説明

心臓弁の経皮的置換におけるツールの動きを追跡するシステム及び方法

【課題】被術者(115)の心臓弁の経皮的置換におけるツール(105)の動きを追跡するためのシステム(100)及び方法(200)を提供する。
【解決手段】システムは、イメージング・システム(120)と、被術者を通るツールの動きを追跡すると共に、イメージング・システムによって取得された複数の画像に対して空間的関係でツールの位置の表現を示すように動作可能であるナビゲーション・システム(125)と、制御装置(130)とを有する。制御装置は、心臓弁の経皮的置換において被術者の中にツールを動かすための複数の経路(250、300)の内の1つを特定し、複数の経路の内の1つを表す一系列(400、450)のモデルを特定し、該系列内のモデルの内の1つの限界内にあるツールの位置を検出し、限界内のモデルに対して重畳されたツールの表現を含む表示(145)を生成するように動作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本書で記述する主題(発明)は、一般的に云えば、追跡及び医学的イメージングに関するものであり、より具体的には、心臓弁の経皮的置換に用いられるツールの動きを追跡するシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
心臓弁は、心臓の1つの腔から別の腔への血液の逆流を防止する解剖学的構造であり、従って心臓の良好な機能のために極めて重要である。心臓弁の機能不全を引き起こすことのある既知の原因には、心臓弁の狭窄、及び心臓弁の不適切な閉鎖が含まれる。心臓弁の狭窄は、血流の望ましくない減少を生じさせるような心臓弁の収縮を含む。心臓弁の不適切な閉鎖は、通過する血液を誤った方向へ流れさせることがある。典型的には、これらの両方の機能不全は、機能不良の心臓弁を人工弁と置換することによって治療することができる。
【0003】
人工弁を配置する際の従来の方法の欠点は、カテーテル装置をその患者への導入位置から心臓内の人工弁配置位置まで誘導するのが困難なことである。別の例では、患者内の周囲の解剖学的構造に対する損傷を避けるように従来のイメージング手法を使用して人工弁を精密に配置するのが困難であることが知られている。ある従来の方法はまた、人工弁を配置する際に、一時的に心臓を冷凍した様な大体不動化した状態に置いている(例えば、一時的に心臓を高頻度刺激する)。心臓をこの大体不動化した状態に置いている間、従来のイメージング手法で通常用いられているマーカー又は造影剤を注入することは望ましくない。
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0079759号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、上述の欠点を解消するように心臓弁の置換を遂行する際に患者を通るツールの動きを追跡するシステム及び方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の要求を満たすための様々な実施形態を以下に詳しく記述する。
【0006】
一実施形態によれば、患者の心臓弁の経皮的置換におけるツールの動きを追跡する方法を提供する。本方法は、心臓弁の経皮的置換において患者の中にツールを動かすための一連の経路の内の1つの経路を特定する段階と、前記一連の経路の内の前記1つの経路を表す一系列のモデルを特定する段階と、患者を通るツールの動きを追跡する段階と、前記モデルの限界(threshold) 内にあるツールの位置を検出する段階と、前記一系列のモデルの内の1つのモデルの限界内にあるツールの位置を検出する段階と、前記限界内の前記モデルに対して重畳されたツールの表現を含む表示を生成する段階と、を有する。
【0007】
別の実施形態によれば、被術者の心臓弁の経皮的置換におけるツールの動きを追跡するように動作可能であるシステムを提供する。本システムは、一連の画像を取得するように動作可能であるイメージング・システムと、患者を通るツールの動きを追跡すると共に、前記一連の画像の各々に対して空間的関係でツールの位置の表現を示すように動作可能であるナビゲーション・システムと、前記イメージング・システム及びナビゲーション・システムと通信関係にある制御装置とを含む。制御装置は、メモリに記憶されている複数のプログラム可能な命令を実行するように通信する処理装置を含む。複数のプログラム可能な命令は、心臓弁の経皮的置換において患者の中にツールを動かすための複数の経路の内の1つの経路を特定し、前記複数の経路の内の前記1つの経路を表す一系列のモデルを特定し、患者を通るツールの動きを追跡し、前記一系列のモデルの内の1つのモデルの限界内にあるツールの位置を検出し、前記限界内の前記モデルに対して重畳されたツールの表現を含む表示を生成することを含む。
