構成である、第1の部分、および
該第1の部分に接合され、かつ中隔を通って延びて別の心腔中で静止するようなサイズおよび構成である、第2の部分、
を備える、本体、
を備える、移植片。
【請求項21】
請求項20に記載の移植片であって、前記本体が全体として前記弁輪の長軸と整列している、移植片。
【請求項22】
請求項21に記載の移植片であって、前記本体が、組織を外側方向に変位させ、前記長軸を長くする、移植片。
【請求項23】
請求項21に記載の移植片であって、前記本体が、組織を内側方向に変位させ、前記長軸を短くする、移植片。
【請求項24】
請求項21に記載の移植片であって、前記本体が、前記心臓弁の弁輪に隣接する組織を安定化する、移植片。
【請求項25】
請求項20に記載の移植片であって、前記本体が、全体として前記弁輪の短軸と整列している、移植片。
【請求項26】
請求項25に記載の移植片であって、前記本体が、組織を内側方向に変位させ、前記短軸を短くする、移植片。
【請求項27】
請求項25に記載の移植片であって、前記本体が、前記心臓弁の弁輪に隣接する組織を安定化する、移植片。
【請求項28】
請求項20に記載の移植片であって、前記第2の部分が、前記中隔に、または該中隔の近くに固定要素を備える、移植片。
【請求項29】
請求項20に記載の移植片であって、前記本体が、ワイヤ形態の構造体を備える、移植片。
【請求項30】
請求項20に記載の移植片であって、前記本体が、カテーテル内への配置のために折り畳み可能である、移植片。
【請求項31】
請求項20に記載の移植片であって、前記本体が弾性材料を備える、移植片。
【請求項32】
請求項20に記載の移植片であって、前記第1の部分が、前記弁輪で、該弁輪の近くで、または該弁輪の中で組織を係合する固定要素を備える、移植片。
【請求項33】
請求項20に記載の移植片であって、前記第1の部分が、前記弁輪の上でかつ該弁輪の近くで組織を係合する固定要素を備える、移植片。
【請求項34】
心臓弁の弁輪の形状に影響を及ぼすための移植片システムであって、該移植片システムは、
心臓弁の弁輪の組織中、または心臓弁の弁輪の近くの組織中で静止するようなサイズおよび構成である、第1の磁性または強磁性構成要素、および
該第1の構成要素から間隔を空けて、該心臓弁の弁輪のの組織中、または該心臓弁の弁輪の近くの組織中で静止するようなサイズおよび構成である、第2の磁性構成要素、
を備え、該第1および第2の構成要素は、それらの間に磁場を生成する、移植片システム。
【請求項35】
請求項34に記載の移植片システムであって、前記第1および第2の構成要素が、引き付け合う磁場を生成する反対の磁極を備える、移植片システム。
【請求項36】
請求項34に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素が、前記第2の構成要素へと引き付けられる軟質強磁性材料を備える、移植片システム。
【請求項37】
請求項34に記載の移植片システムであって、前記第1および第2の構成要素が、反発する磁場を生成する同じ磁極を備える、移植片システム。
【請求項38】
請求項34に記載の移植片システムであって、前記第1および第2の構成要素が、同じ心腔を占める、移植片システム。
【請求項39】
請求項34に記載の移植片システムであって、前記第1および第2の構成要素が、異なる心腔を占める、移植片システム。
【請求項40】
請求項34に記載の移植片システムであって、前記第1および第2の構成要素のうちの一方が、冠状静脈洞を占める、移植片システム。
【請求項41】
請求項34に記載の移植片システムであって、前記第1および第2の構成要素の少なくとも一方が、保持要素を備える、移植片システム。
【請求項42】
移植片であって、
磁性または強磁性材料を備える本体であって、該磁性または強磁性材料は、心臓弁の弁輪の組織中、または該心臓弁の弁輪の近くの組織中で静止するようなサイズおよび構成である、本体
を備え、該本体は弁尖保持要素を備える、移植片。
【請求項43】
移植片であって、
本体であって、該本体は、弁尖の交連を有する心臓弁の輪の近くまたは該輪内に静止するようなサイズおよび構成である、本体、
を備え、該本体は、該弁尖の交連で、または該弁尖の交連の近くで組織と接するための該本体に付随した間隔を空けて離れた支柱を備え、該支柱は、該交連の組織、または該交連の近くの組織に対して引張り力を奏して、該交連で該輪を一緒に押し付け、弁尖の癒合を促進する弾性の顎を備える、移植片。
【請求項44】
請求項43に記載の移植片であって、前記本体、前記支柱、および前記顎のうちの少なくとも1つが、ワイヤ形態の構造体を備える、移植片。
【請求項45】
請求項43に記載の移植片であって、前記本体、前記支柱、および前記顎が、カテーテル内の配置のために折り畳み可能である、移植片。
【請求項46】
長軸および短軸を有する心臓弁の弁輪を処置する方法であって、
