説明

性的不能の治療用のメラノコルチンレセプタ特異的ペプチド

式:


(ここで、R、x及びyは明細書中に定義されたものである)のメラノコルチンレセプタアゴニスト環状ペプチド、前記式のペプチドを含む組成物及び製剤、並びに、オスの勃起不全及びメスの性機能不全などの性機能不全を含むメラノコルチンレセプタによって媒介される疾病、適応症、病状及び症候群を予防、改善、又は、治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年6月9日に提出された米国仮特許出願第61/059,910号、タイトル「性的不能の治療用のメラノコルチンレセプタ特異的ペプチド」を提出したことによる優先権及び利益を主張する。その明細書及びクレームはここで言及することによって組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
本発明は、メラノコルチンレセプタによって媒介される疾病、兆候、病状及び症候群の治療に用いることができるメラノコルチンレセプタ特異的環状ペプチドに関する。
【0003】
関連技術の説明
以下の記載は、多数の刊行物を著者及び公表年よって引用しており、公表日が最近であるため、特定の刊行物は、本発明に対する先行技術と考えられない。本書におけるそのような刊行物の検討は、より完全な背景を示すためのものであり、そのような刊行物が特許性判断の目的における先行技術と認めるものとして解釈されてはならない。
【0004】
正常ヒトメラニン細胞及びメラノーマ細胞で発現されるメラノコルチン−1レセプタ(MC1−R)、副腎の細胞において発現されるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)に対するメラノコルチン−2レセプタ(MC2−R)、主として視床下部、中脳及び脳幹の細胞において発現されるメラノコルチン−3及びメラノコルチン−4レセプタ(MC3−R及びMC4−R)、及び、末梢組織に広く分布するように発現されるメラノコルチン−5レセプタ(MC5−R)を含むメラノコルチンレセプタタイプ及びサブタイプのファミリーが同定されている。
【0005】
レセプタをコードする核酸配列とそのレセプタを構成するアミノ酸配列との両方を含むメラノコルチンレセプタの構造決定するにあたって、相当な研究が行われた。MC4−Rは、主として脳で発現されると考えられるGタンパク共役型の7回膜貫通型レセプタである。
【0006】
MC4−Rに対して特異的なペプチド、及び、二次的にMC3−Rに対して特異的なペプチドは、食物摂取量及び体重増加量を減少させる薬剤としての使用を含む、哺乳類エネルギ恒常性の制御に有用であると考えられている。MC4−Rアゴニストペプチドは、オスの勃起不全を含む性的不能の治療、及び、肥満の治療などのように食物摂取量及び体重増加量を減少させるのに有用であると考えられている。MC4−Rアゴニストペプチドは、自発的エタノール摂取を減少させること、及び、薬物依存症の治療などにも使用することができる。そのようなペプチドならびにMC1−R及びMC3−Rアゴニストペプチドは、循環性ショック、虚血、出血性ショック、炎症性疾患及び関連疾病、兆候、病状及び症候群の治療のためにさらに使用することができる。対照的に、MC4−Rアンタゴニストペプチドは、悪液症、筋肉減少症、消耗症候群又は消耗性疾病、及び食欲不振の治療における使用などのような体重増加支援に有用であると考えられている。そのようなペプチドは、うつ病及び関連疾患の治療にも使用できる。
【0007】
メラノコルチンレセプタ特異的ペプチドは、Ac−Nle−シクロ(−Asp−His−D−Phe−Arg−Trp−Lys)−NH(配列番号:1)(米国特許第5,674,839号及び第5,576,290号参照)、及び、Ac−Nle−シクロ(−Asp−His−D−Phe−Arg−Trp−Lys)−OH(配列番号:2)(米国特許第6,579,968号及び第6,794,489号参照)などの環式αメラニン細胞刺激ホルモン(「α−MSH」)類似化合物ペプチドを含む。これら及びその他のメラノコルチンレセプタ特異的ペプチドは、通常、天然α−MSHの中心テトラペプチド配列、His−Phe―Arg−Trp(配列番号:3)、又は、Pheに対するD−Pheの置換を含むその疑似分子又は変異体を含んでいる。1つ以上のメラノコルチンレセプタに対して特異的であるとされているその他のペプチド又はペプチド様化合物は、米国特許第5,731,408号、第6,054,556号、第6,350,430号、第6,476,187号、第6,600,015号、第6,613,874号、第6,693,165号、第6,699,873号、第6,887,846号、第6,951,916号、第7,008,925号及び第7,176,279号;米国特許出願公開公報第2001/0056179号、第2002/0143141号、第2003/0064921号、第2003/0105024号、第2003/0212002号、第2004/0023859号、第2005/0130901号、第2005/0187164号、第2005/0239711号、第2006/0105951号、第2006/0111281号、第2006/0293223号、第2007/0027091号、第2007/0105759号、第2007/0123453号、第2007/0244054号及び第2008/0039387号;及び、国際特許出願WO98/27113、WO99/21571、WO00/05263、WO99/54358、WO00/35952、WO00/58361、WO01/30808、WO01/52880、WO01/74844、WO01/85930、WO01/90140、WO02/18437、WO02/26774、WO03/006604、WO2004/046166、WO2005/000338、WO2005/000339、WO2005/000877、WO2005/030797、WO2005/060985、WO2006/048449、WO2006/048450、WO2006/048451、WO2006/048452、WO2006/097526、WO2007/008684、WO2007/008704及びWO2007/009894に開示されている。
【0008】
科学文献ならびに多数の特許出願及び発行特許における多数の論文によって明らかなメラノコルチンレセプタ特異的ペプチドに対する強い科学的及び薬学的関心にもかかわらず、メラノコルチンレセプタ特異的ペプチドは、いかなる治療的用途の薬剤としても承認されていない。実際に、フェイズII臨床治験を超えた治療用途のためのメラノコルチンレセプタ特異的ペプチドの報告は全く存在しない。医薬品用途、特に性的不能の治療に用いるためのメラノコルチンレセプタ特異的ペプチドの深刻かつ実質的な必要性がある。それは、本発明がなされたこの背景とは逆である。
【発明の概要】
【0009】
一態様において、本発明は、式(I):

(ここで、前記Rが−C(=O)−OH又は−C(=O)−NHであり、前記xが1又は2であり、前記yが3又は4である)環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0010】
上記環状ペプチドは、式(II):

のうちの1つであってもよい。
【0011】
したがって、環状ペプチドは、
Ac−Arg−シクロ(Asp−Dab−D−Phe−Arg−Trp−Lys)−NH(配列番号:4)
Ac−Arg−シクロ(Asp−Dab−D−Phe−Arg−Trp−Lys)−OH(配列番号:5)
Ac−Arg−シクロ(Glu−Dab−D−Phe−Arg−Trp−Orn)−NH(配列番号:6)、又は、
Ac−Arg−シクロ(Glu−Dab−D−Phe−Arg−Trp−Orn)−OH(配列番号:7)であってもよい。
【0012】
別の一態様において、本発明は、本発明の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬品組成物を提供する。
【0013】
別の一態様において、本発明は、メラノコルチンレセプタ特異的ペプチドをベースにした医薬品組成物であって、メラノコルチンレセプタによって媒介される疾病、兆候、病状及び症候群の治療に使用される医薬品組成物を提供する。
【0014】
別の一態様において、本発明は、ペプチドをベースとしたメラノコルチンレセプタ特異的医薬品であって、前記ペプチドが、性的不能及びその他のMC4−R関連疾患の治療に用いるための選択的MC4−Rリガンドである医薬品を提供する。
【0015】
別の一態様において、本発明は、MC4−Rに対して特異的であり、かつ、アゴニストであるペプチドを提供する。
【0016】
別の一態様において、本発明は、血圧を実質的に上昇させないことを含む、心血管系に対する実質的な副作用がない、性的不能の治療に用いるためのメラノコルチンレセプタ特異的医薬品を提供する。
【0017】
別の一態様において、本発明は、広い用量範囲にわたって有効な特異的MC4−R環状ペプチドを提供する。
【0018】
本発明のその他の態様及び新規な特徴ならびに適用可能性のさらなる範囲は、一部分は以下の詳細な説明に記載されており、添付図面と組み合わせて理解され、一部分は以下の試験によって当業者に明らかになり、あるいは、本発明の実施によって明らかになるであろう。本発明の態様は、添付の特許請求の範囲において特に指摘されている手段及び組合せによって実現及び達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本明細書に組み込まれてその一部を形成する添付図面は、明細書に加えて本発明の1つ以上の実施形態を説明し、本発明の原理を説明する役割を果たす。図面は、本発明のある実施形態又はより好ましい実施形態を説明するためだけのものでり、本発明を限定するように解釈してはならない。
【図1】図1は、溶媒(○)、静脈注射による1μmol/kgの用量のブレメラノチド(□)、ならびに、皮下注射による0.84μmol/kg(▽)及び3.0μmol/kg(△)の用量の実施例8.1の環状ペプチドを投与した後に、外科的に移植した圧力変換器を用いて遠隔測定によってモニターした、交差試験で決定した収縮期血圧のプロットである。
【図2】図2は、皮下注射による1mg/kgの用量で2つの異なるロットの実施例8.4の環状ペプチド(△、▽)を、及び、静脈注射による1mg/kgの用量のブレメラノチド(□)を投与した後に、外科的に移植した圧力変換器を用いて遠隔測定によってモニターした、交差試験において決定した収縮期血圧のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
1.0 定義
本発明の説明に移る前に本明細書に記載されている用語を定義する。
【0021】
本発明のペプチドに与えられる配列において、そのアミノ酸残基は、米国特許商標庁によって発行された特許審査基準第8版の第2400章に記載されている通常の意味を有する。したがって、例えば、「Nle」はノルロイシンであり、「Asp」はアスパラギン酸であり、「His」はヒスチジンであり、「Phe」はフェニルアラニンであり、「Arg」はアルギニンであり、「Trp」はトリプトファンであり、「Lys」はリジンである。例えば、D−PheがD−フェニルアラニンであるように、三文字記号又はアミノ酸名の前の「D−」によって「D」アイソマーが示されることは理解されるであろう。前述のものに包含されないアミノ酸残基は、以下の定義を有する。

【0022】
「Ac」という用語は、アセチル基CH−C−(=O)−を意味する。
【0023】
「アミド」は、例えば、メチルアミド、エチルアミド、プロピルアミドなどのように、カルボニル基(C−(=O)NH)に結合した三価の窒素を有する化合物を含む。
【0024】
「アミン」は、アミノ基(−NH)を含む化合物を包含する。
【0025】
「組成物」という用語は、医薬品組成物のように、活性成分と担体を構成する不活性成分とを含む製品、ならびに、任意の2つ以上の成分の組合せや錯体生成や凝集から、1つ以上の成分の解離から、又は、1つ以上の成分の他のタイプの反応若しくは相互作用から、直接的にあるいは間接的に得られる任意の製品を包含するように意図される。従って、本発明において用いられる医薬品組成物は、活性成分と1つ以上の薬学的に許容可能な担体との混合によって作られた任意の組成物をも包含する。