【0008】
更に別の実施形態によれば、被術者の心臓弁の経皮的置換において被術者を通るツールの動きを追跡するために処理装置によって実行するための一連のコンピュータ読取り可能なプログラム命令を含むコンピュータ・プログラム製品を提供する。複数のコンピュータ読取り可能なプログラム命令は、心臓弁の経皮的置換において患者の中にツールを動かすための一連の経路の内の1つの経路を特定し、前記一連の経路の内の前記1つの経路を表す一系列のグラフィック表現を特定し、患者を通るツールの動きを追跡し、前記一系列のモデルの内の1つのモデルの限界内にあるツールの位置を検出し、前記限界内の前記モデルに対して重畳されたツールの表現を表示することを含む。
【0009】
本書では、様々な範囲の実施形態を記述する。本項目で述べた様々な面に加えて、更なる別の面が図面を参照し且つ以下の詳細な説明を参照することにより明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下の詳しい説明では、その一部を形成する添付の図面を参照する。図面には、例として、実施することのできる特定の実施形態を示す。これらの実施形態は、特に大動脈弁の置換に注目するが、当業者が実施形態を実施することができる程度に充分詳しく説明する。また、他の実施形態を利用することができること、並びに、これらの実施形態の範囲から逸脱することなく、論理的、機械的、電気的及び他の変更を行うことができることを理解されたい。従って、以下の説明は、本発明を制限するものとして取るべきではない。
【0011】
図1は、被術者115内に人工弁110を配置する際にツール105の動きを追跡するように動作可能であるシステム100の一実施形態を示す。ツール105には、例えば、カテーテル又は案内ワイヤ、或いは他の外科的侵襲性用具が含まれる。以下の説明では、特に、被術者115の心臓内に人工弁110を運搬し且つ配置するように動作可能であるツール105に注目する。システム100はイメージング・システム120及びナビゲーション・システム125を含み、これらは制御装置130と組み合わさって被術者115に対するツール105の表現の表示図(イラスト)を生成する。
【0012】
イメージング・システム120は一般的に、被術者115の中を進行するツール105の経路の表示を生成するように動作可能である。イメージング・システム120の種類として、例えば、心電図(ECG)追跡、磁気共鳴(MR)イメージング、X線透視イメージング、コンピュータ断層撮影(CT)イメージング、ポジトロン放出断層撮影(PET)、X線イメージング、超音波イメージング、核医学強調イメージングなど、或いはそれらの組合せが含まれる。イメージング・システム120の種類は変えることができる。表示は一般に、2次元、3次元又は4次元モデルであり、或いは被術者115の中への進入点から心臓内の配置位置までの経路の再構成画像である。
【0013】
イメージング・システム120の一実施形態の例が、米国特許出願公開第2006/0079759号(発明者ヴァイラント等;発明の名称「心臓の解剖学的領域の3Dモデルを整合させる方法及び装置、並びに介在的X線透視システムの投影画像による追跡システム」;公開日2006年4月13日)に記載されており、その記載はその全体を引用によって本書に取り入れる。イメージング・システム120は、被術者115の関心のある解剖学的部分のX線透視画像を生成するように構成されている第1の画像取得システムと、関心のある解剖学的部分の3次元再構成画像又はモデルを生成するように構成されている第2の画像取得システムとを有する。第1及び第2の画像取得システムの両方に対して並びにナビゲーション・システム125に対して共通である解剖学的基準を定義して、ナビゲーション・システム125が、取得された画像の各々と生成された3次元画像又はモデルとを通常のように基準により整合させるように動作できるようにする。
【0014】
図1について更に説明すると、ナビゲーション・システム125は一般に、基準に対するツール105の位置を表す信号(図には破線で示す)を発生するように動作可能である1つ以上のセンサ132を含む。少なくとも1つのセンサ132がツール105に、又はツール105によって支持されている人工弁110に取り付けられる。センサ132の種類として、例えば、無線、電磁、光学等のセンサが含まれるが、センサの種類は変えることができる。ナビゲーション・システム125はまた、イメージング・システム120によって取得された画像に対してセンサ132の位置を整合させるように動作可能である。
