説明

心臓血管疾患を診断する方法

個体の心臓血管疾患を診断するための方法であって、個体の試料を用意する工程;該試料中のサイトケラチン−18(CK−18)若しくはその断片及び/又はインターロイキン−1β前駆体(IL−1β前駆体)の量を測定する工程;該試料中のCK−18若しくはその断片及び/又はIL−1β前駆体の量と、心臓血管疾患を患っていない少なくとも1つの個体の参考対照に存在するCK−18若しくはその断片及び/又はIL−1β前駆体の量とを比較する工程;及び該試料中のCK−18若しくはその断片の量が参考対照中のCK−18若しくはその断片の量と比較して増加している場合、及び/又は該試料中のIL−1β前駆体の量が参考対照中のIL−1β前駆体の量と比較して減少している場合には心臓血管疾患と診断する工程を含む前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓血管疾患を診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関(WHO;ジュネーブ)によれば、心臓血管疾患は、毎年、世界中で1,500万人を超える死者の原因である。いくつかの先進国の全死亡数の50%を超え、アフリカ及び西・東南アジアにおいて50%を超える。また、成人における死亡の主要な原因でもある。さらに、多くの心臓血管事象は必ずしも致命的ではないが、正常な日常生活を生きるための能力を損なう場合があり、結果として、社会に莫大に医療費を負担させてしまう。
【0003】
改善された急性及び慢性的な投薬及び外科的処置、並びに生活スタイル及び食事の変化により、過去2、30年と比較して全体の心臓血管疾患の致死率の有意な減少がある。なお、これらの高い事象及び致死率のために、心臓血管疾患は、バイオテクノロジーおよび製薬業界の両方によって莫大な投資の対象となる。
【0004】
しかしながら、心臓血管疾患の効果的な治療及び予防は、適切な薬剤の投与を伴うだけでなく、確実な診断ツールを必要とする。したがって、初期の診断及び予防のための心臓血管疾患の分子マーカーの同定及び使用は、非常に重要である。例えば、心臓トロポニンは、損傷を受けた心筋細胞によって選択的に放出される。この事象の特異性は、急性心臓虚血性障害の診断における改善にとって十分に高い。さらに、医師は、より確実に患者に対するリスク及び予後のシナリオを予測することができる。
【0005】
さらに、アテローム性動脈硬化形成、その進行及び不安定化を指標とする生物学的マーカーについてのサーチは、急性冠不全症候群の臨床設定、及び虚血性事象、例えば脳梗塞に関連した他の臨床的実体において非常に関連性がある。
【0006】
今日、複数の証拠が、アテローム性動脈硬化症は慢性炎症疾患であり、粥腫発生における免疫系の成分と関係していることを示唆している。最近、研究によって、炎症に関与している強力な免疫メディエーターであるCD40及びその対応物であるCD40リガンド(CD40L又はCD154)の関与が特定された。以前に、一般的な炎症マーカー、例えば高感度C−反応性タンパク質(hsCRP)及びインターロイキン−6、並びに血清アミロイドは、冠状動脈性心臓病を有する患者において不利な結果と関連付けられることが示唆された。
【発明の開示】
【0007】
本発明の目的は、個体において心臓血管疾患を診断するための手段及び方法を提供することである。更なる目的は、安定狭心症と不安定狭心症とを区別するための方法である。本発明の別の更なる目的は、心臓血管疾患、特に血栓症に関連した疾患を治療するための手段を提供することである。
【0008】
したがって、本発明は、個体の心臓血管疾患を診断するための方法であって、該方法は、
−個体の試料を用意する工程;
−該試料中のサイトケラチン−18(CK−18)若しくはその断片及び/又はインターロイキン−1β前駆体(IL−1β前駆体)の量を測定する工程;
−該試料中のCK−18若しくはその断片及び/又はIL−1β前駆体の量と、心臓血管疾患を患っていない少なくとも1つの個体の参考対照に存在するCK−18若しくはその断片及び/又はIL−1β前駆体の量とを比較する工程;及び
−該試料中のCK−18若しくはその断片の量が参考対照中のCK−18若しくはその断片の量と比較して増加している場合、及び/又はIL−1β前駆体の量が参考対照中のIL−1β前駆体の量と比較して減少している場合には心臓血管疾患と診断する工程
を含む。
【0009】
さらに、健常な個体の試料と比較して、心臓血管疾患を患っているか又は患っていると疑われる個体の試料中のCK−18又はその断片及びIL−1β前駆体の量は、心臓血管疾患を指示することが見出された。心臓血管疾患を患っている個体の試料中のCK−18又はその断片及びIL−1β前駆体の量は、心臓血管疾患を患っていない健常な個体から得られた試料中の該マーカーの量と比較して、それぞれ、増加し、減少する。
【0010】
局所性及び全身性炎症は、心臓血管疾患、特に急性冠症候群(ACS)、例えば不安定狭心症(UA)及び急性心筋梗塞(AMI)に主要な役割を演じる。種々のデータにより、アポトーシスがアテローム斑の発生及び進行中に主要な事象となることを示している。AMIは、虚血によって誘導される筋細胞壊死の直接的な結果として起こることを明確に示されてはいるが、アポトーシスは、冠状動脈の閉塞後に重要な寄与実体として説明されている。メカニズム的には、粥腫崩壊後の血栓形成は、AMIにおける血管閉塞の主な原因となり、UAにおける流量障害に寄与する。急性経皮冠動脈インターベンション(PCI)は、ACSを有する患者の治療に対する最先端オプションであり、血栓溶解療法よりも高い再潅流率及び良好な結果と関連する。それにも関わらず、PCIは、血栓症及び血栓形成材料を動員するリスクを持ち、末梢の塞栓及び小循環の機能障害を引き起し、心筋救済を制限する場合がある。
【0011】
いくつかの血栓切除デバイスは、臨床領域に導入され、AMIの設定における冠動脈血栓材料の断片化及び除去を可能にする。見込まれる無作為試験において、例えば、X−サイザー血栓切除デバイスは、心外膜流量及びSTセグメント分解を改善することを示している。しかしながら、生存または増加した心筋救済の改善は、これらの試験では示されなかった。生存的な心室機能及び生活の改善における急性血栓切除の効果は、今日まで多施設臨床試験において証明されてはいないが、この技術は、冠状動脈における急性動脈血栓症の部位から血液試料を回収する可能性を提供し、炎症及びアポトーシスに関連することが知られているタンパク質を調査することができる。
【0012】
アポトーシスとは、細胞収縮、膜気泡(blebbing)、染色体凝縮、及びDNA断片化を含む「積極的なに」死んでいく細胞によって示される形態学的変更を意味する。アポトーシス細胞死は、内因性の実行プログラムの発生的に調節された活性化、又は広範囲な外因性の刺激によって開始される死のシグナルの形質導入に起因する。主要な経路は、インターロイキン−1β−変換酵素(ICE)、システインプロテアーゼタンパク質−32様ファミリー(シノラブディス・エレガンス細胞死遺伝子ced−3の遺伝子産物に相同である)に対する受容体の誘因を必要とする。炎症及びアポトーシスと関連することが知られている他のタンパク質には、IL−1β及びIL−1β前駆体(IL−1β)、TNF−α及びTNF−R1/CD120a、CD95及びCD95L/CD178、CD40及びCD40L/CD154が含まれる。さらに、UAを有するタンパク質は、活性化したCD3+細胞、マクロファージ及び内皮細胞由来の可溶性の脱落(shed)膜成分の濃度増加を示し、増加した血管内の末梢アポトーシス代謝回転を示す。これらの脱落膜粒子は、凝血活性が増加することが報告されている。さらに、虚血性心疾患を有する患者は、サイトケラチン18(CK−18)又はその断片を生じること見出され、細胞骨格産物は、アポトーシスを受けている内皮細胞及び心臓微小血管に存在する。
【0013】
これらのマーカーの全ては、刊行物において、冠状動脈性心臓病の正の徴候対象物であることが説明され、p値は、0.04〜0.05の範囲にあることが記載されている。
【0014】
用語「参考対照」とは、本明細書中で使用するとき、好ましくは、分析されるべき固体の試料に匹敵する少なくとも1つの健常な個体から得られる同供給源(例えば、血液、血清など)の試料を意味する。同程度の結果を得るために、参考対照及び個体の試料が同じように得られ、操作され、取り扱われるべきである。参考対照値を得るために健常な個体の数は、少なくとも1つであり、好ましくは少なくとも10、とりわけ少なくとも20であってもよい。しかしながら、この値はまた、少なくとも100、1000又は10000個体から得ることもできる。
【0015】
「量」及びそれと同義に使用される用語「レベル」とは、本発明の文脈において使用されるとき、試料中に存在するマーカーの濃度を意味する。
【0016】
用語「この量が〜と比較して増加する」及び「この量が〜と比較して減少する」とは、本明細書中で使用するとき、分析されるべき試料において測定される量を意味し、対照又は「正常」(=健常)値とは統計的有意性を有して分散し、参考対照の量の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%、最も好ましくは少なくとも200%である。本明細書中で使用するとき、用語「CK−18又はその断片」とは、CK−18及びその特定の断片を指し、それは、例えば、アポトーシス細胞においてサイトケラチン−18のカスパーゼ媒介による下位列によって得られ、該細胞から放出される(例えば、Kramer Gら,Cancer Res.(2004)64:1751−1756を参照されたい)。特定の断片は、ヒトの体内で生理学的又は病理学的プロセスによって産生されるCK−18分解産物として特異的に認識され得るものである。CK−18の特定の断片はまた、インビトロにおいて、例えば、CK−18のプロテアーゼもしくは化学的処理によって、又は(生理学的/病理学的に生じた断片(のさらなる断片化によって)のプロテアーゼもしくは化学的処理によって産生され得る。このようなCK−18断片は、いずれかの場合において、CK−18断片でなければならなず(即ち、CK−18断片として明確に同定され得るように)、少なくとも8アミノ酸残基の長さ、好ましくは少なくとも10アミノ酸の長さ、とりわけ少なくとも15アミノ酸残基の長さでなければならない。これらの断片は、特異的に認識されるべき特徴的(独特な)アミノ酸配列を有しなければならない(又は有するように選択されなければならない)。好ましいCK−18断片は、50〜400アミノ酸残基、好ましくは100〜350アミノ酸残基、とりわけ150〜300アミノ酸残基の長さを有する。CK−18又はその断片は、特異的なポリクローナル又はモノクローナル抗体(他のサイトケラチンなどの他のタンパク質を認識及び交差反応しない)によって検出可能である。CK−18又はその断片を特異的に認識する、かなりの数のこのような抗CK−18抗体は市販されている。このような抗体の例は、DALD後の開裂部位を有するカスパーゼによって開裂されたCK−18断片の配列EDFNLGDALDを認識する抗体MB30である(EP1019438A)。この抗体は、この断片に特異的でもあるが、開裂していないCK−18を認識しない。したがって、CK−18に特異的であるだけでなく、ある種のCK−18断片にも特異的である検出手段(例えば、抗体)が、本発明のCK−18断片を検出するためには好ましい手段である。CK−18のカスパーゼによって開裂した断片は、本発明の特に好ましいCK−18断片である。