【0026】
メラノコルチンレセプタ「アゴニスト」は、本発明のペプチドなどの化合物を含む、内因性物質、製剤原料又は化合物であって、メラノコルチンレセプタと相互作用し、限定されるものではないが、メラノコルチンレセプタの特性であるアデニルシクラーゼ活性化を含む薬理学的反応を開始させることができるものを意味する。本発明においては、メラノコルチン−4レセプタ(MC4−R)に対するアゴニストであるメラノコルチンレセプタアゴニストが好ましいが、ある用途には、MC4−R及びメラノコルチン−1レセプタ(MC1−R)の両方に対するアゴニストであるメラノコルチンレセプタアゴニストが好ましく、他の用途には、MC1−R及びメラノコルチン−3レセプタ(MC3−R)、MC4−R及びメラノコルチン−5レセプタ(MC5−R)の1つ以上に対するアゴニストであるメラノコルチンレセプタアゴニストが好ましい。
【0027】
「α−MSH」は、Ac−Ser−Tyr−Ser−Met−Glu−His−Phe−Arg−Trp−Gly−Lys−Pro−Val−NH(配列番号:8)ならびにその類似化合物及び同族体を意味し、限定されるものではないが、NDP−α−MSHを含む。
【0028】
「NDP−α−MSH」は、ペプチドAc−Ser−Tyr−Ser−Nle−Glu−His−D−Phe−Arg−Trp−Gly−Lys−Pro−Val−NH(配列番号:9)ならびにその類似化合物及び同族体を意味する。
【0029】
「EC50」は、アゴニストに対して可能な最大の反応の50%を生じさせる(部分的アゴニストを含む)アゴニストのモル濃度を意味する。例えば、72nMの濃度において、MC4−R細胞発現系中でcAMP分析で決定されるその化合物に対して可能な最大の反応の50%を生じさせる試験化合物は、72nMのEC50を有する。別段の定めがない限り、EC50決定に関係するモル濃度は、1リットル当たりのナノモル(nM)である。
【0030】
「Ki(nM)」は、放射性リガンド又は他のコンペティタの非存在下の平衡においてレセプタの結合部位の半分に結合する競合している化合物のモル濃度を表す平衡阻害剤解離定数を意味する。一般に、Kiの数値は、レセプタに対する化合物の親和性に逆相関するので、Kiが低いほど、親和性が高い。Kiは、チェンアンドプルソフの方程式(Cheng Y.,Prusoff W.H.,Biochem.Pharmacol.22:3099−3108,1973)を用いて決定することができる。

「リガンド」は、放射性リガンドの濃度であり、Kは、放射性リガンドによる50%のレセプタ占有を生じさせる放射性リガンドに対するレセプタ親和性の逆の指標である。別段の定めがない限り、Ki決定に関係する濃度は、nMである。Kiを、特異的レセプタ(例えば、MC1−R、MC3−R、MC4−R又はMC5−R)及び特異的リガンド(例えば、α−MSH又はNDP−α−MSH)に換算して表してもよい。
【0031】
「阻害」は、競合的阻害分析において公知の標準と比較したレセプタ結合におけるパーセント減衰又は減少を意味する。したがって、「1μM(NDP−α−MSH)の阻害」は、以下に記載する分析条件下などにおいて、試験化合物の1μMといった所定量の試験される化合物の添加によるNDP−α−MSHの結合におけるパーセント減少意味する。例えば、NDP−α−MSHの結合を阻害しない試験化合物は0%の阻害を有し、NDP−α−MSHの結合を完全に阻害する試験化合物は100%の阻害を有する。通常、以下に記載するように、I125でラベルしたNDP−α−MSHなどを用いたラジオアッセイ、又は、Eu−NDP−α−MSHなどを用いたランタニドキレート蛍光分析は、競合的阻害試験に用いられる。しかしながら、放射性同位元素以外のラベル又はタグシステムの使用を含む、競合的阻害を試験するその他の方法は公知であり、通常、競合的阻害を試験するための当業界で公知のあらゆる方法を本発明において使用することができる。したがって、「阻害」は、試験化合物がα−MSHのメラノコルチンレセプタへの結合を減少させるかどうかを判断するための1つの手段であることは理解されるであろう。
【0032】
「結合親和性」は、化合物又は薬剤が生物学的ターゲットに結合する能力を意味し、本明細書においてはKi(nM)として表される。
【0033】
「内因活性」は、アデニリルシクラーゼの最大刺激などのように、特定のメラノコルチンレセプタ発現細胞システムにおいて化合物によって達成可能な最大限の機能的活性を意味する。α−MSH又はNDP−α―MSHによって達成される最大刺激を1.0(又は100%)の内因活性として表し、α−MSH又はNDP−α−MSHの最大活性の半分を刺激することができる化合物を0.5(又は50%)の内因活性を有するものとして表す。本明細書に記載されている分析条件下において0.7以上(70%)の内因活性を有する本発明の化合物は、アゴニストとして分類され、0.1(10%)乃至0.7(70%)の内因活性を有する化合物は、部分的アゴニストとして分類され、0.1(10%)よりも低い内因活性を有する化合物は、不活性のもの又は内因活性を有しないものとして分類される。一態様においては、本発明の環状ペプチドは、通常、MC4−Rにおいてα−MSH又はNDP−α−MSHに対する部分的アゴニストであるとみなすことができる。
【0034】
通常、「機能的活性」は、レセプタのシグナリングの1つの尺度、又は、化合物による刺激に対する、メラノコルチンレセプタ、特にMC4−R又はhMC4−Rなどのレセプタに関連するシグナリングにおける変化の尺度である。メラノコルチンレセプタは、ヘテロ三量体Gタンパクの活性化を通じてシグナル伝達を開始する。一態様において、メラノコルチンレセプタは、アデニリルシクラーゼによってcAMPの生成を触媒するGαを通じてシグナルを送る。したがって、アデニリルシクラーゼの最大刺激の決定などのようなアデニリルシクラーゼの刺激の決定は、機能的活性の1つの尺度であり、本明細書において例示される第1の尺度である。しかしながら、本発明の実施において、機能的活性の代替的測定は、使用可能であり、明確に本発明の範囲内であるように意図されて含まれていることが理解されるであろう。従って、一実施例において、細胞内遊離カルシウムは、「Mountjoy K.G.et al.,Melanocortin receptor−medicated mobilization of intracellular free calcium in HEK293 cells.Physiol Genomics 5:11−19,2001」、又は、「Kassack M.U.et al.,Functional screening of G protein−coupled receptors by measuring intracellular calcium with a fluorescence microplate reader.Biomol Screening 7:233−246,2002」等に報告及び開示されている方法を用いて測定することができる。ホスファチジルイノシトール4,5−重リン酸塩に由来するイノシトール3リン酸又はジアシルグリセロールの生成をラジオアッセイ等を用いて測定することによって活性化を測定することもできる。機能的活性のさらに別の測定は、「Nickolls S.A.et al.,Functional selectivity of melanocortin 4 receptor peptide and nonpeptide agonists:evidence for ligand specific conformational states.J Pharm Exper Therapeutics 313:1281−1288,2005」に開示されている方法等を用いた、制御経路の活性化の結果として生じるレセプタ内在化である。機能的活性のさらに別の測定は、GタンパクαサブユニットによるGTP(グアノシン三リン酸)に対するGDP(グアノシン二燐酸)の交換などのような、Gタンパクレセプタの活性化に関連したヌクレオチドの交換及び交換速度である。それは、「Manning D.R.,Measures of efficacy using G proteins as endpoints:differential engagement of G proteins through single receptors.Mol Pharmacol 62:451−452,2002」に開示されているような、グアノシン5’−(γ−[35S]チオ)−三リン酸塩)を用いたラジオアッセイを含む任意数の手段によって測定することができる。G−共役タンパクの活性化を測定するために、「Chen W.et al.,A colorimetric assay from measuring activation of Gs− and Gq−coupled signaling pathways.Anal Biochem 226:349−354,1995」、「Kent T.C.et al.,Development of a generic dual−reporter gene assay for screening G−protein−coupled receptors.Biomol Screening,5:437−446,2005」、又は、「Kotarsky K.et al.,Improved receptor gene assays used to identify ligands acting on orphan seven−transmembrane receptors.Pharmacology & Toxicology 93:249−258,2003」に開示されているような、様々な遺伝子に基づいた分析が開発されてきた。Chenらの比色測定法は、「Hruby V.J.et al.,Cyclic lactam α−melanocortin analogues of Ac−Nle−cyclo[Asp,D−Phe,Lys10]α−melanocyte−stimulating hormone−(4−10)−NH2 with bulky aromatic amino acids at position 7 shows high antagonist potency and selectivity at specific melanocortin receptors.J Med Chem 38:3454−3461,1995」に開示されているように、メラノコルチンレセプタ活性化の測定における使用に応用されてきた。一般に、機能的活性は、G−共役レセプタの活性化及び/又はシグナリングを決定する方法や、将来的に開発又は報告される方法をさらに含む任意の方法によって測定可能である。前記各論文及び本明細書に開示されている方法は、ここで言及することによって完全に記載されたものとして組み込まれている。
【0035】
「治療する」、「治療すること」及び「治療」という用語は、本明細書で用いられているように、患者が特定の疾病又は疾患に罹患している間に生じる作用であって、その疾病又は疾患の重症度を低下させる作用を意図する。
【0036】
本明細書で用いられているように、「治療的有効量」という用語は、医師又は他の臨床家によって治療されている哺乳動物において生物学的又は医療的な反応を生じさせる、本発明のペプチドを含む化合物の量を意味する。
【0037】
本明細書で用いられているように、「予防的に有効な」、「予防的である」という用語は、患者が特定の疾病又は疾患に罹患し始める前に、苦痛を予防又は阻害するか、又は、医師又は他の臨床家が予防、阻害、若しくは、緩和しようする病状を有する哺乳動物の苦痛を緩和する、本発明のペプチドを含む化合物の量を意味する。
【0038】
「性的不能」は、性交を含む正常な性機能を阻害するか又は損なうあらゆる病状を意味する。この用語は、生理的病状に限定されるものではなく、心因性の病状、又は、病理若しくは疾患の正式な診断を伴わない認識された障害を含む。性的不能は、雄の哺乳動物における勃起不全及び雌の哺乳動物における女性性的不全を含む。
【0039】