【0015】
制御装置130は一般に、メモリ140に記憶されている一連のプログラム可能な命令を実行するように動作可能である処理装置135を含む。メモリ140の種類として、ハードディスク・ドライブ、CD、DVD、メモリ・スティック、又は、コンピュータ読取り可能なプログラム命令を記憶するように動作可能である媒体を持つ他の種類の製品を挙げることができる。制御装置130はイメージング・システム120及びナビゲーション・システム125の両方と並びに表示装置145と通信関係にある。表示装置として、例えば、モニタ(例えば、LCD)、タッチスクリーン、可聴音スピーカ、LEDなどが挙げられる。制御装置130は独立した構成部品であってよく、或いはイメージング・システム120及びナビゲーション・システム125の内の一方と一体化していもよい。
【0016】
上述のシステム100を設けたので、被術者115内に人工弁110を配置する際に用いられるツール105の動きを追跡するための方法200(図2参照)の一実施形態についての一般的な説明を次に行う。ここで、方法200を構成する前述の一連の行為又は段階は順序を変えることができること、方法200は以下の説明における各々の行為の全てを含む必要がないこと、また方法200は以下の説明で開示されていない追加の行為を含むことができることを理解されたい。方法200を構成する以下の行為の1つ以上は、上述のシステム100の処理装置によって実行するためのコンピュータ読取り可能なプログラム可能な命令として表すことができる。
【0017】
次に図2について説明すると、方法200は段階202で開始する。段階205は、ツール105及び人工弁110を通すために被術者115を通る経路についての一連の画像をイメージング・システム120により取得することを含む。画像の数及び種類は変えることができる。段階210は、心臓内に配置するための人工弁110を運ぶツール105を動かすための一連のアプローチ又は経路の内の1つを特定することを含む。
【0018】
図3は、ツール105を通すための「順行性アプローチ」250と呼ばれる第1の実施形態の経路又はアプローチを大まかに示す。順行性アプローチ又は経路250は、下大静脈252及心臓254の室に繋がる相次ぐ静脈の導管を含む。人工弁110を心臓まで運ぶためのツール105は、比較的大きい直径を持つことができる。例えば、ツール105は、約8mmの直径を持つ24−Frの鞘体を含むことができる。従って、経路250を介してのツール105の注入及び誘導は、動脈と比べて、一般に大きさがより大きい静脈に通すことによって、より容易に行うことができる。しかしながら、このアプローチ250の問題は、心臓254の室を通る際に遭遇する障害物を含むことである。順行性アプローチ250の実施形態では更に、右心房256及び左心房258の間に中隔穿刺を生じることを含む。次いで、ツール105及び人工弁110は、僧帽弁260を通って左心室262の中へ、そして最終的には被術者115の心臓254の大動脈弁264へ誘導すべきである。このようなUターン状の移動操作266は、僧帽弁尖に付着する僧帽弁索に損傷を与える可能性を増大させる。僧帽弁索又は僧帽弁尖に何らかの損傷があると、その結果として有害な心事象が生じる虞がある。図3に示されている他の解剖学的構造には、右心室267、肺動脈弁268、三尖弁270、大動脈272、右及び左肺動脈274及び276、上大静脈278、並びに右及び左肺静脈280及び282が含まれ、これらは心臓254を通るツール105を追跡する際に解剖学的ランドマークとして使用することができる。
【0019】
図4は、逆行性アプローチ300と呼ばれる別の実施形態の経路又はアプローチを示す。逆行性アプローチ300の問題は、人工器官110を持つツール105を大腿動脈(図示せず)に通し、次いで大動脈弓(図示せず)に通し、そして大動脈弁264を横切ることである。従って、逆行性アプローチ300を選択する際の限界パラメータは、ツール105及び人工器官110の直径と比較した、心臓254までの経路300内にある大腿動脈及び腸骨血管(図示せず)の直径(例えば、8mmよりも大きい内径)を含む。別の限界パラメータは、経路300に沿った石灰化のレベル(又は直径の減少)を含む。逆行性アプローチ300の別の問題は、脳まで進入する虞のある石灰化部の破片を生成するような接触を避けるように大動脈弓に通す操作を行うために、ツール105及び人工器官110の動きを追跡することを含む。
【0020】
