患者モニタ用の干渉検出器
電力線、間接照明、調光器、テレビ又はコンピュータのディスプレイ、電源又は変圧器、医療器具から発生する電磁干渉などの周辺及び/又は環境ノイズのレベルを検知及び算出するシステムが開示される。いくつかの実施形態では、光検知器で検出した干渉信号の周波数解析を行い解析された周波数帯に集中する干渉信号強度を決定する。算出された強度の最大値を選択して最悪の干渉レベルが判定される。いくつかの実施形態では、決定された干渉信号強度を高い信頼性かつ非侵襲でユーザの生理的パラメータを検出するように構成された患者モニタリングシステムのノイズ許容範囲と比較する。比較結果は聴覚−視覚的にユーザに提示される。いくつかの実施形態では、本システムを電磁干渉のスポット測定に利用可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は米国特許法第119条(e)に基づき、2009年7月24日に出願された、「Interference Detector for Patient Monitor(患者モニタ用の干渉検出器)」と題する、米国特許仮出願第61/228,495号の優先権を主張し、参照によりそれが本願に援用される。
本出願は、1998年1月12日に出願された「Method and Apparatus for Demodulating Signals in Pulse Oximetry Systems(パルス酸素濃度計システムの信号復調方法および装置)」と題する米国特許第5,919,134号、および200年6月16日に出願された「Pulse Oximeter Probe−Off Detection System(パルス酸素濃度計プローブ−オフ検出システム)」と題する米国特許第6,526,300号に関連し、参照によりこの両方が本願に援用される。
本発明は一般に、患者モニタと、1つまたは複数の光学センサと、モニタとセンサの間の信号のやり取りをする通信ケーブルまたは装置とを含む、患者モニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
介護人のいる環境における標準的な介護には、例えば、アーバインのマシモコーポレーション(Masimo Corporation)から市販されている酸素濃度計技術を利用した分光分析による患者のモニタリングが含まれる。分光分析が可能な装置には一般的に、脈動する血液が流れている体組織などの測定部位に光放射を行う光源が含まれる。測定部位の組織及び流体による減衰(たとえば組織への透過や反射などによる)の後、1つまたは複数の光検出装置が減衰光を検出し、検出された減衰光に応答する1つまたは複数の検出信号を出力する。1つまたは複数の信号処理装置が検出器信号を処理し、グルコース、酸素、メトヘモグロビン、トータルヘモグロビン、そのほかの生理的パラメータなどの対象とする血液組成を示す測定値や、患者の健康状態または傾向を判定するのに有益なそのほかのデータまたはデータの組合せを出力する。そのような組合せとして、1つまたは複数の測定値または別々のパラメータの測定値の組合せに対して統計的解析を行って有用な情報とすることがしばしば行われる。
【0003】
上記に加えて、例えばグルコースやトータルヘモグロビンなどの、他の血液検体または患者パラメータを測定する非侵襲性の酸素濃度計技術の開発に多大の努力が傾注されてきた。残念なことに、これらのパラメータのあるものは非侵襲性の分光法での測定は困難であることが分かった。例えば、測定部位の生体組織と水分は、血中グルコースの測定に有効な多くの光の波長において高い固有吸収を有する。さらに、血液中のグルコースは他の血液検体に比べると相対的に濃度が低い。さらに、患者ごとに皮膚および血液組成の光学特性も大きく違っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに、周辺及び/又は環境からの干渉(すなわちノイズ)が、測定精度に悪影響を及ぼす可能性がある。干渉は、日常的に使用されている多くの電気装置から発生する。一般的な家庭を例にとると、電力線とコンセント、間接照明、調光器、テレビやコンピュータのディスプレイ、電源や変圧器が電磁干渉を発生させる。例えば、間接照明から発生するノイズは一般的に、50Hzまたは60Hzの基本周波数とその高調波に対応する周期で変化する。当業者には周知のように間接照明の周波数は、その間接照明とその他の干渉を起こす装置に供給されている電気の周波数、及び/又は自然光の周波数との関数である。間接照明の周波数は、したがって、その間接照明を生成する装置に使用されている電源システムに依存して変化する。間接照明の基本周波数の高調波は重要であり、間接照明はその高調波においても顕著な干渉を生じる可能性がある。これは間接照明が蛍光灯である場合に特に当てはまる。蛍光灯は第2高調波(すなわち100Hzまたは120Hz)および第4高調波(すなわち200Hzまたは240Hz)で顕著なノイズを発生させる。これに加えて、一般的な介護環境において、医療器具(たとえば電気焼灼装置)も顕著な電磁干渉を発生させる。これらおよびそのほかの課題により、生理的パラメータ(たとえばグルコース)を示す信号情報を干渉信号と区別することが困難となる。さらに、干渉レベルが未知の、広範な介護および非介護環境において、患者およびその他のユーザがグルコースやそのほかの生理的パラメータのデータを少なくともスポットチェック測定で所望することが多い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のいくつかの実施形態において、周辺及び/又は環境からの干渉のレベルを高い信頼性で測定できるように構成された干渉検出器が開示される。この検出器は、周波数解析を利用して対象とする周波数帯域における干渉レベルを判定および算出する。対象の帯域は様々な生理的パラメータ測定の際に解析に利用される周波数から構成されていてもよい。例えば、身体の組織や体液で減衰される変調光信号は、搬送波信号(たとえば周期的パルス列)の基本周波数および高調波周波数において生理学的情報を含んでいる可能性がある。干渉レベルが基本周波数および高調波周波数で測定されて、周辺及び/又は環境ノイズのある状態で生理的パラメータの信頼のおける測定ができるかどうかが判定される。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態において、干渉レベルは、対象とする周波数に集中する干渉信号のエネルギまたは電力として計算することができる。測定された最大の電力を利用して、周辺及び/又は環境からの干渉が生理的パラメータの測定精度へ及ぼす最悪の影響が判定される。測定された最大の電力を閾値と比較して、干渉の大きさと測定精度の予想される劣化とを客観的に判定することができる。閾値は干渉検出器の雑音レベル、すなわち熱ノイズ、ショットノイズ、その他などのためにシステムに本質的に内在する測定ノイズ信号の倍数に設定することができる。雑音レベルはさらにそのシステムでの信頼できる最小測定値の限界を設定する。雑音レベルの倍数と閾値はその装置で測定する生理的パラメータの種類によって変わりうる。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態において、干渉検出器は、測定された干渉レベルを閾値に対する相対値としてユーザに聴覚−視覚的に表示するように構成されていてもよい。視覚的表示には、干渉レベルに対する測定値を棒グラフ、図、グラフなどで表示することを含むことができる。聴覚表示では、干渉レベルに対する測定値の厳しさの度合いを音声で伝えることができる。聴覚−視覚表示は、スポットチェック測定に対して有用であって、生理的パラメータの測定値の予想される精度をユーザに迅速に知らせることができる。それに加えて、周辺及び/又は環境からの干渉が測定精度を著しく劣化させるかまたは測定値を信頼できなくする可能性のある状態をユーザに迅速に警告することができる。
【0008】
本発明を要約する目的で、本発明の特定の態様、利点、新規の特徴をここに記述した。もちろんこれらの態様、利点、特徴のすべてが必ずしも本発明の任意の特定の実施形態に具現化されるものではないことは理解されたい。
【0009】
以下の図面および関連する説明は本発明の実施形態を説明するために提供され、本発明の請求範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による例示的患者モニタリングシステムの斜視図であり、干渉検出器の出力の例示的視覚表示を含んでいる。
【図2】図1の患者モニタリングシステムの患者モニタと干渉検出器の例示的ブロック図である。
【図3】図2の患者モニタのデジタル信号プロセッサと信号抽出器のハードウェアの例示的ブロック図である。
【図4A】図2の患者モニタのデジタル信号プロセッサと信号抽出器と干渉検出器のハードウェアの例示的機能ブロック図である。
【図4B】図2の患者モニタのデジタル信号プロセッサと信号抽出器と干渉検出器のハードウェアの例示的機能ブロック図である。
【図4C】図2の患者モニタのデジタル信号プロセッサと信号抽出器と干渉検出器のハードウェアの例示的機能ブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態による、干渉検出プロセスの説明図である。
【図6A】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【図6B】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【図6C】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【図6D】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【図6E】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【図6F】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【図6G】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【図6H】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
周辺及び/又は環境からの干渉(すなわちノイズ)は、グルコース、酸素、メトヘモグロビン、トータルヘモグロビン、およびその他の生理的パラメータを測定可能なシステムなどの非侵襲性の患者モニタリングシステムの測定精度を阻害する可能性がある。測定を実行するために、これらのシステムは一般的に身体の組織及び体液で減衰された後に光検出器で検出される光学放射(すなわち光)信号の信号処理解析を行う。しかし、電力線とコンセント、間接照明、調光器、テレビまたはコンピュータのディスプレイ、電源または変圧器、医療器具(たとえば電気焼灼装置)などの多くの通常使用される電気装置から顕著な干渉が発生する。この干渉から、生理的パラメータを表す信号情報を区別することは困難な場合がある。さらに、干渉レベルが未知の、多様な介護および非介護環境において、患者およびその他のユーザがグルコースやそのほかの生理的パラメータのデータを少なくともスポットチェック測定で所望することが多い。
【0012】
干渉レベルを測定する既存の方法は、特にスポットチェック環境において不適切であることがある。例えば、1つの方法は、生理的パラメータの測定を実行するときに同時に干渉の測定を行う。しかし、干渉は非静的かつ非周期的であることが多く、非常に高いエネルギーレベルを有する短時間成分であったりすることから、上記の方法は信頼性がない可能性がある。したがって、そのような干渉レベルの測定は不正確で、信頼性が低いかもしれない。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、干渉レベルを高い信頼性で測定できるように構成された干渉検出器を説明する。この検出器は、周波数解析を利用して対象とする周波数帯域における干渉レベルを判定および算出する。対象の帯域は様々な生理的パラメータの測定時に解析に利用する周波数から構成されていてもよい。例えば、身体の組織や体液で減衰される変調光信号は、搬送波信号(たとえば周期的パルス列)の基本周波数および高調波周波数において生理学的情報を含んでいる可能性がある。干渉レベルが基本周波数および高調波周波数で測定されて、周辺及び/又は環境ノイズのある状態で生理的パラメータの信頼のおける測定ができるかどうかが判定される。いくつかの実施形態において、干渉レベルを利用して、所望信号に対する干渉を最小化する最適変調比を決定することができる。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、干渉レベルは、対象とする周波数に集中する干渉信号のエネルギまたは電力として計算することができる。測定された最大の電力を利用して、周辺及び/又は環境からの干渉が生理的パラメータの測定精度へ及ぼす最悪の影響が判定される。測定された最大の電力を閾値と比較して、干渉の大きさと測定精度の予想される劣化とを客観的に判定することができる。閾値は干渉検出器の雑音レベル、すなわち熱ノイズ、ショットノイズ、その他などのためにシステムに本質的に内在する測定ノイズ信号の倍数に設定することができる。雑音レベルはさらにそのシステムで信頼できる最小測定値の限界を設定する。雑音レベルの倍数と閾値はその装置で測定する生理的パラメータの種類によって変わりうる。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態において、干渉検出器は、測定された干渉レベルを閾値に対する相対値としてユーザに聴覚−視覚的に表示するように構成されていてもよい。視覚的表示には、干渉レベルに対する測定値を棒グラフ、図、グラフなどで表示することを含
むことができる。聴覚表示では、干渉レベルに対する測定値の厳しさの度合いを音声で伝えることができる。聴覚−視覚表示は、スポットチェック測定に対して有用であって、生理的パラメータの測定値の予想される精度をユーザに迅速に知らせることができる。それに加えて、周辺及び/又は環境からの干渉が測定精度を著しく劣化させるか、または測定値を信頼できなくする可能性のある状態をユーザに迅速に警告することができる。
【0016】
本発明の完全な理解に資するために、これ以降の詳細な記述においては図面を参照して本発明を説明する。以下においては同様の符合は同様の番号を参照する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態による患者モニタリングシステム100の斜視図を示す。システム100は、1つまたは複数の生理的パラメータと干渉レベルを非侵襲的に判定することができる携帯型患者モニタ103を含む。携帯型患者モニタ103はケーブル112を介して光学センサ101と通信する。いくつかの実施形態において、患者モニタ103はセンサ101を駆動して異なる波長の光を体組織(図示せず)に放射する。センサ101は体組織で減衰された後の光を検出し、センサ101で受信した光の量(これは減衰を含む)を示す信号をケーブル112を介して出力する。さらにいくつかの実施形態においては、モニタ103はケーブル112を介して、温度センサおよび1つまたは複数のセンサ101とケーブル112に接続されたメモリ装置と通信する。いくつかの実施形態において、モニタ103はネットワークインタフェース(図示せず)を介して他の記憶装置および遠隔装置と通信する。
【0018】
患者モニタは、ディスプレイ110と1つまたは複数の制御ボタン108を備えることができる。いくつかの実施形態において、ディスプレイ110は、1つまたは複数の仮想制御及び/又は変化ディスプレイ及び/又は制御スクリーンを含むことのできるタッチセンサディスプレイであってもよい。ディスプレイ110は、測定された多種類の生理的パラメータを表示して、情報を迅速かつ効果的にユーザに伝達するように構成することができる。例えば、ディスプレイ110は、血液酸素飽和度、脈拍、グルコース、メトヘモグロビン、トータルヘモグロビンなどの値を示すことができる。さらに図1に示すように、ディスプレイ110は、検出されたノイズ干渉レベルの視覚表示を伝達することができる。例えば、ディスプレイ110は棒グラフを出力するように構成することができる。そこでは、以下で詳細を説明するように、緑の網掛けが低レベルの干渉に対応し、赤の網掛けが高レベルの干渉に対応する。
【0019】
図2は、図1のモニタリングシステム100のような、患者モニタリングシステム200の患者モニタと干渉検出器のブロック図を示す。図2に示すように、モニタリングシステム200は、ケーブル212を介して通信するセンサ202と患者モニタ203を含む。いくつかの実施形態において、センサ202は、体組織205に光を照射する複数のエミッタ204(例えば図1に示すように8つのエミッタ)と、組織205で減衰された後の光を検出することができる1つまたは複数の検出器206(例えば図2に示すような4つの検出器)とを含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の検出器206が組織205で減衰された後の周辺及び/又は環境からの干渉レベルを検出するようにセンサ202を構成することができる。