「勃起不全」は、機能的勃起、射精又は両方の達成の失敗を含む雄の哺乳動物の疾患である。従って、勃起不全は、インポテンツと同義であり、性交のための充分な硬さの勃起に到することができないこと又は維持できないことを含む。勃起不全の症状には、勃起の達成又は維持ができないこと、射精障害、早発射精、又は、オルガズムに達することができないことが含まれる。勃起不全の増加は、多くの場合に年齢に関連しており、又は、身体疾患によって若しくは薬物療法の副作用として生じることもある。
【0040】
「女性性的不全」は、性的刺激疾患を含む疾患である。「性的刺激疾患」という用語は、性的行為が完了するまで性的興奮の潤滑−膨張反応を達成又は維持することが永続的に又は反復的に不可能であることを含む。雌の性的不全には、阻害されたオルガズム、及び、苦痛を伴う又は困難な性交である性交疼痛が含まれ得る。女性性的不全は、限定されるものではないが、性的欲求低下障害、性快感消失症、性的刺激疾患、性交疼痛及び腟痙を含む多くのカテゴリーの疾病、病状及び疾患を包含する。性的欲求低下障害は、性行為に関する性的空想及び欲求が永続的に又は反復的に低下又は消失する疾患を含み、著しい苦痛又は人間関係の障害を生じさせる。性的欲求低下障害は、長年のつきあい、鬱、アルコール又は向精神薬への依存、処方薬による副作用、又は、ホルモン欠乏症における疲労感又は不幸感によって生じることがある。性快感消失症には、性行為における快感の低下又は消失が含まれる。性快感消失症は、鬱、薬剤又は対人的要因によって生じることがある。性的刺激疾患は、低下したエストロジェン、病気、又は、利尿薬、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬若しくは血圧降下剤を用いた治療によって生じることがある。性交疼痛及び腟痙は、侵入によって生じる痛みを特徴とした性的疼痛障害であり、例えば、潤滑を低下させる薬剤、子宮内膜症、骨盤内炎症性疾患、炎症性腸疾患又は尿路の問題によって生じることがある。
【0041】
2.0 臨床的適応及び実用性
本明細書に開示されている組成物及び方法は、医療用途及び畜産又は獣医学的用途の両方に用いることができる。通常、この方法は、ヒトに用いられるが、その他の哺乳動物に用いられてもよい。「患者」という用語は、哺乳類の個体を意味するように意図されており、明細書及び請求項の全体にわたってそのように用いられている。本発明の主たる用途はヒト患者を含むが、本発明は、研究所、農場、動物園、野生生物、ペット、競技用又はその他の動物にも適用可能である。
【0042】
本発明のペプチド、組成物及び方法は、オスの勃起不全及びメスの性的不全の両方を含む性的不能の治療に使用可能である。特定の実施形態において、本発明のペプチド、組成物及び方法は、限定されるものではないが、膣性交を可能にするように勃起機能を強化することを含む勃起機能の強化を目的として、男性患者に用いられる。別の特定の実施形態において、本発明のペプチド、組成物及び方法は、限定されるものではないが、性的興奮率、欲求成功率、性的興奮及び欲求のレベルの向上を含む、女性性的不全の治療に用いられる。女性性的不全に関して、エンドポイントは、必須ではないが、女性性的苦痛指標(Female Sexual Distress Scale)、女性性的接触プロファイル(Female Sexual Encounter Profile)、女性性的機能インデックス(Female Sexual Function Index)、及び、グローバル評価調査(Global Assessment Questionnaire)を含むこれらに限定されない数多くの認証された任意の手段によって決定することもできる。女性性的不全を治療される患者は、更年期前の女性又は閉経後の女性であってもよい。
【0043】
3.0 特定の適応症に対する併用療法
本発明のペプチド、組成物及び方法は、1つ以上の他の薬学活性化合物と組み合わせた投与によって、前述の疾病、兆候、病状若しくは症候群のいずれか、又は、メラノコルチンレセプタによって媒介される任意の疾病、兆候、病状若しくは症候群の治療に用いることができる。そのような組合せ投与は、本発明のペプチド及び1つ以上の他の薬学活性化合物の両方を含む単一投薬形態によるものであってもよい。そのような単一投薬形態には、錠剤、カプセル、スプレイ、吸入粉末、注射可能液体などが含まれる。代替的に、組合せ投与は、1つの投薬形態が本発明のペプチドを含み、他方の投薬形態が別の薬学活性化合物を含む、2つの異なる投薬形態の投与によるものであってもよい。この例において、投薬形態は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。併用療法を限定する意味ではなく、以下に使用可能な併用療法を例示する。
【0044】
3.1 性的不能に対する併用療法
本発明の環状ペプチドを性的不能の治療用の他の医薬品又は薬剤と組み合わせて用いることは、可能であり、意図されている。これらの他の医薬品及び薬剤には、ホスホジエステラーゼ−5(PDE−5)阻害剤、テストステロン、及び、プロスタグランジンなどを含む勃起活動を促進する薬剤が含まれ得る。本発明の好ましい実施形態において、本発明の環状ペプチドは、サイクリックGMP特異的ホスホジエステラーゼ阻害薬又はα−アドレナリン作動性受容体アンタゴニストの治療的有効量と組み合わせて用いられる。米国特許第7,235,625号、タイトル「Multiple Agent Therapy for Sexual Dysfunction」の教示及び開示は、ここで言及することによってその全体が組み込まれている。
【0045】
したがって、本発明は、性的不能を治療する方法であって、前記方法は、性的不能であるか又は性的不能のリスクがある患者に、本発明の環状ペプチドの治療的有効量を、第2の性的不能用医薬品の治療的有効量と組み合わせて投与するステップを具える方法を提供する。本発明の環状ペプチドは、第2の性的不能用医薬品の治療的有効量の投与と同時に、前に、又は、後に投与可能である。本発明のペプチドは、第2の性的不能用医薬品の治療的有効量の投与から1時間以内に投与されることが好ましく、30分未満であることがより好ましい。しかしながら、例えば、ホルモン又はホルモン関連の性的不能用医薬品の治療的有効量と組み合わせたような組み合わせ療法の特定の形態に関して、ホルモン又はホルモン関連の性的不能用医薬品は、本発明のペプチドの投与とホルモン若しくはホルモン関連の性的不能用医薬品の投与との間で、組になること及び特定の時間的関係がないように、独立したスケジュールで投与されてもよい。したがって、例えば、ホルモン又はホルモン関連の性的不能用医薬品は、1日1回若しくは他の用量で、又は、パッチ若しくは他の連続的投与スケジュールで、患者が望むとき又は必要とするときに本発明のペプチドの投与と共に、投与されてもよい。
【0046】
したがって、本発明は、性的不能を治療する方法であって、前記方法は、性的不能であるか又は性的不能のリスクがある患者に、本発明の環状ペプチドの治療的有効量を、性的不能の治療に有用な他の化合物と組み合わせて投与するステップを具える方法を提供する。併用療法の好ましい実施形態において、性的不能はメスの性的不全である。併用療法の特に好ましい実施形態において、性的不能は勃起不全である。
【0047】
また、本発明は、本発明の環状ペプチドと、性的不能の治療に有用な第2化合物とを含む医薬品組成物を提供する。組成物の一実施形態において、性的不能の治療に有用なさらなる化合物は、限定されるものではないが、好ましくは:ホスホジエステラーゼ阻害薬;サイクリックGMP特異的ホスホジエステラーゼ阻害薬;プロスタグランジン;アポモルヒネ;オキシトシンモジュレータ;α−アドレナリンアンタゴニスト;アンドロゲン;選択的アンドロゲンレセプタモジュレータ(SARM);ブプロピオン;血管作用性小腸ペプチド(VIP);中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEP);及び、ニューロペプタイドYレセプターアゴニスト(NPY)からなる群より選択される。
【0048】
上記方法及び組成物の一実施形態においては、第2の性的不能用医薬品がテストステロンである。
【0049】
併用療法の別の一実施形態においては、第2の性的不能用医薬品がタイプVホスホジエステラーゼ(PDE−5)阻害剤である。例えば、PDE−5阻害剤は、シルデナフィルのブランドであるバイアグラ(登録商標)、バルデナフィルのモノ塩酸塩のブランドであるレビトラ(登録商標)、又は、タダラフィルのブランドであるシアリス(登録商標)であってもよい。その他のPDE−5阻害剤は、2007年6月22日発行された米国特許第7,235,625号、タイトル「Multiple Agent Therapy for Sexual Dysfunction」に開示されている。この文献は、ここで言及することによって組み込まれている。
【0050】
上記組成物の別の一実施形態においては、性的不能の治療に有用な化合物がエストロジェンアゴニスト/アンタゴニストである。一実施形態においては、エストロジェンアゴニスト/アンタゴニストが、(−)−シス−6−フェニル−5−[−4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル−]−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−オール(ラソフォキシフェンとしても知られている)又はその光学異性体若しくは幾何異性体;薬学的に許容可能な塩、N−酸化物、エステル、第四級アンモニウム塩;又はこれらのプロドラッグである。より好ましくは、エストロジェンアゴニスト/アンタゴニストは、D−酒石酸塩の形態で存在する。
【0051】
上記組成物のさらに別の一実施形態において、エストロジェンアゴニスト/アンタゴニストは、タモキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、セントクロマン、イドキシフェン、6−(4−ヒドロキシ−フェニル)−5−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−ベンジル]−ナフタレン−2−オール、{4−[2−(2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)−エトキシ]−フェニル}−[6−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル]−メタノン(EM−652、EM−800、GW5368、GW7604、TSE−424及びこれらの光学異性体若しくは幾何異性体)、ならびに、これらの薬学的に許容可能な塩、N−酸化物、エステル、第四級アンモニウム塩及びプロドラッグからなる群より選択される。
【0052】
さらに別の実施形態において、本発明の環状ペプチドは、公知のあらゆる機械的補助又は装置と組み合わせて用いられてもよい。
【0053】
本発明は、性的不能(勃起不全を含む)の治療用のキットであって、前記キットは、本発明の環状ペプチドを含む第1医薬品組成物と、性的不能の治療に有用な第2化合物を含む第2医薬品組成物と、第1組成物及び第2組成物のための容器とを具えるキットを提供する。
【0054】
4.0 投与及び使用の方法
投与及び使用の方法は、本発明の特定のペプチドの特性、治療する疾病、兆候、病状又は症候群、及び、当業者に公知のその他の要因に応じて変わる。通常、当業界で公知の、又は、将来的に開発される投与及び使用のあらゆる方法を、本発明のペプチドと共に使用することができる。上述のものを限定するものではないが、下記の投与及び使用の方法は、示されている適応症への特定の用途を有している。
【0055】