図2に戻って説明すると、段階210の一実施形態は、経皮的処置における経路250及び300の1つ以上、並びに置換すべき欠陥のある弁を特徴付け又は評価することを含む。特徴付けには、取得された画像内で経路250及び300を特定すること、並びにツール105及び人工弁110を心臓254まで移動させるための選択された経路250及び300における石灰化のレベルを測定することが含まれる。ここで図5を参照して説明すると、段階210の一実施形態は、経路250及び300に沿った閉塞又は石灰化のレベルを特定し及び測定する段階305と、測定された閉塞レベルを所定の限界(例えば、閉塞又は開口百分率、直径など)と比較する段階310とを含む。閉塞レベルの測定には、ツール105を心臓254まで移動させるための経路を構成する静脈及び動脈の形態及び寸法を測定することが含まれる。これらの測定値は、ツール105及び人工弁110移動させるための限界パラメータと比較される。段階315は、オペレータによって観察すべき経路250及び30の各々についてのパラメータについて、測定された値を限界と比較して示す表示を提供することを含む。この表示段階315は、全ての限界を満足する経路250又は300を照明又は強調表示し、或いはこの代わりに1つ以上の限界を越える測定されたパラメータを持つ経路250又は300を照明又は強調表示することを含むことができる。図1に戻って説明すると、経路250及び300に沿ったツール105の動きを追跡するためにイメージング・システム120により取得される一連の画像は、変化することができる。一例によれば、一連の画像には、一連の取得されたCT画像から再構成された3次元画像又はモデルが含まれる。この再構成3次元画像を生成するように動作可能であるソフトウエアの一実施形態は、ゼネラル・エレクトリック社によって製造される「INNOVA(登録商標)3D」である。ソフトウエアはまた、石灰化の体積、直径、場所及びレベル、並びに血管(例えば、静脈、動脈など)の一般的形態、又は経路250及び300を含む他の解剖学的構造を測定すると共に、一連の経路250及び300の各々にツール105を通すために限界に対して測定されたパラメータを比較するように動作可能である。
【0021】
ここで図2を参照して説明すると、段階320は、表示装置上に示すために経路250(図3)及び300(図4)についての1つの順序又は系列の再構成された3次元画像又はモデルを特定することを含む。3次元画像又はモデルの各々は、経路250及び300に沿った解剖学的ボリュームの関心のある領域の一部分を表す。解剖学的ボリュームは、心臓254及び/又は周囲の解剖学的器官又は構造又はそれらの組合せの1つ以上の画像を含むことができる。
【0022】
一連の3次元画像又はモデルの一実施形態は、心臓254への進入点からのツール105が通る全ての解剖学的構造の表示図(イラスト)を含む。しかしながら、一連の生成される3次元画像又はモデルはそれよりも多く又は少なくして、ツール105を通すように誘導する際における困難さを増大させる限界により特定された形状及び/又は寸法を持つ或る特定の解剖学的構造を通過させることに関係のあるツール105の監視又は追跡を向上させると共に、心臓254の欠陥のある弁の経皮的置換における所定の段階(例えば、被術者115の中へのツール105の進入、人工弁110の位置決め及び配置、人工弁110の配置についての評価、など)の際にツール105の動き及び人工弁110の配置を追跡するようにすることができる。
【0023】
従って図6に示されるように、逆行性アプローチ又は経路300(図4)を追跡するための一実施形態の一系列400の生成された3次元画像又はモデルは、心臓254の右心房を表す第1のモデル405、心臓254の左心房を表す第2のモデル410、置換すべき心臓254の弁を表す第3のモデル415、及び置換すべき弁の心室を表す第4のモデル420を含む。
【0024】
図7に示されるように、順行性アプローチ又は経路250を追跡するための別の実施形態の一系列425の生成された3次元画像又はモデルでは、その中に含まれる第1のモデル430は3次元であって、腸骨分岐部を表す。第2のモデル435は3次元であって、大動脈弓を表す。第3のモデル440は2次元又は3次元であって、置換すべき弁を表す。この第3のモデル440はまた、置換しようとする弁が位置する心室を表す。
【0025】
図8に示されるように、順行性アプローチ又は経路250(図3)を追跡するための一実施形態の一系列450の生成された3次元画像又はモデルは、被術者115の腸骨動脈分岐部を表す第1のモデル455、大動脈弓を表す第2のモデル460、置換すべき心臓弁を表す第3のモデル465、及び置換すべき心臓弁の対応する心室を表す第4のモデル470を含む。これらのモデル455、460、465及び470の全ては3次元である。