【0020】
センサ202は、サーミスタまたは熱電対などの温度センサ207と、不揮発性(たとえばEEPROM)または揮発性メモリなどのようなメモリ装置208をさらに備えることもできる。センサ202は、温度センサ導線209、検出器複合信号導線210、メモリ装置導線214、エミッタ駆動信号導線216などを含む、部品との間を相互に信号を交信する複数の導線も含む。いくつかの実施形態において、センサ導線209、210、214、216がケーブル212を介して信号をモニタ203へ送信する。いくつかの実施形態において、ケーブル212は複数のシールド導線を含む。
【0021】
ここではケーブル212を参照して開示したが、本明細書の開示からセンサ202との通信は、多様なケーブル、ケーブルの設計、公衆または私的な通信ネットワークまたは計算機システム、有線または無線通信(IEEE802.11xを含むイーサネット(登録商標)、ブルートゥースまたはWiFiなど)、移動通信、またはそれらの組合せなどを有利に含んでもよいことは、当業者であれば理解されるであろう。
【0022】
いくつかの実施形態において、温度センサ207はセンサ202および、例えばエミッタ204などのその部品の温度をモニタする。例えばいくつかの実施形態において、温度センサ207は、光エミッタ204基板の温度をリアルタイムで概ね近似できる十分な熱伝導を有する熱容量材を備えているかまたはそれと交信する。いくつかの実施形態において、モニタ203は温度センサ207出力を有利に利用して、特に鋭敏な組織205への適用において何よりも患者の安全を確保するようにしてもよい。いくつかの実施形態において、モニタ203は温度センサ207の出力とモニタされた動作電流または電圧を有利に利用して、センサ202の操作条件を補正してもよい。
【0023】
メモリ208は、不揮発性メモリ、揮発性メモリ、またはそれらの組合せを含む、本明細書の開示により当業者に周知の多様なメモリ装置の任意の1つまたは複数を備えることができる。メモリ208は、広範なデータおよび情報の一部またはすべてを格納できるように構成されていてもよく、それらは例えば、センサ202の種類または操作情報、患者または体組織205のタイプ、バイヤまたは製造者情報、放射可能な波長の数を含むセンサ特性、エミッタ仕様、エミッタ駆動仕様、復調データ、計算モードデータ、較正データ、スクリプトや実行コードなどのソフトウェアまたはファームウェア、センサの電子要素、センサ部品の一部または全部が消耗して交換すべきかどうかを示すセンサ寿命データ、暗号化情報、モニタまたはアルゴリズム更新命令またはデータ、等々を含む。いくつかの実施形態において、メモリ装置208はエミッタ波長補正データを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、モニタ203はメモリ208を読み出して、格納されている広範なデータおよび情報のうちの1つまたはいくつかまたはすべてを判定することができる。図2に示すように、デジタル信号プロセッサ228は、メモリリーダまたはメモリライタなどを利用して、メモリ装置208と通信することができる。
【0024】
モニタ203は、導線210を介して検出器206からアナログ複合検出器信号を受信するように構成されたフロントエンド信号調整器222を備えることができる。信号調整器222は、信号のゲインを調節し、バンドパスフィルタまたはローパスフィルタに信号を通して望ましくない信号成分を除去し、所望の位相応答を有する全域通過フィルタに信号を通して信号位相を規格化する、などのアナログ複合検出器信号の規格化を行うことができる。信号調整器222は、アナログ−デジタル変換機(“A/Dコンバータ”)と通信する1つまたは複数の出力を含む。いくつかの実施形態において、A/Dコンバータ226は、デルタ−シグマ変換器を備え、直線性と信号対雑音性能を向上させてもよく、これは特に低潅流時の測定を強化するのに有利である。低減された信号対雑音は、周辺及び/又は環境からの干渉(たとえば電気焼灼装置からの)をうまく排除することにより測定品質を向上させることもできる。A/Dコンバータ226は、フロントエンド信号調整器222の出力および温度センサ207の出力と通信する入力を含む。コンバータ226はまた、デジタル化された複合検出器信号値と温度センサの読みをプロセッサ228へ通信するための出力も含む。
【0025】
プロセッサ228は、エミッタの駆動電流制御信号230をデジタル−アナログ変換器(“D/Aコンバータ”)232へ出力することができる。D/Aコンバータ232は制御情報をエミッタ駆動回路234へ供給し、それが導線216上を通してセンサ202上の複数のエミッタ204を駆動することができる。いくつかの実施形態において、エミッタ駆動回路234は8つの所定の波長で光を放出できる8つのエミッタを駆動するが、回路234は任意の数のエミッタを駆動することができる。さらに、1つまたは複数のエミッタは同一波長または実質的に同一の波長で光を放出して、冗長性を持たせることができる。回路234はエミッタ204をオン、オフすることで変調して、対応する波長で光のパルス列を形成するように設定することもできる。いくつかの実施形態では、回路234がエミッタ204をオフにして検出器206が周辺又は環境のノイズのレベルを検出するように設定することもでき、これは追加的に矩形パルス列の搬送波信号によって変調することができる。変調のさらなる詳細は、2001年5月8日発行の米国特許第6,229,856号に開示されており、参照によりこの開示をここに援用する。
【0026】
プロセッサ228は、デジタル化された複合検出器信号値を処理し、血液酸素飽和度、脈拍、グルコース、メトヘモグロビン、トータルヘモグロビンなどの生理的パラメータ情報を算出することができる。プロセッサ228は、複合検出器信号中の周辺及び/又は環境からの干渉のレベルを算出するように構成された干渉検出器240を備えている。いくつかの実施形態において、プロセッサ228はメモリ装置208中に格納された情報を読み出し、その読み出された情報を生理的パラメータ情報及び/又は干渉レベルの算出に利用することができる。
【0027】
プロセッサ228は視聴覚インタフェース236と通信して、例えば測定され、算出されたパラメータや干渉レベルを表示することができる。
【0028】
視聴覚インタフェース236は、測定部位における組織205の生理的パラメータの計算値と干渉レベルの計算値の表示を提供可能なディスプレイ装置として構成することができる。いくつかの実施形態において、視聴覚インタフェース236は、1つまたは複数の測定されたまたは判定された、パラメータまたは干渉レベルの傾向データを表示することができる。さらに、本発明の開示から当業者は、プロセッサ228から得られるデータの表示には多くの選択肢が存在することがわかるであろう。
【0029】
さらに、プロセッサ228は、ネットワークインタフェース242を介してローカル及び/又はリモートの記憶装置241、およびローカル及び/又はリモートのネットワーク装置と通信できる。記憶装置241は不揮発性メモリ、揮発性メモリ、またはその組合せとして構成可能である。記憶装置241は、ハードディスク、フラッシュメモリカード、またはそのほかの好適なコンピュータでアクセス可能なメモリであってよい。いくつかの実施形態において、プロセッサ228は、算出された生理的パラメータ情報や干渉レベルなどの様々な情報を記憶装置241内に格納できる。この情報は、後で読み出して、さらなる計算に利用できる。いくつかの実施形態において、プロセッサはネットワークインタフェース242を通して多くの情報をネットワーク装置へ通信することができる。ネットワークインタフェース242は種々のケーブル、ケーブル設計、公衆または私的な通信ネットワークまたは計算機システム、有線または無線通信(IEEE 802.11xを含むイーサネット(登録商標)、ブルートゥースまたはWiFiなど)、移動通信、またはそれらの組合せなどで構成することができる。プロセッサ228は、算出された生理的パラメータ情報や干渉レベルなどの様々な情報をネットワーク装置と交換することができる。
【0030】
図3は、例えば図2に示したプロセッサ228のような、患者モニタにおけるデジタル信号プロセッサおよび信号抽出器328のハードウェアのブロック図である。図3に示すように、プロセッサ328はコアプロセッサ302とマイクロコントローラ304とを備えることができる。いくつかの実施形態によれば、コアプロセッサは、アナログデバイス(Analog Devices)社から市販されているような、スーパー・ハーバード・アーキテクチャ(”SHARC”)に基づくデジタル信号プロセッサを構成することができる。図3は典型的なSHARCプロセッサの様々な例示的コンポーネントの詳細を示している。しかし、本明細書の開示により当業者であれば、入力データから生理的パラメータを判定するためのプログラムを実行可能な、多種にわたるデータ及び/又は信号プロセッサ、特に好ましくは、少なくとも16、32、または40ビットの浮動小数点または固定小数点の精度を扱えるデジタル信号プロセッサがあることが理解されるであろう。いくつかの実施形態によれば、マクロコントローラ304は、例えば算出されたパラメータデータや干渉レベルなどの視聴覚インタフェースへの通信や、リモートまたはローカルのネットワーク装置または記憶装置との間の情報の通信、などを含むシステム管理を制御する。いくつかの実施形態においては、マクロコントローラ304は、例えばコアプロセッサ302の動作をモニタし、必要であればリセットをかけることによって監視回路としての作用をしてもよい。
【0031】
図4Aは、例えば図2に示したプロセッサ228のような、患者モニタにおけるデジタル信号プロセッサおよび干渉検出器428の機能ブロック図である。図4Aに示すように、プロセッサおよび干渉検出器428への入力はデジタル化された複合検出器信号xk(n)401Aであってよい。いくつかの実施形態において、デジタル化された複合検出器信号401A、xk(n)、は1つの検出器206(すなわちkは検出器206の番号に対応する)からの信号のデジタル化されたサンプルを表し、図4Aに示すように個別の信号処理、モデル化、計算パスをそれぞれの信号xk(n)に対して利用することができる。いくつかの実施形態において、複合検出器信号401Aは、光のデータを含まない、検出器206で検出された干渉信号で構成されることもある。
【0032】
いくつかの実施形態において、復調モジュール403Aはデジタル化された複合検出器信号401A(たとえば48kHzの複合信号)に対してモデル化および復調を行い、その複合信号を各放射波長に関係する信号に分離し、搬送波信号の周波数成分を除去する。さらに、復調モジュール403Aは、デジタル化された複合検出器信号に対してモデル化および復調を行い、干渉信号を各放射波長に関係する干渉信号に分離し、搬送波信号の周波数成分を除去するように設定されてもよい。いくつかの実施形態において、復調モジュール403Aは、デジタル化された複合検出器信号データに対してモデル化および復調を行って、N(たとえば8)チャネルの復調データとするように設定されてもよい。それぞれのチャネルが別々の周波数及び/又は位相特性に対応するように設定することができる。例えば、各チャネルは、エミッタ204から放射された光信号により変調された、矩形光パルス列搬送波信号の基本周波数とその高調波に対応することができる。さらに、以下で説明するように、いくつかのチャネルで同一周波数特性を共有することも可能であり、そのような実施形態では、位相を利用してこれらのチャネルを区別することができる。
【0033】
複数チャネルの復調データサンプルをデシメーションモジュール404Aに与えることができ、これはサンプルを除外してサンプリングレートを低減するように設定され、かつその上に信号調整とフィルタリングを行うことができる。デシメーションはデータサンプル数を減らすので、デジタル信号プロセッサと干渉検出器428の計算負荷を低減し、さらに患者モニタの消費電力を低減する。いくつかの実施形態において、48kHzの復調された複数チャネルデータストリームを62.5kHzにデシメートすることができる。
【0034】
干渉レベルを決定するために、復調されデシメートされた複数チャネルのデータがエネルギ検出器405へ与えられてもよい。いくつかの実施形態において、エミッタ204を(たとえば回路234によって)オフに設定可能なので、複合検出器信号xk(n)401Aは干渉信号のみで構成することができる。そうすると、復調されてデシメートされた複数チャネルのデータが干渉信号で構成され、エネルギ検出器405Aをその干渉信号のエネルギまたは電力を計算するように設定できる。いくつかの実施形態において、以下で説明するように、エネルギ検出器405Aは各デシメーションチャネルの干渉信号の平均電力を計算することが可能で、その最大値を干渉出力として選択することができる。
【0035】
血液酸素飽和度、脈拍、グルコース、メトヘモグロビン、トータルヘモグロビンなどの生理的パラメータ情報を計算するために、復調されてデシメートされた複数チャネルのデータをパラメータ計算器406Aへ与えることができる。パラメータ計算器406Aは、参照によりその開示を本明細書に援用する米国特許出願第11/367,017号明細書(2006年3月1日出願)に記載されているように、生理的情報を計算する様々なアルゴリズムに従って、そのデータをモデル化、調整、および処理することができる。
【0036】
図4Bは、例えば図4Aに示したプロセッサ428のような、患者モニタにおける干渉検出器440Bの機能ブロック図である。図4Bに示すように干渉検出器440Bへの入力は、デジタル化された複合検出器信号xk(n)401Bであってよい。いくつかの実施形態において、デジタル化された複合検出器信号401B、xk(n)、は1つの検出器206(すなわちkは検出器206の番号に対応する)からの信号のデジタル化されたサンプルを表し、以下で説明するように、分離した干渉検出器(検出器440Bのような)をそれぞれの信号xk(n)に対して利用することができる。いくつかの実施形態において、複合検出器信号401Bは検出器206で検出された、光データを全く含まない干渉信号であってもよい。このことは、例えば図2の回路234においてエミッタ204をオフに保つように設定し、検出器206を組織205により減衰された周辺及び/又は環境からの干渉レベルのみを検出するように設定することにより達成される。
【0037】
復調モジュール403はデジタル化された複合検出器信号xk(n)401B(たとえば48kHzの複合信号)に対してモデル化および復調を行い、その干渉信号を各放射波長に関係する干渉信号に分離し、搬送波信号の周波数成分を除去する。図4Bに示すように、いくつかの実施形態において、復調モジュール403Bは、デジタル化された複合検出器信号401Bに対してモデル化および復調を行って、N(たとえば8)チャネルの復調データとするように設定されてもよい。各チャネルは、エミッタ204で生成された変調光信号の異なる周波数(すなわち、以下でさらに説明するように、各高調波のsin(t)成分とcos(t)成分)に対応するように設定することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、変調された光信号は、エミッタ204で生成された光を周期的な矩形パルス列(すなわち搬送波信号)で変調することにより生成することができる。回路234は、任意の与えられた期間においては、ただ1つのエミッタ204(例えば発光ダイオード)のみがアクティブであるように設定することができる。例えば、2つのエミッタ204(例えば赤と赤外の発光ダイオード)があるとすると、回路234は長さτ1の第1の時間間隔の間、第1のエミッタを起動し、その間第2のエミッタを動作させないでおく。そのあと、長さτ2の第2の時間間隔の間、どちらのエミッタにも電流を流さないようにする。そうして、長さτ3の第3の時間間隔の間、第2のエミッタに通電して起動し、第1のエミッタは非動作のままとする。最後に、第4の時間間隔τ4の間、どのエミッタにも電流を流さないことにより変調サイクルを完結させることができる。その後、第1の間隔を再スタートさせることによりこのサイクルが反復される。4つの時間間隔τ1,τ3,τ3,τ4のすべては同一の長さτであってよい。したがって、搬送波信号、すなわちパルス幅τで周期が4τの周期的な矩形パルス列と、対応するフーリエ係数τF0*sinc(kF0τ)はエミッタ204から放射される光によって変調される。ここで、F0は基本周波数(すなわち周期の逆数)であり、k=±1,±2,...である。フーリエ係数は基本周波数とその高調波(すなわち基本周波数の整数倍)に対応する。回路234は、例えば8つのエミッタなどの任意数のエミッタ204によって、任意数の搬送波信号を同様に変調するように設定することができる。