本発明のペプチドの1つ以上を含む組成物は、皮下注射によって投与可能である。一態様において、本発明の環状ペプチドは、ポリエチレングリコール3350などのポリエチレングリコール、並びに、選択的に、塩、ポリソルベート80、pH調整用の水酸化ナトリウム又は塩酸などの賦形剤を含むこれらに限定されない1つ以上のさらなる賦形剤及び保存剤を含む製剤の、臀部又は三角筋などの深部筋肉内注射用として製剤される。別の一態様において、本発明の環状ペプチドは、重合体骨格中の乳酸の可変的割合が任意である自触媒されたポリ(オルトエステル)であってもよいポリ(オルトエステル)と、選択的に1つ以上のさらなる添加剤と共に調剤される。一態様においては、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーを用いる。通常、多くの注射可能な生分解性ポリマーの任意のものを注射可能な徐放性製剤に使用できるが、そのポリマーは、粘着性ポリマーであることが好ましい。あるいは、皮下注射を許容する製剤を含む、他の徐放性製剤を用いることができる。その他の製剤は、1つ以上のナノ/マイクロスフェア(PLGAポリマーを含む組成物など)、リポソーム、エマルション(油中水滴エマルションなど)、ゲル、油脂中の不溶性塩類又は懸濁液を含んでいてもよい。この製剤は、環状ペプチドの濃度及び量、使用する材料の持続的放出率、及び、当業者に公知のその他の要因に応じて、毎日、週1回、月1回、又は、その他の周期的基準で注射が必要とされるものであってもよい。
【0056】
本発明の1つ以上のペプチドを含む組成物は、錠剤又はカプセルなどの各投薬形態で経口的に投与可能である。一態様において、各投薬形態は、腸溶性コーティングと、選択的に、取り込みを増加させ、プロテアーゼ分解を減少させ、細胞透過性を増大させるための1つ以上の薬剤とを含む。
【0057】
性的不能用に、好ましい態様において、本発明のペプチドの1つ以上は、予想される性行為の1時間以内、2時間以内又は約4時間以内などのように、必要に応じて投与できるように調剤される。一態様においては、組成物が皮下注射用に調剤される。別の一態様において、上記組成物は、口腔投与、鼻腔投与、及び、吸入投与などを含む、様々な経皮的投与経路の任意のもののために調剤される。別の一態様において、組成物は、透過増強剤などの様々な他の薬剤の任意のものを含む水性組成物の約20μl乃至約200μlの容積を送達する定量スプレー装置などによって鼻腔投与用に調剤される。
【0058】
5.0 成形の方法
一般に、本発明のペプチドを、固相合成によって合成し、当業界で公知の方法によって精製することができる。様々な樹脂及び試薬を用いた数多くの周知のあらゆる工程を用いて、本発明のペプチドを調製することができる。
【0059】
本発明の環状ペプチドは、アミノ酸間のペプチド結合を形成するための公知の従来的工程によって容易に合成することができる。そのような従来的工程には、例えば、カルボキシル基及びその他の反応性基が保護されたアミノ酸又はその残基の遊離したアルファアミノ基と、アミノ基又はその他の反応性基が保護されたその他のアミノ酸又はその残基の遊離した第1級カルボキシル基との縮合を許容する任意の溶液相工程が含まれる。好ましい従来的工程においては、本発明の環状ペプチドを、固相合成によって合成し、当業界で公知の方法に従って精製することができる。様々な樹脂及び試薬を用いた数多くの周知のあらゆる工程を用いて、本発明のペプチドを調製することができる。
【0060】
環状ペプチドを合成する工程は、所望の配列中の各アミノ酸を他のアミノ酸若しくはその残基に続いて一つずつ付加させる工程によって、又は、所望のアミノ酸配列を有するペプチド断片をまず従来的に合成し、次いで、縮合させて所望のペプチドを与える工程によって実行可能である。次いで、得られたペプチドを環化することによって本発明の環状ペプチドが得られる。
【0061】
固相ペプチド合成方法は、周知であり、当業界で実施されている。そのような方法において、本発明のペプチドの合成は、固相法の一般原則に従って成長ペプチド鎖に所望のアミノ酸残基を一つずつ連続的に組み込むことによって実行することができる。これらの方法は、Merrifield,R.B.,Solid phase synthesis(Nobel lecture)Angew Chem 24:799−810(1985)、及び、Barany et al.,The Peptides,Analysis,Synthesis and Biology,Vol.2,Gross,E.and Meienhofer,J.,Eds.Academic Press 1−284(1980)を含む多数の参考文献に開示されている。
【0062】
ペプチドの化学合成において、様々なアミノ酸残基の反応性側鎖基は、適切な保護基によって保護され、その保護基が除去されるまでその部位で化学反応が生じるのを防ぐ。本体がカルボキシル基において反応しながら、アミノ酸残基又は断片のアルファアミノ基を保護することも一般的である。後で、アルファアミノ保護基を選択的に除去することによってその部位で生じる次の反応を可能にする。特定の保護基は、開示されており、固相合成法及び溶液相合成法において公知である。
【0063】
アルファアミノ基は、ベンジルオキシカルボニル(Z)、ならびに、置換されたベンジルオキシカルボニル、p−クロロベンジルオキシカルボニル(Z−Cl)、p−ニトロベンジルオキシカルボニル(X−NO)、p−ブロモベンジルオキシカルボニル(Z−Br)、p−ビフェニル−イソプロポキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)及びp−メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz)などのウレタンタイプ保護基と、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル及びアリルオキシカルボニル(Alloc)などの脂肪族ウレタンタイプ保護基とを含む、適切な保護基によって保護されていてもよい。Fmocは、アルファアミノ保護に好適である。
【0064】
グアニジノ基は、ニトロ、p−トルエンスルホニル(Tos)、Z、ペンタメチルクロマンスルフォニル(Pmc)、アダマンチルオキシカルボニル、ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルフォニル(Pbf)及びBocなどの適切な保護基によって保護されていてもよい。Pbf及びPmcは、アルギニンのための好ましい保護基である。
【0065】
本明細書に記載されている本発明のペプチドは、Symphony Multiplex Peptide Synthesizer(Rainin Instrument Company)自動ペプチドシンセサイザによって、メーカーによって提供されるプログラミングモジュールを用いて、製造社のマニュアルに記載されているプロトコルに従って固相合成を用いて調製されたものである。
【0066】
固相合成は、保護されたアルファアミノ酸を適切な樹脂に結合させることによって、ペプチドのC末端から開始される。そのような出発物質は、アルファアミノが保護されたアミノ酸を、エステル結合によってp−ベンジルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂、2−クロロトリチルクロリド樹脂若しくはオキシム樹脂に、p−[(R,S)−α−[1−(9H−フルオロ−エン−9−イル)−メトキシホルムアミド]−2,4−ジメチルオキシベンジル]−フェノキシ酢酸(Rink linker)などのFmoc−リンカー間のアミド結合によってベンズヒドリルアミン(BHA)樹脂に、又は、当業界で周知のその他の手段によって、付着させることによって調製される。Fmoc−リンカー−BHA樹脂支持体は商業的に入手可能であり、通常、可能であれば用いられる。樹脂剤は、必要に応じて反復サイクルを通じて運ばれて、アミノ酸を連続的に付加させる。アルファアミノFmoc保護基は、塩基性条件下において除去される。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中のピペリジン、ピペラジン、ジエチルアミン又はモルホリン(20−40%の体積対体積)をこの目的に用いてもよい。
【0067】
アルファアミノ保護基を除去した後に、次の保護されたアミノ酸が所望の順序で段階的に結合することによって、中間体である保護されたペプチド樹脂が得られる。ペプチドの固相合成においてアミノ酸を結合させるために用いられる活性化剤は、当業界において周知である。ペプチドが合成された後、必要であれば、ペプチドのさらなる誘導体化のために当業界において広く知られている方法を用いることによって、直交的に保護された側鎖保護基を除去してもよい。
【0068】
一般に、必要に応じて直交保護基(orthogonal protecting groups)が用いられる。例えば、本発明のペプチドは、アミノ基含有側鎖を有する複数のアミノ酸を含む。一態様において、Allyl−Alloc保護機構は、その側鎖を介してラクタムブリッジを形成するアミノ酸と共に使用される。また、異なる反応性条件下において切断可能な直交保護基は、アミノ基含有側鎖を有する他のアミノ酸に使用される。したがって、アミノ基含有側鎖を有する他のアミノ酸がFmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Lys(Pbf)−OH、及び、Fmoc−Dab(Pbf)−OHなどの異なる直交保護基を有していても、例えば、Fmoc−Lys(Alloc)−OH、Fmoc−Orn(Alloc)−OH、Fmoc−Dap(Alloc)−OH、Fmoc−Dab(Alloc)−OH、Fmoc−Asp(OAll)−OH、又は、Fmoc―Glu(OAll)−OHアミノ酸が、環化時にラクタムブリッジを形成する部位に使用され得る。その他の保護基を同様に用いることができる。限定されるものではないが、例えば、Mtt/OPp(4−メチルトリチル/2−フェニルイソプロピル)は、環化時にラクタムブリッジを形成する側鎖と共に、Mtt/OPpの切断に適した条件を用いて切断できない他の部位に用いられる直交保護基と共に、使用することができる。
【0069】
固相合成中に又は樹脂から除去した後に、ペプチド中の反応性基を選択的に修飾することができる。例えば、ペプチドを、樹脂に接しているときに修飾してアセチル化などのN末端修飾を得てもよいし、又は、切断剤を用いて樹脂から除去した後に修飾してもよい。同様に、アミノ酸の側鎖を修飾する方法は、ペプチド合成の当業者に周知である。ペプチドに存在する反応性基に対してなされる修飾の選択は、部分的には、ペプチドに望まれる特性によって決定されるであろう。
【0070】
本発明のペプチドの好ましい一実施形態においては、N末端基がN−アセチル基の導入によって修飾される。一態様においては、N末端における保護基を除去した後に、ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基の存在下において、樹脂に結合したペプチドを、ジクロロメタン中の無水酢酸と反応させる方法が用いられる。溶液相アセチル化を含むN末端アセチル化の他の方法は、当業界において公知であり、使用することができる。
【0071】
一実施形態において、ペプチドを、ペプチド樹脂から切断する前に環化することができる。反応性側鎖部位によって環化するためには、所望の側鎖を脱保護し、ペプチドを適切な溶媒中に懸濁し、環式カップリング剤を加える。適切な溶媒には、例えば、DMF、ジクロロメタン(DCM)又は1−メチル−2−ピロリドン(NMP)が含まれる。適切な環式カップリング試薬には、例えば、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TBTU)、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(BOP)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート、(PyBOP)、2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルのウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TATU)、2−(2−オキソ−1(2H)−ピリジル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TPTU)、又は、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(DCCI/HOBt)が含まれる。カップリングは、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、sym−コリジン、又は、N−メチルモルホリン(NMM)などの適切な塩基の使用によって従来的に開始される。