【0026】
これまで特定の実施形態の系列400、425及び450について説明したが、代替の系列では様々な種類(例えば、2次元、3次元、4次元など、又はそれらの組合せ)を含み得ることを理解されたい。
【0027】
図2に戻って説明すると、段階480は、被術者115(図1)にツール105及び人工弁110を通すための選択された経路250及び300(それぞれ図3及び4を参照)に対応する一系列の画像又はモデルを表示することを含む。医師が被術者115の心臓254内の弁の経皮的置換において選択された経路250及び300に沿ってツール105及び人工器官110を動かすとき、システム100は、一系列の画像又はモデルの各々に対して空間的関係でツールの表現を表す表示を生成する。一例では、イメージング・システム120は、系列内の各々の3次元モデル又は画像を、X線透視システムからの対応する解剖学的領域の画像と組み合わせ又は融合させ又は重畳させて、ツール105の表現を系列内の各々のモデル又は画像と重畳させることができるように動作可能であるCTイメージング・システムを含む。ナビゲーション・システム125はツール105及び人工弁110の位置を追跡する。ナビゲーション・システム125は、実施者が一系列の再構成された画像又はモデル内の解剖学的構造の表示図(イラスト)に対する相対的なツール105の動きを正確に追跡するのを可能にする。解剖学的構造は、弁の置換のために選択されたものに対応する経路250及び300内の重要な場所に対応する。
【0028】
一実施形態によれば、系列400、425及び450の画像のいずれかを表示する段階480は、段階240及び245で動いているときのツール105の位置に同時に関連付けられ、その場合、3次元モデルの表示は、ツール105が被術者115の中を動いているときに、ナビゲーション・システム125によって追跡されるツール105の場所に依存する。従って、系列400、425及び450の画像のいずれかを表示する段階480は、ツール105を動かし且つ追跡することと相補的である。例えば、順行性アプローチ250に関連付けられた画像の系列450に従って、段階480は、モデル455(それに対するツール105の表示図を含む)の照明を、ナビゲーション・システム125によって追跡されるようなツール105の限界距離の外側にある系列450の他のモデル460、465及び470に対して相対的に増大させることを含む。従って、技術的効果は、全てのモデルが表示装置上に観察のために同時に表示されるが、モデル460、465及び470の各々の照明を、ツール105の表現がそれと同時に且つそれに対して表示されるときに、他のモデルに対して所定の限界だけ増大させることである。モデル460、465及び470の照明の差は、制御装置130又はイメージング・システム120又はナビゲーション・システム125によって変更することができる。モデル455、460、465及び470の各々の照明を互いに対して増大させることは、それぞれのモデル455、460、465及び470の所定の限界距離内のツール105の動き、又はモデル455、460、465及び470内の解剖学的ランドマークを検出したことに応答して行うことができる。勿論、同様なアプローチを、上記の他の系列400及び425の照明に使用することができる。
【0029】
図9は、前に述べた順行性アプローチ250に関して、表示する段階480がツール105の追跡と同時に遂行され且つ該追跡と関連付けられる別の例を表す概略図である。表示する段階480を順行性アプローチ250に関して説明するが、以下の説明が逆行性アプローチ300や本書に述べていないの他のアプローチにも適用できる得ることを理解されたい。段階502は、被術者115を通る選択された経路又はアプローチ250の方向に従った系列450内のモデル455、460、465及び470の互いに対する空間的配列を含む表示を生成することを含む。段階505は、被術者115内にあって且つ腸骨分岐部を表す第1のモデルの視野又は限界距離内にあるツール105の場所を検出することを含む。検出する段階505に応答して、段階510は、腸骨分岐部を表す第1のモデル455と空間的関係で重畳されたツール105及び/又は人工器官110の場所を同時に表示することを含む。
【0030】
図9について更に説明すると、段階515は、心臓254の右心房256及び左心房258を表す第2のモデル460の視野又は限界距離内にあるツール105及び/又は人工器官110の場所を検出することを含む。検出する段階515に応答して、段階520は、第1のモデル455の表示を停止して、第2のモデル460と重畳されたツール105の表現の表示を開始することを含む。ツール105及び第2のモデル460の重畳された表示は、心臓254の心房から左心室262への中隔穿刺を行う際に医師を誘導するためである。