請求項1に記載の移植片システムを提供する工程、
前記第1の構成要素を、該長軸に沿って、組織と係合するように配置する工程、および
前記第2の構成要素を、該短軸に沿って、組織と係合するように配置する工程、
を包含する、方法。
【請求項47】
心臓弁の弁輪を処置する方法であって、
請求項20に記載の移植片を提供する工程、
前記第1の部分を、該心臓弁の弁輪の近くまたは該心臓弁の弁輪内に配置する工程、および
前記第2の部分を、前記中隔を通して別の心臓弁腔中に静止して配置する工程、
を包含する、方法。
【請求項48】
心臓弁の弁輪を処置する方法であって、
請求項34に記載の移植片システムを提供する工程、
前記第1の構成要素を、該心臓弁の弁輪の組織中または該心臓弁の弁輪の近くの組織中に配置する工程、
前記第2の構成要素を、該心臓弁の弁輪の組織中または該心臓弁の弁輪の近くの組織中に、該第1の構成要素から間隔を空けて配置する工程であって、該間隔は、該第1の構成要素と該第2の構成要素との間に磁場を生成するに十分である、工程、
を包含する、方法。
【請求項49】
心臓弁の弁輪を処置する方法であって、
請求項42に記載の移植片を提供する工程、および
前記本体を、前記弁尖保持要素が心臓弁の弁尖に隣接して置かれるように、心臓弁の弁輪の組織、または該心臓弁の弁輪の近くの組織中に配置する工程、
を包含する、方法。
【請求項50】
心臓弁の弁輪を処置する方法であって、
請求項43に記載の移植片を提供する工程、
前記支柱を弁尖の交連に、または弁尖の交連の近くに配置する工程、および
前記弾性の顎を、該交連に、または該交連の近くの組織に接触させて配置して、該交連で該輪を一緒に押し付ける工程、
を包含する、方法。
【請求項1】
心臓弁の弁輪の形状に影響を及ぼすための移植片システムであって、該移植片システムは、
該輪の長軸に沿って組織を係合するようなサイズおよび構成である、第1の構成要素、および
該第1の構成要素と同時に、該輪の短軸に沿って組織を係合して内側方向に変位させるようなサイズおよび構成である、第2の構成要素、
を備える、移植片システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素が、前記長軸に沿って組織を外側方向に変位させるようなサイズおよび構成である、移植片システム。
【請求項3】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素が、前記長軸に沿って組織を内側方向に変位させるようなサイズおよび構成である、移植片システム。
【請求項4】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素が、前記長軸に沿って組織を安定化させるようなサイズおよび構成である、移植片システム。
【請求項5】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素および第2の構成要素が、別々の構成要素を備える、移植片システム。
【請求項6】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素および第2の構成要素が一体化された本体を備える、移植片システム。
【請求項7】
請求項1に記載の移植片であって、前記第1の構成要素が、圧縮状態にある間に組織を係合するようなサイズおよび構成である、移植片。
【請求項8】
請求項1に記載の移植片であって、前記第2の構成要素が、張力のかかった状態にある間に、組織を係合するようなサイズおよび構成である、移植片。
【請求項9】
請求項1に記載の移植片であって、前記第1の構成要素が、圧縮状態にある間、組織を係合するようなサイズおよび構成であり、そして前記第2の構成要素が張力のかかった状態にある間、組織を係合するようなサイズおよび構成である、移植片。
【請求項10】
請求項1に記載の移植片であって、前記第1の構成要素および第2の構成要素のうちの少なくとも一方が、ワイヤ形態の構造体を備える、移植片。
【請求項11】
請求項1に記載の移植片であって、前記第1の構成要素および第2の構成要素の両方が、ワイヤ形態構造体を備える、移植片。
【請求項12】
請求項1に記載の移植片であって、前記第1の構成要素および第2の構成要素のうちの少なくとも一方が、カテーテル内への配置のために折り畳み可能である、移植片。
【請求項13】
請求項1に記載の移植片であって、前記第1の構成要素および第2の構成要素の両方が、カテーテル内への配置のために折り畳み可能である、移植片。
【請求項14】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素が弾性材料を備える、移植片システム。
【請求項15】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素が、前記輪の弁尖の交連で、弁尖の交連の近くで、または弁尖の交連中で組織を係合する固定要素を備える、移植片システム。