【0017】
本発明によれば、「心臓血管疾患を患っていない個体」とは、CK−18(若しくはその断片)、IL−1β前駆体及び/又はカスパーゼ−1(ICE)レベルが健常な個体のものと似ている個体を意味する。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、心臓血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、急性冠症候群、好ましくは不安定狭心症若しくは急性心筋梗塞、安定狭心症、脳梗塞、好ましくは虚血性脳梗塞、炎症性疾患若しくは自己免疫疾患関連アテローム性動脈硬化症又は再狭窄である。
【0019】
用語「心臓血管疾患」とは、本明細書中で使用するとき、心臓及び血管を含む脈管系に影響を及ぼす任意の疾患又は障害を指す。血管疾患又は血管障害には、例えば、アテローム斑の発生に起因した血管内狭窄(狭くする)又は血栓(ブロックする)を含む血管機能不全によって特徴付けられる任意の疾患又は障害、並びにそれからもたらされる疾患及び障害が含まれる。特に好ましい心臓血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、急性冠症候群、好ましくは不安定狭心症若しくは急性心筋梗塞、安定狭心症、脳梗塞、好ましくは虚血性脳梗塞、炎症性疾患若しくは自己免疫疾患関連アテローム性動脈硬化症又は再狭窄から選択される。
【0020】
本発明の別の好ましい態様によれば、試料中のカスパーゼ−1(ICE)量は、追加的に測定され、参考対照に存在するICEの量と比較され、該試料中のICE量が参考対照のICE量と比較して増加している場合には心臓血管疾患であると診断される。
【0021】
CK−18若しくはその断片及び/又はIL−1β前駆体の測定を併用した試料中のICE量の測定は、さらにより正確な診断を可能にする。
【0022】
本発明の別の局面は、安定狭心症と不安定狭心症との間を区別する方法又は安定狭心症及び不安定狭心症を診断する方法、あるいは経皮冠動脈インターベンション後の再狭窄のリスクを評価する方法に関し、該方法は、
−個体の試料を用意する工程;
−該試料中のサイトケラチン−18若しくはその断片(CK−18若しくはその断片)及び/又はインターロイキン−1β前駆体(IL−1β前駆体)の量を測定する工程;
−該試料中のCK−18若しくはその断片及び/又はIL−1β前駆体と、安定狭心症又は不安定狭心症を患っている少なくとも1つの個体の少なくとも1つの参考対照に存在するCK−18若しくはその断片及び/又はIL−1β前駆体の量とを比較する工程;
−不安定狭心症を患っている少なくとも1つの個体の参考対照に存在するCK−18若しくはその断片及び/又はIL−1β前駆体の量と比較して、該試料中のCK−18若しくはその断片の量が減少し、該試料中のIL−1β前駆体の量が増加している場合には、安定狭心症と診断する工程(また、所定のマーカー量が安定狭心症を患っている個体におけるレベルと比較される場合には安定狭心症であると診断することもできる)
を含む。
【0023】
狭心症は、心筋酸素の供給と需要の不均衡によって引き起こされる心筋虚血の結果である。具体的には、需要は、不十分な血液供給により供給を上回る。心臓は、全体重の少ない割合を占めるが、生体の酸素消費の7%を占める。心臓組織代謝は、非常に好気性であり、不十分な血液供給を補うために貯留は非常に僅かである。血液供給は、心筋需要に不十分であるレベルまで減少すると、組織は、急激に低酸素状態となり、毒性細胞代謝物は除去することができない。心筋細胞は、急速に、局所的な微小血管系に残存する酸素供給源を使用し、好気性代謝が続く期間は、動脈閉塞の程度に間接的に比例する。酸素供給が一度枯渇すると、酸素が電子受容体としてもはや利用できないので酸化的リン酸化が持続できず、ピルビン酸塩は、アセチル補酵素Aに変換されず、クエン酸サイクルに入る。心筋代謝は、グリコーゲン及びグルコース貯蔵を用いて嫌気性代謝にスイッチし、ピルビン酸塩は乳酸塩に発酵される。乳酸塩の蓄積は、ACSを有する個体における胸痛の根本原因である。虚血が持続するにつれて、心臓組織は、乳酸塩よりも酸性になり、他の酸性中間体が蓄積し、ATPレベルが減少し、利用可能なエネルギー源が消耗する。心臓組織は、虚血事象の15〜20分後に再潅流されると回復可能である。細胞内グリコーゲン貯蔵の消耗後、細胞は、壊死の特徴を少しずつ示すようになり、それには、ミトコンドリアの膨張及び細胞膜の完全性の喪失が含まれる。再潅流により、これらの損傷した細胞は、恐らくは、イオン平衡を細胞が維持できない結果として死滅する。膜の完全性の喪失は、細胞の細胞質内容物が循環系に放出されてしまう。
【0024】
安定狭心症、不安定狭心症、及び心筋梗塞は、心筋虚血と関連した収縮性胸痛という1つの共通した特徴を共有する。胸痛は、診断のECG変化の有無を問わず、医師による臨床症状の解釈を経て、安定又は不安定として分類される。「安定」又は「不安定」として狭心症の分類は、プラークそれ自体の安定性を指すものではなく、むしろ、胸痛を発揮するのに要求される激しさ(exertion)の程度を指す。最も顕著には、限定的な心筋梗塞以外の場合において、安定又は不安定狭心症(あるいは軽度の心筋梗塞も)としての胸痛の分類は、動脈閉塞の程度を定量可能な血管造影法によってなされないが、むしろ、医師による臨床症状の解釈によってなされる。
【0025】
安定狭心症は、激しさ又はストレスに応じて発生する収縮性胸痛によって特徴付けられ、休息又は舌下のニトログリセリンによって軽減される。安定狭心症を有する患者の冠状血管造影は、通常、少なくとも1つの冠状動脈の50〜70%の閉塞を示す。安定狭心症は、通常、臨床症状及びECG変化の評価によって診断される。安定狭心症の患者は、一時的なSTセグメント異常性を有する場合があるが、安定狭心症と関連したこれらの変化の感度及び特異性は低い。
【0026】
不安定狭心症は、舌下のニトログリセリンによって軽減される安静中の収縮性胸痛によって特徴付けられる。狭心症の胸痛は、通常、舌下のニトログリセリンによって軽減され、この痛みは、通常、30分以内に鎮静化する。不安定狭心症は、安定狭心症とAMIとの間の臨床状態を示し、主に、アテローム性動脈硬化症、冠動脈攣縮又はその後の血栓性閉塞を有する非閉塞性プラークへの出血の重傷度と程度における進行によるものと考えられている。不安定狭心症の患者の冠状血管造影は、通常、少なくとも1つの冠状動脈の90%以上の閉塞を示し、結果として、基底の心筋酸素需要でさえ酸素供給ができなくなる。安定なアテローム斑のゆっくりとした成長又はその後の血栓形成を伴う不安定アテローム斑の破裂は、不安定狭心症を引き起し得る。これらの両方の原因は、結果として、冠状動脈を臨床的に狭くする。不安定狭心症は、通常、アテローム斑破裂、血小板活性化、及び血栓形成と関連する。不安定狭心症は、通常、臨床症状、ECG変化、及び心臓マーカーの変化によって診断される。不安定狭心症の患者に対する治療は、硝酸塩、アスピリンGPI1b/IIIa阻害剤、ヘパリン、及びベータ−ブロッカーを含む。患者はまた、血管形成術及びステントを受ける場合がある。最後に、不安定狭心症の患者は、急性心筋梗塞を発症する危険性がある。
【0027】
したがって、安定狭心症と不安定狭心症との間、場合により、安定狭心症、不安定狭心症及び急性心筋梗塞の間の確実な識別診断を提供するために、該状態の1つを患っていることが疑われる個体から得た試料中のCK−18若しくは及び/又はIL−1β前駆体及び場合によりICEのレベルを測定し、それらの状態の1つを患っている個体のそれぞれのレベルと比較する。
【0028】
安定狭心症を患っている個体におけるCK−18若しくはその断片及び/又はICEのレベルは、不安定狭心症及び急性心筋梗塞を患っている個体において見出されるレベルと比較すると減少している。
【0029】
これとは対照的に、IL−1β前駆体のレベルは、不安定狭心症を患っている個体において見出されるレベルと比較すると増加している。
【0030】
この方法は、個体における安定狭心症と不安定狭心症との間を明確に区別することを可能にするので、得られるデータは、安定狭心症又は不安定狭心症及び急性心筋梗塞を患っている個体の最適かつ適切な治療を設計するのに有用であり得る。
【0031】
安定狭心症と不安定狭心症とを区別するか又は個体において安定狭心症及び不安定狭心症を診断する方法に関連する本発明の好ましい態様によれば、試料中のカスパーゼ−1(ICE)の量は、さらに測定され、参考対照に存在するICE量と比較され、試料中のICE量が不安定狭心症を患っている少なくとも1つの個体の参考対照におけるICE量と比較して減少している場合には安定狭心症と診断される。
【0032】
さらに、安定狭心症と不安定狭心症とを区別するか又は個体における安定狭心症と不安定狭心症を診断する方法に関する本発明に係る方法は、CK−18若しくはその断片及び/又はIL−1β前駆体の量、及びICE量の測定を伴ってもよい。また、単一マーカー:CK−18又はその断片及びIL−1β前駆体;CK−18又はその断片、IL−1β前駆体及びICE;CK−18又はその断片及びICE;IL−1β前駆体前駆体及びICEを組み合わせることも可能である。
【0033】
本発明の好ましい態様によれば、サイトケラチン−18又はその断片、カスパーゼ−1(ICE)及びインターロイキン−1β前駆体(IL−1β前駆体)の量は、免疫学的に、好ましくは、酵素免疫吸着測定法、放射免疫アッセイ又はウェスタンブロットアッセイによって測定される。
【0034】
試料中のCK−18又はその断片、ICE及びIL−1β前駆体のタンパク質レベルは、当該技術分野において知られている任意の適切な方法を用いてアッセイ可能である。例えば、酵素ICEは、その触媒活性に基づくアッセイ(例えば、Thornberry,N.A.et al.(1992)Nature 356,768−74;Nicholson,D.W.et al.(1995)Nature 376,37−43;Tewari,M.et al.(1995)Cell 81,801−9;Fernandes−Alnemri,T.et al.(1996)PNAS USA 93,7464−9;Thornberry,N.A.(1994)Meth.Enzymol.244,615−31)、試料に含まれるタンパク質量の定量に基づくアッセイによって定量化され得る。CK−18又はその断片の量の測定に関しては、例えば、いくつかの免疫学的アッセイは当該技術分野において知られている(例えば、Kramer G.et al.,Cancer Res.(2004)64:1751−1756)。例えば、抗体に基づく技術は、好ましくは本発明の方法における全てのマーカーに用いられ得る。例えば、特異的な認識は、一次抗体(ポリクローナル又はモノクローナル)によって与えられ、二次検出システムは、一次抗体の存在(又は結合)を検出するために用いられる。検出可能な標識は、二次抗体に結合可能であり、例えば、蛍光ラベル、放射性標識又は酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ)があり、定量可能な、例えば着色された産物を生成する。別の適切な方法では、一次抗体それ自体は、検出可能に標識化され得る。結果として、組織切片の免疫組織学的標識が提供される。一態様では、分析のために生物試料(例えば、血液、組織、細胞)から抽出物が与えられる。このような抽出物(例えば、界面活性剤抽出物)は、日常的な免疫ブロット法(Jalkanen et al.,.J Cell.Biol.,101:976−985(1985);Jalkanen et al.,J.Cell.Biol.,105:3087−3096(1987))を用いて、対象とするタンパク質のレベルについてウェスタンブロット又はドット/スロットアッセイに供することができる。