【0031】
段階525は、心臓254の左心室262を表す第3のモデル465の視野又は限界距離内にあるツール105の場所を検出することを含む。検出する段階525に応答して、段階530は、第2のモデル460によるツール105の表示を停止して、第3のモデル465と空間的関係で重畳されたツール105の表現の表示を開始することを含む。第3のモデル465とツール105の重畳された表示は、医師が、周囲の石灰化部に対して且つ患者の心臓254の短時間の高頻度刺激の間に、病変した弁を人工器官110と置換する際にツール105を動かすための手引きとなる。勿論、上記の段階505、510、515、520、525及び530は、系列450内の他のモデル470に対してツール105の表現を追跡し表示する際にも同様である。図2に戻って説明すると、段階650は方法200の終了である。また、系列400、425及び450は追加のモデルを含むことができることを理解されたい。
【0032】
これまで大動脈弁の経皮的置換に関連して説明したが、本発明が他の弁(例えば、僧帽弁260、三尖弁、肺動脈弁など)の置換又は修復に適用可能であることを理解されたい。例えば、図10に示されているように、僧帽弁260の修復には、順行性アプローチ300のための一系列600の画像又はモデルを特定することを含むことができる。一実施形態の系列600は、右心房256及び左心房258を表す第1のモデル605、並びに心臓254の僧帽弁260及び左心室262の両方を表す第2のモデル615を含む。
【0033】
この代わりに、図11に示されているように、一実施形態の一系列630の画像又はモデルが、冠状静脈洞アプローチに関連付けられる。この画像系列630は、冠状静脈洞(図示せず)を表す第1のモデル635、左及び右心房256及び258を表す第2のモデル640、並びに冠状動脈回旋枝(図示せず)を表す第3のモデル645を含む。図12は、別の実施形態の一系列660の画像を示し、該系列は心室横断アプローチに関連付けられる。この画像系列660は、被術者115の中へのツール105の導入を手引きするために腸骨動脈分岐部を表す第1のモデル665、大動脈弓(図示せず)を表す第2のモデル670、並びにツール105によって担持される人工弁の移動及び固定を手引きするために左心室262及び左心房258を表す第3のモデル675を含む。
【0034】
方法200を順行性アプローチ250及び系列450に関して説明したが、方法200は前に述べた他のアプローチ及び系列の各々、又はそれらの組み合わせ、又は本書で述べていない他のアプローチ又は経路との組合せにも適用可能であることを理解されたい。
【0035】
本明細書は、最良の形態を含めて、発明を開示するため、また当業者が本書に述べた発明を実施し使用することができるようにするために、様々な例を使用した。本書に述べた発明の範囲は特許請求の範囲の記載によって規定されており、当業者によって考えられる他の例を含むことができる。このような他の例は、それらが特許請求の範囲に記載の通りの用語から異なっていない構造的要素を有している場合、又は特許請求の範囲に記載の通りの用語から実質的に差異のない等価の構造的要素を含んでいる場合、特許請求の範囲内にあるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】心臓弁の経皮的置換における患者内の経路を通るツールの動きを追跡するシステムの一実施形態を示す概略図である。
【図2】心臓弁の経皮的置換における患者内の経路を通るツールの動きを追跡する方法の一実施形態を示す概略図である。
【図3】心臓弁の経皮的置換におけるツールの動きを追跡するために、順行性アプローチに対応する経路の少なくとも一部分のモデルの一実施形態を表す概略図である。
【図4】心臓弁の経皮的置換におけるツールの動きを追跡するために、逆行性アプローチに対応する経路のモデルの別の実施形態を表す概略図である。
【図5】心臓弁の経皮的置換においてツールを通す経路を特定する方法の一実施形態の概略図である。
【図6】逆行性アプローチに関連付けられた一系列のモデルの一実施形態を示す概略図である。
【図7】逆行性アプローチに関連付けられた一系列のモデルの別の実施形態を示す概略図である。
【図8】順行性アプローチに関連付けられた一系列のモデルの一実施形態を示す概略図である。
【図9】被術者内の心臓弁の経皮的置換におけるツールの動きの表示を生成する方法の一実施形態を示す概略図である。