【0039】
組織205によって減衰されて検出器206で検出される光信号の強度を回復するために、復調モジュール403Bは、基本周波数F0およびその高調波の周期的パルス列(“対象周波数”)において複合検出器信号401Bをモデル化して解析するように設定されてもよい。これは、変調された信号(つまり複合検出器信号)のエンベロープ、または強度信号のかなりのエネルギを含むエンベロープの一部を、対象周波数にシフトさせてから、フィルタにかけて他の高周波成分を除外することにより達成される。いくつかの実施形態において、対象周波数のいくつかが利用可能であり、エンベロープのシフトは、変調信号に、対象周波数の対応する周波数を有する余弦また正弦信号を掛けることにより達成される。本開示により当業者であれば、対象周波数が基本周波数F0とその高調波以外の周波数であってもよく、また信号エンベロープのシフト以外の変調方法も利用可能であることがわかるであろう。
【0040】
いくつかの実施形態において、復調モジュール403Bはさらに、複合検出器信号中の他のエミッタ204による光信号出力同士のクロストークを低減ないしは除外するように設定することも可能である。例えば、2つのエミッタ204(例えば赤と赤外の発光ダイオード)がある場合、複合検出器信号中のクロストークは、赤色光信号が赤外光信号に及ぼす影響、またはその逆として定義することができる。このようなクロストークは、適切な復調信号を選択し、それらに複合検出器信号を掛けることにより最小化または除外することが可能である。前述の米国特許第6,229,856号明細書で説明されているように、いくつかの実施形態において、クロストークを低減または除外する復調信号は、搬送パルス列の基本周波数F0と高調波の余弦信号;C1cos(2πF0t),C2cos(4πF0t),C3cos(6πF0t),・・・として設定することができる(ここで、C1,C2,C3,…はクロストークを最小化または消去するために選択される定数である)。
【0041】
さらに、対象周波数を選択することにより、光の強度信号への周辺または環境ノイズの少なくともいくつかの種類と強度の影響を低減する結果を得ることができる。例えば、電源ラインノイズ(基本周波数が60Hzまたは50Hzで高調波が60nHzまたは50nHz、nは整数)を低減または除外するために、基本周波数F0を316.7Hz(すなわち、高調波が316.7nHz、nは整数)に選択することができる。そうすると、基本周波数316.7Hzを有する変調パルス列で構成される光信号強度に最も近い電源ラインノイズの高調波は、60Hzの電源ライン周波数に対しては300Hzと360Hzであるし、50Hzの電源ライン周波数に対しては300Hzと350Hzである。これによりノイズと光強度との周波数分離が行われる。いくつかの実施形態においては、分離をするために基本周波数F0として330Hzを選択することができる。
【0042】
その結果、いくつかの実施形態では、干渉検出器440Bの復調モジュール403Bは、干渉を含む複合検出器信号401Bを基本周波数F0とその高調波でモデル化および解析をするように設定可能である。したがって、復調モジュール403Bは、変調された複合光信号を復調するのに適用される変調周波数とその高調波で操作される。上で説明したように、これらの対象周波数における成分を有する干渉信号は、複合検出器信号からの光強度信号の回復を著しく劣化させる可能性がある。したがって、これらの対象周波数での干渉レベルを判定して、周辺及び/又は環境からの干渉のもとで与えられた光強度信号をうまく回復して処理できる可能性を計算できれば有利である。いくつかの実施形態において、復調モジュール403Bは、干渉信号を基本周波数と第2、第3および第4の高調波でモデル化するように設定することができる。しかし、当業者であれば、本明細書の開示から広範囲の信号モデル化の組合せがあることを認識できるであろう。
【0043】
さらに、復調モジュール403Bは、対象周波数で干渉信号の全エネルギスペクトルをモデル化するように設定することができる。これは、対象周波数における干渉信号の位相変化は無視して、その対象周波数における干渉信号のエネルギをキャプチャすることによって達成される。いくつかの実施形態において、復調信号として余弦と正弦の両方を利用することによりこれが達成される。同一周波数の余弦信号と正弦信号はπ/2ラジアンだけ位相がずれているので、これらを補完的な復調信号として利用すれば、対象周波数におけるすべての潜在的な干渉信号エネルギをモデル化しキャプチャすることが可能である。いくつかの実施形態では、干渉信号のスペクトルは、余弦復調信号のみまたは正弦復調信号のみを使ってモデル化することができる。本明細書の開示により、当業者であれば直交信号などの広範囲の復調信号があることがわかるであろう。
【0044】
図4Bに示すように、復調モジュール403Bは、干渉信号の全スペクトルを基本周波数F0とその高調波の2F0、3F0、4F0、でモデル化することができる。正弦復調信号と余弦復調信号のいずれも利用することができる。デジタル化された複合検出器信号xk(n)401Bは、410でsin(2πF0/Fsn)、420でcos(2πF0/Fsn)が掛けられて、基本周波数F0における干渉信号の全スペクトルがモデル化される(Fsはサンプリング周波数)。デジタル化された複合検出器信号xk(n)401Bは、430でsin(4πF0/Fsn)、440でcos(4πF0/Fsn)が掛けられて、第2高調波2F0における干渉信号の全スペクトルがモデル化される。デジタル化された複合検出器信号xk(n)401Bは、450でsin(6πF0/Fsn)、460でcos(6πF0/Fsn)が掛けられて、第3高調波3F0における干渉信号の全スペクトルがモデル化される。最後に、デジタル化された複合検出器信号xk(n)401Bは、470でsin(8πF0/Fsn)、480でcos(8πF0/Fsn)が掛けられて、第3高調波4F0における干渉信号の全スペクトルがモデル化される。図示したように、N=8チャネルの復調干渉信号データが形成される。
【0045】
復調干渉信号データをデシメーションモジュール404Bに与えることができ、これはサンプルを除外してサンプリングレートを低減し、かつその上に信号調整とフィルタリングを行う。デシメーションはデータサンプル数を減らすので、干渉検出器440Bの計算負荷を低減し、さらに患者モニタの消費電力を低減する。図4Bに示すように、デシメーションモジュール404Bは、直列のサンプル半減ブロックで構成することができ、それぞれが、信号サンプルを1つおきに抜き取って、サンプルレートを半減する。標本化定理を充たし、かつエイリアシングを避けるために、各サンプル半減ブロックの前にカットオフ周波数がFs/2mのローパスフィルタが配置されなければならず、ここでmは、直列に配したサンプル半減ブロックの数である。ローパスフィルタを掛けることにより、復調が行われた後、潜在的に有用な情報を持っていない、その他の高周波成分を除外することができる。したがって、(410でsin(2πF0/Fsn)が掛けられた後の)第1のチャネルの復調干渉信号データは、411でカットオフ周波数Fs/2を有するローパスフィルタによってフィルタリングされ、その後412において半分にデシメートされる。そのあと、第1のチャネルの残存するデータサンプルは同様にフィルタリングおよびデシメートされ、413でカットオフ周波数Fs/2mを有するローパスフィルタでフィルタリングされ、414でサンプル半減ブロックによって半分にデシメートされて、所望のサンプリングレートにまでデータサンプルが低減される。図4Bに示すように、これを復調干渉信号データの各チャネルに対して実行することができる。いくつかの実施形態では、48kHzの復調複数チャネルデータストリームが、log2(48000/62.5)(すなわち約10)個の一続きのサンプル半減ブロックによって62.5Hzにまでデシメートされ、この時、それぞれの前段階で対エイリアシング用のローパスフィルタによるフィルタリングが行われる。いくつかの実施形態において、サンプルM分の1化ブロックを代替として利用することも可能であり、そのそれぞれはサンプリングレートをM分の1にする。いくつかの実施形態では(例えば、シグマ−デルタ方式のA/Dコンバータが使用される場合)、サンプルL分の1化ブロックとサンプルM分の1化ブロックとを代わりに使うことが可能であり、それぞれがサンプリングレートをL分の1とM分の1に低減する。いくつかの実施形態では、1つのダウンサンプルブロックを使って所望のサンプリングレートを達成することができる。しかし、当業者であれば、本明細書の開示から多様な信号デシメーション手法があることを認識できるであろう。
【0046】
復調され、デシメートされた干渉信号データはエネルギ検出器405Bに送られて干渉レベルが計算される。信号のエネルギは、信号サンプルの絶対値の二乗の合計で算出される。図4Bに示すように、復調され、デシメートされた第1のチャネルのデータサンプルは、415において二乗される。それぞれのチャネルの、復調され、デシメートされた干渉信号データに対してこれが実行される。いくつかの実施形態では、二乗されたサンプルが合計される。いくつかの実施形態では、合計されたほかに、二乗されたサンプルも移動平均フィルタでフィルタリングすることができる。移動平均フィルタはローパス特性を有し、したがって、高周波成分(すなわち周辺または環境ノイズの短時間遷移部分)を除去することによって信号を平滑化する。移動平均フィルタは、重み付きフィルタ係数または重みなしフィルタ係数を用いて設定することができる。例えば、単純な重みなし移動平均フィルタは、二乗された全サンプルの合計を出し、その合計をサンプル数で割る。これは信号の平均電力を算出したことになる。図4Bに示すように、第1のチャネルの計算されたエネルギ信号は移動平均フィルタ416で平滑化され、信号の平均電力(あるいは単に電力)が決定される。図に示すように、これはすべてのチャネルの、復調されデシメートされたデータについて行われて、各チャネルの干渉信号の電力が決定される。いくつかの実施形態では、算出された電力の平方根をさらに計算して、各チャネルの信号の二乗平均平方根を計算することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、計算されたエネルギ、または同一周波数の相補的な余弦チャネルと正弦チャネルに対して算出された電力は、それぞれの対象周波数における干渉信号のエネルギまたは電力を決定するために合計される。前に説明したように、同一周波数の余弦信号と正弦信号はπ/2ラジアンだけ位相がずれているので、この両者を補完的な復調信号として利用すれば、対象周波数におけるすべての潜在的な干渉信号エネルギをモデル化しキャプチャすることが可能である。図4Bに示すように、490において算出された電力値が加算されて、基本周波数F0における干渉信号の全スペクトル電力が決定される。他のチャネルについても同様の加算を行い、第2(2F0)、第3(3F0)、第4(4F0)高調波における干渉信号の全スペクトル電力が決定される。
【0048】
デジタル化された複合検出器信号xk(n)401Bに対する干渉検出器440Bで算出された干渉レベル(または出力)は、対象周波数における最大算出エネルギまたは電力であるかもしれない。図4Bに示すように495において、そのような最大値が干渉検出器440Bの出力として選択されてもよい。干渉信号の最大算出信号エネルギまたは電力は、生理的パラメータ情報測定に対する最悪条件となる可能性がある。いくつかの実施形態において、算出された干渉信号エネルギまたは電力のすべてを出力することができる。いくつかの実施形態において、計算値は平均化、フィルタリング等のさらなる処理をすることができる。しかし、当業者であれば、本明細書の開示から干渉出力の計算には多様な手法があることがわかるであろう。
【0049】
図4Cは、例えば図4Aのプロセッサ428のような、患者モニタにおける干渉検出器440Cの機能ブロック図である。複数の検出器206を備える実施形態において、干渉レベルの計算は、各検出器206でキャプチャされた複合検出器信号のそれぞれに対して個別に実行されてもよい。図4Cに示すように、干渉検出器440Cは、4つの干渉検出器402Cを備え、そのそれぞれが4つの検出器206のそれぞれで取得されたx1(n)からx4(n)までの複合検出器信号に対する干渉レベルを計算するように構成されている。干渉検出器402Cのそれぞれは、図4Bの検出器440Bとして設定され、算出された最大干渉信号エネルギまたは電力を出力することができる。496Cにおいて、最大干渉信号エネルギ(または電力)を出力として選択することができる。これは、生理的パラメータ情報の測定に対する最悪条件を表す可能性がある。いくつかの実施形態において、算出された干渉信号エネルギまたは電力のすべてを出力することができる。いくつかの実施形態において、計算値は平均化、フィルタリング等のさらなる処理をすることができる。しかし、当業者であれば、本明細書の開示から干渉レベルの計算には多様な手法があることがわかるであろう。
【0050】
図5は、図2の患者モニタリングシステム200のような患者モニタリングシステムにより実行される干渉検出プロセスを示す。ステップ501で、検出器206からのアナログ複合検出器信号が受信される。この信号は、光強度成分を含まない干渉信号だけで構成されるように設定することができる。ステップ502において、複合検出器信号が調整されて、例えば、信号のゲインの調節または規格化を行い、バンドパスフィルタまたはローパスフィルタに信号を通して望ましくない信号成分を除去し、所望の位相応答を有する全域通過フィルタに信号を通して信号位相を規格化する、などが行われる。ステップ503において、調整された複合検出器信号が、A/D変換を行うことでデジタル化されてサンプルとされる。ステップ504において、デジタル化された複合検出器信号が復調され、1つまたは複数のデータチャネルとなる。復調信号データは、デジタル化された複合検出器信号の周波数スペクトルを、例えば所望の周波数と位相の余弦関数及び/又は正弦関数で掛け算して、対象の周波数および位相にシフトすることにより取得できる。ステップ505において、復調された信号チャネルはデシメーションにより圧縮することができる。デシメーションは各チャネルに含まれるサンプル数を低減する。また、チャネルデータのエイリアシングを防ぐために、デシメーションの前にローパスフィルタを通して不要な高周波成分をチャネルから除去する必要がある。506において、デジタル化された複合検出器チャネルデータのエネルギが決定される。例えばこれは、各チャネルのサンプルの二乗値を合計してそれをサンプル数で割って、各チャネルの信号電力を計算することにより達成される。いくつかの実施形態において、算出された最大電力を全チャネルから選択して、検出干渉信号の最悪ケース(すなわち、最大)の電力を決定する。
【0051】
干渉信号(または干渉出力)の算出された最大エネルギまたは電力は、507においてユーザへ知らせることができる。いくつかの実施形態において、干渉出力は、例えば棒グラフで視覚的にユーザに提示することができる。図5に示すように、干渉出力は閾値と比較することができる。いくつかの実施形態において、閾値は患者モニタリングシステムの雑音レベルの倍数として設定することができる。システムの雑音レベルは、熱ノイズ、ショットノイズ、その他などのためにシステムの電子部品によって内在的に(すなわち入力信号を与えない状態で)発生するノイズ信号の指標である。雑音レベルはさらにそのシステムでの信頼性のある測定が可能な、最小測定値の限界を設定する。さらに、システムの雑音レベルは実験的に測定可能である。例えば、血液中のトータルヘモグロビン濃度の測定のためのシステムの雑音レベルは10ppm程度である。したがって、閾値は患者モニタリングシステムで測定しようとする生理的パラメータの種類に応じて設定することができる。いくつかの実施形態において、閾値の乗数は設定可能かつプログラム可能であってよい。
【0052】
図5に示すように、510で干渉出力は閾値と比較することができる。干渉出力が閾値以下の場合、511で棒グラフを閾値に比例した高さまたは幅の緑色(または緑の網掛け)に更新することができる。例えば、緑の棒の高さまたは幅は、(閾値−干渉出力)/閾値として算出できる。別の例では、計算値がパーセンテージで表現できる。干渉出力が閾値より大きい場合、512で棒グラフを閾値に比例した高さまたは幅の赤色(または赤の網掛け)に更新することができる。例えば、赤の棒の高さまたは幅は、(干渉出力−閾値)/閾値として算出できる。別の例では、計算値がパーセンテージで表現できる。当業者には、他の計算方式または色を利用して、ユーザに患者モニタの干渉出力を警告できることが理解されるであろう。
【0053】