【0035】
他の有用な抗体に基づく方法には、免疫アッセイ、例えば酵素免疫吸着測定法(ELISA)及び放射免疫測定(RIA)が含まれる。例えば、タンパク質特異的なモノクローナル抗体は、免疫吸着剤及び酵素標識プローブとして用いて、対象とするタンパク質を検出及び定量することができる。試料に存在するこのようなタンパク質の量は、直線回帰コンピュータアルゴリズム(Iaco−billi et al.,Breast Cancer Research and Treatment,11:19−30(1988))を用いて、標準調製物に存在する量と比較して計算可能である。別の態様では、対象とするタンパク質に対する2種のモノクローナル抗体を用いることができ、1つは、免疫吸着剤として、他方は、酵素標識プローブとして用いられる。
【0036】
分析されるべき試料は、好ましくは体液、好ましくは血液、より好ましくは血漿又は血清である。
【0037】
本発明に係る全てのマーカーポリペプチドは、(全)血液及び血漿又は血清、好ましくは可溶形態又は可溶化形態で検出され、定量化されてもよい。
【0038】
本発明の好ましい態様によれば、試料は、大腿動脈から得られる。対照血漿試料は、安定狭心症及び不安定狭心症患者の肘から得られる(両方のサンプリング法は末梢血流に相当する)。
【0039】
本発明の別の局面は、心臓血管疾患を診断するか、安定と不安定狭心症とを区別するか若しくは個体における安定及び不安定狭心症を診断するか、又は心臓血管系の血栓を得る個体のリスクを評価するためのキットに関し、該キットは、
−サイトケラチン−18若しくはその断片(CK−18)、カスパーゼ−1(ICE)及び/又はインターロイキン−1β前駆体(IL−1β前駆体)を検出するための手段;及び
−参考対照
を含む。
【0040】
臨床診療において、心臓血管疾患の診断、安定狭心症と不安定狭心症との区別、並びに狭心症の診断は、特に関心があり、これは、医師が、急性心筋梗塞、心室性頻拍症及び線維化のような重篤な心不整脈、又は突然死に至る心停止に感受性である患者のリスクを評価することができるためである。本発明に係る方法及びキットによって得られる結果に基づいて、適切な治療及び/又は外科的介入が適用可能である。また、本発明のキットは、心臓血管系における血栓を得る個体のリスクを評価するために用いてもよい。健常な個体と比較してCK−18又はそれらの断片のレベル上昇は、血栓を得るリスクを指示する。従って、本発明はまた、該リスクを評価する方法に関する。
【0041】
本発明の好ましい態様によれば、該手段は、CK−18又はその断片、ICE及びIL−1β前駆体に指向される抗体を含む。
【0042】
該抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであってもよく、CK−18又はその断片、ICE及びIL−1β前駆体に特異的な抗体の結合の検出を可能にする適切な標識に結合されてもよい。また、CK−18又はその断片、ICE及びIL−1βに結合する抗体に指向する二次抗体を用いることができる。ICEの活性が測定される場合において、ペプチド又はポリペプチド基質は、さらに増加する(例えば、Thornberry,N.A.et al.(1992)Nature 356,768−74;Nicholson,D.W.et al.(1995)Nature 376,37−43;Tewari,M.et al.(1995)Cell 81,801−9;Thornberry,N.A.(1994)Meth.Enzymol.244,615−31)。
【0043】
本発明の別の好ましい態様によれば、参考対照は、心臓血管疾患を患っていない少なくとも1つの個体、又は安定狭心症若しくは不安定狭心症を患っている少なくとも1つの個体から得られる。
【0044】
本発明のキットによって検出されるべき心臓血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、急性冠症候群、好ましくは不安定狭心症若しくは急性心筋梗塞、安定狭心症、脳梗塞、好ましくは虚血性脳梗塞、炎症性疾患若しくは自己免疫疾患関連アテローム性動脈硬化症又は再狭窄であってもよい。
【0045】
本発明の別の局面は、血栓症(例えば、冠状動脈血栓症、深部静脈血栓症、表在性静脈血栓症、門脈の血栓症)及び血栓症関連疾患の治療のための薬剤を製造するためのサイトケラチン−18又はその断片を分解する化合物の使用に関する。驚くべきことに、CK−18又はその断片は、心臓血管疾患を患っている個体の血管で形成される血栓において見出された。適切な低分子カスパーゼにより開裂されたCK−18断片は、血栓において見出される。血栓症及び血栓依存性血管疾患は、全てのヒトの臓器で発生され得て、例えば、慢性血栓肺高血圧症(CT−PH)又は後天性末梢静脈疾患に対する感受性がある。
【0046】
血栓は、血管内の異常な血液凝固体である。血栓は、結果として、血流を閉塞する。西洋における死因の第1位は、血管内の異常な血液凝固の形成であるため、血栓を防止する工程を取ることは健康な人々によって重要である。血栓を発症する危険因子をもつ者にとって、突発的な行動が、脳梗塞、心臓発作、腎不全、肺動脈塞栓などに対して予防するために取らなければならない。
【0047】
血栓は、動脈、静脈又は心房内で形成され得る。血栓は、高圧条件及び高流量条件下で動脈内に形成され、内因性のフィブリンタンパク質鎖によって互いに結合した血小板凝集体から構成されている。静脈内の凝固体は、低流量条件下で形成され、大部分は血小板がほとんどない赤血球から構成され、及び大量の分散したフィブリン鎖を含む。
【0048】
これらの血栓は、血管内で静止したままである場合があるが、凝固体は移動又は閉塞し得る。凝固体が下肢の静脈から肺へ移動すると、結果として、肺動脈血栓及び/又は肺梗塞(肺細胞死)となる。同様に、凝固体が新蔵王又は頸動脈から脳へ移動すると、脳梗塞を引き起し得る。凝固体が冠状動脈を閉塞又はブロックする位置に移動すると、心臓発作(心筋梗塞)が発症し得る。不規則な心臓鼓動(例えば、心房性細動)及び心臓弁膜症(例えば、僧帽弁狭窄症)などのある種の状態は、心房心室拡大及び非効率な心房心室収縮を引き起こす。したがって、脳に移動し、脳梗塞を引き起こす可能性のある心房内で形成されるという凝固体のリスクが増す。
【0049】
血栓症の予防は、心臓血管疾患を有意に減少させるために本質的である。心臓血管疾患は、年に約100万人が死亡するという死因の第1位のままである。これは、年の癌死者の発生率の約2倍である。これらの心臓血管系死亡のうち、冠動脈疾患は、約51%を示し、脳梗塞は、16%を示す。これらの疾患は、全ての心臓血管系死亡において血栓症を伴う。さらに、血栓症は、癌患者の共通の死因である。したがって、心臓血管及び他の疾患に基づく死亡の高発生率を減少させるために、血栓症の予防及び治療を最適化することは最重要となっている。
【0050】
血栓症の症状は、形成した凝固体の局在性に依存している。心臓発作中に、ある場合には冠状動脈に流れる凝固体により、関連した症状の開始は、通常、突然に起こる。関与している冠状動脈が小さい血管であり、その血管が末端でこの凝固体によって閉塞(ブロック)されると、心臓発作は、いずれの症状を全く示さないこともある。しかしながら、凝固体が大きく、左の主要な冠状動脈で突然閉塞すると、左心室への全血液の供給が突然切断され、心臓発作は大規模となり、突然死に至る。左又は右の主要な冠状動脈の分岐が塞栓症によって、又はより共通には、冠状動脈の壁から形成し、酸化されたLDL及びフィブリノーゲンと混合され血管を閉塞する小さな凝固体によって閉塞され得て、これは、粉瘤と呼ばれるものを形成し、関連する冠状動脈の内径を狭める。
【0051】
この閉塞は、多くの場合、突然の心臓発作の古典的な症状:狭心症に関連した胸痛、息切れ、冷たくて湿った汗、冷えた手足、ひどい不安、吐き気、高度の脱力、目眩、集中力の欠如、胸の粗動、及び動悸又は他の不規則な鼓動を引き起こす。心臓発作中に感じる古典的な胸痛は、重く、強烈な、収縮感覚に似ている。この痛みは、胸部、左腕若しくは右腕、両肩、又は顎にも由来する。痛みは、多くの場合、胸部から左下にかけて広がる。しかしながら、痛みの広がりは、胸部から右腕又は顎にも移動する場合がある。持続的な心臓発作と関連した場合、痛みは、心臓発作の1〜3分前というよりはむしろ10〜15分続く傾向がある。
【0052】
閉塞があまり重症ではないか又は傷害された神経分布の場合(例えば、糖尿病性神経障害であるなど)である場合、心臓発作はいずれの症状もなしに発生し得て、正常なECGを有する緊急治療室にも与えられる。この状況では、心臓発作は、血中の正の心筋酵素を特定することによって診断される。古典的な心臓発作症状が現れる場合、例えば、アセチルサリチル酸は、応急処置段階として投与されてもよい。
【0053】
血栓性脳梗塞と関連した症状は、脳梗塞が突然の塞栓症又は漸進的凝固体形成から起こるかどうかに依存して変化する。脳塞栓性脳梗塞では、症状は開始時に急速であり、多くの場合、数秒以内にピークを迎える。犠牲者は発作と、症状の突然の開始により影響を受けた側に頭痛を経験する。脳血栓性脳梗塞では、開始は、数分又は数時間で起こり、場合によっては、脳梗塞は数日又は数週間のステージで進行する。
【0054】
脳梗塞中に発生する症状は、損傷を受けた脳の領域に依存する。例えば、目を補う領域(網膜領域)が関係する場合、患者は、一時的な眼前暗闇及び影が目を被せるという感覚を経験する。大脳が関係する場合、反対側の単不全麻痺、片側不全麻痺、局所的な刺痛、無感覚、片側視野欠損、失語症及び意識消失が起こる場合がある。椎骨脳底領域が関係する場合、患者は、両側の視覚障害(薄暗い、灰色がかった、ぼけ視、又は複視と呼ばれる一時的な全盲)を経験する。椎骨脳底エピソードは、突然の位置変化によって誘導される症状を引き起こすが、頸動脈エピソードは起こらない。内耳又は中耳が関係する場合、目眩、不安定、吐き気、及び嘔吐が起こる。脳幹が関係する場合、患者は、ろれつが回らない、構音障害、不完全失語症、無感覚、衰弱、及び四肢の知覚異常を経験する。姿勢緊張の突然の喪失からの「倒れ」発作は、起源が脳底である脳梗塞の症状である。
【0055】
肺塞栓症又は梗塞と関連した症状は、非特異的であり、多くの場合、頻度及び強度において変化し得る。これは、肺血管閉塞の程度、塞栓が起こる前の心臓の機能強度、及び塞栓の大きさに依存する。小さな塞栓又はミクロ塞栓は無症候性である場合がある。しかしながら、症状が現れる場合には、数分で突然発症する傾向にあり、咳若しくは喘鳴を伴うか又は伴わない突然の息切れ(shortness of breath)又は息切れ(breathlessness)、呼吸促迫、不安、及び不穏が含まれる。多くの場合、肺塞栓症の際、高血圧が肺動脈管構造内にある。これがそのケースである場合、塞栓症が起こると、鈍い胸痛が発生する場合がある。酷い肺塞栓症では、右心不全が腹部及び下肢において体液とともに発症する場合がある。心不全による心拍出量の減少により、頭のふらつき、意識不明、及び発作がある場合がある。
【0056】