【0072】
次いで、環化されたペプチドを、DCM中のエチルアミンなどのあらゆる適切な試剤、又は、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリイソプロピルシラン(TIS)、ジメトキシベンゼン(DMB)及び水などの試剤の様々な組合せを用いて、固相から切断することができる。得られる粗製のペプチドを乾燥し、アミノ酸側鎖保護基が残っている場合には、水の存在下のTFA、TIS、2−メルカプトエタン(ME)及び/又は1,2−エタンジチオール(EDT)などの任意の適切な試剤を用いて切断しする。最終生産物を、冷却したエーテルを加えることによって沈殿させ、濾過によって回収する。最終精製は、C18カラムなどの適切なカラムを用いた逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)、又は、ペプチドのサイズ又は電荷に基づいた方法などの分離又は精製のその他の方法を使用することができる。精製時に、ペプチドを、高機能液体クロマトグラフ(HPLC)、アミノ酸分析、質量分析法などの任意の数の方法によって分析してもよい。
【0073】
主として固相Fmoc化学作用に関する合成が説明されているが、限定されるものではないが、例えば、Boc化学作用、溶液化学作用及び他の化学作用を用いた方法といった、他の化学作用及び合成法を用いて本発明の環状ペプチドを作成してもよいことは、理解されるであろう。
【0074】
6.0 製剤形態
本発明の環状ペプチドの1つ以上を含む組成物の製剤形態は、所望の投与経路に応じて変わってもよい。したがって、製剤形態は、皮下注射、静脈注射、局所適用、眼内適用、鼻内噴霧用途、吸入適用、及び、他の経皮的適用に適したものであってもよい。
【0075】
6.1 本発明の環状ペプチドの塩形態
本発明の環状ペプチドは、薬学的に許容可能な任意の塩の形態であってもよい。「薬学的に許容可能な塩」という用語は、無機若しくは有機の塩基及び無機若しくは有機の酸を含む、薬学的に許容可能な非毒性の塩基又は酸から調製された塩を表す。無機塩基に由来する塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン酸塩、亜マンガン酸、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが含まれる。特に、アンモニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩及びナトリウム塩が好ましい。薬学的に許容可能な非毒性の有機塩基に由来する塩には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、及び、トロメタミンなどの、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミン、自然発生の置換されたアミンを含む置換されたアミン、環状アミン、並びに、塩基性イオン交換樹脂が含まれる。
【0076】
本発明の環状ペプチドが塩基性である場合、酸付加塩は、無機及び有機の酸を含む薬学的に許容可能な非毒性の酸から調製されていてもよい。そのような酸は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、カルボン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、ムチン酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、及び、トリフルオロ酢酸などを含む。本発明のペプチドの酸付加塩は、適切な溶媒中において、ペプチドと、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸又はメタンスルホン酸などの酸の過剰量とから調製される。酢酸、酢酸アンモニウム及びトリフルオロ酢酸塩形態は、特に有用である。本発明のペプチドが酸性部位を含んでいる場合には、薬学的に許容可能な適切な塩は、ナトリウム塩若しくはカリウム塩などのアルカリ金属塩、又は、カルシウム塩若しくはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩を含んでいてもよい。
【0077】
6.2 医薬品組成物
本発明は、本発明の環状ペプチド及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬品組成物を提供する。この担体は、液体製剤であってもよく、好ましくは、緩衝された等張水性溶液である。以下に説明するように、薬学的に許容可能な担体は、希釈剤及び担体などの賦形剤、並びに、安定化剤、保存剤、可溶化剤、及び、バッファなどの添加剤も含む。
【0078】
本発明の環状ペプチド組成物は、必要に応じて、希釈剤及び担体などの賦形剤、並びに、安定化剤、保存剤、可溶化剤、及び、バッファなどの添加剤を含む、1つ以上の薬学的に許容可能な担体を共に、本発明の環状ペプチドの少なくとも1つを含む医薬品組成物に調剤又は混合されてもよい。製剤賦形剤は、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを含んでいてもよい。注射用又は他の液体投与製剤用として、少なくとも1つ以上の緩衝された成分を含む水が好ましく、安定化剤、保存剤及び可溶化剤を用いてもよい。固体投与製剤用に、でんぷん、糖、脂肪酸などの、様々な濃化剤、充填材、増量剤、及び担体添加剤の任意のものを用いることができる。局所投与製剤用に、様々なクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、及び、ローション剤などの任意のものを用いることができる。大部分の医薬製剤用において、非活性成分は、製剤の重量又は体積の大部分を構成するであろう。医薬製剤用に、定量的放出の、持続的放出の、又は、徐放性の製剤及び添加剤の様々な任意のものを用いて、一定期間にわたって本発明のペプチドが送達されるように投薬量を定めてもよいことも意図されている。
【0079】
患者に投与する本発明の環状ペプチドの実際の量は、一般に、投与の様式、使用する製剤、及び、所望の反応に応じて、かなり広い範囲で変わるであろう。
【0080】
実用的用途において、本発明の環状ペプチドは、従来の製薬配合技術による医薬担体との混合物中の活性成分として混合されてもよい。担体は、投与に望ましい薬剤の形態に応じて、例えば、経口、非経口(静脈内を含む)、尿道、膣、直腸、鼻、口腔、舌下腺などの様々な形態をとり得る。経口投薬形態の組成物の調製において、例えば、懸濁液、エリキシル剤及び溶液などの経口液体製剤;又は、でんぷん、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、バインダ、及び、崩壊剤などの担体の場合、並びに、例えば、粉末、硬軟カプセル剤と軟カプセル剤、及び、錠剤などの経口固形製剤の場合には、例えば、水、グリコール、油脂、アルコール、香料、保存剤、着色剤などの通常の医薬品媒体の任意のものを使用することができる。
【0081】
投与の容易さの理由により、錠剤及びカプセル剤は、都合のよい経口単位投与形態を意味する。必要に応じて、錠剤は、水性又は非水性の標準的技術によってコーティングされていてもよい。そのような治療的に有効な組成物中の活性ペプチドの量は、有効薬量が得られる量である。別の有利な単位投与形態においては、シート、ウェーハ、及び、錠剤などの舌下構成物を用いてもよい。
【0082】
錠剤、ピル、及び、カプセル剤などは、トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ又はゼラチンなどのバインダ;リン酸カルシウムなどの添加剤;コーンスターチ、ポテトスターチ又はアルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;及び、スクロース、ラクトース又はサッカリンなどの甘味料を含んでいてもよい。単位投与形態がカプセルである場合、上記タイプの成分に加えて、脂肪油などの液体担体が含まれていてもよい。
【0083】
他の様々な成分を、コーティングとして用いてもよいし、又は、投与単位の物理的形態を変更するために用いてもよい。例えば、錠剤は、シェラック、糖又は両方でコーティングされていてもよい。シロップ又はエリキシルは、活性成分に加えて、甘味料としてスクロース、保存剤としてメチルパラベン及びプロピルパラベン、チェリー桜又はオレンジの香味などの染料及び香味を含んでいてもよい。
【0084】
環状ペプチドを非経口的に投与することもできる。これらの活性ペプチドの溶液又は懸濁液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中において調製可能である。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びこれらの油中混合物においても調製可能である。これらの調製は、選択的に、微生物の増殖を防止するための防腐剤を含んでいてもよい。
【0085】
注射可能な用途に適した製剤形態には、無菌水性の溶液又は分散液の即時的調製のための、無菌水性の溶液又は分散液と無菌粉末とが含まれる。すべての場合において、この形態は、無菌性であることが必要であり、また、注射器によって投与可能な程度に流動性を有するものあることが必要である。この形態は、製造及び貯蔵の条件下において安定であることが必要であり、また、バクテリア及び菌類などの微生物の汚染作用を受けないように保持されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、これらの適切な混合物)、及び、植物油を含む溶媒又は分散媒であってもよい。
【0086】
本発明の環状ペプチドは、鼻腔投与によって治療的に応用可能である。「鼻腔投与」は、本発明の環状ペプチドの任意のものの鼻腔内投与のあらゆる形態を意味する。ペプチドは、食塩水、クエン酸塩又は他の一般的な添加剤を含む溶液又は保存剤などの水溶液中に存在していてもよい。ペプチドは、乾燥した又は粉末の製剤で存在していてもよい。
【0087】
本発明の環状ペプチドは、ペプチド薬剤を含む薬剤の有効な鼻腔吸収を増大させる様々な薬剤の任意のものと共に配合されてもよい。これらの薬剤は、粘膜に対する許容不可能なダメージを伴わずに鼻腔吸収を増大させるはずである。米国特許第5,693,608号、第5,977,070号及び第5,908,825号は、特に、吸収促進剤を含む使用可能な数多くの医薬品組成物を教示しており、前述の各教示並びにすべての引用文献及び引用特許は、言及することによって組み込まれている。
【0088】
環状ペプチドは、水溶液中に存在する場合には、食塩水、酢酸、リン酸、クエン酸塩、酢酸又は他のバッファによって適切に緩衝されていてもよく、任意の生理的に許容可能なpH、通常、pH約4乃至pH約7であってもよい。リン酸塩緩衝食塩水、食塩水及び緩衝酢酸溶液などのバッファの組合せを用いることもできる。食塩水の場合には、0.9%の生理食塩水を用いることができる。酢酸、リン酸及びクエン酸塩などの場合には、50mMの溶液を用いることができる。バッファに加えて、適切な防腐剤を用いることによって、バクテリア及び他の微生物増殖を防止又は抑制することができる。使用可能な防腐剤の1つは、0.05%塩化ベンザルコニウムである。
【0089】
代替的な一実施形態において、本発明の環状ペプチドは、肺内に直接的に投与されてもよい。肺内投与は、定量吸入器によって実行することができる。定量吸入器は、患者による吸気中に稼働されて本発明のペプチドの定量ボーラスの自己投与を可能にする装置である。この実施形態の一態様において、環状ペプチドは、その粒子が肺表面に定着して排出されないために充分な質量を有するが、肺に届く前に気道の表面に残らないために十分に小さいものであるように、乾燥した微粒子の形態、例えば、約0.5μm乃至6.0μmの粒子で存在していてもよい。これらに限定されるものではないが、マイクロ製粉化、噴霧乾燥、及び、凍結乾燥を後に伴う急速凍結エアロゾルを含む、乾燥粉微粒子を作るための様々なあらゆる技術を用いることができる。マイクロ粒子によって、ペプチドは、肺深部に堆積することができ、それによって、血流中への迅速かつ効率的な吸収を与えることができる。さらに、そのようなアプローチによって、経皮、鼻腔、経口粘膜の送達経路の場合に時々必要とされるような、浸透促進剤が必要とされない。噴射剤をベースとするエアロゾル、噴霧器、一回用量乾燥粉末吸入器、及び、複数用量乾燥粉末吸入器を含む、様々なあらゆる吸入器を使用することができる。現在用いられる一般的な装置には、喘息、慢性閉塞性肺疾患などの治療用の薬剤を送達するために用いられる定量吸入器が含まれる。好ましい装置には、常に約6.0μmよりも小さい粒子径を有する微粉の雲又はエアロゾルを形成するために設計された乾燥粉吸入器が含まれる。