図6A〜6Dは、図1の干渉検出器などのような干渉検出器を利用していること及びその出力を示す、ユーザインタフェース表示を示す。図6Aは、算出された干渉出力のスピードメータ型の視覚表示600Aを示す。ダイアル601Aは、干渉出力の程度を示す数字(0〜9)からなっている。閾値は、例えばダイアルのほぼ中央(つまり数字の6)に対応していてもよい。矢印602Aは、算出された干渉出力を閾値に対して相対的に指示するように設定されている。ダイアルはさらに網掛けされていて、算出された干渉出力の度合いが一目でわかるようになっていてもよい。例えば、0〜3の範囲の網掛けは緑色で、干渉レベルが低いことを表し、3〜6の範囲の網掛けは黄色で、中間的な干渉レベルを表し、6〜9の範囲の網掛けは赤色で、干渉レベルが高いことを表す。
【0054】
図6Bは棒グラフ型の視覚表示600Bを示す。緑の色または網掛け603Bは算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表す。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が2である場合、緑の色または網掛け603Bは80%(つまり、100%×(10−2)/10)を表示し、幅でこのパーセント値を示すことができる。赤色または網掛け604Bは同様に算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表す。この例の場合、赤色または網掛け604Bは20%を表示し、その幅でこのパーセント値を示すことができる。あるいはまた、算出された干渉出力が閾値を超えない限りは、赤色または網掛けを表示されない場合がある。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が20である場合、赤色または網掛け604Bは200%(つまり、100%×20/10)を表示し、幅が棒グラフ表示600Bの全体を覆う。この場合には緑の色または網掛け603Bは表示されない。いくつかの実施形態において、閾値が棒グラフ表示600Bの中央に対応し、それに応じて、緑と赤色または網掛けが計算されて表示される。いくつかの実施形態において、他の色(例えば黄色)も表示することができる。
【0055】
図6Cは棒グラフ型の視覚表示600Cを示す。緑の色または網掛けは算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表し、パーセント値は表示されていない。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が6である場合、緑の色または網掛け605Cは棒グラフ表示600Cの40%(つまり、100%×(10−6)/10)の幅で表示される。赤色または網掛け606Cは同様に算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表す。この例では、赤色または網掛け606Cは60%の幅で表示することができる。あるいはまた、算出された干渉出力が閾値を超えない限りは、赤色または網掛けが表示されない場合がある。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が11である場合、赤色または網掛け606Cは110%(つまり、100%×11/10)の幅で表示されるか、または棒グラフ表示600Cの全体を覆うことができる。この場合には緑の色または網掛け605Cは表示されなくてよい。いくつかの実施形態において、閾値が棒グラフ表示600Cの中央に対応し、それに応じて、緑と赤色または網掛けが計算されて表示されてもよい。いくつかの実施形態において、他の色(例えば黄色)も表示することができる。
【0056】
図6Dは、棒グラフ型の視覚表示600Dを示す。これは600Cに似ているが縦型である。緑の色または網掛けは算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表し、パーセント値は表示されていない。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が3である場合、緑の色または網掛け607Dは棒グラフ表示600Dの70%(つまり、100%×(10−3)/10)の高さで表示される。赤色または網掛け608Dは同様に算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表す。この例では、赤色または網掛け608Dは棒グラフ表示600Dの40%の高さで表示される。あるいはまた、算出された干渉出力が閾値を超えない限りは、赤色または網掛けが表示されない場合がある。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が12である場合、赤色または網掛け608Dは120%(つまり、100%×12/10)の高さで表示されるか、または棒グラフ表示600Dの全体を覆う。この場合には緑の色または網掛け607Dは表示されない。いくつかの実施形態において、閾値が棒グラフ表示600Dの中央に対応し、それに応じて、緑と赤色または網掛けが計算されて表示されてもよい。いくつかの実施形態において、他の色(例えば黄色)も表示することができる。図6E〜6Hも、例えばハッピーフェースまたはサッドフェース、指針、指示光などを含む、異なる色、グラフ、形、表示を利用した代替表示を示している。
【0057】
いくつかの実施形態において、患者モニタはユーザへの音声通知を提供するように構成することができる。例えば、干渉出力を計算して、それを閾値と比較した後、干渉出力が閾値よりも低い場合には、患者モニタが“測定は安全です”という音声を発することができる。別の例としては、干渉出力が閾値に近いかそれを超える場合に、“危険です”という音声を発することができる。当業者であれば、本明細書の開示から多様な視聴覚通知手法があることは理解されるであろう。
【0058】
患者モニタ用の干渉検出器を好適な実施形態とともに開示したが、本発明はこれに限定されるものではない。むしろ、当業者であれば本明細書の開示により、患者モニタ用の干渉検出器の多数の代替技術があることを理解するであろう。例えば、患者モニタは、算出された干渉レベルが測定精度を顕著に劣化させると判定された場合、ユーザの生理的パラメータ測定の実行を“締め出す(lock out)”ことができる。
【0059】
本発明の開示により、上記のプロセスに加えて、他のプロセスおよびプロセスの組合せが当業者には明らかであろう。当業者はさらに、本明細書で開示した実施形態に関連して記述した種々の実例の論理ブロック、モジュールおよびステップは、電子的なハードウェア、コンピュータソフトウェア、またはその両者の組合せとして実装可能であることを理解するであろう。このハードウェアとソフトウェアとが相互に交換可能であることを明確に説明するために、種々の実例の部品、ブロック、モジュールおよびステップを一般的にその機能によって記述した。そのような機能をハードウェアとして実装するかソフトウェアとして実装するかは、特定のアプリケーション並びに全体システムに課せられる設計上の制約とに依存する。当業者は記述された機能をそれぞれの特定のアプリケーションに対して様々な方法で実装することが可能であるが、そのような実装の判断は、本発明の範囲から外れるというように解釈されるべきではない。
【0060】
本明細書に開示した実施形態に関連して説明した様々な例示的な論理ブロック、モジュール、およびステップは、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のプログラマブルロジックデバイス、ディスクリートなゲートまたはトランジスタロジック、ディスクリートなハードウェア部品、または本明細書に記載の機能を実行するように設計されたそれらの任意の組合せによって実装または実行することができる。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサ、従来型プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、ステートマシン、等であってよい。プロセッサは、例えば、DSPとマイクロプロセッサの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組合せた1つまたは複数のマイクロプロセッサ、またはこのような他の任意の構成、などのコンピューティングデバイスの組合せとして実装することができる。さらに、“処理”という用語は広範囲な用語であって、例えばプログラムコードの実装、命令の実行、信号の操作、フィルタリング、算術演算の実行、等のいくつかの意味を包含することを意図している。
【0061】
モジュールには、ソフトウェア、オブジェクト指向のソフトウェアコンポーネント、クラスコンポーネントおよびタスクコンポーネント、プロセス、方法、機能、属性、手順、サブルーチン、プログラムコードのセグメント、ドライバ、ファームウェア、マイクロコード、回路、データ、データベース、データ構造、表、配列、または変数、などのソフトウェアまたはハードウェアコンポーネントを含むことができるが、ただしこれに限定されるわけではない。
【0062】
本明細書に開示する実施形態に関連して記載した方法またはアルゴリズムのステップは、ハードウェアで直接具現化するか、プロセッサにより実行されるソフトウェアモジュールで具現化するか、またはこれら2つの組合せで具現化することができる。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD−ROM、DVD、または当技術分野で周知の他の任意の形態の記憶媒体中に常駐することができる。記憶媒体はプロセッサと連結され、プロセッサが記憶媒体から情報を読み出し、また記憶媒体へ情報を書き込むことができる。あるいはその代わりに、記憶媒体をプロセッサに組み込むことができる。プロセッサと記憶媒体はASIC内に常駐することができる。ASICはユーザ端末内に常駐することができる。または、プロセッサと記憶媒体が個別の部品としてユーザ端末内に常駐することができる。
【0063】
上記の発明を特定の好適な実施形態によって説明したが、他の実施形態は、本明細書の開示から当業者には明らかであろう。さらには、他の組合せ、省略、置換、および変更は、本明細書の開示を考慮すれば当業者には明らかとなるであろう。上述の本発明の種々の態様と特徴は、個別または一緒に組合せて、または相互に置き換えて実施可能であり、また特徴と態様の種々の組合せおよび部分的組合せを行うことが可能であり、それらはいずれも依然として本発明の範囲内にあることが意図される。さらに、上述のシステムは、好適な実施形態で記述したすべてのモジュールと機能とを含む必要はない。したがって、本発明は好適な実施形態の反応によって制限されることを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲を参照して定義されるべきである。
【0064】
さらに、本明細書において言及したすべての刊行物、特許、特許出願は、あたかもそれぞれの刊行物、特許または特許出願を具体的かつ個別に、参照により援用することを表示したかの如く、それと全く同様に、参照により本明細書に援用されるものとする。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は米国特許法第119条(e)に基づき、2009年7月24日に出願された、「Interference Detector for Patient Monitor(患者モニタ用の干渉検出器)」と題する、米国特許仮出願第61/228,495号の優先権を主張し、参照によりそれが本願に援用される。
本出願は、1998年1月12日に出願された「Method and Apparatus for Demodulating Signals in Pulse Oximetry Systems(パルス酸素濃度計システムの信号復調方法および装置)」と題する米国特許第5,919,134号、および200年6月16日に出願された「Pulse Oximeter Probe−Off Detection System(パルス酸素濃度計プローブ−オフ検出システム)」と題する米国特許第6,526,300号に関連し、参照によりこの両方が本願に援用される。
本発明は一般に、患者モニタと、1つまたは複数の光学センサと、モニタとセンサの間の信号のやり取りをする通信ケーブルまたは装置とを含む、患者モニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
介護人のいる環境における標準的な介護には、例えば、アーバインのマシモコーポレーション(Masimo Corporation)から市販されている酸素濃度計技術を利用した分光分析による患者のモニタリングが含まれる。分光分析が可能な装置には一般的に、脈動する血液が流れている体組織などの測定部位に光放射を行う光源が含まれる。測定部位の組織及び流体による減衰(たとえば組織への透過や反射などによる)の後、1つまたは複数の光検出装置が減衰光を検出し、検出された減衰光に応答する1つまたは複数の検出信号を出力する。1つまたは複数の信号処理装置が検出器信号を処理し、グルコース、酸素、メトヘモグロビン、トータルヘモグロビン、そのほかの生理的パラメータなどの対象とする血液組成を示す測定値や、患者の健康状態または傾向を判定するのに有益なそのほかのデータまたはデータの組合せを出力する。そのような組合せとして、1つまたは複数の測定値または別々のパラメータの測定値の組合せに対して統計的解析を行って有用な情報とすることがしばしば行われる。
【0003】
上記に加えて、例えばグルコースやトータルヘモグロビンなどの、他の血液検体または患者パラメータを測定する非侵襲性の酸素濃度計技術の開発に多大の努力が傾注されてきた。残念なことに、これらのパラメータのあるものは非侵襲性の分光法での測定は困難であることが分かった。例えば、測定部位の生体組織と水分は、血中グルコースの測定に有効な多くの光の波長において高い固有吸収を有する。さらに、血液中のグルコースは他の血液検体に比べると相対的に濃度が低い。さらに、患者ごとに皮膚および血液組成の光学特性も大きく違っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに、周辺及び/又は環境からの干渉(すなわちノイズ)が、測定精度に悪影響を及ぼす可能性がある。干渉は、日常的に使用されている多くの電気装置から発生する。一般的な家庭を例にとると、電力線とコンセント、間接照明、調光器、テレビやコンピュータのディスプレイ、電源や変圧器が電磁干渉を発生させる。例えば、間接照明から発生するノイズは一般的に、50Hzまたは60Hzの基本周波数とその高調波に対応する周期で変化する。当業者には周知のように間接照明の周波数は、その間接照明とその他の干渉を起こす装置に供給されている電気の周波数、及び/又は自然光の周波数との関数である。間接照明の周波数は、したがって、その間接照明を生成する装置に使用されている電源システムに依存して変化する。間接照明の基本周波数の高調波は重要であり、間接照明はその高調波においても顕著な干渉を生じる可能性がある。これは間接照明が蛍光灯である場合に特に当てはまる。蛍光灯は第2高調波(すなわち100Hzまたは120Hz)および第4高調波(すなわち200Hzまたは240Hz)で顕著なノイズを発生させる。これに加えて、一般的な介護環境において、医療器具(たとえば電気焼灼装置)も顕著な電磁干渉を発生させる。これらおよびそのほかの課題により、生理的パラメータ(たとえばグルコース)を示す信号情報を干渉信号と区別することが困難となる。さらに、干渉レベルが未知の、広範な介護および非介護環境において、患者およびその他のユーザがグルコースやそのほかの生理的パラメータのデータを少なくともスポットチェック測定で所望することが多い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のいくつかの実施形態において、周辺及び/又は環境からの干渉のレベルを高い信頼性で測定できるように構成された干渉検出器が開示される。この検出器は、周波数解析を利用して対象とする周波数帯域における干渉レベルを判定および算出する。対象の帯域は様々な生理的パラメータ測定の際に解析に利用される周波数から構成されていてもよい。例えば、身体の組織や体液で減衰される変調光信号は、搬送波信号(たとえば周期的パルス列)の基本周波数および高調波周波数において生理学的情報を含んでいる可能性がある。干渉レベルが基本周波数および高調波周波数で測定されて、周辺及び/又は環境ノイズのある状態で生理的パラメータの信頼のおける測定ができるかどうかが判定される。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態において、干渉レベルは、対象とする周波数に集中する干渉信号のエネルギまたは電力として計算することができる。測定された最大の電力を利用して、周辺及び/又は環境からの干渉が生理的パラメータの測定精度へ及ぼす最悪の影響が判定される。測定された最大の電力を閾値と比較して、干渉の大きさと測定精度の予想される劣化とを客観的に判定することができる。閾値は干渉検出器の雑音レベル、すなわち熱ノイズ、ショットノイズ、その他などのためにシステムに本質的に内在する測定ノイズ信号の倍数に設定することができる。雑音レベルはさらにそのシステムでの信頼できる最小測定値の限界を設定する。雑音レベルの倍数と閾値はその装置で測定する生理的パラメータの種類によって変わりうる。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態において、干渉検出器は、測定された干渉レベルを閾値に対する相対値としてユーザに聴覚−視覚的に表示するように構成されていてもよい。視覚的表示には、干渉レベルに対する測定値を棒グラフ、図、グラフなどで表示することを含むことができる。聴覚表示では、干渉レベルに対する測定値の厳しさの度合いを音声で伝えることができる。聴覚−視覚表示は、スポットチェック測定に対して有用であって、生理的パラメータの測定値の予想される精度をユーザに迅速に知らせることができる。それに加えて、周辺及び/又は環境からの干渉が測定精度を著しく劣化させるかまたは測定値を信頼できなくする可能性のある状態をユーザに迅速に警告することができる。