血栓症を治療及び/又は予防するために、いくつかの物質を投与することができる。例えば、クマディン(ワルファリン)は、第II、VII、IX及びX因子などのビタミンK依存性血液凝固因子、並びに抗凝固タンパク質の合成を阻害する。血栓症を予防及び治療に用いられる別の薬物は、トロンボキサン合成と干渉することによって血小板凝集を阻害するアセチルサリチル酸である。チクロピジン(Ticlid)は、血小板膜へのフィブリノーゲン結合と干渉することによって血小板凝集を阻害する。チクロピジンは、多くの場合、血栓性脳梗塞の危険性が高く、アスピリンに寛容でない患者において考慮される。ヘパリン(静脈内投与される)は、フィブリノーゲンからフィブリンへの変換を妨げるアンチトロンビンIIIの活性を増加させる。ヘパリンは、胃腸管によって吸収されず、静脈内に投与されなければならない。通常、(例えば、脳梗塞後の)緊急事態においてのみ用いられる。組織プラスミノーゲン因子(t−PA)は、フィブリンを分裂させるプラスミンを活性する。t−PAは血液凝固体を溶解させるために、緊急状態で用いられる。ストレプトキナーゼは、他の組織プラスミノーゲン因子薬物である。これら両方の薬物は、緊急性の血栓状態(例えば、虚血性脳梗塞)において静脈内に投与される。
【0057】
驚くべきことに、血栓はフィブリンを含むだけでなく、サイトケラチン、特にサイトケラチン−18又はその断片を含むことが見出された。サイトケラチンは血栓の形成に関与するので、サイトケラチンを分解する化合物の使用により、単独で又は一定の間隔で血栓溶解治療に関与する他の化合物と併用して血栓を溶解することができる。
【0058】
本発明の好ましい態様によれば、CK−18を分解する(又はCK−18断片をさらに分解する)化合物は、好ましくは下記のリストから選択されるプロテアーゼである。
【0059】
特に好ましい化合物は、プロテアーゼ(EC3.4)、特にアミノペプチダーゼ(EC3.4.11)、ジペプチダーゼ(EC3.4.13)、ジペプチジル−ペプチダーゼ及びトリペプチジル−ペプチダーゼ(EC3.4.14)、ペプチジル−ジペプチダーゼ(EC3.4.15)、セリン型カルボキシペプチダーゼ(EC3.4.16)、メタロカルボキシペプチダーゼ(EC3.4.17)、システイン型カルボキシペプチダーゼ(EC3.4.18)、オメガペプチダーゼ(EC3.4.19)、セリン・エンドペプチダーゼ(EC3.4.21)、システイン・エンドペプチダーゼ(EC3.4.22)、アルパラギン酸エンドペプチダーゼ(EC3.4.23)、メタロエンドペプチダーゼ(EC3.4.24)及びスレオニン・エンドペプチダーゼ(EC3.4.25)である。
【0060】
本発明に従って用いられる好ましいアミノペプチダーゼは、ロイシル・アミノペプチダーゼ(EC3.4.11.1)、膜アラニル・アミノペプチダーゼ(EC3.4.11.2)、シスチニルアミノペプチダーゼ(EC3.4.11.3)、トリペプチドアミノペプチダーゼ(EC3.4.11.4)、プロリル・アミノペプチダーゼ(EC3.4.11.5)、アルギニルアミノペプチダーゼ(EC3.4.11.6)、グルタミル・アミノペプチダーゼ(EC3.4.11.7)、Xaa−Proアミノペプチダーゼ(EC3.4.11.9)、細菌性ロイシル・アミノペプチダーゼ(EC3.4.11.10)、クロストリジアル・アミノペプチダーゼ(EC3.4.11.13)、細胞質アラニル・アミノペプチダーゼ(EC3.4.11.14)、リジル・アミノペプチダーゼ(EC3.4.11.15)、Xaa−Trpアミノペプチダーゼ(EC3.4.11.16)、トリプロファニル・アミノペプチダーゼ(EC3.4.11.17)、メチオニル・アミノペプチダーゼ(EC3.4.11.18)、D−立体特異的アミノペプチダーゼ(EC3.4.11.19)、アミノペプチダーゼEy(EC3.4.11.20)、アスパルチル・アミノペプチダーゼ(EC3.4.11.21)、アミノペプチダーゼI(EC3.4.11.22)及びPepBアミノペプチダーゼ(EC3.4.11.23)からなる群から選択される。
【0061】
本発明に従って用いられる好ましいジペプチダーゼは、Xaa−Hisジペプチダーゼ(EC3.4.13.3)、Xaa−Argジペプチジペプチダーゼ(EC3.4.13.4)、Xaa−メチル−Hisジペプチジペプチダーゼ(EC3.4.13.5)、Glu−Gluジペプチジペプチダーゼ(EC3.4.13.7)、Xaa−Proジペプチジペプチダーゼ(EC3.4.13.9)、Met−Xaaジペプチジペプチダーゼ(EC3.4.13.12)、非立体特異的ジペプチジペプチダーゼ(EC3.4.13.17)、細胞質非特異的ジペプチジペプチダーゼ(EC3.4.13.18)、膜ジペプチジペプチダーゼ(EC3.4.13.19)、b−Ala−Hisジペプチダーゼ(EC3.4.13.20)及びジペプチダーゼE(EC3.4.13.21)からなる群から選択される。
【0062】
本発明に従って用いられる好ましいジペプチジル−ペプチダーゼ及びトリペプチジル−ペプチダーゼは、ジペプチジル−ペプチダーゼI(EC3.4.14.1)、ジペプチジル−ペプチダーゼII(EC3.4.14.2)、ジペプチジル−ペプチダーゼIII(EC3.4.14.4)、ジペプチジル−ペプチダーゼIV(EC3.4.14.5)、ジペプチジル−ジペプチダーゼ(EC3.4.14.6)、トリペプチジル−ペプチダーゼI(EC3.4.14.9)、トリペプチジル−ペプチダーゼII(EC3.4.14.10)及びXaa−Proジペプチジル−ペプチダーゼ(EC3.4.14.11)からなる群から選択される。
【0063】
本発明に従って用いられる好ましいペプチジル−ジペプチダーゼは、ペプチジル−ジペプチダーゼA(EC3.4.15.1)、ペプチジル−ジペプチダーゼB(EC3.4.15.4)及びペプチジル−ジペプチダーゼDcp(EC3.4.15.5)からなる群から選択される。
【0064】
本発明に従って用いられるセリン型カルボキシペプチダーゼは、リソソームPro−Xaaカルボキシペプチダーゼ(EC3.4.16.2)、セリン型D−Ala−D−Alaカルボキシペプチダーゼ(EC3.4.16.4)、カルボキシペプチダーゼC(EC3.4.16.5)及びカルボキシペプチダーゼD(EC3.4.16.6)からなる群から選択される。
【0065】
本発明に従って用いられる好ましいメタロカルボキシペプチダーゼは、カルボキシペプチダーゼA(EC3.4.17.1)、カルボキシペプチダーゼB(EC3.4.17.2)、リジン・カルボキシペプチダーゼ(EC3.4.17.3)、Gly−Xaaカルボキシペプチダーゼ(EC3.4.17.4)、アラニン・カルボキシペプチダーゼ(EC3.4.17.6)、ムラモイルペンタペプチダーゼ・カルボキシペプチダーゼ(EC3.4.17.8)、カルボキシペプチダーゼE(EC3.4.17.10)、グルタミン酸塩カルボキシペプチダーゼ(EC3.4.17.11)、カルボキシペプチダーゼM(EC3.4.17.12)、ムラモイルテトラペプチド・カルボキシペプチダーゼ(EC3.4.17.13)、亜鉛D−Ala−D−Alaカルボキシペプチダーゼ(EC3.4.17.14)、カルボキシペプチダーゼA2(EC3.4.17.15)、膜Pro−Xaaカルボキシペプチダーゼ(EC3.4.17.16)、チューブリニル−Tyrカルボキシペプチダーゼ(EC3.4.17.17)、カルボキシペプチダーゼT(EC3.4.17.18)、カルボキシペプチダーゼTaq(EC3.4.17.19)、カルボキシペプチダーゼU(EC3.4.17.20)、グルタミン酸塩カルボキシペプチダーゼII(EC3.4.17.21)及びメタロカルボキシペプチダーゼD(EC3.4.17.22)からなる群から選択される。
【0066】
本発明に従って用いられる好ましいシステイン型カルボキシペプチダーゼは、カテプシンX(EC3.4.18.1)である。
【0067】
本発明に従って用いられる好ましいオメガペプチダーゼは、アシルアミノアシル−ペプチド(EC3.4.19.1)、ペプチジル−グリシンアミダーゼ(EC3.4.19.2)、ピログルタミル−ペプチダーゼI(EC3.4.19.3)、b−アスパルチル−ペプチダーゼ(EC3.4.19.5)、ピログルタミル−ペプチダーゼII(EC3.4.19.6)、N−ホルミルメチオニル−ペプチダーゼ(EC3.4.19.7)、g−グルタミルヒドラーゼ(EC3.4.19.9)、g−D−グルタミル−メソ−ジアミノピメレート・ペプチダーゼI(EC3.4.19.11)及びユビキチニルヒドロラーゼ1(EC3.4.19.12)からなる群から選択される。
【0068】
本発明に従って用いられる好ましいセリン・エンドペプチダーゼは、キモトリプシン(EC3.4.21.1)、キモトリプシンC(EC3.4.21.2)、メトリジン(EC3.4.21.3)、トリプシン(EC3.4.21.4)、トロンビン(EC3.4.21.5)、血液凝固因子Xa(EC3.4.21.6)、プラスミン(EC3.4.21.7)、エンテロペプチダーゼ(EC3.4.21.9)、アクロシン(EC3.4.21.10)、a−溶解エンドペプチダーゼ(EC3.4.21.12)、グルタミル・エンドペプチダーゼ(EC3.4.21.19)、カテプシンG(EC3.4.21.20)、血液凝固因子VIla(EC3.4.21.21)、血液凝固因子IXa(EC3.4.21.22)、ククミシン(EC3.4.21.25)、プロリル・オリゴペプチダーゼ(EC3.4.21.26)、血液凝固因子XIa(EC3.4.21.27)、ブラキウリン(EC3.4.21.32)、血漿カリクレイン(EC3.4.21.34)、組織カリクレイン(EC3.4.21.35)、膵エラスターゼ(EC3.4.21.36)、白血球エラスターゼ(EC3.4.21.37)、血液凝固因子XIIa(EC3.4.21.38)、キマーゼ(EC3.4.21.39)、補体サブコンポーネントC(EC3.4.21.41)、補体サブコンポーネントC(EC3.4.21.42)、古典的−補体−経路C3/C5転換酵素(EC3.4.21.43)、補体因子I(EC3.4.21.45)、補体因子D(EC3.4.21.46)、代替−補体−経路C3/C5転換酵素(EC3.4.21.47)、セレビジン(EC3.4.21.48)、ヒポデルミンC(EC3.4.21.49)、リジル・エンドペプチダーゼ(EC3.4.21.50)、エンドペプチダーゼLa(EC3.4.21.53)、g−レニン(EC3.4.21.54)、ベノンビンAB(EC3.4.21.55)、ロイシル・エンドペプチダーゼ(EC3.4.21.57)、トリプターゼ(EC3.4.21.59)、スクテラリン(EC3.4.21.60)、ケキシン(EC3.4.21.61)、サブチリシン(EC3.4.21.62)、オリジン(EC3.4.21.63)、エンドペプチダーゼK(EC3.4.21.64)、サーモミコリン(EC3.4.21.65)、テルミターゼ(EC3.4.21.66)、エンドペプチダーゼSo(EC3.4.21.67)、t−プラスミノーゲンアクチベータ(EC3.4.21.68)、プロテインC(活性化)(EC3.4.21.69)、膵エンドペプチダーゼE(EC3.4.21.70)、膵エラスターゼII(EC3.4.21.71)、IgA−特異的セリンエンドペプチダーゼ(EC3.4.21.72)、u−プラスミノーゲンアクチベータ(EC3.4.21.73)、ベノンビンA(EC3.4.21.74)、フリン(EC3.4.21.75)、ミエロブラスチン(EC3.4.21.76)、セメノゲラーゼ(EC3.4.21.77)、グランザイムA(EC3.4.21.78)、グランザイムB(EC3.4.21.79)、ストレプトグリシンA(EC3.4.21.80)、ストレプトグリシンB(EC3.4.21.81)、グルタミル・エンドペプチダーゼII(EC3.4.21.82)、オリゴペプチダーゼB(EC3.4.21.83)、リムルス凝固因子(EC3.4.21.84)、リムルス凝固因子(EC3.4.21.85)、リムルス凝固酵素(EC3.4.21.86)、オムプチン(EC3.4.21.87)、リプレッサーLexA(EC3.4.21.88)、シグナル・ペプチダーゼI(EC3.4.21.89)、トガビリン(EC3.4.21.90)、フラビビリン(EC3.4.21.91)、エンドペプチダーゼCIp(EC3.4.21.92)、タンパク質変換酵素1(EC3.4.21.93)、プロタンパク質変換酵素2(EC3.4.21.94)、ヘビ毒因子Vアクチベータ(EC3.4.21.95)、ラクトセピン(EC3.4.21.96)、アセンブリン(EC3.4.21.97)、ヘパシビリン(EC3.4.21.98)、スペルモシン(EC3.4.21.99)、シュードモナリシン(EC3.4.21.100)、キサントモナリシン(EC3.4.21.101)、C−末端プロセッシングペプチダーゼ(EC3.4.21.102)、フィサロリシン(EC3.4.21.103)、マンナン結合レクチン関連セリンプロテアーゼ−2(EC3.4.21.104)及びロンボイドプロテアーゼ(EC3.4.21.105)からなる群から選択される。