【0090】
平均粒度分布を含む微粒子サイズは、成形の方法によって制御可能である。マイクロ製粉化においては、フライスヘッドのサイズ、ロータの速度、及び、処理の時間などによって、微粒子サイズが決まる。噴霧乾燥においては、ノズルサイズ、流速、及び、乾燥機熱などによって微粒子サイズが決まる。凍結乾燥を後に伴う急速凍結エアロゾルによる作成においては、ノズルサイズ、流速、エアロゾル化された溶液の濃度などによって、微粒子サイズが決定される。これらのパラメータ及びその他のものを用いることによって微粒子サイズを制御してもよい。
【0091】
本発明の環状ペプチドは、注射、一般的には臀部又は三角筋における限時解放注射可能製剤の深筋肉内注射によって治療的に投与することができる。一実施形態において、本発明の環状ペプチドは、ポリエチレングリコール3350などのポリエチレングリコールと、選択的に、これらに限定されるものではないが、塩、ポリソルベート80、並びに、pH調整用の水酸化ナトリウム又は塩酸などの賦形剤を含む、1つ以上のさらなる賦形剤及び保存剤と共に調剤される。別の一実施形態において、本発明の環状ペプチドは、ポリ(オルトエステル)と、選択的に、1つ以上のさらなる賦形剤と共に調剤される。ここで、上記ポリ(オルトエステル)は、重合体骨格中の乳酸の可変的割合が任意である自触媒されたポリ(オルトエステル)であってもよい。一実施形態においては、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーを用いる。一般に、数多くの注射可能な任意の生分解性ポリマーは、限時解放注射可能製剤に使用可能であり、粘着性ポリマーであることが好ましい。この製剤は、環状ペプチドの濃度及び量、ポリマーの生体腐食速度、並びに、当業者に知られているその他の要因に応じて、週1回、月1回、その他の周期的基準での注射が必要なものであってもよい。
【0092】
6.3 本発明のペプチドの経口製剤
一態様においては、本発明の環状ペプチドが経口送達用に調剤される。ペプチドは、好ましくは、腸溶性保護剤に覆われるように、より好ましくは、錠剤又はカプセルが胃を通過するまで、選択的にはさらに小腸の一部を通過するまで、放出されないように調剤及び作成される。本出願の文脈において、腸溶性のコーティング又は成分という用語は、実質的に損傷を受けずに胃を通過するが、小腸で急速に分解して活性な薬剤物質を放出するコーティング又は材料を意味することは理解されるであろう。使用可能な腸溶性コーティング溶液の1つは、酢酸フタル酸セルロースと、選択的に、水酸化アンモニウム、トリアセチン、エチルアルコール、メチレンブルー及び精製水などの他の成分とを含む。酢酸フタル酸セルロースは、錠剤及びカプセル剤などの個々の投薬形態を腸溶的にコーティングするための医薬品工業において用いられており、約5.8未満のpHにおいて水に溶解しないポリマーである。酢酸フタル酸セルロースを含む腸溶性コーティングは、胃の酸性環境から保護するが、十二指腸の環境(pH約6乃至6.5)において溶解し始め、投薬形態が回腸(pH約7乃至8)に達する時までに完全に溶解する。酢酸フタル酸セルロースに加えて、限定されるものではないが、ヒドロキシプロピルメチルエチルセルローススクシナート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ酢酸ビニルフタレート及びメタクリル酸メタクリル酸メチル共重合体を含む他の腸溶性コーティング材料が、公知であり、本発明のペプチドと共に使用可能である。使用される腸溶性コーティングは、主として胃の外側の部位で投薬形態の溶解を促進し、少なくとも6.0のpHにおいて、より好ましくは約6.0乃至約8.0のpHにおいて腸溶性コーティングが溶解するように選択されてもよい。好ましい一態様においては、腸溶性コーティングが回腸の付近において溶解及び分解する。
【0093】
様々な浸透促進剤の任意のものを用いて、腸溶性コーティング溶解時の腸における取り込みを増加させてもよい。一態様において、浸透促進剤は、傍細胞輸送システム又は経細胞輸送システムのいずれかを増大させる。傍細胞輸送の強化は、細胞の密着結合を開くことによって達成することができる。経細胞輸送の強化は、細胞膜の流動性を増大させることによって達成することができる。そのような浸透促進剤の非限定的な代表例には、カルシウムキレート化剤、胆汁酸塩(ナトリウム胆汁酸塩など)及び脂肪酸が含まれる。傍細胞輸送を増加させるために、本発明のペプチドは、例えば、腸溶性コーティングされたカプセル中のオレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、カプリン酸ナトリウム、又は、共役リノール酸などのような、脂肪酸を含むものに由来する腸溶性コーティングされた各投薬形態で存在していてもよい。
【0094】
一態様において、錠剤又はカプセルなどの個々の投薬形態、任意に、さらに、ポビドンなどのような普通の製薬の結合剤を含む、希釈剤、流動促進剤、微結晶性セルロースなどのような充填材、ステアリン酸マグネシウムなどのような潤滑剤、クロスカルメロースナトリウムなどのような崩壊剤、保存剤、着色剤、など、それらの通常の知られているサイズ及び量において。いくつかの実施形態においては、腸のプロテアーゼの基質として作用するペプチド又はポリペプチドがさらに加えられる。
【0095】
6.4 投与経路
本発明の環状ペプチドの1つ以上を含む組成物が注射によって投与される場合、注射は、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、又は、当業界で公知のその他の手段であってもよい。本発明のペプチドは、限定されるものではないが、錠剤、カプセル剤、カプレット、懸濁液、粉末、凍結乾燥された調製、坐薬、視覚の滴剤、皮膚貼付剤、経口可溶性製剤、スプレイ、及び、エアゾール剤などの製剤を含む、当業界において公知のあらゆる手段によって調剤されてもよく、また、バッファ、バインダ、賦形剤、安定化剤、酸化防止剤、及び、当業界において公知の他の薬剤と混ぜて製剤されてもよい。一般に、本発明のペプチドが細胞の表皮層を超えて取り入まれる任意の投与経路を使用することもできる。したがって、投与は、粘膜、口腔投与、経口投与、経皮投与、吸入投与、鼻腔投与、尿道内投与、膣内投与、直腸内投与などの投与を意味し、これらを含んでいてもよい。
【0096】
6.5 治療的有効量
一般に、患者に投与される本発明の環状ペプチドの実際の量は、投与の態様、使用する製剤、及び、所望の反応に応じてかなり広範囲で変わるだろう。治療のための投薬量は、所望の治療効果を生じさせるのに充分な量の、前述の手段又は当業界において公知のその他の任意の手段による投与である。したがって、治療的有効量は、患者において性的不能を治療的に緩和するか、又は、性的不能の発病若しくは再発を防止若しくは遅延させるのに充分な本発明のペプチド又は医薬品組成物の量を含む。一般に、本発明の環状ペプチドは、高度に活性である。例えば、環状ペプチドは、選択した特定のペプチド、所望の治療効果、投与経路、製剤形態、及び、当業者に公知のその他の要因に応じて、体重1kg当たりおよそ、0.1、0.5、1、5、50、100、500又は5000μg/kgで投与することができる。
【0097】
7.0 本発明のペプチドの評価において用いた試験及び分析
結合、機能的状態及び有効性を決定するための様々な分析系及び動物モデルによって、本発明のメラノコルチンレセプタ特異的環状ペプチドを試験することができる。
【0098】
7.1 [I125]−NDP−α−MSHを用いた競合的阻害分析
組換えのhMC4−R、hMC3−R又はhMC5−Rを発現するHEK−293細胞から、及び、B−16マウスメラノーマ細胞(内因性のMC1−Rを含む)から調製された細胞膜破砕物を用いて競合的阻害結合アッセイを行う。いくつかの事例においては、組換えhMC1−Rを発現するHEK−293細胞を用いた。その後の実施例において、すべてのMC3−R、MC4−R及びMC5−R値は、ヒト組換え型レセプタに対するものである。値がヒト組み換えMC1−Rに対するものである先頭が「hMC1−R」でなければ、MC1−R値は、B−16マウスメラノーマ細胞に対するものである。分析は、0.5%のウシ血清アルブミン(画分V)であらかじめコーティングした96ウェルのGF/B Milliporeマルチスクリーンフィルタプレート(MAFB NOB10)中で実行された。膜破砕物を、0.2nM(hMC4−Rに対して)、0.4nM(MC3−R及びMC5−Rに対して)、又は、0.1nM(マウスB16のMC1−R又はhMC1−Rに対して)の[I125]NDP−α−MSH(Perkin Elmer)と、100mMのNaCl、2mMのCaCl、2mMのMgCl、0.3mMの1,10−フェナントロリン及び0.2%のウシ血清アルブミンと共に25mMのHEPESバッファ(pH7.5)を含むバッファ中の漸増する濃度の本発明の環状ペプチドと共に培養した。37℃での60分間のインキューベーションの後に、分析混合物をろ過し、氷冷したバッファで膜を3回洗浄した。フィルタを乾燥し、γ計数器で結合した放射能についてカウントした。非特異的結合は、1μMのNDP−α−MSHの存在下において、[I125]−NDP−α−MSHの結合の阻害によって測定した。最大の特異的結合(100%)を、1μMのNDP−α−MSHの非存在下及び存在下で細胞膜に結合した放射能(cpm)における差異として定義した。[I125]−NDP−α−MSH結合のパーセント阻害を決定するために、試験化合物の存在下で得られた放射能(サイクル毎分)を、100%の特異的結合に対して標準化した。各分析を3回反復して実施し、0%未満の結果を0%として報告するように、実際の平均値が記載されている。本発明の環状ペプチドに対するKi値は、グラフパッドプリズム(登録商標)曲線適合ソフトウェアを用いて決定した。hMC3−Rで行ったのと同様に、[I125]−NDP−α−MSHを用いてhMC1−R及びhMC4−Rに対する結合についてのデータをここにおいて報告する。
【0099】
7.2 Eu−NDP−α−MSHを用いた競合結合測定
代替的に、競合的阻害結合分析は、ランタニドキレート化合物の時間分解蛍光測定(TRF)による決定によって、Eu−NDP−α−MSH(PerkinElmer Life SciencesカタログNo.AD0225)を使用して実行された。[I125]−NDP−α−MSHを用いた比較研究において、パーセント阻害及びKiについては、実験誤差範囲内の同じ値が得られた。一般に、Ki値を決定するための競合試験は、組換え型のhMC4−Rを発現するHEK−293細胞から調製した細胞膜破砕物を、9つの異なる濃度の本発明の環状ペプチドと、並びに、100mMのNaCl、2mMのCaCl、2mMのMgCl、0.1%のBSA、及び、0.3mMの1,10−フェナントロリンと共に25mMのHEPESバッファを含む溶液中の1nMのEu−NDP−α−MSHと共にインキュベートすることによって実行した。37℃での90分間のインキューベーションの後に、この反応を、AcroWell96ウェルフィルタプレート(Pall Life Sciences)による濾過によって停止させた。このフィルタプレートを、氷冷した200μlのリン酸塩緩衝食塩水で4回洗浄した。DELFIA Enhancement溶液(PerkinElmer Life Sciences)を各ウェルに加えた。このプレートを撹拌器において15分間培養し、340nmの励起及び615nmの放射波長において読み取った。各分析を2回反復して実施して平均値を用いた。Ki値は、一部位固定の勾配競合結合モデルを用いて、グラフパッドプリズム(登録商標)ソフトウェアを用いた曲線適合によって決定した。hMC5−Rに対する結合についてのデータ及びEu−NDP−α−MSHを用いたhMC3−R及びhMC4−Rでのデータをここに報告する。