【請求項16】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素が、前記輪の弁尖の交連の上および弁尖の交連の近くで組織を係合する固定要素を備える、移植片システム。
【請求項17】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第2の構成要素が弾性材料を備える、移植片システム。
【請求項18】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第2の構成要素が、前記弁輪で、弁輪の近くで、または弁輪中で組織を係合する固定要素を備える、移植片システム。
【請求項19】
請求項1に記載の移植片システムであって、前記第2の構成要素が、前記弁輪の上および弁輪の近くで組織を係合する固定要素を備える、移植片システム。
【請求項20】
心臓弁の弁輪の形状に影響を及ぼすための移植片であって、該移植片は、
心臓弁の弁輪の近くまたは心臓弁の弁輪内で、心腔内に静止するようなサイズおよび構成である、第1の部分、および
該第1の部分に接合され、かつ中隔を通って延びて別の心腔中で静止するようなサイズおよび構成である、第2の部分、
を備える、本体、
を備える、移植片。
【請求項21】
請求項20に記載の移植片であって、前記本体が全体として前記弁輪の長軸と整列している、移植片。
【請求項22】
請求項21に記載の移植片であって、前記本体が、組織を外側方向に変位させ、前記長軸を長くする、移植片。
【請求項23】
請求項21に記載の移植片であって、前記本体が、組織を内側方向に変位させ、前記長軸を短くする、移植片。
【請求項24】
請求項21に記載の移植片であって、前記本体が、前記心臓弁の弁輪に隣接する組織を安定化する、移植片。
【請求項25】
請求項20に記載の移植片であって、前記本体が、全体として前記弁輪の短軸と整列している、移植片。
【請求項26】
請求項25に記載の移植片であって、前記本体が、組織を内側方向に変位させ、前記短軸を短くする、移植片。
【請求項27】
請求項25に記載の移植片であって、前記本体が、前記心臓弁の弁輪に隣接する組織を安定化する、移植片。
【請求項28】
請求項20に記載の移植片であって、前記第2の部分が、前記中隔に、または該中隔の近くに固定要素を備える、移植片。
【請求項29】
請求項20に記載の移植片であって、前記本体が、ワイヤ形態の構造体を備える、移植片。
【請求項30】
請求項20に記載の移植片であって、前記本体が、カテーテル内への配置のために折り畳み可能である、移植片。
【請求項31】
請求項20に記載の移植片であって、前記本体が弾性材料を備える、移植片。
【請求項32】
請求項20に記載の移植片であって、前記第1の部分が、前記弁輪で、該弁輪の近くで、または該弁輪の中で組織を係合する固定要素を備える、移植片。
【請求項33】
請求項20に記載の移植片であって、前記第1の部分が、前記弁輪の上でかつ該弁輪の近くで組織を係合する固定要素を備える、移植片。
【請求項34】
心臓弁の弁輪の形状に影響を及ぼすための移植片システムであって、該移植片システムは、
心臓弁の弁輪の組織中、または心臓弁の弁輪の近くの組織中で静止するようなサイズおよび構成である、第1の磁性または強磁性構成要素、および
該第1の構成要素から間隔を空けて、該心臓弁の弁輪のの組織中、または該心臓弁の弁輪の近くの組織中で静止するようなサイズおよび構成である、第2の磁性構成要素、
を備え、該第1および第2の構成要素は、それらの間に磁場を生成する、移植片システム。
【請求項35】
請求項34に記載の移植片システムであって、前記第1および第2の構成要素が、引き付け合う磁場を生成する反対の磁極を備える、移植片システム。
【請求項36】
請求項34に記載の移植片システムであって、前記第1の構成要素が、前記第2の構成要素へと引き付けられる軟質強磁性材料を備える、移植片システム。
【請求項37】
請求項34に記載の移植片システムであって、前記第1および第2の構成要素が、反発する磁場を生成する同じ磁極を備える、移植片システム。
【請求項38】
請求項34に記載の移植片システムであって、前記第1および第2の構成要素が、同じ心腔を占める、移植片システム。
【請求項39】
請求項34に記載の移植片システムであって、前記第1および第2の構成要素が、異なる心腔を占める、移植片システム。
【請求項40】
請求項34に記載の移植片システムであって、前記第1および第2の構成要素のうちの一方が、冠状静脈洞を占める、移植片システム。
【請求項41】
請求項34に記載の移植片システムであって、前記第1および第2の構成要素の少なくとも一方が、保持要素を備える、移植片システム。
【請求項42】
移植片であって、
磁性または強磁性材料を備える本体であって、該磁性または強磁性材料は、心臓弁の弁輪の組織中、または該心臓弁の弁輪の近くの組織中で静止するようなサイズおよび構成である、本体