【0069】
本発明に従って用いられる好ましいシステインエンドペプチダーゼは、カテプシンB (EC3.4.22.1)、パパイン(EC3.4.22.2)、フィカイン(EC3.4.22.3)、キモパパイン(EC3.4.22.6)、アスクレパイン(EC3.4.22.7)、クロストリパイン(EC3.4.22.8)、ストレプトパイン(EC3.4.22.10)、アクチン−イダイン(EC3.4.22.14)、カテプシンL(EC3.4.22.15)、カテプシンH(EC3.4.22.16)、カテプシンT(EC3.4.22.24)、グリシル・エンドペプチダーゼ(EC3.4.22.25)、癌凝固促進剤(EC3.4.22.26)、カテプシンS(EC3.4.22.27)、ピコルナイン3C(EC3.4.22.28)、ピコルナイン2A(EC3.4.22.29)、カリカイン(EC3.4.22.30)、アナナイン(EC3.4.22.31)、ステム・ブロメライン(EC3.4.22.32)、フルーツ・ブロメライン(EC3.4.22.33)、レグマイン(EC3.4.22.34)、ヒストリサイン(EC 3.4.22.35)、カスパーゼ−1(EC3.4.22.36)、ギンギパインR(EC3.4.22.37)、カテプシンK(EC3.4.22.38)、アデナイン(EC3.4.22.39)、ブレオマイシン・ヒドラーゼ(EC3.4.22.40)、カテプシンF(EC3.4.22.41)、カテプシンO(EC3.4.22.42)、カテプシンV(EC3.4.22.43)、核封入−aエンドペプチダーゼ(EC3.4.22.44)、ヘルパー成分プロテアーゼ(EC3.4.22.45)、L−ペプチダーゼ(EC3.4.22.46)、ギンギパインK(EC3.4.22.47)、スタホパイン(EC3.4.22.48)、セパラーゼ(EC3.4.22.49)、V−cathエンドペプチダーゼ(EC3.4.22.50)、クルジパイン(EC3.4.22.51)、カルパイン−1(EC3.4.22.52)及びカルパイン−2(EC3.4.22.53)からなる群から選択される。
【0070】
本発明に従って用いられる好ましいアルパラギン酸エンドペプチダーゼは、ペプシンA(EC3.4.23.1)、ペプシンB(EC3.4.23.2)、ガストリクシン(EC3.4.23.3)、キモシン(EC3.4.23.4)、カテプシンD(EC3.4.23.5)、ネペンテシン(EC3.4.23.12)、レニン(EC3.4.23.15)、HIV−Iレトロペプシン(EC3.4.23.16)、Pro−オピオメラノコルチン変更酵素(EC3.4.23.17)、アスペルギロペプシンI(EC3.4.23.18)、アスペルギロペプシンII(EC3.4.23.19)、ペニシロペプシン(EC3.4.23.20)、リゾプスペプシン(EC3.4.23.21)、エンドチアペプシン(EC3.4.23.22)、ムコルペプシン(EC3.4.23.23)、カンジダペプシン(EC3.4.23.24)、サッカロペプシン(EC3.4.23.25)、ロドトルラペプシン(EC3.4.23.26)、アクロシリンドペプシン(EC3.4.23.28)、ポリポロペプシン(EC3.4.23.29)、ピクノポロペプシン(EC3.4.23.30)、スキタリドペプシンA(EC3.4.23.31)、スキタリドペプシンB(EC3.4.23.32)、カテプシンE(EC3.4.23.34)、バリエルペプシン(EC3.4.23.35)、シグナル・ペプチダーゼII(EC3.4.23.36)、プラスメプシンI(EC3.4.23.38)、プラスメプシンII(EC3.4.23.39)、フィテプシン(EC3.4.23.40)、ヤプシン1(EC3.4.23.41)、テェロモプシン(EC3.4.23.42)、プレピリンペプチダーゼ(EC3.4.23.43)、ノダウイルス・エンドペプチダーゼ(EC3.4.23.44)、メマプシン1(EC3.4.23.45)、メマプシン2(EC3.4.23.46)、HIV−2レトロペプシン(EC3.4.23.47)及びプラスミノーゲンアクチベータPIa(EC3.4.23.48)からなる群から選択される。
【0071】
本発明に従って用いられる好ましいメタロエンドペプチダーゼは、アトロリシンA(EC3.4.24.1)、微生物コラゲナーゼ(EC3.4.24.3)、ロイコリジン(EC3.4.24.6)、間質コラゲナーゼ(EC3.4.24.7)、ネプリリジン(EC3.4.24.11)、エンベリジン(EC3.4.24.12)、IgA特異的メタロエンドペプチダーゼ(EC3.4.24.13)、プロコラーゲンN−エンドペプチダーゼ(EC3.4.24.14)、チメットオリゴペプチダーゼ(EC3.4.24.15)、ニューロリジン(EC3.4.24.16)、ストロメリジン1(EC3.4.24.17)、メプリンA(EC3.4.24.18)、プロコラーゲンC−エンドペプチダーゼ(EC3.4.24.19)、ペプチジル−Lysメタロエンドペプチダーゼ(EC3.4.24.20)、アスタシン(EC3.4.24.21)、ストロメリジン2(EC3.4.24.22)、マトリリジン(EC3.4.24.23)、ゼラチナーゼA(EC3.4.24.24)、ビブリオリジン(EC3.4.24.25)、シュードリジン(EC3.4.24.26)、テルモリジン(EC3.4.24.27)、バチロリジン(EC3.4.24.28)、アウレオリジン(EC3.4.24.29)、コッコロリジン(EC3.4.24.30)、ミコリジン(EC3.4.24.31)、b−溶解メタロエンドペプチダーゼ(EC3.4.24.32)、ペプチジル−Aspメタロエンドペプチダーゼ(EC3.4.24.33)、好中球コラゲナーゼ(EC3.4.24.34)、ゲラチナーゼB(EC3.4.24.35)、レイシュマノリジン(EC3.4.24.36)、サッカロリジン(EC3.4.24.37)、ガメトリジン(EC3.4.24.38)、デューテロリジン(EC3.4.24.39)、セルラリジン(EC3.4.24.40)、アトロリジンB(EC3.4.24.41)、アトロリジンC(EC3.4.24.42)、アトロキサーゼ(EC3.4.24.43)、アトロリジンE(EC3.4.24.44)、アトロリジンF(EC3.4.24.45)、アダマリジン(EC3.4.24.46)、ホルリリジン(EC3.4.24.47)、ルベルリジン(EC3.4.24.48)、ボトロパシン(EC3.4.24.49)、ボトロパシン(EC3.4.24.50)、オフィオリジン(EC3.4.24.51)、トリメレリジンI(EC3.4.24.52)、トリメレリジンII(EC3.4.24.53)、ムクロリジン(EC3.4.24.54)、ピトリリジン(EC3.4.24.55)、インスリジン(EC3.4.24.56)、O−シアロ糖タンパク質エンドペプチダーゼ(EC3.4.24.57)、ルッセルリジン(EC3.4.24.58)、ミトコンドリア中間ペプチダーゼ(EC3.4.24.59)、ダクチリジン(EC3.4.24.60)、ナルジリジン(EC3.4.24.61)、マグノリジン(EC3.4.24.62)、メプリンB(EC3.4.24.63)、ミトコンドリアプロセッシングペプチダーゼ(EC3.4.24.64)、マクロファージエラスターゼ(EC3.4.24.65)、コリオリジンL(EC3.4.24.66)、コリオリジンH(EC3.4.24.67)、テントキシリジン(EC3.4.24.68)、ボントキシリジン(EC3.4.24.69)、オリゴペプチダーゼA(EC3.4.24.70)、エンドセリン変換酵素(EC3.4.24.71)、フィブロラーゼ(EC3.4.24.72)、ジャラハギン(EC3.4.24.73)、フラギリジン(EC3.4.24.74)、リソスタフィン(EC3.4.24.75)、フラバスタシン(EC3.4.24.76)、スナパリジン(EC3.4.24.77)、gprエンドペプチダーゼ(EC3.4.24.78)、パッパラリジン−1(EC3.4.24.79)、膜型マトリックスメタロプロテイナーゼ−1(EC3.4.24.80),ADAMlOエンドペプチダーゼ(EC3.4.24.81)、ADAMTS−4エンドペプチダーゼ(EC3.4.24.82)、炭疽菌致死因子エンドペプチダーゼ(EC3.4.24.83)、Ste24エンドペプチダーゼ(EC3.4.24.84)、S2Pエンドペプチダーゼ(EC3.4.24.85)及びADAM17エンドペプチダーゼ(EC3.4.24.86)からなる群から選択される。
【0072】
本発明に従って用いられる好ましいスレオニンエンドペプチダーゼは、プロテアソーム・エンドペプチダーゼ複合体(EC3.5.25.1)である。
【0073】
CK−18又はその断片の分解に対する特に好ましいプロテアソームは、カリクレイン8である(Santin A.D.et al(2004),Ganecol.Oncol.94:283−288を参照されたい)。より具体的には、カリクレイン7及び8並びに肥満細胞キマーゼは、本発明に従って用いられるべき好ましいプロテアーゼである。
【0074】
本発明の好ましい態様に従って、薬剤は、さらに、ワルファリン、アセチルサリチル酸、チクロピジン、ヘパリン、組織プラスミノーゲン因子(t−PA)、ストレプトキナーゼ、及び/又はウロキナーゼを含む。
【0075】
本発明は、下記の図面及び実施例に例証されるが、それらに限定されない。
【実施例】
【0076】
本実施例では、AMIにおける炎症及びアポトーシス特異的な活性経路と関連することが知られているタンパク質の発現を調査した。AMIを患っている患者における冠状動脈系で得られた血漿中の該タンパク質の濃度を測定し、全身の血液レベルと比較した。UA及び安定狭心症(SA)と診断された患者は、非無作為的比較試験において対照として使用した。さらに、インビボで得られた急性冠状動脈血栓を免疫組織化学によって分析した。結果は、SA及びUAと比べると、AMIにおけるアポトーシス特異的なICE及びカスパーゼ依存性開裂産物CK−18の濃度増加を証明している。