【0008】
本発明を要約する目的で、本発明の特定の態様、利点、新規の特徴をここに記述した。もちろんこれらの態様、利点、特徴のすべてが必ずしも本発明の任意の特定の実施形態に具現化されるものではないことは理解されたい。
【0009】
以下の図面および関連する説明は本発明の実施形態を説明するために提供され、本発明の請求範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による例示的患者モニタリングシステムの斜視図であり、干渉検出器の出力の例示的視覚表示を含んでいる。
【図2】図1の患者モニタリングシステムの患者モニタと干渉検出器の例示的ブロック図である。
【図3】図2の患者モニタのデジタル信号プロセッサと信号抽出器のハードウェアの例示的ブロック図である。
【図4A】図2の患者モニタのデジタル信号プロセッサと信号抽出器と干渉検出器のハードウェアの例示的機能ブロック図である。
【図4B】図2の患者モニタのデジタル信号プロセッサと信号抽出器と干渉検出器のハードウェアの例示的機能ブロック図である。
【図4C】図2の患者モニタのデジタル信号プロセッサと信号抽出器と干渉検出器のハードウェアの例示的機能ブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態による、干渉検出プロセスの説明図である。
【図6A】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【図6B】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【図6C】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【図6D】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【図6E】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【図6F】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【図6G】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【図6H】図1の干渉検出器の利用と出力を示す、例示的なユーザインタフェース表示の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
周辺及び/又は環境からの干渉(すなわちノイズ)は、グルコース、酸素、メトヘモグロビン、トータルヘモグロビン、およびその他の生理的パラメータを測定可能なシステムなどの非侵襲性の患者モニタリングシステムの測定精度を阻害する可能性がある。測定を実行するために、これらのシステムは一般的に身体の組織及び体液で減衰された後に光検出器で検出される光学放射(すなわち光)信号の信号処理解析を行う。しかし、電力線とコンセント、間接照明、調光器、テレビまたはコンピュータのディスプレイ、電源または変圧器、医療器具(たとえば電気焼灼装置)などの多くの通常使用される電気装置から顕著な干渉が発生する。この干渉から、生理的パラメータを表す信号情報を区別することは困難な場合がある。さらに、干渉レベルが未知の、多様な介護および非介護環境において、患者およびその他のユーザがグルコースやそのほかの生理的パラメータのデータを少なくともスポットチェック測定で所望することが多い。
【0012】
干渉レベルを測定する既存の方法は、特にスポットチェック環境において不適切であることがある。例えば、1つの方法は、生理的パラメータの測定を実行するときに同時に干渉の測定を行う。しかし、干渉は非静的かつ非周期的であることが多く、非常に高いエネルギーレベルを有する短時間成分であったりすることから、上記の方法は信頼性がない可能性がある。したがって、そのような干渉レベルの測定は不正確で、信頼性が低いかもしれない。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、干渉レベルを高い信頼性で測定できるように構成された干渉検出器を説明する。この検出器は、周波数解析を利用して対象とする周波数帯域における干渉レベルを判定および算出する。対象の帯域は様々な生理的パラメータの測定時に解析に利用する周波数から構成されていてもよい。例えば、身体の組織や体液で減衰される変調光信号は、搬送波信号(たとえば周期的パルス列)の基本周波数および高調波周波数において生理学的情報を含んでいる可能性がある。干渉レベルが基本周波数および高調波周波数で測定されて、周辺及び/又は環境ノイズのある状態で生理的パラメータの信頼のおける測定ができるかどうかが判定される。いくつかの実施形態において、干渉レベルを利用して、所望信号に対する干渉を最小化する最適変調比を決定することができる。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、干渉レベルは、対象とする周波数に集中する干渉信号のエネルギまたは電力として計算することができる。測定された最大の電力を利用して、周辺及び/又は環境からの干渉が生理的パラメータの測定精度へ及ぼす最悪の影響が判定される。測定された最大の電力を閾値と比較して、干渉の大きさと測定精度の予想される劣化とを客観的に判定することができる。閾値は干渉検出器の雑音レベル、すなわち熱ノイズ、ショットノイズ、その他などのためにシステムに本質的に内在する測定ノイズ信号の倍数に設定することができる。雑音レベルはさらにそのシステムで信頼できる最小測定値の限界を設定する。雑音レベルの倍数と閾値はその装置で測定する生理的パラメータの種類によって変わりうる。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態において、干渉検出器は、測定された干渉レベルを閾値に対する相対値としてユーザに聴覚−視覚的に表示するように構成されていてもよい。視覚的表示には、干渉レベルに対する測定値を棒グラフ、図、グラフなどで表示することを含
むことができる。聴覚表示では、干渉レベルに対する測定値の厳しさの度合いを音声で伝えることができる。聴覚−視覚表示は、スポットチェック測定に対して有用であって、生理的パラメータの測定値の予想される精度をユーザに迅速に知らせることができる。それに加えて、周辺及び/又は環境からの干渉が測定精度を著しく劣化させるか、または測定値を信頼できなくする可能性のある状態をユーザに迅速に警告することができる。
【0016】
本発明の完全な理解に資するために、これ以降の詳細な記述においては図面を参照して本発明を説明する。以下においては同様の符合は同様の番号を参照する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態による患者モニタリングシステム100の斜視図を示す。システム100は、1つまたは複数の生理的パラメータと干渉レベルを非侵襲的に判定することができる携帯型患者モニタ103を含む。携帯型患者モニタ103はケーブル112を介して光学センサ101と通信する。いくつかの実施形態において、患者モニタ103はセンサ101を駆動して異なる波長の光を体組織(図示せず)に放射する。センサ101は体組織で減衰された後の光を検出し、センサ101で受信した光の量(これは減衰を含む)を示す信号をケーブル112を介して出力する。さらにいくつかの実施形態においては、モニタ103はケーブル112を介して、温度センサおよび1つまたは複数のセンサ101とケーブル112に接続されたメモリ装置と通信する。いくつかの実施形態において、モニタ103はネットワークインタフェース(図示せず)を介して他の記憶装置および遠隔装置と通信する。
【0018】
患者モニタは、ディスプレイ110と1つまたは複数の制御ボタン108を備えることができる。いくつかの実施形態において、ディスプレイ110は、1つまたは複数の仮想制御及び/又は変化ディスプレイ及び/又は制御スクリーンを含むことのできるタッチセンサディスプレイであってもよい。ディスプレイ110は、測定された多種類の生理的パラメータを表示して、情報を迅速かつ効果的にユーザに伝達するように構成することができる。例えば、ディスプレイ110は、血液酸素飽和度、脈拍、グルコース、メトヘモグロビン、トータルヘモグロビンなどの値を示すことができる。さらに図1に示すように、ディスプレイ110は、検出されたノイズ干渉レベルの視覚表示を伝達することができる。例えば、ディスプレイ110は棒グラフを出力するように構成することができる。そこでは、以下で詳細を説明するように、緑の網掛けが低レベルの干渉に対応し、赤の網掛けが高レベルの干渉に対応する。
【0019】
図2は、図1のモニタリングシステム100のような、患者モニタリングシステム200の患者モニタと干渉検出器のブロック図を示す。図2に示すように、モニタリングシステム200は、ケーブル212を介して通信するセンサ202と患者モニタ203を含む。いくつかの実施形態において、センサ202は、体組織205に光を照射する複数のエミッタ204(例えば図1に示すように8つのエミッタ)と、組織205で減衰された後の光を検出することができる1つまたは複数の検出器206(例えば図2に示すような4つの検出器)とを含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の検出器206が組織205で減衰された後の周辺及び/又は環境からの干渉レベルを検出するようにセンサ202を構成することができる。
【0020】
センサ202は、サーミスタまたは熱電対などの温度センサ207と、不揮発性(たとえばEEPROM)または揮発性メモリなどのようなメモリ装置208をさらに備えることもできる。センサ202は、温度センサ導線209、検出器複合信号導線210、メモリ装置導線214、エミッタ駆動信号導線216などを含む、部品との間を相互に信号を交信する複数の導線も含む。いくつかの実施形態において、センサ導線209、210、214、216がケーブル212を介して信号をモニタ203へ送信する。いくつかの実施形態において、ケーブル212は複数のシールド導線を含む。
【0021】
ここではケーブル212を参照して開示したが、本明細書の開示からセンサ202との通信は、多様なケーブル、ケーブルの設計、公衆または私的な通信ネットワークまたは計算機システム、有線または無線通信(IEEE802.11xを含むイーサネット(登録商標)、ブルートゥースまたはWiFiなど)、移動通信、またはそれらの組合せなどを有利に含んでもよいことは、当業者であれば理解されるであろう。
【0022】
いくつかの実施形態において、温度センサ207はセンサ202および、例えばエミッタ204などのその部品の温度をモニタする。例えばいくつかの実施形態において、温度センサ207は、光エミッタ204基板の温度をリアルタイムで概ね近似できる十分な熱伝導を有する熱容量材を備えているかまたはそれと交信する。いくつかの実施形態において、モニタ203は温度センサ207出力を有利に利用して、特に鋭敏な組織205への適用において何よりも患者の安全を確保するようにしてもよい。いくつかの実施形態において、モニタ203は温度センサ207の出力とモニタされた動作電流または電圧を有利に利用して、センサ202の操作条件を補正してもよい。
【0023】
メモリ208は、不揮発性メモリ、揮発性メモリ、またはそれらの組合せを含む、本明細書の開示により当業者に周知の多様なメモリ装置の任意の1つまたは複数を備えることができる。メモリ208は、広範なデータおよび情報の一部またはすべてを格納できるように構成されていてもよく、それらは例えば、センサ202の種類または操作情報、患者または体組織205のタイプ、バイヤまたは製造者情報、放射可能な波長の数を含むセンサ特性、エミッタ仕様、エミッタ駆動仕様、復調データ、計算モードデータ、較正データ、スクリプトや実行コードなどのソフトウェアまたはファームウェア、センサの電子要素、センサ部品の一部または全部が消耗して交換すべきかどうかを示すセンサ寿命データ、暗号化情報、モニタまたはアルゴリズム更新命令またはデータ、等々を含む。いくつかの実施形態において、メモリ装置208はエミッタ波長補正データを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、モニタ203はメモリ208を読み出して、格納されている広範なデータおよび情報のうちの1つまたはいくつかまたはすべてを判定することができる。図2に示すように、デジタル信号プロセッサ228は、メモリリーダまたはメモリライタなどを利用して、メモリ装置208と通信することができる。
【0024】
モニタ203は、導線210を介して検出器206からアナログ複合検出器信号を受信するように構成されたフロントエンド信号調整器222を備えることができる。信号調整器222は、信号のゲインを調節し、バンドパスフィルタまたはローパスフィルタに信号を通して望ましくない信号成分を除去し、所望の位相応答を有する全域通過フィルタに信号を通して信号位相を規格化する、などのアナログ複合検出器信号の規格化を行うことができる。信号調整器222は、アナログ−デジタル変換機(“A/Dコンバータ”)と通信する1つまたは複数の出力を含む。いくつかの実施形態において、A/Dコンバータ226は、デルタ−シグマ変換器を備え、直線性と信号対雑音性能を向上させてもよく、これは特に低潅流時の測定を強化するのに有利である。低減された信号対雑音は、周辺及び/又は環境からの干渉(たとえば電気焼灼装置からの)をうまく排除することにより測定品質を向上させることもできる。A/Dコンバータ226は、フロントエンド信号調整器222の出力および温度センサ207の出力と通信する入力を含む。コンバータ226はまた、デジタル化された複合検出器信号値と温度センサの読みをプロセッサ228へ通信するための出力も含む。
【0025】
プロセッサ228は、エミッタの駆動電流制御信号230をデジタル−アナログ変換器(“D/Aコンバータ”)232へ出力することができる。D/Aコンバータ232は制御情報をエミッタ駆動回路234へ供給し、それが導線216上を通してセンサ202上の複数のエミッタ204を駆動することができる。いくつかの実施形態において、エミッタ駆動回路234は8つの所定の波長で光を放出できる8つのエミッタを駆動するが、回路234は任意の数のエミッタを駆動することができる。さらに、1つまたは複数のエミッタは同一波長または実質的に同一の波長で光を放出して、冗長性を持たせることができる。回路234はエミッタ204をオン、オフすることで変調して、対応する波長で光のパルス列を形成するように設定することもできる。いくつかの実施形態では、回路234がエミッタ204をオフにして検出器206が周辺又は環境のノイズのレベルを検出するように設定することもでき、これは追加的に矩形パルス列の搬送波信号によって変調することができる。変調のさらなる詳細は、2001年5月8日発行の米国特許第6,229,856号に開示されており、参照によりこの開示をここに援用する。
【0026】
プロセッサ228は、デジタル化された複合検出器信号値を処理し、血液酸素飽和度、脈拍、グルコース、メトヘモグロビン、トータルヘモグロビンなどの生理的パラメータ情報を算出することができる。プロセッサ228は、複合検出器信号中の周辺及び/又は環境からの干渉のレベルを算出するように構成された干渉検出器240を備えている。いくつかの実施形態において、プロセッサ228はメモリ装置208中に格納された情報を読み出し、その読み出された情報を生理的パラメータ情報及び/又は干渉レベルの算出に利用することができる。
【0027】
プロセッサ228は視聴覚インタフェース236と通信して、例えば測定され、算出されたパラメータや干渉レベルを表示することができる。
【0028】
視聴覚インタフェース236は、測定部位における組織205の生理的パラメータの計算値と干渉レベルの計算値の表示を提供可能なディスプレイ装置として構成することができる。いくつかの実施形態において、視聴覚インタフェース236は、1つまたは複数の測定されたまたは判定された、パラメータまたは干渉レベルの傾向データを表示することができる。さらに、本発明の開示から当業者は、プロセッサ228から得られるデータの表示には多くの選択肢が存在することがわかるであろう。