を備え、該本体は弁尖保持要素を備える、移植片。
【請求項43】
移植片であって、
本体であって、該本体は、弁尖の交連を有する心臓弁の輪の近くまたは該輪内に静止するようなサイズおよび構成である、本体、
を備え、該本体は、該弁尖の交連で、または該弁尖の交連の近くで組織と接するための該本体に付随した間隔を空けて離れた支柱を備え、該支柱は、該交連の組織、または該交連の近くの組織に対して引張り力を奏して、該交連で該輪を一緒に押し付け、弁尖の癒合を促進する弾性の顎を備える、移植片。
【請求項44】
請求項43に記載の移植片であって、前記本体、前記支柱、および前記顎のうちの少なくとも1つが、ワイヤ形態の構造体を備える、移植片。
【請求項45】
請求項43に記載の移植片であって、前記本体、前記支柱、および前記顎が、カテーテル内の配置のために折り畳み可能である、移植片。
【請求項46】
長軸および短軸を有する心臓弁の弁輪を処置する方法であって、
請求項1に記載の移植片システムを提供する工程、
前記第1の構成要素を、該長軸に沿って、組織と係合するように配置する工程、および
前記第2の構成要素を、該短軸に沿って、組織と係合するように配置する工程、
を包含する、方法。
【請求項47】
心臓弁の弁輪を処置する方法であって、
請求項20に記載の移植片を提供する工程、
前記第1の部分を、該心臓弁の弁輪の近くまたは該心臓弁の弁輪内に配置する工程、および
前記第2の部分を、前記中隔を通して別の心臓弁腔中に静止して配置する工程、
を包含する、方法。
【請求項48】
心臓弁の弁輪を処置する方法であって、
請求項34に記載の移植片システムを提供する工程、
前記第1の構成要素を、該心臓弁の弁輪の組織中または該心臓弁の弁輪の近くの組織中に配置する工程、
前記第2の構成要素を、該心臓弁の弁輪の組織中または該心臓弁の弁輪の近くの組織中に、該第1の構成要素から間隔を空けて配置する工程であって、該間隔は、該第1の構成要素と該第2の構成要素との間に磁場を生成するに十分である、工程、
を包含する、方法。
【請求項49】
心臓弁の弁輪を処置する方法であって、
請求項42に記載の移植片を提供する工程、および
前記本体を、前記弁尖保持要素が心臓弁の弁尖に隣接して置かれるように、心臓弁の弁輪の組織、または該心臓弁の弁輪の近くの組織中に配置する工程、
を包含する、方法。
【請求項50】
心臓弁の弁輪を処置する方法であって、
請求項43に記載の移植片を提供する工程、
前記支柱を弁尖の交連に、または弁尖の交連の近くに配置する工程、および
前記弾性の顎を、該交連に、または該交連の近くの組織に接触させて配置して、該交連で該輪を一緒に押し付ける工程、
を包含する、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38A】
【図38B】
【図38C】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44A】
【図44B】
【図44C】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48A】
【図48B】
【図49】
【図50】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38A】
【図38B】
【図38C】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44A】
【図44B】
【図44C】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48A】
【図48B】
【図49】
【図50】
【公表番号】特表2007−536989(P2007−536989A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513186(P2007−513186)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/014898
【国際公開番号】WO2005/112827
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(505115119)アンプル メディカル, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/014898
【国際公開番号】WO2005/112827
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(505115119)アンプル メディカル, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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