【0077】
全身性炎症及びアポトーシス特異的活性化は、急性心筋梗塞(AMI)を含む急性冠状動脈症候群(ACS)において主要な役割を果たす。血栓切除デバイスは、臨床領域に最近導入され、AMI開始の冠状動脈内の血栓性物質の除去を可能にした。この技術は、独特の可能性を提供し、炎症及びアポトーシス特異的タンパク質を比較するために、閉塞した冠状動脈及び大腿動脈で血液及び血栓を回収する。安定狭心症(SA)及び不安定狭心症(UA)を有する患者は、対照群として採用された。
【0078】
患者及び臨床的特徴
緊急性冠状動脈血管造影を受けている40人の一貫した患者が試験に含まれ、下記の基準を満たす場合:1)冠状動脈の血管造影時における胸痛、2)2以上の胸部誘導における≧2mmの新規ST部分の上昇、又は冠状動脈血管造影の20分以内に観察される1を超える水平面誘導における≧1mmの新規ST部分の上昇、3)X−サイザー血栓切除に適した冠状動脈構造(anatomy)、4)血栓治療なし、5)血栓切除の成功を指示するX−サイザーフィルター及びボトル単位における視認できる血栓材料、及び6)同意書。X−サイザー使用のための基準は、脈管径≧3mm、各小孔の50mm以内の血栓と思わせる大きな内径コントラスト欠陥であり、血管造影ガイドワイヤーの通過後のTIMI0−1フローを有し、重大な血管のねじれ、硬化又は困難な血管アクセスはなかった。
【0079】
さらに、狭心症胸痛の評価のための施設に収容された80人の一貫した患者は、冠状動脈血管造影を受け、対照として採用された。SA(n=40)は、休息、ニトログリセリン投与又はそれらの両方によって軽減した典型的な労作時胸痛狭心症によって定義され、運動ECGストレス試験に対するポジティブな応答、カテーテル化での≧1の冠状動脈内の≧50%の直径の狭窄があった。UAを有する患者(n=40)は、Braunwaldの基準に従って定義された。UAのIIIB類を有する24人全ての患者は、診断的ST部分変化、T波倒置又はそれらの両方を有していた。この試験に含まれる患者は、臨床履歴によって定義されるように、進行中の全身又は心臓の炎症プロセスの証拠を有していなかった。表1は、人口学的及び基準臨床的特性を概説する。
【0080】
【表1】

【0081】
試料の回収及び処理
患者は、活性化した凝集時間≧300秒と250mgのアスピリンでヘパリン化された。全血液試料は、大腿動脈からクエン酸塩−バキュテイイナー(vacutainer)に回収され、即座に遠心分離(1300×g、4℃、10分)、内部対照として、閉塞した冠状動脈から直接得た血液試料を用いた。血小板が少ない血漿をアッセイまで−80℃で凍結した。X−サイザー血栓切除カテーテルシステム(EndiCOR Medical Inc)は、手持ちコントロールモジュールに連結した二重内腔カテーテルシャフトからなる。内側の内腔は、外側の内腔を介した吸引に加えて、血栓上で吸引増加を有する約2,100rpmで回転するらせんカッターを含む(図1を参照されたい)。
【0082】
真空ガラスボトルの数センチ前で、血栓物質及びプラーク粒子が捕捉される小さなフィルターユニットに吸引物を通過させ、血液は、ヘパリン化したガラスボトルに吸引される。血液をクエン酸塩−バキュテイナーに即座に移し、上述したように遠心分離した。フィルターユニットに捕捉された血栓材料は、7.5%の緩衝化したホルマリン中で一晩固定し、パラフィンに包埋し、連続的な3μmのマイクロトーム切片を行った。上述したように、真空内腔によって吸収された血液をクエン酸バキュテイナー及び血液凝固剤に即座に移した。試料を−80℃で即座に凍結した。
【0083】
可溶性IL−1βp、IL−1β、TNF−α、TNF−R1、CD40、及びCD40Lの定量化
BenderMedSystems(Austria)及びMBL International(USA)から購入したELISAによってタンパク質濃度を測定した。TNF−αレベルは、高感度ELISA(BenderMedSystems、Austria)によって検出した。製造業者の指示書に従ってアッセイを行った。簡潔に言うと、プレートは、供給された被覆用抗体で前被覆又は被覆され、シールされ、一晩4℃でインキュベートされた。プレートを洗浄(0.5mL Tween 20及び1L PBS)し、アッセイバッファー(5g;BSA;0.5ml Tween 20及び1L PBS)で2時間室温でブロックした。次に、再度洗浄し、ビオチン結合体を各ウェルに添加した。さらに、プレートを2時間インキュベートし、洗浄し、ストレプトアビジン−セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)/結合体とともにインキュベートした。1時間の処理及び追加の洗浄工程後、TMB基質溶液(Sigma−Aldrich,St.Louis,MI,USA)を添加した。発色が見られたとき、1N硫酸で反応を停止させた。プレートをWallac Multilabelカウンター1420(PerkinElmer,USA)上で450nmで読み込んだ。
【0084】
可溶性ICEの定量化
BenderMedSystems(Austria)から提供される市販のELISAを用いて、ICEを測定した。ICE ELISAは、p45前駆体及び酵素的に活性なp10:p20複合体の両方を検出する。ICEとその前駆体基質との間の相互作用は、細胞内で専ら起こる。試料及び標準を提供されたアッセイ希釈剤で希釈した。プレートを2時間インキュベートし、3回洗浄した。二次抗体を有する別のインキュベーション及び洗浄工程後、HRP結合した検出抗体を添加した。回転セット上でプレートお30分間インキュベートした。次に、それらを空にし、洗浄後、TMB基質溶液(Sigma−Aldrich)を添加した。着色反応を1N硫酸で停止させ、波長450nmでWallac Multilabelカウンター1420(PerkinElmer)上で測定した。
【0085】
サイトケラチン−18 M30−ネオ−エピトープの定量化
循環CK−18 M30−ネオ−エピトープは、PEVIVA AB(Bromma,Sweden)から購入したELISAによって測定した。このELISAは、捕捉体としてCK−18の238−396断片上のエピトープを認識するモノクローナル抗体、及び検出体としてHRP結合M30を使用する。M30抗原レベルは、ユニット/Lで表される。1ユニットは、製造業者に従って、M30認識モチーフを含む合成されたペプチドの1.24pmolに対応する。ELISAの感度は30U/Lである。アッセイ内及びアッセイ間のCK−18 ELISAの変動係数は、それぞれ0.7〜5.8%及び2.8〜4.8%であった。各試料のタンパク質量は、CK−18ネオエピトープM30の既知レベルに対して構築した光学密度の標準曲線に従って計算した。(Leers MP, Kolgen W,Bjorklund V,et al.,J Pathol 1999;187(5):567−72)
【0086】
免疫組織化学
アポトーシスの検出に関して、M30−ネオ−エピトープ25に対するモノクローナルマウス抗体を用いた。AMIを有する患者からの新鮮な血栓を7.5%の緩衝化したホルマリン中で固定し、腹ファインに包埋した。連続的な3μm切片をヘマトキシリン及び酸性フクシンオレンジG(トリクローム染色)で染色した。免疫染色に関して、クエン酸塩緩衝液中でのマイクロ波(2×5分、600W)の前処理を適用した。非特異的な染色を避けるために、試料を5%BSA(Sigma−Aldrich/トリス緩衝化生理食塩水(TBS))で30分間処理した。その後、スライドを一次抗体(1:50、抗M30抗体、Roche、Germany)で一晩室温でインキュベートした。これは、ビオチン標識したマウス抗体(1:100、Vector Laboratories,Bulingam,CA,USA)で1時間インキュベートし、アルカリホスファターゼ結合ストレプトアビジン−AP/10%ヒト血清(1:100、Dako、Denmark)によって検出した。視覚化は、ファーストレッド(Sigma,USA)で達成した。ネガティブ対照については、一次抗体は、無関係なマウスIgGによって置き換えた。
【0087】
統計分析
結果は、他に言及がなければ、平均±SEMとして提示される。相対的に小さな試料サイズにより、Mann−Whitney U試験は、有意差を計算するために用いた。p値0.05は、有意であると考えられた。
【0088】
結果
患者の人口学的特徴及びいくつかの基準の特徴を表1に示す。SA及びUS試験群では、同様の数の患者が心筋梗塞または従来の冠状動脈インターベンション(冠動脈バイパス移植術及び経皮経管冠動脈形成術)の病歴を有する。冠状動脈疾患のための確立した危険因子及び血管造影所見は、両グループともに同じであった。
【0089】
AMI群は40人の患者を含み、男性が28人(70%)、女性が12人(30%)であった。平均年齢は、59.3歳であった。30%の患者は、PCI又はバイパス外科処置によって以前に血管再開通術治療を受けた。糖尿病である本試験の9人(22.5%)の患者、25人(62.5%)の高血圧患者、及び21人(52.5%)が現在喫煙者であった。コレステロールの平均レベルは、206.3mg/dL(ULN=199mg/mL)であり、トリグリセリドは、204.6mg/dL(ULN=172mg/dL)であった。C反応性タンパク質の平均レベルは、全身性炎症プロセスを指示する3.6mg/dL(ULN=1mg/dL)であった。19人(47.5%)が2つ又は3つの血管疾患を受けた。唯一1人の患者では、左主幹動脈が関係した。半分を超える患者(52.5%)は、心エコー検査によって特定された左心室機能の減少を示した。
【0090】
炎症及びアポトーシス特異的タンパク質
全身性炎症応答症候群がSA及びUAと比較してAMI部位で模倣されるかどうかを調査するために、血漿試料をX−サイザーによって得て、評価した。血漿試料は、内部対象として使用されるAMIを患っている患者における大腿動脈から得た。炎症性サイトカインの誘導体(IL−1βp、IL−1β、TNF−α、TNF−R1、sCD40及びCD40L)及びそれらの有意性を表2に示した。
【0091】
【表2】

【0092】
可溶性ICE及びCK−18
図1に示されるように、可溶性ICEの平均血漿レベルは、SAでは68.6±20.2、UAでは81.5±24.3、AMI大腿(周囲)では96±27.1、及びAMI冠状動脈試料では282.2±180であった。このデータは、全身の血液レベルならびにSA及びUAと比較して、心筋梗塞の部位から誘導された試料におけるICE濃度の有意な増加を証明する(SA対UA p=0.023、UA対AMI周辺 p=0.022、及びAMI周囲対AMI冠状動脈 p<0.001)。
【0093】
図2に示した結果は、周囲と比較して、心筋梗塞の部位から誘導した血漿のCK−18−M30ネオエピトープの濃度における顕著な増加を示す(411±15.3対336.8±9.9、p=0.001)。さらに有意な差は、AMI周囲及びUA(336.8±9.9対255±5、p<0.001)、並びにUA及びSA(255.5±8.9対232.4±4.9、p=0.027)の間で見られた。
【0094】
心筋梗塞を引き起こす血栓におけるCK−18の検出