【0029】
さらに、プロセッサ228は、ネットワークインタフェース242を介してローカル及び/又はリモートの記憶装置241、およびローカル及び/又はリモートのネットワーク装置と通信できる。記憶装置241は不揮発性メモリ、揮発性メモリ、またはその組合せとして構成可能である。記憶装置241は、ハードディスク、フラッシュメモリカード、またはそのほかの好適なコンピュータでアクセス可能なメモリであってよい。いくつかの実施形態において、プロセッサ228は、算出された生理的パラメータ情報や干渉レベルなどの様々な情報を記憶装置241内に格納できる。この情報は、後で読み出して、さらなる計算に利用できる。いくつかの実施形態において、プロセッサはネットワークインタフェース242を通して多くの情報をネットワーク装置へ通信することができる。ネットワークインタフェース242は種々のケーブル、ケーブル設計、公衆または私的な通信ネットワークまたは計算機システム、有線または無線通信(IEEE 802.11xを含むイーサネット(登録商標)、ブルートゥースまたはWiFiなど)、移動通信、またはそれらの組合せなどで構成することができる。プロセッサ228は、算出された生理的パラメータ情報や干渉レベルなどの様々な情報をネットワーク装置と交換することができる。
【0030】
図3は、例えば図2に示したプロセッサ228のような、患者モニタにおけるデジタル信号プロセッサおよび信号抽出器328のハードウェアのブロック図である。図3に示すように、プロセッサ328はコアプロセッサ302とマイクロコントローラ304とを備えることができる。いくつかの実施形態によれば、コアプロセッサは、アナログデバイス(Analog Devices)社から市販されているような、スーパー・ハーバード・アーキテクチャ(”SHARC”)に基づくデジタル信号プロセッサを構成することができる。図3は典型的なSHARCプロセッサの様々な例示的コンポーネントの詳細を示している。しかし、本明細書の開示により当業者であれば、入力データから生理的パラメータを判定するためのプログラムを実行可能な、多種にわたるデータ及び/又は信号プロセッサ、特に好ましくは、少なくとも16、32、または40ビットの浮動小数点または固定小数点の精度を扱えるデジタル信号プロセッサがあることが理解されるであろう。いくつかの実施形態によれば、マクロコントローラ304は、例えば算出されたパラメータデータや干渉レベルなどの視聴覚インタフェースへの通信や、リモートまたはローカルのネットワーク装置または記憶装置との間の情報の通信、などを含むシステム管理を制御する。いくつかの実施形態においては、マクロコントローラ304は、例えばコアプロセッサ302の動作をモニタし、必要であればリセットをかけることによって監視回路としての作用をしてもよい。
【0031】
図4Aは、例えば図2に示したプロセッサ228のような、患者モニタにおけるデジタル信号プロセッサおよび干渉検出器428の機能ブロック図である。図4Aに示すように、プロセッサおよび干渉検出器428への入力はデジタル化された複合検出器信号xk(n)401Aであってよい。いくつかの実施形態において、デジタル化された複合検出器信号401A、xk(n)、は1つの検出器206(すなわちkは検出器206の番号に対応する)からの信号のデジタル化されたサンプルを表し、図4Aに示すように個別の信号処理、モデル化、計算パスをそれぞれの信号xk(n)に対して利用することができる。いくつかの実施形態において、複合検出器信号401Aは、光のデータを含まない、検出器206で検出された干渉信号で構成されることもある。
【0032】
いくつかの実施形態において、復調モジュール403Aはデジタル化された複合検出器信号401A(たとえば48kHzの複合信号)に対してモデル化および復調を行い、その複合信号を各放射波長に関係する信号に分離し、搬送波信号の周波数成分を除去する。さらに、復調モジュール403Aは、デジタル化された複合検出器信号に対してモデル化および復調を行い、干渉信号を各放射波長に関係する干渉信号に分離し、搬送波信号の周波数成分を除去するように設定されてもよい。いくつかの実施形態において、復調モジュール403Aは、デジタル化された複合検出器信号データに対してモデル化および復調を行って、N(たとえば8)チャネルの復調データとするように設定されてもよい。それぞれのチャネルが別々の周波数及び/又は位相特性に対応するように設定することができる。例えば、各チャネルは、エミッタ204から放射された光信号により変調された、矩形光パルス列搬送波信号の基本周波数とその高調波に対応することができる。さらに、以下で説明するように、いくつかのチャネルで同一周波数特性を共有することも可能であり、そのような実施形態では、位相を利用してこれらのチャネルを区別することができる。
【0033】
複数チャネルの復調データサンプルをデシメーションモジュール404Aに与えることができ、これはサンプルを除外してサンプリングレートを低減するように設定され、かつその上に信号調整とフィルタリングを行うことができる。デシメーションはデータサンプル数を減らすので、デジタル信号プロセッサと干渉検出器428の計算負荷を低減し、さらに患者モニタの消費電力を低減する。いくつかの実施形態において、48kHzの復調された複数チャネルデータストリームを62.5kHzにデシメートすることができる。
【0034】
干渉レベルを決定するために、復調されデシメートされた複数チャネルのデータがエネルギ検出器405へ与えられてもよい。いくつかの実施形態において、エミッタ204を(たとえば回路234によって)オフに設定可能なので、複合検出器信号xk(n)401Aは干渉信号のみで構成することができる。そうすると、復調されてデシメートされた複数チャネルのデータが干渉信号で構成され、エネルギ検出器405Aをその干渉信号のエネルギまたは電力を計算するように設定できる。いくつかの実施形態において、以下で説明するように、エネルギ検出器405Aは各デシメーションチャネルの干渉信号の平均電力を計算することが可能で、その最大値を干渉出力として選択することができる。
【0035】
血液酸素飽和度、脈拍、グルコース、メトヘモグロビン、トータルヘモグロビンなどの生理的パラメータ情報を計算するために、復調されてデシメートされた複数チャネルのデータをパラメータ計算器406Aへ与えることができる。パラメータ計算器406Aは、参照によりその開示を本明細書に援用する米国特許出願第11/367,017号明細書(2006年3月1日出願)に記載されているように、生理的情報を計算する様々なアルゴリズムに従って、そのデータをモデル化、調整、および処理することができる。
【0036】
図4Bは、例えば図4Aに示したプロセッサ428のような、患者モニタにおける干渉検出器440Bの機能ブロック図である。図4Bに示すように干渉検出器440Bへの入力は、デジタル化された複合検出器信号xk(n)401Bであってよい。いくつかの実施形態において、デジタル化された複合検出器信号401B、xk(n)、は1つの検出器206(すなわちkは検出器206の番号に対応する)からの信号のデジタル化されたサンプルを表し、以下で説明するように、分離した干渉検出器(検出器440Bのような)をそれぞれの信号xk(n)に対して利用することができる。いくつかの実施形態において、複合検出器信号401Bは検出器206で検出された、光データを全く含まない干渉信号であってもよい。このことは、例えば図2の回路234においてエミッタ204をオフに保つように設定し、検出器206を組織205により減衰された周辺及び/又は環境からの干渉レベルのみを検出するように設定することにより達成される。
【0037】
復調モジュール403はデジタル化された複合検出器信号xk(n)401B(たとえば48kHzの複合信号)に対してモデル化および復調を行い、その干渉信号を各放射波長に関係する干渉信号に分離し、搬送波信号の周波数成分を除去する。図4Bに示すように、いくつかの実施形態において、復調モジュール403Bは、デジタル化された複合検出器信号401Bに対してモデル化および復調を行って、N(たとえば8)チャネルの復調データとするように設定されてもよい。各チャネルは、エミッタ204で生成された変調光信号の異なる周波数(すなわち、以下でさらに説明するように、各高調波のsin(t)成分とcos(t)成分)に対応するように設定することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、変調された光信号は、エミッタ204で生成された光を周期的な矩形パルス列(すなわち搬送波信号)で変調することにより生成することができる。回路234は、任意の与えられた期間においては、ただ1つのエミッタ204(例えば発光ダイオード)のみがアクティブであるように設定することができる。例えば、2つのエミッタ204(例えば赤と赤外の発光ダイオード)があるとすると、回路234は長さτ1の第1の時間間隔の間、第1のエミッタを起動し、その間第2のエミッタを動作させないでおく。そのあと、長さτ2の第2の時間間隔の間、どちらのエミッタにも電流を流さないようにする。そうして、長さτ3の第3の時間間隔の間、第2のエミッタに通電して起動し、第1のエミッタは非動作のままとする。最後に、第4の時間間隔τ4の間、どのエミッタにも電流を流さないことにより変調サイクルを完結させることができる。その後、第1の間隔を再スタートさせることによりこのサイクルが反復される。4つの時間間隔τ1,τ3,τ3,τ4のすべては同一の長さτであってよい。したがって、搬送波信号、すなわちパルス幅τで周期が4τの周期的な矩形パルス列と、対応するフーリエ係数τF0*sinc(kF0τ)はエミッタ204から放射される光によって変調される。ここで、F0は基本周波数(すなわち周期の逆数)であり、k=±1,±2,...である。フーリエ係数は基本周波数とその高調波(すなわち基本周波数の整数倍)に対応する。回路234は、例えば8つのエミッタなどの任意数のエミッタ204によって、任意数の搬送波信号を同様に変調するように設定することができる。
【0039】
組織205によって減衰されて検出器206で検出される光信号の強度を回復するために、復調モジュール403Bは、基本周波数F0およびその高調波の周期的パルス列(“対象周波数”)において複合検出器信号401Bをモデル化して解析するように設定されてもよい。これは、変調された信号(つまり複合検出器信号)のエンベロープ、または強度信号のかなりのエネルギを含むエンベロープの一部を、対象周波数にシフトさせてから、フィルタにかけて他の高周波成分を除外することにより達成される。いくつかの実施形態において、対象周波数のいくつかが利用可能であり、エンベロープのシフトは、変調信号に、対象周波数の対応する周波数を有する余弦また正弦信号を掛けることにより達成される。本開示により当業者であれば、対象周波数が基本周波数F0とその高調波以外の周波数であってもよく、また信号エンベロープのシフト以外の変調方法も利用可能であることがわかるであろう。
【0040】
いくつかの実施形態において、復調モジュール403Bはさらに、複合検出器信号中の他のエミッタ204による光信号出力同士のクロストークを低減ないしは除外するように設定することも可能である。例えば、2つのエミッタ204(例えば赤と赤外の発光ダイオード)がある場合、複合検出器信号中のクロストークは、赤色光信号が赤外光信号に及ぼす影響、またはその逆として定義することができる。このようなクロストークは、適切な復調信号を選択し、それらに複合検出器信号を掛けることにより最小化または除外することが可能である。前述の米国特許第6,229,856号明細書で説明されているように、いくつかの実施形態において、クロストークを低減または除外する復調信号は、搬送パルス列の基本周波数F0と高調波の余弦信号;C1cos(2πF0t),C2cos(4πF0t),C3cos(6πF0t),・・・として設定することができる(ここで、C1,C2,C3,…はクロストークを最小化または消去するために選択される定数である)。
【0041】
さらに、対象周波数を選択することにより、光の強度信号への周辺または環境ノイズの少なくともいくつかの種類と強度の影響を低減する結果を得ることができる。例えば、電源ラインノイズ(基本周波数が60Hzまたは50Hzで高調波が60nHzまたは50nHz、nは整数)を低減または除外するために、基本周波数F0を316.7Hz(すなわち、高調波が316.7nHz、nは整数)に選択することができる。そうすると、基本周波数316.7Hzを有する変調パルス列で構成される光信号強度に最も近い電源ラインノイズの高調波は、60Hzの電源ライン周波数に対しては300Hzと360Hzであるし、50Hzの電源ライン周波数に対しては300Hzと350Hzである。これによりノイズと光強度との周波数分離が行われる。いくつかの実施形態においては、分離をするために基本周波数F0として330Hzを選択することができる。
【0042】
その結果、いくつかの実施形態では、干渉検出器440Bの復調モジュール403Bは、干渉を含む複合検出器信号401Bを基本周波数F0とその高調波でモデル化および解析をするように設定可能である。したがって、復調モジュール403Bは、変調された複合光信号を復調するのに適用される変調周波数とその高調波で操作される。上で説明したように、これらの対象周波数における成分を有する干渉信号は、複合検出器信号からの光強度信号の回復を著しく劣化させる可能性がある。したがって、これらの対象周波数での干渉レベルを判定して、周辺及び/又は環境からの干渉のもとで与えられた光強度信号をうまく回復して処理できる可能性を計算できれば有利である。いくつかの実施形態において、復調モジュール403Bは、干渉信号を基本周波数と第2、第3および第4の高調波でモデル化するように設定することができる。しかし、当業者であれば、本明細書の開示から広範囲の信号モデル化の組合せがあることを認識できるであろう。
【0043】
さらに、復調モジュール403Bは、対象周波数で干渉信号の全エネルギスペクトルをモデル化するように設定することができる。これは、対象周波数における干渉信号の位相変化は無視して、その対象周波数における干渉信号のエネルギをキャプチャすることによって達成される。いくつかの実施形態において、復調信号として余弦と正弦の両方を利用することによりこれが達成される。同一周波数の余弦信号と正弦信号はπ/2ラジアンだけ位相がずれているので、これらを補完的な復調信号として利用すれば、対象周波数におけるすべての潜在的な干渉信号エネルギをモデル化しキャプチャすることが可能である。いくつかの実施形態では、干渉信号のスペクトルは、余弦復調信号のみまたは正弦復調信号のみを使ってモデル化することができる。本明細書の開示により、当業者であれば直交信号などの広範囲の復調信号があることがわかるであろう。
【0044】
図4Bに示すように、復調モジュール403Bは、干渉信号の全スペクトルを基本周波数F0とその高調波の2F0、3F0、4F0、でモデル化することができる。正弦復調信号と余弦復調信号のいずれも利用することができる。デジタル化された複合検出器信号xk(n)401Bは、410でsin(2πF0/Fsn)、420でcos(2πF0/Fsn)が掛けられて、基本周波数F0における干渉信号の全スペクトルがモデル化される(Fsはサンプリング周波数)。デジタル化された複合検出器信号xk(n)401Bは、430でsin(4πF0/Fsn)、440でcos(4πF0/Fsn)が掛けられて、第2高調波2F0における干渉信号の全スペクトルがモデル化される。デジタル化された複合検出器信号xk(n)401Bは、450でsin(6πF0/Fsn)、460でcos(6πF0/Fsn)が掛けられて、第3高調波3F0における干渉信号の全スペクトルがモデル化される。最後に、デジタル化された複合検出器信号xk(n)401Bは、470でsin(8πF0/Fsn)、480でcos(8πF0/Fsn)が掛けられて、第3高調波4F0における干渉信号の全スペクトルがモデル化される。図示したように、N=8チャネルの復調干渉信号データが形成される。
【0045】