【図10】僧帽弁の経皮的修復における順行性アプローチに関連付けられた一系列のモデルの一実施形態を示す概略図である。
【図11】僧帽弁の経皮的修復における順行性アプローチに関連付けられた一系列のモデルの別の実施形態を示す概略図である。
【図12】僧帽弁の経皮的修復における順行性アプローチに関連付けられた一系列のモデルの更に別の実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0037】
100 システム
105 ツール
110 人工弁
115 被術者
120 イメージング・システム
125 ナビゲーション・システム
130 制御装置
132 センサ
135 処理装置
140 メモリ
145 表示装置
200 方法
250 順行性アプローチ
252 下大静脈
254 心臓
256 右心房
258 左心房
260 僧帽弁
262 左心室
264 大動脈弁
266 移動操作
267 右心室
268 肺動脈弁
270 三尖弁
272 大動脈
274 右肺動脈
276 左肺動脈
278 上大静脈
280 右肺静脈
282 左肺静脈
300 逆行性アプローチ
400 系列
405 右心房を表す第1のモデル
410 左心房を表す第2のモデル
420 置換すべき弁の心室を表す第4のモデル
425 系列
430 腸骨動脈分岐部を表す第1のモデル
435 大動脈弓を表す第2のモデル
440 置換しようとする弁が位置する心室を表す第3のモデル
450 系列
455 腸骨動脈分岐部を表す第1のモデル
460 大動脈弓を表す第2のモデル
465 置換すべき心臓弁を表す第3のモデル
470 置換すべき心臓弁の対応する心室を表す第4のモデル
600 系列
605 右心房及び左心房を表す第1のモデル
615 僧帽弁及び左心室を表す第2のモデル
630 系列
635 冠状静脈洞を表す第1のモデル
640 左及び右心房を表す第2のモデル
645 冠状動脈回旋枝を表す第3のモデル
660 系列
665 腸骨動脈分岐部を表す第1のモデル
670 大動脈弓を表す第2のモデル
675 左心室及び左心房を表す第3のモデル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被術者(115)の心臓弁の経皮的置換におけるツール(105)の動きを追跡するように動作可能であるシステム(100)であって、
複数の画像を取得するように動作可能であるイメージング・システム(120)と、
被術者(115)を通るツール(105)の動きを追跡すると共に、前記複数の画像の各々に対して空間的関係で前記ツール(105)の位置の表現を示すように動作可能であるナビゲーション・システム(125)と、
前記イメージング・システム(120)及び前記ナビゲーション・システム(125)と通信関係にある制御装置(130)であって、当該制御装置(130)は、メモリ(140)に記憶されている複数のプログラム可能な命令を実行するように通信する処理装置(135)を含み、前記複数のプログラム可能な命令は、
心臓弁の経皮的置換において被術者(115)の中に前記ツール(105)を動かすための複数の経路(250、300)の内の1つの経路を特定し、
前記複数の経路の内の前記1つの経路を表す一系列のモデル(400)を特定し、
被術者(115)を通る前記ツール(105)の動きを追跡し、
前記系列(400)内のモデル(405、410、415、420)の内の1つのモデルの限界内にある前記ツール(105)の位置を検出し、
前記限界内の前記モデル(405、410、415、420)に対して重畳された前記ツール(105)の表現を含む表示(145)を生成することを含んでいる、当該制御装置(130)と、
を有するシステム(100)。
【請求項2】
前記複数の経路(250、300)の内の1つの経路は逆行性アプローチ(300)であり、また前記逆行性アプローチ(300)に関連付けられたモデル系列(450)が、被術者(115)の腸骨動脈分岐部を表す第1のモデル(455)と、大動脈弓を表す第2のモデル(460)と、置換すべき心臓弁を表す第3のモデル(465)と、置換すべき心臓弁の対応する心室を表す第4のモデル(470)とを含んでおり、前記モデル(455、460、465、470)の全てが3次元モデルである、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記複数の経路(250、300)の内の1つの経路は順行性アプローチ(250)であり、また前記順行性アプローチ(250)に関連付けられたモデル系列(425)が、心臓の右心房を表す第1のモデル(405)と、心臓の左心房を表す第2のモデル(410)と、置換すべき心臓弁を表す第3のモデル(415)と、置換すべき心臓弁の心室を表す第4のモデル(420)とを含んでいる、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記表示(145)を生成する段階(315)は、