血栓切除デバイスによって回収した血栓を免疫組織化学並びに日常的なヘマトキシリン−エオシン(HE)及び酸性フクシンオレンジG染色に供した。図3(A、B、C、D)は、急性心筋虚血を引き起こす代表的な血栓(n=8)を示す。パネル(A)は、HE染色を示し、更なる免疫組織化学において、フィブリンだけでなく有意な量のマイクロフィラメントCK−18からなることが特定された淡色領域を含む。さらに、分散した白血球及び赤血球を観察することができる。血栓の中心部分における免疫組織染色により、CK−18陽性領域を検出することができ(パネルC)、フィブリン沈殿に富んだ領域と主に対応している(酸性フクシンオレンジG染色、パネルBを参照されたい)。パネルDは、M30に対する非特異的な対照染色を示す。末梢血軟膜を内部対照として使用した。
【0095】
検討
本実施例は、カスパーゼファミリーのメンバーであるICEが、SAと比較して、AMIを患っている患者における急性冠状血栓症の部位で顕著に増加し、その周囲及びUAではほんの中程度であることを示す。興味深いことに、AMIの患者では、この所見は、特異的なカスパーゼ活性の産物である全身性マイクロフィラメントCK−18の含有量の増加と関連する。
【0096】
触媒残基として使用されるCys285を有するプロテアーゼであるICE/カスパーゼ−1は、Asp116−Ala117で31kDaの生物学的に不活性なIL−1β前駆体を開裂し、IL−1βから17.5kDAの成熟形態を生じさせる(BombeliT,Karsan A,Tait JF,Harlan JM.,Blood 1997;89(7):2429−42)(Kostura MJ,Tocci MJ,Limjuco G,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 1989;86(14):5227−31)。活性酵素は、2つの同一でないサブユニット(p10及びp20)からなり、それらはともに酵素活性に本質的であり、したがって、心筋細胞を含む種々の細胞のアポトーシスにおいて極めて重要な役割を果たす。心臓肥大におけるICEの発現増加、心筋ミオパシーにおけるTNF−αの過剰産生(Kubota T,Miyagishima M,Frye CS,et al.,J Mol Cell Cardiol 2001;33(7):1331−44)、及び内毒素誘導の心筋機能障害(Fauvel H,Marchetti P,Chopin C,Formstecher P,Neviere R.,Am J Physiol Heart Circ Physiol 2001;280(4):H1608−14)は、AMI部位で可溶性ICEの存在の評価を促進した。AMI部位で平均4.1倍のICE増加は、UAと比較して観察された。内毒素又は低酸素ストレスの条件下で、カスパーゼ1は、これらの生理的ストレスとともに相乗的に作用し、カスパーゼ−3を介してアポトーシスを誘導することができる。虚血及び再潅流損傷の実験的モデルでは、IL−1受容体アンタゴニスト遺伝子トランスフェクションは、梗塞面積を減らすことが示された(Frantz S,Ducharme A,Sawyer D,et al.,J Mol Cell Cardiol 2003;35(6):685−94.)、ICEの心筋レベルの増加は、ストレス条件下でアポトーシス性心筋損傷にかかり易くする場合がある(Syed FM,Hahn HS,Odley A,et al.,Circ Res 2005;96(10):1103−9)。
【0097】
中間径フィラメントの主要コンポーネントであるサイトケラチン18は、内皮組織及び線維芽細胞と非内皮細胞で少量幅広く発現される(Schaafsma HE,Ramaekers FC,Pathol Annu 1994;29 Pt 1:21−62)。アポトーシス性細胞では、サイトケラチン18はリン酸化され、主要部位はセリン53であり、マイクロフィラメントは急速に凝集する(Ku NO,Liao J,Omary MB.,J Biol Chem 1997;272(52):33197−203)(Caulin C,Salvesen GS,Oshima RG.,J Cell Biol 1997;138(6):1379−94)。熱ショックストレス及びウイルス感染などの種々のストレス条件は、マイクロフィラメント認識及び可溶性、並びに改変された重合を増加する場合がある(Ku NO,Liao J,Omary MB.,J Biol Chem 1997;272(52):33197−203.)(Schutte B,Henfling M,Kolgen W,et al.,Exp Cell Res 2004;297(1):11−26)。リン酸化CK−18は、タンパク質分解に対する優先的な基質である。アポトーシス中のCK−18のカスパーゼ媒介開裂(Caulin C,Salvesen GS,Oshima RG.,J Cell Biol 1997;138(6):1379−94)は、抗体M30に認識される特異的ネオ−エピトープの形成をもたらす(Leers MP,Kolgen W,Bjorklund V,et al.,J Pathol 1999;187(5):567−72)(Kadyrov M,Kaufmann P,Huppertz B.,Placenta 2001;22(1):44−8)。興味深いことに、CK−18、ネオ−エピトープM30濃度の顕著な増加は、心筋梗塞の部位から直接得られる血漿において測定される。さらに、CK−18の含有量の増加は、血栓切除デバイスがCK−18について陽性に染色されたAMIにおける血栓を得たという本発明者らの見解によって確認された。血栓のこの新規な特徴は、何故、フィブリン溶解を目的とする静脈内血栓溶解療法が、AMIを患っている≧50%の患者において初期の完全な冠血量を不完全にのみ回復するのかという更なる説明として用いられてもよい(Valgimigli M,Merli E,Malagutti P,et al.,Arch Biochem Biophys 2003;420(2):255−61.)(Topol EJ.Toward,Circulation 1998;97(2):211−8)(Rentrop KP.,Circulation 2000;101(13):1619−26)。
【0098】
CD40L/CD154は、血管内皮細胞、マクロファージ、Tリンパ球、平滑筋細胞、及び血小板などの崩壊したアテロームと関連した様々な活性化細胞によって発現した膜貫通血具タンパク質である(Mach F,Schonbeck U,Sukhova GK,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 1997;94(5):1931−6)。この炎症性仲介因子は、細胞膜から開裂し、sCD40Lを形成することができ、これは、その生物学的特性を維持し、CD40と相互作用し、種々の炎症応答を開始する(Mach F,Schonbeck U,Sukhova GK,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 1997;94(5):1931−6)(Aukrust P,Muller F,Ueland T,et al.,Circulation 1999/100(6):614−20)。sCD40Lのレベル増加は、従来、UAを有する患者(Aukrust P,Muller F,Ueland T,et al.,Circulation 1999;100(6):614−20)、及び心筋梗塞の患者において見られた。(Ohashi Y,Kawashima S,Mori T,et al.,Int J Cardiol 2005)。これらの見解に沿って、本結果は、SAと比較して、急性心筋梗塞の部位でsCD40Lの有意な増加を証明した。
【0099】
従来、内皮損傷がAMI及びUAにおける一体部分であり(Mutin M,Canavy I,Blann A,Bory M,Sampol J,Dignat−George F.,Blood 1999;93(9):2951−8)、UAの患者由来の血清が、SAの患者由来の血清と比較して、ヒト臍静脈内皮細胞上でプロアポトーシス的である(Valgimigli M,Agnoletti L,Curello S,et al.,Circulation 2003;107(2):264−70)ことが示されている。さらに、後者の血清は、1年のフォローアップで再調査された場合、安定な病巣を有する患者とはもはや相違しないことが観察され、血清のアポトーシス活性の増加が一時的にUAの結びつくことを示唆した。
【0100】
アテローム斑内の局所的、及び循環内の全身的な炎症プロセスは、冠状動脈性心臓病の病因における確立した特徴である(Braunwald E.Circulation 1989;80(2):410−4)。アテローム性動脈硬化症を覆う内皮のアポトーシスが粥腫崩壊をもたらす場合があり、アポトーシスを受けている細胞によって組織因子を積層した膜の微粒子の放出が血液凝固カスケードを直接的に開始することが示唆されている。心筋梗塞における急性血栓切除の技術は、急性事象の際に発端となっている冠状動脈の外へ直接的に血液試料を回収するという独自の可能性を提供し、全身血液と比較される。このデータは、特に局所的に増大したアポトーシスとの相互作用における免疫学的プロセスの全身活性がAMIにおける主要なメカニズムであることを示唆する。
【0101】
本実施例は、AMIを患っている患者の末梢血と皮悪して、急性冠状血栓症の部位で増加した炎症性/アポトーシス特異的タンパク質に関して報告している最初のものである。従来の試験から、AMIが局所的に炎症したプラーク、続くプラーク崩壊及びその後の血栓性血管閉塞及び全身性炎症の結果であることが知られている(Mutin M,Canavy I,Blann A,Bory M,Sampol J,Dignat−George F.,Blood 1999;93(9):2951−8)。BAX、CASP1、FAS、p53又はPCNAのようなプロアポトーシス遺伝子の発現は、方向性冠動脈粥腫切除術由来のACSプラークにおいて有意に高く、MDM2などの抗アポトーシス抗体は、SAを有すると診断された患者由来のプラークにおいてより発現された(Rossi ML,Marziliano N,Merlini PA,et al.Circulation 2004;110(13):1767−73)。全身性炎症性プロセスは、とりわけ、単球浸潤、好中球誘引及びCD4+CD28−細胞を不安定課するプラークの拡大を含む(Zal B,Kaski JC,Arno G,et al.Circulation 2004;109(10):1230−5)。これらの観察は、細胞ホメオスタシス及び修復を受けているメカニズムはSAにおいて活性であり、より均衡を保つことを指示し、不安定なプラークは、プロアポトーシス遺伝子の活性化に起因する不均衡なプログラム細胞死によって特徴付けることができる。さらに、抗60kDa熱ショックタンパク質、コレステロール、肺炎クラミジア、及びCK−18に指向される抗体(Willseron JT.Prog.Cardiovasc Dis 2002;44(6):569−78は虚血性心疾患と関連することが報告されている。
【0102】
CD40Lに加えて、ICE及びCK−18又はその断片のレベル増加は、臨床的な不安程度と関連し、したがって、急性冠状動脈症候群の特徴として考えられ得る。このインビボで得られた情報は、心筋細胞アポトーシス及び心筋梗塞拡張の予防におけるカスパーゼ阻害剤の薬理学的な使用を含む試行に言い換えられる(Yaoita H,Ogawa K,Maehara K,Maruyama Y.Circulation 1998;97(3):276−81)。AMIにおけるCK−18又はその断片を標的とする新規治療が必要とされる。