復調干渉信号データをデシメーションモジュール404Bに与えることができ、これはサンプルを除外してサンプリングレートを低減し、かつその上に信号調整とフィルタリングを行う。デシメーションはデータサンプル数を減らすので、干渉検出器440Bの計算負荷を低減し、さらに患者モニタの消費電力を低減する。図4Bに示すように、デシメーションモジュール404Bは、直列のサンプル半減ブロックで構成することができ、それぞれが、信号サンプルを1つおきに抜き取って、サンプルレートを半減する。標本化定理を充たし、かつエイリアシングを避けるために、各サンプル半減ブロックの前にカットオフ周波数がFs/2mのローパスフィルタが配置されなければならず、ここでmは、直列に配したサンプル半減ブロックの数である。ローパスフィルタを掛けることにより、復調が行われた後、潜在的に有用な情報を持っていない、その他の高周波成分を除外することができる。したがって、(410でsin(2πF0/Fsn)が掛けられた後の)第1のチャネルの復調干渉信号データは、411でカットオフ周波数Fs/2を有するローパスフィルタによってフィルタリングされ、その後412において半分にデシメートされる。そのあと、第1のチャネルの残存するデータサンプルは同様にフィルタリングおよびデシメートされ、413でカットオフ周波数Fs/2mを有するローパスフィルタでフィルタリングされ、414でサンプル半減ブロックによって半分にデシメートされて、所望のサンプリングレートにまでデータサンプルが低減される。図4Bに示すように、これを復調干渉信号データの各チャネルに対して実行することができる。いくつかの実施形態では、48kHzの復調複数チャネルデータストリームが、log2(48000/62.5)(すなわち約10)個の一続きのサンプル半減ブロックによって62.5Hzにまでデシメートされ、この時、それぞれの前段階で対エイリアシング用のローパスフィルタによるフィルタリングが行われる。いくつかの実施形態において、サンプルM分の1化ブロックを代替として利用することも可能であり、そのそれぞれはサンプリングレートをM分の1にする。いくつかの実施形態では(例えば、シグマ−デルタ方式のA/Dコンバータが使用される場合)、サンプルL分の1化ブロックとサンプルM分の1化ブロックとを代わりに使うことが可能であり、それぞれがサンプリングレートをL分の1とM分の1に低減する。いくつかの実施形態では、1つのダウンサンプルブロックを使って所望のサンプリングレートを達成することができる。しかし、当業者であれば、本明細書の開示から多様な信号デシメーション手法があることを認識できるであろう。
【0046】
復調され、デシメートされた干渉信号データはエネルギ検出器405Bに送られて干渉レベルが計算される。信号のエネルギは、信号サンプルの絶対値の二乗の合計で算出される。図4Bに示すように、復調され、デシメートされた第1のチャネルのデータサンプルは、415において二乗される。それぞれのチャネルの、復調され、デシメートされた干渉信号データに対してこれが実行される。いくつかの実施形態では、二乗されたサンプルが合計される。いくつかの実施形態では、合計されたほかに、二乗されたサンプルも移動平均フィルタでフィルタリングすることができる。移動平均フィルタはローパス特性を有し、したがって、高周波成分(すなわち周辺または環境ノイズの短時間遷移部分)を除去することによって信号を平滑化する。移動平均フィルタは、重み付きフィルタ係数または重みなしフィルタ係数を用いて設定することができる。例えば、単純な重みなし移動平均フィルタは、二乗された全サンプルの合計を出し、その合計をサンプル数で割る。これは信号の平均電力を算出したことになる。図4Bに示すように、第1のチャネルの計算されたエネルギ信号は移動平均フィルタ416で平滑化され、信号の平均電力(あるいは単に電力)が決定される。図に示すように、これはすべてのチャネルの、復調されデシメートされたデータについて行われて、各チャネルの干渉信号の電力が決定される。いくつかの実施形態では、算出された電力の平方根をさらに計算して、各チャネルの信号の二乗平均平方根を計算することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、計算されたエネルギ、または同一周波数の相補的な余弦チャネルと正弦チャネルに対して算出された電力は、それぞれの対象周波数における干渉信号のエネルギまたは電力を決定するために合計される。前に説明したように、同一周波数の余弦信号と正弦信号はπ/2ラジアンだけ位相がずれているので、この両者を補完的な復調信号として利用すれば、対象周波数におけるすべての潜在的な干渉信号エネルギをモデル化しキャプチャすることが可能である。図4Bに示すように、490において算出された電力値が加算されて、基本周波数F0における干渉信号の全スペクトル電力が決定される。他のチャネルについても同様の加算を行い、第2(2F0)、第3(3F0)、第4(4F0)高調波における干渉信号の全スペクトル電力が決定される。
【0048】
デジタル化された複合検出器信号xk(n)401Bに対する干渉検出器440Bで算出された干渉レベル(または出力)は、対象周波数における最大算出エネルギまたは電力であるかもしれない。図4Bに示すように495において、そのような最大値が干渉検出器440Bの出力として選択されてもよい。干渉信号の最大算出信号エネルギまたは電力は、生理的パラメータ情報測定に対する最悪条件となる可能性がある。いくつかの実施形態において、算出された干渉信号エネルギまたは電力のすべてを出力することができる。いくつかの実施形態において、計算値は平均化、フィルタリング等のさらなる処理をすることができる。しかし、当業者であれば、本明細書の開示から干渉出力の計算には多様な手法があることがわかるであろう。
【0049】
図4Cは、例えば図4Aのプロセッサ428のような、患者モニタにおける干渉検出器440Cの機能ブロック図である。複数の検出器206を備える実施形態において、干渉レベルの計算は、各検出器206でキャプチャされた複合検出器信号のそれぞれに対して個別に実行されてもよい。図4Cに示すように、干渉検出器440Cは、4つの干渉検出器402Cを備え、そのそれぞれが4つの検出器206のそれぞれで取得されたx1(n)からx4(n)までの複合検出器信号に対する干渉レベルを計算するように構成されている。干渉検出器402Cのそれぞれは、図4Bの検出器440Bとして設定され、算出された最大干渉信号エネルギまたは電力を出力することができる。496Cにおいて、最大干渉信号エネルギ(または電力)を出力として選択することができる。これは、生理的パラメータ情報の測定に対する最悪条件を表す可能性がある。いくつかの実施形態において、算出された干渉信号エネルギまたは電力のすべてを出力することができる。いくつかの実施形態において、計算値は平均化、フィルタリング等のさらなる処理をすることができる。しかし、当業者であれば、本明細書の開示から干渉レベルの計算には多様な手法があることがわかるであろう。
【0050】
図5は、図2の患者モニタリングシステム200のような患者モニタリングシステムにより実行される干渉検出プロセスを示す。ステップ501で、検出器206からのアナログ複合検出器信号が受信される。この信号は、光強度成分を含まない干渉信号だけで構成されるように設定することができる。ステップ502において、複合検出器信号が調整されて、例えば、信号のゲインの調節または規格化を行い、バンドパスフィルタまたはローパスフィルタに信号を通して望ましくない信号成分を除去し、所望の位相応答を有する全域通過フィルタに信号を通して信号位相を規格化する、などが行われる。ステップ503において、調整された複合検出器信号が、A/D変換を行うことでデジタル化されてサンプルとされる。ステップ504において、デジタル化された複合検出器信号が復調され、1つまたは複数のデータチャネルとなる。復調信号データは、デジタル化された複合検出器信号の周波数スペクトルを、例えば所望の周波数と位相の余弦関数及び/又は正弦関数で掛け算して、対象の周波数および位相にシフトすることにより取得できる。ステップ505において、復調された信号チャネルはデシメーションにより圧縮することができる。デシメーションは各チャネルに含まれるサンプル数を低減する。また、チャネルデータのエイリアシングを防ぐために、デシメーションの前にローパスフィルタを通して不要な高周波成分をチャネルから除去する必要がある。506において、デジタル化された複合検出器チャネルデータのエネルギが決定される。例えばこれは、各チャネルのサンプルの二乗値を合計してそれをサンプル数で割って、各チャネルの信号電力を計算することにより達成される。いくつかの実施形態において、算出された最大電力を全チャネルから選択して、検出干渉信号の最悪ケース(すなわち、最大)の電力を決定する。
【0051】
干渉信号(または干渉出力)の算出された最大エネルギまたは電力は、507においてユーザへ知らせることができる。いくつかの実施形態において、干渉出力は、例えば棒グラフで視覚的にユーザに提示することができる。図5に示すように、干渉出力は閾値と比較することができる。いくつかの実施形態において、閾値は患者モニタリングシステムの雑音レベルの倍数として設定することができる。システムの雑音レベルは、熱ノイズ、ショットノイズ、その他などのためにシステムの電子部品によって内在的に(すなわち入力信号を与えない状態で)発生するノイズ信号の指標である。雑音レベルはさらにそのシステムでの信頼性のある測定が可能な、最小測定値の限界を設定する。さらに、システムの雑音レベルは実験的に測定可能である。例えば、血液中のトータルヘモグロビン濃度の測定のためのシステムの雑音レベルは10ppm程度である。したがって、閾値は患者モニタリングシステムで測定しようとする生理的パラメータの種類に応じて設定することができる。いくつかの実施形態において、閾値の乗数は設定可能かつプログラム可能であってよい。
【0052】
図5に示すように、510で干渉出力は閾値と比較することができる。干渉出力が閾値以下の場合、511で棒グラフを閾値に比例した高さまたは幅の緑色(または緑の網掛け)に更新することができる。例えば、緑の棒の高さまたは幅は、(閾値−干渉出力)/閾値として算出できる。別の例では、計算値がパーセンテージで表現できる。干渉出力が閾値より大きい場合、512で棒グラフを閾値に比例した高さまたは幅の赤色(または赤の網掛け)に更新することができる。例えば、赤の棒の高さまたは幅は、(干渉出力−閾値)/閾値として算出できる。別の例では、計算値がパーセンテージで表現できる。当業者には、他の計算方式または色を利用して、ユーザに患者モニタの干渉出力を警告できることが理解されるであろう。
【0053】
図6A〜6Dは、図1の干渉検出器などのような干渉検出器を利用していること及びその出力を示す、ユーザインタフェース表示を示す。図6Aは、算出された干渉出力のスピードメータ型の視覚表示600Aを示す。ダイアル601Aは、干渉出力の程度を示す数字(0〜9)からなっている。閾値は、例えばダイアルのほぼ中央(つまり数字の6)に対応していてもよい。矢印602Aは、算出された干渉出力を閾値に対して相対的に指示するように設定されている。ダイアルはさらに網掛けされていて、算出された干渉出力の度合いが一目でわかるようになっていてもよい。例えば、0〜3の範囲の網掛けは緑色で、干渉レベルが低いことを表し、3〜6の範囲の網掛けは黄色で、中間的な干渉レベルを表し、6〜9の範囲の網掛けは赤色で、干渉レベルが高いことを表す。
【0054】
図6Bは棒グラフ型の視覚表示600Bを示す。緑の色または網掛け603Bは算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表す。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が2である場合、緑の色または網掛け603Bは80%(つまり、100%×(10−2)/10)を表示し、幅でこのパーセント値を示すことができる。赤色または網掛け604Bは同様に算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表す。この例の場合、赤色または網掛け604Bは20%を表示し、その幅でこのパーセント値を示すことができる。あるいはまた、算出された干渉出力が閾値を超えない限りは、赤色または網掛けを表示されない場合がある。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が20である場合、赤色または網掛け604Bは200%(つまり、100%×20/10)を表示し、幅が棒グラフ表示600Bの全体を覆う。この場合には緑の色または網掛け603Bは表示されない。いくつかの実施形態において、閾値が棒グラフ表示600Bの中央に対応し、それに応じて、緑と赤色または網掛けが計算されて表示される。いくつかの実施形態において、他の色(例えば黄色)も表示することができる。
【0055】
図6Cは棒グラフ型の視覚表示600Cを示す。緑の色または網掛けは算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表し、パーセント値は表示されていない。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が6である場合、緑の色または網掛け605Cは棒グラフ表示600Cの40%(つまり、100%×(10−6)/10)の幅で表示される。赤色または網掛け606Cは同様に算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表す。この例では、赤色または網掛け606Cは60%の幅で表示することができる。あるいはまた、算出された干渉出力が閾値を超えない限りは、赤色または網掛けが表示されない場合がある。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が11である場合、赤色または網掛け606Cは110%(つまり、100%×11/10)の幅で表示されるか、または棒グラフ表示600Cの全体を覆うことができる。この場合には緑の色または網掛け605Cは表示されなくてよい。いくつかの実施形態において、閾値が棒グラフ表示600Cの中央に対応し、それに応じて、緑と赤色または網掛けが計算されて表示されてもよい。いくつかの実施形態において、他の色(例えば黄色)も表示することができる。
【0056】
図6Dは、棒グラフ型の視覚表示600Dを示す。これは600Cに似ているが縦型である。緑の色または網掛けは算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表し、パーセント値は表示されていない。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が3である場合、緑の色または網掛け607Dは棒グラフ表示600Dの70%(つまり、100%×(10−3)/10)の高さで表示される。赤色または網掛け608Dは同様に算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表す。この例では、赤色または網掛け608Dは棒グラフ表示600Dの40%の高さで表示される。あるいはまた、算出された干渉出力が閾値を超えない限りは、赤色または網掛けが表示されない場合がある。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が12である場合、赤色または網掛け608Dは120%(つまり、100%×12/10)の高さで表示されるか、または棒グラフ表示600Dの全体を覆う。この場合には緑の色または網掛け607Dは表示されない。いくつかの実施形態において、閾値が棒グラフ表示600Dの中央に対応し、それに応じて、緑と赤色または網掛けが計算されて表示されてもよい。いくつかの実施形態において、他の色(例えば黄色)も表示することができる。図6E〜6Hも、例えばハッピーフェースまたはサッドフェース、指針、指示光などを含む、異なる色、グラフ、形、表示を利用した代替表示を示している。
【0057】
いくつかの実施形態において、患者モニタはユーザへの音声通知を提供するように構成することができる。例えば、干渉出力を計算して、それを閾値と比較した後、干渉出力が閾値よりも低い場合には、患者モニタが“測定は安全です”という音声を発することができる。別の例としては、干渉出力が閾値に近いかそれを超える場合に、“危険です”という音声を発することができる。当業者であれば、本明細書の開示から多様な視聴覚通知手法があることは理解されるであろう。
【0058】
患者モニタ用の干渉検出器を好適な実施形態とともに開示したが、本発明はこれに限定されるものではない。むしろ、当業者であれば本明細書の開示により、患者モニタ用の干渉検出器の多数の代替技術があることを理解するであろう。例えば、患者モニタは、算出された干渉レベルが測定精度を顕著に劣化させると判定された場合、ユーザの生理的パラメータ測定の実行を“締め出す(lock out)”ことができる。
【0059】
本発明の開示により、上記のプロセスに加えて、他のプロセスおよびプロセスの組合せが当業者には明らかであろう。当業者はさらに、本明細書で開示した実施形態に関連して記述した種々の実例の論理ブロック、モジュールおよびステップは、電子的なハードウェア、コンピュータソフトウェア、またはその両者の組合せとして実装可能であることを理解するであろう。このハードウェアとソフトウェアとが相互に交換可能であることを明確に説明するために、種々の実例の部品、ブロック、モジュールおよびステップを一般的にその機能によって記述した。そのような機能をハードウェアとして実装するかソフトウェアとして実装するかは、特定のアプリケーション並びに全体システムに課せられる設計上の制約とに依存する。当業者は記述された機能をそれぞれの特定のアプリケーションに対して様々な方法で実装することが可能であるが、そのような実装の判断は、本発明の範囲から外れるというように解釈されるべきではない。