【0100】
7.3 [I125]−AgRP(83−132)を用いた競合結合測定
hMC4−Rを発現する細胞から分離した細胞膜破砕物を用いて、[I125]−AgRP(83−132)を用いた競合的結合試験を実行する。この分析は、0.5%のウシ血清アルブミン(画分V)で予めコーティングされた、96ウェルのGF/B Milliporeマルチスクリーンフィルタプレート(MAFB NOB10)中で実行した。分析用混合物は、全容積200μL中に、100mMのNaCl、2mMのCaCl、2mMのMgCl、0.3mMの1,10−フェナントロリン、0.5%のウシ血清アルブミン、膜破砕物、25mMのHEPESバッファ(pH7.5)、放射性リガンド[I125]−AgRP(83−132)(Perkin Elmer)と共に、漸増する濃度の本発明のペプチドを含んでいた。0.2nMの放射性リガンド濃度において結合を測定した。37℃で1時間インキュベートした後に、その反応混合物をろ過し、500mMのNaClを含む分析バッファで洗浄した。乾燥したティスクをそのプレートから打ち抜いて、γ計数器でカウントした。放射性リガンドの全結合は、反応混合物に加えた数の10%を超えなかった。本発明の環状ペプチドに対するKi値は、グラフパッドプリズム(登録商標)曲線適合ソフトウェアを用いて決定した。
【0101】
7.4 アゴニスト活性についての分析
MC4−Rを発現するHEK−293細胞内において本発明の環状ペプチドが機能的反応を誘導する能力を指標として、細胞内のcAMPの蓄積を調べた。組換え型のhMC4−Rを発現するコンフルエントのHEK−293細胞を、酵素を含まない細胞解離バッファ中のインキューベーションによって培養皿から分離した。分散した細胞を、10mMのHEPES(pH7.5)、1mMのMgCl、1mMのグルタミン、0.5%のアルブミン、及び、0.3mMの3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)(ホスホジエステラーゼ阻害薬)を含むEarle’s Balanced Salt Solutionに懸濁させた。この細胞を1ウェル当たり0.5×10個の細胞密度で96ウェルプレートに被覆し、30分間予備培養した。細胞を37℃で1時間供することによって、200μLの全分析容積でDMSO(最終濃度1%のDMSO)中に0.05〜5000nMの濃度範囲で溶解させた本発明の試験環状ペプチドを試験した。NDP−α−MSHを対照アゴニストとして用いた。インキュベーションの終了時に、細胞を、50μLの溶解バッファ(cAMP EIAキット、Amersham)の添加、及び、その後の激しいピペット操作によって分断した。cAMP EIAキット(Amersham)を用いて溶解産物中のcAMPのレベルを決定した。グラフパッドプリズム(登録商標)ソフトウェアを用いた非線形回帰分析によってデータ解析を実行した。本発明の環状ペプチドの最大の効力を、対照メラノコルチンアゴニストNDP−αMSHによって達成された有効性と比較した。
【0102】
7.5 飼料摂取量及び体重変化
静脈内(IV)又は皮下の注射経路によって投与した選択されたペプチドについて、飼料摂取量及び体重における変化を評価する。Hilltop Lab Animals社(スコッツデール、ペンシルベニア)又は他の供給業者からオスのスプラーグドーリーラットを入手する。動物を、慣用ポリスチレンハンギングケージにそれぞれ収容し、管理された12時間のオン/オフ光サイクル中で保持する。水及びペレット化した飼料を無制限に与える。ラットに、溶媒若しくは選択したペプチド(0.3〜1.0mg/kg)を静脈投薬し、又は、溶媒若しくは選択したペプチド(最大30mg/kg)を皮下投与する。投薬後の24時間の期間の体重及び飼料摂取量における変化を測定する。投薬後の48時間及び72時間の期間の体重及び飼料摂取量における変化を測定することによって、体重及び飼料摂取量効果の変化がベースラインレベルまで戻るのを測定する。
【0103】
7.6 ペニス勃起の誘導
選択したペプチドを用いて、本発明のペプチドがオスラットにおいてペニス勃起(PE)を誘導する能力を評価する。体重250g〜300gのオスのスプラーグドーリーラットを、飼料及び水を無制限に与えながら12時間のオン/オフ光サイクル中で保持する。すべての行動研究を午前9時から午後4時の間に行い、6乃至8頭のラットのグループに、静脈経路から様々な量のペプチドを投与する。治療直後に、ラットを、通常は遠隔ビデオモニタリングによる行動観察用のポリスチレンケージ(長さ27cm、幅16cm及び高さ25cm)にそれぞれ収容する。ラットを1時間観察し、あくびの回数、毛づくろい、及び、PEを10分範囲で記録する。
【0104】
8.0 本発明のペプチド
式(I)に包含される環状ペプチドは、立体中心及び立体軸などの1つ以上の不斉元素を含んでおり、その結果、式(I)に包含されるペプチドは、様々な体アイソマーで存在することができる。式(I)に包含されるペプチドを含む具体的に及び一般的に記載されたペプチドについて、エナンチオマー及びジアステレオマーを含むすべてのキラル又は他のアイソマー中心におけるすべてのアイソマーが本発明に包含されるように意図されている。本発明のペプチドは、それぞれ複数の不斉中心を含んでおり、ラセミ混合物として使用されてもよいし、又は、エナンチオピュアな調製における本発明のペプチドの使用に加えて、鏡像異性的に濃縮された混合物として使用されてもよい。一般に、本発明のペプチドは、鏡像異的純度が維持される一方で、ラセミ混合物を作ることが可能になり、また、意図されるような試剤、条件及び方法を用いて、特定のL型又はD型アミノ酸などのキラル的に純粋な試剤を用いて合成される。そのようなラセミ混合物を、選択的に周知技術を用いて分離することができ、個々のエナンチオマーを単独で使用することもできる。ペプチドが互変アイソマーとして存在し得る、温度、溶媒及びpHの特定条件の下及び場合において、各互変異体は、平衡状態又は一形態が優勢な状態で存在していても、本発明に包含されるものとして意図されている。したがって、式(I)のペプチドの単一のエナンチオマーであって、光学活性体であるものは、不斉合成、光学的に純粋な前駆物質からの合成、又は、ラセミ化合物の分解によって得ることができる。
【0105】
式(II)のペプチドは式(I)のペプチドの特異的立体異体であるが、本発明を、式(II)に包含される立体アイソマーに限定されるものとして解釈してはならない。
【0106】
本発明は、本発明のペプチドのプロドラッグであって、活性薬理ペプチドになる前に投与時に代謝プロセスによって化学変換されるプロドラッグをさらに含むように意図されている。一般に、そのようなプロドラッグは、本発明のペプチドの機能的誘導体であり、インビボにおいて式(I)のペプチドに容易に変換可能である。プロドラッグは、任意の共有結合で結合した化合物であり、インビボにおいて式(I)の活性親ペプチド剤を放出する。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製のための慣用的手法は、例えば、「プロドラッグの設計」,ed.H.Bundgaard、Elsevier(1985年)に記載されている。プロドラッグの典型例は、例えば、水酸基、カルボキシル基又はアミノ基のエステル化によって、機能性部位に生物学的に不安定な保護基を有している。したがって、例えば、限定されるものではないが、プロドラッグには、例えば、Rが−OHなどである、式(I)のR基の低級アルキルエステルなどのエステルプロドラッグ形態が用いられる式(I)のペプチドが含まれる。この低級アルキルエステルは、アラルキルラジカル中に6乃至12個の炭素を有するアルキルラジカル又はアラルキルエステル中に1乃至8個の炭素を含んでいてもよい。おおまかに言えば、プロドラッグには、インビボにおいて、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、ヒドロキシ化、脱ヒドロキシ化、加水分解、脱水、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化、又は、脱リン酸化されることによって、式(I)の活性親ペプチド剤を生じさせることができる化合物が含まれる。
【0107】
主題となる発明は、式(I)中に示されている1つ以上の原子が、一般に天然にみられる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子で置換されているという事実を除き、式(I)で列挙されるものと同一のペプチドをも含む。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例には、H、H、13C、14C、15N、18O及び17Oなどの、水素、炭素、窒素及び酸素の同位体がそれぞれ含まれる。本発明のペプチド、並びに、前記同位体及び/又はその他の原子のその他の同位体を含む前記化合物の薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物は、本発明の範囲内である。例えば、H及び14Cなどの放射性同位体が組み込まれるものなどのような、特定の同位体でラベルした本発明の化合物は、薬剤及び/又は基質の組織分布分析などの様々な分析において使用可能である。重水素(H)による1つ以上の水素原子の置換などのような、より重い同位体による置換は、いくつかの事例において、代謝安定性の増大を含む、薬理学的優位性を与えることができる。式(I)の同位体でラベルされたペプチドは、通常、同位体でラベルされた試剤を同位体でラベルされていない試剤で置き換えることによって調製することができる。
【0108】
8.1 下記構造のペプチドを合成した。

このペプチドは、アミノ酸配列Ac−Arg−シクロ(Asp−Dab−D−Phe−Arg−Trp−Lys)−NHを有している。実施例8.1の環状ペプチドは、酢酸(AcOH)及びトリフルオロ酢酸(TFA)塩形態として調製された。実施例8.1の環状ペプチドは、分子式C487117を有しており、計算上1030.19の分子量を有する。実施例8.1の環状ペプチドの分子量は、酢酸塩形態としては1210.34であり、TFA塩形態としては1372.25であった。
【0109】
実施例8.1の環状ペプチドは、NDP−α−MSHを用いた競合試験において、MC1−R、MC3−R、MC4−R及びMC5−Rに対する結合について評価された。この環状ペプチドは、MC4−RにおけるKi値が4.0nM(4回の試験の平均)であり、MC1−Rに対するKi値が9nM(5回の試験の平均)であり、MC3−Rに対するKi値が150nM(2回の試験の平均)であり、また、MC5−Rに対するKi値が2270nM(2回の試験の平均)であり、MC4−Rに対して選択的であることがわかった。機能性試験において、実施例8.1の環状ペプチドは、MC4−Rにおけるアゴニストであり、MC4−Rにおいて内因活性が91%であり、NDP−α−MSHが100%であり、EC50が0.3nM(5回の試験の平均)であると測定された。
【0110】
ブレメラノチド(式Ac−Nle−シクロ(Asp−His−D−Phe−Arg−Trp−Lys)−OH)の非特異的MC4−Rアゴニスト)をポジティブコントロールとして用いたラットペニス勃起試験において、実施例8.1の環状ペプチドは、ラットモデルでみられる自然勃起において、溶媒コントロールと比較して統計的に有意な増大をもたらすことがわかった。皮下経路で溶媒のみの投与によって1時間にラット1頭当たり平均0.429±0.202回の自然勃起が生じ(n=7)、実施例8.1の環状ペプチドは、用量0.3mg/kgで皮下投与すると1時間にラット1頭当たり平均2.286±0.286回の自然勃起が生じ(n=7)、用量1.0mg/kgでは、1時間にラット1頭当たり平均4.571±1.088回の自然勃起が生じた(n=7)。用量1mg/kgで静脈内投与したブレメラノチド(ポジティブコントロール)は、1時間にラット1頭当たり、平均4±0.535回の自然勃起を生じさせた(n=7)。