【0103】
要約すると、X−サイザー血栓切除デバイスは、AMIを患っている患者(n=40)において利用された。UA(n=40)及びSA(n=40)は、対照群として含められた。炎症性及びアポトーシス特異的なタンパク質であるIL−1β(IL−1βp)、IL−1β、TNF−α、TNF−R1、CD40、CD40L、インターロイキン−1β変換酵素/ICE及びCK−18は、ELISAによって測定された。免疫組織化学は、AMIを患っている患者から得られた冠状動脈血栓においてCK−18の存在を評価するために利用された。比較群は、Mann−Whitney U検定によって評価された。
【0104】
可溶性IL−1βp、ICE及びCK−18(又はその断片)は、SAとUAとの間の新規な識別因子であることが特定された(それぞれ、p=0.034、p=0.023、P=0.027)。興味深いことに、可溶性ICE及びCK−18は、全身血液と比較して、心筋梗塞部位で有意に増加し(ともにp=0.001)、心筋梗塞の急性事象における新規な特徴的役割を指示する。
【0105】
この観察は、CK−18を同定可能な抗体であるM30が心筋梗塞を引き起こす冠状動脈血栓において陽性に染色したという知見によって確認された。
【0106】
急性心筋梗塞は、インビボでの全身性ICE及びCK−18レベルの増加と関連している。
【0107】
血栓切除の利用は、炎症及びアポトーシス特異的タンパク質を比較するために、閉塞した冠状動脈、付随して大腿動脈で血液及び血栓及び血漿を回収するという独特の可能性を提供する冠状動脈内血栓材料の除去を可能にする。安定狭心症及び不安定狭心症の患者は、対照として使用した(全ての群、n=40)。グループ比較は、Mann Whitney U検定によって評価された。
【0108】
炎症及びアポトーシス特異的タンパク質であるIL−1βp、IL−1β、hs−TNFα、TN−R1、CD40、CD−40L、インターロイキン−1β−変換酵素/ICE及びCK−18をELISAによって測定した。免疫組織化学は、急性心筋梗塞を患っている患者から得られた冠状動脈血栓においてCK−18の存在を評価するために利用された。
【0109】
新規な情報は、次に関連する:可溶性IL−1βp、ICE及びCK−18は、安定狭心症と不安定狭心症との間の新規な識別因子であると特定された(それぞれ、p=0.034、p=0.023、p=0.027)。
【0110】
興味深いことに、IL−1β、hs−TNFα、TNF−R1、CD40及びCD40Lは、グループ不安定対安定狭心症集団においていかなる有意差もなかった。しかしながら、本実施例で測定されたCD40L濃度は、関連文献で測定された平均値に匹敵するということは述べておくべきである。
【0111】
興味深いことに、ICE及びCK−18は、急性心筋梗塞を湯酢売る患者において全身血液と比較して、心筋梗塞の部位で有意に増加した(ともに、p=0.0001)。これは、心筋梗塞の急性事象における新規な特徴的役割を指示する。この観察は、CK−18を同定することができる抗体であるM30が心筋梗塞を引き起こす血栓において陽性を染色するという知見によって確認された。
【0112】
【化1】

【0113】
【化2】

【0114】
【化3】

【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】可溶性インターロイキン−1変換酵素/ICEの血漿レベルを示す。安定狭心症(SA)、不安定狭心症(UA)を有する40人の患者の血漿中のsICEの濃度は、急性心筋梗塞(AMI)における大腿動脈及び冠状動脈から得られた血漿と比較された。各ボックスは、50%値を含む4分位内を示す。ボックスを横切る線は、平均値ラインを示す。ヒゲがボックスから最高値及び最低値まで伸びている。
【図2】急性心筋梗塞、SA及びUAにおけるサイトケラチン18 M30−ネオ−エピトープの血漿レベルを示す。患者の冠状動脈から得られた血漿中のCK−18 M30−ネオ−エピトープの濃度は、大腿動脈から得られた全身血流量と比較して顕著に増加した。40人の患者から得られたデータは、50%値を含む4分位内を示す。ボックスを横切る線は、平均値ラインを示す。ヒゲがボックスから最高値及び最低値まで伸びている。
【図3】図3A〜Dは、急性心筋梗塞を有する患者からの代表的な血栓を示す(n=8)。図3Aは、ヘマトキシリン−エオシン染色を示す;図3Bは、酸性フクシンオレンジG染色(フィブリン−赤、赤血球、血小板及び他の血漿タンパク質−折れんい、分散した白血球−青)を示す;図3Cは、血栓の中心のCK−18 M30−ネオ−エピトープのポジティブな免疫反応性を示す;図3Dは、ネガティブ対照を示す(全て200倍)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の心臓血管疾患を診断するための方法であって、
−個体の試料を用意する工程;
−該試料中のサイトケラチン−18(CK−18)若しくはその断片及び/又はインターロイキン−1β前駆体(IL−1β前駆体)の量を測定する工程;
−該試料中のCK−18若しくはその断片及び/又はIL−1β前駆体の量と、心臓血管疾患を患っていない少なくとも1つの個体の参考対照に存在するCK−18若しくはその断片及び/又はIL−1β前駆体の量とを比較する工程;及び
−該試料中のCK−18若しくはその断片の量が参考対照中のCK−18若しくはその断片の量と比較して増加している場合、及び/又は該試料中のIL−1β前駆体の量が参考対照中のIL−1β前駆体の量と比較して減少している場合には心臓血管疾患と診断する工程
を含む前記方法。
【請求項2】
心臓血管疾患が、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、急性冠症候群、好ましくは不安定狭心症若しくは急性心筋梗塞、安定狭心症、脳梗塞、好ましくは虚血性脳梗塞、炎症性疾患若しくは自己免疫疾患関連アテローム性動脈硬化症又は再狭窄であることによって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料中のカスパーゼ−1(ICE)の量が参考対照に存在するICEの量と比較して減少し、試料中のICEの量と参考対照中のICEの量とを比較することによって心臓血管疾患であると診断することによって特徴付けられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
個体において安定狭心症と不安定狭心症との間を区別するか又は安定狭心症と不安定狭心症を診断するか又は経皮冠動脈インターベンション後の再狭窄の危険性を評価する方法であって、
−個体の試料を用意する工程;
−該試料におけるサイトケラチン−18(CK−18)若しくはその断片及び/又はインターロイキン−1β前駆体(IL−1β前駆体)の量を測定する工程;
−該試料中のCK−18若しくはその断片及び/又はIL−1β前駆体と、安定狭心症若しくは不安定狭心症を患っている少なくとも1つの個体の少なくとも1つの参考対照に存在するCK−18若しくはその断片及び/又はIL−1β前駆体の量とを比較する工程;
−不安定狭心症を患っている少なくと1つの個体の参考対照におけるCK−18若しくはその断片及び/又はIL−1β前駆体の量と比較して、該試料中のCK−18若しくはその断片が減少し、該試料中のIL−1β前駆体の量が増加している場合に安定狭心症と診断する工程(所定のマーカー量が安定狭心症を患っている個体におけるレベルと比較した場合に安定狭心症を診断することも可能である);
を含む前記方法。
【請求項5】
前記試料中のカスパーゼ−1(ICE)の量が、参考対照に存在するICEの量と比較して測定され、該試料中のICEの量が、不安定狭心症を患っている少なくと1つの個体の参考対照中のICEの量と比較した場合に減少しているときには安定狭心症と診断することによって特徴付けられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
サイトケラチン−18若しくはその断片(CK−18)、カスパーゼ−1(ICE)及びインターロイキン−1β前駆体(IL−1β前駆体)の量が、免疫学的に、好ましくは酵素免疫吸着測定法、放射免疫アッセイ又はウェスタンブロットアッセイによって測定される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が、血液、好ましくは血漿又は血清であることによって特徴付けられる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が、大腿動脈から得られることによって特徴付けられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
心臓血管疾患を診断するためのキットであるか、又は安定狭心症と不安定狭心症との間を区別するためのキットであるか、又は個体における安定及び不安定狭心症を診断するキットであるか、又は心臓血管系の血栓を得る個体の危険性を評価するためのキットであって、
−サイトケラチン−18若しくはその断片(CK−18)、カスパーゼ−1(ICE)及び/又はインターロイキン−1β前駆体(IL−1β前駆体)を検出するための手段;及び
−参考対照
を含む前記キット。
【請求項10】
前記手段が、CK−18若しくはその断片、ICE及びIL−1β前駆体に指向される抗体を含むことによって特徴付けられる、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
参考対照が、心臓血管疾患を患っていない少なくと1つの個体から得られるか又は安定狭心症若しくは不安定狭心症を患っている少なくと1つの個体から得られることによって特徴付けられる、請求項9又は10に記載のキット。
【請求項12】
心臓血管疾患が、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、急性冠症候群、好ましくは不安定狭心症若しくは急性心筋梗塞、安定狭心症、脳梗塞、好ましくは虚血性脳梗塞、炎症性疾患若しくは自己免疫疾患関連アテローム性動脈硬化症又は再狭窄であることによって特徴付けられる、請求項9〜11のいずれか1項に記載のキット。
【請求項13】
血栓症(例えば、冠状動脈血栓症、深部静脈血栓症、表在性静脈血栓症、門脈の血栓症)及び血栓症に関連した疾患を治療するための薬剤を製造するためのサイトケラチン−18(CK−18)又はその断片を分解する化合物の使用。
【請求項14】
前記薬剤が、ワルファリン、アセチルサリチル酸、チクロピジン、ヘパリン、組織プラスミノーゲン因子(t−PA)、ストレプトキナーゼ、及び/又はウロキナーゼをさらに含む、請求項13に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−534672(P2009−534672A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506856(P2009−506856)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【国際出願番号】PCT/AT2007/000173
【国際公開番号】WO2007/121495
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(508317424)メディツィニシェ ウニベルジテート ウィーン (2)
【Fターム(参考)】