【0060】
本明細書に開示した実施形態に関連して説明した様々な例示的な論理ブロック、モジュール、およびステップは、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のプログラマブルロジックデバイス、ディスクリートなゲートまたはトランジスタロジック、ディスクリートなハードウェア部品、または本明細書に記載の機能を実行するように設計されたそれらの任意の組合せによって実装または実行することができる。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサ、従来型プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、ステートマシン、等であってよい。プロセッサは、例えば、DSPとマイクロプロセッサの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組合せた1つまたは複数のマイクロプロセッサ、またはこのような他の任意の構成、などのコンピューティングデバイスの組合せとして実装することができる。さらに、“処理”という用語は広範囲な用語であって、例えばプログラムコードの実装、命令の実行、信号の操作、フィルタリング、算術演算の実行、等のいくつかの意味を包含することを意図している。
【0061】
モジュールには、ソフトウェア、オブジェクト指向のソフトウェアコンポーネント、クラスコンポーネントおよびタスクコンポーネント、プロセス、方法、機能、属性、手順、サブルーチン、プログラムコードのセグメント、ドライバ、ファームウェア、マイクロコード、回路、データ、データベース、データ構造、表、配列、または変数、などのソフトウェアまたはハードウェアコンポーネントを含むことができるが、ただしこれに限定されるわけではない。
【0062】
本明細書に開示する実施形態に関連して記載した方法またはアルゴリズムのステップは、ハードウェアで直接具現化するか、プロセッサにより実行されるソフトウェアモジュールで具現化するか、またはこれら2つの組合せで具現化することができる。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD−ROM、DVD、または当技術分野で周知の他の任意の形態の記憶媒体中に常駐することができる。記憶媒体はプロセッサと連結され、プロセッサが記憶媒体から情報を読み出し、また記憶媒体へ情報を書き込むことができる。あるいはその代わりに、記憶媒体をプロセッサに組み込むことができる。プロセッサと記憶媒体はASIC内に常駐することができる。ASICはユーザ端末内に常駐することができる。または、プロセッサと記憶媒体が個別の部品としてユーザ端末内に常駐することができる。
【0063】
上記の発明を特定の好適な実施形態によって説明したが、他の実施形態は、本明細書の開示から当業者には明らかであろう。さらには、他の組合せ、省略、置換、および変更は、本明細書の開示を考慮すれば当業者には明らかとなるであろう。上述の本発明の種々の態様と特徴は、個別または一緒に組合せて、または相互に置き換えて実施可能であり、また特徴と態様の種々の組合せおよび部分的組合せを行うことが可能であり、それらはいずれも依然として本発明の範囲内にあることが意図される。さらに、上述のシステムは、好適な実施形態で記述したすべてのモジュールと機能とを含む必要はない。したがって、本発明は好適な実施形態の反応によって制限されることを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲を参照して定義されるべきである。
【0064】
さらに、本明細書において言及したすべての刊行物、特許、特許出願は、あたかもそれぞれの刊行物、特許または特許出願を具体的かつ個別に、参照により援用することを表示したかの如く、それと全く同様に、参照により本明細書に援用されるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置中の干渉を検出するシステムであって、
測定装置中の環境からの干渉レベルを判定するように構成されたプロセスと、
前記環境からの干渉レベルを視覚的または聴覚的な表示のためのディスプレイと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記聴覚的または視覚的な表示は、環境からの干渉の大きさが受容可能であることを示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記聴覚的または視覚的な表示は、環境からの干渉の大きさが受容不可であることを示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
モニタされている患者の組織によって減衰された光に対応する1つまたは複数のセンサ信号を受信し、前記センサ信号を処理して、前記モニタされている患者の1つまたは複数の生理的パラメータの測定値を決定する、非侵襲性のモニタであって、
前記センサは、光源と検出器を前記組織の近傍に配置するセンサ筐体中に収納された光源と1つまたは複数の検出器とを含み、
前記モニタは、前記センサの近傍における周辺からの電子的な干渉の大きさを判定する信号プロセッサと、前記干渉の大きさを介護人が感知しうる、少なくとも1つの聴覚的または視覚的な表示と、を含む非侵襲性のモニタ。
【請求項5】
前記視覚的表示の聴覚はディスプレイを含み、
前記信号プロセッサは、前記周辺からの電子的な干渉の大きさに応じたディスプレイ信号を出力し、
前記ディスプレイは前記ディスプレイ信号に応じた視覚的キューを提供する、請求項4に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項6】
前記視覚的キューはメータを含む、請求項5に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項7】
前記モニタは干渉の閾値を記憶するメモリを含み、前記メータは前記干渉の閾値に対する前記干渉の大きさを示す、請求項6に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項8】
前記メータは低干渉から高干渉までの連続体を含み、前記閾値は前記低干渉と前記高干渉との間にある、請求項7に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項9】
前記メータは棒グラフを含む、請求項8に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項10】
前記メータは移動式電子ダイアルを含む、請求項8に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項11】
前記メータは一連のLEDを含む、請求項8に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項12】
前記メータは棒グラフを含む、請求項8に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項13】
前記低は通常緑に関連付けられ、前記高は通常赤に関連付けられる、請求項8に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項14】
前記信号プロセッサは、干渉検出モードにおいては前記センサ近傍の周辺からの電子的な干渉の大きさを継続的に判定し、それにより介護人が場所を変えて移動しながら前記周辺からの干渉をモニタできるようにする、請求項4に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項15】
前記視覚的表示の聴覚は聴覚変換機を含み、前記信号プロセッサは、前記周辺からの電子的な干渉の大きさに応じた聴覚信号を出力し、前記変換機は前記聴覚信号に対応した聴覚キューを提供する、請求項4に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項16】
精密器具が患者の生理的パラメータの正確な測定を決定することに支障がないかどうかを判定する方法であって、
モニタされている患者の組織によって減衰された光に対応する1つまたは複数のセンサ信号を、光源と1つまたは複数の検出器とを含みかつ前記光源と前記検出器とが前記組織の近傍に配置されるセンサ筐体中に含まれるセンサから受信し、前記センサ信号を処理して前記モニタされている患者の1つまたは複数の生理的パラメータの測定値を決定するように構成された患者モニタにおいて干渉検出モードを選択し、
前記信号プロセッサにより前記センサ近傍における周辺からの電子的な干渉の大きさを電子的に判定し、
前記干渉の大きさを介護人が感知しうる、少なくとも1つの聴覚的または視覚的な表示を電子的に出力する、
ことを含む方法。
【請求項17】
前記出力するステップは視覚的キューを表示することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記視覚的キューを表示することが、メータ、移動式電子ダイアル、棒グラフ、一連のLED、英数字表示の内の少なくとも1つの表示された測定値を変更することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記出力するステップは聴覚キューを生成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記聴覚キューを生成することは、聴覚連続体の少なくとも1つのピッチまたは音量を変化させることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項1】
測定装置中の干渉を検出するシステムであって、
測定装置中の環境からの干渉レベルを判定するように構成されたプロセスと、
前記環境からの干渉レベルを視覚的または聴覚的な表示のためのディスプレイと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記聴覚的または視覚的な表示は、環境からの干渉の大きさが受容可能であることを示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記聴覚的または視覚的な表示は、環境からの干渉の大きさが受容不可であることを示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
モニタされている患者の組織によって減衰された光に対応する1つまたは複数のセンサ信号を受信し、前記センサ信号を処理して、前記モニタされている患者の1つまたは複数の生理的パラメータの測定値を決定する、非侵襲性のモニタであって、
前記センサは、光源と検出器を前記組織の近傍に配置するセンサ筐体中に収納された光源と1つまたは複数の検出器とを含み、
前記モニタは、前記センサの近傍における周辺からの電子的な干渉の大きさを判定する信号プロセッサと、前記干渉の大きさを介護人が感知しうる、少なくとも1つの聴覚的または視覚的な表示と、を含む非侵襲性のモニタ。
【請求項5】
前記視覚的表示の聴覚はディスプレイを含み、
前記信号プロセッサは、前記周辺からの電子的な干渉の大きさに応じたディスプレイ信号を出力し、
前記ディスプレイは前記ディスプレイ信号に応じた視覚的キューを提供する、請求項4に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項6】
前記視覚的キューはメータを含む、請求項5に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項7】
前記モニタは干渉の閾値を記憶するメモリを含み、前記メータは前記干渉の閾値に対する前記干渉の大きさを示す、請求項6に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項8】
前記メータは低干渉から高干渉までの連続体を含み、前記閾値は前記低干渉と前記高干渉との間にある、請求項7に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項9】
前記メータは棒グラフを含む、請求項8に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項10】
前記メータは移動式電子ダイアルを含む、請求項8に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項11】
前記メータは一連のLEDを含む、請求項8に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項12】
前記メータは棒グラフを含む、請求項8に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項13】
前記低は通常緑に関連付けられ、前記高は通常赤に関連付けられる、請求項8に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項14】
前記信号プロセッサは、干渉検出モードにおいては前記センサ近傍の周辺からの電子的な干渉の大きさを継続的に判定し、それにより介護人が場所を変えて移動しながら前記周辺からの干渉をモニタできるようにする、請求項4に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項15】
前記視覚的表示の聴覚は聴覚変換機を含み、前記信号プロセッサは、前記周辺からの電子的な干渉の大きさに応じた聴覚信号を出力し、前記変換機は前記聴覚信号に対応した聴覚キューを提供する、請求項4に記載の非侵襲性のモニタ。
【請求項16】
精密器具が患者の生理的パラメータの正確な測定を決定することに支障がないかどうかを判定する方法であって、
モニタされている患者の組織によって減衰された光に対応する1つまたは複数のセンサ信号を、光源と1つまたは複数の検出器とを含みかつ前記光源と前記検出器とが前記組織の近傍に配置されるセンサ筐体中に含まれるセンサから受信し、前記センサ信号を処理して前記モニタされている患者の1つまたは複数の生理的パラメータの測定値を決定するように構成された患者モニタにおいて干渉検出モードを選択し、
前記信号プロセッサにより前記センサ近傍における周辺からの電子的な干渉の大きさを電子的に判定し、
前記干渉の大きさを介護人が感知しうる、少なくとも1つの聴覚的または視覚的な表示を電子的に出力する、
ことを含む方法。
【請求項17】
前記出力するステップは視覚的キューを表示することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記視覚的キューを表示することが、メータ、移動式電子ダイアル、棒グラフ、一連のLED、英数字表示の内の少なくとも1つの表示された測定値を変更することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記出力するステップは聴覚キューを生成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記聴覚キューを生成することは、聴覚連続体の少なくとも1つのピッチまたは音量を変化させることを含む、請求項19に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【公表番号】特表2013−500079(P2013−500079A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521850(P2012−521850)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/043120
【国際公開番号】WO2011/011730
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(506253872)セルカコール・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】CERCACOR LABORATORIES, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/043120
【国際公開番号】WO2011/011730
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(506253872)セルカコール・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】CERCACOR LABORATORIES, INC.
【Fターム(参考)】
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