【0111】
驚くべきことに、好ましくは、遠隔測定によってモニターされる外科的に埋め込んだ圧力変換器を用いた最大血圧のラットモデルにおいて、実施例8.1の環状ペプチドは、ペニス勃起試験において同等の結果を生じさせながら、一用量のブレメラノチドが上昇させたよりも、最大血圧の上昇がより小さいことがわかった。図1は、皮下注射によって0.84μmol/kg及び3.0μmol/kgの用量で実施例8.1の環状ペプチドを接種した、また、静脈内注射によって1μmol/kgの用量でブレメラノチドを接種した変換器を埋め込んだ8頭の動物を用いた交差試験の結果を示している。同じ用量及び投与経路によるラット1頭当たりの1時間当たりのペニス勃起について同時に行なった試験において、3.0μmol/kgの実施例8.1の環状ペプチドは、1μmol/kgのブレメラノチドと同等又はさらに多いペニス勃起を生じさせた。同じ投与経路による同じ用量の実施例8.1の環状ペプチドとブレメラノチドとの比較を含む他の試験においては、実質的に同じ結果が得られた。
【0112】
8.2 下記構造のペプチドを合成した。

このペプチドは、アミノ酸配列Ac−Arg−シクロ(Asp−Dab−D−Phe−Arg−Trp−Lys)−OHを有していた。実施例8.2の環状ペプチドは、TFA塩形態として調製された。実施例8.2の環状ペプチドは、分子式C48701610を有しており、計算上1031.17の分子量を有する。TFA塩形態の実施例8.2の環状ペプチドの分子量は、1373.23であった。
【0113】
実施例8.2の環状ペプチドは、NDP−α−MSHを用いた競合試験において、MC1−R、MC3−R、MC4−R及びMC5−Rに対する結合について評価された。この環状ペプチドは、MC4−Rに対するKi値が57nM(2回の試験の平均)であり、MC1−Rに対するKi値が234nM(3回の試験の平均)であり、MC3−Rに対するKi値が5804nM(2回の試験の平均)であり、MC5−Rに対するKi値が10000nM超(2回の試験の平均)であり、MC4−Rに対して選択的であることがわかった。機能性試験において、実施例8.1の環状ペプチドは、MC4−Rにおけるアゴニストであり、MC4−Rにおいて内因活性が91%であり、NDP−α−MSHが100%であり、EC50が4nM(4回の試験の平均)であると測定された。
【0114】
8.3 下記構造のペプチドを合成した。

このペプチドは、アミノ酸配列Ac−Arg−シクロ(Glu−Dab−D−Phe−Arg−Trp−Orn)−NHを有する。実施例8.3の環状ペプチドは、TFA塩形態として調製された。実施例8.3の環状ペプチドは、分子式C487117を有しており、計算上1030.19の分子量を有する。TFA塩形態の実施例8.3の環状ペプチドの分子量は、1372.25であった。
【0115】
実施例8.3の環状ペプチドは、NDP−α−MSHを用いた競合試験において、MC1−R、MC3−R、MC4−R及びMC5−Rに対する結合について評価された。この環状ペプチドは、MC4−RにおいてKi値が0.65nM(2回の試験の平均)であり、MC1−Rに対してKi値が1nM(3回の試験の平均)であり、MC3−Rに対してKi値が74nM(2回の試験の平均)であり、MC5−Rに対してKi値が300nM(2回の試験の平均)であることがわかった。機能性試験において、実施例8.3の環状ペプチドは、MC4−Rにおけるアゴニストであり、MC4−Rにおいて内因活性が94%であり、NDP−α−MSHが100%であり、EC50が0.3nM(5回の試験の平均)であると測定された。
【0116】
8.4 下記構造のペプチドを合成した。

このペプチドは、アミノ酸配列Ac−Arg−シクロ(Glu−Dab−D−Phe−Arg−Trp−Orn)−OHを有する。実施例8.4の環状ペプチドは、酢酸及びTFAの塩形態として調製された。実施例8.4の環状ペプチドは、分子式C48701610を有しており、計算上1031.17の分子量を有する。酢酸塩形態の実施例8.4の環状ペプチドの分子量は1211.32であり、TFA塩形態は1373.23であった。
【0117】
実施例8.4の環状ペプチドは、NDP−α−MSHを用いた競合試験において、MC1−R、MC3−R、MC4−R及びMC5−Rに対する結合について評価された。この環状ペプチドは、MC4−RにおいてKi値が8nM(2回の試験の平均)であり、MC1−Rに対してKi値が4nM(1回のみの試験)であり、MC3−Rに対してKi値が410nM(1回のみの試験)であり、MC5−Rに対してKi値が2366nM(2回の試験の平均)であることがわかった。機能性試験において、実施例8.4の環状ペプチドは、MC4−Rにおけるアゴニストであり、MC4−Rにおいて内因活性が91%であり、NDP−α−MSHが100%であり、EC50が3nM(9回の試験の平均)であると測定された。
【0118】
ポジティブコントロールとしてブレメラノチドを用いたラットペニス勃起試験において、実施例8.4の環状ペプチドは、溶媒コントロールと比較して、ラットモデルにおいてみられる自然勃起の統計的に有意な増加を生じさせることがわかった。皮下経路による溶媒のみの投与は、1時間にラット1頭当たり平均0.429±0.202回の自然勃起を生じさせた(n=7)。その一方で、0.3mg/kgの用量で皮下投与した実施例8.4の環状ペプチドによって1時間にラット1頭当たり平均2.571±0.685回の自然勃起が生じ(n=7)、1.0mg/kgの用量では、1時間にラット1頭当たり平均5.286±0.918回の自然勃起が生じた(n=7)。ポジティブコントロールである1mg/kgの用量で静脈内に投与したブレメラノチドは、1時間にラット1頭当たり平均4±0.535回の自然勃起を生じさせた(n=7)。
【0119】
驚くべきことに、好ましくは、遠隔測定によってモニターされる外科的に埋め込んだ圧力変換器を用いた最大血圧のラットモデルにおいて、実施例8.4の環状ペプチドは、ペニス勃起試験において同等の結果を生じさせながら、一用量のブレメラノチドが上昇させたよりも最大血圧の上昇がより小さいことがわかった。図2は、皮下注射によって1mg/kgの用量で実施例8.4の環状ペプチドを接種した、また、静脈内注射によって1mg/kgの用量でブレメラノチドを接種した変換器を埋め込んだ8頭の動物を用いた交差試験の結果を示している。同じ用量及び投与経路によるラット1頭当たりの1時間当たりのペニス勃起について同時に行なった試験において、1mg/kgの実施例8.4の環状ペプチドは、1mg/kgのブレメラノチドと同等又はさらに多いペニス勃起を生じさせた。同じ投与経路による同じ用量の実施例8.4の環状ペプチドとブレメラノチドとの比較を含む他の試験においては、実質的に同じ結果が得られた。
【0120】
これらの好ましい実施形態について詳細に言及しながら本発明を説明したが、その他の実施形態によっても同じ結果を達成することができる。本発明の変形及び修正は当業者に明らかであり、また、そのような修正及び等価物のすべてをカバーするように意図されている。上記において引用されているすべての参考文献、出願、特許、及び、刊行物の全開示は、言及することによって本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):

ここで、上記Rが−C(=O)−OH又は−C(=O)−NHであり、上記xが1又は2であり、上記yが3又は4であり、すべてのエナンチオマー若しくはジアステレオアイソマーを含む環状ペプチド、又は、これらのいずれかの薬学的に許容可能な塩であることを特徴とする環状ペプチド。
【請求項2】
式(II):

で表されることを特徴とする請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項3】
Ac−Arg−シクロ(Asp−Dab−D−Phe−Arg−Trp−Lys)−NH(配列番号:4)で表されることを特徴とする請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項4】
Ac−Arg−シクロ(Asp−Dab−D−Phe−Arg−Trp−Lys)−OH(配列番号:5)で表されることを特徴とする請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項5】
Ac−Arg−シクロ(Glu−Dab−D−Phe−Arg−Trp−Orn)−NH(配列番号:6)で表されることを特徴とする請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項6】
Ac−Arg−シクロ(Glu−Dab−D−Phe−Arg−Trp−Orn)−OH(配列番号:7)で表されることを特徴とする請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項7】
請求項1に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを具えることを特徴とする医薬品組成物。
【請求項8】
ヒト又は非ヒトの哺乳動物においてメラノコルチンレセプタによって媒介される疾病、兆候、病状、又は、症候群を治療する方法において、請求項7に記載の医薬品組成物を投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項9】
ヒト又は非ヒト哺乳動物においてメラノコルチンレセプタ機能の変化に対して反応する病状を治療する方法において、請求項7に記載の医薬品組成物を投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記病状が性的不能であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記性的不能がオスの勃起不全であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記性的不能がメスの性的不全であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記投与するステップが、経口、非経口、尿道、膣、直腸、鼻、口腔、又は、舌下において投与するステップを具えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
第2の性的不能用医薬品を投与するステップをさらに具えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩と、第2の性的不能用医薬品とを具えることを特徴とする医薬品組成物。
【請求項16】
医薬品として使用するのためのものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項17】
MC4レセプタの活性化に反応する疾病、疾患及び/又は病状の治療に使用するためのものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項18】
オスの勃起不全及びメスの性的不全を含む性的不能に使用するためのものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のペプチド。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−522839(P2011−522839A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512730(P2011−512730)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/046571
【国際公開番号】WO2009/152079
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(510319982)パラティン テクノロジーズ,インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】PALATIN TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】