前記系列(450)内の第1のモデル(455)の視野内にある前記ツール(105)の位置を検出し、
前記第1のモデル(455)に対して空間的関係で重畳された前記ツール(105)の表現を表示し、
前記系列(450)内の第2のモデル(460)の視野内にある前記ツール(105)の位置を検出し、
前記表示(145)から前記第1のモデルを自動的に除去し、且つ前記第2のモデル(460)に対して空間的関係で前記ツール(105)の表現を自動的に表示すること
を含んでいる、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記表示を生成する段階(315)は更に、
前記系列(450)内の第3のモデル(465)の視野内にある前記ツール(105)の位置を検出する段階と、
前記表示(145)から前記第2のモデル(460)を自動的に除去し、且つ前記第3のモデル(465)に対して空間的関係で前記ツール(105)の表現を自動的に表示する段階と、
を含んでいる、請求項4記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記第1、第2及び第3のモデル(455、460、465)は、互いに対して、選択された経路(250、300)の内の1つの経路に沿った方向に配列されている、請求項5記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記特定する段階は、
前記複数の経路(250、300)の内の少なくとも1つの経路に沿って閉塞のレベルを測定し、
前記ツール(105)を通すために前記閉塞のレベルを所定の限界と比較し、
前記閉塞のレベルが所定の限界を越えている場合に前記ツール(105)を通すために前記複数の経路(250、300)の内の別の経路を選択すること
を含んでいる、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記表示を生成する段階(315)は、更に、
前記系列(450)内の第1のモデル(455)の限界内にある前記ツール(105)の位置を検出し、
前記第1のモデル(455)に対して空間的関係で前記ツール(105)の表現を表示し、
前記系列(450)内の第2のモデル(460)の限界内にある前記ツール(105)の位置を検出し、
前記表示(145)から前記第1のモデル(450)を自動的に除去し、且つ前記第2のモデル(460)に対して空間的関係で前記ツール(105)の表現を自動的に表示すること
を含んでいる、請求項7記載の方法(200)。
【請求項9】
前記表示を生成する段階(315)は更に、
前記系列(450)内の第3のモデル(465)の限界内にある前記ツール(105)の位置を検出する段階と、
前記表示(145)から前記第2のモデル(460)を自動的に除去し、且つ前記第3のモデル(465)に対して空間的関係で前記ツール(105)の表現を自動的に表示する段階と、
を含んでいる、請求項8記載の方法(200)。
【請求項10】
被術者(115)の心臓の弁の経皮的置換におけるツール(105)の動きを追跡するための方法(200)であって、
心臓弁の経皮的置換において被術者(115)の中にツール(105)を動かすための複数の経路(250、300)の内の1つの経路を特定する段階と、
前記複数の経路(250、300)の内の前記1つの経路に関連付けられ且つ前記1つの経路を表す一系列のモデル(400、450)を特定する段階と、
被術者(115)を通る前記ツール(105)の動きを追跡する段階と、
前記系列(400、450)内の前記モデルの内の1つのモデルの限界内にある前記ツール(105)の位置を検出する段階と、
前記限界内の前記モデル(460)に対して空間的関係で重畳された前記ツール(105)の表現を含む表示(145)を生成する段階と、
を有する方法(200)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−237906(P2008−237906A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68636(P2008−68636)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】